平成30年6月28日判決言渡し平成30年(行コ)第15号損害賠償等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成25年(行ウ)第123号)主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 市長部局及び消防本部関係(1) 被控訴人高槻市長は,次に掲げる者(以下「歴代市長」という。)に対し,それぞれ次に掲げる金員(括弧内の金額は予備的主張に係る金額である。以下同じ。)及びこれに対する平成25年6月29日(被控訴人らに対する訴状送達の日の翌日。以下同じ。)から支払済みまで年5分の割合による金員の請求をせよ。 P5 10億9912万6400円(3050万6500円)P6 2億6061万7600円( 723万3500円)(2) 被控訴人高槻市長は,次に掲げる者(以下「歴代人事課長」という。)に対し,それぞれ次に掲げる金員及びこれに対する平成25年6月29日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求をせよ。 P7 2億3547万8400円( 516万0000円)P8 2億3547万8400円( 516万0000円)P9 4億7095万6800円(1032万0000円)P10 2億3547万8400円( 516万0000円) 3 教育委員会関係(1) 被控訴人高槻市長は,次に掲げる者(以下「歴代教育長」という。)に対 し,それぞれ次に掲げる金員及びこれに対する平成25年6月29日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求をせよ。 被控訴人高槻市長は,次に掲げる者(以下「歴代教育長」という。)に対 し,それぞれ次に掲げる金員及びこれに対する平成25年6月29日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求をせよ。 P11 7569万7900円( 49万4000円)P12 1億6334万8100円( 106万6000円)(2) 被控訴人高槻市長は,次に掲げる者(以下「歴代教委課長」という。)に対し,それぞれ次に掲げる金員及びこれに対する平成25年6月29日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求又は賠償命令をせよ。 P13 7171万3800円( 46万8000円)P14 4780万9200円( 31万2000円)P15 2390万4600円( 15万6000円)P16 4780万9200円( 31万2000円)P1 2390万4600円( 15万6000円)P2 2390万4600円( 15万6000円) 4 水道事業関係(1) 被控訴人高槻市水道事業管理者は,次に掲げる者(以下「歴代水道管理者」という。)に対し,それぞれ次に掲げる金員及びこれに対する平成25年6月29日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求をせよ。 P17 972万5600円( 30万4000円)P18 2917万6800円( 91万2000円)P19 2127万4750円( 66万5000円)P20 1276万4850円( 39万9000円)(2) 被控訴人高槻市水道事業管理者は,次に掲げる者(以下「歴代水道課長 2127万4750円( 66万5000円)P20 1276万4850円( 39万9000円)(2) 被控訴人高槻市水道事業管理者は,次に掲げる者(以下「歴代水道課長」という。)に対し,それぞれ次に掲げる金員及びこれに対する平成25年6月29日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求又は賠償命令をせよ。 P21 2188万2600円( 68万4000円) P22 1276万4850円( 39万9000円)P23 1276万4850円( 39万9000円)P10 1094万1300円( 34万2000円)P3 1458万8400円( 45万6000円) 5 自動車運送事業関係(1) 被控訴人高槻市自動車運送事業管理者は,次に掲げる者(以下「歴代運送管理者」という。)に対し,それぞれ次に掲げる金員及びこれに対する平成25年6月29日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求をせよ。 