主文 1 被告は,原告に対し,411万6811円及びこれに対する平成25年6月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は100分し,その7を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決は,主文1項に限り,仮に執行することができる。ただし,被告が担保として400万円を供するときは,仮執行を免れることができる。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,5639万4916円及びこれに対する平成25年6月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,A市立B中学校(以下「被告中学校」という。)のバドミントン部(以下「本件バドミントン部」という。)に所属していた原告が,部活動中に熱中症にり患し,脳梗塞を発症した(以下「本件事故」という。)のは,指導教諭等による熱中症予防対策が不十分であったことによるなどと主張して,被告中学校を設置する被告に対し,国家賠償法1条1項による損害賠償請求権に基づき5639万4916円及びこれに対する平成25年6月9日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 第3 前提事実(当事者間に争いがないか,各項掲記の証拠等により認められる。) 1 当事者等(1) 原告は,平成9年生まれの女性であり,平成22年8月30日の本件事故当時,被告中学校の1年生であった。 (2) 被告は,被告中学校を設置する地方公共団体である。 本件事故当時,本件バドミントン部の指導教諭(いわゆる顧問)は,被告中学校教員のC教諭であった。 2 本件事故の概要等(甲4,原告本人,証人C)(1) 本件バドミント である。 本件事故当時,本件バドミントン部の指導教諭(いわゆる顧問)は,被告中学校教員のC教諭であった。 2 本件事故の概要等(甲4,原告本人,証人C)(1) 本件バドミントン部は,平成22年8月30日(以下,同日の出来事については,時間のみで記す。)午前11時10分から部活動としての練習を開始し,午前11時25分頃から,被告中学校の体育館(以下「本件体育館」という。)内での練習を始めた。 (2) 原告は,午後1時過ぎ頃,バドミントンの試合形式の練習をしていたところ,地面に落ちたシャトルを拾い損ねることが2回続いた。様子がおかしいと感じたC教諭は,原告に確認したところ,「頭が痛い。しんどい。」と訴えたため,原告を教官室に移動させ,水分を取らせるなどした後,タクシーでD病院の救急外来を受診した。 (3) 原告は,アテローム血栓性脳梗塞(右中大脳動脈塞栓症)と診断され(以下「本件脳梗塞」という。),そのまま入院した(乙5)。 (4) 原告は,平成22年8月30日~同年12月3日,D病院に入院してリハビリ治療を行った後,平成23年8月19日までの間,D病院,Eクリニック,Fクリニック等に通院して,主としてリハビリ治療を受け,平成23年8月13日,症状固定の診断を受けた(甲5)。 3 熱中症について(甲7,甲20,甲26)(1) 熱中症とは,暑熱環境によって生じる障害の総称であり,大きくは,a熱けいれん(重症度分類Ⅰ度),b熱疲労又は熱疲弊(同Ⅱ度),c熱射病又は重度の日射病(同Ⅲ度)の3つに分けられる(甲20,甲26)。 (2) 熱中症対策財団法人日本体育協会は,平成6年,熱中症予防の原則を「熱中症予防8ケ条」としてまとめ,具体的なガイドラインとして「熱中症予防のための運動指針」(以下「本件指針 甲26)。 (2) 熱中症対策財団法人日本体育協会は,平成6年,熱中症予防の原則を「熱中症予防8ケ条」としてまとめ,具体的なガイドラインとして「熱中症予防のための運動指針」(以下「本件指針」という。甲7)を発表した。 その内容は,別紙のとおりである。 (3) WBGT(湿球黒球温度)WBGT(Wet-bulbGlobeTemperature:湿球黒球温度)とは,暑さに関する環境因子のうち気温,湿度,輻射熱の3因子を取り込んだ指標であり,熱中症予防の温度指標として有効とされるものである(甲26〈p56,p57〉)。 4 独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「JSC」という。)による災害共済給付について(乙24)(1) 災害共済給付契約JSCは,学校の管理下における児童生徒等の災害(負傷,疾病,障害又は死亡)に対して,災害共済給付(医療費,障害見舞金又は死亡見舞金の支給)を行っている(乙24〈p1〉)。災害共済給付は,学校の設置者が,児童生徒等の保護者の同意を得て,当該児童生徒等につきJSCとの間で締結する災害共済給付契約により行う(独立行政法人日本スポーツ振興センター法〔以下「センター法」という。〕16条1項)。 (2) 免責特約ア災害共済給付契約には,学校の管理下における児童生徒等の災害について学校の設置者に損害賠償責任が発生した場合において,JSCが災害共済給付を行った限度でその責任を免れさせる旨の特約(免責特約)を,学校の設置者の申込みにより付することができる(センター法16条3項,独立行政法人日本スポーツ振興センター業務方法書16条2項)。 イ免責特約は,JSCが災害共済給付を行った限度で学校の設置者の損害賠償責任を免れさせることで,学校教育の円滑な実施,学校の設置者の突 立行政法人日本スポーツ振興センター業務方法書16条2項)。 イ免責特約は,JSCが災害共済給付を行った限度で学校の設置者の損害賠償責任を免れさせることで,学校教育の円滑な実施,学校の設置者の突発的な財政負担の分散及び軽減を図ることを目的とする(独立行政法人日本スポーツ振興センター免責の特約を付した災害共済給付契約約款規程2条)。 (3) 共済掛金災害共済給付契約を締結した学校の設置者は,所定の共済掛金の額をJSCに対して支払い(センター法17条3項),そのうちの一定額を児童生徒等の保護者から徴収する(センター法17条4項)。 (4) 給付金の支払請求ア給付金の支払請求は,学校の設置者が,所定の支払請求書を送信又は提出して行うことができる(独立行政法人日本スポーツ振興センター業務方法書26条1項。なお,提出を要する書類の中には,保護者等が取得すべき障害診断書などが含まれているため,保護者等の協力なしに支払請求をすることは事実上不可能であると解される。)。 イ上記アにかかわらず,児童生徒等の保護者等は,所定の支払請求書を提出して,自ら給付金の支払請求をすることができる。この場合の請求は,当該契約に係る学校の設置者を経由して行う(同条2項)。 (5) 損害賠償との調整ア学校の設置者が損害賠償責任を負う場合において,免責特約付きの災害共済給付契約に基づきJSCが給付を行ったときは,その価額の限度で損害賠償責任を免れる(センター法31条1項)。 イ JSCが災害共済給付を行った場合において,当該給付事由の発生について損害賠償責任を負う者があるときは,JSCは,その給付額の限度で児童生徒等が有する損害賠償請求権を取得する(センター法31条2項)。 ウ他方,学校の設置者が損害賠償責任を負う場合に,免責特約付きの 損害賠償責任を負う者があるときは,JSCは,その給付額の限度で児童生徒等が有する損害賠償請求権を取得する(センター法31条2項)。 ウ他方,学校の設置者が損害賠償責任を負う場合に,免責特約付きの災害共済給付契約に基づき給付が行われる前に,学校の設置者から児童生徒等に対して損害賠償金が支払われたときは,学校の設置者からJSCに対して災害共済給付金の支払請求ができる旨の定めはない。そのため,学校の設置者が免責特約を活用するには,その損害賠償金を支払う前に災害共済給付を受ける必要がある。また,学校の設置者は,当事者と取り交わす示 談書,調停調書や判決等において,給付された災害共済給付金の金額の控除に必ず触れてもらうよう確認する必要がある(乙24〈p8〉)。 第4 争点 1 過失(1) WBGTが31℃以上であったことを前提に,C教諭が原告にバドミントンをさせたこと自体に過失があるか(争点1)(2) WBGTが28℃以上であったことを前提に,C教諭には原告にバドミントンをさせた過失又はバドミントンをさせる上で必要な配慮を怠った過失があるか(争点2)(3) 被告中学校長には,熱中症を予防するために必要な措置を取らなかった過失があるか(争点3) 2 争点1~3の各過失と本件脳梗塞との間の因果関係(争点4) 3 損害(1) 素因減額の可否及び程度(争点5)(2) 原告の後遺障害の程度(争点6)(3) 原告がJSCに対して障害見舞金の給付申請をしないことが信義則に反するか(争点7)(4) 損害額(争点8)第5 当事者の主張 1 争点1(WBGTが31℃以上であることを前提とした過失)について(原告の主張)(1) 本件事故当時の本件体育館内のWBGTは,31℃を超えていた。 争点8)第5 当事者の主張 1 争点1(WBGTが31℃以上であることを前提とした過失)について(原告の主張)(1) 本件事故当時の本件体育館内のWBGTは,31℃を超えていた。 ア本件事故と同じ時季,天候,同時間帯に本件体育館内の温湿度を計測した結果によれば,本件体育館の全ての出入口,下部を除く窓及びカーテンを閉めた状態でのWBGTは30.8℃であった。 イ加えて,本件事故当時は,本件体育館内で,20数名の部員がバドミン トンの練習を行っていたことからすれば,WBGTはさらに高くなるから,31℃を超えていたものと考えられる。 (2) C教諭の注意義務C教諭は,気温が高い夏季に部活動をさせる場合は,生徒が熱中症になり健康を害することがないように,適切な措置を取るべき義務がある。 