主文 1 本件控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。 2 控訴人は,被控訴人に対し,35万円及びこれに対する平成11年10月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人のその余の請求を棄却する。 4 本件附帯控訴(当審での請求拡張部分を含む。)を棄却する。 5 訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを3分し,その1を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴について(控訴人)(1) 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 (被控訴人)(1) 本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人の負担とする。 2 附帯控訴について(被控訴人)(1) 原判決を次のとおり変更する。 (2) 控訴人は,被控訴人に対し,110万円及び内11万円に対する平成11年8月23日から,内99万円に対する同年10月13日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも,控訴人の負担とする。 (控訴人)(1) 本件附帯控訴(当審での請求拡張部分を含む。)を棄却する。 (2) 附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,本件当時,福井刑務所において受刑中であった被控訴人が,①同刑務所技官から暴行を受けた,②被控訴人の発信した信書の内容を理由として,同刑務所所長から軽屏禁(文書 第2 事案の概要 1 本件は,本件当時,福井刑務所において受刑中であった被控訴人が,①同刑務所技官から暴行を受けた,②被控訴人の発信した信書の内容を理由として,同刑務所所長から軽屏禁(文書図画閲読禁止併科)20日の懲罰を受けたのはいずれも違法であるとして,控訴人に対し,国家賠償法1条1項に基づき,①につき慰謝料10万円及びこれに対する不法行為のあった日の後である平成11年8月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,②につき慰謝料90万円及びこれに対する最終の不法行為のあった日である同年10月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案の控訴審である。 原審は,①の請求について慰謝料2万円と遅延損害金,②の請求について慰謝料50万円と遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余を棄却したところ,これを不服とする控訴人が,本件控訴を提起して,原判決中控訴人敗訴部分の取消しを求め,次いで,被控訴人が,附帯控訴を提起して,原判決中被控訴人敗訴部分の取消しを求めるとともに,弁護士費用10万円(①の請求について1万円,②の請求について9万円)及びこれに対する遅延損害金を加算する請求の拡張をした。 2 前提事実次のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由の第2,1に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(1) 原判決2頁23行目の「現在も同所に服役中の者である。」を「平成14年8月12日,刑期終了に伴う釈放により出所した(乙41)。」と改める。 (2) 原判決8頁10行目の「氏名部分」を「氏名部分のみ」と改める。 3 主な争点及び争点に対する当事者の主張次のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由の第2,2に める。 (2) 原判決8頁10行目の「氏名部分」を「氏名部分のみ」と改める。 3 主な争点及び争点に対する当事者の主張次のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由の第2,2に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(1) 原判決11頁22行目の「暴行の有無」を「暴行の有無又はその態様」と改める。 (2) 原判決19頁25行目の前に,次のとおり加える。 「(3) 被控訴人の損害(被控訴人の主張)ア E技官の暴行により被控訴人が被った精神的苦痛を慰謝するには10万円が,その弁護士費用としては1万円が相当である。 イ本件懲罰により被控訴人が被った精神的苦痛を慰謝するには90万円が,その弁護士費用としては9万円が相当である。 (控訴人の主張)被控訴人主張の損害はいずれも知らない。」