- 1 -令和元年10月30日判決言渡平成31年(行コ)第26号,令和元年(行コ)第125号不認定処分取消等請求控訴,同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所平成29年(行ウ)第260号) 主文 1 本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人兼附帯被控訴人の,附帯控訴費用は被控訴人兼附帯控訴人の各負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 本件控訴について⑴ 原判決中控訴人兼附帯被控訴人(以下単に「控訴人」という。)敗訴部分を取り消す。 ⑵ 前項の部分につき,被控訴人兼附帯控訴人(以下単に「被控訴人」という。)の請求を棄却する。 ⑶ 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 本件附帯控訴について⑴ 原判決中被控訴人敗訴部分を取り消す。 ⑵ 内閣総理大臣は,被控訴人に対し,公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」という。)4条の認定をする旨の処分(以下「認定処分」という。)をせよ。 ⑶ 訴訟費用は,第1,2審とも控訴人の負担とする。 第2 事案の概要等 1 認定法によれば,公益目的事業を行う一般社団法人又は一般財団法人は,行政庁の認定(以下「公益認定」ということがある。)を受けることができるものとされ(4条),公益目的事業については,①学術,技芸,慈善その他の公- 2 -益に関する認定法別表各号に掲げる種類の事業であって,②不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう(2条4号)と定義されている。 終末期における医療の選択の権利としての「リビング・ウィル(尊厳死の宣言書)」の普及啓発等の事業を行う一般財団法人である被控訴人は,当該事業が公益目的事業に該当すると 2条4号)と定義されている。 終末期における医療の選択の権利としての「リビング・ウィル(尊厳死の宣言書)」の普及啓発等の事業を行う一般財団法人である被控訴人は,当該事業が公益目的事業に該当するとして認定法に基づく公益認定を申請したが,内閣総理大臣から,被控訴人の申請事業が公益目的事業とは認められないことを理由に,平成28年12月9日付けで不認定処分(府益担第1612号。以下「本件処分」という。)を受けた。 本件は,被控訴人が,本件処分の取消し及び内閣総理大臣が被控訴人に対し認定法に基づく認定処分をすべき旨を命ずること(義務付け)を求める事案である。 原審は,被控訴人の請求のうち本件処分の取消しを求める部分を認容し,認定処分の義務付けを求める部分を棄却したため,控訴人がその敗訴部分を不服として本件控訴をし,被控訴人がその敗訴部分を不服として本件附帯控訴をした。 2 認定法の定め,前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,後記3のとおり当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の2から5までに記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決を以下のとおり訂正する。 ⑴ 原判決2頁25行目,4頁末行及び6頁6行目の各「公益認定申請」をいずれも「公益認定の申請」と改める。 ⑵ 原判決4頁17行目の末尾に改行して次のように加える。 「⑷ 公益認定を受けた一般社団法人又は一般財団法人(以下「公益法人」という。)が行う公益目的事業に係る活動を促進しつつ適正な課税の確保を図るため,公益法人並びにこれに対する寄附を行う個人及び法人に関する所得課税に関しては,所得税,法人税及び相続税並びに地方税の- 3 -課税についての必要な措置その他所要の税制上の措置が講じられる(58条)。 法人並びにこれに対する寄附を行う個人及び法人に関する所得課税に関しては,所得税,法人税及び相続税並びに地方税の- 3 -課税についての必要な措置その他所要の税制上の措置が講じられる(58条)。」⑶ 原判決6頁5行目の「付けの」の次に「内閣府」を加える。 ⑷ 原判決9頁10行目の「めざして」を「目指して」と改める。 3 当審における当事者の主張⑴ 控訴人ア認定法は公益法人の認定を内閣総理大臣の権限とし(3条1号イないしハ及び4条),認定法5条各号に定める公益認定基準への適合性に係る認定判断を内閣総理大臣に担わせているところ,「公益」又は「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する」という概念はそれ自体抽象的であって,認定法及び関連法令上もその具体的内実を更に明らかにする規定はない。それは,「公益」又は「不特定かつ多数の者の利益」の「増進に寄与するもの」の内容自体,時代やその時の社会経済情勢等とともに変化するため,一義的な基準をあらかじめ定めることが困難であるからにほかならない。認定法は,「公益」の増進に寄与するものについて特に公益認定法人として税法上の優遇措置等の恩典を与える立法政策を採用しており,公益認定自体,多元的な諸利益や価値観が混在する中にあって,いかなる一般法人についてこれを付与することが公益の増進や活力ある社会の実現に資するのかといった政策判断や,一種の将来的予測的判断を前提とするものである。