京都地方裁判所第3民事部平成22年12月21日判決言渡事件番号平成21年(行ウ)第29号不当利得返還行為請求事件判決要旨市の教育委員及び委員長,選挙管理委員及び委員長並びに人事委員及び委員長に対して,月額で報酬が支給されていることが違法であるとして,市の住民である原告らが,市長に対し,上記各委員及び委員長に対して支払われた報酬のうち本来支給されるべき額以上に支給された分を返還するよう請求することを求めたが,棄却された事例。 主文 本件訴訟のうち,原告Aの請求に関する部分は,平成21年11月23日同人の死亡により終了した。 その余の原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,前項の原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,別紙3の各表の「委員(長)」欄記載の者(以下「本件各委員ら」という。)に対し,それぞれ同表の「請求額」欄記載の金額を支払うよう請求せよ。 第2事案の概要本件は,京都市が同市の教育委員及び委員長,選挙管理委員及び委員長並びに人事委員及び委員長に月額で報酬を支給していることに関し,同市の住民である原告らが,上記各委員及び委員長らに月額で報酬を支給することを定めた京都市の条例の規定が違法無効であり,同規定に基づいて本件各委員らに支給された報酬のうち,本来支給されるべき額以上に支給された分は法律上の原因がなく,不当利得となるから,被告は京都市長として,本件各委員らに対するこの不当利得の返還請求権を行使すべきなのに,その行使を違法に怠っている と主張して,被告に対し,その行使を求めた住民訴訟である。 前提事実(争いがないか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)当事者等ア原告らは,京都市の住民又は住民であった者である。 イB(以下「b」という 住民訴訟である。 前提事実(争いがないか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)当事者等ア原告らは,京都市の住民又は住民であった者である。 イB(以下「b」という。)は,京都市長であり,京都市の有する不当利得返還請求権を行使する権限を有する者である(地方自治法(以下「法」という。)149条,240条参照)。 ウ本件各委員らは,京都市教育委員会(以下「教育委員会」という。),京都市選挙管理委員会(以下「選挙管理委員会」という。)若しくは京都市人事委員会(以下「人事委員会」といい,教育委員会及び選挙管理委員会と合わせて「本件各委員会」という。)の委員,委員長,委員であった者又は委員長であった者であって,京都市の非常勤職員かつ地方公務員法上の特別職としての身分(法180条の5第5項,地方公務員法3条3項2号)を有し又は有していた者である。 (2)本件各委員会の委員及び委員長の報酬についての関係法令の定めア法203条の2(なお,平成20年法律第69号による改正前の地方自治法203条に,以下と同内容の規定があった。)(ア)1項普通地方公共団体は,その委員会の委員(中略)その他普通地方公共団体の非常勤の職員(短時間勤務職員を除く。)に対し,報酬を支給しなければならない。 (イ)2項前項の職員に対する報酬は,その勤務日数に応じてこれを支給する。 ただし,条例で特別の定めをした場合は,この限りでない。 (ウ)4項 報酬(中略)の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならない。 イ京都市報酬及び費用弁償条例(以下「本件条例」という。)(甲3)2条1項報酬の額は,次の各号に掲げる区分に応じ,当該各号に掲げるとおりとする。 (中略)(4)教育委員会委員長月額355,000円以内(5) 弁償条例(以下「本件条例」という。)(甲3)2条1項報酬の額は,次の各号に掲げる区分に応じ,当該各号に掲げるとおりとする。 (中略)(4)教育委員会委員長月額355,000円以内(5)教育委員会委員(教育委員会委員長を除く。)月額335,000円以内(6)人事委員会委員長月額355,000円以内(7)人事委員会委員(人事委員会委員長を除く。)月額335,000円以内(8)市選挙管理委員会委員長月額300,000円以内(9)市選挙管理委員会委員(市選挙管理委員会委員長を除く。)月額270,000円以内(中略)(15)附属機関の構成員その他非常勤の職員月額579,000円以内日額22,000円以内(以下,本件条例2条1項4号から9号までを「本件各規定」という。)(3)報酬の支給平成20年4月から平成21年2月までの間,本件各委員らに対し,本件各規定に基づく報酬として,別紙1のとおりの金額が支給された。 (4)監査請求及び提訴ア原告らは,平成21年4月9日付けで,京都市監査委員に対し,本件各委員会の委員及び委員長への月額報酬の支給について,支給した月額報酬 の額から日額相当額を差し引いた金額の返還を請求するよう市長に対して勧告することを求める旨の監査請求をした(以下「本件監査請求」という。)