平成12(行ウ)358 住民票消除処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成13年12月17日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文19,597 文字)

主文 1 被告世田谷区長が原告P1、同P2、同P3、同P4及びP5に対して平成12年12月22日までにした各住民票消除処分をいずれも取り消す。 2 被告世田谷区は、原告らに対し、それぞれ金50万円及びこれに対する平成12年12月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らの被告世田谷区に対するその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は被告らの負担とする。 5 この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。ただし、被告世田谷区が各原告につき金30万円の担保を供するときは、当該原告の仮執行を免れることができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1項同旨 2 被告世田谷区は、原告らに対し、それぞれ金100万円及びこれに対する平成12年12月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は被告区の負担とする。 4 第2項につき仮執行宣言第2 事案の概要本件は、宗教団体アレフ(旧オウム真理教、以下「アレフ」という。)の信者であり、いずれも平成12年12月19日に被告世田谷区長(以下「被告区長」という。)に転入届を提出した原告らが、同月22日までに被告区長が原告らに対してした各住民票消除処分(以下「本件各処分」という。)につき、同処分は、住民基本台帳法(以下「法」という。)に反し、また、原告らの基本的人権を不当に制限する違法かつ違憲な処分であるとして、原告らのうち、原告P1、P2、同P3、同P4及び同P5の5名(以下、「原告ら5名」というときは、原告らのうち原告のP6を除く前記5名を指す。)に対する各住民票消除処分の取消しを求めるとともに、原告らが本件各処分によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料として各100万円及びこれに対する不法行為日以降の民法所定の割合による遅延損害金 を指す。)に対する各住民票消除処分の取消しを求めるとともに、原告らが本件各処分によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料として各100万円及びこれに対する不法行為日以降の民法所定の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。なお、原告P6は、平成13年12月6日、同人による訴えのうち、同人に対する住民票消除処分取消請求にかかる部分を取り下げた。 1 判断の前提となる事実(証拠を掲記しない事実は、当事者間に争いがないか当裁判所に顕箸な事実である。)(1) 当事者原告らは、いずれもアレフの信者であり、平成12年12月19日に被告世田谷区(以下「被告区」という。)内である各肩書地にそれぞれ居を定め、居住開始時において成年に達し、選挙権を有していた。(居住の事実につき甲24及び甲36の1ないし6、年令につき甲32の1ないし6)(2) 法規の定め法は、「市町村(特別区を含む。以下同じ。)において、住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録その他住民に関する事務の処理の基礎とするとともに住民の住所に関する届出等の簡素化を図り、あわせて住民に関する記録の適正な管理を図るため、住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を定め、もって住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的」とし(法1条)、市町村長に対し、「常に、住民基本台帳を整備し、住民に関する正確な記録が行われるように努めるとともに、住民に関する記録の管理が適正に行われるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」(法3条)との一般的な義務を課している。 具体的には、「市町村は、住民基本台帳を備え、その住民につき7条に規定する事項を記録するもの」とされ(法5条)、「市町村長は、個人を単位とする住民票を世帯ごとに編成して、住民基本台 を課している。 具体的には、「市町村は、住民基本台帳を備え、その住民につき7条に規定する事項を記録するもの」とされ(法5条)、「市町村長は、個人を単位とする住民票を世帯ごとに編成して、住民基本台帳を作成しなければならない。」(法6条)とされる。 そして、「住民票の記載、消除又は記載の修正は」、「政令で定めるところにより、この法律の規定による届出に基づき、又は職権で行うもの」とされ(法8条)、法施行令は、住民票の記載について、「市町村長は、新たに市町村長の区域内に住所を定めた者その他新たにその市町村長の住民基本台帳に記録されるべき者があるときは、(中略)、その者の住民票を作成しなければならない。」(法施行令7条)と、また、住民票の消除について、「市町村長は、その市町村の住民基本台帳に記録されている者が転出し、又は死亡したときその他その者についてその市町村の住民基本台帳の記録から除くべき事由が存在したときは、その者の住民票(中略)を削除しなければならない。」(法施行令8条)とそれぞれ定めている。 法は、記載、消除又は記載の修正の手続について、「市町村長は、法の規定による届出があったときは、当該届出の内容が事実であるかどうかを審査して、第7条から前条までの規定による住民票の記載、消除又は記載の修正を行わなければならない。」