平成29(ワ)1057 賃料増額等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年7月26日 名古屋地方裁判所
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判決文本文17,604 文字)

- 1 -令和元年7月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官賃料増額等請求事件口頭弁論終結日平成31年4月16日判決主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 原告と被告との間の別紙物件目録記載の建物の賃料は,平成28年7月1日以降月額77万7800円であることを確認する。 2 被告は,原告に対し,81万2800円及びうち10万1600円に対する平成28年7月16日から,うち10万1600円に対する同年8月16日から,うち10万1600円に対する同年9月16日から,うち10万1600円に対する同年10月18日から,うち10万1600円に対する同年11月16日から,うち10万1600円に対する同年12月16日から,うち10万1600円に対する平成29年1月17日から,うち10万1600円に対する同年2月16日から各支払済みまで年1割の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,被告に対し,別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)を,賃料を平成23年11月1日以降月額67万6200円と定めて賃貸していた原告が,平成28年6月24日に賃料増額の意思表示をしたとして,被告に対し,借地借家法32条1項,2項に基づき,同年7月1日(以下「本件時点」という。)以降の賃料が月額77万7800円であることの確認並びに同年7月分から平成29年2月分までの賃料不足額合計81万2800円及びこれに対す- 2 -る各支払期の翌日から支払済みまで年1割の割合による利息の支払を求める事案である。 2 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に 万2800円及びこれに対す- 2 -る各支払期の翌日から支払済みまで年1割の割合による利息の支払を求める事案である。 2 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者ア原告は,本件建物を所有している(甲1,原告本人(同人の陳述書(甲15)を含む。以下同じ。))。 イ被告は,不動産賃貸業等を営む株式会社であり,自ら建築を請け負った建物を一括して賃借し,個別の入居者に転貸する事業を行っている(弁論の全趣旨)。 ⑵ 原告は,平成17年1月27日,被告との間で,原告を賃貸人,被告を賃借人として,本件建物について賃貸借契約(以下「本件契約」という。)を締結した。本件契約の内容は,概要,以下のとおりであった(甲1)。 ア 1条(目的)原告は,原告所有の本件建物を以下の条項にて,被告に一括賃貸する。 被告は,本件建物を居住用転貸事業の目的にのみ使用する。 イ 2条(契約期間)本契約の期間は,平成17年1月27日より平成47年1月26日までの30年間とする。 ウ 3条(一括賃貸料及び支払方法) 本件建物の一括賃貸料は,当初10年間は,月額77万7800円とし,不変とする。 ただし,原告は上記イに定める本契約開始日より3か月間を入居者募集期間として認め,一括賃貸料の支払は,募集期間経過後からとする。 近隣相場家賃等を勘案した上で,原告被告協議の上,2年ごと改定するも- 3 -のとする。 一括賃貸料の支払方法は原告の指定する振込指定口座に毎月15日(ただし,当日が金融機関休業日及び被告の定休日に当たるときはその翌営業日)に被告により振り込みをもって支払うものとする。 ⑶ 本件建 一括賃貸料の支払方法は原告の指定する振込指定口座に毎月15日(ただし,当日が金融機関休業日及び被告の定休日に当たるときはその翌営業日)に被告により振り込みをもって支払うものとする。 ⑶ 本件建物は,被告が原告に対し,①原告が金融機関から融資を受けた上で建物の建築を被告に請け負わせること,②当該建物を被告が一括して借り上げた上でその賃料を金融機関への返済に充てること,③当該建物への入居者の募集,管理等を被告が行うことを主軸とする計画を示して勧誘し,原告がこれに応じて建築,賃貸したものであり,本件契約は,いわゆる不動産サブリース取引の一環として締結されたものである。 ⑷ 原告は,平成23年10月15日,被告との間で,本件契約に係る賃料額を,67万6200円に減額する旨の合意(以下「本件減額合意」という。)をした。本件減額合意の内容は,概要,以下のとおりであった(甲2)。 ア 1条(目的)原告は,原告所有の本件建物を以下の条項にて,被告に一括賃貸する。 被告は,本件建物を居住用転貸事業の目的にのみ使用する。 イ 2条(契約期間)本契約の期間は,平成23年11月1日より平成47年1月26日までとする。 