- 1 -平成24年4月18日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(ワ)第25324号損害賠償請求事件(以下「第1事件」という。)平成22年(ワ)第30940号業務委託料等請求事件(以下「第2事件」という。)口頭弁論終結日平成24年2月8日判決東京都千代田区<以下略>第1事件原告・第2事件被告株式会社ヒューマントラスト東京都渋谷区<以下略>第2事件被告X1同所第2事件被告X2上記3名訴訟代理人弁護士的場 徹山田庸一服部真尚大塚裕介川口綾子同訴訟復代理人弁護士小 杉 健太郎東京都渋谷区<以下略>第1事件被告・第2事件原告株式会社マーキュリー兵庫県伊丹市<以下略>第1事件被告Y1大阪市<以下略>第1事件被告Y2堺市<以下略>第1事件被告Y3 - 2 -大阪市<以下略>第1事件被告Y4神戸市<以下略>第1事件被告Y5大阪市<以下略>第1事件被告Y6上記7名訴訟代理人弁護士田島正広森居秀彰同訴訟復代理人弁護士和泉玲子同第1事件訴訟復代理人・第2事件訴訟代理人弁護士 中村章吾主文 1 第2事件被告株式会社ヒューマントラストは,第2事件原告株式会社マーキュリーに対し,1946万8170円及びこれに対する平成21年8月1日から同月29日まで年6分,同月30日から支払済みまで年1割4分6厘の各割合による金員を支払え。 2 第2事件原告株式会社マーキュリーのその余の請求をいずれも棄却する。 3 第1事件原告株式会社ヒューマントラストの請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は 分6厘の各割合による金員を支払え。 2 第2事件原告株式会社マーキュリーのその余の請求をいずれも棄却する。 3 第1事件原告株式会社ヒューマントラストの請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,第1事件原告・第2事件被告株式会社ヒューマントラストと第1事件被告・第2事件原告株式会社マーキュリー,第1事件被告Y1,同Y2,同Y3,同Y4,同Y5及び同Y6との間においては,全部第1事件原告・第2事件被告株式会社ヒューマントラストの負担とし,第2事件原告株式会社マーキュリーと第2事件被告X1及び同X2との間においては,全部第2事件原告株式会社マーキュリーの負担とする。 5 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由 - 3 -第1 請求(第1事件)第1事件被告株式会社マーキュリー,同Y1,同Y2,同Y3,同Y4,同Y5及び同Y6は,第1事件原告株式会社ヒューマントラストに対し,連帯して4887万3690円及びこれに対する平成21年8月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (第2事件) 1 主文第1項と同旨 2 第2事件被告X1及び同X2は,第2事件原告株式会社マーキュリーに対し,連帯して1946万8170円及びこれに対する平成22年9月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要1(1) 第1事件労働者派遣事業を営む第1事件原告株式会社ヒューマントラストは,第1事件被告株式会社マーキュリー,同Y1,同Y2,同Y3,同Y4,同Y5及び同Y6が,共謀の上,平成21年4月27日から同年6月22日にかけて,労働者派遣先や請負契約の受注先を同原告から奪い取ることを企図して,同原告の取引先であった兼松コミュニケーションズ株式会社,株式会社新 6が,共謀の上,平成21年4月27日から同年6月22日にかけて,労働者派遣先や請負契約の受注先を同原告から奪い取ることを企図して,同原告の取引先であった兼松コミュニケーションズ株式会社,株式会社新通エスピー,日本エイサー株式会社,株式会社第一エージェンシー,株式会社エヌ・ティ・ティ・アド及びKDDI株式会社の6社ないし同原告の派遣労働者ら(以下「スタッフ」ともいう。)に対し,競争関係にある同原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知した行為(以下「本件不正競争」という。)は,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項14号の不正競争に当たるとして,上記被告らに対し,同法4条に基づき,連帯して,損害賠償4887万3690円及びこれに対する平成21年8月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。 - 4 -(2) 第2事件労働者派遣事業を営む第2事件原告株式会社マーキュリーは,①第2事件被告株式会社ヒューマントラストに対し,両当事者間の平成18年3月31日付け業務委託基本契約(以下「本件基本契約」という。)及び平成21年6月1日付け業務委託個別契約(以下「本件個別契約」という。)に基づき,業務委託料1946万8170円(以下「本件業務委託料」という。)並びにこれに対する平成21年8月1日から同月29日まで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金及び同月30日から支払済みまで下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)4条の2に基づく年1割4分6厘の割合による遅延利息の支払を求めるとともに,②第2事件被告株式会社ヒューマントラストの代表取締役である第2事件被告X1及びその夫である同X2に対し,同被告らが,共同して,本件業務委託料を支払う意思がないのに,第2事件原告株式会社 とともに,②第2事件被告株式会社ヒューマントラストの代表取締役である第2事件被告X1及びその夫である同X2に対し,同被告らが,共同して,本件業務委託料を支払う意思がないのに,第2事件原告株式会社マーキュリーとの間で本件個別契約を締結した上,何ら根拠のない損害賠償請求権との相殺を主張して本件業務委託料の支払を不当に拒絶したのは違法であるとして,民法719条,会社法429条1項に基づき,連帯して,損害賠償金1946万8170円及びこれに対する平成22年9月9日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。 2 当事者の表記以下,各当事者を次のとおり略称する。 第1事件原告・第2事件被告株式会社ヒューマントラスト 原告第1事件被告・第2事件原告株式会社マーキュリー 被告会社第1 事件被告Y1被告Y1同Y2被告Y2 - 5 -同Y3被告Y3同Y4被告Y4同Y5被告Y5同Y6被告Y6第1 事件被告Y1,同Y2,同Y3,同Y4,同Y5及び同Y6の6名 被告Y1ら6名第2事件被告X1第2事件被告X1同X2第2事件被告X2第2事件被告X1及び同X2の2名第2事件被告X1ら 3 前提事実(証拠等を掲げたもののほかは当事者間に争いがない。)(1) 当事者等ア原告及び被告会社は,いずれも労働者派遣事業等を目的とする株式会社であり,大阪府内に支店ないし営業所を設置して,関西地区において営業を行っている。 原告は,株式会社ヒューマントラストホールディングスの子会社として,同社を中心に組織されるヒューマントラストグループに所属している。原告は,平成19年9月頃,株式会社アックス(以下「アックス」とい 原告は,株式会社ヒューマントラストホールディングスの子会社として,同社を中心に組織されるヒューマントラストグループに所属している。原告は,平成19年9月頃,株式会社アックス(以下「アックス」という。)との間で経営統合することを合意し,同月1日,アックスが取り扱うセールスプロモーション(販売促進)業務受託事業を吸収分割によって統合した。また,ファーストプロモーション株式会社(以下「ファーストプロモーション」という。)は,原告の子会社で,同社の従業員は,全て原告からの出向者又は原告に兼務する従業員により構成されていたが,平成23年3月31日,原告は同社を吸収合併した。(弁論の全趣旨)被告会社は,アックスの元従業員であったT(以下「T」という。)が設立した会社であり,平成19年3月頃からアックスとの間で取引(アックスが受託した業務を再受託する取引)を行っていたが,上記吸収分割に - 6 -伴い,同取引は原告に承継された。 イ被告Y1ら6名は,いずれも元原告の従業員であった。 ウ第2事件被告X1は,原告及びファーストプロモーションの代表取締役である。 エ第2事件被告X2は,ヒューマントラストグループの創業者であり,第2事件被告X1の夫である。 (2) 原告について原告の平成21年当時における状況は,次のとおりであった。 ア原告の組織平成21年当時,原告は,資本金9900万円,発行済株式総数4331株,本店所在地である東京のほか,札幌,仙台,横浜,名古屋,大阪及び福岡の6支店を有していた。 各支店には,支店長と,支店長が出張,病欠その他の事故によりその権限を行使できない場合に支店長の職務を代行する支店長代理が置かれていた。 イ大阪支店の業務大阪支店は,関西地区における労働者派遣や業務委託等の業務 支店長が出張,病欠その他の事故によりその権限を行使できない場合に支店長の職務を代行する支店長代理が置かれていた。 イ大阪支店の業務大阪支店は,関西地区における労働者派遣や業務委託等の業務を扱っていた。 登録スタッフ(派遣労働者)としては,主に事務系のスタッフ,ワークス(軽作業)のスタッフ,量販店における販売スタッフを有しており,これらのスタッフを派遣し,又は受託した業務に就かせていた。 ウ量販店における販売促進業務の契約状況量販店における販売促進業務は,①量販店と契約している会社が,原告からスタッフの派遣を受けて販売促進業務に就かせる形態,②量販店と契約している会社が,更に原告に業務委託し,原告の管理の下,原告のスタッフが販売促進業務を行う形態,③両者の複合した形態の3つがある。 - 7 -平成21年当時,原告は,大阪地区において,兼松コミュニケーションズ株式会社(以下「兼松」という。),株式会社新通エスピー(以下「新通エスピー」という。),日本エイサー株式会社(以下「日本エイサー」という。),株式会社第一エージェンシー(以下「第一エージェンシー」という。),株式会社エヌ・ティ・ティ・アド(以下「NTTアド」という。)及びKDDI株式会社(以下「KDDI」という。)の6社(以下「兼松ら6社」という。)と取引を行っており,上記①の形態として兼松,新通エスピー,第一エージェンシー及びKDDIとの間で,販売促進業務を行うスタッフを派遣する内容の労働者派遣契約を締結しており,上記②の形態として日本エイサーとの間で,販売促進業務を行う業務委託契約を締結していた。 また,同時期,原告の子会社であるファーストプロモーションが,上記③の形態としてNTTアドとの間で,販売促進業務の業務委託契約を締結し,同業務を原告 促進業務を行う業務委託契約を締結していた。 