主文 原判決を破棄する。被告人を懲役一年二月に処する。押収してある自動車運転免許証一通(東京高裁昭和五二年押第一二五号の一)の偽造部分を没収する。原審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。理由 本件控訴の趣意は、弁護人飯野信昭作成名義の控訴趣意書に記載されたとおりであり、これに対する答弁は、東京高等検察庁検察官検事横山精一郎作成名義の答弁書に記載されたとおりであるから、これらをここに引用し、これに対して、当裁判所は、次のとおり判断する。第一、 控訴趣意第一は、原判示第一の有印公文書偽造、同行使の事実につき、事実誤認及び法令適用の誤りを主張し、原判決は、被告人が、Aに対する自動車運転免許証の写真部分を切り取り、そのあとに自己の写真を貼付するなどして免許証を偽造し、これを司法巡査に提示して行使した行為につき、原判示五種の運転免許にかかる五個の有印公文書を偽造し、かつこれを行使したものと認定し、それぞれ五個の罪が成立し、各観念的競合の関係にあるものとして処断したのは誤りであるというのである。よつて、記録及び証拠物を調査して検討すると、被告人が山形県公安委員会発行の、同委員会の記名押印のある、Aに対する大型一種、大型二種、大型特殊自動車、小型特殊自動車、自動二輪車にかかる運転免許証につき、右Aの写真部分を切り取り、そのあとに自己の写真を貼付するなどして、同委員会作成名義の運転免許証を偽造し、これを取締に当る司法巡査Bに提示して行使したことは争いがないところであり、関係証拠によりこれを認めることができる。所論は、本件免許証は、物体としては、縦七センチメートル、横一〇センチメートル程の一枚のカードに過ぎず、公安委員会の記名、押印もカードの表面に各一個存在 、関係証拠によりこれを認めることができる。所論は、本件免許証は、物体としては、縦七センチメートル、横一〇センチメートル程の一枚のカードに過ぎず、公安委員会の記名、押印もカードの表面に各一個存在するのみであり、五種類の免許の表示方法としては、「免許の種類有無」の欄の各該当免許の種類の上に「1」の記号を印しているに過ぎず、他の免許事項に関する記載とあいまつて、はじめて免許取得者が数種の免許を取得していることを内容とする一個の証明を形成するに過ぎないと認めるのが相当であるという。 縦七センチメートル、横一〇センチメートル程の一枚のカードに過ぎず、公安委員会の記名、押印もカードの表面に各一個存在するのみであり、五種類の免許の表示方法としては、「免許の種類有無」の欄の各該当免許の種類の上に「1」の記号を印しているに過ぎず、他の免許事項に関する記載とあいまつて、はじめて免許取得者が数種の免許を取得していることを内容とする一個の証明を形成するに過ぎないと認めるのが相当であるという。<要旨>本件免許証の様式が、昭和四八年総理府令一一号による改正後の道路交通法施行規則別記様式第一四に定め</要旨>られた様式のものであつて、所論指摘のような体裁のものであることは、所論のとおりである。しかしながら、道路交通法九二条一項、二項が、日を同じくして複数の免許を与えるときは、一の種類の免許に係る免許証に他の種類の免許に係る事項を記載して交付し、また、免許を現にうけている者に異なる種類の免許を与えるときは、新たに与える免許に係る免許証に既に受けている免許に係る事項を記載して、既存の免許証と引き換えに交付するものと定めているのは、もともと免許の異なるごとに各別の免許証を作成交付すべきものを、免許証の携帯の便宣、免許証作成手続の簡素化、複数の免許に係る免許証の有効期間の統一、更新手続の一元化、免許の停止、取消等の処分の明確化等の政策上の要請からなされたものであると解せられる。そして、この点は前記免許証の様式の改正の前後を通じて変るところはない。従つて、免許証に存する免許に係る事項の記載は、免許の種類の異なるごとにそれぞれ一個の公文書をなしているものと解するのが相当である(東京高等裁判所昭和四二年一〇月一七日判決、高刑集二〇巻五号七〇七頁参照。)。免許証の大き 許に係る事項の記載は、免許の種類の異なるごとにそれぞれ一個の公文書をなしているものと解するのが相当である(東京高等裁判所昭和四二年一〇月一七日判決、高刑集二〇巻五号七〇七頁参照。)。免許証の大きさや、免許証の上に公安委員会の記名、押印が各一個しかないことなど、所論指摘の点も、右の認定を妨げるに足りない。