平成25年3月22日判決言渡平成22年(行ウ)第42号損害賠償等を求める請求事件口頭弁論終結日平成24年12月18日判決主文 1 被告は,Aに対し,2363万2000円及びこれに対する平成23年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。 2 請求の趣旨1のうち,払込手数料に係る訴えを却下する。 3 原告らのその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。事実及び理由第1 請求の趣旨 1 被告は,Aに対し,2363万2000円及びその払込手数料並びにこれに対する平成23年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。 2 被告は,X鉄道株式会社に対し,2363万2000円及びこれに対する平成23年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。第2 事案の概要本件は,平成22年当時千葉県a市長であったA(以下「A元市長」という。)が,X鉄道株式会社(以下「X鉄道」という。)に対し補助金の支出をする旨の債務負担行為を専決処分によって行ったことには,地方自治法(平成22年法律第71号による改正前のもの。以下「法」という。)179条1項の要件を欠く違法があり,これに基づいてX鉄道と締結した贈与契約は私法上無効であり,したがって,公金の支出も違法・無効であると主張して,同市の住民である原告らが,法242条の2第1項4号により,被告に対し,A元市長に対しては債務不履行又は不法行為に基づき,支出に係る2363万2000円及びその振込手数料の賠償とこれに対する補助金支出の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の, し,A元市長に対しては債務不履行又は不法行為に基づき,支出に係る2363万2000円及びその振込手数料の賠償とこれに対する補助金支出の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の,X鉄道に対しては不当利得に基づいて,上記支出額の返還及びこれに対する同様の法定利息の支払請求をすることを求める事案である。 1 前提事実⑴ 原告らは,千葉県a市の住民である(争いがない)。⑵ A元市長は,平成20年12月10日から平成23年4月7日まで,a市長の職に就いていた(弁論の全趣旨)。⑶ 千葉県,b市,c市,d市,e市,f市,a市,g村及びh村並びにY電鉄株式会社及びX鉄道は,平成21年11月30日,x線の運賃値下げについて以下のとおり合意した(以下「本件値下げ合意」という。甲19)。ア自治体は,5年間にわたり,1年あたり3億円を補助金として支出する。X鉄道は,5年間にわたり,Z新高速鉄道の運行によって初めて発生するx線区間内(iからj間)の純増収入分2.5億円及び自助努力分0. 5億円の1年あたり計3億円を拠出する。初年度の負担方法や各年の支払方法については,別途協議する。イ上記計6億円を原資として,X鉄道は,下記のとおり運賃値下げをZ新高速鉄道開業時に行うこととする。 普通運賃5%弱値下げ 通学定期運賃25%値下げ 通勤定期運賃1%強値下げ以上平均して概ね4.6%の値下げとなる。⑷ 平成22年第3回a市議会定例会(以下「本件9月議会」という。)の会期は,平成22年9月1日から同月28日までであった(乙8)。⑸ A元市長は,同月28日,X鉄道に対して2363万2000円をX鉄道運賃値下げ支援補助金として支出する旨の平成22年度a市一般会計補正予算 9月1日から同月28日までであった(乙8)。⑸ A元市長は,同月28日,X鉄道に対して2363万2000円をX鉄道運賃値下げ支援補助金として支出する旨の平成22年度a市一般会計補正予算案(第4号・以下「本件補正予算案」という。乙1)を本件9月議会に提出した。本件補正予算案は,同日午後5時46分頃から,審議に付されたが,議決に至ることなく流会となり,本件9月議会は会期満了により閉会した(乙2)。⑹ X鉄道は,同年10月13日,a市に対し,補助金交付の申請をし(乙10),A元市長は,同日,補助金を支出する旨の債務負担行為を法179条1項による専決処分(以下「本件専決処分」という。)によって行った(争いがない)。⑺ a市は,翌14日,X鉄道に対し,上記補助金の交付決定を通知した(乙11)。これにより,a市とX鉄道との間では,同月14日,a市がX鉄道に対し,補助金2363万2000円を交付する旨の贈与契約(以下「本件贈与契約」という。)が締結された(争いがない)。⑻ a市は,X鉄道に対し,同月18日に787万7000円,同年11月30日に787万7000円,平成23年2月25日に787万8000円を支出した(争いがない)。⑼ a市議会は,平成22年11月1日,平成22年第3回臨時会において,本件専決処分につき不承認の決議をした(争いがない)。⑽ 原告らは,a市監査委員に対し,本件専決処分が違法であると主張して,平成22年10月14日に補助金の支出の差止めを求め,同月21日に差止めに加えてA元市長に対し損害賠償請求をすること及びX鉄道に対し不当利得返還請求をすることを求める住民監査請求をした(甲1,2)。a市監査委員は,同年11月26日,上記監査請求をいずれも棄却した(甲3)。⑾ 原告らは,同年12月21 及びX鉄道に対し不当利得返還請求をすることを求める住民監査請求をした(甲1,2)。a市監査委員は,同年11月26日,上記監査請求をいずれも棄却した(甲3)。