平成17(行ウ)620等 建築確認処分取消請求事件(甲事件),訴えの追加的併合申立事件(乙事件)

裁判年月日・裁判所
平成19年1月16日 東京地方裁判所 警察関係
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判決文本文28,935 文字)

主文 本件訴えのうち,甲事件に係る部分を,いずれも却下する。 その余の訴えに係る原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 甲事件(1)被告が株式会社P1に対して平成17年9月30日付けでした建築確認変更処分を取り消す。 (2)被告が株式会社P1に対して平成17年11月16日付けでした建築確認変更処分を取り消す。 乙事件被告が株式会社P1に対して平成18年4月5日付けでした建築確認変更処分を取り消す。 第2事案の概要本件は,被告が株式会社P1(以下「P1」という。)に対して,①平成17年7月20日付けで別紙物件目録記載の建築物(以下,下記②ないし④による変更の前後を問わず「本件建築物」という。)についてした建築基準法6条の2第1項に基づく確認の処分(以下「本件確認処分」という。),②同年9月30日付けで本件確認処分に係る計画の変更についてした同項に基づく確認の処分(以下「本件変更処分1」という。),③同年11月16日付けで本件変更処分1に係る計画の変更についてした同項に基づく確認の処分(以下「本 件変更処分2」という。)及び④同18年4月5日付けで本件変更処分2に係る計画の変更についてした同項に基づく確認の処分(以下「本件変更処分3」といい,上記②及び③の各処分と併せて「本件各変更処分」という。)のうち,本件各変更処分について,原告らが,被告に対し,同法6条1項にいう建築基準法令の規定に違反する違法事由があるなどと主張して,その取消しを求める事案である。 前提事実本件の前提となる事実は,次のとおりである。証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実等は,その旨付記した。 (1)当事者等ア原告らは,本件建築物の建設予定地(以下 。 前提事実本件の前提となる事実は,次のとおりである。証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実等は,その旨付記した。 (1)当事者等ア原告らは,本件建築物の建設予定地(以下「本件敷地」という。)の周辺である肩書地にそれぞれ居住する者である。原告らの居住地と本件敷地との位置関係は別紙図面1のとおりである。(甲4)イ被告は,建築基準法77条の18から77条の21までの規定の定めるところにより指定を受けた者(以下「指定確認検査機関」という。)である(弁論の全趣旨)。 (2)本件確認処分及び本件各変更処分並びに本件訴訟の経緯等ア本件確認処分P1は,被告に対し,平成17年7月1日,建築基準法6条の2第1項の確認の申請(以下「本件確認申請」という。)をし,被告は,P1に対して,同月20日付けで本件確認処分(確認番号第ERIXXXXXXXX号)をした(甲1の1,甲7,乙2の1ないし6)。 イ本件確認処分に係る審査請求原告らを含む本件敷地の周辺住民16名は,東京都建築審査会に対し,平成17年8月5日,本件確認処分についての審査請求(以下「本件審査請求」という。)をした。 原告らを含む審査請求人らが本件審査請求に当たって主張した本件確認処分の違法事由は,①本件建築物には,からぼり(以下「本件からぼり」という。)が設置されているところ,本件確認処分では本件からぼりの周壁の上端をもって本件建築物が周囲の地面と接する位置であるとされているが,本件からぼりの規模は,建築物と一体となったからぼりと判断できる範囲を超えているから,本件からぼりの底部をもって周囲の地面と接する位置とされるべきであり,そうすると,本件確認処分は,第1種低層住居専用地域内における建築物の高さの限度(建築基準法55条),日影による中高層の建築物の高 件からぼりの底部をもって周囲の地面と接する位置とされるべきであり,そうすると,本件確認処分は,第1種低層住居専用地域内における建築物の高さの限度(建築基準法55条),日影による中高層の建築物の高さの制限(同法56条の2)及び高度地区内の建築物の高さの制限(同法58条)等の各規定に違反すること,②本件敷地の東側には,盛土をした部分(以下「本件盛土部分」という。)があるところ,本件確認処分ではその上部をもって周囲の地面と接する位置とされているが,本件盛土部分の規模などからすると,本件盛土部分の上部をその位置とすべきではないこと,及び③本件確認処分では,本件敷地を領域Aと領域Bに分け,それぞれに平均地盤面が算出され,領域Bには本件建築物の高層部の一部(バルコニー外壁部分)が所在するとして,高度地区内の建築物の高さの制限に違反しないとされているところ,建築物のごく一部だけを異なる領域に設定することは違法であることなどである。 なお,本件敷地のうち,①本件建築物の低層部が所在する部分は第1種低層住居専用地域内であり,建築物の高さの限度は10mとされており(建築基準法55条1項参照),②本件建築物の高層部が所在する部分は第1種住居地域内で第2種高度地区に指定されており,建築物の高さが45mに制限されている(同法58条参照)。 (甲7)ウ本件変更処分1P1は,被告に対し,平成17年9月15日,本件確認処分に係る計画の変更について,建築基準法6条の2第1項に基づく申請(以下「本件変更申請1」という。)をし,被告は,P1に対して,同月30日付けで本件変更処分1(確認番号第ERIYYYYYYYY号)をした。上記計画の変更の概要は,本件建築物について,①地下1階ロビーを住戸に変更し,ドライエリアを設置すること,②地下外部階段の位置を変更すること 件変更処分1(確認番号第ERIYYYYYYYY号)をした。上記計画の変更の概要は,本件建築物について,①地下1階ロビーを住戸に変更し,ドライエリアを設置すること,②地下外部階段の位置を変更すること,③低層部地下駐車場から高層部エレベーターへの通路を新設すること及び④住戸の間取りを変更することなどであり,その概略図は,別紙図面2の1ないし6記載の「計画変更1」として記述されているとおりである。(甲6,乙1,乙3の1ないし6,弁論の全趣旨)エ本件変更処分2P1は,被告に対し,平成17年11月7日,本件変更処分1に係る計画の変更について,建築基準法6条の2第1項に基づく申請(以下「本件変更申請2」という。)をし,被告は,P1に対して,同月16日付けで本件変更処分2(確認番号第ERIZZZZZZZZ号)をした。上記計 画の変更の概要は,①低層部の地上部分階数を3から2へ変更し,階高を上げること,②高層部1階の石庭(ピロティ)部分を住戸に変更すること,③高層部1階の吹き抜け部分を住戸に変更すること及び④住戸の間取りを変更することなどであり,その概略図は,別紙図面2の1ないし6記載の「計画変更2」として記述されているとおりである。(甲1の2,乙1,乙4の1ないし6,弁論の全趣旨)オ本件審査請求に対する裁決東京都建築審査会は,平成17年11月21日,本件審査請求に対し,本件確認処分を取り消すとの裁決(以下「本件裁決」という。)をした。 本件裁決に当たり,同審査会は,原告らを含む審査請求人が主張した違法事由は存在しないと判断したものの,本件建築物の低層部について,世田谷区斜面地における建築物の制限に関する条例(平成18年世田谷区条例第65号による改正前のもの。以下「世田谷区斜面地条例」という。)に違反する可能性があるとして,職権によりこ の低層部について,世田谷区斜面地における建築物の制限に関する条例(平成18年世田谷区条例第65号による改正前のもの。以下「世田谷区斜面地条例」という。)に違反する可能性があるとして,職権によりこれを検討し,世田谷区斜面地条例2条2項,3条,4条を適用した結果,本件建築物の低層部の階数は4以下でなければならないのに,本件確認処分では,同低層部の階数が5(地上3階及び地下2階)とされており,この点で本件確認処分は世田谷区斜面地条例に違反すると判断した。なお,世田谷区斜面地条例の規定の一部は,別紙「関係法令の規定」記載1のとおりである。(甲7)カ甲事件の訴えの提起原告らは,平成17年12月26日,本件変更処分1及び本件変更処分2の取消しを求めて,甲事件の訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。 