ウ 3条(一括賃貸料及びその支払始期と支払方法) 本件建物の平成23年11月1日より平成27年1月26日までの一括賃料は月額67万6200円,うち駐車場賃貸料は月額3万7800円(消費税込み)とする。 一括賃貸料の支払方法は原告の指定する銀行振込指定口座に毎月15日(ただし,当日が銀行の休業日及び被告の定休日に当たるときはその翌営業日)に被告より振り込みをもって支払うものとする。 - 4 - 隣相場家賃等を勘案した上で,原告被告協議の上2年ごと改定するものと 銀行の休業日及び被告の定休日に当たるときはその翌営業日)に被告より振り込みをもって支払うものとする。 - 4 - 隣相場家賃等を勘案した上で,原告被告協議の上2年ごと改定するものとする。 ⑸ 原告は,平成28年6月24日到達の内容証明郵便をもって,被告に対し,賃料増額請求の意思表示をした(甲7の1,2)。 ⑹ 原告は,平成28年9月23日,半田簡易裁判所に対し,被告を相手方として,本件建物について賃料増額の民事調停を申し立てたが,同調停は,平成29年2月20日,取下げにより終了した。 ⑺ 被告は,原告に対し,平成28年7月分ないし平成29年2月分の賃料として,従前どおり,月額67万6200円を支払った。 3 争点本件時点における本件建物の相当賃料額 4 争点に関する当事者の主張の要旨(原告の主張の要旨)⑴ 本件契約締結当時の状況原告は,本件契約締結当時,被告から,近隣賃料相場に関する説明を受けておらず,本件建物の建築前に被告から示された事業計画書(甲10)にも,工事費用,融資金額,賃料,利回り等の記載はあるが,近隣賃料相場に関する記載を含め,賃料額の算出過程に関する記載はなかった。このように,本件建物の賃料は,近隣賃料相場等を考慮して定められたものではなく,本件建物の建築請負工事費用とこれに係る金融機関からの融資額を前提として,上記事業計画書に示された年間利回りを達成するための手段として設定されたものである。原告は,本件契約の開始後に賃料が減額されることを心配していたが,被告から,契約期間の30年間,賃料は下がらない旨説明されていたため,安心して本件契約を締結した。 ⑵ 本件減額合意に至る経緯- 5 -原告は,平成23年頃,被告の担当者から,相談したいことがあるので会い 年間,賃料は下がらない旨説明されていたため,安心して本件契約を締結した。 ⑵ 本件減額合意に至る経緯- 5 -原告は,平成23年頃,被告の担当者から,相談したいことがあるので会いたいとの電話連絡を受けた。そして,原告は,被告の担当者と原告の勤務先で待ち合わせ,その近くの喫茶店に行って話をした。原告と被告の担当者は,その後も二,三回程度会って話をした。被告の担当者は,詳しい説明や法的根拠を述べるのではなく,単に「会社の経営状況が厳しい状態だから減額に応じてほしい。」といった内容の説明を繰り返すばかりであり,原告としては納得できるものではなかった。原告は本件契約の契約書(甲1)の3条1項に「本物件の一括賃貸料は,当初10年間は,月額77万7800円とし,不変とする。」とあることを示すなどしてすぐには減額には応じず,原告と被告の担当者が会った二,三回の協議はほとんど押し問答の状態であった。このような話合いの中で,近隣賃料相場が幾らであるかといった話は全くなく,そのような資料等も提示されなかったため,原告自身は,近隣賃料相場が幾らかについて把握していなかった。このようなやり取りをしていた平成23年9月頃,原告は,妻の弟で,同じく被告物件のオーナーであったaと会う機会があり,同人のところにも被告から賃料減額の依頼が来ており,被告の経営が厳しいことからやむを得ず賃料減額に応じたことを知った。原告は,それを聞き,自らも被告のために減額に応じることもやむを得ないと思うようになり,最終的には被告の求める減額に応じることとし,平成23年10月15日,本件減額合意に係る賃貸借契約書(甲2)に署名押印した。この日は,原告の署名押印した契約書を被告名古屋支店のbが持ち帰ったが,原告はbとはこの日初めて会ったのであり,上記減額交渉をしたのは別 5日,本件減額合意に係る賃貸借契約書(甲2)に署名押印した。この日は,原告の署名押印した契約書を被告名古屋支店のbが持ち帰ったが,原告はbとはこの日初めて会ったのであり,上記減額交渉をしたのは別の担当者である。 以上の経緯に照らせば,本件減額合意は,被告の経営状況が悪化したという事情を基礎として被告の業績回復の一助とすることを目的としてされたものであることは明らかであり,本件減額合意に近隣賃料相場等が考慮されたことはない。そして,このことは,本件減額合意の後日,被告代表者の名前で原告宛てに届いた「一括借上げ賃料改訂ご協力の御礼」と題する書面(甲17)に,- 6 -被告の業績回復のために原告が賃料減額という形で協力したことについての感謝の意を表明する趣旨の記載があることなどからも裏付けられる。 ⑶ 本件減額当時は被告のオーナーに対する対応の転換期であったこと上記のような被告によるオーナーへの賃料減額の要請は,原告に限ったものではなく,被告は,平成22年に巨額の営業損失を計上した後,全国規模でオーナーに対し,業績回復及び維持への協力を求めて大幅な賃料減額を迫るようになった。