○ 主文一原判決を取り消す。 二被控訴人が控訴人に対し昭和六二年三月三日付けでした別紙物件目録記載一ないし五の各土地の昭和五七年度ないし昭和六一年度にかかる固定資産税及び都市計画税の徴収猶予取消決定を取り消す。 三訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一控訴人 1 主文と同旨 2 主文第二項につき仮執行宣言二被控訴人本件控訴を棄却する。 第二当事者の主張一請求の原因 1 地方税法(以下「法」という。)附則二九条の五第一項に定める市街化区域農地に対して課する固定資産税及び都市計画税の納税義務の免除等の制度(以下「本件納税義務免除制度」という。)の概要は次のとおりである。 (一) 都市計画法七条一項に規定する市街化区域農地に対して課する固定資産税の課税標準となるべき価格については、当該市街化区域農地とその状況が類似する宅地の固定資産税の課税標準とされる価格に比準する価格によって定められるが(いわゆる農地の宅地並課税。法附則一九条の二等。)、昭和五七年三月の法改正の際、長期にわたって営農を継続する意思のある市街化区域農地所有者については、宅地並課税により固定資産税及び都市計画税の課税標準となるべき土地価格が上昇して農業を継続することが不可能にならないようにするため、本来の課税相当額(宅地並課税相当額)と農地としての課税相当額との差額の徴収猶予ないし免除の制度を設けた。 すなわち、市町村は、昭和五七年度以降の各年度分の固定資産税及び都市計画税に限り、法附則一九条の三の規定の適用を受ける市街化区域農地であって、現に耕作の用に供されており、かつ、当該市街化区域農地において法附則二九条の五第二項に定める申告のあった日の属する年の一月一日から引き続き一〇年以上営農を継続することが適当である 区域農地であって、現に耕作の用に供されており、かつ、当該市街化区域農地において法附則二九条の五第二項に定める申告のあった日の属する年の一月一日から引き続き一〇年以上営農を継続することが適当であるもの(以下「長期営農継続農地」という。)として市町村長の認定を受けたものに対して課する固定資産税及び都市計画税で当該申告のあった日の属する年の一月一日から起算して五年を経過する日までの期間内において到来する賦課期日に係る各年度分のもの又は当該五年を経過する日の翌日から起算して更に五年を経過する日までの期間内において到来する賦課期日に係る各年度分のものについては、当該長期営農継続農地として認定を受けた土地の所有者が当該土地を当該申告のあった日の属する年の一月一日から起算して五年を経過する日までの期間又は当該五年を経過する日の翌日から起算して更に五年を経過する日までの期間引き続き長期営農継続農地として保全したものであることにつき市町村長の確認を受けたときは、当該各年度分の当該長期営農継続農地に係る固定資産税又は都市計画税と当該各年度分の当該長期営農継続農地に係る農地課税相当額との差額に相当する額に係る地方団体の徴収金に係る納税義務を免除するとされている(法附則二九条の五第一項)。 (二) 市町村長は、長期営農継続農地として認定をした場合には、右認定を求める申告のあった日の属する年の一月一日から起算して五年を経過する日までの期間又は当該五年を経過する日の翌日から起算して更に五年を経過する日までの期間、当該認定に係る長期営農継続農地に係る各年度分の固定資産税額又は都市計画税額と当該各年度分の当該長期営農継続農地に係る農地課税相当額との差額相当額に係る地方団体の徴収金の徴収を猶予するものとし、また前記の徴収猶予をした場合において当該徴収猶予に係る固定資 又は都市計画税額と当該各年度分の当該長期営農継続農地に係る農地課税相当額との差額相当額に係る地方団体の徴収金の徴収を猶予するものとし、また前記の徴収猶予をした場合において当該徴収猶予に係る固定資産税又は都市計画税について法附則二九条の五第一項の規定の適用がないことが明らかになったときは、当該徴収の猶予に係る固定資産税又は都市計画税に係る地方団体の徴収金の全部又は一部につきその徴収の猶予を取り消さなければならない(法附則二九条の五第六項及び第七項)。 