また,同時期,原告の子会社であるファーストプロモーションが,上記③の形態としてNTTアドとの間で,販売促進業務の業務委託契約を締結し,同業務を原告からファーストプロモーションに派遣したスタッフにより行っていた。 (甲14,甲29の2,乙21,弁論の全趣旨)(3) 被告会社について平成21年当時,被告会社は,資本金2000万円,発行済株式総数2000株,同年6月までの大阪営業所における従業員数は10名前後であった。 (乙20,被告代表者T,弁論の全趣旨)(4) 原告と兼松ら6社との取引関係大阪地区における原告と兼松ら6社との取引関係は,次のとおりであった。 ア兼松アックスは,平成15年12月1日,兼松との間で労働者派遣基本契約及びこれに基づく個別契約を締結し,以後,平成19年8月まではアックスが,同年9月以降はアックスを包括承継した原告が,それぞれ,これら - 8 -の契約に基づいて,ヨドバシカメラマルチメディア梅田店(以下「ヨドバシカメラ梅田店」という。)における携帯電話販売業務等に労働者を派遣する取引を行った。 同取引は,平成21年5月31日,個別契約の期間満了によって終了し(終了時の派遣労働者数4名),それ以降,更新されなかった。(甲1の1~4,甲14,71,弁論の全趣旨)イ新通エスピーアックスは,平成17年2月1日,新通エスピーとの間で労働者派遣基本契約及びこれに基づく個別契約を締結し,以後,平成19年8月まではアックスが,同年9月以降はアックスを包括承継した原告が,それぞれ,これらの契約に基づいて,ヤマダ電機テックランド堺本店等における店頭販売支援業務等に労働者を派遣する取引を行った。 同取引は,平成21年5月31日,個別契約の期間満了 包括承継した原告が,それぞれ,これらの契約に基づいて,ヤマダ電機テックランド堺本店等における店頭販売支援業務等に労働者を派遣する取引を行った。 同取引は,平成21年5月31日,個別契約の期間満了によって終了し(終了時の派遣労働者数16名),それ以降,更新されなかった。(甲2の1~23,甲14,71,弁論の全趣旨)ウ日本エイサー原告は,平成20年9月30日,日本エイサーとの間で家電量販店におけるパソコン販売業務(販売員の手配)の業務委託基本契約及びこれに基づく個別契約を締結し,以後,これらの契約に基づいて,ヨドバシカメラ梅田店における日本エイサー製のパソコン販売業務及びこれに付随する業務を提供する取引を行った。 同取引は,平成21年6月30日,個別契約の期間満了によって終了し(終了時の派遣労働者数24名。ただし,株式会社博報堂からの再委託により従事した派遣労働者を含む。),それ以降,更新されなかった。(甲3の1,2,甲10,14,71,弁論の全趣旨)エ第一エージェンシー - 9 -原告は,平成21年1月1日,第一エージェンシーとの間で労働者派遣基本契約及びこれに基づく個別契約を締結し,以後,これらの契約に基づいて,ヤマダ電機LABI1なんば店(以下「ヤマダ電機なんば店」という。)等における,西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。)の「フレッツ光」の販売業務等に労働者を派遣する取引を行った。 同取引は,平成21年5月31日,個別契約の期間満了によって終了し(終了時の派遣労働者数4名),それ以降,更新されなかった。(甲4の1~5,甲14,71,弁論の全趣旨)オ NTTアドファーストプロモーションは,平成21年3月31日,NTTアドとの間で,NTT西日本の「フレッツ」の販売ブース運営及 されなかった。(甲4の1~5,甲14,71,弁論の全趣旨)オ NTTアドファーストプロモーションは,平成21年3月31日,NTTアドとの間で,NTT西日本の「フレッツ」の販売ブース運営及び販売促進業務(以下「フレッツブース運営業務」という。)をファーストプロモーションが請負うことを目的とする基本契約並びにこれに基づく個別契約(契約期間:平成21年4月1日~同年6月30日)を締結し,原告は,ファーストプロモーションとの間で労働者派遣契約を締結して,ヨドバシカメラ梅田店の上記販売ブース等に労働者を派遣する取引を行った。 同取引は,平成21年6月30日,個別契約の期間満了によって終了し(終了時の派遣労働者数18名),それ以降,更新されなかった。(甲5の1~3,甲14,71,弁論の全趣旨)カ KDDI原告は,平成14年2月1日,KDDIとの間で労働者派遣基本契約及びこれに基づく個別契約を締結し,以後,これらの契約に基づいて,ヨドバシカメラ梅田店等における販売支援業務に労働者を派遣する取引を行った。 同取引は,平成21年6月30日,個別契約の期間満了によって終了し(終了時の派遣労働者数10名),それ以降,更新されなかった。(甲6, - 10 -7の1~11,甲14,71,弁論の全趣旨)(5) 被告Y1ら6名について被告Y1ら6名が原告を退職し又は原告から解雇された経緯は,次のとおりであった。 ア被告Y1被告Y1は,平成17年4月,アックスに入社し,平成20年8月,原告に転籍した。同被告は,平成21年4月にファーストプロモーションに出向し,同年6月末頃,同月27日付けで退職する旨の退職届(甲68)を原告に提出し(退職時の配属先は,NTT事業推進部であった。),同年7月1日付けで被告会社に入社した。 ファーストプロモーションに出向し,同年6月末頃,同月27日付けで退職する旨の退職届(甲68)を原告に提出し(退職時の配属先は,NTT事業推進部であった。),同年7月1日付けで被告会社に入社した。 原告は,平成21年7月13日付けで同被告を懲戒解雇処分にした。(甲14,乙4,弁論の全趣旨)。 イ被告Y2被告Y2は,平成19年8月,原告に入社し,大阪支店セールスサポート事業部に配属になった。同被告は,平成21年6月30日をもって原告を事実上退職し,同年7月1日付けで被告会社に入社した。 原告は,平成21年7月13日付けで同被告を懲戒解雇処分にした。(甲14,乙5,弁論の全趣旨)ウ被告Y3被告Y3は,平成15年11月,アックスに入社し,平成19年7月,原告に出向し,平成20年8月には原告に転籍した。同被告は,平成21年5月31日付けで原告を退職し(退職時の肩書は,大阪支店セールスサポート事業部マネージャーであった。),同年6月1日付けで被告会社に入社し,同被告の大阪支店支店長に就任した。(甲14,弁論の全趣旨)エ被告Y4被告Y4は,平成18年10月,アックスに入社し,平成20年8月に - 11 -原告に転籍した。同被告は,平成21年6月末頃,同月28日付けで退職する旨の退職届(甲67)を原告に提出し(退職時の肩書は,西日本統括支店セールスサポートグループマネージャーであった。),同年7月1日付けで被告会社に入社した。 原告は,平成21年7月13日付けで同被告を懲戒解雇処分にした。(甲14,乙6,弁論の全趣旨)オ被告Y5被告Y5は,平成20年8月,アックスから原告に転籍し,平成21年6月15日付けで原告を退職し,同月16日付けで被告会社に入社した。 (甲14,弁論の全趣旨)カ被 の全趣旨)オ被告Y5被告Y5は,平成20年8月,アックスから原告に転籍し,平成21年6月15日付けで原告を退職し,同月16日付けで被告会社に入社した。 (甲14,弁論の全趣旨)カ被告Y6被告Y6は,平成15年7月,アックスに入社し,平成20年8月,原告に転籍した。同被告は,平成20年8月から平成21年3月まで,西日本支店統括部大阪支店支店長を務めたが,同年4月,西日本支店統括部大阪支店支店長代理に降格した。 原告は,平成21年7月15日付けで同被告を懲戒解雇処分にした。(甲14,乙9,弁論の全趣旨)(6) 本件業務委託料の発生ア被告会社とアックスは,平成18年3月31日,アックスが被告会社に業務を委託する場合には,その都度個別契約を別に締結するものとし,その対価として,アックスは被告会社に対し,個別契約で定める業務委託料を支払う旨の業務委託基本契約(本件基本契約。乙24)を締結した。 イ原告は,平成19年9月1日,アックスとの経営統合により,本件基本契約をアックスから包括承継した。(弁論の全趣旨)ウ被告会社と原告は,平成21年6月1日,本件基本契約に基づき,販売業務に関する下記内容の業務委託個別契約(本件個別契約)を締結した。 - 12 -(弁論の全趣旨)記(ア) 委託内容原告がイー・モバイルから受託する携帯電話の販売促進業務の再受託(具体的には,被告会社が雇用する販売員約40名を,同被告の指揮命令の下,販売店におけるイー・モバイルの携帯電話販売業務に従事させることを内容とする。)(イ) 業務期間平成21年6月1日から30日(ウ) 業務委託料1946万8170円(エ) 弁済期平成21年7月31日エ被告会社は,本件個別契約に基づく委託業務を履行し (イ) 業務期間平成21年6月1日から30日(ウ) 業務委託料1946万8170円(エ) 弁済期平成21年7月31日エ被告会社は,本件個別契約に基づく委託業務を履行した。 (7) 原告による本件業務委託料の支払債務と本件不正競争に基づく損害賠償請求権との相殺原告は,平成21年8月11日,被告会社に対し,本件不正競争に基づく損害賠償請求権をもって,本件業務委託料の支払債務と対当額で相殺するとの意思表示をした(乙8,弁論の全趣旨。以下「本件相殺」という。)。 4 争点(第1事件)(1) 不正競争の成否(争点①)(2) 損害の発生及び額(争点②)(第2事件)(3) 本件相殺の効力(争点③)(4) 第2事件被告X1らの責任(争点④) - 13 - 5 争点に関する当事者の主張(第1事件)(1) 争点①(不正競争の成否)について〔原告の主張〕被告Y1ら6名は,原告の従業員でありながら,原告と競業関係にあった被告会社と共謀の上,その指図のままに後記ア~カのとおり,原告の取引先である労働者派遣先企業(兼松ら6社)や派遣労働者らに対し原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知して(本件不正競争),取引関係を原告から被告会社に切り替えさせた。 本件不正競争は,被告会社が,被告Y1ら6名を動員して敢行した高度に組織化され計画的に企てられた行為であり,被告会社と被告Y1ら6名との間には共謀関係が認められる。 Tは,率先して後記アの本件告知1-1を行い,マニュアル化した虚偽事実を被告Y1ら6名に示して本件不正競争を指揮したものであり,被告Y3は,平成21年6月1日にいち早く被告会社に入社して,同社の大阪支店長という立場で本件不正競争を指揮し,自身も実際に行っていたものであ 被告Y1ら6名に示して本件不正競争を指揮したものであり,被告Y3は,平成21年6月1日にいち早く被告会社に入社して,同社の大阪支店長という立場で本件不正競争を指揮し,自身も実際に行っていたものである。したがって,両名は被告会社の機関として不正競争行為を行ったものといえ,被告会社は,民法715条,会社法350条の類推適用により,不競法4条に定める損害賠償責任を負う。 