令和1(行ウ)121 公文書非公開決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年6月4日 大阪地方裁判所
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判決文本文21,965 文字)

令和2年6月4日判決言渡令和元年(行ウ)第121号公文書非公開決定処分取消請求事件主文 1 高槻市消防長が令和元年6月27日付けで原告に対してした公文書非公開決定(高消警第〇号)のうち,別紙1「請求認容部分目録」記載の部分を公開し ないとした部分を取り消す。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを12分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求高槻市消防長が令和元年6月27日付けで原告に対してした公文書非公開決定(高消警第〇号。以下「本件決定」という。)のうち,別紙2「取消請求対象部分目録」記載の部分(以下「本件非公開部分」という。)を公開しないとした部分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,高槻市情報公開条例(平成15年高槻市条例第18号。以下「本件条例」という。)上の情報公開の実施機関である高槻市消防長に対し,本件条例5条1項1号に基づき,「救急活動記録票の電磁的記録のうち搬送先をA,B,C,D,E,F,G,HまたはIとするもの。(平成25年度から令和元年 度分)」(以下「本件記録」という。)の公開を請求したところ(以下,同請求を「本件公開請求」という。),高槻市消防長が,本件条例6条1項1号に該当する非公開情報であるとして全部を公開しない旨の決定(本件決定)をしたため,本件決定のうち,別紙2「取消請求対象部分目録」記載の部分(本件非公開部分)には,本件条例6条1項各号所定の非公開とすべき情報は記録されていない旨を 主張して,本件決定のうち,本件記録について本件非公開部分を公開しないとした部分の取消しを求める事案である(なお,本件決定により,別紙2「取消請求対象部分目録」記載の① ていない旨を 主張して,本件決定のうち,本件記録について本件非公開部分を公開しないとした部分の取消しを求める事案である(なお,本件決定により,別紙2「取消請求対象部分目録」記載の①②の各欄に係る情報は非公開とされたが,原告は,本件訴訟において,その部分については本件決定の取消しを求めていない。)。 1 本件条例の定め(甲2) (1) 定義ア 「実施機関」とは,市長,教育委員会,選挙管理委員会,公平委員会,監査委員,農業委員会,固定資産評価審査委員会,公営企業管理者,消防長及び議会をいう(2条1号)。 イ 「公文書」とは,実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書, 図画,写真,フィルム,スライド及び電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。) であって,実施機関において組織的に用いるものとして管理しているものをいう(2条2号本文)。 (2) 公開請求権者等 市の区域内に住所を有する者は,実施機関に対して,公文書の公開を請求することができる(5条1項1号)。 (3) 公文書の公開義務実施機関は,公開請求があったときは,公開請求に係る公文書に次の各号(6条1項各号)に掲げる情報(以下「非公開情報」という。)のいずれか が記録されている場合を除き,公開請求をした者(以下「請求者」という。)に対し,当該公文書を公開しなければならない(同項柱書き)。 ア個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。) であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの (他の情報と照合することにより,特定 の個人を識別することができることと 情報を除く。) であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの (他の情報と照合することにより,特定 の個人を識別することができることとなるものを含む。以下「個人識別情 報」という。) 又は特定の個人を識別することはできないが,公開することにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの(以下「利益侵害情報」という。)。ただし,次に掲げる情報を除く。(6条1項1号柱書き)(ア) 法令(条例を含む。以下同じ。) の規定により又は慣行として公にさ れ,又は公にすることが予定されている情報(6条1項1号ア)(イ) 人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公開することが必要であると認められる情報(6条1項1号イ)(ウ) 当該個人が公務員等(国家公務員法(昭和22年法律第120号)2条1項に規定する国家公務員(独立行政法人通則法(平成11年法律第 103号)2条4項に規定する行政執行法人の役員及び職員を除く。),独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号)2条1項に規定する独立行政法人等をいう。)の役員及び職員並びに地方公務員法(昭和25年法律第261号)2条に規定する地方公務員をいう。)である場合において,当該情報がその 職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員等の職及び氏名並びに当該職務遂行の内容に係る部分。ただし,当該公務員等の氏名に係る部分を公開することにより,当該公務員等の個人の権利利益が不当に害されるおそれがある場合にあっては,当該氏名に係る部分を除く。(6条1項1号ウ) イ 6条1項2~6号略(4) 部分公開ア実施機関は,公開請求に係る公文書に非 利利益が不当に害されるおそれがある場合にあっては,当該氏名に係る部分を除く。(6条1項1号ウ) イ 6条1項2~6号略(4) 部分公開ア実施機関は,公開請求に係る公文書に非公開情報とそれ以外の情報とが併せて記録されている場合において,非公開情報とそれ以外の情報とを容易に,かつ,公開請求の趣旨を損なわない程度に分離できるときは,当該 非公開情報が記録されている部分を除いて,公文書を公開しなければなら ない(7条1項)。 