令和5年3月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年(行ウ)第34号生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求事件(以下「第1事件」という。)、平成27年(行ウ)22号生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求事件(以下「第2事件」という。)、同年(行ウ)第52号生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求事件(以下「第3事件」という。)、同年(行ウ)第59号 生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求事件(以下「第4事件」という。)、平成28年(行ウ)第10号生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求事件(以下「第5事件」という。)、同年(行ウ)第27号生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求事件(以下「第6事件」という。)口頭弁論終結日令和4年12月14日 判決主文 1 原告番号7、8、16の第1事件訴えのうち、保護変更決定の取消請求に係る部分をいずれも却下する。 2 別紙2処分一覧表1の「処分庁」欄記載の各処分庁が原告番号1ないし3、 6、9、10、12、13、15、20ないし23及び25に対して「処分日」欄記載の各年月日付けでした生活保護法25条2項に基づく保護変更決定を取り消す。 3 別紙2処分一覧表2の「処分庁」欄記載の各処分庁が「原告番号」欄記載の各原告に対して「処分日」欄記載の各年月日付けでした生活保護法25条 2項に基づく保護変更決定を取り消す。 4 別紙2処分一覧表3の「処分庁」欄記載の処分庁が第3事件原告に対して「処分日」欄記載の年月日付けでした生活保護法25条2項に基づく保護変更決定を取り消す。 5 別紙2処分一覧表4の「処分庁」欄記載の各処分庁が「原告番号」欄記載 の各原告に対して「処分日」欄記載の各年月日付けでした生活保護法25条 2項に基づく保護変更決定を取り 消す。 5 別紙2処分一覧表4の「処分庁」欄記載の各処分庁が「原告番号」欄記載 の各原告に対して「処分日」欄記載の各年月日付けでした生活保護法25条 2項に基づく保護変更決定を取り消す。 6 別紙2処分一覧表5の「処分庁」欄記載の各処分庁が「原告番号」欄記載の各原告に対して「処分日」欄記載の各年月日付けでした生活保護法25条2項に基づく保護変更決定を取り消す。 7 別紙2処分一覧表6の「処分庁」欄記載の各処分庁が「原告番号」欄記載 の各原告に対して「処分日」欄記載の各年月日付けでした生活保護法25条2項に基づく保護変更決定を取り消す。 8 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 9 訴訟費用は、第1事件ないし第6事件を通じて、⑴ 原告番号7、8、16を除く原告らに生じた費用は、これを2分し、その1を被告国、被告埼玉 県及び被告草加市を除く被告らの負担とし、その余を同原告らの負担とし、⑵ 原告番号7、16に生じた費用は、その全部を原告番号7、16の負担とし、⑶ 原告番号8に生じた費用は、これを6分し、その4を原告番号8の負担とし、その余は被告草加市の負担とし、⑷ 被告国、被告埼玉県、被告さいたま市及び被告草加市を除く被告らに生じた費用は、同被告らの負担 とし、⑸ 被告埼玉県に生じた費用は、その全部を原告番号7の負担とし、⑹ 被告草加市に生じた費用は、これを6分し、その4を原告番号8の負担とし、その余は被告草加市の負担とし、⑺ 被告さいたま市に生じた費用のうち、原告番号16との間で生じた費用は、原告番号16の負担とし、その余の原告らとの間で生じた費用は、同被告の負担とし、⑻ 被告国に生じた 費用は、その全部を原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 第1事件⑴ 別紙 負担とし、その余の原告らとの間で生じた費用は、同被告の負担とし、⑻ 被告国に生じた 費用は、その全部を原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 第1事件⑴ 別紙2処分一覧表1の「処分庁」欄記載の各処分庁が「原告番号」欄記載 の各原告に対して「処分日」欄記載の各年月日付けでした生活保護法25条 2項に基づく保護変更決定を取り消す。 ⑵ 被告国は、上記⑴の各原告に対し、それぞれ1万円及びこれに対する平成25年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 第2事件⑴ 主文3項同旨 ⑵ 被告国は、上記⑴の各原告に対し、それぞれ1万円及びこれに対する平成25年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 第3事件⑴ 主文4項同旨⑵ 被告国は、第3事件原告に対し、1万円及びこれに対する平成25年5月 16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 第4事件⑴ 主文5項同旨⑵ 被告国は上記⑴の各原告に対し、それぞれ1万円及びこれに対する平成26年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 第5事件⑴ 主文6項同旨⑵ 被告国は、上記⑴の各原告に対し、それぞれ1万円及びこれに対する平成27年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 第6事件 ⑴ 主文7項同旨⑵ 被告国は、上記⑴の各原告に対し、それぞれ1万円及びこれに対する平成27年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、埼玉県内において生活保護法の定める保護を受けている原告らが、 原告らに対応する保護の実施機関(処分行 分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、埼玉県内において生活保護法の定める保護を受けている原告らが、 原告らに対応する保護の実施機関(処分行政庁)がした後記の処分をそれぞれ受けたことから、被告らのうち、これらの処分行政庁の所属する公共団体である者に対し、原告らに対応する各処分の取消しを求めるとともに(以下、併せて「本件取消訴訟」という。)、後記の処分に係る生活扶助基準の改定が国家賠償法(以下「国賠法」という。)の適用上違法であると主張して、被告国に対 し、それぞれ、国賠法1条1項に基づく損害賠償及びこれに対する各改定の日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の遅延損害金の支払を求める事案である(本件取消訴訟に係る請求の趣旨には「平成25年厚生労働省告示第174号によって金額を減額する部分」(第1ないし第3事件)、「平成26年厚生労働省告示第136号によって金額を減額する部分」 (第4事件)及び「平成27年厚生労働省告示第227号によって金額を減額する部分」(第5、6事件)との記載がある。しかし、別紙2処分一覧表記載の各保護変更決定は、上記各告示に基づき生活保護受給者に対する保護費を改めて決定するものであり、原告らがこれらの決定に係る生活扶助基準の改定自体が違法である旨主張し、その取消しを求めていることからすると、上記各記 載にかかわらず、原告らが取消しを求める処分は、上記各改定に基づく各保護変更決定の全部であると解される。)。 (原告らが受けた処分)⑴ 第1事件ないし第3事件原告ら平成25年厚生労働省告示第174号による生活扶助基準の改定に伴い、 平成25年8月1日以降の生活扶助費を変更する旨の各保護変更決定(以下、上記告示を )⑴ 第1事件ないし第3事件原告ら平成25年厚生労働省告示第174号による生活扶助基準の改定に伴い、 平成25年8月1日以降の生活扶助費を変更する旨の各保護変更決定(以下、上記告示を「本件告示1」、上記改定を「平成25年改定」、上記各変更決定を「平成25年各変更決定」とそれぞれいう。)⑵ 第4事件原告ら平成26年厚生労働省告示第136号による生活扶助基準の改定に伴い、 平成26年4月1日以降の生活扶助費を変更する旨の各保護変更決定(以下、 上記告示を「本件告示2」、上記改定を「平成26年改定」、上記各変更決定を「平成26年各変更決定」とそれぞれいう。)(なお、第4事件訴状の請求の趣旨欄には、「別紙2処分一覧表4記載の各保護変更決定のうち、平成26年厚生労働省告示第136号(消費増税に対応するためになされた改定部分は除く。)によって金額を減額する部分を取り消す」旨記載されてい るが、上記告示において、消費税の増税に対応するためにされた改定部分とその余の改定部分を区別することは不可能であり、上記括弧書内の記載は請求の特定において意味がないから、第4事件原告らの請求は、平成26年各変更決定のうち、上記告示によって金額を減額する部分の全部の取消しを求めるものと解する。) ⑶ 第5事件及び第6事件原告ら平成27年厚生労働省告示第227号による生活扶助基準の改定に伴い、平成27年4月1日以降の生活扶助費を変更する旨の各保護変更決定(以下、上記告示を「本件告示3」、上記改定を「平成27年改定」、上記各変更決定を「平成27年各変更決定」とそれぞれいう。) (なお、以下、平成25年改定、平成26年改定及び平成27年改定を併せて「本件各改定」といい、平成25年各変更決定、平成26年各変更決定及 定を「平成27年各変更決定」とそれぞれいう。) (なお、以下、平成25年改定、平成26年改定及び平成27年改定を併せて「本件各改定」といい、平成25年各変更決定、平成26年各変更決定及び平成27年各変更決定を併せて「本件各変更決定」という。) 2 生活保護制度の概要等⑴ 憲法の定め すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する(25条1項)。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない(同条2項)。 ⑵ 生活保護法の定めア目的 生活保護法は、憲法25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮 するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする(1条)。 イ基本原理等すべて国民は、生活保護法の定める要件を満たす限り、生活保護法に よる保護(以下「保護」又は「生活保護」という。)を、無差別平等に受けることができ(2条。無差別平等の原理)、同法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない(3条。最低生活の原理)。また、保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低 限度の生活の維持のために活用することを要件として行われ(4条1項)、民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべて保護に優先して行われる(生活保護法4条2項。保護の補足性の原理)。同法1条から4条までに規定するところは、同法の基本原理であって、同法の解釈及び運用は、すべてこの原理に基づいてされなければならない (5条)。 保護は、厚生労働大臣(平成 補足性の原理)。同法1条から4条までに規定するところは、同法の基本原理であって、同法の解釈及び運用は、すべてこの原理に基づいてされなければならない (5条)。 保護は、厚生労働大臣(平成11年法律第160号による改正前は厚生大臣。以下では、同改正の前後で区別することなく「厚生労働大臣」という。)の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度に おいて行うものとし(8条1項)、上記基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならない(同条2項)。 また、保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世 帯の実際の必要の相違を考慮して、有効かつ適切に行うものとする(9 条)。 保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとし(10条本文)、これにより難いときは、個人を単位として定めることができる(同条ただし書)。 ウ保護の種類及び生活扶助の方法等 保護のうち生活保護法11条1項にいう生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、①衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの(12条1号)及び②移送(同条2号)の範囲内において行われる(同条柱書き。以下、この判決において「生活扶助」というときは、居宅において保護を受ける者 の上記①に係る保護を指す。)。 生活扶助は、金銭給付によって行うことを原則とする(31条1項)。 保護の変更等保護の実施機関は、常に、被保護者の生活状態を調査し、保護の変更を必要とすると認めるときは、速やかに、 す。)。 生活扶助は、金銭給付によって行うことを原則とする(31条1項)。 保護の変更等保護の実施機関は、常に、被保護者の生活状態を調査し、保護の変更を必要とすると認めるときは、速やかに、職権をもってその決定を行 い、書面をもって、これを被保護者に通知しなければならず(25条2項前段)、被保護者は、正当な理由がなければ、既に決定された保護を不利益に変更されることがない(56条)。 ⑶ 保護基準(平成25年告示による改正前のもの。以下、「改定前基準」といい、また、同改定の前後を問わず、一般に「保護基準」ということがあ る。)の定め等(乙4)ア厚生労働大臣は、生活保護法8条1項に規定する基準として保護基準を定めているところ、保護基準は、前記⑵ウの生活保護法11条1項に定める8種類の保護の基準はそれぞれ保護基準別表第1から第8までに定めるところによる旨定める(1項。乙4(75頁))。 イ地域の級地区分 保護基準別表は、全国の市町村を1級地-1、1級地-2、2級地-1、2級地-2、3級地-1及び3級地-2の6つの級地に区分し(別表第9)、生活扶助、住宅扶助、出産扶助及び葬祭扶助の基準額を、被保護者の居住地の地域の級地区分に応じて定めている(別表第1、第3、第6及び第8)。上記地域の級地区分は、大別すると、大都市及びその周 辺市町は1級地に、県庁所在地を始めとする中都市は2級地に、その他の市町村は3級地とされており、本件各変更決定の時点における原告らの各居住地のうち、さいたま市は1級地-1に、新座市は1級地-2に、川越市、草加市、上尾市及び春日部市は2級地-1に区分されていた。 (乙4(94頁以下)) ウ生活扶助基準(乙4(76頁以下))保護基準のうち、生活扶助基準(保護基 市は1級地-2に、川越市、草加市、上尾市及び春日部市は2級地-1に区分されていた。 (乙4(94頁以下)) ウ生活扶助基準(乙4(76頁以下))保護基準のうち、生活扶助基準(保護基準別表第1)は、基準生活費に関する定め(第1章)と加算に関する定め(第2章)に大別される。 居宅で生活する者(生活保護法30条1項本文参照)の基準生活費 は、個人別に定められた第1類の表に規定する額(例えば飲食物費や被服費など、個人単位に消費される経費に対応するものであり、年齢に応じて基準額が定められる。以下「第1類費」という。)と、世帯人員別に定められた第2類の表に規定する額(例えば光熱水費や家具什器費など、世帯全体としてまとめて支出される経費に対応するもので あり、世帯人数に応じて基準額及び加算額が定められる。以下「第2類費」という。)とから成る(以下、このように、標準世帯における生活扶助費から、年齢区分別、世帯人員別及び級地区分別の最低生活費を算出する過程の全部又は一部を「体系」といい(乙24参照)、具体的な世帯をこれに当てはめることを「展開」といい、展開の基礎とな る年齢区分、世帯人員、級地の各区分を指して「展開部分」というこ とがある。)。 改定前保護基準の別表第1第1章1⑵アは、基準生活費は、世帯を単位として算定するものとし、その額は第1類費の額(個人別の額)を合算した額と第2類費の額の合計額とすること、ただし、世帯人数が4人の世帯における基準生活費の額は、第1類費の額を合算した額に 0.95を乗じた額(その額に10円未満の端数が生じたときは、これを10円に切り上げるものとする。)と第2類費の額の合計額とし、世帯人数が5人以上の世帯における基準生活費の額は、第1類費の額を合算した額に0.9 た額(その額に10円未満の端数が生じたときは、これを10円に切り上げるものとする。)と第2類費の額の合計額とし、世帯人数が5人以上の世帯における基準生活費の額は、第1類費の額を合算した額に0.90を乗じた額と第2類費の額の合計額とすること、また、12月の基準生活費の額は、当該合計額に世帯構成員1人 につき級地別に別途定める期末一時扶助費を加えた額とすることとされていた。 第1類の表は、基準額を、級地区分ごとに、被保護者の年齢の区分(①0~2歳、②3~5歳、③6~11歳、④12~19歳、⑤20~40歳、⑥41~59歳、⑦60~69歳及び⑧70歳以上の各区 分)に応じて定めている。 第2類の表は、基準額(ただし、世帯人数5名以上の世帯については、1名増すごとに加算する額)及び地区別冬季加算額(11月から3月までの加算額)を、級地区分ごとに、保護受給世帯の世帯人員別に(平成25年改定前は、世帯人数1名、2名、3名、4名及び5名 以上の5段階に区分されていた。)定めている。 3 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに掲記の証拠〔枝番号のあるものについては、特記のない限り、枝番号を含む。以下同じ。〕及び弁論の全趣旨により認められる事実)⑴ 当事者 原告らは、別紙2処分一覧表1ないし6(以下、併せて「別紙2の各処分 一覧表」という。)記載の「処分年月日」の当時、当事者目録記載の住所に居住し、保護を受給していた(弁論の全趣旨)。 ⑵ 生活扶助基準の改定の経緯等ア生活保護制度の在り方に関する専門委員会による報告書平成15年7月28日、社会保障審議会の福祉部会の下に設置された 「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」(以下「本件専門委員会」という。乙15の1)は、平成16年12月15 会による報告書平成15年7月28日、社会保障審議会の福祉部会の下に設置された 「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」(以下「本件専門委員会」という。乙15の1)は、平成16年12月15日付けで「生活保護基準の在り方に関する専門委員会報告書」(以下「平成16年報告書」という。)を提出した(甲6、乙7)。 イ生活扶助基準に関する検討会による報告書 平成19年10月、厚生労働省社会・援護局長は、私的研究会である「生活扶助基準に関する検討会」(以下「本件検討会」という。)を設置した(弁論の全趣旨)。 本件検討会は、平成19年11月30日付け「生活扶助基準に関する検討会報告書」(以下「平成19年報告書」という。)において、要旨、 一般低所得世帯と比較すると、生活保護受給者の年齢階級別にやや低い世代とやや高めの世代が見られ、これは一般低所得世帯の消費実態からかい離している旨、世帯人員別には世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であるのに対して、世帯人員が少ない世帯に不利であるとの実態がある旨、級地別にみると、地域間の消費水準の差が縮小してい る旨など述べた(甲7の1、乙8)。 厚生労働大臣は、この報告書を受けた上で、平成20年度の予算が編成された平成19年12月当時、原油価格の高騰等が消費に与える影響等の当時の社会経済情勢を踏まえ、生活扶助基準の展開部分について見直しを行うことをしなかった(乙85)。 ウ生活保護基準部会による平成25年の検証 平成23年2月、社会保障審議会の下に「生活保護基準部会」(以下「本件基準部会」という。)が設置された(乙9(1頁))。 本件基準部会は、一般低所得世帯として、全国消費実態調査における第1・十分位世帯を用い、具体的な生活保護基準額を算出する際 基準部会」(以下「本件基準部会」という。)が設置された(乙9(1頁))。 本件基準部会は、一般低所得世帯として、全国消費実態調査における第1・十分位世帯を用い、具体的な生活保護基準額を算出する際に基本となる年齢、世帯人員及び地域別の基準額が第1・十分位世帯の消 費実態を十分反映しているかについて検証(以下「平成25年検証」という。)を行った。(乙9(3頁))その結果、年齢階級別、世帯人員別及び級地別のいずれにおいても、生活扶助基準額による各指数の分布と一般低所得世帯の消費実態による各指数の分布との間にかい離があるとされた(乙9(8頁))。 厚生労働大臣は、平成25年検証を受けて、本件各告示を発出し、本件各改定を行った(甲1、2)。 ⑶ 本件各改定(甲1、2、弁論の全趣旨)ア本件各改定の概要厚生労働大臣は、本件告示1ないし本件告示3により保護基準を順次 改正して、生活扶助基準の改定(本件各改定)を行ったところ、その概要は次のとおりである。 本件各改定では、①平成25年検証の結果に基づく生活扶助基準と第1・十分位世帯の消費実態との間における年齢区分別、世帯人員別及び級地区分別の格差の是正(以下、本件各改定において、この是正 を目的として行われた生活扶助基準の調整を「ゆがみ調整」という。)と、②物価の動向を勘案した生活扶助基準の改定(以下、本件各改定において、物価の動向を勘案して行われたものを「デフレ調整」という。)の2つの調整が、平成25年改定、平成26年改定及び平成27年改定の3回にわたり、段階的に実施された。 平成26年改定においては、ゆがみ調整及びデフレ調整に係る2年 次の改定に加えて、消費税率の引上げの影響を含む国民の消費動向等を総合的に勘案した改定が行われた。 に実施された。 平成26年改定においては、ゆがみ調整及びデフレ調整に係る2年 次の改定に加えて、消費税率の引上げの影響を含む国民の消費動向等を総合的に勘案した改定が行われた。 本件告示1による改正後の保護基準は、平成25年8月1日から、本件告示2による改正後の保護基準は、平成26年4月1日から、本件告示3による改正後の保護基準は、平成27年4月1日からそれぞ れ適用するものとされている。 (以上、甲9(26頁以下)、弁論の全趣旨)イゆがみ調整の概要ゆがみ調整は、具体的には、①第1類費の基準額について、各年齢区分間の基準額の差を小さくする、②第1類費の基準額について、世帯員 の増加に応じた逓減率(世帯員が1人増加するごとに第1類費の基準額の合計に乗ずる割合)の世帯員の増加に応じた逓減割合を大きくするとともに、第2類費の基準額について、世帯員の増加に応じた世帯人員別の基準額の増額の幅を大きくする、③第1類費及び第2類費の基準額について、それぞれの級地区分間の基準額の差を小さくすることを内容と するものである。 (以上、乙19、20)ウデフレ調整の概要厚生労働大臣は、本件各改定に当たり、総務省から公表されている消費者物価指数(以下「総務省CPI」という。)を基に、すべての消費品 目から、①生活扶助以外の扶助で賄われる品目(家賃、教育費、医療費など。以下「除外品目①」という。)及び②原則として保有が認められておらず又は免除されるため保護受給世帯において支出することが想定されていない品目(自動車関連費、NHK受信料など。以下「除外品目②」といい、除外品目①と併せて以下「除外品目」と総称する。)を除いて算 出した消費者物価指数(以下、すべての消費品目から除外品目を除いた 品目(自動車関連費、NHK受信料など。