また,被告は,賃料減額のほかに,賃貸借契約のオプションであるメンテナンス契約についても変更し,従前の契約の下ではオーナー名義の積立金であった金員が,特約金,前払金等と称してオーナーから被告に支払われ,被告の売上げとして計上されるようになった。以上のことからすれば,被告は,平成22年に巨額の営業損失を計上した後,賃料減額,オーナー名義の積立金の受領等,様々な手段を駆使して業績回復に奔走していたのであり,これらは,短期間で急激に売上げを伸ばし,経費支出を抑え込んで業績を急回復するために有機的一体としてなされた措置であり,本件減額合意もその一環として行 な手段を駆使して業績回復に奔走していたのであり,これらは,短期間で急激に売上げを伸ばし,経費支出を抑え込んで業績を急回復するために有機的一体としてなされた措置であり,本件減額合意もその一環として行われたものである。このことは,本件減額合意の約2か月前,被告社内において,解約も辞さずに減額要求をするようにと指示するメール(甲19)が送信されていることなどからも裏付けられる。 ⑷ 事情の変更以上より,本件減額合意の際に基礎とされた事情は,飽くまで被告の経営状況が悪化したことであり,近隣賃料相場が考慮されたことはない。そして,本件時点において,被告の経営状況は十分に回復していた以上,本件減額合意の基礎となった事情に変更があり,従前の賃料額は不相当になっていたというべきである。 ⑸ 相当賃料額本件のような不動産サブリース取引における相当賃料額の判断に当たっては,賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総- 7 -合的に考慮すべきであり,収支予測に関わる事情や銀行借入金の返済予定に関わる事情等をも十分に考慮すべきである。 そして,本件契約が一連のサブリース事業の一環であることに鑑み,本件における相当賃料額は,原則として事業計画書(甲10)記載の金額と考えるべきであるところ,年10月23日第1小法廷判決・集民211号253頁及びその差戻し審である東京高裁平成15タイムズ1170号122頁の趣旨からすれば,金利や公租公課の軽減分を超えない範囲に限って原告が賃料の減額を受忍すべきであるから,本件においてもこの基準に従って相当賃料額を算定すべきである。 本件契約開始時の最終計画案として示された当初金利は変動金利で1.875%であり,その後の変動を基に利息支払額の増減額を算出すると月額1070円の この基準に従って相当賃料額を算定すべきである。 本件契約開始時の最終計画案として示された当初金利は変動金利で1.875%であり,その後の変動を基に利息支払額の増減額を算出すると月額1070円の負担軽減となる。また,固定資産税及び都市計画税の負担額の増減額を算出すると月額4840円の負担軽減となる。さらに,本件減額合意におけるあるべき賃料額からの減額分は月額5万0499円であり,これも相当賃料額算定の考慮要素とすべきである。上記の変動額を当初の事業計画における収支予測上の賃料(77万7800円)に反映させると,本件時点における相当賃料額は82万2389円(=77万7800円-1070円-4840円+5万0499円)であり,77万7800円を下らない。なお,本件減額合意の減額分を考慮しない場合であっても,相当賃料額は77万1890円となる。 ⑹ 以上より,本件時点における本件建物の相当賃料額は77万7800円というべきである。 (被告の主張の要旨)⑴ 本件契約締結当時の状況被告の担当者が,本件契約締結の際,原告に対し,契約期間の30年間,賃料が減少しない旨の説明をしたことは一切ない。このことは,本件契約の契約- 8 -書(甲1)に,賃料を当初10年間は月額77万7800円とし(3条1項),その後は経済情勢,近隣相場家賃等を勘案して,協議の上,2年ごとに改定する(同条4項)という定めがされていることからも裏付けられる。 ⑵ 本件減額合意に至る経緯ア被告は,平成23年時点で,原告被告間で合意された当初賃料が近隣賃料相場を踏まえると高額となっていることが判明したため,原告に対し,賃料減額の交渉を行うこととした。被告において,原告との賃料減額交渉の担当者となったのは,当時,被告の名古屋支店資産管理業務部課長 料相場を踏まえると高額となっていることが判明したため,原告に対し,賃料減額の交渉を行うこととした。被告において,原告との賃料減額交渉の担当者となったのは,当時,被告の名古屋支店資産管理業務部課長であったbであった。賃料減額交渉は,資産管理業務部所属の者が担当することになっており,また,資産管理業務部においては,担当者に交渉の相手方であるオーナーがそれぞれ割り振られ,オーナーごとに担当者が重複することはないようになっていた。したがって,被告において原告と賃料減額に関する交渉を行っていたのはbのみであった。なお,平成23年10月当時,新システムの導入等の物件の管理に関する原告との協議については,被告の別の従業員であるcが担当していたが,cは賃料減額交渉には全く関与していない。 イ bは,平成23年10月頃,賃料減額交渉のため,原告に電話で連絡し,原告の希望を聞いて面談の日時と場所を決定した。bは,面談日となった同月15日,原告の勤務する化粧品店を訪問し,賃料減額の依頼をした。