⑾ 原告らは,同年12月21日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 2 a市議会における議事運営等⑴ 会期についてア会期は,毎会期の初めに議会の議決で定める(法102条6項,a市議会会議規則(以下「会議規則」という。乙3)5条1項)。イ会議時間は,午前10時から午後5時までとするが,議長が,必要があると認めるときは,会議時間を変更することができる(会議規則9条1項,2項)。ウ会期は,議会の議決で延長することができる(会議規則6条)。エ議事日程に記載した事件の議事が終わらなかったときは,議長は,更にその日程を定めなければならず(会議規則23条),議長が必要があると認めるとき又は議員から動議が提出されたときは,議長は,討論を用いないで会議に諮って延会することができる(会議規則24条2項)。オ延会のため事件の議事が中断された場合において,再びその事件が議題となったときは,前の議事を継続する(会議規則48条)。⑵ 議事進行についてア議会は,議員の中から議長及び副議長1人を選挙しなければならない(法103条1項)。イ議長は,議場の秩序を保持し,議事を整理し,議会の事務を統理し,議会を代表する(法104条)。ウ議会の議長に事故があるとき,又は議長が欠けたときは,副議長が議長の職務を行い,議長及び副議長にともに事故があるときは,仮議長を選挙し,議長の職務を行わせる(法106条)。エ上記の選挙を行う場合において,議長の職務を行う者がないときは,年長の議員が臨時に議長の職務を行う(法107条1項)。オ議会の議 仮議長を選挙し,議長の職務を行わせる(法106条)。エ上記の選挙を行う場合において,議長の職務を行う者がないときは,年長の議員が臨時に議長の職務を行う(法107条1項)。オ議会の議事は,出席議員の過半数でこれを決し,可否同数のときは,議長の決するところによる。この場合においては,議長は,議員として議決に加わる権利を有しない(法116条)。カ議長が議員として発言しようとするときは,議席に着き発言し,発言が終わった後,議長席に復さなければならない。ただし,討論をしたときは,その議題の表決が終わるまでは,議長席に復することができない。(会議規則54条)⑶ 議会運営委員会(以下「議運」という。)についてア a市議会は,議運を設置し,議運は,議員のうち7名から構成されている(法109条の2第1項,a市議会委員会条例4条1項)。 イ議運は、次に掲げる事項に関する調査を行い、議案、陳情等を審査する(法109条の2第4項)。 議会の運営に関する事項 議会の会議規則,委員会に関する条例等に関する事項 議長の諮問に関する事項⑷ 議員全員協議会について議員全員協議会は,議会の運営等に関する協議又は調整を行うため,全議員を構成員として,議長を招集権者として設置される(法100条12項,会議規則160条 項)。 3 争点及び当事者の主張⑴ 争点1 本件専決処分の違法性ア原告らの主張本件専決処分は,法179条1項の「議決すべき事件を議決しないとき」の要件を満たさず,違法である。「議決すべき事件を議決しないとき」とは,議会が故意又は意図的に議決を行わないことが客観的に明らかであるときをいう。本件において,a市議会は過去3度にわたり補助金の支出に反対する議決をし,A元 「議決すべき事件を議決しないとき」とは,議会が故意又は意図的に議決を行わないことが客観的に明らかであるときをいう。本件において,a市議会は過去3度にわたり補助金の支出に反対する議決をし,A元市長自身も繰り返し専決処分はしない旨表明していたにもかかわらず,A元市長は,本件9月議会の会期の最終日に本件補正予算案を提出し,本件議会が流会になった状況を利用して専決処分をしたのである。 仮議長を選出することも,会期延長することもなしえなかったのは,本件9月議会の会期の最終日に議案が提出されたために,審議する十分な時間がなかったからであり,議会が議決を故意又は意図的に行わないことが客観的に明らかとはいえない。その後も,議員は,臨時会の開催を請求しており,故意又は意図的に議決を行わないことが客観的に明らかとはいえないのだから,本件専決処分は,上記要件を満たさない。イ被告の主張法179条1項の「議決すべき事件を議決しないとき」とは,議会の意思で議決しなかった場合をいう。本件は,議会の意思において,本件補正予算案を最後に審議すると決め,会期を延長あるいは継続審査をすることが可能であったにもかかわらず,あえてこれをせずに本件補正予算案は廃案となったのである。したがって,本件は,議会の意思で議決することなく流会となり,流会になった時点でこの要件を満たしており,その後実際に臨時会が招集されていない以上,この状態が処分時まで続いていたのであるから,本件専決処分は,上記要件を満たしている。⑵ 争点2 A元市長の責任ア原告らの主張 A元市長は,市長として法令を遵守する義務がある(法138条の2)にもかかわらず,故意又は過失により,同義務に違反する違法な本件専決処分をし,これにより,補助金が支出されてa市に損害を与 主張 A元市長は,市長として法令を遵守する義務がある(法138条の2)にもかかわらず,故意又は過失により,同義務に違反する違法な本件専決処分をし,これにより,補助金が支出されてa市に損害を与えたのであるから,A元市長は不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 また,地方公共団体とその長の関係は委任関係であり,長は善管注意義務を負うところ(民法644条),A元市長の違法な本件専決処分は善管注意義務違反を構成し,これにより補助金が支出されてa市に損害を与えたのであるから,A元市長は債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。 