以下「除外品目②」といい、除外品目①と併せて以下「除外品目」と総称する。)を除いて算 出した消費者物価指数(以下、すべての消費品目から除外品目を除いた 品目を「生活扶助相当品目」といい、生活扶助相当品目を対象とする消費者物価指数を「生活扶助相当CPI」という。)の動向を勘案することとし、具体的には、平成20年の年平均の生活扶助相当CPI(以下では単に「平成20年生活扶助相当CPI」といい、他の年についても同様に表記する。)と平成23年生活扶助相当CPIを用いて算出した平成 20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率(マイナス4. 78%。以下「本件下落率」ということがある。)を勘案してデフレ調整を行った(乙19、21)。 なお、デフレ調整は、すべての保護受給世帯について適用されている(乙A46)。また、生活扶助相当CPIを採用することについて、本件 基準部会での検討はされていなかった(争いがない)。 エ激変緩和措置等ゆがみ調整においては、平成25年検証の結果で示された生活扶助基準額と第1・十分位世帯の消費支出のかい離率の2分の1が反映された(以下「2分の1処理」という。)。 また、本件各改定は、平成25年度から3年間をかけて段階的に実施するものであるが、これによる見直しの影響を一定程度に抑える観点から、改定前基準からの増減幅は、±10%を超えないように調整された(乙19)。 ⑷ 原告らに対する処分等 ア別紙2の各処分一覧表の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁は、本件告示1ないし3に基づき、「原告番号」欄記載の各原告に対し、本件各変更決定をした(争いがない)。 イ原告らは、それぞれ、自らが受けた本件各変更決定につき、別紙2の各処 記載の各処分行政庁は、本件告示1ないし3に基づき、「原告番号」欄記載の各原告に対し、本件各変更決定をした(争いがない)。 イ原告らは、それぞれ、自らが受けた本件各変更決定につき、別紙2の各処分一覧表記載の「審査請求日」欄記載の日に埼玉県知事に対して審査請 求を行ったところ、埼玉県知事は、別紙2の各処分一覧表記載の「審査請 求に係る裁決日」欄記載の日に、原告らの各審査請求を棄却する旨の各裁決を行い、その頃(一部の者については、争いがある。)、原告らにその旨を通知し、原告らはこれを知った。原告らは、本件各変更決定について、別紙2の各処分一覧表記載の「再審査請求日」欄記載の日に厚生労働大臣に対して再審査請求を行った。(弁論の全趣旨) ウ第1事件原告らは、平成26年8月1日に第1事件に係る訴えを、第2事件原告らは、平成27年6月8日に第2事件に係る訴えを、第3事件原告は、平成27年10月22日に第3事件に係る訴えを、第4事件原告らは、平成27年11月13日に第4事件に係る訴えを、第5事件原告らは、平成28年3月31日に第5事件に係る訴えを、第6事件原告らは、平成 28年8月16日に第6事件に係る訴えをそれぞれ提起した(記録上明らかな事実)。 エ厚生労働大臣は、前記イの再審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした(弁論の全趣旨)。 第3 争点及び争点に関する当事者の主張の要旨 本件の争点は、本件訴えの適法性の有無(争点1)、本件各改定に基づいてされた本件各変更決定が違法か否か(争点2)及び国賠法1条1項の違法性等(争点3)である。 1 争点1(本件訴えの適法性の有無)(被告埼玉県、被告さいたま市、被告草加市の主張の要旨) 原告番号7、8(ただし、平成25年変更決定に限る。以下、この 違法性等(争点3)である。 1 争点1(本件訴えの適法性の有無)(被告埼玉県、被告さいたま市、被告草加市の主張の要旨) 原告番号7、8(ただし、平成25年変更決定に限る。以下、この争点について同じ。)、16(以下「原告ら3名」という。)がした再審査請求は、いずれも再審査請求期間を徒過した不適法なものとして却下された。したがって、原告ら3名が提起した取消しの訴えに係る出訴期間の起算日は、原告ら3名がそれぞれ審査請求についての裁決があったことを知った日となる(行政事件訴 訟法14条参照)。そして、原告ら3名は、別紙2処分一覧表1に記載のとお り、審査請求の通知を受けたところ、原告ら3名が第1事件に係る訴えを提起したのは、平成26年8月1日であり、上記通知を受けた日から6か月を経過した後であるから、原告ら3名の第1事件訴えの提起は、出訴期間を経過しており、不適法である。 (原告ら3名の主張の要旨) 争う。 2 争点2(本件各改定に基づいてされた本件各変更決定が違法か否か)(原告らの主張の要旨)以下のとおり、本件各改定は憲法25条並びに生活保護法3条及び8条に違反しており、これに基づいてされた本件各変更決定は違法である。 ⑴ 生活保護基準の改定の適法性の判断枠組み生活保護法8条1項は、生活保護基準の設定を厚生労働大臣の権限としている一方で、同条2項は、同項が規定する各要素を考慮して生活保護基準の設定をしなければならない旨規定している。そして、生活保護基準が憲法25条1項の保障する生存権の保障水準を画する極めて重要なものである一方 で、その改定が厚生労働大臣という行政庁の判断1つで行われることからすると、同改定に係る厚生労働大臣の判断は、厳格な司法審査に服するというべきである。 水準を画する極めて重要なものである一方 で、その改定が厚生労働大臣という行政庁の判断1つで行われることからすると、同改定に係る厚生労働大臣の判断は、厳格な司法審査に服するというべきである。 このような観点から、厚生労働大臣が生活扶助基準の改定の適否の審査においては、①本件生活扶助基準の改定に対応するよう要保護者の需要の変動 があるか否かと②改定後の生活扶助基準の内容が生活保護受給者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるか否かにつき、専門家による諮問機関である生活保護基準部会の検討に基づいた高度に専門技術的な考察がなされたか否か、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等を厳格に審査し、厚生労働大臣の上記判断の過程及び手 続に過誤、欠落があるか否かを判断するべきである。 ア生活扶助基準の引下げは原則として許されないこと生活保護基準そのものの改定に伴う生活扶助費の減額と、それ以外の理由に基づく生活扶助費の減額とで、それによって生じる保護受給者の不利益に変わりがないことからすると、生活保護法56条の法意は前者にも妥当する。また、社会権規約2条1項は、締約国のとった措置によ って権利の実現がそれ以前よりも後退することは許されないという制度後退禁止原則を定め(一般的意見3・パラグラフ10、甲C3・7頁)、同規約9条は、社会権規約一般的意見第10において、社会保障に対する権利の後退は社会権規約に違反するとの強い推定が働き、社会保障を意図的に後退させる場合、締約国は、その後退措置がすべての選択肢を 最大限慎重に検討した後に導入されたものであること、締約国の利用可能な資源を最大限かつ完全に利用してもなおその後退措置が必要であることを証明しなければならないとの解 退措置がすべての選択肢を 最大限慎重に検討した後に導入されたものであること、締約国の利用可能な資源を最大限かつ完全に利用してもなおその後退措置が必要であることを証明しなければならないとの解釈指針を示している(パラグラフ42、甲C9・13頁)。 これらの定めからすると、最低限度の生活の需要を満たすために必要 として設定された生活保護基準を引き下げることは、原則として許されず(制度後退禁止原則)、国の側で正当な理由(具体的な必要性及び相当性)を主張立証しないかぎり、裁量権の逸脱濫用が認められ、違法になるというべきである。 イ生活保護法8条2項の定める法定考慮事項を考慮せずに財政事情等の事 項を考慮することは許されないこと生活保護法8条1項は、生活保護基準を要保護者の需要を基として定めるべきことを定め、同条2項が生活保護基準の具体的な考慮事項を定めている。そして、これらの事項は、いずれも要保護者の生活上の需要を調査把握するための要保護者の生活上の属性にかかわる事項であるか ら、厚生労働大臣は、生活保護基準の設定に当たって、これらの事項を 考慮することが義務付けられている一方で、これらの事項に含まれない国の財政事情、国民感情及び政権与党の公約等の生活外的要素を考慮することを禁じているというべきであり、仮にこれらの生活外的考慮要素を考慮することそのものが許容されるとしても、その重みは生活保護法が考慮すべきことを定めた事項に比して劣後するというべきである。 ウ専門家である基準部会の設置経緯等の生活保護行政の実態も考慮されるべきこと生活保護法が制定された当時から、厚生労働大臣が生活保護基準を設定するに当たって、基礎資料及び具体的な運用に当たって専門家によって構成された社会保障制度審議会の部 行政の実態も考慮されるべきこと生活保護法が制定された当時から、厚生労働大臣が生活保護基準を設定するに当たって、基礎資料及び具体的な運用に当たって専門家によって構成された社会保障制度審議会の部会を活用することが制度上予定さ れており(甲5(168頁))、過去に、生活保護基準の方式を変更した際にも、社会福祉審議会の専門分科会や本件専門委員会の検討を経ていた。これを当然の前提として厚生労働大臣の生活保護基準の設定が正当化されてきた。このように、生活保護基準の改定は専門家からなる審議会の検討結果を踏まえて行われてきたというのが歴史的事実であり、 厚生労働大臣がその独自の専門的知見に基づき生活保護基準の改定を行ってきたことはない。このことに加え、生活保護基準につき常設専門部会設置の必要性が認識され、平成23年に、本件基準部会が設置されたことなどに照らすと、厚生労働大臣が生活保護基準の改定について専門的知見を有しているということはできない。 かえって、本件基準部会は、社会保障制度審議会の常設の部会であり、その構成員、審議時期及び審議内容は厚生労働省がコントロールしていること等からすると、本件基準部会は、生活保護行政に組み込まれているものであり、生活保護行政のうち生活保護基準の改定の適否が問題とされる場合には、これらの専門部会の意見を無視することはできないと いうべきである。 したがって、本件基準部会の審議検討を経ない場合の厚生労働大臣の裁量判断の適法性は、本件基準部会の審議検討を経た場合に比して厳しく審査され、国の側で生活保護基準の変更に係る正当な理由を主張立証しない限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるというべきである。 ⑵ ゆがみ調整による減額の不合理性ゆがみ調整は、以下のと され、国の側で生活保護基準の変更に係る正当な理由を主張立証しない限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるというべきである。 ⑵ ゆがみ調整による減額の不合理性ゆがみ調整は、以下のとおり、統計等の客観的な数値等の合理的関連性及び専門的知見との整合性を欠き、明らかに誤りである。 アゆがみ調整の手法に問題があり、判断過程の説明内容に誤りがあること被告らは、①第1・十分位世帯の全てが生活保護を受給したものとみ なした上、②この生活扶助額の総額を不変として、第1・十分位世帯における年齢階層別の相互間・級地別の相互間・世帯人員別の相互間の各支出額の割合を算出し、これらを指数化し、③この指数を用いて、生活扶助基準における年齢階層別の相互間・級地別の相互間・世帯人員別の相互間のゆがみを調整した旨主張する。 しかしながら、ゆがみ調整は、第1・十分位世帯の消費実態をものさしとして、生活扶助基準における年齢階層別の相互間・級地別の相互間・世帯人員別の相互間のゆがみを相対的に調整するものであるところ、上記各相互間の支出額の割合を指数化するためには、第1・十分位世帯(サンプル世帯)の消費支出額の実データを用いれば足り、上記①のよ うに、第1・十分位世帯の全てが生活保護を受給したものとみなすような操作(データの加工)をする必要はない。また、生活扶助基準における年齢階層別の相互間・級地別の相互間・世帯別の相互間のゆがみを調整するにも、サンプル世帯である第1・十分位世帯の消費支出の実データにより、上記各相互間の支出額の割合を指数化すれば足り、上記①な いし③のような作業も必要がない。 また、被告らは、生活保護受給世帯と第1・十分位世帯(サンプル世帯)の構成が異なっていたため、ゆがみ調整により総額で年間9 すれば足り、上記①な いし③のような作業も必要がない。 また、被告らは、生活保護受給世帯と第1・十分位世帯(サンプル世帯)の構成が異なっていたため、ゆがみ調整により総額で年間90億円の生活扶助費の削減効果が生じた旨主張する。 しかしながら、生活保護受給世帯を除く第1・十分位世帯には大幅な減額となった多人数世帯が多く、増額となった単身高齢世帯(60歳以 上の単身者のみで構成される世帯)が少ないのに対し、生活保護受給世帯には、第1・十分位世帯との比較において、減額となった多人数世帯が少なく、増額となった単身高齢者世帯が多いのであるから、ゆがみ調整後の生活扶助費の削減効果が生じることはあり得ず、かえって、大幅な増額効果が見られるはずであり、この点においても、被告らの説明は 整合性がない。 イ比較対象群から生活保護受給世帯が除外されていないことゆがみ調整は、生活扶助基準額と第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額を比較し、指数化するものであるところ、このような比較を行う場合には、統計学上、比較する2つの集団が比較の対象とする要因に関し て厳密に区別されなければならない。したがって、ゆがみ調整を適正に行うためには、生活保護受給世帯と、生活保護受給世帯を除いた第1・十分位世帯を比較しなければならなかった。 しかしながら、厚生労働大臣は、ゆがみ調整をするに当たって、比較対象群である第1・十分位世帯から、比較しようとする生活保護受給世 帯を除外しなかったのであるから、ゆがみ調整は、統計学上、適正に行われたということはできない。 これに対し、被告らは、第1・十分位世帯の生活扶助費相当支出額と比較されたのは、生活保護受給世帯の実際の消費支出額ではなく、当時の保護基準による生活扶助基準額であり、2つの集団 うことはできない。 これに対し、被告らは、第1・十分位世帯の生活扶助費相当支出額と比較されたのは、生活保護受給世帯の実際の消費支出額ではなく、当時の保護基準による生活扶助基準額であり、2つの集団又は2つの集団に おけるそれぞれの消費支出を比較したものではない旨主張する。しかし ながら、生活保護受給世帯でも第1・十分位世帯でも、世帯が決まれば、その世帯構成員の年齢・世帯人員・級地に基づき生活扶助基準額が一義的に定まり、第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額も、第1・十分位に属する世帯が決まることによって、必然的に定まるものであるから、生活保護受給世帯と第1・十分位世帯との比較可能性の問題は、生活扶 助基準額と第1・十分位世帯の生活扶助基準相当支出額との比較の妥当性の問題に直結する。したがって、生活扶助基準額と第1・十分位世帯の生活扶助相当支出との比較の妥当性を確保するためには、上記原則に従って、生活保護受給世帯と第1・十分位世帯との比較可能性が確保される必要がある。 ウ回帰分析に不備があること等決定係数が著しく低い点決定係数とは、統計学において、説明変数(独立変数・アウトプットされる変数)が被説明変数(従属変数・アウトプットされる変数)のどれくらいを説明できるかを表す値である。被告国がゆがみ調整の際 に用いた重回帰分析は、決定係数が0.3程度である。決定係数が0. 3であるということは、被説明変数につき7割が説明変数以外の要素により影響を受けたことを意味する。このような低い決定係数の回帰モデルの信用性は低く、被告国が使用した回帰モデルが不適切であり、同回帰モデルに基づき政策の意思決定を行ったのは、合理性を欠くと いうべきである。 t検定の結果の無視回帰分析の計画性を事後的に検 用性は低く、被告国が使用した回帰モデルが不適切であり、同回帰モデルに基づき政策の意思決定を行ったのは、合理性を欠くと いうべきである。 t検定の結果の無視回帰分析の計画性を事後的に検証するために、t検定が行われる。統計学的検定に関する考え方のうち、フィッシャー理論(有意性検定)による場合には、t検定において、帰無仮説を立て、これが棄却され るかどうかが判断され、帰無仮説が棄却された場合には、当該説明変 数は効果があるとされ、帰無仮説が採択された場合(帰無仮説に反することが検定において認められなかった場合)には、直ちに説明変数に効果がないと判断するのではなく、判断を保留し、データやモデルを変えて実験等を繰り返し、帰無仮説が棄却できるまで、正しいモデルとしてみなさないこととなる(これに対し、統計学的検定のうち、 ネイマン=パーソン理論(仮説検定)によれば、フィッシャー理論による場合のような帰無仮説の評価を行わず、①帰無仮説が正しいにもかかわらずこれを採択する過誤(第1の過誤)と、②対立仮説が正しいにもかかわらずこれを棄却して帰無仮説を採択する過誤(第2の過誤)という基準を導入し、この過誤の可能性(第2の過誤には(1― 検出力))を確率の尺度で示し、これによって、採択した仮説の誤りに関するリスクを評価することになる。)。 被告国は、平成25年検証(乙9)において用いた重回帰分析についてt検定を行い、帰無仮説を評価した。ネイマン=パーソン理論に立てば、これは、第2の過誤に当たる可能性を指すことになるが、被告 国が当該過誤の可能性(上記(1-検出力))を提示していないから、明らかな誤りということになる。被告国のt検定が、フィッシャー理論によるものである場合には、被告国が行ったような帰無仮説の評 国が当該過誤の可能性(上記(1-検出力))を提示していないから、明らかな誤りということになる。被告国のt検定が、フィッシャー理論によるものである場合には、被告国が行ったような帰無仮説の評価をすることになるが、その場合には、説明変数について帰無仮説が棄却されるまで、データやモデルを変えて実験を繰り返すことになるは ずであるが、被告国は、全ての説明変数について帰無仮説を棄却するという検定結果が出なかったにもかかわらず、実験を繰り返すことをせず、信用性の低い決定係数をそのまま採用した。このような重回帰分析は、正しいモデルに基づくものということはできず、統計学上の正当性を有していない。したがって、これに基づく意思決定には誤り がある。 回帰分析の結果の適正化のための検討の不備平成25年検証のゆがみ調整で用いた重回帰分析において、①誤差項の分散均一性(与えられたどの観測値でも分散が等しい状態)、②正規性(データの母集団が正規分布に従っている状態)、③説明変数間の多重共線性(説明変数の中に、相関係数が高い組合せがある状態) の各問題につき、検討を行うことは、統計学上の大原則であるところ、被告国はこれらの検討を行っていない。そして、これらの検討を行っていない場合には(甲B44)、その正確性に問題が生じるため、これらの検討を行っていない被告国が行った重回帰分析は統計学上の正当性を有していない。 また、被告国は、今回の回帰モデルが通常の最小二乗法であるOLSである旨主張するが、厚生労働省が審議会に資料として提出した最小二乗法であるOLSのグラフ(甲B44(19頁図4))は、主成分回帰の結果を示しているものであり(甲B44(20頁図5)参照)、説明が整合しない。そのため、これを提出した厚生労働省 して提出した最小二乗法であるOLSのグラフ(甲B44(19頁図4))は、主成分回帰の結果を示しているものであり(甲B44(20頁図5)参照)、説明が整合しない。そのため、これを提出した厚生労働省が専門的知 見を有しているということはできない。しかも、本件基準部会にも、統計学の専門家がいなかったことから、OLSと主成分回帰のどちらに基づく回帰分析をしたのか疑問を提示する者がいなかった。このような検討においては、専門家の分析検証を経たということはできない。 エ第1・十分位世帯の消費支出の生活扶助基準額への反映比率を一律2分 の1としたこと(2分の1処理)が不合理であること被告国は、平成25年検証で、生活扶助基準額と第1・十分位世帯の消費支出のかい離率が示されたにもかかわらず(乙9(8頁))、ゆがみ調整では、恣意的に、同かい離率に2分の1を乗じた率を用いた(2分の1処理)。 被告国は、同措置は激変緩和措置として行われたものである旨主張す る。しかしながら、そもそも激変緩和措置とは、生活扶助基準額が減額となる世帯の負担を軽減することを目的とした措置であるが、2分の1処理は、生活扶助基準額が増額した場合にも適用されるものであり、実際の効果を見ても、子供のいる2人世帯の4割以上・同3人世帯の3割程度の世帯類型の生活扶助基準額の減額又は不変の効果を生じさせたこ とに鑑みると、これを激変緩和措置ということはできない。 そうすると、2分の1処理は、ゆがみ調整の中における検討であることになるが、被告国は、本件訴訟において、ゆがみ調整における議論において2分の1処理に何ら言及せず、これを秘匿しようとし、2分の1処理の存在が明らかになった後の主張においても、その説明が一貫する ことはなかった。このことから いて、ゆがみ調整における議論において2分の1処理に何ら言及せず、これを秘匿しようとし、2分の1処理の存在が明らかになった後の主張においても、その説明が一貫する ことはなかった。このことからすると、厚生労働大臣は、特段の検討をすることなく2分の1処理を行ったことが明らかであり、その判断過程に過誤がある。 なお、厚生労働大臣が2分の1処理をするに当たって何らかの判断をしていたとしても、それは、ゆがみ調整が財政的にニュートラルである などと説明しておきながら、生活扶助費を約90億円以上削減したことから明らかなとおり、更なる生活扶助費の削減が目的であり、生活保護受給世帯への影響を考慮しなかったその判断過程には過誤があるというべきである。また、被告国は、2分の1処理がゆがみ調整における統計上の限界を踏まえたものという説明もするが、これは後付けの説明であ り、厚生労働大臣の判断の過程でこのような点が考慮されたとは認められない。 ⑶ デフレ調整によって減額したことの不合理性厚生労働大臣は、厚生労働省が独自に考えた特異な計算方式である生活扶助相当CPIを用いて、生活扶助相当CPIの下落率マイナス4.78パー セント(本件下落率)の分だけ、生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に 増加し、同世帯の消費需要がデフレによる物価の下落とともに減少したと判断して、本件各改定をした。 しかしながら、デフレ調整は、以下のとおり、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものであり、生活扶助相当CPIの下落率の分だけ生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加したとい う被告国の判断の過程には、過誤・欠落がある。 アこれまで物価を考慮した生活扶助基準の調整をしたことがなく、このような手法を採用す の分だけ生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加したとい う被告国の判断の過程には、過誤・欠落がある。 アこれまで物価を考慮した生活扶助基準の調整をしたことがなく、このような手法を採用するには専門家による専門的知見に基づく適切な分析及び検証を行う必要があったこと水準均衡方式が採用される契機となった昭和58年の意見具申は、 生活扶助基準を当該年度に予想される国民の消費動向に対応させる見地から、政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠することが妥当であるとして、①水準均衡方式を提言し、生活扶助基準は、昭和59年以降から本件各改定に至るまでの間、同方式によって定立されてきた。