1 主 文1 原判決中、控訴人又は附帯控訴人である原告らの被告東京電力ホールディングス株式会社に関する請求を棄却した部分を次のとおり変更する。 2 被告東京電力ホールディングス株式会社は、別紙2認容額一覧表の追加認容額欄に金額を記載した原告らに対し、原審認容額のほかに、前記追加認容額欄記載の各金員及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 第1項の原告らの被告東京電力ホールディングス株式会社に対する当審における変更後の請求のうち、前項の原告らの主位的請求とその余の予備的請求、その余の原告らの主位的請求と予備的請求をいずれも棄却する。 4 原判決中、被告国の敗訴部分を取り消し、被控訴人である原告らの被告国に対する請求をいずれも棄却する。 5 第1項の原告らの被告国に対する控訴又は附帯控訴、被告東京電力ホールディングス株式会社の控訴をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は、第2項の原告らと被告東京電力ホールディングス株式会社との間では、第1、2審を通じて5分の1を同被告の負担、その余を原告らの負担、その余の原告らと同被告との間では、原告らの控訴又は附帯控訴費用を原告らの負担、同被告の控訴費用を同被告の負担とし、第4項の原告らと被告国との間では第1、2審とも原告らの負担とする。 7 本判決主文2項は、仮に執行することができる。 事実及び理由第1 当事者の求めた裁判1 原告1339名の控訴又は附帯控訴⑴ 原判決中、主文1項の原告らに関する部分を次のとおり変更する。 ⑵ 被告らは、連帯して、前項の原告らに対し、各101万円及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らに関する部分を次のとおり変更する。 ⑵ 被告らは、連帯して、前項の原告らに対し、各101万円及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 2 被告らの原告1410名に対する控訴原判決中、被控訴人である原告らの請求を認容した部分を取り消し、取消部分に係る同原告らの請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要1 津波による原子力発電所の事故といわき市における被害原審における原告らの請求、事案の概要、争点、争点についての当事者の主張は、原判決「事実及び理由」第1ないし第4のとおり(以下略称は原判決と同じ。)。 平成23年3月11日、東北地方太平洋沖地震による津波により、福島第一原子力発電所において、浸水した非常用電源設備が機能を失い、全電源を喪失して、原子炉を冷却できなくなり、原子炉が炉心溶融を起こし、原子炉建屋が水素爆発し、大量の放射性物質が大気中に放出されて拡散する事故が発生した。 事故発生の経過と被害、賠償金の支払状況等は、原判決「事実及び理由」第5の認定事実のうち、1(地震・津波に関する一般的知見等)、2(本件原発の設置許可と平成11年頃までの地震・津波の知見の状況等)、3(津波評価技術、長期評価の成立、公表等とそれに対する被告らの対応等)、4(確率論的安全評価、溢水勉強会、耐震バックチェック(中間報告まで)等)、5(貞観津波の知見状況、本件試算、第4期津波評価部会等)、6(本件事故の発生状況等)、8(本件事故の推移、いわき市の被害状況等)、9(本件事故に係る賠償の指針、原告らに対する賠償金の支払状況等)のとおり。原告らに対する現時点での被告東電による賠償金の支払状況は、別紙3賠償額一覧表のとおりである。 原告らが事故当時居住していた福島県いわき市では の指針、原告らに対する賠償金の支払状況等)のとおり。原告らに対する現時点での被告東電による賠償金の支払状況は、別紙3賠償額一覧表のとおりである。 原告らが事故当時居住していた福島県いわき市では、原発から半径30km圏内の小川町、川前町、久之浜町及び大久町の一部の住民に対し、平成23年3月15日午前11時に屋内退避の指示がされたが、同年4月22日午前9時44分、避難区域の見直しにより屋内退避指示が解除された。原発から半径30km圏外のその他の地域の住民には、避難指示等はされず、福島市や郡山市などとともに自主的避難等対象区域として、原賠審の中間指針に基づき被告東電による賠償がされている。 3 本件原発といわき市の位置関係及び避難指示区域等は、別紙4のとおりである。 2 被告東電による賠償金の支払⑴ 自主的避難等対象区域① 別紙3賠償額一覧表①の包括慰謝料 一般大人8万円、子供・妊婦40万円本件事故発生当時に、いわき市を含む自主的避難等対象区域に生活の本拠としての住居があった者について、放射線被爆への恐怖や不安、これに伴う行動の自由の制限等により正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛に対する賠償として、18歳以下の子供(平成4年3月12日から平成23年12月31日までに出生した者)と妊婦(平成23年3月11日から同年12月31日までの間に妊娠していた期間がある者)に対しては、平成23年3月11日の本件事故発生から平成23年12月31日までの間に発生した損害に対する定額賠償として40万円を支払い、その他の一般大人に対しては、平成23年3月11日から平成23年4月22日までの間に発生した損害に対する定額賠償として8万円を一律で支払う。 ② 別紙3賠償額一覧表②の包括慰謝料 子供・妊婦 い、その他の一般大人に対しては、平成23年3月11日から平成23年4月22日までの間に発生した損害に対する定額賠償として8万円を一律で支払う。 ② 別紙3賠償額一覧表②の包括慰謝料 子供・妊婦8万円自主的避難等に係る損害に対する追加賠償として、平成24年1月1日から同年8月31日までの間に18歳以下であった期間がある子供(平成5年1月2日から平成24年8月31日までに出生した者)と妊婦(平成24年1月1日から同年8月31日までの間に妊娠していた期間がある者)に対し、平成24年1月1日から同年8月31日までの精神的損害に対する賠償として8万円の追加支払をする。 ③ 別紙3賠償額一覧表の追加的費用 各4万円本件事故発生当時に、自主的避難等対象区域に生活の本拠としての住居があった者につき、平成23年3月12日から平成24年8月31日までに出生した者も含め、自主的避難等対象区域での生活において負担した追加的費用(清掃業者への委託費用など)や前記の賠償金額を超過して負担した生活費増加費用や移動費用等の追加的費用等に対する賠償として4万円の追加支払をする。 4 ⑵ 屋内退避区域① 別紙3賠償額一覧表③の包括慰謝料(旧屋内退避区域) 各70万円本件事故発生当時に、屋内退避区域に生活の本拠として住居があった者については、避難生活等による精神的損害について実際に避難したかどうかにかかわらず、平成23年3月11日から同年9月30日までを賠償対象期間として、月額10万円、合計70万円を支払う。別紙3賠償額一覧表③の包括慰謝料が72万円ないし76万円となっている者は、避難所への避難により、月額2万円(合計2万円ないし6万円)の加算がされている。 ② 別紙3賠償額一覧表①の包括慰謝料 子供・妊婦40万円平成23年4月2 円ないし76万円となっている者は、避難所への避難により、月額2万円(合計2万円ないし6万円)の加算がされている。 ② 別紙3賠償額一覧表①の包括慰謝料 子供・妊婦40万円平成23年4月23日から同年12月31日までの間に、屋内退避区域を含む避難等対象区域又は自主的避難等対象区域に避難又は滞在していた18歳以下の子供(平成4年3月12日から平成23年12月31日までに出生した者)と妊婦(平成23年3月11日から同年12月31日までの間に妊娠していた期間がある者)に対し、放射線被爆への恐怖や不安、これに伴う行動の自由の制限等により正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛に対する賠償として、40万円を支払う。本件の原告に妊婦はいない。 ③ 別紙3賠償額一覧表②の包括慰謝料 子供・妊婦8万円平成24年1月1日から同年8月31日までの間に避難等対象区域又は自主的避難等対象区域に避難又は滞在していた18歳以下の子供(平成5年1月2日から平成24年8月31日までに出生した者)と妊婦(平成24年1月1日から同年8月31日までの間に妊娠していた期間がある者)に対し、平成24年1月1日から同年8月31日までの精神的損害に対する賠償として8万円の追加支払をする。 ④ 別紙3賠償額一覧表の追加的費用 各4万円本件事故発生当時に屋内退避区域に生活の本拠としての住居があった者につき、平成24年8月31日までに出生した者も含め、屋内退避区域での生活において負担した追加的費用等に対する賠償として、4万円の追加支払をする。 5 3 本件原発への津波の想定と津波に対する原発の安全性確保のための規制津波により原子力発電所の施設が浸水すれば、浸水した非常用ディーゼル発電機やその他の電気設備が機能を失い、全電源を 5 3 本件原発への津波の想定と津波に対する原発の安全性確保のための規制津波により原子力発電所の施設が浸水すれば、浸水した非常用ディーゼル発電機やその他の電気設備が機能を失い、全電源を喪失して原子炉を冷却できなくなり、炉心溶融に至る重大事故が発生する危険が高くなることは、原子力発電所の安全確保についての常識であり、福島第一原発の施設は、敷地の高さを超える津波が来ることは想定せず、原判決別紙4-1の配置図のとおり配置されていた。 しかし、平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震の津波による福島第一原発の施設敷地の浸水は、1号機から4号機側主要建屋設置エリアの浸水高(小名浜港工事基準面(O.P.)からの高さを示す。以下同じ。)が、約11.5mから約15.5mとなり、同エリアの敷地高は、10mであることから、浸水深(地表面からの浸水の高さ)は約1.5mから約5.5mであり、同エリアの南西部では、局所的に、約16mから約17mの浸水高が確認され、浸水深は約6mから約7mであった(東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(政府事故調)中間報告書(甲A2)資料Ⅱ-11「福島第一原子力発電所における津波の調査結果(浸水高、浸水深及び浸水域)」、別紙5)。 