平成13(わ)803 強姦致傷

裁判年月日・裁判所
平成14年11月22日 神戸地方裁判所
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判決文本文3,993 文字)

判決平成14年11月22日神戸地方裁判所平成13年(わ)第803号強姦致傷被告事件 主文 被告人を懲役3年6月に処する。 未決勾留日数中370日をその刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は,かつてV(当時30歳)と交際し,その交際が破綻した後も自己を嫌悪する同女につきまとっていたものであるが,同女が自己のつきまといから逃れようとして知人から紹介された男性を偽の結婚相手に仕立て,これを同女から紹介されたことに立腹するとともに,同女に未練を募らせ,同女を強いて姦淫しようと企て,平成13年7月4日午後11時ころ,神戸市中央区港島a丁目付近において,自己が運転する普通乗用自動車に言葉巧みに同女を乗車させて走行中,同女に対し,「おまえ,殺したろか。海に沈めたるぞ。」などと申し向け,同所付近の路上に同車を停車させ,同車内において,同女に対し,その左頬部を右の平手で殴打し,助手席に乗車していた同女に覆い被さり,「今から強姦したるから。」,「さっきの男に電話をして,本当の男やったら来るはずやから,電話せえ。そういう状況を電話で聞いてもらえ。」などと語気鋭く申し向け,抵抗する同女の腹部付近を3回手拳で殴打し,同女の首を両手で絞め,同女の両手首をタオルで縛るなどの暴行,脅迫を加え,同女の反抗を著しく困難にし,強いて同女を姦淫し,その際,上記暴行により,同女に約2週間の加療を必要とする両膝・両前腕挫傷等の傷害を負わせた。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明) 1 弁護人は,被告人と被害者の本件犯行に至るまでの交際経緯等から,被告人の本件暴行,脅迫は強姦罪の予定する反抗を著しく困難にする程度の暴行, わせた。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明) 1 弁護人は,被告人と被害者の本件犯行に至るまでの交際経緯等から,被告人の本件暴行,脅迫は強姦罪の予定する反抗を著しく困難にする程度の暴行,脅迫には該当しないし,被告人には強姦の故意がない,被害者の被った傷害が本件強姦行為及びそれに密接関連する行為の機会に生じたことの立証も不十分である,さらに,本件傷害の程度は強姦致傷罪の予定する傷害には該当しない旨主張し,被告人も,具体的な暴行,脅迫態様及び強姦の故意について争う供述をするので,以下検討する。 2 Vの公判供述及び被告人供述の信用性について(1) 証人Vは,公判廷において,本件被害の状況につき,判示事実に沿う供述をしている。 そこで,同供述の信用性について検討すると,Vは,被告人との交際の経緯から,暴行,脅迫態様,姦淫行為の内容等,一般的に女性が相当な羞恥心を抱くような事項について,極めて具体的かつ詳細に供述し,その内容も自然であること,本件犯行によって被った傷害結果について,国民健康保険診療録の写し(検察官請求証拠番号56)及び証人Wの公判供述から認められる状況とも整合的であることに加え,弁護人の反対尋問にも全く崩れていないことなどから信用できる。 (2) これに対し,被告人は,タオルでVの手首を縛ったのではなく巻いただけであるとか,Vが腹が痛いと言っていたからVの腹を3回押さえたのであって殴ってはいないとか,「海に沈めたるぞ。殺したろか。」とは言っていないなどと弁解し,暴行,脅迫内容を部分的に否認するが,被告人が自認する暴行,脅迫部分を含む本件犯行時の状況に照らすと,その弁解内容は曖昧かつ不自然,不合理であって,前記V証人の公判供述と対比して到底信用できない。 3 検討そうすると,上記2・(1)で 認する暴行,脅迫部分を含む本件犯行時の状況に照らすと,その弁解内容は曖昧かつ不自然,不合理であって,前記V証人の公判供述と対比して到底信用できない。 3 検討そうすると,上記2・(1)でみたV証人の公判供述を含む関係証拠を総合すると,判示のとおりの暴行,脅迫行為が認められ,被告人に本件犯行に関する故意があったこと,被害者が傷害を負ったこともいずれも明らかといえる。 したがって,判示犯罪事実はこれを優に認定することができる。 4 弁護人の主張について弁護人は,被告人と被害者は5年間交際を続け,一時は被害者宅で同棲生活を送っていたものであり,強姦罪の予定する反抗を著しく困難にする程度の判断に当たっては,こうした被告人と被害者の本件犯行に至るまでの交際経緯等をふまえた考察が必要であるというのである。しかしながら,関係証拠によると,本件当時には被告人と被害者との関係は既にほぼ破綻した状態にあり,被害者は,被告人との交際を嫌悪していたことが認められ,それまでの被告人と被害者の関係がどのようなものであったにせよ,判示の暴行,脅迫の態様に照らすと,それが,客観的に,社会通念上女性の反抗を著しく困難にする程度のものであったことは明らかであるから,強姦罪の暴行,脅迫に該当するというべきである。 