主文 被告人を懲役6年に処する。 未決勾留日数中380日をその刑に算入する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、平成26年頃、大阪府富田林市(住所省略)A方において、同人と同居を開始し、同人の内縁の夫として同人の子らと生活し、令和2年1月頃からは、Aと共に、同人方において、同人の孫であるB(令和▲年▲月▲日生、犯行当時2歳)とも同居して同人を養育していた。そして、令和4年6月22日には、Aと別れ話をするに至ったが、前記同居関係や内縁関係は未だ解消されていなかったところ、被告人は、Aと共謀の上第1 被告人及びAの外出中にBが同所で自由に行動できないよう、同人を逮捕監禁しようと考え 1 令和4年6月24日午後7時17分頃から同月25日午後0時13分頃までの間、同人を、同所寝室に設置した、四方の側面を板張りにし、上面に開閉式の板の蓋を付けたベビーサークル内に閉じ込め 2 同日午後3時17分頃から同月26日午後0時22分頃までの間、同人を前記ベビーサークル内に閉じ込め 3 同日午後4時56分頃から同月27日午後0時14分頃までの間、同人を前記ベビーサークル内に閉じ込め 4 同日午後6時33分頃から同日午後8時3分頃までの間に、同人の両腕及び両足を粘着テープで緊縛した上、その頃から同月29日までの間、同人を前記ベビーサークル内に閉じ込めもって同人を不法に逮捕監禁し第2 被告人及びAの両名とも、Bの養育者として、同人の生存に必要な保護を行 うべき責任があるのに、同月27日午後8時3分頃、同人を前記ベビーサークル内に置き去りにして遺棄するとともに、その頃から同月29日 の両名とも、Bの養育者として、同人の生存に必要な保護を行 うべき責任があるのに、同月27日午後8時3分頃、同人を前記ベビーサークル内に置き去りにして遺棄するとともに、その頃から同月29日までの間、同人を同ベビーサークル内に放置して、同人に十分な水分や食事を与えることも、同ベビーサークル内の気温を適切に管理することもないまま、同人の生存に必要な保護をせず、よって、同日、同ベビーサークル内において、同人を熱中症により死亡させたものである。 (証拠の標目)[括弧内の番号は、証拠等関係カード記載の証拠番号を示す。]省略(争点に対する判断)第1 本件の争点AがBの保護責任者であったこと、Aが判示第1の1ないし4の各日時にBを判示第1の1記載のベビーサークル(以下「本件ベビーサークル」という。)に入れたこと、令和4年6月29日Bが本件ベビーサークル内において熱中症により死亡したことに争いはない。本件の争点は、逮捕監禁罪について、①Aが令和4年6月27日にBの両腕及び両足を粘着テープで緊縛したか、②本件逮捕監禁行為が違法であったか、③被告人に逮捕監禁罪の共同正犯が成立するか、保護責任者遺棄致死罪について、④被告人に保護責任者性が認められるか、⑤A及び被告人がBを遺棄し、Bの生存に必要な保護をしなかったといえるか、⑥被告人に保護責任者遺棄致死罪の共同正犯が成立するかである。なお、以下の月日は、断わりのない限り、令和4年を指す。 第2 前提事実争いのない事実及び関係証拠から容易に認定できる事実は以下のとおりである。 1 人的関係等⑴ 被告人は、平成26年頃、交際相手のAとその子らと判示記載のA方(以下「本件居室」という。)で同居を開始した。被告人とAの間には、平成28年7月、Cが出生し、被告人は平成30年2月9日、自 等⑴ 被告人は、平成26年頃、交際相手のAとその子らと判示記載のA方(以下「本件居室」という。)で同居を開始した。被告人とAの間には、平成28年7月、Cが出生し、被告人は平成30年2月9日、自らの子として認知した。Aには、 前夫との間に、長女のD、三男のE及び四男のFがいた。 ⑵ Bは、令和元年7月12日、Eの長女として出生した。Aは、令和2年1月頃、Bを引き取り養育を開始した。これにより、被告人は、A、F、C及びBと本件居室で同居をすることとなった。被告人は、Aが生活費として使用できるようにキャッシュカードを同人に渡すなどして同人らの生活費を負担していた。 2 本件ベビーサークルの作成等⑴ AがBを引き取った後、Bには、おむつを脱いで汚物を散らかしたり、陰部を床にこすりつけたりするなどの行動(以下「本件問題行動」という。)がみられるようになった。 