福島県沖の地震による津波によって本件原発の敷地が浸水する危険性について、本件事故前に次のとおり想定されていた。 政府の機関である地震調査研究推進本部の地震調査委員会は、平成14年7月、長期的な観点での地震発生の可能性等についての評価につき、「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価」(別紙6、甲A24の2)を公表した。 長期評価は、三陸沖北部から房総沖にかけての日本海溝寄りの領域(別紙6の16頁図1)に関し、明治29年に発生した明治三陸地震と同様の地震が上記 活動の長期評価」(別紙6、甲A24の2)を公表した。 長期評価は、三陸沖北部から房総沖にかけての日本海溝寄りの領域(別紙6の16頁図1)に関し、明治29年に発生した明治三陸地震と同様の地震が上記領域内のどこでも発生する可能性があること、上記領域内におけるマグニチュード8クラスのプレート間大地震(津波地震)については、今後30年以内の発生確率が20%程度、今後50年以内の発生確率が30%程度と推定されること、津波マグニチュード8.2前後と推定されることを内容とするものであった。 6 被告東電は、平成20年1月、長期評価に基づいて本件原発に到来する可能性のある津波を評価することを東電設計に委託し、長期評価に基づいて、福島県沖から房総沖の日本海溝寄りの領域に、明治三陸地震の断層モデル(土木学会原子力土木委員会津波評価部会が平成14年2月に作成した「原子力発電所の津波評価技術」において示されたもの)を設定して津波の試算を行い、平成20年4月、本件原発の敷地の海に面した東側及び南東側の前面における波の高さが最も高くなる津波は、敷地の南東側前面において最大で15.707mの高さになるが、敷地の東側前面では敷地の高さ(10m)を越えず、主要建屋付近の浸水深は、4号機の原子炉建屋付近で約2.6m、4号機のタービン建屋付近で約2.0mとなるという試算を得ていた。試算の内容は、平成20年4月18日に東電設計が作成した資料「福島第一発電所 日本海溝寄りの想定津波の検討 Rev.1」(別紙7、甲A216)のとおりである。被告東電は、事故の4日前、平成23年3月7日になるまで、この試算結果を国の原子力安全・保安院に報告しなかった。 長期評価が公表された平成14年当時、原子力発電所施設の津波に対する安全性は、電気事業法に基づく技術基準と経済産業大臣 3月7日になるまで、この試算結果を国の原子力安全・保安院に報告しなかった。 長期評価が公表された平成14年当時、原子力発電所施設の津波に対する安全性は、電気事業法に基づく技術基準と経済産業大臣の技術基準適合命令による規制により確保され、電気事業法39条1項は、原子力発電所施設を含む事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物を省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならないと規定し、同条2項1号は、技術基準を定める省令について、事業用電気工作物が人体に危害を及ぼさないように定めることとしていた。 この規定に基づき、発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令4条1項は、原子炉施設が津波により損傷を受けるおそれがある場合は、防護施設の設置、基礎地盤の改良その他の適切な措置を講じなければならないと定めていた。 経済産業大臣による技術基準適合命令について、電気事業法40条は、経済産業大臣は、事業用電気工作物が同法39条1項の技術基準に適合しないと認めるときは、事業用電気工作物を設置する者に対し、その技術基準に適合するように事業用電気工作物を修理し、改造し、若しくは移転し、若しくはその使用を一時停止すべ7 きことを命じ、又はその使用を制限することができると定めていた。 4 請求及び争点原告らは、本件事故により大量の放射性物質が拡散し、放射線被爆による健康影響に対する恐怖・不安による精神的苦痛及び避難に伴って生じた精神的苦痛のほか、いわき市の豊かな自然環境、日々の安定した生業を破壊されたことなどによる精神的損害について、被告東電に対しては、主位的に民法709条、予備的に原子力損害の賠償に関する法律3条1項に基づき、被告国に対しては、国家賠償法1条1項に基づき、連帯して、原告らに対する慰謝料の支払を求めた。 て、被告東電に対しては、主位的に民法709条、予備的に原子力損害の賠償に関する法律3条1項に基づき、被告国に対しては、国家賠償法1条1項に基づき、連帯して、原告らに対する慰謝料の支払を求めた。 被告東電が原賠法3条1項に基づき本件事故による原告らの損害を賠償する責任を負うことは争いがなく、被告東電は、これまでの賠償金の支払により、本件事故による原告らに対する損害賠償責任を果たしていると主張する。 被告国の責任について、原告らは、長期評価の津波地震の想定を踏まえれば、遅くとも平成14年末には、福島第一原発は、技術基準にいう「原子炉施設が津波により損傷を受けるおそれがある場合」に該当し、被告東電は電気事業法39条によって適切な防護措置を講ずる技術基準適合性確保義務を負い、経済産業大臣は、同法40条によってこの被告東電の義務を確実に履行させるための技術基準適合命令を発令する規制権限を有するに至っていたのに、経済産業大臣が、この規制権限を行使しなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上、違法であると主張する。 被告国は、原子力規制機関が、長期評価の公表以降も被告東電に対して規制権限を行使してこなかったことについて、本件原発に主要建屋の敷地高を超える津波が到来することについて、作為義務の発生を基礎づける程度の予見可能性はなく、結果回避可能性についても、長期評価の見解を前提として想定される津波に対する対策がとられたとしても、本件津波により本件原発が全交流電源を喪失し事故が発生する事態を回避できたとはいえないから、規制権限の不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くとはいえず、被告国が規制権限を行使しなかったことが国家賠償法上違法と評価されることはないと主張する。 8 5 原審の判断原審は、被告東電は原賠法3条1項、被 脱して著しく合理性を欠くとはいえず、被告国が規制権限を行使しなかったことが国家賠償法上違法と評価されることはないと主張する。 8 5 原審の判断原審は、被告東電は原賠法3条1項、被告国は国家賠償法1条1項に基づき連帯して、1410名の原告に対し、別紙2認容額一覧表の原審認容額欄記載の金額の損害賠償(1人5万円ないし22万円、合計1億9996万円)とこれに対する事故の日である平成23年3月11日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で、原告らの請求を認容し、上記原告らのその余の請求と他の28名の原告の請求を棄却した。 いわき市の自主的避難等対象区域に居住していた原告には、事故があった平成23年3月から同年9月までの精神的苦痛に対する慰謝料として、一般大人について22万円、子供(平成4年3月12日から平成23年12月31日までに出生した者)と妊婦(平成23年3月11日から同年12月31日までの間に妊娠していた期間がある者)について62万円の慰謝料を認め、前記2⑴①、②の包括慰謝料のみを弁済として控除した金額を認容し、屋内退避区域に居住していた原告には、平成23年3月から平成23年12月までの慰謝料として、一般大人について85万円、子供について125万円の慰謝料を認め、前記2⑵①~③の包括慰謝料のみを弁済として控除した金額を認容した。 被告国の国家賠償責任については、長期評価に基づき東電設計が試算した津波を想定津波として本件原発の安全性を考えるほかなく、平成21年8月頃以降、即時に、この試算津波(明治三陸地震の波源モデルを福島県沖の日本海溝寄りに置いた場合における想定津波)に対する本件原発の安全性確保のため、被告国(経済産業大臣)は、電気事業法39条、40条に基づく技術基準適合命令を発令 (明治三陸地震の波源モデルを福島県沖の日本海溝寄りに置いた場合における想定津波)に対する本件原発の安全性確保のため、被告国(経済産業大臣)は、電気事業法39条、40条に基づく技術基準適合命令を発令すべき作為義務を負っていたのにこれを怠り、このような規制権限の不行使は、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められ、国家賠償法1条1項の適用上「違法」であると判断した。 6 被告らの控訴、原告らの控訴又は附帯控訴と請求原因の変更被告らは原判決が1410名の原告の請求を一部認容した部分を不服として控訴9 し、請求を全部棄却された28名と一部棄却された1311名の合計1339名の原告が、原判決が請求を棄却した部分の一部を不服として控訴又は附帯控訴した。 控訴又は附帯控訴をした原告らは、被告らの責任原因と原告らの精神的損害の内容については原審と同様に主張し、損害について当審において請求原因を変更し、本件事故後現在に至るまでの継続的な慰謝料の一部請求としての慰謝料92万円と弁護士費用9万円の合計101万円の損害賠償とこれに対する事故の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を被告らが連帯して各原告に対して支払うように、原判決を変更することを求めた。 原告らは、当審において変更した請求原因において、本件事故後およそ1か月間(平成23年4月22日まで)の慰謝料として、妊婦1人当たり50万円、その余の原告1人当たり25万円(平成24年1月1日以降に出生した者を除く。)