平成24(行ケ)10323 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年1月10日 知的財産高等裁判所 4部 判決 請求棄却
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判決文本文11,973 文字)

- 1 -平成25年1月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成24年(行ケ)第10323号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成24年12月19日判決原告ロ-ト製薬株式会社同訴訟代理人弁理士五味飛鳥被告特許庁長官同指定代理人前山るり子水莖弥守屋友宏 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2011-14677号事件について平成24年7月31日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,後記1の商標登録出願に対する後記2のとおりの手続において,原告の拒絶査定不服審判請求について特許庁が同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は後記3のとおり)には,後記4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。 1 本願商標原告は,平成22年9月27日,別紙の構成からなる商標(以下「本願商標」という。)につき,第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用- 2 -パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,医療用腕環,失禁用おしめ,防虫紙,乳糖,乳幼児用粉乳」を指定商品とする ,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用- 2 -パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,医療用腕環,失禁用おしめ,防虫紙,乳糖,乳幼児用粉乳」を指定商品とする商標登録出願(商願2010-75332号)をした(甲7)。 2 特許庁における手続の経緯(1) 原告は,平成23年4月1日付けの拒絶査定を受けたので(甲9),同年7月7日,これに対する不服の審判を請求するとともに,同日付の手続補正書により,指定商品を第5類「スプレー式の薬剤」(以下「本願指定商品」という。)と補正した(甲10の1,11)。 (2) 特許庁は,原告の請求を不服2011-14677号事件として審理し,平成24年7月31日に「本件審判の請求は,成り立たない。」とする本件審決をし,同年8月17日,その謄本は原告に送達された。 3 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,要するに,本願商標は,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであり,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものであるから,商標法3条1項6号に該当し,登録を受けることができない,というものである。 4 取消事由商標法3条1項6号該当性に係る判断の誤り第3 当事者の主張〔原告の主張〕 1 包装用箱において図示が多用されているとの事実認定の誤り(1) 本件審決は,本願指定商品の分野においては,その商品の使用方法を説明するために商品の包装用箱等に図形が多用されていると認定した。 しかしながら,本願指定商品の分野ないし当該分野に関連の深い商品について,その使用方法を写真ないし図で表すこと(以下「図示」という。)が取引上一般に行われている事実はあるが,そのような図示が,商品の包装用箱に多用されて- 3 -いる 当該分野に関連の深い商品について,その使用方法を写真ないし図で表すこと(以下「図示」という。)が取引上一般に行われている事実はあるが,そのような図示が,商品の包装用箱に多用されて- 3 -いる事実は認められない。 (2) 商品の使用方法を表すものと認識され得る図形であっても,添付文書その他の説明書において商品説明の文章などとともに表される場合は,需要者において,それが自他商品識別標識と認識されることは考え難い。しかし,包装用箱の正面に大きく表される場合は,単なる説明用の図形として認識されるにとどまらず,識別標識としても認識され得るのであって,両者の場合でこれに接する需要者の認識は異なる。 識別標識と認識されない使用と,認識される可能性のある使用とを区別せず,かつ,識別標識と認識される可能性の高い包装用箱での使用例を一切指摘しないままに,両者を一緒にして,識別標識とは認識し得ない図示の類が「商品の包装用箱等」に多用されていると認定するのは,誤りである。 (3) よって,商品の包装用箱における図示の例が一般的であるとの事実は認定し得ないから,本件審決は,判断の前提を欠き,結論においても誤っている。 2 需要者の認識について(1) 使用方法を図示することが一般的に行われていることそれ自体は,原告も争わない。 そもそも写真や図の類は,理性的な理解を要する文章に比べ,直感的な理解を促すのに役立つから,例えば商品の安全な使用方法,銭湯や温泉入浴時の禁止事項,ゴミの分別方法の説明などのように,情報の受け手に直感的な理解を促す必要のある分野一般で多用されている。したがって,本願指定商品の分野において,写真や図を用いて商品の使用方法を説明することが一般的である。 しかし,そのような事実のみから,直ちに,本願商標が需要者において商品の使用方 多用されている。したがって,本願指定商品の分野において,写真や図を用いて商品の使用方法を説明することが一般的である。 しかし,そのような事実のみから,直ちに,本願商標が需要者において商品の使用方法を表示していると認識されるにとどまるとは結論できない。 (2) その理由は,次のとおりである。 ア自他商品の識別標識として使用されることを前提とした判断が必要であること- 4 -出願に係る商標は,自他商品の識別標識として使用することを予定して出願され,使用方法の説明等,識別標識以外の目的で使用することを予定して出願されているものではない。したがって,商標法3条1項各号の適用に関しては,審査対象が,自他商品の識別標識として使用されることを前提に判断されなければならない。 すなわち,需要者の認識に関し,同項各号の適用に当たって本来問うべきは,出願に係る商標が,たとえ自他商品を識別するための標識として使用されたとしても,なお需要者にとって「何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない」ものか否かであるはずである。 本願商標が医薬品の添付文書やウェブサイトにおいて使用されている場合であれば,商品の使用方法が図示されているものと需要者が認識する可能性はある。 しかし,例えば包装用箱の正面に本願商標が使用されている場合,包装用箱の正面は通常その商品の商標を表す位置であることから,需要者が単に商品の使用方法を図示したものと認識するにとどまるとみるのはむしろ不自然である。 イ実際の使用態様本願商標は,原告の商品「アクネージアニキビ薬」に,現に使用されている。 女性の背中に生じるニキビ専用の治療薬というニッチな市場の商品であるにもかかわらず,同商品は,平成23年3月23日の販売開始以来,平成24年9月までの約1年半の間で, ビ薬」に,現に使用されている。 女性の背中に生じるニキビ専用の治療薬というニッチな市場の商品であるにもかかわらず,同商品は,平成23年3月23日の販売開始以来,平成24年9月までの約1年半の間で,約24万個を販売するに至り,同市場でのシェアは事実上100%となっている。 発売開始以来の約1年半の間,本願商標は,一貫して,包装用箱の正面中央において,大きく表されて使用されている。陳列棚に並んでいる原告商品の包装用箱において最も目立つのは本願商標である。このように目立つ態様で,かつ,その商品の商標が配されるのが通常である位置に表されている図形について,これに接した需要者が,単に商品の使用方法を図示したものと認識するにとどることはあり得ない。次回改めて同じ商品を購入しようとする場合において,この目立- 5 -つ図形を目印にすることは,明白である。 (3) 小括以上のように,商標法3条1項各号の適用に関しては,審査対象が自他商品の識別標識として使用されることを前提に,その判断がされなければならないはずである。そして,包装用箱の正面中央というような目立つ位置に表す場合であれば,最も需要者の注意を引く部分にある本願商標は,十分に自他商品を識別し,需要者にとって次回購入の目印足り得,「何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない」とするのは誤りである。 3 本願商標がユニークな表現である点本件審決は,本願商標が特徴的な表現である点を看過した点で,違法である。 (1) 一般的に使用される標章か否かについて本願商標は,主として女性の上半身の背中側を表したものであるが,それはか細い線をもって女性らしい繊細な輪郭で表現されたものであり,また,顔や髪について詳細な描き込みを排し,広い空間を表すことによって女性の背中の美しさ 女性の上半身の背中側を表したものであるが,それはか細い線をもって女性らしい繊細な輪郭で表現されたものであり,また,顔や髪について詳細な描き込みを排し,広い空間を表すことによって女性の背中の美しさを強調している。単なる説明目的の写実的な表現を超え,むしろ絵画的であり,ありふれた表現のレベルを超えた独特のタッチに特徴がある。 