。(甲1)イ京都市監査委員は,同年6月30日付けで,本件監査請求を棄却する旨の決定をした。(甲2)ウ上記の監査結果を受け,原告らは,同年7月29日,本件訴訟を提起した。 エ原告らは,本件各委員らの出勤日数に応じて日額報酬を支給すれば足り,本件条例2条1項15号の定める2万2000円に上記出勤日数を乗じた金額(別紙2の各表の「合計(b)」欄のとおり。)を支給すべきだったから,こ 件各委員らの出勤日数に応じて日額報酬を支給すれば足り,本件条例2条1項15号の定める2万2000円に上記出勤日数を乗じた金額(別紙2の各表の「合計(b)」欄のとおり。)を支給すべきだったから,これを実際に支給された金額(別紙1の各表の「合計(a)」欄のとおり。)から差し引いた金額については,法律上の原因がない不当利得となると主張し,被告に対し,この金額(別紙3の各表の「請求額」欄のとおり。)の不当利得返還請求をすることを求めている。 争点及び争点に関する当事者の主張(1)本件各規定の違法性の有無(原告らの主張)ア法203条の2第2項(平成20年法律第69号による改正前の地方自治法203条2項のこれに対応する規定も指すものとして用いる。以下同じ。)の趣旨及び同項ただし書の条例制定に関する裁量権の範囲(ア)法203条の2第2項の趣旨は,常勤職員についてはその生活を地方公務員としての収入に依存していることから,勤務実績に対する反対給付としての要素だけではなく,生活給としての面をも考慮しなければならないが,非常勤職員の場合には,これに対する報酬は生活給としての意味を全く有さず,原則として勤務日数に応じてこれを支給すべきものとしたところにあり,常勤職員と同程度の勤務実態があるといえる場 合に限り,上記原則の例外として,条例で特別の定めをすることにより,勤務日数によらないで報酬を支給することを許しているにすぎない。すなわち,非常勤職員については,各普通地方公共団体の実情として,勤務実態が常勤と異ならず,月額又は年額で報酬を支給することが相当とされる職員がいるなど,特別な事情がある場合も想定されることから,そのような,勤務実態が常勤職員と異ならないような場合には,地方公務員としての勤務に要する時間が通常の労働者と同様になり,他の 相当とされる職員がいるなど,特別な事情がある場合も想定されることから,そのような,勤務実態が常勤職員と異ならないような場合には,地方公務員としての勤務に要する時間が通常の労働者と同様になり,他の職業による収入を見込むことができないために,生活給としての側面を考慮する必要が生じ,勤務量に応じた報酬にとらわれずに報酬を支給することが許されるのである。 このように,同項ただし書による月額報酬等の支給を認める場合を生活給としての面を考慮した場合に限る解釈をすることは,同項本文の規定の趣旨から当然に導かれるものであり,本文の規定を無視してただし書の解釈を広く解する方が不自然であり,根拠が不明である。 (イ)以上によれば,常勤職員と異ならない勤務実態がなく,生活給としての面を考慮する必要がない場合には,法203条の2第2項ただし書による月額報酬を支給することは許されない。 (ウ)常勤職員と同様の勤務実態がなければ生活給としての支給をする必要がない以上,それなのに月額報酬を支給することは,法2条14項や地方財政法4条1項が定める必要最少限の経費の支出に違反することにもなる。 (エ)被告は,条例制定権の範囲について主張しているが,被告が主張するような自由な裁量が認められているとするならば,そもそもこのような規定にする必要はないのであり,あえて日額報酬を原則とした以上,例外は限定的に解されるべきである。また,地方公共団体は,法律の範囲内で条例を制定でき(憲法94条),法令に反しない限りにおいて条例 を制定することができる(法14条1項)にとどまるから,議会が制定した条例が,法203条の2第2項の趣旨に反するときは,当該条例は,法令に違反するものとして,その効力を有しないこととなる。したがって,地方議会は,法203条の2第2項ただし書について ,議会が制定した条例が,法203条の2第2項の趣旨に反するときは,当該条例は,法令に違反するものとして,その効力を有しないこととなる。したがって,地方議会は,法203条の2第2項ただし書については,実態において常勤の職員と変わらないような勤務形態をとっている場合に限り,月額報酬あるいは年額報酬にすることを裁量として認められているにすぎない。 (オ)被告は,本件各委員会の委員の職責の重大性や職務内容について主張しているが,法は,かかる執行機関としての職責,職務内容及び制限を前提とした上で,日額報酬を原則としたのであるから,このような主張は失当である。法は,このような職責等を前提として日額報酬を採用することを原則とし,仮にその職責の重大性や職務内容を考慮するのであれば,日当の額でこれを調整すべきとしたものと解するのが相当である。 