、本件事故時からいわき市全域の空間放射線量率が毎時0.04μSv以下(本件事故前の自然放射線量)に至り、かつ、福島第一原子力発電所の各原子炉の廃止措置が終了するまで、子供(本件事故当時18歳未満ないし胎児であった者及び本件事故後に出生し 率が毎時0.04μSv以下(本件事故前の自然放射線量)に至り、かつ、福島第一原子力発電所の各原子炉の廃止措置が終了するまで、子供(本件事故当時18歳未満ないし胎児であった者及び本件事故後に出生した者)1人当たり月8万円、その余の原告ら1人当たり月3万円の慰謝料の請求権を主張し、その一部請求として、各原告について92万円の慰謝料と弁護士費用9万円の合計101万円の損害賠償を求める。 原賠法3条1項は、民法709条の不法行為による損害賠償責任の特則であるから、原賠法による賠償責任に争いがない本件事故による被告東電の損害賠償責任については、民法709条の適用はなく、被告東電に対して民法709条の不法行為による損害賠償を求める原告らの主位的請求は、理由がない。原審が、被告東電に対する原告らの主位的請求を棄却した判断は相当であり、この点での原告らの控訴は理由がない。 第3 当裁判所の判断の要旨1 被告国の責任について平成14年7月に長期評価が公表された当時、既に土木学会による津波評価技術10 という研究成果もあったのであるから、長期評価の公表後直ちに想定される津波の試算に着手すれば、平成14年末までには、福島第一原発の敷地高を越える15. 7mの津波を想定することは十分に可能であった。長期評価の津波地震の想定を踏まえれば、平成14年末には、福島第一原発は、技術基準にいう原子炉施設が津波により損傷を受けるおそれがある場合に該当し、被告東電は、電気事業法39条によって、長期評価によって想定される津波に対し、原子炉施設について適切な防護措置を講ずる技術基準適合性確保義務を負い、経済産業大臣は同法40条によって、この被告東電の義務を確実に履行させるための技術基準適合命令を発する規制権限を有するに至っていた。 津波により浸水すれば 置を講ずる技術基準適合性確保義務を負い、経済産業大臣は同法40条によって、この被告東電の義務を確実に履行させるための技術基準適合命令を発する規制権限を有するに至っていた。 津波により浸水すれば炉心溶融に至る重大事故が発生する危険がある原子力発電所については、そのような重大事故により大量の放射性物質が拡散すれば、地域住民の生命身体の危険が生じ、日常生活の平穏が侵害され、地域社会そのものが崩壊する重大な危険があるのであるから、運転中の原子力発電所の安全確保に関する電気事業法による規制権限をもっぱら委ねられていた経済産業大臣においては、原子力利用の安全の確保を旨とする原子力基本法の基本方針に従い、かつ、電気工作物の維持及び運用を規制することによって公共の安全を確保するという電気事業法1条に定める目的を踏まえ、平成14年末には、電気事業法40条に基づき、被告東電に対し、長期評価によって想定される津波に対し、原子炉施設について適切な防護措置を講ずるよう命ずる技術基準適合命令を発すべき義務をも負うに至ったと認めるのが相当である。 経済産業大臣が、長期評価が公表された翌年である平成15年以降も、平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震による津波によって本件事故が発生するまで、8年2か月もの間、このような技術基準適合命令を発しなかったことは、電気事業法40条により与えられた規制権限を適正に行使しなかったものであり、原子力基本法の基本方針に反し、電気事業法に違反する違法な不作為であったと認められる。 経済産業大臣が技術基準適合命令を平成14年末に発していれば、長期評価によ11 り想定される最大で15m程度の津波高さとなる想定津波を前提とし、かつ、「安全上の余裕」を確保した上で、防潮壁の設置、あるいは「重要機器室の水密化」及び「タービン ていれば、長期評価によ11 り想定される最大で15m程度の津波高さとなる想定津波を前提とし、かつ、「安全上の余裕」を確保した上で、防潮壁の設置、あるいは「重要機器室の水密化」及び「タービン建屋等の水密化」を講じ、本件津波が到来しても、非常用電源設備等が浸水して原子炉が冷却できなくなって炉心溶融に至るほどの重大事故が発生することを避けられた可能性は、相当程度高いものであったと認められる。 経済産業大臣が規制権限を行使しなかった不作為は、その規制権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等からみると、津波による浸水を防止するため原子炉施設を技術基準に適合させることは、炉心溶融に至る重大事故を防ぎ、地域住民の生命身体に対する重大な危険が生じないようにするための重要な権限であり、電気事業法に基づき、運転中の原子力発電所の施設を規制することにより公共の安全を確保する権限がもっぱら経済産業大臣に委ねられていたことからすれば、極めて重大な義務違反であることは明らかである。 長期評価の公表以前の我が国における原子炉施設の津波に対する安全性の確保については、安全設備等が設置される原子炉施設の敷地が浸水することを防ぐことを安全対策の基本とし、福島第一原発は敷地が浸水しない前提で設計されていたから、長期評価により敷地の浸水まで想定される津波が具体的に予見された以上、重要な施設が浸水するのを防止することが津波に対する安全性の確保という点で極めて重要であり、そのためには、直ちに想定される津波を試算した上で、原子炉の安全確保のために重要な施設が浸水しないように、防潮壁や防潮堤の設置、重要機器室及びタービン建屋等の水密化等の適切な対策を直ちに講ずる必要があった。 それにもかかわらず、被告東電は、平成14年7月末に公表された長期評価に基づく津波の ように、防潮壁や防潮堤の設置、重要機器室及びタービン建屋等の水密化等の適切な対策を直ちに講ずる必要があった。 それにもかかわらず、被告東電は、平成14年7月末に公表された長期評価に基づく津波の試算すら翌月に直ちに拒否し、平成20年4月に東電設計から福島第一原発の敷地高を5.7mも超える最大15.7mの津波が想定される試算を得ても、平成20年7月には津波への安全対策を先送りする決定をした。 長期評価によって想定された福島県沖での津波地震により、福島第一原発が津波により浸水して重大な事故を起こす危険が具体的に予見されたにもかかわらず、こ12 れに対する被告東電の対応は、原子力発電所の安全対策についての著しい責任感の欠如を示すものである。 また、長期評価公表以降、経済産業大臣が適時適切に規制権限を行使していれば、本件津波によって福島第一原発が炉心溶融を起こして爆発するなどという重大事故が起きなかった可能性は相当程度高かったものと認められるのであり、安全対策を講じさせるべき規制権限の行使を8年にわたり怠った国の責任も重大である。 その間、平成16年12月26日にスマトラ沖地震の津波によりインドのマドラス原発が冷却に必要なポンプ室が水没して運転不能になる深刻な事故を起こし、保安院は、この事故を契機に溢水勉強会で津波に対する原子力発電所の安全対策を検討し、平成18年には、施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性がある津波を想定し、既設の発電用原子炉施設について津波に対する安全性を再評価する耐震バックチェックも行っていたのであるから、なおさら責任は重い。 しかし、津波の想定や想定される津波に対する防護措置について幅のある可能性があり、とられる防護措置の内容によっては、必ず本件津波に対して施設の浸水を防ぐことができ、全 から、なおさら責任は重い。 しかし、津波の想定や想定される津波に対する防護措置について幅のある可能性があり、とられる防護措置の内容によっては、必ず本件津波に対して施設の浸水を防ぐことができ、全電源を失って炉心溶融を起こす重大事故を防ぐことができたはずであると断定することまではできない。 そうすると、平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震による津波によって浸水した福島第一原発が、炉心溶融を起こして水素爆発し、大量の放射性物質が拡散した事故により、原告らが被った損害について、国家賠償法1条1項の適用上、経済産業大臣が、技術基準適合命令を発する規制権限の行使を怠ったことによって、違法に原告らに損害を加えたとまでは評価することができない。 本件原発の安全管理について一次的に責任を負うのは、いうまでもなく被告東電であり、その関係において、被告国の責任は二次的なものではある。しかし、原子力発電所の設置及び運営は、原子力利用の一環として、国民生活及び国民経済の維持、発展に不可欠なエネルギー政策を踏まえたものであり、その安全性の確保についても、深刻な災害の発生を未然に防止するため、被告国が、その設置の許可から13 その後の各段階における規制を通じて、万全を期すことを前提としていた。 経済産業大臣の技術基準適合命令も、稼働中の原子炉施設について、周辺住民等の生命、身体に対する危害を防止すること等を目的として、その安全性を確保するために付与された重要な規制権限である。 このような事情に鑑みれば、経済産業大臣が、長期評価により福島県沖を震源とする津波地震が想定され、津波による浸水対策を全く講じていなかった福島第一原発において重大な事故が発生する危険を具体的に予見することができたにもかかわらず、長期評価によって想定される津波による浸水 する津波地震が想定され、津波による浸水対策を全く講じていなかった福島第一原発において重大な事故が発生する危険を具体的に予見することができたにもかかわらず、長期評価によって想定される津波による浸水に対する防護措置を講ずることを命ずる技術基準適合命令を発しなかったことは、電気事業法に基づき規制権限を行使すべき義務を違法に怠った重大な義務違反であり、その不作為の責任は重大であるといえる。 しかし、国家賠償法1条1項の適用にあたり、経済産業大臣が、電気事業法に基づく規制権限の行使を怠った義務違反の不作為によって、違法に損害を加えたと評価することまではできないと考える。 2 請求認容額について(別紙2認容額一覧表のとおり)⑴ 原告らの損害について平成23年3月11日、津波により主要建屋設置エリアのほぼ全域が浸水して非常用電源設備も機能しなくなり、本件原発は、原子炉の冷却機能を失った。 