平成18(ワ)2709 意匠権に基づく差し止め請求権不存在確認請求,同反訴請求

裁判年月日・裁判所
平成19年8月30日 名古屋地方裁判所
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判決文本文27,540 文字)

- 1 -平成18年(ワ)第2709号意匠権に基づく差し止め請求権不存在確認請求事件・平成19年(ワ)第376号同反訴請求事件主文 原告(反訴被告)の本訴請求及び被告(反訴原告)の反訴請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,本訴反訴を通じてこれを5分し,その1を原告(反訴被告)の負担とし,その余は被告(反訴原告)の負担とする。 事実 及び理由第1請求 本訴請求(1) 被告(反訴原告。以下「被告」という。)は,原告(反訴被告。以下「原告」という。)に対し,849万円及びこれに対する平成19年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告は,別紙謝罪文を原告及び株式会社くろがね工作所あてに送付せよ。 反訴請求(1) 原告は,別紙「原告製品図面」記載のいすを製造し,譲渡し,引き渡し,貸し渡し,輸出し,輸入し,又は譲渡若しくは引渡しのために展示してはならない。 (2) 原告は,別紙「原告製品図面」記載のいす及びその半製品(別紙「原告製品図面」記載の構造を具備しているが製品として完成するに至らないもの)並びに製造のための金型を廃棄せよ。 (3) 原告は,被告に対し,6060万円及び平成19年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,①被告が,原告に対し,原告によるいすの製造販売行為が被告の有- 2 -する意匠権を侵害し,不正競争防止法2条1項1号ないし3号の不正競争行為に当たるとして,同いすの製造,譲渡等の差止め,同いす(半製品を含む。)及び製造のための金型の廃棄,並びに損害賠償(遅延損害金を含む。)を求め(反訴請求),②原告が,被告に対し,被告が原告の取引先に対して原告が製造販売するいすは被告の意匠権を侵害する旨警告したことが,不正競争防止法2条 の廃棄,並びに損害賠償(遅延損害金を含む。)を求め(反訴請求),②原告が,被告に対し,被告が原告の取引先に対して原告が製造販売するいすは被告の意匠権を侵害する旨警告したことが,不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に当たるとして,損害賠償(遅延損害金を含む。)及び信用回復措置を求めた(本訴請求)事案である。 前提事実(証拠を摘示したもののほかは争いがない。)(1) 原告及び被告は,いずれもいす及び机等の製造販売等を業とする株式会社である。 (2) 被告は,次の意匠権を有している。 ア登録番号第1199425号出願日平成14年12月4日登録日平成16年1月23日意匠に係る物品いす登録意匠別紙意匠公報1記載のとおり(「本件意匠権1」といい,同意匠権に係る登録意匠を「本件登録意匠1」という。)イ登録番号第1199085号出願日平成14年12月4日登録日平成16年1月23日意匠に係る物品いす登録意匠別紙意匠公報2記載のとおり(「本件意匠権2」といい,同意匠権に係る登録意匠を「本件登録意匠2」という。)(3) 被告は,平成15年10月から,本件登録意匠1・2に基づく別紙「被告- 3 -製品写真」記載のいす(商品名「LUSH」。以下「被告製品」という。)を製造販売しており,被告製品は,2003年度グットデザイン賞を受賞し,2003東京国際家具見本市で銀賞を得た(乙17号証の1,19号証,弁論の全趣旨)。 (4) 原告は,平成16年1月ころから,別紙「原告製品図面」記載のいす(その外観は別紙「原告製品写真」のとおり。以下「原告製品」という。)を製造し,株式会社くろがね工作所を含む複数の会社に販売している(甲23号証,弁論の全趣旨)。 (5) 被告は,くろがね工作所に対して,原告製品の販売は本件意匠権1 とおり。以下「原告製品」という。)