ア兼松に対する虚偽事実の告知Tは,平成21年5月19日,兼松の東京本社を訪問して,営業担当のA(以下「A」という。)に対し,「原告とアックスは経営統合し,母体としては大きくなったものの,経営者の放漫な経営や昨今の景気低迷により経営状況が良くないようです。特にセールスプロモーションをやっている部門においては,旧アックスの従業員がやっており,原告の経営者からは虐げられているようです。」,「原告としては,このような状況である - 14 -ことからセールスプロモーション部門を切り離し,事務派遣等に専念し経営を行っていくこととなっているようです。」,「そこで,セールスプロモーション部門においては,現在勤務中のスタッフを被告会社へ転籍させ,同被告が営業活動していくことで原告と調整が済んでいる。」,「したがって,取り急ぎ大阪の兼松にご挨拶に伺いたい。」旨の事実を告知した(以下「本件告知1-1」という。)。 また,被告Y3及び同Y5は,同月29日,兼松の大阪支社を訪問し,第二営業本部通信ネットワーク推進部主任B(以下「B主任」という。)に対し,「原告の大阪支店では,今後,セールスプロモーション業務に関する派遣業務及び請負業務は縮小していく傾向にある。」,「しかしながら,現在いるスタッフについては,兼松,店舗へご迷惑をお掛けすることができないので,被告会社に勤務中のスタッ プロモーション業務に関する派遣業務及び請負業務は縮小していく傾向にある。」,「しかしながら,現在いるスタッフについては,兼松,店舗へご迷惑をお掛けすることができないので,被告会社に勤務中のスタッフを移籍させたい。」旨の事実を告知した(以下「本件告知1-2」という。)。 被告Y3及び同Y5は,同日,共に休暇を取って,頻繁に連絡を取り合っており(甲21,22),このことは,同人らが共謀して不正競争を行っていたことと整合する。なお,被告Y3及び同Y5は,共に原告の従業員であったが,被告Y3は,同日,B主任に対し,被告会社大阪支店長の肩書が記載された名刺を渡して挨拶した。 しかし,平成21年5月当時,原告において業務を縮小するというような話は一切なく,原告と被告会社との間でスタッフを転籍させるという話がなされたこともなく,本件告知1-1,1-2の内容はいずれも虚偽であった。 イ新通エスピーに対する虚偽事実の告知被告Y3は,平成21年6月1日,新通エスピーを訪問し,同社の契約担当であるC(以下「C」という。)に対し,「原告から派遣しているスタッフが被告会社に転籍する。新通エスピーの営業担当者には話をしたの - 15 -で,被告会社との間で労働者派遣契約を締結してもらいたい。」旨の事実を告知した(以下「本件告知2-1」という。)。 これに対し,Cは,移籍先の被告会社の話だけでは契約ができない旨伝えたところ,被告Y3は,翌日に改めて原告と被告会社の2社で訪問したいと要望した。 これを受けて,被告Y3及び同Y6は,同月2日,新通エスピーを訪問して,Cに対し,「原告の大阪支店では,今後,セールスプロモーション業務に関する派遣業務及び請負業務は縮小していく傾向にある。被告Y3自身はそのため退職した。」,「しかしながら,現在いるスタ を訪問して,Cに対し,「原告の大阪支店では,今後,セールスプロモーション業務に関する派遣業務及び請負業務は縮小していく傾向にある。被告Y3自身はそのため退職した。」,「しかしながら,現在いるスタッフについては,店舗へご迷惑をお掛けすることができないので,原告は被告会社へ勤務中のスタッフを移籍させたいと考えている。」旨の事実を告知した(以下「本件告知2-2」という。)。 しかし,平成21年6月当時,原告において業務を縮小するというような話は一切なく,原告と被告会社との間でスタッフを転籍させるという話がなされたこともなく,本件告知2-1,2-2の内容は虚偽であった。 ウ日本エイサーに対する虚偽事実の告知被告Y4は,平成21年5月13日,原告の福岡支店において,日本エイサー事業支援部マーケティング部チャネルマーケティング課のD(以下「D」という。)と面談し,「原告は,今後,日本エイサーの業務ボリュームに応じられず,対応しきれない。」,「原告は業務撤退し,この業務を被告会社にスライドする。」,「原告と被告会社とは円満な関係である。」,「このことは,被告Y4の上司である被告Y3も了解済みの事案である。」旨の事実を告知した(以下「本件告知3-1」という。)。 また,被告Y3は,同年6月18日,Dの紹介により日本エイサーマネージャーのE(以下「Eマネージャー」という。)と面談し,日本エイサーと原告との間の契約を,原告から被告会社に移行する手続を取る旨説明 - 16 -した(以下「本件告知3-2」という。)。 しかし,平成21年5月及び6月当時,原告において業務撤退するというような話は一切なく,原告から被告会社に業務を移行させるという話がなされたこともなく,本件告知3-1,3-2の内容は虚偽であった。 エ第一エージェンシーに 6月当時,原告において業務撤退するというような話は一切なく,原告から被告会社に業務を移行させるという話がなされたこともなく,本件告知3-1,3-2の内容は虚偽であった。 エ第一エージェンシーに対する虚偽事実の告知被告Y3及び同Y2は,平成21年4月27日,第一エージェンシーの派遣窓口担当者であるF(大阪支局営業部第2グループ所属。以下「F」という。)に対し,「原告は事業撤退するため,被告会社との間で,原告のスタッフが被告会社へ円満な転籍をすることで話がついている。」,「この転籍については,(ヤマダ電機なんば店における販売業務を第一エージェンシーに発注している)NTTアドも了解している。」旨の事実を告知した(以下「本件告知4-1」という。)。 また,被告Y2は,同年5月25日頃,原告から第一エージェンシーに派遣されていた派遣労働者5名に対し,「同年6月以降,現在の第一エージェンシーの仕事は,被告会社がやるので,そのまま同じ仕事を続けたいのであれば,被告会社と雇用契約を締結するように。」という旨の事実を告知し(以下「本件告知4-2」という。),上記派遣労働者5名全員を,同年6月1日をもって原告から被告会社に転籍させた。 しかし,平成21年4月及び5月当時,原告において事業撤退するというような話は一切なく,原告と被告会社との間で派遣労働者を転籍させるという話がなされたこともなく,本件告知4-1,4-2の内容は虚偽であった。 オ NTTアドに対する虚偽事実の告知被告Y1は,平成21年6月19日,原告大阪支店支店長代理の被告Y6を伴って,NTTアドを訪問し,同社西日本営業本部企画制作部担当課長G(以下「G課長」という。)に対し,「自分は原告を退職するつもり - 17 -である。」,「現在原告からファーストプロモーションに ,NTTアドを訪問し,同社西日本営業本部企画制作部担当課長G(以下「G課長」という。)に対し,「自分は原告を退職するつもり - 17 -である。」,「現在原告からファーストプロモーションに派遣しているスタッフも,自分に同調して原告を退職する。」旨の事実を告知した(以下「本件告知5-1」という。)。 さらに,被告Y6は,同月22日,NTTアドを訪問し,G課長に対し,「7月1日からの原告のスタッフが勤務するヨドバシ運営について,現状の主要メンバーであるスタッフが6月末日で退社するに当たり,代要員が今現在いない状態である。」,「代要員を手配しても今までどおりのクオリティを担保することは難しく,ファーストプロモーションで今までどおりの運営を行うことは難しい。」旨の事実を告知した(以下「本件告知5-2」という。)。 しかし,平成21年6月19日当時,原告において被告Y1の退職や,派遣労働者らの退職という話は出ていなかった。また,原告はNTTアドの請負業務を,大阪だけでなく東京や福岡でも扱っており,たとえ大阪のスタッフが退職しても,他の地域のスタッフを配置することにより,同業務のクオリティを維持することは可能であった。したがって,本件告知5-1,5-2の内容は虚偽であった。 カ KDDIに対する虚偽事実の告知被告Y3は,平成21年6月2日,KDDIを訪問し,同社担当者のH(以下「H」という。)及びI(以下「I」という。)に対し,「原告から派遣していたスタッフについて,できれば被告会社に移籍させて,KDDIに派遣する。」旨の事実を告知した。これに対し,Hが,「スタッフは原告との契約に基づいて派遣されている。」,「原告と被告会社との間で合意されればともかく,当方からは何とも言えない。」と返答すると,被告Y3は,「現在,スタッフの移 。これに対し,Hが,「スタッフは原告との契約に基づいて派遣されている。」,「原告と被告会社との間で合意されればともかく,当方からは何とも言えない。」と返答すると,被告Y3は,「現在,スタッフの移籍について原告と調整が進んでおり,後日,原告における元上司である被告Y6からご連絡する。」と話した(以下,同日の告知内容を併せて「本件告知6-1」という。)。 - 18 -被告Y6は,同月8日,KDDIを訪問し,H及びIに対し,「先日,被告会社の被告Y3から話のあったスタッフの移管について,原告,被告会社の両社で合意した。」,「両社合意の上での業務移管と理解していただいて構わない。」,「派遣スタッフへの周知については,原告にて責任をもって行う。」旨の事実を告知した(以下「本件告知6-2」という。)。 しかし,平成21年6月当時,原告と被告会社との間で,業務を移管するとか,派遣労働者を移籍させるという話がなされたことはなく,本件告知6-1,6-2の内容は虚偽であった。 〔第1事件被告らの主張〕原告の主張は全て争う。 後記ア~カのとおり,原告が主張する虚偽事実の告知は,いずれも事実自体が存在しないか,告知内容が虚偽であるとは認められない。そもそも,被告会社は,不正競争があったとされる平成21年当時,原告との取引によって多くの売上げを得ていたのであり,それを失うリスクを冒してまで,本件不正競争を行うはずがない。本件紛争の実態は,原告の従業員に対する残業代未払及び従業員からの労働問題改善要求の無視等に起因する労働問題であり,原告の不当労働行為により退職に追い込まれた被告Y1,同Y2,同Y3,同Y4及び同引地が被告会社に入社したことをもって,原告が第1事件被告らを敵視し,根拠のない本件不正競争を主張して言い掛かりを付けたにすぎない 行為により退職に追い込まれた被告Y1,同Y2,同Y3,同Y4及び同引地が被告会社に入社したことをもって,原告が第1事件被告らを敵視し,根拠のない本件不正競争を主張して言い掛かりを付けたにすぎない。 ア兼松(ア) 本件告知1-1につきTが平成21年5月19日にAを訪問した事実はない。TはAとの面識すらない。 被告会社は,平成21年2月1日に兼松と労働者派遣基本契約を締結しているところ(乙34の前文),Tは,この契約を締結するに当たっ - 19 -て,同日前頃に前職アックスのときから面識のあった兼松のJ氏を訪問している。