Aは、本件問題行動を受けて、Bのベビーベッドの中板を外してベビーサークルに改造して、同ベビーサークルの周囲に段ボール等を貼ったり、ガムテープでBの手足等を縛ったりすることがあったが、本件問題行動が解消することはなかった。Bの養育について、富田林市の関係課が本件居宅を家庭訪問したり、Aと面談したりするなどしていたが、Aは、Bの本件問題行動を保健師に相談しなかった。 ⑵ 被告人とAは、5月15日頃、前記ベビーサークルの四方の側面にベニヤ板をねじで固定し、同ベビーサークルの内部にベビーベッド用の底板を立てかけて下部2か所をねじで固定する改造を加えるとともに、ベニヤ板2枚を蝶番でつないだ二つ折りの開閉式の蓋(以下「本件蓋」という。)を作成し、その半面の四隅をベビーサークルの天面にねじで固定した(本件ベビーサークル)。ベニヤ板を含む本件ベビーサークルの外寸は、幅125.5センチ いだ二つ折りの開閉式の蓋(以下「本件蓋」という。)を作成し、その半面の四隅をベビーサークルの天面にねじで固定した(本件ベビーサークル)。ベニヤ板を含む本件ベビーサークルの外寸は、幅125.5センチメートル、奥行82.5センチメートル、高さ91.5センチメートルであり、底板がない状態で、被告人、A及びCの寝室(以下「本件寝室」という。)のフローリング床上に置かれていた。 3 6月22日から同月23日の出来事被告人とAは、6月22日の夜に口論をし、Aは同日午後9時35分、被告人にLINEで「もう、無理別れよう」「今のとこ顔見て話したくないねん」などと送信 した。被告人は、同日、本件居室を出て、被告人の別宅(以下「ヒルズ」という。)に泊まり、翌23日夜も本件居室に立ち寄ることなくヒルズに泊まった。 4 被告人らの6月24日から同月26日の行動⑴ 6月24日Aは、Cを連れて、同日午後7時17分本件居室を出発し、被告人と合流し、ともに大阪市内のホテルに宿泊した。被告人は同日本件居室に立ち寄らなかった。 ⑵ 6月25日被告人は、A及びCとともに、同日午後0時13分、本件居室に立ち寄り、午後3時17分、再び本件居室を出発し、大阪府泉佐野市内のホテルに宿泊した。 被告人は、本件居室を出発する際に、Bが本件ベビーサークル内にいるのを見た。 ⑶ 6月26日被告人は、A及びCとともに、同日午後0時22分、本件居室に立ち寄り、午後4時56分、再び本件居室を出発し、大阪府泉佐野市内のホテルに宿泊した。 被告人は、本件居室を出発する際に、Bが本件ベビーサークル内にいるのを見た。 5 被告人らの6月27日から同月29日の行動等⑴ 6月27日A及びCは、同日午後0時14分、本件居室に戻った。 当時高校1年生であったFは、午後 が本件ベビーサークル内にいるのを見た。 5 被告人らの6月27日から同月29日の行動等⑴ 6月27日A及びCは、同日午後0時14分、本件居室に戻った。 当時高校1年生であったFは、午後5時10分頃、高校から帰宅し、午後5時48分頃、本件居室を出発し、アルバイト先に向かった。 被告人は、同日午後6時33分、本件居室に立ち寄り、午後8時3分、A及びCとともに、2泊3日の外泊のために再び本件居室を出発し、大阪市内のホテルに宿泊した。被告人は、本件居室を出発する際に、Bが本件ベビーサークル内にいるのを見た。Aは、このときDにBの世話を頼まなかった。 Fは、アルバイトを終えて、午後10時23分頃帰宅した。 ⑵ 6月28日Fは、午前7時48分頃、本件居室を出発し、高校に向かった。 被告人は、A及びCとともに、午前11時00分から午後5時52分まで、大阪市内のテーマパークで遊興し、大阪市内のホテルに宿泊した。 Fは、午後3時55分頃、高校から帰宅し、午後8時30分頃から午後9時50分頃まで塾に行った。 ⑶ 6月29日被告人は、A及びCとともに、午前10時49分から前記テーマパークで遊興した。 Fは、午前7時48分頃、本件居室を出発し、高校に向かった。Fは、午前8時44分頃、AにLINEで「今日暑いけどBいけるかな?」「一応扇風機と窓は開けてるけど」と送信したが、Aからの返信はなかった。 被告人は同日午前中、携帯電話で天気予報が表示されるウェブサイトにアクセスし、Aに「今日暑いで、B大丈夫かな」と述べた。 Fは、午後3時55分頃、高校から帰宅し、Bが本件ベビーサークル内で口から血を流してぐったりしているのを発見し、Aに電話で報告した。