平成12(行ウ)3 違法公金支出金返還請求

裁判年月日・裁判所
平成13年11月8日 福岡地方裁判所
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判決文本文19,943 文字)

主文 1 被告Aは,直方市に対し,8400円及びこれに対する平成12年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告E連合会は,直方市に対し,67万3258円及びこれに対する平成12年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告Bに対する訴え,被告Aに対するその余の訴え並びに被告C及び被告E連合会に対する市職員の被告E連合会の事務時間分給与1万5873円の不当利得返還請求の部分の訴えを却下する。 4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,被告A,被告B,被告C及び被告Dとの間においてはいずれも全部原告の負担とし,被告E連合会との間においては全部E連合会の負担とし,補助参加に関する費用は,被告A,被告B,被告C及び被告Dとの間においてはいずれも全部原告補助参加人の負担とし,被告E連合会との間においては全部E連合会の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告Aは,直方市に対し,68万9131円及びこれに対する平成12年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Bは,直方市に対し,60万円及びこれに対する平成12年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告Cは,直方市に対し,5万1819円及びこれに対する平成12年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告Dは,直方市に対し,3万7312円及びこれに対する平成12年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告E連合会(後記本件研修及び公金支出当時は「E’連合会」。平成12年5月22日に「E連合会」に改称。以下「被告連合会」という。)は,直方市に対し,68万9131円及びこれに対する平成12年2月9日から支払済みまで年5分の び公金支出当時は「E’連合会」。平成12年5月22日に「E連合会」に改称。以下「被告連合会」という。)は,直方市に対し,68万9131円及びこれに対する平成12年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告Aが,直方市長として自治区長らに対する研修を被告連合会に委託し,市職員を研修旅行に同行させたことが違法であるとして,直方市の住民である原告が,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,① 被告A(市長)に対し,損害賠償として,被告連合会の業務をさせた市職員の業務時間分の給与,同行させた市職員の同行日数分の給与及び日当合計8万9131円並びに研修委託料60万円の合計額に相当する額の支払いを求め,② 被告B(助役)に対し,損害賠償として,前項の研修委託料相当額の支払いを求め,③ 研修旅行に同行した被告C及び被告Dに対し,不当利得として各自が受領した前記①記載の給与及び日当の返還を求め,④ 被告連合会に対し,不当利得として,受領した前記研修委託料並びに前記市職員らに支払われた給与及び日当の返還を求めた事案である。 1 争いのない事実等以下の事実は,当事者間に争いがないか,又は括弧内標記の証拠により優に認められる。 (1) 当事者(争いなし)ア原告は,直方市の住民である。 イ被告らは,後記本件研修及び公金支出当時,直方市において以下の地位にあった。 (ア) 被告A 市長(イ) 被告B 助役(ウ) 被告D 総務課課長(エ) 被告C 総務課係長ウ被告連合会は,後記本件研修及び公金支出当時,直方市内の各自治区長により構成される団体であった。 (2) 研修の実施(甲1)直方市は,以下の研修 (エ) 被告C 総務課係長ウ被告連合会は,後記本件研修及び公金支出当時,直方市内の各自治区長により構成される団体であった。 (2) 研修の実施(甲1)直方市は,以下の研修(以下「本件研修」という。)について,被告連合会に委託し,実施した。 ア研修の目的介護保険制度の導入を控え,福祉施設の先進地視察イ研修期日平成10年11月19日,20日ウ研修場所 19日熊本市 Fセンター20日熊本県阿蘇郡a村社会福祉法人G会特別養護老人ホーム「H荘」(以下「H荘」という。)エ参加者 33名(うち事務局として被告D及び被告Cが同行。)オ研修内容(概要)19日熊本市のFセンターを午後4時ころ訪問,施設会議室において施設長から施設の概要及びビデオにてデイサービスの状況等の説明を受け,施設内の設備等の見学を行った。 20日熊本県阿蘇郡a村のH荘を訪問,施設長から施設の概要説明を受け,施設内のショートステイ・デイサービスセンターの実際の状況を見学。 午後は,b町のI薬草園を視察後,帰途。 (3) 公金からの支出(甲4の1,4の5ないし9,甲8の1ないし3,乙11)ア(ア) 直方市は,以下のとおり被告連合会に対し,本件研修の委託料60万円(以下「本件研修委託料」という。)を支払った。 平成10年10月27日本件研修委託料の支出負担行為につき被告Bによる決裁10月29日被告連合会と直方市との間で研修業務委託契約締結(以下「本件研修委託契約」という。)11月 5日被告Dによる支出命令11月17日収入役による支出(イ) 本 の間で研修業務委託契約締結(以下「本件研修委託契約」という。)