昭和54(う)602 公正証書原本不実記載、同行使、背任、業務上横領、有印私文書偽造、同行使、預金等に係る不当契約の取締に関する法律違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和55年3月28日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      被告人A1、同A2、同A3の本件各控訴を棄却する。      当審における未決勾留日数中被告人A1に対し四〇〇日を、被告人A2 に対し原判決の刑期に満つるまでの分を、それぞれ原

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主文 被告人A1、同A2、同A3の本件各控訴を棄却する。 当審における未決勾留日数中被告人A1に対し四〇〇日を、被告人A2に対し原判決の刑期に満つるまでの分を、それぞれ原判決の懲役刑に算入する。 原判決中被告人A4に関する部分を破棄する。 被告人A4を懲役二年に処する。 被告人A4に対し、この裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する。 原審における訴訟費用中証人B1に支給した分の二分の一並びに証人B2、同B3、同B4、同B5、同B6、同B7及び鑑定人B8に支給した分を被告人A4及び同A3の平等負担とする。 理由 本件各控訴の趣意は、被告人A1の弁護人秋本英男、同羽柴駿、被告人A2の弁護人戸田謙、同岩倉哲二、被告人A4、同A3の弁護人稲川龍雄、同石塚文彦がそれぞれ連名で提出した各控訴趣意書及び被告人A4、同A3の右各弁護人が連名で提出した控訴趣意補充書に、これに対する答弁は、東京高等検察庁検察官検事谷口好雄が提出した各答弁書にそれぞれ記載されたとおりであるから、これらを引用する。 第一訴訟手続の法令違反、法令適用の誤り、事実誤認等の控訴趣意について各所論は、多岐にわたるが、要するに、被告人A1、同A2に対し昭和五三年一二月一日言渡された判決(以下同判決を甲と表示することがある)及び被告人A4、同A3に対し同五四年二月六日言渡された判決(以下同判決を乙と表示することがある)について、それぞれ判決に影響を及ぼす訴訟手続の法令違反、法令適用の誤り、事実誤認等の誤りがある、というのであり、以下所論にかんがみ順次検討する。 一原判示(甲)第一の事実関係被告人A2の弁護人の所論は、同被告人は株式会社C1本社とC2株式会社との間で真実原判示の公正証 等の誤りがある、というのであり、以下所論にかんがみ順次検討する。 一原判示(甲)第一の事実関係被告人A2の弁護人の所論は、同被告人は株式会社C1本社とC2株式会社との間で真実原判示の公正証書記載の金銭消費貸借契約がなされたと信じて、被告人A1の指示に従つて、D1公証人に対し、その旨の申立をして公正証書作成を依頼したにすぎず、従つて被告人A2に公正証書原本不実記載等の故意がなかつたし、もとより被告人A1やE1と共謀したこともないのに、原判決は捜査官による誘導かつ理詰めの違法な取調の結果作成された信用性のない被告人A2の検察官(昭和五二年三月一四日付、同月二六日付)及び司法警察員(同年三月一二日付、同月二五日付)に対する各供述調書を証拠として採用し、これを原判示事実認定の証拠に供したものであるから、原判決には訴訟手続の法令違反ないし事実誤認の誤りがある、というのである。 しかしながら原判決挙示の関係証拠によれば被告人A2はC1の取締役の地位にあり、同社の経理面の責任者として、その資金関係の全容を把握していたもので、当時、殆んどみるべき営業収益もなく、経営の悪化していたC1(当時同社のC3支店における預金残高は一六〇〇万円程度)が、三億円もの金員を他に貸付けることができる状況になかつたことは同被告人の知悉するところであつたと認められ、同被告人は被告人A1の指示によりC4信用金庫C3支店に赴いてC2株式会社に対する架空の貸付金にほぼ相当する三億一〇〇〇万円が同支店のC1の預金口座から現実に出金されたかのように見せかける偽装工作をしたり、経理担当の社員に命じて同様の帳簿操作をしたりしたうえ、債権者であるC1の立会人として原判示の公証人役場に赴いているのであつて、被告人A2が、C2のE1と被告人A1との具体的な話し合いの内容等については 当の社員に命じて同様の帳簿操作をしたりしたうえ、債権者であるC1の立会人として原判示の公証人役場に赴いているのであつて、被告人A2が、C2のE1と被告人A1との具体的な話し合いの内容等については聞いていなかつたとしても、本件公正証書の債務名義である三億円の金銭債権が架空のものであつたことを知らなかつたとは到底認められず、具体的詳細で事態の推移に照し自然な同被告人の前掲各供述調書の任意性を疑う格別の事情は認められず、現に右各供述調書は原審において同被告人の弁護人により取調に同意されているのであり、またその信用性も高いと認められるから、原判決に何ら所論の誤りがあるとは認められない。 二原判示(甲)第二の事実関係(一) 被告人A1、同A2らの各弁護人の所論は、B9はC1に対し、同社の右B9に対する工事請負代金債権の担保として原判示の宅地(以下本件土地という)を差入れるとともにC1において本件土地に抵当権等を設定し金融機関から工事代金の融資を受けることをも合意したものであつて、右担保には、当然譲渡担保も含まれるのであるから、右趣旨で本件土地の所有権をB9からC1に移転する登記手続をした被告人らの行為は適法な権限内の行為であるのに、被告人らに対し原判示の私文書偽造、同行使等の罪責を認めた原判決は事実を誤認したものである、というのである。 そこで検討すると(1) 原審公判調書中証人B10、同B9、同B11、同B12らの各供述記載部分を含む関係証拠によれば、原判示の経緯で注文者をB13、請負人をC5株式会社として本件土地上に建築されることになつていた鉄骨鉄筋コンクリート造りの建物一棟(以下本件建物という)の建築工事が、右請負人であるC5株式会社の資金難により工事途上で続行できなくなつたゝめ、C5株式会社の代表取締役B11は被告人A1に ていた鉄骨鉄筋コンクリート造りの建物一棟(以下本件建物という)の建築工事が、右請負人であるC5株式会社の資金難により工事途上で続行できなくなつたゝめ、C5株式会社の代表取締役B11は被告人A1に右工事を引き継いで欲しい旨を申込むに至つたが、検討の末これを承諾した被告人A1の指示により被告人A2、前記B11らが昭和四八年一二月三一日B9(B13の実父、実質上の建築主)方を訪れ、同人に対しC1において本件建築工事を継承したい旨申入れるとともに、「C1としても取引銀行からこの工事について融資を受けなければやつていけない。そこで銀行から融資を受けるため建築中のビルの敷地を利用させて欲しい。この土地を銀行に抵当に入れて融資を受けるつもりだが、これからの交渉次第で金を借りる債務者がC1になるかB9側になるか分らないので了解しておいて欲しい。