3月14日午後7時20分頃には、2号機の炉心溶融が起こり、翌3月15日午前10時頃までの間に、2号機から大量の放射性物質が拡散した。 3月15日午前11時、いわき市の一部を含む原発から半径30km圏内の居住者に対し、屋内退避指示がされたが、それ以前に原発から大量の放射性物質が拡散しており、いわき市では、3月15日午前2時に毎時18.04μSv、同日午前4時に毎時23.72μSvという極めて高い放射線量が測定された。 事故前のいわき市の放射線量が毎時約0.04μSvであり、事故前には低線量被爆の指標が年間1mSv、毎時0.23μSvとされていたこと、いわき市が、14 市域の一部が屋内退避区域に含まれるほど原発に近いこと、事故後には水道水からも放射性ヨウ素や放射性セシウムなどの放射性物質が検出されたことなどから、本件事故により大量の放射 いわき市が、14 市域の一部が屋内退避区域に含まれるほど原発に近いこと、事故後には水道水からも放射性ヨウ素や放射性セシウムなどの放射性物質が検出されたことなどから、本件事故により大量の放射性物質が拡散したことにより、いわき市民が、放射線被爆による生命身体の危険に直面し、極めて強い恐怖心を持ったことは、十分に認められる。 いわき市内全域のコンビニエンスストアが閉店し、道路も通行止めとなり、ガソリン等の燃料の供給も停止し、バスなどの公共交通機関も運行を停止し、いわき市の社会的な機能のほとんどが一時失われ、日常の生活や活動が著しく阻害された。 このような放射線被爆に対する危険と恐怖、事故後の社会的な機能の喪失を考えれば、事故後のアンケート調査において、いわき市民の約6割が避難したと答えていることは、それほど不自然ではない。未曾有の原発事故とこれによる大量の放射性物質の拡散により、多数のいわき市民が、放射線被爆の危険と恐怖、事故後の地域社会の混乱やこれにより日常の生活や活動が阻害される中で、政府の避難指示がなくても、実際に避難を余儀なくされたと認められる。 本件事故は、原子炉が炉心溶融を起こして原子力発電所が水素爆発し、大量の放射性物質が放出されたという過去に例のない深刻な事故であり、これにより地域の経済社会活動に重大な損害をもたらしたばかりでなく、いわき市の住民の多くが一時避難するという歴史上かつてない社会の混乱を生じさせた重大な事故である。 しかも、被告東電は、敷地の高さを越える津波が福島第一原発を襲う危険性を具体的に認識し、想定される津波による施設の浸水を防ぐ対策を検討したにもかかわらず、対策を先送りすることを決定し、何ら対策を講ずることなく、平成23年3月11日の本件事故の4日前まで、保安院にも想定される津波の試算を 定される津波による施設の浸水を防ぐ対策を検討したにもかかわらず、対策を先送りすることを決定し、何ら対策を講ずることなく、平成23年3月11日の本件事故の4日前まで、保安院にも想定される津波の試算を報告することもせず、福島第一原発の稼働を続け、対策を講じていれば相当程度高い可能性をもって防ぐことができたはずの本件事故を発生させたのである。重大な原発事故が発生することを具体的危険として認識しながら、経営上の判断を優先させ、原発事故を未然に防止すべき原子力発電事業者の責務を自覚せず、周辺住民の生命身体の15 安全や生活の基盤となる環境をないがしろにしてきたというほかはないことは、本件事故による原告らの精神的苦痛の評価にあたって考慮するのが相当である。 ⑵ 慰謝料の算定について自主的避難等対象区域又は屋内退避区域に居住していた者については、平成23年12月26日に政府の原子力災害対策本部から、放射性物質の放出が管理され、冷温停止の状態になっているとの判断が示されていることなどから、以上の精神的苦痛ないし精神的損害について、一般の大人については、平成23年3月11日の本件事故後平成23年12月31日までの不安や恐怖と日常生活の阻害による精神的損害が、法律上保護される利益の侵害にあたると認めるのが相当である。 18歳以下の子供と妊婦については、放射線への感受性が高く、日常生活の阻害の程度も大きいことから、その後さらに不安や恐怖が軽減し、日常生活の阻害が解消されるのに相当の期間が経過したといえる平成24年8月31日までの精神的損害が、法律上保護される利益の侵害にあたると評価するのが相当である。 慰謝料額は、屋内退避区域と自主的避難等対象区域を区別した上で、更に平成23年12月31日までの間に18歳以下の子供又は妊婦であったかどうか 保護される利益の侵害にあたると評価するのが相当である。 慰謝料額は、屋内退避区域と自主的避難等対象区域を区別した上で、更に平成23年12月31日までの間に18歳以下の子供又は妊婦であったかどうか、平成24年1月1日から平成24年8月31日までの間に18歳以下の子供又は妊婦であったかどうかを区別した上で、区分毎に一律に定める。 慰謝料額は、第1に、自主的避難等対象区域については、①一般大人について、平成23年3月11日から平成23年12月31日までの精神的損害に対する慰謝料30万円(8万円増額)、②平成23年3月11日から平成23年12月31日までの間に18歳以下の子供又は妊婦であり、平成24年1月1日から平成24年8月31日までの間にも18歳以下の子供又は妊婦であった者について、平成23年3月11日から平成24年8月31日までの間の精神的損害に対する慰謝料68万円(6万円増額)、第2に、屋内退避区域については、③一般大人について、平成23年3月11日から平成23年12月31日までの精神的損害に対する慰謝料90万円(5万円増額)、④平成23年3月11日から平成23年12月31日までの間16 に18歳以下の子供であり、平成24年1月1日から平成24年8月31日までの間にも18歳以下の子供であった者について、平成23年3月11日から平成24年8月31日までの間の精神的損害に対する慰謝料130万円(5万円増額)を認める。 既払金は、包括慰謝料のみを控除し、弁護士費用は、原告1人につき一律2万円とする。 追加認容額は、控訴又は附帯控訴をした原告らのうち1301名について、合計1億2664万円、原審認容額1億9996万円を加えた総額は、当審で新たに請求を認容した7名を含む原告1417名に対し合計3億2660万円となる。 第4 をした原告らのうち1301名について、合計1億2664万円、原審認容額1億9996万円を加えた総額は、当審で新たに請求を認容した7名を含む原告1417名に対し合計3億2660万円となる。 第4 被告国の責任についての判断1 経済産業大臣が技術基準適合命令を発すべき義務を怠ったことについて原子力基本法2条は、原子力利用の基本方針について、原子力の利用は、安全の確保を旨として、これを行うものとすることを定めている。そして、津波により原子力発電所の施設が浸水すれば、非常用発電設備が機能を失うばかりでなく、場合によっては全電源を喪失して原子炉を冷却できなくなり、炉心溶融に至る重大事故が発生する危険が高くなることは、原子力発電所の安全確保についての常識であるから、原子力発電所の施設が津波により浸水しないようにすることは、原子力基本法2条に定める安全の確保の基本であるといわなければならない。 電気事業法39条に基づく発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令4条1項の規定も、津波により、原子炉施設、とりわけ原子炉を冷却するための非常用電源設備等の設備が浸水しないようにすることを当然の前提として、原子炉施設が津波により損傷を受けるおそれがある場合、防護施設の設置、基礎地盤の改良その他の適切な措置を講じなければならないと定めたものと解される。 土木学会原子力土木委員会津波評価部会が、平成14年2月に「原子力発電所の津波評価技術」という研究成果を公表した趣旨も、原子力発電所の施設が津波により浸水することを防ぐことが、原子力発電所の安全確保に極めて重要であるという17 共通認識に立って、津波を的確に想定するためであったことは明らかである。 原子力利用の安全の確保が原子力基本法の下での原子力政策の基本方針であり、原子力発電所の津波 て重要であるという17 共通認識に立って、津波を的確に想定するためであったことは明らかである。 原子力利用の安全の確保が原子力基本法の下での原子力政策の基本方針であり、原子力発電所の津波対策が炉心溶融に至る重大事故を防ぐために極めて重要であるという共通認識を前提とすれば、政府の機関である地震調査研究推進本部の地震調査委員会が、これまで想定されていなかった福島県沖についても、マグニチュード8クラスのプレート間大地震(津波地震)が、今後30年以内の発生確率は20%程度、今後50年以内の発生確率は30%程度と推定されるという研究成果を公表したことは、このような研究成果を原子力発電所の安全確保に不可欠な津波の想定に直ちに反映させるべき重要性と必然性を持っていたと評価するのが相当である。 原判決説示のとおり、長期評価に関する明確な否定材料はなかったと認められる。 そして、平成14年7月に長期評価が公表された当時、既に土木学会による津波評価技術という研究成果もあったのであるから、長期評価の公表後直ちに想定される津波の試算に着手すれば、東電設計が4か月以内に試算を被告東電に報告したことからも明らかなように、平成14年末までには、福島第一原発の敷地高を越えるO.P.+15.7mの津波を想定することは十分に可能であった。 したがって原告らの主張するとおり、長期評価の津波地震の想定を踏まえれば、遅くとも平成14年末には、福島第一原発は、技術基準にいう「原子炉施設が津波により損傷を受けるおそれがある場合」に該当していたものと認めるのが相当であり、被告東電は、電気事業法39条によって、長期評価によって想定される津波に対し、原子炉施設について適切な防護措置を講ずる技術基準適合性確保義務を負い、経済産業大臣は同法40条によって、この被告東電の義務を確 電は、電気事業法39条によって、長期評価によって想定される津波に対し、原子炉施設について適切な防護措置を講ずる技術基準適合性確保義務を負い、経済産業大臣は同法40条によって、この被告東電の義務を確実に履行させるための技術基準適合命令を発する規制権限を有するに至っていたと認められる。 