そして、生活扶助基準の定立が、多数の国民の生活に直結す ることとなることや、②水準均衡方式は、客観的な指標に基づく生活扶助基準の改定方式であり、恣意の入る余地がない改定方式ということができ、これを用いることによって、生活扶助基準の水準が不適切なものになるということは理論上考えられないというべきであることなどからすると、新たな方式を採用する場合には、当該方式が低所得 者の消費需要を的確に踏まえたものといえるかどうかにつき、社会保障制度や統計、物価に係る専門家等の意見を踏まえなければならないというべきである。 しかも、昭和58年の意見具申は、そのなお書きにおいて、賃金や物価はそのまま消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資 料にとどめるべきであるとしており(乙11)、このことからすれば、 物価を指標にして生活扶助基準を改定することはできないというべきである。 これに対し、被告らは、本件基準部会が、物価を考慮して生活扶助基準を改定することを容認していた旨主張する。しかしながら、本件基準部会は、デフレ調整 準を改定することはできないというべきである。 これに対し、被告らは、本件基準部会が、物価を考慮して生活扶助基準を改定することを容認していた旨主張する。しかしながら、本件基準部会は、デフレ調整を容認しておらず、物価を考慮することを本 件基準部会も認めていたという事実は無い(甲15の1(9頁以下))。かえって、本件基準部会においては、全国一律の物価指数を当てはめるということになれば非常に慎重に考えなければならないことやそのような方法は本件基準部会の判断ではないことを記録するよう求める意見などが出されていた(甲B1の12)。 したがって、被告らの上記主張は、いずれも理由がない。 イ生活扶助相当CPIにおいて平成22年のウエイトが採用されたことが誤りであること生活扶助相当CPIは、家計調査における平成22年のウエイトを採用したところ、生活扶助相当CPIに含まれる消費品目のうち、平 成20年から平成23年にかけての物価の下落率が高い10個の品目は、全て電化製品であった。特に、この間のテレビの物価の下落率はマイナス1.98パーセントであり(甲A72)、本件下落率(マイナス4.78パーセント)に占める割合が41.4パーセントに及んでいる。 これほどまでにテレビの寄与度が増大した背景には、平成22年当時の家電エコポイント制度の開始や地上デジタル放送への移行に備えた需要増加という特殊事情があった(甲A62(11頁))。しかしながら、一般に、低所得者の消費支出の割合は、食費や光熱費等の生活必需品が多くなり、教養娯楽費等の占める割合は低くなるところ、低 所得者は、高価な電化製品を購入する余裕がないことが多い。上記特 殊事情に関しても、家電エコポイント制度は、家電製品を購入した際に付与されたポイ 等の占める割合は低くなるところ、低 所得者は、高価な電化製品を購入する余裕がないことが多い。上記特 殊事情に関しても、家電エコポイント制度は、家電製品を購入した際に付与されたポイントで更に家電製品の購入を促すというものであるが、経済的に余裕のない生活保護受給世帯がこのようなポイント付与を動機としてテレビを購入するということは考え難い上(甲A62(12頁))、生活保護受給世帯には地上デジタル放送への移行に伴 い無料チューナーが配布されたから、地上デジタル放送への移行に伴いテレビを買い替える必要もなかった。このように、上記特殊事情は、生活保護受給世帯とは無縁であるのに、これを背景とした平成22年のウエイトを使用したことは、生活扶助相当CPIの変化率の算出結果を著しく歪ませるものであり、生活保護受給世帯の消費需要を測定 する算式として用いるには統計上の正当性がなく、誤りである。 これに対し、被告らは、現実の消費構造を反映した物価指数を算定するためには、物価指数の算定時点とできるだけ近接した時点の消費の構造を示すデータを用いるのが相当である旨主張する。しかしながら、前記のとおり、生活扶助相当CPIにおいて、生活保護受給世帯 が消費することが想定されていないテレビ等を含めて物価の変動率を算定しているから、生活扶助相当CPIが基礎としたデータは、平成20年から平成23年までの平均的な消費構造を示すものではない。 以上によれば、生活扶助相当CPIの算出の結果は低所得者の消費実態と整合しないばかりか、平成20年から平成23年にかけての電 化製品の物価の下落の影響を直接に受けた数値をそのまま利用してデフレ調整をしたものであり、不合理である。 ウ生活扶助相当CPIの算式が不合理であること生活扶助相 成23年にかけての電 化製品の物価の下落の影響を直接に受けた数値をそのまま利用してデフレ調整をしたものであり、不合理である。 ウ生活扶助相当CPIの算式が不合理であること生活扶助相当CPIの算式に学説上の裏付けがないこと総務省統計局は、消費者物価指数の指数算式につき、ラスパイレス連 鎖基準方式と中間年バスケット方式をCPIの参考系列として公表し (甲A62(6頁))、長年にわたり、一貫して、物価の算出方法として、ラスパイレス方式を採用してきた。これらの指数は、いずれも学術的な根拠及び国際的な議論に基づく正当性が確保された算式である。 しかしながら、被告国は、生活扶助相当CPIの算出において、上記 算出方式を完全に無視し、平成20年から平成22年までの間をパーシェ方式で、平成22年から平成23年までの間をラスパイレス方式でそれぞれ算出し、ラスパイレス方式とパーシェ方式を組み合わせるという独自の方式を以って、平成20年から平成23年までの間の物価の変化率を算出した。このような算出方法には統計上の正当性がな い。 むしろ、総務省統計局が採用するラスパイレス方式を用いて平成20年から平成23年までの間の物価の変化率を算出することは、簡易かつ合理的であった。この場合、消費者物価指数が5年ごとに算定されるため、平成20年から平成22年までの間は平成17年のウエイト、 平成22年から平成23年までの間を平成22年基準でそれぞれ算出することになり、依拠するウエイトが異なることになるが、この場合には、総務省統計局において取扱いが明示されている(甲A62(4頁))。 被告らは、生活扶助相当CPIの算式は、ロウ指数である旨主張す る。 a しかしながら、ロウ指数は、物価指数の算出に当たり 務省統計局において取扱いが明示されている(甲A62(4頁))。 被告らは、生活扶助相当CPIの算式は、ロウ指数である旨主張す る。 a しかしながら、ロウ指数は、物価指数の算出に当たり各対象品目のウエイトを考慮すべきであるとの立場から提唱されたウエイト固定型の指数の総称にすぎず、その算式を検証することなくして、統計上の正当性を取得するわけではないから(甲A62(6頁))、ロウ指 数であることのみをもって、統計学上正当であるということはできな い。 b また、ロウ指数とは、基準時点から比較時点までの品目バスケットの物価の変動を算出する際に、その間のいずれかの時点のウエイトを参照する指数の総称であるから、品目バスケットの中身については、基準時点から比較時点までの間、同一でなければならない。しかしな がら、生活扶助相当CPIは、平成20年から平成22年までの間の品目バスケットと平成23年までの品目バスケットが32品目にわたり異なっており、ロウ指数に当たらない。 なお、指数の算式に中間年バスケット方式がある。しかしながら、同方式は、基準時点と比較時点のちょうど中間の時点におけるバスケ ットがその間の代表的かつ平均的な消費構造を反映している可能性があるというところに統計上の正当性を基礎づける点がある(証人A(8、9頁))のに対し、生活扶助相当CPIのウエイト参照時点である平成22年は基準時点である平成20年と比較時点である平成23年のちょうど中間ではないから、生活扶助相当CPIは中間年バス ケット方式ではない(甲A62(6頁))。 c 仮に、生活扶助相当CPIがロウ指数であるとしても、ロウ指数は、ウエイト参照時点につき、基準時点から比較時点の間のいずれかの時点でウエイトを固定する方式であり、 ではない(甲A62(6頁))。 c 仮に、生活扶助相当CPIがロウ指数であるとしても、ロウ指数は、ウエイト参照時点につき、基準時点から比較時点の間のいずれかの時点でウエイトを固定する方式であり、参照時点のウエイトが特殊事情により、その間の消費実態とかけ離れた数値である場合には、基 準時点と比較時点の価格指数を著しく歪ませてしまうことになる。したがって、ウエイト参照時点が基準時点から比較時点の間の代表的かつ平均的な消費構造からかけ離れている場合には、統計学上、ロウ指数を用いてはならない(甲A75の1・3)。 そして、前記のとおり、平成22年度のウエイトは、テレビの寄与 度が異常に増大しており、生活保護受給世帯の消費構造とかい離して いたのみならず、基準時点から比較時点の間の消費実態やその間の代表的かつ平均的な消費構造からかけ離れていたから、生活扶助相当CPIは、統計上の正当性がない。 生活扶助相当CPIの算出の方式によって、物価の下落率が過大に算出されたこと 生活扶助相当CPIによる本件下落率がマイナス4.78パーセントであるのに対し、平成20年から平成23年までの間の生活扶助相当品目につきラスパイレス方式を採用した場合には、物価の下落率はマイナス2.26パーセントにとどまる(甲A49)。このような差は、生活扶助相当CPIでは、平成22年度をウエイトとして設定し、平 成22年を基準時点として比較時点を平成23年としたパーシェ方式を採用したという評価できるところ、パーシェ方式には下方バイアスがあり、基準時点である平成22年から比較時点である平成23年までの間に価格が大きく下落したことから、パーシェ方式の下方バイアスが大きく影響した疑いがある。 エ生活扶助相当CPIにおける基準年度( 準時点である平成22年から比較時点である平成23年までの間に価格が大きく下落したことから、パーシェ方式の下方バイアスが大きく影響した疑いがある。 エ生活扶助相当CPIにおける基準年度(始期)の選択が不合理であること被告国の主張のとおり、平成16年報告書(乙7)において、生活扶助基準額が一般低所得世帯の消費実態と概ね均衡していると結論付けられた後、平成19年報告書(乙8)において、生活扶助基準額が一般低 所得世帯の消費実態よりも高いという結論になったのであれば、論理的には、平成16年から平成19年までの間のいずれかの時点で、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態からかい離したことになる。そして、生活扶助基準は、平成16年以降一貫して据え置かれてきたのであるから、仮にデフレ調整を行うのであれば、その起点となる基準時点は、平 成19年以前となるはずであり、これを平成20年とすべき根拠はない。 しかも、平成20年は、原油価格等の高騰などの特別な事情を理由として一時的に物価が高騰した年であり、同年を生活扶助相当CPIの基準時点とすると、基準時点から比較時点までの間の物価の変化率を現実の経済の実態以上に大きく算出されることになるから、同年を基準点とするのは誤りである。 オ比較時点の選択が恣意的であること生活扶助相当CPIの検証作業中に、既に総務省統計局から平成24年の消費者物価指数が公表され、被告国において参照可能であった。したがって、仮にデフレ調整を行うとしても、その終期(比較時点)は、平成24年とするべきであり、これを平成23年としたことに、合理的 な理由はない。 カ生活扶助相当CPIが、家計調査の一般世帯のデータを利用・加工したため、生活保護受給世帯の消費構造と関係がなく、生 とするべきであり、これを平成23年としたことに、合理的 な理由はない。 カ生活扶助相当CPIが、家計調査の一般世帯のデータを利用・加工したため、生活保護受給世帯の消費構造と関係がなく、生活扶助相当CPIによって算出された物価の変動率が生活保護受給世帯の可処分所得に影響するとはいえないこと 生活保護法8条2項の定めに照らせば、生活保護基準を定めるに当たっては、生活保護受給世帯の消費実態に即したデータを考慮すべきである。しかも、デフレ調整は、物価の変動率が生活保護受給世帯の可処分所得に直接影響したことを前提とするものであるから、当該物価の変動率を算出するに当たって、当該物価の変動率が生活保護受給 世帯の消費実態とかい離していないことが前提となる。したがって、生活扶助相当CPIの算出に当たっても、生活保護受給世帯の消費実態に即したデータである社会保障生計調査のデータを用いるべきであった。社会保障生計調査は、サンプル数が150万世帯の生活保護受給世帯のうち1100世帯を対象とするものである一方で、家計調査 は、5000万世帯のうちの8000世帯を対象とするものであるか ら、社会保障生計調査がサンプル数等において家計調査に劣るということはできない(甲14(5~7頁))。しかしながら、厚生労働大臣は、家計調査の結果における一般世帯の品目別消費支出金額を基に作成されたウエイトを用いており、統計上の正当性を欠く。 また、家計調査を利用するとしても、家計調査のうち低所得世帯に 属する第1・5分位及び第1・十分位のデータをウエイトとした計算も容易かつ可能であった(甲A62、65)。 ⑷ ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行ったことの違法性厚生労働大臣は、本件各改定において、ゆがみ調整のほかにデフレ調整 分位のデータをウエイトとした計算も容易かつ可能であった(甲A62、65)。 ⑷ ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行ったことの違法性厚生労働大臣は、本件各改定において、ゆがみ調整のほかにデフレ調整を行うと物価の影響等を重複して考慮するなどの問題が生じる可能性があった にもかかわらず、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによる影響等を統一的に分析検証しなかった。この点において、厚生労働大臣の判断過程に過誤、欠落がある。 ⑸ 被告らが主張する激変緩和措置の不合理性被告国は、激変緩和措置として、2分の1処理を行った旨主張するが、2 分の1処理は、生活扶助基準額が増額した場合にも適用され、実際の効果を見ても、子供のいる2人世帯の4割以上・同3人世帯の3割程度の世帯類型の生活扶助基準額の減額又は不変の効果を生じさせており、激変緩和措置ではない。 ⑹ 本件基準部会の平成29年12月14日付け報告書(以下「平成29年報 告書」という。)によって本件各改定に至る厚生労働大臣の判断過程に過誤、欠落が認められないことが裏付けられるとはいえないこと平成29年報告書(乙93)は、平成26年全国消費実態調査の個票データ(7頁)から抽出した年収階級第1・十分位の夫婦子1人のサンプル世帯との比較において、夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位の生活扶助相当 支出と生活扶助基準額が概ね均衡すると一般的に結論付けているにすぎず、 生活保護受給世帯全体に影響した本件各改定の全体が適正なものであるということにはならない。 (被告らの主張の要旨)⑴ 生活保護基準の改定の適法性の判断枠組み等ア判断枠組み 憲法25条、生活保護法3条、8条にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的内容は、その時 張の要旨)⑴ 生活保護基準の改定の適法性の判断枠組み等ア判断枠組み 憲法25条、生活保護法3条、8条にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる 複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする。したがって、保護基準の改定については厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的見地からの裁量権が認められる。 したがって、保護基準の改定は、➀当該改定後の保護基準の内容が被保護者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであり、かつ、 これを超えないものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、➁激変緩和等の措置をとるか否かについての方針及びこれをとる場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、 被保護者の生活への影響等の観点から見て裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に、生活保護法3条、8条2項に違反し違法となるというべきである。 イ以上のとおり、行政庁に裁量権が認められる場合には、行政庁の判断の当不当が直ちに裁判所の司法審査の対象となるわけではなく、当該判断が 著しく合理性を欠き明らかに裁量権の範囲を逸脱し又はそれを濫用したと 認められるような場合でなければ、その判断は違法となり得ない。 そして、一般に、行政裁量が認められる行政処分の 著しく合理性を欠き明らかに裁量権の範囲を逸脱し又はそれを濫用したと 認められるような場合でなければ、その判断は違法となり得ない。 そして、一般に、行政裁量が認められる行政処分の適否が問題となる場合における判断過程審査は、行政庁の判断に専属させるべき実体的な事柄の判断、すなわち裁量権行使の内容面に立ち入らずとも、いわばその外側から適否を判断できる手続や過程については裁判所の審査判断に 服させて差し支えないとしたものと解され、裁判所が、原告が納得できないと主張する点について、被告である行政機関の説明する判断過程が一応の説得力を持つか否かを審査する形で、いわば、行政機関の説明する判断過程をできるだけ生かす審査手法であると解されており、同審査では、被告が説明する論証過程を追試的に検証し、それが一応納得でき るものか否か、すなわち、被告が挙げる理由に論理の飛躍や連関を欠くところがあるか否かという観点から、その適否が判断されることになる。 ウなお、保護基準の改定についても、厚生労働大臣が同改定に当たり基準部会等の専門機関に諮問し又はその意見を求めることなどを定める法令上の規定等はない。基準部会は、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審 議会における常設の部会であるが(厚生労働省設置法7条、社会保障審議会令6条1項)、その設置の趣旨及び審議事項は、生活保護基準の定期的な評価検証を行うことであり、保護基準の改定の在り方等は、同設置の趣旨及び審議事項とされていない。 厚生労働省は、その設置法3条1項等に定める任務を達成するため、 生活困窮者その他保護を要する者に対する必要な保護に関すること等の事務をつかさどっている(厚生労働省設置法4条1項82号)。また、厚生労働省は、生活困窮者等の自立支援に関すること するため、 生活困窮者その他保護を要する者に対する必要な保護に関すること等の事務をつかさどっている(厚生労働省設置法4条1項82号)。また、厚生労働省は、生活困窮者等の自立支援に関すること、高齢者、障害者等の福祉制度や、最低賃金制度等の労働政策等も所掌しており、これらの制度の状況や影響等をも踏まえつつ、生活保護の制度設計を行う事務 を担当している上(同法4条1項)、保護の決定実施等の運用に係る事 務処理基準の策定、生活扶助以外の扶助等に関する事務等を所掌している。このような所掌を適切に実施するため、厚生労働省においては、統計法に基づく一般統計調査として、被保護者調査、社会保障生計調査等の調査を行っているほか、行政記録情報を用いた公的統計として医療扶助実態統計を行う等して、生活保護制度に係る客観的な実態把握等を行 っている。さらに、生活保護関係の業務の遂行に当たっては、統計や経済、医療に関する知見を有する職員のほか、社会福祉の政策分野に精通した職員、福祉事務所等の現場経験を有する職員が業務に当たっている。 厚生労働大臣は、これまでも毎年度の生活扶助基準の改定を含む生活保護の各扶助や各種加算の改定に当たって、統計やデータを収集、分析 した上で、社会経済情勢等を総合的に勘案して基準の改定を行ってきており、知見が蓄積されている。また、審議会等の専門機関において統計データ等により検証を行い、その結果を踏まえて保護基準の設定、改定を行う場合であっても、厚生労働大臣において、当該検証結果に限らない幅広い分野における知見を基に社会経済情勢等を総合的に勘案し、政 策判断により改定している。 このように、厚生労働大臣が、専門技術的知見を有していることからすると、保護基準の改定に当たり、専門機関による審議検討を を基に社会経済情勢等を総合的に勘案し、政 策判断により改定している。 このように、厚生労働大臣が、専門技術的知見を有していることからすると、保護基準の改定に当たり、専門機関による審議検討を経ることなく判断した場合であっても、その判断の前提となる課題に関する事実認識やそれに対する評価対策の課題解決手段としての適合性に一定の合 理性が認められれば、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえない。 また、厚生労働大臣が、保護基準の改定に当たり、専門機関による審議検討を経た上で判断した場合であっても、厚生労働大臣は、保護基準の改定に当たっての基準部会等の専門機関の関与の在り方(例えば、専 門機関に対し保護基準の評価及び検証や保護基準の改定の在り方に関す る検討を依頼するか否か)やこれを依頼した場合における上記検証や検討に係る結果ないし意見をどのように考慮するかについての専門技術的かつ政策的裁量を有しているから、厚生労働大臣の保護基準改定に係る判断が、上記審議検討に係る結果ないし意見等と積極的に抵触するものであることが明らかであり、かつ、厚生労働大臣の判断過程について一 応の合理的理由すら認められないような場合でない限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無を審査するとしても、それは、裁判所が独自の観点から特定の衡量利益や考慮事項を選び出してこれをよりどころとするのではなく、飽くまでも、厚生労働大臣 の判断の過程において現に用いられた統計等の客観的な数値等や専門的知見を前提に、これらと厚生労働大臣の判断との間に合理的関連性や整合性が欠けるところがないかどうかを審査するべきである。 エそして、保護基準の改定に て現に用いられた統計等の客観的な数値等や専門的知見を前提に、これらと厚生労働大臣の判断との間に合理的関連性や整合性が欠けるところがないかどうかを審査するべきである。 エそして、保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断に違法の問題が生じるのは、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法及び 生活保護法の趣旨目的に反したと評価できる場合であるから、判断の過程及び手続における過誤、欠落が結果としてこのような評価をもたらすものであるかどうかについても検討され、保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に、当該判断が現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法及び生活保護法の趣旨目的に反したと評価できる ほど明らかに合理性を欠くと認められることになるような過誤、欠落がある場合でなければ、違法とならないというべきである。 オまた、保護基準の改定の際の激変緩和措置の採否等に係る厚生労働大臣の判断についても、専門技術的かつ政策的な見地から広範な裁量が認められる。 本件各改定は、生活扶助のうちすべての生活保護受給世帯に支給され る基準生活費について、その多寡を変更したものにすぎない。そして、基準生活費は、社会経済情勢等の変化に伴って定期的に変更されることが法の規定上当然に予定されている(生活保護法8条2項参照)。このことに加え、生活保護法による保護に要する費用は、年金のように被保護者となったものが納付した保険料等によって賄われるものではなく、 国民一般が納付する租税によって賄われるものであるから、同法による保護として現に行われている給付が将来も存続することに対する信頼を保護すべき要請は、基本的には高いものとはいえない。