しかし,基本契約を締結すれば,その都度代表取締役であるT自身が取引先である兼松を訪問するはずもなく,Tは,平成18年11月に被告会社を設立してから現在に至るまで,平成21年2月1日前頃に1度だけ兼松を訪問したことがあるにすぎない。このように,Tが平成21年5月19日に兼松のAを訪問した事実はなく,原告主張の発言などできるはずがない。 (イ) 本件告知1-2につき被告Y3及び同Y5が,平成21年5月29日に兼松のB主任を訪問した事実はない。 被告Y5は,平成21年6月16日に被告会社に入社した後の挨拶の際に初めてB主任に会ったのであり,原告在職中にB主任に会った事実はない。したがって,被告Y5が平成21年5月29日にB主任に対して原告主張の発言などできるはずがない。 また,被告Y5の業務端末の使用記録(甲22)が示すように,同人は平成21年5月29日に業務を行っていた。被告Y5は,同日,仕事のみに使用する原告支給の業務端末を使用して,仕事に関係のある人物に対して電話しており,その時間帯も同日の1日にわたり,特定の時間帯にだけ仕事に関係のある人物に電話をしていたわけではない。以上の事実からす 用する原告支給の業務端末を使用して,仕事に関係のある人物に対して電話しており,その時間帯も同日の1日にわたり,特定の時間帯にだけ仕事に関係のある人物に電話をしていたわけではない。以上の事実からすれば,被告Y5が同日に業務を行っていたことは明らかであり,この事実からしても,被告Y5が同日にB主任を訪問し,原告主張の発言をするはずがない。 被告Y3は,同Y5と異なり,原告在職中に兼松のB主任と面識があった。被告Y3は,平成21年5月後半頃,1人でB主任を訪問し,原告を退職する旨の挨拶をしている。その際,被告Y3は,B主任に対し,平成21年6月1日から被告会社で働くことは伝えておらず,原告主張 - 20 -の発言をした事実はない。したがって,被告Y3が,平成21年5月29日に,被告引地と一緒にB主任を訪問し,原告主張の発言をするはずがない。 イ新通エスピー(ア) 本件告知2-1,2-2につき被告Y3は,平成21年6月1日も同月2日も被告会社大阪支店で業務を行っており,新通エスピーを訪問などしていない。被告Y3は,同月1日から被告会社に入社しており,新たな業務を覚える必要があったため,両日とも被告会社大阪支店において業務を行っていた。 また,被告Y6は,同月2日は,原告大阪支店で請求業務等に従事しており,新通エスピーを訪問などしていない。 (イ) 被告Y3及び同Y6は,平成21年5月後半頃に新通エスピーを訪問している。この訪問の目的は,新通エスピーを担当していた被告Y3が同月末に原告を退職することになったため,被告Y6が新通エスピーの担当者となることになり,その説明をするためである。 このように,被告Y6も同Y3も,原告において業務を継続することを前提に,後任の担当者を紹介するために新通エスピーを訪問しているので エスピーの担当者となることになり,その説明をするためである。 このように,被告Y6も同Y3も,原告において業務を継続することを前提に,後任の担当者を紹介するために新通エスピーを訪問しているのであり,取引を被告会社に引き継がせるとか,原告と新通エスピーの取引を終了させるような発言は一切していない。 ウ日本エイサー(ア) 本件告知3-1につき被告Y4は,Dに対し,原告主張の発言はしていない。被告Y4が,平成21年5月13日,福岡においてDと会ったのは事実であるが,原告大阪支店に勤務していた被告Y4が福岡を訪問したのは,原告福岡支店の従業員に代わって,日本エイサーの業務(ヨドバシカメラ博多店において日本エイサーのパソコンの研修をする業務)を行うためである。 - 21 -被告Y4は,日本エイサーの業務を行うために福岡に行っているのであるから,日本エイサーとの取引を失わせるような原告主張の発言をするはずがない。 (イ) 本件告知3-2につき被告Y3は,Eマネージャーに対し,日本エイサーと原告間の契約を原告から被告会社へ移行する手続を取る旨の説明などしていない。被告Y3が平成21年6月18日にEマネージャーと面談をしたことは事実であるが,これは被告Y3が東京に本社のある被告会社の営業を兼ねて挨拶に行ったからである。また,被告Y3がEマネージャーに会った際,日本エイサーは被告会社と必ず取引を開始するとの対応ではなく,複数企業から提案を受けた上でより良い提案をした企業と取引するとの対応であった。 そもそも,日本エイサーと継続して取引するには,日本エイサーの納得する提案を上げ,実績を上げていくことが必要なのであって,必ず日本エイサーとの取引が継続するというものではない。 エ第一エージェンシー(ア) 本件告知4- して取引するには,日本エイサーの納得する提案を上げ,実績を上げていくことが必要なのであって,必ず日本エイサーとの取引が継続するというものではない。 エ第一エージェンシー(ア) 本件告知4-1につき被告Y3及び同Y2が,平成21年4月27日,第一エージェンシーのFを訪問した事実はない。被告Y3も同Y2も,毎月末は請求の準備に追われ社内業務をすることが通常であったことから,同日は原告大阪支店で社内業務をしていた。 ところで,被告Y3は,同年5月後半頃,被告Y2と共に,第一エージェンシーを訪問し,Fに会っている。しかし,この訪問の目的は,被告Y3が同月末をもって原告を退職することの挨拶をするためであり,被告Y3及び同Y2は原告が主張するような発言は一切していない。 (イ) 本件告知4-2につき - 22 -被告Y2は,平成21年5月下旬頃,派遣労働者らに対して原告主張の発言などしていない。 オ NTTアド(ア) 本件告知5-1につき平成21年6月20日前後頃,被告Y1が同Y6と共にNTTアドのG課長を訪問し,原告を退職する旨を告げたことはある。しかし,被告Y1がG課長に対し,「スタッフも,自分に同調して原告を退職する。」などと発言したことはない。 被告Y1がNTTアドのG課長に対し原告を退職する旨を告げたとしても,被告Y1は平成21年6月24日付けの退職届(甲68)を提出し,実際に原告を退職している以上,「虚偽の事実」(不競法2条1項14号)には該当しない。 したがって,被告Y1の発言は,何ら不正競争となるものではない。 (イ) 本件告知5-2につき被告Y6は,平成21年6月22日に1人でNTTアドを訪問し,G課長に対し,「7月1日からのヨドバシ運営について,現状の主要メンバーが6月末で退社するに当 はない。 (イ) 本件告知5-2につき被告Y6は,平成21年6月22日に1人でNTTアドを訪問し,G課長に対し,「7月1日からのヨドバシ運営について,現状の主要メンバーが6月末で退社するに当たり,代要員が今現在いない状態である。」,「代要員を手配しても今までどおりのクオリティを担保することは難しく,ファーストプロモーションで今までどおりの運営を行うことは難しい。」と説明した(甲9の2)。 しかし,被告Y6の当該説明は,被告Y6の意見であって事実には該当しない。また,仮に事実であっても虚偽ではないから,「虚偽の事実」(不競法2条1項14号)には該当しない。したがって,被告Y6の発言は何ら不正競争となるものではない。 カ KDDI(ア) 本件告知6-1につき - 23 -被告Y3は,平成21年6月2日には被告会社大阪支店において業務を行っていたのであり,KDDIを訪問していない。被告Y3は同月1日から被告会社に入社しており,新たな業務を覚える必要があったため,両日とも被告会社大阪支店において業務を行っていた。 ところで,被告Y3は,同年5月後半頃,原告従業員のK及び被告Y4と共にKDDIを訪問し,H及びIと会っている。しかし,この訪問の目的は,KDDIを担当していた被告Y3が同月末をもって退職すること及び同じくKDDIを担当していたKが結婚退職することに関する挨拶であり,被告Y3は原告が主張するような発言は一切していない。 (イ) 本件告知6-2につき被告Y6は,同月8日には原告大阪支店において,派遣労働者への前借り給与の処理や,原告が人材募集広告を発注している業者との打合せ等を行っていたのであり,KDDIを訪問していない。 ところで,被告Y6は,同年6月中旬頃にKDDIを訪問し,H及びIと会っている。しか 給与の処理や,原告が人材募集広告を発注している業者との打合せ等を行っていたのであり,KDDIを訪問していない。 ところで,被告Y6は,同年6月中旬頃にKDDIを訪問し,H及びIと会っている。しかし,この訪問の目的は,KDDIの後任担当者となった被告Y4の紹介である。このように,被告Y6は,原告での業務を継続することを前提に,後任担当者を紹介するためにKDDIを訪問したのであり,取引を被告会社に引き継がせるとか,原告とKDDIとの取引を終了させるような発言は一切していない。 (2) 争点②(損害の発生及び額)について〔原告の主張〕ア主位的主張(ア) 原告と,兼松,新通エスピー,日本エイサー,第一エージェンシー,ファーストプロモーション(NTTアドの業務への労働者派遣契約)及びKDDIとの契約に基づく,平成21年1月から6月までの原告の売上高は,別表1のとおりである。そして,原告の大阪支店の平成21年 - 24 -1月から6月までの平均粗利率は,別表2のとおりであり,平成21年1月から6月までの各取引先との契約に基づく売上高に,対応する各月の大阪支店の平均粗利率を乗じて求められる額が,各月の各取引先との契約に基づく利益額となる(別表3)。 原告は,本件不正競争により,平成21年6月1日以降,兼松,新通エスピー,第一エージェンシーとの契約を全て失い,また同年7月1日以降,日本エイサー,ファーストプロモーション(NTTアドの業務への労働者派遣契約),KDDIとの契約を全て失い,別表3のとおり得られていた利益額もゼロとなった。これらの契約は全て継続的なものであり,本件不正競争がなければ,原告はこれらの契約に基づいて,平成21年7月以降も,毎月,月平均利益額相当額の利益を得られていたはずであり,その額を列挙すると以下の これらの契約は全て継続的なものであり,本件不正競争がなければ,原告はこれらの契約に基づいて,平成21年7月以降も,毎月,月平均利益額相当額の利益を得られていたはずであり,その額を列挙すると以下のとおりである(別表3)。 兼松46万9233円新通エスピー61万3435円日本エイサー49万8737円第一エージェンシー49万7316円ファーストプロモーション(NTTアド) 266万7775円KDDI94万8659円合計569万5155円本件不正競争がなければ,これらの契約はどんなに短くても1年は継続したものといえるから,原告は,1年分の逸失利益として,6834万1860円の損害を被った。 (イ) 原告は,平成21年8月11日,被告会社に対し,本件不正競争に基づく損害賠償請求権をもって,本件業務委託料の支払債務と対当額で相殺するとの意思表示をした(本件相殺)。よって,上記6834万1860円から本件業務委託料1946万8170円を差し引いた後の損害 - 25 -額の残額は4887万3690円となる。 