仮に本願商標の以上のような特徴と同様の特徴を持つ図形が,スプレー式薬剤との関係で既に複数主体によって一般的に使用されているのであれば,複数主体に一般的に使用されている以上,商品の出所を識別することができないから,本願商標について自他商品識別力を欠くとすべきは,当然と思われる。しかし,本願商標についてそのような事実は確認されない。 したがって,本願商標については,既に一般的に使用されているがゆえに商品の出所を識別することができないと評価することはできない。 たとえ現に使用されていなくても,将来一般化して自他識別力を失うであろうことが合理的に推測可能であれば,そのために自他識別力を欠くとすることもできようが,現状において全く使用されていない商標についてこれが将来一般化す- 6 -ることを合理的に推測することは,通常困難である。本願商標については,将来の可能性を含めても,一般的に使用される標章にすぎないとは評価し難い。 同様の特徴を備える図形が,既に一般的に使用されている状況ではなく,また,将来一般化することも考え難い以上,本願商標は市場において事実上自他商品識別力を発揮する。 (2) 特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としない商標に該当するか否かについて商標法3条1項6号と同項3号の趣旨を同様に解すべきであるとすると,「一般的に使用される標章」からなる商標のほかに,「特定人によるその独占使用を認め 益上適当としない商標に該当するか否かについて商標法3条1項6号と同項3号の趣旨を同様に解すべきであるとすると,「一般的に使用される標章」からなる商標のほかに,「特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としない」商標もが拒絶され得ることになる。 原告は,同項6号は本来的に査定審決時における具体的な識別力の存否のみを問題にしていると信じるが,たとえいわゆる独占適応性の存否をも問題にしていると解する場合であっても,なお同号によって本願商標の登録性は否定されないと考える。理由は,以下のとおりである。 商標権は,自由競争を前提として設定される。競争が制限されるような権利設定の仕方は,回避されるべきである。したがって,「特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としない」場合とは,主に,自由競争が制限される結果となる場合を指していると理解される。 この点,ある標識について,表現に特徴がある,また,多数の表現方法がある場合には,その一つを一事業者に独占させても,事業者間の競争に与える制限的影響は少ない。この場合であれば,自由競争という公益を害する結果とはなり難い。 表現に特徴があるか否か,また,多数の表現方法があるか否かは,このように,その独占が自由競争に対して制限的か否かという視点において,公益への影響を推し量る一つの基準となり得る。特にイラストからなる商標に関しては,むしろこの基準以外に,独占適応性の存否を実質的に判断する指標は考え難い。表現に- 7 -特徴があるか否か,また,多数の表現方法があるか否かという基準が,イラストからなる商標に関する同項6号該当性を判断する上で,1つの有効な基準足り得ている。 特徴のある図形を一私人に独占させても,競業者は他の特徴を備えた図形によって同様の内容を表現することができる。この場合, る商標に関する同項6号該当性を判断する上で,1つの有効な基準足り得ている。 特徴のある図形を一私人に独占させても,競業者は他の特徴を備えた図形によって同様の内容を表現することができる。この場合,市場における自由競争は制限されない。女性が背中にスプレーを吹きかける内容を表現する仕方には,本願商標のほかにも,相当程度のバリエーションがある。その一つを原告が独占しても,他の事業者における標識選択の余地を狭めることにはならない。 したがって,本願商標は,特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としない商標には該当しない。 (3) 小括以上のように,本願商標は,現に一般的に使用されている商標ではなく,かつ,将来の一般化が推測し得る商標ではないから,一般的に使用される標章でなる商標には該当しない。また,その表現に特徴があり,かつ,同一内容の表現に種々バリエーションがあるから,特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としない商標にも該当しない。 したがって,本願商標は商標法3条1項6号には該当しない。 〔被告の主張〕 1 本願商標が商標法3条1項6号に該当することについて(1) 本願商標は,別紙の構成からなり,「スプレー式の薬剤」を指定商品とするものであるところ,右手にスプレーを持ち,首筋から背中にかけてスプレーを噴霧している人物の様子を表した図であると看者に容易に理解させるものである。 (2) 商品の包装用箱等に,商品を身体の特定の部位に使用している人物を示す図を用いることは,以下のとおり,広く一般的に行われている。 ア薬剤,化粧品,衛生用品等の分野について薬剤の分野や,薬剤と需要者の共通性の高い化粧品・衛生用品等の分野におい- 8 -て,商品の包装用箱等に,商品を身体の特定の部位に使用している人物を示す図を用い 化粧品,衛生用品等の分野について薬剤の分野や,薬剤と需要者の共通性の高い化粧品・衛生用品等の分野におい- 8 -て,商品の包装用箱等に,商品を身体の特定の部位に使用している人物を示す図を用いることは,広く一般的に行われている。 イ 「スプレー式の薬剤」及び「スプレー式の化粧品」について特に,本願指定商品の分野や,「スプレー式の化粧品」の分野においては,商品がスプレー式であることや,スプレーを噴霧する場所等を示すために,商品を片手に持ち,背中や顔等にスプレーを噴霧している人物を表す図や写真が,商品の包装用箱等に多用されている。 ウ取引の実情本願商標は,前記(1)のとおり看者に容易に理解させるものであるところ,前記アのとおり,薬剤の分野や,薬剤と需要者の共通性の高い化粧品・衛生用品等の分野において,その商品の使用方法を説明するために,商品の包装用箱等に,商品を身体の特定の部位に使用している人物を示す図を用いることは,広く一般的に行われている。そのことは,スプレー式の薬剤の分野や,スプレー式の化粧品の分野においても同様であり,これらの分野においては,前記イのとおり,商品がスプレー式であることや,スプレーを噴霧する場所等を示すために,商品を片手に持ち,背中や顔等にスプレーを噴霧している人物を表す図や写真を,商品の包装用箱等に多用している実情がある。 そして,スプレー式の薬剤やスプレー式の化粧品の分野に多用される前記イの図や写真と,本願商標は,「人物が」「商品を片手に持っている」「スプレーを噴霧している」「スプレーを顔や背中等身体の特定の部位に噴霧している」などを共通にしているから,本願商標がその指定商品に使用されたときは,これに接する需要者は,本願商標を,特定の出所を表示するものとして認識するというよりも,商品がスプレー式で の部位に噴霧している」などを共通にしているから,本願商標がその指定商品に使用されたときは,これに接する需要者は,本願商標を,特定の出所を表示するものとして認識するというよりも,商品がスプレー式であることや,スプレーを噴霧する場所等を示すための図・写真の一種であると認識するにとどまるというのが自然である。 そうすると,本願商標は,取引の実情を考慮すると,自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであって,需要者が何人かの業務に係る商- 9 -品であることを認識することができない商標といわざるを得ない。 エしたがって,本願商標は,商標法3条1項6号に該当する。 2 原告の主張に対する反論(1) 原告は,本願商標が,原告の商品「アクネージアニキビ薬」に現に使用され,一貫して包装用箱の正面中央という目立つ位置に表しているから,十分に自他商品を識別し,需要者にとって次回購入の目印足り得る旨主張する。 しかしながら,商標法3条1項6号は,本願商標に係る,現在における個別具体的な使用状況を条件として登録を認めるような規定とされていないから,同号該当性の判断の際,「本願商標をニキビ薬の包装用箱の正面中央に使用する」という,現在における,個別具体的な商標の使用状況は考慮する必要がない。 加えて,包装用箱に使用方法が図示されている例は,多数見受けられるから,本願商標は,指定商品の包装用箱に使用する場合であっても,需要者は,商品がスプレー式であることや,スプレーを噴霧する場所等を示すための図の一種であると認識するにとどまり,何人かの業務に係る商品であるか認識できない。 (2) 原告は,本願商標が,表現に特徴があり,女性が背中にスプレーを吹きかける内容を表現する仕方にはほかにも相当程度のバリエーションがあるから,その一つを原告 務に係る商品であるか認識できない。 (2) 原告は,本願商標が,表現に特徴があり,女性が背中にスプレーを吹きかける内容を表現する仕方にはほかにも相当程度のバリエーションがあるから,その一つを原告が独占しても,他の事業者における標識選択の余地を狭めることにはならないことなどを根拠に,商標法3条1項6号には該当しない旨主張する。 しかしながら,薬剤等の分野において,商品の包装用箱等に,商品を身体の特定の部位に使用している人物を示す図を用いることは,広く一般的に行われており,スプレー式の薬剤等の分野においては,商品がスプレー式であることや,スプレーを噴霧する場所等を示すために,商品を片手に持ち,背中や顔等にスプレーを噴霧している人物を表す図や写真が,商品の包装用箱等に多用されている実情がある。 