したがって、保護基準改定に当たり激変緩和措置を講じるか否か、 あるから、同法による保護として現に行われている給付が将来も存続することに対する信頼を保護すべき要請は、基本的には高いものとはいえない。したがって、保護基準改定に当たり激変緩和措置を講じるか否か、どのような内容の措置を講じるかの判断の適法性の有無は、上記のような期待ないし信頼の 程度を勘案して、その判断に著しい過誤、欠落があるかどうか、当該判断が明らかに合理性を欠くかどうかという観点からするべきである。 カ原告らは、憲法25条、生活保護法56条の法意及び社会権規約の各規定に鑑みれば、生活保護基準の減額方向での改定は原則として許されず、これをする場合には、その正当性を被告の側で主張立証するべきである旨 主張する。 しかしながら、健康で文化的な最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるから、社会経済情勢の変化等によっ て、その具体的な水準が変動し得ることは当然に予定されている。 また、原告らが指摘する社会権規約の各規定は、締約国において、社会保障に関する権利が国の社会政策により保護されるに値するものであることを確認し、国が前記の権利の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものであり、個人に対し 具体的権利を付与すべきことを定めたものではなく、社会権規約委員会 の一般的意見は、条約ですらなく法的拘束力を有するものではないから、これらから制度後退禁止原則が導かれるものでもない。 キ原告らは、憲法25条等の規定によれば、生活保護法8条2項が定める諸要素以外の要素である財政事情や国民感情、政権与党の公約等の生活外的要 、これらから制度後退禁止原則が導かれるものでもない。 キ原告らは、憲法25条等の規定によれば、生活保護法8条2項が定める諸要素以外の要素である財政事情や国民感情、政権与党の公約等の生活外的要素を考慮することは許されない旨主張する。 しかしながら、憲法及び生活保護法が定める最低限度の生活を具体化するに当たってその時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係を考慮して判断する必要があるのは前記のとおりであるところ、このような諸要素を判断する過程で、生活保護法8条が定める諸要素のみを考慮するということは想定されていない。 また、厚生労働大臣の裁量権が前記のとおり広範なものであり、その判断は専門技術的かつ政策的見地からの考察が必要であることからすれば、裁判所の審査は、厚生労働大臣の判断過程に過誤、欠落があるかという判断過程の審査にとどまるべきである。これと異なり、裁判所が、直ちに法的判断の基礎となる事実とはならない生活保護基準の定立に当 たっての各諸要素を考慮要素と捉えて、そのような考慮要素を適切に考慮したかという視点からの審査をすることは適切ではなく、そのような審査をするべきではない。 ⑵ ゆがみ調整に至る判断の過程の適法性ア厚生労働大臣がゆがみ調整に至る判断の過程においては、①生活扶助基 準は、標準世帯の最低生活費を生活扶助基準の水準(高さ)として設定し、その最低生活費を第1類費と第2類費に分解した上、年齢階層別、世帯人員別、級地別の展開部分につき、標準世帯との最低生活費の差を踏まえて設定された指数を適用して展開することとなっているところ、この展開のための指数は、栄養所要量を参考として個人的経費(第1類費)の指数が 設定されるなど、標準世帯との比較において、最低生活に て設定された指数を適用して展開することとなっているところ、この展開のための指数は、栄養所要量を参考として個人的経費(第1類費)の指数が 設定されるなど、標準世帯との比較において、最低生活に要する費用を示 すものとしては必ずしも適切なものとなっていなかったこと、②平成16年報告書において、生活扶助基準の展開部分に関して見直しを検討する必要がある旨指摘されており、さらに平成19年報告書においても、これらについて、一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていないことが指摘されていたにもかかわらず、改定がされていなかったこと、③平成 25年検証において、生活扶助基準の展開のための指数が必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっておらず、その結果、一般低所得世帯との消費実態のかい離のみならず、生活保護受給世帯間の公平をも欠く状態になっていることが判明したこと等が考慮された。 厚生労働大臣は、上記の点を考慮して、生活保護受給世帯間の公平を 確保するため、本件各改定におけるゆがみ調整をおこなうことによって、基準部会の検証によって判明した一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態を生活扶助基準の展開のための指数に反映し、生活扶助基準の展開部分の適正化を図ったものである。 このゆがみ調整は、生活保護受給世帯の平均受給額が不変となるよう にして算出された指数を基準額に反映させ、その結果として、第1類費及び第2類費を積み上げることによって算出される各世帯の生活扶助費が反映されるという方式であるから、水準均衡方式のように、標準世帯の生活扶助基準額に改定率を乗じた上で生活扶助基準全体の水準(高さ)として設定し、当該標準世帯の基準額を基軸としてこれを他の世帯類型 に展開させるという改定手法 水準均衡方式のように、標準世帯の生活扶助基準額に改定率を乗じた上で生活扶助基準全体の水準(高さ)として設定し、当該標準世帯の基準額を基軸としてこれを他の世帯類型 に展開させるという改定手法は、そもそも用いられていない。 このように、厚生労働大臣は、平成25年検証の結果に基づき、専門家が検討した分析手法に基づいて収集された消費実態に関する事実関係を前提に、専門家の示した方向性に沿う形で、生活扶助基準の展開のための指数について適正化を図ることとしたものであり、同大臣の判断過 程に論理の飛躍や連関を欠くところはなく、上記判断の過程及び手続に 過誤、欠落があるとはいえない。 イ原告らは、第1・十分位世帯と生活保護受給世帯を比較するに当り、第1・十分位世帯から、生活保護受給世帯を除外しなかったことが、統計学上の大原則に反しており、不合理である旨主張する。 しかしながら、平成25年検証では、生活扶助基準の展開部分の指数 が適正なものとなっているか否かの検証を目的としていたことから、第1・十分位に属する世帯の消費支出と、同じ第1・十分位世帯が法及び告示で定められた当時の生活扶助基準により受給するとした場合の生活扶助基準額を比較したのであり、実際の生活保護受給世帯の消費支出額と第1・十分に属する世帯の消費支出とを比較したわけではない。した がって、平成25年検証において第1・十分位世帯の消費支出と生活保護受給世帯の消費支出を比較することを前提とした原告らの主張は理由がない。 ウ原告らは、ゆがみ調整の際に用いられた回帰分析の決定係数が30パーセントと極めて低い値であり、推計結果の信用性が低い旨主張する。 しかしながら、決定係数(予測値の精度)は、回帰分析における当てはまりの良さ、すなわち、その回帰分 帰分析の決定係数が30パーセントと極めて低い値であり、推計結果の信用性が低い旨主張する。 しかしながら、決定係数(予測値の精度)は、回帰分析における当てはまりの良さ、すなわち、その回帰分析が実態に近似する程度を示す指標であり(決定係数が「0」の場合には、説明変数が被説明変数の変動を説明するのに全く役に立たないこととなる。)、どの程度の値であれば実態に近似したものとして妥当と評価されるか(どの程度の決定係数 であれば、無理のある近似であって妥当でないと評価されるか。)については一般的な基準は存在せず、特定の決定係数の値以上でなければ採用し得ないといった統計的知見は存在しない。平成25年検証においては、平成21年全国消費実態調査の個票データを用いており、このような個々の家計のデータはクロス・セクション(横断面)データと呼ばれ るものであるところ、クロス・セクションデータを用いた世帯の消費を 被説明変数とする回帰分析については、その決定係数は、0.3位しか得られない場合も多いとされ(乙74(43頁))、0.5でも極めて良いと評価されている(乙73(31頁))から、平成25年検証の回帰分析の決定係数の値(データ①については0.28、データ②については0.36)は低いと評価されるものでない。原告らの主張は、統計 学的分析の当不当をいうものにすぎず、厚生労働大臣の判断についての裁量権の範囲の逸脱又はその濫用を基礎付けるものではない。 エ原告らは、ゆがみ調整の際に用いられた回帰分析は、t検定の採用方法が誤っていた旨主張する。 しかしながら、t検定は、帰無仮説を棄却し、反対の内容である対立 仮説を受け入れるために行うものである。帰無仮説に反することが帰無仮説の検証において認められず、帰無仮説が採択され 主張する。 しかしながら、t検定は、帰無仮説を棄却し、反対の内容である対立 仮説を受け入れるために行うものである。帰無仮説に反することが帰無仮説の検証において認められず、帰無仮説が採択される場合は、t検定の目的とすることではない。そして、帰無仮説が採択される場合であっても、帰無仮説が真であって説明変数に効果がないことを積極的に支持することはできない。したがって、有意水準を5パーセントとした場合 にt検定によって帰無仮説が棄却されなかったとしても、その説明変数の優位性が0であるといえるものではなく、これが除去されなければ、その回帰分析が統計的に誤っているということにはならない。 オ原告らは、回帰分析の結果を適切に評価するためには、①誤差項の分散均一性、②正規性及び③説明変数間の多重共線性など、統計的方法に課せ られている過程を満たしておく必要があるにもかかわらず、平成25年検証において、これらの過程を満たしているか否か触れられていない旨主張する。 しかしながら、回帰分析は、実証的分析における実態の近似にすぎないものであり、原告らの指摘する上記各手法の過程を満たしているかと いった検討手法によったとしても、その近似の程度を検証ないし追及す ることには、統計学上、限界があり、原告らが主張する手法を用いなければ回帰分析の結果を採用し得ないというような統計的知見は存在しない。したがって、上記各手法を採用していないことは、厚生労働大臣の裁量の範囲の逸脱又はその濫用を基礎付けるものではない。 カ原告らは、2分の1処理をしたことが、ゆがみ調整の問題である旨主張 する。 しかしながら、2分の1処理は、後記のとおり、激変緩和措置の一環として行われたものであり、同処理をしたことについて厚生労働大臣の 判断 1処理をしたことが、ゆがみ調整の問題である旨主張 する。 しかしながら、2分の1処理は、後記のとおり、激変緩和措置の一環として行われたものであり、同処理をしたことについて厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。 ⑶ デフレ調整に至る判断の過程 ア厚生労働大臣がデフレ調整に至る判断の過程において考慮した事情は、次のとおりである。 平成19年報告書において生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという結果が得られており、生活扶助基準の水準が実質的に高いという意味で生活保護受給世帯と一般国民との均 衡が崩れた状態にあった。そして、平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機の影響で、同年以降、賃金、物価、家計消費等がいずれも下落する経済情勢にあったにもかかわらず、このような経済動向が生活扶助基準に反映されなかった。そのため、デフレ傾向によって、平成19年報告書における状態に比して更に生活保護 受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したと評価することができる状態にあった。 このような状況の下で行われた平成25年検証においては、生活扶助基準の展開のための指数についての評価・検討が行われた一方で、生活扶助基準の水準についての評価・検討は行われなかった。しかし ながら、消費の動向は物価のほか、賃金の動向やこれらを踏まえた主 観的な要素を含む将来の予測等の様々な要素にも影響されるものであり、平成20年以降の経済情勢を踏まえた場合には、消費を基礎として生活扶助基準を改定する場合には減額幅が必要以上に大きくなることが予想された。そのため、消費の動向を直接考慮して生活扶助基準を改定するのではなく、平成15年中間とりまとめにおい は、消費を基礎として生活扶助基準を改定する場合には減額幅が必要以上に大きくなることが予想された。そのため、消費の動向を直接考慮して生活扶助基準を改定するのではなく、平成15年中間とりまとめにおいて選択肢の 一つとして提示された物価を用いることとした。 また、生活扶助基準は、生活保護受給世帯における収入額(可処分所得)、すなわち購買力としてとらえることができるところ、収入額(可処分所得)が変化せずに物価が変動する場合には購買力が変動することになることから、物価は生活保護受給世帯における購買力ひい ては実質的な可処分所得の変化を測定する指標となり得ると判断された。 さらに、生活保護基準の改定の方式については、法令上の定めがなく、従前の生活保護基準である水準均衡方式によらず、生活扶助費の加算において既に物価を考慮したという実績もあったことから(乙1 3、91)、当時の物価の状況を考慮して生活保護基準を改定することも許容されるというべきであった。 このようにして、厚生労働大臣は、平成20年以降のデフレによる生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加により生じた同世帯と一般国民との間の不均衡を是正するため、平成20年から平成 23年までの間の生活扶助による支出が想定され得る品目の物価変動率(マイナス4.78パーセント)を算定して、当該数値に基づき生活扶助基準の水準を減額改定することによって、その適正化を図った。 イ平成20年以降の生活保護受給世帯の相対的、実質的な可処分所得の増加の程度の把握 厚生労働大臣は、平成20年以降の物価の動きを把握するに当たり、 総務省統計局が公表している消費者物価指数のうち生活扶助による支出が想定され得る品目のデータ(生活扶助相当CPI)を用いて、平成 労働大臣は、平成20年以降の物価の動きを把握するに当たり、 総務省統計局が公表している消費者物価指数のうち生活扶助による支出が想定され得る品目のデータ(生活扶助相当CPI)を用いて、平成20年から平成23年までの物価変動率(マイナス4.78パーセント)を算定し、本件各改定におけるデフレ調整において、当該数値相当分を減額改定した。厚生労働大臣がこのような手法を採用したことには、以 下のとおり、合理性がある。 総務省CPIのうち生活扶助による支出が想定される品目のデータを用いて物価変動率を算定したことについてa 物価及びその変動率を算定するためには、指数品目を選定し、その品目の価格指数及びウエイトを把握する必要があるところ、本件各 改定当時、生活扶助による支出が想定される品目の価格指数及びウエイトを網羅した信頼性の高い客観的なデータとしては、総務省CPIのデータが存在した一方、ほかに信頼性が担保された適切なデータは見当たらなかった。もっとも、総務省CPIのデータには、家賃、教育費、医療費、自動車関係費、NHK受信料等の生活扶助による支出 がおよそ想定されない品目が多数含まれており、生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加の程度を正確に把握するためには、上記のような品目を含めて算定することは相当でなかった。 しかも、被保護者の需要の有無及び程度を判断する手法として、一般低所得者が支出する品目のうち、生活扶助相当品目を用いるという 手法は、老齢加算の廃止を提言した専門委員会などでも行われ、専門家においても是認されていた。そして、このような品目の選定は、生活扶助において捕捉され得るかどうかという客観的かつ明確な基準に従って判断されるものであり、恣意的判断が入り込む余地がないものであり、十分 おいても是認されていた。そして、このような品目の選定は、生活扶助において捕捉され得るかどうかという客観的かつ明確な基準に従って判断されるものであり、恣意的判断が入り込む余地がないものであり、十分な合理性があると考えられた。 そこで、厚生労働大臣は、生活保護受給世帯の需要の有無及び程度 を判断する手法として、従前用いられたことがある生活扶助による支出がおよそ想定されない品目を除外して生活扶助相当CPIを算出するという方法を採用して指数品目及びその品目の価格指数を把握することとした。 b そして、このような生活扶助相当CPIの算出は、生活保護受給 世帯と一般国民との間の不均衡の是正を図るために平成20年以降の物価変動を生活扶助基準に反映させるという厚生労働大臣の政策的判断を合理的に裏付けるために行われたものである。 物価変動率を算定する期間を平成20年から平成23年までとしたことについて 厚生労働大臣は、平成20年以降のデフレ傾向にもかかわらず、生活扶助基準が改定されなかったために、その時点以降から、デフレ傾向の経済情勢を主たる要因として、生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡が一層顕著となったと判断し、デフレ調整をする必要があると判断したため、平成20年以降のデフレ傾向の時点を物価 変動率の算定の始期とし、デフレ調整を決定した当時の最新の総務省CPIのデータが平成23年のものであったため(乙41)、物価変動率の算定の基準時点(終期)を平成23年とした。 家計調査により算出されたウエイトを用いたことについて物価指数は、現実の消費実態を反映させるため、指数品目の価格指数 に各品目のウエイトを乗じて加重平均することで算定するところ、総務省CPIの算定において用いられていたの を用いたことについて物価指数は、現実の消費実態を反映させるため、指数品目の価格指数 に各品目のウエイトを乗じて加重平均することで算定するところ、総務省CPIの算定において用いられていたのが、家計調査により算出されたウエイトであった。家計調査は、総務省統計局が作成する基幹統計の1つであり、詳細な品目別の支出額が調査の対象となっている(乙98)データで、総務省CPI以外の資料作成にも広く利用され ている(乙99)。 厚生労働大臣は、家計調査が統計資料として精度が高いだけではなく、家計上の支出等の把握を目的とした調査であり、生活扶助相当CPIの算定に用いられる各品目のウエイトを把握するのに最も適したデータである上、一般国民の消費を表す家計調査により算出された消費者物価指数のウエイトデータを用いることが、従前の改定が、生活扶助 基準の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚していたこととも整合すると判断した。 これに対して、社会保障生計調査においては、調査世帯の選定において地域等による偏りが生じる可能性やサンプル数が必ずしも多くない ことなどを踏まえると、生活保護受給世帯全体の家計支出の状況を推測する精度に一定の限界があると考えられた。また、社会保障調査は、生活保護受給世帯の詳細な支出先や支出額を把握するものではないから、社会保障生計調査を分析しても、大まかなウエイトを把握できても、家計調査のような詳細な品目ごとのウエイトは把握できないとい う限界があると考えられ、詳細な品目ごとの消費の支出の割合を反映した物価指数を算出することができなくなると予想された。 平成22年基準のウエイトを用いたことについてa 平成25年当時、家計調査のウエイ あると考えられ、詳細な品目ごとの消費の支出の割合を反映した物価指数を算出することができなくなると予想された。 平成22年基準のウエイトを用いたことについてa 平成25年当時、家計調査のウエイトのデータとしては、平成17年以前の基準のデータによるものと、平成22年基準のデータによ るものが存在したところ、現実の消費実態を反映した物価指数を算定するためには、物価指数の算定時点に可能な限り近接した時点の消費の構造を示すデータを用いるのが相当と考えられたため、物価変動率の算定の期間に近接した平成22年基準のウエイトのデータを用いることにした。 b 物価変動率の算定の期間を平成20年から平成23年に設定した 場合に、平成22年基準のウエイトのデータを用いて(ウエイト参照時点)物価変動率を算定する方法は、ILOマニュアルにおいて中間年指数として紹介され、パーシェ指数とラスパイレス指数のほぼ中間に来るロウ指数であり、それは0月とt月の間の理想的な目標指数に非常に近いと説明される算定方式である(甲A39(460、461 頁))。したがって、生活扶助相当CPIを算出するに当たって、平成22年基準のウエイトデータを用いた方式は、統計学上の裏付けのある方法である。 ウエイトを物価変動率の対象期間の期首に設定するラスパイレス指数は、本邦のほかの様々な国においても消費者物価指数を算定する方 法が採用されているが、これはラスパイレス指数のみが正当な方法であるということを意味するのではなく、消費者物価指数を算定する際の直近時点の取引ウエイトを知ることが困難であるため、過去の時点である対象期間の期首のウエイトのデータを用いることとしているという実務上の理由にすぎず、ラスパイレス指数によらなかったとして も、算出 点の取引ウエイトを知ることが困難であるため、過去の時点である対象期間の期首のウエイトのデータを用いることとしているという実務上の理由にすぎず、ラスパイレス指数によらなかったとして も、算出方法を誤ったことにはならない。 特定の品目について他の品目と異なる取扱いをすることの可否について仮に、多数ある指数品目のうちある特定の品目に限って生活扶助相当CPIの算定から除外し又はウエイトを調整するのであれば、その必 要性や合理性について統計等の根拠に基づいて的確に説明することが厚生労働大臣には求められた。しかしながら、生活扶助相当CPIで用いられた家計調査のウエイトのデータと社会保障生計調査に基づくウエイトのデータを比較すると、両者のウエイトの違いは特定の品目に限られるものではなく、その違いの程度も一定ではない。 また、厚生労働省が平成22年に実施した「家計の生活実態及び生活 意識に関する調査」によれば、例えば、生活保護受給世帯のパソコンの普及率は約4割、ビデオレコーダーは約7割、電子レンジや洗濯機は約9割、カラーテレビや冷蔵庫はほぼ10割となっている(乙40)。これらの事情に照らせば、生活保護受給世帯においても、テレビやパソコン等の教養娯楽用耐久財は、一般世帯と同様に普及してい るということができ、生活保護受給世帯において教養娯楽用耐久財を生活扶助で購入することも十分予想されるところ、生活保護費のうちどの程度をテレビやパソコン等の教養娯楽用耐久財に充てるかは当該世帯ごとの個別の事情によるものであって、この点は、教養娯楽用耐久財以外の生活扶助相当品目と変わりがない。そのため、仮に、多数 ある指数品目のうちある特定の品目に限って生活扶助相当CPIの算定から除外し又はウエイトを調整することを検討 点は、教養娯楽用耐久財以外の生活扶助相当品目と変わりがない。そのため、仮に、多数 ある指数品目のうちある特定の品目に限って生活扶助相当CPIの算定から除外し又はウエイトを調整することを検討したとしても、その必要性や合理性について、統計等の根拠に基づいて的確に説明することは必ずしも容易でなかった。 このように、多数ある指数品目のうち教養娯楽費等の特定の品目に限 って他の品目と異なる取扱いをする必要性及び合理性を説明することは困難であり、このような取扱いは相当でない。 