また,認定法が,公益認定に先立って原則として内閣府公益認定等委員会の諮問・答申を経ることを前提としている趣旨も,法人の様々な活動について対応できる専門性を有する委員等による合議制とすることにより,多角的情報を集約して中立的な判断を確保するとともに,公益性を統一的に判断できるようにしたことにある。以上の認定法の仕組みを な活動について対応できる専門性を有する委員等による合議制とすることにより,多角的情報を集約して中立的な判断を確保するとともに,公益性を統一的に判断できるようにしたことにある。以上の認定法の仕組みを踏まえると,公益認定に係る不認定処分が違法となるのは,内閣総理大臣の判断がその裁量権の行使としてされたことを前提とした上で,その判断が- 4 -重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限られる。しかしながら,原判決は,本件ガイドラインの「参考」として位置付けられているチェックポイントに挙げられた着眼点に原審としての価値観を前提とした上での当てはめ・評価を行い,いわば判断代置の手法によって本件登録管理事業が「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」か否かを判断したものであり,認定法及び行政事件訴訟法30条の法律解釈を誤っている。 イ被控訴人宣言書は,その文面等に徴する限り,今日のリビング・ウィルの一般的な考え方(時間の経過,病状の変化等に応じて,また患者の意思が変化するものであることに留意して,医療・ケアチームがその都度説明して患者の意思の再確認を行うことを確保するとともに,人工呼吸器その他の種々の延命措置についてその選択可能性を保障し,かつ,「終末期」の意義を明確に記載する必要があるなどとする考え方)に照らしても,医師等から病状について適切な情報や十分な説明がされた上で意思表示されることが基本的に想定されておらず,会員になった後の意思確認も年1回の年会費の徴収によって行い,延命措置の選択可能性を保障しておらず,「死が差し迫っている」ことがいかなる意味を有するものかについても明確な記載がないなど,より延命拒否方向に踏み込んだ価値判断を前提としていることがうかがえる。そして,公益認定を 性を保障しておらず,「死が差し迫っている」ことがいかなる意味を有するものかについても明確な記載がないなど,より延命拒否方向に踏み込んだ価値判断を前提としていることがうかがえる。そして,公益認定を受けた法人は,公益の増進等に寄与する法人であって,公益目的事業を適正に実施し得る法人であることを内閣総理大臣により認定され,税法上の優遇措置という恩典を受け得る別格の法人であるとの社会的認知を獲得するとともに,事実上一般社会から高い信頼が得られるなどの効果を期待し得る。よって,被控訴人を公益認定することは,国が延命措置の中止等の判断に係る様々な要素の一部について積極的評価を与えたものと認識されるおそれや,現実的な終末期医療の治療方針の決定の場面で被控訴人会員らの自己決定が適切に反映- 5 -されないおそれが否定できず,本件登録管理事業を公益目的事業と認めることは,被控訴人会員らの生命・身体に係る自己決定そのものに不利益を及ぼす可能性がある。 また,被控訴人宣言書を提示された医師等がこれを過度に重視した結果,被控訴人会員らの真意を見誤り,延命措置の中止等について刑法上の殺人罪等に問われたり,民事上,行政上の責任を問われたりする可能性が否定できない(被控訴人会員にとっては登録機関でしかない被控訴人が,医師等に対し,直接に延命措置の中止等の実現に向けての働きかけを予定していることに照らせば,このおそれは一層明らかである。)。 したがって,本件処分は,重要な事実の基礎を欠くものでも,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものでもないから,内閣総理大臣の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用は認められない。 ウ本件登録管理事業が公益目的事業と認定された場合には,必ずしも認定法に精通しているものではない医師等を含む社会一般は,国が被控訴人宣言書による延命 権の範囲の逸脱又はその濫用は認められない。 ウ本件登録管理事業が公益目的事業と認定された場合には,必ずしも認定法に精通しているものではない医師等を含む社会一般は,国が被控訴人宣言書による延命措置の中止等を積極的に評価していると受け取るのが自然であって,原判決がいうように,認定行政庁が当該事業に賛同しているとか,認定行政庁の方針が当該事業を行う法人の方針と同一であるといったことまで意味するものではないと限定的に受け取るとは考え難い。 また,上記イのとおり,本件登録管理事業は延命方向の希望・方針に対して消極的であるといわざるを得ないから,本件登録管理事業が公益目的事業と認められたとしても延命方向の希望・方針に対して消極的評価が与えられるものでは全くないとする原判決の判断は誤っている。 さらに,厚生労働省や日本医師会等によるガイドラインにのっとって延命治療の開始・不開始や中止等を行ったとしても医師等が刑事上,民事上又は行政上免責されるものではないし,上記各ガイドラインが医師等の間で十分に認知されているとはいえないのが現状であるから,本件登録管理- 6 -事業が公益目的事業と認められた場合であっても,医師等が各ガイドライン等に従って延命措置の中止等を行う限り刑事上,民事上又は行政上の責任を問われる可能性が増大するとは解されないとする原判決の判断には重要な誤りがある。 