被告人、A及びCは、午後4時11分、前記テーマパークを出発し、午後5時2分頃、 時55分頃、高校から帰宅し、Bが本件ベビーサークル内で口から血を流してぐったりしているのを発見し、Aに電話で報告した。被告人、A及びCは、午後4時11分、前記テーマパークを出発し、午後5時2分頃、本件居室に到着した。被告人は、午後5時19分、119番通報をしたが、救急隊到着後、Bは死亡していることが確認された。 司法解剖の結果、Bの死因は熱中症であり、Bの左右手首には同じような部位、幅で左右対称に変色した圧痕があることが認められた。 同日の大阪市における最高気温は摂氏33.2度、堺市における最高気温は摂氏33.0度であった。また、本件ベビーサークル内の同日午後8時44分時点の気温は摂氏30.5度であった。 第3 逮捕監禁罪の成否 1 争点①Aは6月27日にBの両腕及び両足を粘着テープで緊縛したか⑴ F供述の内容及び信用性の検討ア Fは、この点について、要旨以下のように供述する。 6月28日、Fは、高校から帰宅した際に、Bが本件ベビーサークルにいるのを発見した。本件ベビーサークルの二つ折りの蓋は、半分に折りたたまれた状態で、半分が空いた状態だった。Bは、本件ベビーサークルの中で、床の上に直に仰向けに寝た姿勢でおり、手首の部分にガムテープが巻きつけられて、両腕が縛られており、Bの両足にも足首のあたりにガムテープが巻きつけられて、両足が縛られていた。FがAに電話で「ママ、Bに水とかご飯、あげといた方がいいかな」と尋ねると、Aは「いや、出るときにご飯あげたから、いいよ。水だけは絶対あげといて。」と答えた。Fは、コップに500ミリリットルくらいの水を入れ、ストローをさして、本件ベビーサークルの外から差し入れ、Bに水を飲ませた。その際に、Bの両腕のガムテープをいったん剥がしてから再度縛り直した。 Fは、6月29日午後4 ミリリットルくらいの水を入れ、ストローをさして、本件ベビーサークルの外から差し入れ、Bに水を飲ませた。その際に、Bの両腕のガムテープをいったん剥がしてから再度縛り直した。 Fは、6月29日午後4時頃、高校から帰宅した際に、Bが本件ベビーサークルの中で、両腕両足をガムテープで縛られた状態のまま、ぐったりとして横たわっており、口からは血のようなものを出しているのを発見した。Fは、Aに電話をかけ、その指示により、Bを風呂場に連れていって身体に水をかけたり、Bの両腕両足を縛っていたガムテープをはさみで切って捨てたりした。 イ Fの前記供述は、Aや自己に不利な内容を多く含んでおり、FがAの息子であり、その養育を受ける立場であったことからしても、あえてAや自己に不利になるような虚偽の供述をするとは考えにくい。 また、Fの前記供述は、6月30日に本件居室のごみ箱内から、濡れた状態の16片のガムテープ片(以下「本件ガムテープ片」という。)が発見され、そのうちの1片にはBのDNA型と矛盾しない人血や微物が付着していたこと、一部のガムテープ片には先端部をはさみで切ったと思料されるものがあったことに加え、前記のとおり、Bの左右手首に変色した圧痕が認められたとの司法解剖の結果とも整合する。 以上より、F供述は、あえて虚偽供述をするような動機も見当たらない上、重要な部分において客観的な証拠と整合するから信用できる。 ウこれに対し、弁護人は、F供述について、複数の点において初期供述からの変遷が認められるため信用できないと主張する。確かに、Fは、事件翌日の6月30日の警察官取調べでは、被告人らが出かけたのは6月29日の朝であること、Fが寝室をのぞくとBがベビーベッドの上で座っていたこと、Bに朝食としてスティックパンを2本食べさせたが水は飲ま 翌日の6月30日の警察官取調べでは、被告人らが出かけたのは6月29日の朝であること、Fが寝室をのぞくとBがベビーベッドの上で座っていたこと、Bに朝食としてスティックパンを2本食べさせたが水は飲ませていないことを供述しており、7月3日の警察官取調べでは、被告人らが出かけたのは本当は6月27日の夜であること、スティックパンなど食事は一度もあげていないこと、水を何度かあげたと思うが確実に覚えているのは6月28日の夜であることを供述し、その後に行われた検察官取調べでは前記⑴アのような供述に変遷している。Fはこのように供述が変遷した理由について、7月8日の検察官取調べにおいて、6月30日の取調べで嘘をついたり、本当のことを言わなかったりしたのは、尊敬している母を何とかかばいたかったからであるが、Bのことも大切なので本当のことを話すようにしたと述べている。 