イ本件各規定の適法性平成20年4月から平成21年2月における本件各委員会の委員らの勤務状況をみると,各委員会とも委員長は月平均4日程度,その他の委員は月平均3日程度の勤務しかしていない。したがって,本件各委員会の委員については,報酬を月額とすることに何らの合理性がなく,不当に高額な報酬が支払われている。 よって,このように不当に高額な月額報酬を定める本件各規定は,法203条の2第2項に反しており,無効である。 ウその他の主張仮に,法203条の2第2項ただし書の「特別の定め」ができるのは,生活給としての側面を有しているといえる場合に限らないとしても,月額報酬制をとるのを相当とするような特別な事情があることを要すると解すべきである。 そして,本件各委員らの勤務内容等をみても,月額報酬制度を採用しなければならないような特別の事情はない。したがって,本件各規定は違法無効なものであるといえる。 (被告の主張 と解すべきである。 そして,本件各委員らの勤務内容等をみても,月額報酬制度を採用しなければならないような特別の事情はない。したがって,本件各規定は違法無効なものであるといえる。 (被告の主張)ア法203条の2第2項の趣旨(ア)法が,普通地方公共団体の非常勤職員の報酬の支給方法等について,常勤職員の給与と異なった定めをしているのは,勤務に対する反対給付としての給与の性格上,勤務の態様に応じて給与の態様も異なるべきところ,常勤職員に対する給与は,勤務に対する反対給付であると同時に当該職員及びその家族の生活を支える生活給としての意味を有するものであるのに対し,非常勤職員に対する報酬については,その勤務の態様からして,一般にこのような生活給的な意味はなく,純然たる勤務に対する反対給付としての性格のみを有するものとすることによるものであり,このことから,法203条の2第2項本文は,非常勤職員に対する報酬は,勤務日数に応じて支給することとしている。 (イ)しかし,非常勤職員については,勤務の実態がほとんど常勤職員と異ならず,常勤職員と同様に月額又は年額をもって支給することが合理的であるものや,勤務日数による実態を把握することが困難であり,月額支給等による以外に支給方法がないもの,職務内容及び性質,責任の度合い等から勤務日数のみでは評価することが困難で,月額等による以外に支給方法がないものなど,特殊な場合も予想されるため,法203条の2第2項ただし書の規定は,条例で特別な定めをした場合は,例外的に,勤務日数に応じて支給することを必要としないこととしたものであり,各普通地方公共団体の議会が,各非常勤職員の職務の実情に応じて,個々具体的に判断すべきこととしたものと解される。 (ウ)教育委員会の委員等の執行機関に属する委員会の委員につい こととしたものであり,各普通地方公共団体の議会が,各非常勤職員の職務の実情に応じて,個々具体的に判断すべきこととしたものと解される。 (ウ)教育委員会の委員等の執行機関に属する委員会の委員については, この立法趣旨からして,勤務日数に応じて支給することを必要としない取扱いとすることが想定されていたものと解される。 (エ)同項ただし書には,月額報酬を定めることができるための要件が何ら規定されていないし,生活給としての側面の有無と報酬の支給方法とは,本来関係のないことである上,報酬の支給方法は,当該非常勤職員の勤務の内容及び性質が勤務日数により評価すれば足りるかどうかによって判断されるべきものであり,生活給の性格を有しなくとも,職務内容等に照らして月額制を採用することが相当な場合もあり得る。 原告らは,同項ただし書の「特別の定め」をすることができる場合を必要以上に狭く解釈しており,失当である。 イ法203条の2第2項ただし書の条例制定に関する裁量権の範囲等(ア)地方公共団体は憲法94条によって自治組織権が与えられていること,法2条12項の規定により,地方公共団体に関する法令は,地方自治の本旨に基づいて解釈運用することが要請されていること,法203条の2第2項ただし書の規定を設ける地方自治法の改正が行われた際の自治庁の通達や改正法案の審議過程において,非常勤職員の勤務の実態や各普通地方公共団体の実情に応じて同項ただし書を適用することができるとされていることなどからすれば,本件条例を制定し,本件各規定によって委員らに月額報酬を支給することについては,京都市の合目的的な裁量にゆだねられており,その裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したような特段の事情が認められない限り,違法となることはないと解するのが相当である。すなわち,その裁量判断に ついては,京都市の合目的的な裁量にゆだねられており,その裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したような特段の事情が認められない限り,違法となることはないと解するのが相当である。