bは,賃料減額を依頼する理由として近隣賃料相場が下がったことを挙げ,原告に近隣賃料相場の資料を示し,算定式を示して減額後の賃料として月額67万6200円を提案した。 具体的には,被告は,不動産市場調査を行う会社であるアトラクターズ・ラボ株式会社(以下「ラボ社」という。)から被告の管理する物件の近隣賃料相場の情報提供を受けており,ラボ社が提供する近隣賃料相場に関する資料(乙3)によれば,本件建物周辺の類似物件の賃料は月額約3万9000円であった。bは,上記相場賃料に加えて地元の不動産業者が取り扱ってい- 9 -る近隣の賃貸事例も考慮し,本件建物周辺の類似物件の適正賃料は上記相場賃料よりも少し低い月額3万8000円であると判断した。被告においては,オーナー えて地元の不動産業者が取り扱ってい- 9 -る近隣の賃貸事例も考慮し,本件建物周辺の類似物件の適正賃料は上記相場賃料よりも少し低い月額3万8000円であると判断した。被告においては,オーナーに支払う建物1戸当たりの適正賃料を算出するに当たって,近隣相場賃料に,利益率,空室リスク等の様々な要素を考慮して決定される「一括借上比率」と呼ばれる比率を乗じて算出するが,本件建物1戸当たりの適正賃料についても同様に算出された。当時,被告においては,一括借上比率は80%程度が適正であると考えられており,本件でも一括借上比率は80%として減額賃料が算定された。また,被告がサブリースを行っている物件においては,家具,家電及びインターネットを無料で使用できることから,これらの使用の対価として月額1520円が加算され,これにより,1戸当たりの適正賃料は月額3万1920円(=3万8000円×0.8+1520円)と算出した。これに本件建物の総戸数である20を乗じ,更に駐車場賃料月額3万7800円(消費税込み)を加えると,月額67万6200円となる。 bが原告に対し,近隣相場賃料を基礎とした場合の1戸当たりのテナント賃料が月額3万8000円であることを説明し,また,これに基づき,上記算定式を示して原告被告間の賃料を月額67万6200円に減額してもらえないかと依頼したところ,原告はその場で賃料減額に応じ,減額後の賃料を記載した建物賃貸借契約書(甲2)に署名押印した。 ⑶ 被告の業績悪化は本件減額合意の基礎とされた事項に当たらないこと上記のとおり,被告は,近隣賃料相場が下がっていたことから,原告に賃料減額を依頼し,減額後の賃料についても近隣相場賃料に基づいて上記算定式で算出しており,その算定式も含めて原告に説明している。また,本件減額合意の契約書(甲 賃料相場が下がっていたことから,原告に賃料減額を依頼し,減額後の賃料についても近隣相場賃料に基づいて上記算定式で算出しており,その算定式も含めて原告に説明している。また,本件減額合意の契約書(甲2)においても,被告の業績を考慮して決定されたことをうかがわせる記載や条項は存在しない。したがって,被告の業績については,本件減額合意において減額後の賃料額の決定の基礎とされていない。 - 10 -⑷ 相当賃料額ア被告が提出した鑑定書(乙5,以下「被告鑑定」という。)では,以下のように適正賃料を算出している。すなわち,差額配分法では,まず本件時点における新規適正賃料について,積算賃料(基礎価格に対象不動産の期待利回りを乗じ,必要諸経費を加算して支払賃料を評価したもの)と比準賃料(基礎となる部屋の比準賃料を算出し,全貸室分を集計して求めた賃貸可能総収益を算出した上で,空室等損失,必要諸経費及びサブリース業者の利益を控除して支払賃料を評価したもの)を求めた上,両者を比較し,市場賃料を反映している比準賃料が適切であるとして,月額66万円を算出し,その上で賃料下落の背景が一般的な不動産価値の下落等にあることから,貸主に帰属する部分を2分の1として,月額賃料を66万7000円と試算し,利回り法では,土地建物基礎価値を1億1480万円,継続賃料利回りを2.0%と評価した上,これを基礎に本件時点における必要経費を加算して,月額賃料を60万3000円と試算し,スライド法では,現行賃料を定めた時点における純賃料にスライド指数(消費者物価指数(名古屋市,生鮮食品を除く総合,家賃),企業向けサービス価格指数,全国賃料統計の各指数を考慮して0.99とした。)を乗じて得た金額に,本件時点における必要諸経費等を加算し,月額賃料を64万3000円と試 市,生鮮食品を除く総合,家賃),企業向けサービス価格指数,全国賃料統計の各指数を考慮して0.99とした。)を乗じて得た金額に,本件時点における必要諸経費等を加算し,月額賃料を64万3000円と試算している。そして,被告鑑定では,上記の各試算賃料を踏まえ,本件における事情変動や当事者間の公平に配慮して,各鑑定手法の有効性,説得力を検討し,差額配分賃料:スライド賃料:利回り賃料=4:2:1の比率で試算賃料を調整すると月額賃料65万1000円と算出されるとしつつ,正常賃料(新規適正賃料)が月額66万円であることも踏まえ,本件時点における適正な継続賃料を月額66万円と評価している。 以上のとおり,被告鑑定は,最高裁判例,それ以降の裁判例及び不動産鑑定評価基準に基づいて,本件におけるサブリース事業の特性や本件減額合意- 11 -以降の事情変動に留意しながら,各種算定方法を適切に用いて鑑定評価を行っており,客観性のある合理的な内容となっている。