そして,これらの多用される図や写真と,本願商標は,「人物が」「スプレーを噴霧している」「スプレーを顔や背中等身体の特定の部位に噴霧している」な- 10 -どを共通にしているから,本願商標がその指定商品に使用されたときは,これに接する需要者は,本願商標を,特定の出所を表示するものとして認識するというよりも,本願商標もまた,商品がスプレー式であることや,スプレーを噴霧する場所等を示すための図・写真の一種であると認識するにとどまる。 第4 当裁判所の判断 1 本願商標の商標法3条1項6号該当性(1) 商標法3条1項6号の趣旨商標法は,「商標を保護することにより,商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り,もつて産業の発達に寄与し,あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」ものであるところ(同法1条),商標の本質は,自己の業務に係る商品又は役務と識別するための標識として機能することにあり,この自他商品の識別標識としての機能から,出 の利益を保護することを目的とする」ものであるところ(同法1条),商標の本質は,自己の業務に係る商品又は役務と識別するための標識として機能することにあり,この自他商品の識別標識としての機能から,出所表示機能,品質保証機能及び広告宣伝機能等が生じるものである。同法3条1項6号が,「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を商標登録の要件を欠くと規定するのは,同項1号ないし5号に例示されるような,識別力のない商標は,特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって,自他商品の識別力を欠くために,商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである。 (2) 本願商標の構成本願商標は,別紙のとおりであり,右手にスプレーを持ち,首筋から背中にかけてスプレーを噴霧して,薬剤を使用している人物の様子を表した図形からなるものである。 なお,本願商標は,女性の背中に生じるニキビ専用の治療薬である原告の商品「アクネージアニキビ薬」の包装用箱に使用されている(甲14,17)。 (3) 本願指定商品に係る取引の実情アスプレー式の薬剤や化粧品等において,商品の用途や使用方法等を示す図- 11 -が商品の包装用箱や容器に用いられているものが存在する。その図の多くは,手にスプレーを持ち,噴霧する身体の部位にスプレーを噴霧している人物の様子が表されているものである(甲12の2,乙1~3,5,6,31~33,36~43(以下,証拠には,特に断らない限り,枝番を含む。))。 その中には,背中に生じるニキビ用の,スプレー式の薬用化粧品について,手にスプレーを持ち,首筋から背中にかけてスプレーを噴霧して,薬剤を使用している人物の様子を表 断らない限り,枝番を含む。))。 その中には,背中に生じるニキビ用の,スプレー式の薬用化粧品について,手にスプレーを持ち,首筋から背中にかけてスプレーを噴霧して,薬剤を使用している人物の様子を表した図形からなるものが商品の包装用箱に付されているものも存在する(乙31,32)。 イスプレー式の薬剤や化粧品等において,その商品の使用方法や使用部位等を説明するため,添付文書や商品のウェブサイト等にこれを使用している様子が図示されているものが一般的に存在する(甲12の2,乙1~15,31~43)。 なお,スプレー式のものに限らず,薬剤又は化粧品・衛生用品等の分野において,その商品の用途や使用方法等を説明するために,商品の包装用箱やウェブサイト等に,商品を身体の特定の部位に使用している人物を示す図が用いられている(乙16~30)。 ウスプレー,肩,薬及びイラストで画像検索をすると,100以上の画像やイラストが表示される(甲4)。 (4) 商標法3条1項6号該当性ア本願商標は,指定商品「スプレー式の薬剤」において,右手にスプレーを持ち,首筋から背中にかけてスプレーを噴霧して,薬剤を使用している人物の様子を表した図形である。 前記(3)認定のとおり,薬剤及び薬剤と需要者の共通性が高い化粧品や衛生用品等の分野において,その商品の用途や使用方法等を説明するために,商品の包装用箱等に商品を身体の特定の部位に使用している人物を示す図を用いることは,広く一般的に行われており,このことはスプレー式の商品についても同様である。 - 12 -そうすると,本願商標をスプレー式の薬剤に使用する場合に,商品の用途や使用方法等を説明するための記述的な表示と理解されることがあり得るから,そもそも,本願商標が自他商品の識別標識として機能するとは限 そうすると,本願商標をスプレー式の薬剤に使用する場合に,商品の用途や使用方法等を説明するための記述的な表示と理解されることがあり得るから,そもそも,本願商標が自他商品の識別標識として機能するとは限らない。 