平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率(マイナス4.78パーセント)が、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加により生じた同世帯と一般国民 との不均衡を是正するのに相当なものと評価したことについて厚生労働大臣は、総務省CPIのデータを用いて、平成20年から平成23年までの物価変動率を算定することとし、その結果、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率は、マイナス4. 78パーセントと算定した({(99.5-104.5)÷104. 5}×100=マイナス4.78パーセント)。 具体的には、総務省統計局のホームページで公表されている平成22年基準消費者物価指数に係る年報の「第7表―1 品目別価格指数(全国)」から、生活扶助による支出が想定され得る平成20年及び平成23年の各品目の価格指数及び平成22年基準によるウエイトを抜き出した(乙33)。次に、各品目別の価格指数に、ウエイトの値 を乗じた値を合計し、これらの数値を生活扶助相当品目のウエイトの合計(平成20年が6189、平成23年が6393)でそれぞれ除した。この結果、平成20年の生活扶助相当CPIは104.5、平 値 を乗じた値を合計し、これらの数値を生活扶助相当品目のウエイトの合計(平成20年が6189、平成23年が6393)でそれぞれ除した。この結果、平成20年の生活扶助相当CPIは104.5、平成23年の生活扶助相当CPIは99.5となり、その間の変化率は、マイナス4.78パーセントとなった。 厚生労働大臣は、上記の算定の結果が、平成20年以降の物価変動による生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加の程度を表していると判断した。そして、これを踏まえたデフレ調整をするに当たっては、平成19年報告書において生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態との不均衡(夫婦来1人世帯において約1.1パーセ ント、単身高齢世帯において約13.3パーセント)が確認されていたことに加え、平成20年以降の物価下落が同年9月のリーマンショックに端を発する百年に一度とも評される世界金融危機における実体経済への影響を反映したものであり、物価のみならず、賃金や消費等の経済指標も大きく下落していること(一般勤労世帯の賃金は、平成 21年に3.9パーセントの減少となり、平成22年には微増したものの、平成23年には再び減少に転じ、家計消費支出も平成21年から平成23年まで3年連続でマイナスとなった。)などに照らして、その改定率を平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率と同じマイナス4.78パーセントとするのが相当であると判 断した。 なお、平成19年報告書及びそれ以降の社会経済情勢に照らし生活扶助基準の水準を改定する必要性が認められたものの、平成25年検証においては生活扶助基準の水準についての検証が行われず、基準部会による検証結果を踏まえた生活扶助基準の水準の改定は断念せざるを得なくなった。そこで を改定する必要性が認められたものの、平成25年検証においては生活扶助基準の水準についての検証が行われず、基準部会による検証結果を踏まえた生活扶助基準の水準の改定は断念せざるを得なくなった。そこで、厚生労働大臣は、自らの専門技術的知見を踏 まえてデフレ調整を行うこととしたところ、このデフレ調整の内容は、生活扶助基準の改定に当たっての基本的考え方に立脚したものであり、また、それまでの専門機関による検証の考え方と齟齬するものでもなかった。そして、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法の附則において、生活扶助基準について必要な見直しを早急に行うこ とが厚生労働大臣に求められていたところ、保護基準の改定に当たり専門機関から意見聴取を求める旨の法令上の根拠はない上、厚生労働大臣が行おうとするデフレ調整の当否等について審議検討することは基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではなく、また、仮に、専門家から意見を聴取しようとすれば、相当の期間を要することが見込まれた。 厚生労働大臣は以上のような事実関係に照らし、デフレ調整について基準部会等の専門機関に意見を求めなかった。 ウデフレ調整の適法性厚生労働大臣は、上記のとおり、生活扶助基準の水準の改定の必要性及び本邦の経済情勢の生活保護受給世帯を含む一般国民への影響を考慮 してデフレ調整の実施を決定し、その目的に適合する生活扶助相当CPIを用いて、物価変動率を算定し、デフレ調整をするに至ったところ、この手法は、これまでの専門的知見に基づく保護基準改定における改定の手法や一般的な統計学の手法に沿ったものである。 したがって、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断過程に統計等の客 観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところ があるとはいえ 統計学の手法に沿ったものである。 したがって、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断過程に統計等の客 観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところ があるとはいえず、上記判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえない。 このことは、①本件各改定後に実施された平成29年検証において利用された統計資料(乙81(10、11頁))に平成20年から平成23年までの間における経済指標として消費及び物価の指数が全てマイナ スの変化率を示しており、一般国民の収入及び生活維持に必要な金額は、実質的に減少していたことが読み取れたこと、②平成29年検証において、本件各改定後の生活扶助基準の水準が一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の消費実態とおおむね均衡することが確認されたとの評価がされ(乙93(17、23頁))、統計等の客観的な数値との合理的関連 性や専門的知見との整合性があるというべきこと、③全国消費実態調査における夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額が平成16年から平成21年にかけて約11.6パーセントも下落していたこと等に照らせば、本件各改定における厚生労働大臣の判断が極端な生活扶助費の減額を目指して行われたとか、誤ってそのような内容の判断を したということはできず、厚生労働大臣の判断過程に過誤、欠落がなかったことが裏付けられる。 エ原告らの主張に対する反論原告らは、デフレ調整に用いた生活扶助相当CPIが統計上の裏付けのない不合理な算式によって導かれたものである旨主張する。 しかしながら、生活扶助相当CPIの算式は、いわゆるロウ指数の範疇に収まるものであり、生活扶助相当CPIは統計上の裏付けがある。 なお、平成20年の生活扶助相当CPIは485科目である一方で、 しかしながら、生活扶助相当CPIの算式は、いわゆるロウ指数の範疇に収まるものであり、生活扶助相当CPIは統計上の裏付けがある。 なお、平成20年の生活扶助相当CPIは485科目である一方で、平成23年の生活扶助相当CPIは517品目と32品目の違いがあり(欠価格)、平成20年及び平成23年の消費者物価指数の各支出 品目にズレがある。しかしながら、一部の品目の価格が観察できない という状況は、物価指数の作成実務においてしばしば発生するものであり、これによって、物価指数及びその指数を用いた物価変動率が計算できなくなるわけではない。そして、生活扶助相当CPIでは、新規採用品目である32品目の価格動向が、他のすべての品目の価格動向と同じであったと仮定して算出しているから、平成20年を基準と する平成23年の生活扶助相当CPIは、固定された同じ買物かご(517品目)を購入するために必要な全費用の変化を表したロウ指数(固定買物かご指数)であるということができる。 このような生活扶助相当CPIの欠価格の処理は、総務省から公表されている消費者物価指数の処理手順と異なっている面があるが、生活 扶助相当CPIが元々消費者物価指数の品目の一部だけを対象に算出している点において特殊性が認められる上、欠価格についてはどのような処理をするにしても真の価格動向との差が避けられず、生活扶助相当CPIにおいて欠価格となった支出品目の数が32品目だけで、支出ウエイトにして3パーセントにすぎないことからすれば、この影 響が限定的と予想されたため、実務上の妥当な処理と評価し得る処理というべきである。 また、生活扶助相当CPIは、消費支出品目について、生活扶助により支出が想定されない品目を除外した品目の物価の指数を算定する算式で たため、実務上の妥当な処理と評価し得る処理というべきである。 また、生活扶助相当CPIは、消費支出品目について、生活扶助により支出が想定されない品目を除外した品目の物価の指数を算定する算式であり、このこと自体は客観的で恣意性のない基準に基づく支出 品目である。 なお、特定の品目を除外することにより、除外されなかった品目(テレビ等を含む。)のウエイトが相対的に上昇し、その意味において当該除外されなかった品目(テレビ等)についての物価下落の影響が増幅される面がある。しかしながら、このようにウエイトの相対的な上 昇は、除外されなかった品目全てについて同じ割合で発生するもので あるから、殊更テレビ等のみを取り上げてその増幅を強調するのは相当でない。 ⑷ 激変緩和措置に至る判断の過程の適法性ア厚生労働大臣は、生活扶助基準を改定するに当たって、①子供がいる世帯に配慮して貧困の世代間連鎖を防ぐなどの観点を実現しつつ、生活扶助 基準の展開部分の適正化というゆがみ調整の本質的部分を改変しないようにするため、平成25年検証の結果を反映する程度を2分の1とするとともに(2分の1処理)、②ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによって大幅な減額となる世帯に配慮する観点から、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによる減額の幅の上限を10パーセントとした上で、③ その結果の反映を3年にわたる期間で段階的に実施した(以下、これらの措置を併せて説示する場合には、「本件各措置」という。)。 厚生労働大臣が、このような措置をとった理由は、次のとおりである。 2分の1処理を講じた経緯ゆがみ調整は、生活扶助基準の展開のための指数につき初めて詳細な 分析を行った平成25年検証に基づくものであるところ、同検証の結果 た理由は、次のとおりである。 2分の1処理を講じた経緯ゆがみ調整は、生活扶助基準の展開のための指数につき初めて詳細な 分析を行った平成25年検証に基づくものであるところ、同検証の結果得られた生活扶助基準は専門的議論の結果得られた透明性の高い合理的なものであった。 しかしながら、生活扶助基準の適正化という目的との関係で当該手法が唯一のものということはできず、生活扶助基準については、専門的 機関による検証が定期的に行われており、展開部分についても、平成25年検証の結果等を前提に更なる検証が行われる予定である上、サンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界も認められた(乙9(9頁))。 また、平成25年検証が分析の対象としたのは、年齢階級別、世帯人 員別、級地別の展開のための指数であるが、ゆがみ調整をした場合の 影響は、世帯員の年齢、世帯人員別、居住する地域の組合せによって様々であると見込まれ、平成25年検証の結果をそのまま反映させた場合には、子供のいる世帯への影響が大きくなることが予想された(乙9(7、8頁))。 そこで、厚生労働大臣は、生活扶助基準を適正化し、生活保護受給世 帯間の公平を図るとするゆがみ調整の目的等に鑑みて、ゆがみ調整による影響の内容・程度にかかわらず、一律に、一定の割合でゆがみ調整の結果得られた適正な生活扶助基準のための展開のための指数による影響をさせることが合理的な措置であると考えて、2分の1処理を講じた。これと異なり、減額幅のみ2分の1の比率で反映させ、増額 幅については平成25年検証の結果をすべて反映させるとした場合、生活保護受給世帯間における不公平を生じさせ、生活保護受給世帯間の公平を図るために生活扶助基準の展開部分を適正化するというゆがみ調整の本質 ついては平成25年検証の結果をすべて反映させるとした場合、生活保護受給世帯間における不公平を生じさせ、生活保護受給世帯間の公平を図るために生活扶助基準の展開部分を適正化するというゆがみ調整の本質的部分を改変することになるから、このような手法による処理は講じないこととした。 減額の幅の上限を10パーセントとした上で、その結果の反映を3年にわたる期間で段階的に実施することとした措置は、厚生労働大臣が本件各改定により生じ得る生活扶助基準の増減に伴う生活保護受給世帯への影響を緩和するという目的で講じたものである。 イ激変緩和措置の適法性 厚生労働大臣は、上記のとおり、ゆがみ調整については展開のための指数の分析手法の持つ統計上の限界や今後さらなる検証が予定されていたことなども踏まえ、子供のいる世帯への影響を最小限にして貧困の世代間連鎖を防ぐとともに、生活扶助基準額が大幅な引下げとなる世帯の負担を軽減する観点を実現しつつ、ゆがみ調整の本質的部分を改変しな いために、一連の激変緩和措置を講じることとしたのであり、その判断 に著しい過誤、欠落がある、あるいは当該判断が明らかに合理性を欠くとはいえず、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるとはいえない。 3 国賠法1条1項の違法性等(争点3)(原告らの主張の要旨)被告国は、憲法を遵守する職務上の注意義務を怠り、違憲違法な本件各改定 を行い、その結果として、原告らは受給していた生活保護に係る生活扶助費等を減額する処分を受け、健康的で文化的な最低限度の生活を営む権利を侵害された。 本邦においては、生活保護が適切に機能しているとはいえず、原告らの生活実態に照らせば、原告らは生活保護制度を利用していたにもかかわらず、健康 で文化的な最低限度の生活を営むこと 害された。 本邦においては、生活保護が適切に機能しているとはいえず、原告らの生活実態に照らせば、原告らは生活保護制度を利用していたにもかかわらず、健康 で文化的な最低限度の生活を営むことができていなかった。原告らは、そのような状況下において、本件各改定に伴う本件各変更決定により、更に苦しい生活を強いられることとなったのであるから、違法な本件各変更決定等に基づき、原告らには、甚大な精神的苦痛が生じたというべきであり、このことは、本件各変更決定が取り消されることとは別に損害として評価すべきものである。こ のような精神的苦痛に対する賠償額は原告1人当たり1万円を下らない。 (被告国の主張の要旨)争う。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実 ⑴ 生活扶助基準の改定の経緯等ア生活扶助基準の算出方法は、①生活保護法が制定された昭和25年当時、最低生活に必要と思われる食費、被服費などを個々に積み上げて基準額を算出する方法であるマーケットバスケット方式によるものとされ、②昭和36年からは、当時の基準栄養量を満たし得る食費を理論的に積み上げ、 別途にこの食費を支出している世帯のエンゲル係数を求め、これらから逆 算して基準額を算出する方法であるエンゲル方式によるものとされ、③昭和40年からは、エンゲル方式では基準額が低い水準にとどまるとして、国民の消費水準との較差を縮めるため、民間最終消費支出の伸び率を基礎に、その伸び率以上に基準額を引き上げる方法である格差縮小方式によるものとされ、④昭和59年からは、生活扶助基準の額が、国民の消費実態 との均衡上、ほぼ妥当な水準に達したことから、その均衡した水準を維持・調整する方法である水準均衡方式によるものとされ、本件各改定に至るまで、適宜の時期に水準均衡方式 基準の額が、国民の消費実態 との均衡上、ほぼ妥当な水準に達したことから、その均衡した水準を維持・調整する方法である水準均衡方式によるものとされ、本件各改定に至るまで、適宜の時期に水準均衡方式による生活扶助基準の改定(増額改定も減額改定も含む)がされてきた(甲7(3頁)、乙10の2(10頁))。 イ平成12年、国会において、「社会福祉の増進のための社会福祉事業法 等の一部を改正する等の法律案」の附帯決議(平成12年5月10日衆議院厚生委員会等)において、生活保護の在り方について、十分検討を行うことが決議された(乙15の2)。 ウ平成15年6月16日、社会保障審議会は、生活保護については、他の社会保障制度との関係や雇用政策との連携などにも留意しつつ、今後、そ の在り方についてより専門的に検討していく必要がある旨述べ(乙15の2(2枚目))、これを受けて、同年7月28日、社会保障審議会の福祉部会は、保護基準の在り方を始めとする生活保護制度全般につき議論させるため、同部会の下に本件専門委員会を設置した(乙15の1)。 エ本件専門委員会の平成16年12月15日付け「生活保護基準の在り方 に関する専門委員会報告書」(平成16年報告書)には、生活扶助基準の展開部分を世帯人員別に検証すると、多人数の世帯が単身世帯に比して割高の生活扶助費が支給されているが、これは必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていない旨、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費構造との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、 全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要があるとし た(甲6、乙7)。 厚生労働大臣は、この報告書を受けて、平成17年度以降、第1類費について、所定の逓減率を導入する 全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要があるとし た(甲6、乙7)。 厚生労働大臣は、この報告書を受けて、平成17年度以降、第1類費について、所定の逓減率を導入するとともに、第2類費について4人以上の世帯の生活扶助基準を抑制するとの見直しを行った(乙10の3(14頁))。 オ平成19年10月、厚生労働省社会・援護局長は、私的研究会である「生活扶助基準に関する検討会」(本件検討会)を設置した(弁論の全趣旨)。 本件検討会の平成19年11月30日付け「生活扶助基準に関する検討会報告書」(平成19年報告書)では、①生活扶助基準の評価・検証 を適切に行うためには、国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全国消費実態調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から国民の消費実態を詳細に分析することが適当であり(3頁)、生活扶助基準の展開部分については、世帯構成が異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水 準の均衡が図られる体系としていくための必要な見直しをする必要がある(5頁)とした上で、②生活扶助基準の水準と保護を受給していない低所得世帯における消費実態との均衡が適切に図られているかどうか(水準の妥当性)に関する評価検証、第1類費と第2類費の合算によって算出される生活扶助の基準額が消費実態を判定しているかど うか(体系の妥当性)に関する評価検証、現行の級地制度における最も高い級地と最も低い級地との較差が地域間における生活水準の差を反映しているかどうか(地域差の妥当性)に関する評価検証等をした結果(2頁)、③一般低所得世帯と比較すると、生活保護受給者の年齢階級別にやや低い世代とやや高めの世代が見られ、これは一般低所得 世 しているかどうか(地域差の妥当性)に関する評価検証等をした結果(2頁)、③一般低所得世帯と比較すると、生活保護受給者の年齢階級別にやや低い世代とやや高めの世代が見られ、これは一般低所得 世帯の消費実態からかい離しており(7頁)、④世帯人員別には世帯人 員4人以上の多人数世帯に有利であるのに対して、世帯人員が少ない世帯に不利であるとの実態があり(6頁)、⑤級地別にみると、地域間の消費水準の差が縮小している(9頁)旨の記載がある(甲7の1、乙8)。 厚生労働大臣は、この報告書を受けた上で、平成20年度の予算が 編成された平成19年12月当時の原油価格の高騰等が消費に与える影響等を見極めるため、生活扶助基準を据え置くこととした(乙85)。 カ平成23年2月、社会保障審議会の下に「生活保護基準部会」(本件基準部会)が設置された(甲3(乙9と同じ。以下乙9のみを引用する。)(1頁))。 本件基準部会は、平成25年1月18日、平成19年報告書を踏まえ、平成21年全国消費実態調査を用いて、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別に生活保護基準額と消費実態のかい離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行うこととした(平成25年検証。乙9(2頁以下))。 同検証では、①生活保護において保障すべき健康で文化的な最低限度の生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものとされてきたことから、生活扶助基準と対比する一般低所得世帯として、第1・十分位層を設定した上で、②様々な世帯構成の基準額を算出する際に基本となる年齢、世帯人員及び地域別の基 準額が第1・十分位層の消費実態を十分反映しているかについてより詳細な検証を行った。③その際、仮に第1・十 上で、②様々な世帯構成の基準額を算出する際に基本となる年齢、世帯人員及び地域別の基 準額が第1・十分位層の消費実態を十分反映しているかについてより詳細な検証を行った。③その際、仮に第1・十分位層の全ての世帯が生活保護を受給した場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして、年齢、世帯人員体系及び級地の基準額の水準への影響を評価する方法を採用した。④さらに、同検証においては、一部統計的分 析手法である回帰分析を採用した(乙9(3頁)。なお、回帰分析とは、 結果(被説明変数)とその諸要因(説明変数)の関係を線形の関数関係として定式化(回帰モデル)する統計的方法であり、Ⅰ)回帰係数(被説明変数に対する各説明変数の影響度)をデータから推定したうえで(第1段階)、Ⅱ)データから与えられる説明変数の観測値を推定された回帰モデルに代入し、結果の予測値を求めること(第2段階) を内容とするものである(乙67))。 平成25年検証の結果の概要は、以下のとおりである。 a 年齢階級別の生活扶助基準額による指数と、第1・十分位層の消費実態による指数を比べると、各年齢階級間の指数にかい離が認められた。 b 第1類費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位層の消費実態による指数を比べると、世帯人員が増えるにつれてかい離が拡大する傾向が認められた。第2類費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位層の消費実態による指数を比べると、世帯人員が増えるにつれてかい離が拡大する傾向が 認められた。 c 年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数を反映した場合の影響は、世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組合せにより、各世帯への影響は様々であった。