第3 当裁判所の判断 1 E技官による暴行の有無又はその態様について(1)前記前提事実並びに証拠(甲5,乙26,証人E,被控訴人本人のほか,後掲各書証)によれば,次の事実が認められる。 ア被控訴人は,本件当時,福井刑務所第2工場において金属組立工として就業しており,平成10年8月11日には,「パワータップ」というコンピューターに関係するコンセント部分を製造する作業に従事していた。被控訴人は,同日午後2時ころ,隣席受刑者とともに,担当職員の許可を得ることなく,帽子を被ったまま,交談しながら作業をしていた。 福井刑務所長が定めた「受刑者遵守事項」(平成4年6月22日達示第34号,乙24)によれば,作業時間中の不正交談は原則として禁止されており,福井刑務所首席矯正処 談しながら作業をしていた。 福井刑務所長が定めた「受刑者遵守事項」(平成4年6月22日達示第34号,乙24)によれば,作業時間中の不正交談は原則として禁止されており,福井刑務所首席矯正処遇官(処遇担当)が定めた「作業中の脇見・雑談・無断離席の取締について」(平成8年7月19日指示第53号,乙25)によっても,作業中の脇見や雑談の取締は,規律秩序を維持し,刑務作業による負傷事故等を防止する上での根幹をなすものであることから,交談は,たとえ作業上のことであっても不許可が原則であり,やむを得ず交談の願い出をさせる場合は,「交談お願いします。」と右手を真上に上げさせ,担当職員の「よし」の号令で交談を許可し,許可した場合は,きちんと帽子をとって(交談相手も同じ)必要事項のみ交談させ,一旦帽子をかぶったら,その時点で許可は終わりになる旨定められており,作業中の脇見や雑談は,いわゆる「ちらっと見ただけ」とか「一言しゃべっただけ」の事犯であっても,担当職員は,これを見過ごしたり黙認したりすることなく,注意指導簿等で処理記録しておくことまでが要請されていたものであり,被控訴人と隣席受刑者の上記交談は,遵守事項で禁止された作業中の不正交談に該当するものであった。 イ被控訴人と隣席受刑者の不正交談を現認したE技官は,両者の作業席付近まで赴いたが,両者の交談は依然として続いていた。そこで,E技官は,両者の作業机の前から机越しに,その左手で被控訴人と隣席受刑者の頭を軽く叩くようにして触って,不正交談を止めるように注意したため,被控訴人と隣席受刑者は交談を止め,作業を継続するようになった。 ウところが,被控訴人は,同日午後2時45分ころ,休憩時間を終了して第2工場に戻ってきたF担当に対し,許可を得て離席した上で,「E技官から叩 者は交談を止め,作業を継続するようになった。 ウところが,被控訴人は,同日午後2時45分ころ,休憩時間を終了して第2工場に戻ってきたF担当に対し,許可を得て離席した上で,「E技官から叩かれた。」旨申し出た。これに対し,F担当は,被控訴人に対し,「君の言っていることの実情が判らないままでは回答はできない。不満があれば所長面接の手続をとりなさい。」と指導するとともに,翌日,その上司に対し,被控訴人の上記申立てがあったことを報告した(乙29,5)。被控訴人は,同日,E技官による暴行につき所長面接を願い出た(乙5)。 エ被控訴人の上記申立てを踏まえ,事実関係の調査が開始され,E技官からは,被控訴人と隣席受刑者が作業中に無断で会話を交わしながら作業しており,作業中は雑談が禁止されていることから,両名の作業席前に赴き,作業机越しに正面から左手指先で,両名の頭頂部付近を軽く2回触れて合図を送り,「話をするな。作業に必要なことなら,許可を取ってやるように。」と言って注意指導した旨の平成10年8月12日付け報告書が福井刑務所長宛てに提出された(乙2)。 オ福井刑務所長代理として被控訴人との面接を担当することとなったG処遇官は,平成10年8月21日,被控訴人との面接を実施した。被控訴人は,G処遇官に対し,「第2工場で就業中,隣の者と仕事について話をしていたが,途中から雑談に変わってしまった。そこにE技官が来て叩かれた。雑談をしたのだから,怒られるのは仕方がないとしても,注意される前に叩かれるのは納得できない。工場担当でさえ叩かないのに,E技官に叩かれる筋合いはない。」旨を申し立てた(乙6)。 カ G処遇官は,E技官の主張する事実関係がほぼ真実であると考え,被控訴人に対する回答案の決裁を受けた上,平成10 叩かないのに,E技官に叩かれる筋合いはない。」旨を申し立てた(乙6)。 カ G処遇官は,E技官の主張する事実関係がほぼ真実であると考え,被控訴人に対する回答案の決裁を受けた上,平成10年8月25日,被控訴人に対し,「E技官は,注意喚起する上で,呼びかける意味で頭に触れただけであり,被控訴人の言う叩かれた叩いたは主観の問題であって,これを主張する限り,水掛け論となる。ただ,E技官が叩くという意味合いでなく,被控訴人に手を触れたことについては,E技官に十分注意し,今後一切手を出さないように指導した。しかし,被控訴人もE技官を含め他の職員から,作業中の雑談や脇見等で注意指導を受けないように,作業に専念しなさい。」