令和5 年1 月26 日宣告平成26 年(わ)第1284 号・組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件(「看護師事件」と表記)、平成27 年(わ)第668 号・同法律違反被告事件(「歯科医師事件」と表記)、同年(わ)第918 号・同法律違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(「元警察官事件」と表記)、同年(わ)第1732 号・現住建造物等放火、非現住建造物等放火被告事件(「放火事件」と表記)、平成29 年(わ)第718 号・組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件(「b3 事件」と表記)、平成30 年(わ)第466 号・傷害被告事件(「b4 事件」と表記し、放火事件及びb3 事件と合わせて「標章3 事件」と表記) 判決 主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中2000 日をその刑に算入する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 【罪となるべき事実】被告人は、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律所定の指定暴力団であって、平成24 年12 月27 日以降は同法所定の特定危険指定暴力団である五代目甲會の理事長を務めるとともに、その主要かつ最大の二次団体である丙組の組長であるところ、第1(元警察官事件)甲會の総裁のX1 及び会長のX2 が、直接のやり取りをする間柄にあった警察官O の振る舞いに関し、甲會に係る警察の取締り強化と並んで同人が情報収集するなどの過程で、X1 及びX2 の地位を知りながら軽んじる言動がO に現れたと 捉え、これに銃撃等の加害で報いるのを通じて甲會並びにその頂点に立つX1 及びX2 の威勢や統制を保持する活動として、X1 の意思決定の下、退職後のO の銃殺を含む加害 動がO に現れたと 捉え、これに銃撃等の加害で報いるのを通じて甲會並びにその頂点に立つX1 及びX2 の威勢や統制を保持する活動として、X1 の意思決定の下、退職後のO の銃殺を含む加害行為を計画し、X1 及びX2 に加えて丙組若頭のY1 のほか、同組組員のY2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7 及びY8 と被告人が順次共謀の上、X1 の指揮命令に基づいて、Y1 の指示によりY2、Y5 及びY8 がO の行動等の確認を行い、加害前後の実行役の送迎をY6 及びY7 が担い、Y3 が実行役の着衣等を処分するなどと打ち合わせるほか、Y4 が加害の実行役を担当し、被告人の統率下であらかじめ定められた以上の任務分担に従って、法定の除外事由がないのに、 1 平成24 年4 月19 日午前7 時5 分頃、不特定又は多数の者の用に供される北九州市c 区(住所省略)付近路上において、出勤のため最寄り駅まで歩行中のO(当時61 歳)に対し、殺害に至ってもやむを得ないとする殺意をもって、バイクで近付いたY4 が、持っていた自動装てん式けん銃で、O の身体を目掛けて弾丸2 発を発射し、さらに、地面に向けて弾丸1 発を発射し、もって団体の活動として、組織によりけん銃発射の違反行為をするとともに、殺意に基づく先行の2 発を同人の左腰部及び左大腿部に1 発ずつ命中させたが、Y4 退去後に救急搬送されたO に約1 か月間の入院及び通院加療を要する左股関節内異物残留、左大腿部銃創の傷害を負わせるにとどまり、もって団体の活動として、組織により殺人未遂を犯した。 2 1 の日時場所において、前記けん銃1 丁を、これに適合するけん銃実包3 発と共に携帯して所持し、もって団体の活動として、組織によりけん銃加重所持の違反行為をした。 第2(標章3 事件)1(放火 の日時場所において、前記けん銃1 丁を、これに適合するけん銃実包3 発と共に携帯して所持し、もって団体の活動として、組織によりけん銃加重所持の違反行為をした。 第2(標章3 事件)1(放火事件)丙組事務所がある北九州市d 区内の、暴力団追放運動に賛同する者らが飲食店経営の拠点とするビルであって、営業中の店舗の在所を含む建造物に放火することを計画し、 Y1、Y2 のほか、丙組組員のZ1、Z2 及びZ3 と被告人が順次共謀の上、平成 24 年8 月14 日午前4 時半頃、P ら10 名がいた同市d 区(住所省略)所在のa1 ビル(鉄筋コンクリート造陸屋根6 階建及び木造平家建家屋、床面積合計約1025.39 ㎡)において、バイクで出向いて降車したZ1 又はZ3 が、営業中の店舗のある同ビル3 階に停止していたエレベーター内に灯油をまいた上、火をつけた発炎筒を同エレベーター内に投げ込んで同所に火を放ち、その火を同エレベーターの天井及び開扉したエレベーター前の床面等に燃え移らせ、よって同ビルの構成部分に含まれる同エレベーターを全焼させるとともに3階エレベーター前床面の一部を焼損し(焼損面積合計約3.2 ㎡)、もって現に人がいる建造物に放火して焼損した。 Y1、Y2、Y6、Z2 のほか、丙組組員のZ4 と被告人が順次共謀の上、⑴の日時頃、現に人が住居に使用せず、現に人がいない同市d 区(住所省略)所在のa2 ビル(鉄筋コンクリート造陸屋根6 階建、床面積合計1313.31 ㎡、b1 株式会社の所有名義登記、その後同社をb2 株式会社が吸収合併)において、バイクで出向いて降車したZ4 及びY6 のうち、Z4 が同ビル3 階に停止していたエレベーター内に灯油をまいた上、Y6 が火をつけた発炎筒を同エレベーター内に投げ 株式会社が吸収合併)において、バイクで出向いて降車したZ4 及びY6 のうち、Z4 が同ビル3 階に停止していたエレベーター内に灯油をまいた上、Y6 が火をつけた発炎筒を同エレベーター内に投げ込んで同所に火を放ち、その火を同エレベーターの内壁等に燃え移らせ、よって同ビルの構成部分に含まれる同エレベーターを全焼させて焼損し(焼損面積約1.7 ㎡)、もって非現住建造物に放火して焼損した。 2(b3 事件)前記a1 ビル3 階にラウンジ「b3」を構える同店経営者Aが、来店客であった被告人を含む暴力団員の立入りを拒否するとともに、同旨の立入り禁止の表示を掲げる条例所定の標章制度に基づいて同店に標章を掲示したため、被告人の地位を知りながら軽んじる言動がAに現れたと捉え、これに加害で報いるのを通じて付近に拠点を置く丙組及びその頂点に立つ被告人の威勢や統制を保持する活動として、また、同市d 区の同様の店から用心棒代名目のいわゆるみかじ め料を徴収するなどして支配する丙組の権益を維持・拡大する目的で、被告人の意思決定の下、Aの殺害を含む加害行為を計画し、Y1、Y2、Y3、Z1、Z4、Y7 のほか、丙組組員のZ5 と被告人が順次共謀の上、被告人の指揮命令に基づいて、Y2 及びZ5 がAの行動等の確認を行い、Y1 の指示により加害前後の移動用の自動車の手配をY3 及びY7 が担い、Z4 が自動車手配時のY7 との電話連絡を担い、Y3 及びY7 が加害後に車両や凶器等を処分するなどと打ち合わせるほか、Z1 が加害の実行役を担当し、被告人の統率下であらかじめ定められた以上の任務分担に従って、平成24 年9 月7 日午前零時58 分頃、同市d 区(住所省略)a3B棟東側駐車場において、退勤してタクシーで帰り着き、降車したA(当時35 歳)に かじめ定められた以上の任務分担に従って、平成24 年9 月7 日午前零時58 分頃、同市d 区(住所省略)a3B棟東側駐車場において、退勤してタクシーで帰り着き、降車したA(当時35 歳)に対し、殺害に至ってもやむを得ないとする殺意をもって、Z1 が、持っていた刃物でAの左顔面を1 回切り付け、臀部を1 回突き刺したが、Z1 退去後に救急搬送されたAに入院加療約114 日間を要する左顔面切創、左顔面神経損傷、右臀部刺創等の傷害を負わせるにとどまり ⑴の日時場所において、前記Aの殺害を制止しようとする前記タクシーの運転手B(当時40 歳)に対し、前同様の殺意をもって、Z1 が、前記刃物でBの左側頭部等を切り付けたが、前同様に搬送された同人に入院加療約14 日間を要する左側頭部・左耳介・左頚部・手背部切創等の傷害を負わせるにとどまりもって団体の不正権益を維持・拡大する目的で、かつ団体の活動として、組織により各殺人未遂を犯した。 3(b4 事件)地域の暴力団追放運動を推進し、前記標章制度に基づいて店舗に標章を掲示し、みかじめ料の支払をしない同市d 区内のクラブ「b4」の運営会社関係者に対する加害行為を計画し、Y1、Y2、Y5、Z1、Z5、Y7 のほか、丙組組員のDと被告人が順次共謀の上、平成24 年9 月26 日午前零時38 分頃、同市d 区(住所省 略)a4 出入口前において、帰宅しようとする同社取締役Q(当時54 歳)に対し、自動車で出向いて待機していたDが、Q の背後に駆け寄った上、持っていた刃物で同人の左臀部及び右大腿部を3 回突き刺すなどし、よって同人に入院加療15日間を要する臀部・大腿部刺創・頭部挫創の傷害を負わせた。 第3(看護師事件)X1 が通うクリニックでその脱毛施術を担当していた 及び右大腿部を3 回突き刺すなどし、よって同人に入院加療15日間を要する臀部・大腿部刺創・頭部挫創の傷害を負わせた。 第3(看護師事件)X1 が通うクリニックでその脱毛施術を担当していた看護師R の振る舞いに関し、X1 が追加した亀頭増大術も合わせて各施術の予後が思わしくなく、不具合を生じたなどと苦情を述べる過程で、X1 の地位を知りながら軽んじる言動がR に現れたと捉え、これに加害で報いるのを通じて甲會及びその頂点に立つX1の威勢や統制を保持する活動として、X1 の意思決定の下、R の殺害を含む加害行為を計画し、X1、X2、Y1、Y3、Y2、Y4、Z4、Z1 のほか、丙組組員のZ6 並びに甲會の理事長補佐とその二次団体の丁組の組長を兼ねるZ7 及び同組組員のZ8と被告人が順次共謀の上、X1 の指揮命令に基づいて、Z1 及びZ4 がR の行動等の確認を行い、Y2 が凶器の刃物を備え、Z7 の配下のZ8 が加害時の接近に用いるバイクを用意し、Y1 の指示によりY3 が加害前後の移動用の自動車を用意し、更に加害後の刃物等の処分を担い、Y4 が加害前後の実行役の送迎をするなどと打ち合わせるほか、Z6 が加害の実行役を担当し、被告人の統率下であらかじめ定められた以上の任務分担に従って、平成25 年1 月28 日午後7 時4 分頃、福岡市e 区(住所省略)のa5 北側歩道上において、帰宅のため最寄りのバス停から歩行中のR(当時45 歳)に対し、殺害に至ってもやむを得ないとする殺意をもって、Z6 が、持っていた刃物でR の左側頭部辺りを目掛けて突き刺すなどしたが、Z6 退去後に救急搬送されたR に約3 週間の入院及び通院加療を要する左眉毛上部刺切創、顔面神経損傷、右前腕部刺切創及び左臀部刺創の傷害を負わせるにとどまり、もって団体の活動と き刺すなどしたが、Z6 退去後に救急搬送されたR に約3 週間の入院及び通院加療を要する左眉毛上部刺切創、顔面神経損傷、右前腕部刺切創及び左臀部刺創の傷害を負わせるにとどまり、もって団体の活動として、組織により殺人未遂を犯した。 