してみれば、被告人が原判示のとおり、五個の有印公文書を偽造し、かつ行使した旨事実を認定し、五個の有印公文書偽造罪と五個の同行使罪が成立し、各偽造罪相互間および各行使罪相互間には観念的競合の関係があるものとして該当法令を適用処断した原判決には、事実の誤認も法令適用の誤りも存しない。 許証の大きさや、免許証の上に公安委員会の記名、押印が各一個しかないことなど、所論指摘の点も、右の認定を妨げるに足りない。してみれば、被告人が原判示のとおり、五個の有印公文書を偽造し、かつ行使した旨事実を認定し、五個の有印公文書偽造罪と五個の同行使罪が成立し、各偽造罪相互間および各行使罪相互間には観念的競合の関係があるものとして該当法令を適用処断した原判決には、事実の誤認も法令適用の誤りも存しない。所論(控訴趣意第一、二)は、仮に本件免許証には五個の文書が存するとしても、被告人には五個の免許証を偽造するという構成要件的結果を発生せしめるとの認識が欠けていたという。しかしながら、被告人は、拾得した本件免許証を利用して、タクシー運転手として就職し、その収入を増加させようと企て、自己の写真やゴム印を準備し、右拾得の日より約一〇日後に偽造行為を行なうに至る間、本件免許証をつぶさに閲覧し、内容を了知したであろうことは想像に難くないところであり、被告人は偽造に際し、本件免許証に五種の免許に係る事項が記載されていることを十分に知つていたものと考えられる。そのうえで、右免許証に貼付された写真を貼り替えるなどの偽造行為をした被告人には、偽造文書の内容の理解に欠けるところがあつたものとは思われない。所論指摘のとおり、被告人の検察官に対する供述調書中に、「……公安委員会の印の押してある公文書一通を偽造しました。」旨の供述記載がある点も、右は単に被告人の法律見解を述べたに過ぎないものと解され、右の認定を左右するものではない。所論(控訴趣意第一、三)は、仮に五個の公文書偽 てある公文書一通を偽造しました。」旨の供述記載がある点も、右は単に被告人の法律見解を述べたに過ぎないものと解され、右の認定を左右するものではない。所論(控訴趣意第一、三)は、仮に五個の公文書偽造罪が成立するとしても、被告人としては司法巡査Bに対してタクシー運転に必要な大型二種免許のみを示すつもりであり、他の偽造部分を提示する意思はなかつたという。しかしながら、関係証拠に照らしても、被告人が司法巡査に本件偽造免許証を提示するに際して、他の免許に係る記載部分を隠して、大型二種免許に係る記載部分のみを提示した形跡は全くない。のみならず、被告人において右偽造免許証に五種の免許に係る事項が記載されていることを十分に知つていたものと認めるべきことは前記のとおりであるから、被告人に大型二種免許以外の免許に係る記載部分を提示する意思がなかつたものとは到底考えられない。 関係証拠に照らしても、被告人が司法巡査に本件偽造免許証を提示するに際して、他の免許に係る記載部分を隠して、大型二種免許に係る記載部分のみを提示した形跡は全くない。のみならず、被告人において右偽造免許証に五種の免許に係る事項が記載されていることを十分に知つていたものと認めるべきことは前記のとおりであるから、被告人に大型二種免許以外の免許に係る記載部分を提示する意思がなかつたものとは到底考えられない。してみれば、この点に関する所論はすべて理由がない。第二、 控訴趣意第二、一は、原判示第二の業務上過失傷害の事実のうち、業務上の注意義務の認定につき法令の解釈、適用の誤りを主張し、被告人は、時速約三〇キロメートルで進行中、進路前方左側にある浦和地方法務合同庁舎へ正門から左折進入しようとして、左折開始地点の約二〇メートル手前で左折の合図をし、後写鏡で自車の後方約一〇メートルを追従するC運転の自動二輪車を認めたが、左に車両のないことを確認し、ブレーキを踏んで時速約一〇キロメートルまで減速し、車道左端から約二メートル中央寄りの地点から左折を始めたのであつて、被告人としては、運転者か左折するに当つてとるべき注意義務を十分に尽くしたものであるところ、他方、Cは、被告人車の左折の合図を右折の合図と見誤り、被告人車の左側を追い越すべく、進路を左に変え、被告人車の左側を進行するという重大な過失 当つてとるべき注意義務を十分に尽くしたものであるところ、他方、Cは、被告人車の左折の合図を右折の合図と見誤り、被告人車の左側を追い越すべく、進路を左に変え、被告人車の左側を進行するという重大な過失を犯し、そのためCの車両と左折中の被告人車との衝突を惹起したものであつて、本件は信頼の原則が適用されるへき場合である、被告人には、原判決の認定する「自車左後方の安全を十分に確認しつつ左折進行」しなければならない注意義務、すなわち左折の合図後、絶えず左フエンダーミラー及びルームミラーを見続けなければならない注意義務はないというのである。