11月 5日被告Dによる支出命令11月17日収入役による支出(イ) 本件研修委託料は,第2款総務費・第1項総務管理費・第2目文書広報費・第13節委託料の科目から支出された。 (ウ) 直方市事務代決及び専決規則によれば,第13節の支出負担行為の決裁について,1件20万円以上100万円未満のものは専決者は助役と定められている。 イ(ア) 直方市総務部長Jは,平成10年11月17日,被告D及び被告Cに対し,本件研修への同行を命じる出張命令を発し,同時に1人1日2100円の日当2日分合計4200円につきそれぞれ支出負担行為をした。 (イ) 直方市は,前記日当を支払った。 (ウ) 直方市事務代決及び専決規則によれば,課長及び係長の宿泊を要する出張命令は,専決権者は部長と定められている。 ウ(ア) 被告Aは,平成10年11月10日,被告D及び被告Cの同月分の給与に関し支出負担行為兼支出命令をした。 (イ) 直方市収入役は,同月20日,前記給与を支払った。 (ウ) 直方市の給与の計算期間は,毎月1日から末日までであり,支給日はその月の21日が原則となっている。 (エ) 被告Dの同月分の給与は,支給額56万1100円,控除額22万6619円,差引支給額33万4481円であり,被告Cの同月分の給与は,支給額42万1070円,控除額14万2457円,差引支給額27万8613円であった。 (4) 監査請求及び本件の提訴(甲1,18)ア原告は,平成11年11月12日付けで,本件研修委託料並びに本件研修に同行した被告D及び被告Cの同行日数2日分の給与及び日当( であった。 (4) 監査請求及び本件の提訴(甲1,18)ア原告は,平成11年11月12日付けで,本件研修委託料並びに本件研修に同行した被告D及び被告Cの同行日数2日分の給与及び日当(以下それぞれ「本件同行分給与」「本件同行分日当」といい,あわせて「本件同行分給与及び日当」という。)につき,直方市監査委員に対し,地方自治法242条1項に基づく監査請求を行い,同月19日付けで受理された。同監査委員は,平成12年1月11日付けで,原告の措置請求は認められないと判断し,そのころその結果を原告に通知した。 イ原告は,平成12年2月1日,本件訴訟を当裁判所に提訴した。 2 争点本件の争点は,①監査請求の前置及び期間徒過,②本件研修に対する公金支出が違法か否か,③被告らの責任の有無である。 3 争点に対する当事者の主張(1) 監査請求の前置及び期間徒過についてア被告らの主張本件研修委託料の支払いは,市長による支出負担行為,市長による支出命令及び収入役による現実の支出という3個の財務会計上の行為であり,そのうち前二者については,行為後1年を経過した後に監査請求がされているから,本件訴訟は不適法であり,後者の現実の支出は,監査請求及び本件訴訟の対象になっておらず,また収入役の行為であって被告らの行為ではないから,本件訴訟は不適法である。そして,これらを前提とする被告連合会に対する本件研修委託料の不当利得返還請求についても当然に不適法である。 また,本件同行分給与については,支出負担行為兼支出命令から1年を経過した後に監査請求がされているから,この点についても不適法である。 さらには,本件訴訟における請求のうち,被告Cの本件研修の実施に関して被告連合会の事務局として職務を行った時間に相当する給与(以下「本 た後に監査請求がされているから,この点についても不適法である。 さらには,本件訴訟における請求のうち,被告Cの本件研修の実施に関して被告連合会の事務局として職務を行った時間に相当する給与(以下「本件事務分給与」という。)の支払いが違法であるとの点については,対象となるべき被告Cの行為が特定されておらず,その結果として違法となる財務会計上の行為も特定されていないうえ,監査請求も経ていないことから,不適法である。 イ原告の主張先行行為,後行行為の関係に立つ当該行為が複数の職員によって行われた場合であっても,地方自治法242条1項の各行為のいずれかにおさまる限りにおいて,監査請求の当該行為としての同一性の範囲内にあると見て,最終の住民訴訟の当該行為の日を基準として,監査請求期間が進行すると解すべきである。本件の各支出については,専決権者又は被告Aの支出負担行為及び支出命令と収入役の支出行為が先行行為,後行行為の関係に立つのであるから,収入役の支出行為が監査請求期間の起算点となる。よって,本件監査請求は期間内にされたものである。 また,本件事務分給与について,本件研修に関する事務は,被告Aの違法な契約締結によってしか起こりえないものであり,監査請求との事件の同一性は明らかである。すなわち,住民訴訟は,監査請求の結果の当否を争うものではなく,地方公共団体の財務の違法状態を除去し,損害の予防,回復をはかることを目的とするものであるから,監査請求の対象と住民訴訟の対象が完全に一致する必要はなく,事件としての同一性があればよいから,この点についても適法な訴えである。 (2) 公金支出の違法性についてア原告の主張(ア) 本件研修の委託の違法性地方公共団体が行うべき研修の意義は,専門的な知識や経験を職員に与えることによって,行政業務の質的 な訴えである。 (2) 公金支出の違法性についてア原告の主張(ア) 本件研修の委託の違法性地方公共団体が行うべき研修の意義は,専門的な知識や経験を職員に与えることによって,行政業務の質的向上を図ることにある。しかし,「介護福祉施設の運営のあり方等についての研修」を市職員自ら実施せず,あえて被告連合会に委託すべき理由は見あたらない。被告連合会は,行政組織の一部でも末端でもない一任意団体であり,また,介護保険制度に関わる政策や福祉施設等について特別な専門性も有していない。そのような団体に市の重要な福祉政策に関わる研修を委託することは目的整合性を欠いている。 地方自治体の吏員その他の職員に対する研修は,地方自治法172条及び地方公務員法39条に規定されているが,自治区長はその他の職員に該当しない。よって,自治区長らに対する研修を市の業務として行うことは,法令の根拠がなく違法である。 