P24 347万6400円( 21万6000円)P25 5446万3600円( 338万4000円)P26 5562万2400円( 345万6000円)P27 2665万2400円( 165万6000円)(2) 被控訴人高槻市自動車運送事業管理者は,次に掲げる者(以下「歴代運送課長」という。)に対し,それぞれ次に掲げる金員及びこれに対する平成25年6月29日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求又は賠償命令をせよ。 P28 1390万5600円( 86万4000円)P29 及びこれに対する平成25年6月29日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求又は賠償命令をせよ。 P28 1390万5600円( 86万4000円)P29 1390万5600円( 86万4000円)P30 2781万1200円( 172万8000円)P31 1390万5600円( 86万4000円)P13 1390万5600円( 86万4000円)P4 5562万2400円( 345万6000円)第2 事案の概要等 1 本件は,高槻市の住民である控訴人らが,被控訴人らを相手に,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,平成15年4月1日から平成25年3月31日まで(以下「本件期間」という。)において,高槻市の市長部局,消防本 部及び教育委員会の職員ら並びに高槻市水道事業及び高槻市自動車運送事業の企業職員ら(以下,併せて「市職員ら」という。)の給与の支出負担行為及び支出命令に係る専決権者であった者(歴代人事課長,歴代教委課長,歴代水道課長及び歴代運送課長。以下「歴代課長等」という。)及びその指揮監督権限を有していた者(歴代市長,歴代教育長,歴代水道管理者及び歴代運送管理者。 以下「歴代市長等」という。)に対し,主位的に,本件期間中に市職員らが取得した特別休暇及び病気休暇(以下「本件特別休暇等」という。)につき給与を減額することなくその支出負担行為及び支出命令をしたことは給与条例主義(地方自治法204条3項,204条の2,地方公営企業法38条4項)に反して違法であると主張し,予備的に,本件期間中に市職員らが取得した祭祀休暇(以下「本件祭祀休暇」という。)の一部は不正に取得されたも 自治法204条3項,204条の2,地方公営企業法38条4項)に反して違法であると主張し,予備的に,本件期間中に市職員らが取得した祭祀休暇(以下「本件祭祀休暇」という。)の一部は不正に取得されたものであるのに,これを見逃して市職員らの給与の支出負担行為及び支出命令をしたことは違法であると主張して,不法行為に基づく損害賠償請求又は賠償命令をすることを求めている住民訴訟の事案である。 2 原審は,本件訴えのうち,監査請求期間を徒過した上記支出負担行為及び支出命令を対象とする請求部分及び損害賠償請求又は賠償命令の対象とならない者に対する請求部分を却下した上,控訴人らのその余の請求をいずれも棄却したことから,これを不服として,控訴人らが控訴した。 3 原判決の引用関係法令の定め,前提となる事実,主たる争点及び当事者の主張は,次のとおり補正し,後記4のとおり当審における当事者の補充主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」中の第2の1ないし4(原判決6頁1行目から26頁20行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決7頁11行目から12行目の「年数内」の次に「(15年以内)」を加える。 (2) 原判決12頁19行目の「その頃」を「平成25年5月14日頃」に改め る。 (3) 原判決14頁9行目の「総務消防委員会」の次に「(甲29)」を加える。 (4) 原判決19頁22行目の「(ア)」を削除する。 (5) 原判決21頁14行目,26頁18行目の各「請求」をいずれも「『控訴の趣旨』2ないし5」に改める。 4 当審における当事者の補充主張(1) 平成24年3月19日以前にされた給与の支出負担行為及び支出命令に係る適法な監査請求の前置の有無(原審主たる争点(1)ア)について に改める。 4 当審における当事者の補充主張(1) 平成24年3月19日以前にされた給与の支出負担行為及び支出命令に係る適法な監査請求の前置の有無(原審主たる争点(1)ア)についてア控訴人ら(ア) 多くの市民は,公務員の特別休暇や病気休暇が有給であるということを知らず,そもそも民間企業は,国や地方公共団体と比べて特別休暇の種類が少なく,また,特別休暇が存在しても無給であるケースが多いことに照らすと,市民の感覚は,公務員にも年次有給休暇が存在するので,公務員が休暇を取るときでも年次有給休暇を利用しているというものであり,年次有給休暇に加えて,特別休暇や病気休暇というものが存在し,休暇を取っているにもかかわらず,市民の税金等で給与が賄われているなどという感覚は全くない。 (イ) 職員給与条例及び勤務時間条例は,その内容自体から明確に特別休暇等につき給与を減額しないで支給するということが一義的に読み取れないから,公務員の特別休暇や病気休暇が有給であるとしても,高槻市において,本件特別休暇等につき給与を減額しないでその支出負担行為及び支出命令がされていることを調査して知ることは困難である。また,住民が市職員らの給与明細や給与システムを見るなどすることはできず,本件特別休暇等が有給であることなどに通常気づかず,そのことは控訴人P32が市議会議員であったとしても変わらない。 (ウ) 主位的主張は給与条例主義に反する違法であるが,予備的主張は市 職員らの不正取得を見過ごした歴代市長,歴代課長らの違法性や責任を問題視しているところ,不正取得されたかどうかについては,条例の規定の問題ではなく,運用の問題であるから,条例の規定を見ても不正取得の有無は一切明らかにならず,相当の注意力をもってしても,市役所内部の給与 ているところ,不正取得されたかどうかについては,条例の規定の問題ではなく,運用の問題であるから,条例の規定を見ても不正取得の有無は一切明らかにならず,相当の注意力をもってしても,市役所内部の給与支給に関することである以上,外部の住民が不正取得の事実関係の存在及び内容を知ることはできない。 (エ) したがって,本件期間にされた給与の支出負担行為及び支出命令について,控訴人らが監査請求期間を徒過したことに地方自治法242条2項ただし書の「正当な理由」がある。 イ被控訴人ら(ア) 国家公務員については,給与法において明確に特別休暇や病気休暇が存在していること,これらの休暇が有給であることが規定されているから,国家公務員に代表される公務員の特別休暇や病気休暇が有給であることは広く知られているし,調査をすれば容易に知り得ることというべきである。また,民間企業においても,慶弔休暇等の特別休暇は有給としているところが多く,無給としているところの方が少ない。 (イ) 控訴人P32は,市議会議員であるから,条例の解釈や不正取得の有無が明らかでなければ,職員に聴取するなり,議会で質問するなりの調査をすることにより容易に確認することができる。また,不正取得の有無が具体的に明らかになっていなくても,監査請求をすることは可能であるから,不正取得の有無につき具体的に明らかになっていないこと自体が「正当な理由」を肯定する理由とはならない。 (2) 主位的主張・本件特別休暇等につき給与を減額しないことの適否(原審主たる争点(2)ア)についてア控訴人ら(ア) 職員給与条例は「給与」について,勤務時間条例は「勤務時間,休 日,休暇等」について具体的に規定したものであり,特に給与に関しては,給与条例主義により給与の種 ア控訴人ら(ア) 職員給与条例は「給与」について,勤務時間条例は「勤務時間,休 日,休暇等」について具体的に規定したものであり,特に給与に関しては,給与条例主義により給与の種類や額,支給方法を条例により規定することが厳格に求められているから,給与と勤務時間や休暇につき同列に論じるのは必ずしも適切ではなく,職員給与条例15条と勤務時間条例5条の8が「任命権者の承認があった場合」という同じ文言を使用していたとしても,条例の趣旨が異なるため,承認の対象は異なるというべきであり,「給与に関する事項」を定めた職員給与条例15条が規定する任命権者の承認の対象は給与の支出行為について,「休暇等に関して必要な事項」を定めた勤務時間条例5条の8が規定する任命権者の承認の対象は労働義務を免れさせることについてであり,両者は異なるところ,勤務しないことにつき承認を与えている上司は,休暇を取得する市職員らの給与の支給に全く考えが及んでおらず,勤務しないことの承認が給与の承認を代替することはできず,包摂関係にもない。 (イ) 職員給与条例15条は,「職員が勤務しないときは,その勤務しないことにつき,任命権者の承認があった場合を除く外,その勤務しない1時間につき給与額を減額して給与を支給する。」と規定され,休暇が有給であることは明示されていないため,勤務時間条例5条の7第3項が介護休暇は無給であることを規定したからといって,高槻市において,介護休暇以外の休暇が職員給与条例15条に基づき有給となるわけではない。 (ウ) 職員給与条例15条の任命権者の承認と勤務時間条例5条の8の任命権者の承認の対象がいずれも労働義務の免除であるとすれば,産前休暇及び産後休暇のように申出や届出により取得される休暇の場合には職員給与条例15条に基づき有給 命権者の承認と勤務時間条例5条の8の任命権者の承認の対象がいずれも労働義務の免除であるとすれば,産前休暇及び産後休暇のように申出や届出により取得される休暇の場合には職員給与条例15条に基づき有給とする余地はないことになるが,このことは同条が休暇に限らず,「その勤務しないことにつき,任命権者の承認があった場合」に給与を減額しないと規定し,休暇の取得に関する任命 権者の承認の有無にかかわらず,任命権者の承認があれば有給とする旨定めていることと整合しない。 (エ) 水道事業及び自動車運送事業に関しても,特別休暇の取得につき管理者の承認が必要である旨の規定があり,市長部局,消防本部及び教育委員会と同様,労働義務の免除に関する管理者の承認と給与の支払に関する管理者の承認とは異なる。 (オ) 昭和60年の旧給与法改正においては,国家公務員につき法律の根拠なく有給で休暇を与えていた運用が問題視され,同改正に伴い,旧給与法15条の規定に休暇の場合も有給とする旨の文言が追加されたから,旧給与法15条の下で休暇を有給としていたことが違法であったことを前提としていた。 イ被控訴人ら(ア) 職員給与条例と勤務時間条例は,いずれも地方公務員法24条6項(現24条5項)に基づき,職員の勤務条件に関する事項について,同じ高槻市議会において制定された条例であり,根拠となる法律,その対象,制定者を同じくするものである中で,職員給与条例15条と勤務時間条例5条の8は,高槻市議会が,「任命権者の承認があった場合」とあえて同一の文言を使用しているから,同一の意味内容として解釈すべきものというのが素直かつ相当である。また,職員給与条例と勤務時間条例の解釈として,本件特別休暇等は有給であることが前提となっているから,勤務時間条例5条の8の任命権者の承認 意味内容として解釈すべきものというのが素直かつ相当である。また,職員給与条例と勤務時間条例の解釈として,本件特別休暇等は有給であることが前提となっているから,勤務時間条例5条の8の任命権者の承認があった場合には職員給与条例15条の任命権者の承認があった場合に含まれることが想定されており,直属の上司の承認が給与の支給をすることの承認をも含むものとして制度設計されているというべきである。 (イ) 高槻市における職員給与条例及び勤務時間条例においては,介護休暇と本件特別休暇等を区別し,前者は給与の減額をし,後者は有給とし ていることが明らかであり,条例の趣旨として本件特別休暇等は有給として規定しているものというべきである。 (ウ) 産前休暇及び産後休暇の申出又は届出がされた場合については,これらの休暇の性質上,任命権者の承認があった場合と同視すべきものというべきであり,産前休暇及び産後休暇についても,他の特別休暇の場合と同様,職員給与条例15条の「その勤務しないことにつき,任命権者の承認があった場合」に該当すると解するのが相当である。また,高槻市においては,職員が産前休暇の申出及び産後休暇の届出をする際,平成24年7月までは当該職員から「出産関係特別休暇届出表」を提出し,提出を受けた直属の上司(任命権者)がその内容に誤りがないか,また,休暇の期間を確認し,決済を行う運用としており(同年8月以降は出勤状況を管理するための庶務事務システム上で同様の手続をすることとなっている。),産前休暇及び産後休暇の取得に当たっても,その運用上,「任命権者の承認」が必要なその他の特別休暇と同様の事務処理を行っている。 (エ) 水道事業及び自動車運送事業に関しても,本件特別休暇等を有給とする法令上の根拠があり,これが適法であ 用上,「任命権者の承認」が必要なその他の特別休暇と同様の事務処理を行っている。 (エ) 水道事業及び自動車運送事業に関しても,本件特別休暇等を有給とする法令上の根拠があり,これが適法であることは明らかである。 (オ) 旧給与法15条により国家公務員の特別休暇及び病気休暇を有給とすることが違法であったことは認められない。 (3) 予備的主張・本件祭祀休暇の不正取得の有無等(原審主たる争点(3)ア)及び歴代市長等及び歴代課長等の賠償責任の有無(同イ)についてア控訴人ら(ア) 控訴人らは,高槻市の交通部及び水道本部の労働組合の現在の四役にある者の本件期間中の休暇届出表の文書提出命令を申し立てたところ,被控訴人らは,在職期間が長い職員の休暇届出表を選別して任意提出し,原審は,これをもって,控訴人らの文書提出命令の目的が達成され,そ の対象文書の取調べの必要性がないとして,文書提出命令申立てを却下したが,唯一の証拠としての文書提出命令申立てを却下しておきながら,不正取得について特定されていないとするのは誤りである。