イ予備的主張(ア) 被告会社及び被告Y1ら6名は,本件不正競争により,以下のとおり,兼松ら6社と契約を締結し,これにより利益を得た。 a 上記被告らは,平成21年6月1日より,①兼松,②新通エスピー,③第一エージェンシーとの間で,家電量販店におけるセールスサポート業務を行うスタッフを派遣する内容の労働者派遣契約を締結し,これにより平成21年6月から平成22年5月までの1年間に,1か月当たり,①兼松との契約により46万9233円,②新通エスピーとの契約により61万3435円,③第一エージェンシーとの契約により49万7316円の利益を得た。 b 上記被告らは,平成21年7月1日より, ,①兼松との契約により46万9233円,②新通エスピーとの契約により61万3435円,③第一エージェンシーとの契約により49万7316円の利益を得た。 b 上記被告らは,平成21年7月1日より,④日本エイサーとの間で,家電量販店におけるセールスサポート業務の業務委託契約を締結し,これにより平成21年7月から平成22年6月までの1年間に,1か月当たり49万8737円の利益を得た。 c 上記被告らは,平成21年7月1日より,⑤新通エスピーとの間で,同社がNTTアドから受託したセールスサポート業務を行うためのスタッフを派遣する内容の労働者派遣契約を締結し,これにより平成21年7月から平成22年6月までの1年間に,1月当たり266万7775円の利益を得た。 d 上記被告らは,平成21年7月1日より,⑥KDDIとの間で,家電量販店におけるセールスサポート業務を行うスタッフを派遣する内容の労働者派遣契約を締結し,これにより平成21年7月から平成22年6月までの1年間に,1か月当たり94万8659円の利益を得た。 以上より,上記被告らが,本件不正競争により契約を締結し,得た利 - 26 -益額は,(①46万9233円+②61万3435円+③49万7316円+④49万8737円+⑤266万7775円+⑥94万8659円)×12=6834万1860円である。 よって,不競法5条2項により,上記被告らが本件不正競争によって受けた利益の額である6834万1860円が原告の損害額と推定される。 (イ) 上記ア(イ)に同じ。 〔第1事件被告らの主張〕ア主位的主張に対し原告が,平成21年6月1日以降,兼松,新通エスピー及び第一エージェンシーとの契約を全て失ったこと,同年7月1日以降,日本エイサー,ファーストプロモーション(NT 主張〕ア主位的主張に対し原告が,平成21年6月1日以降,兼松,新通エスピー及び第一エージェンシーとの契約を全て失ったこと,同年7月1日以降,日本エイサー,ファーストプロモーション(NTTアドの業務への労働者派遣契約)及びKDDIとの契約を全て失ったことは不知,その余は否認ないし争う。 原告は,大阪支店における平成21年1月から6月までの平均粗利率が別表2のとおりであると主張するが,計算根拠が不明である。また,この結果,別表3の利益額の計算根拠も不明である。 原告は,上記各契約がどんなに短くても1年間は継続したと主張するが,全く根拠がない。 イ予備的主張に対し全て争う。 原告は,不競法5条2項による損害額を主張するが,推定の前提事実である「その侵害の行為により利益を受けている」ことの立証がなく,同項を適用して損害額を認定できないことは明白である。 (第2事件)(3) 争点③(本件相殺の効力)について〔原告の主張〕 - 27 -原告は,平成21年8月11日,被告会社に対し,本件不正競争に基づく損害賠償請求権をもって,本件業務委託料の支払債務と対当額で相殺するとの意思表示をした(本件相殺)。 よって,本件業務委託料の支払債務は消滅した。 〔被告会社の主張〕争う。原告が主張する自働債権(本件不正競争に基づく損害賠償請求権)が存在しない以上,本件相殺は認められない。 (4) 争点④(第2事件被告X1らの責任)について〔被告会社の主張〕第2事件被告X2は,原告に対する支配権を有しており,原告の業務執行に関する意思決定を単独かつ自由に行うことができる地位にあるから,原告の事実上の取締役に当たる。そして,第2事件被告X2は,原告の代表取締役である第2事件被告X1及びL(以下「L社長 原告の業務執行に関する意思決定を単独かつ自由に行うことができる地位にあるから,原告の事実上の取締役に当たる。そして,第2事件被告X2は,原告の代表取締役である第2事件被告X1及びL(以下「L社長」という。)に対して,被告会社との間で支払意思のない業務委託契約を締結するよう指示したほか,何ら根拠のない本件相殺を主張して本件業務委託料の支払を不当に拒絶するよう指示し(あるいは,少なくとも,被告会社に対する債務の履行を指示すべきであったのに,著しく注意を欠いたためにそれを怠り),もって,第2事件被告X1及びL社長をして,本件業務委託料の不払という取締役としての任務懈怠行為を行わせた。これにより,被告会社は,本件業務委託料の支払を受ける権利ないし法的地位を侵害され,その結果,本件業務委託料相当額の損害を被った。 よって,第2事件被告X1らは,被告会社に対し,会社法429条1項に基づき,本件業務委託料相当額を支払うべき責任を負う。 〔第2事件被告X1らの主張〕全て争う。第2事件被告X2は原告の事実上の取締役ではなく,上記のような指示をしたこともない。原告が被告会社に対し本件相殺の意思表示をし - 28 -たことは,正当な企業活動であるから,取締役の任務懈怠にも当たらない。 被告会社において,本件業務委託料とは別個にいかなる損害が発生したのかも不明である。 第3 当裁判所の判断 1 第1事件(1) 争点①(不正競争の成否)についてア前記第2の3の前提事実に,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 (ア) 原告と被告会社の関係a 被告会社は,原告が経営統合する前のアックスに約5年間在籍したTが,平成18年11月21日に設立した会社であり,その人的つながりから,アックスとの間で,アックスが (ア) 原告と被告会社の関係a 被告会社は,原告が経営統合する前のアックスに約5年間在籍したTが,平成18年11月21日に設立した会社であり,その人的つながりから,アックスとの間で,アックスが受託した家電量販店における販売促進業務等を再受託する取引等を行ってきた。(乙18,20,弁論の全趣旨)b 平成19年9月1日,原告がアックスを経営統合した後も,被告会社とアックスとの間の上記取引は,原告に引き継がれた。(乙21,被告代表者T,弁論の全趣旨)c 平成21年当時,被告会社の原告に対する売上げは,平均して毎月2000万円程度であり,前年9月の決算期における総売上高約2億8000万円のうち2億円弱を原告との取引に関する売上げが占めていた。(被告代表者T,弁論の全趣旨)(イ) 原告における労働問題の発生と従業員の退職a 原告の大阪支店セールスサポート事業部では,平成21年1月以降,時間外手当のカットや昇給の見送り,経営統合したアックス出身の従業員の処遇等をめぐって,従業員に不満が生じていた。 同年4月には,名古屋支店への転勤命令を降格人事と受け止めた被 - 29 -告Y3が同年5月31日付けで退職することになったほか,同年6月初め頃には被告Y1が退職の意向を示し,同月15日には同事業部に所属する被告Y5が退職し,同月22日には被告Y4,同Y2,同Y5及び同Y1を含む同事業部の従業員14名が連名で,昇給の実施,時間外労働に対する割増賃金の支払,賞与に関する協定の締結,不当な人事考課の改善,不当労働行為を行わないこと等を要望し,同月29日までに回答がなければ5営業日以上の間ストライキを決行する旨の要求書(乙1)を原告代表者宛てに提出する事態に至った(被告Y5は,既に原告を退職していたが,退職前の残業代が未払であった し,同月29日までに回答がなければ5営業日以上の間ストライキを決行する旨の要求書(乙1)を原告代表者宛てに提出する事態に至った(被告Y5は,既に原告を退職していたが,退職前の残業代が未払であったことから,同被告も上記要望書に名を連ねた。)。(乙1,14,15,被告Y6,弁論の全趣旨)b その後,上記14名は,一旦は,取引先やスタッフに迷惑が掛かることは本意ではないとして,ストライキをせず,同月24日,25日に不当労働行為が行われなければ通常出勤で業務を行う旨,原告代表者宛てに通知したが,最終的に,会社から連日に及ぶ不当労働行為(嫌がらせ電話,早朝深夜の執拗な訪問,家族への脅迫電話等)を受けた結果,退職を選択せざるを得なくなったとして,団体交渉の窓口を弁護士に一本化する旨を原告代表者宛てに通知した。(乙2,3,弁論の全趣旨)c 被告Y3は,平成21年6月1日付けで被告会社に入社していた。 そして,同月16日には被告Y5が,同年7月1日には被告Y4,同Y1及び同Y2を含む原告大阪支店の従業員6名が,同月16日には原告大阪支店の従業員5名が,それぞれ被告Y3の紹介で,被告会社に入社することとなった。 当時,被告会社は,業績が好調で,人材の確保が売上げの増加につながることから,従業員を毎年倍増させる計画を立てており,Tは, - 30 -被告Y3を採用後,同被告を大阪支店の支店長に任命し,同支店における採用権限を同被告に任せていた。 同年7月,Tは,被告Y3から,新たに11名を採用した旨の報告を受け,それまで大阪支店(大阪営業所)の従業員数は10名程度であったことから,やや多すぎないかと尋ねたが,同被告から,「一時的に職場がない人たちをどうしても雇ってあげて欲しい。」,「何か月後には必ず何らかの形で会社に利益になるよう )の従業員数は10名程度であったことから,やや多すぎないかと尋ねたが,同被告から,「一時的に職場がない人たちをどうしても雇ってあげて欲しい。」,「何か月後には必ず何らかの形で会社に利益になるようにする。」などと言われ,これを了承した。 被告会社は,これを機に大阪支店のオフィスをより広い場所に移転するとともに,その後も採用を続け,現在,従業員数は50名弱となっている。(甲66,乙12,16,被告Y3,被告代表者T,弁論の全趣旨)d 他方,原告は,被告Y1,同Y2及び同Y4を平成21年7月13日付けで,被告Y6を同月15日付けで,それぞれ懲戒解雇処分にした。(甲14,乙4~6,9)(ウ) 取引先をめぐる原告と被告会社の折衝等a 平成21年6月22日,NTTアドのG課長から,原告に対し,ヨドバシカメラ梅田店におけるフレッツブース運営業務に係る個別契約の契約期間満了を控え,原告に労働問題が持ち上がっていると聞いたが真偽のほどを確認したい旨の連絡があり,原告は,翌日,担当の被告Y1及び当時18名いたスタッフに連絡を取って事実関係を確認しようとしたが,いずれも連絡が取れなかった。 b 同月24日ないし25日頃,NTTアドにおいて,NTTアド,原告及びファーストプロモーションによる話合いが行われ,席上,NTTアドから改めて事実確認があった。