平成14(あ)1396 被告人Aに対する公正証書原本不実記載,同行使,有印私文書偽造,同行使,被告人Bに対する公正証書原本不実記載,同行使各被告事件

裁判年月日・裁判所
平成17年11月15日 最高裁判所第二小法廷 決定 棄却 東京高等裁判所 平成13(う)1970
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判決文本文2,796 文字)

主文 本件各上告を棄却する。 理由 被告人Aの弁護人玉井真理子の上告趣意は,憲法違反及び判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であり,被告人A本人の上告趣意は,事実誤認の主張であり,被告人Bの弁護人鈴木久彰の上告趣意は,事実誤認の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。 なお,所論にかんがみ,第1審判決判示第1の公正証書原本不実記載,同行使罪の成否について,職権で判断する。 1 原判決の認定及び記録によると,本件の事実関係は,次のとおりである。 (1) 被告人AはC株式会社(以下「C」という。)の代表取締役であるが,Cは,平成4年ころから資金繰りに窮し,その扱うプロパンガス,灯油等の古くからの卸元であるD株式会社(以下「D」という。)に支援を求め,同年4月,Cの関連会社であるE株式会社(定款に株式譲渡制限の定めがあり,後に「F株式会社」と商号が変更された。以下「F」という。)の営業権をDの子会社に売却し,その後,Cのプロパンガス顧客の液化石油ガス販売施設と営業権を担保に供するなどして,Dから資金を借り入れ,平成5年5月31日の時点では借入金は合計2億3000万円となっていた。そして,同日,C,D等の間で,①債権者をD,債務者をF,連帯保証人をC及び被告人Aとして,DがFに弁済期日を平成6年3月25日として6億3000万円を貸し付ける旨の「金銭消費貸借契約並びに抵当権設定契約書」(Fが,下記②によりCから譲り受けた燃料事業の営業関係設備をDに譲渡担保に供するとともに,C所有の不動産に抵当権を設定することなどを内容とする。),②CがFにCの燃料部門の営業用財産及び営業権(以下,併せて「本件営業権」という。)を代金6億3000万円で譲渡する旨の「営業譲渡契約書」, C所有の不動産に抵当権を設定することなどを内容とする。),②CがFにCの燃料部門の営業用財産及び営業権(以下,併せて「本件営業権」という。)を代金6億3000万円で譲渡する旨の「営業譲渡契約書」,③被告人- 1 -Aが全株式を所有するFの株式をDに代金1000万円で全部譲渡する旨の記載がある「株式譲渡証」等が交わされた。そして,DからFに貸付金として4億円が交付されるとともに,Fが,CのDに対する既存の前記借入金債務2億3000万円を承継した。Fはこの4億円を本件営業権の譲渡代金としてCへ支払った(以下,これら一連の法律行為を「本件契約」という。)。 (2) 本件契約は,Cが本件営業権をFに6億3000万円の対価で譲渡し,その資金としてDがFに新たに4億円を融資するとともに,CのDに対する2億3000万円の前記債務をFが承継することとしたものであり,実質的には,DからFを介してCに合計6億3000万円の融資がされたものである。そして,本件契約に際して,Dから被告人Aに対し,上記の6億3000万円が弁済された場合には,同被告人がDに譲渡したFの全株式を同被告人又はその指定する者に譲渡することを予約する旨の念書が渡されている。 (3) 本件契約に伴い,被告人Aとその親族らがFの取締役を辞任し,代表取締役を含む取締役の過半数がDからの派遣者により占められた。また,本件契約に基づく本件営業権の譲渡に伴い,各営業所の営業許可名義もCからFへ順次変更されていった。 (4) その後,6億3000万円の上記債務は当初約定された弁済期やその後変更された弁済期に返済されなかったが,被告人Aは,平成8年2月,被告人Bらと意を通じて,Fの当時の役員を全員解任し,被告人Aらを取締役又は監査役に選任した旨を内容とするFの臨時株主総会議事録及び被告人AをFの 済期に返済されなかったが,被告人Aは,平成8年2月,被告人Bらと意を通じて,Fの当時の役員を全員解任し,被告人Aらを取締役又は監査役に選任した旨を内容とするFの臨時株主総会議事録及び被告人AをFの代表取締役に選任したこと等を内容とするFの取締役会議事録を添付して,Fの株式会社変更登記申請書を法務局登記官に提出してFの商業登記簿の原本にその旨の記載をさせた。これらの手続はFの株式の所有者であるDが関与することなく行われた。 2 所論は,Fの株式は,被告人AからDに真実は譲渡担保に供されたものであ- 2 -って,その株主共益権は,被告人Aの下にとどまっており,被告人Aは,株主共益権に基づきFの役員の選任及び解任を行ったというものである。 前記1の(1)及び(2)の事実関係によれば,前記株式の譲渡は単純な売買ではなく,DのFに対する6億3000万円の貸金債権の弁済を担保するために行われた譲渡担保と認められる。 株式を譲渡担保に供した場合の株主共益権の帰属については,その株式の内容,譲渡担保契約に至る経緯,契約の内容等諸般の事情を考慮して,契約当事者の合理的な意思解釈によって決すべきである。このような見地から考えると,Fは,定款に株式譲渡制限の定めのある非上場会社であり,本件契約に至る経緯,契約内容等に照らせば,本件譲渡担保は,単にFの株式の交換価値の把握を目的にしたものにとどまらず,Dにおいて,CからFに譲渡された本件営業権を貸付金の実質的な担保として確保する目的で,Fの株式を取得することによって,Fの経営権を確保しようとしたものであるということができ,このような目的は,Dにおいて,Fの株主共益権を取得しない限り,十分に達成することができないものということができる。契約当事者の認識も同様であったとみることができ,本件契約に伴い,Fの取 とができ,このような目的は,Dにおいて,Fの株主共益権を取得しない限り,十分に達成することができないものということができる。契約当事者の認識も同様であったとみることができ,本件契約に伴い,Fの取締役の過半数がDからの派遣者で占められたことは,このことを示すものである。 反面,本件契約に際し,Fの株主共益権を被告人Aの下にとどめておくような協議がされた形跡は全くない。 以上によれば,本件譲渡担保の設定に伴い,契約当事者間において,株主共益権をDに帰属させる旨の合意があったものと認められる。 【要旨】そうすると,本件登記申請時,被告人Aには,Fの株主共益権を行使する権限がなく,また,そのことを被告人両名も認識していたと認められるから,被告人両名につき本件公正証書原本不実記載,同行使の罪の成立を認めた原判断は,正当である。 - 3 -よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官今井功裁判官滝井繁男裁判官津野修裁判官中川了滋裁判官古田佑紀)- 4 -

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