いずれにせよ、銀行に抵当に入れるため必要だから土地権利証、所有者B13名義の委任状、印鑑証明書をこちらに渡して欲しい」旨申し込み、B9の承諾を得て、同人、B11、及び被告人A2の三者でC1においてC5株式会社から本件建築工事を継承する旨の契約を締結して工事継承契約書を取り交すとともに、B9が被告人A2に対し預り証と引き替えに登記済権利証を交付し、その翌々日である同四九年一月二日さらにB13名義で同人の署名押印のある白紙委任状一通及び同人名義の同四八年一一月六日付印鑑証明書一通を交付し、被告人A2は前記権利証を含む右関係書類を預かつた旨の預り証を作成し、これをさきに交付した預り証を破棄するのと引き替えにB9に交付したこと、同被告人は以上の経過をその都度被告人A1に対し報告したこと以上の経緯が認められるところ、前示本件建物の工事継承契約書五条には「甲(B13)は丙(C1)に工事代金全額を支払い終るまでの間、当該建 と、同被告人は以上の経過をその都度被告人A1に対し報告したこと以上の経緯が認められるところ、前示本件建物の工事継承契約書五条には「甲(B13)は丙(C1)に工事代金全額を支払い終るまでの間、当該建物及び敷地を担保として差し入れるものとする」との記載があり、右によれば、B9側がC1に対しその工事代金の担保として本件建物及び敷地を提供するという趣旨のものであるかのようにも見えるのであるが、被告人A2はB9に対し前記のようにC5株式会社からC1が本件建物の工事を引き継ぐことを申入れた際に、C1の資金事情を説明し、金融機関から工事資金の融資を受けるための担保として本件土地、建物を差し入れてもらい度いと具体的に申し述べて、前記契約書五条の趣旨についてもそのように説明していることが認められ、また右契約条項に基づいて担保に入れるため被告人A2がB9に差し入れた前記権利証、白紙委任状、印鑑証明書等関係書類の預り証には「右立替工事の裏付担保としてお預り致します。必要額の抵当権を設定して融資の為利用しますが工事代金全額をお支払いいただいた時点で速かに右物件の担保を抹消してお返しいたします」旨記載されていて、本件土地に抵当権を設定するため前記権利証等を預かるものであることが明記されていることなどに照しても、B9が、被告人A2に対し権利証等を交付した趣旨はもつぱら本件建物の工事資金を調達するため本件土地に抵当権を設定するためであつたことが認められ、そのことは被告人A2はもとより、同被告人からB9側との折衝の経過についてその都度具体的に報告を受けていた被告人A1も十分了知していたと認められ、しかも登記手続をとるに当りC1応接間で被告人両名とB12らとで協議した際も譲渡担保として所有権移転登記をすることの可否について特に論議していることが明らかであるから、被告 了知していたと認められ、しかも登記手続をとるに当りC1応接間で被告人両名とB12らとで協議した際も譲渡担保として所有権移転登記をすることの可否について特に論議していることが明らかであるから、被告人両名が約旨に反し譲渡担保という名目であえてB9側に無断で本件所有権移転登記手続をしたことは明白であり、原審公判調書中の被告人A1、同A2らの供述記載部分中叙上認定に添わない部分は前掲証拠に照し措信することができないから、原判決に所論の事実誤認があるとは認められない。 (2) 各所論は、前記工事継承契約書五条に表示されたところに従い、これを客観的に解釈すればC1において、本件建築工事にかかる請負代金債権の担保として本件土地の所有権を取得する趣旨を含むことが明らかで、当事者の主観的意思により契約を解釈すべきものではないから、C1において本件土地を譲渡担保として取得したことは適法、有効である、というのであるが、本件の事実関係を離れて、前記工事継承契約書五条の文言を抽象的に解釈すればそこに記載された「担保」の趣旨を譲渡担保にまで拡張して解する余地があるとしても、前示のように当事者間では本件建物の工事資金調達のためには本件土地に抵当権を設定する契約が特に結ばれていたのであつて、その趣旨で授受されたことが明らかな前記権利証、白紙委任状等を利用し、右契約に違背して一方当事者であるC1において本件土地所有権取得登記をする権限をもつものでないことは明らかであるから所論は採ることができない。 (3) 所論は、またB13はC1に対し本件譲渡担保による所有権移転登記の抹消等を求める民事訴訟を提起したが昭和五四年三月一六日裁判上の和解が成立し、その和解条項において、B9は、本件譲渡担保による所有権移転登記が適法になされたことを認めたのであり、このことからも被告人A 消等を求める民事訴訟を提起したが昭和五四年三月一六日裁判上の和解が成立し、その和解条項において、B9は、本件譲渡担保による所有権移転登記が適法になされたことを認めたのであり、このことからも被告人A1、同A2らが本件譲渡担保による所有権移転登記手続をする権限を有していたことが明らかである、というのであるが、民事訴訟においては当事者処分主義ないし、形式的真実主義が採られているのであり、ことに裁判上の和解においては当事者が互に譲歩し、紛争の解決をはかるものであるから、その和解内容がすべてそのまま事案の真相を伝えるものとはいえず、所論指摘の和解の存在が原判示事実認定の妨げとなるものではない。 (二) 被告人A1、同A2の弁護人の各所論は、被告人A2の検察官に対する昭和五二年九月九日付(但し、被告人A1の関係では第一項、第二項及び第八項を除く)、同月一三日付、同月一七日付(但し、被告人A1の関係では第二項を除く)各供述調書は長期間勾留されていた同被告人が捜査官から前記預り証を突きつけられ誘導かつ理詰めの取調を受け、また取調に協力すれば保釈が可能であるかのように言われて供述した結果作成されたもので任意性も信用性もないのに右各供述調書を原判示事実認定の証拠に供した原判決には訴訟手続の法令違反がある、というのである。 しかしながら被疑者の取調にあたり客観的な資料等を示し、これと矛盾する供述に対してはその理由を問い質す等のことは当該被疑者に任意の供述を促すものである限り捜査官として許容されることであり、本件について被告人らの弁疎するところによつても右限度を越え強制誘導等任意性を疑わせるものがあるとは認められずまた被告人A2の公判段階に至つての弁解的色彩の強い供述と対比して検討すると、前記各供述調書の記載内容ははるかに自然で、合理的と認められ、その任 越え強制誘導等任意性を疑わせるものがあるとは認められずまた被告人A2の公判段階に至つての弁解的色彩の強い供述と対比して検討すると、前記各供述調書の記載内容ははるかに自然で、合理的と認められ、その任意性に疑いを抱くような格別の事情は認められず、またその信用性も高いと認められるから前記所論は容れることができない。 三原判示第三(甲)、第一(乙)の事実関係(一) 被告人A1、同A2、同A3の各弁護人の各所論は原判決(甲、乙)には以下に述べるような事実誤認がある、というのである。 (1) 各所論は、C4信用金庫C3支店の支店長であつた被告人A3には本来過振りの権限が与えられていたのであり、同被告人は本件過振りをすることによりC1の倒産による債権回収不能の事態を防止することができ、C4信用金庫(以下金庫という)の債権を保全することができると考え、本件過振りに応じたものであつて、同被告人にはC1の利益を図る目的などなく、また本件過振りが任務違背に該るものでもない、というのである。 しかしながら、過振りは金融機関が当座預金口座の残高を超えて手形、小切手を決裁することであるから、超過支払金の回収が確実である例外的場合を除いて容認されないのが一般であり、押収してある規定集(C4信用金庫)一冊を含む関係証拠によれば、金庫においても預金事務取扱規則三七条四号により、原則として過振りが禁止され、ただ同号但書により例外的場合に対応するため、店舗長に過振りをする権限が与えられているに過ぎないことが認められるのであるから金庫のC3支店長であつた被告人A3に店舗長として過振りをする権限が与えられていたとしても、それは回収確実な例外的場合の措置として認められるに止り、その権限の故をもつて同被告人がした本件過振りが当然の権限内の行為で背任行為に該らないなどと言 して過振りをする権限が与えられていたとしても、それは回収確実な例外的場合の措置として認められるに止り、その権限の故をもつて同被告人がした本件過振りが当然の権限内の行為で背任行為に該らないなどと言うことはできないし、また、金融機関においては、倒産等による回収不能を回避するため経営不振の企業に対し、重ねて融資をする等の救済措置を採ることが許される場合もあるとしても、これまた客観的に相当の回収の見込みが存する場合に限られるものと解されるところ本件においては、後記のとおり、C1が極度の資金難の状態にあり、C1本社ビル売却の話も不確かなもので金庫のC1に対する貸出額に比較し、差し入れられた担保は著しく不足しており、また本件過振りの見合い小切手としてC1から差し入れられた他店小切手の決裁見込にも強い疑問がある等の状況のもとでそれを了知していた被告人A3が、多額の過振りに応ずることは前記のような趣旨で救済的にのみ許される措置の限界をはるかに超えるものと認められるばかりでなく、金庫においては過振りの都度、当座預金過振報告書を作成し金庫本部へ提出すべきことと定められているところ、原審証人大野重昭の証言によれば被告人A3は本件過振りを行つた後、C3支店の係員で同被告人の部下である右B8をして右報告書の処理欄の見合他手交換落欄に丸印をつけさせて、実際には見合小切手としてC1から差し入れられた前記他店小切手がいずれも決済されず、依頼返却の形を採り、他の小切手と差しかえられたのに、それが決済されたかのごとき虚偽の報告をして本件過振りを正当化しようとしていることが認められることなどに徴しても被告人A3において本件過振りをすることが金庫の債権保全のため最善であると判断し、右判断にのみもとづいて本件過振りをしたとは到底認められず、C1が立直れば金庫の損害を最少限度 れることなどに徴しても被告人A3において本件過振りをすることが金庫の債権保全のため最善であると判断し、右判断にのみもとづいて本件過振りをしたとは到底認められず、C1が立直れば金庫の損害を最少限度にくいとめることができるとの淡い期待もなかつた訳ではないとしても、むしろ原判示のとおり、C1の倒産により、貸付の回収が不可能となつて不良貸付の責任を問われることへのおそれや過去に被告人A1から三回にわたつて合計三〇〇万円の贈与を受けていること(所論は、右贈与と本件過振りは無関係であるというが、右贈与が社交上の儀礼を超える多額のもので取引先に対する贈答の域をはるかに超えていることからみても、それが被告人A3において本来容認されない本件過振りに応じた動機の一つとなつていることを否定することができない)などから、本件過振りに応じることを決意するに至つたものと認められ、被告人A3にC1の利益を図る目的があつたと認めるに十分であり、以上によればC3支店長として同支店の行う貸付け等の業務全般を統轄し、誠実に金庫の資金を確実な保全措置をとつて運用すべき任務を有していた被告人A3のした本件過振りがその任務に違背するものであることも明らかであるから、所論はこれを容れることができない。 (2) なお各所論は、金庫はC1に対する貸出額に見合う担保を有していたから、担保が著しく不足していた旨の原判決の認定は事実を誤認するものであるというのであるが、関係証拠によれば本件過振りがなされた昭和四九年七月二〇日当時C3支店のC1に対する貸出額は(イ)割引手形によるもの一億九、二九八方六、九九六円、(ロ)手形貸付によるもの二億二、〇五〇万円合計四億一、三四八万六、九九六円に及ぶところ、担保としては(ハ)定期預金一億〇、二〇〇万円、(ニ)根抵当権設定額一億一、〇〇〇万円、(ホ 方六、九九六円、(ロ)手形貸付によるもの二億二、〇五〇万円合計四億一、三四八万六、九九六円に及ぶところ、担保としては(ハ)定期預金一億〇、二〇〇万円、(ニ)根抵当権設定額一億一、〇〇〇万円、(ホ)普通抵当権設定額三、〇〇〇万円、(ヘ)商手担保四、七六八万円、(ト)出資金六〇万円合計二億九、〇二八万円に過ぎず、前記(イ)の割引手形中には融通手形も含まれ、そのことは被告人A3も承知していたことが認められ、その担保力に多くを期待できず、(ニ)の根抵当権設定額は一億一、〇〇〇万円であるが担保物件の評価額は七、八五〇万円に過ぎず、(ヘ)の商手担保四、七六八万円の担保価値には著しく疑問があつたことなどが認められ、当時金庫の債権額に比し、C1の担保は実質的に著しく不足している状態にあつたことが明らかであるから所論は採ることができない。 (3) 各所論は、また、当時C1ビルに金庫の三億円の根抵当権が設定されていたから、十分な担保があつたとも主張するのであるが、関係証拠によれば右C1ビルに対する根抵当権は昭和四九年五月一八日その設定契約が合意解約され、同年七月二九日根抵当権取得登記の抹消登記手続がなされていることが認められ、本件過振りの時点では、金庫の担保からはずされていたことが明らかであるから所論を容れることはできない。 (4) 各所論は、金融機関側の立場にたつ被告人A3と資金需要者であるC1側の被告人A1、同A2とではその経済的立場を異にし、双方の意図は相反しているのであるから、その間に本件過振りをすることについて意思を共同にするということはあり得ず、本件について被告人A3と被告人A1、同A2らの共謀を認定した原判決はこの点においても事実を誤認するものである、というのである。 しかしながら、被告人A3と被告人A1、同A2らは金融機関とその取引先 本件について被告人A3と被告人A1、同A2らの共謀を認定した原判決はこの点においても事実を誤認するものである、というのである。 しかしながら、被告人A3と被告人A1、同A2らは金融機関とその取引先の関係にあり、対向的意思関係にたつ側面はあるけれども、被告人A1、同A2らは、C1の前示のような資産状況のもとで本件過振りをすることが被告人A3の任務違背にあたることを十分承知しながら、被告人A3に強く過振りを依頼し、被告人A3をして過振りに応じることを決意し実行させたのであるから、被告人ら三者間に本件について共謀共同正犯の成立することは明らかであつて、所論を採ることはできない。 (5) 被告人A3の弁護人の所論は、同被告人は被告人A1、同A2らからC1ビルをC6株式会社に売却し、売買手附金を入手し、直ちにこれを入金して過振りを解消する旨聞かされたことや本件以前C1に対してした過振りがいずれも解消されている実績から、本件過振りに応じても支障はないと判断したもので金庫に損害を与えるとは考えなかつたというのであるが、前掲関係証拠によればC1ビルについてはその建物及び敷地の権利関係をめぐりC1とB9との間で紛争が発生し、同ビルが容易に売却することができる物件でなかつたことは被告人A3も従前の取引経緯から十分承知していたものと認められ、C6の代表取締役B14の原審証言によれば、その頃、C1の子会社であるC7株式会社代表取締役B12を通じ、C1ビル売却の話を持ちかけられた右B14が登記簿謄本を取寄せたり、物件調査をしているうちに売買の話は立消になつたことが認められ、右C1ビル売却の話は全く具体化しなかつたことが明らかで、また、本件過振りが同ビル売却の手附金をもつて直ちに解消されると考えていたという被告人A3が買主とされる前記B14に対し買受の真意や められ、右C1ビル売却の話は全く具体化しなかつたことが明らかで、また、本件過振りが同ビル売却の手附金をもつて直ちに解消されると考えていたという被告人A3が買主とされる前記B14に対し買受の真意や、売買の見通し等について何らの確認もしていないことも明らかであつて、同被告人が本件過振りに際し、C1ビル売却による資金調達に多くを期待していたとは認め難く、また関係証拠によれば被告人A3はC1に対し、本件以前にも過振りをしていたが、本件に至るまではC1の資金手当がついて過振りが解消されていたことが認められるけれども、昭和四九年初頃にはC1の経営状態は相当に悪化し、借入れも増大する一方で、貸出額に比し担保が著しく不足していたのに(前示(2)参照)、本件過振りがなされたのであり、本件以前になされた過振りが解消されたということをもつて、被告人A3が本件過振りもまた容易に解消されると認識し、回収不能の危険性がないと考えていたとは到底認めることができない。 (6) 被告人A3の弁護人らの所論は、原判決は本件過振りに際し、被告人A3がC1から見合小切手として差入れられた三通の小切手((イ)C1振出の額面四、〇〇〇万円のもの一通、(ロ)C8地所振出の額面二、二五〇万円のもの一通、(ハ)C9振出の額面七〇〇万円のもの一通)の決裁見込に強い疑問を抱いていたとか、不渡りになる可能性があることを認識していたと判示するのは結果論に過ぎず、同被告人は右各小切手が決裁されると判断し、本件過振りに応じたものであるというのであるが、前示のとおりC1は当時極度の資金難の状態にあつたのであるから右(イ)のC1振出の小切手の決裁見込が極めて薄すかつたことは明らかであるし、またC10銀行C11支店長、C12信用金庫C13支店長各作成の回答書を含む関係証拠によれば右(ロ)、(ハ)の であるから右(イ)のC1振出の小切手の決裁見込が極めて薄すかつたことは明らかであるし、またC10銀行C11支店長、C12信用金庫C13支店長各作成の回答書を含む関係証拠によれば右(ロ)、(ハ)の各小切手はいずれも融通手形であり、本件過振り当時、右各小切手の振出人であるC8地所、C9とも、業績不振でC8地所の取引銀行であるC10銀行C11支店における同社の当座預金残高は二二五〇円に過ぎず、C9の取引銀行であるC12信用金庫C13支店における同社の当座預金残高は一七〇三円に過ぎなかつたこと、現に右小切手三通はいずれも決裁されず、依頼返却され他の小切手と差しかえられていることが認められ、その決裁見込は客観的に甚だしく乏しかつたことが明らかで、C1の資金状態を把握していた被告人A3が右各小切手が決済されていると判断していたとは到底認められないから、所論を採ることはできない。 (二) 被告人A3の弁護人の所論は、原判決(乙)は、原判示第五の各背任罪の訴因について「回収不能の危険を生じさせて財産上の損害を与えた」と判示しながら、同じく原判示第一の背任罪の訴因については「回収不能の危険を生じさせる財産上の損害を与えた」旨判示しており、両者を対比すると原判示第一については、いまだ具体的な回収不能の危険がなく、抽象的な回収不能の危険が生じただけの段階で背任罪の既遂の成立を認めたことが明らかで、原判決には法令適用の誤りがある、というのである。 しかしながら、原判決が原判示第一と同第五の(一)ないし(三)では、罪となるべき事実として具体的事実を摘示したのち、その法的評価を表わす締めくくりの部分で所論のいうような若干異る表現を用いていることは明らかであるけれども、要するにその趣旨はいずれも被告人らの任務違背の行為により金庫に財産的実害発生の具体的危険を の法的評価を表わす締めくくりの部分で所論のいうような若干異る表現を用いていることは明らかであるけれども、要するにその趣旨はいずれも被告人らの任務違背の行為により金庫に財産的実害発生の具体的危険を発生させ財産上の損害を与えたとするにあることはその判文全体から明らかで、そこに実質的意味内容の相違があるとは認められないから所論はその前提において採ることができない。 四原判示(甲)第四ないし第六の事実関係被告人A1、同A2らの弁護人の所論は、要するに、(一) 原判示の各事実につき、主位的訴因と予備的訴因の間には公訴事実の同一性がなく、原裁判所は検察官の予備的訴因の追加請求を許すべきではなかつたのに、これを許可し右予備的訴因にもとづいて原判示事実を認定したものであるから訴訟手続の法令違反を犯すものである。 (二) 預金等に係る不当契約の取締に関する法律(以下単に法という)二条二項は預金者について同条一項が成立せず、従つて媒介者を同条項により預金者の共犯として処罰することができない場合に適用される補充的規定であるのに、原判決は預金者について同条一項が成立する本件に同条二項を適用したものであるから法令適用の誤りを犯すものである。 (三) 被告人A1、同A2らの原判示の各所為は、法二条二項の「自己のために」「媒介するもの」の要件に該当せず、たかだか媒介の依頼をしたにとどまるのに原判決は同被告人らに対し同条項違反の罪責を認めたもので、法令解釈適用の誤りを犯すものである。 というのである。 そこで以下順次検討する。 (1) 所論(一)について被告人A1、同A2に対する昭和五二年一一月三〇日付起訴状記載の主位的訴因は「第一被告人A1、同A2の両名は、一 E2、E3と順次共謀の上、E3が東京都新宿区ab丁目c番d号C4信用金庫C3支店に、 被告人A1、同A2に対する昭和五二年一一月三〇日付起訴状記載の主位的訴因は「第一被告人A1、同A2の両名は、一 E2、E3と順次共謀の上、E3が東京都新宿区ab丁目c番d号C4信用金庫C3支店に、昭和四九年一二月二六日いずれも期間三か月、金額一、〇〇〇万円の定期預金三口をするに際し、当該各預金に関し、株式会社C1本社(代表取締役被告人A1)から、正規の利息のほかに特別の金銭上の利益を得る目的で、同日、前記支店において、同会社と通じ、同支店を相手方として、当該各預金にかかる債権を担保として提供することなく、同支店が同会社に資金の融通をなすべき旨を同支店長であつたA3と約して前記各預金をし、二 E2、B1、E4と順次共謀の上、同E4が、前記支店に、同月二七日、期間三か月、金額一、五〇〇万円の定期預金をするに際し、当該預金に関し、前記C1本社から、前同様の利益を得る目的で、同日、同支店において、同会社と通じ、同支店を相手方として、当該預金にかかる債権を担保として提供することなく、同支店が同会社に資金の融通をなすべき旨を右A3と約して前記預金をし、もつて、当該各預金に関し不当な契約をし、第二被告人A1、同A2は、E5、E6と順次共謀の上、E5が、前記支店に別表一記載のとおり同月二七日から昭和五〇年三月三一日までの間、四回にわたり、いずれも期間三か月、金額合計三億円の定期預金をするに際し、当該各預金に関し、前記C1本社から、前同様の利益を得る目的で、同表記載の各犯行年月日に、右支店において、同会社と通じ、同支店を相手方として、当該各預金にかかる債権を担保として提供することなく、同支店が、同会社に対し、資金の融通をなすべき旨をA3と約して前記各預金をし、もつて、当該各預金に関し不当な契約をした(別表一、1.昭和四九年一二月二七日ころ、五、〇〇 担保として提供することなく、同支店が、同会社に対し、資金の融通をなすべき旨をA3と約して前記各預金をし、もつて、当該各預金に関し不当な契約をした(別表一、1.昭和四九年一二月二七日ころ、五、〇〇〇万円、2.昭和五〇年一月二〇日ころ、五、〇〇〇万円、3.同月二一日ころ、五、〇〇〇万円、4.同年三月三一日ころ、五、〇〇〇万円及び一億円)。」というのであり、これに対する罰条として法四条一号、二条一項、刑法六〇条、六五条一項が掲げられており、同被告人らを法二条一項にいう預金等をする者(以下単に預金者という)の共同正犯として訴追するものであるところ、予備的訴因は原判示(甲)第四ないし第六記載の事案と同旨で被告人A1、同A2が同条二項にいう預金等をすることについて媒介する者(以下媒介者という)に該り、自己のために同項所定の不当契約をしたもの(以下自己媒介という)として同被告人らを訴追するものであることが明らかであつて、両訴因を構成する事実関係を比較対照すると、基本たる事実関係において差違は認められず、両訴因の間にはもつぱら右事実をどのような法的観点で把えて罪となるべき事実を構成するかについて相違があるにすぎないから、公訴事実の同一性を失わないことは明らかというべきであり、なお本件では、被告人A1、同A2は、後記のとおり、C1の役員として同社のために預金者らに金庫への預金を依頼する等していたものであつて、「特定の第三者」としてはC1と同視すべきであり、本位的訴因は罪とならないとして、予備的訴因が採用されたことが認められるから、訴因変更を許すべきではなかつたとする前示所論は失当というほかはない。 (2) 所論(二)について法二条一、二項にいう、金融機関から融資を受け又は債務の保証を受ける「特定の第三者」については、その者が自ら預金等をするこ つたとする前示所論は失当というほかはない。 (2) 所論(二)について法二条一、二項にいう、金融機関から融資を受け又は債務の保証を受ける「特定の第三者」については、その者が自ら預金等をすることについて媒介をする場合、すなわち自己媒介の場合を除いて、これを処罰しない趣旨であり、預金者又は媒介者と「特定の第三者が通じた」ことの内容が、一般的にはこれらの者と共謀、教唆、又は幇助にあたると解される場合であつても預金者又は媒介者の共犯として処罰しない趣旨であると解すべきところ(最高裁判所昭和五一年三月一八日判決、刑集三〇巻二号二一二頁参照)、所論を前提とすれば、およそ預金者について法二条一項の罪が成立する限り、預金者と通じた自己媒介者に対しては、同条一項の預金者の共犯者としても、同条二項の自己媒介者としても処罰することができない理となり、それが著しく不合理で、自己媒介行為を禁止する法の趣旨と相容れないことは明らかであり、所論は、独自の見解に立脚するものであつて到底これを容れるに由ない。 (3) 所論(三)について<要旨>被告人A1、同A2らはいずれもC1の役員として、同社のため金庫から同社に対し融資を受けようと</要旨>して、特別の謝礼金を支払う約束で預金者らに金庫への預金を依頼する等したものであるから、原判決が主要な争点に対する判断の項二の(一)において説示するとおり同被告人らもC1と同一体の「特定の第三者」にあたると解すべきところ、前示のとおり特定の第三者については預金者又は媒介者と通じたことの内容が一般的にはこれらの者との共謀、教唆、又は幇助にあたると解される場合でも法二条一、二項の預金者又は媒介者の共犯として処罰しない趣旨であると解すべきものであるが、自ら媒介をした場合には同条二項の自己媒介として処罰を免れないところ、それが は幇助にあたると解される場合でも法二条一、二項の預金者又は媒介者の共犯として処罰しない趣旨であると解すべきものであるが、自ら媒介をした場合には同条二項の自己媒介として処罰を免れないところ、それが媒介行為にあたるか、その域に達しない媒介の依頼等にとどまるかは自己媒介行為を処罰する法の趣旨に照し、具体的事案に則し行為者の果した役割や行為の内容等により、媒介すなわち金融機関と預金者との間に介在し、預金の斡旋、勧誘等預金契約の成立のために金融機関又は預金者に働きかける行為の全部又はその主要な部分を自ら実行したか否かによつて判断すべきものと解せられるところ、原判決挙示の関係証拠によれば原判示の各事実を優に肯認することができ、原判決が主要な争点に対する判断の項二の(二)において説示するように、その事実関係すなわち原判示第四の(一)掲記のとおり、被告人A1において金融機関であるC3支店に対し融資を求め、導入預金の斡旋をすることを了承し、預金者を特定して同支店に赴かせ「A1の紹介で預金に来た。」旨告げさせて預金をさせるからそのときはよろしく頼む旨申し込んで同支店の了解をとりつけ、被告人A2と共謀のうえ、同被告人において金融ブローカーのE2に預金者による預金の勧誘を依頼したこと、原判示第四の(二)、同第五及び第六掲記のとおり、被告人A1においてC3支店に対し右と同様の了解工作をし、被告人A2と共謀のうえ、同被告人において預金者はE5であつてE6は同人の使用人にすぎないことを認識しながらE6を通じてE5に対し預金者にC3支店に預金をするように依頼したことが認められる本件においては、被告人A1、同A2らの各所為は単なる媒介の依頼にとどまらず媒介行為そのものと解すべきであるから原判決に所論の誤りがあるとは認められない。 五原判示(乙)第二の一ないし三、 られる本件においては、被告人A1、同A2らの各所為は単なる媒介の依頼にとどまらず媒介行為そのものと解すべきであるから原判決に所論の誤りがあるとは認められない。 