昭和22(れ)243 強盗幇助

裁判年月日・裁判所
昭和23年4月17日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 広島高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。          理    由  上告人兼弁護人石黒忍の上告趣意は「第一点、原判決は採証の法則を誤り、日本 国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急措置に関する

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判決文本文3,047 文字)

主    文      本件上告を棄却する。          理    由  上告人兼弁護人石黒忍の上告趣意は「第一点、原判決は採証の法則を誤り、日本 国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急措置に関する法律第二条第十二条等に違反し た憲法違反の判決である。原審は「原審相被告人A及びBは昭和二十一年十月三日 午前零時頃実包を装填した拳銃一挺及び短刀一口を携へて岡山市a町b番地C方に 侵入し同人に対して交々右拳銃及び短刀を突付けて「金を出せ、出さぬと撃つぞ」 等と申向けて脅迫し右Cを畏怖させた上同人所有の現金百七十円及び背広服上着同 ズボン各一枚を奪い取つたが右犯行に先だち被告人は同月二日午後九時頃同市cd D旅館で右A等が強盗の用に供することを知り乍らAに対して実包五発装填の拳銃 一挺及び短刀一口を貸与し以て同人等の前記強盗行為を幇助したものである。」  との事実を認定し上告人Eを強盗幇助罪に問擬したのであるが右強盗幇助の事実を 認定するに当つてその証拠として上告人E及び相被告人Bに対する各予審第一回訊 問調書中の供述記載、相被告人Aに対する予審第二回訊問調書中の供述記載並びに 被疑者Bに対する司法警察官の聴取書中の供述記載等を引用したのである。本件に おいて上告人Eに不利益な証拠は法令に依りて作成せられたのでない前掲聴取書の 如きは姑く措いて、(イ)上告人Eに対する予審第二回訊問調書中 十月二日午後 七時頃突然Bガ二人ヲ訪ネテ参リ二人ニ「良イ仕事ガアル、夫レデ借金が払ヘヤウ、 就イテハ拳銃ト短刀トヲ都合シテ呉レ」ト申シテ帰リマシタ。私ハBガヨイ仕事ト 云フノハ何レ何所カニ這入ツテ金カ物ヲ盗リ其ノ際短刀ヤ拳銃ヲ利用スルノデハナ カラウカト云フ想像ハツキマシタガ……其ノ夜Aニ拳銃ト短刀ヲ手渡シマシタ と いう供述と(ロ)Aに対する予審第二回訊問調書中 翌二日午後七時頃Bガ私トE 金カ物ヲ盗リ其ノ際短刀ヤ拳銃ヲ利用スルノデハナ カラウカト云フ想像ハツキマシタガ……其ノ夜Aニ拳銃ト短刀ヲ手渡シマシタ と いう供述と(ロ)Aに対する予審第二回訊問調書中 翌二日午後七時頃Bガ私トE ノ居ルDニ参リ私トEトニ「良イ仕事ガアル、借金ハ払ツテヤル、eヲ渡ツテfへ - 1 - 行ク迄ニョイ所がアル。今夜十一時頃カラ行ク」ト云ツタノデ私ハヨイ仕事トハ何 所カニ押込ミ金ヤ品物ヲ盗ル事ダト思ヒマシタノデ一緒ニ行クコトヲ承諾シマシタ がEハ行クトハ云ヒマセヌガ拳銃ト短刀ヲ貸シテ呉レルコトヲ承諾シマシタという 供述の二つである。然るにBはこの点に関して予審第二回でAトEトガ居ルト云フ Dニ行キEハ奥ニ居リAガ出テ来タノデ其ノ事務所ノ話ヲシ「今夜十一時頃カラ行 ク、Eニ其ノ話ヲセズ拳銃ト短刀トヲ借リテ来イ」ト申シテ帰リマシタと供述して いて前二者と符合しないのみならず原判決が断罪の資料に供した証拠はいずれも公 判外における関係人の供述あるのに第一審公判廷においては上告人Eは固よりAも 予審の供述を飜してBの予審における供述と符合する供述をし尚Aは原審において も証人として上告人EはABが強盗をすることは知らなかつた旨同上告人に有利な 証言をしているのであつてすなわち原判決が証拠に引用した前掲各供述は右のB、 Aの公判廷における公然且つ自由なる供述によつて完全にその証拠力を失つたもの といわねばならぬ。