加えて,公益認定法人が作成するリビング・ウィルと,一般法人や自治体等が作成・利用するそれとでは信頼性に大きな差があり,医師等に与える影響も大きく異なるから,被控訴人が既に一般財団法人として本件登録管理事業を行っていることや,自治体等においてもリビング・ウィルが作成・利用されていることをもって,これらの場合に医師が刑事上その他の責任を問われる可能性の程度は,公益認定を 財団法人として本件登録管理事業を行っていることや,自治体等においてもリビング・ウィルが作成・利用されていることをもって,これらの場合に医師が刑事上その他の責任を問われる可能性の程度は,公益認定を受けた被控訴人による被控訴人宣言書を尊重して延命措置の中止等を行った場合と異ならないとする原判決の判断もまた誤りである。 ⑵ 被控訴人本件申請事業が認定法5条各号に適合することは以下のとおり既に主張立証されているから,被控訴人の義務付け請求は行政事件訴訟法37条の3第5項の本案要件を満たす。 すなわち,被控訴人は,①平成31年度の予算額(1億7104万0240円)にほぼ見合う収益(1億5490万2000円)があり,前年度の正味財産期末残高も6億円を超えるなど公益目的事業を行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有しており(認定法5条2号),②役員報酬の総額は約357万円にすぎないなどその関係者に対し特別な利益を与えるものではなく(同条3号),③営利法人等に対して寄附その他の特別の利益を与える行為を行っておらず(同条4号),④投機的取引や公序良俗に反する事業を行っておらず(同条5号),⑤①のとおり公益目的事業に係る収入がその費用の額を超えることはなく(同条6号),⑥収益事業等を行っておらず(同条7号),⑦遊休資産額は約3648万円であってその保有上限額を超えて- 7 -おらず(同条9号),⑧理事・監事間で3親等間の親族関係その他の関係がある者はなく(同条10号),⑨同様に共通する所属団体もなく(同条11号),⑩その収益の額等の基準に照らして会計監査人の設置を要さず(同条12号),⑪理事・監事・評議員等に対する報酬等について規程を定め,その実額も常勤役員の月額報酬が20万円であるなど不当に高額とはいえず(同条13号),⑫一般財 らして会計監査人の設置を要さず(同条12号),⑪理事・監事・評議員等に対する報酬等について規程を定め,その実額も常勤役員の月額報酬が20万円であるなど不当に高額とはいえず(同条13号),⑫一般財団法人であるため社員の資格の得喪は問題とならず(同条14号),⑬他の団体の意思決定に関与することができる株式等を保有しておらず(同条15号),⑭公益目的事業を行うために不可欠な特定の財産はなく(同条16号),⑮定款58条及び59条において認定法5条17号及び18号所定の内容を定めている(同条17号,18号)。 本件処分には裁量権が認められないし,義務付け訴訟の本案要件が法定された以上,これとは別に行政庁の第一次的判断権を考慮する必要もない。また,本件申請事業に係る審査の過程で内閣府公益認定等委員会から認定法5条各号該当性について詳細な質問が繰り返し行われ,被控訴人はこれに丁寧に回答しているとおり,同委員会の審理経過においても認定法5条各号全体について詳細な審査がされていることが明らかである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,本件登録管理事業が公益目的事業に該当しないとした本件処分は違法であるため,被控訴人の請求のうち本件処分の取消しを求める部分は理由があるが,行政事件訴訟法37条の3第5項の本案要件を欠くため,認定処分の義務付けを求める部分は理由がないものと判断する。その理由は,後記2及び3のとおり当審における当事者の主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」(以下単に「第3」という。)の1から3までに記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決を次のとおり訂正する。 ⑴ 原判決15頁16行目の末尾に改行して次のように加える。 - 8 -「 「不特定かつ多数の から3までに記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決を次のとおり訂正する。 ⑴ 原判決15頁16行目の末尾に改行して次のように加える。 - 8 -「 「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」という要件は,その内容が一義的に明確であるとはいえず,事業がこの要件に該当するか否かについての行政庁の認定判断には一定の裁量の余地があるといえるが,認定法制定の経緯,趣旨からしてその裁量権の範囲は広範なものとはいえず,また,その裁量判断が合理的なものでなければならないことはいうまでもないから,裁判所がその判断を審査するに当たっては,その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し,その判断が重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合には,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用として違法となるとすべきものと解される。」⑵ 原判決16頁12行目の「否かを判断する」を「否かの判断過程を検証する」と改める。 ⑶ 原判決17頁1行目の「相まって」を「あいまって」と,11行目の「事業の合目的性」を「医師等に与える影響の有無,程度について」とそれぞれ改め,12行目の冒頭から18頁25行目の末尾までを削り,末行の「オ」を「ア」と改める。 ⑷ 原判決19頁2行目の「場合」の次に「において,申請事業が増進すべき利益の大きさやその帰属主体の数に鑑み,当該不利益の大きさ及びこれを受け得る者の数が相対的に無視し得ない程度に達するものと認められるようなときは」を加え,9行目の冒頭から11行目の末尾までを削り,12行目の「ア」を「イ」と改める。 ⑸ 原判決19頁16行目の冒頭から20頁6行目の末尾までを次のように改める。 「 しかし,認定法が,民間の団体が自発的に行う公益を目 行目の末尾までを削り,12行目の「ア」を「イ」と改める。 ⑸ 原判決19頁16行目の冒頭から20頁6行目の末尾までを次のように改める。 「 しかし,認定法が,民間の団体が自発的に行う公益を目的とする事業の実施が公益の増進のために重要になっていることに鑑み,当該事業を適正に実施し得る公益法人を認定する制度を設けることなどを目的としている- 9 -こと(1条)からすれば,認定法に基づいて行政庁が行う公益認定は,申請事業が公益目的事業,すなわち「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」であると当該行政庁が認定したことを意味し,その限度において当該申請事業が積極的評価を受け,かつ,公益認定を受けた法人が認定法及びその関連法令に基づく税制上その他の面における優遇措置を受けるものではあっても,当該行政庁が上記のとおり自発的に行われる当該申請事業が前提としている問題認識やその解決策として提示する方針ないし方法に逐一同意しているとか,当該行政庁が当該申請事業を行うに当たって当該法人が特に重視する要素を同程度に重視しているとかいったことまで意味するものではない。 これを本件についてみると,本件登録管理事業を公益目的事業と認めた場合,それは,内閣総理大臣が被控訴人宣言書の登録管理という事業を「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」であると認定したことを意味するものの,それを超えて,国が延命措置の中止等について特定の立場(例えば,被控訴人宣言書が規定する場合に延命措置の中止等を行った医師等に対して民事上,刑事上又は行政上の責任を問わないという立場。なお,被控訴人が,治療方針決定時における被控訴人会員の具体的な意思にかかわらず,被控訴人宣言書に従って延命措置の中止等を行った医師等が常に免責されるべきであるとの立場を採っている ないという立場。なお,被控訴人が,治療方針決定時における被控訴人会員の具体的な意思にかかわらず,被控訴人宣言書に従って延命措置の中止等を行った医師等が常に免責されるべきであるとの立場を採っているものと認めるに足りる証拠はない。)を支持しているとか,国が被控訴人宣言書を含むリビング・ウィルを一般的な認識におけるよりも更に重視すべきであるとの方針を採っているとかといったことまで意味するものでないことは明らかである。そして,このような理解は,後記ウのとおり,患者が自分で判断できなくなった場合に備えて被控訴人宣言書又はこれに限られないリビング・ウィルを作成していたとしても,医師等がこれに拘束されるものではなく,こうした書面に記載した希望を尊重しつつ家族等や医師等の判断も取- 10 -り入れながらの治療を受けることを希望する一般国民が多数であること,終末期における治療方針の決定においてはその時点における患者の意思を尊重すべきことが厚生労働省や日本医師会等の策定に係る種々のガイドライン等においても一致して支持されていることなどを踏まえれば,医師等を含む社会の構成員にもおおむね共有されているものと解される。したがって,被控訴人に対する公益認定がされたとしても,そのことは,社会一般にとって,上記のような理解を前提とした受け取られ方がされることが通常であると考えられる。」⑹ 原判決20頁10行目の「イ」を「ウ」と,21頁9行目の「では全くない」を「とはいえない」と,16行目から17行目にかけての「なく,一般国民としてもそのように捉えている者」を「ないと捉えている一般国民」とそれぞれ改める。 ⑺ 原判決22頁10行目の末尾に次のように加える。 「例えば,厚生労働省の「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」は,医師等 と捉えている一般国民」とそれぞれ改める。 ⑺ 原判決22頁10行目の末尾に次のように加える。 「例えば,厚生労働省の「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」は,医師等から適切な情報の提供と説明がされ,それに基づいて患者が医師等と話合いを行い,患者本人による決定を基本とした上で人生の最終段階における医療を進めることが最も重要な原則であること,患者の意思確認ができない場合において,家族が患者の意思を推定し得るときは,その推定意思を尊重し,患者にとっての最善の治療方針を採ることを基本とするが,家族が患者の意思を推定し得ないときは,患者にとって何が最善であるかについて家族と十分に話し合い,患者にとっての最善の治療方針を採ることを基本とすることなどを定め,日本医師会の「終末期医療のガイドライン2009」は,終末期における治療方針の決定手続における患者本人・家族等の意思は,①患者の意思,②家族等が推定する患者の意思,③家族等の意思の順に優位とすること,患者本人に意識がある場合には,今後の治療内容について患者本人・家族等の意思を確認するが,病状に変化があ- 11 -ったときは改めて説明を行い,従前の患者本人・家族等の意思や一旦決定した方針にこだわらず柔軟に対応すること,患者本人の意識がなくなった場合には,患者本人が従前,臨死状態に入った場合に治療を中止することを要望していたとしても,治療の中止には家族等の同意が必要であることなどを定めている。」