五原判示(乙)第二の一ないし三、第五、第六の事実関係被告人A4、同A3の弁護人の所論は、要するに、同被告人らは原判示の各預金を取引先であるC1の紹介によるいわゆる協力預金として受入れたものであり、C1に対する融資はすべて不動産担保によりなされたもので本件各預金とは何ら関連するものでないのに原判示事実を認定した原判決は事実を誤認するものである、というのである。 しかしながら、原判決挙示の関係証拠によれば被告人A3は昭和四九年一二月二一日ごろ被告人A1から年末資金が足りないので一億円位の定期預金を紹介するからその半分位の金を年内に貸して欲しい旨依頼され当時極度の経営不振の状態にあつたC1を倒産させることによりC1に担保額を超える多額の貸付をしていたことが明らかとなり自己の責任が問われることを恐れる気持と多額の定期預金を受入れることに対する魅力から右預金を受入れて融資を実行しようと考え、このことを金庫の専務理事で事実上貸付業務を統轄する立場にあつた被告人A4に話し、その了承を得たうえで、後記の山形県東置賜郡所在のゴルフ場用地等に設定されていた根抵当権の極度額を二億円増額することを条件に同月二五日C1に二、九五〇万円の手形貸付をし、翌二六日原判示第二の一の預金(一口一、〇〇〇万円の定期預金三口合計三、〇〇〇万円)を受入れ、さらに翌二七日原判示第二の二、三の各預金(一、五〇〇万円の定期預金一口及び五、〇〇〇万円の定期預金一口)をそれぞれ受入れたこと、また、右の一、五〇〇万円の定期預金をした預金者が支店長である被告人A3にわざわざ面会を求めC1に頼まれてこの預金をしたが拘束されない 金一口及び五、〇〇〇万円の定期預金一口)をそれぞれ受入れたこと、また、右の一、五〇〇万円の定期預金をした預金者が支店長である被告人A3にわざわざ面会を求めC1に頼まれてこの預金をしたが拘束されないかと尋ねていること、右各預金がなされた前後にさらに、被告人A1から手形貸付の依頼があり同月二八日及び三〇日にそれぞれ一、五〇〇万円及び二、五〇〇万円の各手形貸付をしたこと、昭和五〇年一月中頃にも同様、被告人A1から一億円位の定期預金を紹介するから月末資金として一月二〇日頃に一、六〇〇万円、三一日に一、三〇〇万円を貸して欲しいと依頼され、被告人A4に相談したところ預金を確認してから実行するようにと指示され、原判示第三のとおり同月二〇日及び二一日にそれぞれ五、〇〇〇万円の定期預金を受入れ、二〇日付で一、六〇〇万円、三一日付で一、三〇〇万円の手形貸付をしたこと、同年三月二七日頃被告人A1から一億五、〇〇〇万円位の定期預金を紹介するから何とか貸して欲しい、若干の不動産担保を入れてもよいと依頼され、被告人A4に相談しその了承を得て、被告人A1から提供された取手市の不動産物件について五、〇〇〇万円、川口市の不動産物件について一億四〇〇〇万円と実際の評価額を大幅に上廻る根抵当権の限度額を定め(取手市の物件の担保価値は三、五三一万七、〇〇〇円、川口市の物件は先順位の抵当権があつてその評価額は無に等しかつた)、C1に対し一億四、〇〇〇万円の手形貸付をし原判示第四のとおり同年三月三一日に一億円及び五、〇〇〇万円各一口合計一億五、〇〇〇万円の定期預金を受入れたことがそれぞれ認められるのであつて、以上のとおり前記各貸付にあたり担保権の設定がなされているとしても、当時のC1の資金状態、担保の実質的価値などからみて、それのみでは到底正常な貸付をなしうる状況でなかつたこ れ認められるのであつて、以上のとおり前記各貸付にあたり担保権の設定がなされているとしても、当時のC1の資金状態、担保の実質的価値などからみて、それのみでは到底正常な貸付をなしうる状況でなかつたことが明らかであるから所論はこれを容れることができない。 六原判示(甲)第七の事実関係被告人A1の弁護人の所論は、要するに同被告人は協同組合C14(以下単に協同組合という)の代理人であつたF弁護士から本件一億円の小切手を借受けたもので、同組合の代表理事であつたE1は本件に関与していない、また同被告人が本件小切手をF弁護士から借受けたにせよ、原判示のようにE1から借受けたにせよ、本件小切手はいわゆる裏金で協同組合内部にも秘密にしておく必要があり、右E1が相当期間これを管理すべきものであつたから右E1が一時これを第三者に貸付けることは適法な権限内の行為で業務上横領とはならず、被告人A1にも横領の認識はなかつたのに同被告人に対し横領罪の罪責を問擬した原判決は事実誤認を犯すものである、というのである。 しかしながら、E1の検察官に対する昭和五二年四月一三日付供述調書を含む関係証拠によれば被告人A1がE1に対しC1の営業上の資金にあてるために右小切手の一時の貸与を求め、同人をしてこれを承諾させ、同人と共謀のうえ右E1においてF弁護士に対しその所持する小切手を被告人A1に交付するように指示し、被告人A1において同弁護士からその交付を受けて横領したものであることが認められ、自分が知らない間にF弁護士が被告人A1に右小切手を手交して貸与した旨のE1の原審証言は、右E1が協同組合の理事長で、F弁護士は協同組合の代理人として原判示の即決和解に関与したにすぎなかつたものであることに照して甚だ不自然で到底措信することができず、また右E1は原審において協同組合の 、右E1が協同組合の理事長で、F弁護士は協同組合の代理人として原判示の即決和解に関与したにすぎなかつたものであることに照して甚だ不自然で到底措信することができず、また右E1は原審において協同組合の土地をC15に売渡すについては県や市の反対があつて公表することをはばかる事情があつた旨証言し、その売買予約手附金である本件小切手を協同組合に入金しなかつたことを正当化しようとするのであるが、仮りにそうであるからといつて同人が協同組合のため預り保管中の本件小切手を被告人A1に貸与するいかなる権限も取得するいわれがなく、原判決に所論の誤りがあるとは到底認められない。 七原判示(乙)第五の事実関係被告人A4、同A3の弁護人の所論は、要するに、同被告人らはC1がその所有するC1ビル及び原判示の山形県東置賜郡e町大字f所在のゴルフ場用地二〇筆及び同所所在の建物二棟その他の物件(以下単にゴルフ場用地等という)を任意売却することができればその売却代金をもつて、金庫のC1に対する新規の貸付金はもとより、従前の貸付金についても回収することができると考え、原判示第五の一ないし三の各貸付(但し、第五の二、三については被告人A4のみ)をしたもので、右ゴルフ場用地等については、昭和五〇年一月ころからC1とC16の間で売買代金一五億円で売却する旨の交渉が進展していたこと、また同様同年四月ころからC1とC17株式会社との間で売却代金二〇億円をもつて売却する旨の交渉がなされていたことなどからみても、同被告人らが右ゴルフ場用地等が一八億円ないし二〇億円の価値があり根抵当権の極度額として最終的に設定した一二億円を十分に上廻る価格で売却できると確信していたことが明らかで、現に同年一〇月三〇日C1とGとの間で右ゴルフ場用地等について売買代金二三億円で売買契約が締結されている 額として最終的に設定した一二億円を十分に上廻る価格で売却できると確信していたことが明らかで、現に同年一〇月三〇日C1とGとの間で右ゴルフ場用地等について売買代金二三億円で売買契約が締結されていることに徴しても、本件ゴルフ場用地等が金庫のC1に対する貸付金を十分回収するに足りる交換価値を有していることが認められるのであるから、原判示の各貸付について被告人A4らには、C1の利益を図る目的がなかつたのは勿論、金庫に対する任務違背の行為がなかつたことが明らかであり、同被告人らに背任の罪責を認めた原判決は事実を誤認したものである、というのである。 