キ本件変更処分3P1は,被告に対し,平成18年3月8日,本件変更処分2に係る計画の変更について,建築基準法6条の2第1項に基づく申請(以下「本件変更申請3」といい,本件変更申請1及び本件変更申請2と併せて「本件各変更申請」という。)をし,被告は,P1に対して,同年4月5日付けで本件変更処分3(確認番号第ERIxxxxxxxx号)をした。上記計画の変更の概要は,①地下1階住戸をロビーに戻し,ドライエリアの形状を変更すること及び②住戸の間取りを変更することなどであり,その概略図は,別紙図面2の1ないし6記載の「計画変更3」として記述されているとおりである。また,本件からぼりの概略図は,別紙図面3の1及び2記載のとおりである。 なお,建築基準法別表第4「日影による中高層の建築物の制限(第56条,第56条の2関係)」は,「この表において,平均地盤面からの高さとは,当該建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面からの高さをいうもの 4「日影による中高層の建築物の制限(第56条,第56条の2関係)」は,「この表において,平均地盤面からの高さとは,当該建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面からの高さをいうものする。」と規定するところ,本件建築物については,本件建築物の低層部西側部分につき設計GL(設計GLは10.50mである。)+2.000mを最高点とし,本件建築物の高層部南側部分につき設計GL-2.730mを最低点として,平均地盤面設計GL+0.249mが算出されている。 また,建築基準法施行令2条1項6号は,建築物の高さは地盤面からの高さによると規定し,同条2項は,同条1項6号の「地盤面」とは建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい,その接す る位置の高低差が3mを超える場合においては,その高低差3m以内ごとの平均の高さにおける水平面をいうと規定するところ,本件建築物については,上記設計GL+2.000mを最高点とし,設計GL-1.000mまでの部分を領域Aとして領域別平均地盤面設計GL+0.375mが算出され,それより低い部分(上記設計GL-2.730mまでの部分)を領域Bとして領域別平均地盤面設計GL-1.663mが算出されている。 上記の建築基準法別表第4所定の平均地盤面及び建築基準法施行令2条2項所定の領域別平均地盤面の算出に当たっては,①本件からぼりの周壁の上端及び②本件盛土部分の上部をもって,本件建築物が周囲の地面と接する位置とされている。 本件変更処分3に係る本件建築物の断面図の一例は,別紙図面4のとおりである。 (乙14ないし16,乙21ないし26,乙30,弁論の全趣旨)ク乙事件の訴えの併合提起原告らは,平成18年6月16日,本件変更処分3の取消しを求めて,乙事件の訴えの追加的併合の申立てをした( 。 (乙14ないし16,乙21ないし26,乙30,弁論の全趣旨)ク乙事件の訴えの併合提起原告らは,平成18年6月16日,本件変更処分3の取消しを求めて,乙事件の訴えの追加的併合の申立てをした(当裁判所に顕著な事実)。 争点 (1)本案前の争点ア審査請求前置建築基準法96条により,本件各変更処分の取消しの訴えは,審査請求に対する建築審査会の裁決を経た後でなければ提起することができないと されるところ,同裁決を経ずに提起された甲事件及び乙事件の各訴えは,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)8条2項3号所定の「正当な理由」があるとして適法であるか否か(争点(1)ア)。 イ原告適格原告らは,本件各変更処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)であるか否か(争点(1)イ)。 (2)本件審査請求及び本件裁決に関連する争点ア本件確認処分が本件裁決で取り消された後に,被告が改めて本件確認申請に対する処分をしなかった違法があるため(行政不服審査法43条2項参照),本件各変更処分は取り消されるべきであるか否か(争点(2)ア)。 イ本件変更申請1及び本件変更申請2は本件審査請求の審理中に,本件変更申請3は本件訴訟の係属中にそれぞれされているところ,このような状況の下で本件各変更申請をしたことが違法であるか否か(争点(2)イ)。 ウ本件確認処分が本件裁決で取り消された結果,本件各変更処分も当然に取り消されるべきであるか否か(争点(2)ウ)。 (3)本件各変更処分の違法性ア本件各変更処分の内容等に照らし,本件各変更申請は新たな建築確認申請としてされるべきであったのに,計画の変更の申請としてされた違法があるか否か(争点(3)ア)。 イ本件からぼりの底部をもって,本件建築物が周囲の地面と接する位置とすべ 変更申請は新たな建築確認申請としてされるべきであったのに,計画の変更の申請としてされた違法があるか否か(争点(3)ア)。 イ本件からぼりの底部をもって,本件建築物が周囲の地面と接する位置とすべきか否か(争点(3)イ)。 ウ本件からぼりの周壁の上端をもって,本件建築物が周囲の地面と接する 位置とするとしても,本件盛土部分の上部をもって,周囲の地面と接する位置とすべきか否か(争点(3)ウ)。 エ本件敷地を領域Aと領域Bに分けたことは違法か否か(争点(3)エ)。 当事者の主張の要旨(1)本案前の争点について(原告らの主張)ア争点(1)ア(審査請求前置)について(ア)そもそも,建築基準法96条が定める審査請求前置主義は,建築確認処分の当否や適否について,建築等の専門家で構成される建築審査会による審査手続を制度化し,訴え提起前の簡易及び迅速な救済を図り,裁判所の負担を軽減することなどを目的とするものである。 (イ)本件裁決では,世田谷区斜面地条例に違反するとして,職権で本件確認処分が取り消されているが,原告らを含む審査請求人が本件審査請求に当たり主張していた本件確認処分の違法事由と,原告らが本件訴訟で主張している本件各変更処分の違法事由とは共通している。本件確認処分と本件各変更処分とは一体性を有するものといえる。 東京都建築審査会は,上記審査請求人の主張を検討した上で,これらを採用しなかったのであり,改めて同審査会に本件各変更処分の違法事由を審査させる必要性は乏しく,また,本件裁決と異なる理由の裁決がされることを期待することもできない。 また,建築基準法94条2項は,審査請求に対する裁決は審査請求を受理した日から1か月以内にしなければならないと規定するところ,本 件裁決がされたのは,本件審査請求がされた日から3か月以上 ない。 また,建築基準法94条2項は,審査請求に対する裁決は審査請求を受理した日から1か月以内にしなければならないと規定するところ,本 件裁決がされたのは,本件審査請求がされた日から3か月以上経過した後であり,本件各変更処分について更に審査請求をするとなると,そのうちに本件各変更処分に係る工事が完成し,本件各変更処分の取消しの訴えの利益が失われるおそれもある。 (ウ)このような事情に照らせば,甲事件及び乙事件の各訴えの提起については,行訴法8条2項3号所定の「正当な理由」がある。 イ争点(1)イ(原告適格)について原告らは,本件建築物による日影の影響が及ぶ範囲内に居住しており,本件建築物に日影規制違反又は高さ制限違反が存在した場合,それを解消することで,直接日照時間の回復及び圧迫感の軽減等という被害回復が得られることになる。このような原告らについては,本件各変更処分により,建築基準法が直接に保護している利益を侵害されていることが明らかである。 (被告の主張)ア争点(1)ア(審査請求前置)について(ア)原告らは本件各変更処分について審査請求をしていない。 建築確認処分と建築確認変更処分との関係につき,本件変更処分1がされた後も本件確認処分が効力を失わずに存在していたものとしても,本件確認処分が本件裁決により取り消され,効力を失った後は,本件変更処分1は実質的には建築確認変更処分ではなく新たな建築確認処分となる。この点は別としても,本件変更処分2に係る計画の変更の内容は,改めて東京都建築審査会の専門技術的審理判断を経ることを必要とする 程度に及ぶものであるから,裁決を経た後でなければ取消しの訴えを提起できないものであって,甲事件及び乙事件の各訴えの提起は不適法である。 (イ)なお,本件裁決では,世田谷区斜面地条例違反 る 程度に及ぶものであるから,裁決を経た後でなければ取消しの訴えを提起できないものであって,甲事件及び乙事件の各訴えの提起は不適法である。 (イ)なお,本件裁決では,世田谷区斜面地条例違反を理由として本件確認処分が取り消されているが,この点の違法事由は既に本件変更処分2により是正されていたものである。 被告は,本件変更処分1及び本件変更処分2を行うに際し,東京都建築審査会の事務局にその旨の連絡をしていたが,同事務局がその旨を同審査会に伝えなかったためか,本件確認処分について本件裁決がされた。 イ争点(1)イ(原告適格)について原告らは,本件建築物によって取消訴訟における受忍限度を超える被害を受けないことが明らかである。それどころか,本件建築物の建築工事に伴って,原告らの居宅の周辺の斜面や道路が格段に整備され,従前と比較してはるかに安全な状況に置かれるのであるから,原告らは甲事件及び乙事件の各訴えにつき原告適格を有しないものと解すべきである。 (2)本件審査請求及び本件裁決に関連する争点について(原告らの主張)ア争点(2)ア(本件確認処分が本件裁決で取り消された後に,被告が改めて本件確認申請に対する処分をしなかったこと)について(ア)行政不服審査法43条2項は,「申請に基づいてした処分が手続の違法若しくは不当を理由として裁決で取り消され,又は申請を却下し若しくは棄却した処分が裁決で取り消されたときは,処分庁は,裁決の趣 旨に従い,改めて申請に対する処分をしなければならない。」と規定しているところ,本件確認処分が本件裁決で取り消されたのであるから,被告は,本件確認申請に対し改めて処分をしなければならなかったにもかかわらず,同処分をしなかった。 したがって,本件各変更処分は手続的に違法な処分である。 (イ)なお,行政 り消されたのであるから,被告は,本件確認申請に対し改めて処分をしなければならなかったにもかかわらず,同処分をしなかった。 したがって,本件各変更処分は手続的に違法な処分である。 (イ)なお,行政不服審査法43条2項は,行政処分が手続の違法を理由として取り消されたときについての規定であるところ,本件確認処分は実体の違法を理由として取り消されているが,手続の違法でさえ,改めて申請に対する処分をしなければならないのであるならば,ましてや実体の違法の是正につき,簡易な建築確認変更処分で足りるとするのは,本末転倒である。 イ争点(2)イ(審査請求中及び訴訟係属中に本件各変更申請がされたこと)について(ア)建築基準法96条が審査請求前置主義を採用しているのは,建築確認処分が,①大量的に行われる処分であって,裁決により行政の統一を図る必要があり,②専門技術的性質を有する処分であることから,まず行政庁に対しこれを是正すべきか否かに関して再考の機会を与えるべき必要があることによる。 とするならば,建築確認処分の適法性に疑義が生じ,審査請求の対象となっているときに,審査庁の判断を待たずに建築確認変更の申請をすることは,その適法性に疑義が生じている部分について,①審査庁による判断の機会を回避することになり,裁決により行政の統一を図ること を不可能とし,②今後の同種の判断に際して,先例的判断を明示することにより同種の誤りの発生を防止する機会を奪うことにもなりかねず,審査請求の趣旨を没却するものであって,認められるものではない。 (イ)そもそも,違法建築物の出現を未然に防止するために設けられたのが建築確認制度であり,計画の変更は,その基礎となる当初の計画建築物が適法である場合に問題となるのである。言い換えれば,適法建築物から適法建築物への計画変 物の出現を未然に防止するために設けられたのが建築確認制度であり,計画の変更は,その基礎となる当初の計画建築物が適法である場合に問題となるのである。言い換えれば,適法建築物から適法建築物への計画変更手段として建築確認変更制度が機能するのである。 本件のように違法建築物の疑いが生じ,建築確認処分につき審査請求がされている場合にも建築確認変更処分を認めるならば,違法建築物を同処分によって是正することも認めることになるが,これは建築確認変更制度が本来予定していた機能ではない。これを安易に認めるならば,取りあえず建築確認の申請をして,適法性につき審査請求で問題とされたら計画の変更をすれば足りるという風潮も生まれかねず,違法建築物の出現を未然に防止するという建築確認制度の趣旨を没却することになる。 (ウ)指定確認検査機関制度により,建築基準法令の規定に対する甘い解釈が横行する中,建築確認制度に本来の意味を見出すためにも,審査請求中又は訴訟係属中に審査又は訴訟の対象物の自由な変更を認めるべきではない。 (エ)したがって,本件各変更処分は手続的に違法であり,取り消されるべきである。 ウ争点(2)ウ(本件確認処分が本件裁決で取り消された結果,本件各変更処分も当然に取り消されるべきであるか)について建築確認変更処分は,既にされた建築確認処分を前提に,変更された部分の計画の建築基準法令の規定への適合性を確認し,従前の建築確認処分と一体として,当該建築物に係る変更後の計画の適合性を確認する効果を有する。 したがって,ある建築計画の建築基準法令の規定への適合性を確認した建築確認処分が違法なものであった場合には,その違法原因を構成する事実を前提とする建築確認変更処分も,結局,違法であることを免れない。 また,建築確認処分が適法であることを前提に建 の適合性を確認した建築確認処分が違法なものであった場合には,その違法原因を構成する事実を前提とする建築確認変更処分も,結局,違法であることを免れない。 また,建築確認処分が適法であることを前提に建築確認変更処分が認められるのであるならば,建築確認処分が取り消されると,同処分時にさかのぼって適法な処分が存在しなかったこととなり,適法な建築確認処分の存在を前提とした建築確認変更処分もあり得なかったことになって,失効する。 以上により,本件裁決で違法と判断されて取り消された本件確認処分を前提とする本件各変更処分は,その余の点を判断するまでもなく,違法となる。 (被告の主張)ア争点(2)ア(本件確認処分が本件裁決で取り消された後に,被告が改めて本件確認申請に対する処分をしなかったこと)について行政不服審査法43条2項は,申請に対する処分が手続の違法を理由として裁決で取り消されたときは,当該申請に基づき,処分庁が適法な手続 で審査をやり直せば元の処分が是認される可能性があるので,処分庁が改めて適法な手続によって当該申請に対する処分をしなければならないとする趣旨の規定である。 これに対し,本件のように申請に対する処分が実体の違法を理由として裁決によって取り消された場合には,処分庁が申請をそのままにした上で手続をやり直してみても無意味であるから,同条項の適用はない。 本件確認処分は実体の違法を理由として本件裁決により取り消されたものであり,原告らの主張は同条項の適用につき前提を誤っている。 イ争点(2)イ(審査請求中及び訴訟係属中に本件各変更申請がされたこと)について建築確認は,申請された建築物の計画が建築基準法令の規定等に適合するものであることの確保を目的とする制度であるから,いったん建築確認を受けた計画について,建築主は建築物の完成 されたこと)について建築確認は,申請された建築物の計画が建築基準法令の規定等に適合するものであることの確保を目的とする制度であるから,いったん建築確認を受けた計画について,建築主は建築物の完成に至るまで何回でも建築確認の変更を受けることができるし,また,その内容は,建築物の計画の同一性の範囲内である限り,元来適法であった計画の変更であると,瑕疵のあった計画の変更であるとを問わないものと解される。審査請求の審査中及び本件訴訟の係属中に本件各変更申請及び本件各変更処分がされたことは違法でない。 ウ争点(2)ウ(本件確認処分が本件裁決で取り消された結果,本件各変更処分も当然に取り消されるべきであるか)について一般論としていえば,建築確認処分について審査請求がされ,その結果,裁決により同処分が取り消されて効力を失った場合には,建築主は新たに 適法な計画について改めて建築確認の申請をし,建築確認処分を受けることになる。 しかし,本件では,本件確認処分に係る審査請求中に本件変更処分1がされているところ,本件確認処分及び本件変更処分1はいずれも申請に係る建築物の計画が建築基準法令の規定等に適合する旨の客観的な判断の表示であり,両者は別個の処分である。 