⑻ 原判決22頁12行目の「ときでも」を「場合であっても」と,同行目の「確認できた」を「当該時点における変化がないことについて家族等も同意した」と,21行目の「ウ」を「エ」とそれぞれ改める。 ⑼ 原判決23頁14行目の「行っていたが(乙1・8,34頁)」を「行っており( できた」を「当該時点における変化がないことについて家族等も同意した」と,21行目の「ウ」を「エ」とそれぞれ改める。 ⑼ 原判決23頁14行目の「行っていたが(乙1・8,34頁)」を「行っており(乙1・8,34頁),平成25年11月25日,①尊厳死思想の普及啓発事業,②尊厳死法制化推進事業及び尊厳死の宣言書(リビング・ウィル)の登録管理事業をその申請に係る公益目的事業として内閣総理大臣に対して公益認定の申請をして,平成26年6月5日付けで不認定処分(府益担第1409号)を受けていた。当時,同協会は,尊厳死法の法制化を目指す理由として,尊厳死法の存在しない現状において医師が尊厳死の宣言書に基づいて延命措置の中止等の措置を講じた場合に,民事上,刑事上及び行政上の責任を問われるおそれを払拭することができないためである旨の説明をしていた(乙1ないし4)。もっとも」と改める。 ⑽ 原判決24頁9行目の「多くなるものと」を「多いであろうことは容易に」と改め,12行目の「場合であっても」の次に「,被控訴人宣言書が上記各ガイドライン等にいう「患者本人が,従前,臨死状態に入った場合に治療を中止することを要望していた」ことを明らかにする以上の特別の位置付けを与えられるものでないことは明らかであるから」を加え,17行目の「個々の」から19行目の末尾までを次のように改める。 「患者の事前の意思が確認されることにより上記各ガイドライン等が延命措置の中止等を行うに際して求める要件(患者の意思又は推定的意思等)が充- 12 -足される場合が増加したことの結果であって,本件登録管理事業が公益目的事業と認められたことによる直接の結果ではないものと考えられる。」⑾ 原判決24頁20行目の「また」を「もっとも,控訴人は,我が国において尊厳死に関する法整備がされ て,本件登録管理事業が公益目的事業と認められたことによる直接の結果ではないものと考えられる。」⑾ 原判決24頁20行目の「また」を「もっとも,控訴人は,我が国において尊厳死に関する法整備がされていない現状では,医師等が被控訴人宣言書の内容に沿った延命措置の中止等を求められ,それに従い又はそれを尊重して一定の行為を行った場合,当該医師がその行動につき刑事を含む法律上の責任を問われかねないから,本件登録管理事業を公益目的事業と認めることは,医師等を法律上不安定な地位に置く可能性があると主張する(上記のとおり,被控訴人の前身である一般社団法人日本尊厳死協会も,かつて同様の考え方の下に尊厳死法制化を提唱していた。)。しかし」と改める。 ⑿ 原判決25頁8行目の末尾に次のように加える。「むしろ,終末期の患者が自ら意思表明をすることができない状態となった場合において,当該患者と同居していた家族等が合理的に推定する患者本人の意思に基づいて医師等が延命措置の中止等を行ったときに,事後的に当該医師が当該患者の他の家族等から民事上その他の責任を追及されるような可能性は,被控訴人宣言書を含むリビング・ウィルの存在によって相当程度減少することが予想される(日本医師会の「終末期医療のガイドライン2009」が家族等の範囲を「患者本人の身近にあって,患者本人の意思を推定し尊重できる家族等。法的な意味での親族だけでなく,患者が信頼を寄せている代理人を含む。」とのみ定める(乙19の2・67頁)など,上記各ガイドライン等では意思確認の対象とすべき家族等の範囲が明確に規定されているわけではない。また,被控訴人の前身が設置したリビングウイル研究会のシンポジウム(甲16)でも,救命医療の現場において,医師等が患者の意思を知悉している同居の親族と協議して延命措置の中止 されているわけではない。また,被控訴人の前身が設置したリビングウイル研究会のシンポジウム(甲16)でも,救命医療の現場において,医師等が患者の意思を知悉している同居の親族と協議して延命措置の中止を決めても,患者と別居していた娘が後からこれに反対する事例が紹介されている。)。このようなことからすると,本件登録管理事業を公益目的事業と認めることによって医師等の法律上- 13 -の地位が不安定となるか否かを判断するに際しては,延命措置の中止等を判断する時点における患者の意思を推定するため,ひいては患者の推定的意思に基づく延命措置の中止等に起因する種々の法的リスクから医師等を守るための手段として,リビング・ウィルが果たし得る積極的な役割をも考慮に入れる必要があると考えられる。なお,上記ウ記載の厚生労働省による意識調査(平成25年)によれば,「あなたは,自分で判断できなくなった場合に備えて,どのような治療を受けたいか,あるいは受けたくないかなどを記載した書面をあらかじめ作成しておくことについてどう思いますか。」という質問に対し,医師の73.4%,看護師の84.7%,介護職員の83. 8%が賛成しており,この比率は一般国民における賛成の比率(69.7%)より高いこと,医療従事者の方がこうした考え方に対する賛成の比率が高いという傾向は平成10年,15年及び20年における同様の調査でも一貫していることが認められ(甲29),このことから,尊厳死法の法制化がされていない現状の下でも,医師等の多くはリビング・ウィルに対し一般国民以上に受容的であり,これによる責任追及の可能性が増大するおそれ等も特に懸念していないことがうかがわれる。」