イ公開請求に係る公文書に6条1項1号の情報(特定の個人を識別することができるものに限る。) が記録されている場合において,当該情報のうち,氏名,生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより,公開しても,個人の権利利益が害されるお それがないと認められるときは,当該部分を除いた部分は,同号の情報に含まれないものとみなして,7条1項(上記ア)の規定を適用する(7条2項)。 (5) 公開の決定等実施機関は,公開請求に係る公文書の全部を公開しない旨の決定又は一部 を公開する旨の決定をしたときは,速やかに,その理由を記載した書面により,当該決定の内容を請求者に通知しなければならない(11条3項,4項前段)。 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1) 当事者原告は,高槻市の区域内に住所を有する者である。 (2) 救助活動記録票について高槻市においては,救急隊員が,別紙3「救急活動記録票」の書式に個々の救急活動に係る情報を入力した電磁的記録を作成し,高槻市消防長は,当 該電磁的記録を組織的に用いるものとして管理するほか,当該電磁的記録を印刷して 員が,別紙3「救急活動記録票」の書式に個々の救急活動に係る情報を入力した電磁的記録を作成し,高槻市消防長は,当 該電磁的記録を組織的に用いるものとして管理するほか,当該電磁的記録を印刷して決裁に供された文書を管理している。救急活動記録票のうち,次のア~カの各欄に記録される情報の概要は次のとおりである。(甲3,6,弁論の全趣旨)ア 「決裁」及び「審議」の各欄 「決裁」及び「審議」の各欄には,署長・課長,副署長・課長,課長補 佐,係長,主任及び係員の押印欄があり,電磁的記録である救急活動記録票が文書として印刷された場合に,その内容を確認・決裁した各役職の者の印章が押印される。 イ 「覚知日」,「指令日時」,「覚知時刻」,「出場時刻」,「現着時刻」,「接触時刻」,「車内収容時刻」,「現発時刻」,「病院着時刻」及び「帰 署時刻」の各欄(別紙3「救急活動記録票」に,「覚知時分」~「帰署時分」などと記載されているのを,上記のとおり,「覚知時刻」~「帰署時刻」と表記した。以下同じ。以下,以上の各欄を併せて「日時情報欄」という。)これらの各欄には,①傷病者の覚知,②救急活動の指令,③消防署等の 出発,④傷病者の所在する現場への到着,⑤傷病者との接触,⑥傷病者の救急車内への収容,⑦現場からの出発,⑧搬送先の病院への到着,⑨救急隊の消防署等への帰着の日時又は時刻という情報が記録される。 ウ 「出場隊名」,「隊長名」,「機関員名」,「隊員名」及び「救命士」の各欄 「出場隊名」,「隊長名」,「機関員名」及び「隊員名」の各欄には,それぞれ,救急活動記録票に記録された救急活動に当たった救急隊の名称,その隊長,機関員及び隊員の氏名が記録される。 また,「救命士」欄には,①救急活動記録票に記録 関員名」及び「隊員名」の各欄には,それぞれ,救急活動記録票に記録された救急活動に当たった救急隊の名称,その隊長,機関員及び隊員の氏名が記録される。 また,「救命士」欄には,①救急活動記録票に記録された救急活動に当たった者の中に救急救命士の資格を有する者がいたか否か,②いた場合に はその人数,③隊長,機関員,隊員のうち,いずれのものが有資格者であるかが記録される。 エ 「場所区分」,「事故種別」,「搬送・不搬送,不搬送理由」,「連携活動」及び「現場携行資器材」の各欄①「場所区分」欄には,「住宅」,「公衆の場所」,「仕事場」,「道 路」及び「その他」といった救急隊が出場した場所について,②「事故種 別」欄には,救急隊が対応した事故が,「急病」,「交通事故」,「一般負傷」,「加害」,「水難」,「自然」(自然災害を意味する。),「自損」等のいずれの種類に該当するかについて,③「搬送・不搬送,不搬送理由」欄には,救急隊が傷病者を搬送したか否か,搬送しなかった場合は,「緊急性なし」,「傷病者なし」,「酩酊」,「死亡」等の搬送をしなか った理由について,④「連携活動」欄には,救急活動を行うに当たり,連携を行った「他救急隊」,「消火隊」,「ヘリ」等について,⑤「現場携行資器材」欄には,救急隊が携行した,「気道確保器材」,「酸素」等の資器材について,それぞれ,別紙3「救急活動記録票」のとおり,あらかじめ設けられた項目に沿い,チェックボックスにチェックを付ける方式で 記録される。 オ 「出場先概要」欄救急隊が出場した場所の性質を示す情報を記録する欄であり,具体例としては,「一般住宅」,「マンション6階」,「駐車場」及び「路上(歩道上)」等の情報が記録される。 カ 「搬送先」欄傷病者が搬送され 場所の性質を示す情報を記録する欄であり,具体例としては,「一般住宅」,「マンション6階」,「駐車場」及び「路上(歩道上)」等の情報が記録される。 カ 「搬送先」欄傷病者が搬送された医療機関について,「市区」,「科目」及び「医療機関別」を記録する各欄に加え,国立・公立,病院・診療所等の医療機関の種別を記録する欄があり,傷病者が搬送された医療機関名,診療科目等の情報が記録される。 (3) 前件訴訟原告は,高槻市消防長に対し,本件条例5条1項1号に基づき,平成23年度~平成29年度分の救急活動記録票(電磁的記録として管理されているもの。以下「前件記録」という。)の公開の請求をしたところ,前件記録の全部を公開しない旨の決定(以下「前件決定」という。)を受けたことから, 平成29年8月22日,被告を相手に,前件記録のうち別紙4「前件非公開 部分目録」記載の部分には,本件条例6条1項各号所定の非公開とすべき情報は記録されていない旨を主張して,前件決定のうち,前件記録について別紙4「前件非公開部分目録」記載の部分を公開しないとした部分の取消しを求める訴訟を大阪地方裁判所に提起した(当庁平成29年(〇)第〇号事件)。 大阪地方裁判所は,平成30年11月9日,前件決定のうち,別紙5「前 件請求認容部分目録」記載の部分を公開しないとした部分の取消しを求める請求を認容し,その余の請求を棄却する旨の判決(以下「前件地裁判決」という。)をした。 