を製造し,株式会社くろがね工作所を含む複数の会社に販売している(甲23号証,弁論の全趣旨)。 (5) 被告は,くろがね工作所に対して,原告製品の販売は本件意匠権1・2などの意匠権を侵害するとして警告書面を送付するなどした。 争点 (1) 反訴請求についてア原告が原告製品を製造販売する行為は,本件意匠権1・2を侵害するかイ原告が原告製品を製造販売する行為は,不正競争防止法2条1項1号ないし3号の不正競争行為に当たるかウ差止請求,廃棄請求及び損害賠償請求の可否(2) 本訴請求についてア被告がくろがね工作所に対して原告製品が本件意匠権1・2等を侵害する旨の書面を送付したことが,民法709条の不法行為及び不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に当たるかイ損害賠償請求及び信用回復措置請求の可否第3争点に関する当事者の主張 反訴請求について(1) 争点(1)ア(意匠権侵害)について(被告の主張)ア本件登録意匠1・2及び原告製品の各構成は,別紙「本件登録意匠1・- 4 -2と原告製品との対比表(被告主張)」のとおりであり,原告製品は,本件登録意匠1・2の構成と同一である。 イところで,原告製品には,脚フレームの露出部分,連結部の隙間の大きさ,背もたれの両端・背面側,座の側面視等の差異がある。 しかし,これらの差異は,全体の面積から見れば,わずかな面積を占めるにすぎない付加的構成で,需要者に与える印象の違いもわずかなものにすぎない部分的なものである。 ウしかも,これらの差異には,以下のような形状の共通性が見受けられる部分もある。 すなわち,脚フレームの露出部分については,本件登録意匠1・2の露出していない部分の形状も,同じ丸パイプのような形状であり,露出部分の形状が特に目立つ ような形状の共通性が見受けられる部分もある。 すなわち,脚フレームの露出部分については,本件登録意匠1・2の露出していない部分の形状も,同じ丸パイプのような形状であり,露出部分の形状が特に目立つようなものでもない。 次に,連結部の隙間の大きさについても,同じ凸レンズ断面形状であり,凸レンズとした場合の厚みが異なるにすぎない。 また,座の側面視についても,端部が滑らかに下方に垂れている形状が共通しており,座の側面視の差異は,座全体の形状の特徴である「周縁の細幅な矩形状の枠部と,この枠内に張設されたメッシュ状シート部」という共通点の中に埋没してしまう程度の差異にすぎない。 エこのように,本件登録意匠1・2と原告製品においては,需要者の注意を惹く用途・機能が具体的に現され,しかも全体の面積に占める割合も大きな支配的部分である前記構成の部分が共通し,さらに差異点においても,形状の共通性が見受けられる以上,本件登録意匠1・2と原告製品が類似することは明らかである。 (原告の主張)ア本件登録意匠1・2及び原告製品の各構成は,別紙「本件登録意匠1・2と原告製品との対比表(原告主張)」のとおりである。 - 5 -イ本件登録意匠1・2と原告製品との対比(ア) 本件登録意匠1・2に係る物品と原告製品は,ともに「いす」であり同一物品である。 (イ) 共通点a基本的な構成態様において,以下の点で一致している。 背もたれ,座及び左右一対の脚フレームを3構成要素とし,これらの各構成要素が座の後方左右(背もたれ下端左右)を支点に連結され,背もたれ,座及び連結部で囲まれた境界コーナーの間隙が現れるスタッキング可能ないすである。 背もたれは,左右間で円弧状に湾曲し,かつ上下間で「く」の字状に後方に反る正面視矩形状で小貫通孔が施された薄板状であり,座は,平面 囲まれた境界コーナーの間隙が現れるスタッキング可能ないすである。 背もたれは,左右間で円弧状に湾曲し,かつ上下間で「く」の字状に後方に反る正面視矩形状で小貫通孔が施された薄板状であり,座は,平面視矩形状で細幅な略矩形状の枠部と,この枠内に張設されたメッシュ状シート部からなり,背もたれと座と連結部で囲まれた境界コーナーには,正面視左右間に隙間が形成され,左右の一対の脚フレームは,側面視略台形枠状の丸パイプからなり,左右脚下部間架橋はなく,連結部は座の後方左右(背もたれ下端左右)を支点にして,背もたれ,座及び脚フレームの3つの構成要素を連結し,下辺部(ベースフレーム部)に2個の連結ガイド材が配されている。 