A元市長に対する上記不法行為に基づく損害賠償請求権と債務不履行に基づく損害賠償請求権は,請求権競合の関係にある。 イ被告の主張 仮に,本件専決処分が違法であったとしても,そのことから直ちに不法行為責任の要件である故意・過失を充足するものではない。 そして,A元市長は,本件専決処分が適法であると確信しており,また,本件専決処分をするにあたって,その適法性につき弁護士,千葉県市町村課の主幹,総務省等に問い合わせをして調査をしており,その結果に基づき本件専決処分が適法であると確信したのであるから,A元市長が違法性の意識を欠いていたことに相当な理由があり,故意はない。 また,A元市長は,上記のとおり,本件専決処分の適法性について問い合わせをし,損害の結果発生の予見及びその回避は不可能であったこと,補助金を支出しなければ,X鉄道が値下げ前の運賃に戻すことが確実であり,可及的早期に専決処分を行い,補助金を支出する高度の必要性があったことからすると,A市長には過失は認められない。 また,地方公共団体とその長の関係は,公法が支配する領域にあるから,長が,民事上の債務不履行責任を負うことは 補助金を支出する高度の必要性があったことからすると,A市長には過失は認められない。 また,地方公共団体とその長の関係は,公法が支配する領域にあるから,長が,民事上の債務不履行責任を負うことはない。 ⑶ 争点3 本件贈与契約の効力(X鉄道の責任)ア原告らの主張 普通地方公共団体の支出の原因となるべき契約は,法令又は予算の定めるところに従い,これをしなければならないところ,本件補正予算案にかわる本件専決処分が違法である以上,本件贈与契約は,予算なくして締結されたものとして無効となる(法232条の3)。 また,表見法理は,代理権や権限の有無,踰越が問題となる場合の法 理であるところ,本件は,予算に相当する専決処分の違法性が問題となっている場合であって,A元市長の権限の有無や踰越が問題となっているわけではないので,同法理を適用する余地はなく,本件贈与契約が同法理により有効となることはない。 仮に,表見法理の適用があったとしても,本件値下げ合意の後,a市議会が補助金を含む予算案を2度否決したことや,本件専決処分の是非が大きく報道で取り上げられていたことからすると,X鉄道は,本件専決処分や本件贈与契約の適法性・有効性について疑義があることは十分認識していたものといえ,正当な理由があったとは認められない。 したがって,X鉄道は,法律上の原因なく補助金を利得したのだから,不当利得返還義務を負う。 イ被告の主張 本件贈与契約は,適法な本件専決処分に基づき締結されたものであるから,有効である。 仮に,本件専決処分が違法であったとしても,直ちに本件贈与契約が違法・無効となるとはいえない。また,本件贈与契約は,私人であるX鉄道とa市が対等の立場で締結したものであるから, ,有効である。 仮に,本件専決処分が違法であったとしても,直ちに本件贈与契約が違法・無効となるとはいえない。また,本件贈与契約は,私人であるX鉄道とa市が対等の立場で締結したものであるから,一般私法の適用があり,表見法理の適用がある。 そして,地方公共団体であるa市が違法・無効といった瑕疵ある専決処分に基づき贈与契約を締結するとは考えられないこと,a市以外の各市は何ら問題なく補助金を支出していること,X鉄道は,a市から,専決処分によって補助金が予算化された旨の連絡を受けたことからすれば,本件贈与契約に瑕疵がないと信じるにつき正当な理由がある。 したがって,X鉄道が補助金を受領したことには法律上の原因があるため,不当利得ではない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。⑴ a市議会の構成ア a市議会の議員定数は21名であったが,平成20年11月23日,1名が欠員となり,それ以降,平成23年4月30日まで,議員数は20名であった(弁論の全趣旨)。イ上記期間において,a市議会の議長はB議員(以下「B議長」という。),副議長はC議員(以下「C副議長」という。),臨時議長となる年長の議員はD議員であった(乙2)。⑵ 平成22年8月31日までの経緯ア本件値下げ合意の締結a市議会は,平成21年11月25日,本件値下げ合意への同意を見合わせることを求める決議をして,A元市長に決議書を提出したが,A元市長は,同月30日,Z新高速鉄道の開業日までに議会の理解が得られるとの見通しのもとに,本件値下げ合意を締結した(前提事実⑶,甲19,弁論の全趣旨)。イ a市議会平成22年第1回定例会A元市長は,平成22年2月22 高速鉄道の開業日までに議会の理解が得られるとの見通しのもとに,本件値下げ合意を締結した(前提事実⑶,甲19,弁論の全趣旨)。イ a市議会平成22年第1回定例会A元市長は,平成22年2月22日から同年3月30日までのa市議会平成22年第1回定例会に,X鉄道運賃値下げ支援補助金2587万5000円を盛り込んだ平成22年度一般会計予算案を提出した。しかし,上記補助金支出反対派の議員の理解は得られず,a市議会は,同年3月29日,議長を除く出席議員数19名のうち10名の賛成により,上記補助金に係る予算を削除する修正動議を可決した上で,これを除く平成22年度一般会計予算案を可決した。修正動議の賛成者は,C副議長,D議員,E議員,F議員,G議員,H議員,I議員,J議員,K議員,L議員であった。 (甲36,乙18の1,18の2,24,弁論の全趣旨)ウ a市議会平成22年第2回定例会 A元市長は,a市議会平成22年第2回定例会に,上記と同額の補助金を盛り込んだ平成22年度一般会計予算案を提出した(甲37,弁論の全趣旨)。 