と回答した。これに対し,被控訴人は,G処遇官に対し,「E技官はあやまるべきだ。官がそういっても,E技官があやまらないのであれば,あいまいなままで納得できない。」と反論した(乙6,7)。 (2) 上記(1)の認定に反する証拠の検討ア被控訴人は,隣席受刑者から作業内容について相談を受けたため,H看守から交談の許可を受けた上,脱帽を失念したまま,隣席受刑者に多少の雑談を交えて作業方法を教えていたところ,E技官が作業机を隔てて被控訴人の正面に立ち,いきなりその右平手で被控訴人の後頭部を1回殴ったため,頭部に激痛を覚え,被っていた帽子が落ちた旨主張し,被控訴人の供述及び陳述書(甲5)中には同主張に沿う部分があり(以下,一括して「被控訴人の供述」という。),被控訴人が弟に宛てた手紙(甲2の1及び2,甲3の1及び2)にもほぼ同趣旨の記載がある。 イしかし,本件接触事件当時の福井刑務所においては,刑務所内の規律秩序の維持や刑務作業による負傷事故等の防止の観点から,作業中の交談を原則的に禁止しており,例外的 同趣旨の記載がある。 イしかし,本件接触事件当時の福井刑務所においては,刑務所内の規律秩序の維持や刑務作業による負傷事故等の防止の観点から,作業中の交談を原則的に禁止しており,例外的にこれを許可する場合にも,帽子を取った上で必要事項のみの交談に限ることが厳守されていた(乙3,26,27,30)のであるから,被控訴人が供述するような,脱帽をしない状態での雑談が許される状況にあったとは考え難いし,証拠(乙32)によれば,被控訴人と隣席受刑者が本件接触事件当時に使用していた作業台は,縦幅900ミリメートル,横幅1800ミリメートル,高低705ミリメートルという大きさのものであり,このような作業台の大きさに照らすと,E技官が,被控訴人及び隣席受刑者が着席して作業している作業台の反対側に被控訴人及び隣席受刑者の正面に立った状態で,同作業台越しに被控訴人の後頭部を力を入れて殴ることはそれほど容易な動作ではないことが認められる。 また,本件接触事件直後の被控訴人の申立内容の主眼は注意される前にE技官に叩かれたという点にあったが,仮にE技官から帽子が落ちるほどの強い暴行を受けたのであれば,E技官の謝罪を強く要求していた被控訴人の態度からして,被控訴人において,上記のような暴行の程度あるいは態様についても言及してその不当性を訴えるのが自然であると考えられるが,被控訴人がG処遇官に対してそのようなことを具体的に訴えたことを窺わせる証拠はない。 加えて,証拠(乙4,証人E,被控訴人本人)によれば,E技官は,上記(1)ア及びイのとおり,不正交談中の被控訴人及び隣席受刑者を発見し,不正交談を注意して止めさせるために,被控訴人及び隣席受刑者に相次いで注意したこと,被控訴人は,隣席受刑者がE技官から注意されたことには,その時点では り,不正交談中の被控訴人及び隣席受刑者を発見し,不正交談を注意して止めさせるために,被控訴人及び隣席受刑者に相次いで注意したこと,被控訴人は,隣席受刑者がE技官から注意されたことには,その時点では全く気がつかなかったことが認められるところ,E技官が,不正交談をしていた当事者である被控訴人と隣席受刑者とで注意の仕方を特に異にしたものとする特段の事情は認められないから,E技官は,その証言のとおり,隣席受刑者に対しても,被控訴人に対するのと同様の方法で,不正交談を注意したものと認めるのが相当である。そうすると,仮にE技官が,被控訴人に対し,被っていた帽子が落下するような程度及び態様でその頭部を殴打したものとすると,同様な程度及び態様で隣席受刑者に対しても注意をしたことになるが,その場合には,隣席受刑者の間近にいた被控訴人がそのことに気がつかないはずはない。しかし,被控訴人はそのことに気がつかなかったというのであるから,E技官が,隣席受刑者に対し,被っていた帽子が落下するような程度及び態様でその頭部を殴打するようなことはなかったということになり,他方,被控訴人に対しては,E技官が,隣席受刑者に対するのとは異なって,被っていた帽子が落下するような程度及び態様でその頭部を殴打したということになるのであり,被控訴人の供述は上記前提とした事実と矛盾することになる。そして,証拠(乙4)によれば,隣席受刑者は,本件接触事件があった後,休憩を終わって第2工場に戻ったF担当に対し,「先ほど,おやじさんが休憩でいないとき,自分とI君(注:被控訴人のこと)が雑談しているところを技官に見つかり,頭を軽くつつかれて注意を受けました。」などとE技官に注意された際の状況の報告をし,その際にE技官が隣席受刑者の頭部に接触した程度について,「おやじさんが,注意した後,肩 るところを技官に見つかり,頭を軽くつつかれて注意を受けました。」などとE技官に注意された際の状況の報告をし,その際にE技官が隣席受刑者の頭部に接触した程度について,「おやじさんが,注意した後,肩を軽く叩くのと同じ程度です。」