また,本件研修の研修委託契約書について,被告連合会の押印をしたのは被告Cであって,権限なき者による契約締結であるから,契約は違法である。また,被告連合会会長は,前記行為を了知していたのであるから,契約は無効である。 そもそも,研修を委託しておきながら,本件研修も含め従前から事実上被告連合会は委託業務には関わっておらず,市職員がすべてこれを行っており,委託とはいえない。このような実態に照らせば,研修を委託したのではなく,研修の委託との名目で,直方市が自治区長に対し,施設見学会付きの観光旅行の接待を行ったものというべきである。 (イ) 本件研修の違法性本件研修は,自治区長らに先進地の施設を見学させ,その運営のあり方等について学ばせるというものであるが,そのような研修を実施することが,介護保険制度の導入にとって必要ないし有益とはいえないし,また研修による具体的 治区長らに先進地の施設を見学させ,その運営のあり方等について学ばせるというものであるが,そのような研修を実施することが,介護保険制度の導入にとって必要ないし有益とはいえないし,また研修による具体的な成果もなかった。そもそも,直方市民が介護保険によって県外の施設を利用することはほとんどないはずであるのに,介護保険の円滑な導入のためにあえて見学の施設を視察しなければならない理由はない。 仮に本件研修内容が,何らかの意味で有益であったとしても,それを自治区長らに受けさせたり,被告連合会に委託する根拠はない。本件研修内容は,自治区長らに市職員が同行して行わなくても,市職員1,2名で事足りる内容である。本件研修後,被告連合会から被告Aに研修結果が報告されておらず,被告Aから被告連合会に対して報告を催促したこともない。そのような報告を受ける必要のない研修は無意味である。 以上のように,本件研修は,研修という名目のK温泉への観光・慰安旅行というのが実態であり,このような観光・慰安旅行に対し研修委託名目で契約を締結して公金60万円を支出したことは,明らかに違法である。 (ウ) 市職員同行の違法性本件研修については,本件研修委託契約によって被告連合会に委託したのであるから,これにより市の業務ではなくなっており,市職員らを公務として同行させ又は参加・従事させる法令の根拠を欠き,市職員が本件研修に参加・従事することは職務専念義務に違反するもので違法となる。よって,本件研修に同行した市職員に対する研修期間の日当及び給与の支払いについても違法な公金支出となる。 (エ) 市職員の被告連合会事務局としての職務の違法性被告Cは,本件研修実施に関して被告連合会の事務局として,日程表作成,契約書捺印,視察先依頼,旅行会社の手配,研修後の報告書の作成等の職務を行ったが,職 市職員の被告連合会事務局としての職務の違法性被告Cは,本件研修実施に関して被告連合会の事務局として,日程表作成,契約書捺印,視察先依頼,旅行会社の手配,研修後の報告書の作成等の職務を行ったが,職務時間中に一任意団体の事務局を市職員がつとめることは,職務専念義務違反であるから,被告Cが行ったこれらの職務はすべて公務として適法なものとはいえない。にもかかわらず,これらの職務を行うに費やした時間に対しても給与が支払われているが,この給与の支払いは違法な公金支出である。 イ被告らの主張(ア) 本件研修の委託の適法性直方市は,地域住民組織としての自治区・隣組に対して行政事務の一部を委託し,かつこれに対して報償金を支給している。またE’連合会に対しても,その事務所を直方市役所とすること(平成10年当時)にし,その連絡事務等の一部を援助し,さらに本件においても問題とされている平成10年度研修の以前から研修を委託する等,行政事務の一部を委託し,かつそれに対して一定の援助を行っている。 直方市における自治区等の地域住民組織は,あくまで地域住民の任意による自治的組織にすぎないが,これらは,地域における住民の自治組織として,歴史的な経緯のもと,地方公共団体として住民福祉の観点から十分に尊重すべき公益的な組織及び活動を有している。したがって,このような自治区に対して,行政事務の一部を委託し,かつこれに対して一定の援助を行うことは,地方公共団体として違法ではない。そして,被告連合会が,このような役割と実質を有する直方市自治区相互間の連絡調整,情報交換及び親睦団体としての性質を有し,そのための諸活動を行う場合,直方市が,その行政目的に照らし,自治区の活動を援助するという趣旨において被告連合会に対して一定の事務を委託し,かつそれに対して一定の援助を行うことも当 ての性質を有し,そのための諸活動を行う場合,直方市が,その行政目的に照らし,自治区の活動を援助するという趣旨において被告連合会に対して一定の事務を委託し,かつそれに対して一定の援助を行うことも当然に許されるべき適法な行為である。 本件研修の研修委託も適法な行為である。直方市における自治区の役割と機能に照らして鑑みれば,直方市がその行政事務の遂行にあたり自治区を通じた広報活動を実施し,その事務の一部を委託し,あるいは自治区に協力を要請することはあり得ることである。そして,それらを円滑に行うため事前に自治区長に対して研修を行うことも当然にあり得るものであって,地方公共団体の事務の1つである(地方自治法2条2項)。そして,その研修についてこれを被告連合会に委託することも,被告連合会が自治区の連合会であって自治区相互の連絡調整等を目的とする活動を有するものである以上,その研修を被告連合会に委託することも地方自治体の裁量の範囲内である。 また,本件研修の研修委託契約書について,被告Cが被告連合会の押印をしたことをもって,契約の違法又は無効ということはできず,原告のこの点の主張は,主張自体理由がない。 (イ) 本件研修の適法性当時,介護保険制度は,平成12年4月に制度が導入され,平成11年10月からは認定審査事業が実施される予定となっていた。