しかし、経済産業省の機関である原子力安全・保安院の原子力発電安全審査課耐震班のA班長ら担当者が、長期評価の公表直後、平成14年8月5日、被告東電の担当者に対し、福島県沖から茨城県沖でも津波地震が起こると考えて、福島県沖から茨城県沖に波源を移動させて、津波評価技術に基づいて想定される津波高の計算18 を行い、福島第一原発の安全性を確認するべきではないかと主張し、長期評価に基づく津波計算を行うよう促したのに対し、被告東電の担当者は、長期評価に基づく津波計算をすること自体を拒否し、保安院の担当者は、被告東電に対し、長期評価に基づく津波の計算をすることをそれ以上は求めなかった(甲A519)。 被告東電は、このように長期評価において福島県沖でもマグニチュード8クラスの津波地震が発生する可能性が相当程度あることが示され、津波に対する福島第一原発の安全性について重大な疑義が生じたにもかかわらず、長期評価によって想定される津波を計算した上で、技術基準に従ってその津波を想定した適切な防護措置を講ずべき電気事業法39条に基づく技術基準適合性確保義務を履行しない意思を保安院に対して明らかにしたのである。このような被告東電の対応では、福島第一原発の施設は、長期評価によって想定される津波により損傷を受けるおそれがあり、技術基準に適合しないことにより、想定される津波によって炉心溶融などの重大事故が発生する具体的な危険が生ずるに至ったといえる。 一方で、当時の原子力規制法 れる津波により損傷を受けるおそれがあり、技術基準に適合しないことにより、想定される津波によって炉心溶融などの重大事故が発生する具体的な危険が生ずるに至ったといえる。 一方で、当時の原子力規制法制においては、既に運転している原子力発電所の安全の確保は、もっぱら電気事業法に基づく技術基準と経済産業大臣による技術基準適合命令による規制によって確保されることが予定されていた。 津波により浸水すれば炉心溶融に至る重大な事故が発生する具体的な危険があると認められる原子力発電所については、そのような重大事故により大量の放射性物質が拡散すれば、地域住民の生命身体の危険が生じ、日常生活の平穏が侵害され、地域社会そのものが崩壊する重大な危険があるのであるから、運転中の原子力発電所の安全確保に関する電気事業法による規制権限をもっぱら委ねられていた経済産業大臣としては、原子力利用の安全の確保という原子力基本法の基本方針に従い、かつ、電気工作物の維持及び運用を規制することによって公共の安全を確保するという電気事業法1条に定める目的を踏まえ、遅くとも平成14年末には、電気事業法40条に基づき、被告東電に対し、長期評価によって想定される津波に対し、原子炉施設について適切な防護措置を講ずるよう命ずる技術基準適合命令を発すべき19 義務をも負うに至ったと認めるのが相当である。 経済産業大臣が、長期評価が公表された翌年である平成15年以降も、平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震による津波によって本件事故が発生するまで、8年2か月もの間、このような技術基準適合命令を発しなかったことは、電気事業法40条により与えられた規制権限を適正に行使しなかったものであり、原子力基本法の基本方針に反し、電気事業法に違反する違法な不作為であったと認められる。 津波に 命令を発しなかったことは、電気事業法40条により与えられた規制権限を適正に行使しなかったものであり、原子力基本法の基本方針に反し、電気事業法に違反する違法な不作為であったと認められる。 津波による浸水により原子力発電所において炉心溶融に至る深刻な事故が発生する具体的な危険を防止するために法により与えられた規制権限を行使することは、経済産業大臣の義務であって、その権限の行使に専門技術的な裁量の余地はない。 現に原子力安全委員会が、平成18年9月、原子炉の設置許可申請等に係る安全審査のうち耐震設計方針の妥当性を評価するための審査上の指針として定めていた「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」を改定し、津波についても、地震随伴事象に対する考慮として、「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても、施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと」と定めたことを受け、保安院も、同月、改定された耐震設計審査指針に即した既設発電用原子炉施設等の耐震安全性の評価及び確認(耐震バックチェック)について、その評価手法及び確認基準(耐震バックチェックルール)を策定し、被告東電を含む各電力会社等に対し、稼働中及び建設中の発電用原子炉施設について、耐震バックチェックを実施し、その結果を報告することなどを指示している。耐震バックチェックルールは、津波に対する安全性を評価項目の一つとして挙げ、その評価方法として「津波の評価に当たっては、既往の津波の発生状況、活断層の分布状況、最新の知見等を考慮して、施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性がある津波を想定し、数値シミュレーションにより評価することを基本とする」としていた。 保安院が、既設の原子力発電所について耐震バックチェックを行い、津波 間中に極めてまれではあるが発生する可能性がある津波を想定し、数値シミュレーションにより評価することを基本とする」としていた。 保安院が、既設の原子力発電所について耐震バックチェックを行い、津波の評価に当たり、既往の津波の発生状況、活断層の分布状況、最新の知見等を考慮して、20 施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性がある津波を想定して津波に対する安全性を再確認しようとした趣旨は、電気事業法に基づく技術基準と経済産業大臣の技術基準適合命令の趣旨について、上記説示のとおり既設の原子力発電所の安全確保のための重要な規制権限であることを前提とし、津波による浸水が原子力発電所の重大事故の原因となることから、技術基準において、「原子炉施設等が津波により損傷を受けるおそれがある場合」とは、施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性がある津波を想定し、想定される津波に対する適切な防護措置を講ずることを求めており、それが十分でない場合は、技術基準適合命令を発すべきことを当然の前提としているといえる。 2 本件事故を回避することができる相当程度高い可能性があったこと原告らは、経済産業大臣が、長期評価によって想定される津波に対し、原子炉施設について適切な防護措置を講ずるよう命ずる技術基準適合命令を平成14年末に被告東電に発していれば、長期評価により想定される最大でO.P.+15m程度の津波高さとなる想定津波を前提とし、かつ、「安全上の余裕」を確保した上で、「重要機器室の水密化」及び「タービン建屋等の水密化」を講じ、本件津波に対しても非常用電源設備等の被水を回避することができたと主張する。 この点、以下に検討するとおり、経済産業大臣が技術基準適合命令を平成14年末に発していれば、長期評価により想定される最大でO.P 対しても非常用電源設備等の被水を回避することができたと主張する。 この点、以下に検討するとおり、経済産業大臣が技術基準適合命令を平成14年末に発していれば、長期評価により想定される最大でO.P.+15m程度の津波高さとなる想定津波を前提とし、かつ、「安全上の余裕」を確保した上で、防潮壁の設置、あるいは「重要機器室の水密化」及び「タービン建屋等の水密化」などの防護措置を講じ、本件津波に対しても、非常用電源設備等が浸水して原子炉が冷却できなくなって炉心溶融に至るほどの重大事故が発生することを避けられた可能性は、相当程度高いものであったと認められる。 すなわち、保安院と原子力安全基盤機構が被告東電の参加も得て平成18年以降行っていた溢水勉強会においては、津波による浸水により原子力発電所の電源設備が機能を失う危険に対する対策として、被告東電は、溢水対策を考慮したプラント21 設計として、柏崎刈羽原発について、タービン建屋内の復水器室の扉を水密化していること、原子炉建屋最地下階ECCS(非常用炉心冷却装置)系機器室全てが水密扉となっていることを報告していた(甲A39の2の5頁)。 また、被告東電は、平成20年4月に東電設計による津波の試算が、最大O.P. +15.7mとなり、敷地高O.P.+10mを越えることについて報告を受けて同年7月まで対策を検討し、その検討の中では、O.P.+10mの敷地地盤上に高さ10mの防潮壁を設置することや、沖合防潮堤の設置や既設防波堤の拡張等の対策を検討したばかりでなく、日本原電が東海原発に建屋の止水扉による対策を検討しているという情報も得ていた。現に東海第二原発では、長期評価に基づく津波の想定に基づき、平成20年から平成21年にかけて、建屋の水密化措置として、防水扉、防水シャッター等が施工され、中部 策を検討しているという情報も得ていた。現に東海第二原発では、長期評価に基づく津波の想定に基づき、平成20年から平成21年にかけて、建屋の水密化措置として、防水扉、防水シャッター等が施工され、中部電力の浜岡原発でも、平成20年までに津波対策として、原子炉建屋等の出入口への防水構造の防護扉等の設置がされた(甲A699)。 ところが被告東電は、東電設計による津波の試算を元に長期評価により想定される津波への対策を検討したにもかかわらず、平成20年7月、長期評価により想定される津波への対策を先送りすることを決定し、本件事故の4日前に保安院に報告するまで、国の規制当局にも、この津波の試算を報告しなかったのである。 以上の事実経過からすれば、平成14年7月の長期評価の公表後、同年末以降適時に、経済産業大臣が被告東電に対し、長期評価によって想定される津波への対策として防護施設の設置を命ずる技術基準適合命令を発していれば、平成23年3月11日までの間には、少なくとも東電設計が試算した最大O.P.