第4(歯科医師事件)X1 及びX2 が、かつて金銭の融通を受けるなどの間柄にあったS1 の振る舞い に関し、同人が砂利販売等の営業に加えてb5 漁業協同組合f 地区の代表理事等を務めるうちに、港湾開発工事に係る工事業者の選定等の実権を握ったと見込んだが、甲會との交際に応じて同工事関連の利権を譲るようS1 に要求しても応じないことから、X1 及びX2 の地位を知りながら軽んじる言動がS1 に現れたと捉え、これに加害で報いるのを通じて甲會並びにその頂点に立つX1 及びX2 の威勢や統制を保持する活動として、また、主な縄張である北九州市及びその周辺で工事業者からみかじめ料を徴収するなどして支配する甲會の権益を維持・拡大する目的で、X1 の意思決定の下、S1 の長男のS2 の殺害を含む加害行為を計画し、X1、X2、Y2、Z4、Y4 及びY6 と被告人が順次共謀の上、X1 の指揮命令に基づいて、Y2 の指示によりY6 が加害時の接近に用いるバイクの用意及び実行役の送迎を担い、Z4 がヘルメット等の準備をするなどと打ち合わせるほか、Y4 が加害の実行役を担当し、被告人の統率下であらかじめ定められた以上の任務分担に従って、平成26 年5 月26 日午前8 時28 分頃、北九州市d 区(住所省略)所在のb6 駐車場において、通勤のため駐車して降車したS2(当時29 歳)に対し、殺害に至ってもやむを得ないとする殺意をもって、Y4 が、持っていた刃物で、S2 の背部、胸部、腹部、大腿部等を目掛けて多数回突き刺すなどし て、通勤のため駐車して降車したS2(当時29 歳)に対し、殺害に至ってもやむを得ないとする殺意をもって、Y4 が、持っていた刃物で、S2 の背部、胸部、腹部、大腿部等を目掛けて多数回突き刺すなどしたが、Y4 の手を押さえるなどのS2 の抵抗に遭い、Y4 退去後に救急搬送されたS2に入院加療約14 日間及び外来加療約3 か月間を要する左大腿部刺創、腹部刺創、胸壁刺創及び背部刺創の傷害を負わせるにとどまり、もって団体の不正権益を維持・拡大する目的で、かつ団体の活動として、組織により殺人未遂を犯した。 【証拠の標目】(省略)【事実認定の補足説明】 1 標章3 事件(判示第2)について有罪を認めた判断の理由の要点を、補足して述べる。 関係証拠によれば、各判示の放火、組織的殺人未遂及び傷害の犯罪構成要件該当行為が行われたものと優に認められ、この認定を争う弁護人の主張を検討しても、採用に値するものは見出せない。併せて、違法性及び責任を阻却する事由も見当たらないから、各構成要件該当の犯罪の成立が認められる。 慎重な検討が求められる争点は、丙組組員である共犯者らと被告人との間に各判示の共謀が認められるかどうかであり、判示第2 の2 については被告人の指揮命令に基づく組織犯罪性等が更に認められるかどうかであって、これらを否認する被告人の供述も踏まえて検討したが、以下述べるとおり認定に至る論理が、検察官立証及び動かし難い事実に現れていると認められる。 アすなわち、検察官立証は、一部の共犯者が自己及び自己以外の丙組組員の犯行への関与を証言し、又は捜査機関に述べて得られたそれらの供述を基礎とする。 イそれらの供述のうち特に高い信用性を有するものとして、各判示の犯行に用いられ、あるいは備えられた自動車や衣服な 犯行への関与を証言し、又は捜査機関に述べて得られたそれらの供述を基礎とする。 イそれらの供述のうち特に高い信用性を有するものとして、各判示の犯行に用いられ、あるいは備えられた自動車や衣服などの物品に関し、犯行後の処分先へ捜査機関を案内し、実際に物品の発見につながる内容を述べた共犯者の供述を挙げることができ、これらの供述は、捜査機関が知り得なかった事情を自発的に述べ、根幹の信用性が確かめられたものを含むと認められる。 具体的にみると、平成24 年8 月14 日発生の放火事件に関し、平成25 年 4 月に一般人の発見通報で港の海中から自動二輪車1 台が引き揚げられ、同二輪車が訴外第三者の管理下にあったこと、及び付属のナンバープレートが別の盗難の被害品であることが判明し、更に平成27 年10 月、Y6 が案内した先である別の海中から自動二輪車が引き揚げられ、これが平成24 年8 月上旬から14 日頃までに盗難に遭った旨の届出の対象であったこと、及び付属のナンバープレートは訴外第三者の管理下から別途流出していたことが判明した。また、平成24 年9 月7 日発生のb3事件に関し、平成29 年3 月にY7 が案内した先の海中から軽四輪乗用自動車が引き揚げられ、これが平成24 年8 月24 日に盗難に遭った旨の届出の対象であったこと、及び盗難の4 日後にそのナンバープレートが外されて別の場所に遺留されていたこ とが判明した。平成24 年9 月26 日発生のb4 事件に関し、平成28 年6 月にY7 が案内した先の海中からバッグ3 個が引き揚げられ、うち1 個に大きめの石とともに靴や作業衣、手袋等の物品が、別の1 個にポロシャツや靴下等の物品が、更に別の 1 個に長袖シャツや靴下等の物品が入れられており、以上が判明している。 これらの事 られ、うち1 個に大きめの石とともに靴や作業衣、手袋等の物品が、別の1 個にポロシャツや靴下等の物品が、更に別の 1 個に長袖シャツや靴下等の物品が入れられており、以上が判明している。 これらの事実は、Y6 やY7 の関与の下、当該二輪車等がひそかに海に捨てられて隠蔽されていたことを示しており、また、盗難を経たものを含むそれら物品に関し、ナンバープレートの分離等を交え、最終的に海中に隠蔽されているのは、由来や行く末を徹底して隠さねばならないほどの重大な用途をうかがわせるから、これと整合的な放火事件に近接する出来事として、前記二輪車を移動に用い、事後に海中に投棄した旨述べるY6 の供述に疑問はない。同様に、b3 事件に近接する出来事として、移動に用いた前記自動車を海中に投棄した旨を述べ、併せてb4 事件に近接する出来事として、前記作業衣等在中のバッグを海中に投棄した旨を述べるY7 の供述にも疑問はない。 そして、既述の盗難や隠蔽等の事情に照らし、各物品の用途はかなりの計画性を備え、発覚の危険を小さくする意図が働いていたとみられるから、つながりのある複数名が関与したと考えるのが自然であるところ、Y6 及びY7 は、別の丙組組員の関与を整合的に述べている。 この点を吟味するに、関係証拠上、多くの組員数を保持し、経済的な側面を含めて勢力を蓄え、規律を保って統制を維持していたと認められる丙組の組員のうち、若頭ら要職との連絡を保つなどして統制外の末端とは言い難いY6 やY7 らが、強盗等の犯罪行為を独自に企てたとの想定はやはり成り立ち難く、その企ての痕跡もない。むしろ、組織の中枢に比較的近い立場の暴力団員が、自動車等を用いて急ぎ移動することを念頭に、当該車両等の事後の探索を妨げるため海に捨てることなども盛り込みつつ手掛ける犯罪行為の典型例は、 跡もない。むしろ、組織の中枢に比較的近い立場の暴力団員が、自動車等を用いて急ぎ移動することを念頭に、当該車両等の事後の探索を妨げるため海に捨てることなども盛り込みつつ手掛ける犯罪行為の典型例は、狙いを定めた他者に連携して危害を加える行為であるところ、Y6 の供述に明確に現れる放火事件を含め、標章3 事件に関し認定できる犯罪行為はまさに該当する。そうすると、これら犯罪行為に自身のみ ならず複数の丙組組員が関与して連携しており、そのうちに若頭のY1 も含まれていた旨述べるY6 及びY7 の供述は、核心部分で整合的な内容であって、高度の信用性を有する。供述内容に見過ごせない不自然さなどもなく、連携に当たり組員同士が電話連絡を取り合っていた旨述べる部分が通話履歴で裏付けられていることなどの支えもあるから、信用性に疑いを容れる余地はない。 ウ以上のY6 又はY7 の供述と整合する事実関係が、放火事件のY6 供述については、T1、Y3 及びY2 の各証言のほか、Y7 の証言と裁判官調書の供述、並びにZ3の裁判官調書の供述にそれぞれ現れており、b3 事件のY7 供述については、T2、T1及びY3 の各証言のほか、T3 の証言と裁判官調書の供述にそれぞれ現れており、b4事件のY7 供述については、Z2 の証言及びDの証言と裁判官調書の供述にそれぞれ現れているのであって、整合的な範囲に関し、各証言又は供述の信用性を肯定できる。これら証言又は供述は、丙組の組員でない第三者が主体のものを含む上、個々に独自の内容が盛り込まれていながら核心部分で支え合う構造となっており、供述者間の口裏合わせや捜査機関の誘導等を疑わせるものではなく、前記同様の裏付けも備えているから、各判示の共謀ないし任務分担の認定の基礎にできる。よって、これらの証言又は供述を含む関 となっており、供述者間の口裏合わせや捜査機関の誘導等を疑わせるものではなく、前記同様の裏付けも備えているから、各判示の共謀ないし任務分担の認定の基礎にできる。よって、これらの証言又は供述を含む関係証拠に依拠し、被告人を除く丙組組員の間に各判示の共謀及び任務分担が存在した事実をまずは認定できる。 なお、指定暴力団に属する丙組の若頭を含む要職が、一般人に対する加害等を禁ずる組織の規律にあえて背き、情報伝達を抑えながら時間と労力をつぎ込み、隠蔽等を交えながら任務分担にこぞって加わっていることなどの関係証拠上の事実に照らせば、丙組の不正権益の維持・拡大目的を含めた組織のための、組織に効果を帰属させるための重大な加害の計画があるとの考察が働くのであって、これと合致する認識を関与者各自が持ち得なかったとは考えられない。共謀及び任務分担の関与者らは、一様に、そのような組織のための、組織に効果を帰属させるための秘密裏かつ重大な加害に関与している旨の認識を、少なくとも未必的に有していたと認定できる。 検察官立証は、放火事件の現住建造物等放火の公訴事実に現に人が住居に使用する建造物である旨を掲げながら、その事情の認識が当該関与者らに備わっていたことの立証が欠ける点を除けば、以上の認定を導いているとの評価が当たり、是認できる。 エもっとも、前記の証言又は供述は、被告人との間の各共謀のほか、団体活動性を象ると主張されている被告人の意思決定やその指揮命令の認定を直接導く内容ではなく、通話履歴等の周辺の証拠をみても同様であるので、検察官が主張するこれら犯罪成立要件を更に検討したが、関係証拠によれば、次のとおりの有罪の推認が加わっている。 すなわち、関係証拠によれば、標章3 事件で認定できる犯罪行為は、平成24 年8 月中旬から9 月下旬ま ら犯罪成立要件を更に検討したが、関係証拠によれば、次のとおりの有罪の推認が加わっている。 