しかしながら原判決挙示の関係証拠によれば、C1ビルについては同ビル及びその敷地についてC1とB13の間で権利関係をめぐつて紛争が発生し、B9からC1に対し民事訴訟が提起され、予告登記もなされていたことが認められ、同ビルか処分の容易な物件でなかつたことが明らかで、従前の取引経緯から被告人A4らにおいてもその間の事情は十分了知していたことが窺えるのであつて、既に設定されていた極度額三億円の根抵当権を上廻る価格で同ビルが売却処分できる可能性は甚だ乏しかつたと認められるし、また株式会社C18の代表取締役で不動産関係の事業にも携つている原審証人C16は、知人のH1ことH2、Iらを介してC1から本件ゴルフ場用地等を買わないかという話が持ちかけられ昭和五〇年三月一四日ころ、同人らや被告人A4、同A3、同A1らと浅草の料亭で会つたことはあるか当初から本件ゴルフ場用地等を買い度いという積極的な意向があつた訳でもなく、売買交渉が煮つまつたとか、具体化したことはない旨証言しており、C17株式会社の代表取締役である原審証人B16はC1側からC17振出の手形を金庫で割引いてやるからその半分を使わしてほしいという話があり、資金 が煮つまつたとか、具体化したことはない旨証言しており、C17株式会社の代表取締役である原審証人B16はC1側からC17振出の手形を金庫で割引いてやるからその半分を使わしてほしいという話があり、資金融通の便宜上本件ゴルフ場用地等についてC1を売主、C17を買主とする売買契約書を作成し、のちにその所有権移転登記がなされたことはあるが売買というのは形式だけで自分は本件ゴルフ場用地等を買うことは全く念頭になく、C1に交付した手形が町の金融業者に流れているというので急拠その回収をはかり、手形を回収した後前記登記名義もC1へ戻し、C1との関係は打切つた旨証言しており、右C16、B16らの各原審証言を含む関係証拠を検討しても所論のいうC1とC16あるいはC17等との本件ゴルフ場用地等売買の話は何ら具体化していた訳でなく、極めてあいまいなものであつたことが認められ、関係証拠なかんずく原審証人B17の証言によれば本件ゴルフ場は過疎地にあり、冬期間の降雪のため営業できるのは五月二〇日ころから一〇月二〇日ころまでであること、C1が前所有者のC19株式会社から売買代金七億円で本件ゴルフ場用地等を取得した後も、その代金の支払等をめぐつてC19との間で紛争を残し、ゴルフ場全体の土地のうちC1に所有権の移転されていない部分が五筆ほどあり、本件ゴルフ場用地はいわゆる虫くいの状態になつていること、前記C19においてゴルフの会員を募集した際も、採算が採れるほど会員が集らなかつたことなどが認められ、不動産取引が冷え切つた状態にあつた本件当時、C1がたやすく本件ゴルフ場を売却し、転売利益をあげることができるとは客観的に到底考えられないところであり、被告人A4、同A3らは本件ゴルフ場用地等に根抵当権を設定するに際しても必要な物件調査さえ実施していないことが認められ、同被告人 売利益をあげることができるとは客観的に到底考えられないところであり、被告人A4、同A3らは本件ゴルフ場用地等に根抵当権を設定するに際しても必要な物件調査さえ実施していないことが認められ、同被告人らが、C1において本件ゴルフ場用地等を相当の価格で売却することができ、その売却金をもつて金庫のC1に対する貸付金を回収することができればそれに越したことはないと考え、C1のゴルフ場用地等の任意売却に一沫の期待をかけていたことはこれを窺うことができるけれども、同被告人らにおいてその見通しについて確実な認識を持つていたとは到底認めることができないし、またG外二名作成の売買契約書写によればC1とG間に本件ゴルフ場用地等について売買代金を二三億円とする昭和五〇年一〇月三〇日付売買契約書が取り交されていることが認められるけれども、右買主とされる油谷は現にその所在も明らかでなく、右売買が現実に全く履行されなかつたことを窺うことができ、その実体の詳らかでない右売買契約書の存在をもつて原判決の本件ゴルフ場用地等が貸付金全額の返済が可能となる価格で転売が実現することは困難な状況にあつたとの事実認定を覆えす資料とするに足りず、被告人A4、同A3らが新たな貸付を拒否することによりC1が倒産しその結果多額の貸付金の回収が不可能であることが明らかとなつて不良貸付の責任が問われることを恐れ、本件各貸付(但し、原判示第五の(二)、(三)の各貸付については被告人A4のみ)が金庫としては本来容認できないもので、C1に不当な利益を取得させるものであることを認識しながら、あえて右各貸付に応じたものであることはその証明が十分であるから同被告人らはその任務に背き、C1の利益を図る目的で右各貸付をし、金庫に原判示の財産上の損害を与えたものというべく、所論はこれを採用するに由ない。 ま じたものであることはその証明が十分であるから同被告人らはその任務に背き、C1の利益を図る目的で右各貸付をし、金庫に原判示の財産上の損害を与えたものというべく、所論はこれを採用するに由ない。 また、所論は、原判示第五の(一)、(二)の各貸付については、金庫の理事長B18の承認を受けていることから考えても、被告人A4らに任務違背がなかつたことが明らかである、というのであるが、原審証人B18の証言を含む関係証拠によれば金庫においては専務理事の被告人A4が、昭和五〇年六月まで審査部長も兼ね、貸付全般について広汎な権限を持ち、理事長の決裁を要する貸付についても事実上同被告人の判断に委ねられていた状況であることが窺えるのであつて、原判示第五の(一)、(二)の各貸付についてB18理事長が稟議書に決裁印を押捺しているけれども、当時同人はC1という会社の存在すら知らなかつたことが認められ、右のような事情を考慮するとB18理事長の金庫に対する内部責任はともあれ、同理事長が右各貸付について稟議書に決裁印を押捺していることをもつて被告人A4らに任務違背がなかつたとすることは到底できないから、所論を採ることはできない。 その他、各被告人らの各弁護人の多岐にわたる各所論を逐一、十分検討してみても原判決に所論の誤りがあるとは認められない。 論旨はいずれも理由がない。 第二量刑不当の主張について被告人A1、同A2らの各弁護人の各所論は要するに、本件はいずれも本来民事紛争として公権力が介入すべきでない商取引や銀行取引をあえて訴追したものであることなどを考慮すると同被告人らに対する原判決の量刑は重過ぎて不当である、というのであり、被告人A4、同A3らの弁護人の所論は要するに、本件は同被告人らが金融機関の役職員としての見通しを誤つた結果発生したもので、部内的責 被告人らに対する原判決の量刑は重過ぎて不当である、というのであり、被告人A4、同A3らの弁護人の所論は要するに、本件は同被告人らが金融機関の役職員としての見通しを誤つた結果発生したもので、部内的責任は暫く置くとしても同被告人らがこれによつて利益を受けた訳でないこと、被告人A4は在職中責任を痛感してガス自殺をはかつたこともあり、また退職後損害填補の趣旨で自己の土地、建物を金庫に提供したこと、など諸般の情状を考慮すると同被告人らに対する原判決の量刑は重過ぎて不当である、というのである。 