被告が,上記判決を不服として大阪高等裁判所に控訴したところ(大阪高等裁判所平成30年(〇)第〇号事件),同裁判所は,令和元年5月16日, 別紙5「前件請求認容部分目録」記載の認容部分のうち,「搬送先」,「統計」及び「転送」の各欄に記録される情報 ろ(大阪高等裁判所平成30年(〇)第〇号事件),同裁判所は,令和元年5月16日, 別紙5「前件請求認容部分目録」記載の認容部分のうち,「搬送先」,「統計」及び「転送」の各欄に記録される情報に係る部分の取消しを求める部分は理由があるが,その余の部分の取消しを求める部分は理由がないとの判決(以下「前件高裁判決」という。)をした。(以上につき,甲6,7)(4) 本件公開請求 原告は,令和元年5月16日付けで,高槻市消防長に対し,「救急活動記録票の電磁的記録のうち搬送先をA,B,C,D,E,F,G,HまたはIとするもの。(平成25年度から令和元年度分)」(以下,これらの病院を併せて「本件9病院」という。)の公開を請求した(本件公開請求。甲4)。 本件公開請求において原告が「搬送先」として特定した医療機関(本件9 病院)は,Gを除き,いずれも,複数の診療科目がある二次又は三次救急医療機関であり,Gは,内科を診療科目とする二次救急医療機関である(甲5)。 (5) 本件決定高槻市消防長は,令和元年6月27日付けで,原告に対し,本件公開請求について,公開しないことに決定したこと及び下記のとおり公開しない理由 を記載して,全部を公開しない旨の決定(本件決定)をした(甲4)。 記本件条例6条1項1号に該当本件公開請求に係る部分は,個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別 することはできないが,公開することにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるものであり,同号ただし書のいずれにも該当しないため(6) 本件訴えの提起原告は,令和元年8月9日,本件訴えを提起した( はできないが,公開することにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるものであり,同号ただし書のいずれにも該当しないため(6) 本件訴えの提起原告は,令和元年8月9日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 争点(本件非公開部分が本件条例6条1項1号柱書き本文の定める非公開情 報に該当するか否か)及び当事者の主張(被告の主張)(1)ア本件非公開部分のうち,「搬送先」欄に記録される情報は,傷病者が搬送された医療機関の情報であるため,まさに傷病者個人に関わりのある情報であり,本件条例6条1項1号柱書き本文の「個人に関する情報」に該 当する。 イ救急活動記録票記載の「覚知日」,「指令日時」等の時間的情報,「場所区分」,「事故種別」等の欄に記録された情報が開示された場合,かかる情報と,報道やインターネットによる情報,傷病者と隣近所の関係にあることから知り得る情報等を照合することによって,特定の個人を識別す ることが可能となるため,個人識別情報に該当し得る。 例えば,「事故種別」欄のうち,「自然」や「水難」といった項目については,これらの発生件数が年間を通じてごく少数であるため,また,「加害」や「自損」といった項目については,これらによる傷病者はマスメディア等によって報道されやすいため,時間的情報等が開示されると,マス メディア等の報道やインターネット上の情報等に照らして事案や傷病者を 特定することが容易である。 また,「不搬送理由」欄のうち,「酩酊」や「死亡」といった項目については,同一日に何件も起こるものではないため,時間的情報等が開示されると,近隣住民等で特定の個人が酩酊により救急車を呼んだ情報を知っている者にとっては,どの個人の救急活動記録票かの特定が可能となり, 死亡していた 起こるものではないため,時間的情報等が開示されると,近隣住民等で特定の個人が酩酊により救急車を呼んだ情報を知っている者にとっては,どの個人の救急活動記録票かの特定が可能となり, 死亡していた事案についても同様である。 さらに,「連携活動」欄のうち,「ヘリ」という項目については,高槻市において年間一,二件程度であり,時間的情報等が開示されると,マスメディア等の報道やインターネット上の情報等に照らして事案や傷病者を特定することが容易である。 ウ救急活動によって搬送された病院に傷病者がそのまま入院した場合,その病院は傷病者にとっての居所となり,住所と同様に個人の重大な私的情報であるといえる。例えば,DV被害にあった者が救急車によって搬送され入院した場合,入院先を調べようとした加害者が,救急活動が行われた日時の救急活動記録票の公開を求め,救急活動記録票に記録された時間的 情報や「場所区分」,「事故種別」,「連携活動」及び「出場先概要」といった他の情報と照らして被害者の救急活動記録票を特定し,そこに記録された「搬送先」を確認することで,被害者の居場所を特定することが可能になるのであって,こういった危険性があるとの観点からも,「搬送先」欄に記録される情報については公開されるべきではない。 (2)ア救急活動記録票の「搬送先」欄には,傷病者が搬送された医療機関名の情報が記録されるところ,大阪府内において,精神科及び心療内科のみを診療科目とする病院は25箇所,がん治療を専門とする病院は4箇所あることなどからすると,搬送先の医療機関名から病気の種別や受診の事実をうかがい知ることが可能となる。病気の種別や受診の事実は,個人の身体 に関わる重大な私的情報であり,個人の人格とも密接に関連するものとい うべき情 療機関名から病気の種別や受診の事実をうかがい知ることが可能となる。病気の種別や受診の事実は,個人の身体 に関わる重大な私的情報であり,個人の人格とも密接に関連するものとい うべき情報である。そして,これらの情報は,個人に関する情報の中でも秘匿性が極めて高く,他人に知られたくないと考えるのが通常であって,その期待は保護に値するものである。したがって,「搬送先」欄に記録される情報は,個人の人格と密接に関連し,又は公にすれば個人の正当な利益を害するおそれのあると認められるものであり,利益侵害情報に該当す るというべきである。 原告は,本件公開請求により求める情報は,G以外の搬送先は複数の診療科目がある二次又は三次救急医療機関であり,精神科及び心療内科のみを診療科目とする病院ではないから,利益侵害情報には当たらない旨主張する。