例えば、①現行の基準額と検証結果を完全 られた。 c 年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数を反映した場合の影響は、世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組合せにより、各世帯への影響は様々であった。例えば、①現行の基準額と検証結果を完全に反映した場合の平均値を個々の世帯構成ごとにみると、夫婦と18歳未 満の子1人世帯では、年齢による影響が現行の基準額と比べて△2. 9%、世帯人員による影響が△5.8%、地域による影響が0.1%、これらの合計した影響が△8.5%となり、同様に、②夫婦と18歳未満の子2人世帯では、順に△3.6%、△11.2%、0.2%、計△14.2%となり、③60歳以上の単身世帯では、順に2.0%、 2.7%、△0.2%、計4.5%となり、④ともに60歳以上の高 齢夫婦世帯では順に2.75%、△1.9%、0.7% 計1.6%となり、⑤20~50代の若年単身世帯では、順に△3.9%、2. 8%、△0.4% 計△1.7%となり、⑥母親と18歳未満の子1人の母子世帯では、順に△4.3%、△1.2%、0.3%、計△5. 2%となった(乙9(8頁))。 厚生労働大臣は、平成25年検証を受けて、本件各改定を行った(甲1、2)。 ⑵ 本件各改定(甲1、2、弁論の全趣旨)ア本件各改定の概要本件各改定は、①平成25年検証の結果に基づき、生活扶助基準と第 1・十分位世帯の消費実態との間における年齢区分別、世帯人員別及び級地区分別の格差を是正すること(ゆがみ調整)と、②物価の動向を勘案して生活扶助基準を改定すること(デフレ調整)を内容とする。本件各改定においては、これらを、平成25年改定、平成26年改定及び平成27年改定の3回にわたり段階的に実施した。 本件告示1による改正後の保護基準は平成25年8月1日から、本件告示2による 各改定においては、これらを、平成25年改定、平成26年改定及び平成27年改定の3回にわたり段階的に実施した。 本件告示1による改正後の保護基準は平成25年8月1日から、本件告示2による改正後の保護基準は平成26年4月1日から、本件告示3による改正後の保護基準は平成27年4月1日からそれぞれ適用するものとされた。 (以上、甲9(26頁以下)、弁論の全趣旨) イゆがみ調整の概要ゆがみ調整は、①第1類費における各年齢区分間の基準額の差を小さくし、②第1類費において、世帯員の増加に応じた逓減率(世帯員が1人増加するごとに第1類費の基準額の合計に乗ずる割合)の割合を大きくするとともに、③第2類費において、世帯員の増加に応じた世帯人員 別の基準額の増額の幅を大きくし、④第1類費及び第2類費のそれぞれ の級地区分間の基準額の差を小さくすることを内容とするものである。 (以上、乙19、20)ウデフレ調整の概要厚生労働大臣は、本件各改定に当たり、総務省CPIを基に、すべての消費品目から、①生活扶助以外の扶助で賄われる品目(家賃、教育費、 医療費など。除外品目①)及び②原則として保有が認められておらず又は免除されるため保護受給世帯において支出することが想定されていない品目(自動車関連費、NHK受信料など。除外品目②)を除いて算出した消費者物価指数(生活扶助相当CPI)の動向を勘案することとし、平成20年生活扶助相当CPIと平成23年生活扶助相当CPIを用い て算出した平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率(マイナス4.78%。本件下落率)を勘案してデフレ調整を行った(乙19、21)。デフレ調整は、すべての保護受給世帯について適用された(乙A46)。 エ激変緩和措置等 活扶助相当CPIの変化率(マイナス4.78%。本件下落率)を勘案してデフレ調整を行った(乙19、21)。デフレ調整は、すべての保護受給世帯について適用された(乙A46)。 エ激変緩和措置等 ゆがみ調整においては、平成25年検証の結果で示された生活扶助基準額と第1・十分位世帯の消費支出のかい離率の2分の1が反映された(2分の1処理)。 また、本件各改定は、平成25年度から3年間をかけて段階的に実施するものであるが、これによる見直しの影響を一定程度に抑える観点か ら、改定前基準からの増減幅は、±10%を超えないように調整された(乙19)。 2 争点1(本件訴えの適法性の有無)について検討する。 ⑴ 行政事件訴訟法14条3項は、取消訴訟は、処分につき審査請求その他の不服申立て(以下、単に「審査請求」という。同法3条3項参照)をするこ とができる場合において、審査請求があったときは、処分に係る取消訴訟は、 同条1項、2項の規定にかかわらず、これに対する裁決があったことを知った日から6か月を経過したときは提起することはできず、ただし、正当な理由があるときは、この限りでない旨定め、ここにいう審査請求(同法3条3項の定める審査請求その他の不服申立て)には、審査請求に対する再審査請求も含まれる。もっとも、同項が適用されるためには、審査請求は適法なも のでなければならず、審査請求が不適法なものとして却下された場合には、同項の適用はないと解される(最高裁昭和29年(オ)第904号同30年12月6日第三小法廷判決・民集9巻13号1960頁、最高裁昭和27年(オ)第113号同31年3月9日第二小法廷判決・民集10巻3号175頁参照)。 ⑵ 乙1ないし3(枝番号を含む。以下、枝番号のあるものについては、特 9巻13号1960頁、最高裁昭和27年(オ)第113号同31年3月9日第二小法廷判決・民集10巻3号175頁参照)。 ⑵ 乙1ないし3(枝番号を含む。以下、枝番号のあるものについては、特記のない限り同じ。)及び弁論の全趣旨によれば、原告ら3名は、それぞれに対する平成25年各変更決定について、別紙2処分一覧表1記載のとおりの日にちに審査請求をし、それに対する裁決の告知を受け、それぞれ再審査請求をしたが、いずれも、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)56 条、14条1項、3項に定める再審査請求期間を徒過した不適法なものとして却下されたことが認められる。したがって、原告ら3名が提起した平成25年各変更決定の取消しの訴え(第1事件)に係る出訴期間の起算日は、原告ら3名がそれぞれ審査請求についての裁決があったことを知った日となる。 そして、弁論の全趣旨によれば、原告ら3名は、別紙2処分一覧表1の「審 査請求に係る裁決日」欄記載の日にち頃、審査請求の通知を受けたことが認められるところ、同原告らが第1事件に係る訴えを提起したのは、平成26年8月1日であり、上記通知を受けた日から出訴期間の6か月を経過した後であると言わざるを得ない。 ⑶ この点に関し、再審査請求における原告ら3名の釈明である乙3の2・4 には、原告ら3名が委任した弁護士らが所属する法律事務所の事務員が各裁 決書の封入された封筒を受領したのはいずれも平成25年11月7日であるが、弁護士らは、いずれも同日及び同月8日、不在であり、上記封筒を開封して裁決を知ったのは、平成25年11月11日であり、この日を起算日とすると、原告ら3名がした再審査請求は、上記⑴の期間を経過する前にされたことになるとする部分がある。 しかしながら、行政事件訴訟 決を知ったのは、平成25年11月11日であり、この日を起算日とすると、原告ら3名がした再審査請求は、上記⑴の期間を経過する前にされたことになるとする部分がある。 しかしながら、行政事件訴訟法14条3項にいう裁決を知った日とは、当事者が書類の交付等の方法により裁決の存在を現実に知った日を指すところ、裁決書が相手方に郵送された場合には、特段の事情のない限り、相手方は裁決書の配達を受けた日に裁決のあったことを知ったものと推定される(最高裁昭和27年4月25日民集6巻4号462頁)から、本件においても、原 告ら3名が委任した弁護士らは、前記裁決書が前記法律事務所に配達された日に裁決の存在を知ったものと推認され、上記弁護士の不在の事実や裁決書が封入された封筒の開封日時を認めるに足りる的確な証拠はない。かえって、一般に、法律事務所においては、裁決書等が配達された場合には、担当弁護士等にその旨を知らせる体制があったものと考えられることに照らすと、本 件全証拠によっても、上記推定を覆すに足りない。したがって、乙3の2・4の上記記載は、上記⑵の検討結果を覆すに足りず、ほかに、これを覆すに足りる的確な証拠はない。 ⑷ 以上によれば、原告ら3名の第1事件請求は、いずれも不適法であると言わざるを得ない。 3 争点2(本件各改定に基づいてされた本件各変更決定が適法か否か)に係る判断枠組みについて検討する。 ⑴ 本件各改定は、5年に一度の頻度で行う定期的な検証とは別に、生活扶助基準の改定をするものである。生活保護法3条によれば、同法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるも のでなければならないところ、同法8条2項によれば、保護基準は、要保護 者(生活保護法による保護を必要と 保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるも のでなければならないところ、同法8条2項によれば、保護基準は、要保護 者(生活保護法による保護を必要とするものをいう。以下同じ)の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならない。 もっとも、これらの規定における最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な 概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである(最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号123 5頁参照)。したがって、保護基準を改定するに際しては、厚生労働大臣の上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである。 他方、生活扶助基準の引下げをする場合には、従前の生活扶助基準による扶助が支給されることを前提として現に生活設計を立てていた被保護者が、 同基準によって具体化されていた期待的利益を喪失する側面もあるから、厚生労働大臣は、被保護者相互間の公平等に基づく生活扶助基準の引下げの必要性を踏まえつつ、被保護者のこのような期待的利益についても可及的に配慮するため、同引下げの具体的方法等について、激変緩和措置の要否などを含め、上記のような専門技術的かつ政策的見地からの裁量権を有しているも のというべきである。 ⑵ そして、生活扶助基準の改定の前提となる最低限度の生活の需要に係 いて、激変緩和措置の要否などを含め、上記のような専門技術的かつ政策的見地からの裁量権を有しているも のというべきである。 ⑵ そして、生活扶助基準の改定の前提となる最低限度の生活の需要に係る評価や被保護者の期待的利益についての可及的な配慮は、前記のような専門技術的考察に基づいた政策的判断であって、同改定については、それまでも各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて検討がされてきたところであ る。これらの経緯等に鑑みると、生活扶助基準の改定は、①生活扶助基準の 改定の必要があり、当該改定後の生活扶助基準の内容が被保護者の健康で文化的な生活基準を維持するに足りるものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、②上記改定に際し激変緩和等の措置を採るか否かについての 方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点から見て裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に、生活保護法3条、8条2項の規定に違反し、違法となるというべきである(最高裁平成22年(行ツ)第392号、同(行ヒ)第416号同24年2月28日第三小法廷 判決・民集66巻3号1247頁、最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁参照)。 ⑶ 原告らは、生活保護法56条の法意や、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約2条1項及び9条によれば、生活保護基準の引下げは、原則として許されず(制度後退禁止原則)、被告ら側で正当な理由を主張立証し ない限り、厚生労働大臣の 的、社会的及び文化的権利に関する国際規約2条1項及び9条によれば、生活保護基準の引下げは、原則として許されず(制度後退禁止原則)、被告ら側で正当な理由を主張立証し ない限り、厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったというべきである旨主張する。 しかしながら、生活保護法56条は、既に保護の決定を受けた個々の被保護者の権利及び義務について定めた規定であって、保護基準自体が減額改定されることに基づいて保護の内容が減額決定される場合については、同条が 規律するところではないと解される(最高裁判所平成22年(行ツ)第392号、平成22年(行ヒ)第416号同24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁、最高裁判所平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁参照)。また、社会権規約2条1項は、締約国において立法措置その他のすべての適当な方法 によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するこ とを求めるものであり、これが、制度後退禁止原則を定めているものということはできず(最高裁昭和60年(行ツ)第92号平成元年3月2日第一小法廷判決・集民156号271頁参照)、一般的意見が直ちに締約国を法的に拘束すると解すべき根拠も見当たらないから、原告らの上記主張は採用できない。 ⑷ 原告らは、厚生労働大臣に専門的知見がないことや生活保護基準の設定や過去の基準改定における審議会の位置付けに照らすと、本件基準部会等の審議検討を経ない場合、被告らが生活保護基準の変更に係る正当な理由を主張立証しない限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用が認められる旨主張する。 しかしながら、厚生労働省設置法3条、4条によれば、厚生労働省は、社 会福祉 が生活保護基準の変更に係る正当な理由を主張立証しない限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用が認められる旨主張する。 しかしながら、厚生労働省設置法3条、4条によれば、厚生労働省は、社 会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進並びに労働条件その他の労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ることを任務とし、社会保障制度に関する総合的かつ基本的な政策の企画及び立案並びに推進に関すること(同法4条1号)、生活困窮者その他保護を要する者に対する必要な保護に関すること(同条82号)を所掌するものであり、そのための人的物的組織を有 しており、また、社会保障調査(乙116)等の各種統計調査(乙117、119)も行っていると考えられることに加え、同省に勤務経験のある者が本件専門委員会等で、専門家として参加していること(甲B64(8頁以下))もあり、ゆがみ調整の検証方法も同省(保護課)が提案したものである(甲B64(13頁))こと等からすると、厚生労働大臣は上記専門技術 的見地かつ政策的な見地からの裁量的判断を行うに足りる専門的知見があると考えられ、これを覆すに足りる証拠はない。 ⑸ 原告らは、生活保護基準の設定には、専門家によって構成された社会保障審議会や基準部会等の関与が必須である旨主張する。そして、厚生労働省設置法6条、7条に基づいて社会保障審議会が設置され、その分科会として、 福祉部会及びそこに設けられた専門委員会や検討会等において、本件基準部 会等が設置されており、これらの機関においては、保護基準の在り方について、データに基づき検証が行われたり、専門的な見地から提言がされたりしているのであるから、これらの機関に対する諮問の有無や諮問意見との整合性は、保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱 データに基づき検証が行われたり、専門的な見地から提言がされたりしているのであるから、これらの機関に対する諮問の有無や諮問意見との整合性は、保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められるかどうかの判断に当たって考慮すべきものであ るということはできる。 しかしながら、厚生労働省設置法7条1項1号、3号は、社会保障審議会の所掌事務として、厚生労働大臣の諮問に応じて社会保障に関する重要事項を調査審議すること(同項1号)及び同号に規定する重要事項に関し、厚生労働大臣又は関係行政機関に意見を述べることを所掌事務としているにとど まり、これらの機関の意見を聴取し、厚生労働大臣がそれに拘束される旨の定めは見出せない。また、乙28(6頁)及び弁論の全趣旨によれば、これらの機関は、個々の保護決定において適用され得る具体的な扶助基準の策定を目的とするものではないから、厚生労働大臣は、保護基準の改定に当たって、同機関の意見を聴取しなければならないとまではいえず、その意見も、 厚生労働大臣の裁量を制約するものであるとまでいうことはできない。 4 争点2(本件各改定に基づいてされた本件各変更決定が適法か否か)のうち、ゆがみ調整について検討する。 ⑴ ゆがみ調整は、①第1類費の基準額について、各年齢区分間の基準額の差を小さくし、②第1類費の基準額の逓減率(世帯員が1人増加するごとに第 1類費の基準額の合計に乗ずる割合)について、世帯員の増加に応じた逓減割合を大きくするとともに、第2類費の基準額について、世帯員の増加に応じた世帯人員別の基準額の増額の幅を大きくし、③第1類費及び第2類費の基準額について、それぞれ級地区分間の基準額の差を小さくすること等を内容とするものである。 (以上、乙 世帯員の増加に応じた世帯人員別の基準額の増額の幅を大きくし、③第1類費及び第2類費の基準額について、それぞれ級地区分間の基準額の差を小さくすること等を内容とするものである。 (以上、乙19、20) ⑵ 前記前提事実、前記認定事実、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、ゆがみ調整は、以下の経緯でされたことが認められる。 ア本件専門委員会の平成16年報告書では、生活扶助基準の展開部分について、世帯人員別に検証すると、多人数の世帯が単身世帯に比して割高の生活扶助費が支給されているところ、これは必ずしも一般低所得世帯の消 費実態を反映したものとなってはいないものとされた。 イ平成18年7月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」においては、低所得世帯の消費実態等を踏まえた見直し及び級地の見直しを行うこととされた。 ウ平成19年報告書では、以下の点などを挙げて、生活扶助基準の評価・ 検証を適切に行うためには、国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全国消費実態調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当とされた(甲7の1、乙8)。 夫婦子1人(有業者あり)世帯の年間収入階級第1・十分位におけ る生活扶助相当支出額と、それらの世帯の平均の生活扶助基準額では、生活扶助基準額がやや高めになっていた(第1・五分位で比較すると、生活扶助基準額がやや低めとなっている)。また、単身世帯(60歳以上の場合)の年間収入階級第1・十分位における生活扶助相当支出額とそれらの世帯の平均の生活扶助基準額は、生活扶助基準額が高め となっている(第1・五分位で比較すると均衡した水準となっている。)。(乙8(5頁)) 級第1・十分位における生活扶助相当支出額とそれらの世帯の平均の生活扶助基準額は、生活扶助基準額が高め となっている(第1・五分位で比較すると均衡した水準となっている。)。(乙8(5頁))世帯人員別に設定された生活扶助基準額を、第1・五分位における世帯人員別の生活扶助相当支出額と比較すると、仮に世帯人員が1人の世帯の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額をそれぞれ1とした ときの比率で、4人世帯は生活扶助基準額が、生活扶助相当支出額に 比べて相対的にやや高めであり、5人世帯でも生活扶助基準額が、生活扶助相当支出額に比べて相対的にやや高めとなっており、世帯4人以上の多人数世帯に有利であり、世帯人員が少ない世帯に不利となっている実態が見られる(乙8(6頁))。 年齢階級別に設定された生活扶助基準額を、単身世帯の第1から 3・五分位における年齢階級別の生活扶助相当支出額と比較すると、仮に60歳台の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額をそれぞれ1としたときの比率で、20歳ないし39歳では、生活扶助基準額が生活扶助相当支出額に比べ相対的にやや低め、40歳から59歳では生活扶助基準額が生活扶助相当支出額に比べて相対的にやや低めになっ ており、70歳以上では、生活扶助基準額が生活扶助相当支出額より相対的にやや高めであるなど、一般低所得世帯の消費実態からややかい離している(乙8(7頁))。 現行の級地制度における地域差を設定した昭和59年当時の消費実態と生活扶助基準の地域差に関し、級地別にみると、地域間の消費水 準の差が縮小している(乙8(9頁))。 エ平成25年検証においては、年齢階級別、世帯人員別、級地別に基準額と消費実態のかい離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証 準の差が縮小している(乙8(9頁))。 エ平成25年検証においては、年齢階級別、世帯人員別、級地別に基準額と消費実態のかい離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行い、その結果、年齢階級別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位層の消費実態による指数を比べると、各年齢階級間の指 数にかい離が認められた。第2類費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位層の消費実態による指数を比べると、世帯人員が増えるにつれてかい離が拡大する傾向が認められ、生活扶助基準額による各指数の分布と一般低所得世帯の消費実態による各指数の分布との間にかい離があるとされた(乙9)。 ⑶ このように、平成16年報告書及び平成19年報告書を踏まえてされた平 成25年検証の結果において、年齢階級別、世帯人員別の生活扶助基準額と消費実態とのかい離があるとされ、これを踏まえてゆがみ調整がされたことからすると、ゆがみ調整を行うことが必要であるとした厚生労働大臣の判断が不合理であり、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったということは困難である。 また、同検証は、平成21年全国消費実態調査の個票データ(乙9(4頁))という客観的かつ具体的な資料に基づいて、本件検討部会という専門的機関における検討を経てされたものであるから、同検証の結果が不合理であったと考えることは困難である。 ⑷ これに対し、原告らは、平成25年検証においては、①第1・十分位世帯 の全てが生活保護を受給したものとみなした上、②この生活扶助額の総額を不変として、第1・十分位世帯における年齢階層別の相互間・級地別の相互間・世帯人員別の相互間の各支出額の割合を算出し、これらを指数化し、③この指数を用いて、生活扶助基準における年 生活扶助額の総額を不変として、第1・十分位世帯における年齢階層別の相互間・級地別の相互間・世帯人員別の相互間の各支出額の割合を算出し、これらを指数化し、③この指数を用いて、生活扶助基準における年齢階層別の相互間・級地別の相互間・世帯人員別の相互間のゆがみを検討したものであるが、そもそも、ゆ がみ調整は、第1・十分位世帯の消費実態をものさしとして、生活扶助基準における年齢階層別の相互間・級地別の相互間・世帯人員別の相互間のゆがみを相対的に調整するものであるから、上記各相互間の支出額の割合を指数化するためには、サンプル世帯の消費支出額の実データを用いれば足りた旨主張する。 しかしながら、第1・十分位世帯のサンプル世帯の消費支出額の実データを用いて年齢階層別の相互間・級地別の相互間・世帯人員別の相互間の違いの有無及び程度を検討することになると、消費実態と生活扶助基準にかい離があった場合、これも比較結果に反映されることになるから、平成25年検証において、原告らが主張するような方法を用いなかったことから、厚生労 働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはでき ない。 ⑸ 原告らは、被告らの主張によると、ゆがみ調整の結果、生活保護費を約90億円削減する効果があったとされるが、生活保護受給世帯には、生活保護受給世帯を除く第1・十分位世帯と比較して、ゆがみ調整の結果減額となる多人数世帯が少なく、ゆがみ調整の結果増額となる単身高齢者世帯が多いか ら、ゆがみ調整後に生活保護費の削減効果が生じることはあり得ず、かえって、大幅な増額効果が見られるはずである旨主張する。 しかしながら、ゆがみ調整の各世帯への影響は、世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組み合わせにより、様々であると考えられるから( り得ず、かえって、大幅な増額効果が見られるはずである旨主張する。 しかしながら、ゆがみ調整の各世帯への影響は、世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組み合わせにより、様々であると考えられるから(平成25年検証)、原告らが主張するような増額効果が必ず見られると断定するに足 りる証拠はない。 ⑹ 原告らは、第1・十分位世帯には生活保護受給世帯も位置付けられているから、第1・十分位世帯と生活保護受給世帯を比較することは、不合理である旨主張する。 しかしながら、ゆがみ調整で比較しているのは、第1・十分位世帯の消費 支出とこれらの世帯が当時の生活保護基準による生活扶助を受けるとした場合の生活扶助基準額であり、第1・十分位世帯の消費実態と生活保護受給世帯の消費実態ないし生活扶助基準額ではないから、原告らの主張は妥当しない。ゆがみ調整は、生活扶助の標準世帯からの展開におけるゆがみを調整することを目的とする趣旨のものであり、第1・十分位世帯の消費実態と生活 扶助基準の差が反映されないようにすることがこの趣旨に沿うから、このような比較方法は、合理性があるということができる。 ⑺ 原告らは、t検定の結果、帰無仮説が棄却されなかったにもかかわらず、回帰分析をやり直すことなく、従前の回帰分析の結果をそのまま採用していたことが、t検定の採用方法を誤った旨主張する。 しかしながら、t検定において、帰無仮説が棄却された場合には、対立仮 説が受け入れられる一方で、説明変数に効果がないとする帰無仮説が棄却されなかったとしても、当然に、説明変数に効果がないことが帰結されるわけではない。ゆがみ調整においては、ゆがみに効果のある説明変数の特定までが目的とされたわけではないと考えられるから、帰無仮説が棄却されるまでモデルを変える等 、説明変数に効果がないことが帰結されるわけではない。ゆがみ調整においては、ゆがみに効果のある説明変数の特定までが目的とされたわけではないと考えられるから、帰無仮説が棄却されるまでモデルを変える等して回帰分析をやり直さなかったことが、ゆがみ調整に関 し当該回帰分析を行った目的に反し、不合理であるということはできない。 ⑻ 原告らは、平成25年検証における重回帰分析における決定係数が低いことから、同検証で使用されたモデルが不適切である旨主張する。 しかしながら、乙73、74によれば、平成25年検証に用いられた回帰分析の方法の下では、決定係数が0.5でも良いとされ、0.3程度しか得 られない場合も多いとされていることが認められ、このことからすると、どの程度の決定係数を求めるかは、回帰分析の方法の当不当の判断の問題であり、原告らが主張する決定係数の低さから直ちに、厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない(乙50(50頁)によれば、平成25年1月18日第13回基準部会議事録において、 自由度調整済み決定係数が0.3となるのは評価できる説明力の高さであり、妥当であるとされたことが認められるところ、これは、上記検討結果に沿うものということができる。)。 ⑼ 原告らは、平成25年検証において、回帰分析の結果の適正化のための検討がされていない旨や回帰分析の方法が被告国の説明と異なり、専門家の分 析検証を経たものということができない旨主張するが、原告らの主張する事実は、回帰分析の方法の当不当の判断の問題であり、これらをもって、厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。 そして、ほかに、平成25年検証における回帰分析が適正に行われず、こ れに基づ 問題であり、これらをもって、厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。 そして、ほかに、平成25年検証における回帰分析が適正に行われず、こ れに基づく厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がある と認めるに足りる証拠はない。 ⑽ 以上によれば、平成25年検証に基づくゆがみ調整において、厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない(原告らの2分の1処理に関する主張については、激変緩和措置に関する検討において、検討する。)。 5 争点2(本件各改定に基づいてされた本件各変更決定が適法か否か)のうち、デフレ調整について検討する。 ⑴ 前記のとおり、厚生労働大臣は、デフレ調整として、総務省CPIを基に、すべての消費品目から①生活扶助以外の扶助で賄われる品目(家賃、教育費、医療費など。除外品目①)及び②原則として保有が認められておらず又は免 除されるため保護受給世帯において支出することが想定されていない品目(自動車関連費、NHK受信料など。除外品目②)を除いて算出した消費者物価指数(生活扶助相当CPI)の動向を勘案することとし、平成20年生活扶助相当CPIと平成23年生活扶助相当CPIを用いて、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率(マイナス4.78%。以 下「本件下落率」ということがある。)を勘案してデフレ調整を行った(乙19、21)。 ⑵ 前記前提事実、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、デフレ調整が行われるに至った経緯については、以下のとおり認められ、これによれば、デフレ調整は、検討部会等における検討を経て行われたものではないことが認め られる。 アデフレ調整は、平成19年報告書にお れるに至った経緯については、以下のとおり認められ、これによれば、デフレ調整は、検討部会等における検討を経て行われたものではないことが認め られる。 アデフレ調整は、平成19年報告書において指摘されているものではなく、その後基準部会においても、検討されていなかった。 イ平成25年検証の報告書を作成するに当り、事務局から、厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、同報告書の評価・検証の 結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に 勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい旨の文言を入れることが提案され、その趣旨として、生活保護基準を消費者物価指数、賃金動向等の客観的な経済的指数による修正をすることは正当化できると考えられる旨の説明がされた(乙28(8頁))。これに対しては、委員から、消費が地域ごとに異なるのに、全国一律の物価を基準として改定す ることは相当でない旨の意見や、当該部会では物価指数を考慮することの当否が一切協議されていないことから事務局の提案に反対する旨の意見が出された(乙28(9頁))。 ⑶ 他方、一般に、名目可処分所得が一定の状況の下では、ある世帯が購入している財・サービスの価格が上昇した場合、その材の購入量を維持しようと すれば生計費は上昇し(可処分所得は実質的に減少する。)、反対に、財・サービスの価格が下落した場合、生計費は下落することになる(可処分所得は実質的に増加する。)。このことからは、生計費が、物価の変動による影響を受けるということができる(甲A65(11頁))。 そして、本件専門委員会の生活保護制度の在り方に関する中間とりまとめ (乙16)に、例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも生活保護基準の うことができる(甲A65(11頁))。 そして、本件専門委員会の生活保護制度の在り方に関する中間とりまとめ (乙16)に、例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも生活保護基準の改定の指標の一つとして用いることなども考えられる旨の意見が記載され、平成19年報告書でも、実際の生活扶助基準の設定に当たっては、実情に応じて、全国消費実態調査以外のデータ等も適時適切に参照することも必要である旨の意見が記載されていること(乙8(3頁注))は、上 記物価と生計費との関係から、生活保護基準にも物価を反映させる立場もあり得ることを示すものと考えられる。 これらの経緯に加え、平成20年のリーマンショックから物価の下落が見られたにもかかわらず、政策的な配慮から生活保護基準は据え置かれたこと等に鑑みると、消費者物価を考慮して生活扶助基準の改定を行う(デフレ調 整)必要があったとした厚生労働大臣の判断自体に、裁量権の範囲の逸脱又 はその濫用があるということはできない。 ⑷ 原告らは、平成20年から平成23年までの間、電化製品の物価の下落が大きかったところ、平成22年には、家電エコポイントや地上デジタルへの移行の準備でテレビのウエイトが高くなったこと等の特殊事情があったとして、生活扶助相当CPIにおいて平成22年のウエイトが採用されたことが 不合理であり、仮にそうでなかったとしても、生活扶助相当CPIから、テレビ、パソコン等を除外しなかったことが不合理である旨主張する。 ア乙30(49頁)、31(102頁)、32(17枚目)によれば、平成22年を100とした場合の総務省CPIによるテレビ、パソコンの価格指数及び平成22年基準消費者物価指数ウエイト(1万分比・全国)は 以下のとおりであり、殊に、テレビのウエ 目)によれば、平成22年を100とした場合の総務省CPIによるテレビ、パソコンの価格指数及び平成22年基準消費者物価指数ウエイト(1万分比・全国)は 以下のとおりであり、殊に、テレビのウエイトは、ほかの教養娯楽用耐久財(電子辞書(5)、ビデオレコーダー(13)、カメラ(7)、ビデオカメラ(3)等)と比べても大きく、また、テレビ、パソコン(デスクトップ型)及びパソコン(ノート型)の平成20年からの下落幅は、ビデオレコーダー(平成20年及び平成24年の指数はそれぞれ191.6と6 0.0)、カメラ(同224.7と72)等と並んで大きかったことが認められる。 これに対し、ほかの品目の平成20年及び平成23年の物価指数は、総合でそれぞれ100.1と99.6、食料(ウエイト2525)でそれぞれ100.1と99.6、光熱・水道(ウエイト704)がそれぞ れ104.5と103.3、家具・家事用品(ウエイト345)がそれぞれ107.1と94.4、被服及び履物(ウエイト405)がそれぞれ102.1と99.7等であり、教養娯楽用耐久財より変動幅は小さく、また、教養娯楽(教養娯楽用耐久財を含む。ウエイト1145)がそれぞれ104.3と96.0等であったことが認められる。 教養娯楽用耐久財(ウエイト 171) 平成19年 196.5平成20年 160.3平成22年 100平成23年 72.5テレビ(ウエイト 97) 平成19年 260.3平成20年 205.8平成22年 100平成23年 69.1パソコン(デスクトップ)型(ウエイト 10) 平成19年 306.3平成20年 237.2平成22年 100平成23年 60.1パソコン(ノート)型 年 69.1パソコン(デスクトップ)型(ウエイト 10) 平成19年 306.3平成20年 237.2平成22年 100平成23年 60.1パソコン(ノート)型(ウエイト 20) 平成19年 459.2平成20年 281.6平成22年 100平成23年 76.0イまた、甲A68ないし74及び弁論の全趣旨によれば、平成21年5月 から平成23年3月まで、家電エコポイント制度が実施されたところ、同制度の対象となるテレビ、冷蔵庫、エアコン等の国内出荷台数は、平成21年度が15847千台、平成22年度が25681千台であったが、同制度がなかった場合の国内出荷台数見込みは平成21年度が10573千台、平成22年度が11167千台であり、推計すると、平成22年度の 薄型テレビの国内販売台数の半数以上が家電エコポイントを利用した販売 であったこと(甲A74)が認められる。このことからすると、テレビの平成22年基準消費者物価指数ウエイトが上記のとおり大きくなったのは、家電エコポイント制度の影響もあると考えられなくない。 ウさらに、甲A67の1~3及び弁論の全趣旨によれば、平成23年の地上デジタル波放送への移行に向けて、NHK受信料全額免除世帯(災害被 害者を除く。)のうち、地上アナログ波放送を視聴している者に対し、各世帯のアナログテレビ1台で地上デジタル波放送を視聴するために新たに必要な最低限度の機器の無償提供等(簡易なチューナーの無償給付、室内アンテナの無償給付又はアンテナ等の改修)を行うものとされ、その対象者は、NHK受信料全額免除世帯(公的扶助受給世帯、市町村民税非課税 の障害者世帯、社会福祉事業施設入所者)であったことが認められる。 エこれら アンテナ等の改修)を行うものとされ、その対象者は、NHK受信料全額免除世帯(公的扶助受給世帯、市町村民税非課税 の障害者世帯、社会福祉事業施設入所者)であったことが認められる。 エこれらの事実によれば、平成20年から平成23年にかけて、テレビ、パソコン(デスクトップ型)、パソコン(ノート型)等の教養娯楽用耐久財の物価指数が大きく下落し、また、平成22年基準消費者物価指数ウエイトにおけるテレビのウエイトがほかの教養娯楽用耐久財に比べ大きかっ たこと、このことは、平成23年の地上デジタル波放送への移行や家電エコポイント制度の実施と整合性があるということができること、他方、生活保護受給世帯に対し、地上デジタル波放送への移行の際、必要な最低限度の機器の無償提供等が行われたことが認められ、この時期における生活保護受給世帯におけるテレビの買替えの需要は、一般の世帯に比べ、限ら れていたと考えることはできる。 オしかしながら、国民の消費の内容は、経時的に変化することから、現実の消費実態を反映した物価指数を算定するためには、算定時点(平成23年)に近接した時点(平成22年)の消費の構造を示すデータを用いること自体に合理性がないということはできない。 カまた、平成19年報告書には、第1・十分位に属する世帯における必需 的な耐久消費財の普及状況は、平均的な世帯と比べて大きな差はなく、必需的な消費品目の購入頻度は、平均的な世帯と比較しても概ねそん色ない状況にある旨の記載があり(乙8(5頁))、平成25年検証においても同旨の記載がある(乙9(4頁))。さらに、乙40によれば、平成22年におけるカラーテレビの普及率は、被保護世帯が98.0%であったの に対し、第1・十分位世帯は96.5%であり、第3・5分位世 同旨の記載がある(乙9(4頁))。さらに、乙40によれば、平成22年におけるカラーテレビの普及率は、被保護世帯が98.0%であったの に対し、第1・十分位世帯は96.5%であり、第3・5分位世帯は98. 7%であったことが認められる。このような事情からすると、生活保護受給世帯においても、カラーテレビ等の教養娯楽用耐久財について第1・十分位世帯と同程度の需要があったと考えられる。 これに対し、前記のとおり、地上デジタル波放送への移行に伴って、 生活保護受給世帯に対し、アナログテレビで地上デジタル波放送を視聴するために必要な最小限度の機器の無償提供を受けたことが認められる。 しかしながら、前記のとおり、市町村民税非課税の障害者世帯、社会福祉事業施設入所者も、同様の機器の提供を受けたことが認められ、同機器の提供が生活保護受給世帯特有の事情であったということはできない。 また、前記のとおり、テレビの平成22年基準消費者物価指数ウエイトが上記のとおり大きくなったのは、家電エコポイント制度の影響もあると考えられなくないが、家電エコポイント制度によって付与されるエコポイントは、商品券や電子マネーなどに交換することができるものであり(甲A68(45頁))、生活保護受給者等前記機器の無償提供の 対象者の中にも、同制度を利用せず、家電エコポイントや地上デジタル波放送への移行を契機に、地上デジタル波放送対応テレビを購入した者がいた可能性が否定できない(原告番号1、9、12、20及び21の各本人尋問の結果(以下、併せて「原告ら本人尋問の結果」という。)によっても、現在も上記無料配布された機器を使い続けている世帯があ る形跡がうかがわれないことは、これに沿うものということができ る。)。 このような事情に鑑みると、前 という。)によっても、現在も上記無料配布された機器を使い続けている世帯があ る形跡がうかがわれないことは、これに沿うものということができ る。)。 このような事情に鑑みると、前記のとおり、地上波放送をアナログテレビで視聴するのに必要な最小限の機器が無償提供されたことを考慮しても、テレビの物価下落の影響が、生活保護受給世帯に及ばないとまで断定することは困難である。 このことに加え、一般に、物価が、当年に生じた様々な事象の影響を受けることはやむを得ないと考えられ、平成19年報告書にも、耐久財の普及状況については、一時点のみではなく、時系列でも見る必要があるのではないかとの意見があったこと(乙8(4頁(注))等を考慮すると、生活扶助相当CPIの算定に当り、平成22年のウエイトを用い たことは、指数算式の当不当の問題にとどまり、このことについて、厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということまではできない。また、上記検討結果によれば、生活扶助相当CPIから、テレビ、パソコン等を除外しなかったことについて、厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということまでは できない。 ⑸ア原告らは、デフレ調整で使用された生活扶助相当CPIは、平成20年から平成22年までの間をパーシェ方式で、平成22年から平成23年までの間をラスパイレス方式でそれぞれ算出するという独自の方式によるものであり統計学上の正当性がない上、このような方式を採ったことにより、 パーシェ方式の下方バイアスが強く働き、物価の下落が過大に評価された旨主張する。そして、甲13(枝番を含む。)、甲A55、62、及び弁論の全趣旨によれば、生活扶助相当CPIは、平成22年のウエイトを用いて、かつ、同年を アスが強く働き、物価の下落が過大に評価された旨主張する。そして、甲13(枝番を含む。)、甲A55、62、及び弁論の全趣旨によれば、生活扶助相当CPIは、平成22年のウエイトを用いて、かつ、同年を基準時点、平成20年を参照時点として、平成20年から平成22年までの間の物価変動を算出し、平成22年のウエイトを用 いて、かつ同年を基準時点とし、平成23年を参照時点として、平成22 年から平成23年までの間の物価変動を算出しており、これによって得られた物価変動を合わせて平成20年から平成23年までの物価変動指数としたものであり、平成20年から平成22年までの間の物価変動の算出方法はパーシェ方式に類似しており、平成22年から平成23年までの間の物価変動の算出方法はラスパイレス方式に類似していることが認められる。 イしかしながら、乙94によれば、このような指数算式は、ロウ指数として説明できるものであるが、実際の生活扶助相当CPIでは、平成22年基準CPIに含まれる品目のうち平成20年時点で存在しなかった32品目が算入されておらず、除外されたこれら32品目の価格が、除外しなかった品目と同じように変化したであろうという仮定に基づくものである (乙94(6頁))ことが認められる。 ウこれに対し、原告らは、ロウ指数は、物価指数の算出に当たり、各対象品目のウエイトを考慮すべきであるとの立場から提唱されたウエイト固定型の指数の総称にすぎず、その算式を検証することなくして、統計上の正当性を取得するわけではない旨主張し、甲A62(6頁)、65(14頁) には、これに沿う部分がある。 しかしながら、日本のCPIは、ILOによる国際的な基準に沿って作成されている(甲A65(8頁))ところ、乙94(4頁)によれば、ロウ指数 )、65(14頁) には、これに沿う部分がある。 しかしながら、日本のCPIは、ILOによる国際的な基準に沿って作成されている(甲A65(8頁))ところ、乙94(4頁)によれば、ロウ指数は、ILO等で認められた指数計算の方式の一つであることが認められる。そして、物価指数は現在も発展途上の統計であるとされて おり(乙29(1頁、31頁))、正しい指数計算の方式とされるものが一義的に決められているわけではないと考えられる。このことに照らすと、上記各証拠やロウ指数よりも精度が高いとされる指数算式が提唱されていることを考慮してもなお、生活扶助相当CPIがロウ指数と同視できるのであれば、当該方式を採用した厚生労働大臣の判断に、裁量 権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。 エまた、ロウ指数は、基準時点から比較時点までの間にウエイト参照時点がある場合、中間年指数(中間年バスケット方式)になる(乙66(44頁))ところ、原告らは、平成22年は、基準時点と参照時点の中間の年ではなく、かつ、平成22年のウエイトは平成20年から平成23年の消費構造からかけ離れており、基準時点から比較時点までの間の代表的かつ 平均的な消費構造を反映している可能性はないから、生活扶助相当CPIを中間年バスケット方式としても統計学上の正当性を基礎付けることはできない旨主張し、甲A62(6頁)及び証人A(8、9頁)にはこれに沿う部分がある。 しかしながら、乙31(34頁)によれば、基準年と比較年の中間に 当たる年の消費構造を用いて指数を算出する中間年バスケット方式の指数は、ラスパイレス連鎖基準方式よりもウエイトの参照年が古くなるが、消費構造が円滑に変化しているとみなせる通常の状況では、消費構造の変化により適切に対 を用いて指数を算出する中間年バスケット方式の指数は、ラスパイレス連鎖基準方式よりもウエイトの参照年が古くなるが、消費構造が円滑に変化しているとみなせる通常の状況では、消費構造の変化により適切に対応している可能性が高く、通常、基準年から比較年までバスケットが滑らかに変化しているとみられることから、基準年と 比較年の中間に当たる年のバスケットを用いることで、近似した指数を得ることができるとする見解もあることが認められ、このことに照らすと、原告らの上記主張を直ちに採用することはできない。 