本件指針によれば,WBGTが31℃以上になれば,運動を原則中止することとされていることから,C教諭においても,本件体育館内のWBGTが31℃以上になっている間は,原告に運動をさせてはならない義務を負っていた。 (3) C教諭の義務違反しかるに,C教諭は,本件事故当時,本件体育館内のWBGTが31℃以上であったにもかかわらず,原告に運動をさせていたのであるから,上記(2)の注意義務に違反している。 (被告の主張)否認ないし争う。 (1) 本件事故と同じ時季,天候,同時間帯に本件体育館内の温湿度を計測した結果によれば,本件体育館内のWBGTは31℃以上となっていない。 (2) 当時,本件体育館にいたのは,20数名であり,体育館の広さからすれば,これだけの部員が体育館内で運動したからいって,そのことだけで,体育館内の温度と湿度が格段に上昇するとは考えられない。また,準備運動 時,本件体育館にいたのは,20数名であり,体育館の広さからすれば,これだけの部員が体育館内で運動したからいって,そのことだけで,体育館内の温度と湿度が格段に上昇するとは考えられない。また,準備運動の間は,体育館の出入口と両側面の扉は開放して風通しが良い状態にしていた。 (3) したがって,本件事故当時,本件体育館内のWBGTが31℃を超えていたとはいえないから,原告の主張は,その前提を欠いている。 2 争点2(WBGTが31℃未満であることを前提とした過失)について(原告の主張)(1) C教諭の注意義務 仮に,本件事故当時の体育館内のWBGTが31℃以上でなかったとしても,争点1での原告の主張のとおり,28℃以上であったことは明らかである。 本件指針によれば,WBGTが28℃以上の場合は,激しい運動や熱負担の大きい運動は避け,運動をさせる場合でも積極的に休息と水分補給を行うべきものとされている。 したがって,C教諭は,原告に対し,激しい運動や熱負担の大きい運動等をさせてはならない注意義務を負っていたし,運動をさせるのであれば,休息や水分補給が十分であるかについて配慮すべき注意義務を負っていた。 (2) C教諭の義務違反しかるに,C教諭は,本件事故当日,原告に対し,ランニング,フットワーク(足を動かしながらラケットを持って素振りを行う運動),二人組での打ち合い練習,試合形式の練習をさせるなどの激しい運動を行わせていたし,十分な休息や水分補給をさせていなかったのであるから,C教諭の上記(1)の注意義務違反が認められる。 (被告の主張)争う。 (1) 注意義務の内容ア本件事故当時,特に夏季の温度の高い状況下で運動を行うに際して,本件指針を参考とした配慮が求 の注意義務違反が認められる。 (被告の主張)争う。 (1) 注意義務の内容ア本件事故当時,特に夏季の温度の高い状況下で運動を行うに際して,本件指針を参考とした配慮が求められていたことは否定しない。 しかし,本件指針は,財団法人日本体育協会が任意に作成した参考資料であり,同指針に基づき部活動の指導を行うことが法律上義務付けられているわけではない。また,平成24年7月に,体育活動中の事故防止に関する調査研究協力者会議が整理した「学校における体育活動中の事故防止について」と題する報告書においても,指導者は,本件指針を参考として,実際に運動の可否等を適切に判断することが重要であると指摘されている にすぎず,同指針の遵守が求められているわけでもない。 したがって,C教諭は,必ずしも本件指針に準拠した指導をしなければならなかったものではない。 イまた,仮に,C教諭に本件指針に準拠した指導をすべき義務があるとしても,以下に述べるとおり,本件指針においては,WBGT28℃以上でもWBGT31℃に満たない場合には,運動は禁止されておらず,積極的に休息をとり水分補給を行うことを条件として許容されており,例外的に,激しい運動や持久走など熱負荷の大きい運動を行うことや対象者が体力の低い者や暑さに慣れていない者が運動することを制限しているに過ぎない。 ウしたがって,C教諭が負っていた注意義務の内容は,激しい運動や持久走など熱負荷の大きい運動を避け,運動する場合には,積極的に休息をとり,水分補給を行わせ,体力の低い者,暑さに慣れていない者には運動をさせない義務に止まる。 (2) 注意義務違反の不存在ア本件事故当時,原告が行っていた運動は,激しい運動や持久走など熱負荷の 給を行わせ,体力の低い者,暑さに慣れていない者には運動をさせない義務に止まる。 (2) 注意義務違反の不存在ア本件事故当時,原告が行っていた運動は,激しい運動や持久走など熱負荷の大きい運動にはあたらない。 (ア) 本件指針は,WBGT28℃以上の状況下では,「激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける」と記載されており,例示された持久走に匹敵する程度の熱負荷の大きい運動であってはじめて,本件指針が避けるべきとする運動に該当すると理解すべきである。 (イ) 本件事故当時行われていたバドミントンの試合形式の練習は,21点先取のシングルスのゲーム形式の練習であり,その試合時間は,せいぜい10分~15分程度であり,持久走に匹敵する程度の熱負荷の大きい運動に該当するとはいえない。 このことは,文部科学省等が発行する「熱中症を予防しよう」とのパンフレット(甲20)の中で,熱中症の発症が認められたスポーツ活動 の例として,主に屋外で行われる野球,ラグビー,サッカー,屋内で行うものの防具や厚手の衣服を着用する柔道,剣道などが上位に挙げられていることからも明らかである。 イ C教諭は,本件事故当時行われていた試合形式の練習を行う場合だけでなく,他のランニングやフットワークの練習を行う場合においても,練習時間を30分~1時間以内に止めており,各練習の間で必ず5分間の休息をとり,水分を補給する機会を与えていた。 ウ原告は,小学校低学年ではスイミングスクール,小学校5年からはミニバスケットボール部に参加し,夏季休暇中の部活動を経験していた上,本件事故の2週間前のバドミントンの地区大会では,優勝している。このように,原告は,体力があり,暑さにも慣れていた。 エ上記ア~ウを踏まえれば,C教諭 ,夏季休暇中の部活動を経験していた上,本件事故の2週間前のバドミントンの地区大会では,優勝している。このように,原告は,体力があり,暑さにも慣れていた。 エ上記ア~ウを踏まえれば,C教諭が前記(1)の注意義務を怠ったとはいえない。 3 争点3(被告中学校長の過失)について(原告の主張)(1) 被告中学校長は,a本件指針を踏まえて,生徒が熱中症を発症することを予防するために,適切に温度管理を行い,環境に従った措置を講じる義務を負っていた。また,b部活動の指導教諭に対し,本件指針の内容を十分に理解させるよう指導すべき義務があった。 (2) しかるに,本件事故当時,本件体育館内には,温湿度計が設置されておらず,被告中学校長が,上記aの義務に違反していたことは明らかである。また,C教諭は,本件事故当時,本件指針の内容を十分理解せず,部活動をする上で遵守すべきものと理解していなかったことからみて,上記bの義務を怠っていた。 (被告の主張)争う。 (1) 平成22年8月当時,多くの学校では,温度計を必要な場所すべてに置いて厳密な温度の確認による管理を行うとの実態はなかった。したがって,被告中学校長が,本件体育館内に,温湿度計を設置する義務(原告主張のaの義務)を負っていたとはいえない。 (2) 被告中学校長は,平成22年8月5日頃,スポーツ関係の部活動の指導担当教諭に対し,夏季休暇中の部活動の際の熱中症の予防のために練習内容への適切な配慮,水分補給と休憩の適切な取得などを徹底するよう指導し(乙19),原告主張のbの義務を履行した。 4 争点4(争点1~3の各過失と本件脳梗塞との間の因果関係)について(原告の主張)本件脳梗塞は,本件事故による熱中症が原因であり,因果関係 19),原告主張のbの義務を履行した。 4 争点4(争点1~3の各過失と本件脳梗塞との間の因果関係)について(原告の主張)本件脳梗塞は,本件事故による熱中症が原因であり,因果関係が認められる。 (1) 原告は,熱中症の症状である脱水症状を呈していた。 ア原告の発汗及び水分摂取の状況原告は,本件事故当時,WBGTが31℃又は少なくとも28℃を超える環境下において,バドミントンという激しい運動を行っており,大量発汗したものと推測される一方,11時10分に部活動を開始し,午後1時頃に本件事故が起きるまでの間,水分補給したのは2回の休憩時のみであり,また,いずれの際も,すぐに練習に戻らなければならなかったのであるから,水分補給は十分でなかった。したがって,原告は脱水症状をきたしていたと推測される。 イ原告の症状脱水の症状として,軽症の段階で頭痛,脱力感,立ちくらみなどの症状が現れ,中等症の段階でめまい,悪心,嘔吐などが現れるとされるところ,原告の症状は,このような脱水の症状に一致する。 ウ血液検査の結果被告は,8月30日午後3時34分に行った血液検査の結果によると, 原告が脱水症状であったと診断できないから,原告に脱水症状が生じていなかったと主張する。 しかし,原告は,本件事故後,C教諭から与えられた清涼飲料水を飲み,D病院において500mLの点滴措置を受けているから,採血が行われた時点では脱水症状は相当回復していたものと考えられる。したがって,上記血液検査の結果をもって,原告が脱水症状を起こしていたことを否定することはできない。 (2) 体が脱水状態になると血栓ができやすくなるから,脱水状態は,アテローム血栓性脳梗塞の原因となる。 (3) 結果をもって,原告が脱水症状を起こしていたことを否定することはできない。 (2) 体が脱水状態になると血栓ができやすくなるから,脱水状態は,アテローム血栓性脳梗塞の原因となる。 (3) 原告には,本件脳梗塞を発症するその他の要因がない。 ア原告は,本件事故以前に脳梗塞を発症した経験はなく,他の持病もなく,運動中に体に不調をきたしたこともない健康体であったから,脱水状態以外に,脳梗塞発症の原因は考えられない。 イ以下のとおり,原告は,プロテインS欠乏症であるとはいえないし,仮にプロテインS欠乏症であるとしても,それが本件脳梗塞の原因であったとはいえない。 (ア) 平成22年及び平成23年の検査結果平成22年及び平成23年に行われた原告の血液検査の結果によれば,原告のプロテインSの値は,基準値に比べると低いが,これらは,原告が,血漿プロテインS値を低下させる薬剤であるワーファリンを服用している状況下でされた検査結果であるから,これらをもって,原告がプロテインS欠乏症であったということはできない。 (イ) 平成24年4月5日の検査結果a 平成24年4月5日の検査結果は,プロテインSの抗原量はトータルで54%,フリーで45%となっており,いずれも基準値より低くなっている。 b しかし,G病院のH医師の「質問に対する回答」(甲36)によれば,「小児では成人より低値をとる傾向があるため,小児での異常値の目安は50%以下にするという専門家の意見もあります。」とされている。 c このような見解を前提に考えると,原告のプロテインS抗原量(トータル)は54%であって異常値とはいえず,フリーでも46%であって正常値の下限より4%低下しているにすぎない。 d また,プロテインS抗原量の数 見解を前提に考えると,原告のプロテインS抗原量(トータル)は54%であって異常値とはいえず,フリーでも46%であって正常値の下限より4%低下しているにすぎない。 d また,プロテインS抗原量の数値は,プロテインS欠乏症を確定的に診断する材料ではないから,プロテインS抗原量が基準値より低下していることが,直ちに疾病の原因となるとは考えられない。 (被告の主張)本件脳梗塞は,原告のプロテインS欠乏症を原因とするものであり,熱中症を原因とするものではないから,争点1ないし3の過失との間に因果関係はない。 (1) 原告は,脳梗塞を引き起こすほどの脱水症状を生じていたとはいえない。 ア原告は,本件事故当日,定期的に水分補給をしており,原告が体調不良を訴えた後,C教諭が原告に対し,スポーツドリンク等で水分補給をさせた結果,原告自ら「元気になった」と答えるまでに回復していた。 イ本件事故後受診したD病院において,受診時のデータなどからは脱水を強く示唆するものはないと判断されている。 (2) 本件脳梗塞は,原告のプロテインS欠乏症を原因とするものである。 アプロテインS欠乏症は,日本国内で頻度の高い血栓性素因である。 イ平成22年~24年の原告の血液検査の結果によれば,原告のプロテインSの値は基準値より低い値を示しており,プロテインS欠乏症にり患していた。 ウ D病院の医師は,本件脳梗塞はプロテイン欠乏症によるものであると判断している(乙2の2)。 5 争点5(素因減額の可否及び程度)について(被告の主張)争点4の因果関係が認められるとしても,本件脳梗塞の発症には,原告の既存疾患であるプロテイン欠乏症が重要な影響を及ぼしているから,相当程度の素因減額がされるべきである。 (原告の (被告の主張)争点4の因果関係が認められるとしても,本件脳梗塞の発症には,原告の既存疾患であるプロテイン欠乏症が重要な影響を及ぼしているから,相当程度の素因減額がされるべきである。 (原告の主張)否認ないし争う。 (1) 原告はプロテインS欠乏症ではない。また,仮にプロテインS欠乏症であるとしても,本件脳梗塞の原因は脱水であって,プロテインS欠乏症は寄与していないから,素因減額をすべきではない。 (2) 仮に,原告のプロテインS欠乏症が本件脳梗塞発症に寄与しているとしても,その寄与の程度は明らかでない。他方で,本件では,本件指針に反する状況下で原告に激しい運動をさせたため,熱中症になって本件脳梗塞を発症したことが明らかであって,本件脳梗塞は,主としてC教諭又は被告中学校長の過失により生じたものであるから,大幅な素因減額は相当ではない。 6 争点6(原告の後遺障害の程度)について(原告の主張)原告の後遺障害等級は,片麻痺として7級に当たり,仮に上肢だけをみても,軽度の単麻痺として9級に当たる。 (1) 原告は,左半身に麻痺が残っており,特に左手,左上腕など上肢の麻痺が顕著であり,日常生活では左上肢で日常動作をする際に,力を細かく加減することや,力を入れ続けることが困難になっており,基本動作を行う際の巧緻性および速度が相当程度損なわれている。 (2) 左足についても,つま先に力を入れることができず,はいていたスリッパが脱げてしまうことや,何もないところで躓くことがある。 (被告の主張) 否認ないし争う。 (1) 原告は,平成22年の冬には部活動に復帰し,中学3年の6月まで部活動を継続した。地区大会にも出場し,2,3試合を勝ち進み,1ブロック内で優勝する程度にまで回復している。 (2) う。 (1) 原告は,平成22年の冬には部活動に復帰し,中学3年の6月まで部活動を継続した。地区大会にも出場し,2,3試合を勝ち進み,1ブロック内で優勝する程度にまで回復している。 (2) 原告は,右利きであり,学習などの面で不都合は生じていないだけではなく,左手のみで自転車を運転することもできている。 (3) したがって,原告の障害は,現時点までに相当程度軽減し,少なくとも後遺障害等級7級ないし9級に該当するような障害は残存していない。 7 争点7(原告がJSCに対して障害見舞金の給付申請をしないことが信義則に反するか)(被告の主張)(1) 本件事故に起因して後遺障害が残存した場合には,原告は,被告がJSCとの間で締結した災害共済給付制度に基づき障害見舞金の請求ができる。原告が,障害見舞金の給付を受けたときは,被告は,本件訴訟で損益相殺の主張をすることができる。そのため,被告は,本件訴訟中に,障害見舞金の支払請求をするよう原告に求めたが,原告は,同請求をしなかった。 (2) 原告は,JSCに対し,障害見舞金の請求をしない理由として,原告が諸検査を受けるための費用の補助を受けられなくなることを挙げている。しかし,原告は,本件訴訟で,症状固定を前提とする損害賠償請求をしながら,今後もJSCに対して,症状がまだ固定していないことを前提とする医療費を請求することは,明らかに不当である。 また,原告が,本件訴訟で後遺障害に係る損害賠償を受領した後,改めてJSCに対して障害見舞金の請求をすることは,二重に利得を認める結果となるから,許されない。 (3) 他方で,原告が障害見舞金を請求しない状態で,原告の請求を一部でも認容する判決が出され,被告がこれを履行した場合でも,後日,被告からJS Cに対して,原告が請求すれ 許されない。 (3) 他方で,原告が障害見舞金を請求しない状態で,原告の請求を一部でも認容する判決が出され,被告がこれを履行した場合でも,後日,被告からJS Cに対して,原告が請求すれば受領し得た障害見舞金相当額を請求・受領することは,制度上不可能である。したがって,原告が,正当な理由なく,JSCに対して障害見舞金の支払請求をしないことにより,被告は,本来,原告が受給できた障害見舞金の金額の範囲で,不要かつ過度な負担を余儀なくされることになる。 (4) 以上の諸点を踏まえれば,損害の公平な分担を図る不法行為制度の趣旨及び被害者も損害の拡大を最低限に抑えるための信義則上の義務を負担していることに鑑み,原告の本件請求のうち後遺障害に係る請求については,原告が支払請求をすれば受領できたと見込まれる障害見舞金の金額を上限として,信義則上,その権利行使を制限すべきである。 (原告の主張)争う。 (1) 災害共済給付制度は,国,学校の設置者,児童生徒の保護者の三者による互助共済制度であり,学校内事故の被害者に対して円滑な損害回復を行うことを目的として運営されている。かかる制度の趣旨・目的からすれば,被害者が加害者に対して直接損害賠償請求をするか,JSCに災害共済給付金を請求するかの選択は自由に認められるべきものであり,共済制度の存在が,被害者の加害者に対する直接請求を制限するものとは考えられない。 (2) 原告がJSCに対して障害見舞金の給付請求をしたとしても,見舞金を受給できるか否か,できるとしてもその金額がいくらかは明らかでない。このように,現実に利益を得ていないものを損益相殺の対象とすることはあり得ない。 (3) 上記災害共済給付制度の約款では,「災害共済給付の給付事由と同一の事由について,損害賠償請求を受け でない。このように,現実に利益を得ていないものを損益相殺の対象とすることはあり得ない。 (3) 上記災害共済給付制度の約款では,「災害共済給付の給付事由と同一の事由について,損害賠償請求を受けたときは,その価額の限度において,給付を行わない場合があります。」と規定され(乙24〈p5〉),制度上,二重の利得を得ることは否定されている。 (4) むしろ,原告と被告との間で過失相殺がされる場合には,JSCから給付される見舞金のうち,原告の過失割合分は損益相殺の対象とはならず,それを超えて被告の過失割合分まで受給した場合には,その分のみが損益相殺の対象となるものと解すべきである。 (5) 被告の主張は,被害者に生じた損害の速やかな回復を目的として運営されている災害共済給付制度を理由に,当然負うべき責任をいたずらに免れようとするものであって,許されない。 8 争点8(損害額)について(原告の主張)本件事故によって原告が被った損害は,以下のとおりである。 (1) 治療費 29万0760円ア D病院(入院96日)イ I医療センター(通院1日)ウ Eクリニック(通院30日)エ A市立総合病院(通院4日)オ Fクリニック(通院12日)カ J病院(通院1日)(2) 文書料 2万2270円(3) 入院雑費 14万4000円1500円(入院1日あたり)×96日(入院日数)=14万4000円(4) 交通費 195円I医療センターを受診時のガソリン代(往復13km)(5) 付添看護費 71万4000円原告は,本件事故当時12歳であったから,入院及び通院には,家族による付添が必要であった。 6000円(入院1 ーを受診時のガソリン代(往復13km)(5) 付添看護費 71万4000円原告は,本件事故当時12歳であったから,入院及び通院には,家族による付添が必要であった。 6000円(入院1日あたり)×96日(入院日数)+3000円(通院 1日あたり)×46日(通院日数)=71万4000円(6) 後遺障害逸失利益 3720万6881円ア基礎収入 466万7200円症状固定時での原告の年齢は13歳であり,年少女子にあたるから,基礎収入は,男女合わせた全労働者の学歴計・全年齢平均賃金を用いるべきである。 イ労働能力喪失率 56%(後遺障害等級7級)ウライプニッツ係数 14.2357(13歳のライプニッツ係数)(7) 慰謝料ア入通院慰謝料 259万円原告は,96日間入院し,46日間通院したから,入通院慰謝料は259万円が相当である。 イ後遺障害慰謝料 1030万円原告の後遺障害は,後遺障害等級7級に相当するから,後遺障害慰謝料は1030万円が相当である。 (8) 弁護士費用 512万6810円上記(1)~(7)の合計額5126万8106円の1割にあたる512万6810円が弁護士費用として相当である。 (9) 原告の損害額 5639万4916円原告の損害額は,上記(1)~(8)の合計5639万4916円となる。 (被告の主張)否認ないし争う。 第6 当裁判所の判断 1 基礎となる事実等前記第3の前提事実に加え,証拠(甲33,乙23,原告本人,証人C教諭のほか各項記載のもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 熱中症に関する 礎となる事実等前記第3の前提事実に加え,証拠(甲33,乙23,原告本人,証人C教諭のほか各項記載のもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 熱中症に関する知見及び対策等ア熱中症とは,暑熱環境によって生じる障害の総称であり,大きく以下の3つに分けられる(甲20)。 (ア) 熱けいれん(重症度分類Ⅰ度)大量の発汗があり,水分を補給した場合に血液の塩分濃度が低下して起こるもので,筋の興奮性が亢進して,四肢や腹筋のけいれんと筋肉痛が起こる。 (イ) 熱疲労(重症度分類Ⅱ度)脱水によるもので,全身倦怠感,脱力感,めまい,吐き気,嘔吐,頭痛などの症状が起こる。 (ウ) 熱射病(重症)(重症度分類Ⅲ度)体温調節が破綻して起こり,高体温と意識障害が特徴的である。意識障害は,周囲の状況が分からなくなる状態から昏睡まで,程度は様々である。脱水が背景にあることが多く,血液凝固異常,脳,肝,腎,心,肺などの全身の多臓器障害を合併し,死亡率が高い。 イ学校管理下における熱中症死亡事例の発生傾向(昭和50年~平成24年)(ア) 部活動の場合屋外で行うスポーツで多く発生しているが,屋内において防具や厚手の衣服を着用しているスポーツでも多く発生している。 <内訳>野球(37人),ラグビー(17人),柔道(15人),サッカー(13人),剣道(11人),山岳(9人),陸上(7人),ハンドボール(6人),バレーボール・バスケットボール(各4人),卓球・アメリカンフットボール・レスリング(各3人),ソフトボール・テニス・相撲(各2人),その他(4人) (イ ドボール(6人),バレーボール・バスケットボール(各4人),卓球・アメリカンフットボール・レスリング(各3人),ソフトボール・テニス・相撲(各2人),その他(4人) (イ) 学校行事等,部活動以外の場合長時間にわたって行うスポーツ活動に多く発生している。 <内訳>登山(8人),マラソン(4人),長距離徒歩(3人),遠足・サッカー(各2人),リレー・石段登り・農園実習・保育中(各1人)ウ熱中症対策の概要(ア) 熱中症予防運動指針(本件指針)の作成(甲7)財団法人日本体育協会は,上記イのような熱中症による死亡事故が発生していることを踏まえ,その防止を目的として,平成3年に「スポーツ活動における熱中症事故予防に関する研究班」を設置し,その研究成果を踏まえて,平成6年に本件指針を作成・発表した。 財団法人日本体育協会は,平成6年に本件指針及びこれに解説を付した「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」を発行し,平成18年6月までに2度の改訂を行い,平成18年までに約130部を発行し,同ガイドブックをもとにしたビデオも約30万本発行した。 本件指針においては,熱中症が体内の熱量に比して水分が不足することによって生じる疾患であることに鑑み,運動等を行う温度及び湿度,行う運動の内容や種類,それが身体に及ぼす影響の程度,補給する水分量などを踏まえて,その発生を未然に防止するために,スポーツ活動に携わる者がとるべき行動指針を示したものである。 (イ) 本件指針の概要(甲7)本件指針には,WBGTの温度に応じて,とるべき行動指針を定めたものであり,その概要は別紙のとおりである。 なお,本件指針には,学校現場でWBGTを測定できない場合があるこ 件指針の概要(甲7)本件指針には,WBGTの温度に応じて,とるべき行動指針を定めたものであり,その概要は別紙のとおりである。 なお,本件指針には,学校現場でWBGTを測定できない場合があることにも備えて,WBGTの温度におおよそ相当する湿球温度及び乾球温度も併記されている。 (ウ) 文部科学省及び日本体育・学校健康センターによる指導(甲20,甲21)日本体育・学校健康センター(JSCの前身)は,文部科学省企画・監修の下,熱中症対策検討委員会を組織し,学校の管理下における児童生徒等の熱中症を予防するために活用する資料として,平成15年に「熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症-」を発行し,これを都道府県及び市町村の教育委員会,国・公・私立の小学校,中学校,高校等の各学校などに配布した。 そこでは,熱中症の説明,熱中症が起こりやすい条件,熱中症予防の原則,熱中症の応急処置,学校における熱中症予防のための指導のポイント,熱中症予防と体育・スポーツ活動の進め方などを具体的かつ平易に記載し,上記イの死亡事例やその発生傾向などが紹介されている。 そのうち,「熱中症予防の原則」(p3)の項には,「1 環境条件に応じて運動する(「熱中症予防のための運動指針」を参照)」として,参考資料として掲記した本件指針を参照すべき旨が記載されるとともに,「暑い季節の運動は,なるべく涼しい時間帯に行い,運動が長時間にわたる場合には,こまめに休憩をとりましょう(30分程度に1回)」との説明がされている。 (エ) 大阪府教育委員会による指導(乙19)大阪府教育委員会は,平成19年,府立学校における熱中症対策についての調査を行い,その結果を同教育委員会委員の意見として提出した。 その概要は,a本件指針を活用するよう各学校へ指導して 乙19)大阪府教育委員会は,平成19年,府立学校における熱中症対策についての調査を行い,その結果を同教育委員会委員の意見として提出した。 その概要は,a本件指針を活用するよう各学校へ指導していること,bしかし,予防対策については十分でなく,乾球温度計及び湿球温度計の設置状況についても芳しくない状況にあったこと,c府立学校に対して熱中症予防のための具体的な取組を指示する必要があること,d本件指針を十分に活用するために,乾球温度計などの測定器の設置場所,設 置方法,測定方法及び活用方法について的確な指示を与える必要があること,などを指摘するものである。 (オ) A市教育委員会による指導(乙14~乙18)A市教育委員会学校教育推進室長は,平成22年6月25日付けで,A市立学校園長に対し,「熱中症事故及び落雷事故の防止について(通知)」を発し,熱中症対策としては,上記(イ)の「熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症-」を参考に,各学校園の実情に応じた対策を講じ,熱中症事故の防止に万全を期するようにお願いする旨を指示した(乙14)。 また,同年7月25日にも「夏季休業中の教育活動における事故防止について(通知)」を発し,熱中症事故の防止を呼び掛けた(乙15)。 そのほか,同年5~7月のA市立学校の校園長会でも,熱中症予防についての指導が繰り返し行われた(乙16~乙18)。 (カ) 被告中学校長による指導(乙19)被告中学校では,本件事故前の平成22年8月5日,被告中学校長から各教諭に対し,熱中症対策として,練習内容,健康観察,水分補給,休憩,早い対応などを指導した。 エ本件事故当時(平成22年)の温度計等の設置状況(ア) 本件事故当時,大阪府内の中学校では,本件指針を活用する前提となる乾球温度計等の 察,水分補給,休憩,早い対応などを指導した。 エ本件事故当時(平成22年)の温度計等の設置状況(ア) 本件事故当時,大阪府内の中学校では,本件指針を活用する前提となる乾球温度計等の測定器が全校に設置されている状況にはなかった。 (イ) 被告中学校においても,本件事故当時,WBGTを計測するための黒球温度計及び湿球温度計はもとより,一般の乾球温度計及び湿度計も設置されていなかった。 (2) 本件事故当日の気温等ア本件事故当日の天候は,晴れであった(甲8,弁論の全趣旨)。 イ本件事故当日の大阪府の気温及び相対湿度は,下記表のとおりであった(甲8)。 なお,相対湿度とは,当該温度下の空気中に含み得る最大限の水分量に比べて,どの程度水分を含んでいるかを示す値である。 ウ平成26年8月20日の本件体育館内のWBGT等平成26年8月20日の本件進行協議期日において,原告が持参した機器により,本件体育館の内外で行った温度,湿度及びWBGTの測定結果は,以下のとおりであった(甲31,甲32の1~3,弁論の全趣旨〔以下の測定結果及び測定条件については,被告も特に争っていない。〕)。 (ア) 平成26年8月20日午後0時48分の本件中学校敷地内(屋外)の温湿度温度:33℃,湿度:60%,WBGT:30.3℃(イ) 体育館内の温湿度a 平成26年8月20日午後1時01分本件体育館内の全ての窓,暗幕カーテンと出入口を開け,扇風機1台と冷房機2台を稼働させた状態での計測結果温度:34.5℃,湿度51.7%,WBGT29.8℃b 平成26年8月20日午後1時12分 出入口を開け,扇風機1台と冷房機2台を稼働させた状態での計測結果温度:34.5℃,湿度51.7%,WBGT29.8℃b 平成26年8月20日午後1時12分本件体育館内の全ての窓,暗幕カーテンと出入口を閉め,扇風機と冷房機を全て停止した状態での計測結果温度:35.2℃,湿度:49.6%,WBGT:30.2℃時気温(℃)相対湿度(%)11:1032.6 11:2033.0 11:3033.4 11:4032.6 11:5032.3 12:0032.2 12:1032.6 12:2034.3 12:3033.0 12:4032.6 12:5032.1 13:0033.1 13:1033.2 c 平成26年8月20日午後1時40分本件体育館内の,下部の窓及び暗幕カーテンを開け,その他の窓,暗幕カーテン及び出入口を閉め,扇風機と冷房機を全て停止した状態での計測結果温度:36.0℃,湿度:49.1%,WBGT:30.8℃エ本件事故当時の体育館内のWBGT等本件事故は,平成22年8月30日午後1時過ぎ頃に発生したものであり,上記ウと類似する条件下にあった。そのため,本件事故当時の本件体育館内のWBGT,温度及び湿度も,上記ウ(イ)c(WBGT:30.8℃,温度:36.0℃,湿度:49.1%)と同程度であったと推察される。 (この点,原告は,本件事故当時は,本件体育館内で20数名の本件バドミントン部員が運動をしていたことをもって,WBGTが31℃を超えていた旨主張するが,20数名の部員が運動することで体育館内の温度が有 この点,原告は,本件事故当時は,本件体育館内で20数名の本件バドミントン部員が運動をしていたことをもって,WBGTが31℃を超えていた旨主張するが,20数名の部員が運動することで体育館内の温度が有意に上昇するとは直ちに認め難く,後記のとおり本件事故の約30分前の休憩中は出入口,暗幕カーテン及び窓を開けていたこと(後記(3)エ)も踏まえると,本件事故当時の本件体育館内のWBGTが31℃を超えていたとまでは認め難い。)(3) 本件事故当日の練習内容その他の事実経過(甲4)ア午前11時10分原告は,部活動を開始し,体育館の外で,ランニング3往復と体操を行った。 原告は,体育館内に移動し,フットワーク4方向(左右前後)を3セット行った。この間,本件体育館の窓,暗幕カーテン及び出入口は全て開いていた。 イ午前11時45分頃C教諭は,原告ら部員に対し,5分間の休憩及び水分補給を指示し,原 告は,少し水を飲み,2,3分で練習に戻った。 この間,本件体育館の窓,暗幕カーテン及び出入口は全て開いていた。 ウ午前11時50分頃原告は,2人組のペアになって,基礎打ち(打ち合い)の練習を行った。 この間,本件体育館の下部の窓は開いていたが,バドミントンのシャトルが風で飛ばされないようにするため,その他の窓,暗幕カーテン及び出入口は閉められていた。 エ午後0時20分頃C教諭は,原告ら部員に対し,5分間の休憩及び水分補給を指示し,原告は,少し水を飲み,2,3分で練習に戻った。 この間,本件体育館の窓,暗幕カーテン及び出入口は全て開いていた。 オ午後0時25分頃原告は,シングルスの試合形式の練習(1セット10~15分)を開始し,1 で練習に戻った。 この間,本件体育館の窓,暗幕カーテン及び出入口は全て開いていた。 オ午後0時25分頃原告は,シングルスの試合形式の練習(1セット10~15分)を開始し,1試合目は主審を担当した。 この間,本件体育館の下部の窓は開いていたが,その他の窓,暗幕カーテン及び出入口は閉まっていた。 カ午後1時前頃原告は,2試合目の試合形式の練習に参加した。 原告は,その途中,地面に落ちたシャトルを左手で拾おうとした際に,これを拾い損ねることがあったが,その後も試合形式での練習を継続し,得点を得ることもできていた。 しかし,原告は,その後,再び地面に落ちたシャトルを拾い損ねたためC教諭は,不審に思い,直ちに試合を止めて,原告の様子を確認したところ,原告が,「頭が痛い。しんどい。」と訴えたため,体育館の脇に移動させて水分を取らせた。 その後,C教諭は,原告を体育館内の教官室へ移動させ,スポーツドリ ンクを飲ませるなどした。このとき,原告は,汗をかいていたものの,顔の左側が引きつっており,左足のつま先が内側に向いて,左腕も脱力し,左手の握力もない状態であった。 原告は,「大丈夫」と言って笑っていたが,上手く話せておらず,顔の左部分が上手く動いていなかったことから,C教諭は,原告を直ちに病院に連れて行くことにした。 キその後原告は,C教諭とともにタクシーでD病院を受診し,アテローム血栓性脳梗塞の診断を受け,同病院に入院した。 原告は,同病院受診時に2回ほど嘔吐したが,意識は一貫して清明であった。(乙5〈p9〉)(4) 原告の熱中症の発症原告は,上記経過において,練習開始(上記(3)ア)から本件事故(同カ)までの間に,熱中症(脱水による熱疲労。上記(1)ア(イ))を発 清明であった。(乙5〈p9〉)(4) 原告の熱中症の発症原告は,上記経過において,練習開始(上記(3)ア)から本件事故(同カ)までの間に,熱中症(脱水による熱疲労。上記(1)ア(イ))を発症していたと推認される。 (被告はこれを否認するが,a本件事故当時の本件体育館内は,WBGTが31℃に極めて近く,乾球温度は35℃を超えるような環境にあったこと,b原告は,コート内で身体を素早く動かす上,豊富な運動量を求められるバドミントンの練習を行っており,当日の練習開始から本件事故までに約2時間が経過していたこと(上記(3)),c原告には,熱中症(脱水による熱疲労)の症状とされる全身倦怠感,脱力感,頭痛,めまい,嘔吐等(上記(1)ア(イ))が認められたこと等を併せ考えると,原告は,本件事故当時,熱中症を発症していたと認めることができる。)(5) 脳梗塞ア医学的知見(甲19,甲30,乙4)(ア) 脳梗塞とは,脳の血管が詰まって血流が途絶える疾患である(甲3 0)。 (イ) アテローム血栓性脳梗塞は,脳の太い動脈に動脈硬化が起こり,血栓が発生して血管が詰まることで発症する(乙4)。 (ウ) 脳梗塞が起きると,体の左右どちらが片側に突然症状が現れる。特に多いのが,「体の片側の腕や脚が麻痺する。」,「顔がゆがむ」,「ろれつが回らないなどの言語の障害」の3つである(甲30)。 (エ) アテローム血栓性脳梗塞は,加齢に伴って発生する頻度が高まるが,特に高血圧症,糖尿病,高脂血症などの基礎疾患を有する者に好発する(乙4)。 (オ) アテローム血栓性脳梗塞は,脱水との関係が比較的強いと考えられており,夏には多くの汗をかくため,それに見合った量の水分を補給していないと,体が脱水症状に陥って,血流が悪くなったり,血栓ができ (オ) アテローム血栓性脳梗塞は,脱水との関係が比較的強いと考えられており,夏には多くの汗をかくため,それに見合った量の水分を補給していないと,体が脱水症状に陥って,血流が悪くなったり,血栓ができやすくなったりして発症する場合がある(甲19)。 イ原告の既往歴原告は,本件事故以前に,脳梗塞を発症したことはなく,アテローム血栓性脳梗塞の原因となるような高血圧,糖尿病,高脂血症等の既往歴もなかった(弁論の全趣旨)。 (6) プロテインS欠乏症(プロテインS欠損症)ア医学的知見(甲34,乙10)(ア) プロテインSは,ビタミンK依存性タンパクの1つである。 血漿中のプロテインSが量的又は質的に異常があるプロテインS欠乏症においては,プロテインCの効果及びプロテインS自体の抗凝固効果が妨げられ,種々の血栓塞栓性疾患が生じる。 プロテインS欠乏症患者におけるプロテインS血栓症発症率は,健常人の10倍程度である。 (イ) プロテインSは,ビタミンK依存性タンパクの1つであるから,ワ ーファリンなどの抗ビタミンK製剤が投与されている症例では,プロテインS欠乏症がなくとも,血漿におけるプロテインS抗原量の検査値が低下する。 