よつて、記録を調査して検討すると、関係証拠によれば、被告人は、タクシー運転手として稼働中、浦和地方検察庁までの客を乗せ、原判示場所で左折するに際し、所論指摘のような左折の方法をとつたこと、所論指摘のような状況で原判示のような交通事故が発生したことは、これを認定することがてきる。ところで、司法巡査作成の実況見分調書謄本、原審証人Cの供述及び被告人の検察官に対する供述調書によれば、本件現場は、左側歩道の縁石と車道中央線との間隔が五・七五メートルある場所であり、左折直前の被告人車の左側と左側縁石との間隔は約二メートルあつたことが認められ、被告人は車道左側部分の中央よりやや中央線寄りの地点から左折を始めたことは、所論指摘のとおりである。 生したことは、これを認定することがてきる。ところで、司法巡査作成の実況見分調書謄本、原審証人Cの供述及び被告人の検察官に対する供述調書によれば、本件現場は、左側歩道の縁石と車道中央線との間隔が五・七五メートルある場所であり、左折直前の被告人車の左側と左側縁石との間隔は約二メートルあつたことが認められ、被告人は車道左側部分の中央よりやや中央線寄りの地点から左折を始めたことは、所論指摘のとおりである。なお、被告人車が左折を始める際、右のように左方に約二メートルの間隔をとつたことについては、被告人は原審公判廷において、「客に安心してもらえるように、大廻りした。」旨供述しており、その趣旨に照らすと、被告人が右の間隔をもつと詰めるについてなんらの障害は存在せず、単に客に衝撃を与えない為だけであるとするならば、左折の際速度を落せば足りたものであることが推認できる。してみれば、被告人の左 らすと、被告人が右の間隔をもつと詰めるについてなんらの障害は存在せず、単に客に衝撃を与えない為だけであるとするならば、左折の際速度を落せば足りたものであることが推認できる。してみれば、被告人の左折方法は、道路交通法三四条一項にいう「車両は、左折するときは、あらかじめその場からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿つて(括弧内は省略。)、徐行しなければならない。」旨の規定に違反するものであることは明らかである。そして、左折車が左方に間隔をとつて左折するときは、その後方あるいは左後方を進行する車両の運転者が、とかく前車が左折しないものと信じ込み、その左側を追い抜き、あるいは追い越そうと考えることもありうることは、左折車両の運転者として当然予想しなければならないものと考えられる。なるほど、本件において、被告人車に追従したCは、被告人車の左折の合図を右折の合図と取り違えるという重大な過失を犯したものであることは認められるけれども、被告人車と車道左側端との間に約二メートルもあつたことが、Cが誤解を抱くに至る原因の一端であるとも推認される。してみれば、被告人は、左折車両の運転者として、道路交通法規に照らして十分な措置をとつたものであるとはいえず、かように車道左側端でない地点から左折するという異常な左折方法をとる限りは、現に左折を始めるに当つて、今一度左フエンダーミラーを見るなどして、左後方を進行して来る車両の有無、動静を確認しなければならない注意義務があることは当然である。 ことが、Cが誤解を抱くに至る原因の一端であるとも推認される。してみれば、被告人は、左折車両の運転者として、道路交通法規に照らして十分な措置をとつたものであるとはいえず、かように車道左側端でない地点から左折するという異常な左折方法をとる限りは、現に左折を始めるに当つて、今一度左フエンダーミラーを見るなどして、左後方を進行して来る車両の有無、動静を確認しなければならない注意義務があることは当然である。本件はいわゆる信頼の原則が適用されるべき場合ではなく、原判示の注意義務を認めた原判決には、法令の解釈、適用を誤つた違法は存しない。所論の指摘する最高裁判所昭和四六年六月二五日第二小法廷判決(刑集二五巻四号六五五頁)は、本件と事案を異にし適切ではなく 原判示の注意義務を認めた原判決には、法令の解釈、適用を誤つた違法は存しない。