本件確認処分は,本件裁決により実体の違法を理由として取り消されたのであるから,本件確認処分の効力はこれにより消滅し,本件変更処分1は事後的に新たな建築確認処分としての性格を有することになった。そして,本件変更処分2は本件変更処分1(実質上の新たな建築確認処分)の,本件変更処分3は本件変更処分2の建築確認変更処分である。すなわち,本件確認処分が本件裁決で取り消されたことにより,当然に本件各変更処分が取り消されるという関係にはない。 (3)本件各変更処分の違法性について(原告らの主張)ア 築確認変更処分である。すなわち,本件確認処分が本件裁決で取り消されたことにより,当然に本件各変更処分が取り消されるという関係にはない。 (3)本件各変更処分の違法性について(原告らの主張)ア争点(3)ア(本件各変更申請は新たな建築確認申請としてされるべきであったか否か)について本件各変更処分は,世田谷区斜面地条例に反する違法な本件確認処分を是正するものであり,違法な計画を適法な計画へと変更しているほか,本件建築物の低層部について当初5階であったものを4階に変更するなど,かなり大規模な変更内容となっている。 このようなことにかんがみれば,本件確認処分と本件各変更処分とは, それぞれ全く別の建築の計画についてされたものであり,本件各変更申請は,新たな建築確認申請としてされるべきであったにもかかわらず,計画の変更の申請としてされており,この点を看過してされた本件各変更処分は違法である。 イ争点(3)イ(本件からぼり)について(ア)建築物の地階にある居室等の採光及び換気等を確保するために当該居室等が面する土地部分を掘り下げてからぼりが設けられ,当該からぼりが建物本体と一体的な周壁により囲まれているといった場合,当該建築物が周囲の地面と接する位置は,当該建物本体が実際に地面と接する位置と見るべきか,からぼりの周壁の上端が地面と接する位置と見るべきかということが問題となる(以下,本件建築物の高層部及び低層部の部分だけを併せて「本件建物本体」という。)。 (イ)一般に,建築物の地階にある居室等の採光及び換気等を確保するためには,からぼり(ドライエリア)の奥行きは2mあれば足りるものと考えられる。 この点については,被告が編集著述した「○○」と題する書籍においても,「建物本体の外壁とドライエリアの立ち上がり壁との距離が2m以下で (ドライエリア)の奥行きは2mあれば足りるものと考えられる。 この点については,被告が編集著述した「○○」と題する書籍においても,「建物本体の外壁とドライエリアの立ち上がり壁との距離が2m以下で,地表面からの深さ5m以内であれば,ドライエリアの外側を地盤面算定上の接地面として扱います。」と記載されており,また,横浜市建築基準法取扱基準集においても,建築物と一体ではないからぼりの基準として,奥行きが2mを超えるものをいうなどとされている。 (ウ)本件からぼりは,奥行き約6m(バルコニー部分を含む。)及び深 さ5m以上という大規模なものである。本件からぼりの奥行きがこのようなものになったのは,東京都建築安全条例19条1項2号ロ(別紙「関係法令の規定」記載2参照)によって,本件建築物については幅員4m以上の窓先空地を設けなければならないためであるところ,本件からぼりが窓先空地としての機能を有するということは,建築物の地階にある居室等の採光及び換気等を確保するというからぼりの機能を超えることとなる。 (エ)これらのことからすると,本件からぼりは,本件建物本体と構造的及び機能的に一体的な関係にあるとはいえず,本件からぼりは本件建築物の一部を構成するものではないから,本件建築物については,本件からぼりの底部をもって地面と接する位置とすべきである。 なお,この点については,建築申請実務研究会編の「建築申請memo」と題する書籍においても,「建築物本体と一体的な周壁を有する『からぼり』等の場合には,当該建築物及び周壁の外側の部分を『周囲の地面と接する位置』とする。ただし,斜面地等において大規模な擁壁と共に設ける『からぼり』等の場合には,建築物が実際に接する地表面の位置を『周囲の地面と接する位置』とする」と記載されている。 (オ)本件からぼ る位置』とする。ただし,斜面地等において大規模な擁壁と共に設ける『からぼり』等の場合には,建築物が実際に接する地表面の位置を『周囲の地面と接する位置』とする」と記載されている。 (オ)本件からぼりの底部をもって本件建築物が周囲の地面と接する位置とした場合,本件各変更処分には,次の違法事由が存在する。 a日影による中高層の建築物の高さの制限(建築基準法56条の2)違反本件からぼりの底部をもって本件建築物が周囲の地面と接する位置 とした場合,平均地盤面は,本件各変更処分における設計GL+0. 249mより1.092m低い設計GL-0.843mとなり,それに基づいて日影図を作成すると,上記制限に違反する部分が生じる。 b第1種低層住居専用地域内における建築物の高さの限度(建築基準法55条1項)違反本件からぼりの底部をもって本件建築物が周囲の地面と接する位置とした場合,本件確認処分に係る計画を基に,平均地盤面を算出すると,本件建築物の北側道路面を±0mとして,1.03m低くなる。 本件建築物の低層部が所在する土地は第1種低層住居専用地域であり,建築物の高さの限度は10mとなっている。同低層部は地上2階ではあるが,本件各変更処分上の高さは正確には不明であって,平均地盤面が約1m下がれば同限度に違反する可能性がある。 c高度地区内の建築物の高さの制限(建築基準法58条)違反本件敷地のうち,本件建築物の高層部が所在する土地は,高度地区として45mの高さの制限がある。本件変更処分3における同高層部の高さは43.620mとされており,上記bのような平均地盤面の変動いかんによっては,同高層部は同制限に違反する可能性がある。 ウ争点(3)ウ(本件盛土部分)について(ア)仮に本件からぼりの周壁の上端をもって本件建築物が周囲の地面と接する位置で 均地盤面の変動いかんによっては,同高層部は同制限に違反する可能性がある。 ウ争点(3)ウ(本件盛土部分)について(ア)仮に本件からぼりの周壁の上端をもって本件建築物が周囲の地面と接する位置であるとしても,別紙図面3の2記載の本件盛土部分(その上部は設計GL-1.000m)の上部をもってその位置とすべきではない。 (イ)本件盛土部分は,長さ約40m,幅約1m,高さ約1mないし約1. 5mのものであり,その規模や,本件盛土部分の上に建築物を建築する目的がないこと,本件建物本体の利便性及び快適性を向上させる機能がないことなどからして,極めて不自然かつ不合理な存在となっており,単に壁状の部分となっているにすぎない。本件盛土部分は,本件建築物が周囲の地面と接する位置の最高点が設計GL+2.000mとされていることとあいまって,その高低差が3mとなるように造成されており,建築基準法令の規定等による各規制,殊に当初は世田谷区斜面地条例による規制を潜脱するために設けられたものと認められる。 この点については,平成7年の日本建築主事会議会長事務連絡においても,建築物が接する位置に盛土が行われている場合の地盤面の判定について,①盛土後の接する位置を「建築物が周囲の地面と接する位置」とする,ただし,敷地の衛生上又は安全上必要な範囲を超える盛土又は局部的な盛土の場合には,これ以外の適切と考えられる位置に設定する,②「局部的な盛土」とは,上部の水平な面が2m以上の広がりを持たないもの,ただし,隣地境界線又は道路境界線まで,それぞれ隣地又は道路と同程度の盛土をした場合は,水平の面の広がりが小規模であっても,盛土後の地盤面を「周囲の地面と接する位置」とする,とされているところであり,本件盛土部分の上部をもって本件建築物が周囲の地面と接する位置とすべ 土をした場合は,水平の面の広がりが小規模であっても,盛土後の地盤面を「周囲の地面と接する位置」とする,とされているところであり,本件盛土部分の上部をもって本件建築物が周囲の地面と接する位置とすべきでないことは明らかである。 (ウ)本件盛土部分の下部,すなわち本件敷地の東側隣接地の高さをもって本件建築物が周囲の地面と接する位置とした場合,平均地盤面は0. 11m低くなり,本件各変更処分は,①日影による中高層の建築物の高さの制限(建築基準法56条の2)及び②高度地区内の建築物の高さの制限(同法58条)に違反する可能性がある。 