X鉄道は,同年6月11日,A元市長に対し,本件値下げ合意をした地方自治体のうち,a市のみが補助金を予算化できていないところ,a市が同年7月17日のZ新高速鉄道開業までに補助金を支出しない場合には,運賃を値下げ前の実施運賃に戻さざるを得ず,値上げまでの間の損害賠償を請求することになるため,本件値下げ合意に基づく補助金の支出を求める旨の書面を交付した(乙4)。 A元市長は,同年6月頃,議員全員協議会において,専決処分については考えていない旨の発言をした。これについて,B議長がその趣旨を確認したところ,A元市長は,同月18日付けの書面で,補助金の予算化につき議会が否決するという議決をしている以上, て,専決処分については考えていない旨の発言をした。これについて,B議長がその趣旨を確認したところ,A元市長は,同月18日付けの書面で,補助金の予算化につき議会が否決するという議決をしている以上,専決処分ができないものと考えている旨の回答をした(甲21)。 第2回定例会においても,補助金支出反対派の議員の理解は得られず,a市議会は,同月29日,議長を除く出席議員数19名のうち10名の賛成により,上記補助金に係る予算を削除する修正動議を可決した上で,これを除く平成22年度一般会計補正予算案を可決した。修正動議の賛成者は,第1回定例会の賛成者と同じ者であった。A元市長は,同月30日,上記補助金の予算化が認められなかったことを受けて,議会の議決を民意として受け止める,補助金予算の再々提案はしない,専決処分は要件を欠くためできない旨を記者会見で述べた。(甲22,37,乙25,弁論の全趣旨)エ x線の運賃値下げ以降X鉄道は,同年7月17日,本件値下げ合意に基づき,x線の運賃を値下げした。A元市長は,同年8月25日,a市議会に対し,本件9月議会の初日である同年9月1日に上程する14件の議案を,議事日程の検討資料として送付した。上記議案の中には,補助金の予算化に係る議案は含まれていなかった。A元市長は,同年8月26日,本件値下げ合意をしたa市以外の自治体に対し,a市が補助金を予算化できないことを謝罪するとともに,何としても予算化を図りたい旨の所信を記載した書面を送付した。X鉄道は,同月30日,a市に対し,本件値下げ合意に基づく平成22年度補助金のa市負担分2363万2000円のうち,787万7000円を,同月31日までに支払うよう求めた。これに対し,A元市長は,X鉄道に対し, 市に対し,本件値下げ合意に基づく平成22年度補助金のa市負担分2363万2000円のうち,787万7000円を,同月31日までに支払うよう求めた。これに対し,A元市長は,X鉄道に対し,補助金支出の猶予及び値下げ前の実施運賃に戻すことの猶予を求めるとともに,今後必ず補助金を予算化して支払う旨を記載した書面を送付したが,X鉄道からの回答はなかった。A元市長は,同月30日,記者会見で,是非補助金の予算化を図りたいと述べたが,a市議会平成22年第2回定例会で補助金の予算化が認められなかった状況と変わっていないため,予算案の提出は考えておらず,専決処分は困難と認識している旨述べた。(甲54,乙5の1~5の6,6,7,弁論の全趣旨)⑶ 平成22年9月1日から同月27日までの経緯ア本件9月議会は,会期中,同月1日,6日,7日,9日,10日,13日,28日に開催され,他の20日は休会であった(乙8)。イ A元市長は,本件9月議会の初日である同月1日には,補助金の予算化に係る議案を提出しなかったが,a市以外の地方自治体は,本件値下げ合意に基づいて補助金を支出したことを確認した(弁論の全趣旨)。ウ A元市長は,同月6日,a市議会において,現状では要件を満たさないため専決処分はしない,是非補助金の予算化を図りたいので,議会の理解を得るための準備は何を置いてもする,6月の議会後,予算案も提案しないと述べたのは,同年7月17日に値下げが実施されれば市民が受益し,状況が変わるのを待ってほしいという趣旨であった旨述べた。A元市長は,同年9月10日,議員全員協議会において,各議員に対し,7月17日にZ新高速鉄道が開業し,値下げ合意に基づく値下げが実施されたという新しい事情があり,どのような条件があれば,補助金 A元市長は,同年9月10日,議員全員協議会において,各議員に対し,7月17日にZ新高速鉄道が開業し,値下げ合意に基づく値下げが実施されたという新しい事情があり,どのような条件があれば,補助金の予算化が可能であるか意見を聞きたい,補助金の予算化につき理解を求め,本件9月議会の会期中に努力をしていきたい旨述べた。(乙9,19・議事録60頁,64頁以下,弁論の全趣旨)エしかし,反対派の議員の理解が得られないまま,本件9月議会は最終日を迎えた。⑷ 同年9月28日の経緯ア A元市長は,同日午前9時30分頃,議員全員協議会で,急に,本件補正予算案を議案として提出する旨通告した(甲32・議事録283頁)。イ同日の議会は,午前10時に開会した。出席議員は,議長を含む20名全員であり,午前中は,上記通告を受けたことから,H議員,F議員,C副議長及びD議員の緊急動議に基づき,本件値下げ合意に関連する事項について質疑が行われ,午後0時03分に休憩とされた(甲32・議事録312頁)。ウ A元市長は,休憩中に,a市議会に対し,本件補正予算案を提出した。 a市議会は,同日午後1時30分に再開し,本件補正予算案提出を受けて,即時休憩とされた。同日午後1時33分から開催された議運において協議がされ,先行して提出されていた審議すべき議案を先に審議し,本件補正予算案を日程の最後に審議することとされた。その後,午後2時05分から会議が再開され,午後5時27分までに他の案件が処理された。(甲32・議事録312頁,乙2・議事録350頁,14)エ本件補正予算案につき審議が開始されたのは,会期満了まで残り6時間余に迫った同日午後5時46分頃であった。