また,高槻市において,他市と比較して祭祀休暇の取得率が10倍以上にもなると,偶然では説明できない数字と考えられ,特段の事情が認められない以上,民事訴訟法248条の趣旨及び同条の類推適用により,他市の平均値の10倍以上については,少なくとも不正取得があったと認められるべきである。 (イ) 給与の承認権者は極めて異常な祭祀休暇の取得率を認識していたこと,給与の承認権者が祭祀休暇の取得要件を審査せずに給与支給が行われていること,平成17年の段階で市議会においても祭祀休暇の取得率につき問題視されていること等の事情を勘案すれば,市職員らの給与の支出負担行為及び支出命令につき本来的な権限を有 せずに給与支給が行われていること,平成17年の段階で市議会においても祭祀休暇の取得率につき問題視されていること等の事情を勘案すれば,市職員らの給与の支出負担行為及び支出命令につき本来的な権限を有していた歴代市長等や専決権者であった歴代課長等は,祭祀休暇の申請内容が真実であるか否かを確認すべき義務があるのにこれを怠り,祭祀休暇の不正取得を見逃した過失がある。 イ被控訴人ら(ア) 被控訴人らは,職員のプライバシーの観点から労働組合の四役ではなく,在職期間の長い4名の休暇届出表を提出したものであり,その4名の選択には何らの恣意は存在しない。仮に控訴人らが求める労働組合の四役ないし三役の休暇届出表の提出が認められたとしても,その4名ないし3名の祭祀休暇の取得の有無及び取得日が確認できるにすぎず,当該祭祀休暇の取得が不正取得であるということが直ちに判明するものではなく,ましてや,その4名ないし3名以外の職員の不正取得の有無及びその取得日の特定には何ら役立つものではない。また,高槻市と他市とでは祭祀休暇の取得要件が異なっているものであり,他市の平均値 の10倍以上が少なくとも不正取得であるとする理由はない。 (イ) 高槻市と他市とでは祭祀休暇の取得要件が異なり,高槻市では取得要件が比較的緩やかであるから,必ずしも水道事業,自動車運送事業及び消防本部の取得率が異常というほどのものではなく,取得率が高かったとしても,直ちに取得要件を確認すべき義務が発生するということはできない。また,祭祀休暇の取得手続の制度上,あるいは,休暇届出表の記載内容において,本件祭祀休暇の取得要件を検討したことの記録が残っていないだけであり,本件祭祀休暇の取得要件の検討がされていないということにはならず,休暇承認権者は取得要件を確認していたと 出表の記載内容において,本件祭祀休暇の取得要件を検討したことの記録が残っていないだけであり,本件祭祀休暇の取得要件の検討がされていないということにはならず,休暇承認権者は取得要件を確認していたというべきであり,また,そもそも休暇承認権者が取得要件を審査していたか否かが歴代課長等の過失の有無の判断に影響を及ぼすものではない。 そして,平成17年12月9日開催の総務消防委員会においては,職員定数の問題及び職員の採用問題に関する質問であり,特別休暇を主たる問題として取り上げたものではなく,祭祀休暇に触れた部分においても,むしろ祭祀休暇の制度論に及んでおり,不正取得等につき過失の根拠とはならず,調査資料(甲14)も,その作成時期や休暇制度の改正時期からすると,休暇制度全体の見直しのための資料として作成されたものと考えられ,祭祀休暇の取得率に焦点を合わせたものでもないし,一見して取得率が異常に高いことが分かるものでもない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人らの訴えのうち,監査請求期間を徒過した市職員らの給与の支出負担行為及び支出命令を対象とする請求部分及び損害賠償請求又は賠償命令の対象とならない者に対する請求部分は不適法であるからいずれも却下すべきであり,控訴人らのその余の請求は理由がないからいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり補正し,後記2において当審における当事者の補充主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」 中の第3の1ないし4(原判決26頁22行目から38頁23行目まで)のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決27頁26行目の「高槻市において,」の後に「本件祭祀休暇を含む」を加え,同行目から28頁1行目の「その支出負担行為及び支出命令がされていること」の次に るから,これを引用する。 (1) 原判決27頁26行目の「高槻市において,」の後に「本件祭祀休暇を含む」を加え,同行目から28頁1行目の「その支出負担行為及び支出命令がされていること」の次に「(本件特別休暇等を有給とすること)のほか,条例の定め方や祭祀休暇の取得状況について」を加え,2行目の「当然にこれを」を「これらのことを」に改め,4行目の「これを」を「これらのことを」に改め,同行目の「あったはず」を「あったというべき」に改める。 (2) 原判決30頁18行目の「〇〇」を「〇〇」に改める。 (3) 原判決30頁26行目の「その期間」を「その分」に改める。 (4) 原判決31頁10行目の「意味内容」の次に「(任命権者の承認対象は職員が勤務しないことであること)」を加える。 (5) 原判決31頁18行目の「規定を」の次に「わざわざ」を加える。 (6) 原判決36頁8行目から9行目の「本件通知」の後に「(甲38)」を加える。 (7) 原判決38頁4行目の「第2項」の次に「・甲5」を加え,5行目の「第3の16」の次に「・甲5」を加える。 2 当審における当事者の補充主張に対する判断(1) 平成24年3月19日以前にされた給与の支出負担行為及び支出命令に係る適法な監査請求の前置の有無(原審主たる争点(1)ア)についてア控訴人らは,上記第2の4(1)アのとおり主張する。 イしかし,この点については,上記1で補正後の原判決を引用して認定説示したとおり(原判決「事実及び理由」中の第3の1),祭祀休暇を含む公務員の特別休暇や病気休暇が有給であることについては,一般に広く知られていることであり,また,高槻市において秘密にされている情報でもないから,高槻市の住民が容易に知ることができる情報である。さらに,本 の特別休暇や病気休暇が有給であることについては,一般に広く知られていることであり,また,高槻市において秘密にされている情報でもないから,高槻市の住民が容易に知ることができる情報である。さらに,本 件特別休暇等や給与に関する高槻市の条例の定め方や市職員らの本件祭祀休暇の取得状況についても,高槻市の住民が情報公開制度を利用するなどの調査により知り得る情報であるから,これらにより上記休暇についても給与を支給することとする市職員らに対する給与の支出負担行為及び支出命令がされていることを知ることができ,これに疑惑がある場合には監査請求をすることが可能であったというべきである。そうすると,高槻市の住民である控訴人らが相当の注意力をもって調査をすれば,客観的にみて監査請求をするに足りる程度に市職員らの給与の支出負担行為及び支出命令の存在及び内容を知ることができたというべきである。特に,控訴人P32は,高槻市議会議員であり,その就任以降は,市議会議員としての調査権限に基づき調査すれば,上記支出負担行為及び支出命令の存在及び内容をより容易に知ることができたというべきである。 ウしたがって,控訴人らが監査請求期間を徒過したことに「正当な理由」があったとは認められず,控訴人らの主張は採用できない。 (2) 本件特別休暇等につき給与を減額しないことの適否(原審主たる争点(2)ア)についてア控訴人らは,上記第2の4(2)アのとおり主張する。 イしかし,任命権者の承認,介護休暇及び産前休暇・産後休暇の関係については,上記1で補正後の原判決を引用して認定説示したとおり(原判決「事実及び理由」中の第3の3(1)),いずれも高槻市議会において制定された職員給与条例15条と勤務時間条例5条の8が「任命権者の承認」という同一の文言を使用していること 認定説示したとおり(原判決「事実及び理由」中の第3の3(1)),いずれも高槻市議会において制定された職員給与条例15条と勤務時間条例5条の8が「任命権者の承認」という同一の文言を使用していること,職員給与条例15条の任命権者の承認は職員が勤務しないことについての承認を意味するというのが自然な理解であること,介護休暇について,勤務時間条例5条の7第3項が給与を減額する旨の特別の規定をわざわざ置いていることに照らすと,勤務時間条例5条の8の任命権者の本件特別休暇等の承認は職員給与条例15条の任 命権者の承認に含まれることが文理上明らかであるから,本件特別休暇等を有給とすることに高槻市の条例上の根拠があり,給与条例主義に反しないというべきである。また,職員給与条例15条の任命権者の承認が給与を支給し,又はこれを減額しないことについての承認を意味するものとは解し難い一方,勤務時間条例5条の8の任命権者の本件休暇等の承認が職員給与条例15条の任命権者の承認に含まれることが明確である以上,職員給与条例15条において,本件特別休暇等の承認と別個に,本件特別休暇等を有給とする旨の承認を要することが予定されているものではないというべきである。