エ争点(3)エ(領域Bの設定)について(ア)建築基準法施行令2条1項6号は,建築物の高さは地盤面からの高さによると規定し,同条2項は,同条1項6号の「地盤面」とは建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい,その接する位置の高低差が3mを超える場合においては,その高低差3m以内ごとの平均の高さにおける水平面をいうと規定している。 (イ)P1が平成17年6月22日に近隣住民へ配付した資料では,高低差3mごとの設定は任意であるが,最低点から3mずつ区分して算定するのが一般的であると記載されており,これは斜面地において高さ制限を潜脱する高層建築物のような外観を有する大規模な建築物の建築を防止するため3mごとの領域設定を義務付けた規定の趣旨からして当然のことである。 (ウ)ところが,本件各変更処分では,高低差3mごとの領域の設定につき,最高点から順次,領域A及び領域Bを設定しており,しかも,領域Bには,本件建築物の高層部のバルコニー及び柱に貼られた部材という,本件建築物に必要不可欠ではない一部分しか存在しないところ,同高層部の2階バルコニー上部をもって建築物の高さを測定している。領域Bに存 は,本件建築物の高層部のバルコニー及び柱に貼られた部材という,本件建築物に必要不可欠ではない一部分しか存在しないところ,同高層部の2階バルコニー上部をもって建築物の高さを測定している。領域Bに存在する部分には屋根に該当するものがなく,およそ建築物とはいえないものであり,また,1本の柱を不必要に分割するものであって,領 域Bは,上記規定の趣旨を潜脱するため,作為的に設定されたものというほかなく,違法である。 (エ)本件建築物の高層部が地面に接する位置の最低点から3mごとに領域を設定すると,領域Bの平均地盤面は設計GL-1.129mに上がり,領域Bにある同高層部の高さは45.269mとなって,高度地区内の建築物の高さ制限45mを超える。 なお,本件からぼりの底部を地盤面とすると,領域Bの平均地盤面は設計GL-2.363mとなり,領域Bにある同高層部の高さは46. 503mとなる。 (被告の主張)ア争点(3)ア(本件各変更申請は新たな建築確認申請としてされるべきであったか否か)について建築確認は,申請された建築物の計画が建築基準法令の規定等に適合するものであることの確保を目的とする制度であるから,いったん建築確認を受けた計画について,建築主は建築物の完成に至るまで何回でも建築確認変更を受けることができるし,また,その内容は,建築物の計画の同一性の範囲内である限り,元来適法であった計画の変更であると,瑕疵のあった計画の変更であるとを問わないものと解される。したがって,本件確認処分に違法事由が存在した場合であっても,本件各変更処分に違法事由が存在しない場合には,本件各変更処分は適法な処分となる。 実務上は,同一の建築物の計画について,工事着手後もしばしば建築確認変更の手続が執られている。殊に本件建築物のような分譲マンションの 場 が存在しない場合には,本件各変更処分は適法な処分となる。 実務上は,同一の建築物の計画について,工事着手後もしばしば建築確認変更の手続が執られている。殊に本件建築物のような分譲マンションの 場合には,建築主である分譲業者は,建築確認を受けた段階で青写真とモデルルームを顧客に見せて販売する手法が一般的に採られているため,住戸購入者の希望により計画の変更を行うことが普通であり,建築確認変更がされる例は更に多い。 イ争点(3)イ(本件からぼり)について(ア)原告らは,本件からぼりの規模が大きく,本件建物本体との一体性を欠くと主張する。もともと「からぼり」の概念は明確に定義されているものではなく,本件建築物のような斜面地のマンションの地盤面を決定する基準を定めるに当たっては,その建築物の地下空間がからぼりに該当するか否かではなく,その地下空間が建物本体と一体をなす規模及び構造のものであるか否かが問題なのである。 (イ)本件からぼりの奥行きは,上階のバルコニー部分の奥行き2mを除いて4mであり,幅は40m弱,深さは4.5m弱である。 そして,本件からぼりは,構造上も本件建物本体とはりで連結されて一体をなしており,本件建築物の一部と見るべきである。 また,本件からぼりは,東京都建築安全条例19条1項2号ロ所定の窓先空地の機能を兼ねるものであり,同条例によって設置が義務付けられたものである。 このような本件からぼりの規模,構造及び機能等からすると,本件からぼりは本件建築物の一部であると認められるから,本件からぼりの周壁の上端をもって本件建築物が周囲の地面と接する位置とすべきである。 ウ争点(3)ウ(本件盛土部分)について (ア)本件盛土部分の上部は設計GL(10.50m)-1.000m,すなわち9.50mとされているが,原告らの主張 の地面と接する位置とすべきである。 ウ争点(3)ウ(本件盛土部分)について (ア)本件盛土部分の上部は設計GL(10.50m)-1.000m,すなわち9.50mとされているが,原告らの主張する「盛土」がされる前の現況の地盤面の高さは,最も低い所で9.14m,最も高い所で9.64mであり,これを9.50mの高さで平坦にすることは,一般的にいわれる整地であって,建築基準法令の規定等による規制を潜脱するための盛土でないことは明らかである。 (イ)なお,原則的に,建築確認において,指定確認検査機関は,申請に係る計画を形式的に書面審査し,その計画が建築基準法令の規定等に適合すると判断された場合には建築確認処分をする。申請に係る計画が敷地の盛土を前提とする場合であっても,指定確認検査機関は建築基準法令の規定等のみに基づいて審査判断するのであって,例えば,隣地よりも5m高い盛土をするように,一見明白に土地所有権の権利の濫用に当たる場合を除き,盛土自体の是非を判断することはできない。 エ争点(3)エ(領域Bの設定)について(ア)原告らは,領域Bに存在する工作物には屋根に該当するものがなく,およそ建築物とはいえないなどと主張するが,建築基準法施行令2条2項は,「地盤面」とは建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいうものと規定しているところ,土地に定着する工作物で,屋根及び柱若しくは壁を有するもので建築物と認定されたもの(建築基準法2条1号参照)の一部分であれば,その部分に屋根があるか否かは,領域の設定に何ら関係のない要件である。 (イ)3m以内ごとの領域の分け方については,法令上も通達上も定めが なく,原告らが主張するように最低点から3mごとの領域設定をしなければならないとする根拠はない。 第3争点に対する判 る。 (イ)3m以内ごとの領域の分け方については,法令上も通達上も定めが なく,原告らが主張するように最低点から3mごとの領域設定をしなければならないとする根拠はない。 第3争点に対する判断 本案前の争点について(1)争点(1)ア(審査請求前置)についてア建築基準法96条は,指定確認検査機関の処分の取消しの訴えは,当該処分についての審査請求に対する建築審査会の裁決を経た後でなければ,提起することができないと定めているところ,前記前提事実(2)のとおり,原告らは,本件各変更処分についての審査請求をすることなく,甲事件及び乙事件の各訴えを提起した。 そこで,上記各訴えの提起について,「その他裁決を経ないことにつき正当な理由がある」(行訴法8条2項3号)か否かを検討する。 イまず,建築基準法6条1項,6条の2第1項は,建築主事又は指定確認検査機関(以下「建築主事等」という。)による確認を受けた建築物の計画の変更をして建築物を建築しようとする場合,建築主は,変更に係る計画について建築主事等の確認を受けなければならないと規定するところ,建築確認変更処分は,既にされた建築確認処分を前提とするものではあるが,建築主事等としては,建築確認変更処分をするに当たり,既にされた建築確認処分が建築基準法令の規定等に適合するものであることを所与の前提として,変更に係る部分についてだけ,建築基準法令の規定等に適合するか否かを判断するものではなく,変更に係る部分及びその余の部分の全体につき,改めて建築基準法令の規定等に適合するか否かを判断し,適 合すると判断した場合に既にされた建築確認処分を変更することになるのであるから,新たな行政処分である建築確認変更処分がされると,これにより既にされていた建築確認処分は取り消され,消滅することになると解 すると判断した場合に既にされた建築確認処分を変更することになるのであるから,新たな行政処分である建築確認変更処分がされると,これにより既にされていた建築確認処分は取り消され,消滅することになると解するのが相当である。 