しかしながら,上記に述べたところに加え,複数の診療科目がある 病院であっても,市民の中で特定の病気に対する治療が有名な病院があり,当該病院に搬送されたことをもって病気の種別をうかがい知ることができる場合があるものの,行政機関において当該事情を必ずしも把握することができないため,一律に非公開とせざるを得ないことからすれば,いかなる病院を受診したかがわかる「搬送先」欄に記録された情報は,複数の診 療科目があるか否かにかかわらず,利益侵害情報に該当するというべきであるから,原告の上記主張は認められない。 イ仮に被告が本件公開請求に対し「搬送先」欄を非開示として救急活動記録票の公開を行ったとしても,原告が本件公開請求とは別の情報公開請求において,指定する「搬送先」の病院名を変えて情報公開請求を行い,そ の開示された結果を照らし合わせることで,特定の「搬送先」の救急活動記録票を明らかに 原告が本件公開請求とは別の情報公開請求において,指定する「搬送先」の病院名を変えて情報公開請求を行い,そ の開示された結果を照らし合わせることで,特定の「搬送先」の救急活動記録票を明らかにすることが可能となり,実質的に「搬送先」欄に記録された情報を開示したことと同様の結果となる。そうすると,非公開情報として個人識別情報ないし利益侵害情報に該当する「搬送先」欄に記録された情報を公開しないために,本件公開請求に対し非公開とした本件決定は 適法である。 (原告の主張)本件非公開部分,すなわち,①日時情報欄,②「決裁」及び「審議」の各欄,③「出場隊名」,「隊長名」,「機関員名」,「隊員名」及び「救命士」の各欄,④「出場先概要」,「場所区分」,「事故種別」,「搬送・不搬送,不搬送理由」,「連携活動」及び「現場携行資器材」の各欄,⑤「搬送先」 欄に記録される各情報は,前件地裁判決で判示されているとおり,いずれも個人識別情報にも利益侵害情報にも該当しない。 被告は,⑤「搬送先」欄に記録される情報は,個人識別情報にも利益侵害情報にも該当する旨主張するが,前件地裁判決及び前件高裁判決は,⑤「搬送先」欄に記録される情報について,個人識別情報に該当しない旨判示して いることからすれば,被告の上記主張は失当である上,前件高裁判決は,精神科及び心療内科のみを診療科目とする病院の場合,他の情報と照合することによって,事案によっては当該傷病者をかなりの程度絞り込むことが可能であるとして,利益侵害情報に当たると判示しているにすぎず,本件公開請求により求める情報は,G以外の搬送先は複数の診療科目がある二次又は三 次救急医療機関であり,精神科及び心療内科のみを診療科目とする病院ではなく,また,Gの診療科目は内科のみだが,内 件公開請求により求める情報は,G以外の搬送先は複数の診療科目がある二次又は三 次救急医療機関であり,精神科及び心療内科のみを診療科目とする病院ではなく,また,Gの診療科目は内科のみだが,内科には様々な病気が考えられるから,利益侵害情報には当たらず,被告の上記主張は失当である。 被告は,「事故種別」,「不搬送理由」及び「連携活動」等の情報は,時間的情報が開示されるとすれば,他の情報と照らして個人を識別できる情報 となるなどとも主張するが,何ら現実味のないものであり,失当である。 第3 当裁判所の判断 1 争点(本件非公開部分が本件条例6条1項1号柱書き本文の定める非公開情報に該当するか否か)について(1) 本件非公開部分の「個人に関する情報」該当性について ア本件条例6条1項1号柱書き本文にいう「個人に関する情報」の意義 本件条例6条1項柱書きは,実施機関は,公開請求があったときは,公開請求に係る公文書に同項各号に掲げられた非公開情報のいずれかが記録されている場合を除き,請求者に対し,当該公文書を公開しなければならない旨を定め,同項1号柱書き本文は,個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,個人識別情報又は利益侵 害情報に該当するものについて,原則として,非公開情報とする旨を定めている。 そして,本件条例6条1項1号柱書き本文にいう「個人に関する情報」については,「事業を営む個人の当該事業に関する情報」が除外されている以外には文言上何ら限定されていないから,個人の思想,信条,健康状 態,所得,学歴,家族構成,住所等の私事に関する情報に限定されるものではなく,個人に関わりのある情報であれば,原則として同号にいう「個人に関する情報」に当たると解するのが相当 ,信条,健康状 態,所得,学歴,家族構成,住所等の私事に関する情報に限定されるものではなく,個人に関わりのある情報であれば,原則として同号にいう「個人に関する情報」に当たると解するのが相当である(最高裁平成15年11月11日第三小法廷判決・民集57巻10号1387頁参照)。 イ本件記録の非公開部分には,①救急活動の日時に係る情報が記録される 日時情報欄,②救急活動の場所に係る情報が記録される「出場先概要」及び「場所区分」の各欄,③救急活動の日時・場所以外の情報が記録される「決裁」,「審議」,「出場隊名」,「隊長名」,「機関員名」,「隊員名」,「救命士」,「事故種別」,「搬送・不搬送,不搬送理由」,「連携活動」,「搬送先」及び「現場携行資器材」の各欄があるところ,これ らの情報は,いずれも特定の個人である傷病者が受けた救急活動に関する情報として,当該傷病者に関わる情報であることが明らかであるから,本件条例6条1項1号柱書き本文の「個人に関する情報」に該当し,事業を営む個人の当該事業に関する情報には該当しないというべきである。 (2) 本件非公開部分の個人識別情報該当性について ア日時情報欄について 上記前提事実(2)イのとおり,日時情報欄には,傷病者の覚知等の日時又は時刻が記録される。証拠(甲6,乙2)及び弁論の全趣旨によれば,高槻市における救急出動件数は,平成27年につき1万9022件,平成28年につき2万0317件,平成29年につき2万0365件,平成30年につき2万2381件であって,平成27年につき,出動件数が1日平 均52件,平成28年につき,出動件数が1日平均約56件,搬送人数が1日平均約51人,平成29年につき,出動件数が1日平均56件,搬送件数が1日平均51件 ,平成27年につき,出動件数が1日平 均52件,平成28年につき,出動件数が1日平均約56件,搬送人数が1日平均約51人,平成29年につき,出動件数が1日平均56件,搬送件数が1日平均51件,平成30年につき,出動件数が1日平均約61件,搬送人数が1日平均約55人であることが認められ,本件記録の対象期間である平成25年度~令和元年度を通じて,おおむね同程度の出動件数・ 搬送人数があったと推認されるところ,これを左右するに足りる証拠はない。