b具体的な構成態様において,以下の点で一致している。 背もたれは,①鋭角な4隅を備え,②正面視略矩形の薄板状において,上下の両端辺が上下対称な円弧状に湾曲しており(本件登録意匠1について,左右の両端辺は上下方向平行に配されており),③周辺縁に余白を残して,貫通孔を配設する薄板状であって,④背面側の下端辺縁に沿って凸条を設けている。 脚フレームは,前脚,後脚,前後脚架橋,左右脚架橋その他からなり,座の前端の左右端から前脚が,後端の左右端から後脚がそれぞれ- 6 -垂下している。 (ウ) 差異点本件登録意匠1・2と原告製品は,具体的な構成態様において,以下の点で差異を有する。 a背もたれについては,本件登録意匠1・2は,六角形状の小貫通孔をまんべんなくメッシュ状に配設したのに対して,原告製品は,円形の小貫通孔を適当な間隔を置き列状に配設し,その背面側には下辺縁に沿った凸条のほかに脚フレーム収納用(スタッキング用)の縦長凸部を設けてあり,左右間で円弧状に湾曲した態様において両端近傍がわずかに屈曲拡開している。 また,本件登録意匠2は その背面側には下辺縁に沿った凸条のほかに脚フレーム収納用(スタッキング用)の縦長凸部を設けてあり,左右間で円弧状に湾曲した態様において両端近傍がわずかに屈曲拡開している。 また,本件登録意匠2は,左右の両端辺が左右対称にそれぞれ下方から上方に向けて漸次内側へ湾曲傾斜するのに対し,原告製品は左右の両端辺が上下方向に平行に配されている。また,本件登録意匠2は,周縁部については,下端辺縁は中央部を微幅としかつ左右端に向けて漸次拡幅する枠状で,上端辺縁と左右辺縁は一定の細幅な枠状余白を設けるのに対し,原告製品は左右両側を広幅としつつ略全体に広く配された枠状余白を設けている。さらに,本件登録意匠2は,周縁部については,上端辺縁と左右辺縁は一定の細幅な枠状余白を,下端辺縁に中央部を微幅としかつ左右端に向けて漸次拡幅する枠状余白を残して六角形状の細かな貫通孔をまんべんなく密集配設して「メッシュ部」を形成し,背面側に向けて漸次拡幅する凸条を配するのに対し,原告製品は周辺縁に余白を設けている。 b座については,本件登録意匠1・2は,側面視において略「へ」の字状に上方が湾曲し,前端部が前脚フレーム位置からわずかに斜め下方前に突出し,後端部が,後脚フレーム及び架橋フレーム位置から後方・左右外方にわずかに突出しているのに対し,原告製品は,平面状- 7 -(直線状)であり,前端部には前脚フレーム位置から下方に前垂れ部を形成している。 c背もたれと座との連結部の境界コーナーにおいて,本件登録意匠1・2は,脚フレームが露出して現れることはなく(座面から上方に脚フレームが露出して現れない。),背もたれ,座及び連結部で囲まれた間隙は略凸レンズ状に現れるのに対し,原告製品は,連結部に後脚フレーム上方延伸部が露出して現れ,背もたれ,座及び連結部で囲まれた間隙 フレームが露出して現れない。),背もたれ,座及び連結部で囲まれた間隙は略凸レンズ状に現れるのに対し,原告製品は,連結部に後脚フレーム上方延伸部が露出して現れ,背もたれ,座及び連結部で囲まれた間隙は後脚フレーム上方延伸部が露出して現れる分だけ厚い略凸レンズ断面状に現れる。 d脚フレームについては,本件登録意匠1・2は,脚フレームは座面より下方にのみ露出して現れるのに対し,原告製品は,後脚フレーム座面より上にも露出して現れる。 ウ原告製品が本件登録意匠1・2及びこれに類似する意匠の範囲に属しない理由(ア) 先行周辺意匠本件登録意匠1・2に関する先行周辺意匠には,次のものがある(これらの各意匠につき別紙「公知意匠目録」参照)。 a公知意匠①「登録第1129591号意匠公報」(発行日:平成13年12月17日)記載のいすの意匠(甲8号証)b公知意匠②「コクヨ総合カタログオフィスファニチャー編2002」(コクヨ株式会社平成13年11月ころ発行)449頁中段所載の商品番号「CK-865HQU2(ネット)」のいすの意匠(甲15号証)なお,同いすの具体的形態は,「登録第1160001号意匠公報」(発行日:平成14年12月9日。