と説明したことが認められるから(なお,隣席受刑者からの上記報告等を内容とするF担当の報告書(乙4)は,本件接触事件後1年余り経過後に作成されたものであるが,そのことのみから,同報告書の記載内容が信用性に欠けるということはできない。),被控訴人の上記供述には重大な疑念があるといわざるを得ない。 以上のとおり,本件接触事件の際にE技官から,被っていた帽子が落下するような程度及び態様でその後頭部を殴打された旨の被控訴人の供述には不自然かつ不合理な点があるから,反対趣旨のE技官の供述に照しても,容易に信用できないのであり,本件接触事件におけるE技官の被控訴人に対する身体的な接触は上記認定程度にとどまるものであるにもかかわらず,被控訴人がこれを著しく誇張する供述をしているものと解される。 ウそして,被控訴人が他の刑務所に服役中の弟に宛てた手紙(甲2の1及び2)中の「ここの職員に因縁を付けられたり殴られたりの繰り返し」という部分は,具体的な内容の記載がないから,本件接触事件におけるE技官の暴行の程度や態様が被控訴人の供述するようなものであったことを裏付けるものということはできない。 また,被控訴人が上記弟に宛てた他の手紙(甲3の1及び2)中の「E技官って奴に叩かれて椅子を蹴られて」という部分は,本件接触事件に関するものと認められるものの,E技官が本件接触事件の際に椅子を蹴ったことについては,本件接触事件直後の面接時には何ら触れられておらず(所長代理として被控訴人との面接を担当したG処遇官において,E 関するものと認められるものの,E技官が本件接触事件の際に椅子を蹴ったことについては,本件接触事件直後の面接時には何ら触れられておらず(所長代理として被控訴人との面接を担当したG処遇官において,E技官の暴行に関する申立てのみを記録化し,椅子を蹴ったことだけを敢えて秘匿するような事情は窺われない。),他にこれを裏付ける証拠もないから,E技官は,そのような事実を否定する証言をしていることも併せ考えると,容易に信用し難いのであり,上記手紙の記載も,被控訴人が自己の弟に対して本件接触事件を針小棒大に語ったものと解するのが相当であり,本件接触事件の際E技官について被控訴人主張のような態様の暴行があったことを裏付けるものということはできない。 エしたがって,被控訴人の主張に沿う被控訴人の供述等の証拠は,いずれも信用することができず,他にE技官について被控訴人主張のような暴行があったことを認めるに足りる証拠はない。 (3) そうすると,本件接触事件におけるE技官による被控訴人に対する身体的接触は上記(1)認定の程度及び態様にとどまるものである。 そして,上記程度及び態様における身体的接触は,外形的には有形力の行使には当たるものの,極く軽微なものであり,E技官がそのような行動に出た目的も,規律違反行為である不正交談を中止させて刑務所内の規律を維持することにあったのであるから(なお,本件接触事件について,E技官が被控訴人の規律違反行為を奇貨として被控訴人に対する加害の意図があったことを窺わせる証拠はない。),この程度の身体的接触をもって,被控訴人に対して精神的あるいは肉体的な苦痛を与えるような,違法な行為ということまではできない。 したがって,E技官について,被控訴人主張の暴行を内容とする不法行為の成立を認めることはで て,被控訴人に対して精神的あるいは肉体的な苦痛を与えるような,違法な行為ということまではできない。 したがって,E技官について,被控訴人主張の暴行を内容とする不法行為の成立を認めることはできない。 2 本件懲罰の違法性の有無について(1) 前記前提事実によれば,本件懲罰は,被控訴人が,懲役受刑者として福井刑務所に在監中に,岐阜刑務所に受刑者として在監中の被控訴人の弟に宛てて発信しようとした本件信書中の本件記載部分が,福井刑務所の刑務官であるJ担当に対する中傷,ひぼうであり,遵守事項28番に違反する行為に該当するとして,監獄法59条に基づく懲罰として行われたものであることが明らかである。 (2) ところで,懲役刑は,受刑者を監獄(刑務所)に拘禁して,社会から隔離してその自由を剥奪し,これに定役を科することにより犯罪に対する応報とするとともに,その執行過程を通じて,これを教化し矯正し,もってその改善,更生を図ることを目的とするものであるから,受刑者について拘禁及び定役に服することに伴う身体的自由の制限はもとより,上記目的のために必要かつ合理的な範囲においてそれ以外の行為の自由が制限されることがあるほか,懲役刑の執行は,受刑者を監獄に収容し,これを集団として管理して行われるものであるため,その適正な執行上,監獄内部における規律及び秩序が維持され,監獄内が正常な状態において運営される必要があるところ,上記規律及び秩序維持のため,そのために必要かつ合理的な範囲において受刑者の身体的自由及びその他の行為の自由が制限されることもやむを得ないものとして是認されるべきものである。これらの自由に対する制限が必要かつ合理的なものとして是認されるべきものかどうかは,上記目的のために制限が必要とされる程度と,制限される自由の内容及び性質,こ いものとして是認されるべきものである。