したがって,本件では,①本件変更処分1により本件確認処分は取り消されて消滅し,②本件変更処分2により本件変更処分1は取り消されて消滅し,③本件変更処分3により本件変更処分2は取り消されて消滅したことになる。 ウこのように,本件確認処分と本件各変更処分とはそれぞれが別個の行政処分ではあるが,前記前提事実(2)ア,ウ,エ及びキのとおり,本件確認処分から本件変更処分3に至るまでには,おおむね別紙図面2の1ないし6記載の計画の変更があったものの,原告らが本件審査請求において主張した本件確認処分の違法事由(前記前提事実(2)イ参照)は,本件訴訟において原告らが主張する本件各変更処分の違法事由(争点(3)イないしエ参照)と同旨のものである。 そうすると,東京都建築審査会としては,本件審査請求の手続中において,原告らが主張した違法事由について審査をする機会が十分にあったのであり,実際,同審査会は,前記前提事実(2)オのとおり,これらの違法事由が存在しないと判断した上で,職権により,本件確認処分が世田谷区斜面地条例に違反すると判断して,本件確認処分を取り消したものである(なお,上記イで述べた建築確認変更処分の性質に照らすと,本件確認処分は本件裁決がされる前に本件変更処分1により取り消されていたのであ るから,客観的に見れば,本件審査請求は,その対象を欠くこととなって,却下されるべきものであった。)。 したがって,本件各変更処分について,原告らが本件訴訟において主張する違法事由を改めて東京都建築審査委員会に審査させる必要性は乏しい は,その対象を欠くこととなって,却下されるべきものであった。)。 したがって,本件各変更処分について,原告らが本件訴訟において主張する違法事由を改めて東京都建築審査委員会に審査させる必要性は乏しいものというべきであり,さらに,本件裁決の理由に照らせば,原告らが上記違法事由を主張して改めて本件各変更処分につき審査請求をしたとしても,同審査会により,その違法事由の主張が採用されることを期待することは困難であったということができる(なお,前記前提事実(2)エ及びオのとおり,本件裁決において本件確認処分の取消事由となった世田谷区斜面地条例に違反する部分は,本件変更処分2により是正されている。)。 これらの事情に加えて,証拠(甲7)によれば,本件審査請求については,平成17年10月17日に公開による口頭審査が行われて,被告及びP1の各代理人がこれに出頭しており,また,被告は同年11月14日付けの弁明書を東京都建築審査会に提出したことが認められるにもかかわらず,少なくとも本件変更申請1及び本件変更処分1並びに本件変更申請2があった事実が同審査会及び原告らを含む審査請求人に知らされたことをうかがわせる証拠はないことなどの事情を総合考慮すれば,原告らにおいて,本件各変更処分につき審査請求をせずに,甲事件及び乙事件の各訴えを提起したことについて,行訴法8条2項3号所定の「正当な理由」があると認めるのが相当である。 エ上記説示したところによれば,甲事件及び乙事件の各訴えは,審査請求に対する裁決を経ていないために不適法ということはできない。ただし, 上記イで述べたとおり,本件変更処分1及び本件変更処分2は既に取り消されて消滅したから,これらの処分に係る訴えは,その対象を欠き,不適法である。したがって,以下の争点に対する検討は,主に本件変更処分3に で述べたとおり,本件変更処分1及び本件変更処分2は既に取り消されて消滅したから,これらの処分に係る訴えは,その対象を欠き,不適法である。したがって,以下の争点に対する検討は,主に本件変更処分3について行う。 (2)争点(1)イ(原告適格)についてア行訴法9条は取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮すべきであり,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとな る利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項参照)(以上につき,最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集 されることとな る利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項参照)(以上につき,最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁参照)。 イ建築基準法6条の2第1項が,同法6条1項各号に掲げる建築物の計画が,例えば,同法21条,52条,55条,56条及び56条の2に適合するものであることについて確認することができなければ,当該建築物の建築等の工事をすることができないこととしているのは,①当該建築物並びにその居住者の生命,身体の安全及び健康の保護を図り,②当該建築物及びその周辺の建築物における日照,通風及び採光等を良好に保つなど快適な居住環境を確保することができるようにするとともに,③地震及び火災等により当該建築物が倒壊し,又は炎上するなど万一の事態が生じた場合に,その周辺の建築物やその居住者に重大な被害が及ぶことのないようにするためであると解される。 そして,以上のような建築基準法6条の2第1項の趣旨及び目的,同項が同法6条1項各号に掲げる建築物の計画が建築基準法令の規定に適合するものであることの確認において保護しようとしている利益の内容及び性質等のほか,同法が建築物の敷地,構造等に関する最低の基準を定めて国民の生命,健康及び財産の保護を図ることなどを目的としていること(同法1条)をも考慮すると,同法6条の2第1項は,同項による確認に係る建築物並びにその居住者の生命又は身体の安全及び健康を保護し,その建築等が市街地の環境の整備改善に資するようにするとともに,当該建築物 により日照を阻害される周辺の他の建築物に居住する者の健康を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。 そうすると,建築確認に係る建築物 ともに,当該建築物 により日照を阻害される周辺の他の建築物に居住する者の健康を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。 そうすると,建築確認に係る建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物の居住者は,建築確認の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消しの訴えにおける原告適格を有すると解するのが相当である。 ウ証拠(乙19,20)によれば,本件建築物は,冬至の日において,午前8時から午後4時までの間に,原告P2の住居において約3時間,同P3及び同P4の各住居において約1時間の日影を生じさせることが認められる。したがって,原告らは,本件変更処分3の取消しを求める原告適格を有するものということができる。 これに対し,被告は,原告らの住居に生じる日影は軽微なものであり,受忍限度の範囲内であるなどと主張するが,原告適格を判断するに当たり,日照を阻害されるおそれがあることを理由として建築確認処分又は建築確認変更処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するというためには,その者に対する日照が当該建築物の建築によって直接阻害されるという関係があることをもって足り,その阻害の程度が受忍限度を超えている否か,あるいは建築確認処分又は建築確認変更処分が建築基準法令の規定における日影の規制に適合するか否かといったことは本案の問題であると解するのが相当であるから,上記主張は採用することができない。 (3)小括 以上の次第で,甲事件に係る訴えは,その対象を欠き,不適法であるが,乙事件に係る訴えは適法である。 本件審査請求及び本件裁決に関連する争点について(1)争点(2)ア(本件確認処分が本件裁決で取り消された後に,被告が改めて本件確認申請に対する処分をしなかったこと)について前記 適法である。 