すなわち、関係証拠によれば、標章3 事件で認定できる犯罪行為は、平成24 年8 月中旬から9 月下旬までの短期間に立て続けに行われており、場所がd 区という点で共通している。丙組は、この地域に組事務所を設置するなどして拠点にし、組員が周辺の飲食店からみかじめ料を徴収して組織にも納めていたところ、暴力団員を対象とする警察官の職務質問等に関し、行き過ぎの嫌いがあるから対抗策を検討する旨の指摘が組織内で持ち上がり、更に条例に基づく標章制度が始まり、標章が貼られた飲食店に対する暴力団員の立入りが禁止されるなどしたため、その事情を組織内の会議でも周知の上、標章を掲示する飲食店が多数現れたのに対応して組員が店を調べてまわり、標章の有無の統一的な把握等に努めていたと認められる。そのようにして、丙組の組員らは、標章制度に基づいて警察が一層介入する事態になりかねない地域の情勢に強い関心を払っていたと認められ、また、自身らの立場については、暴力団追放運動に与する飲食店関係者及び警察官から監視の目を向けられ、機会あるごとに規制を加えられかねない立場であるとの認識を有していたと認められる。 その折、若頭のY1 以下の丙組組員らは共謀して各犯罪行為に及んだと認定できるところ、関係証拠上、被害に遭った者は、地域の暴力団追放運動を推進し又は賛同する姿勢の飲食店関係者等であるから、各犯罪行為は、組織の膝元で高 まっていた暴力団追放運動に与し、丙組に敵対ないし支障を及ぼす姿勢のその者らに害を加えて威迫し萎縮させ、この事情を界隈に知らしめることにより、みかじめ料の収受等からなる丙組の不正権益の維持・拡大を狙うものと認められ、かかる明快な観点によれば、関与した組員ら 姿勢のその者らに害を加えて威迫し萎縮させ、この事情を界隈に知らしめることにより、みかじめ料の収受等からなる丙組の不正権益の維持・拡大を狙うものと認められ、かかる明快な観点によれば、関与した組員らの側も狙いを認識していたと考えられるし、警察に狙いを見透かされることも認識していたと考えられる。眼前にある警察との緊張関係が一気に高まって丙組が程度の強い捜査の対象になることを招き、組長の被告人にも捜査が及ぶ可能性を導くと自覚できる対象であったと考えられるが、無鉄砲な様相にはなく、既述のとおり発覚の危険を小さくする意図を働かせた犯罪行為であって、捜査を免れるための苦心がうかがわれる。そのように重大な局面に即して思慮を巡らせる当該組員らが、そもそも、多大な影響が及ぶ先である組織の上位者の立場を無視し、意向を諮ることなく独自の凶行を繰り返す短慮に出ていたとは想定し難い。また、関係証拠によれば、組員の犯罪の嫌疑に基づいて丙組の事務所の捜索等の捜査を受けた場合、責任を問われ、組織からの不利益処分もあり得ると認められるから、各犯行が独自に敢行した犯罪行為であるならば、組織からの見返りが期待できないのにとどまらず、それら不利益処分も甘受する構えであったことになるが、これも考え難い。総合すると、各犯行に関与した組員らは、本件の重大な犯罪行為の反復を独自に思い立つとは考え難い情勢下にあり、思い立っても逡巡するはずの情勢下にあったとみられるのであって、それらを乗り越えて各犯罪行為に及ぶに当たり、組織の頂点に立って統率する被告人の意向が働いていなかったと想定するのには、不自然、不合理さが否めない。 そして、特に重視に値する事柄として、放火事件、b3 事件及びb4 事件のいずれの犯罪行為についても、その被害に遭う側と被告人との間に、以下述べるとおりの個別のつな 不自然、不合理さが否めない。 そして、特に重視に値する事柄として、放火事件、b3 事件及びb4 事件のいずれの犯罪行為についても、その被害に遭う側と被告人との間に、以下述べるとおりの個別のつながりがあったことを指摘できる。 関係証拠によれば、放火事件の放火先の一つとされた判示a2 ビルは、被告人の行きつけの飲食店が店舗を構える場所であり、その放火の犯行で灯油をまくなどして火を放った対象のエレベーターが停止していた3 階のフロアには、被告人が年若い 頃から親交を有する相手方の経営店舗が存在し、すぐ上の4 階にもこれと近い関係性の者による経営店舗が存在していたと認められる。また、同じく放火先である判示a1 ビルにも、被告人の行きつけの店が二、三店舗あるところ、同様にエレベーターが停止していた同ビル3 階に残る燃焼の痕跡等に照らし、当該放火の犯行は、そのフロアに存在する判示ラウンジ「b3」のすぐそばに位置していたエレベーター内及びその付近に灯油をまくなどして火を放っており、その店舗外壁にスプレーで落書きが残されていたとも認められるから、当該ラウンジを主な標的に含めて放火が行われたと考えられるのであるが、このラウンジも、被告人が客として訪れていた店舗であった。しかも、その経営者であるAは、前身の店の頃から来店頻度の高い被告人との間で贈り物のやり取りなどの付き合いを重ねており、丙組に届くみかじめ料の支払をしていた関係性があったと認められる。そして、b3 事件の組織的殺人未遂は、加害の順序等に照らし、このAを加害の対象として計画し、遂行されたものとみられ、かつ、放火事件から1 か月が経過しないうちにb3 事件が発生するという連続性を備えるから、両事件とも、前記の関係性を被告人と共有するAが被害に遭う側に含まれるにもかかわらず、そのA ものとみられ、かつ、放火事件から1 か月が経過しないうちにb3 事件が発生するという連続性を備えるから、両事件とも、前記の関係性を被告人と共有するAが被害に遭う側に含まれるにもかかわらず、そのAに対する加害を繰り返した構造の2 事件であると認められる。更に続いて、b3 事件から3 週間が経過しないうちに発生したb4 事件の傷害の被害者は、老舗のクラブ「b4」の営業部長であり、運営会社の取締役でもあるところ、このクラブの従業員として被告人の元妻が働いていた時期が存在し、その後もクラブの関係者と親しくする付き合いがあったと認められ、また、クラブの店舗が含まれるビルには、被告人の行きつけの飲食店が複数存在したと認められるが、それでもなお、クラブの経営側の一人を標的として加害が行われた帰結であると認められる。 要するに、これら3 事件の犯罪行為の被害に遭う側には、客観的に見て、被告人との間に好意的な関係のあった者らが含まれているから、被告人を頂点とする丙組の組員らにしてみれば、地域の飲食店関係者の中から抽出して独自の加害の標的を定めるに当たり、これに据えることをためらうはずの対象であったと考えら れる。この点に関し、組員らの側で被害者の属性を把握できない可能性を疑ってみても、地域の飲食店からみかじめ料の支払を受けるのみならず、標章制度の開始に伴って店ごとの標章貼付の有無を調査していた丙組の要職を含む組員らが、判示のとおり計画的に加害に至る過程で、その属性の把握を怠るとは考えられない。そのような属性の被害者と被告人との関係性を顧慮せず、被告人の意向を度外視して加害に及ぶのでは、暴力団特有の親子の盃を被告人と交わすなどして統率下にある組員らにとって、著しい不義理を働くことになりかねないと考えられる。被告人との関係性のある者らが相次 告人の意向を度外視して加害に及ぶのでは、暴力団特有の親子の盃を被告人と交わすなどして統率下にある組員らにとって、著しい不義理を働くことになりかねないと考えられる。被告人との関係性のある者らが相次いで加害の対象にされているのは、特段の事情が介在したためとみるほかない。すなわち、関係性の張本人である被告人からの加害の指示が存在したからこそ、組員らがその加害に及ぶことができたものと推認できる。この推認が妨げられるとすれば、組員らが被告人に義理を貫く結びつきが失われており、例えば、被告人の求心力が失われて統制が及ばず、その意向をないがしろにして組員らが各種の暴挙に出ていたなどという例外的な場合を考えることになるが、関係証拠上、そのような場合であったことを疑わせる事情はない。 なお、被告人の供述によれば、Aが述べるような親密な付き合いはなく、前身の店の頃も、その共同経営者との付き合いこそ親密であったがAとはそうではない旨述べられ、双方の供述に対立が見られる。しかし、接触の終盤であった別の料理店における遭遇時、その前に被告人が客としてラウンジ「b3」を訪問していたことに関し、同料理店の被告人の席までAが出向いて対峙し、ラウンジへの訪問は控えてもらえるよう告げた事実に争いはない。その直近の訪問が、従前の連続性のない偶発的な、時間潰しのための単発のものであったかのようにいう被告人の供述は、当該争いのない事実と整合的でなく、むしろ、それまでに積もった付き合いの延長上に現れた訪問であると捉え、関係の解消を明らかにして訪問拒絶を改めて告げた旨説明するAの供述の方が整合的である。両名の関係性の実態についてはAの供述に依拠して認定した次第である。 既述の各犯罪行為の連続性とこれに付随する警察との緊張関係や、被害 に遭う側と被告人との個別のつなが が整合的である。両名の関係性の実態についてはAの供述に依拠して認定した次第である。 既述の各犯罪行為の連続性とこれに付随する警察との緊張関係や、被害 に遭う側と被告人との個別のつながりなどを踏まえた検討内容は、被告人からの加害の指示がなかったとの疑いを容れようとする場合に、説明が不可能又は著しく困難な事実関係があることを示す考察であって、翻って、その指示の存在を推認させるものと結論付けられる。 進んで、推認を妨げる事情の有無を検討したが、関係証拠に該当するものは現れず、むしろ、推認に沿う事実が現れているといえる。 標章3 事件に共通する事実を捉えてみれば、地域の暴力団追放運動の推進をもたらす標章制度の開始につき、被告人が強い反感を示し、標章を貼付している飲食店の調査及びその貼付取りやめの働き掛けを行うよう指示し、丙組の組員らが指示に応じて実践していた事実が、信用性の高いY6 の供述に現れている。放火事件及びb3 事件に共通する事実を捉えてみれば、同様に標章を貼付するほか、かつて付き合いのあった被告人と対峙し、その意向に逆らうものとわきまえつつ、訪問を控えてもらえるよう面前で告知した既述の事実が、すなわち、被告人にしてみればその地位を軽んじる言動が現れたと捉えられる事実が、信用性の高いAの供述に現れている。踏み込んで見たときに現れるこれらの事実は、被告人からの加害の指示を推認するのに沿うとともに、各判示の経緯で団体活動性や不正権益の維持・拡大目的が醸成され、被告人の指揮命令に基づく組織性及び共謀が成り立ったことの認定を導くものといえる。団体活動性等について付言すれば、被告人の地位を軽んじる言動をしたAに対し、あえて組織による加害で報いるのを通じ、被告人の指揮命令に基づく丙組組員による加害であることをA及び地域の同業者に といえる。団体活動性等について付言すれば、被告人の地位を軽んじる言動をしたAに対し、あえて組織による加害で報いるのを通じ、被告人の指揮命令に基づく丙組組員による加害であることをA及び地域の同業者に暗に伝え、丙組及びその頂点に立つ被告人の威勢や統制が強いことを顕示してそれらの保持を図るとともに、みかじめ料関連の丙組の不正権益の維持・拡大を図り、併せて、加害に関与する組員らにも同様に顕示し、上位者の地位を軽んじることは許されないとの認識を抱かせ、もって組織内でも被告人の威勢や統制の保持を図る犯行であったとの認定を、関係証拠から導き出せる。