2 本件処分に至る経過は以下のとおりである。 (一) 別紙物件目録記載一ないし五の土地(以下「本件全土地」といい、個々の土地を表わす場合には「本件土地一」等という。)は、もと訴外Aが所有していた。 (二) 訴外Aは、昭和三四年五月三日死亡したため、本件土地一、二について昭和四八年三月三一日受付で、本件土地三ないし五について同月二九日受付で、相続を原因とする控訴人、訴外B、同C、同D(以下「D」といい、以上四名を「控訴人ら」という。)の持分を各四分の一とする所有権移転登記をそれぞれ経由した。 (三) 控訴人らは、昭和五七年六月二八日付けで、本件土地一ないし四(ただし、本件土地三については二〇〇平方メートル分)につき、長期営農継続農地認定の申告をした。 被控訴人は、右申告を受けて、控訴人らに対し、右土地につき、昭和五七年一二月一〇日付けで、昭和五七年一月一日から昭和六一年一二月三一日まで、また、昭和六二年一月一日から昭和六六年一二月三一日までの固定資産税及び都市計画税の徴収猶予許可決定をした(以下、後記(四)記載の徴収猶予許可決定と合わせて「本件徴収猶予許可決定」という。)。 (四) 控訴人らは、昭和五八年一月一〇日付けで、本件土地三(ただし、一六三平方メートル分)及び五外一筆の土地につき、長期営 四)記載の徴収猶予許可決定と合わせて「本件徴収猶予許可決定」という。)。 (四) 控訴人らは、昭和五八年一月一〇日付けで、本件土地三(ただし、一六三平方メートル分)及び五外一筆の土地につき、長期営農継続農地認定の申告をした。 被控訴人は、右申告を受けて、控訴人らに対し、右各土地につき、昭和五八年三月二四日付けで、昭和五八年一月一日から昭和六二年一二月三一日まで、また、昭和六三年一月一日から昭和六七年一二月三一日までの固定資産税及び都市計画税の徴収猶予許可決定をした。 (五) 控訴人は、本件全土地につき、昭和六一年一一月二一日付けで農業委員会の許可を経たうえ、本件土地一、二につき同年一二月一日受付で、本件土地三ないし五につき同月九日受付で、それぞれ同年一一月二一日売買を原因とするD持分全部移転登記を経由した。 (六) 控訴人らは、被控訴人に対し、昭和六二年一月二二日付けで、昭和六一年一二月一日に本件全土地の所有者が変更したことを理由とする長期営農継続農地変更申告書を提出した。 (七) 被控訴人は、昭和六二年二月二五日付けで長期営農継続農地非該当確認通知をし、同年三月三日付けで本件処分をした。 本件処分の理由は、右のとおり本件全土地につきD持分全部移転登記がされたことをもって、所有者の変更に当たり、控訴人らが本件全土地を長期営農継続農地として保全したものではないというものである。 (八) 控訴人は、本件処分を不服として、昭和六二年四月二四日、訴外東京都知事に対し審査請求手続をしたところ、訴外東京都知事は、平成元年六月一五日、右審査請求を棄却する旨の裁決をした。右裁決書は、同月二七日、控訴人に送付された。 3 控訴人が本件全土地につきD持分全部移転登記を経由したことをもって、控訴人らが本件全土地を長期営農継続農地として保全しなかったとすることは 決をした。右裁決書は、同月二七日、控訴人に送付された。 3 控訴人が本件全土地につきD持分全部移転登記を経由したことをもって、控訴人らが本件全土地を長期営農継続農地として保全しなかったとすることはできず、本件処分は違法であって取り消されるべきである。 二請求の原因に対する認否 1 請求の原因1及び2記載の事実はいずれも認める。 2 同3記載の事実は否認し、主張は争う。 三抗弁 1 本件処分の経過は、請求の原因2記載のとおりである。 2 本件処分は、以下のとおり適法である。 (一) 長期営農継続農地について所有者の変更があった場合、又は長期営農継続農地として認定を受けた者が当該農地を長期営農継続農地として保全できなかった場合、徴収猶予決定は、その全部、又は一部が取り消されることになる。