平成23(行ウ)15 行政情報一部公開決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年3月29日 高知地方裁判所
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判決文本文6,333 文字)

- 1 - 主文 1 処分行政庁が原告に対し平成23年7月22日付け23重み第30号をもってした行政情報一部公開決定のうち,別紙1及び別紙2の「非公開部分」を非公開とした部分(平成24年2月6日付け23重み第67号をもってした行政情報一部公開決定処分の変更決定により非公開理由が変更されている部分を含む。)を取り消す。 2 処分行政庁が原告に対し平成23年7月22日付け23保総第311号をもってした行政情報一部公開決定のうち,別紙3の「非公開部分」を非公開とした部分を取り消す。 3 処分行政庁が原告に対し平成23年7月22日付け23高保生第264号をもってした行政情報一部公開決定のうち,別紙4の「非公開部分」を非公開とした部分を取り消す。 4 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の請求主文と同じ第2 事案の概要 1 事案の要旨原告が,処分行政庁に対し,高知市行政情報公開条例(以下「本件条例」という。)に基づき,①平成22,23年度の都市整備公社経常経費予算見積書,②総合あんしんセンターに入居している課の予算調書(査定前及び査定後。いずれも業務委託経費に関する部分〔保健総務課分〕),③平成22,23年度の生活食品課業務委託予算見積書(査定前及び査定後)に係る行政情報の公開を請求したところ(以下,これらを併せて「本件情報公開請求」という。),処分行政庁は,それぞれ,その一部のみを公開する決定をした(主文1~3項記載の各決定。以下,これらを併せて「本件各決定」という。)。本件各決定の非公- 2 -開部分(現時点においても非公開の部分に限る。)は,それぞれ,別紙1~4の「非公開部分」に記載のとおり(以下,別紙ごとにそれぞれ「本件非公開部分①」~「本件非公開部 。本件各決定の非公- 2 -開部分(現時点においても非公開の部分に限る。)は,それぞれ,別紙1~4の「非公開部分」に記載のとおり(以下,別紙ごとにそれぞれ「本件非公開部分①」~「本件非公開部分④」といい,これらを併せて「本件各非公開部分」という。)であり,非公開理由は,いずれも,本件条例9条6号所定の非公開情報に該当するというものであった(なお,本件非公開部分②については,平成24年2月6日付け23重み第67号をもってした行政情報一部公開決定処分の変更決定により,非公開理由が本件条例9条3号所定の非公開情報に該当すると変更されている。)。 本件は,原告が,本件各非公開部分は,本件条例9条所定の非公開情報に該当しないと主張して,本件各決定のうち,本件各非公開部分を非公開とした部分の取消しを求めている事案である。 2 前提となる事実(証拠等の記載のあるもの以外は争いがない。)(1) 本件条例の規定(甲5)本件条例9条本文,3号,6号の規定は,別紙5「高知市行政情報公開条例」のとおりである。 (2) 当事者ア原告は,高知市民である。 イ処分行政庁は,本件条例の実施機関である。 (3) 本件各非公開部分の内容本件各非公開部分の内容は,被告が外部に業務委託している業務について,その業務委託料の予算見積額ないしこれが判明し得る金額,又は,被告が財団法人高知市都市整備公社(被告が全額出資する出資法人。以下「都市整備公社」という。)に業務委託し,さらに都市整備公社が外部に業務委託している業務について,都市整備公社が外部に業務委託をする場合の業務委託料の予算見積額ないしこれが判明し得る金額である。 (4) 被告の業務委託に係る契約事務等(乙3,4,弁論の全趣旨)- 3 -ア被告の本件各非公開部 外部に業務委託をする場合の業務委託料の予算見積額ないしこれが判明し得る金額である。 (4) 被告の業務委託に係る契約事務等(乙3,4,弁論の全趣旨)- 3 -ア被告の本件各非公開部分に係る業務委託の方法及び契約金額の決定方法被告は,本件各非公開部分に係る業務委託を,指名競争入札又は随意契約(複数の業者から見積りをとり,そのうちの一者と契約する競争的随意契約の場合と,予め特定された一者と交渉・契約する特命随意契約の場合がある。)の方法により行う。 被告は,指名競争入札や競争的随意契約では,予め設定する予定価格の範囲内で最も安価な見積金額を提示した業者と,その業者が提示した金額で契約を締結する。特命随意契約では,特定の契約相手方業者に見積金額を提示させ,その金額が予定価格の範囲内になったときに,同額で契約を締結する方法と,その業者と協議・交渉を行い,契約金額を決定する方法がある。 イ予定価格について被告は,指名競争入札と随意契約のいずれの場合にも,契約を締結する際には,予定価格を設定する。 