そこで、被告人の、共謀の点を含む以上の各犯罪への関与の事実を推認し、判示のとおり認定する。 オ弁護人は、b3 事件の実行犯が殺意を有していたとは認められず、被告人を含む判示共謀者らについても同様であるとして、判示殺意の認定を争う主張をする。 しかし、凶器が発見されていないことから関連の情報は関係証拠に現れないものの、別途、現れている被害者Aの受傷の状況等によれば、実行犯のZ1 は、タクシーから降りたAがその間近に迫るまでZ1 の存在に気付かない状況下、すなわち、Aの隙を突いて身構える余裕を与えないまま、振り返った同女の左顔面辺りに対し、上から下に大きく振り下ろすようにして鋭利な刃物の刃先を突き刺し、左顔面の長さ約20cm、深さ約5cmの切創を負わせる力で切り付けたものであり、これが最初の加害行為であったと認められる。その行為は、重要な血管や神経が集まる頭部や頚部を切り裂く可能性が非常に高いものであるが、状況から見て、Z1 は当初からこの危険な加害行為の実行を狙っていたと認められる。のみならず、Aの身体には、身体の枢要部に近い臀部に意図的にその刃先を突き刺すなどして生じたとみるべき ものであるが、状況から見て、Z1 は当初からこの危険な加害行為の実行を狙っていたと認められる。のみならず、Aの身体には、身体の枢要部に近い臀部に意図的にその刃先を突き刺すなどして生じたとみるべき深さ約10cmの刺創が存するから、最初のものだけにとどまらずに刃物で身体に深い傷を負わせようとする加害行為が、Z1 により行われたと認められる。 また、被害者Bの受傷の状況等からすると、先行のAに対する加害行為を察知してその制止に入ったBに対し、Z1 は同様に刃物で切り付ける行為に及んだと認められ、よって左頚部の長さ約12cm、深さ約2cmの切創を含む受傷に至らせたと認められるところ、これらは、制止のために少なからずZ1 に接近していたBに対し、同人の手などに切創を生じさせるのと並行して負わせた複数の受傷と認められるのであるが、奥まった位置の頚部に重い程度の受傷が存在することに鑑み、Z1 は、Bの制止の動きに対し刃物で威嚇するなどして逃れようとするにとどまらず、刃物を能動的に動かして刃先を奥の方へ届かせようとしていたと認められ、このような加害行為が、Z1 により立て続けに行われたと認められる。 以上によれば、Z1 は、Aに対する複数の加害行為時、その頭部や頚部を切り裂いて失血させるなどの機序により死亡に至らせることも容認する意思を有していたと認められ、すなわち、判示の殺意をもって行為に及んだと認められる。ま た、直接の加害の対象に設定していなかったとみられるBに対しても、その制止の動きを見て即座にAに対するのと同様の加害行為に及ぶこととし、Bの死亡の事態を容認する意思で複数の加害行為を行ったと認められるから、すなわち、判示の殺意をもって行為に及んだと認められる。弁護人は、共謀者らの供述のうちに、Z1 が用いた刃物の刃体が覆わ とし、Bの死亡の事態を容認する意思で複数の加害行為を行ったと認められるから、すなわち、判示の殺意をもって行為に及んだと認められる。弁護人は、共謀者らの供述のうちに、Z1 が用いた刃物の刃体が覆われていて刃先がわずかしか出ていなかったかのように述べるものがあることなどを指摘して殺意の存在を争うが、既述の受傷の状況等と整合しないその供述には依拠できないから、前提を欠く主張であるし、その余の主張にも殺意の認定を揺るがせるものは見当たらない。 そして、Z1 以外の、被告人を含む共謀者らに殺意の存在を認め得るか否かも検討したが、既述のY7 供述を中核として得られている関係者の供述からすると、判示のとおりに事前にAの行動等の確認を尽くすなどして組員らが連携し、計画的にAに対する加害行為が行われたことが認められるから、その延長上でZ1 が現場で実行する加害行為の態様や程度について、それがZ1 の独自の選択に任されていたとは考えられない。また、被告人との間に個別のつながりがあったAを対象とし、あえて実行しようとする加害行為の態様等に関し、Z1 とその余の共謀者らとの間に意思疎通がなかったはずはなく、特に、加害の計画を立ち上げて推進する立場の被告人や、計画の中枢に身を置いて具体的な指揮をするY2 らにおいて、この点の意思疎通を欠いていたとは考えられず、むしろ、その意思疎通が交わされていたと推認できる。その余の共謀者らにしても、既述のとおり組織のための、組織に効果を帰属させるための秘密裏かつ重大な加害に関与している旨の認識を、少なくとも未必的に有していたと認められる以上、Z1 の殺意に基づく加害行為もまたその認識の範囲内であったと認められる。明示的に交わされていたとまではいえないものの、Z1 が実行した態様の加害行為につき、これを容認する意思 いたと認められる以上、Z1 の殺意に基づく加害行為もまたその認識の範囲内であったと認められる。明示的に交わされていたとまではいえないものの、Z1 が実行した態様の加害行為につき、これを容認する意思疎通が順次行き渡っていたと推認できる。共謀者らに共通して判示の殺意の存在を認定することに疑問はない。タクシーから降車するAに対する加害行為と同じ場面で生じた運転手Bに対する同等の加害行為についても、共謀者らの犯意の範囲内のものとして同じ罪責 を問うのが法理上当然であるから、この点も付言せねばならず、以上の検討に照らし弁護人の主張は採用できない。 カなお、弁護人は、Y2 及びZ5 がAの行動等の確認を行っていたとする判示の事実認定に関し、これを導くT2 やT3 らの供述に信用性がないと主張し、具体的には、行動等の確認の痕跡ともうかがわれる防犯カメラ映像等を入手した捜査官からの働き掛けが作用し、素性の良くないT3 らが迎合するなどして不当に得られた供述であるなどと主張するが、そのような働き掛けや迎合等が直ちに成り立つほどに確かな客観的痕跡が得られていたとはいえず、また、各供述には、働き掛けや迎合等の産物であるとみるには整合しない内容の個別性が備わっており、捜査官が吟味をするのに甚だ迂遠な作業を課されることとなる内容も含まれているから、弁護人が投げ掛ける疑いには合理性がなく、主張は採用できない。 2 元警察官事件(判示第1)、看護師事件(同第3)及び歯科医師事件(同第4)について有罪を認めた判断の理由の要点を、補足して述べる。 ⑴ 関係証拠によれば、各判示の組織的殺人未遂及びけん銃加重所持等の犯罪構成要件該当行為が行われたものと優に認められ、この認定を争う弁護人の主張を検討しても、採用に値するものは見出せない。併せて、違法性 関係証拠によれば、各判示の組織的殺人未遂及びけん銃加重所持等の犯罪構成要件該当行為が行われたものと優に認められ、この認定を争う弁護人の主張を検討しても、採用に値するものは見出せない。併せて、違法性及び責任を阻却する事由も見当たらないから、各構成要件該当の犯罪の成立が認められる。 ⑵ 慎重な検討が求められる争点は、丙組組員又は甲會組員である共犯者らと被告人、X1 及びX2 との間に各判示の共謀が認められるかどうか、並びにX1 の指揮命令に基づく組織犯罪性、歯科医師事件については更に不正権益維持・拡大目的が認められるかどうかであったが、以下述べるとおり認定に至る論理が、検察官立証及び動かし難い事実に現れていると認められる。 アすなわち、検察官立証は、標章3 事件と同様、一部の共犯者が自己及び自己以外の丙組組員や甲會組員の犯行への関与を証言し、又は捜査機関に対し述べて得られたそれらの供述を基礎とする。 イそして、それらの供述のうち、車両や凶器等の関連の物品に関し、犯行後の処分先を捜査機関に案内し、実際に物品の発見につながる内容を述べた共犯者の供述に特に高い信用性が認められ、この点は標章3 事件と同様である。 具体的にみると、平成24 年4 月19 日発生の元警察官事件について、平成27 年3 月、Y4 が案内した川の中から自動装てん式けん銃1 丁が引き揚げられており、この場所は、平成24 年4 月24 日に警察官が水路内からナンバープレート非装着の原動機付自転車を発見し、これを同所に投棄した旨Y7 が述べる先とは異なる場所であったから、同月18 日から翌日までに盗難に遭った旨の届出の対象であった同車の存在に加えてなお一層、Y4 の供述に事件との結びつきが現れている。平成25 年1 月28 日発生の看護師事件については、平 たから、同月18 日から翌日までに盗難に遭った旨の届出の対象であった同車の存在に加えてなお一層、Y4 の供述に事件との結びつきが現れている。平成25 年1 月28 日発生の看護師事件については、平成26 年10 月にY4 及びZ6 が案内した港の海中から同様に非装着の普通自動二輪車が引き揚げられ、同車は平成25年1 月27 日から翌日までに盗難に遭った旨の届出がなされていた被害品であることが判明しており、両名の供述に同様に事件との結びつきが現れている。平成26 年月26 日発生の歯科医師事件については、同年12 月にY6 が案内したダムの水中から同様に非装着の普通自動二輪車が引き揚げられ、同車は同年5 月23 日から翌日までに盗難に遭った旨の届出の対象であったことが判明しているから、Y6 の供述に同様に事件との結びつきが現れている。 そして、これらの物品の隠蔽等の事情が導く計画性等の存在が、つながりのある複数名の関与をうかがわせるところ、Y4 らの供述で述べられる別の丙組組員又は甲會組員の関与の事情は、狙いを定めた他者に連携して危害を加える暴力団特有の犯罪行為が、それら組織の規模等に合致して行われたことをいうものであり、核心部分で整合的な内容であって高度の信用性を有すること、以上は標章3 事件と同様である。 ウそれらY4、Z6 又はY6 の供述と整合する事実関係が、元警察官事件のY4 供述についてはY3 の証言のほか、Y8 の証言と裁判官調書の供述、Y7 の証言と裁判官調書の供述、Y6 の証言と裁判官調書の供述に現れており、看護師事件のZ6 供述に ついてはY2 及びY3 の各証言のほか、Z8 の証言と裁判官調書の供述に現れており、歯科医師事件のY6 供述についてはY2 及びY4 の各証言に現れており、整合する範 件のZ6 供述に ついてはY2 及びY3 の各証言のほか、Z8 の証言と裁判官調書の供述に現れており、歯科医師事件のY6 供述についてはY2 及びY4 の各証言に現れており、整合する範囲に関し、これらの証言又は供述の信用性を肯定できる。既に甲會を脱退した者を主体に含むこと、独自の内容が盛り込まれていながら核心部分で互いに整合的であって、各判示の共謀ないし任務分担の認定の基礎にできること、以上も標章3 事件と同様である。よって、これらの証言又は供述を含む関係証拠に依拠し、被告人を除く甲會の丙組組員及び同じ二次団体の丁組組員の間に各判示の共謀ないし任務分担が存在した事実をまずは認定できる。 