所論の指摘する最高裁判所昭和四六年六月二五日第二小法廷判決(刑集二五巻四号六五五頁)は、本件と事案を異にし適切ではなく、また、同裁判所同四九年四月六日同小法廷決定(刑集二八巻三号五二頁)を斟酎しても、右の結論を左右するに足りない。論旨は理由がない。第三、 控訴趣意第二、二は、原判示第二の業務上過失傷害の事実につき、原判決は、被告人が「Cに対し全治約一〇日間を要する傷害を負わせた」旨認定したが、原判決挙示の証拠からは右事実は認定できず、原判決には理由不備ないし理由のくい違いがあるという。しかし、原審証人Cの供述によれば、同人は、事故当日とその翌日医師Dの治療を受けたが、同医院が遠距離にあるため、同人の住居に近いE医院に転院し、七日間くらい毎日通院し、治療を受け、おおむね治癒したので通院をやめたが、左もものあざは約一〇日間残つていた事実が認められ、右によれば同人の傷害の全治期間は約一〇日と認めるのが相当である。所論は、Cの証言には矛盾が多く、同人は被告人に悪感情を抱いているというが、同人は原審で証人として取り調べられた際、自分が被告人車の左折の合図を右折と見誤つたことを認めており、同人は合理的なものの考え方をする人物と思われ、ただ、同人は、警察、検察庁の取調べで終つたものと考えていたのに、裁判所に証人として召喚されて迷惑していると述べているけれども、右は被告人に対する悪感情とまでいうべきものではない。同人の証言が信用できないとはいえない。所論は、医師D作成の「患者の症状等についての照会(回答)」と題する書面によれば、Cの傷害の程度は「一週間以内に治療できる状態と思われる。 、同人は合理的なものの考え方をする人物と思われ、ただ、同人は、警察、検察庁の取調べで終つたものと考えていたのに、裁判所に証人として召喚されて迷惑していると述べているけれども、右は被告人に対する悪感情とまでいうべきものではない。同人の証言が信用できないとはいえない。所論は、医師D作成の「患者の症状等についての照会(回答)」と題する書面によれば、Cの傷害の程度は「一週間以内に治療できる状態と思われる。」旨の記載があり、右記載を信用すべきであるという。しかし、Cは事故当日とその翌日の 患者の症状等についての照会(回答)」と題する書面によれば、Cの傷害の程度は「一週間以内に治療できる状態と思われる。」旨の記載があり、右記載を信用すべきであるという。しかし、Cは事故当日とその翌日の二回しか同医師の診療を受けていないことが関係証拠により明らかであり、右の記載はその時点における同医師の見込を記載したに過ぎないものであつて、当初の見込よりも現実の治療期間が若干長くなることは、なんら異とするに足りない事象であるから、右回答書の記載も前記認定を左右するものではない。原判決には理由の不備ないし理由のくい違いはなく、論旨は理由がない。第四、 控訴趣意第三は、量刑不当を主張し、犯情に照らして、被告人に対しては保護観察付きで刑の執行を猶予すべきであるというのである。よつて、記録を調査し、当審における事実取調の結果をも加えて検討する。本件の事実関係は、原判決の認定判示するとおりであるが、関係証拠によれば、被告人は、山形県鶴岡市で自動車運転手として働いていたところ、免許停止期間中に運転をくり返して、昭和五〇年四月運転免許を取り消され、その後新聞代金集金人として働いて来たが、タクシー運転手として雇われて収入をふやそうと考え、同五一年一月ころAの原判示五種の運転免許の記載のある免許証を手に入れ、そのころ同市内の自宅で、右免許証のAの写真を自分の写真と貼り替えて運転免許証を偽造し(原判示第一前段の有印公文書偽造の事実)、同年二月一三日浦和市のタクシー会社に運転手として雇われ、同年三月二四日まで同市内で無免許運転をくり返し(原判示第三および第五の道路交通法違反の事実)、その間同年三月一五日午後同市内で浦和地方検察庁まで行く客を乗せ、同庁舎へ左折進入する際、前記第二で詳説したように大廻りをして左折したため、左後方から来た自動二輪車と接触し、そ 真と貼り替えて運転免許証を偽造し(原判示第一前段の有印公文書偽造の事実)、同年二月一三日浦和市のタクシー会社に運転手として雇われ、同年三月二四日まで同市内で無免許運転をくり返し(原判示第三および第五の道路交通法違反の事実)、その間同年三月一五日午後同市内で浦和地方検察庁まで行く客を乗せ、同庁舎へ左折進入する際、前記第二で詳説したように大廻りをして左折したため、左後方から来た自動二輪車と接触し、そ 路交通法違反の事実)、その間同年三月一五日午後同市内で浦和地方検察庁まで行く客を乗せ、同庁舎へ左折進入する際、前記第二で詳説したように大廻りをして左折したため、左後方から来た自動二輪車と接触し、その運転者に軽傷を負わせたうえ(原判示第二の業務上過失傷害の事実)、事故現場に来た司法巡査に対し、Aになりすまし、前記偽造にかかる運転免許証を真正なもののように装つて提示して行使し(原判示第一後段の偽造有印公文書行使の事実)、同日浦和警察署内で右交通事故につき司法警察員の取調を受けた際、被疑者供述録取書の末尾にAと書き入れて、これを差し出した(原判示第四の署名偽造、同使用の事実)というものである。