オ原告らは、ロウ指数においては、品目バスケットの中身が、基準時点から比較時点までの間、同一でなければならないが、生活扶助相当CPIで は、平成20年から平成22年までの間の品目バスケットと平成23年までの品目バスケットが32品目にわたり異なっており、ロウ指数に当たらない旨主張する。これは上記イの仮定の合理性の問題でもあると解される。 乙29(6頁)及び弁論の全趣旨によれば、一般に、物価指数は、品目と呼ばれる最小単位の価格指数を、各品目のウエイトで加重平均する ことから成り立っており、具体的には、互いに性質の似通った商品サー ビスを品目としてグルーピングし、その取引金額シェアから加重ウエイトを計算し、各品目に属する商品サービスの価格の動きを代表するような商品をピックアップして、その価格を継続的に調査し、品目指数を作成した上で、個々の品目指数を当該品目のウエイトで加重平均して総平均を算出するという計算手続をとっているが、同一の商品について、継 続的に価格調査を行うことが困難な場合もあり、このような場合の対応方法としては、①品質が異なる商品サービスの中で、品質が一定の部分を抜き出して価格を調査する方法、②継続的な価格調査が いて、継 続的に価格調査を行うことが困難な場合もあり、このような場合の対応方法としては、①品質が異なる商品サービスの中で、品質が一定の部分を抜き出して価格を調査する方法、②継続的な価格調査が可能な他の類似商品と価格の行動が似ているものとみなして、ウエイトを当該類似商品のウエイトに上乗せする方法、③価格調査を行わず、ウエイトもゼロ として、指数計算の枠外とする(すなわち、その品目の指数及びウエイトは除外して計算する。この場合には、結果として、類内のほかの品目により求められたロウ指数によって、欠品となった品目の指数が代替されることになる(乙31(27頁)))方法等があるとされている(乙29(10頁))ことが認められる。 このように、指数の算定においては、同一の商品について継続的に価格調査を行うことが困難な場合があることが一般的に想定されており、このような場合の対処方法の一つとして、当該品目の指数及びウエイトを除外して計算する方法があることからすると、生活扶助相当CPIにおける指数算式も、上記両品目バスケットの違いを上記の方法で処理し たものと考えられる。また、乙31(171頁)、32によれば平成22年に追加されたドレッシング、焼き魚等の32品目の平成22年から平成23年の価格指数(全国)は、同じ中分類のほかの品目と大きく異なるところがないことが認められ、このことからすると、上記の処理に合理性があったと考えられる。そうすると、生活扶助相当CPIにおけ る前記イの仮定も、合理的なものであったというべきであり、これを覆 すに足りる証拠はない。したがって、この点に関する厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。 ⑹ 原告らは、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実 覆 すに足りる証拠はない。したがって、この点に関する厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。 ⑹ 原告らは、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態からかい離したのは、平成19年以前であったはずであり、平成20年を基準時点(始期)とする根拠はなく、また、生活扶助相当CPIの検証作業中に平成24年の総務省 CPI(消費者物価指数)が公表されたのであるから、デフレ調整を行うのであれば、平成24年を終期とすべきであった旨主張する。 これに対し、被告らは、厚生労働大臣は、平成20年以降デフレ傾向があったにもかかわらず、生活扶助基準が改定されなかったため、その時点以降から、デフレ傾向の経済情勢を主な要因として生活扶助基準の水準と一般国 民の消費実態との不均衡が一層顕著となっており、デフレ調整をする必要があると判断し、平成20年以降のデフレ傾向の時点を物価変動率の算定の始期とし、また、デフレ調整を決定した当時の最新の総務省CPIのデータが平成23年のものであったため(乙41)、物価変動率の算定の基準時点(終期)を平成23年とした旨主張する。 前記認定事実⑴オのとおり、平成19年、消費者物価の下落が見られたものの、政策的な配慮から生活扶助基準が据え置かれたことに照らすと、その翌年である平成20年を物価変動率の算定の始期とした厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。 また、乙41によれば、デフレ調整を決定した当時の最新の総務省CPI のデータが平成23年のものであり、同年のデータを用いたことに合理性があると認められ、生活扶助相当CPIを定めるためには、総務省CPIから除外品目を除外する等の作業が必要であったことなどに鑑みると、その後 タが平成23年のものであり、同年のデータを用いたことに合理性があると認められ、生活扶助相当CPIを定めるためには、総務省CPIから除外品目を除外する等の作業が必要であったことなどに鑑みると、その後の作業中に、公表された平成24年のデータを使用しなかったとしても、そのことから、デフレ調整の終期を平成23年とした厚生労働大臣の判断に、裁 量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。 ⑺ア原告らは、生活扶助相当CPIの算出に当たっては、生活保護受給世帯の消費実態に即したデータである社会保障生計調査のデータを用いるべきであったのに、生活扶助相当CPIは、家計調査の一般世帯のデータを利用・加工しており、そこで算出された物価の変動率は、生活保護受給世帯の可処分所得を反映していない旨主張する。 しかしながら、乙29(8頁)によれば、統計学的見地から一定の信頼性を確保しようとすると所要サンプル数が大きくなるところ、乙93(25頁)及び弁論の全趣旨によれば、現在実施されている消費支出に関する調査の中では、家計調査が、サンプル数が最も多いのに対し、社会保障生計調査は、サンプル数が限られており、生活保護基準の改定等 の資料とするためには、今後これを発展させる必要があるとされていることが認められる。このことからすると、上記証拠や、家計調査には、総世帯の26%を占める単身世帯が含まれていないこと(乙29(15頁))の制約があり、また、独自の調査の実施を含めてデータの整備や分析の精度向上に取り組むべきである旨の意見があること(乙93(2 5頁))等の事情を考慮しても、家計調査に基づきデフレ調整を行った厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。 イ原告らは、家計調査を と(乙93(2 5頁))等の事情を考慮しても、家計調査に基づきデフレ調整を行った厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。 イ原告らは、家計調査を利用するとしても、家計調査のうち低所得世帯に属する第1・五分位及び第1・十分位のデータをウエイトとした計算も容 易かつ可能であった旨主張し、甲A62、65にはこれに沿う部分がある。 しかしながら、生活保護受給者の消費支出に対するデフレの影響を算定するために、どのようなウエイトを用いるかは厚生労働大臣の専門的裁量に属するものと考えられ、第1・十分位の平均消費水準は中所得世帯の国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財の第 1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べてそ ん色がなく充足されている状況にあるとされたこと(乙8(5頁)、9)からすると、想定できる複数のデータのうち、原告らの主張するデータを用いなかったとしても、そのことから直ちに、厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとまでいうことはできず、これを覆すに足りる証拠はない。 ⑻ 以上によれば、生活扶助相当CPIに基づき、平成20年から平成23年までの物価の下落率を算定した厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。 6 争点2(本件各改定に基づいてされた本件各変更決定が適法か否か)のうち、激変緩和措置等について検討する。 ⑴ 本件各改定においては、激変緩和措置として、減額幅を最大10%とする措置や、減額を3年にわたり実施する措置も採られるのであり、平成25年検証による影響は、これらの措置によって相当程度緩和されると考えられる。 したがって、この点に関する厚生労働大 幅を最大10%とする措置や、減額を3年にわたり実施する措置も採られるのであり、平成25年検証による影響は、これらの措置によって相当程度緩和されると考えられる。 したがって、この点に関する厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。 ⑵ 被告らは、ゆがみ調整をした場合の影響は、世帯員の年齢、世帯人員別、居住する地域の組合せによって様々であると見込まれ、平成25年検証の結果をそのまま反映させた場合には、子供のいる世帯への影響が大きくなることが予想されたことから、激変緩和措置の一環として、2分の1処理をした旨主張する。そして、乙9(7、8頁)にはこれに沿う部分があるほか、甲 13の2(20頁)及び弁論の全趣旨によれば、本件各改定の検討過程において、2分の1処理が、減額幅の最大値を決める措置と同時に検討されていたことが認められる。 これに対し、原告らは、同処理が、生活扶助基準額が増額した場合にも適用されるものであり、実際の効果を見ても、子供のいる2人世帯の4割以 上・同3人世帯の3割程度の世帯類型の生活扶助基準額の減額又は不変の効 果を生じさせており、これに係る厚生労働大臣の判断過程に過誤がある旨主張する。 そして、平成25年検証の結果、生活扶助基準が減額されるべき世帯については、2分の1処理は激変緩和措置に当たるということはできるが、前記3⑵のとおり、激変緩和措置は、生活扶助基準の引下げをする場合に、従前 の生活扶助基準による扶助が支給されることを前提として現に生活設計を立てていた被保護者の期待的利益に配慮する趣旨のものであるから、平成25年検証によって生活扶助基準が増額されるべき世帯との関係では、2分の1処理が激変緩和措置に当たるということはできない。 ⑶ア被告 ていた被保護者の期待的利益に配慮する趣旨のものであるから、平成25年検証によって生活扶助基準が増額されるべき世帯との関係では、2分の1処理が激変緩和措置に当たるということはできない。 ⑶ア被告らは、平成25年検証の結果得られた生活扶助基準は、生活扶助基 準の適正化という目的との関係で当該手法が唯一のものということはできないこと、生活扶助基準については、展開部分についても、平成25年検証の結果等を前提に更なる検証が行われる予定であること、サンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界も認められたこと(乙9(9頁))や公平の見地から、厚生労働大臣は、平成25年検証の結果によっ て生活保護受給者を区別することをせず、一律に一定の割合でゆがみ調整の結果得られた適正な生活扶助基準における展開のための指数による調整の影響を2分の1の割合で反映させることが合理的な措置であると考えて、2分の1処理を講じた旨主張する。 そして、前記のとおり、本件各改定は、厚生労働大臣の専門的政策的 裁量に基づいて行われるものであり、厚生労働大臣は、検討部会等の専門機関の検証結果に拘束されると解すべき法的根拠は見出せない。本件基準部会でも、事務局から、平成25年検証は、消費の実態と基準との間にかい離があるのではないかという事実関係を合理的に説明できるかということを検証したものであり、それを踏まえて、基準を具体的にど うするかというところで本件基準部会の判断を受けているわけではない 旨の説明がされているところ(乙28(11頁))、これは、上記検討結果に沿うものということができる。 イ他方、厚生労働大臣の専門的政策的裁量は無制限のものではなく、本件検討部会等の専門機関に対する諮問をしたにもかかわらず、諮問結果と異なる判断をす 、上記検討結果に沿うものということができる。 イ他方、厚生労働大臣の専門的政策的裁量は無制限のものではなく、本件検討部会等の専門機関に対する諮問をしたにもかかわらず、諮問結果と異なる判断をする場合には、諮問結果が諮問の目的との関係で唯一の手法で ないとしても、諮問結果と異なる判断をしたことについて十分な根拠が求められるというべきである。 そして、平成25年検証によれば、ゆがみ調整を実現するためには、生活扶助費が増額されるべき世帯と減額されるべき世帯等があるところ、生活扶助基準額が増額されるべき世帯について2分の1処理がされた場 合には、当該世帯は、同じ世帯構成の一般低所得層の世帯との均衡を回復しないこととなり、ゆがみが残り、不公平な結果となると考えられる。 このことは、生活保護受給世帯間の公平を図るために生活扶助基準の展開部分を適正化するというゆがみ調整の趣旨と相容れない(別件訴訟における本件基準部会の岩田正美部会長代理の尋問調書である甲15の1 (23頁)によれば、平成25年検証の際に、本件基準部会に対し2分の1処理について説明されたことはなく、平成29年検証の際に、作業部会における委員からの質問があって初めて説明がされたとする部分や、平成29年検証で検討された生活扶助基準は、平成25年検証の対象となった生活扶助基準と同じようなゆがみがあったとする部分があること は、上記検討結果に沿うものということができる。)。 ⑷アまた、上記のとおり、被告らは、平成25年検証の結果得られた生活扶助基準は、生活扶助基準の適正化という目的との関係で当該手法が唯一のものということはできないこと、生活扶助基準については、展開部分についても、平成25年検証の結果等を前提に更なる検証が行われる予定であ ること、サンプル 化という目的との関係で当該手法が唯一のものということはできないこと、生活扶助基準については、展開部分についても、平成25年検証の結果等を前提に更なる検証が行われる予定であ ること、サンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界も認めら れたこと(乙9(9頁))、厚生労働大臣は、一律に、一定の割合でゆがみ調整の結果得られた適正な生活扶助基準における展開のための指数による調整の影響を2分の1の割合で反映させることが合理的な措置であると考えて、2分の1処理を講じた旨主張する。 そして、乙9(8頁以下)によれば、平成25年検証においては、① 個々の生活保護受給世帯を構成する世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の様々な組合せによる生活扶助基準の妥当性について、よりきめ細やかな検証が行われたが、年齢、世帯人員の体系、居住する地域の組み合わせによる基準の展開の相違を消費実態に基づく指数に合わせたとしてもなお、その値と一般低所得世帯の消費実態との間には、世帯構成に よって様々に異なる差が生じ得るのであり、具体的にどのような要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは現時点では明確に分析ができないこと、②また、特定の世帯構成に限定して分析する際にサンプルが極めて少数となるといった統計上の限界があることなどから、全ての要素について分析説明に至らなかったとし、また、③今後政府部内において具体的な 基準の見直しを検討する際には、平成25年検証の結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある旨の記載がある。甲15の1に、水準均衡検証は、標準世帯のおよその水準として行う方が誤りは少ないと考えられ、平成21年データによる検証のように、体系、級地のゆがみを全てデータに合わせて細かく正した がある。甲15の1に、水準均衡検証は、標準世帯のおよその水準として行う方が誤りは少ないと考えられ、平成21年データによる検証のように、体系、級地のゆがみを全てデータに合わせて細かく正した 基準改定を行ったのは、やり過ぎであったと考える旨の記載があることや、乙93(26頁、27頁)によれば、平成29年検証においては、平成25年検証の結果を踏まえ、データの整備や分析の精度向上に取り組むべきとされ、また、今後の検証の手法についても議論が必要であるとされていることなども、上記記載に沿うということができる。 イしかしながら、一般に、統計数値に基づき政策決定をする場合に、当該 統計数値にどの程度依拠するかは、判断権者の当該統計数値の精度を踏まえた裁量に属するということはできるものの(これは、原告らが主張するネイマン=パーソン理論が前提とする思想に沿うものと考えられる。)、ゆがみ検証においては、もともと、10歳台以下の単身世帯のデータサンプルが少ないことから、10歳台以下の者の含んだ複数人世帯のデータか ら10歳台以下の者の消費水準を推計するために回帰分析の手法を用いることとしたのであり(甲B57(5頁))、被告らが、平成25年検証で行われた回帰分析の決定係数に照らしても、同回帰分析は信用できる旨主張していること(前記第2の2(被告らの主張の要旨)⑵ウ)に照らすと、2分の1処理が必要であると考えられた裁量判断の具体的な根拠は明らか でなく、2分の1に限って平成25年検証の結果を反映すべき具体的な根拠も明らかでない。厚生労働省幹部が内閣官房副長官との協議で示した資料である甲B72の3にも、検証結果を完全に反映した場合の影響が高齢単身(60歳以上)の世帯類型については105%、高齢夫婦(60歳以上)の世帯類型に 生労働省幹部が内閣官房副長官との協議で示した資料である甲B72の3にも、検証結果を完全に反映した場合の影響が高齢単身(60歳以上)の世帯類型については105%、高齢夫婦(60歳以上)の世帯類型については102%なので(以上、いずれも基準額の平均 値が増額)、2分の1調整をし、デフレ調整をした場合の影響がいずれも97%にとどまる(基準額の平均値の減額)旨(5頁)や、生活保護基準(本体)の見直しによる財政効果が3年間で合計600億円に上る旨(6頁)の記載があるが、2分の1調整を行う理由等の記載はない。また、平成29年検証(乙93)においても、被告らの主張する統計上の限界につ いて、事務局(厚生労働省)がデータの整備等の手当てをしようとした形跡はうかがわれない。 被告らは、展開部分について更なる検証が行われる予定である旨主張するが、平成29年検証(乙93)においても、夫婦子1人世帯について、生活扶助基準額と第1・十分位の生活扶助相当支出額の均衡を確認し ただけであり、そこから展開した様々な世帯類型における生活扶助基準 額と一般低所得世帯の生活水準の均衡を確認するまでに至っていない。 ⑸ 以上によれば、平成25年検証によれば、生活扶助費が増額されるべき世帯について、2分の1処理をしたことは、合理的な根拠を欠くのみならず、被告らが主張するゆがみ調整や激変緩和措置の趣旨と矛盾し、これを行った厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるというべき である。 ⑹ 乙9及び弁論の全趣旨によれば、平成25年改定においては、第1類費について、年齢別の改定率、世帯人員別の改定率及び級地別の改定率が考慮され、また、第2類費については、世帯人員別の改定率が考慮されるところ、第1類費の年齢別の改定率は0~2歳、 においては、第1類費について、年齢別の改定率、世帯人員別の改定率及び級地別の改定率が考慮され、また、第2類費については、世帯人員別の改定率が考慮されるところ、第1類費の年齢別の改定率は0~2歳、3~5歳、60~69歳、70歳以 上で、世帯人員別では単身で消費の実態が現行の基準を上回り、第2類費の世帯人員別では2人以上の世帯で消費の実態が現行の基準を上回り、第1類費と第2類費を加算したものを級地別で見ると、2級地の2、3級地の1、3級地の2において消費の実態が現行の基準を上回り、いずれについても、改定率が1を上回り得る(増額改定となり得る)ものであったことが認めら れる。そして、甲E1、3、4ないし16、18、21、原告ら本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、原告ら3名を除く原告らは、60~69歳、70歳以上0であるか、単身世帯であるか(第1類費に関し)、2人以上の世帯(第2費に関し)であり、平成25年検証がそのまま反映された場合には、2分の1処理がされた場合に比べ、デフレ調整後の減額幅が減少した 可能性が否定できないから、本件各変更決定は違法であるというべきである。 6 原告ら本人尋問の結果によれば、原告らがゆとりを感じられない中生活していることがうかがわれるが、生活保護法が相対的貧困概念を採用し、水準均衡方式が採られていることに照らすと、これら尋問の結果によっても、本件各改定後の生活扶助基準額が、最低限度の生活の需要を満たすに足りないと認める ことはできないから、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行ったことに関し、厚 生労働大臣の判断過程に過誤、欠落があったということはできず、記判断枠組みに基づく上記検討結果を覆すに足りない。 なお、被告らは、平成29年検証(乙93)によって、本件各改定後の生活 厚 生労働大臣の判断過程に過誤、欠落があったということはできず、記判断枠組みに基づく上記検討結果を覆すに足りない。 なお、被告らは、平成29年検証(乙93)によって、本件各改定後の生活扶助基準の水準が一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の消費実態とおおむね均衡することが確認されたとの評価がされた旨主張するが、同検証においては、 夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位の生活扶助相当支出と生活扶助基準額が概ね均衡することが確認された(23頁)ものの、そこから展開した様々な世帯類型における生活扶助基準額と一般低所得世帯の生活水準の均衡を確認するまでには至らなかった(24頁)のであるから、平成29年検証の結果は、これまでの検討結果を左右するに足りない。 7 争点3(国賠法1条1項の違法性等の有無)について前記のとおり、本件各改定のうち、平成25年検証がそのまま反映されたならば、生活扶助費が増額された者に対するものは、専門機関である検討部会による平成25年検証の結果があるにもかかわらず、十分な理由なく、その結果をゆがみ調整に反映させなかったという違法がある。しかしながら、仮に本件 各変更決定がされたことにより原告らが精神的損害を受けたとしても、それは、本件各変更決定が取り消され、新たな処分がされることによって慰謝されると考えられ、これを覆すに足りる証拠はないから、原告らの国賠法に基づく損害賠償請求は、いずれも理由がない。 第5 結論 以上によれば、本件取消訴訟のうち、原告ら3名の第1事件訴えは不適法であるから却下を免れず、その余の原告らに係る保護変更決定の取消請求はいずれも理由があるから認容することとし、原告らのその余の請求はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 却下を免れず、その余の原告らに係る保護変更決定の取消請求はいずれも理由があるから認容することとし、原告らのその余の請求はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 さいたま地方裁判所第4民事部裁判長裁判官倉澤守春 裁判官日浅さやか 裁判官小野寺俊樹 別紙1当事者目録、別紙2処分一覧表1から同6までについては記載を省略。
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