指定暴力団である甲會の要職が、加害を禁ずる組織の規律にあえて背き、情報伝達を抑えながら隠蔽等の任務分担にこぞって加わっていることなどの事実によれば、甲會の権益の維持・拡大目的を含めた組織のための、組織に効果を帰属させるための重大な加害行為の計画があるとの考察が働くこと、これと合致する認識を、少なくとも未必的に関与者各自が持ち得ていたと認定できること、以上も標章3 事件と同様である。 検察官立証は、看護師事件の公訴事実に共謀関与者として掲げたZ5 及び丙組の組長秘書のT4 に関し、共謀として評価するのに足りる重要な関与行為の立証が欠ける点を除けば、以上の認定を導いているとの評価が当たり、是認できる。 エもっとも、前記の証言又は供述は、被告人やX1、X2 との間の共謀やX1 の指揮命令の認定を直接導く内容ではなく、通話履歴等の周辺の証拠をみても同様であるので、検察官が主張するこれらの共謀及び指揮命令について更に検討したが、関係証拠によれば、次のとおりの有罪の推認が加わっている。 まず、特に重視に値する事柄として、元警察官事件、看護師事件及 あるので、検察官が主張するこれらの共謀及び指揮命令について更に検討したが、関係証拠によれば、次のとおりの有罪の推認が加わっている。 まず、特に重視に値する事柄として、元警察官事件、看護師事件及び歯科医師事件のいずれの犯罪行為についても、その被害に遭う側とX1 又はX2 との間に、以下述べるとおりの個別のつながりがあったことを指摘できる。 関係証拠によれば、元警察官事件の被害者は、警察官在職の三十余年を通じて甲會関連の事件の捜査や情報収集に長く携わるうちに、個々の組員との接触にとどま らず、最高幹部のX1 から、話をする機会を向けられるなどして直接のやり取りができる関係を構築し、また、X1 に準じる地位のX2 と携帯電話番号を交換して現に連絡していたものであって、腹を割って話せる相手と見られている節を感じており、ほかにそのような例の乏しい捜査官であったと認められるが、同事件当時は、退職して異業種への再就職後、一定の期間が経過しており、警察の捜査に加わっている立場ではなかったと認められる。 看護師事件の被害者は、判示クリニックの看護師として在勤中に判示の被害に遭っているところ、同クリニックは美容形成皮膚科及び泌尿器科の設置が主なものであり、守秘義務徹底のための完全予約制の下、診療希望者とカウンセリングをして個別の診療内容を定め、施術後、継続してその後の管理を行う方式であった。通院時、X1 は一人で訪れることがほとんどであり、被害者担当の下でレーザー脱毛の施術を、追加して医師による亀頭増大術の施術を希望して受けており、それら診療が続く1年ほどの間、携帯電話を通じた24 時間対応の相談を含め、被害者がほぼ専属的な担当であったと認められる。 歯科医師事件の被害者は、歯科医としての出勤の機会に判示の被害に遭っているところ、同人の く1年ほどの間、携帯電話を通じた24 時間対応の相談を含め、被害者がほぼ専属的な担当であったと認められる。 歯科医師事件の被害者は、歯科医としての出勤の機会に判示の被害に遭っているところ、同人の父親は、判示の事業及び漁業協同組合の要職を手掛けていたが、かつてX1 及びX2 と接点を有し、具体的には、X1 と中元や歳暮のやり取りをし、また、年若い頃より親交のあるZ7 を介して上位者のX2 からの多額の貸付依頼に応じ、続いて、関連の暴力団員からの同様の融通依頼に応じたことに付随して接触したX2 から、半額の返還を受けるも残りは委ねたままにし、加えて、X1 及びX2 が組織の実権を握ったのち、同人らから今後の懇意の申出を受ける酒席を共にする出来事や、X1 の面子を潰したなどと批判を受けた諍いをおさめるため、X2 に多額の金銭を渡す出来事が存在したと認められる。 以上を導く被害者側の供述の信用性を見ると、看護師事件については診療録等の裏付けを備えていて内容面でも疑問はなく、元警察官事件でも同僚警察官の供述等の裏付けを備えて同様の評価に至る。歯科医師事件については、被害者の父親の供 述に関し、その事業が暴力団員との親交を理由に公共工事の指名停止処分を受けるなどの憂き目に遭い、のちに処分が取り消されて業績回復及び漁業協同組合への関与を得ていたが、再び厳しい批判を受けることになりかねないX1 及びX2 との踏み込んだ交際の存在をあえて申告しており、その申告内容に捜査機関の誘導等が働いた痕跡もないことなどに鑑み、供述の信用性が認められる。 要するに、これら3 事件の犯罪行為の被害に遭う側には、客観的に見て、X1 又はX2 と好意的な関係にあった者や、個人的な接触の相手方が含まれるから、X1 らを頂点とする甲會の組員らにしてみれば、 要するに、これら3 事件の犯罪行為の被害に遭う側には、客観的に見て、X1 又はX2 と好意的な関係にあった者や、個人的な接触の相手方が含まれるから、X1 らを頂点とする甲會の組員らにしてみれば、独自の加害の標的を定めるに当たり、これに据えること自体が想定されないか、据えようとしてもためらうはずの対象であったと考えられる。この点に関し、組員らの側で独自に加害を企てながら被害者の属性を把握できない可能性は疑うべくもなく、元警察官事件は職を退いた被害者の、再就職先への通勤時に襲撃しているから、身辺を調査して襲撃に及んだ経緯であると認められる。看護師事件は、組員らとの接点がない女性看護師を襲撃しており、しかも、X1 の通院の事情に係る秘密が守られるはずのクリニックの専属的担当看護師を襲撃しているから、同様の調査を経ていたと認められる。歯科医師事件は、漁業協同組合の内実等を探れば、判示のとおり父親が実権を握ったとの理解も成り立つ状況で異業種のその息子が襲撃対象とされているから、同様の調査を経ていたと認められる。父親の供述によれば、既述のZ7 の介在が続いていた事実が現れているから、尚更である。したがって、いずれも、X1 又はX2 との関係性が視野に入るところ、暴力団特有の親子の盃を連ねるなどしてX1 らの統率下にある当該組員らが、X1 らの意向を度外視して加害に及び、よって同人らに著しい不義理を働くような事態は、通常、想定し難い。X1 又はX2 との関係性のある者らが相次いで加害の対象にされているのは、特段の事情が介在したためとみるほかない。すなわち、関係性の張本人であるX1 及びX2 からの加害の指示が存在したからこそ、組員らがその加害に及ぶことができたものと推認できる。この推認が妨げられるとすれば、組員らがX1 及びX2 に義理を貫く結び 関係性の張本人であるX1 及びX2 からの加害の指示が存在したからこそ、組員らがその加害に及ぶことができたものと推認できる。この推認が妨げられるとすれば、組員らがX1 及びX2 に義理を貫く結びつきが失われており、例えば、その2 名の求心 力が失われて統制が及ばず、その意向をないがしろにして組員らが各種の暴挙に出ていたなどという例外的な場合を考えることになるが、関係証拠上、そのような場合であったことを疑わせる事情は見当たらない。 加えて、各犯罪行為の連続性及びこれに付随する警察との緊張関係についても、標章3 事件と同様の考察が当たると考えられる。 まず、元警察官事件の被害者の供述によれば、在職中、X1 及びX2 との関係性が次第に悪化し、個別のやり取りの機会に、敵意を示す言動が向けられていたと述べられている。組織を脱退した組員との接触時の被害者の言動が録音されていたところ、その中にX1 を軽んじるものがあるとの受け止め方を同人がしていた旨が述べられ、X2 からも自宅の捜索関連で怨恨じみた物言いをされたなどという経緯が同様に述べられているが、退職後の被害者になお警察による保護対象者の指定がなされ、帰宅時に家族が迎えに出向いていた事実があるから、供述には信用性が認められる。 そして、関係証拠上、徒歩による出勤時を狙い撃つように加害が行われているところ、銃撃を選択したことも併せて、その重大な加害は、保護を覆された警察の徹底した捜査を招き、X1 及びX2 に係る嫌疑も浮上させるものであって、この事情は関与した組員の側でも見通していたと推認できる。 看護師事件の被害者の供述によれば、その専属的な施術の担当をX1 が最後まで求める一方で、判示の各施術に係る不満を訴え、男性器の増大を願ったのにかえって不具合を来した事態等に強い と推認できる。 看護師事件の被害者の供述によれば、その専属的な施術の担当をX1 が最後まで求める一方で、判示の各施術に係る不満を訴え、男性器の増大を願ったのにかえって不具合を来した事態等に強い抗議を表すやり取りがあったと述べられており、供述の信用性に疑問はない。このようなプライバシーに関わっていた女性看護師に対する加害が、関係証拠上、退勤時を狙い撃つように行われているから、その卑劣な加害が前同様の捜査を招くなどの結果をもたらすこと、これを組員の側が見通していたことの推認も、前同様に働いている。 歯科医師事件の被害者の父親の供述によれば、旧知の間柄のZ7 が、個別の訪問時に、甲會の意向であると伝えつつ判示の交際に応じて利権を譲るよう求め、また、X2 からも直接に、あるいは父親の親戚のS3 を通じて同様の求めが繰り返されたと 述べられている。同人が漁業協同組合内の要職の力関係を揺るがせる動きをする過程で、同人を通じたX2 からの個別の伝達は、次第に加害の意思を突き付ける内容のものになった旨述べられている。併せて、父親は、本件の加害に先立ち、X2 からの伝達内容を警察に説明し、これをきっかけとして警察の警備が付されていたと述べるところ、その内容は、加害前の行動確認時に警察車両が張り付いていた旨、Y2 が述べていることと整合する。そのような警備を受けるべき状況があったことを示しており、前記の求め及び伝達の存在をいう父親の供述は、S3 から伝え聞いた内容の備忘であるという携帯電話機内のメモやノートの記載にも支えられ、信用性が認められる。そして、関係証拠上、息子の出勤時を狙い撃つように加害が行われているから、警備の裏をかくようなその加害が前同様の捜査を招くなどの結果をもたらすこと、これを組員の側が見通していたことの推認も、前同様に そして、関係証拠上、息子の出勤時を狙い撃つように加害が行われているから、警備の裏をかくようなその加害が前同様の捜査を招くなどの結果をもたらすこと、これを組員の側が見通していたことの推認も、前同様に働いている。 それらにもかかわらず、当該組員らは共謀して各犯罪行為に及んだと認定できるところ、各犯罪行為の並びにも注目すべきものがある。元警察官事件は、関与者の一人であるY7 が同じく関与していたところの、同様の銃撃による建設会社役員への加害から5 か月を経ないで行われており、元警察官事件後5 か月ほどの間に標章 3 事件が続き、それらの約4 か月後に看護師事件が続き、更に約1 年4 か月後に歯科医師事件が続くという連続性がある。いずれも関与者の主な母体が丙組であったこれらの事件は、常軌を逸した攻撃性の連続を示している。警察との緊張関係が重畳的に高まって嫌疑を掛けられ、甲會の中枢が程度の強い捜査の対象になることを招く行動であって、X1 及びX2 にも捜査が及ぶ可能性を導くと自覚できる対象であったと考えられるが、無鉄砲な様相にはなく、既述のとおり発覚の危険を小さくする意図を働かせた犯罪行為であって、捜査を免れるための苦心がうかがわれる。