すなわち,その裁量判断については,勤務日数に応じて支給しないことが一見明白に不合理であるなど,特段の事情がない限り,尊重されるべきである。 (イ)また,そもそも同項ただし書の「特別の定め」は,条例で定められるものであるが,条例は市議会の適法な議決を経て制定され,その内容 に民主的な正当性が認められるものであるから,条例の規定が一見明白に不合理といえるものでない限り,市議会の判断が尊重されるべきであり,当該規定は違法無効とはいえない。 ウ本件各規定の適法性(ア)本件各委員会は,京都市の執行機関であり(法180条の5第1項),その担任する事務につき,自らの判断と責任において,誠実に管理し及び執行する義務を負い(法138条の2),その権限の範囲内にあっては相互に独立の関係にあり,普通地方公共団体の長と同様,最終的な意思決定機関として,その職責は,具体的に発生した事務量にかかわらず,年間を通じ,常時継続する性質のものである。 このような本件各委員会の委員の職責の重大性にかんがみると,その報酬については,勤務日数のみで評価することが困難であり,勤務日数に応じて支給することは妥当でない。 (イ)教育委員会の職務内容等a教育委員会は,地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)2条の規定により設置される執行機関であり,同法に基づき,学校その他の教育機関を管理し,学校の組織編制,教育課程,教科書その他の教材の取扱い及び教育職員の身分取扱いに関する事務を行い,並びに社会教育その他教育,学術及び文化に関する事務を管理し及びこれを執行することとされて を管理し,学校の組織編制,教育課程,教科書その他の教材の取扱い及び教育職員の身分取扱いに関する事務を行い,並びに社会教育その他教育,学術及び文化に関する事務を管理し及びこれを執行することとされている(法180条の8)。具体的には,地教行法23条各号に掲げる教育に関する事務を管理し,及び執行するものとされ,同法24条の規定により長の権限に属するものを除き,当該普通地方公共団体の教育に関する事務を広く担うものとされている。また,これらの事務について,法律,条例等に基づき教育委員会規則を制定するという準立法的権限も有している。つまり,教育委員会は,行政権限及び準立法的権限を行使する独 立した教育行政の専門機関であり,委員の職務内容は非常に重大である。 b教育委員会の委員が取り組む業務は,教育行政全般の多岐にわたるため,委員は,教育委員会の会議以外にも教育行政に関する知識の習得,情報収集及び研究等日々研さんに勤める必要があるほか,教育委員協議会(勉強会)を開催して,事務局への質疑を行ったり,委員としての意見を述べたりして,実際に教育委員会の会議に提案される議案の内容を事前に検討する必要があるところ,教育委員会の委員は,会議等に出席しているとき以外にも職務に携わっているため,会議等に出席している時間以上に職務に拘束されているのであり,委員の本来の職業(大学教授等)に係る活動に一定の制約が加わることとなる。 (ウ)選挙管理委員会の職務内容等a選挙管理委員会は,法181条1項の規定により設置される執行機関であり,法律又はこれに基づく政令の定めるところにより,当該普通地方公共団体が処理する選挙に関する事務等を管理するものとされている(法186条)。具体的には,市会議員及び市長の選挙の管理,各選挙の事務を管理執行する区選挙管理委員会の めるところにより,当該普通地方公共団体が処理する選挙に関する事務等を管理するものとされている(法186条)。具体的には,市会議員及び市長の選挙の管理,各選挙の事務を管理執行する区選挙管理委員会の指揮監督,市会議員及び市長の選挙又は当選の効力に係る異議の申出に対する決定,農業委員会委員選挙人名簿に関する事務,直接請求に関する事務等を処理することとされている。また,これらの事務について,法律,条例等に基づき選挙管理委員会規程を制定するという準立法的権限も有している。つまり,選挙管理委員会は,行政権限及び準立法的権限を行使する独立した選挙行政の専門機関であり,委員の職務内容は非常に重大である。 b選挙管理委員会の委員が取り組む業務は,選挙行政全般の多岐にわたるため,委員は,定例の委員会以外にも選挙行政に関する知識の習 得,情報収集及び研究等日々の研さんに努める必要があるほか,事務局職員との事前相談や検討も行っている。 また,委員は,参議院の通常選挙等執行される時期があらかじめ予測できる選挙のほか,衆議院の解散による衆議院議院選挙や市長の任期途中での辞任又は解職による市長選挙,市議会議員の欠員に伴う補欠選挙等のように,執行される日程を予測し難い選挙についても対応することができるよう常時備えておく必要がある。諸選挙執行時には,短期間に数回の委員会を集中的(平成19年の市議会議員選挙では1か月間で3日,平成20年の市長選挙では3週間に3日)に開催し,多くの議案を処理している。