かかる説明は合理的であり、事件翌日の取調べでの供述内容が客観的証拠とも明らかに矛盾する内容であることからしても信用できる。弁護人は、Fが供述を変遷した理由について、自らが刑事処分や家庭裁判所での処分を受ける可能性に思い至り、虚偽の供述をした可能性を指摘するが、前記⑴アの供述はAのみならずFにとっても不利な内容を多く含んでいるから、弁護人の主張によっては、Fの供述変遷過程について合理的に説明できない。以上より、弁護人の反論を踏まえても、F供述の信用性は揺らがないというべきである。 ⑵ 争点①の検討前記のとおり信用できるF供述によれば、BはFに発見された6月28日には両腕及び両足を粘着テープで緊縛されていたと認めることができる。そして、 関係証拠上、6月30日に本件居室で発見されたガムテープ巻の先端部にAの指紋が検出されたことからすれば、最後に粘着テープを使用したのはAであった されていたと認めることができる。そして、 関係証拠上、6月30日に本件居室で発見されたガムテープ巻の先端部にAの指紋が検出されたことからすれば、最後に粘着テープを使用したのはAであったと推認できる。したがって、Aは、6月27日に本件居室を出発するまでの間に、Bの両腕及び両足を粘着テープで緊縛したと認められる。 これに対し、弁護人は、FがBのガムテープを剥がして縛り直したと供述するのに本件ガムテープ片からFの指紋が発見されていないこと、本件ガムテープ片から採取した繊維が当時Bが着用していた衣服の繊維と一致しないことから、本件ガムテープ片は相当以前にAがBを緊縛した際に使用したものであると主張する。しかしながら、本件ガムテープ片からは誰のものか照合できるほどの鮮明な指紋が検出されなかったにすぎず、Aの指紋すら検出されていないことからも、使用する際に指紋が鮮明に付かなかったり、使用するうちに擦れたりするなどして指紋が不鮮明になった可能性が高い。また、本件ガムテープ片の粘着面には多数箇所に無数の繊維ようのものが付着していたのだから、その内わずか4か所から採取した繊維ようのものが本件当時Bが着用していた衣服の繊維と一致しなかったからといって、前記判断は左右されない。 この点、被告人は、6月27日の夜に出発する際に、Bが本件ベビーサークル内に座っていたのを見たので、Bは緊縛されていなかったと思う旨供述する。 しかし、被告人の供述は、本件ベビーサークルの中を覗き込んだわけではなく、頭や首付近がちょっと見えたので、その様子からすると座っているのではないかと考えたというにすぎないから、本件ベビーサークルの四方が板張りになっていたことに鑑みると、被告人において、Bが当時どのような体勢でいたのか、ましてや縛られていたかどうかを正確に見ていたとは ないかと考えたというにすぎないから、本件ベビーサークルの四方が板張りになっていたことに鑑みると、被告人において、Bが当時どのような体勢でいたのか、ましてや縛られていたかどうかを正確に見ていたとはいい難い。したがって、同被告人供述によっても、前記判断は左右されない。 2 争点②本件逮捕監禁行為が違法であったか⑴ 前提(本件ベビーサークルの形状について)前記のとおり信用できるF供述によれば、判示のとおり、本件当時、本件ベビ ーサークルには本件蓋が付いた状態であったことが認められる。 この点に関し、被告人は、公判廷で、捜査段階の取調べでは、6月29日にFの連絡を受けて本件居室に戻った際に、「イメージが悪くなる」と考えて、ねじ止めしてあった本件蓋を外して子供部屋に隠した旨供述していたが、本当は設置した翌日くらいには本件蓋を取り外した旨供述し、その変遷の理由として、捜査段階では、警察官から本件当時蓋が付いていただろうと何度も言われたために記憶違いかと思って供述してしまったと供述する。しかしながら、いわば証拠隠滅のために本件ベビーサークルにねじ止めしてあった蓋を外したかどうかという重要な点につき、記憶違いによって虚偽の供述をするとは考え難い。また、被告人供述のとおりであれば、それなりの大きさがあり蝶番も付いた本件蓋を、幼いCも遊ぶであろう子供部屋にむき出しの状態で1か月以上放置していたことになり不自然である。したがって、被告人の公判供述は信用できない。 ⑵ 争点②の検討判示の各監禁行為は、それぞれ約17時間から約35時間までに及ぶ極めて長時間であった。