そこで前掲各証拠に当審における事実取調の結果を加えて検討すると、(一) 被告人A1、同A2らの原判示(甲)第一ないし第六の各犯行は、同被告人らが共謀のうえ、架空債務を負担して真の債権者の追求を免れ財産保全をはかるE1の不法な目的に加担し、同人と相謀り、公証人に対しC1がC2に三億円の金員を貸付けたかのような虚偽の申立をして公正証書原本に不実の記載をさせ、これを公証役場に備付けて行使し、また、C1がC5株式会社から継承した建物建築工事の注文者であるB13名義の土地を同人から白紙委任状を預つているのを奇貨として勝手にC1名義に所有権移転登記をし、さらに放慢経営により多額の借入を重ね、返済の見込も極めて乏しいのに取引先の金融機関の支店長である被告人A3と相謀つて同被告人に六五一七万九〇五八円もの過振りに応じさせてその任務違背行為に加担し、あるいは金庫から不正な融資を受けるため合計三億四五〇〇万円にのぼる導入預金の自己媒介をしたというものであり、また被告人A1の原判示(甲)第七の犯行は同被告人が協同組合の理事長E1に執拗に頼みこみ、同人と共謀のうえ、同人が協同組合のため預り保管中の額面一億円の小切手を横領し、C1の借入金返済等にあてたというものであつて、そのい (甲)第七の犯行は同被告人が協同組合の理事長E1に執拗に頼みこみ、同人と共謀のうえ、同人が協同組合のため預り保管中の額面一億円の小切手を横領し、C1の借入金返済等にあてたというものであつて、そのいずれも極めて計画的、悪質な犯行というべく、各所論のいうように本件が単なる民事紛争として処理されるべき事案とは到底認められないから、原判示第二の関係ではB13との間で和解が成立したこと、被告人A2は被告人A1から指示命令を受ける立場にあり、概ね同被告人の指示に従つて本件各犯行に加担したものであることなど諸般の情状を十分しん酌してみても被告人A1を懲役五年及び罰金五〇万円に、被告人A2を懲役二年六月及び罰金二〇万円に各処した原判決の量刑が重過ぎて不当であるとは認められない。 (二) 被告人A4の原判示(乙)第二ないし第五の一ないし三、被告人A3の同第一ないし第五の一の各犯行は、被告人A3において被告人A1、同A2らから強く依頼されて、同被告人らと意思相通じ、その任務に違背して回収見込の乏しい六五一七万九〇五八円の過振りに応じてC1の当座預金残高を超える支払をし、また被告人A4、同A3両名共謀のうえ、それぞれの任務に違背してC1に対し回収見込の乏しい一億四〇〇〇万円の手形貸付をし、その間に合計三億四五〇〇万円の導入預金を受入れ、被告人A4においてさらにその任務に背いてC1に対し二回にわたり回収見込の乏しい合計二億七〇〇〇万円の手形貸付を重ねたというもので、公共的金融機関の専務理事あるいは支店長という立場にありながら、C1が倒産し多額の貸付が回収不能となることによつて自己の責任が問われることを恐れ、漫然、被告人A1らC1側から求められるまま、右各犯行に及び金庫に莫大な財産上の損害を与えた被告人A4、同A3らの罪責は甚だ重いというほかなく、ことに被 ことによつて自己の責任が問われることを恐れ、漫然、被告人A1らC1側から求められるまま、右各犯行に及び金庫に莫大な財産上の損害を与えた被告人A4、同A3らの罪責は甚だ重いというほかなく、ことに被告人A3は被告人A1から合計三〇〇万円の現金の贈与を受けているのであつて、それが爾後に引き続く背任行為の基本的な原因とも見られる同被告人の原判示第一の犯行の誘因となつていることを否定することはできないから、同被告人が本件後、金庫を懲戒解雇されたことなど諸般の情状を十分しん酌してみても同被告人を懲役一年八月に処した原判決の量刑はやむを得ないものと認められ、それが重過ぎて不当である、とは認められない。 しかしながら、被告人A4について、さらに検討すると、同被告人が原判示第一の過振りが決裁されず、さらに過振りを重ねた被告人A3からその処理について相談を受け、C1に対する貸出状況を知つた段階で、すでにC1に対する貸出が担保に比して著しく多額となつていることを了知しながら、それにも拘らず、従前の経過が明らかになり自己の責任が問われることになることをおそれ貸付を重ねたこと、しかし遅きに失した感はあるものゝ、昭和五〇年九月二〇日にした三五〇〇万円の手形貸付を最後に自らC1に対する貸出を打切る措置をとり、さらに貸出を続けることにより金庫の損害が一層拡大することを防止したこと、その間被告人A4は特段の利得をえてはおらず、なお、C1倒産による金庫の被害をも考え、右の貸付によるC1の立ち直りをも期待しなかつたわけではなかつたこと、その後まだ金庫に在職中自己の責任を痛感し、ガス自殺をはかり、危く一命をとりとめたこと、金庫を退職した後、自宅の土地、建物を金庫に提供し長男がこれを一八〇〇万円割賦払で買戻すことにより金庫に同額の損害を填補したこと、その後も謹慎の生活を続 ガス自殺をはかり、危く一命をとりとめたこと、金庫を退職した後、自宅の土地、建物を金庫に提供し長男がこれを一八〇〇万円割賦払で買戻すことにより金庫に同額の損害を填補したこと、その後も謹慎の生活を続け年齢も六五歳に達し社会的制裁は十分に受けたといえることなど諸般の情状を考慮すると、同被告人につき原判決が定めた刑はこれを維持すべきものとしても、その執行はこれを猶予するのが相当であると認められる。被告人A4に対する量刑不当の所論は右の限度で理由がある。 (三) よつて刑訴法三九六条により被告人A1、同A2、同A3の本件各控訴を棄却し、刑法二一条により当審における未決勾留日数中被告人A1に対し四〇〇日を、被告人A2に対し、原判決の刑期に満つるまでの分をそれぞれ原判決の懲役刑に算入し、刑訴法三九七条一項、三八一条により原判決中被告人A4に関する部分を破棄し、同法四〇〇条但書により当裁判所において、さらに次のとおり自判する。 原判決が適法に認定した被告人A4に関する事実に、原判決が適用した法令を適用し(刑種の選択、併合罪の処理を含む)、その刑期の範囲内において同被告人を懲役二年に処し、刑法二五条一項に従いこの裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予し、原審における訴訟費用は刑訴法一八一条一項本文により、主文掲記のとおり負担させることとする。 よつて主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官千葉和郎裁判官永井登志彦裁判官中野保昭)

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