これらの自由に対する制限が必要かつ合理的なものとして是認されるべきものかどうかは,上記目的のために制限が必要とされる程度と,制限される自由の内容及び性質,これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決定されるべきものである(最高裁昭和58年6月22日大法廷判決・民集37巻5号793頁,同平成5年9月10日第二小法廷判決・裁判集民事169号721頁参照)。 そして,受刑者に対しても憲法21条1項が定める表現の自由は尊重されるべきものであるが,監獄法は,受刑者であることに伴う上記身体的自由等に対する必要かつ合理的な制限として,親族との信書の発受はこれを認める一方,非親族との信書の発受は原則として禁止するものとし(46条2項),また,受刑者が発受する信書にして不適当と認めるものについては,その発受を許さないものとし(47条1項),同法50条に基づく監獄法施行規則第9章が信書の発受に関する具体的な手続等に関する規定を置いているから,受刑者が,その親族に対して発する信書については,それが監獄法47条1項が定める「不適当ト認ムルモノ」に該当しない限り,これを不許可とすることはできないのである。福井刑務所長が定めた「被収容者の発受する信書の取扱要領について」(乙23。以下「本件信書取扱要領」という。)は,監獄法及び監獄法施行規則に基づく同刑務所における運用に関する定めであり,被収容者の発受する信書中に,「被収容者の処遇その他当所の状況に関する明らかな虚偽の記述があるとき」等には,不許可又は抹消の措置をとるものとしている(前記前提事実(4)イ)。 他方,福井刑務所長は,同刑務所内の規律及び秩序の維持を目的として,「受刑者遵守事項」(平成4年達示第34号。以下「本件遵守事項規程」という。)を定 るものとしている(前記前提事実(4)イ)。 他方,福井刑務所長は,同刑務所内の規律及び秩序の維持を目的として,「受刑者遵守事項」(平成4年達示第34号。以下「本件遵守事項規程」という。)を定めたが(その前文には,「刑務所には,所内の規律秩序を維持するため,いろいろな規則があります。次に掲げる事項は,君たちが当所に収容されている間,守らなければならない事項です。これらの事項に違反する行為をしたときは,懲罰を科されることがあります。」の記載がある。),その「第4 他人に迷惑を及ぼす行為」には,「28 他人を中傷し,ひぼうし,やゆし,愚弄し,侮辱し,又は他人に対して悪ふざけをし,嫌がらせをし,不遜,不穏当な言動をしないこと。」とする規定がある(乙24)。 (3)上記(1)及び(2)を前提として,本件信書中の本件記載部分を発信しようとする行為が遵守事項28番中の「他人を中傷し,ひぼう」する行為(以下「中傷誹謗行為」という。)に該当するか否か,について検討する。 アところで,一般に,「中傷」とは虚偽の事実を言って他人の名誉を傷つけることであり,他方,「ひぼう」とは他人をそしること又は悪口を言うことであり,内容的に虚偽であることを要しないものと解されるところ,本件遵守事項規程が上記のような一般的な語義と異なる意味で使用されていることを窺わせる事情は認められない。そして,本件遵守事項規程が,受刑者等の被収容者に対して,他人を中傷し,ひぼうすることを禁ずる趣旨は,本件遵守事項規程の前文にもあるとおり,刑務所内の規律及び秩序維持の観点から,他の受刑者や職員を中傷やひぼうする行為が,刑務所内における人間関係を損い,諍い,喧嘩,闘争等の原因となりやすく,そのことで刑務所内の規律及び秩序が害されるおそれがあるため,これを防止し,刑務所内 他の受刑者や職員を中傷やひぼうする行為が,刑務所内における人間関係を損い,諍い,喧嘩,闘争等の原因となりやすく,そのことで刑務所内の規律及び秩序が害されるおそれがあるため,これを防止し,刑務所内における正常な運営の維持を図ることにあるものと推認することができ,したがって,本件遵守事項規程が,必ずしも内容の真偽を問うことなく,受刑者等の被収容者に対して,他人を中傷し,ひぼうすることを禁ずることには合理性がある。なお,被控訴人は,遵守事項28番の「他人」は,「被収容者」を意味し,職員はこれに含まれないと主張するが,本件遵守事項規程は,福井刑務所内の規律及び秩序維持の観点から定められたものであるところ,本件遵守事項規程には,「他人」という文言のほかに,「人」,「職員」,「被収容者」の文言がそれぞれ異なる概念として使い分けられているのであり,本件遵守事項規程において,「他人」とは,自己以外の福井刑務所の職員及び受刑者等を広く意味する言葉として使用されていることが認められるし(遵守事項19番の「他人」が,その括弧書部分の記載からしても,職員を含むことは明らかである。),実質的に考えても,受刑者等の被収容者が同刑務所職員を中傷し,ひぼうすることがあれば,そのことによって,受刑者等が同刑務所職員の指示指導に従わず,不穏な雰囲気が醸成され,ひいては,刑務所内の秩序が害され,人間関係が損われ,刑務所内の規律及び秩序が害されるおそれが生ずるから,同刑務所職員に対する中傷やひぼうを禁ずる必要を否定できないのであり,被控訴人の上記主張は採用できない。 