本件ベビーサークルは、本件蓋によって少なくとも天面のほぼ半分を覆われている上、Bの身長よりも高いベニヤ板で四方を囲まれた1立方メートルにも満たない狭い空間であり、このような空 めて長時間であった。本件ベビーサークルは、本件蓋によって少なくとも天面のほぼ半分を覆われている上、Bの身長よりも高いベニヤ板で四方を囲まれた1立方メートルにも満たない狭い空間であり、このような空間に幼児を長時間閉じ込めることが社会常識に照らして許されないのはいうまでもない。さらに、Bの両手足をガムテープで縛る行為は、Bの行動の自由を著しく制限するものであり、同様に社会常識に照らして許されない。したがって、本件逮捕監禁行為は違法である。 弁護人は、Aが本件逮捕監禁行為をしたのはBの本件問題行動に対応するためであったこと、Aにおいて他の方法を思いつけなかったことなどからすれば、本件逮捕監禁行為の違法性は阻却されると主張する。しかし、Bの本件問題行動に対応する必要があったのだとしても、上記のような劣悪な空間に幼児を長期間閉じ込めることが社会常識に照らして正当化されるものではないことは明らかである。また、Aは、富田林市の関係課等から接触されており、本件問題行動につい て相談する機会があったにもかかわらず、このことを保健師に相談していなかった上、保健師から紹介された児童発達支援事業所への通所を自ら断るなどしており、本件問題行動への対応として逮捕監禁以外の方法を真摯に検討した形跡は認められない。以上より、弁護人の主張を踏まえても、本件逮捕監禁行為は違法である。 3 争点③被告人に逮捕監禁罪の共同正犯が成立するか⑴ 共同正犯が成立するかを検討する前提として、被告人においてAがBを逮捕監禁したことを認識していたかどうかを検討する。 被告人は、6月25日、26日及び27日、本件居室を出発する際、Bが本件ベビーサークル内にいることを目視しており、判示第1の2ないし4の監禁行為を認識していたことは明らかである。 他方で、被告人 被告人は、6月25日、26日及び27日、本件居室を出発する際、Bが本件ベビーサークル内にいることを目視しており、判示第1の2ないし4の監禁行為を認識していたことは明らかである。 他方で、被告人は、6月24日には、本件居室に立ち寄っていないため、Bが本件ベビーサークル内にいることを目視していない。しかしながら、生前のBの写真や関係者のLINEでのやり取り等の関係証拠によれば、Bは頻繁に本件ベビーサークル内に入れられていたことが窺われる上、Aは、Bの本件問題行動に対応するために、本件ベビーサークルを改造した上、Bから目を離すときには、本件ベビーサークルにBを入れていたと公判廷で供述しており、被告人もこれと同旨の供述をしている。そうすると、被告人において、同日夜、Aが外泊してBから目を離す際に、Bが本件ベビーサークルに入れられることは十分認識していたと認められる。 また、被告人は、6月27日、Bが緊縛されているとは思わなかったと供述する。しかし、前記1⑵で検討したところに加え、本件以前に、Aが被告人に、外出するのでBを縛り直すという趣旨のLINEメッセージを送信していたこと、被告人自身、AがBの本件問題行動に対応するために、Bをガムテープで縛るようになったという経過を知っていたこと、公判でも、24時間Bの側にいることができない以上、ガムテープを使わざるを得なかったという趣旨の供述をしてい ることからすれば、被告人は、Aが外泊するなどBから長時間目を離す際には、Bの本件問題行動に対応するために、Bを緊縛するであろうことは当然認識していたというべきである。 したがって、被告人は、AがBを判示第1のとおり逮捕監禁することを認識していたと認められる。 ⑵ 被告人が、逮捕監禁行為についてAと互いに意思を通じ合わせ、自己の犯罪とし いたというべきである。 したがって、被告人は、AがBを判示第1のとおり逮捕監禁することを認識していたと認められる。 ⑵ 被告人が、逮捕監禁行為についてAと互いに意思を通じ合わせ、自己の犯罪として行ったと評価できるかを検討する。 まず、前記⑴で認定した事実関係に照らせば、被告人とAは、Bから長時間目を離すときは、Bを緊縛し本件ベビーサークルに入れるということを互いに認識しあっていたというべきであるから、Bを逮捕監禁するという意思を通じ合わせていたと認められる。 次に、被告人は、監禁行為に使用された本件ベビーサークルをAと一緒に作成した上、Aが、Bを緊縛して、本件ベビーサークルにBを放置するという逮捕監禁行為をすることを黙認している。