被告鑑定によれば,本件時点における適正な継続賃料は月額66万円であり,本件減額合意後の賃料である月額67万6200円を下回っている。 イまた,裁判所の鑑定(以下,鑑定人が作成した鑑定評価書を「本件鑑定」という。)については,スライド法の試算賃料の算定における変動率の算出過程に誤りがあり,この点を適切に評価すればより低い額となるものの,その鑑定評価額は,本件減額合意後の賃料を下回る月額64万7000円となっている。 ウこのように,被告鑑定においても本件鑑定においても,本件時点における適正賃料額が約定賃料より低額であると評価されているにもかかわらず,原告は,不動産鑑定評価書を提出するなどといった,約定賃料が不相当になっていたことを裏付ける主張立証を何ら行うことなく,金利変動 る適正賃料額が約定賃料より低額であると評価されているにもかかわらず,原告は,不動産鑑定評価書を提出するなどといった,約定賃料が不相当になっていたことを裏付ける主張立証を何ら行うことなく,金利変動額,公租公課変動額のみをもって約定賃料の増額を請求しており,主張自体失当である。 ⑸ 以上より,原告の請求には理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ⑴ 本件契約締結当時の状況ア被告は,本件建物の建築前である平成16年3月頃及び同年9月頃,原告に対し,それぞれ事業計画書を交付した。上記事業計画書には,必要資金,資金計画,返済計画,収支計画等が記載されているほか,賃料明細欄には,「月額一括借上賃料合計 777,800円」という記載の下に,「20世帯 37,000円」「駐車場(宅内) 14台 2,700円」「借上合計居室:20世帯駐車場:14台」などの記載がある。(甲3,10)- 12 -イまた,被告は,同じく本件建物の建築前に,原告に対し,収支に関する長期計画表を交付した。その内容は,10年間及び20年間のそれぞれにつき,A案,B案及びC案の3つの案における収支計画を示すものであった。原告は,被告から,その計画を維持した場合の原告の30年間の収入予測についても口頭説明を受け,それを上記書面に書き込んだ。(甲4,原告本人)⑵ 本件減額合意に至る経緯ア被告は,平成23年7月4日,本件建物についての同年4月時点における近隣賃料相場を算出した書面を作成した(乙3)。 イ原告は,同年9月5日及び同年10月13日,cと面会し,本件建物の管理に関する新システムの導入等についての交渉を行った(乙8,11,12,原 隣賃料相場を算出した書面を作成した(乙3)。 イ原告は,同年9月5日及び同年10月13日,cと面会し,本件建物の管理に関する新システムの導入等についての交渉を行った(乙8,11,12,原告本人)。 ウ原告は,同月15日,岡崎市内の原告の勤務先事務所において,初めてbと面会し,本件減額合意に係る建物賃貸借契約書に署名押印した(甲2,甲16,乙15,原告本人,証人b(同人の陳述書(乙2)を含む。以下同じ。))。 エ被告は,同年11月頃,原告に対し,「一括借上げ賃料改訂ご協力の御礼」と題する文書を送付した。上記文書には,「この度は,ご所有のレオパレス21管理物件の一括借上げ賃料改訂という大変無理なお願いをさせて頂いたにも関わらず,ご協力を頂き,厚く御礼を申し上げます。」「この度のご協力もあり,今期の業績は回復に向かっていることをご報告する」などの記載がある。(甲17)⑶ 本件鑑定及び被告鑑定ア本件鑑定は,本件時点における本件建物の適正な継続賃料額を64万7000円と評価している。 イ被告鑑定は,本件時点における本件建物の適正な継続賃料額を66万円と評価している。 2 本件のようなサブリース契約についての借地借家法32条1項に基づく賃料- 13 -増額請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たっては,同項所定の経済事情の変動等のほか,賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきであり,同契約において賃料額が決定されるに至った経緯,とりわけ,約定賃料額と当時の近傍同種の建物の賃料相場との関係(賃料相場とのかい離の有無,程度等),賃借人の転貸事業における収支予測に関わる事情(賃料の転貸収入に占める割合の推移の見通しについての当事者の認識等),賃貸人 時の近傍同種の建物の賃料相場との関係(賃料相場とのかい離の有無,程度等),賃借人の転貸事業における収支予測に関わる事情(賃料の転貸収入に占める割合の推移の見通しについての当事者の認識等),賃貸人の借入金の返済の予定に関わる事情等をも十分に考慮すべきである(最高10月21日第三小法廷判決・民集57巻9号1213頁参照)。 3 各賃料額決定の要素となった事情⑴ 本件においては,本件契約及び本件減額合意の締結経緯並びに各賃料額決定の要素となった事情について争いがあるため,まずこの点について検討する。 