このような状況のもと,地方自治体には,介護保険制度をどのように住民に理解してもらい,その必要性について十分な理解を得て,制度の円滑な導入と実施,保険料の円滑な徴収を行うことが求められていた。介護保険の実施にあたっては,認定申請が円滑に行われること,訪問調査等が十分な効果を上げることが必要であったが,そのためには単に当該介護保険対象者だけでなく,それらの高齢者の状況を最も把握している地域の隣組や自治区の協力が ,認定申請が円滑に行われること,訪問調査等が十分な効果を上げることが必要であったが,そのためには単に当該介護保険対象者だけでなく,それらの高齢者の状況を最も把握している地域の隣組や自治区の協力が不可欠な状況にあった。そのような中において,直方市では,平成11年8月から9月にかけて直方市の各校区内において介護保険制度の説明会を各自治区の協力の下に実施した。これらの説明会に多くの住民の参加を求め,かつ説明会の実効性を高めるためには,各自治区の協力が不可欠であり,そのためには各自治区に対して介護保険の必要性等についての十分な理解が不可欠であった。 平成10年11月に実施された本件研修は,まさにかかる観点から介護福祉施設の運営のあり方を見学研修し,介護保険についての認識を高めることを目的として行ったものである。 本件研修の目的は,地方自治体の事務としてまさに必要なものというべきであって適法である。またこれを自治区長に対する研修という形で実施したこと,その具体的な実施を被告連合会に委託したこと,研修委託料として60万円を支出したことも地方自治体の事務を遂行するにあたって地方自治体が裁量として許される範囲内の処理であって違法性はない。 (ウ) 市職員同行の適法性本件研修が本来的には市が各自治区長に対して行うものであり,その実施にあたって委託料を支出するものである以上,研修の実施について直方市がその遂行について関与することも当然であって,その研修の実施に際して,研修効果を上げるために市職員を同行させることは何ら違法性はないし,この点につき地方公共団体の裁量権から著しく逸脱したものとはいえない。 (エ) 市職員の被告連合会事務局としての職務の適法性前記(1)アで主張したとおり,財務会計上の行為が特定されておらず,かつ監査請求を経ていないことから,原告 権から著しく逸脱したものとはいえない。 (エ) 市職員の被告連合会事務局としての職務の適法性前記(1)アで主張したとおり,財務会計上の行為が特定されておらず,かつ監査請求を経ていないことから,原告の主張自体失当である。 また,事実上市職員が事務を被告連合会に代わって行うことも地方公共団体の裁量権から著しく逸脱したものとはいえない。 (3) 被告らの責任についてア原告の主張(ア) 被告Aについて被告Aは,平成7年に市長に就任して以降,各年度において被告連合会に研修を委託する契約を締結したが,従前から行われていた被告連合会に委託する研修について,その実態が観光・慰安旅行であったこと,研修を委託しておきながら実際にはその研修実施のための事務をすべて市職員が行い,さらに研修に参加・従事していたといった事情を了知していたのであるから,市長としては,専決権者に対し,このような違法な公金支出となる本件研修委託契約の締結,出張命令をさせないよう,監督する義務があったところ,これを怠り本件研修委託契約を締結させ,或いは出張命令を発令させて市職員を本件研修に参加・従事させたのであるから,専決権者に対する監督を怠った過失がある。さらに,法令の根拠を欠く市職員の本件研修への参加・従事に対し,そのような事情を十分了知しながらその期間分の給与についての支出負担行為兼支出命令を行った過失がある。 よって,被告Aは,地方自治法242条の2第1項4号前段に基づき,本件研修委託料60万円に,本件同行分給与及び日当並びに本件事務分給与合計8万9131円を加えた68万9131円の損害賠償責任がある。 なお,直方市の給与条例によれば,課長職の日給は1万4788円ないし1万6556円であり,係長職の日給は1万3304円ないし1万5873円であるから,被告Dの1日分の給与は1万 損害賠償責任がある。 なお,直方市の給与条例によれば,課長職の日給は1万4788円ないし1万6556円であり,係長職の日給は1万3304円ないし1万5873円であるから,被告Dの1日分の給与は1万6556円,被告Cの1日分の給与は1万5873円で計算し,被告Cの本件研修の実施に関して被告連合会の事務局として職務を行った時間は合計8時間,すなわち1日分と計算すべきである。 (イ) 被告Bについて被告Bは,本件研修委託料の支出負担行為の専決権者であり,本件研修に関する前記事情を了知していたにもかかわらず漫然と支出負担行為を行った。よって,被告Bは,地方自治法242条の2第1項4号前段に基づき,本件研修委託料の60万円の損害賠償責任がある。 (ウ) 被告D及び被告Cについて被告D及び被告Cは,それぞれ総務課課長及び総務課係長の職にあったが,本件研修に関する前記事情を了知していたにもかかわらずことさらこれを問題とせず,被告Aによって違法に支出された公金を故意又は重過失によって取得した。よって,被告Dにつき本件研修に同行した2日分の給与3万3112円及び日当4200円の合計3万7312円を,被告Cにつき本件研修に同行した2日分の給与3万1746円及び日当4200円並びに本件事務分給与1万5873円の合計5万1819円につき,それぞれ地方自治法242条の2第1項4号後段に基づき不当利得として返還する義務がある。 (エ) 被告連合会について本件研修の研修委託契約書は,被告Cが押印したものであり,契約締結の権限がない者による契約締結であり,当時の被告連合会会長L(以下Lという。)はその行為を知っていたから,契約は無効である。そして,研修先の視察依頼,旅行会社の手配,参加者の受付等委託業務のすべてを被告Cが行ったものであり,被告連合会はそれを了知しな 長L(以下Lという。)はその行為を知っていたから,契約は無効である。