予定価格の算定は,業者から徴収する参考見積額を基にする方法(なお,本件各非公開部分に係る特命随意契約については,当該契約相手方業者のみから参考見積額を徴収している。),建設工事に準じて労務単価や経費等の積み上げによって積算するなどの方法による。 また,予定価格は,予算額の範囲内で設定する。 ウ予算額,予算見積額について被告は,予算額を,事業担当部署による予算見積,予算要求,その後の財政部局による予算査定を経て決定する。 事業担当部署における予算要求のための予算見積は,業者から徴収した参考見積額を基にする方法,建設工事に準じて労務単価や経費等の積み上げによって積算 財政部局による予算査定を経て決定する。 事業担当部署における予算要求のための予算見積は,業者から徴収した参考見積額を基にする方法,建設工事に準じて労務単価や経費等の積み上げによって積算するなどの方法による。このようにして見積もられた額が,予算要求額となり,財務部局での予算査定を経て予算額として決定される。 エ被告における予定価格の公開について- 4 -被告は,工事請負契約や測量・設計業務委託契約以外の業務委託契約においては,契約締結後であっても予定価格の公開は行っていない。 ただし,指名競争入札の場合は,入札額,契約金額,契約締結先などを,随意契約の場合も,見積金額,契約金額,契約締結先などを,それぞれ事後公開している。 (5) 都市整備公社の業務委託に係る契約事務等について(乙3)都市整備公社の業務委託に係る契約事務や予算の調整も,基本的には被告の方法に準じて行われている。 (6) 本件訴訟に至る経緯等ア原告は,平成23年7月8日,処分行政庁に対し,本件条例に基づき,本件情報公開請求をした。 イ処分行政庁は,同月22日,本件情報公開請求の対象となる行政情報のうち,本件各非公開部分等を公開することにより,被告の契約事務の公正かつ適正な遂行に支障を生じる(本件条例9条6号)という理由で,これらの部分を非公開とし,そのほかの部分を公開するとの行政情報一部公開決定をした(本件各決定)。 ウ原告は,同年9月7日,本件訴えを提起した。 エ処分行政庁は,平成24年2月6日,23重み第67号をもってした行政情報一部公開決定処分の変更決定により,本件非公開部分②について,非公開理由を,これを公開することにより,都市整備公社の競争上及び事業運営上の正当な利益を侵害する(本 3重み第67号をもってした行政情報一部公開決定処分の変更決定により,本件非公開部分②について,非公開理由を,これを公開することにより,都市整備公社の競争上及び事業運営上の正当な利益を侵害する(本件条例9条3号)おそれがあるという理由に変更した(なお,処分行政庁は,このほかにも数回にわたり公開部分を拡張する変更決定をしているが,本件訴え〔これらの変更決定を踏まえた現時点における非公開部分の公開を求めるもの〕と直接の関係がないので,記載を省略する。)。 3 本件の争点- 5 -本件各非公開部分がそれぞれ本件条例9条所定の非公開情報に該当するか否か。 4 争点についての当事者の主張の要旨(1) 本件非公開部分①,③,④について【被告の主張の要旨】別紙1,3,4の「非公開理由」に記載のとおり(いずれも同じ内容)。 【原告の主張の要旨】ア本件条例9条6号に該当するためには,行政情報を公開することによる事務への著しい支障が,具体的かつ客観的に認められることが必要であると解されるが,被告は,その抽象的な支障を主張するにとどまる。 イ高知市総務部契約課の公表資料によれば,高知市の業務委託のほとんどについて,前年度契約金額や参考見積額により予定価格が決定されている。そして,業務委託に係る契約金額は公開されているのであるから,業務委託を受けようとする業者らは,これを基に今後の予定価格を推測できる。また,高知県に対する情報公開請求においては,本件同様の予算調書等が全て公開されている。 以上によれば,本件で公開を求めている業務委託の予算見積額等を事後公開することにより,翌年度以降の契約金額が高止まりになるなど,被告の事務に著しい支障が生じるとはいえない。 ウしたがって,本件非公開部分①,③,④は,本件条例9条6号に該 託の予算見積額等を事後公開することにより,翌年度以降の契約金額が高止まりになるなど,被告の事務に著しい支障が生じるとはいえない。 ウしたがって,本件非公開部分①,③,④は,本件条例9条6号に該当しない。 (2) 本件非公開部分②について【被告の主張の要旨】別紙2の「非公開理由」に記載のとおり。 【原告の主張の要旨】ア本件条例9条3号は,法人等の正当な利益が侵害されると認められる具体- 6 -的かつ客観的な理由が必要であると解されるが,被告はその抽象的なおそれを主張するにとどまる。 イまた,都市整備公社は,被告が全額出資する公的法人であるから,同号の予定する通常の「法人」と同列に扱うことは適切ではない。さらに,都市整備公社も本件条例と同水準の情報公開規程を定めており,業務委託に係る契約金額等については,すでに情報公開請求に基づき公開されている。 以上によれば,上記(1)と同様の理由で,本件非公開部分②を公開にすることにより,都市整備公社の正当な利益が害されるとはいえない。 