同日午後5時46分頃から午後6時24分までの間の審議概要は以 議事録350頁,14)エ本件補正予算案につき審議が開始されたのは,会期満了まで残り6時間余に迫った同日午後5時46分頃であった。同日午後5時46分頃から午後6時24分までの間の審議概要は以下のとおりである。(乙2) A元市長による議案提案理由の説明(議事録350頁) M総務部長による議案内容の説明(議事録351頁) C副議長による質疑(議事録352頁)A元市長は,補正予算案を本件9月議会の会期の最初に提出しなかった理由について問われ,「いろいろなことを考えて,どこで理解を得ることができるのかという,その判断のもとで今日出させていただきました。」と述べた。 F議員による質疑(議事録356頁) 本件補正予算案は,委員会付託を省略する旨の決議(議事録358頁) 討論(本件補正予算案に反対のC副議長,賛成のN議員による発言・議事録358頁) ここまでは議事が滞りなく進められていたが,午後6時24分頃,本件補正予算案に賛成の意見を有するB議長が,突然議席において討論する旨の希望を述べ,休憩の宣言がされた(議事録359頁)。オ B議長の討論希望表明を受けて,急遽,同日午後7時17分から午後7時25分まで,議運が開かれた。 議運において,議長が議員として発言しようとするときは,議席に着き発言し,発言が終わった後議長席に復さなければならないが,討論をしたときは,その議題の表決が終わるまでは,議長席に復することができない旨規定する会議規則54条(乙3)に基づき,議長は議席において討論できることが確認された。そして,C副議長が討論を行ったことから,議長席に就くことができず,仮議長の選挙をすることとされた。 また,事務局から,仮議長が討論を行う場合は,再度選 長は議席において討論できることが確認された。そして,C副議長が討論を行ったことから,議長席に就くことができず,仮議長の選挙をすることとされた。 また,事務局から,仮議長が討論を行う場合は,再度選挙となり,最終的に仮議長が決まらない場合は,臨時議長のもとで会期の延長ができるが,これをせずに午後12時になれば審議未了のまま流会となる旨の説明がされた。 (乙15)カ議会は,同日午後8時32分に再開された。B議長が,討論を行うため,議長席を離れ議席に移り,代わって,D議員が法107条に基づき臨時議長の職務に就いた。そして,仮議長の選挙が行われ,賛成派のO議員が仮議長に当選したが,同議員は,B議長に倣い,討論の希望がある旨述べて辞退し,議事は再度混乱した。 そこで,午後8時52分,再度仮議長の選挙を行うため,休憩の宣言がされた。 (乙2・議事録359~362頁)キ議会は,同日午後9時14分に再開され,仮議長の選挙が行われた。その結果,予算化反対派のE議員と賛成派のP議員の得票数が同数最多であったが,両者とも,B議長に倣い,討論の希望がある旨述べて辞退し,さらに,J議員が,討論を行う意思のある議員は名乗り出て,仮議長選出の対象としないこととする動議を出すなど,議事は混乱を極めた。 そこで,午後9時15分,再度休憩の宣言がされた。 (乙2・議事録362~363頁)ク事態の収集を図るため,同日午後10時40分から午後11時34分まで,議運が開かれた。 議運では,出席委員からB議長の翻意を促す意見が出たが,B議長はこれを拒否したため,会期の延長を巡って,本会議を再開して議決にかけるべきかにつき議論された。 本件補正予算案に反対の意見を有する委員(E議員,Q議員及びK議員)は,会期延長を企図して,本会 長はこれを拒否したため,会期の延長を巡って,本会議を再開して議決にかけるべきかにつき議論された。 本件補正予算案に反対の意見を有する委員(E議員,Q議員及びK議員)は,会期延長を企図して,本会議の再開を求めたが,賛成の意見を有する委員(R議員,S議員,G議員及びT議員)は,審議未了のまま閉会することを望み,延長しても現状が打破できないなどと述べて再開に反対し,結局,議員全員協議会に議運の協議内容を報告することになった。 (乙16)ケ議員全員協議会が,同日午後11時45分から開催され,上記議運の協議内容が報告されたが,本会議が開かれることはなく午後12時を迎え,本件9月議会は,会期満了により閉会した(甲56,乙2・議事録364頁)。 ⑸ 同月29日以降の経緯a市議会議員のうち10名(第1回及び第2回定例会において修正動議に賛成したのと同じ議員)は,会期満了の8時間半後の同月29日午前8時30分,A元市長に対し,本件補正予算案につき審議をするため,法101条3項に基づき臨時議会の招集を請求した(乙23)。 これに対して,A元市長は,同月30日,上記10名に対し,同条項に基づき招集される臨時議会の会議に付すべき事件は,議会側に発案権がある事件が対象とされているところ,本件補正予算案はこれに当たらないとして,招集請求に応じなかった(乙30)。 A元市長は,同年10月12日頃,総務省自治行政局行政課U行政第一係長,千葉県総務部市町村課V主幹に対し,本件専決処分の適法性を問い合わせた,これに対する回答は,法179条1項の「議決すべき事件を議決しないとき」とは,議会において議決を得ることができない一切の場合と解して一般論としては間違いないが,個別案件については回答しない,最終的には具体的事情を鑑みたうえで,長が判断 事件を議決しないとき」とは,議会において議決を得ることができない一切の場合と解して一般論としては間違いないが,個別案件については回答しない,最終的には具体的事情を鑑みたうえで,長が判断するものである等,いずれも専決処分に関する一般論にとどまっており,本件専決処分が適法であるとの見解を示したものはなかった(乙12,13)。