+15.7mの津波に対する対策として、敷地への防潮壁の設置、あるいは「重要機器室の水密化」及び「タービン建屋等の水密化」の措置を講ずることには、十分な時間的余裕と技術的な可能性があったと認められる。 技術基準適合命令を発していれば、被告東電は当然にこれらの措置を講じたと考えられ、また津波に対する原子力発電所の安全対策は、炉心溶融による重大事故を22 万一の場合にも防ぐため、本来、安全上の余裕をもって設計されるべきものであることからすれば、1号機から4号機の主要建屋設置エリアの浸水高が、約11.5mから約15.5mであり、同エリアの南西部の浸水高が、局所的に約16mから約17mであったという本件津波(別紙5)が到来しても、上記の防潮壁の設置や水密 の主要建屋設置エリアの浸水高が、約11.5mから約15.5mであり、同エリアの南西部の浸水高が、局所的に約16mから約17mであったという本件津波(別紙5)が到来しても、上記の防潮壁の設置や水密化の措置により、非常用電源設備が浸水して機能を喪失し、全電源を喪失して炉心溶融を起こすような重大事故の発生は、相当程度高い可能性をもって避けられたはずであると認められる。 東電設計の試算(別紙7)によれば、既存の防波堤の南側と北側において、敷地の高さである海抜10mを優に超える津波の遡上が想定されただけでなく、当該防波堤の湾内においても、1号機から6号機までの各原子炉に係る取水ポンプの位置(海抜4m)において、海抜10m前後の津波が想定されるとともに、1号機北側の敷地にも津波が遡上すると想定されていた。試算は、福島県沖の特定の場所を震源と仮定し、明治三陸地震の断層モデル(波源モデル)を前提にしているが、それは一つのモデルにとどまり、実際に発生する津波地震がこのモデルに必ず一致するものでもない。地震及び津波が諸条件によって複雑に変化し、予測が困難な自然現象であって、これらに関する研究や予測の技術も発展過程にあることを考え併せれば、原子力発電所の安全対策にあたっては、長期評価に基づく津波の想定において、東電設計の試算のみではなく、これを基本としつつも、相応の幅をもって津波を想定し、危険を評価するのが当然であると考えられる。 また、津波が敷地に到達すれば、主要建屋の1階又は地下1階に設置された非常用電源設備が浸水して機能を停止し、原子炉の冷却機能が失われて、深刻な事態が生ずることは明らかであったから、福島第一原発の施設の津波に対する安全対策は、安全上の余裕を考慮した想定がされたはずであると考えられる。そうすると、試算において、防波堤の湾内にお れて、深刻な事態が生ずることは明らかであったから、福島第一原発の施設の津波に対する安全対策は、安全上の余裕を考慮した想定がされたはずであると考えられる。そうすると、試算において、防波堤の湾内において、海抜10m前後の津波が迫り、その一部が敷地に遡上する可能性が想定されていたことから、敷地の南東側からだけでなく、東側からも津波が遡上する可能性を想定することは、安全対策上、むしろ当然であった23 というべきである。 その当時、国内及び国外の原子炉施設において、一定の水密化等の措置が講じられた実績もあり、扉、開口部及び貫通口等について浸水を防止する技術的な知見も蓄積していた。原子力発電所は、津波に対する安全性を強く求められていたから、こうした知見を踏まえ、具体的な断層モデルの設定に応じて、波高や波力等に影響する様々な条件を考慮するとともに、不確実性については安全上の余裕を考慮しつつ、必要かつ適切な設備の性能等を検討することにより、水密化等の措置を講ずることは十分に可能であったと考えられる。長期評価の公表から8年以上もあったのであるから、こうした設備工事が平成23年3月11日までの間に完了できたことは容易に推認される。 以上のとおりであるから、長期評価を前提に、経済産業大臣が技術基準適合命令を発した場合、被告東電としては、速やかに、敷地の東側からも津波が遡上しないよう、防潮壁の設置や、重要機器室やタービン建屋等の水密化等の適切な防護措置を講じた可能性は相当程度高いものということができる。 3 技術基準適合命令を発しなかった不作為の国家賠償法上の違法性について⑴ 国家賠償法の規定国家賠償法1条1項は、国の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国が、これを 賠償法上の違法性について⑴ 国家賠償法の規定国家賠償法1条1項は、国の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国が、これを賠償する責に任ずると定める。以上のとおり、経済産業大臣は、電気事業法40条に基づく規制権限の行使に際し、電気事業法40条に違反して技術基準適合命令を発しなかった不作為があるから、この経済産業大臣の不作為の国家賠償法上の違法性、すなわち平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震による津波により非常用電源設備が機能を失い、全電源を喪失して冷却できなくなった福島第一原発の原子炉が炉心溶融を起こし、大量の放射性物質を放出した事故により原告らが被った損害について、国家賠償法1条1項の適用上、経済産業大臣が違法に原告らに損害を加えたと評価できるかどうかについて、以下検討する。 24 ⑵ 技術基準適合命令を発しなかった不作為が重大な義務違反であることこの観点から検討すると、経済産業大臣が規制権限を行使しなかった不作為は、その規制権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等からみると、津波による浸水を防止するため原子炉施設を技術基準に適合させることは炉心溶融に至る原子力発電所の重大事故を防ぎ、地域住民の生命身体に対する重大な危険が生じないようにするための重要な権限であり、原子力基本法の基本方針である原子力利用の安全の確保のため、電気事業法に基づき、運転中の原子力発電所の施設を規制することにより公共の安全を確保する権限がもっぱら経済産業大臣に委ねられていたことからすれば、極めて重大な義務違反であることは明らかである。 保安院は、福島第一原発が、長期評価によって想定された福島県沖を震源とする津波地震を想定した施設の設計がされず、長期評価により いたことからすれば、極めて重大な義務違反であることは明らかである。 保安院は、福島第一原発が、長期評価によって想定された福島県沖を震源とする津波地震を想定した施設の設計がされず、長期評価により想定される津波に対する安全性が確保されていないことを知りながら、他方、東海第二原発や浜岡原発など他の原発では長期評価に基づく津波を想定して重要施設の水密化の対策を講じていることも知りながら、それにもかかわらず本件津波が発生するまで経済産業大臣は、長期評価の想定に基づく津波の試算を被告東電に命ずることもなく、想定される津波への福島第一原発の安全対策を被告東電に命ずることもなかった。 長期評価の公表以前の我が国における原子炉施設の津波に対する安全性の確保については、安全設備等が設置される原子炉施設の敷地が浸水することを防ぐことを安全対策の基本とし、福島第一原発は敷地が浸水しない前提で設計されていたから、長期評価により敷地の浸水まで想定される津波が具体的に予見された以上、重要な施設が浸水するのを防止することが津波に対する安全性の確保という点で極めて重要であり、そのためには、直ちに想定される津波を試算した上で、原子炉の安全確保に重要な施設が浸水しないように、防潮壁や防潮堤の設置、重要機器室及びタービン建屋等の水密化等の適切な対策を直ちに講ずる必要があった。 それにもかかわらず、被告東電は、平成14年7月末に公表された長期評価に基づく津波の試算すら翌月に直ちに拒否し、平成20年4月に東電設計から福島第一25 原発の敷地高を5.7mも超える最大O.P.+15.7mの津波が想定される試算を得ても、平成20年7月には津波への安全対策を先送りする決定をした。 長期評価によって想定された福島県沖での津波地震により、福島第一原発が津波により浸水して重 +15.7mの津波が想定される試算を得ても、平成20年7月には津波への安全対策を先送りする決定をした。 長期評価によって想定された福島県沖での津波地震により、福島第一原発が津波により浸水して重大な事故を起こす危険が具体的に予見されたにもかかわらず、これに対する被告東電の対応は、原子力発電所の安全対策についての著しい責任感の欠如を示すものである。 また、長期評価公表以降、経済産業大臣が適時適切に規制権限を行使していれば、本件津波によって福島第一原発が炉心溶融を起こして水素爆発するなどという重大事故が起きなかった可能性は相当程度高かったと認められるのであり、安全対策を講じさせるべき規制権限の行使を8年にわたり怠った国の責任も重大である。 その間、平成16年12月26日にスマトラ沖地震の津波によりインドのマドラス原発が冷却に必要なポンプ室が水没して運転不能になる深刻な事故を起こし、保安院は、この事故を契機に溢水勉強会で津波に対する原子力発電所の安全対策を検討し、平成18年には、施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性がある津波を想定し、既設の発電用原子炉施設について津波に対する安全性を再評価する耐震バックチェックも行っていたのであるから、なおさら責任は重い。 ⑶ 本件における国家賠償法1条1項の適用について本件津波により非常用電源設備等の電気設備が機能を喪失したのは、いずれも、各原子炉に係るタービン建屋及び運用補助共用施設(共用プール)の内部への津波の浸水によるものと認められ、その浸水経路は、建屋の出入り口、開口部等と考えられるから、原子炉を冷却するための設備に係る重要な区画及びその建屋について水密化等の措置が適切に講じられていれば、これらの設備が浸水によりその機能を失うことを防止する上で重要な効果をもたらしたも られるから、原子炉を冷却するための設備に係る重要な区画及びその建屋について水密化等の措置が適切に講じられていれば、これらの設備が浸水によりその機能を失うことを防止する上で重要な効果をもたらしたものと考えられる。 