このように,高槻市では,救急隊が1日に多数回出動していることに加え,「出場隊名」欄等に記録される情報によっても,当該活動記録票における出場隊の担当地域が判明することにすぎないことを考慮すれば,救急活動の日時に係る情報は,他の情報と照合しても,特定の個人を識別す ることができるとはいえない。 したがって,日時情報欄に記録される情報は,個人識別情報に該当すると認めることができない。 イ救急活動の場所に係る情報が記録される各欄について上記前提事実(2)エ及びオのとおり,「出場先概要」及び「場所区分」の 各欄に記録される情報は,いずれも,傷病者個人が所在した場所の一般的な性質や区分を示すものにすぎないから,上記アの救急活動の日時に係る情報及び「出場隊名」等の担当地域に係る情報等と照合しても,傷病者個人を識別することができるとはいえない。 したがって,「出場先概要」及び「場所区分」の各欄に記録される情報 は,個人識別情報に該当すると認めることができない。 ウ救急活動の日時・場所以外の情報が記録される各欄について(ア) 「決裁」及び「審議」の各欄について上記前提事実(2)アのとおり,電磁的記録である本件記録において,「決裁」及び「審議」の各欄は空欄である 日時・場所以外の情報が記録される各欄について(ア) 「決裁」及び「審議」の各欄について上記前提事実(2)アのとおり,電磁的記録である本件記録において,「決裁」及び「審議」の各欄は空欄であるから,個人識別情報が記録されていると認めることができない。 (イ) 「出場隊名」,「隊長名」,「機関員名」,「隊員名」及び「救命士」の各欄について上記前提事実(2)ウのとおり,「出場隊名」,「隊長名」,「機関員名」,「隊員名」及び「救命士」の各欄には,救急活動記録票に記録された救急活動に当たった救急隊の名称,その隊長,機関員及び隊員の氏名等が 記録される。証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば,高槻市においては,各出場隊の担当地域が定められており,出場隊名により,救急活動の行われた地域が一定程度特定できることが認められる。しかしながら,出場隊名の担当地域や救急活動に従事した救急救命士の有無及び人数等が判明し,これに加えて上記アの救急活動の日時に係る情報を照合した としても,特定の個人を識別することができるとは認められない。 したがって,「出場隊名」,「隊長名」,「機関員名」,「隊員名」及び「救命士」の各欄に記録される情報は,個人識別情報に該当すると認めることができない。 (ウ) 「事故種別」,「搬送・不搬送,不搬送理由」,「連携活動」及び 「現場携行資器材」の各欄についてa 「事故種別」欄について上記前提事実(2)エのとおり,「事故種別」欄には,救急隊が対応した事故が,「急病」,「交通事故」,「一般負傷」,「加害」,「水難」,「自然」(自然災害を意味する。),「自損」等のいずれの種 類に該当するかについて,別紙3「救急活動記録票」のとおり,あら かじめ設けられた項目に ,「一般負傷」,「加害」,「水難」,「自然」(自然災害を意味する。),「自損」等のいずれの種 類に該当するかについて,別紙3「救急活動記録票」のとおり,あら かじめ設けられた項目に沿い,チェックボックスにチェックを付ける方式で記録される。 「事故種別」欄の項目の中には,「加害」,「水難」,「自然」,「自損」等といったマスメディアによって実名報道がされやすいものが含まれており,現に高槻市内で発生した水難事故や自然災害により 救急搬送された特定の個人について実名報道がされている(乙3,4)。 そして,証拠(乙2)及び弁論の全趣旨によれば,高槻市における救急出動件数のうち,「加害」は平成29年が101件,平成30年が87件,「水難」は平成29年が8件,平成30年が7件,「自然」は平成29年が1件,平成30年が63件,「自損」は平成29年が 181件,平成30年が164件であることが認められ,本件記録の対象期間である平成25年度~令和元年度を通じて,おおむね同程度の出動件数があったと推認されるところ,これを左右するに足りる証拠はない。このように,高槻市における「事故種別」ごとの救急出動件数をみると,「水難」や「自然」のようにその発生件数が少数にと どまる項目が含まれていることからすれば,「事故種別」欄に記録される情報に,上記アの救急活動の日時に係る情報や上記イの救急活動の場所に係る情報のほか,マスメディアによって報道された情報等と照合することにより,特定の個人を識別することが可能となると考えられる。 したがって,「事故種別」欄に記録される情報は,他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができるものと認められる。 b 「搬送・不搬送,不搬送理由」欄について本件 がって,「事故種別」欄に記録される情報は,他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができるものと認められる。 b 「搬送・不搬送,不搬送理由」欄について本件記録は,本件9病院を搬送先とする救急活動記録票であることから,上記前提事実(2)エのとおり,本件記録の「搬送・不搬送,不搬 送理由」欄に記録される情報は,「搬送」にチェックがされたものに 限られるところ,上記アで認定した高槻市における救急出動件数・搬送人数からすれば,傷病者個人の搬送に係る情報に,「事故種別」欄に記録される情報を除く,上記アの救急活動の日時に係る情報や上記イの救急活動の場所に係る情報等を照合しても,傷病者個人を特定することは困難であるから,傷病者個人の搬送に係る情報によって,特 定の個人を識別することができるとは認められない。 なお,被告は,「不搬送理由」欄のうち,「酩酊」や「死亡」といった項目については,同一日に何件も起こるものではないため,時間的情報等が開示されると,近隣住民等で特定の個人が酩酊により救急車を呼んだ情報を知っている者にとっては,どの個人の救急活動記録 票かの特定が可能となり,死亡していた事案についても同様である旨主張するが,本件公開請求の対象はいずれも搬送事案に限られることから,その前提を誤るものであり,採用することができない。 