本件審査請求及び本件裁決に関連する争点について(1)争点(2)ア(本件確認処分が本件裁決で取り消された後に,被告が改めて本件確認申請に対する処分をしなかったこと)について前記1(1)イ及びウで述べたとおり,本件確認処分は本件裁決がされる前に本件変更処分1により取り消されていたのであるから,客観的に見れば,本件審査請求は,その対象を欠くこととなって,却下されるべきものであったこと,また,そもそも行政不服審査法43条2項は,「申請に基づいてした処分が手続の違法若しくは不当を理由として裁決で取り消され」た場合に,「改めて申請に対する処分をしなければならない」とする規定であるところ,前提事実(2)オのとおり,本件裁決は実体の違法を理由として本件確認処分を取り消したものであり,直ちに同項が適用される関係にないことなどに照らすと,争点(2)アに関する原告らの主張は採用することができない。 したがって,争点(2)アに関する原告らの主張には理由がない。 (2)争点(2)イ(審査請求中及び訴訟係属中に本件各変更申請がされたこと)について一般に,ある行政処分について審査請求がされてからこれに対する裁決がされるまでの間,あるいは,ある行政処分について取消しの訴えが提起されてからこれに対する判決がされるまでの間に,行政庁がその対象となる行政処分を変更し,又は取り消すことを禁止する旨の法令の定めはなく,建築確認処分及び建築確認変更処分についても,上記の各期間にあることをもって, 建築主事等がこれらを変更し,又は取り消すことを禁止する旨の法令の定めはない。本件変更申請3が本件訴訟の係属中にされたことが違法であるとする原告らの主張は独自の見解に立つものであって採用することはできない(なお,このように解しても,原告らの権利救済の手段に欠け 定めはない。本件変更申請3が本件訴訟の係属中にされたことが違法であるとする原告らの主張は独自の見解に立つものであって採用することはできない(なお,このように解しても,原告らの権利救済の手段に欠けることがないことは,上記1(1)に照らし,明らかである。)。 また,原告らは,建築確認変更処分は建築確認処分が適法であることを前提とした処分であるから,建築確認処分が違法である場合には建築確認変更処分はできないはずであるとも主張するが,上記1(1)イで述べたとおり,建築確認変更処分は,建築主事等が,変更に係る部分及びその余の部分の全体につき,改めて建築基準法令の規定等に適合すると判断した場合にされる処分であって,新たに建築確認処分がされるのと性質上の違いはないのであるから,上記主張は採用することができない。 したがって,争点(2)イに関する原告らの主張には理由がない。 (3)争点(2)ウ(本件確認処分が本件裁決で取り消された結果,本件各変更処分も当然に取り消されるべきであるか)について前記1(1)イ及びウで述べたとおり,本件確認処分及び本件各変更処分はそれぞれ別個の行政処分であること,本件確認処分は本件裁決がされる前に本件変更処分1により取り消されていたのであるから,客観的に見れば,本件審査請求は,その対象を欠くこととなって,却下されるべきものであったことなどに照らすと,本件裁決により本件確認処分が取り消されたからといって,当然に本件変更処分3に取消事由が存在するということはできない(本件確認処分に存在した取消事由が,本件各変更処分にも同様に存在するため, 本件各変更処分の取消事由ともなるか否かは,本件各変更処分固有の問題である。)。 したがって,争点(2)ウに関する原告らの主張には理由がない。 本件各変更処分の違法性について(1) ため, 本件各変更処分の取消事由ともなるか否かは,本件各変更処分固有の問題である。)。 したがって,争点(2)ウに関する原告らの主張には理由がない。 本件各変更処分の違法性について(1)争点(3)ア(本件各変更申請は新たな建築確認申請としてされるべきであったか否か)について本件各変更処分における計画の変更の内容(前記前提事実(2)ウ,エ,キ)や,本件確認処分及び本件各変更処分に係る計画の内容が,共同住宅を建築するため,本件敷地のうち第1種住居地域内に高層部を設け,第1種低層住居専用地域内に低層部を設けることではいずれも一致すること(甲1の1及び2,甲6,乙1,乙2の1ないし6,乙3の1ないし6,乙4の1ないし6,乙21ないし26,弁論の全趣旨)等に照らすと,本件各変更申請が計画の変更の申請としてされたことは相当である。 また,たとえ本件確認処分(及び本件変更処分1)において,世田谷区斜面地条例に違反する違法事由があったとしても,計画の変更の申請によってその是正をすることが法令上禁じられているわけでもないから,この点について本件変更申請2及び本件変更申請3が違法となることはない。 したがって,争点(3)アに関する原告らの主張には理由がない。 (2)争点(3)イ(本件からぼり)についてア証拠(甲31)並びに別紙図面3の1及び2によれば,本件からぼりは現況の地盤を掘り下げて造成されるもので,その規模は,バルコニーの幅1.7mを除くと,奥行き4.3m,高さ4.45m(本件建築物の低層 部の東側)及び4.42m(同西側),幅が36.2m(ただし,別紙図面3の1記載bX2からbX13までの幅)及び39.4m(ただし,同図面記載bX0からbX11までの幅)であり,また,本件からぼりの周壁は,本件建物本体と「梁」(別紙図面3の2参 m(ただし,別紙図面3の1記載bX2からbX13までの幅)及び39.4m(ただし,同図面記載bX0からbX11までの幅)であり,また,本件からぼりの周壁は,本件建物本体と「梁」(別紙図面3の2参照)で連結されていることが認められる。 イところで,建築基準法40条は,「地方公共団体は,その地方の気候若しくは風土の特殊性又は特殊建築物の用途若しくは規模に因り,この章の規定又はこれに基く命令の規定のみによつては建築物の安全,防火又は衛生の目的を充分に達し難いと認める場合においては,条例で,建築物の敷地,構造又は建築設備に関して安全上,防火上又は衛生上必要な制限を附加することができる。」と規定するところ,東京都建築安全条例は,建築基準法40条による建築物の敷地,構造及び建築設備並びに工作物に関する制限の附加等は,この条例の定めるところによる(同条例1条)とし,同条例19条において,「共同住宅の住戸若しくは住室の居住の用に供する居室のうち1以上,寄宿舎の寝室又は下宿の宿泊室は,次に定めるところによらなければならない。」(同条1項柱書き)として,共同住宅の住戸等には,①道路に直接面する窓(同項2号イ)又は②窓先空地(通路その他の避難上有効な空地で,住戸の床面積の合計が500㎡を超える場合,その幅員は4m以上のものをいう。)に直接面する窓(同項2号ロ)を設けなければならない旨規定する(別紙「関係法令の規定」記載2参照)。 本件からぼりが,幅員4m以上の奥行きとなっているのは,上記②の窓先空地を設けるためである(弁論の全趣旨)。 ウ一般に,からぼり(ドライエリア)とは,地階の居室等に必要な採光及び換気等を確保するために設けられるものであるところ,本件からぼりもこのような目的機能を有している(弁論の全趣旨)。 そして,日本建築主事会議基準総 り(ドライエリア)とは,地階の居室等に必要な採光及び換気等を確保するために設けられるものであるところ,本件からぼりもこのような目的機能を有している(弁論の全趣旨)。 そして,日本建築主事会議基準総則研究会の統一見解である「高さ・階数の算定方法・同解説」(乙10)によれば,周囲の地面と接する位置の設定について,建築物本体と一体的な周壁を有するからぼり等がある場合には,当該建築物及び周壁の外側の部分を「周囲の地面と接する位置」とする,ただし,斜面地等において大規模な擁壁と共に設けるからぼり等の場合には,建築物が実際に接する地表面の位置を「周囲の地面と接する位置」とすると記載されており,被告が編集著述した「○○」と題する書籍(甲19)にも,ドライエリアと平均地盤面について,「地階に部屋を設ける場合など採光や換気その他の機能を確保するためにドライエリア(からぼり)を設けることがあります。この場合の平均地盤面のとり方についてよくご質問をいただきます。」,「建物本体の外壁とドライエリアの立ち上がり壁との距離が2m以下で,地表面からの深さ5m以内であれば,ドライエリアの外側を地盤面算定上の接地面として扱います。」と記載されている。 