また、被告人は、後記第4の1のとおり、未だBの保護責任者であったにもかかわらず、Bを緊縛して本件ベビーサークルに監禁することで、Bの本件問題行動に煩わされることなく、AやCとともに外泊し、遊興するという利益を受けている。これらのことからすれば、被告人は、逮捕監禁行為について、自己の犯罪として行ったと評価することができる。 4 結論以上より、被告人には判示第1のとおり逮捕監禁罪の共同正犯が成立する。 第4 保護責任者遺棄致死罪の成否 1 争点④被告人に保護責任者性が認められるか⑴ 被告人が、平成26年頃からAやその子らと本件居室で同居を開始し、同人らの生活費を負担するなどいわば一家の大黒柱としての役割を担っていたこと、平成28年7月にはAとの間にCをもうけ、平成29年3月には前妻と離婚し、平成30年2月にはCを自らの子として認知したことからすれば、遅くとも令和 2年1月までには、被告人とAを養育者、F及びCを被養育者とする家族同様の関係ができあがっていたと評価できる。そして、被告人は、 はCを自らの子として認知したことからすれば、遅くとも令和 2年1月までには、被告人とAを養育者、F及びCを被養育者とする家族同様の関係ができあがっていたと評価できる。そして、被告人は、令和2年1月に、AがBを引き取って、本件居室で同居することを容認しその後約2年半にわたってBと本件居室で同居し、時にはBの世話をすることもあったというのだから、Bも前記の家族同様の関係に被養育者として加わったものというべきである。そうすると、被告人はBとの関係に照らして、Bの生命、身体の安全を左右する立場にあったといえ、Bの保護責任者であったと認めるのが相当である。 ⑵ これに対し、被告人及びAは、6月22日に口論となり、被告人がAに対して本件居室の鍵を返却したこと、Aが被告人に対してヒルズの鍵、被告人の会社名義の自動車の鍵及び被告人名義のキャッシュカードを返したことなどを供述し、これを受け、弁護人は、被告人とAとの間の内縁関係や同居関係は6月22日に解消され、被告人の法律上の保護責任者性が消滅したと主張する。 しかしながら、被告人は、6月22日と23日は1人でヒルズに泊まったものの、同月24日以降はAとCと一緒にホテルで連泊していた上、同月25日から同月27日には毎日本件居室に立ち寄り、本件寝室で仮眠をしたり、自分の洗濯物を家族全員の洗濯物とまとめてAに洗ってもらったりするなど家族同様の行動をしていたことに加え、被告人は衣服等の荷物を本件居室内に置いており、前記テーマパークで遊興するための衣服に本件居室で着替え、外泊のための荷物を詰めたことなどからすれば、本件居室を生活の拠点とする家族としての実態はいまだ失われていなかったものというべきである。 また、Aは本件当時も被告人名義の車両や携帯電話を継続して使用しており、その帰属は決まってい らすれば、本件居室を生活の拠点とする家族としての実態はいまだ失われていなかったものというべきである。 また、Aは本件当時も被告人名義の車両や携帯電話を継続して使用しており、その帰属は決まっていなかった上、Cの養育費の支払や離婚時の財産分与に類するような預金等の分配も決まっておらず、内縁関係解消のための具体的な話し合いは未だなされていない状況だったといわざるを得ない。 以上からすると、将来的に被告人とAの内縁関係や同居関係が解消する可能性があったと評価できるとしても、本件事件当時においては、いまだこれらが完全 に解消されてはいなかったと認められる。 したがって、その余の弁護人の反論を踏まえても、前記のとおり、被告人は本件当時Bの保護責任者であったと認めるべきである。 2 争点⑤A及び被告人がBを遺棄し、Bの生存に必要な保護をしなかったといえるか⑴ F供述の内容及び信用性の検討Fは、6月27日夕方、Aと顔を合わせた際に、「ちょっと出かけてくるから」と言われただけで、どこに出かけるのかや、何日間出かけるのかについては何も言われず、Bを置いていくことも説明されなかったと供述する。 Fには、前記のとおり、あえて虚偽供述をするような動機は見当たらない。また、6月27日から29日までのAとFとのLINEメッセージには、Fの食事に関するやり取りはある一方で、Bの世話に関するやり取りは認められず、AにおいてBの食事を気にしているようなやり取りも認められない。F供述は、このような客観的なLINEメッセージの内容とも整合する。 