c 「連携活動」欄について上記前提事実(2)エのとおり,「連携活動」欄に記録される情報は, 類型として整理された項目にチェックを付ける方式で記録されるものであり,その内容も,マスメディアによって実名及び連携活動の内容が報道されるなどといった特段の事情がない限り,傷病者個人の識別につながるような個別具体的な情 目にチェックを付ける方式で記録されるものであり,その内容も,マスメディアによって実名及び連携活動の内容が報道されるなどといった特段の事情がない限り,傷病者個人の識別につながるような個別具体的な情報が記録されているとはいえないから,特定の個人を識別することができるとは認められない。 被告は,「連携活動」欄のうち,「ヘリ」という項目については,高槻市において年間一,二件程度であり,時間的情報等が開示されると,マスメディア等の報道やインターネット上の情報等に照らして事案や傷病者を特定することが容易である旨主張する。しかしながら,本件記録の対象期間である平成25年度~令和元年度にかけて,マス メディアが高槻市内においてヘリと連携活動を行った事案につき実名 で報道をしたり,インターネット上に同事案に係る情報が掲載されたりしたことをうかがわせる証拠は存在しないから,被告の上記主張は採用することができない。 d 「現場携行資器材」欄について上記前提事実(2)エのとおり,「現場携行資器材」欄に記録される情 報は,類型として整理された項目にチェックを付ける方式で記録されるものであり,その内容も,傷病者個人の識別につながるような個別具体的な情報が記録されているとはいえないから,特定の人を識別することができるとは認められない。 e したがって,「事故種別」欄に記録される情報は,個人識別情報に 該当すると認めることができるが,「搬送・不搬送,不搬送理由」,「連携活動」及び「現場携行資器材」の各欄に記録される情報は,個人識別情報に該当すると認めることができない。 (エ) 「搬送先」欄について上記前提事実(2)カのとおり,「搬送先」欄には,傷病者が搬送された 医療機関について,「市区」,「科目」及び 個人識別情報に該当すると認めることができない。 (エ) 「搬送先」欄について上記前提事実(2)カのとおり,「搬送先」欄には,傷病者が搬送された 医療機関について,「市区」,「科目」及び「医療機関別」を記録する各欄に加え,国立・公立,病院・診療所等の医療機関の種別を記録する欄があり,傷病者が搬送された医療機関名,診療科目等の情報が記録される。 そして,上記アで認定した高槻市における救急出動件数・搬送人数か らすれば,傷病者個人が搬送された医療機関に係る情報に,「事故種別」欄に記録される情報を除く,上記アの救急活動の日時に係る情報や上記イの救急活動の場所に係る情報等を照合しても,傷病者個人を特定することは困難であるから,搬送先の医療機関に関する情報によって,傷病者個人を識別することができるとは認められない。 したがって,「搬送先」欄に記録される情報は,個人識別情報に該当 すると認めることができない。 エ小括以上によれば,本件非公開部分のうち,「事故種別」欄に記録される情報は,個人識別情報に該当すると認められ,その余の各欄に記録される情報は,個人識別情報に該当すると認めることができない。 なお,被告は,DV被害者の搬送先を特定するために加害者が情報公開請求する場合を例に「搬送先」欄に記録される情報については公開されるべきではない旨主張するところ,その趣旨は必ずしも明らかではないが,上記ウ(エ)で説示したとおり,「事故種別」欄に記録される情報を除く,上記アの救急活動の日時に係る情報や上記イの救急活動の場所に係る情報 等を照合しても,傷病者個人を特定することは困難であるから,被告の上記主張は採用することができない。 (3) 本件非公開部分の利益侵害情報該当性についてア本件条例6条 の場所に係る情報 等を照合しても,傷病者個人を特定することは困難であるから,被告の上記主張は採用することができない。 (3) 本件非公開部分の利益侵害情報該当性についてア本件条例6条1項1号柱書き本文にいう利益侵害情報の意義本件条例6条1項1号柱書き本文は,個人識別情報に加え,特定の個人 を識別することはできないが,公開することにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの(利益侵害情報)を,原則として,非公開情報とする旨を定めている。そして,利益侵害情報を非公開情報とする趣旨は,一般には,個人識別情報を非公開情報とすることで個人の権利利益の保護は害されないと考えられるが,個人を識別できる部分を除いても,なお公 開することにより,個人の権利利益を害する場合があることから,かかるおそれがある情報を補充的に非公開情報とし,個人の権利利益を保護しようとしたものと解される。 イ 「決裁」及び「審議」の各欄について上記(2)ウ(ア)で説示したとおり,電磁的記録である本件記録において, 「決裁」及び「審議」の各欄は空欄であるから,利益侵害情報が記録され ていると認めることはできない。 ウ日時情報欄について救急活動の日時に係る情報(上記前提事実(2)イ)は,「搬送先」欄に記録される情報と併せても,特定の個人として識別されていない傷病者が,特定の日時に特定の医療機関に搬送されたことを明らかにするにすぎない。 そうすると,日時情報欄に記録される情報が,個人を識別できる部分を除いても,なお公開することにより,個人の権利利益を害するおそれがあるものとはいえない。 したがって,日時情報欄に記録される情報は,利益侵害情報に該当すると認めることができない。 エ 「出場隊名」,「隊長名」,「 により,個人の権利利益を害するおそれがあるものとはいえない。 したがって,日時情報欄に記録される情報は,利益侵害情報に該当すると認めることができない。 エ 「出場隊名」,「隊長名」,「機関員名」,「隊員名」及び「救命士」の各欄について「出場隊名」,「隊長名」,「機関員名」,「隊員名」及び「救命士」の各欄に記録される情報(上記前提事実(2)ウ)は,特定の個人として識別されていない傷病者について,救急活動に当たった救急隊の名称及びその 隊長等の氏名を明らかにするにすぎない。そうすると,上記各欄に記録される情報が,個人を識別できる部分を除いても,なお公開することにより,個人の権利利益を害するおそれがあるものとはいえない。 したがって,「出場隊名」,「隊長名」,「機関員名」,「隊員名」及び「救命士」の各欄に記録される情報は,利益侵害情報に該当すると認め ることができない。 