とし(法施行令11条)、また、「市町村長は、法の規定による届出に基づき住民票の記載等をすべき場合において、当該届出がないことを知ったときは、当該記載等をすべき事実を確認して職権で、第7条から第10条までの規定による住民票の記載等をしなければならない。」(法施行令12条)と定め、具体的な消除の手続として、「市町村長は、住民票を消除する場合には、その事由(中略)及びその事由の生じた年月日(中略)を住民票に記載しなければな 載等をしなければならない。」(法施行令12条)と定め、具体的な消除の手続として、「市町村長は、住民票を消除する場合には、その事由(中略)及びその事由の生じた年月日(中略)を住民票に記載しなければならない」(法施行令13条)としている。 また、法は、転入届の提出について、転入(中略)をした者は、転入をした日から14日以内に、次に掲げる事項を市町村長に届けなければならない(各号省略)とし(法22条)、届出をする者(中略)は、住所の異動に関する文書で政令に定めるもの(転出証明書、法施行令23条)を添えて、同項の届出をしなければならないとしている。 (3) 転入届の提出等ア原告P1は、平成12年12月19日午後0時20分ころ、世田谷区烏山総合支所区民部区民課上北沢出張所を訪れ、住所を「世田谷区βM101」として被告区長に転入届を提出した。その際、原告P1は、被告区長に対し、住民票写し1通の交付申請を行い、同写し1通の交付を受け、また、同時に国民健康保険被保険者証の交付を受けた。 イ原告P6は、同日同時劾ころ、世田谷区北沢総合支所区民部区民課北沢出張所を訪れ、住所を「世田谷区βM202」として被告区長に転入届を提出した。その際、原告P6は、被告区長に対し住民票写し1通の交付申請を行い、同写し1通の交付を受け、また、同時に国民健康保険被保険者証の交付を受けた。 ウ原告P2は、同日同時刻ころ、世田谷区砧総合支所区民部区民課砧出張所を訪れ、住所を「世田谷区βM301」として被告区長に対し転入届を提出した。その際、原告P2は、印鑑登録申請を行い、被告区長から印鑑登録証の交付を受け、また、同時に国民健康保険被保険者証の交付を受けた。 エ原告P3は、同日同時刻ころ、世田谷区世田谷総合支所区民部区民課経堂出張所を訪れ、住所を「世田谷区βM303」とし から印鑑登録証の交付を受け、また、同時に国民健康保険被保険者証の交付を受けた。 エ原告P3は、同日同時刻ころ、世田谷区世田谷総合支所区民部区民課経堂出張所を訪れ、住所を「世田谷区βM303」として被告区長に転入届を提出した。その際、原告P3は、被告区長に対し住民票写し1通の交付申請を行い、同写し1通の交付を受けた。また、被告区長は、同日、国民健康保険被保険者証を原告P3に郵送し、原告P3は、翌20日に同証を受領した。 オ原告P4は、同日同時刻ころ、世田谷区砧総合支所区民部区民課祖師谷出張所を訪れ、住所を「世田谷区βM303」として被告区長に転入届を提出した。 被告区長は、同日、国民健康保険被保険者証を原告P4に郵送し、原告P4は、翌20日に同証を受領した。 カ原告P5は、同日同時刻ころ、世田谷区世田谷総合支所区民部区民課若林出張所を訪れ、住所を「世田谷区βN―102号」として被告区長に転入届を提出した。その際、原告P5は、国民健康保険被保険者証の交付を受けた。 キ他にも、原告らと同様いずれもアレフの信者であるP7、P8、P9、P10、P11、P12、P13が、同日、同時刻ころに、世田谷区各支所の区民部区民課の出張所において、住所を世田谷区βM101、202、301又は303、若しくは、世田谷区βN―101号、103号又は205号を住所として転入届を提出した。 (4) 住民票の作成原告ら6名及び前記(3)キ記載の7名の計13名(以下「原告ら他13名」を指す。)の住民票は、同人らの各転入届に基づき、同日それぞれ作成された。 (5) 住民票の破棄及びその通知(乙1)ア本件で転入地とされた世田谷区βM及びβN所在のΑ(以下、あわせて「本件両マンション」という。)は、道路を挟んで向かいに建てられた同1家主の所有にかかる建物であるところ、 棄及びその通知(乙1)ア本件で転入地とされた世田谷区βM及びβN所在のΑ(以下、あわせて「本件両マンション」という。)は、道路を挟んで向かいに建てられた同1家主の所有にかかる建物であるところ、被告区長は、平成12年12月19日に、本件両マンションヘの転入届が相次いだことから、平成12年12月19日午後3時45分ころ、本件両マンションの現地調査及び家主からの事情聴取を行うため居住実態調査を行った。 そして、調査の結果、原告らほか13名がアレフの信者であること、家主がアレフに対して2DKの部屋8室を賃貸したこと、今後も教団との賃貸契約を増やす意向であることが判明したため、本件両マンションが教団施設となる蓋然性が高いと判断し、同月21日に、助役をはじめとする幹部職員による緊急会議を開催して、被告区長を本部長とする「世田谷区オウム真理教(現アレフ)対策本部」を設置した。同対策本部においては、平成11年9月9日に策定した「オウム真理教信者からの転入届は拒否すること」を内容とする「オウム真理教に対する基本方針」(乙4)を改めて確認した上で、被告区長が平成12年12月21日、原告らの住民票の調製・記載を無効のものとして取り扱うこととして、住民票を破棄した上、被告区の住民基本台帳の記録から抹消するとともに、本件転入届を不受理と扱うこととし、既に発行された住民票の写し等は回収することとした。 イ上記決定を受け、世田谷区世田谷総合支所のP15区民部長らは、翌22日、原告らの各住所地を訪れ、原告ら各人に宛てた本件転入届を不受理としたこと及び既に交付した住民票写し、印鑑登録証明書、国民健康保険被保険者証は無効であるので返還を求める旨を記載した文書(乙5)を手渡そうとした。 (ア) P15」区民部長がM101(原告P1及び訴外P7の住所地)を訪ねた際、 票写し、印鑑登録証明書、国民健康保険被保険者証は無効であるので返還を求める旨を記載した文書(乙5)を手渡そうとした。 (ア) P15」区民部長がM101(原告P1及び訴外P7の住所地)を訪ねた際、原告P1らは不在であった。同日午後5時前、原告P1が世田谷区烏山総合支所区民部区民課上北沢出張所を訪れ、住民票写し1通の交付を請求したため、その際、区の職員が、同人に対し、住民票を不受理とした旨告げ、国民健康保険被保険者証と、既に交付した住民票の写しを返還するように求めた。同月25日、原告P1が区職員の指示により区のP14地域問題調整課長に架電した際にも、世田谷区総合支所地域行政担当部地域窓口調整担当課長が、原告P1に対し、本件転入届を不受理として扱った旨を告げ、同日、原告P1に対し、本件転入届を不受理とする旨を記載した文書を書留郵便により郵送した。(甲36の1、乙6)(イ) P15区民部長がM202(原告P6及び訴外P8の住所地)を訪ねた際には、訴外P8がこれに対応した。同人に対し、同人及び原告P6の本件転入届を不受理としたこと及び既に交付した住民票の写し及び国民健康保険被保険者証は無効であるので返還を求める旨を口頭で伝え、その旨を記載した文書を交付しようとしたが、訴外P8は、同文書の受領を拒否した。そこで同月25日、原告P6に対し、本件転入届を不受理とする旨を記載した文書を書留郵便により郵送した。(甲36の2、乙6)(ウ) P15区民部長がM301(原告P2及び訴外P9の住所地)を訪ねた際、原告P2らは不在であった。同月25日、地域窓口調整担当課長は、原告P2が被告区役所に架電してきた際、同人に対し、本件転入届を不受理としたことを告げた上、同日、同人に対し本件転入届を不受理とする旨を記載した文書を書留郵便により郵送した。(甲36の3、乙 長は、原告P2が被告区役所に架電してきた際、同人に対し、本件転入届を不受理としたことを告げた上、同日、同人に対し本件転入届を不受理とする旨を記載した文書を書留郵便により郵送した。(甲36の3、乙6)(エ) P15区民部長がM303(原告P3、原告P4及び訴外P10の住所地)を訪ねた際、原告P3が対応したため、同人に対し、前記3名の本件転入届を不受理としたこと及び既に交付した国民健康保険被保険者証は無効であるので返還を求める旨を口頭で述べた上で、その旨を記載した文書を交付しようとしたが、同人は同文書の受領を拒否した。そこで、同月25日、同人に対し、本件転入届を不受理とする旨を記載した文書を書留郵便により郵送した。(甲36の4、5、乙6)(オ) P15区民部長がΑ102号(原告P5の住所地)を訪ねた際、原告P5は不在であったため、地域窓口調整担当課長は、同月25日、原告P5が被告区役所に架電してきた際、同人に対し、本件転入届を不受理としたことを告げた上、同日、同人に対し本件転入届を不受理とする旨を記載した文書を書留郵便により郵送した。(甲36の6、乙6) 2 争点原告ら5名の住民票消除処分取消請求に対し、被告区長は、原告らの転入届はそもそも受理がされていないものであり、受理を前提とした消除処分は存在しない旨主張し、本件訴えの却下を求めるとともに、仮に消除処分が存在するとしても、同処分は適法である旨を主張して、原告ら5名の請求を棄却することを求める。また、被告区は、原告らの国家賠償請求に対し、消除処分が適法である以上、損害賠償義務を負わない旨主張し、これを争う。 したがって、本件の争点は、①消除処分の存否、②消除処分が存在した場合の同処分の適法性、③原告らの損害賠償請求権の存否である。 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点①( 旨主張し、これを争う。 したがって、本件の争点は、①消除処分の存否、②消除処分が存在した場合の同処分の適法性、③原告らの損害賠償請求権の存否である。 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点①(消除処分の存否)ア被告区長被告区長は、前記1(4)のとおり、原告らが平成12年12月19日にした転入届に基づいて、いったん原告らほか13名の住民票を調製・記載したが、その後の調査により、原告らほか13名がいずれもアレフの信者であり、転入先である本件両マンションがアレフの教団施設となる蓋然性が高いと判断したことから、同月21日に前記1(5)のとおり、原告らの本件転入届を不受理とすることを決定し、各原告に対して当該転居届を不受理とする旨を通知したものである。 したがって、被告区長の措置は、原告らがした各転入届に対する不受理とそれに関連した事実上の住民票破棄等の行為であって、法8条、法施行令8条の規定に基づく住民票の消除処分は存しない。 イ原告ら被告区長は、原告らの転入届に基づき、住民票を調製・記載し、原告らに対し、住民票写しや国民健康保険被保険者証等を交付しているのであるから、平成12年12月19日の段階で、原告らの住民票がいったん作成されたことは明らかであり、そもそも転居届を不受理としたとの主張は失当である。そして、いったん作成された住民票を破棄し、住民基本台帳の記録から抹消する措置は、法8条、法施行令8条の消除処分にほかならない。 (2) 争点②(本件各消除処分の適法性)ア被告区長(ア) 転入届に対する被告区長の実質的審査権地方自治法は、地方公共団体が住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとし(地方自治法1条の2第1項)、その役割の中には、平成11年法律第87号 法は、地方公共団体が住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとし(地方自治法1条の2第1項)、その役割の中には、平成11年法律第87号による改正前の堀方自治法2条3項1号に例示されていたように、地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持することも当然含まれる。