他方で、技術基準適合命令を発した場合に、被告東電が講じたであろうと考えられる津波に対する施設の防護措置の内容については、津波の想定の仕方や防潮堤、防潮壁、水密化等の防護措置の方法の選択において幅のある可能性が考えられるも26 のであって、このような幅のある中で、必ず本件津波に対しても重要施設の浸水を防ぐことができる防護措置が講じられたはずであるとまでは断定できない。 本件地震は、長期評価において想定される地震の規模よりはるかに大きいものであり、津波の規模においても、東北地方から関東地方北部の太平洋側を中心に極めて広い範囲で観測された。被告東電が、東電設計の試算(別紙7)により得られた最大津波に対して、本件原発の敷地への浸水を防ぐための対策を実施した場合に、平成23年3月11日に本件原発に襲来した津波(本件津波)が1号機から4号機の敷地面であるO.P.+10mの地盤への浸水を防ぐことができたかどうかを事故後に確認した試算結果(乙A80、別紙8)によれば、①本件原発南側敷地にO. P.+22m及びO.P.+17.5mの天端高さの防潮堤を設置する、②1号機北側にO.P.+12.5mの天端高さの防潮堤を設置する、③本件原発北側敷地にO.P.+14mの天端高さの防潮堤を設置する、以上のとおり東電設計の試算結果により得られた最大津波に対して本件原発の敷地への浸水を防ぐための対策として防潮堤を設置するものとした場合でも、津波がO.P.+10mの敷地地盤に浸水することを防ぐことはできないことを確認している。 もっとも、本件津波に して本件原発の敷地への浸水を防ぐための対策として防潮堤を設置するものとした場合でも、津波がO.P.+10mの敷地地盤に浸水することを防ぐことはできないことを確認している。 もっとも、本件津波による主要建屋付近の浸水深は、1.5mないし5.5mであったが、東電設計の試算した試算津波による主要建屋付近の浸水深でも、4号機の原子炉建屋及びタービン建屋付近で約2.0mないし2.6mとされた上、4号機の原子炉建屋の南西側に設置された運用補助共用施設(共用プール)付近では5mに近かった。浸水深においては、実際に起こった本件津波と東電設計の試算は、それほど違わない。 しかも、本件事故以前から、国内外において、防潮堤等の設置にとどまらず、機器室の水密化や建屋の水密化等の検討が行われ、実際にこれらの措置を採用した原子力発電所も存在しており、最新の科学的知見を総合すれば本件津波による浸水から電気設備等を防御する水密化の措置がとられた可能性も高く、原子炉の冷却機能が喪失し、放射性物質を閉じ込めておくことができなかった場合に数多くの人の生27 命、身体や環境に重大な影響を与えることから、多重防御の考えに立って対策を講じ、本件事故をも回避できるに足る対策がとられた可能性は相当高い。 しかし、津波の想定や想定される津波に対する防護措置について幅のある可能性があり、とられる防護措置の内容によっては、必ず本件津波に対して施設の浸水を防ぐことができ、全電源を失って炉心溶融を起こす重大事故を防ぐことができたはずであると断定することまではできないのである。 そうすると、平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震による津波によって浸水した福島第一原発が、炉心溶融を起こして爆発し、大量の放射性物質が拡散した事故により、原告らが被った損害について、国家賠償法1 すると、平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震による津波によって浸水した福島第一原発が、炉心溶融を起こして爆発し、大量の放射性物質が拡散した事故により、原告らが被った損害について、国家賠償法1条1項の適用上、経済産業大臣が、技術基準適合命令を発する規制権限の行使を怠ったことによって、違法に原告らに損害を加えたとまでは評価することができない。 本件原発の安全管理について一次的に責任を負うのは、いうまでもなく被告東電であり、その関係において、被告国の責任は二次的なものではある。しかし、原子力発電所の設置及び運営は、原子力利用の一環として、国民生活及び国民経済の維持、発展に不可欠なエネルギー政策を踏まえたものであり、その安全性の確保についても、深刻な災害の発生を未然に防止するため、被告国が、その設置の許可からその後の各段階における規制を通じて、万全を期すことを前提としていた。 経済産業大臣の技術基準適合命令も、稼働中の原子炉施設について、周辺住民等の生命、身体に対する危害を防止すること等を目的として、その安全性を確保するために付与された重要な規制権限である。 このような事情に鑑みれば、経済産業大臣が、長期評価により福島県沖を震源とする津波地震が想定され、津波による浸水対策を全く講じていなかった福島第一原発において重大な事故が発生する危険を具体的に予見することができたにもかかわらず、長期評価によって想定される津波による浸水に対する防護措置を講ずることを命ずる技術基準適合命令を発しなかったことは、電気事業法に基づき規制権限を行使すべき義務を違法に怠った重大な義務違反であり、その不作為の責任は重大で28 あるといえる。 しかし、国家賠償法1条1項の適用にあたり、経済産業大臣が、電気事業法に基づく規制権限の行使を怠った義務違反 違法に怠った重大な義務違反であり、その不作為の責任は重大で28 あるといえる。 しかし、国家賠償法1条1項の適用にあたり、経済産業大臣が、電気事業法に基づく規制権限の行使を怠った義務違反の不作為によって、違法に損害を加えたと評価することまではできないと考える。 第5 原告らの損害について平成23年3月11日午後2時46分頃に発生した本件地震による停電で外部電源を失い、午後3時27分頃と午後3時35分頃に襲来した2波の大きな津波により主要建屋設置エリアのほぼ全域が浸水して非常用電源設備も機能しなくなり、本件原発は、原子炉の冷却機能を失った。 3月14日午後7時20分頃には、2号機の炉心溶融が起こり、翌3月15日午前10時頃までの間に、2号機から大量の放射性物質が拡散した。 3月15日午前11時、いわき市の一部を含む原発から半径30km圏内の居住者に対し、屋内退避指示がされたが、それ以前に本件原発から大量の放射性物質が拡散しており、いわき市では、3月15日午前2時に毎時18.04μSv、同日午前4時に毎時23.72μSvという極めて高い放射線量が測定された。 事故前のいわき市の放射線量が毎時約0.04μSvであり、事故前には低線量被爆の指標が年間1mSv、毎時0.23μSvとされていたこと、いわき市が、市域の一部が屋内退避区域に含まれるほど本件原発に近いこと、事故後には水道水からも放射性ヨウ素や放射性セシウムなどの放射性物質が検出されたことなどから、本件事故により大量の放射性物質が拡散したことにより、いわき市民が、放射線被爆による生命・身体の危険に直面し、極めて強い恐怖心を持ったことは、十分に認められる。いわき市内全域のコンビニエンスストアが閉店し、道路も通行止めとなり、ガソリン等の燃料の供給も停止し、バスなどの公 爆による生命・身体の危険に直面し、極めて強い恐怖心を持ったことは、十分に認められる。いわき市内全域のコンビニエンスストアが閉店し、道路も通行止めとなり、ガソリン等の燃料の供給も停止し、バスなどの公共交通機関も運行を停止し、いわき市の社会的な機能のほとんどが一時失われ、日常の生活や活動が著しく阻害された。現に、少なくとも1万5000人以上のいわき市民が事故後に避難しており、このような放射線被爆に対する危険と恐怖、事故後の社会的な機能の喪失を考29 えれば、事故後のアンケート調査において、いわき市民の約6割が避難したと答えていることは、それほど不自然ではない。 未曾有の原発事故とこれによる大量の放射性物質の拡散により、多数のいわき市民が、放射線被爆の危険と恐怖、事故後の地域社会の混乱やこれにより日常の生活や活動が阻害される中で、政府の避難指示がなくても、実際に避難を余儀なくされたと認められる。 空間放射線量は、その後低下し、低線量被爆の指標水準を概ね下回るようになったが、土壌汚染は続き、食品の出荷制限も、事故当初にされた原乳や野菜などの出荷制限はその後解除されたものの、山菜やきのこなどの出荷制限は続くことになった。本件事故は、原子炉が炉心溶融を起こして原子力発電所が水素爆発し、大量の放射性物質が放出されたという過去に例のない深刻な事故であり、これにより地域の経済社会活動に重大な損害をもたらしたばかりでなく、いわき市の住民の多くが一時避難するという歴史上かつてない社会の混乱を生じさせた重大な事故である。 しかも、被告東電は、平成14年7月の長期評価の公表後、これに基づく津波の試算を速やかに行っていない上、5年以上経過した平成20年4月に東電設計から長期評価により想定される津波の試算を受け、敷地の高さを越える津波が福島第一原発 7月の長期評価の公表後、これに基づく津波の試算を速やかに行っていない上、5年以上経過した平成20年4月に東電設計から長期評価により想定される津波の試算を受け、敷地の高さを越える津波が福島第一原発を襲う危険性を具体的に認識し、想定される津波による施設の浸水を防ぐ対策を検討したにもかかわらず、平成20年7月には対策を先送りすることを決定し、何ら対策を講ずることなく、平成23年3月11日の本件事故の4日前まで、保安院にも想定される津波の試算を報告することもせず、福島第一原発の稼働を続け、対策を講じていれば相当程度高い可能性をもって防ぐことができたはずの本件事故を発生させたのである。本件事故の際と同程度の津波が到来し、浸水により電源設備が機能を喪失して重大な原発事故が発生することを具体的危険として認識しながら、経営上の判断を優先させ、原発事故を未然に防止すべき原子力発電事業者の責務を自覚せず、周辺住民の生命身体の安全や環境をないがしろにしてきたというほかはないことは、原告らの精神的苦痛の評価にあたって考慮するのが相当である。 30 以上のとおり、いわき市民など自主的避難等対象区域や屋内退避区域に居住していた原告らは、原子力発電所における原子炉の炉心溶融と水素爆発による大量の放射性物質の拡散という重大な事故により、放射線被害の具体的な危険に直面し、自主的避難を余儀なくされた原告は住み慣れた自宅や地域から離れ、不便な避難生活を送ることを余儀なくされた上、先の見通しのつかない不安や知覚できない放射線被爆に対する恐怖や不安、これに伴う行動の制約や、自然や社会の環境の変化等により、事故前の平穏な日常生活を奪われ、著しい精神的苦痛を被ったものといえる。 