これに加えて,開票作業にトラブルがあった場合,委員は,再集計を指示する等の対応を迅速に行うなど即応性が求められる。このように,選挙管理委員がその職務に拘束される度合いは,大きなものであるといわざるを得ない。 (エ)人事委員会の職務内容等a人事委員会は,地方公 る等の対応を迅速に行うなど即応性が求められる。このように,選挙管理委員がその職務に拘束される度合いは,大きなものであるといわざるを得ない。 (エ)人事委員会の職務内容等a人事委員会は,地方公務員法7条に基づき条例で設置される執行機関であり,京都市においては,京都市人事委員会設置条例に基づき設置されており,法律の定めるところにより,人事行政に関する調査,研究,企画,立案,勧告等を行い,職員の競争試験及び選考を実施し,並びに職員の勤務条件に関する措置の要求及び職員に対する不利益処分を審査し(不服申立て等の制度。準司法的権限),並びにこれについて必要な措置を講ずることとされている(法202条の2第1項)。 具体的には,地方公務員法8条1項各号に掲げる事務のほか,職員団体の登録や,京都市職員の倫理の保持に関する条例に基づく事務などを処理するとともに,これらの事務に関し,規則その他の規定を定める権限(準立法的権限)が付与されている。つまり,人事委員会は,行政権限,準立法的権限及び準司法的権限を行使する中立的かつ独立 した人事行政の専門機関であり,委員の職務内容は非常に重大である。 b人事委員会の委員が取り組む業務は,人事行政全般の多岐にわたるため,委員は,委員の本来専門とする分野にかかわらず,人事行政全般に関する知識の習得,情報収集及び研究等日々研さんに努める必要があるほか,人事委員会の会議以外にも事務局職員との事前相談や検討,関係者からの意見聴取を日常的に行った上で,給与に関する報告及び勧告や不利益処分に関する不服申立ての審査(口頭審理も実施)をはじめとする職務を行っており,このように,会議等に出席しているとき以外にも職務に携わっているため,会議等に出席している時間以上に委員は職務に拘束されているのであり,委員の本来の職業(弁 実施)をはじめとする職務を行っており,このように,会議等に出席しているとき以外にも職務に携わっているため,会議等に出席している時間以上に委員は職務に拘束されているのであり,委員の本来の職業(弁護士等)に係る活動に一定の制約が加わることとなる。 (オ)有為な人材確保の必要性本件各委員会の委員らは,その職務・職責に堪え得る人材が選任されなければならないところ,その身分上の制限,求められる資格,職務による拘束を受け又は本来の職業に係る活動が制約を受けることなどの事情にもかかわらず,有為な人材を確保するためには,日額報酬制による処遇では十分ではなく,月額で報酬を支給する必要がある。 (カ)報酬の金額に関して京都市の常勤職員のうち,本件各委員会の委員と同等の職責を有する職員の1日当たりの給与の額(各種手当を加算した後の額)は,別紙4のとおりである。 他の指定都市の対応する行政委員の報酬額と,本件各委員会の委員の報酬額を比較すると,別紙5のとおりである。 (キ)以上によれば,本件各規定を定めたことには,裁量権の逸脱・濫用はなく,本件各規定は何ら法203条の2第2項に違反しない。 エ原告らの主張に対する反論等 (ア)原告らは,本件各規定が,法2条14項及び地方財政法4条1項が定める必要最少限度の経費の支出の原則に違反する旨主張するが,これらは,必要最少限度の経費での事務処理を定めているものであって,本件各委員らについては,当該報酬の額が必要最少限度の経費であるか否か,つまり,本件各委員らの行っている業務の対価として高すぎるか否かが問題となるにすぎず,報酬の支給単位が日額であるか月額であるかという点とは関係がない。 (イ)原告らは,本件条例2条15号に基づいて,日額2万2000円の報酬が妥当である旨主張しているが,上記規定は,同項 るにすぎず,報酬の支給単位が日額であるか月額であるかという点とは関係がない。 (イ)原告らは,本件条例2条15号に基づいて,日額2万2000円の報酬が妥当である旨主張しているが,上記規定は,同項1~14号に規定する職員以外の非常勤職員についての規定であり,執行機関である本件各委員会の委員に適用することを想定した金額設定となっていない。 (ウ)仮に,法203条の2第2項ただし書の「特別の定め」には,月額報酬制をとるのを相当とするような特別な事情があることを要すると解するとしても,執行機関であることや身分上の制限,その他勤務の実情からすると,本件各委員会の委員については,月額報酬を支給することに特別の事情があるといえる。 オまとめしたがって,本件各規定は,法203条の2第2項ただし書に基づく適法なものであり,本件各規定に基づいて本件各委員らに対して月額報酬を支給したことに,何ら違法はない。 (2)本件各規定に従って支給された報酬の不当利得返還請求権の有無及び同請求権を行使しないことの違法性の有無(原告らの主張)ア本件各規定は無効であり,その無効な規定に基づいて本件各委員らに対して支給された報酬は,法律上の原因がないものとして基本的に不当利得となるが,勤務日数に応じた日額報酬分の支給は適法であるといえるから, 本件条例2条15号に規定のある日額2万2000円を勤務日数に乗じた金額を,実際に本件各委員らに支給された金額から差し引いた額が,本件各委員らが法律上の原因なく取得した不当利得となる。 イ本件各規定が無効であり,不当利得返還請求権が発生している場合には,被告は,当然にその請求権を行使しなければならず,これを怠ることは違法である。よって,被告は,本件各委員らに対し,上記の金額の返還を請求するべきである。 (被告の主張) 求権が発生している場合には,被告は,当然にその請求権を行使しなければならず,これを怠ることは違法である。よって,被告は,本件各委員らに対し,上記の金額の返還を請求するべきである。 (被告の主張)ア本件各規定は違法無効でないこと本件各規定は,市議会の適法な議決を経て制定されたものであり,その内容に民主的な正当性が認められるから,本件各規定が一見明白に不合理といえるものでない限り,市議会の判断が尊重されるべきであり,本件各規定を違法無効とすべきではなく,本件各規定に基づいて支給された報酬について不当利得返還請求権が発生しているとすることもできない。 イ本件各規定が違法であるとしても報酬の支給が違法でないことまた,仮に本件各規定が違法であったとしても,普通地方公共団体の長としては,議会の議決を経て定められた条例を自らの判断で無効として報酬を支出しない措置をとることは原則として許されない。当該報酬に関する条例の規定の内容が著しく合理性を欠き,そのためにこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合でない限り,普通地方公共団体の長は,条例に従って当該報酬の支給を行うべき義務がある。 本件各規定は,その内容が著しく合理性を欠き,そのためにこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するとはいえない。したがって,京都市長が本件各規定に基づいてした報酬の支給は,本件各規定の違法性を承継せず,本件各委員らの受領した報酬も,法律上の原因に基づくものといえる。 ウ本件各規定が違法であるとしても不当利得返還ができないこと仮に,違法な条例に基づいて報酬等の支給がされたとしても,支給を受けた職員との関係において無効であるとして不当利得返還を肯定できるのは,少なくとも,当該条例が違法であることが明白である場合,すなわち, ,違法な条例に基づいて報酬等の支給がされたとしても,支給を受けた職員との関係において無効であるとして不当利得返還を肯定できるのは,少なくとも,当該条例が違法であることが明白である場合,すなわち,職員が当該条例が違法であることを当然知り,又は知り得べかりし場合に限られるというべきである。 本件については,行政委員会の委員の報酬を月額で支給することは,全国の地方自治体において広く一般に行われていることなどの事情を考慮すると,本件各委員らが本件各規定が違法であることを当然知り,又は知り得べかりし場合とはいえないことが明らかである。 エ不当利得返還を求めることの信義則違反委員等の任命行為は,職員の同意に基づく行政行為であり,本件各委員会の委員は月額の報酬を受けることを条件として委員になることに同意し,任命されているところ,本件各規定が一見明白に不合理といえないものであるにもかかわらず,当該報酬を不当利得として返還させることは,上記同意の条件に反し,信義則に反し許されない。 オまとめよって,京都市は,本件各委員らに対して,不当利得返還請求権を有していないし,被告がその職務上負担する財務会計法規上の義務に違反して不当利得返還請求権の行使を違法に怠っているともいえない。 第3当裁判所の判断 争点(1)について(1)法203条の2第2項の趣旨及び同項ただし書の「特別の定め」に関する裁量の範囲について法203条の2第2項は,普通地方公共団体の非常勤職員(短時間勤務職員を除く。)に対する報酬について,その本文において,その勤務日数に応 じてこれを支給すると規定する一方,そのただし書において,条例で特別の定めをした場合はこの限りでない旨を規定している。 上記本文は,非常勤職員に対する報酬が,常勤職員に対する給与と異なり,いわゆる生活給と れを支給すると規定する一方,そのただし書において,条例で特別の定めをした場合はこの限りでない旨を規定している。 上記本文は,非常勤職員に対する報酬が,常勤職員に対する給与と異なり,いわゆる生活給としての要素を含まず,純粋に勤務に対する反対給付としての性質のみをもつことから,勤務の量(日数)に応じて支給されるべきことを明らかにしたものと解される。