原告は,本件契約の賃料額決定の要素となった事情は,原告の収支計画であり,本件減額合意の賃料額決定の要素となった事情は,被告の経営状況が悪化したことであって,いずれにおいても近隣賃料相場が考慮されたことはないと主張し,原告本人もこれに沿う供述をするのに対し,被告は,本件契約の際,当然に近隣賃料相場は考慮されており,本件減額合意の賃料額決定の要素となった事情も,当初賃料が近隣賃料相場を踏まえると高額となっていたことであると主張し,証人bも本件減額合意についてこれに沿う供述をする。 ⑵ 本件契約についてそこでまず,本件契約の賃料額決定の要素となった事情につき検討するに,本件契約の際の詳細なやり取りについては不明であるが,いわゆるサブリース取引の一環としてなされた本件契約の性質,原告に対して交付された事業契約書(甲3,10)に必要資金,資金計画,返済計画,収支計画等が記載されていることなどからして,原告の収支計画について被告から原告に対して詳細な説明があり,それが賃料額決定に当たっての考慮要素の一つとなっていたこと- 14 -が認められる。 他方で,サブリース取引が原告と被告の共同事業的色彩を有する以上,本件契約においては,そ 細な説明があり,それが賃料額決定に当たっての考慮要素の一つとなっていたこと- 14 -が認められる。 他方で,サブリース取引が原告と被告の共同事業的色彩を有する以上,本件契約においては,それが原告にとって主要な関心事でなかったにしても,被告において転貸差益が生ずることも念頭に置いた契約条件となっているはずであり,被告は,その際当然,想定される転貸収入,空室リスク等を踏まえて,相応の利益が生ずるよう賃料額を設定しているはずである。そして,経験則上,被告のような不動産業者がそうした賃料を算定するに当たっては,近隣賃料相場等の資料を参照し,それを踏まえて算定するのが通常であるところ,これに加えて,本件契約の賃料改定条項(3条4項,甲1)において「近隣相場家賃」を勘案するものとされていること,後記のとおり,本件減額合意の際に近隣賃料相場を踏まえて賃料額が決定されたと認められることからすれば,被告は本件契約の際も,近隣賃料相場を踏まえて賃料額を設定したものと認めるのが相当である。そして,原告が受け取った事業計画書(甲10)の記載からも,一部屋当たりの賃料を設定し,その合計賃料として本件建物の賃料が算定されていることが読み取れるのであって,原告は,賃料額がそのような被告側の事情をも踏まえて決定されていることを当然に認識していたものと推認するのが相当である。 また,原告は,被告から,契約期間の30年間,賃料は下がらない旨説明されていたと主張するところ,被告から収支に関する長期収益表(甲4)を交付された際,賃料を維持した場合の30年間の収入が口頭により説明されたこと,被告作成のパンフレット(甲5)に「最長30年間の家賃保証」という記載があることは認められるものの,本件契約において,30年間の賃料保証が絶対的なものとして被告から説明され,そ より説明されたこと,被告作成のパンフレット(甲5)に「最長30年間の家賃保証」という記載があることは認められるものの,本件契約において,30年間の賃料保証が絶対的なものとして被告から説明され,その旨合意したと認めるに足りる証拠はない。むしろ,本件契約の賃料については,当初10年間は不変とされていた(3条1項,甲1)ものの,それ以降は,経済情勢,近隣相場家賃等を勘案した上で2年ごとに協議により改定するものとされており(同条4項),契約- 15 -条項上も,賃料の変更の可能性が予定されていたものと認められる。 したがって,本件契約の賃料額決定に当たって,原告の収支計画が考慮要素となっていたことは認められるものの,他方で,近隣賃料相場等を踏まえた被告側の収益に係る事情もまた相応の考慮要素となっていたことが認められ,また,事業計画書等に示された原告の収支計画を維持することが絶対的な条件として合意されていたとは認められない。 ⑶ 本件減額合意について次に,本件減額合意の賃料額決定の要素となった事情について検討する。 ア被告は,本件減額合意の際,担当者が原告に対し,被告が経営不振であると説明したこと自体を否認する。しかし,被告が平成23年当時,営業損失を計上するほどの業績不振に陥っていたこと(甲6),その頃,被告社内において,サブリース物件の解約や大幅な減額による原価削減を目指すメールが送られていたこと(甲19),定型的なものとはいえ,レオパレスの担当者から,経営不振による倒産を防ぐために賃料減額に協力してほしいと説明された旨のオーナーらによる報告書が提出されていること(甲18の1ないし44),被告から原告に対し,被告の業績回復のために原告が賃料減額という形で協力したことに対して感謝の意を表明する趣旨の文言を含む文 た旨のオーナーらによる報告書が提出されていること(甲18の1ないし44),被告から原告に対し,被告の業績回復のために原告が賃料減額という形で協力したことに対して感謝の意を表明する趣旨の文言を含む文書が送付されていること(甲17)などからすれば,被告の経営不振が本件減額合意の大きな動機となっており,その動機が原告らオーナーにも表示された上で,原告らが被告の業績回復の一助とする趣旨も含めて,賃料の減額に応じたことが認められる。 イ他方,原告は,本件減額合意の際,被告担当者から近隣賃料相場等の説明をされたことは一切なく,本件減額合意の基礎とされた事情は専ら被告の業績の悪化であると主張する。 