- 1 - 主文 本件上告を棄却する。 当審における未決勾留日数中200日を本刑に算入する。 理由 弁護人渡邉良平の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。 なお、所論に鑑み、職権で判断する。 1 事案の概要及び審理経過等本件公訴事実の要旨は、被告人が、A及びBを殺害する目的で、両名方に侵入し、同所において、A及びBをいずれも頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した上、両名の死体を遺棄した、というものである。 被告人は、各殺人及び死体遺棄の犯人性を争った。第1次第1審判決は、被告人が各殺人及び死体遺棄の犯人であると認定する一方、侵入時にはAを殺害する目的を有していたにとどまり、Bを殺害する目的もあったとは認められないとした上で、被告人を懲役23年に処した。 これに対し、検察官及び被告人の双方が控訴し、検察官はB殺害の計画性等に関する事実誤認及び量刑不当を、被告人は訴訟手続の法令違反及び被告人の犯人性に関する事実誤認をそれぞれ主張したところ、第1次控訴審判決は、検察官の事実誤認の控訴趣意並びに被告人の訴訟手続の法令違反及び事実誤認の控訴趣意をいずれも排斥した上で、第1次第1審判決は、不適切な量刑資料を用いたため、量刑傾向の把握を誤り、その結果、不合理な量刑判断をしたものであって、検察官の量刑不令和4年(あ)第655号住居侵入、殺人、死体遺棄被告事件令和5年10月11日第一小法廷決定- 2 -当の控訴趣意はこの限度で理由があるとして、同判決 断をしたものであって、検察官の量刑不令和4年(あ)第655号住居侵入、殺人、死体遺棄被告事件令和5年10月11日第一小法廷決定- 2 -当の控訴趣意はこの限度で理由があるとして、同判決を破棄し、事件を第1審裁判所に差し戻した。さらに、被告人が上告したが、上告趣意は刑訴法405条の上告理由に当たらないとして上告棄却の決定がされた。 第2次第1審裁判所は、第1次控訴審判決の拘束力が、量刑に関する消極的否定的判断に加えて、少なくとも犯人性に関する判断に及んでいるとの見解に立って審理を行い(なお、本件公訴事実中、被告人がA及びBを殺害する目的で両名方に侵入した旨の訴因を、被告人がAを殺害する目的でA及びB方に侵入した旨に改めるとの訴因変更がされた。)、判決においても、量刑判断の論理的前提となっている各殺人及び死体遺棄の犯人性について第1次控訴審判決の拘束力が及んでいるから、これに抵触する判断は許されないと判示した上で、被告人が、Aを殺害する目的で、A及びB方に侵入し、同所において、A及びBをいずれも頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した上、両名の死体を遺棄したとの事実を認定し、被告人を無期懲役に処した。 これに対し、被告人が控訴し、法令適用の誤り、訴訟手続の法令違反、量刑不当を主張した。原判決は、第1次控訴審判決の拘束力について、同判決は、第1次第1審判決の量刑判断が不合理であるとしてこれを破棄しているところ、被告人が各殺人及び死体遺棄の犯人であるなどとした第1次第1審判決に事実誤認がないという判断部分についても、上記破棄の判断の論理的な前提となっている以上、当然に拘束力を有するものと解され、第2次第1審判決の判断に不相当なところはないなどと判示して、控訴を棄却した。 2 当裁判所の判断裁判所法4条は、「上級審の裁 論理的な前提となっている以上、当然に拘束力を有するものと解され、第2次第1審判決の判断に不相当なところはないなどと判示して、控訴を棄却した。 2 当裁判所の判断裁判所法4条は、「上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について下級審の裁判所を拘束する。」と規定しているところ、同条の趣旨は、審級制度の存在を前提に、事件が上級審の裁判所と下級審の裁判所とをいたずらに往復することを防止しようとするものであると解される。そして、前記のとおり、第1次第1審判決は、被告人が各殺人及び死体遺棄の犯人であると認定し、第1次控訴審判決- 3 -は、この第1次第1審判決の認定に事実誤認はないと判断した上で、その刑の量定が不当であるとしてこれを破棄したものであるところ、刑の量定は、犯人性の認定を当然の前提とするものである。 以上のような裁判所法4条の趣旨及び第1次控訴審判決の判断内容等を踏まえると、本件のように、第1審判決について、被告人の犯人性を認定した点に事実誤認はないと判断した上で、量刑不当を理由としてこれを破棄し、事件を第1審裁判所に差し戻した控訴審判決は、第1審判決を破棄すべき理由となった量刑不当の点のみならず、刑の量定の前提として被告人の犯人性を認定した同判決に事実誤認はないとした点においても、その事件について下級審の裁判所を拘束するというべきである。以上と同旨の原判断は正当である。 よって、刑訴法414条、386条1項3号、181条1項ただし書、刑法21条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官深山卓也裁判官山口厚裁判官安浪亮介裁判官岡正晶) 裁判官 山口厚 裁判官 安浪亮介 裁判官 岡正晶
▼ クリックして全文を表示