オ 「場所区分」,「搬送・不搬送,不搬送理由」,「連携活動」及び「現場携行資器材」の各欄について「場所区分」,「搬送・不搬送,不搬送理由」,「連携活動」及び「現場携行資器材」の各欄に記録される情報(上記前提事実(2)エ)は,救急隊 が出場した場所,傷病者の搬送の有無等,連携を行った隊の種別,救急隊 が携行した資器材について,それぞれ救急活動記録票にあらかじめ設けられた定型的な情報をチェック式で記録するものであって,個人の人格に密接に関連した情報を含むものではなく,そのような情報を推測させるものともいえないから,個人を識別できる部分を除いても,なお公開することにより,個人の権利利益を害するおそれがあるものとはいえない。 したがって,「場所区分」,「搬送・不搬送,不搬送理由」,「連携活動」及び「現場携行資器材」の各欄に記録 いても,なお公開することにより,個人の権利利益を害するおそれがあるものとはいえない。 したがって,「場所区分」,「搬送・不搬送,不搬送理由」,「連携活動」及び「現場携行資器材」の各欄に記録される情報は,利益侵害情報に該当すると認めることができない。 カ 「出場先概要」欄について「出場先概要」欄に記録される情報(上記前提事実(2)オ)は,傷病者個 人が所在した場所の一般的な性質を示すものにすぎないから,個人を識別できる部分を除いても,なお公開することにより,個人の権利利益を害するおそれがあるものとはいえない。 したがって,「出場先概要」欄に記録される情報は,利益侵害情報に該当すると認めることができない。 キ 「搬送先」欄について(ア) 上記前提事実(2)カのとおり,「搬送先」欄には,傷病者が搬送された医療機関について,「市区」,「科目」,「医療機関別」を記録する欄に加え,国立・公立,病院・診療所等の医療機関の種別を記録する欄があり,傷病者が搬送された医療機関名,診療科目等の情報が記録され るものと認められる。 そして,本件公開請求は,本件9病院を搬送先とする救急活動記録票(本件記録)を対象とするものであるところ,証拠(甲5)及び弁論の全趣旨によれば,Gは,内科のみを診療科目とする二次救急医療機関であること,その他の医療機関は,複数の診療科目がある二次又は三次救 急医療機関であり,その中でもHは,診療科目として精神科があること が認められる(なお,三次救急医療機関であるIについては,同医療機関を搬送先とする「搬送先」欄の「科目」欄に特定の診療科目が記載されることはないか,仮に記載されるとしても,後記のとおり,特別の配慮を要するような精神科や心療内科といった診療科目は記載されないもの 関を搬送先とする「搬送先」欄の「科目」欄に特定の診療科目が記載されることはないか,仮に記載されるとしても,後記のとおり,特別の配慮を要するような精神科や心療内科といった診療科目は記載されないものと推察される。)。 (イ) 「搬送先」欄に記録される情報は,日時情報欄に記録される情報と併せると,特定の個人として識別されていない傷病者が,特定の日時に特定の医療機関に搬送されて特定の診療科目を受診したことを明らかにするものである。 特定の診療科目を受診したという情報をもって,当該傷病者の個別具 体的な傷病や同人が受けた医療措置等の内容を推測することはできないから,原則として,個人の人格と密接に関連する情報として保護に値するものとはいえない。 しかしながら,当該診療科目が精神科や心療内科(以下「精神科等」という。)であった場合には,精神科等を受診したという情報は,精神 疾患という類型の疾病に罹患していることなどを推測し得るものであるところ,このような情報は,社会通念に照らし,個人の身体に関わる重大な私的情報として個人に関する情報の中でも秘匿性が極めて高く,個人の人格と密接に関連する情報として保護に値するものというべきである。 本件9病院において診療科目に違いがあることから,以下,類型ごとに検討する。 a 搬送先をH以外の医療機関とする場合については,「搬送先」欄に記録される情報は,日時情報欄に記録される情報と併せると,特定の個人として識別されていない傷病者が,特定の日時に特定の医療機関 に搬送されて特定の診療科目(これらの医療機関では精神科等は含ま れない。)を受診したことを明らかにするものにずぎず,個人の人格と密接に関連する情報として保護に値するものとはいえない。 したがって,搬送先を 診療科目(これらの医療機関では精神科等は含ま れない。)を受診したことを明らかにするものにずぎず,個人の人格と密接に関連する情報として保護に値するものとはいえない。 したがって,搬送先をH以外の医療機関とする場合の「搬送先」欄に記録される情報は,個人を識別できる部分を除いても,なお公開することにより,個人の権利利益を害するおそれがあるものとはいえず, 利益侵害情報に該当すると認めることができない。 なお,被告は,複数の診療科目がある病院であっても,市民の中で特定の病気に対する治療が有名な病院があり,当該病院に搬送されたことをもって病気の種別をうかがい知ることができる場合があるものの,行政機関において当該事情を必ずしも把握することができないた め,一律に非公開とせざるを得ない旨主張するが,市民の中で特定の病気に対する治療が有名な病院である場合に,行政機関において当該事情を必ずしも把握することができないということはにわかに考え難いところ,この点を措くとしても,特定の診療科目(精神科等を除く。)を受診したという情報をもって,当該傷病者の個別具体的な傷病や同 人が受けた医療措置等の内容を推測することはできないといわざるを得ず,被告の上記主張は採用することができない。 b 搬送先をHとする場合については,同病院が精神科をも診療科目としていることから,「搬送先」欄のうち「科目」欄には「精神科」と記載される場合があり,その場合における当該情報は,日時情報欄に 記録される情報と併せると,特定の個人として識別されていない傷病者が,精神科を受診したという情報が明らかになるところ,上記のとおり,このような情報は,個人の人格と密接に関連する情報として保護に値するものというべきである。 したがって,搬送先をHとする場合に 者が,精神科を受診したという情報が明らかになるところ,上記のとおり,このような情報は,個人の人格と密接に関連する情報として保護に値するものというべきである。 したがって,搬送先をHとする場合には,「搬送先」欄のうち「科 目」欄に記録される情報は,上記(2)ウ(エ)で説示したとおり,個人識 別情報に該当するということはできないものの,なお公開することにより,個人の権利利益を害するおそれがあるものというべきであり,利益侵害情報に該当すると認めることができる。 