なお,「横浜市建築基準法取扱基準集(平成13年版)」(乙11の1)には,周囲の地面と接する位置の設定について,建築物本体と一体的な周壁を有するからぼり等がある場合には,建築物本体及び周壁の外側の部分を「周囲の地面と接する位置」とする,ただし,傾斜地等(高低のある敷地で,建築物が接する位置の高低の差が3mを超える建築物の敷地) において,奥行き(内々の有効幅)が2mを超える部分を有するからぼりは,その高さにかかわらず,また,高さが5mを超える部分を有するからぼりは,その奥行きにかかわらず,建築物本体と一体的で大規模 において,奥行き(内々の有効幅)が2mを超える部分を有するからぼりは,その高さにかかわらず,また,高さが5mを超える部分を有するからぼりは,その奥行きにかかわらず,建築物本体と一体的で大規模な周壁を有するからぼり等として,建築物本体が実際に接する地表面の位置を「周囲の地面と接する位置」とするなどと記載されている。 このような記述等に照らすと,地階の居室等に必要な採光及び換気等を確保するために設けられるからぼりの奥行きの幅員は,2mを超えないことが一応想定されているといえる。 エしかしながら,建築基準法2条1号は,「建築物」の定義について,土地に定着する工作物のうち,屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。),これに附属する門又は塀等をいうものと規定するところ,本件からぼりの周壁が本件建物本体に附属する塀等として建物と一体の建築物であるか否かは,本件からぼりの物理的な規模だけではなく,構造面及び機能面における建物との一体性の有無を基準とすべきであるから,本件からぼりの奥行きの幅が2mを超えること(すなわち,上記ウにおいて一応想定されている「からぼり」とは異なること)のみをもって,それが建築物の一部に当たらないとすることは相当とはいえない。 また,一般にからぼりが,地階の居室等に必要な採光及び換気等を確保するために設けられるものであるからといって,本件からぼりが同時に他の目的機能を兼有することから直ちにそれが建築物の一部に当たらないとすることも相当とはいえない。 オそこで検討するに,本件からぼりは現況の地盤を掘り下げて造成される もので,その周壁は,その構造上,本件建物本体と,はりで連結されており,このことによって,相互に水平力に対する構造強度面の安全性を高めているものと推認される。 そして,本件から げて造成される もので,その周壁は,その構造上,本件建物本体と,はりで連結されており,このことによって,相互に水平力に対する構造強度面の安全性を高めているものと推認される。 そして,本件からぼりの奥行きが,バルコニーの幅を除いて4.3mとされているのは,東京都建築安全条例19条1項2号ロ所定の窓先空地を設けるためであり,このために本件からぼりは,地階の居室等の採光及び換気等の確保という一般のからぼりの機能のほかに,地階の居室等の住民等の避難路の確保という目的機能を兼有するものであるところ,窓先空地の設置は,共同住宅である本件建築物の建築に当たり,同条例で要求されるものであるから,その目的機能からして,本件からぼりは本件建築物と一体性があるといえる。 さらに,本件からぼりの規模が,上記奥行きのほか,高さが4.5m程度,幅が40m程度にとどまることなどを総合考慮すれば,本件からぼりは,本件建築物と一体の「建築物」(建築基準法2条1号)に該当すると認めるのが相当であり,そうとすれば,本件からぼりの周壁の上端をもって本件建築物が周囲の地面と接する位置とすることは適法である。 したがって,争点(3)イに関する原告らの主張には理由がない。 (3)争点(3)ウ(本件盛土部分)について証拠(乙29,30)及び弁論の全趣旨によれば,仮に本件盛土部分が存在しないものとして,本件敷地の東側隣接地の地面の高さをもって,本件建築物が周囲の地面と接する位置の高さとしたとするならば,①建築基準法別表第4「日影による中高層の建築物の制限(第56条,第56条の2関 係)」所定の平均地盤面の高さは,本件変更処分3における平均地盤面の高さである設計GL+0.249mより0.172m低い設計GL+0.077mとなるが,その場合であっても,本件建築物の高さは同法5 係)」所定の平均地盤面の高さは,本件変更処分3における平均地盤面の高さである設計GL+0.249mより0.172m低い設計GL+0.077mとなるが,その場合であっても,本件建築物の高さは同法56条の2所定の日影による中高層の建築物の高さの制限には違反しないこと,②建築基準法施行令2条2項所定の地盤面の高さは,領域Aの領域別平均地盤面については,本件変更処分3における設計GL+0.375mと変わらず,領域Bの領域別平均地盤面については,本件変更処分3における設計GL-1. 663mより0.068m低い設計GL-1.731mとなるが,その場合であっても,本件建築物の高さは建築基準法55条1項,58条の建築物の高さの制限には違反しないことがそれぞれ認められる。 したがって,本件変更処分3において,本件盛土部分の上部の高さをもって本件建築物が周囲の地面と接する位置の高さとしたことが本件変更処分3の違法事由となることはなく,また,本件変更申請3において,P1が建築基準法令の規定等の適用を免れるため本件盛土部分を造成するようにしたと認めることもできない。 したがって,争点(3)ウに関する原告らの主張には理由がない。 (4)争点(3)エ(領域Bの設定)についてア前記前提事実(2)キのとおり,建築基準法施行令2条1項6号は,建築物の高さは地盤面からの高さによると規定し,同条2項は,同条1項6号の「地盤面」とは建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい,その接する位置の高低差が3mを超える場合においては,その高低差3m以内ごとの平均の高さにおける水平面をいうと規定するとこ ろ,本件建築物については,設計GL+2.000mを最高点とし,設計GL-1.000mまでの部分を領域Aとして領域別平均地盤面設計GL+0.375mが算 高さにおける水平面をいうと規定するとこ ろ,本件建築物については,設計GL+2.000mを最高点とし,設計GL-1.000mまでの部分を領域Aとして領域別平均地盤面設計GL+0.375mが算出され,それより低い部分(設計GL-2.730mまでの部分)を領域Bとして領域別平均地盤面設計GL-1.663mが算出されている。 イこの点については,確かに,P1が本件敷地の近隣住民に対し配付した資料(甲30)には,高低差が3mを超える場合の地盤面の算定方法につき,「高低差3mごとの設定は任意であるが,最低点から3mずつ区分して算定するのが一般的である」と記載されている。 しかしながら,他方において,日本建築主事会議基準総則研究会の統一見解である「高さ・階数の算定方法・同解説」(乙10)には,地盤面を算定する領域の設定の方法につき,領域の設定は,原則として,建築物が地面と接する位置の最高点又は最低点から3mごとに行うと記載されており,「横浜市建築基準法取扱基準集(平成13年版)」(乙11の1)にも,地面と接する位置の高低差が3mを超える場合の地盤面を算定する領域の設定の方法について,地面と接する位置の最高点又は最低点から3mごとに領域を設定すると記載されている。これらの点も考慮すれば,本件建築物が周囲の地面と接する位置の最高点から3mごとに領域A及び領域Bが設定されたことをもって直ちに違法とする法令上の根拠は存在せず,また,このように領域を設定した結果,1つの建築物が領域ごとに分断されて領域ごとにその高さが算出されることを禁止する法令上の根拠も存在しないというほかない。 したがって,領域Bの設定は適法であり,争点(3)エに関する原告らの主張には理由がない。 以上検討の結果及び弁論の全趣旨からして,本件変更処分3は適法な処分であ 在しないというほかない。 したがって,領域Bの設定は適法であり,争点(3)エに関する原告らの主張には理由がない。 以上検討の結果及び弁論の全趣旨からして,本件変更処分3は適法な処分であると認めるのが相当である。 結論 よって,本件訴えのうち甲事件に係る部分は不適法であるからいずれも却下し,乙事件に係る請求は理由がないからいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部裁判長裁判官杉原則彦裁判官市原義孝裁判官島村典男

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