次に,弁護人の,被告人には故意がなかった旨の主張は,要するに,被告人は無理矢理でも被害者を姦淫すれば被害者と仲直りできると思っていたのであり,被告人の愛情の表れであるから,強姦の故意内容にそぐわないというものと解されるが,被告人の意図がそのようなものであったとしても,被告人において,被害者が被告人との性行為を拒否していることを認識していた以上,強姦の故意に欠けるところはない。 また,致傷の点については,被告人が加えた個々の暴 ようなものであったとしても,被告人において,被害者が被告人との性行為を拒否していることを認識していた以上,強姦の故意に欠けるところはない。 また,致傷の点については,被告人が加えた個々の暴行と被害者が受けた個々の傷害との結びつきや個々の傷害の発生機序まで立証されなければならないものではないのであって,V証人の公判供述や国民健康保険診療録の写しを含む関係証拠を総合すれば,被害者の被った傷害が本件強姦行為及びそれに密接関連する行為の機会に生じたことは優に立証されたものといえる。 そして,本件傷害の程度は,約2週間の加療を必要とする両膝・両前腕挫傷等というのであるから,日常生活上看過されるようなものではなく,これが強姦致傷罪における傷害に該当することも明らかである。 よって,弁護人の主張はいずれも採用の限りでない。 (法令の適用)被告人の判示所為は刑法181条(177条前段)に該当するところ,所定刑中有期懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役3年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中370日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由) 1 事案の概要本件は,被告人が,かつての交際相手であった被害者から被告人と別れるために偽の婚約者を紹介されたことに立腹するとともに,同女に対する未練を募らせ,自動車内で同女に対して暴行,脅迫を加え,強いて同女を姦淫し,その際,同女に対し約2週間の加療を必要とする両膝・両前腕挫傷等の傷害を負わせたという強姦致傷の事案である。 2 量刑上考慮した事情本件犯行動機及び本件犯行に至る経緯は判示のとおりであり,いずれも被害者のことを全く考慮しない極めて身勝手かつ自己中心的なものであり, たという強姦致傷の事案である。 2 量刑上考慮した事情本件犯行動機及び本件犯行に至る経緯は判示のとおりであり,いずれも被害者のことを全く考慮しない極めて身勝手かつ自己中心的なものであり,何ら酌むべきものはない。 そして,被告人は,抵抗する被害者に対して判示のとおり相当執拗,陰湿かつ強度な暴行,脅迫を加えたものである上,被害者の陰毛を剃ったり,自動車内で放尿させるなど,被害者に対して多大な屈辱感や羞恥心を抱かせるような行為に及んでいること,姦淫行為が既遂であることなどを併せ考えると,本件犯行態様はかなり悪質であるといわなければならない。 さらに,被害者は,本件犯行により,約2週間の加療を必要とする両膝・両前腕挫傷等の傷害を負ったもので,その結果も軽視できない。 加えて,被害者には特段の落ち度があるとはいえないこと,被告人は,本件犯行後,切り裂いた被害者のショーツ等を海中に投棄するなど,証拠隠滅とも評価できる行為に及んでいること,被告人は,当公判廷において,本件は被害者と仲直りするために行ったもので強姦罪に問擬されるものではないと述べるなど,不合理な弁解に終始して反省の情に乏しいこと,被害者の被害感情にはなお厳しいものがあること,被告人には古いものではあるが,本件と同種の強姦致傷,強姦の前科1犯を含む懲役前科3犯があることなどの事情に照らすと,被告人の刑事責任は相当重いといわざるを得ない。 しかしながら,他方,本件は,かつて情交関係のあった被害者に対する姦淫行為であり,行きずりの女性に対する強姦とは事案を異にすること,被告人は,当公判廷において本件被害者には今後一切接触しないと述べていること,被害者に対して解決金として200万円を提供し,その受領を求める調停を申し立てるなど一応被害弁償の努力をしてい すること,被告人は,当公判廷において本件被害者には今後一切接触しないと述べていること,被害者に対して解決金として200万円を提供し,その受領を求める調停を申し立てるなど一応被害弁償の努力をしていると認められることなど被告人にとって有利な事情も認められる。 3 結論そこで,以上諸般の事情を総合して考慮し,被告人に対して,主文の刑を量定した次第である。 (求刑・懲役6年)平成14年11月22日神戸地方裁判所第4刑事部裁判長裁判官笹野明義裁判官浦島高広裁判官谷口吉伸

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