イスプレー式の薬剤を使用している様子を図示する方法は,多様にあり,人物の描写,背中等身体の部位の見せ方,スプレーの噴射方法等において差異があり得るものの,現に,背中に生じるニキビ用の薬用化粧品について,手にスプレーを持ち,首筋から背中にかけてスプレーを噴霧して,薬剤を使用している人物の様子を表した図形からなるものが存在することは,前記(3)ア認定のとおりである。 そのうち,背中に生じるニキビ用の薬用化粧品である「アクネスラボボディローション」の包装用箱に付された図形は,本願商標と同様に,人物の顔の表情は見えず,胸から上の上半身を背中側から表し,その首筋から背中にかけて手に持ったスプレーを噴霧する様子が描かれており,スプレーを持つ手が右手か左手かが異なり,顔の一部が切れている等の相違はあるものの,本願商標に類似するものである(乙31)。 また,背中に生じるニキビ用の薬用化粧品である「プロフェール薬用ゴールデンスムーサー」の容器に付された図形は,人物の頭部の下方部分から,腰より上の上半身を,背中側から表し,その肩から下の背中にかけて手に持ったスプレーを噴霧する様子が描かれており,スプレーの持ち方や表現された身体の部位等が異なるものの,全体として,本願商標に類似するものである(乙32)。 ウ以上のように,スプレー式の薬剤及び薬剤と需要者の共通性が高い化粧品や衛生用品等の分野において,その商品の用途や使用方法等を説明するために,商品の包装用箱等に,商品を身体の特定の部位に使用している人物を示す図を用いることは,広く一般的に行わ 者の共通性が高い化粧品や衛生用品等の分野において,その商品の用途や使用方法等を説明するために,商品の包装用箱等に,商品を身体の特定の部位に使用している人物を示す図を用いることは,広く一般的に行われていること,上記のような図は,現に,背中に生じるニキビ用の薬用化粧品について,本願商標に類似の図形からなるものが存在するなど,一般的に使用される標章であることに照らすと,本願商標は,「ス- 13 -プレー式の薬剤」について特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,自他商品の識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであるといわざるを得ない。 (5) 原告の主張についてア原告は,商品の包装用箱における図示の例が一般的であるとの事実は認定し得ないと主張する。 しかしながら,包装用箱において商品の用途や使用方法等を図示する例が多数存在することは,前記(3)アのとおりであるから,原告の上記主張は失当である。 イ原告は,商標法3条1項各号の適用に関しては,審査対象が自他商品の識別標識として使用されることを前提に判断すべきであり,包装用箱の正面中央という目立つ位置に表す場合であれば,自他商品識別機能を有する旨主張する。 しかしながら,商品の包装用箱に商品の用途や使用方法等が図示されている例も多数存在するから,本願商標が指定商品の包装用箱に使用される場合であっても,需要者は,商品がスプレー式であることや,スプレーを噴霧する身体の部位等を示すための図の一種であると認識するにとどまり,何人かの業務に係る商品であるか認識することができないといわざるを得ない。また,本願商標が上記のような方法以外により使用されることもあり得るものであり,原告の上記主張は,採用することができない。 ウ原告は,本願商標にユニ か認識することができないといわざるを得ない。また,本願商標が上記のような方法以外により使用されることもあり得るものであり,原告の上記主張は,採用することができない。 ウ原告は,本願商標にユニークな特徴があり,女性が背中にスプレーを吹きかける内容を表現する仕方には,本願商標のほかにも相当程度のバリエーションがあるから,その一つを原告が独占しても,他の事業者における標識選択の余地を狭めることにはならない旨主張する。 なるほど,スプレー式の薬剤を使用している様子を図示する方法は,多様にあり,人物の描写,背中の見せ方,スプレーの噴射方法等において差異があり得るものである。しかしながら,現に,背中に生じるニキビ用の薬用化粧品について,手にスプレーを持ち,首筋から背中にかけてスプレーを噴霧して,薬剤を使用し- 14 -ている人物の様子を表した図形からなるものが存在することは,前記(3)及び(4)のとおりであり,原告の上記主張も採用することができない。 (6) 小括よって,本願商標は,「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」として,商標法3条1項6号に該当する。 2 結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由は理由がなく,原告の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官土肥章大 裁判官髙部眞規子 裁判官齋藤巌 - 15 -(別紙) 本願商標 本願商標

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