そして,研修先の視察依頼,旅行会社の手配,参加者の受付等委託業務のすべてを被告Cが行ったものであり,被告連合会はそれを了知しながらも,自ら委託された業務を行わない,つまり契約を履行せずに委託料を受け取ったものである。 被告連合会は,業務を委託された以上,自らこれを履行しなければならないところ,被告Cに研修先の視察依頼等の事務手続を行わせ,さらには被告D及び被告Cを研修業務に参加・従事させたうえ,両名の交通費及び宿泊費も研修費用から支出し負担したもので,違法な公金支出を受けた市職員2名の労力を故意又は重大な過失によって違法に受給したものである。 よって,被告連合会は,地方自治法242条の2第1項4号後段に基づき,本件研修委託料60万円及び前記市職員らに支払われた日当及び給与の合計8万9131円を加えた68万9131円を不当利得として返還する義務を負う。 イ被告らの主張前記主張のとおり,本件研修の委託費用の支出並びに職員が本件研修の準備及び同行することは,適法なものであるから,被告らは責任を負わない。 なお,被告D及び被告Cの本件研修への同行は,両名の上司の出張命令によるものであり,その受けた日当や給与について違法を論じる余地はない。 第3 争点に対する判断 1 争点①(監査請求の前置及び期間徒過)について(1) 本件研修委託料について前記争いのない事実等によれば,本件研修委託料に関する監査請求は,被告Bの専決による支出負担行為,被告Dによる支出命令から1年経過後にされている。よって,被告A及び被告Bに対する本件研修委託料相当額の損害賠償請求は,いずれも適法な監査請求を経ておらず,訴えは不適法である。 この点,原告は,前記委託契約締結行為及び支出命令と,収入役による支出行 って,被告A及び被告Bに対する本件研修委託料相当額の損害賠償請求は,いずれも適法な監査請求を経ておらず,訴えは不適法である。 この点,原告は,前記委託契約締結行為及び支出命令と,収入役による支出行為とは先行行為,後行行為の関係に立つから,監査請求期間の起算点は収入役の支出行為を基準とするべきと主張する。しかし,監査請求は,住民訴訟の前提となるところ,住民訴訟で問題とされる行為は財務会計行為であり,それらは個別的に判断されるべきである。よって,前記委託契約締結行為,支出命令,支出行為はすべて異なる財務会計行為であって,それぞれの行為の時点から監査請求期間が進行する。 原告の主張は採用できない。 もっとも,不当利得返還請求権については,その損失と利得が発生した時点が監査請求期間の起算点と解するべきであり,支出行為に関して適法な監査請求を経ていれば足りるところ,本件においては,収入役の支出行為に関して適法な監査請求を経ているから,不当利得返還請求については,適法な監査請求を経ているというべきである。 (2) 本件同行分給与及び日当について本件同行分給与及び日当については,財務会計行為がいずれも特定されているが,本件同行分給与及び日当のうち,給与に関しては,支出負担行為及び支出命令から1年を経過して監査請求がされていることから,被告Aに対する給与に関する損害賠償請求については,訴えは不適法である。 しかし,収入役の支出行為に関して適法な監査請求を経ていることになるから,不当利得返還請求については,適法な監査請求を経ているというべきである。 また,日当に関しては,適法な監査請求を経ているというべきである。 (3) 本件事務分給与についてこれについては監査請求の対象となっていないから,本件事務分給与については適法な監査請求を経ておらず,訴えは不適法で しては,適法な監査請求を経ているというべきである。 (3) 本件事務分給与についてこれについては監査請求の対象となっていないから,本件事務分給与については適法な監査請求を経ておらず,訴えは不適法である。 この点,原告は,事件の同一性から本件事務分給与についても適法な訴えとなる旨主張するが,独自の見解であって採用の限りでない。 2 争点②(本件研修に対する公金支出の違法性)について(1) 証拠(甲2,4の3ないし5,4の7,5の1ないし20,7の1及び2,9の1及び2,16,乙2,5,8ないし10,証人L,被告C(ただし以下の認定に反する部分は信用できない。))及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア(ア) 被告連合会は,平成10年当時,その事務所を直方市役所に置き,「自治区長相互の親睦・協調及び市と市民との間の連絡・協調を図り,市の振興と市民生活の安定,幸福に寄与すること」を目的とし,そのために「各自治区共通の案件につき,理事会において意見を調整の上問題の解決に努める」「各自治区に共通する重要案件につき,総会において審議し,当該自治区と協力して解決に努める」「懇談会,懇親会等を開催し,相互の親睦を図る」「先進他市町村の視察,研修会等を行う」等の事業を行う,91名の自治区長をその構成員とする団体であり,会長1名,副会長4名,理事21名をその中から選出し,理事を構成員とする理事会と会長及び副会長を構成員とする正副会長会議が総会以外に設けられ,いずれも通常月1回開催されていた。そのほか,会則上は事務局の存在を前提としているが,その任務,選任方法等具体的な規定を欠くも,事務局が被告連合会におかれ,従前は直方市企画調整課の職員が事務局員として事務を執り行い,平成10年4月以降,直方市総務課の職員が事務局員に就任していた。なお,事務局 選任方法等具体的な規定を欠くも,事務局が被告連合会におかれ,従前は直方市企画調整課の職員が事務局員として事務を執り行い,平成10年4月以降,直方市総務課の職員が事務局員に就任していた。なお,事務局員は直方市の職員のみであり,被告連合会の構成員である自治区長が事務局員とはなっていない。 (イ) 自治区は,自治区(自治会組織)行政の統括,自治区財産の管理,自治区住民の世帯の把握,市等公的機関からの文書類の伝達,住民福祉に関すること,青少年の健全育成に関すること,高齢者所帯・一人暮らしの高齢者等の状況把握等の業務を執り行っている。 