本件犯行の罪質が悪いことはいうまでもないが、交通事故で取調を受けたあとも、なおタクシー運転手として無免許運転を続けていた点で、大胆ともいうべきであり、また、関係証拠によれば、被告人は、山形県でダンプカーを運転中、大廻りをしなければ左折できない交差点を左折中に、左後方から来た中学生の乗つた自転車と衝突して、同人が跛となる重傷事故を起こし、昭和四九年に罰金一三万円に処せられ、その示談金の求償債務をまだ果していないこと、昭和五〇年には無免許運転で罰金三万円に、無免許、酒気帯び運転で罰金四万円に各処せられたほか、多数の反則事件を起こし、その運転免許も昭和四七年に九〇日、同四八年に一八〇日、同五〇年に九〇日停止された揚句、同年取り消されたものであることが認められ、被告人の遵法精神の欠如は著しく、その刑事責任は重いものといわなければならないから、原判決の量刑もあながち首肯できないわけではない。しかしながら、さらに考えると、被告人は交通関係以外では、中学卒業後まじめに働き、母のもとへも欠かさず送金し、ことに本件で保釈された後は、浦和市で伯父の営むプラスチツク工 できないわけではない。しかしながら、さらに考えると、被告人は交通関係以外では、中学卒業後まじめに働き、母のもとへも欠かさず送金し、ことに本件で保釈された後は、浦和市で伯父の営むプラスチツク工場に工員として勤務し、伯父の監督を受けていること、原判示第二の交通事故については、被害者の過失が大きく、その傷害は軽傷に止まり、原審段階で同人とタクシー会社との間に示談がすでに成立していたほか、原審弁論終結後に被告人自ら被害者に若干の金員と菓子を贈つて謝罪し、同人の宥恕を得ていること、被告人は、本件犯行を深く反省し、自動車の運転も全くしていないこと、その他被告人の家庭の事情など、所論指摘の諸点(ただし、山形県庄内地方では、無免許運転が大して悪いことと考えられていない旨の所論については、直ちに左袒しえない。 害は軽傷に止まり、原審段階で同人とタクシー会社との間に示談がすでに成立していたほか、原審弁論終結後に被告人自ら被害者に若干の金員と菓子を贈つて謝罪し、同人の宥恕を得ていること、被告人は、本件犯行を深く反省し、自動車の運転も全くしていないこと、その他被告人の家庭の事情など、所論指摘の諸点(ただし、山形県庄内地方では、無免許運転が大して悪いことと考えられていない旨の所論については、直ちに左袒しえない。)を斟酌して現時点で考えると、本件は到底その刑の執行を猶予すべき事案であるとは認められないけれども、被告人に懲役一年六月(求刑懲役二年)を言い渡した原判決の量刑は、その刑期の点で重きに失して不当であると認められる。所論はこの限度で理由がある。よつて、刑事訴訟法三九七条、三八一条により原判決を破棄したうえ、同法四〇〇条但書に従い、当裁判所においてさらに自ら次のとおり判決する。原判決が確定した事実に原判決が適用した法令(科刑上一罪の処理、刑種の選択、併合罪加重を含む。)を適用処断したうえ、前記情状に鑑み、被告人を懲役一年二月に処し、押収してある自動車運転免許証(東京高裁昭和五二年押第一二五号の一)の偽造部分は、原判示第一の偽造有印公文書行使罪の犯行を組成したもので、なんびとも所有すべからざるものであるから、刑法一九条一項一号、二項によりこれを没収し、刑事訴訟法一八一条一項本文にのつとり、原審における訴訟費用は全部被告人の負担とし、主文のとお 組成したもので、なんびとも所有すべからざるものであるから、刑法一九条一項一号、二項によりこれを没収し、刑事訴訟法一八一条一項本文にのつとり、原審における訴訟費用は全部被告人の負担とし、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官綿引紳郎裁判官石橋浩二裁判官藤野豊)
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