イ原告のプロテインS抗原量検査値(甲22,甲23〈15枚目,19枚目〉,乙5〈p201,p203,p205〉,乙7〈p54〉,弁論の全趣旨)(ア) 平成22年9月3日(前日よりワーファリンの服用を開始)プロテインS抗原量(トータル)55%(基準値65~135%)プロテインS抗原量:47%(基準値60~150%)(イ) 平成22年9月13日(ワーファリン服用中)プロテインS活性:36%(基準値:60~ 5%(基準値65~135%)プロテインS抗原量:47%(基準値60~150%)(イ) 平成22年9月13日(ワーファリン服用中)プロテインS活性:36%(基準値:60~150%)(ウ) 平成22年10月25日(ワーファリン服用中)プロテインS抗原量(トータル):48%(基準値65~135%)プロテインS抗原量:36%(基準値:60~150%)プロテインS活性:35%(基準値:60~150%)(エ) 平成23年12月27日(ワーファリン服用中止後)プロテインS抗原量(トータル):56%(基準値:65~135%)プロテインS活性:39%(基準値:60~150%)(オ) 平成24年4月5日(ワーファリン服用中止後)プロテインS抗原量(トータル):54%(基準値:65~135%)プロテインS抗原量(フリー):46%(基準値:60~150)(カ) 平成25年8月23日(ワーファリン服用中止後)プロテインS抗原量:52%(基準値:65~135%)ウ原告の既往歴原告は,本件事故以前に,プロテインSが少量であることを原因とする血栓塞栓性疾患に罹患したことはなかった(弁論の全趣旨)。 2 争点1~3(C教諭又は被告中学校長の過失)について(1) 熱中症の発症予防に関する一般的注意義務ア被告中学校のような公立中学校の部活動は,学校教育の一環として行われる以上,学校設置者である地方公共団体は,部活動に際し,生徒の生命,身体の安全を確保するよう配慮すべき義務を負うことになる。学校設置者の上記義務の履行は,教育委員会による監督を受けつつ各学校の校長及び教員が行うことになるから,各学校の校長 活動に際し,生徒の生命,身体の安全を確保するよう配慮すべき義務を負うことになる。学校設置者の上記義務の履行は,教育委員会による監督を受けつつ各学校の校長及び教員が行うことになるから,各学校の校長及び各部活動の指導教諭は,学校設置者の履行補助者として,部活動中の生徒の生命,身体の安全確保に配慮すべき義務を負うものと解される。熱中症は,重篤な場合には死に至る疾患であることからすれば,校長及び指導教諭は,上記安全配慮義務の一環として,熱中症予防に努める義務を負うものと解される。 イところで,前記認定(1(1)ア(ウ))のとおり,熱中症は,体内の熱量に比して水分が不足することによって生じる疾患であるから,運動等を行う温度及び湿度,行う運動の内容や種類,それが身体に及ぼす影響の程度,補給する水分量などを踏まえて,その発生を未然に防止することが必要となるものと考えられる。本件指針は,上記のような諸要素を踏まえて,スポーツ活動に携わる者がとるべき行動指針を示したものであって,その内容は,熱中症予防の観点から合理性を有するものといえる。 そして,前記1(1)ウの認定事実によれば,a平成6年には,本件指針及びこれに解説を付した「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」が発行されて広く学校関係者に周知され,b平成15年には,文部科学省が監修し,日本体育・学校教育センター(JSCの前身)が作成した「熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症-」(そこには本件指針が参考資料として引用転記されている。)が発行され,これまた広く学校関係者に周知され,c平成19年には,大阪府教育委員会において,府立学校における本件指針の実施状況を調査し,温度計の設置等の具体的対策を行う必要があると の意見が表明され,d平成22年7月には,A市教育委員会から同市立学 は,大阪府教育委員会において,府立学校における本件指針の実施状況を調査し,温度計の設置等の具体的対策を行う必要があると の意見が表明され,d平成22年7月には,A市教育委員会から同市立学校の校園長に対し,上記bを引用しての熱中症対策に万全を期するようにとの通知がされ,同年5~7月の同校園長会においても,同旨の指導が行われていたことが認められる。 これらの事情を踏まえれば,平成22年8月の本件事故当時,部活動に関わる指導教諭及びこれを指導する校長は,部活動中の生徒の生命,身体の安全確保に配慮すべき義務の一環として,生徒の熱中症発症を予防すべく,本件指針に準拠し,その趣旨を踏まえて熱中症予防策をとるべき法的義務を負っていたものと解するのが相当である。 (2) 本件における具体的注意義務アところで,本件指針は,WBGTの数値を主たる基準として,部活動等の指導者がとるべき対応についての指針を示すものである。したがって,本件指針の趣旨を踏まえて熱中症予防を実現する措置をとるには,その前提となるWBGT又はこれに相当する湿球温度又は乾球温度(以下「WBGT等の温度」という。)を把握することがまずもって必要となり,そのためには,部活動を行う室内又は室外に黒球温度計,湿球温度計又は乾球温度計のいずれかを設置し,各指導教諭がWBGT等の温度を把握することができる環境を整備することが不可欠であったといえる。したがって,被告中学校において部活動の指導教諭を監督する立場にあった被告中学校長には,上記温度計を設置する義務があったというべきである。 イまた,本件指針の趣旨を実現するには,各部活動の指導教諭が本件指針の趣旨を理解し,これを実際の部活動の各場面・状況に応じて適切に活用し,熱中症予防のための行動をとることが必要となるから,被告中 イまた,本件指針の趣旨を実現するには,各部活動の指導教諭が本件指針の趣旨を理解し,これを実際の部活動の各場面・状況に応じて適切に活用し,熱中症予防のための行動をとることが必要となるから,被告中学校長には,部活動の指導教諭に対し,本件指針の趣旨と内容を周知させ,これに従って行動するように指導する義務があったというべきである。 (3) 注意義務違反 アしかるに,前記認定(1(1)エ(イ))のとおり,本件事故当時,被告中学校の本件体育館には,黒球温度計及び湿球温度計はもとより,一般の乾式温度計も一切設置されていなかったのであり,本件指針の趣旨に従って熱中症の予防に配慮する前提となるWBGT等の温度を認識することのできる環境が全く整備されていなかったことになるから,被告中学校長が上記(2)アの義務を怠っていたことが明らかである。 イまた,前記認定(1(1)ウ(カ))のとおり,被告中学校では,本件事故前の平成22年8月5日,被告中学校長から各教諭に対し,熱中症対策として,練習内容,健康観察,水分補給,休憩,早い対応などについての指導があったと認められるものの,上記アのとおり,被告中学校には乾式温度計すら設置されていなかったことを踏まえると,WBGT等の温度を基本として対応を検討すべきものとする本件指針の趣旨と内容が周知・徹底され,これに従って行動するよう指導されたとは考え難く,それに及ばない一般的指導がされたに止まったものと認められるから,上記(2)イの義務をも怠ったものというべきである。 ウこれに対し,被告は,本件事故当時,多くの中学校では,温度計を必要な場所すべてに置いて厳密な温度の確認による管理を行うとの実態はなかったもので,それを行うべきものとするのは理想論に止まるなどとして,被告中学校長には前記各義務 当時,多くの中学校では,温度計を必要な場所すべてに置いて厳密な温度の確認による管理を行うとの実態はなかったもので,それを行うべきものとするのは理想論に止まるなどとして,被告中学校長には前記各義務違反がなかった旨主張する。 しかし,前記説示したとおり,平成22年までに,本件指針に準拠した熱中症対策を行うべきことが広く周知され,教育関係者において負担すべき一般的義務となっていたと解される以上,多くの中学校における熱中症対策が不十分であったからといって,上記義務が軽減されるいわれはない。 確かに,部活動の現場で,温度を管理しながら運動の可否・内容を決することには,煩雑な部分があることは否定し得ないが,だからといって,児童生徒の生命・身体の安全を疎かにすることがあってはならず,できる 限り危険の発生を回避すべく,温度管理を基本としながら,冷房機や冷風機などを用いて極力気温を下げたり,風を循環させたりする工夫をした上で,それでも気温が高い場合には,運動を回避又は軽減したり,休憩や水分・塩分の補給等に慎重な配慮を巡らせる等のきめ細かい対応を検討しつつ,部活動をできる限り安全に実施することが求められていたものというべきであるから,これらの工夫をすることなく,現状のまま部活動を実施することもやむを得ないという被告の主張は採用できない。 エ以上のとおり,被告中学校長には,上記(2)の各注意義務を怠った過失があるというべきである。 (4) 小括(争点1~3の結論)ア以上によれば,本件事故当時の本件体育館内のWBGTが31℃を超えていたとは断定できないから,これを前提とする争点1についての原告の主張は理由がない。 イまた,C教諭には,本件体育館内に温度計の設置がない状況下で,本件指針の趣旨・内容を踏まえた運動の中止又は軽減等の判 断定できないから,これを前提とする争点1についての原告の主張は理由がない。 イまた,C教諭には,本件体育館内に温度計の設置がない状況下で,本件指針の趣旨・内容を踏まえた運動の中止又は軽減等の判断を適切に行うことは困難であったと認められるから,C教諭が争点2の具体的注意義務を負っていたとは解されず,争点2についての原告の主張も理由がない。 ウこれに対し,被告中学校長には,上記(3)の過失があるといえるから,争点3についての原告の主張は理由がある(以下,上記(3)の過失を「本件過失」という。)。 3 争点4(本件過失と本件脳梗塞との間の因果関係)及び争点5(素因減額の可否及び程度)について(1) 本件過失と熱中症との間の因果関係被告中学校長が上記2(3)の義務を履行することにより,WBGT又は気温を計測できる温度計を設置し,かつ,本件指針の趣旨・内容を踏まえた対応を行う旨の指導を行っていたとすれば,C教諭は,本件指針の趣旨・内容を 踏まえ,本件事故当日の練習時に,本件体育館内の温度を確認し,運動を中止するか又は軽めの運動に止める旨の判断をしたであろうと推察される。 