地域の秩序維持や治安確保を行い、犯罪による危険から住民の生命・身体・財産の安全といった基本的人権を守ることこそが、国家・地方公共団体にまず求められる基本的な責務であり、被告区長においても、被告区を代表し、その事務を管理・執行する立場にあることからすれば、被告区民の生命・身体・財産の安全等の基本的人権を保持すべき義務を負っているところである。 そして、住民基本台帳が住民の居住関係の公証と選挙人名簿の登録と同時に、住民に関する各種行政事務処理の基礎としても用いられるものであり、住民登録及び住民基本台帳は、単に形式的に住所の登録と公証だけでなく、実質的に当該地方公共団体の住民として、各種の行政サービスを受けるべき立場を付与する事実上の効果を有するものであって、転入届を受理して住民票を調製して住民基本台帳に記録したものについて、当該地方公共団体の住民として受け入れることを意味するものであることにかんがみれば、法は、単に正確な記録の保持といった、形式的・表面的な要請のみならず、公共の福祉や地方自治の本旨の観点から、実質的に解釈適用がされるべきである。 このことからすると、被告区長は、法に基づく転入届に対しては、単に届出内容が事実に合致しているか否か等の形式的要件を具備しているかを審査する形式的審査権のみならず、実質的審査権をも有するのであって、当該住民が地域の秩序を破壊し、住民の生命や身体の安全を害する に届出内容が事実に合致しているか否か等の形式的要件を具備しているかを審査する形式的審査権のみならず、実質的審査権をも有するのであって、当該住民が地域の秩序を破壊し、住民の生命や身体の安全を害するような危険性が高度に認められるか否かについても必要な審査判断を行うことができるものと解すべきである。 (イ) 本件各処分の適法性a 教団の危険牲原告らは、いずれもアレフの構成員であるところ、アレフは、平成12年1月31日付け公安審査委員会決定のとおり、P16ことP17を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め、これを実現することを目的とし、同人が主宰し、同人及び同教義に徒う者によって構成される団体である。すなわち、アレフは、過去において松本サリン事件、地下鉄サリン事件をはじめとする無差別大量殺人事件を引き起こしたオウム真理教とその実質を同じくする団体なのである。 そして、オウム真理教の引き起こした前記事件は、世界の犯罪史上類のない無差別大量殺人行為が団体の活動として行われたものであり、いったん発生すれば、多数の生命身体に極めて甚大な被害をもたらすものであって、平穏な市民生活にとって重大な脅威となる上、事前防止が困難で反復性が強いという特性を有するものであり、同様の凶悪犯罪が再発すれば、取り返しのつかない事態が生じるところであるが、上記のとおりアレフはオウム真理教とその実質を同じくする団体であり、信者らは閉鎖的な集団生活を行っている上、現在においてもP17が教団の活動に強い影響力を有していることにかんがみれば、教団が現時点においても団体として無差別大量殺人行為に及ぶ可能性を否定することは到底できないものといわなければならない。現在、アレフが無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律の規定に基づく観察処分に付されていることも、アレフ 差別大量殺人行為に及ぶ可能性を否定することは到底できないものといわなければならない。現在、アレフが無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律の規定に基づく観察処分に付されていることも、アレフの危険性を基礎付けるものといえる。 b 処分の適法性法の本来の趣旨からすれば、客観的居住の事実と当人の主観的な意思に基づいて、その住所に住民登録をすべきことは明らかである。 しかし、公共の福祉の観点から地方公共団体の一員として受け入れ難い者あるいは団体の構成員についてまで当然に住民登録をしなければならないとするのは背理である。とりわけ、公共の福祉にとって計り知れない悪影響や不安を及ぼす教団の構成員が集団的に転入してくる事態に対して、これを受け入れ、住民登録せざるを得ないとすることは、それらの者の定住化を容認することを意味し、その後のさらなる大量転入や同地の拠点化を促進することとなり、これが公共の福祉に反する結果となることは明らかである。しかも、他に教団の大量転入を阻止する有効な手だてが整備されていない現状においては、被告区長が住民登録を拒否することは教団構成員の集団転入と拠点化を防ぐ唯一の手段であって、住民の安全と安寧秩序を守るべき責務を負う地方公共団体の唯一なし得る手だてなのである。 したがって、被告区長がした本件消除処分には違法性はなく、処分は当然に適法である。 また、前記のアレフの危険性を前提に考慮すれば、原告らが通常の方法で転入届を行い、原告らが教団信者であること、アレフの構成員が両マンションヘ集団転入していること、転入先であるα1階が教団の道場とされ、当地が教団の拠点となっていること等を被告区長が事前に把握していたならば、被告区長は、転入届を直ちに受理することなく、上記の各事実について調査・検討し、その上で受理の当否を決め が教団の道場とされ、当地が教団の拠点となっていること等を被告区長が事前に把握していたならば、被告区長は、転入届を直ちに受理することなく、上記の各事実について調査・検討し、その上で受理の当否を決めるため、受理についての実質的審査権を行使するはずであった。 しかし、原告らほか13名は、平成12年12月19日、全員が昼休み中で職員の人数が手薄な時間帯である午後0時20分ころに、一部の者たちを除いて異なる出張所において、一斉に転入届をしており、極めて恣意的に、計画的に、集団転入の事実が露見しないように転入届の提出を行い、被告区長の実質的審査権の行使を免れた。