⑹ A元市長は,同年10月13日,本件専決処分をした。 2 争点1について⑴ 法が,議事機関としての議会の議決事件を重要なものに限定して列挙する(法96条)とともに,執行機関としての長の権限(法147条ないし149条)を規定することにより,それぞれの権限の分立を図っていることからすれば,専決処分制度(法179条)は,議会がその機能を十分に果たさない場合の補充的手段として,長に,議会の権限に属する事項を議会に代わって決定する権限を例外的に与え,もって,議会と長との関係の調整を図り,地方行政の渋滞を防止することをその趣旨としているものと解される。そして,法179条1項が,普通地方公共団体の議会が成立しないとき,法113条ただし書の定める定足数の例外規定によってもなお会議を開くことができないとき(議会が議長ほか2名の出席者すら得られない場合を意味する。),長において,特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるときという,相当例外的な場合を列挙していることからすれば,同項の「議会において議決すべき事件を議決しないとき」という要件を形式的に満たすとみえる場合であっても,普通地方公共団体の長が,議会が議決することができないような状況をことさら作出・利用して専決処分をした場合や,その案件の経過や内容等客観的な事情に照らして,議会が議決しないことが社会通念上相当なものとして 公共団体の長が,議会が議決することができないような状況をことさら作出・利用して専決処分をした場合や,その案件の経過や内容等客観的な事情に照らして,議会が議決しないことが社会通念上相当なものとして是認されるべきであるのに,あえて専決処分をした場合等,上記専決処分の制度の趣旨を潜脱することが明らかである場合には,「議会において議決すべき事件を議決しないとき」に該当せず,当該専決処分は違法となることがあるものと解するのが相当である。⑵ そこで,本件専決処分が「議会において議決すべき事件を議決しないとき」に該当するかを判断する。アまず,本件補正予算案は,法96条1項2号により議会の議決事項とされているので,「議会において議決すべき事件」に当たる。また,本件補正予算案は,議決に至らないまま,本件9月議会は閉会となった。これによれば,本件専決処分は,法179条1項の要件を形式的に満たしているようである。イしかしながら,前記認定事実によれば,① 議会は,本件値下げ合意について反対する決議をした後,2度にわたり本件補正予算案と同旨の予算を削除した上で予算を議決するなど,3度にわたって補助金に反対する意思を明らかにしていたこと,② A元市長は,本件9月議会に先立って,補助金に係る予算案の提出はしない旨表明し,実際に会期初日にはこれを提出せず,同年9月10日の議員全員協議会で当会期中に予算化したい旨表明したものの,反対派議員が議長を除く議員の多数を占め,本件9月議会の最終日である平成22年9月28日の段階でも反対派議員の理解は得られておらず,そのままでは成立の見込みがほとんどない上,同日の審議日程が立て込んでいたにもかかわらず,当日の朝になって,突如として予算案を提出する旨の意向を表明し,これに反発する反対派議員による緊急 れておらず,そのままでは成立の見込みがほとんどない上,同日の審議日程が立て込んでいたにもかかわらず,当日の朝になって,突如として予算案を提出する旨の意向を表明し,これに反発する反対派議員による緊急質問により午前中一杯が費やされ,本件補正予算案が提出されたのは同日午後であったこと,③ その後,会期終了まで6時間余りを残して審議が開始,進行したものの,議長の突然の討論希望表明を受けて議事が混乱し,議運をはじめとする議会が正常化の努力をしたものの,時間が足りずに会期満了となったこと,④ 本件9月議会終了後,反対派議員全員から臨時会の招集を要求され,これに応じる時間的余裕があるにもかかわらず,これに応じることなく,あえて,本件専決処分をしたこと,⑤ してみると,A元市長は,本件補正予算案を提出した時点で,B議長を除く議員の多数が一貫して反対しており,そのまま否決されるであろうこと,そうならないとすれば,議事の混乱により審議未了のまま会期が満了すること以外にはありえないことを承知の上で,あえて,本件補正予算案を提出し,実際に議事が混乱して会期が満了したことを利用して,専決処分をしたものにほかならないことが認められる。ウ以上のような本件専決処分に至る経緯に加え,予算の議決は議会の本来的な権限であって,本件補正予算案は突発的に発生した事態に緊急に対処するためのものでもないことも考慮すると,議会が本件補正予算案を議決しないことは社会通念上相当なものとして是認されるべき場合にあたるというべきであって,本件専決処分は,「議会において議決すべき事件を議決しないとき」に該当しないにもかかわらずなされたものとして,違法であるといわざるを得ない。エこれに対し,被告は,a市議会は仮議長の選任を巡って混乱を極め,本件補正予算案について決議を 件を議決しないとき」に該当しないにもかかわらずなされたものとして,違法であるといわざるを得ない。エこれに対し,被告は,a市議会は仮議長の選任を巡って混乱を極め,本件補正予算案について決議をする見込みはなかったのであるから,専決処分は適法であると主張する。たしかに,当日はB議長が討論をするため議長席を離れたことに端を発して,仮議長の選挙と当選者の辞退を繰り返すという混乱が生じたが,これは,賛成派のB議長が議決に加わり,仮議長に選任された議員が表決権を失うとの理解のもと,仮議長に選任される者が賛成派であれば予算が否決され,反対派であれば可決されるという予測が立てられたためであると推測される。