すなわち,前記認定(1(2))の事実によれば,本件事故当時,WBGTが31℃を超えていたとまでは断定できないものの,30.2℃ないし30. 8℃といった31℃に極めて近い程度であったことが推認される。また,仮に,本件体育館に乾式温度計のみが設置されていた場合には,平成26年8月20日の計測結果(35.2℃ないし36.0℃)から推して,WBGTに換算すると31℃を超えていると判断された可能性が高かったといえる。 そうすると,C教諭は,本件事故当日,窓とカーテンを閉めて練習を開始した午前11時50分頃(上記(3)ウ)からそれほど間がない時点で,WBGT 31℃を超えていると判断された可能性が高かったといえる。 そうすると,C教諭は,本件事故当日,窓とカーテンを閉めて練習を開始した午前11時50分頃(上記(3)ウ)からそれほど間がない時点で,WBGTが31℃を超えるか又はそれに極めて近い状況にあることを認識し,本件指針の趣旨・内容を踏まえて,練習の中止又は内容の軽減を検討・実施したものと考えられるから,少なくとも本件事故前に実際に行った基礎打ち及び試合形式の各練習を平常どおり行うことはなかったはずであり,そうであれば,原告が熱中症にり患することもなかったものと推察される。 このように,被告中学校長が上記(3)の各義務を履行していれば,本件事故前にしたものと同様の通常の練習をしなかった結果,原告が熱中症にり患することもなかったと考えられるから,上記義務違反の過失と原告が熱中症にり患したこととの間には因果関係があると認められる。 (2) 熱中症と本件脳梗塞との間の因果関係前記認定のとおり,a原告は,本件事故当時,熱中症による脱水症状を来していたこと(前記1(4)),b体が脱水症状に陥ると,アテローム血栓性脳梗塞の原因となる血栓ができやすくなること(前記1(5)ア),c原告は,若年であり脳梗塞の原因となる高血圧,糖尿病等の基礎疾患を有していないこと(前記1(5)イ),d原告のプロテインSの数値は低値であるものの,それにより本件事故以前に脳梗塞等の血栓塞栓性の疾患を生じたことはなかった こと(前記1(6)イ,ウ)などからすると,本件脳梗塞は,本件事故当時の熱中症による脱水症状がなければ生じることはなかったものと認められる。 したがって,争点3における過失と本件脳梗塞の発症との間には因果関係があると認められる。 (3) 原告の素因の寄与とその割合(素因減額の可否及び程度) 生じることはなかったものと認められる。 したがって,争点3における過失と本件脳梗塞の発症との間には因果関係があると認められる。 (3) 原告の素因の寄与とその割合(素因減額の可否及び程度)アしかし他方で,前記認定のとおり,a原告は本件事故当時,一貫して意識は清明であり,血液の凝固異常が生じるほどの重度の熱中症(熱射病)であったとはいえないこと(前記1(1)キ),b本件事故当時,原告が行っていたバドミントンは,屋外での運動や厚手の衣服等を着用して行う剣道や柔道等に比べ,高度の脱水症状が生じやすいものではないこと(前記1(1)イ(ア)),c本件事故が発生したのは,練習開始から約2時間後であり,その間に2回の休憩があり,その際には一定程度の水分補給をしていたこと(前記1(3)),dそれにもかかわらず,本件脳梗塞を発症し,その程度は入院約3か月,リハビリを含めた通院約8か月を要するものであったこと(前記1(3)キ,前提事実2(3),(4)),e原告のプロテインSの抗原量は基準値を下回る状態(プロテインS欠乏症)であったところ(前記1(6)イ),プロテインS欠乏症の患者は,血液の凝固による血栓塞栓性疾患が生じ易く,その発症率は健常者の10倍程度とされていること(前記1(6)ア(ア))などの事実等が認められる。 イこの点,原告は,平成22年の血液検査時のプロテインSの数値(前記1(6)イ)は,当時服用していたワーファリンの影響によるものであって参考にならないこと,平成24年の血液検査での値は基準値を下回るが,小児の場合には成人に比べて低値となることがある上,下回る程度もわずかであることなどを指摘し,原告はプロテインS欠乏症ではなく,これを原告の素因として考慮すべきではない旨主張する。 しかし,a原告は,平成23年9月5日を最後に となることがある上,下回る程度もわずかであることなどを指摘し,原告はプロテインS欠乏症ではなく,これを原告の素因として考慮すべきではない旨主張する。 しかし,a原告は,平成23年9月5日を最後にワーファリンの服用を 中止した後の,平成23年12月27日,平成24年4月5日及び平成25年8月23日に実施された各血液検査によれば,いずれも原告のプロテインSの数値は基準値の下限を明らかに下回っていること(前記1(6)イ(エ)~(カ)),b小児の場合に基準値を引き下げて考える立場によったとしても,プロテインSのフリー抗原量は基準値を下回っていること(甲36の1・2),c医師の所見においても,上記抗原量は正常とはいえず,それが脳梗塞の原因であった可能性があると指摘されていること(甲36の2)に照らすと,原告がプロテイン欠乏症にり患しており,それが脳梗塞の発症に影響を与えたことは否定できないというべきであるから,上記認定を左右しない。 ウ上記ア,イのほか,前記(2)の事実等も併せ考慮すれば,原告は,もともと通常人に比べて血液が凝固し易いという身体的素因(プロテインS欠乏症)を有していたところに,本件過失によって生じた熱中症による脱水症状のため血栓ができ易くなったことが相まって,本件脳梗塞を発症したものと推認され,原告のプロテインS欠乏症が,本件脳梗塞の発症及びその重篤化に相当大きく寄与したものとうかがわれるところ,前記の各事実等を総合考慮すれば,その寄与の程度は70%と認めるのが相当である。 3 争点6(原告の後遺障害の程度)について(1) 原告は,後遺障害等級7級に相当する左半身の麻痺の後遺障害が残っており,仮に上肢だけをみても後遺障害等級9級に相当する障害が残っている旨主張している。 (2) 掲記の証拠等及び弁論の全趣 (1) 原告は,後遺障害等級7級に相当する左半身の麻痺の後遺障害が残っており,仮に上肢だけをみても後遺障害等級9級に相当する障害が残っている旨主張している。 (2) 掲記の証拠等及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実等が認められる。 ア原告は,本件事故当日の平成22年8月20日から同年12月3日まで入院し,退院後リハビリ治療を行い,D病院のK医師から,平成23年8月13日で症状固定との診断を受けた(前提事実2(3),(4),甲5)。 イ K医師は,平成23年10月4日時点の原告の症状につき,障害名を「左 不全片麻痺」,総合所見を「左上下肢の軽度の障害」,参考となる経過等として「リハビリにて左不全片麻痺軽快,mRS=2まで回復す。発症前に行っていたバトミントンができない。」としている(乙5〈p232〉)。 ウ K医師は,平成24年1月17日の最終受診時の原告の症状等を「軽度左不全片麻痺があるが,バドミントン部の活動もできている。」としている(乙2の1・2)。 エ EクリニックのL医師は,平成24年8月31日の最終受診時の原告の症状等を「軽度の左半身の不全麻痺」としている(乙3の1・2,乙6〈p6〉)。 オ原告は,平成22年12月3日の退院から間もなくして,本件バドミントン部に復帰し,中学3年生の6月まで部活動を継続し,中学3年時の地区大会では,2,3人と試合をし,ブロック内で優勝した。そのほか,体育の授業,運動会,スキー合宿,修学旅行等にも参加した(原告本人)。 カ原告は,平成27年8月の時点では,雨の日に右手で傘を持ち,左手でハンドルを握って,自転車の運転をすることができる状態にある(原告本人)。 (3) 以上の事実等を踏まえて検討する。 ア左下肢の後遺障害原告は,左足のつま先に力を入れることができず, 左手でハンドルを握って,自転車の運転をすることができる状態にある(原告本人)。 (3) 以上の事実等を踏まえて検討する。 ア左下肢の後遺障害原告は,左足のつま先に力を入れることができず,履いていたスリッパが脱げたり,何もないところで躓いたりする旨主張し,原告本人及び同法定代理人の供述及び陳述書(甲33,甲37)には,これに沿う部分がある。 しかし,原告は,俊敏なフットワークが要求されるバドミントンの部活動を行い(上記(2)ウ,オ),地区大会のブロック内で優勝したこともあり(同オ),また,片手ハンドルで自転車に乗ることもできる(同カ)というのであるから,左下肢の機能が損なわれているとは認め難く,この点に後 遺障害があると評価することはできない。 イ左上肢の後遺障害原告は,左上肢の麻痺が顕著であり,後遺障害等級9級に相当する障害が残存していると主張し,左手に震えの症状が出ることがあるため,服の着替えや食事の際には,右手のみで行っている状態にあると供述している(原告本人)。 しかし,原告の供述によっても,左手を使った作業自体ができないわけではなく,主として利き手である右手を使って日常生活を送っているというものとうかがわれる上,危険が伴う自転車の運転を左手のみで行うことができるというのである(上記(2)カ)から,その機能は相当程度維持されているというべきである。 これに,上記(2)イ~エのとおり,医師らが原告の左不全片麻痺の程度を軽度であると診断していることを併せれば,原告の左上肢の後遺障害の程度は,それにより服することができる労務が相当な程度に制限されるものに当たるほど重いとはいえず,指先などの局部に頑固な神経症状を残すにとどまるものとして,後遺障害等級12級に該当するものと認めるのが相当である。 