自治区長に対しては,「直方市地域連絡に関する要綱」に基づき,市から包括する隣組への連絡及び物資配布等の協力並びに隣組長への報償金の支給に関する事務が委任され,これに対し報償金が支給されることになっている。 (ウ) 被告連合会の事務に関しては,直方市では企画調整課が執り行っていたが,平成10年4月から総務課に移管となった。 本件研修当時,被告連合会の会長はLであり,具体的な事務処理を行っていたのは被告Cであった。被告Cの被告連合会に関する事務の内容は,自治区長及び隣組長に関する事務で,自治区長と直方市との連絡調整及び会議の連絡調整,隣組の名簿の作成,数の変更,報償金の支払い事務であり,研修に関しては,被告連合会の研修の日程調整,視察依頼,研修の貸切バス及び宿泊先の手配,研修参加申込書の自治区長への送付及び参加受付,同研修の研修委託費に関する委託契約書,請求書,研修資料,直方市に提出する研修の報告書の作成,研修の会計事務等であった。また,直方市が出席する事案に関する正副会長会議及び理事会には,被告Cが出席していた。 イ直方市が委託する,自治区長を対象とする本件研修のような研修は昭和48年から毎年実施され,いずれも1泊 。また,直方市が出席する事案に関する正副会長会議及び理事会には,被告Cが出席していた。 イ直方市が委託する,自治区長を対象とする本件研修のような研修は昭和48年から毎年実施され,いずれも1泊2日の行程で行われていた。その際,研修の実施に関する具体的な事務行為は,いずれも直方市の市職員が被告連合会の事務局として執り行っていた。平成10年度については,第13節の委託料として,917万9000円の予算が配分されており,その内訳としては,自治区長研修委託料,法律相談委託料,看板作製委託料,市報等発送業務委託料とされていた。 本件研修の目的及び内容は,自治区長から研修に関して出された,大分県大山町の「まちづくり」,熊本県水俣市の「清掃処理施設」の見学等の意見の中から,平成10年9月の正副会長会議の協議で選択され,最終的に同年10月の理事会及び正副会長会議で決定された。なお,その決定をする際,1泊2日の旅程はそれまでの慣習を受けて前提となっており,日帰りでの研修については検討されていなかった。 そして前記決定を受け,被告Cが,前記ア(ウ)のとおり,具体的な見学先,宿泊先の決定,移動手段の確保,本件研修委託金の請求等の事務処理を行った。 本件研修は,新たに導入される介護保険制度について,自治区長及び住民の関心が寄せられていたところ,先進的な介護の現場を見学することで,介護保険制度への関心を高める等の目的で実施されることになった。具体的な見学地については,被告Cが,同月初めころ,直方市福祉課職員に対し見学に適する施設の紹介を依頼し,紹介された熊本市のFセンター及び熊本県阿蘇郡a村のH荘を選択し,宿泊先についてはKグランドホテルを選択した。 ウその後,被告連合会会長のLの名で各自治区長に対し本件研修の通知及び参加要請がされた。これらの配布は,いずれ ター及び熊本県阿蘇郡a村のH荘を選択し,宿泊先についてはKグランドホテルを選択した。 ウその後,被告連合会会長のLの名で各自治区長に対し本件研修の通知及び参加要請がされた。これらの配布は,いずれも被告Cが行った。 エ参加要請に対し,11校区中10校区から合計31名の自治区長が本件研修に参加することとなり,事務局として被告D及び被告Cが同行することとなった。被告D及び被告Cは,平成10年11月17日,直方市総務部長Jから出張命令を受けた。なお,参加した自治区長は,60歳前後の者が多かった。 オ平成10年11月19日,市民会館前を貸切バスで出発し,本件研修が開始された。最初の見学地であるFセンターに向かうバスの車内では,吉田があいさつをし,その後,被告Cが作成したFセンター,H荘の案内等を内容とする研修資料が配付された。各人その資料に目を通すだけで,特段説明等がされてはいなかった。 また,同時に1人あたり缶ビール1本及びつまみが配布された。これらは被告Cにおいて準備された。 カ同日午後4時ころ,Fセンターに到着した。施設長から施設の概要について説明を受け,デイサービスに関するビデオを見た後,2班に分かれて施設内を見学,併設されている歯科診療所の院長と懇談し,最後に施設長との質疑応答をして見学を終了した。 キ Fセンターの見学を終えた後,宿泊先のKグランドホテルに移動し,午後7時ころ,同ホテルに到着した。そこで午後7時30分ころから午後9時ころまで,夕食を兼ねての懇親会が催された。この懇親会では夕食の他に酒類も提供された。 ク夕食後,いわゆる2次会が催されることもなく,各人の自由時間となった。ただ,つまみは被告Cによって配布された。 ケ翌20日午前10時20分ころ,H荘に到着した。施設長から施設の概要の説明を受け,その後3班に分かれ,車 会が催されることもなく,各人の自由時間となった。ただ,つまみは被告Cによって配布された。 ケ翌20日午前10時20分ころ,H荘に到着した。施設長から施設の概要の説明を受け,その後3班に分かれ,車いす者専用の移動式バスの操作,入所者のリハビリ風景等施設内を見学し,その後施設長の話を聞いて見学を終了した。 コ H荘の見学を終えた後,I薬草園に立ち寄り,そこで昼食をとった後帰途についた。I薬草園は昼食のために立ち寄ったのみで,特段研修の意味合いはなかった。 サ本件研修に関する具体的な事務処理及び会計処理はすべて被告Cが行った。これらの処理を行ったのは被告Cの勤務時間内であり,その際権限ある者からの職務専念義務の免除は受けていない。 シ本件研修終了後,被告D及び被告Cは口頭復命をしたのみで特段書面等を作成しておらず,また,本件研修に参加した自治区長らが会合,アンケート等の書面等方法を問わず特段反省会は行われていない。 