しかし,そうであっても,そもそも従前の3回の議決が行われていることに照らせば,会期当初に本件補正予算案が提出されていれば,同様に議決されたものと推認するのが自然である。加えて,法116条によれば,議長は議決に加わることができないとされ,例外が設けられていないこと,仮に議長が討論を行った場合に議決に加わることができるとするならば,本件のように賛否が拮抗する案件については,常に本件と同様の混乱が生じる可能性を残すことになり,明らかに不合理であることからすると,議長が討論を行った場合も,議長は議決に加わることが許されないと解される。また,仮議長に選任された議員が,議決に加わることができないとしても,議長としての決裁権を有することは明らかである。そして,B議長を除く19名の議員が,賛成9名,反対10名で一貫して活動を行ってきているという経緯にかんがみると,仮に,反対派の議員が仮議長となったとしても,賛成9名,反対9名の可否同数となり,結局,反対派の仮議長の決裁により予算は否決される公算が大きいのであり,この 行ってきているという経緯にかんがみると,仮に,反対派の議員が仮議長となったとしても,賛成9名,反対9名の可否同数となり,結局,反対派の仮議長の決裁により予算は否決される公算が大きいのであり,このことに思い至れば,反対派の議員であっても仮議長となることを受諾したと見込まれる。そうすると,本件では,十分な時間がなかったために,議事が混乱したまま会期が満了してしまったが,仮に,A元市長の予算案提出が十分な審議のできる期間を踏まえて適時に行われていれば,円滑に議決に至ったと推認されるのである。したがって,被告の主張は採用できない。 3 争点2について⑴ 上記のとおり本件専決処分は違法であって,A元市長は,その前提となる事実を認識していたものと推認できるところ,そうである以上,本件専決処分の違法性を認識するべきであるし,認識することができたものというべきである。その上で,A元市長は,総務省及び千葉県の担当部署に対し,本件専決処分の適法性を問い合わせたが,いずれも専決処分に関する一般論として回答を得るにとどまり,本件専決処分が適法であるとの見解を示したものがなかったこと(乙12,13)は,A元市長自身が,本件専決処分が許されないものであることを疑っていた証左であり,その疑問が氷解しないままに本件専決処分を行ったことを裏付けるものである。その他,本件のような事例において,専決処分を行うことを適法とする裁判例や学説が,本件専決処分以前に存在していたと認めるに足りない。よって,A元市長は,市長として尽くすべき注意義務を怠り,過失により,違法な本件専決処分をしたものと認められる。 被告は,補助金を支出しなければ,X鉄道が値下げ前の運賃に戻すことが確実であって,早期に専決処分を行い,補助金を支出する必要性が を怠り,過失により,違法な本件専決処分をしたものと認められる。 被告は,補助金を支出しなければ,X鉄道が値下げ前の運賃に戻すことが確実であって,早期に専決処分を行い,補助金を支出する必要性があったので,A元市長が本件専決処分をしたことには過失は認められない旨主張する。しかし,本件値下げ合意当初から反対派議員が議長を除く議員の多数を占めており,Z新高速鉄道開業日までに議会の賛成が得られなければ,本件値下げ合意の前提条件が破綻することは初めから当然予想されていた。A元市長は,それを承知で本件値下げ合意に踏み切った上,本件9月議会の閉会から本件専決処分まで約2週間の期間があったのであるから,十分に検討し,本件専決処分の違法性を認識しうる時間的余裕があったものといえる。よって,被告が主張する上記事情は,A元市長の過失を否定するものとは評価できず,被告の主張は,採用できない。 したがって,A元市長は,不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 4 争点3について⑴ 支出負担行為は,法令又は予算の定めるところに従い,これをしなければならず(法232条の3),また,予算を定めることは議会の議決事項とされているところ(法96条1項2号),その趣旨は,地方公共団体の財政負担となる歳出及び債務負担行為を住民の代表機関である議会の統制の下に置くことで,長等の執行機関による地方公共団体の行政活動を統制する点にあるものと解される。上記趣旨に加え,前述のとおり,専決処分の制度は,例外的に,議会の権限事項につき長に決定権限を与えるものにすぎないことに照らせば,予算に関する議会と長との権限の調整を図った上記法の趣旨を全うする必要上,違法な本件専決処分に基づいてなされた本件贈与契約も違法となると解すべきである。⑵アもっとも にすぎないことに照らせば,予算に関する議会と長との権限の調整を図った上記法の趣旨を全うする必要上,違法な本件専決処分に基づいてなされた本件贈与契約も違法となると解すべきである。⑵アもっとも,本件専決処分は,a市補助金等交付規則3条に基づく補助金交付申請に対する,同規則5条に基づく交付決定として,具体的権利を発生させる処分である(乙10,11)ところ,前記のとおり,議長を入れれば,賛成・反対の議員が同数という極限状態にあった帰結として形式的な要件を満たしたものである上,その内容においても,各議員ともX鉄道の運賃値下げを実現することには賛成であり,それを実現する方法として補助金の交付が相当かという点で議員間に考えの違いがあり,賛否が分かれていたにすぎず(甲57),他の自治体がいずれも本件値下げ合意に基づき補助金を支出していることに照らし,将来的にはa市や同市市民の一層の利益につながると期待しうるものであったことがうかがえる。