これにより、原告らは、被告区長による住民票の調製をすべきか否かの判断を経ずして住民票を調製させたのであり、このような場合に被告区長が原告らの住民票を法施行令8条所定の「住民基本台帳の記録から除くべき事由が生じたとき」に準じて消除したとしても、違法とはいえないと解すべきである。 イ原告ら(ア) 転入届に対する被告区長の実質的審査権法の規定によれば、市町村長は、当該市町村の区域内に居住の事実を有する者から転入の届出がされた場合には、これを受理して住民粟に記載して調整し、住民基本台帳に記録すべき義務を負っており、居住の実態があるにもかかわらずこれを拒否したり、消除したりすることは、住民基本台帳に記載される住民に関する記録の正確性を損なうものである。 また、地方自治法10条1項は、「住民」の意義について、「市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包含する都道府県の住民とする。」と定め、法4条は住民の住所に関する法令の規定は地方自治法10条1項に規定する住民の住所と異なる意義の住所を定めるものと解釈してはならないとし、住民であることに住所を有すること以外の要件を付加していないも 、法4条は住民の住所に関する法令の規定は地方自治法10条1項に規定する住民の住所と異なる意義の住所を定めるものと解釈してはならないとし、住民であることに住所を有すること以外の要件を付加していないものであるから、転入届を受けた市町村長が、転入届に係る住民の居住の有無以外の事実を審査して、転入届の受理の可否を審査したり、転入届を受理し作成された住民基本台帳の抹消を認めることは、地方自治法10条1項の「住民」の意義に新たな要件を加えるものであって、許されない。 以上によれば、転入届につき、地方公共団体の長に、届出の内容が事実であるかどうかということ(法施行令11条)以外の事項に関する審査権や住民登録を拒否し得る裁量権は認められていないというべきである。 (イ) 住民票の消除が認められる場合法施行令11条、8条は、住民票の記載を消除し得る場合について定めているが、「その他その者についてその市町村の住民基本台帳の記録から除くべき事由」がある場合とは、当該佳民の国籍の喪失、皇族の身分の取得といった他に具体的に列挙された事由に準じるべき事由に限定されるべきものであって、前記のとおり、原告らが属する宗教団体の危険性という届出の内容と無関係の事実が上記の事由に該当するとは考えられないし、届出の態様が消除の理由となるとは認められない。 (ウ) 本件各処分の違法性以上のとおり、被告区長には転入届の受理に関する実質的審査権は付与されていないから、それを前提に住民票の消除を適法なものということはできないし、また、原告らにつき、法施行令8条記載の住民票の消除の事由が生じたとはいえないから、原告らの住民票の消除を行った被告区長の処分はその適法性に根拠を欠くものであり、明らかに違法であるといえる。 (エ) 本件各処分の違憲性本件各処分によって、原告らは、憲法 生じたとはいえないから、原告らの住民票の消除を行った被告区長の処分はその適法性に根拠を欠くものであり、明らかに違法であるといえる。 (エ) 本件各処分の違憲性本件各処分によって、原告らは、憲法により保障された生存権、参政権、職業選択の自由、財産権、営業の自由及び人身の自由などを侵害されている。 すなわち、住民票の記載を削除することは居住移転の自由を侵害していることにほかならず、住民登録制度が選挙人名簿と連動していることによれば、住民票の記載の消除は選挙権を侵害することとなる。また、住民登録を消除することによって、国民健康保険の利用が不可能となるのであるから、生存権が侵害されたといえるし、本件各処分が原告らがアレフの信者であることを理由としていることにかんがえてみれば、原告らは、本件各処分により思想信条の自由、信教の自由を侵害されたこととなり、本件各処分は法の下の平等にも反することとなる。 (オ) 教団アレフの安全性平成12年2月4日にアレフが発足した後は、P18が正式に代表となり、P17は教祖でも教団の代表者でもなく、教団の運営や信者の指導には関与できないものとされ、教団の組織形態、教義もオウム真理教当時とは変遷していて、オウム真理教当時に危険性を指摘された予言に対する信仰もなくなっていて、アレフをオウム真理教と同一視することは妥当ではない。 現に、教団は、オウム真理教が犯した犯罪の被害者、各自治体、国に対して謝罪を行い、平成11年以降現在に至るまで事件被害者等への賠償等を行っているし、公安調査庁の立ち入り検査を定期的に受けているが、観察処分以上の処分を受けておらず、警察の捜索差押等も行われているが、無差別大量殺人をはじめとする犯罪に及ぶ危険性を示すものは押収されてはいない。日本弁護士連合会は、平成13年1月に、信者の転入届 観察処分以上の処分を受けておらず、警察の捜索差押等も行われているが、無差別大量殺人をはじめとする犯罪に及ぶ危険性を示すものは押収されてはいない。日本弁護士連合会は、平成13年1月に、信者の転入届不受理問題について教団が行った人権救済申立てに対し、自治体に不受理方針を撤回するよう勧告し、その報告書の中で、現在の時点において、オウム真理教信者によって地域住民に対してその生命、身体、健康等につき「明白かつ現在の実質的危険が存在する」とまで認めるには至らないと認定している。 また、教団は、地域問題緊急対策室を設置し各地で融和を求める活動をしており、多くの地域で住民の不安と不信の解消をするように努力をし、その成果を上げている。 以上によれば、アレフは、被告らが指摘するような危険性を保持しているとは認められず、危険性を理由に実質的審査権を行使し、住民票を消除した被告区長の処分は前提を欠くものといわざるを得ない。 (3) 争点③(原告らの損害賠償請求権の存否)ア原告ら(ア) 違法性本件は、被告区長が、その公権力の行使に関し、前記(2)イ主張の違法な処分を行ったことにより、原告らに損害を与えたものであり、被告区は国家賠償法1条により、損害を賠償する義務を負うものである。 (イ) 故意・過失被告区長が本件各処分の違法性を認識することは容易であるといえ、被告区長には故意・過失が存したことは明らかである。 被告区は、転入届に対して実質的な審査権を行使できるという考えは、本案前の執行停止事件の抗告審における高裁決定により認められたものであり、相当な根拠があるとしているが、実務上抗告審決定が取ったような見解に立つ文献もないし、住民票の記載の消除をして適法とされた裁判例もなく、居住の事実があり居住の意思も認められるものについては転入届に従って、住 があるとしているが、実務上抗告審決定が取ったような見解に立つ文献もないし、住民票の記載の消除をして適法とされた裁判例もなく、居住の事実があり居住の意思も認められるものについては転入届に従って、住民票を調製するという取扱いのみがされていたのであるから、被告区の主張は失当である。 (ウ)損害法に基づく届出は、国民健康保険法において、同法に基づく届出とみなすものとされ(同法9条10項)、また、住民票の記載は、選挙、国民健康保険、国民年金等住民の重要な権利に関する行政上の事務処理の基礎となるものであり、その記録がされないことによってさまざまな基本的人権が侵害されることとなる。また、印鑑登録証明書やパスポートの取得ができず、様々な公共施設の利用が受けられなくなるなど、諸々の行政サービスを受けることができなくなるのであり、日常生活上著しい不便を被ることとなる。 原告らは、本件各処分により、上記の権利の侵害や不便を被ったものであり、また、いずれの市町村の住民基本台帳にも住民票の記載が存しない極めて不安定底地位に置かれたこととなり、その精神的苦痛は甚大であって、その慰謝料は各原告につき100万円を下らない。 被告区は、本件各処分の執行停止決定後の被告区長の措置により具体的な権利行使は阻害されていない旨を主張しているが、同措置がされるまでの期間、国民健康保険の被保険者資格が剥奪されていたことは事実であるし、具体的な権利行使が阻害されていないとしても、そのおそれが生じたことにより精神的苦痛は当然発生している。また、アレフという宗教団体に所属していることを理由に不利益取扱いを受けていることにより、思想信条の自由、信教の自由を侵害されたことは明らかである。 イ被告区(ア) 違法性上記(2)ア(イ)aの教団の危険性や教団構成員が大量に転入し、 を理由に不利益取扱いを受けていることにより、思想信条の自由、信教の自由を侵害されたことは明らかである。 イ被告区(ア) 違法性上記(2)ア(イ)aの教団の危険性や教団構成員が大量に転入し、転入先が教団の本拠地とされる可能性が著しく高く、全国各地の住民が教団に対し立ち退きを求め、教団と対立していた当時の状況にかんがみれば、被告区長が、転入届を不受理とし、又は、住民票の記載を消除する処分をしても、公共の福祉の観点から必要最小限度の対応策を採ったものといえ、当然に許容されるところであって、違法な処分とはいえない。 また、仮に、法に定められた義務に違反するとしても、被告区長の措置は、いわば緊急避難としてなされた実質的違法牲を有しないものと評価でき、仮に消除処分が存在し、これが法の規定に反するとしても、被告区長の行為には違法性はない。 (イ) 故意・過失無差別大量殺人を行い、危険な団体として国家が認定するような教団が出現し、その構成員が集団転入するという事態は、法律が明文をもって予定するところではなく、住民基本台帳制度による措置の是非が問題となった裁判例も見当たらない。このような中で、被告区長がやむを得ず職権消除の措置を採ったとしても、それには相当な根拠が認められ、現に、執行停止事件の抗告審においては是認されたものであるから、仮に被告区長の採った措置が違法な公権力の行使に当たるとしても、被告区長には故意はもとより過失はない。 (ウ) 損害世田谷区選挙管理委員会は、平成13年6月14日の最高裁決定による執行停止決定の確定後、本件各処分の効果が生じていないものとして、同日付けをもって、平成12年12月19日に原告らが転入届を行い、同日から3ヵ月経過した時点をもって選挙人名簿に登録する旨の措置を遡及して行った。そして、平成13年6月 果が生じていないものとして、同日付けをもって、平成12年12月19日に原告らが転入届を行い、同日から3ヵ月経過した時点をもって選挙人名簿に登録する旨の措置を遡及して行った。そして、平成13年6月14日は東京都議会議員選挙の告示日の前日に当たったため、被告区長及び世田谷区選挙管理委員会は、上記の措置を直ちに講じた上で、念のため、翌15日午前原告ら全員に対し、その旨を通知した。 したがって、原告らが侵害されたと主張する権利のうち、住民基本台帳に記載することを要件とする選挙権については何ら支障なく行使し得たものであり、損害は生じていない。 また、原告らが主張するその余の権利についても、その多くは住民基本台帳の記載を要件とする権利ではなく、原告らが権利行使を阻まれたとする事実は全くないから、この点に関する損害はない。 精神的な損害をいう部分についても、結局のところ、原告らの採った不当ともいうべき手段により転入届をしたことに起因するものであるから、損害はない。 第3争点に対する判断 1 争点①(消除処分の存否)本件においては、前記第2記載のとおり、各原告が形式上不備がない転入届を、本来の提出先である被告区長あてに提出し、被告区の担当職員がこの届出を受け取った上、被告区長の名の下にいずれの原告についても住民票を作成し、原告ら全員に国民健康保険被保険者証を、原告P1、同P6及び同P3に対し住民票の写しを、原告P2に対し印鑑登録証をそれぞれ交付している事実は当事者間に争いはない。