ク小括以上によれば,「事故種別」欄を除いた本件非公開部分のうち,搬送先 をHとする場合の「搬送先」欄のうち「科目」欄に記録される情報は,利益侵害情報に該当するものと認めることができ,その余の各欄に記録される情報は,利益侵害情報に該当すると認めることができない。 2 部分公開の可否について(1) 上記1の検討によれば,本件非公開部分のうち,「事故種別」欄に記録さ れる情報は,個人識別情報に該当し,搬送先をHとする場合の「搬送先」欄のうち「科目」欄に記録される情報は,利益侵害情報に該当する一方,いずれも,本件条例6条1項1号ア,イ又はウに掲記の各情報に該当するとは認められないから,非公開情報というべきである。 そこで,以下,上記の各非公開情報が記録された部分を除いた本件記録の 部分公開の可否について検討する。 (2) 本件条例7条1項は,実施機関は,公開請求に係る公文書に非公開情報とそれ以外の情報とが併せて記録されている場合において,非公開情報とそれ以外の情報とを容易に,かつ,公開請求の趣旨を損なわない程度に分離できるときは,当該非公開情報が記録されている部分を除いて,公文書を公開し なければならない旨を規定する。 これを本件につい 以外の情報とを容易に,かつ,公開請求の趣旨を損なわない程度に分離できるときは,当該非公開情報が記録されている部分を除いて,公文書を公開し なければならない旨を規定する。 これを本件についてみると,本件記録には,別紙3「救急活動記録票」のとおり,上記(1)の非公開情報とそれ以外の情報が明確に区分して記録されており,これらを分離することが技術的に困難というべき事情は見当たらない。 そして,原告は,平成25年度~令和元年度分について,搬送先の医療機関 等の名称を含め,救急自動車による救急出勤に関する電磁的記録の公開請求 をしているところ(上記前提事実(4)),上記(1)の非公開情報以外の情報には,搬送先の医療機関や救急活動の日時等が含まれるから,非公開情報とそれ以外の情報とを,公開請求の趣旨を損なわない程度に分離することができる。 そうすると,本件記録については,本件条例7条1項所定の部分公開の要 件を満たすものといえる。 (3) したがって,実施機関である高槻市消防長は,本件条例7条1項に基づき,本件記録のうち,本件非公開部分から,「事故種別」欄及び搬送先をHとする場合の「搬送先」欄のうち「科目」欄に係る情報が記録された部分(別紙1「請求認容部分目録」記載の③の各欄に係る情報が記録された部分)を除 いた部分を公開しなければならない。 3 総括以上に説示したところによれば,本件決定のうち,本件非公開部分から,「事故種別」欄及び搬送先をHをとする場合の「搬送先」欄のうち「科目」欄に係る情報が記録された部分(別紙1「請求認容部分目録」記載の③の各欄に係る 情報が記録された部分)を除いた部分(すなわち,別紙1「請求認容部分目録」記載の部分)を公開しないとした部分は違法である。 第4 結論よって, 1「請求認容部分目録」記載の③の各欄に係る 情報が記録された部分)を除いた部分(すなわち,別紙1「請求認容部分目録」記載の部分)を公開しないとした部分は違法である。 第4 結論よって,原告の請求は,本件決定のうち,本件記録について別紙1「請求認容部分目録」記載の部分を公開しないとした部分の取消しを求める限度で理由があ るからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官松永栄治 (別紙3省略) 裁判官森田 亮 裁判官渡邊直樹 (別紙1)請求認容部分目録 平成25年度~令和元年度分の救急活動記録票の電磁的記録(搬送先をA,B,C,D,E,F,G,HまたはIとするもの)のうち,以下の各欄に係る情報が記 録された部分を除いた部分。 ①「フリガナ」,「傷病者氏名」,「傷病者住所」,「生年月日」,「医療機関選定理由」,「初診時傷病名」,「確定傷病名」,「搬送病院初診医師名」,「傷病程度」,「疾病分類」,「傷病者接触時情報」,「傷病者接触時所見」,「現場応急処置」及び「車内収容後の観察・判断・応急処置」の各欄 ②「出場先」,「救急指令内容」,「口頭指導」,「隊長総括」,「統計」,「転送」及び「備考」の各欄③「事故種別」欄及び搬送先をHとする場合の「搬送先」欄のうち「科目」欄以上 (別紙2)取消請求対象部分目録 平成25年度~令和元年度分の救急活動記録票の電磁的記録(搬送先をA,B,C,D,E,F,G,HまたはIとするもの)のうち,以下の各 (別紙2)取消請求対象部分目録 平成25年度~令和元年度分の救急活動記録票の電磁的記録(搬送先をA,B,C,D,E,F,G,HまたはIとするもの)のうち,以下の各欄に係る情報が記 録された部分を除いた部分。 ①「フリガナ」,「傷病者氏名」,「傷病者住所」,「生年月日」,「医療機関選定理由」,「初診時傷病名」,「確定傷病名」,「搬送病院初診医師名」,「傷病程度」,「疾病分類」,「傷病者接触時情報」,「傷病者接触時所見」,「現場応急処置」及び「車内収容後の観察・判断・応急処置」の各欄 ②「出場先」,「救急指令内容」,「口頭指導」,「隊長総括」,「統計」,「転送」及び「備考」の各欄以上 (別紙4)前件非公開部分目録 平成23年度~平成29年度分の救急活動記録票(電磁的記録として管理されているもの)のうち,「フリガナ」,「傷病者氏名」,「傷病者住所」,「生年 月日」,「医療機関選定理由」,「初診時傷病名」,「確定傷病名」,「搬送病院初診医師名」,「傷病程度」,「疾病分類」,「傷病者接触時情報」,「傷病者接触時所見」,「現場応急処置」及び「車内収容後の観察・判断・応急処置」の各欄に係る情報が記録された部分を除いた部分以上 (別紙5)前件請求認容部分目録 平成23年度~平成29年度分の救急活動記録票(電磁的記録として管理されているもの)のうち,①「フリガナ」,「傷病者氏名」,「傷病者住所」,「生 年月日」,「医療機関選定理由」,「初診時傷病名」,「確定傷病名」,「搬送病院初診医師名」,「傷病程度」,「疾病分類」,「傷病者接触時情報」,「傷病者接触時所見」,「現場応急処置」及び「車内収容後の観 月日」,「医療機関選定理由」,「初診時傷病名」,「確定傷病名」,「搬送病院初診医師名」,「傷病程度」,「疾病分類」,「傷病者接触時情報」,「傷病者接触時所見」,「現場応急処置」及び「車内収容後の観察・判断・応急処置」の各欄並びに②「出場先」,「救急指令内容」,「口頭指導」,「隊長総括」及び「備考」の各欄に係る情報が記録された部分を除いた部分 以上

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