甲9号証)記載のとおりである。 - 8 -c公知意匠③「登録第1110010号意匠公報」(発行日:平成13年5月28日)記載のいすの意匠(甲10号証)d公知意匠④「登録第1140263号意匠公報」(発行日:平成14年4月30日)記載のいすの意匠(甲11号証)e公知意匠⑤「登録第1076513号意匠公報」(発行日:平成12年6月26日)記載のいすの意匠(甲12号証)f公知意匠⑥「登録第1067615号意匠公報」(発行日:平成12年4月24日)記載のいすの意匠(甲14号証)(イ) 本件登録意匠1・2の要部 成12年6月26日)記載のいすの意匠(甲12号証)f公知意匠⑥「登録第1067615号意匠公報」(発行日:平成12年4月24日)記載のいすの意匠(甲14号証)(イ) 本件登録意匠1・2の要部上記先行周辺意匠をもとに,本件登録意匠1・2の創作の要点を検討すると,次のとおりである。 a基本的な構成態様について本件登録意匠1・2は,本件登録意匠1・2に関係する関連意匠(甲5号証)及び上記公知意匠①ないし⑥を参考にして検討すると,脚フレームが座面より下方に露出して現れ,連結部に脚フレームが露出して現れることがない点(座面から上方に脚が露出して現れない。)が他の要素と相侯って「洗練されたフォルム」の優れたデザインとなっている。また,背もたれ,座及び連結部で囲まれた間隙が略凸レンズ断面状に現れる点にも主立った特色がある。 背もたれの具体的態様における正面視略矩形の薄板状において,上下辺が上下対称な円弧状に湾曲し,左右の両端辺が,本件登録意匠1では上下の平行に配し,本件登録意匠2では左右対称にそれぞれ下方から上方に向けて漸次内側へ湾曲傾斜し,いずれも4隅は鋭角な点,とりわけ,上下辺が上下対称な円弧状に湾曲した点が,従前の意匠には見られない特徴である。 しかし,その他の点については,以下のように,その各部形態及び- 9 -各部の組合せ態様のすべてが公知意匠①ないし⑥に表されており,この種物品における周知又は公知の形態である。 背もたれが左右間で前側に円弧状である点は,公知意匠①ないし⑥全部に,上下間で「く」の字状に後方に反り湾曲する薄板状である点は,公知意匠①ないし⑤に記載されている。 座が周縁の細幅な略矩形状の枠部と,この枠部に張設されたメッシュ状シート部とからなる点は,公知意匠②,⑤及び⑥に記載されている。 背もたれと座との境界コー は,公知意匠①ないし⑤に記載されている。 座が周縁の細幅な略矩形状の枠部と,この枠部に張設されたメッシュ状シート部とからなる点は,公知意匠②,⑤及び⑥に記載されている。 背もたれと座との境界コーナー正面視左右間に隙間が形成される点は,公知意匠③を除くすべてに,各脚フレームが側面視略台形枠状の丸パイプからなりその下辺部(ベースフレーム部)に2個の連結ガイド材が配される点は,すべての公知意匠①ないし⑥に記載されている。 したがって,当該基本的な構成態様はありふれた形態であり,本件登録意匠1・2の要部となり得ない。 b具体的な構成態様について次に本件登録意匠1・2の具体的な構成態様については,以下のように,多くの各部形態及びその組合せ態様が公知意匠①ないし⑥に表されており,これらに記載された範囲においてこの種物品における周知又は公知の形態である。 背もたれに関して,鋭角な4隅を備えるとともに上下端辺が対称な円弧状である点は,完全同一の形態はないものの公知意匠④及び⑤において略共通する構成態様が記載されている。また,本件登録意匠1の左右両端辺が上下方向平行に配されている点については,公知意匠①に,本件登録意匠2の左右の両端辺が下方から上方内側へ漸次湾曲している点については公知意匠②及び⑤に記載されている。さらに周辺縁を残して配された貫通孔については公知意匠①,②及び④に,無- 10 -地部を除く貫通孔については公知意匠①ないし⑥に,背面側の下端辺縁に沿った凸条は,公知意匠①,②及び⑤に記載されている。 座に関して,前端部が前脚フレーム位置からわずかに斜め下前方に突出する点は,公知意匠④及び⑤に記載されている。 背もたれと座との境界コーナーに関して,左右間の隙間が大略凸レンズ断面状である点は,公知意匠②,④及び⑤に記載されている。 