原告及びファーストプロモーションは,懸念されるような事実はないと否定したが,NTTアドの担 - 31 -当者らは,被告Y1の退職に店舗スタッフ(派遣労働者)も同調するという話も聞いており,現状の運営態勢を維持することが困難であれば,NTTアドとしてはクライアントのNTT西日本に対し,業務の質を担保できないことから,事態を憂慮していると述べた。これに対し,原告のL社長は,現場の仕事は間違 運営態勢を維持することが困難であれば,NTTアドとしてはクライアントのNTT西日本に対し,業務の質を担保できないことから,事態を憂慮していると述べた。これに対し,原告のL社長は,現場の仕事は間違いなく保証する,NTTの業務については全国展開しており,ノウハウを持った従業員,スタッフを有している,採算を度外視してでも現場は保証する旨を述べたが,NTTアド側は,運営者の退職や店舗スタッフの大量流出,社内における労働問題などを抱える会社と契約することのリスクを考えている,クライアントからは店舗における現在の運営態勢の変更は困ると言われており,ノウハウがあるといってもスタッフの総入替えでは今までどおりの運営は無理ではないかと危惧している,そこまで言うなら7月以降の運営態勢案を提示して欲しいと迫った。なお,この話合いには,被告Y6も大阪支店の支店長代理として立ち会っていた。 c 原告は,被告Y1及び大半のスタッフと連絡が取れないままであったことから状況が把握できず,事態収拾のためNTTアドに被告会社との仲介を依頼した。そして,NTTアドの仲介により,同月25日から同月27日にかけて,L社長,ファーストプロモーション社長M及びTとの間で何度か話合いが行われたが,原告及びファーストプロモーションが,原状回復,すなわち,一旦被告Y1ら従業員とスタッフを原告側に戻すことを求めたのに対し,被告会社は,一連の事態への関与(スタッフ等の引き抜き)を否定した上で,飽くまでファーストプロモーションの下で被告会社が業務委託を受けることを主張したことから,話合いは合意に至ることなく終わった。そして,この間,被告Y1の復職もスタッフの確保も見通しが付かなかったことから,同月28日,原告及びファーストプロモーションは,NTTアドに対 - 32 -し,当 意に至ることなく終わった。そして,この間,被告Y1の復職もスタッフの確保も見通しが付かなかったことから,同月28日,原告及びファーストプロモーションは,NTTアドに対 - 32 -し,当社としては現運営態勢を維持することが困難であり,NTTアドの要求する業務の質を確保できないことから,契約を継続できない旨を伝えた。 d その結果,平成21年7月1日以降,ヨドバシカメラ梅田店におけるフレッツブース運営業務は,これまでNTTアドからファーストプロモーションが委託を受けていた業務を,新通エスピーが受託することになり,新通エスピーから被告会社が再委託を受けて運営されることになった。 e 兼松,新通エスピー,日本エイサー,第一エージェンシー及びKDDIの各取引先に対しても,原告と各取引先との取引が終了した後は,それぞれ被告会社が派遣労働者の派遣を行っている(ただし,それが原告と各取引先との契約と全く同一の条件で,かつ,同一の派遣労働者で行われていることを認めるに足りる証拠はない。)。(上記a~eにつき,乙37,被告Y6,被告代表者T,弁論の全趣旨)イ虚偽事実の告知の有無上記認定の事実経過を前提に,以下,原告主張に係る虚偽事実の告知の有無について検討する。 (ア) 兼松に対する告知a 原告は,平成21年5月19日にTが本件告知1-1を,同月29日に被告Y3及び同Y5が本件告知1-2をそれぞれ行ったと主張する。 b 原告の主張に沿う証拠として,元原告従業員(NTT事業推進部マネージャー)兼ファーストプロモーション通信事業部部長N(以下「N」という。)作成の平成21年9月29日付け陳述書(甲18)があり,同陳述書には,平成21年6月30日に兼松の営業担当であるAから電話で聴取した内容,及び同年7月2日に兼松を訪問して 長N(以下「N」という。)作成の平成21年9月29日付け陳述書(甲18)があり,同陳述書には,平成21年6月30日に兼松の営業担当であるAから電話で聴取した内容,及び同年7月2日に兼松を訪問してAから聴取 - 33 -した内容として,それぞれ,本件告知1-1,1-2があった旨記載されている(なお,N作成とされる平成21年7月3日付け報告書〔甲65〕にも,NTTアドに関する記載がない点を除き,甲18とほぼ同一の記載がある。以下,併せて「甲18陳述書等」という。)。 しかし,甲18陳述書等における本件告知1-1についての記載は,NがAから聴取したというものであり,本件告知1-2についての記載は,Aが伝聞した内容を更にNが電話で聴取したというものであって,いずれもN自身の体験ではない上,Nが原告の従業員であること,T,被告Y3及び同Y5が,いずれも当該日時に兼松を訪問した事実自体が存在しないと主張して事実関係を争っていることを踏まえると,上記各記載の信用性については慎重に吟味する必要がある。他方,N作成の平成22年2月10日付け陳述書(乙10)には,自分が在職中に原告に提出した甲18は,原告の要求を拒否すれば,自分自身が解雇されるおそれと他のアックス出身者が差別的扱いを受けるおそれがあるという社内状況の下,半ば強要されて作成したものであり,内容は全く真実でないとする記載がある。加えて,同人については,原告及び被告双方からの証人申請を採用し,平成23年11月16日午後2時の本件口頭弁論期日において尋問する旨の呼出状が送達されたにもかかわらず(顕著な事実),同人は上記口頭弁論期日に出頭せず,証人尋問が実施できなかったことをも考慮すると,同人作成の甲18陳述書等の信用性には疑念をいれざるを得ない。そして,甲18陳述書等以外に,本 わらず(顕著な事実),同人は上記口頭弁論期日に出頭せず,証人尋問が実施できなかったことをも考慮すると,同人作成の甲18陳述書等の信用性には疑念をいれざるを得ない。そして,甲18陳述書等以外に,本件告知1-1,1-2が行われた事実を認めるに足りる的確な証拠はない。 c 以上によれば,本件告知1-1,1-2が行われたと認めることはできない。 (イ) 新通エスピーに対する告知 - 34 -a 原告は,平成21年6月1日に被告Y3が本件告知2-1を,同月2日に被告Y3及び同Y6が本件告知2-2をそれぞれ行ったと主張する。 b 甲18陳述書等には,平成21年7月3日に新通エスピーの契約担当であるCから電話で聴取した内容として,本件告知2-1,2-2があった旨が記載されている。 しかし,甲18陳述書等の信用性に疑念をいれざるを得ないことは前記のとおりであり,ほかに本件告知2-1,2-2があったと認めるに足りる的確な証拠はない。原告は,被告Y6が平成21年6月2日に新通エスピーを訪問した事実がないというのは虚偽であるとして,原告の社内システムにおけるスケジュール管理画面の写し(甲23)を提出し,そこには被告Y6が同日午前11時から12時まで新通エスピーへ外出したことが記録されている。しかし,同システムのスケジュール管理画面の記載は,事後であっても原告が自由に記載内容を変更できるものであるから,改ざん防止措置が講じられていること等の信用性を担保する事情の具体的立証がない限り,同証拠の記載を根拠に被告Y6の主張及び供述を虚偽であると断定することはできないというべきである。そして,本件においては,上記具体的事情の立証はなく,ほかに被告Y6の主張及び供述が虚偽であるとすべき証拠はない。 c 以上によれば,本件告知2-1,2-2 定することはできないというべきである。そして,本件においては,上記具体的事情の立証はなく,ほかに被告Y6の主張及び供述が虚偽であるとすべき証拠はない。 c 以上によれば,本件告知2-1,2-2が行われたと認めることはできない。 (ウ) 日本エイサーに対する告知a 原告は,平成21年5月13日に被告Y4が本件告知3-1を,同年6月18日に被告Y3が本件告知3-2をそれぞれ行ったと主張する。 - 35 -b 本件告知3-1につき,原告の主張に沿う証拠として,原告営業本部営業推進部部長O(以下「O」という。)作成の平成21年12月15日付け陳述書(甲10)及び証人尋問における同人の証言(以下,併せて「O供述」という。)がある。 しかしながら,O供述のうち被告Y4の発言,すなわち本件告知3-1に関する部分は,いずれもDからの伝聞にすぎない上,Oが原告の従業員ないし役員である(平成20年6月25日まで原告の取締役の地位にあり,同日付けで一旦退任したものの,平成21年10月1日には再び取締役に就任している。)こと,被告Y4は,Dと面談した事実を認めながら,原告主張の発言内容を否定していることを踏まえれば,その信用性を吟味する必要があるが,これを裏付ける客観的な証拠はない。したがって,O供述のみによって本件告知3-1を認めることは困難であり,ほかにこれを認めるに足りる的確な証拠はない。 c 本件告知3-2につき,これを裏付ける証拠として電子メールの写し計7通(甲11の1~7。以下「本件メール」という。)が提出されている。本件メールは,平成21年6月15日から同月17日にかけて,当時既に被告会社に転職していた被告Y3と日本エイサーのDないしEマネージャーが次回商談のスケジュールを調整する内容のやり取りであり,このうち メールは,平成21年6月15日から同月17日にかけて,当時既に被告会社に転職していた被告Y3と日本エイサーのDないしEマネージャーが次回商談のスケジュールを調整する内容のやり取りであり,このうち,同月17日付けでDが被告Y3に対して送信した電子メールの写し(甲11の1)には,同月18日に決まった商談に関し,「HT(判決注:原告を示すものと認められる。)さんから,マーキュリーさんへスライドしていく流れを,業務効果向上と言う点と,その背景にある御社代表以下,皆様の熱い想い!的な感じでお話いただけれ(判決注:「いただければ」の誤記と認める。)良いと思います。」との記載があり,また,その末尾には,「※このメ - 36 -ールはY3さんY4さんのみに送っておりますので,ご理解の程,よろしくお願いします。」と記載され,ヘッダー部分の「Cc:」欄に原告における被告Y4のメールアドレスが記載されていることから,同メールが被告Y3だけでなく,当時原告に在籍していた被告Y4にも送信されていたことが認められる。 しかしながら,本件メールの内容それ自体は,被告会社と日本エイサーとの間における商談のスケジュール調整のためのやり取りにすぎず,「HTさんから,マーキュリーさんへスライドしていく流れを……お話しいただけれ……」という部分に関しても,その直後に「業務移行のスケジュールをフローで解説いただければ」という記載があること,原告と日本エイサーとの間の契約期間が同月までとなっていたこと(O供述)を考慮すれば,次期の契約を原告ではなく被告会社が締結した場合,どのように業務を移行させるのかという点について説明を求める内容と理解することができる。