イ本件懲罰の根拠事実とされた本件信書中の本件記載部分(乙11,乙14の2枚目)は,①「1工場正担当(J)は,自分のかわいがっている奴が俺と同じことをしていても何も言わんし,取調べにもならんのに,工場 本件懲罰の根拠事実とされた本件信書中の本件記載部分(乙11,乙14の2枚目)は,①「1工場正担当(J)は,自分のかわいがっている奴が俺と同じことをしていても何も言わんし,取調べにもならんのに,工場正担当に嫌われとる奴は,何かあるとすぐ取調べになるから話にならんわ。」,②「1工場正担当『J』は,自分が気にいらんと不当に暴力をふるうし,依怙贔屓はするし,話にならんわ。」,③「まだ1工場正担当『J』に殴りかからんだけ我慢しとるですわ。」というものであり,これらの記載は,J看守が受刑者を不公平,不平等に取り扱い,正当な理由もなく受刑者に暴力を振るうような人物である旨を印象づけるものであるから,その内容は,上記アの一般的な言葉の意味において,それが事実に反するものであれば,J看守を「中傷」するものであり,それが事実に反しないものであったとしても,J看守を「ひぼう」するものということができる。 そして,本件記載部分に摘示されているJ看守による不当な暴力等の事実の真実性について検討するに,J看守から暴力を振るわれた受刑者であると被控訴人が指摘した受刑者4名が福井刑務所職員から事情を聴取された際の説明内容及びJ看守の同刑務所に提出した報告書の内容は,前記前提事実(4)オ(イ)に要約摘示されたとおりであり,A受刑者のみが,①私は,就業拒否を申し出たことにより軽屏禁10日の懲罰を受けたことがあるにもかかわらず,再度,就業拒否を申し出たことがあること,②私は,J看守から就業拒否の理由を尋ねられた際,帽子をとることを失念していた。この帽子をJ看守がとろうとした際,帽子に付けていた称呼番号と名前の書かれたバッチが私の左顔面に偶然に当たったこと,③J看守から声をかけられても,私が下を向いていたため,J看守は,帽子を持った右手で私の額を押し上げたことが とした際,帽子に付けていた称呼番号と名前の書かれたバッチが私の左顔面に偶然に当たったこと,③J看守から声をかけられても,私が下を向いていたため,J看守は,帽子を持った右手で私の額を押し上げたことがあるが,私が顔を上げると,J看守は私の額から手を離したこと,④J看守が作業席に戻るように指示して帽子を持った右手で作業席を指さす仕草をした際,帽子が私の腕や胸に偶然触れたことはあったこと等述べて(乙14の34枚目ないし42枚目),J看守から,就業拒否という規律違反行為(本件遵守事項規程の遵守事項39番に該当する行為)に関連して,J看守が持っていた帽子が当該受刑者の身体に当たるなどの有形力の行使があったことを内容とする供述をしたことが認められる。もっとも,上記供述並びに証人Jの証言及びその陳述書(乙37)によれば,上記有形力の行使は,上記規律違反行為に関連して,当該受刑者に対し,脱帽を失念していたことを理解させ,作業に戻るように注意指導する過程でされた,偶然的な軽微なものであったから,これをもって,J看守が受刑者に対して暴力を振るったものとまではいうことができないし,他にJ看守が受刑者に暴力を振るったり,受刑者を不公平,不平等に取り扱ったことを認めるに足りる証拠はない。そうすると,本件記載部分に指摘されているJ看守による不当な暴力等の事実については,真実であることの証明がないというべきである。しかし,A受刑者に関する上記有形力の行使に関しては,その状況を見分した者にとっては,J看守が受刑者に対して帽子を使って暴力を加えているように見えなくもない(証人Kの証言中にも,消極的ながら,これを肯定する趣旨の部分がある。)から,直ちに被控訴人による虚偽の記載であるということまではできず,したがって,本件記載部分がJ看守に対する中傷には当たらない旨の被 Kの証言中にも,消極的ながら,これを肯定する趣旨の部分がある。)から,直ちに被控訴人による虚偽の記載であるということまではできず,したがって,本件記載部分がJ看守に対する中傷には当たらない旨の被控訴人の主張は,上記限度においてはこれを排斥できない。また,BないしD受刑者に対する暴行等に関しても,BないしD受刑者が福井刑務所職員から事情を聴取された際の説明内容及びJ看守の同刑務所に提出した報告書の内容は上記のとおりであるが,BないしD受刑者の説明は当該収容されている刑務所側からの事情聴取に対するものであるから,被控訴人の供述及び甲5の陳述書,乙14中の被控訴人の供述部分に照らし,被控訴人において,J看守について本件記載部分が指摘するように理解し,あるいは受け取ることができるような状況が存在したことまでも全面的に否定できるだけの証拠価値があるとするには疑問があるのであり(この点は,当審において取り調べた証人Lの証言を考慮しても,同様である。),したがって,本件記載部分が明らかな虚偽を内容とするものとまでは断定できないというべきである。 