c上 ずかに斜め下前方に突出する点は,公知意匠④及び⑤に記載されている。 背もたれと座との境界コーナーに関して,左右間の隙間が大略凸レンズ断面状である点は,公知意匠②,④及び⑤に記載されている。 c上記を整理すると,次の形態及び各部の組合せ態様は,公知意匠①ないし⑥に表されておらず,その限りにおいて本件登録意匠1・2が独自に備える特有の特徴である。 すなわち,「座」に関して,前後間においてわずかな高低差幅にて略「へ」の字状に湾曲する形態,及びその後端部が左右外方へ突出する形態,「背もたれと座との境界コーナー」に関して,背もたれの左右下端部と座の後端の左右外方突出部とが直結し,脚フレームその他の部材が露出しない形態,「脚フレーム」に関して,そのすべてが座部の下面より下方にのみ現れる(露出する)形態に特有の特徴を有する。 (ウ) 原告製品の要部原告製品の主立った特徴としては,背もたれの具体的な態様において,正面視略矩形の薄板状において,上下辺が上下対称な円弧状に湾曲した点を備えていることが認められるが,その他全体及び各部の構成態様は上記公知意匠を踏襲したものであって,各別新規性はない。 エ本件登録意匠1・2及び原告製品が非類似である理由左右一対の脚フレームにつき,本件登録意匠1・2は,脚フレームは座面より下方にのみ露出して現れるのに対し,原告製品は,後脚フレーム上方延伸部が露出して現れる点,連結部につき,本件登録意匠1・2は略凸レンズ断面状であるのに対し,原告製品は,連結部に後脚フレーム上方延- 11 -伸部が露出して現れ,背もたれ,座及び連結部で囲まれた隙間は後脚フレーム上方延伸部が露出して現れる分だけ厚い略凸レンズ断面状に現れる点を対比すると,本件登録意匠1・2は,原告製品に比して「座,背のジョイント部は一体感のあるデザインにする 部で囲まれた隙間は後脚フレーム上方延伸部が露出して現れる分だけ厚い略凸レンズ断面状に現れる点を対比すると,本件登録意匠1・2は,原告製品に比して「座,背のジョイント部は一体感のあるデザインにすることを配慮した」「洗練されたフォルム」であるといえる。 そして,本件登録意匠1・2が,背もたれに関し六角形状の小貫通孔をまんべんなくメッシュ状に配設したのに対して,原告製品は円形の小貫通孔を適当な間隔を置き列状に配設し,その背面側には下辺縁に沿った凸条のほかに脚フレーム収納用(スタッキング用)の縦長凸部を設け,左右間で前側に円弧状に湾曲した態様において両端近傍がわずかに拡開している点や,本件登録意匠1・2が,座の側面視において略「へ」の字状に上方に湾曲し,前端部が前脚フレーム位置からわずかに斜め下方前に突出し,後端部が,後脚フレーム及び架橋フレーム位置から後方・左右外方にわずかに突出しているのに対し,原告製品は平面状(直線状)であり,前端部には前脚フレーム位置から下方に前垂れ部を形成していることなどの差異点がある。 また,本件登録意匠2については,周縁部は上端辺縁と左右辺縁は一定の細幅な枠状余白を,下端辺縁に中央部を微幅としかつ左右端に向けて漸次拡幅する枠状余白を残して六角形状の細かな貫通孔をまんべんなく密集配設して「メッシュ部」を形成し,背面側の下端辺縁には,表面側の下端辺縁と略同形の中央部を微幅としかつ左右端に向けて漸次拡幅する凸条を配するのに対し,原告製品は周辺縁に余白を設けている。 これらの差異点を比較すると,本件登録意匠1・2と原告製品は別異の意匠であって非類似である。 (2) 争点(1)イ(不正競争防止法2条1項1号ないし3号の不正競争行為)について- 12 -(被告の主張)ア被告及び原告は,いずれも,いす及び机等の製造販 異の意匠であって非類似である。 (2) 争点(1)イ(不正競争防止法2条1項1号ないし3号の不正競争行為)について- 12 -(被告の主張)ア被告及び原告は,いずれも,いす及び机等の製造販売等を業とする会社である。 イ被告は,平成15年10月以降,本件登録意匠1・2に基づく被告製品を,被告自ら及びその販売代理店等を通じ,日本国内のみならず欧米にて,広く製造販売している。 ウ被告製品の意匠上の特徴は,別紙「本件登録意匠1・2と原告製品との対比表(被告主張)」の「本件登録意匠1・2」欄に記載のとおりである。 