これは、法附則二九条の五第一項が、長期営農継続農地として認定を受けた土地の「所有者」が当該土地を一定期間長期営農継続農地として「保全」したとき、当該土地の固定資産税の徴収を免除する旨定めていること、法附則二九条の五第八項及び法施行令附則一四条の五第七項は、長期営農継続農地として認定した土地の所有者が変更した場合において納税義務が免除される事由について規定しているが、右規定は、長期営農継続農地として認定した土地の所有者が変更した場合に徴収猶予決定が取り消されることを当然の前提としていることから明らかである。 (二) 長期営農継続農地と認定された土地が共有に係る場合において、共有者の一名が他の共有者にその持分を譲渡したことにより共有者の構成が変更したときは、これにより所有者が変更したことになるから、徴収猶予決定は取り消される。 これは、以下の理由により明らかである。 (1) 納税義務の免除を定める前記法附則二九条の五第八項及び法施行令附則一四条の五第七項は、共有者の 者が変更したことになるから、徴収猶予決定は取り消される。 これは、以下の理由により明らかである。 (1) 納税義務の免除を定める前記法附則二九条の五第八項及び法施行令附則一四条の五第七項は、共有者の変更の場合については納税義務を免除するとは規定していない。法は、農地の宅地並課税の措置に対する一種の政策的な例外措置として非課税や納税義務免除の規定を設けたものであるから、右規定は厳格に解釈すべきであり、共有者の変更の場合について納税義務を免除する規定がない以上、納税義務は免除されない。 (2) 共有の場合、法三四三条により、各共有者は、共同して当該土地の全体について固定資産税及び都市計画税の納税義務を負うものであり、その全員を集合体とする一つの主体としてとらえられるから、共有者の一人の変更は、当該土地の所有者の変更であると解すべきである。 (3) 控訴人は、法一〇条、一〇条の二が共有者について民法の連帯債務の規定を準用していることを根拠として、共有者の一人について生じた徴収猶予の取消原因をもって、全共有者の徴収猶予を取り消した本件処分は違法であると主張する。 しかし、法一〇条は、連帯納税義務がすでに成立していることを前提として、その連帯納税義務者相互の法律関係を規定するものであり、納税義務者が誰であるかを決定する基準になるものではなく、また連帯納税義務の構成員が変更し、そのことによって連帯納税義務者の構成そのものに変化が生じた場合とは無関係である。したがって、控訴人の主張は理由がない。 (4) 区分所有建物の敷地について、一定の場合に共有者がその持分の割合に応じて固定資産税の納付義務を負うとした法三五二条の二第一項は、当該土地全部について各共有者が固定資産税の納付義務を負うとした法三四三条一項を前提として、その特則を設けたものであるが、共有土地 合に応じて固定資産税の納付義務を負うとした法三五二条の二第一項は、当該土地全部について各共有者が固定資産税の納付義務を負うとした法三四三条一項を前提として、その特則を設けたものであるが、共有土地の納税義務については法一〇条の二が連帯納税義務を規定しているため、同条を排除したものである。したがって、法三五二条の二第一項が法三四三条一項の適用を排除していないからといって、同条項が共有持分の割合による課税を定めたものであるとすることはできない。 また、共有土地について持分の割合に応じた分割納税義務を認めるとすれば、その旨の特別な規定を設けることが必要であるところ、法三五二条の二第一項以外に法にはそのような特則はないから、各共有者は、当該土地全部についての固定資産税の納付義務を負うものである。 (三) 本件全土地は、控訴人ら四名の共有であったところ、共有者の一人であるDがその持分全部を控訴人に譲渡したため、本件全土地は、控訴人、訴外B、同Cの三名の共有となったから、所有者が変更したことになり、したがって、控訴人らは、本件全土地を長期営農継続農地として保全できなかったというべきである。よって、控訴人らにつき、本件徴収猶予決定を取り消した本件処分は適法である。 