以上のとおりであるから,本件記載部分をもって明らかな虚偽を内容とするものとまでは断じ難いが,本件記載部分には,J看守をひぼうする内容の記載があり,また,真実であることの証明があるとはいえないため,中傷にも当たるものと解する余地がある。 ウしかしながら,本件記載部分は本件信書の一部であり,被控訴人は,これを他の刑務所に在監中の弟宛に発信しようとしたものであるから,被控訴人には,本件記載部分を福井刑務所の職員や,受刑者等の被収容者に対して見せ,あるいは,その内容をこれらの者に知らせようとする意図や目的はなかったものと推認することができる。そして,実際にも,受刑者である被控訴人がその収容され 務所の職員や,受刑者等の被収容者に対して見せ,あるいは,その内容をこれらの者に知らせようとする意図や目的はなかったものと推認することができる。そして,実際にも,受刑者である被控訴人がその収容されている福井刑務所の外部にいる者に対して発信する本件信書は,同刑務所において所長(及び担当職員)が検閲の目的で閲読することにはなるが(監獄法施行規則130条),それ以外の者の目には触れないのであるから,被控訴人が本件信書を発信しようとする行為が,同刑務所の規律及び秩序に悪影響を与える蓋然性は,これをほとんど想定することはできない(この点は,受刑者が,収容されている刑務所内において,当該刑務所の職員や他の受刑者等に対して,口頭又はメモ等の書面を交付あるいは回覧などの方法で,直接に他の者を中傷あるいは誹謗する場合と根本的に異なる。)。もっとも,受刑者が外部の者を受取人とする信書を発信しようとする行為でも,その受刑者が,同信書が検閲する所長又はその担当職員の目に触れることを利用して,当該所長や担当職員を中傷し,ひぼうする意図や目的で,そのような内容の信書を作成したなどの特段の事情がある場合には,同信書が外部の者に対して発信されるものであっても,刑務所内の規律又は秩序に対する悪影響を与える蓋然性を否定できないものの,本件信書についてそのような特段の事情を認めるに足りる証拠はない。 他方,受刑者に係る信書の発信に関しては,上記(2)のとおり,監獄法46条1項及び47条1項が,親族に対するものは,その内容等において不適当と認めるもの以外は,これを許すべきものとしているところ,本件信書取扱要領(乙23)は,その5条において,上記不適当と認めるものを具体化して,発受する信書を制限できる場合を限定的に列挙しているから,仮に受刑者が外部にいる親族の者に ものとしているところ,本件信書取扱要領(乙23)は,その5条において,上記不適当と認めるものを具体化して,発受する信書を制限できる場合を限定的に列挙しているから,仮に受刑者が外部にいる親族の者に対して,在監中の刑務所の職員を中傷あるいは誹謗する内容の信書を発信しようとする場合でも,その内容が本件信書取扱要領5条のいずれかに該当しない限りは,その発信を許さなければならないものというべきである。 ところで,本件信書中の本件記載部分について,福井刑務所では,前記前提事実(4)エのとおり,本件信書取扱要領5条(6)所定の(被収容者の発受する信書の内容に)「被収容者の処遇その他当所の状況に関する明らかな虚偽の記述があるとき」に該当するとして,本件記載部分中のJ看守の氏名部分を抹消した上で本件発信を許したこと(本件信書の発信に関する一部不許可)が認められるが,懲役刑の受刑者といえども,上記(2)のとおり,受刑に伴う必要かつ合理的な範囲で身体的自由等に対する制限を受けるものの,憲法の保障する表現の自由等の基本的な人権は尊重されるべきものであるから,監獄法がこの趣旨を踏まえて認める親族との信書の発受に関する自由は十分に尊重されるべきであり,みだりにこれを制限されるべきものではない。そして,外部の者との通信を極度に制限されている受刑者が,その収容されている刑務所の処遇等に関して不平不満(これには,受刑者の処遇を直接に担当する職員の取扱いに関することも当然に含まれる。)を抱いても,これを外部に表明する機会は著しく制限されていることを考慮すると,仮に当該不平不満が必ずしも正当あるいは相当な根拠を有するものでないとしても,それが明らかな虚偽である場合でない限りは,当該信書の親族に対する発信を許すのが相当であり,本件信書取扱要領5条(6)が「被収 該不平不満が必ずしも正当あるいは相当な根拠を有するものでないとしても,それが明らかな虚偽である場合でない限りは,当該信書の親族に対する発信を許すのが相当であり,本件信書取扱要領5条(6)が「被収容者の処遇その他当所の状況に関する明らかな虚偽の記述があるとき」に発信を許さないとするのも,上記趣旨にほかならないと解されるし,本件信書を検閲し,一部抹消に止めて発信を許可した措置も,同様の考慮に基づいてされたものであったのである(証人Kの証言)。 