そのように重大な局面に即して思慮を巡らせる当該組員らが、そもそも、多大な影響が及ぶ先である組織の上位者の立場を無視し、意向を諮ることなく独自の凶行を繰り返す短慮に出ていたとは想定し難い。併せて検討を進めてみれば、元警察官事件については、退職後の被害者に害を加えたところで当時の捜査に対する直接の威嚇 等にはならず、組員らが触れられる情報の限りでは利益の見返りが薄い。看護師事件については、X1 の受診関連の事情の詳細を把握することも難しく、歯科医師事件については、漁業協同組合の内実等を把握するのでなければ見返 組員らが触れられる情報の限りでは利益の見返りが薄い。看護師事件については、X1 の受診関連の事情の詳細を把握することも難しく、歯科医師事件については、漁業協同組合の内実等を把握するのでなければ見返りを想定し難く、組員ら限りで加害の対象に据えるのは難しいと考えられる。また、甲會の事務所の捜索等の捜査を受けた場合に責任を問われ、組織からの不利益処分があり得る点も、標章3 事件と同様である。総合すると、各犯行に関与した組員は、本件の重大な犯罪行為の反復を独自に思い立つとは考え難い情勢下にあり、思い立っても逡巡するはずの情勢下にあったとみられるのであって、それらを乗り越えて各犯罪行為に及ぶに当たり、組織の頂点に立って統率するX1 及びX2 の意向が働いていなかったと想定するのには、不自然、不合理さが否めず、以上は標章3 事件と同様である。 既述の各犯罪行為の連続性及びこれに付随する警察との緊張関係や、被害に遭う側とX1 及びX2 との個別のつながりなどを踏まえた検討内容は、X1 及びX2からの加害の指示がなかったとの疑いを容れようとする場合に、説明が不可能又は著しく困難な事実関係があることを示す考察であって、翻って、その指示の存在を推認させるものと結論付けられる。 進んで、推認を妨げる事情の有無を検討したが、関係証拠に該当するものは現れず、むしろ、推認に沿う事実が現れているといえる。 すなわち、警察官退職前後の被害者に向けてX1 及びX2 から敵意が示される過程で、被害者の言動につき、地位を知りながら軽んじるものが現れたと先方が捉えるいきさつがあったこと、担当看護師の被害者を含むクリニックの側にX1 が強い抗議を表す過程で、被害者に同様の言動が現れたと捉えられるいきさつがあったこと、漁業協同組合の要職に関し、判示の交際等を求めても応じな あったこと、担当看護師の被害者を含むクリニックの側にX1 が強い抗議を表す過程で、被害者に同様の言動が現れたと捉えられるいきさつがあったこと、漁業協同組合の要職に関し、判示の交際等を求めても応じないことを指して加害の意思を突き付ける過程で、被害者の父親に同様の言動が現れたと捉えられるいきさつがあったこと、以上の既述のものを含む各事実を指摘できる。踏み込んで見たときに現れるこれらの事実は、X1 及びX2 からの加害の指示を推認するのに沿うとともに、各判示の経緯で団体活動性や不正権益の維持・拡大目的が醸成され、X1 の指 揮命令に基づく組織性及び共謀が成り立ったことの認定を導くものといえる。団体活動性等について付言すれば、X1 及びX2 の地位を軽んじる言動をした相手方に対し、あえて組織による加害で報いるのを通じ、X1 の指揮命令に基づく甲會組員による加害であることを相手方及び周囲の関係者に暗に伝え、甲會及びその頂点に立つX1 及びX2 の威勢や統制が強いことを顕示してそれらの保持を図るとともに、各加害に関与する組員らにも同様に顕示し、上位者の地位を軽んじることは許されないとの認識を抱かせ、もって組織内でもX1 及びX2 の威勢や統制の保持を図る犯行であったとの認定を導き出せる。判示第4 においては更に建設業界のみかじめ料関連の甲會の不正権益の維持・拡大を図る犯行であったとの認定を、みかじめ料の回収の事情を知る複数名の証言を含めた関係証拠から導き出せる。回収役を務めていた人物の証言について、弁護人は信用性を争っているが、当該人物は、その役割の継続に難色を示していた折、組織から呼出しを受けた機会等の帰宅時に、組織の手によるものと思しき強盗傷人や銃撃の被害に遭った旨述べている。その動かし難い被害の事実に即した合理的な内容を、組織に対 割の継続に難色を示していた折、組織から呼出しを受けた機会等の帰宅時に、組織の手によるものと思しき強盗傷人や銃撃の被害に遭った旨述べている。その動かし難い被害の事実に即した合理的な内容を、組織に対峙するようにして述べていると認められるから、信用性に疑問はない。そこで、X1 及びX2 の、共謀の点を含む以上の各犯罪への関与の事実を推認し、認定する次第である。 なお、弁護人は、歯科医師事件について、X2 が被害者の父親に対し、漁業協同組合関連で判示の交際等を求めた事実の有無に関し、既述のとおり組合内の要職の力関係を揺るがせる動きをし、具体的には自身が地区の代表理事に就くことを欲したS3 の画策があった旨主張する。要するに、S3 が、被害者の父親を排除して地位に就くため、同人に対し甲會の脅威を暗示しつつ、影響力のある他の漁協と懇意のX2 に理事会の多数派工作等を依頼していたため、通話履歴等にS3 とX2 の接触の痕跡が残ったいきさつであるなどと主張する。しかし、関係証拠上、X2 に対する力関係が著しく劣るS3 において、X2 の名前を悪用して不実の脅威を作出する蓋然性は低く、そのようなことをして被害者の父親がX2 と連絡を交わせば、画策が発覚して窮地に陥るのであるからやはり作出の蓋然性は低く、そして、X2 からの交際等の求めも 加害の意思表明もないのであれば、結局、X2 の意思によらずに甲會の組員らが独自に加害行為に及んだことになるが、そのような想定が成り立ち難いことは既述のとおりであるから、論理の整合性がなく、主張は採用できない。 オ最後に残る重要な検討課題は、元警察官事件、看護師事件及び歯科医師事件に関し、共謀の点を含む既述の各犯罪への関与の事実が、X1 及びX2 のみならず、被告人についても立証されたかどうかであり、否 オ最後に残る重要な検討課題は、元警察官事件、看護師事件及び歯科医師事件に関し、共謀の点を含む既述の各犯罪への関与の事実が、X1 及びX2 のみならず、被告人についても立証されたかどうかであり、否認する被告人の供述も踏まえて検討したが、関係証拠によれば、次のとおりの有罪の推認が働いているといえる。 まず、甲會は、丙組を含む多数の二次団体が傘下に加わる暴力団組織であって、その二次団体の組長それぞれと親子結縁盃を交わす会長の下で組織構成が成り立っているが、組織の名下で執り行う行事等の重要な執務については、別途、設置されている執行部が方針の決定等を行うものとされており、二次団体の組長が役職に分かれて執行部を構成するところ、その中にあって会長代行に次ぐ地位の理事長が、執行部を取り仕切る責任者とされており、最大の二次団体である丙組の組長の被告人がこの理事長を務めていた。 X2 は、被告人に丙組の組長の地位を承継させた先代であるとともに、甲會の会長であるところ、組織において新年度の区切りとされる例年12月13日には、甲會本部事務所に幹事以上の者らが集まって事始めの式典が催され、新しく役職に就く者に対し、X2 から代紋を授与するなどの行事を含むが、併せて、軍配貸与の儀と称される行事が執り行われ、これは、理事長に対し、新年度の組織運営を執行部に一任するとの意味を込め、会長から軍配を貸し渡すというものであって、被告人もX2 から軍配貸与を受けて理事長の任を務めていた。 X1 は、X2 の先代の丙組組長であり、かつ、甲會においてもX2 の先代の会長であったが、代目譲りの盃事等を経てX2 に会長職を譲るに当たり、引退するのではなく、新たに総裁の地位に就いた。以後、会長であった時期に本家と呼ばれたX1 の自宅でその身の回りの世話をして 代の会長であったが、代目譲りの盃事等を経てX2 に会長職を譲るに当たり、引退するのではなく、新たに総裁の地位に就いた。以後、会長であった時期に本家と呼ばれたX1 の自宅でその身の回りの世話をしていた本家付なる役職は、総裁付との名称に改められつつ存続し、二次団体の組長の一人がその役職を担当し、別途配置される部 屋住みの組員らと共にX1 の身辺の世話を恒常的に担当しており、本家当番と称される輪番制の当番者も滞在してX1 の外出時の警備等を担当していた。そのX1 の甲會関連の外出には、広島の暴力団組織と相互に行う墓参りのために甲會の要職を連れて出掛ける機会や、他の暴力団組織への表敬訪問等が含まれ、また、既述の事始めの式典が含まれ、それらの機会にはX1 を筆頭にしてこれにX2 が続く位列で行事が営まれており、他の暴力団組織に向けた書状等の上でも同様であったが、X1 が甲會本部事務所に出向くなどして組織運営に直接関与することはなかった。 X2 及び被告人とX1 との関わり合いを更に見ると、X2 及び被告人が午前中にX1 の自宅に出向いて行う挨拶から一日が始まり、寝室のある自宅2 階で主に過ごすX1 の起床を待ってその挨拶が行われるが、挨拶をしてX1 の居る部屋に入るのはX2 のみであり、被告人は挨拶後に退いて待機し、その後組員らが待機する1 階にX1 が姿を現したところで、一同が揃って挨拶をするなどと方式が定められていた。必要に応じて部屋住みの者などがそばに控えることを除けば、X2 及び被告人以外の組員らがX1 の近くに接してやり取りをすることはないものとされていた。挨拶に伴ってX1 との接触を終えれば、X2 及び被告人は同伴の組員共々退去し、被告人は甲會本部事務所又は丙組の事務所に出向いて執務を行うが、必要に応じてX2 と りをすることはないものとされていた。挨拶に伴ってX1 との接触を終えれば、X2 及び被告人は同伴の組員共々退去し、被告人は甲會本部事務所又は丙組の事務所に出向いて執務を行うが、必要に応じてX2 と電話で連絡しており、日ごとに複数回交わしていたのに対し、X1 との直接の電話連絡はほとんど交わされていなかった。 毎月10 日には甲會本部事務所で定期開催の全体会が開かれるが、その席で幹事らに通達をする事案の確認等を前もって協議する機会として執行部会が定期開催されており、この会においては、破廉恥行為や女性に害を加えることなどを禁ずる甲會会則の違反の有無及びこれに係る処分如何を決定する審議も行われていた。また、既述の相互の墓参りの受入れが毎月1 日、出向くのが26 日であり、毎月日には九州内の他の三つの暴力団組織と合同で開催する会合があり、以上に例示されるとおりに対内的及び対外的な行事が複数存在する。各準備を含めてこれらの協議や行事の進行を取り計らうのが執行部に、その責任者である理事長の被告人に 委ねられた主な執務であるが、ほかにも、組員が逮捕されたり事務所の捜索を受けたりする際の警察への対処の必要性が頻繁に生じ、その知らせを受けて拘束先に差し入れに出向く組員を手配し、捜索に立ち会って行き過ぎがないように応対する組員を手配するなどの事態が生じており、これらに当たり他の二次団体とやり取りをすることもあれば、丙組固有の事柄としてその組長の立場における指揮等の対応を迫られることも少なくなかったと認められる。 