よって、F供述は信用することができる。 ⑵ 争点⑤の検討本件では、A及び被告人が、6月27日にBが本件ベビーサークル内にいる状態で本件居室を出発したことや、その頃から同月29日までの間に、自ら同人に 供述は信用することができる。 ⑵ 争点⑤の検討本件では、A及び被告人が、6月27日にBが本件ベビーサークル内にいる状態で本件居室を出発したことや、その頃から同月29日までの間に、自ら同人に水分や食事を与えることも同ベビーサークル内の気温を管理することもしていなかったことは、関係証拠上明らかである。 そして、Aは、Bの世話をしてもらったこともあるDに対し、不在中のBの世話を頼んでいない上、前記のとおり信用できるF供述によれば、Fに対し、何日間家を空けるかや、Bが家に置き去りにされていることについて何ら説明せずに2泊3日の旅行に出かけたと認められるから、Bの生存に必要な保護について十分な指示をしたとはいえない。この点につき、Aは、Fに対し、27日の夜に、今後の予定や、FとBのために購入した食材について説明したと供述するが、F 供述に鑑みると、少なくともFに伝わるように十分な説明をしていなかったというべきである。また、Aの供述を前提としても、Fは当時高校1年生であり、日中は学校、夜はアルバイトや塾で本件居宅を不在にする時間が多かったのだから、Bの食事や温度管理を含めた世話について、十分に手当されていたとはいえない。 以上より、A及び被告人がBを遺棄し、Bの生存に必要な保護をしなかったと認めることができる。 3 争点⑥被告人に保護責任者遺棄致死罪の共同正犯が成立するか⑴ 弁護人は、被告人は、AがFやDにBの世話を頼んでいたと思っていたので、本件遺棄不保護行為を認識していなかったと主張する。そこで、共同正犯が成立するかを検討する前提として、Bが遺棄され、生存に必要な保護をされていなかったことを、被告人において認識していたかどうかを検討する。 この点、被告人は、Fが高校生であり日中不在になることを認識していたのだから、F 前提として、Bが遺棄され、生存に必要な保護をされていなかったことを、被告人において認識していたかどうかを検討する。 この点、被告人は、Fが高校生であり日中不在になることを認識していたのだから、Fに世話を頼んでいたと思っていたとしても、Bの生存に必要な保護をするには不十分であり、Aの遺棄不保護行為を認識していなかったとはいえない。 また、被告人は、AがDにBの世話を頼む場面を見たり聞いたりしていない上、Fが不在だった27日の出発前、Dが本件居室に来ていないことを認識していた。 さらに、被告人は、Aが、本件より前の6月20日から21日にかけて、日中はFが不在の平日であるにもかかわらず、FとBのみを本件居室に残したまま、DとCとともに一泊二日の旅行に行ったことを知っていたのだから、AがDにBの世話を頼むなどのFの不在時の手当てをしないことが十分あり得ることも理解していたというべきである。被告人が29日の朝、Aに、Bの温度管理を心配する発言をしていたことも、BがFの不在時にその生存に必要な保護がされていない可能性があることを認識していたことを裏付けるものといえる。 したがって、被告人は、AがBを遺棄し、Bの生存に必要な保護をしていない可能性があることを認識しながら、それを容認していたというべきである。 ⑵ 上記認定を基に検討すると、被告人とAは、互いにBを遺棄し不保護状態に することを認識しあっており、保護責任者遺棄の意思を通じ合い、ともに判示第2の遺棄不保護行為をしたといえる。 4 結論以上より、その余の弁護人の反論を踏まえても、被告人には判示第2のとおり保護責任者遺棄致死罪の共同正犯が成立する。 (法令の適用)省略(量刑の理由)被告人らは、わずか2歳11か月のBを本件ベビーサークル内に長時間閉じ込めて外泊する 人には判示第2のとおり保護責任者遺棄致死罪の共同正犯が成立する。 (法令の適用)省略(量刑の理由)被告人らは、わずか2歳11か月のBを本件ベビーサークル内に長時間閉じ込めて外泊するという行為を繰り返した上、Bの両腕両足を緊縛して約35時間にもわたって閉じ込めて置き去りにし、十分な水分や食事を与えることも適切な温度管理をすることもせずに放置した。本件ベビーサークルは、Bの身長よりも高いベニヤ板で四方を囲まれ、上部に蓋が取り付けられた1立方メートルにも満たない狭い空間であり、Bの視界の大部分を奪うとともに、熱がこもりやすく風通しの悪い劣悪な環境であった。