被告連合会は,平成10年11月26日付けで,直方市に対し,研修の日程,会計報告等を内容とする研修報告書を提出しているが,これは被告Cが作成した。なお,この研修報告書は,収支計算書にとどまり,特段研修に対する意見,感想といったものは記載されておらず,受付処理,回覧等もされていない。 ス本件研修に参加した自治区長は,1人5000円の参加料を徴収されており,また,被告D及び被告Cの日当2日分各4200円は,事務局参加負担金として本件研修の収入とされていた。本件研修の支出については,宿泊費が全支出の約6割,貸切バス代が全支出の約3割弱を占めていた。本件研修に関する会計業務は,被告Cが処理をした。 セ本件研修の研修委託契約書によると,その基本となる合意内容は,被告連合会が直方市の委託するE’連合会研修業務について誠実に実施し,直方市は いた。本件研修に関する会計業務は,被告Cが処理をした。 セ本件研修の研修委託契約書によると,その基本となる合意内容は,被告連合会が直方市の委託するE’連合会研修業務について誠実に実施し,直方市はその費用として金60万円を支払うというものであるところ,前記契約書の作成,市長印及び被告連合会印を押印したのは,いずれも被告Cであった。被告連合会の押印については,Lは了承していた。 ソ直方市は,平成11年8月下旬から9月上旬にかけ11の校区で,介護保険制度の地域住民への周知徹底及びその運営の円滑な実施を目的とし,また同年10月から実施される認定審査事業への地域の協力を求め,介護保険制度についての説明会を催した。当初は,11の校区で各1回ずつの予定であったが,自治区長からの説明会の追加開催の希望があり,最終的には11の校区での地域説明会18回,追加説明会2回及び聴覚障害者対象説明会1回の合計21回,説明会が開催された。 (2) まず,本件研修を被告連合会に委託することが違法であるかについて検討する。 ア被告連合会の性格前記争いのない事実及び前記認定した事実によれば,被告連合会は,自治区長を構成員とし,いわば市と住民との間のパイプ役といったような役割を担うものであり,市との間では市報等の配布を委任される等していることが認められ,一任意団体ではあるものの,前記役割に鑑みれば,公共的性格を有する団体であるということができる。 そして,地方公共団体の事務として,当該普通地方公共団体の区域内の公共的団体等の活動の綜合調整があり(地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成11年法律第87号)による改正前の地方自治法2条3項20号参照),そのために,被告連合会に対し,直方市が一定の事務を委任し,協力を要請することができ,その公益上必要 法律の整備等に関する法律(平成11年法律第87号)による改正前の地方自治法2条3項20号参照),そのために,被告連合会に対し,直方市が一定の事務を委任し,協力を要請することができ,その公益上必要がある場合には寄付又は補助等一定の助成をすることができる(地方自治法232条の2)。 イ本件研修の委託についてところで,受託者が受託事務を遂行することがそもそも予定されていないにもかかわらず,研修委託契約を締結し,これに公金を支出することは,実態は研修の委託ではないにもかかわらず研修を委託するとの名目で公金を支出する,いわば研修委託契約の形態を仮装しての公金支出であるといわざるを得ず,この場合には公金の支出の前提となる契約は,公金支出の法令の規定を潜脱するいわば脱法行為と評価せざるを得ず違法かつ無効であるというべきである。これを本件についてみるに,前記認定した事実によれば,本件研修と同様の研修を直方市が被告連合会に毎年委託していたこと,その研修はいずれも1泊2日の日程で行われていたこと,これに対し直方市が一定額の研修委託料を被告連合会に支払っていたこと,本件研修においては,被告連合会の研修の日程調整,視察依頼,研修の貸切バス及び宿泊先の手配,研修参加申込書の自治区長への送付及び参加受付,同研修の研修委託費に関する委託契約書,請求書,研修資料,直方市に提出する研修の報告書の作成,研修の会計事務等研修を実施するに当たってのおよそ必要な事務行為のすべてを直方市の職員が行い被告連合会の構成員がこれを行っていないこと,そのような事務の取扱いは従前と異ならないことが認められ,これらによれば,本件研修の委託契約については,直方市においては,従前どおり委託した研修の事務すべてを直方市職員が行うとの認識を有し,被告連合会においても,研修実施のための事務すべて ことが認められ,これらによれば,本件研修の委託契約については,直方市においては,従前どおり委託した研修の事務すべてを直方市職員が行うとの認識を有し,被告連合会においても,研修実施のための事務すべてを直方市の職員が行い,自治区長はその設定された研修に単に参加するのみであるとの認識を有していたと推認され,委託者,受託者双方において委託者が受託した事務すべてを執り行うとの前提で研修委託契約を締結したことになる。とすれば,直方市と被告連合会は研修委託契約を締結してはいるものの,その実態は委託者がすべての事務を執り行うというもので,研修の委託を受託者に委託しないとの前提で契約が締結されている,委託とは名ばかりのものであるというべきであり,本件研修委託料60万円の出捐は,旅行費用捻出のための公金の支出に研修委託料の名目を与えるにすぎない,すなわち,研修委託契約の形態を仮装しての出捐で公金支出の法令の規定を潜脱するいわば脱法行為と評価せざるを得ないのであり,この点において本件研修の研修委託契約は違法かつ無効であるというべきである。 (3) 被告D及び被告Cの本件研修の同行について前記のとおり,本件研修の研修委託契約は違法かつ無効であるところ,これを前提とする被告D及び被告Cの本件研修の同行についても許されず違法であると解すべきである。 