この点につき,減額後の賃料額の設定について,bは,被告本社から引き継いだラボ社の相場検索データ(乙3)に加え,地元の不動産業者に赴き,- 16 -実際の近隣賃料相場を調査した上で設定したと証言するところ,同証言は,乙第3号証等の客観証拠に合致し,計算式を示すなど具体的かつ合理的であるから,信用でき,そのとおりの事実が認められる。 他方,賃料額の算定方法の説明について,bは,原告に対し,これらの計算式も含めて賃料額の算定方法を詳細に説明したと証言するところ,同証言は,原告に提示したとされる書面について証拠上裏付けがないこと,原告とbが賃料減額について話し合ったのが本件減額合意をした日の1回のみであることなどからして,直ちには採用することができない。もっとも,本件契約上,当初10年間の賃料は原則不変とされている(甲1,3条1項)ところ,それを減額するよう依頼された原告らオーナーとしては,それが上記のとおり被告の業績の悪化によるものであるからといって,減額の程度について何らの根拠も示されないまま,減額に応じるとは直ちには考え難く,原告が最終 るよう依頼された原告らオーナーとしては,それが上記のとおり被告の業績の悪化によるものであるからといって,減額の程度について何らの根拠も示されないまま,減額に応じるとは直ちには考え難く,原告が最終的に減額に応じていることに鑑みれば,被告は,原告に対し,少なくとも賃料額算定についての何らかの根拠は示したものと合理的に推認することができる。 ウ以上によれば,本件減額合意の賃料額の決定に当たって,悪化していた被告の業績を回復させることが相応の要素となっていたことは認められるものの,考慮要素としてはそれに限られることなく,近隣賃料相場その他の事情をも総合的に考慮した上で,賃料額が決定されたものと認められる。 そして,本件減額合意が有効に成立したことについては当事者間に争いがないから,原告は,本件減額合意をしたことにより,当初の収支計画の維持に関するリスクを一定程度引き受けたと評価することができる。 4 本件時点における相当賃料額本件時点における本件建物の賃料については,本件鑑定及び被告鑑定がそれぞれ鑑定評価額を算出しているため,その各妥当性を検討した上で,相当賃料額を検討する。 - 17 -⑴ 本件鑑定についてア一般的信用性について本件鑑定は,裁判所が選任した両当事者に利害関係を持たない不動産鑑定士が現地を実地調査し,近隣地域の状況,本件建物の状況等を把握した上で行われたものであるから,一般的にその信用性は高いものである。 イ鑑定手法の妥当性について本件鑑定は,利回り法及びスライド法を適用して求められた各試算賃料に基づき,諸般の事情を総合的に勘案して評価額を算出しているから,その評価手法は,妥当である。 なお,本件鑑定は,不動産鑑定評価基準に定め り法及びスライド法を適用して求められた各試算賃料に基づき,諸般の事情を総合的に勘案して評価額を算出しているから,その評価手法は,妥当である。 なお,本件鑑定は,不動産鑑定評価基準に定められた建物の継続賃料についての4種類の鑑定評価手法のうち,差額配分法及び賃貸事例比較法を採用していないが,その理由は,差額配分法については,サブリース契約に基づく正常実質賃料の査定が困難であったため,賃貸事例比較法については,規範性,類似性(不動産の類型,契約内容,契約改定の経緯等)の高い賃貸事例の収集が困難であったためと,いずれも合理的なものであるから,鑑定手法の妥当性を疑わしめる事情とはいえない。 ウ利回り法による試算賃料について本件鑑定は,再調達原価に減価修正を行って算出した本件時点における本件建物及びその敷地の基礎価格1億1710万円に,直近合意時点における純賃料等から算出した継続賃料利回り5.17%を乗じて得た金額に,本件時点における必要諸経費等を加算して,月額賃料を59万6000円と試算しているが,この算出方法に不合理な点は認められない。 エスライド法による試算賃料について本件鑑定は,直近合意時点における純賃料697万5400円に,消費者物価指数(中京大都市圏,総合,家賃),企業向けサービス価格指数(その他の不動産賃貸),GDP,建設工事費デフレーターの各指数を平準化して- 18 -算出した変動率104.1%を乗じて得た金額に,本件時点における必要諸経費等を加算して,月額賃料を69万7000円と試算しているが,この算出方法は,おおむね合理的なものと認められる。 もっとも,被告が指摘するように,本件鑑定は,上記変動率の算出に当たり,採用した各指数が消費税増税の影響を受けてい 円と試算しているが,この算出方法は,おおむね合理的なものと認められる。 もっとも,被告が指摘するように,本件鑑定は,上記変動率の算出に当たり,採用した各指数が消費税増税の影響を受けていることを十分に考慮しておらず,この点については問題がないではない。すなわち,本件鑑定が変動率の算定に当たって採用した各指数については,いずれも消費税を含むものであり(乙18ないし23),本件減額合意時と本件時点の間の平成26年4月1日に行われた5%から8%への消費税増税の影響を受けているのに対し,建物の賃料については,消費税法上の非課税品目となっている(消費税法6条1項,別表第一第13号)ため,本件建物の賃料(ただし,消費税が課される駐車場代を除く。)