ウしたがって,本件非公開部分②は,本件条例9条3号に該当しない。 第3 当裁判所の判断 1 本件非公開部分①,③,④について被告は,本件非公開部分①,③,④(業務委託料の予算見積額等)が公開された場合には,基本的に同一の仕様で毎年継続している業務委託について,業者において,翌年度以降の契約締結時に,同価格を基に予定価格を推測することが容易となり,見積りを行う努力が阻害され,また,契約金額が高止まりになり,契約事務に著しい支障が生じるおそれがあるなどと主張する。 しかし,前提となる事実,証拠(甲8,乙3,4)と弁論の全趣旨によれば,高知市の業務委託のほとんどについて,前年度契約金額や参考見積額により予定価格が決定されて 生じるおそれがあるなどと主張する。 しかし,前提となる事実,証拠(甲8,乙3,4)と弁論の全趣旨によれば,高知市の業務委託のほとんどについて,前年度契約金額や参考見積額により予定価格が決定されていること,業務委託に係る契約金額等は事後公開されていること,本件各非公開部分に係る業務委託は,基本的に同一の仕様で毎年継続していることが認められる。そうすると,業務委託を受けようとする業者らは,現状においても,これまでの契約金額等を分析することによって,翌年度以降の予定価格を相当程度推測することができるのであり,これに加えて予算見積額等を事後公開することにより,上記推測の精度にどの程度の差異が生じ得るのか必ずしも明らかではない。 前提となる事実(4)アのとおり,業務委託を指名競争入札ないし競争的随意契- 7 -約の方法により行う場合には,複数の業者に見積金額を提示させたうえで,予定価格の範囲内で最も安価な見積金額を提示した業者と,その業者が提示した金額で契約を締結するのであるから,これが適正に実施される限りは,競争原理が働くというべきであって,仮に予算見積額等が事後公開されたとしても,契約金額が高止まりになるとはいい難い。 また,前提となる事実(4)アのとおり,業務委託を特命随意契約の方法により行う場合には,特定の契約相手方業者から徴収した参考見積額等を基にして予定価格や予算見積額等を設定するというのであるから,そもそも予定価格や予算見積額等自体が当該参考見積額に依存しているというべきであって,その事後公開により格別の弊害が生じるとは考え難い。 さらに,高知県に対する情報公開請求においては,本件同様の予算調書等が全て公開されているほか(甲20〔枝番含む。以下同じ〕,28~34),高知県外のいくつかの中核市において,業務委託に係る予定価 さらに,高知県に対する情報公開請求においては,本件同様の予算調書等が全て公開されているほか(甲20〔枝番含む。以下同じ〕,28~34),高知県外のいくつかの中核市において,業務委託に係る予定価格が事前公開ないし事後公開されている(乙1)。このことも,他の公共団体に関する事情ではあるものの,予算見積額等を事後公開することにより格別の弊害が生じるとは認められないことの一事情といえる。 以上によれば,本件非公開部分①,③,④を事後公開することにより,被告の今後の同種の契約事務について,新たに,契約金額が高止まりになるなど,著しい支障が生じるとは認められない。 したがって,本件非公開部分①,③,④が本件条例9条6号に該当すると認めることはできないから,本件各決定のうち,同部分を非公開とした部分は違法である。 2 本件非公開部分②について被告は,本件非公開部分②について,本件条例9条3号の「法人情報」に該当するうえ,これを公開することにより,本件非公開部分①,③,④を公開する場合と同様に,都市整備公社の業務委託に係る契約事務等の運営上の不利益- 8 -が生じるなどと主張する。 しかし,前提となる事実,証拠(甲27,35~39,乙3)と弁論の全趣旨によれば,都市整備公社の業務委託に係る契約事務や予算の調整も,基本的には被告の方法に準じて行われていること,都市整備公社の業務委託に係る契約金額等も事後公開されていることが認められる。 そうすると,上記1と同様の理由で,本件非公開部分②を事後公開することにより,都市整備公社の今後の同種の契約事務について,新たに,契約金額が高止まりになるなど,著しい支障が生じるとは認められない。 そして,本件において,そのほかに,本件非公開部分②を公開することにより,都市整備公社の正当な利益を害す 約事務について,新たに,契約金額が高止まりになるなど,著しい支障が生じるとは認められない。 そして,本件において,そのほかに,本件非公開部分②を公開することにより,都市整備公社の正当な利益を害すると認めるに足りる合理的な理由は認められない。 したがって,本件非公開部分②が本件条例9条3号に該当すると認めることはできないから,本件各決定のうち,同部分を非公開とした部分は違法である。 第4 本件の結論以上のとおりであるから,本件訴えは,全部理由がある。したがって,主文のとおり判決する。 高知地方裁判所民事部 裁判長裁判官松田典浩 裁判官小畑和彦 - 9 -裁判官塩田良介

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