以上のからの事実を踏まえると、要するに、X1 及びX2 が甲會の組織運営に係る具体的な指揮を日常的に行うことはなく、理事長の被告人がその指揮を導き出していたと認められるが、被告人が司る執務の質及び量は軽視 の事実を踏まえると、要するに、X1 及びX2 が甲會の組織運営に係る具体的な指揮を日常的に行うことはなく、理事長の被告人がその指揮を導き出していたと認められるが、被告人が司る執務の質及び量は軽視できない程度であったと認められる。加えて、被告人は、最大の二次団体である丙組の組長を兼ねているところ、その両方の立場で司る執務を合わせると尚更であったと認められる。それら執務に伴って丙組の組員らと各種の連絡を交わし、その連絡に応じて組員らが被告人の指揮に見合う動きをし、よって丙組の運営及び甲會の運営が成り立っていたと考えられるのであって、このことは、丙組の組長及び甲會の会長を歴任したX1 及びX2 も、当然認識していたものと推認できる。 その一方で、既述のとおり、元警察官事件、看護師事件及び歯科医師事件については、X1 及びX2 からの加害の指示があったと認められ、同人らの共謀の点を含む各犯罪への関与の事実を認定できるから、このことは、各事件の共謀及び任務分担に加わった丙組の主要な組員らの動きに関し、それらを生み出す機序において、X1 及びX2 からの加害の指示が伝わっていたことを示している。そして、組員らの動きは、被害者の側に関する周到な下調べをし、警察の保護や警備をかいくぐってでも襲撃を果たせる機会を探し、また、車両等の準備を尽くし、それらの過程で盗難を交えたり事後の処分を予定したりして発覚の危険を小さくするなどという計画的なものであるところ、被害者の側の属性や現状をよく知るX1 及びX2 は、そのような組員らの手間暇かけた動きを予測できたとの推認が働く。これらを踏まえて、X1 及びX2 から、被告人を介さずに組員らに加害の指示が伝えられていたと の想定をしようとすると、X1 及びX2 は、他方で、その組員らと被告人が きたとの推認が働く。これらを踏まえて、X1 及びX2 から、被告人を介さずに組員らに加害の指示が伝えられていたと の想定をしようとすると、X1 及びX2 は、他方で、その組員らと被告人が日々連携し、被告人の組長としての、又は理事長としての立場から下す指揮内容の実現に取り組む事情を認識しているにもかかわらず、それらとの両立が難しくなる本件の各犯罪行為の遂行を、被告人の頭越しに組員らに指示し、これにより、被告人に軍配を貸与したとして委ねた甲會の組織運営及び承継させた丙組の組織運営に横やりを入れるかのような振る舞いをしたことになるが、そのような不合理かつ著しい不義理に当たる方法で指示を下したとは考え難い。 加えて、既述のとおりに計画性を備えて加害の対象を特定し、警察の保護等をかいくぐって行う各犯罪行為の実現のためには、加害を指示するX1 及びX2と、加害を担当する組員らとの間で相応のやり取りが欠かせないと考えられるところ、崇拝の対象のようにして組員らとの接点が限られているX1 や、大所帯の甲會の会長として権威を保つ立ち位置に身を置き、同様に組員らとの接点が限られているX2 の所作を前提にしてみれば、両名ともに、各犯罪行為に資するやり取りを直接的に行うのは不可能であったと考えられる。これを成立させ得るのは、X1 との個別のやり取りが可能であったX2 と、X2 との間で同様のやり取りが可能であった被告人を順に経由し、被告人から組員らに加害の指示を具体的に伝達する経路であったと考えられ、ほかに見合うものは考え難い。 以上の考察は、X1 及びX2 から、被告人を介さずに各犯罪行為に係る加害の指示が組員らに伝えられていたとの疑いを容れようとする場合に、説明が不可能又は著しく困難な事実関係があることを示す考察であって、翻 考察は、X1 及びX2 から、被告人を介さずに各犯罪行為に係る加害の指示が組員らに伝えられていたとの疑いを容れようとする場合に、説明が不可能又は著しく困難な事実関係があることを示す考察であって、翻って、被告人がX1及びX2 から指示の伝達を受け、これを具体化して組員らに行き渡らせた事実を推認させるものと結論付けられる。 進んで、推認を妨げる事情の有無を検討したが、被告人がX1 及びX2 からの信頼を失って伝達経路から外された疑いなどをうかがわせるものはなく、むしろ、推認に沿う事実が現れているといえる。 看護師事件について、警察が実施した通信傍受により得られた携帯電話機複数の 通話の記録によれば、加害の実行前後の関与組員相互の通話の中に、主にY2 が中心となって、隠語を用いるなどしてバイクの所在を問い合わせたり、繰り返し実行を試みることの確認が交わされたりし、また、それらと連動して加害の計画の進捗の報告や、実行の報告及びその報酬分配の報告を、Y2 から被告人に届けているものとみてそれぞれ矛盾しないやり取りが存在する。以上も既述の推認に整合的であると評価できるし、やり取りの中に、Y2 ら組員が頻繁に連絡を取り合っている様子や、これと並行して被告人がY2 に問い掛けや呼出しをし、随時の連絡を保っている様子が現れていて、そのような被告人及び組員らの連携を大きく乱すことになりかねないX1 及びX2 からの頭越しの指示の伝達は、やはり想定し難いと理解できるものがあるから、既述の推認に整合的である。 そして、被告人の供述によれば、この傍受による通話の記録の随所を指摘し、逮捕された組員に対する差し入れをするための調整を被告人が指示し、これにY2 とZ5 が従って相互に連絡を取り合っている記録があるとか、警察による捜索の対応の この傍受による通話の記録の随所を指摘し、逮捕された組員に対する差し入れをするための調整を被告人が指示し、これにY2 とZ5 が従って相互に連絡を取り合っている記録があるとか、警察による捜索の対応のための人員配置をY2 が行い、これを被告人に報告したやり取りが現れているとか、また、組長付の一人が不在になることから代わりの運転役をするよう被告人からY2に指示しているやり取りが現れているなどと述べられており、以上は、前同様、X1及びX2 からの頭越しの指示の伝達は想定し難いとの理解を導くものであって、元警察官事件、看護師事件及び歯科医師事件に共通して、既述の推認に整合的である。 なお、通信傍受関連の証拠の収集過程及び検察官の取調請求に違法があるとする弁護人の主張が当たらないことは、第39 回公判期日の証拠採用決定の理由として明示したとおりである。 そこで、被告人の、共謀の点を含む以上の各犯罪への関与の事実を推認し、判示のとおり認定する。 カ弁護人は、元警察官事件、看護師事件及び歯科医師事件の各実行犯が殺意を有していたとは認められず、被告人を含む判示共謀者らについても同様であるとして、判示殺意の認定を争う主張をする。 しかし、元警察官事件についてみるに、関係証拠によれば、実行犯のY4が用いた自動装てん式けん銃は、内部の火薬の爆発によるガス圧で押し出される弾丸を著しい高速度で、かつ、離れた地点まで瞬時に届けて対象に到達させ、それが人体であれば弾丸で肉体を貫くなどし、たちどころに血管や臓器等に重大な損傷を負わせるけん銃一般の特徴に加え、発射前にその都度撃鉄を起こす準備が必要な回転弾倉式けん銃とは異なり、引き金を引いて発射後、次の発射の準備が自動で整う特徴がある。他面において、弾丸1 発の発射であっても、火薬の爆発等の際 徴に加え、発射前にその都度撃鉄を起こす準備が必要な回転弾倉式けん銃とは異なり、引き金を引いて発射後、次の発射の準備が自動で整う特徴がある。他面において、弾丸1 発の発射であっても、火薬の爆発等の際の反動により銃身が後ろに動いて銃口が上に動きがちであり、狙いどおりに弾丸を命中させられなくなるから、銃口を対象に押し付けて反動を失わせて発射するのであれば格別、離れた地点からの命中精度を向上させるのに相当の熟練及び発射時の体勢の整備等が求められるなどの難しさが、けん銃一般の取扱いに共通のものとして存在する。そして、Y4 は、本件から10 年ほど前の時期に海外の射撃場で的に向けて行うけん銃発射の経験をしており、本件前日には、高速道路の橋桁の下で本件けん銃の2 発の試射を行い、反動の程度を確かめていたが、本件時には、やや下り坂の現場でバイクを運転し、歩行中の被害者と向かい合うように近づいた上、停車させたバイクにまたがったままで発射に及んでおり、この発射の態様は過去のいずれの発射の機会とも異なる。また、本件時の発射は、わずかな時間のうちに遂げて速やかに現場を離れ、逃走することを予定する中で行われているところ、Y4 は、被害者からの制止等を免れるため、その一歩では届かない1m余りの距離を保ってバイクを止め、左側に位置する被害者の方に向かって上半身を90 度ひねり、けん銃を持つ側の右腕を伸ばしつつ、曲げた左腕の先の手を添えてけん銃を支え持つ体勢により、水平よりも少し下を向く銃口の延長上に被害者がいる状況で、判示のとおり弾丸2発を連続して発射したものであって、この2 発の発射は事前のY1 の指示によるものであったと認められる。 以上によれば、Y4 は、けん銃発射時に反動で狙いがずれる可能性があることを経験上把握していながら、本件時にはその反動を失わせ の2 発の発射は事前のY1 の指示によるものであったと認められる。 以上によれば、Y4 は、けん銃発射時に反動で狙いがずれる可能性があることを経験上把握していながら、本件時にはその反動を失わせる発射の方法を採り得ないこ とを踏まえて幾らか距離を保つ方法を選んでいるが、過去の発射の機会に試していない不安定な体勢下の、かつ、時間的にも心理的にも余裕が乏しい状況下の発射に及んでいるから、間の距離が長くない以上は身体に弾丸が当たる可能性が高いといえる一方で、狙いを少し下にしたからその枢要部に当たる可能性が低いなどとはいえず、やはり反動が働いて枢要部に当たる可能性が十分見込まれる発射であったと認められ、その事情はY4 自身も認識しており、指示をしたY1 も同様であったと認められる。しかも、Y4 による2 発の発射は、1 発目の発射後、命中の有無等を確かめてから2 発目の発射に移るものではなく、連続する2 発の発射であるから、特にこの2 発目は一層大きな反動で銃口が動き、身体の枢要部に弾丸が当たる可能性が高まると考えられるところ、その事情をY4 自身及び指示をしたY1 のいずれもが認識の上、あえて連続の発射の指示及び実行に及んだと認められる。これらの検討に基づいて、Y4 が、被害者の殺害に至ってもやむを得ないとする判示の殺意を有していたと認めることに疑問はなく、Y1 についても同様に疑問なく殺意の存在を認めることができる。 