なお、控訴人は、本件全土地についてのD持分はもともと控訴人が有していたものであり、控訴人がDの持分につき移転登記を経由したからといって所有者の変更があったとはいえない旨主張する。しかし、本件全土地は農地であり、農業委員会の許可を受けなければ持分権移転の効果を生じないから、控訴人が昭和六二年一一月二一日に農業委員会の許可を受け、同日売買を原因として共有持分権移転登記を経由した以上、共有持分権移転の効果が生じたのは同日であるといわざるを得ず、したがって、本件全土地につき所有者の変更があったことは 日に農業委員会の許可を受け、同日売買を原因として共有持分権移転登記を経由した以上、共有持分権移転の効果が生じたのは同日であるといわざるを得ず、したがって、本件全土地につき所有者の変更があったことは明らかである。 四抗弁に対する認否 1 抗弁1記載の事実は認める。 2 (一)同2(一)記載の主張は争う。 法附則二九条の五第一項の規定により長期営農継続農地として固定資産税及び都市計画税の徴収猶予ないし免除が認められるためには、当該市街化区域農地が長期営農継続農地として五年間「保全」されたことが必要であるところ、「保全」とは、当該長期営農継続農地が現に耕作の用に供されている状態が継続することを意味する。この場合、所有者の形式的な同一性が継続することは要件とされていないし、耕作者と所有者とが一致する必要もない。こう解することは、市街化区域内において農業の継続を望も者に対して、税制面から営農継続を可能とすることを保証した本件納税義務免除制度の立法趣旨にも合致するし、以下の事実により明らかである。 (1) 長期営農継続農地として認定を受けた土地の所有者が当該農地を譲渡した場合、長期営農継続農地として「保全」しなかったとして固定資産税の徴収猶予決定が取り消されるが(法附則二九条の五第七項)、これは、右所有者が当該農地を譲渡することにより農家の経営を止めるので、農家保護の要請が消滅することと、譲渡により売買代金を取得するため担税力があることによる。右理由に鑑みると、当該農地の譲渡によっても耕作の現況が変わらず、農家保護の要請が失われない場合には、当該農地を譲渡することは、長期営農継続農地として「保全」しなかったことにはならない。 (2) 法附則二九条の五第八項は、長期営農継続農地として認定を受けた土地の所有者が、同項に定める事由により当該土地を長期営農 することは、長期営農継続農地として「保全」しなかったことにはならない。 (2) 法附則二九条の五第八項は、長期営農継続農地として認定を受けた土地の所有者が、同項に定める事由により当該土地を長期営農継続農地として「保全」できなかった場合には、徴収猶予決定を取り消された者についての納税義務を免除する旨規定しているが、同項(及びこれを受けた法施行令附則一四条の五)に定める事由はいずれも農業を継続できなかったことを前提とするから、「保全」とは、農業を継続するという意味であることが明らかである。 (3) 「保全」が、所有者の形式的同一性が継続することを要件とするならば、その旨が法文上に明示されるはずであるのに、法附則二九条の五第一項、第八項は、所有者の形式的同一性が継続することを要件とする旨規定していない。 以上のとおり、「保全」とは、当該長期営農継続農地が現に耕作の用に供されている状態が継続することを意味するから、当該農地の共有者一名の持分を他の共有者の一名が承継した場合であって、農業経営形態の同一性が維持されている場合には、長期営農継続農地として「保全」したというべきである。 被控訴人の主張によっても、本件は、本件全土地についての共有者の一人である控訴人が、他の共有者であるDからその持分全部の譲渡を受けたという事案であるから、控訴人らが本件全土地を長期営農継続農地として「保全」したことは明らかであり、本件処分は違法である。 (二) 同(二)記載の主張は争う。 (1) 長期営農継続農地の所有者が実質的に変更した場合には、「保全」したとの要件を満たさないことは明らかであるが、長期営農継続農地が共有に係る場合には、法附則二九条の五第一項、第八項に「所有者とは共有者全員を意味する」との特段の規定がない以上、共有者の過半数に異動がなく、かつ、当該農地が耕作 は明らかであるが、長期営農継続農地が共有に係る場合には、法附則二九条の五第一項、第八項に「所有者とは共有者全員を意味する」との特段の規定がない以上、共有者の過半数に異動がなく、かつ、当該農地が耕作の用に供されている状態が継続していれば所有者の変更に当たらず、「保全」したとの要件を満たすと言うべきである。共有の場合、農地をどのような形態で使用するかは共有者の過半数により決せられるから、「保全」についても、一部の共有者の意思により農業の継続が困難となるような解釈をすることは許されず、したがって、過半数に満たない一部の共有者がその持分権を譲渡したとしても耕作の用に供されている状態が継続していれば「保全」したとの要件に欠けるところはないからである。 そうすると、本件では、本件土地の共有者の過半数に異動がなく、控訴人は本件徴収猶予許可決定当時から現在で本件全土地の耕作を継続していたから、本件処分は違法である。 (2) 法に定める徴収猶予の制度(法一五条以下参照。)は、共有者ごとにその要件等を判断しており、共有者の一人に関し徴収猶予取消処分がされたとしても、右処分ないしその前提となった取消事由(持分の譲渡)は、共有者の一人に生じた事由として他の共有者に影響を及ぼさない(民法二五三条一項)。したがって、他の共有者につき取消事由がなければ、同人らは、当該農地を長期営農継続農地として「保全」したというべきである。これは、共有土地に関する連帯納税義務を定める法一〇条(一〇条の二)が、連帯債務者の一人に生じた事由は原則として他の連帯債務者に効果を及ぼさない旨の民法四四〇条を準用していることから明らかである。 被控訴人は、共有土地についての固定資産税及び都市計画税については、法三四三条、七〇二条により、共有者全員がいわば集合体として納税義務主体たる所有者の 四四〇条を準用していることから明らかである。 被控訴人は、共有土地についての固定資産税及び都市計画税については、法三四三条、七〇二条により、共有者全員がいわば集合体として納税義務主体たる所有者の地位を構成するから、共有者の範囲に変動が生じた場合には、そのことだけで固定資産税及び都市計画税の納税義務主体たる所有者の同一性が失われると主張する。 しかし、共有者は、法三四三条一項により自己の持分についてのみ納税義務を負い、租税の確保を図る必要性から法一〇条の二により特にその履行方法として他の共有者の納税義務について連帯納税義務を負担させられたものであり、明文がない以上、法三四三条、七〇二条を拡張して共有者全員がいわば集合体として納税義務主体たる所有者の地位を構成する、又は共有者各人がその持分を超えて当該土地全部についての納税義務を負うと解釈することはできない。これは、区分所有建物の敷地について連帯納税義務を解除して共有者がその持分に応じて納税義務を負うと定めた法三五二条の二が、連帯納税義務を定めた法一〇条の適用を排除するのみで法三四三条の適用を排除していないことから明らかである。 そうすると、仮にDについて本件徴収猶予許可決定を取り消すべき事由があるとしても、その効果は共有者たる控訴人に影響を及ぼさない(民法四四〇条)うえ、控訴人の本件全土地についての耕作状況に変更はないから、控訴人は、本件全土地を長期営農継続農地として「保全」したというべきである。 (三) 同(三)記載の事実は否認し、主張は争う。 仮に、本件徴収免除制度の立法趣旨や要件が被控訴人主張のとおりであるとしても、控訴人は、もともと本件全土地のDの共有持分を所有していたのであるから、Dからその持分全部の移転登記を経由したからといって、所有者が変更したとは言えない。すなわち、控訴人は、 とおりであるとしても、控訴人は、もともと本件全土地のDの共有持分を所有していたのであるから、Dからその持分全部の移転登記を経由したからといって、所有者が変更したとは言えない。すなわち、控訴人は、訴外A死亡後であって、かつ、その遺産分割協議成立の前である昭和四四年四月一〇日、Dから、同人が受ける相続分を代金三〇〇〇万円で買い受け、同日五〇〇万円、昭和四八年九月一八日二五〇〇万円を支払って右代金を完済した。