そうすると,本件専決処分は,前記のとおり,手続的な見地からすると,要件を欠いた違法なものであるものの,その実質に照らすと直ちに無効とまではいい難く,したがって本件贈与契約も直ちに法232条の3に違反する行為であるとはいえない。そして,法令等に違反する行為の効力について,法2条17項によれば,法令違反の行為は無効とするとされているものの,軽微な法令違反をも全て無効とするのは不当な結果となりかねないことや,法には個別の無効を定める規定があること(例えば法238条の3第2項等)からすると,同項の趣旨は,法令に違反してされた地方公共団体の行為が無効となる場合があることを注意的に規定したにすぎず,違法な行為の効力も,当然に無効となるものではなく,具体的な法令等の趣旨,目的,違反行為の性質や相手方の取引の安全を考慮して 地方公共団体の行為が無効となる場合があることを注意的に規定したにすぎず,違法な行為の効力も,当然に無効となるものではなく,具体的な法令等の趣旨,目的,違反行為の性質や相手方の取引の安全を考慮して判断すべきものである。イそこで検討するに,専決処分は,地方公共団体内部における権限の分配や手続の問題であって,実際上も,一般的に,取引の相手方からはその適否についてまで容易に認識することができないことからして,取引の相手方を保護すべき必要性が優先する場合があるというべきであり,違法な専決処分に基づく契約が私法上当然に無効になると解すべきではない。ウ前記前提事実及び認定事実によれば,本件贈与契約に先立ち,本件値下げ合意がされ,a市以外の自治体は特に問題もなく補助金を交付し,これを受けてX鉄道は運賃値下げを実施したこと,本件9月議会が議決に至らずに閉会したことにより専決処分をなす形式的要件は存すること,a市は,X鉄道に対し,補助金につき交付決定をした旨の通知を送付し,特段本件専決処分の適法性を疑わせるような事情を何ら付記していないこと等の事情が認められ,その他,原告ら主張の点を踏まえても,X鉄道に本件専決処分が違法であることを知りながらあえて贈与契約を締結したことをうかがわせるに足りる事情があるとは認められないことを合わせて考慮すれば,X鉄道は本件専決処分により本件贈与契約が適法に締結されたものと信じ,そう信じるにつき正当な理由があるというべきである。エそして,適法な専決処分を前提として本件贈与契約を締結するに至ったX鉄道の利益に配慮する必要がある一方で,A元市長がその責任を免れない以上,本件贈与契約を私法上無効としなければ,専決処分に係る法の趣旨を没却する結果になるとは認められないことにかんがみれば,本件贈与契約が私 に配慮する必要がある一方で,A元市長がその責任を免れない以上,本件贈与契約を私法上無効としなければ,専決処分に係る法の趣旨を没却する結果になるとは認められないことにかんがみれば,本件贈与契約が私法上無効とまではいえない。オなお,仮に本件専決処分及びこれに基づく契約が無効となると解するとしても,上記のとおり,専決処分においては,取引の相手方を保護する必要がある場合があり,本件においてもその必要性が認められること,一定の範囲で費目の流用や予備費の使用も許される場合があり,このような範囲では,長は別途予算措置を講ずることなく補助金の交付に係る贈与契約を締結しうることからして,それは絶対的無効ではなく,A元市長は,その権限を超えて代表行為を行ったことから市に効果が帰属しない状態であるにすぎず,X鉄道が本件贈与契約は適法な契約であると信じたことには正当な理由があったものと認められるため,民法110条類推適用により,本件贈与契約の効果は市に帰属するというべきである。⑶ 以上によれば,本件贈与契約は,違法ではあるものの,私法上無効とはいえず,X鉄道が,法律上の原因なく補助金を利得したとは認められないので,X鉄道は,不当利得返還義務を負わない。 5 請求の趣旨1のうち払込手数料に係る訴えについて原告らは,a市が補助金を支出する際に生じた手数料の支払を求めるが,具体的金額やその算定方法は明示されていない。法242条の2第1項4号に基づく訴訟においては,損害賠償等の請求を命ずる判決が確定した場合,普通地方公共団体の長は,当該判決が確定した日から60日以内という短期間のうちに,当該請求に係る損害賠償の支払を請求しなければならないことからすると(法242条の3第1項),短期間のうちに支払を請求できる程度に請求の内容が特定 決が確定した日から60日以内という短期間のうちに,当該請求に係る損害賠償の支払を請求しなければならないことからすると(法242条の3第1項),短期間のうちに支払を請求できる程度に請求の内容が特定されている必要があるというべきところ,金額等を定めないまま抽象的に払込手数料相当額の支払を求める訴えは,請求が不特定といわざるを得ず,不適法として却下を免れない。 6 結論以上によれば,a市は,A元市長に対して,不法行為に基づく2363万2000円の損害賠償請求権を有していることが認められ,原告らが選択的に主張する債務不履行に基づく損害賠償責任について判断するまでもなく,被告はその行使を違法に怠っているというべきであり,X鉄道に対しては,本件贈与契約が有効である以上,利得につき法律上の原因がないとは認められないため,請求権を有しているとは認められない。したがって,請求の趣旨1のうち,2363万2000円の支払を求める部分については理由があるからこれを認容し,請求の趣旨1のうち払込手数料に係る訴えについては不適法であるから却下し,その余の請求については理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。千葉地方裁判所民事第3部裁判長裁判官多 見 谷 寿 郎裁判官 大谷太裁判官石見美湖
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