自主的避難等対象区域又は屋内退避区域に居住していた者については、平成23年12月26日に政 然や社会の環境の変化等により、事故前の平穏な日常生活を奪われ、著しい精神的苦痛を被ったものといえる。 自主的避難等対象区域又は屋内退避区域に居住していた者については、平成23年12月26日に政府の原子力災害対策本部から、放射性物質の放出が管理され、冷温停止の状態になっているとの判断が示されていることなどから、以上の精神的苦痛ないし精神的損害について、一般の大人については、平成23年3月11日の本件事故後平成23年12月31日までの不安や恐怖と日常生活の阻害による精神的損害が、法律上保護される利益の侵害にあたると認めるのが相当である。 18歳以下の子供と妊婦については、放射線への感受性が高く、日常生活の阻害の程度も大きいことから、その後さらに不安や恐怖が軽減し、日常生活の阻害が解消されるのに相当の期間が経過したといえる平成24年8月31日までの精神的損害が、法律上保護される利益の侵害にあたると評価するのが相当である。 上記の恐怖や不安、これに伴う行動の制約や、自然や社会の環境の変化等による苦痛の内容や程度は、原告ごとに様々であるが、屋内退避が指示されたほかは、いずれも本件事故による社会の混乱や低線量被爆の環境下での生活が強いられることにより生じるものであって、性質上、等しく住民に生じるものといえることや、本件事故の性質や規模に照らし、一律の賠償基準を定めることが迅速な解決に資するもので、損害の公平な分担にも資するといえる。 屋内退避区域又は自主的避難等対象区域の住民であった者の精神的苦痛により生じた慰謝料額は、屋内退避区域と自主的避難等対象区域を区別した上で、更に平成23年12月31日までの間に18歳以下の子供又は妊婦であったかどうか、平成31 24年1月1日から平成24年8月31日までの間に18歳以下の子供又は妊婦で 等対象区域を区別した上で、更に平成23年12月31日までの間に18歳以下の子供又は妊婦であったかどうか、平成31 24年1月1日から平成24年8月31日までの間に18歳以下の子供又は妊婦であったかどうかを区別した上で、区分毎に一律に定めることが妥当である。 第6 認容額の算定について(別紙2認容額一覧表のとおり)1 慰謝料額⑴ 自主的避難等対象区域① 一般大人(平成23年3月11日から平成23年12月31日までの精神的損害に対する慰謝料)30万円(既払金の控除8万円)② 平成23年3月11日から平成23年12月31日までの間に18歳以下の子供又は妊婦であり、平成24年1月1日から平成24年8月31日までの間にも18歳以下の子供又は妊婦であった者(平成23年3月11日から平成24年8月31日までの精神的損害に対する慰謝料)68万円(既払金の控除48万円)③ 平成23年3月11日から平成23年12月31日までの間に18歳以下の子供又は妊婦であった者(②を除く。)(平成23年3月11日から平成23年12月31日までの精神的損害に対する慰謝料)60万円(既払金の控除40万円)④ 平成24年1月1日から平成24年8月31日までの間に妊婦であった者(②を除く。)(平成23年3月11日から平成24年8月31日までの精神的損害に対する慰謝料)38万円(既払金の控除16万円)⑤ 平成24年1月1日から平成24年8月31日までの間に生まれた子供8万円(既払金の控除8万円)⑵ 屋内退避区域① 一般大人(平成23年3月11日から平成23年12月31日までの精神的損害に対する慰謝料)32 90万円(既払金の控除70万円)② 平成23年3月11日から平成23年12月3 ① 一般大人(平成23年3月11日から平成23年12月31日までの精神的損害に対する慰謝料)32 90万円(既払金の控除70万円)② 平成23年3月11日から平成23年12月31日までの間に18歳以下の子供であり、平成24年1月1日から平成24年8月31日までの間にも18歳以下の子供であった者(平成23年3月11日から平成24年8月31日までの精神的損害に対する慰謝料)130万円(既払金の控除118万円)2 請求認容額⑴ 自主的避難等対象区域① 一般大人24万円(うち弁護士費用2万円) 原審14万円(追加認容額10万円)② 平成23年3月11日から平成23年12月31日までの間に18歳以下の子供又は妊婦であり、平成24年1月1日から平成24年8月31日までの間にも18歳以下の子供又は妊婦であった者22万円(うち弁護士費用2万円) 原審14万円(追加認容額8万円)③ 平成23年3月11日から平成23年12月31日までの間に18歳以下の子供又は妊婦であった者(②を除く。)22万円(うち弁護士費用2万円) 原審22万円(追加認容額0円)④ 平成24年1月1日から平成24年8月31日までの間に妊婦であった者(②を除く。)24万円(うち弁護士費用2万円) 原審6万円(追加認容額18万円)⑤ 平成24年1月1日から平成24年8月31日までの間に生まれた子供0円 原審0円⑵ 屋内退避区域① 一般大人22万円(うち弁護士費用2万円) 原審15万円(追加認容額7万円)② 平成23年3月11日から平成23年12月31日までの間に18歳以下の33 子供であり、平成24年1月1日から平成24年8月31日までの間にも18歳以 原審15万円(追加認容額7万円)② 平成23年3月11日から平成23年12月31日までの間に18歳以下の33 子供であり、平成24年1月1日から平成24年8月31日までの間にも18歳以下の子供であった者14万円(うち弁護士費用2万円) 原審7万円(追加認容額7万円)3 認容額の算定についての補足説明原告らの本件事故時の居住地は、別紙2認容額一覧表の「区域(本件事故時の居住エリア)」欄のとおり。郡山市内に居住していた原告(2166~2169)も、自主的避難等対象区域において、同区域のいわき市民と同等の損害を被ったものと認められるから、同額の慰謝料を認める。 原告1387は、原告1386といわき市内のアパートで婚姻生活を送っていたが、事故時は、里帰り出産のために一時的に滞在していた福島市の実家にとどまり、平成23年7月9日に長女(原告1388)を出産すると、平成23年10月1日からはいわき市内に居住していたのであるから(甲D85)、事故当時も、いわき市を生活の本拠としていたものと認める。 原告2155は、いわき市内の会社に勤務しており、月曜日から金曜日まではいわき市内に滞在していたと主張するので、いわき市の自主的避難等対象区域に居住していたものとして慰謝料30万円を認めるのが相当であるが、被告東電から南相馬市の旧屋内退避区域を生活の本拠としていたものとして慰謝料70万円の支払を受けているから(甲D87)、既払金を超える損害は認められない。 原告2188は、住民票上の住所は福島県東白川郡であるが、平成22年12月24日から、結婚の約束をしていた原告2187といわき市内のマンションで生活していたことが認められる(甲D84)。 原告2257は、いわき市四倉に自宅があり、事故当時、自主的避難等対象区域を生活の 4日から、結婚の約束をしていた原告2187といわき市内のマンションで生活していたことが認められる(甲D84)。 原告2257は、いわき市四倉に自宅があり、事故当時、自主的避難等対象区域を生活の本拠としていたと認められるが、屋内退避区域にあるいわき市久之浜町の別邸に頻繁に出入りしていたとして、被告東電から屋内退避区域を生活の本拠としていたものとして慰謝料70万円の支払を受けているから(甲D88)、既払金を超える損害は認められない。 34 原告3027は、仙台市に居住していたが、平成23年4月8日にいわき市川前町に戻って両親と3人で生活していた、平成23年6月転入となっているのは転入届が遅れただけであると主張し、その旨の母作成の陳述書(甲D86)を提出するが、仙台市からいわき市に転居した事情等も判然とせず、事故当時にいわき市を生活の本拠として居住していたとは認められない。 別紙3賠償額一覧表のとおり、原告によっては、中間指針に基づく賠償金の支払を受けていない者があり、その場合は、既払金の控除が少なくなる。 別紙3賠償額一覧表の被告東電の弁済の抗弁のうち、避難所への避難による加算月額2万円、身体障害者や要介護者に対する精神的損害の増額、入通院慰謝料、生命身体的損害の賠償、財産的損害に対する賠償は、上記の慰謝料とは別に評価すべき損害が発生し、これに対する弁済がされたものであるから、上記の慰謝料に対する弁済とは評価しない。追加的費用4万円の支払も、費用の支払であるから慰謝料に対する弁済とは評価しない。原告の同一世帯の家族に対する損害の賠償についても同様である。未精算の仮払補償金も、弁済充当の合意がないから控除しない。 第7 結論原判決中、控訴人又は附帯控訴人である原告らの被告東電に対する請求を棄却した部分を変更し、追加認 償についても同様である。未精算の仮払補償金も、弁済充当の合意がないから控除しない。 第7 結論原判決中、控訴人又は附帯控訴人である原告らの被告東電に対する請求を棄却した部分を変更し、追加認容額のある原告1301名に対し、被告東電が原賠法3条1項に基づき追加認容額と遅延損害金を支払うよう命じ、追加認容額のある原告らのその余の請求とその他の原告らの請求を棄却する(主文1項ないし3項)。 被告国の控訴に基づき、被告国の敗訴部分を取り消し、被控訴人である原告らの被告国に対する請求を棄却する(主文4項)。 控訴人又は附帯控訴人である原告らの被告国に対する控訴又は附帯控訴と被告東電の控訴をいずれも棄却する(主文5項)。 当裁判所は、被告東電が、迅速な被害救済を図る原賠法の趣旨を踏まえ本判決を受けて適切に対応することを期待し、本判決で被告東電に賠償の支払を命ずる部分に仮執行の宣言を付し、仮執行免脱宣言の申立てを却下する。 35 仙台高等裁判所第2民事部 裁判長裁判官 小 林 久 起 裁判官 鈴 木 桂 子 裁判官 山 﨑 克 人 別紙1「原告目録」及び別紙3「賠償額一覧表」は、掲載省略
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