これらの事実からすると、原告らにより適式な届出がされ、それに基づいて被告区長が住民票を作成し、その住民票の記載に沿って被告区が手続を行っているといえるから、原告らの転入屈は既に受理されていたとみるべきである。 被告区長は、このようにしていったん作成した原告らの住民票を破 長が住民票を作成し、その住民票の記載に沿って被告区が手続を行っているといえるから、原告らの転入屈は既に受理されていたとみるべきである。 被告区長は、このようにしていったん作成した原告らの住民票を破棄し、無効として取り扱っており、この一連の措置について、住民票の消除処分ではなく、転入届の不受理とそれに伴う事実上の住民票破棄行為であって、消除処分が存在しない旨を主張する。 しかし、上記のとおり、転入届がいったん受理されたことは明らかで、受理という行為の性質上、それを遡及的に無効とし得るものではないから、本件の措置が転入届の不受理であるとの被告らの主張は採用し得ない。そして、このように適式にされた転入届に基づいて作成された住民票を破棄し、住民票が存在しないものとして取り扱うことは、たとえ法令に定められた住民票消除の手続に則ったものでないとしても、いったん適式に作成された住民票を消除したものというべきであって、法的には破棄行為の時点において、住民票消除処分がされたものと認めるのが相当である。 2 争点②(消除処分の違法性)(1) 住民票の消除が認められる場合法施行令8条は、前記第2、1(2)のとおり、その市町村の住民基本台帳に記録されている者が転出をし、又は死亡したときその他その者についてその市町村の住民基本台帳の記録から除くべき事由が生じたときに住民票の消除をしなければならないとしている。 前記第2、1(2)記載のとおり、市町村長が正確な記録を義務付けられている1方、住民基本台帳や住民票が住民の重要な権利を保障する根拠とされていることにかんがみれば、法施行令8条にいう「その他その者についてその市町村の住民基本台帳の記録から除くべき事由」とは、転出、死亡等と同様、住民基本台帳の記載が当該住民の居住実態を正確に反映していない場合に限ら んがみれば、法施行令8条にいう「その他その者についてその市町村の住民基本台帳の記録から除くべき事由」とは、転出、死亡等と同様、住民基本台帳の記載が当該住民の居住実態を正確に反映していない場合に限られると解すべきであり、居住の実態以外の理由によって消除を行うことは許されず、当該住民が現に居住している以上、市町村長は、法令上明文で許された事由がない限り、その住民票を消除することは認められないというべきである。 (2) 被告らの主張について被告らは、アレフの危険性を縷々主張した上、それを前提にした場合、被告区長が、受理の当否につき実質的審査権を行使するはずであったのに、原告らが不当な態様で一斉に届出をしたため、実質的審査権を行使しえなかったとして、この事実が法施行令8条の消除事由に該当する旨の主張をする。 しかしながら、法は、上記第2、1(2)のとおり、市町村長に対し住民基本台帳を整備し正確な記録を行うよう義務付けており、市町村長は、住民票の記載等に際しては、法の規定による届出があったときは、当該届出の内容が事実であるか否かを審査して、記載等を行うとされ、他の事項に関する審査は法令上要求も許容もされていない。そして、転入届の記載内容は、氏名、住所、転入した年月日、従前の住所等法22条1項各号に挙げられた事実であるから、市町村長は、これらの届出事項の内容が事実か否かの審査権は有するものの、それ以外の点を審査し、転入届の受理・不受理を決することは許されず、市町村長には、被告らのいう実質的審査権は与えられていないとみるべきである。 被告らは、地方公共団体に住民の基本的人権を守る責務が課されていることを根拠に実質的審査権を有する旨主張する。しかし、選挙人名簿の登録が住民基本台帳の記録により行われ(法15条)、市町村に住所を有することが当該市町村 団体に住民の基本的人権を守る責務が課されていることを根拠に実質的審査権を有する旨主張する。しかし、選挙人名簿の登録が住民基本台帳の記録により行われ(法15条)、市町村に住所を有することが当該市町村が行う国民健康保険の被保険者となることの要件とされ(国民健康保険法5条)、転入届が国民年金被保険者の住所の変更に関する事項の届出とみなされる(国民年金法12条3項)など、転入届が受理され、それに基づいて住民票が作成され、住民基本台帳に記録がされることは、住民としての基本的な権利を保障するための重要な手続であるから、特定の者の転入届を不受理とし、これらの権利に制限を加えるためには、法律上明らかな根拠が必要であると考えられるにもかかわらず、被告らの主張するように他の住民の基本的人権を守るために特定の住民の転入届を不受理とすることについては、これを許容する法令上の具体的な根拠は見当たらず、かえって、法施行令が「当該届出の内容が事実であるかどうか」を審査して、住民票の記載等をすべき旨明言していることに照らすと、被告らの主張するような実質的審査権を肯定すべき法的根拠はないといわざるを得ない。 そうすると、被告らの主張は、その前提を欠くものといわざるを得ないし、原告らの各転入届の提出の態様は、前記第2、1(2)記載の届出の手続を定める法規に何ら違反するものではなく、それを理由に転入届を不受理としたり、住民票の記載を消除したりすることは許されないものである、したがって、被告らの指摘するアレフの危険性の存否について判断するまでもなく、その主張は失当というほかない。 (3) 結論よって、本件各処分は、法施行令8条の消除の要件が存しないにもかかわらずされた違法なものであり、原告ら5名に対する住民票消除処分は、いずれも取り消されるべきものである。 3 争点③ (3) 結論よって、本件各処分は、法施行令8条の消除の要件が存しないにもかかわらずされた違法なものであり、原告ら5名に対する住民票消除処分は、いずれも取り消されるべきものである。 3 争点③(損害賠償請求権の存否)(1) 違法性本件各処分が法及び法施行令の要件を欠く違法なものであることは上記のとおりである。 