エ上記のとおりであり,被控訴人が本件記載部分を含む本件信書を発信しようとした行為は,それによって被控訴人が在監中の福井刑務所の規律及び秩序に悪影響を与える蓋然性を認めることのできない行為であるところ,被控訴人が有する親族に対する信書である本件信書を発信する自由は十分に尊重されるべきであり,実際にも,その観点から,J看守の氏名部分を抹消したのみで発信が許可されて発信されるに至ったのであるから,被控訴人が本件記載部分を含む本件信書を発信しようとした行為は,遵守事項28番にいう中傷誹謗行為には当たらないものというべきである。そうでないと,受刑者に対し,一方では,その発信しようとする信書について,適式なものとして発信を許可しておきながら,他方では,その記載内容をもって,遵守事項28番の中傷誹謗に当たるとして,そのことにより懲罰を科することとなるのであって,到底,一貫した刑務行政上の措置ということはできない。 (4) そして,証拠(乙33,34,43,44,証人K)によれば,軽屏禁とは受罰者を罰室内に昼夜屏居せしめる処分であり(監獄法60条2項),具体的な運用としても,福井刑務所長が定めた「軽屏禁罰の執行及び同受刑者の処遇に関する細則について」(平成5年5月21日達示第14号,乙43)によれ に昼夜屏居せしめる処分であり(監獄法60条2項),具体的な運用としても,福井刑務所長が定めた「軽屏禁罰の執行及び同受刑者の処遇に関する細則について」(平成5年5月21日達示第14号,乙43)によれば,受罰者は,他の被収容者と厳格に分離して処遇され,就業日は朝の始業時から夕点検終了までの間,免業日は朝食終了後(後片付け終了後)から夕点検終了までの間,洗面,食事及び用便等日常生活に必要な用を足す時を除き,点検位置に手を大腿部の上に置き,安座又は正座することを遵守しなければならないこととされていること,また,軽屏禁の執行期間中,受罰者の運動は懲罰言渡し後,概ね10日後に第1回目を実施し,以後は実施日の翌日から起算して概ね5日毎に実施するものとされ,受罰者の入浴も,懲罰言渡し後,入浴該当日の3回毎に実施するものとそれぞれ制限されていること,本件懲罰執行における運動及び入浴の実施状況は乙14の3枚目に記載のとおりであることが認められる。 上記事実によれば,軽屏禁はこれを執行される者にとって相応の精神的身体的な負担を伴うものであり,更に文書図画閲読禁止が併科されれば,その精神的な負担はより厳しくなることも容易に推認されるところである。 (5) 前記前提事実(4),(5)の事実並びに上記(1)ないし(4)に認定説示したところによれば,本件懲罰は,福井刑務所長が,本件信書を発信しようとした行為が,本件遵守事項規程が定める遵守事項28番にいう中傷誹謗行為に該当しないにもかかわらず,これに該当するものと誤って判断した結果されたものであるところ,軽屏禁(文書図画閲読禁止併科を含む。)を内容とする懲罰の被執行者に与える精神的苦痛の大きさを考えると,上記判断を誤って被控訴人に対して本件懲罰を科することとした同所長には,関係法令の解釈適用を誤り,懲罰権 文書図画閲読禁止併科を含む。)を内容とする懲罰の被執行者に与える精神的苦痛の大きさを考えると,上記判断を誤って被控訴人に対して本件懲罰を科することとした同所長には,関係法令の解釈適用を誤り,懲罰権を違法に行使した過失があったものと認めるのが相当である。 3 被控訴人の損害について上記2で認定説示したところによれば,被控訴人は,本件懲罰として軽屏禁等に処せられることにより,20日にわたって,受刑者として身体的自由等を拘束される以上に身体的自由等を拘束され,そのために相当程度の精神的苦痛を被ったものということができるところ,これを慰謝するためには30万円が相当である。そして,被控訴人が,本件訴訟の提起及び追行を被控訴人訴訟代理人弁護士らに委任したことは記録上明らかであるところ,本件事案の難易,請求額,認容額その他諸般の事情を考慮すると,弁護士費用として5万円をもって相当と認める。 4 結論以上によれば,被控訴人の請求のうち,E技官の暴行に関する部分は理由がなく,本件懲罰に関する部分は慰謝料30万円と弁護士費用5万円の合計35万円及びこれに対する本件懲罰が終了した日である平成11年10月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は失当である。 よって,本件控訴に基づき原判決を上記の趣旨に変更し,本件附帯控訴(当審での請求拡張部分を含む。)は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所金沢支部第1部 裁判長裁判官長門栄吉 裁判長 裁判官長門栄吉 裁判官渡邉和義 裁判官田中秀幸
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