他方,非常勤職員には多種多様な職種が含まれることから,同項ただし書を設け,非常勤職員のうちの一部の者については,各普通地方公共団体が,各地の実情や当該非常勤職員の勤務の態様,職務の内容や責務等に照らし,日額制以外の方法による報酬を支給することができることとしたものと解される。 そして,非常勤職員につき,いかなる場合に条例によって日額制以外の報酬を定めることができるかについては,同項ただし書の条文上何ら限定はなく,同項ただし書には何らの基準や実体的要件も規定されず,限定列挙の規定形式も採用されていないところ,そもそも法203条の2第2項に相当する規定は,昭和31年法律第147号による地方自治法の改正により新設されたものであり,その改正経緯として,各行政委員の報酬について,その職務の内容や勤務の態様等に照らし,一律に日額をもって支給するのではなく,この点については普通地方公共団体の議会の自主的判断を尊重することとして設けられたもので,同項ただし書による条例の定めによるものとして各行政委員の報酬が念頭に置かれていたと認められること(乙2~5),地方公共団体には団体自治が認められ,その自主立法権は尊重されなければならないことなどを総合すると,いかなる場合に日額制以外の方法による報酬支給が認められるかは,普通地方公共団体の議会の広範な裁量にゆだねられているものと解され,当該非常勤職員の職務の内容や勤務の ばならないことなどを総合すると,いかなる場合に日額制以外の方法による報酬支給が認められるかは,普通地方公共団体の議会の広範な裁量にゆだねられているものと解され,当該非常勤職員の職務の内容や勤務の態様等に照らし,勤務日数によらずに報酬を支給することが著しく不合理であるとか,月額にすることによって著しく不当に高額の報酬を定めているといった特別の事情が ない限り,月額報酬制を条例で定めることが,上記裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法となることはないというべきである。 これに対し,原告らは,法203条の2第2項ただし書により条例で非常勤職員に対する報酬について月額をもって定めることができるのは,その勤務実態が常勤職員と異ならず,生活給としての面を考慮する必要がある場合に限られるとか,仮にそうでないとしても,月額報酬制をとるのを相当とするような特別な事情があることを要すると解するべきであるなどと主張しているが,条文上このような限定は存しないことに加え,上記の改正経緯等も併せ考慮すると,同項ただし書が適用される場合を限定的に捉える旨の原告らの上記主張は採用できない。 (2)本件各規定の合理性等についてア教育委員会の委員の職務内容等(ア)教育委員会は,普通地方公共団体に置かれる執行機関であり,学校その他の教育機関を管理し,学校の組織編制,教育課程,教科書その他の教材の取扱い及び教育職員の身分取扱いに関する事務を行い,並びに社会教育その他教育,学術及び文化に関する事務を管理し及びこれを執行する(法180条の5第1項1号,180条の8)。具体的には,地教行法23条各号に掲げる教育に関する事務を管理し及び執行する。 (イ)委員は,当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者で,人格が高潔で,教育,学術及び文化に関し識見を有する の8)。具体的には,地教行法23条各号に掲げる教育に関する事務を管理し及び執行する。 (イ)委員は,当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者で,人格が高潔で,教育,学術及び文化に関し識見を有するもののうちから,地方公共団体の長が,議会の同意を得て任命する(地教行法4条)。また,委員は,地方公共団体の議会の議員若しくは長,地方公共団体に執行機関として置かれる委員会の委員若しくは委員又は地方公共団体の常勤の職員等との兼職が禁止されるほか(同法6条),守秘義務が課されている(同法11条)。 (ウ)京都市では,教育委員会の各委員は,教育委員会議に出席し,教科 書の採択,学校教育の重点(京都市立学校の教育の基本方針)の決定,京都市立高校への入学者定員の決定,予算に係る市長への意見申出の議決,組織・人事の決定,教育委員会規則の制定及び改廃などを行うほか,会議における議案事項や教育課題について研さんを積むために行われる教育委員協議会への出席,市議会への出席,他自治体との連携及び情報交換,式典への出席,教育活動等の視察や意見交換,市長等との懇談等を行っている。(乙34,弁論の全趣旨)イ選挙管理委員会の委員の職務内容等(ア)選挙管理委員会は,普通地方公共団体に置かれる執行機関であり,法律又はこれに基づく政令の定めるところにより,当該普通地方公共団体が処理する選挙に関する事務等を管理する(法180条の5第1項2号,181条1項,186条)。 (イ)委員は,選挙権を有する者で,人格が高潔で,政治及び選挙に関し公正な識見を有するもののうちから,普通地方公共団体の議会においてこれを選挙して任命される(法182条1項)。