⒀ 原判決25頁25行目の末尾に「また,自治体その他が作成したリビング・ウィルと,被控訴人宣言書とではそれぞれ一長一 責任追及の可能性が増大するおそれ等も特に懸念していないことがうかがわれる。」⒀ 原判決25頁25行目の末尾に「また,自治体その他が作成したリビング・ウィルと,被控訴人宣言書とではそれぞれ一長一短があるところ(例えば,公証人による尊厳死宣言書は,本人確認等の面で被控訴人宣言書よりも優れているといえるし,国立長寿医療研究センターの「私の医療に対する希望」は,その提出の1年後に希望を再調査するなど継続的な意思の確認に意を用いていることがうかがえる(乙18)など,本人の意思確認の確実性の面では被控訴人宣言書よりも優れているものもある。),本人の意思表示の方法やその確認方法等を離れて,被控訴人が公益認定を受けることのみによって被控訴人宣言書の信頼性が高まるとは到底考え難い。」を加える。 ⒁ 原判決26頁3行目の「エ」を「オ」と,4行目の「影響」から5行目の- 14 -末尾までを「不利益が無視し得ない程度にまで生ずると認めるに足りる証拠はない。」と,6行目の「⑹」を「⑸」とそれぞれ改め,7行目の「沿って」から12行目の末尾までを次のように改める。 「沿って検討しても,他の部分について本件登録管理事業の内容や手段に合目的性がないとの具体的な指摘が控訴人からされているとは認められない。 以上を要するに,控訴人は,前記第2の5⑴(被告(控訴人)の主張)イ及びウのとおり主張するが,イについては,前提となる解釈に誤りがあるか,事業目的の評価が明らかに合理性を欠くといえるし,ウについては,その前提となる事実を認めることができないか,重視すべきでない考慮要素を重視するなど,考慮した事情に対する評価が明らかに合理性を欠いており,本件登録管理事業が「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」に当たらず,公益目的事業に該当しないとした判断は,社会通念に 重視するなど,考慮した事情に対する評価が明らかに合理性を欠いており,本件登録管理事業が「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」に当たらず,公益目的事業に該当しないとした判断は,社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものとして裁量権の範囲を逸脱したものといわざるを得ない。」⒂ 原判決26頁13行目の「⑺」を「⑹」と,23行目の「1号」から24行目の「適合すると認めることはできない」までを「2号の「公益目的事業を行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有すること」といった要件は,本件ガイドラインを参照してもなおその内容は抽象的な部分が多く,これに該当するか否かの判断も一義的に明確に行い得るとはいえないから,行政庁が被控訴人に対し認定処分をしないことが裁量権の範囲を超え又はその濫用となるとか,認定処分をすべきことが同条の規定から明らかであると認めることはできない」とそれぞれ改める。 ⒃ 原判決27頁1行目の「,「行政庁」から4行目の「から」までを削り,6行目の「から」から8行目の末尾までを「が,認定処分の義務付け請求は理由がないことに帰する。」と改める。 2 当審における控訴人の主張に対する判断- 15 -⑴ 控訴人は,前記第2の3⑴アのとおり主張する。 確かに,認定法2条4号にいう「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」といった要件は,その内容が一義的に明確であるとはいえず,行政庁がその充足性を判断するに当たっては,政策面を含む裁量の余地があるものといえる。このことは,上記の要件が,申請事業が一定の者に不利益を与える側面をも有している場合には総合的にみて充足しないものと評価されることがあり得ること(上記1⑶及び⑷のとおり訂正の上で引用する原判決第3の1⑷ア)からも明らかである。 しかし 利益を与える側面をも有している場合には総合的にみて充足しないものと評価されることがあり得ること(上記1⑶及び⑷のとおり訂正の上で引用する原判決第3の1⑷ア)からも明らかである。 しかしながら,そもそも,法が処分を行政庁の裁量に任せる趣旨,目的,範囲は各種の処分によって一様ではなく,これに応じて裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法とされる場合もそれぞれ異なるものであり,各種の処分ごとにこれを検討しなければならない(最高裁昭和50年(行ツ)第120号同53年10月4日大法廷判決・民集32巻7号1223頁参照)。そして,認定法は,主務官庁が公益法人の公益性を判断してその設立を許可していた従来の仕組みが,国民からみて公益とはいい難い事業を行っている公益法人の存在,公益性の判断の不統一,設立が許可されるか否かの予測可能性が低いことに起因する公益活動開始意欲の低下といった種々の問題を招来しているとの問題意識から,内閣に民間有識者から成る委員会を設置し,その意見に基づき,主務官庁から中立的に一般的な非営利法人の目的,事業等の公益性を判断することとするために制定され,その際には,公益性の判断要件についても,申請に係る非営利法人の目的,事業及び規律の面からできる限り裁量の余地の少ない明確なものとした上でこれを事前に公表することとされた(乙9,11,12ないし14)。 