控訴人ら及び訴外Eは、昭和四八年三月一九日、遺産分割協議をし、本件全土地は、控訴人二分の一、訴外B、同C各四分の一の共有とされた。 しかし、訴外Eとの関係があり、遺産分割協議書上は控訴人ら各四分の一の共有とされ、登記も控訴人らの持分を各四分の一とする所有権移転登記が経由された。相続分譲渡の効力は、相続分譲渡又は遺産分割協議の時に発生するところ、控訴人は、右遺産分割協議によりDの持分を含めて本件全土地の二分の一の共有持分を有していたから、Dからその持分全部の移転登記を経由したからといって、所有者が変更したとは言えない。 仮に、農地法の規定により農業委員会の許可を受けた時点でDの共有持分移転の効果が生じたとしても、控訴人は、本件全土地についてのDの共有持分をもともと実質的に所有していたことは右のとおりであり、その移転登記が遅れたのは、諸般の事情により農業委員会に対する許可申請が遅れたことによる。控訴人は、D持分全部移転登記を経由するに当たり、世田谷都税事務所固定資産税課の職員等に相談して固定資産税・都市計画税の徴収猶予許可決定が取り消されることがないと説明されて右登記をしたものであり、もし徴収猶予許可決定が取り消される旨教授されていれば、右登記をすることはなかった。以上の事実を考慮すると、右登記を経由したことが所有者の変更に当たるとは言えな と説明されて右登記をしたものであり、もし徴収猶予許可決定が取り消される旨教授されていれば、右登記をすることはなかった。以上の事実を考慮すると、右登記を経由したことが所有者の変更に当たるとは言えない。 第三証拠関係(省略)○ 理由一法附則二九条の五第一項に定める本件納税義務免除制度の概要(請求の原因1)及び本件処分に至る経過(同2)は、いずれも当事者間に争いがない。 二本件処分の適法性について検討する。 1 被控訴人は、長期営農継続農地について所有者の変更があった場合、又は長期営農継続農地として認定を受けた者が当該農地を長期営農継続農地として保全できなかった場合、徴収猶予決定は、その全部、又は一部が取り消される旨主張し、控訴人は、所有者の形式的な同一性が継続することは徴収猶予ないし免除の要件ではないから、所有者が実質的に変更していない場合、又は所有者の変更があっても耕作の現況が変わらず農家保護の要請が失われない場合には徴収猶予決定が取り消されることはない旨反論するので、この点について検討する。 法附則二九条の五第一項は、長期営農継続農地として認定を受けた土地の「所有者」が当該土地を一定期間長期営農継続農地として「保全」したとき、当該土地の固定資産税の徴収を免除する旨定めていること、法附則二九条の五第八項及び法施行令附則一四条の五第七項は、長期営農継続農地として認定した土地の所有者が変更した場合において納税義務が免除される事由について規定しているが、右規定は、長期営農継続農地として認定した土地の所有者が死亡したなどの事由により変更した場合に徴収猶予決定が取り消されることを当然の前提としていることに照らすと、長期営農継続農地について所有者の変更があった場合には、徴収猶予決定が取り消されると解すべきである。しかし、本件納税義務免除制度は 徴収猶予決定が取り消されることを当然の前提としていることに照らすと、長期営農継続農地について所有者の変更があった場合には、徴収猶予決定が取り消されると解すべきである。しかし、本件納税義務免除制度は、市街化区域農地について宅地並課税をすることにより、長期間にわたり真に営農を継続したいと希望する者が営農できなくなることを防止し、その営農の継続を保証することを目的とするものであるから、所有名義の変更等により所有者の変更とみなされる場合においても、所有権変動の前後を通じて、耕作者が同一で耕作の用に供されている状態に変更がなく、真に農業を継続していると認められるときに、法附則二九条の五第八項に定める徴収免除事由に該当しないため徴収免除を受けられず営農を断念せざるを得ない事情があり、かつ、右のような状況に陥ったことについて当該農家に責めを負わせるのが酷であるなどの特段の事情があって公平の理念に反する場合には、本件納税義務免除制度の立法趣旨に鑑み、法附則二九条の五第八項に定める長期営農継続農地として保全できなかったことに該当しないと解すべきであり、これらの事由がある場合には、長期営農継続農地について形式的に所有者の変更があった場合であっても、例外的に徴収猶予決定を取り消すことはできない。 