かように解することが刑事訴訟法応急措置法第九条に「予審は これを行わない」と規定した趣旨からいつても正に日本国憲法の趣旨に従つた刑事 訴訟法の解釈であつて刑事訴訟法第三百三十七条の「証拠ノ証明力ハ判事ノ自由ナ ル判断ニ任ス」との規定はこの範囲において制限を受けるものと信ずる。尚弁護人 は被告人に直接訊問の機会を与える趣旨において証人としてAの訊問を申請し原審 はこれを容れて弁護人 証拠ノ証明力ハ判事ノ自由ナ ル判断ニ任ス」との規定はこの範囲において制限を受けるものと信ずる。尚弁護人 は被告人に直接訊問の機会を与える趣旨において証人としてAの訊問を申請し原審 はこれを容れて弁護人の右証拠の申出を採用されたのであるが刑事訴訟法応急措置 法第十二条は一応被告人に対し直接訊問を為すの機会を与えた以上は司法警察官の 聴取書であろうと予審調書であろうと公判における供述であろうとそのいずれを採 つて判断の資料に供するかは専ら判事の自由に委ねられているので即ちわが刑事訴 訟法の大原則である自由心証主義は毫も応急措置法によつて変更又は制限を加えら れたものではないと解するのは少くとも日本国憲法の精神に副わない解釈であつて 公判外における供述を録取した書類は公判廷における供述に裏付けられて始めて証 - 2 - 拠力又は証拠価値を有するに至ると解するを正当なりと信ずる。そうすると結局本 件においては予審以前における被告人の自白が唯一の証拠であるから上告人Eを有 罪と認めることはできない。然るに原審は公判廷に関係人の供述は全くこれを無視 し予審或は警察における隠密の取調の結果のみに基ずいて上告人Eを有罪と断定し たのは叙上の理由によつて不法であつて原判決は破毀を免れないものと信ずる。」 というにある。  刑訴応急措置法第九条で、予審は行わないと規定したからといつて、同法施行前 に、適法になされた予審判事の被告人等に対する訊問調書が、そのために証拠能力 を失うものでないことは、無論のことであり、又、予審判事の訊問を受けた共同被 告人や証人が、その後公判廷において、予審とは違つた供述をした場合、予審の供 述を録取した調書が、当然にその証拠力を失うものでもない。かような予審調書が、 どの程度証拠としての価値を持つかは、一に裁判官の自由裁量にまかせられたとこ ろであつて、公判におけ 述をした場合、予審の供 述を録取した調書が、当然にその証拠力を失うものでもない。かような予審調書が、 どの程度証拠としての価値を持つかは、一に裁判官の自由裁量にまかせられたとこ ろであつて、公判における供述を証拠にとるか、または、これを信用するに足らぬ ものとして予審訊問調書を証拠にとるかは、全く、裁判官の自由である。刑訴応急 措置法第十二条は、証人その他の者の供述を録取した書類について、更に公判で、 その供述者訊問の機会を与えた上でなくては、かゝる書類を証拠とすることはでき ないと定めたのであつて、むしろ、かゝる機会を与えた上は、裁判官の自由の心証 に従つて、その供述録取の書類を証拠とすることができる旨を定めたものと解すべ きであつて、所論のように、同条によつて、刑事訴訟法第三百三十七条に定められ た証拠に関する裁判官の自由心証主義が制限せられたと解すべき何らの理由もない。 論旨はすべて理由がない。  よつて、刑事訴訟法第四百四十六条に従ひ、主文のとおり判決する。  右は全裁判官一致の意見である。  検察官柳川真文関与 - 3 -   昭和二十三年四月十七日      最高裁判所第二小法廷          裁判長裁判官    霜   山   精   一             裁判官    栗   山       茂             裁判官    小   谷   勝   重             裁判官    藤   田   八   郎 - 4 -

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