こうした経緯,特に公益性の認定に当たってそれまで主務官庁ごとに蓄積されてきた専門技術的知識を用いる余地が制度上遮断されたことなどに照らすと,公益認定に係る行政庁の裁量権は,主として社会通念に従い,事前に- 16 -公表された判断基準に沿って行われるものと解されるから,その判断が裁量権の範囲を逸脱し又はその濫用があったといえるか否かを裁判所が審査する際にもそ 権は,主として社会通念に従い,事前に- 16 -公表された判断基準に沿って行われるものと解されるから,その判断が裁量権の範囲を逸脱し又はその濫用があったといえるか否かを裁判所が審査する際にもその判断過程を検証する形で行うのが相当であると考えられ,公益認定に係る行政庁の裁量権の範囲を広範なものと解することもできない。また,上記検証の際には,内閣府公益認定等委員会が事前に公表していた本件ガイドラインを参照することが適切であると考えられる。これに反する限りで,控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑵ 控訴人は,前記第2の3⑴イのとおり主張する。 しかしながら,被控訴人宣言書は,飽くまでその宣言の時点において,その宣言をした者が,自身がいわゆる終末期に至った際には,ただ単に死期を引き延ばすためだけの延命措置についてはこれを断る意思をあらかじめ宣明する趣旨のものにすぎず,実際に終末期を迎えた患者やその家族等が延命措置等についてどのように考えているかについて,医師等が再度の意思の確認を行うことを拒絶するものであるとはいえない。また,ある延命措置が「ただ単に死期を引き延ばすためだけの」ものに該当するか否かは,延命措置の種類やその時点における患者の病状等によっても異なるものと考えられるから,被控訴人宣言書は,その文面に照らせば,患者やその家族等との協議を経た上でその判断を医師等に委ねる趣旨であると認められ,あらゆる延命措置が中止すべきものに一律に該当するかのように解すべき理由はない。加えて,被控訴人宣言書の「現代の医学では不治の状態であり,既に死が迫っていると診断された場合」という文面も,いわゆる終末期に入ったといえるか否かについて,その内容を上記のように定義した上で,これに該当するか否かを医師等の個別の判断に委ねているもの あり,既に死が迫っていると診断された場合」という文面も,いわゆる終末期に入ったといえるか否かについて,その内容を上記のように定義した上で,これに該当するか否かを医師等の個別の判断に委ねているものと理解することができ,被控訴人宣言書に基づいて宣言を行った者及びその家族等も,通常はこれと同様に解するものと考えられる。したがって,被控訴人宣言書が,控訴人の主張するように今日の一般的なリビング・ウィルの考え方に照らして延命拒否方向に- 17 -踏み込んだ価値判断を前提としているとまでは必ずしもいえず,被控訴人会員の了解の下に,延命措置の選択や終末期に入ったか否か等の点についての判断を医師等の合理的な裁量に委ねる趣旨のものと考えられる(A・日本医師会会長は,週刊東洋経済平成28年9月14日号に掲載されたインタビュー(甲40)で,リビング・ウィルにつき,「日本尊厳死協会でしっかりした内容のものを作っており,あの形式で問題はないだろうと私は思っている。」,「輸液をするのか,しないのかなど,(具体的な医療行為の可否を)あまり詳しく書き込むと,かえってわからなくなるのではないか。」と述べている。)。よって,被控訴人を公益認定することで国が延命措置の中止等の判断に係る様々な要素の一部について積極的評価を与えたものと認識されるおそれや,治療方針の決定場面における被控訴人会員らの自己決定が適切に反映されないおそれがあるとする控訴人の主張は,その前提を一部欠くか,その点をおくとしても必ずしも採用し得るものでないことは,原判決第3の1⑸アを上記1⑶ないし⑸のとおり訂正して説示したとおりである。 さらに,控訴人は,本件登録管理事業を公益目的事業と認めれば被控訴人会員らの生命・身体に係る自己決定そのものに不利益を及ぼす可能性があるとか,被控訴人宣言書を提示 訂正して説示したとおりである。 さらに,控訴人は,本件登録管理事業を公益目的事業と認めれば被控訴人会員らの生命・身体に係る自己決定そのものに不利益を及ぼす可能性があるとか,被控訴人宣言書を提示された医師等がこれを過度に重視した結果として延命措置の中止等について刑事上,民事上又は行政上の責任を問われ得るなどとも主張するが,そのような事態がまれであり,一方で医師等が被控訴人宣言書の存在によって遺族等からの無用な責任追及を受けることを免れる可能性があるとも考えられることは上記1⑶,⑷,⑻,⑾及び⑿のとおり訂正の上で引用する原判決第3の1⑸ウの説示するとおりであるし,被控訴人宣言書があることのみを根拠に患者の最新の意思を確認することなく延命措置の中止等に踏み切るような医師等が存在する可能性を完全には否定し得ないとしても,そのような医師等に対しては刑事上,民事上又は行政上の責- 18 -任が問われ得ることは当然のことであって,むしろ,そのような可能性があることもあいまって,終末期医療の治療方針の決定の場面における被控訴人会員を含む患者の自己決定権が保護されるべきものと考えられる。 なお,被控訴人宣言書は,自署してこれを被控訴人に送付すれば足りるとされており(甲11,14),会費についても,終身会員であれば1度払い,毎年支払が必要な単年会員であっても自動振替等によることが可能とされていること(甲101・10頁)などからみて,本件登録管理事業については,被控訴人宣言書に自署したとされる者が会員本人であることの確認や,その内容が治療方針決定時点における会員の意思を充分に推認させるものといえるか否か等の点において,更なる改善の余地があるものとも考えられる。