したがって,本件メールの内容自体からは本件告知3-2があったと認めることはできない。そもそも,本件告知3- ,どのように業務を移行させるのかという点について説明を求める内容と理解することができる。したがって,本件メールの内容自体からは本件告知3-2があったと認めることはできない。そもそも,本件告知3-2は,その内容及び告知が行われたとする時期(次期契約の開始月である同年7月に接近する6月18日)からすると,本件告知3-1を前提としているというべきところ,本件告知3-1が認められないことは前記のとおりである。 したがって,本件メールのみから本件告知3-2を認めることはできず,ほかにこれを認めるに足りる的確な証拠はない。 d 以上によれば,本件告知3-1,3-2が行われたと認めることはできない。 (エ) 第一エージェンシーに対する告知a 原告は,平成21年4月27日に被告Y3及び被告Y2が本件告知4-1を,同年5月25日頃に被告Y2が本件告知4-2をそれぞれ - 37 -行ったと主張する。 b 本件告知4-1,4-2につき,原告の主張に沿う証拠として,①O供述,②F作成の平成22年1月26日付け陳述書(甲19),③P(以下「P」という。)作成の平成22年1月28日付け陳述書(甲20)がある。 (a) O供述についてOは,「平成21年7月以降,第一エージェンシーを訪問してFと面談した際,同人から,(本件告知4-1に関し)平成21年4月下旬に,被告Y3及び同Y2より,『原告が事業撤退するため,被告会社との間で,原告のスタッフが被告会社に円満な転籍をすることで話がついている。』,『この転籍についてはNTTアドも了解している。』という話があった。(本件告知4-2に関し)同年5月末に原告のスタッフ4名が被告会社に転籍した際,被告Y2が被告会社の契約書を上記4名に渡そうとしたところ,そのうちの1人であるPが,被告Y2から,『 いう話があった。(本件告知4-2に関し)同年5月末に原告のスタッフ4名が被告会社に転籍した際,被告Y2が被告会社の契約書を上記4名に渡そうとしたところ,そのうちの1人であるPが,被告Y2から,『今は原告の社員だけどこの被告会社の契約書を受け取るしかない。』と何らの選択肢も与えられず強い口調で迫られ,一方的に言われたことに立腹し,一旦は被告会社に転籍した後に,自ら別会社(株式会社オフィスワイズ)に転籍を希望し,現在もそこから派遣で来ているという内容の話を聞いた。」と供述する。 しかしながら,上記O供述の内容は,本件告知4-1に関しては伝聞,本件告知4-2に関しては再伝聞である上,Oが原告の従業員ないし役員であること,被告Y3及び同Y2は,本件告知4-1,4-2があったとされる日に第一エージェンシーを訪問した事実自体を否定していること(乙12,17,被告Y3,弁論の全趣旨)からすれば,上記O供述のみから本件告知4-1,4-2があった - 38 -と認めることは困難である。 (b) 甲19について甲19には,Fが被告Y3及び被告Y2から本件告知4-1を受けたことが記載されている。 しかし,甲19の記載によれば,本件告知4-1を受けたFは,原告との間で話が付いており,委託元のNTTアドの了承も取っているのであれば特に問題はないと判断し,平成21年6月1日以降の派遣契約を被告との契約に切り替えることを承諾したとされているが,F自身は第一エージェンシーの派遣窓口担当者にすぎないにもかかわらず,派遣契約の切替えという重要な事項(原告の主張によれば,上記業務に係る平成21年1月~7月の売上高は,月額約163万円から221万円に上る。)について,これまで取引がなかった被告会社からの売り込みにすぎない本件告知4-1を受けて, 原告の主張によれば,上記業務に係る平成21年1月~7月の売上高は,月額約163万円から221万円に上る。)について,これまで取引がなかった被告会社からの売り込みにすぎない本件告知4-1を受けて,第一エージェンシー内部でいかなる検討が行われたのか,現に取引を行っている原告や委託元のNTTアドに対して意向の確認をしたのかという点について何ら説明がなく,その信用性については疑念をいれざるを得ない。 (c) 甲20について甲20には,平成21年5月25日頃,被告Y2から本件告知4-2を受けた経緯が記載されている。 しかし,甲20を作成したPは,原告の元派遣労働者であるが,同書面の作成時期及び体裁に照らすと,同書面は本件訴訟に証拠として提出するために原告が同人に依頼して作成したものであると認められるから,これを客観的な証拠ということはできない。そして,F作成の陳述書(甲19)には,当時Pから相談を受けた旨の記載があるにもかかわらず,被告Y2から本件告知4-2を受けたこと - 39 -についての記載が一切なく,両者の記載が整合しないことからすると,甲20の本件告知4-2に関する記載の信用性には疑念をいれざるを得ない。 c 以上によれば,本件告知4-1,4-2に関するO供述,甲19及び甲20はいずれも信用性に疑念をいれざるをえないところ,ほかに本件告知4-1,4-2があったと認めるに足りる的確な証拠はない。 よって,本件告知4-1,4-2が行われたと認めることはできない。 (オ) NTTアドに対する告知a 原告は,平成21年6月19日に被告Y1が本件告知5-1を,同月22日に被告Y6が本件告知5-2をそれぞれ行ったと主張する。 b 本件告知5-1について,被告Y1は,平成21年6月20日前後頃,被告Y6と共にNT 年6月19日に被告Y1が本件告知5-1を,同月22日に被告Y6が本件告知5-2をそれぞれ行ったと主張する。 b 本件告知5-1について,被告Y1は,平成21年6月20日前後頃,被告Y6と共にNTTアドのG課長を訪問し,原告を退職する旨告げたことは認めている。 しかし,被告Y1は,このとき,本件告知5-1に係る「スタッフも,自分に同調して原告を退職する。」旨の発言したことは否定しているところ,被告Y1が上記発言を行ったことを認めるに足りる的確な証拠はない(N作成の陳述書〔甲18〕には,G課長から聴取した内容として,被告Y1がそのような発言をした旨の記載があるが,同陳述書が信用できないことは前記のとおりである。)。 また,被告Y1は,同月27日付けで退職する旨の退職届(甲68)を原告に提出し,実際に原告を退職しているから,原告を退職する旨告げたこと自体は,虚偽の事実の告知には当たらない。 したがって,同月19日に被告Y1が本件告知5-1に係る虚偽の事実の告知を行ったと認めることはできない。 c 本件告知5-2について,被告Y6は,平成21年6月22日にN - 40 -TTアドを訪問し,G課長に対し,「7月1日からのヨドバシ運営について,現状の主要メンバーが6月末日で退社するに当たり,代要員が今現在いない状態である。」,「代要員を手配しても今までどおりのクオリティを担保することは難しく,ファーストプロモーションで今までどおりの運営を行うことは難しい。」と説明したことは認めている。 しかし,上記告知内容が虚偽であったこと,すなわち,同年6月の時点で,被告Y1及び同月の時点で18人いたフレッツブース運営業務に従事するスタッフの大半が同月末に原告を退社しても,原告において,直ちに代替要員を手配し,同年7月以降も滞りなく同 わち,同年6月の時点で,被告Y1及び同月の時点で18人いたフレッツブース運営業務に従事するスタッフの大半が同月末に原告を退社しても,原告において,直ちに代替要員を手配し,同年7月以降も滞りなく同業務を履行できる態勢にあったとは認められない。原告は,スタッフの管理,指導,掌握は,人材派遣業者にとって,さしたる経験,専門的知識,スキルを要する業務ではなく,同業務に携わる従業員を全国で100人以上有していたから,代替要員に欠けることはなかったと主張する。 しかし,①ヨドバシカメラ梅田店は全国有数の大型家電量販店であり,フレッツブース運営業務は,対象商品(フレッツ光,フレッツADSL)の商品説明から,各種イベント企画運営等,各種ツールのデザイン,製作,各種プレミアムの製作等に至るまで広範な業務を行うことが要求されていたこと(甲5の1,弁論の全趣旨),②被告Y1は,上記時点で約4年間,1人でフレッツブース運営業務に関するスタッフの管理及び各種イベントの企画運営等を行ってきたこと(甲71,72,被告Y6,弁論の全趣旨),③同人は,同年6月初め頃には被告Y6を通じて原告及びファーストプロモーションに退職の意向を示していたにもかかわらず,原告及びファーストプロモーションは被告Y6に対し引き留めるよう説得を指示したのみで,上記業務を滞りなく履行するための具体的な対応を何ら講じていなかったこと(乙14, - 41 -15,被告Y6,弁論の全趣旨)からすると,原告が,約1週間の期間で,代替要員として上記業務を滞りなく履行するに足りる能力と経験を有する従業員及び従前のスタッフと同様の能力,経験を有する16名前後のスタッフを現実に他の現場から融通し,かつ,前任者からの十分な引継ぎがないまま,従前同様にフレッツブースを運営して上記各種業務を行うこ 従業員及び従前のスタッフと同様の能力,経験を有する16名前後のスタッフを現実に他の現場から融通し,かつ,前任者からの十分な引継ぎがないまま,従前同様にフレッツブースを運営して上記各種業務を行うことができたとは認められない。現に,NTTアドからは,「クライアントからは店舗における現在の運営態勢の変更は困ると言われており,ノウハウがあるといってもスタッフの総入替えでは今までどおりの運営は事実上,無理ではないかと危惧している」旨の懸念が表明され,「そこまで言うなら,7月以降の運営態勢案を提示して欲しい」と迫られ,同月28日,原告及びファーストプロモーションは,NTTアドに対し,現運営態勢を維持することは困難でありNTTアドの要求する業務の質を確保できないことから,契約を継続できない旨を伝えたことは,前記認定のとおりである。また,被告Y6は,その後も原告にとどまり懲戒解雇処分を受けており,当時,人事上の不満を抱えていたとはいえ,原告大阪支店長代理という職にありながら,あえて職を失うリスクを冒してまで,取引先に対し虚偽の事実を告知する動機があったとも認め難い。 以上によれば,本件告知5-2の内容が虚偽の事実であったと認めることはできない。 d よって,本件告知5-1,5-2に係る不正競争を認めることはできない。 (カ) KDDIに対する告知a 原告は,平成21年6月2日に被告Y3が本件告知6-1を,同月8日に被告Y6が本件告知6-2をそれぞれ行ったと主張する。 b 原告の主張に沿う証拠として,KDDIソリューション第1営業本 - 42 -部第4営業部部長Q(以下「Q部長」という。)が原告総務部R(以下「R」という。)に宛てて送信した平成21年7月29日付け電子メール(甲12の2)の添付文書とされる甲12の3があり,甲12 42 -部第4営業部部長Q(以下「Q部長」という。)が原告総務部R(以下「R」という。)