2 控訴人らが本件全土地を共有していたこと、控訴人が、本件全土地につき、昭和六二年一一月二一日売買を原因として、Dの持分の移転登記を経由したことは当事者間に争いがない。そこで、右1の解釈に基づいて、右の事実が本件徴収猶予許可決定を取り消すべき事由に当たるか否かについて判断する。 成立に争いがない甲第一号証ないし第五号証、第七号証、第一八、一九号証、乙第二号証の一、二、原本の存在及び成立に争いがない乙第一号証、原審における控訴人本人尋問の結果及びこれにより真正に成立し る。 成立に争いがない甲第一号証ないし第五号証、第七号証、第一八、一九号証、乙第二号証の一、二、原本の存在及び成立に争いがない乙第一号証、原審における控訴人本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したことが認められる甲第八号証によると、控訴人がDの持分の移転登記を経由したことに関し、以下の事実を認めることができる。 (一) 本件全土地はもと訴外Aが所有しでいた。同訴外人は、昭和三四年五月三日死亡したが、その法定相続人は、同訴外人の妻である控訴人、子であるD、訴外B、同C及び同Eの五名であった。 (二) Dは、法定相続人間で遺産分割協議がなかなか纏まらないうえ、農業を営む気持もなかったため、昭和四四年四月一〇日、控訴人に対し、代金三〇〇〇万円、代金は訴外Eとの相続問題解決後六か月以内に支払うとの約定で相続分を売り渡し、その旨の同日付け協議書を作成した。なお、Dは、控訴人から、右代金として、同日五〇〇万円、昭和四八年九月一八日二五〇〇万円を、それぞれ受領した。 (三) Dは、右のとおり控訴人に相続分を譲渡したが、訴外Eとの間で遺産分割協議が粉糾していたことから、Dも加わって遺産分割協議が行われ、昭和四八年三月一九日、控訴人らと訴外Eとの間で遺産分割協議が成立し、本件全土地は、控訴人ら各四分の一の共有となり、本件土地三ないし五については同月二九日受付で、本件土地一、二については同月三一日受付でその旨の登記がされた。 (四) 控訴人は、訴外Aが昭和三四年五月三日に死亡した以後、一人で農業を続けてきたところ、昭和五七年度の法改正により本件納税義務免除制度が創設されたので、本件全土地の登記簿上の所有者が前記のような経緯で控訴人ら四名の名義となっていたので四名の名義で長期営農継続農地認定の申告をし、本件徴収猶予決定を受けた。控訴人は、夫の訴外Aの死亡後今 されたので、本件全土地の登記簿上の所有者が前記のような経緯で控訴人ら四名の名義となっていたので四名の名義で長期営農継続農地認定の申告をし、本件徴収猶予決定を受けた。控訴人は、夫の訴外Aの死亡後今日まで終始一人で本件全土地を耕作の用に供して来、今後もそれを農地として使用する意向である。 (五) 控訴人は、昭和六一年ころ、Dから、本件全土地につきDの持分の移転登記をするよう求められたため、農業委員会や世田谷都税事務所に行きその是非を相談したが、適切な助言を受けることができなかったことから、右登記をしても本件徴収猶予決定が取り消されることはないと判断して、昭和六一年一一月二一日付けで農業委員会の許可を受けたうえ、同日売買を原因とするDの持分の移転登記を経由し、その持分を取得した。 (六) 控訴人らは、被控訴人に対し、昭和六二年一月二二日付けで、昭和六一年一二月一日に本件全土地の所有者が変更したことを理由とする長期営農継続農地変更申告書を提出したところ、被控訴人は、昭和六二年二月二五日付けで長期営農継続農地非該当確認通知をし、同年三月三日付けで本件処分をした。 (七) 控訴人は、本件処分が適法な場合、少なくとも合計一〇〇三万六一六〇円の固定資産税等を支払わなければならず、本件全土地を所有しつつ営農を継続していくことは極めて困難である。 以上の事実が認められる。なお、控訴人は、Dとの相続分の売買契約及びこれに引き続く遺産分割により、農業委員会の許可を受けるまでもなく本件全土地についてのDの持分を取得したものである旨の右認定に反する主張をするが、右認定のとおり、控訴人らと訴外E間で遺産分割協議が行われ、これにより控訴人らが本件全土地を各四分の一あて共有する旨の遺産分割協議が成立したのであるから、右五名による遺産分割の合意を無視して、Dとの相続分の売 り、控訴人らと訴外E間で遺産分割協議が行われ、これにより控訴人らが本件全土地を各四分の一あて共有する旨の遺産分割協議が成立したのであるから、右五名による遺産分割の合意を無視して、Dとの相続分の売買契約とその後の遺産分割に基づいて控訴人が本件全土地の二分の一の共有持分を相続したとすることはできず、結局控訴人は、Dが遺産分割により取得した共有持分四分の一を右売買契約に基づき取得したというべきである。本件全土地は農地であるから、D持分の売買の効果は、農業委員会の許可があったときであると認められる。したがって、この点での控訴人の主張は理由がない。 そこで、右認定事実を基にして、控訴人について本件徴収猶予許可決定を取り消すべき事由があるか否かを検討するに、前認定のとおり本件全土地の共有者は、控訴人がDから持分譲渡を受けたことにより控訴人ら四名から控訴人、訴外B、同Cの三名に変更したと認められるが、実質的には、本件徴収猶予許可決定を受ける遙か以前から控訴人、訴外B、同Cの三名が本件全土地を共有していたものであり、右共有者の変更は形式的なものであること、控訴人が一人で耕作を継続しているという耕作状態も農業委員会の許可の前後あるいは本件徴収猶予許可決定ないし本件処分を通じて全く変更がないこと、本件処分が適法な場合、控訴人は、少なくとも合計一〇〇三万六一六〇円の固定資産税等を支払わなければならず、本件全土地を所有しつつ営農を継続していくことは極めて困難となること、しかも、控訴人がDの持分の移転登記を経由したのは、Dに依頼されていわば形式を実質に合わせるためにしたためであること、加えて、控訴人は、本件納税義務免除制度の専門家たる農業委員会や世田谷都税事務所に相談したうえで右登記手続をしたものであり、右農業委員会等から、本件処分を受ける可能性がある等の適 したためであること、加えて、控訴人は、本件納税義務免除制度の専門家たる農業委員会や世田谷都税事務所に相談したうえで右登記手続をしたものであり、右農業委員会等から、本件処分を受ける可能性がある等の適切な助言があれば右登記をしなかったこと、控訴人は法律については素人であり、極めて専門的な知識を要する税法等に関する諸手続について、専門家と同等の対応を求めることを期待することはできず、右手続につき誤解が存したことをもって控訴人に責められるべき点があるとするのはいささか酷であり、これを理由として控訴人が当該農地を長期営農継続農地として保全できなかったとするのは公平の理念にも反すること、以上の点を考慮すると、登記簿上の共有名義に変更はあるものの、控訴人が当該農地を長期営農継続農地として保全できなかったものとはいえず、控訴人には、本件納税義務免除制度の立法趣旨に鑑み、本件徴収猶予決定を取り消すことを不相当とする特段の事由があると認められる。 3 以上の次第で、その余の点について判断するまでもなく、本件処分は違法であるから取り消すべきである。 三よって、右と結論を異にする原判決は正当でないから取り消し、控訴人の本件控訴は相当であるから認容し、なお仮執行宣言の申立ては相当でないから却下することとし、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法三八六条、九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官岡田潤根本眞小林正)別紙物件目録一ないし五(省略)
▼ クリックして全文を表示