この点に関し、被告区は、当時、全国各地においてアレフの構成員の転入を防止するための活動がされていたことや、転入を防止するための唯一の手段であり緊急避難的なものといえることを主張するが、他の自治体が同様の活動を行っていたからといって、本件各処分の違法性がないということには全くならないし、証拠(甲10)によれば、他の自治体においては、転居を求めるとしても他の様々の方法を模索しているところもあり、周辺住民がアレフの構成員と交流を図りながら、共存を目指すための活動をしている自治体があることも認められ、本件各処分のような違法な手段が教団への唯一の対処方法であるというのは、到底採用し得ない見解である。また、原告らが被告区内に居住すること自体が不法行為を構成するものでもないし、その居住によって、被告区又はその住民に急迫の危難が及ぶと認めるに足りる証拠はないから、緊急避難との主張もその前提を欠くものといわざるを得ない。 (2)故意・過失本件各処分が法及び法施行令の文言に反することは容易に認識可能なところであるから、被告区長には、違法な本件各処分を行うにつき、少なくとも過失があったというべきである。 この点につき被告区は、過去の裁判例等で本件類似の消除処分を違法とした例はなく、現に執行停止申立事件の抗告審においては違法性に関する被告らの主張が認められていることをもって、消除処分も一つの見解として成り立っているとし、被告区長に過失は 件類似の消除処分を違法とした例はなく、現に執行停止申立事件の抗告審においては違法性に関する被告らの主張が認められていることをもって、消除処分も一つの見解として成り立っているとし、被告区長に過失はない旨の主張をするが、上記のとおり、法及び法施行令の明文上、市町村長が転入届の受理・住民票の消除に当たり実質的な審査権を有するものではないことは明らかなのであるから、実質的審査権の行使による転入届の不受理や住民票の消除処分を積極的に違法とする裁判例がなかったとしても、当然のことであって、それまでの実務の運用上、実質的審査権に基づき住民票の記載が消除された例はなく、また、実質的審査権の行使を適法とした裁判例がないこと、抗告審決定も特別抗告審において憲法違反ではなく法令違反を理由に取り消されており、このことは抗告審決定の示した法解釈が相当に特異なものであったことを裏付けていることなどにかんがえてみれば、実質的審査権に基づく運用は許されていないと理解するのが当然であって、これを前提にすれば、被告区長が本件各処分を行うに当たり、違法なものとなる可能性を予見していたことは明らかである。 そして、処分時においてそのような状況が認められる以上、結果として後の執行惇止の抗告審において被告らの主張が認められたとしても、そのことから過失が存しないこととはならない。 (3)損害本件各処分は、原告らの転入自体を阻止することを目的としてされたものであって、本来、住民の福祉に最も意を用いるべき地方公共団体からこのような仕打ちを受けたこと自体により、原告らは言い知れない不安感を抱いたものと考えられる。 その上、原告らは、本件各処分によって、国民健康保険、国民年金等を利用することができず、印鑑登録やパスポートの取得のほか、様々な公共施設の利用も実際上不可能か状態になるな を抱いたものと考えられる。 その上、原告らは、本件各処分によって、国民健康保険、国民年金等を利用することができず、印鑑登録やパスポートの取得のほか、様々な公共施設の利用も実際上不可能か状態になるなど、生活の基盤を危うく感じられる状態になったというべきである。そして、このような不安定な地位に置かれたことにより、原告らには相当な精神的苦痛が生じていると認められる。他方、地方公共団体がこのような異常な措置を行ったのは、原告らの属する教団の元幹部ら多数がサリン事件等の重大事件を引き起こし、教団がその後長く適切な対応を怠っていたことにも原因があることは教団も自ら認めるところであり(甲10)、このことは本件各処分を正当化するものではないとはいえ、原告らの慰謝料額算定に当たっては無視できないものである。これらの諸般の事情を総合考慮すると、原告らの受けた精神的苦痛を慰謝するためには金50万円が相当であると認められる。 この点について、被告区は、執行停止後すみやかに回復の措置を講じており、実質的に損害は生じていない旨を主張するが、原告らが主張する損害は、実質的損害のみではなく、主として不安定な地位に陥れられたことによる精神的損害であって、措置を講ずるまでの間に不安定な地位に至ったことは上記のとおりであるから、被告らの主張は採用し得ない。 第4 結論以上によれば、原告らの請求は、原告ら5名に対する本件各処分をいずれも取り消し、原告らそれぞれに対し金50万円の損害賠償及びこれに対する平成12年12月22日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容することとし、その余は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担、仮執行宣言及び同免脱宣言につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法65条1項、64条ただし書、61条並び 理由があるからこれを認容することとし、その余は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担、仮執行宣言及び同免脱宣言につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法65条1項、64条ただし書、61条並びに259条1項及び3項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官村田斉志裁判官廣澤諭

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