に宛てて送信した平成21年7月29日付け電子メール(甲12の2)の添付文書とされる甲12の3があり,甲12の3には,社内調査により確認できた事実として,同年6月2日に被告Y3がKDDIのコンシューマー関西支社を訪れて応対したKDDIのH及びIに対し本件告知6-1を行ったこと,同月8日には被告Y6が同所を訪れて応対したKDDIのH及びIに対し本件告知6-2を行ったこと,これを受けてKDDIの社内手続が進められ,同年7月1日以降は被告会社からスタッフの派遣を受けることになったこと等が記載されている。 しかしながら,甲12の3が甲12の2のメールに添付されていたことを証明する客観的な証拠はない上,甲12の3の記載内容のうち,被告Y3及び同Y6の発言部分はいずれも伝聞にすぎず,被告Y3及び同Y6はその発言内容を否定していることからすると,その記載内容の信用性についても吟味する必要がある。 c よって検討するに,甲12の1~3によれば,(a)平成21年7月当時,原告の社内において,KDDIの携帯電話250台が会社の承認を得ることなく無断で購入されていた事実が発覚し,原告総務部による社内調査が進められており,その件で,KDDIにも内部調査を要請していた,(b)その最中,本件に関係する従業員の退職等の問題が発生し,当初はOが調査を行っていたが,難航したため,総務部のRにおいて,同問題についてもKDDIに対し調査を要請することとなった,(c)Rが,KDDIの担当者Sに対し,本件についての調査を要請したところ,同月22日,Sとその上司であるQ部長が原告の本社を来訪し,その際,Rは,Q部長らに対し,改めて本件についての調査を要請し,具体的に回答を求めるべ 当者Sに対し,本件についての調査を要請したところ,同月22日,Sとその上司であるQ部長が原告の本社を来訪し,その際,Rは,Q部長らに対し,改めて本件についての調査を要請し,具体的に回答を求めるべき事項をメールでQ部長宛てに送 - 43 -信した,(d)同月27日,SからRに,「今回の件について早急に書面にまとめてご連絡します。」との電話があり,同月29日,Q部長からR宛てに甲12の2のメールが送信された,とされている。 そして,甲12の2は,Rの上記メールを引用する形式で作成され,その引用部分には,「本日,Q部長様に現状を説明させていただきましたとおり弊社で現在発生している問題が解決されないと話が進まない」,「本日Q部長様が契約を継続していく為,何を解決できればもとに戻ることが出来るか話がございましたので社内で調整確認しましたのでご連絡させていただきます」とあり,その上で,回答を求める事項として,「1.御社からの仕事をいただく件 30人」,「3. 大阪で株式会社マーキュリーに業務を持っていかれた件,弊社社員から虚偽の説明を受けた内容の開示,弊社営業責任者,Oが伺った際に断られた理由」,「4.接待を受けたまたは接待した内容,金額,その場いた個人名の開示」,「5.1が解決されない限り,納品されている端末費用に関しては支払いが出来ません」,「上記については全て文面でのご返答を御願い致します」と記載され,甲12の3は,上記「3.大阪で株式会社マーキュリーに業務を持っていかれた件,弊社社員から虚偽の説明を受けた内容の開示,弊社営業責任者,Oが伺った際に断られた理由」に対する回答として甲12の2のメールに添付されたものとされている。 d そうすると,甲12の3が原告主張のとおり甲12の2のメールに添付された文書であったとしても ,Oが伺った際に断られた理由」に対する回答として甲12の2のメールに添付されたものとされている。 d そうすると,甲12の3が原告主張のとおり甲12の2のメールに添付された文書であったとしても,その作成経緯からすれば,当時,原告とKDDIとの間では,原告の従業員がKDDIから購入した携帯電話250台の購入代金の支払について折衝が行われており,原告はこれを交渉材料として,上記従業員の退職等の問題についても調査を要請した上で,原告との取引(労働者派遣契約)を継続するよう求 - 44 -めていたのであって,甲12の3はそのようなやり取りの中で作成されたものであるから,KDDIの担当者が上記交渉のため原告の意向に沿う内容の記載とした可能性を否定できず,かつ,その調査内容の客観性を担保する資料等は何ら添付されていないのであるから,その証明力は必ずしも十分なものと評価することはできない。したがって,甲12の1~3のみによって本件告知6-1,6-2を認めることは困難であり,ほかに本件告知6-1,6-2が行われた事実を認めるに足りる証拠はない。 原告は,被告Y6が,本件告知6-2があったとされる平成21年6月8日にKDDIを訪問した事実がないというのは虚偽であるとして,原告の社内システムにおけるスケジュール管理画面の写し(甲23)を提出し,そこには被告Y6が同日午後2時から午後3時までKDDIへ外出した旨が記録されている。しかしながら,同システムのスケジュール管理画面の記載の客観性,信用性を担保する具体的立証がないことは前示のとおりであり,同記載を根拠に被告Y6の主張及び供述を虚偽であるとすることはできない。 e 以上によれば,本件告知6-1,6-2が行われたと認めることはできない。 (2) 以上によれば,原告が主張する不正競争 同記載を根拠に被告Y6の主張及び供述を虚偽であるとすることはできない。 e 以上によれば,本件告知6-1,6-2が行われたと認めることはできない。 (2) 以上によれば,原告が主張する不正競争は,いずれも認めることができないから,その余の点について判断するまでもなく,原告の第1事件請求は,理由がない。 2 第2事件(1) 原告に対する請求についてア被告会社が原告と本件基本契約及び本件個別契約を締結したこと,被告会社が本件個別契約に基づく委託業務を履行したことは当事者間に争いがなく,したがって,被告会社は,原告に対し,上記各契約に基づき,業務 - 45 -委託料として1946万8170円の支払請求権(弁済期平成21年7月31日)を有する。 イ本件個別契約は,委託事業者である原告が他社に提供する役務の全部又は一部を他の事業者である被告会社に対し委託するものであるから,下請法2条4項の役務提供委託に該当する。また,本件個別契約の時点の資本金額は原告が9900万円(乙21),被告会社が2000万円(乙20)であるから,原告は同条7項3号の親事業者に該当し,被告会社は同条8項3号の下請事業者に該当する。 したがって,同法4条の2,下請代金支払遅延等防止法第4条の2の規定による遅延利息の率を定める規則により,親事業者たる原告は,下請代金の支払期日までに下請代金を支払わなかった場合,下請事業者である被告会社に対し,役務の提供を受けた日から起算して60日を経過した日,すなわち平成21年8月30日から支払をする日までの期間について,その日数に応じ,本件業務委託料1946万8170円に年1割4分6厘を乗じた額を遅延利息として支払わなければならない。 ウ争点③(本件相殺の効力)について原告は,平成21年8月11日,被告 その日数に応じ,本件業務委託料1946万8170円に年1割4分6厘を乗じた額を遅延利息として支払わなければならない。 ウ争点③(本件相殺の効力)について原告は,平成21年8月11日,被告会社に対し,本件不正競争に基づく損害賠償請求権をもって,本件業務委託料の支払債務と対当額で相殺するとの意思表示をし,本件相殺により本件業務委託料の支払債務は消滅したと主張する。 しかしながら,本件不正競争がいずれも認められないことは,前記1のとおりである。したがって,自働債権である不正競争に基づく損害賠償請求権が認められない以上,本件相殺は効力がない。 エ以上によれば,原告は,被告会社に対し,本件業務委託料1946万8170円及びこれに対する平成21年8月1日から同月29日まで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金,同月30日から支払済みまで下請 - 46 -法4条の2,下請代金支払遅延等防止法第4条の2の規定による遅延利息の率を定める規則所定の年1割4分6厘の割合による遅延利息を支払うべき債務を負う。 オよって,被告会社の原告に対する第2事件請求は理由がある。 (2) 第2事件被告X1らに対する請求についてア争点④(第2事件被告X1らの責任)につき被告会社は,①第2事件被告X2は原告に対する支配権を有しており,原告の業務執行に関する意思決定を単独かつ自由に行うことができる地位にあるから,原告の事実上の取締役に当たる,②第2事件被告X2は,原告の代表取締役である第2事件被告X1及びL社長に対して,被告会社との間で支払意思のない業務委託契約を締結するよう指示したほか,何ら根拠のない本件相殺を主張して本件業務委託料の支払を不当に拒絶するよう指示し(あるいは,少なくとも,被告会社に対する債務の履行を指示すべきであった のない業務委託契約を締結するよう指示したほか,何ら根拠のない本件相殺を主張して本件業務委託料の支払を不当に拒絶するよう指示し(あるいは,少なくとも,被告会社に対する債務の履行を指示すべきであったのに,著しく注意を欠いたためにそれを怠り),もって,第2事件被告X1及びL社長をして,本件業務委託料の不払という取締役としての任務懈怠行為を行わせた,③これにより,被告会社は,本件業務委託料の支払を受ける権利ないし法的地位を侵害され,その結果,本件業務委託料相当額の損害を被ったと主張する。 しかしながら,第2事件被告X2が,原告の代表取締役である第2事件被告X1及びL社長に対し,業務委託料を支払う意思がないのに本件基本契約及び本件個別契約を締結するよう指示したとか,第2事件被告X1及びL社長が業務委託料を支払う意思なくしてこれらの契約を締結したとの事実を認めるに足りる的確な証拠はない。また,第2事件被告X2において根拠がないと知りながら本件相殺を主張して本件業務委託料の支払を拒絶するよう第2事件被告X1及びL社長に指示したとか,第2事件被告X1及びL社長において根拠がないと知りながら本件相殺を主張して支払拒 - 47 -絶を行ったとの事実を認めるに足りる的確な証拠もない。 イよって,その余の点について判断するまでもなく,被告会社の第2事件被告X1らに対する第2事件請求は理由がない。 3 結論以上の次第であるから,第1事件については,原告の請求はいずれも理由がないから棄却し,第2事件については,被告会社の原告に対する請求は理由があるから認容し,第2事件被告X1らに対する請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 岡本 岳 裁判 ら認容し,第2事件被告X1らに対する請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 岡本岳 裁判官 寺田利彦 裁判官 坂本康博は,転補につき,署名押印することができない。 裁判長裁判官 岡本岳
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