そうすると,本件研修の同行にかかる出張命令及びそれに伴う日当の支出負担行為は,いずれも違法な行為というべきところ,1人1日当たりの同行の日当2100円,本件研修が実施された平成10年11月の被告Dの日給1万8703円,被告Cの日給1万4035円をもとに算出した7万3876円が違法な支出ということになる。 3 争点③(被告らの責任)について以上の事実をもとに,被告らの責任を検討する。 (1) 被告Aの損害賠償義務につい の日給1万4035円をもとに算出した7万3876円が違法な支出ということになる。 3 争点③(被告らの責任)について以上の事実をもとに,被告らの責任を検討する。 (1) 被告Aの損害賠償義務について本件研修委託料及び本件同行分給与については,前記のとおり,適法な監査請求を経ていないから,不適法却下を免れず,被告Aにその賠償責任を負わせることはできない。 しかし,本件同行分日当については,適法な監査請求を経ている。そして,被告Aは,従前から行われていた被告連合会に委託する研修について,研修を委託しておきながら実際にはその研修実施のための事務をすべて市職員が行い,さらに研修に参加・従事していたといった事情を了知していたのであるから,市長としては,専決権者に対し,このような違法な公金支出となる出張命令及び支出負担行為をさせないよう監督する義務があったところ,これを怠り出張命令を発令させて市職員を本件研修に参加・従事させ,これに対し日当を支払うべく支出負担行為をさせたのであるから,専決権者に対する監督を怠った過失がある。 よって,被告Aは,地方自治法242条の2第1項4号前段に基づき,本件同行分日当合計8400円につき,損害賠償責任を負う。 (2) 被告連合会の不当利得返還義務について被告連合会は,前記のとおり違法かつ無効な研修委託契約に基づき,研修委託料60万円の交付を受けたものであるから,法律上の原因なしに利得を受け,同額の損失が直方市に発生しているから,地方自治法242条の2第1項4号後段に基づき,60万円について不当利得として返還する義務を負う。 次に,本件同行分給与分の直方市職員による役務の提供及び被告連合会の収入となった日当分相当額について被告連合会が不当利得したといえるかについて検討する。本件同行分給与及び日当は,いずれもまずは被 。 次に,本件同行分給与分の直方市職員による役務の提供及び被告連合会の収入となった日当分相当額について被告連合会が不当利得したといえるかについて検討する。本件同行分給与及び日当は,いずれもまずは被告D及び被告Cに支給される。 しかし,被告D及び被告Cは,出張命令により本件研修に参加・従事し,直方市の事務処理として本件研修の実施のために被告連合会の事務を処理することを余儀なくされ,被告連合会の事務を処理し,また支給された日当については,従前からの取扱いどおり,当然に事務局参加負担費としてそのまま被告連合会の収入として扱われる。他方,被告連合会は,研修の委託を受けているにもかかわらず事務処理を直方市職員に行わせ,また当然に日当を事務局参加負担費として得,その労力及び日当を得ている。これらの事情に照らせば,本件同行分給与及び日当については,いずれも被告D及び被告Cに支給されるも,それが当然に被告連合会に事務処理の労力及び事務局参加負担費として移転するのであり,この移転に関して被告D及び被告Cの意思は全く介在せず,被告D及び被告Cの意思でこの移転を止めることはできないのであって,結局は,直方市から被告連合会に本件同行分日当及び相当する労力という形での本件同行分給与が直接移っているというべきであり,被告D及び被告Cを経由することは,単なる因果の経過にすぎないというべきである。そして,本件同行分給与及び日当中,給与に関しては,前記2(3)のとおりの日給となるが,原告の請求の範囲に限定されることになるから,被告連合会は,本件同行分給与及び日当相当額である7万3258円について不当利得として返還する義務を負う。 (3) 被告D及び被告Cの不当利得返還義務について被告D及び被告Cの本件同行分の給与及び日当が不当利得となるかについては,前記のとおり,被告 3258円について不当利得として返還する義務を負う。 (3) 被告D及び被告Cの不当利得返還義務について被告D及び被告Cの本件同行分の給与及び日当が不当利得となるかについては,前記のとおり,被告連合会の不当利得となるというべきであって,被告D及び被告Cを経由することは単なる因果の経過にすぎないから,被告D及び被告Cには利得がないというべきである。よって,不当利得返還義務を負わない。 4 以上のとおり,被告Aに対する本件同行分日当合計8400円の損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成12年2月9日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の請求,被告連合会に対する本件研修委託料60万円並びに本件同行分給与及び日当合計7万3258円の不当利得返還並びにこれらに対する平成12年2月9日から支払い済みまで年5分の割合による遅延損害金の請求についてはいずれも理由があるからこれらを認容し,原告の被告Bに対する訴え,被告Aに対するその余の訴え並びに被告C及び被告連合会に対する本件事務時間分給与1万5873円の不当利得返還請求の部分の訴えはいずれも不適法であるからこれらを却下することとし,その余の請求についてはいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条ただし書,66条を適用し,仮執行宣言については相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結日平成13年9月27日)福岡地方裁判所第1民事部裁判長裁判官髙野裕裁判官山本正道裁判官入江克明 裁判官 山本正道 裁判官 入江克明

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