また、両腕両足を緊縛されていたときには、身動きすら難しかったと考えられる。これらのことからすれば、逮捕監禁行為が悪質であるのはもとより、遺棄不保護行為は、Bを衰弱させ、熱中症によって死亡させる危険性の高い行為であった。 Bはわずか2歳11か月でその尊い命を奪われており、結果が重大であることはいうまでもない。さらに、Bはこのような劣悪な状況に一人取り残され、十分な水分や食事をもらえずに衰弱しながら死に至っており、その過程で味わったであろう苦痛は察するに余りある。 Bの遺体を司法解剖した医師の供述によれば、本件の約2か月前の時点で、Bの身長体重はともに標準の下位数パーセントであり、Bは栄養不良状態にあったと認められる(なお、同医師は法医学を専門とする医師であって、多数の司法解剖を行った経験がある上、その証言内容は専門的知識や経験に裏付けられた具体的かつ説 得的なものであるから信用できる。)。これに加え、前記のとおり信用できるF供述によれば、6月28日、Aは、Fに対し、Bには前日に食事を与えたから食事を与える必要はない旨述べているほか、関係証拠によれば、本件以前に るから信用できる。)。これに加え、前記のとおり信用できるF供述によれば、6月28日、Aは、Fに対し、Bには前日に食事を与えたから食事を与える必要はない旨述べているほか、関係証拠によれば、本件以前にも、Bの食事について「今日の朝あげたからいいよ」などと食事は1日に1回でよいとの趣旨の発言をしていたことからも、Bは日頃から十分な食事を与えられていなかったものとうかがわれる。また、Bは本件以前から、少なくともAらが長時間目を離す際には緊縛されて本件ベビーサークルに閉じ込められていた上、本件ベビーサークル内では、寝具すらも与えられず、床に直接寝かせられていた。その上、Bは、保育園を退園させられ、被告人ら以外の他人と触れ合う機会も十分に与えられず、その健全な発達に必要な環境を奪われていた。これらのことからすれば、本件は、弁護人の主張するような介護疲れ類似の事案ではなく、日常的な虐待行為の末の犯行であったというべきである。 確かに、被告人らがBを本件ベビーサークルに入れ始めた理由には、Bの本件問題行動に悩み、これを防ぎたいという思いがあったことは否定できないものの、日頃からBの世話を十分に行うことなく、本件ベビーサークルにBを入れて外泊することが常態化する中で、Bに煩わされることなく、Cとともにテーマパーク等で遊興する時間を楽しみたいという身勝手な目的で本件犯行に及んでいるのであるから、その動機や経緯に酌むべき事情は乏しい。 被告人は、自らもBの保護責任者としての地位にありながら、Aと共に、Bを閉じ込めるために本件ベビーサークルを作成して前記のような劣悪な環境を構築した上、本件当時も、その内部にBが閉じ込められていることを認識しながら置き去りにするなどし、かつAの逮捕監禁行為を黙認しており、その果たした役割や関与の程度は小さいとはいえない な劣悪な環境を構築した上、本件当時も、その内部にBが閉じ込められていることを認識しながら置き去りにするなどし、かつAの逮捕監禁行為を黙認しており、その果たした役割や関与の程度は小さいとはいえない。一方で、本件を主導的に行ったのはAであり、被告人はAと行動をともにしたにすぎない面もある。また、Bが引き取られた経緯や被告人の育児への関わりの程度に加え、6月22日におけるAとの口論等の状況に照らせば、被告人において、Bの保護責任者であるとの認識の程度が、Aと比較して低 減していたことにやむを得ない面があることも否定できない。 以上の犯情等に照らすと、本件は、動機が児童虐待である保護責任者遺棄致死の同種事案の中では、中程度の部類に位置付けるのが相当である。 その上で、被告人が本件後直ちに119番通報をしなかったこと、被告人が役員を務めていた会社が倒産するなど一定の社会的制裁を受けたことなどの犯情以外の事情を考慮して、その刑事責任に見合う量刑として、主文の刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑・懲役7年)令和5年12月20日大阪地方裁判所堺支部第1刑事部 裁判長裁判官藤原美弥子 裁判官河本薫 裁判官吉田怜未
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