については,上記各指数が消費税増税の影響を受けていることを十分に考慮した上で変動率を算定するのが適切である。 この点について適切に考慮した場合,変動率は本件鑑定よりも若干減少し,その結果として,スライド法による試算賃料も本件鑑定より若干低額になると考えられる。 なお,被告は,本件鑑定のスライド法による賃料の試算について,採用した指数が適切ではない,採用した指数と賃料の関連性を検討することなく単純平均して変動率を算出しているなどとも指摘するが,本件鑑定における指数の選択や平準化の方法は,鑑定人の合理的な裁量の範囲内で適切に行われたものと認められるから,これらの指摘は当たらない。 オ試算賃料の調整及び鑑定評価額の決定について本件鑑定は,利回り法による試算賃料は当事者間の合意利回りの尊重,スライド法による試算賃料は経済情勢等の反映と,いずれも不動産鑑定士の恣意性が介入しない理論的,客観的な根拠に基づいた試算賃料であり,同等に規範性があるものと判断し,両賃料を同じ比率で 回りの尊重,スライド法による試算賃料は経済情勢等の反映と,いずれも不動産鑑定士の恣意性が介入しない理論的,客観的な根拠に基づいた試算賃料であり,同等に規範性があるものと判断し,両賃料を同じ比率で平準化した月額賃料64万- 19 -7000円をもって鑑定評価額としているが,この算出方法自体に不合理な点は認められない。 もっとも,前記エのとおり,適切に試算した場合のスライド法による試算賃料は本件鑑定より若干低額になると考えられるため,適正評価額も本件鑑定より若干低額になると考えられる。 カ以上によれば,本件鑑定における鑑定評価額については,おおむね妥当なものであるが,適正評価額としては,それより若干低額になると考えられる。 ⑵ 被告鑑定について被告鑑定は,差額配分法,スライド法及び利回り法による試算賃料を調整すると月額賃料65万1000円と算出されるとしつつ,比準賃料に基づく正常賃料(新規適正賃料)が月額66万円であることも踏まえ,本件時点における適正な継続賃料を月額66万円と評価している。被告鑑定は,継続賃料を求めるに当たって3種類の鑑定評価手法を用いた上で算出しており,その手法において不当な点は見出せず,一定の合理性があるものということができる。 ⑶ 検討以上のとおり,本件鑑定のみならず被告鑑定を前提としても,本件時点における本件建物の適正賃料額は,本件減額合意における約定賃料67万6200円を下回るものと認められる。そして,これに加えて,前記3のとおり,本件契約,本件減額合意のいずれにおいても,賃料額が,原告の収支計画や被告の業績に限られることなく,近隣賃料相場その他の事情を総合的に考慮した上で決定されたと認められること,それゆえ,原告は,本件減額合意をしたことにより,当初 においても,賃料額が,原告の収支計画や被告の業績に限られることなく,近隣賃料相場その他の事情を総合的に考慮した上で決定されたと認められること,それゆえ,原告は,本件減額合意をしたことにより,当初の収支計画の維持に関するリスクを一定程度引き受けたと評価することができることなどの諸般の事情を併せ考えれば,本件減額合意の賃料額の決定に際し,当時,悪化していた被告の業績を回復させることが相応の要素となっていたこと,被告の経営状況は,本件時点において本件減額合意の時点より回復していること(甲6)を斟酌しても,本件契約がサブリース契約である- 20 -ことを踏まえた本件時点における相当賃料額は,上記の約定賃料67万6200円を上回ることはないと解するのが相当である。 原告は,相当賃料額の算定方法について縷々主張するが,独自の解釈を含む上に,賃料額決定の際の要素となった事情について上記と異なる前提に立つものであり,採用することはできない。 したがって,本件時点において,本件建物の約定賃料67万6200円が,土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により,土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により,又は近傍同種の建物の賃料に比較して不相当に低くなっていた(借地借家法32条1項)とは認められない。 5 以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第8部 裁判長裁判官桃崎 剛 裁判官平野佑子 裁判官藤本 理 裁判官平野佑子 裁判官藤本 主文 本件控訴を棄却する。 理由 控訴人は、原判決に対して不服を申し立て、控訴を提起した。控訴人の主張は、原判決の事実認定及び法令の解釈に誤りがあるとするものである。 事実 原審において、控訴人は被控訴人に対して損害賠償請求を行った。原審は、控訴人の請求を棄却した。 争点 本件における争点は、原判決の事実認定及び法令の解釈に誤りがあるか否かである。 判断 控訴人の主張は、原判決の事実認定及び法令の解釈に誤りがあるとは認められない。したがって、控訴人の控訴は理由がない。

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