服することができる労務が相当な程度に制限されるものに当たるほど重いとはいえず,指先などの局部に頑固な神経症状を残すにとどまるものとして,後遺障害等級12級に該当するものと認めるのが相当である。 (4) 小括以上によれば,争点6についての原告の主張は,上記の限度で理由がある。 4 争点7(原告の信義則違反)の主張について(1) 前提事実4(5)のとおり,学校の設置者が損害賠償責任を負う場合において,免責特約付きの災害共済給付契約に基づきJSCが給付を行ったときは,その価額の限度で損害賠償責任を免れることができる。その反面,学校の設置者が損害賠償責任を負う場合に,免責特約付きの災害共済給付契約に基づき給付が行われる前に,学校の設置者から児童生徒等に対して損害賠償金が支払われたときは,学校の設置者からJSCに対して災害共済給付金の支払請 求ができる旨の定めがないため,学校の設置者が免責特約を活用することができない。 被告は,以上を踏まえ,原告がJSCに対して災害共済給付契約に基づく障害見舞金の支払請求を正当な理由もなく行わないことは,被告が損害賠償責任を免れる利益を奪うものであって,信義則に反すると主張するものと解される。 (2) 確かに,被告には,免責特約の付された災害共済給付契約に基づき,JSCが災害共済給付を行った限度で学校の設置者の損害賠償責任を免れることのできる利益があり,これは先にJSCから児童生徒等に対する給付が行われる場合にだけ享受できるものであるから,被告が原告に対し障害見舞金の支払請求をするよう求めたことには,一定の合理性があるということができる。 しかし他方で,上記免責の利益は,免責特約を付した災害共済給付契約に限って認められるもので,制度上当然に享受できる利益ではないこと,その利益 めたことには,一定の合理性があるということができる。 しかし他方で,上記免責の利益は,免責特約を付した災害共済給付契約に限って認められるもので,制度上当然に享受できる利益ではないこと,その利益の確保を重視するのであれば,制度上,損害賠償の支払が先行した場合にも,学校の設置者にJSCへの災害共済給付の支払請求を認めるはずのところ,そのようにはなっていないことからすれば,上記免責の利益は,災害共済給付制度上,あくまで副次的なものと位置づけられていると理解されるところである。したがって,本来,自己の権利をどのように行使するかは権利者の選択に委ねられるものであるところ,センター法がその原則を修正してまで上記免責の利益を保護しようとしているとは解されないから,上記免責の利益を重視して,原告の行動を信義則違反に当たるとみるのは困難である。 (3) 被告は,そのほかにも,原告が二重に利得することになるのは不当であること,被告の行動が矛盾挙動に当たることなども指摘する。 しかし,原告が,本件で後遺障害に係る損害賠償請求を認容された後に, 障害見舞金の支払請求をしてもそれが認容されることはないし,仮に認容されたとすれば不当利得として返還すべきものとなるから,いずれにしても二重に利得する余地はない。また,症状固定を前提とする後遺障害に係る損害賠償請求と,症状固定がないことを前提とする医療費の請求は,矛盾する行動であるが,既に症状固定後であることが明らかな本件において,JSCが医療費の請求を認容するかは疑問であるし,仮に認容されることがあっても,それが被告に不利益をもたらすものではないから,原告の本件請求を制限する根拠となるものとは解されない。 (4) 以上のとおり,原告には本件請求を制限されるほど信義則に反する事情があるとはいえないか それが被告に不利益をもたらすものではないから,原告の本件請求を制限する根拠となるものとは解されない。 (4) 以上のとおり,原告には本件請求を制限されるほど信義則に反する事情があるとはいえないから,争点7についての被告の主張は理由がない。 5 争点8(損害額)について以上の認定・判断のほか,掲記の証拠によれば,認定できる原告の損害額,並びに,素因減額及び損益相殺の結果は,以下のとおりである。 (1) 治療費 0円ア本件事故による原告の治療費は,総額29万0760円である(甲12~甲18)ところ,素因減額を行うと,8万7228円となる。 29万0760円(総額)×0.3(素因減額)=8万7228円イ原告は,JSCから,本件事故に関連する平成22年8月分~平成23年5月分の医療費として,58万0950円(その内訳は,治療費43万5713円,療養に伴って要する費用14万5237円)の支給を受けた(乙25〈p2〉,調査嘱託の結果)。 ウ上記アは,上記イのうち治療費の受給によって損益相殺されるから,認容すべき治療費分の損害額は0円となる。 (2) 文書料 6681円原告の負担した文書料は2万2270円である(甲12の2・5・6,甲16の12)ところ,素因減額を行うと,6681円となる。 2万2270円×0.3(素因減額)=6681円(3) 入院雑費及び付添看護費 11万2163円ア入院雑費 4万3200円入院雑費は1日1500円が相当であるから,これに入院日数を乗じた上,素因減額を行うと,以下のとおり4万3200円となる。 1500円×96日(入院日数)×0.3(素因減額)=4万3200円イ付添看護費 21万4200円原告は,本件事故当時12歳であ 上,素因減額を行うと,以下のとおり4万3200円となる。 1500円×96日(入院日数)×0.3(素因減額)=4万3200円イ付添看護費 21万4200円原告は,本件事故当時12歳であったこと,左片麻痺の障害が生じたことなどを踏まえると,入院及び通院の際には,家族による付添が必要であったと認められる。 付添看護費は,入院1日6000円,通院1日3000円が相当であるから,これに入通院日数を乗じた上,素因減額を行うと,以下のとおり21万4200円となる。 6000円×96日(入院日数)+3000円×46日(通院日数))×0.3(素因減額)=21万4200円ウ損益相殺後の認容額 11万2163円上記(1)イのとおり,原告は,JSCから,療養に伴って要する費用として14万5237円の給付を受けているから,前提事実4(5)アの規定に基づき,上記ア及びイの合計額から,上記給付額が控除されるものと解される。 したがって,控除後の認容額は,11万2163円となる。 4万3200円+21万4200円-14万5237円=11万2163円(4) 交通費 58円原告主張の通院交通費は,弁論の全趣旨からそのとおり認められるところ, 素因減額を行うと,58円となる。 1km当たりのガソリン代15円×13km(原告の自宅からI医療センターまでの距離)×0.3(素因減額)=58円(5) 後遺障害逸失利益 212万7909円ア基礎収入額 355万9000円原告は,症状固定時(平成23年)13歳であったから,基礎収入は,平成23年女性労働者学歴計全年齢平均賃金により,355万9000円と認める。 イ労働能力喪失率 14%原告には後遺障害等級12級 状固定時(平成23年)13歳であったから,基礎収入は,平成23年女性労働者学歴計全年齢平均賃金により,355万9000円と認める。 イ労働能力喪失率 14%原告には後遺障害等級12級の後遺障害が残存しているから,労働能力の14%を就労可能期間にわたって喪失したと認められる。 ウライプニッツ係数 14.2356本件事故から就労可能な67歳までのライプニッツ係数は,以下のとおり,14.2356である。 18.5651(67歳までのライプニッツ係数)-4.3295(18歳に達するまでのライプニッツ係数)=14.2356エ後遺障害逸失利益の額 212万7907円上記ア~ウを乗じた上,素因減額を行えば,逸失利益の額は,次のとおり212万7907円となる。 355万9000円×0.14×14.2356×0.3(素因減額)=212万7909円(6) 慰謝料 150万円ア入通院慰謝料 63万円原告の入院期間は96日(約3か月),通院期間は平成22年12月17日~平成23年8月12日(約8か月),通院日数は46日であるから,入通院慰謝料は210万円が相当である。これに素因減額を行うと,認容額 は63万円となる。 210万円×0.3(素因減額)=63万円イ後遺障害慰謝料後遺障害等級12級の損害に相当する後遺障害慰謝料は290万円が相当である。これに素因減額を行うと,認容額は87万円となる。 290万円×0.3(素因減額)=87万円(7) 上記(1)~(6)の合計額 374万6811円(8) 弁護士費用 37万円本件における立証の難易,認容額等からすると,弁護士費用としての損害額は37万円が相当である。 (9) 請求可能な損害額 計額 374万6811円(8) 弁護士費用 37万円本件における立証の難易,認容額等からすると,弁護士費用としての損害額は37万円が相当である。 (9) 請求可能な損害額 411万6811円上記(7)と(8)の合計額は,411万6811円となる。 6 結論以上によれば,原告の請求は,411万6811円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成25年6月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条本文,61条を,仮執行宣言につき同法259条1項を,仮執行免脱宣言につき同条3項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第20民事部 裁判長裁判官野田恵司 裁判官平野貴之 裁判官福本晶奈
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