Y4 は、当初、Y1 の指示は被害者の足を狙えというものであったと述べ、これに対し、足を狙うのは難しいから太ももを狙わせてほしいと申し出て了承をもらい、実際に狙いを定めて発射したなどと供述するが、本件時の発射の態様、回数等を踏まえると、その供述をもって殺意の認定が妨げられるとはいえず、この供述に依拠して殺意を争 せてほしいと申し出て了承をもらい、実際に狙いを定めて発射したなどと供述するが、本件時の発射の態様、回数等を踏まえると、その供述をもって殺意の認定が妨げられるとはいえず、この供述に依拠して殺意を争う弁護人の主張を通覧しても同様に妨げるものはなく、採用できない。 看護師事件及び歯科医師事件についてみるに、凶器は発見されていないが、看護師事件においては被害者の受傷状況等により、歯科医師事件においては同様の受傷状況及び加害行為に抵抗した被害者の供述内容等により、いずれも鋭利な刃物が凶器に用いられたと認められる。 a そして、関係証拠によれば、看護師事件の被害者に対する加害行為は、帰宅途中の同人が、速くも大きくもない動きによる歩行中に、左後方から実行犯のZ6 の接触を受け、左横辺りに並んだ刹那に、その左耳上部から下方に刃先が差し入 れられる態様で左側頭部に刃物で切り付けられ、これによる長さ8cmほどの刺切創の深さは側頭筋に達し、動脈を切断するものであったから、重要な血管や神経等が集まる頭部や頚部を切り裂く可能性が高い加害行為の存在が、その最初の接触の場面に認められる。状況から見て、Z6 は、当初からこの危険な加害行為の実行を狙っていたと認められる。のみならず、その後に続く両名の接触は、Z6 が立ち去るまでの短い時間のものであったが、被害者の身辺には、最初の加害行為の場面とはそれぞれ異なる場面で当該刃物により負わされたとみられる痕跡が複数存在しており、すなわち、真冬の厚着をする被害者の右前腕部に、長さも深さも大きい切創が生じ、左臀部にも深さのある刺創が生じていたから、かなり強い力で意図的に当該刃物の刃先で切り付ける加害行為がそれぞれに対応して存在したと認められる。また、左肩にかけていた革製ショルダーバッグの表面中央部には 臀部にも深さのある刺創が生じていたから、かなり強い力で意図的に当該刃物の刃先で切り付ける加害行為がそれぞれに対応して存在したと認められる。また、左肩にかけていた革製ショルダーバッグの表面中央部には、長さが限られる一方で、内側にも傷が及ぶ裂け目状の破損が生じており、これは、刃物の刃先を強く突き刺す動きを受けて生じたものであり、その動きは被害者の胴部に向かうものであったと認められる。 以上によれば、実行犯Z6 は、最初の接触の場面における危険な加害行為の実行を狙って遂げたにとどまらず、更に被害者の身体の枢要部に対し、強い力を込めて刃物で切り付ける加害行為を連続して行っているから、あらかじめ、その連続する加害行為により被害者の頭部や頚部を切り裂き、又は胴部に刃物を突き刺し、よって失血させるなどの機序により死亡に至らせることも容認する意思を有していたと認められ、すなわち、判示の殺意をもって行為に及んだと認められる。 b 関係証拠によれば、歯科医師事件の被害者に対する加害行為は、車で出勤して駐車し、外からそのドアを開けて上半身を乗り入れさせていた被害者が、背後から実行犯のY4 の接触を受け、背部に刃物の刃先が突き刺さり、腸骨等にまで達する深さ約7cmの、長さもある刺創を負わされたものから始まっているから、重要な血管や臓器等が集まる胴部を著しく傷つける可能性が高い加害行為の存在が、その最初の接触の場面に認められる。状況から見て、Y4 は、当初からこの危険な加 害行為の実行を狙っていたと認められる。のみならず、その後の両名の接触は、間もなく車外でY4 と向き合った被害者に対し、その胸部に向かってY4 が突き出した刃物をつかむ手を、被害者が両手で包むようにして押さえ、しかし、Y4 はそのまま力を込めて刃物を被害者の胸部に突き出し もなく車外でY4 と向き合った被害者に対し、その胸部に向かってY4 が突き出した刃物をつかむ手を、被害者が両手で包むようにして押さえ、しかし、Y4 はそのまま力を込めて刃物を被害者の胸部に突き出し、その刃先が刺さるに至りながらも抵抗する被害者が、両手でY4 の手及び刃物を下へ押し下げようとし、そのような応酬が、最終的に刃先が被害者の左大腿部に突き刺さっている状態で両名の動きが膠着するまで続き、やがてY4 が立ち去ったと認められ、それら一連の過程で、腹部や胸壁に及んだものを含む判示の刺創が生じたと認められる。 以上によれば、実行犯Y4 は、最初の接触の場面における危険な加害行為の実行を狙って遂げたにとどまらず、更に被害者の胴部を含む枢要部に対し、強い力を込めて刃物を突き刺そうとする加害行為を連続して行ったと認められるから、あらかじめ、その連続する加害行為により被害者の胴部に刃物を突き刺し、よって失血させるなどの機序により死亡に至らせることも容認する意思を有していたと認められ、すなわち、判示の殺意をもって行為に及んだと認められる。 c 看護師事件及び歯科医師事件に関し、弁護人は、用いられた刃物がさほど鋭利でなかったとか、小ぶりなものであったなどという供述が、関与者らの一部から得られていることを指摘し、また、歯科医師事件に関し、被害者の尻や太ももを数回切り付けるだけのつもりであったなどと述べるY4 の供述に依拠するなどして殺意の存在を争うが、既述の受傷の状況等と整合しないそれらの供述には依拠できないから、前提を欠く主張であるし、その余の主張にも殺意の認定を揺るがせるものは見当たらない。 進んで、元警察官事件、看護師事件及び歯科医師事件に共通して、各実行犯以外の、被告人を含む共謀者らに殺意の存在を認め得るか否かも検討したが、 張にも殺意の認定を揺るがせるものは見当たらない。 進んで、元警察官事件、看護師事件及び歯科医師事件に共通して、各実行犯以外の、被告人を含む共謀者らに殺意の存在を認め得るか否かも検討したが、この点はb3 事件における検討と同様の結論を導き出せる。 すなわち、既述のY4 供述、Z6 供述又はY6 供述を中核として得られている各事件の関係者の供述からすると、b3 事件同様に計画的に各事件における加害行為が行わ れたと認められる以上、各加害行為の態様や程度について、それぞれの実行犯の独自の選択に任されていたとは考えられない。X1 又はX2 との間に個別のつながりがあった相手方又はその親族を対象とし、あえて実行しようとする加害行為の態様等に関し、実行犯とその余の共謀者らとの間に意思疎通がなかったはずはなく、X1、X2 及び被告人を含む計画の中心的人物はもとより、その余の共謀者らについても、組織関連の秘密裏かつ重大な加害に関与している旨の認識を、少なくとも未必的に有していたと認められる以上、各実行犯の殺意に基づく加害行為もまた、その認識の範囲内であったと認められる。明示的に交わされていたとまではいえないものの、各実行犯による加害行為につき、これを容認する意思疎通が順次行き渡っていたと推認できる。元警察官事件については、前記のとおり別の銃撃による加害が先行し、平成23 年11 月下旬にd 区で発生したその加害の過程に関与したY7 が、事後の報道でその銃撃等の事情を把握し、組織が関わったことを認識していた事実が認められる。この事実も併せれば、組織の素性に無関心のはずがない共謀者らの認識の範囲内に同様の加害行為が含まれていたこと及び意思疎通の対象であったことを、同様に推認できる。共謀者らに共通して判示の殺意の存在を認定することに疑問 ば、組織の素性に無関心のはずがない共謀者らの認識の範囲内に同様の加害行為が含まれていたこと及び意思疎通の対象であったことを、同様に推認できる。共謀者らに共通して判示の殺意の存在を認定することに疑問はなく、弁護人の主張は採用できない。 3 結論その余の被告人及び弁護人の主張を通覧し、審理に現れた事情全てを精査しても、以上述べたとおりの有罪の認定に至る論理を揺るがせるものはないと判断した。 そこで、検察官が組織的殺人未遂等の犯罪構成要件該当性に関し釈明をし、被告人及び弁護人に防御の機会が付与された事柄も網羅して、各判示の犯罪事実を認定する。 【法令の適用】(省略)【量刑の理由】指定暴力団又は特定危険指定暴力団の構成員らが共謀して組織的殺人未遂の犯行 を4 回の機会にわたり敢行し、そのうちの1 件にけん銃発射による銃撃の方法を交え、よって合計5 名の非暴力団員に重傷を負わせた点が、量刑評価の中核を占めている。 すなわち、関係法規に基づく各指定は、暴力団員による加害行為等を抑止し、特に、凶器を用いた重大な加害にわたることを防ごうとし、市民生活の安全と平穏を願う社会の意思表示であったと考えられるが、本件各犯行はこれに真っ向から背き、組織により蹂躙したものである。あろうことか、被害者は、いずれも一般市民であって、傷害の犯行及び市街地の建物2 棟に係る放火の各犯行も同様である。暴力団関連の捜査から離れて警察官を退職していた男性や、受任した看護業務に従事する立場を出ない女性が、生命侵害の危険を孕む凶行にさらされており、あるいは、暴力団員との不適切な接触を避けてまさに社会の意思に沿う振る舞いであった女性及び男性が被害者に含まれ、同様、同類の加害の対象とされ、直接の関係性のない息子が代わりに襲われるなどして凶行にさらされ 、暴力団員との不適切な接触を避けてまさに社会の意思に沿う振る舞いであった女性及び男性が被害者に含まれ、同様、同類の加害の対象とされ、直接の関係性のない息子が代わりに襲われるなどして凶行にさらされている。各犯行は、被告人を含む組織の上位者が軽んじられたなどという身勝手な着想で報復を企てたもの、又は、組織の不正な権益確保を狙う利欲目的の充足を企てたものと認められ、悪質性が高い。 おびただしい出血等を負わされた被害者らの受傷及び精神的苦痛に重いものが並んでいることも、踏まえなければならない。このようにして、本件は、反社会性、攻撃性及び危険性等が著しく高度に達した類型の、重大な加害行為の累積の事案であるから、法が許容する上限近くの量刑が避けられない。 被告人は、多数の二次団体を備える大規模暴力団の最上位者らに続く地位にあり、かつ、加害行為の主力となった組員らが所属する最大二次団体の長である。組員らが綿密な計画のもとで連携し、実働を果たして犯行に及ぶに当たり、この動きを生み出す統率者であったと認められる。自身の長としての意向に基づいて組織の凶行に原動力を与え、又は、最上位者らの意向に基づいてその成就に尽力する立場から凶行に推進力を与え、重要な関与をしたと認められるのであって、その責任は、最上位者らと同列でないものが含まれるとはいえ、重かつ大である。 被告人が罪責を否認している状況下、並行して民事上の賠償の手続が一部結了したことなどの諸事情を精査しても、刑事責任に係る非難の程度を押しとどめるものがあるとはいえない。 よって、主文の刑を量定した次第である。 (求刑無期懲役)令和5 年1 月26 日福岡地方裁判所第3 刑事部 裁判長裁判官伊藤寛樹 主文 (求刑無期懲役) 理由 令和5年1月26日福岡地方裁判所第3刑事部 裁判長裁判官伊藤寛樹 裁判官林直弘 裁判官小西隆博
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