他方,産前休暇については申出,産後休暇については届出で足りるとされているのは,これらが任命権者の承認を経るまでもなく,当然に休暇を与えなければならない性質の休暇であるからであり,その申出又は届出がされた場合,これらの休暇の性質上,当然に任命権者の承認があった場合と同視すべきであるから,産前休暇・産後休暇について,任命権者の承認の有無にかかわらず有給とすることが,職員給与条例15条の定めと整合しないということはできない。 ウまた,水道事業及び自動車運送事業の関係については,上記1で補正後の原判決 任命権者の承認の有無にかかわらず有給とすることが,職員給与条例15条の定めと整合しないということはできない。 ウまた,水道事業及び自動車運送事業の関係については,上記1で補正後の原判決を引用して認定説示したとおり(原判決「事実及び理由」中の第3の3(2)),水道事業及び自動車運送事業の企業職員についても,高槻市の職員と同様,本件特別休暇等を有給とすることに高槻市の条例上の根拠があり,給与条例主義に反しないというべきであり,企業職員給与条例上必要な管理者の承認もあるというべきである。 エそして,旧給与法15条の関係については,上記1で補正後の原判決を引用して認定説示したとおり(原判決「事実及び理由」中の第3の3(3)),旧給与法15条の改正前に同条により国家公務員の特別休暇及び病気休暇を有給とすることが違法であったとは認められないから,その違法を前提 とする,本件特別休暇等を有給としていたことが違法であるとの主張を採用することはできない。 オしたがって,控訴人らの主張は採用できない。 (3) 本件祭祀休暇の不正取得の有無等(原審主たる争点(3)ア)及び歴代市長等及び歴代課長等の賠償責任の有無(同イ)について,ア控訴人らは,上記第2の4(3)アのとおり主張する。 イしかし,本件祭祀休暇の不正取得の有無等(原審主たる争点(3)ア)については,上記1で補正後の原判決を引用して認定説示したとおり(原判決「事実及び理由」中の第3の4(1)),本件祭祀休暇の不正取得については,個々の祭祀休暇の取得毎に不法行為(不正取得の見逃し)の成否が検討されなければならないところ,仮に労働組合の四役ないし三役の祭祀休暇の取得状況が判明したとしても,それらの者の限定的な取得状況が特定できるに止まり,依然として祭祀 為(不正取得の見逃し)の成否が検討されなければならないところ,仮に労働組合の四役ないし三役の祭祀休暇の取得状況が判明したとしても,それらの者の限定的な取得状況が特定できるに止まり,依然として祭祀休暇の取得毎の不法行為が特定できるということはできない。また,他市との比較でその取得率の平均値の10倍を超える祭祀休暇が取得されていることをもって,祭祀休暇の取得毎の不法行為が特定できているということもできない。 ウまた,歴代市長等及び歴代課長等の賠償責任の有無(原審主たる争点(3)イ)については,上記1で補正後の原判決を引用して認定説示したとおり(原判決「事実及び理由」中の第3の4(2)),仮に本件祭祀休暇の不正取得があったとしても,市職員らの本件祭祀休暇の取得について,その申請毎に真否や内容について確認を取ることは現実的に困難であり,ましてや,給与の支出負担行為及び支出命令を専決する歴代課長等が上記取得申請毎に真否や内容について確認を取ることは一層困難であるから,歴代課長等にそのような確認義務は認められず,市職員らの給与の支出負担行為及び支出命令を行ったことに故意又は過失はないというべきである。また,歴代課長等を指揮監督する歴代市長等にも,上記のような確認義務は認めら れず,上記支出負担行為及び支出命令を阻止しなかったことに故意または過失はないというべきである。 エしたがって,控訴人らの主張は採用できない。 3 結論以上の次第で,控訴人らの訴えのうち,監査請求期間を徒過した市職員らの給与の支出負担行為及び支出命令を対象とする請求部分及び損害賠償請求又は賠償命令の対象とならない者に対する請求部分は不適法であるからいずれも却下すべきであり,控訴人らのその余の請求は理由がないからいずれも棄却すべきである。 よ する請求部分及び損害賠償請求又は賠償命令の対象とならない者に対する請求部分は不適法であるからいずれも却下すべきであり,控訴人らのその余の請求は理由がないからいずれも棄却すべきである。 よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第5民事部 裁判長裁判官藤下健 裁判官黒野功久 裁判官河本寿一
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