また,委員は,地方公共団体の議会の議員及び長,国会議員,検察官,警察官,収税官吏,公安委員会の委員等との兼職が禁止されるほか 地方公共団体の議会においてこれを選挙して任命される(法182条1項)。また,委員は,地方公共団体の議会の議員及び長,国会議員,検察官,警察官,収税官吏,公安委員会の委員等との兼職が禁止されるほか(法182条7項,193条,141条1項,166条1項),守秘義務が課されている(法185条の2)。 (ウ)京都市では,毎月1回定例会が行われ,選挙の管理執行に関する事項,選挙の啓発等に関する事項,選挙人名簿に関する事項などが議題となっている。その他,指定都市選挙管理委員会連合会通常会議への出席,式典への出席,啓発活動を行うほか,選挙時には,告示日以後選挙の執行期間中は基本的に待機し,投開票日においては投票終了後事務局において開票終了まで勤務し,その他立候補予定者説明会等も行う。(乙36,弁論の全趣旨) ウ人事委員会の委員の職務内容等(ア)人事委員会は,普通地方公共団体に置かれる執行機関であり(法180条の5第1項3号),指定都市では地方公務員法7条に基づき条例で設置されるところ,京都市においては,京都市人事委員会設置条例に基づき設置されている。法律の定めるところにより,人事行政に関する調査,研究,企画,立案,勧告等を行い,職員の競争試験及び選考を実施し,並びに職員の勤務条件に関する措置の要求及び職員に対する不利益処分を審査し,並びにこれについて必要な措置を講ずる(法202条の2第1項)。具体的には,地方公務員法8条1項各号に掲げる事務などを処理する。 (イ)委員は,人格が高潔で,地方自治の本旨及び民主的で能率的な事務の処理に理解があり,かつ,人事行政に関し識見を有する者のうちから,議会の同意を得て,地方公共団体の長が選任する(地方公務員法9条の2第2項)。また,委員は,地方公共団体の議会の議員及び当該地方公共団体の地方公 あり,かつ,人事行政に関し識見を有する者のうちから,議会の同意を得て,地方公共団体の長が選任する(地方公務員法9条の2第2項)。また,委員は,地方公共団体の議会の議員及び当該地方公共団体の地方公務員との兼職が禁止されているほか(同条9項),守秘義務が課されている(同条12項,同法34条1項)。 (ウ)京都市では,人事委員会の委員は,毎月3回行われる定例会等に出席して,給与に関する報告及び勧告,議会及び長に対する意見の申出,不服申立てに対する裁決又は決定,措置要求の審査判定,職員任用,規則の制定及び改廃,職員団体登録及び取消し,倫理の保持に関する事務,市長に対する業務状況報告,労働基準監督機関業務についての意思決定を行っている。その他,職員に対する不利益処分についての不服申立てに対する口頭審理の実施,市会議長及び市長に対する職員の給与に関する報告及び勧告,職員団体からの意見聴取,他都市会議への出席,人事委員会事務局職員の勤務条件に関する随時の処理などの業務を行っている。(乙35,弁論の全趣旨) エ検討以上のような本件各委員会の委員の職務の内容,すなわち,一定の識見を有する者から選ばれ,重要な職務権限を行使することが予定されていることなどや,守秘義務等のその職務上の義務ないし地位に加え,本件各委員会は,京都市の執行機関として,その担任する事務につき,自らの判断と責任において,誠実に管理し及び執行する義務を負っている(法138条の2)などのその職責の重大性等にもかんがみると,本件各委員会の委員に対し,その報酬を日額でなく月額で支給することは,何ら不合理ではないというべきである。 加えて,本件各規定の定める報酬の金額は,他の指定都市における報酬額(別紙5のとおりと認められる。弁論の全趣旨)と比較しても,その金額が不当に高額であ ことは,何ら不合理ではないというべきである。 加えて,本件各規定の定める報酬の金額は,他の指定都市における報酬額(別紙5のとおりと認められる。弁論の全趣旨)と比較しても,その金額が不当に高額であるとはいえず,この点でも本件各規定は不合理ではない。 (3)以上によれば,本件各規定が定められたのは,京都市議会の裁量権の範囲内であって,その裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとはいえず,法203条の2第2項に違反するものではない。 したがって,本件各規定は適法であるから,その余の争点について判断するまでもなく,京都市は,本件各委員らに対して,本件各規定に基づいて支給された月額報酬に関し不当利得返還請求権を有していないことが明らかである。 結論 以上のとおり,原告らの請求(ただし,原告Aの請求に関しては,同人の死亡により当然に訴訟が終了したため,その余の原告らの請求に限る。)はいずれも理由がないから棄却する。 京都地方裁判所第3民事部裁判長裁判官瀧華聡之 裁判官梶山太郎裁判官高橋正典
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