しかしながら,被控訴人の会員に関する規程8条1項において,会員はいつでも退会通知の提出 ける会員の意思を充分に推認させるものといえるか否か等の点において,更なる改善の余地があるものとも考えられる。しかしながら,被控訴人の会員に関する規程8条1項において,会員はいつでも退会通知の提出によって任意に退会し得る旨が定められていること(乙5・110頁)に加え,上記1⑶,⑷及び⑹ないし⑻のとおり訂正の上で引用する原判決第3の1⑸イのとおり,医師等は常にリビング・ウィルに従わなければならないわけではなく,飽くまで治療方針決定時点における患者の意思を確認する必要があるとの考え方が一般的であることからすれば,これらの点が直ちに本件登録管理事業の合目的性を損なうものであるとまではいえない。 ⑶ 控訴人は,前記第2の3⑴ウのとおり主張する。 しかしながら,本件登録管理事業を公益目的事業と認めた場合であっても,それは,国が延命措置の中止等について被控訴人宣言書を含むリビング・ウィルを一般的な認識におけるよりも重視する方針であることまで意味するものでなく,医師等を含む社会の構成員もおおむねそのような認識を共有しているものと解されることは,原判決第3の1⑸アを上記1⑶ないし⑸のとおり訂正して説示したとおりである。 また,本件登録管理事業が延命方向の希望・方針に対して消極的であるこ- 19 -とを前提とする点において控訴人の主張が必ずしも当を得ないものであることも,上記⑵で説示したとおりである。 他方,厚生労働省や日本医師会等によるガイドラインにのっとって延命治療の中止等を行ったとしても必ず医師等が刑事上,民事上又は行政上免責される確実な保障まではなく,また,上記各ガイドライン等が医師等の間で十分に認知されているとまではいい難いことは,控訴人の主張するとおりである。しかしながら,本件登録管理事業が公益目的事業と認めら される確実な保障まではなく,また,上記各ガイドライン等が医師等の間で十分に認知されているとまではいい難いことは,控訴人の主張するとおりである。しかしながら,本件登録管理事業が公益目的事業と認められることによって,上記各ガイドライン等が確実な免責をもたらすことがないという状況に直ちに変化が生ずるものではないし,上記各ガイドライン等が定める内容は,終末期における治療方針として特異なものとはいい難く,むしろ医療関係者にとっての良識を体系化したものとも考えられるから,その存在や内容を直接には知らない医療関係者であっても,終末期においてこれと大きく異なる治療方針を採用することが多くみられるとは考え難い。そして,本件登録管理事業の普及によって延命措置の中止等が行われる事例が増加したとしても,被控訴人宣言書の存在のみを過度に重視して,上記各ガイドライン等が重視すべきであるとする終末期における治療方針の決定時点での患者の意思又は推定的意思とは無関係に行われるような事態はまれであると考えられること,上記各ガイドライン等に従って延命措置の中止等を行う場合には医師等が刑事上,民事上又は行政上の責任を問われないことが多いと推測されることは,いずれも上記1⑶,⑷,⑻及び⑽のとおり訂正の上で引用する原判決第3の1⑸ウが認定説示するとおりである。 加えて,公益認定法人が作成するリビング・ウィルと自治体その他の公的機関や公務員等が作成するそれとの間では信頼性に大きな差がある(前者の信頼性がより高い)とする控訴人の主張については,これを裏付けるに足りる具体的な証拠が提示されているとはいえず,被控訴人が公益認定を受けることによって被控訴人宣言書が上記各ガイドライン等にいう「患者本人が,- 20 -従前,臨死状態に入った場合に治療を中止することを要望して 証拠が提示されているとはいえず,被控訴人が公益認定を受けることによって被控訴人宣言書が上記各ガイドライン等にいう「患者本人が,- 20 -従前,臨死状態に入った場合に治療を中止することを要望していた」ことを明らかにする以上の特別の位置付けを与えられるものでないことは明らかであるし,それのみによって被控訴人宣誓書の信頼性が高まるとは考え難いことは,上記1⑶,⑷,⑻,⑽及び⒀のとおり訂正の上で引用する原判決第3の1⑸ウ及びが認定説示するとおりである。 ⑷ したがって,控訴人の前記第2の3⑴の各主張は,いずれも採用することができない。 3 当審における被控訴人の主張に対する判断被控訴人は,前記第2の3⑵のとおり主張する。 しかしながら,認定法5条各号のうち,少なくとも2号の「公益目的事業を行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有すること」との要件はその該当性の判断が一義的に明確に行い得るとはいえず,行政庁が被控訴人に対し認定処分をしないことが裁量権の範囲を超え又はその濫用となるとも,被控訴人に対する認定処分をすべきことが同条の規定から明らかであるともいえないことは,原判決第3の2⑵を上記1⒂のとおり訂正して説示したとおりである。 したがって,被控訴人の前記主張は,採用することができない。 4 結論よって,被控訴人の請求のうち本件処分の取消しを求める部分を認容し,認定処分の義務付けを求める部分を棄却すべきものとした原判決は相当であり,本件控訴及び本件附帯控訴はそれぞれ理由がないからこれらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第17民事部 裁判長裁判官川神裕 - 21 - 却することとして、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第17民事部 裁判長裁判官 川神裕 裁判官 石井浩 裁判官 岡田幸人
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