エ被告製品の商品性の特徴は,以下のとおりである。 (ア) 被告製品の背もたれは,六角形のパンチングが施されて人体の姿勢に合わせてしなやかに形状が変化し,これにより,高い身体のホールド感が得られるよう工夫されている。 (イ) 被告製品は,身体疲労を軽減し,目的に集中するための最良の正しい着座姿勢を保持することができるよう工夫されている。 (ウ) 座枠とメッシュシートとが一体成形されているため,経年変化によるシートのたるみや変形等がなく,また,座枠は人間工学に基づいた三次元カーブで構成されているため,大腿部への負担が軽減される。 (エ) ステンレス製のトーションバーが取り付けられていることにより,トーションバーの機構と背もたれのしなり効果で,滑らかなべンディング効果が実現されており,かつ被告製品に座った者の動きに従ってトーションバーがねじれることにより,背もたれが取り付けられている後部足パイプとトーションバーの溶接部分に応力の集中が働かないため,当該溶接箇所が破壊されにくい。 (オ) 複数の被告製品を積み重ねる(スタックする)際,それぞれの被告製品の背もたれ同士が接触することによって摩擦傷が付くおそれがあるため,当該背もたれの摩 いため,当該溶接箇所が破壊されにくい。 (オ) 複数の被告製品を積み重ねる(スタックする)際,それぞれの被告製品の背もたれ同士が接触することによって摩擦傷が付くおそれがあるため,当該背もたれの摩擦傷を防止するスタック樹脂が付けられている。 - 13 -(カ) 脚フレームの下部に取り付けられた連結フックにより,多数の被告製品を整然と配列することができる。 (キ) 座のメッシュ素材シートは,心地良い弾力性を持ち,機能性,美しさと同時に軽量化を実現している。 オ被告製品の周知性・著名性について(ア) 被告製品は,前項記載のような特徴を有することから,平成15年10月,2003年度グッドデザイン賞を受賞し,同年11月,2003東京国際家具見本市において銀賞を得た。 (イ) 被告製品は,株式会社近代家具出版発行の「月刊近代家具」(発行部数約2万部)の平成15年夏発行の第512号の表紙(乙22号証),工作社発行の「室内」(発行部数約5万部)の平成17年1月発行の第601号112頁(乙23号証),平成15年9月1日以降の被告のホームページ(乙24号証,25号証),雑誌近代家具の平成16年夏季号の表紙(乙26号証),東京国際家具見本市の主催者たる社団法人国際家具産業振興会の会報(平成16年1月号)の裏表紙(乙27号証)において,被告製品の広告や,被告製品が2003東京国際家具見本市において銀賞を得た事実が掲載されている。 (ウ) 被告製品は,平成18年9月ころ,米国カリフォルニア州のランチョミラージュ市の公共図書館に355脚納品され,平成17年5月ころ,シンガポールの教会に1100脚納品されており,このことは,被告のホームページで掲載されている。 (エ) 以上のように,被告製品が不正競争防止法2条1項1号及び2号に定める周知性及び著名性を有するこ シンガポールの教会に1100脚納品されており,このことは,被告のホームページで掲載されている。 (エ) 以上のように,被告製品が不正競争防止法2条1項1号及び2号に定める周知性及び著名性を有することは明らかである。 カ原告の不正競争行為について(ア) 原告は,遅くとも平成16年1月ころから,くろがね工作所にいわゆるOEM(OriginalEquipmentManufacturing,他社ブランド製品の製- 14 -造)供給をするべく,原告製品を製造販売した。また現在においても,自ら原告製品の製造販売を継続している。 (イ) 原告製品の製造販売は,被告製品が有する著名性・周知性を利用し,かつこれにただ乗りする手段により,市場において不正な利益を得ようとする目的に出た行為であり,不正競争防止法2条1項1号及び2号の不正競争行為に当たる。このことは,前述のように,原告製品が被告製品の基となった本件登録意匠1・2と類似するものであり,かつ原告製品の販売開始時が,被告製品がグッドデザイン賞及び2003東京国際家具見本市の銀賞を得た直後の平成16年1月である事実に照らして明らかである。 (ウ) また,被告製品の背もたれや座,座枠などは,上記エに記載のとおり,人体の姿勢に合わせたり,正しい着座姿勢を保持することを容易にすべく,人間工学に基づいた三次元カーブで構成したものであり,その意匠及び製作方法に多大な創意・工夫をこらしているものであるが,原告製品は,以下のとおり,簡単に模倣できる箇所はそのまま被告製品を模倣し,製作が難しい箇所はこれを容易・安価な製作方法,デザイン,構造に変更して製作したもの(隷属的模倣,スラヴィッシュイミテーション)であって,被告製品のメッシュの座,メッシュに似せた背もたれ,座のフレーム等の特徴的な部分を模倣したもの な製作方法,デザイン,構造に変更して製作したもの(隷属的模倣,スラヴィッシュイミテーション)であって,被告製品のメッシュの座,メッシュに似せた背もたれ,座のフレーム等の特徴的な部分を模倣したものといわざるを得ない。 a背もたれ原告においては,被告製品のように,強度を保持しつつ開口率を大きくする技術がないため,あるいは製造コストを下げるために,原告製品の開口率を減らし,数を減らして小貫通孔を施している。 b最良の着座姿勢,三次元カーブ原告製品は,高度な技術が要求される「へ」の字の三次元カーブを採用せず,平面的な座に仕上げている。 - 15 -cトーションバー機構原告製品は,ベンディング効果を求めず,安易に強度を確保できる構造で溶接されている。 dスタック樹脂原告製品は,積み重ね時に傷が付く問題に対処するスタック樹脂などを設けず,安易にコストダウンの手法をとっている。 eメッシュシート素材原告製品のメッシュ自体は,黒一色で,既製品の布をかぶせることでカラー展開し,メッシュの質感を無視した安易な方法をとっている。 f背と座の連結原告製品においては,座の後ろ部分と背の取付けのために7か所ものねじで組み立てている。これは,美感を犠牲にして,たくさんのねじで取り付ければ良いという安易な方法であり,金型加工費用と精度を抑えた手法をとったものである。 (エ) また,前記意匠権侵害の事実によって明らかなように,原告製品の製造販売が不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為にも当たることは疑いの余地がない。 (原告の主張)ア被告製品の意匠上の特徴に関する被告の主張は,別紙「本件登録意匠1・2と原告製品との対比表(原告主張)」記載の本件登録意匠1・2に関する形態と一致する範囲で認め,商品性の特徴に関する被告の主張は知らない。 イ被告 特徴に関する被告の主張は,別紙「本件登録意匠1・2と原告製品との対比表(原告主張)」記載の本件登録意匠1・2に関する形態と一致する範囲で認め,商品性の特徴に関する被告の主張は知らない。 イ被告製品の周知性・著名性に関する被告の主張は,被告製品がグッドデザイン賞等を受賞したことは認めるが,そのほかは知らない。 ウ原告製品の製造販売が不正競争防止法2条1項1号ないし3号の不正競争行為に当たるとの被告の主張は否認ないし争う。 - 16 -被告製品の意匠(本件登録意匠1・2参照)と原告意匠は非類似であるから,混同を惹起するおそれはなく,また,商品の出所表示も問題にならないし,商品形態についても模倣の問題になり得ない。 エ被告は,原告製品は,被告製品の隷属的模倣(スラヴィッシュイミテーション)である旨主張するが,原告製品は被告が主張するような隷属的模倣の意図で製作されたものではないし,既に述べたとおり,原告製品と被告製品は類似せず,その形態が実質的に同一であるとはいえない以上,不正競争行為には当たらない。 (3) 差止請求,廃棄請求及び損害賠償請求(被告の主張)ア差止請求及び廃棄請求被告は,原告に対し,意匠法37条1項,2項,不正競争防止法3条1項,2項に基づき,原告製品を製造し,譲渡し,引き渡し,貸し渡し,輸出し,輸入し,又は譲渡若しくは引渡しのために展示することの差止め,及び原告製品及びその半製品(別紙「原告製品図面」記載の構造を具備しているが製品として完成するに至らないもの)並びに製造のための金型を廃棄することを求める。 イ損害賠償請求(ア) 被告製品の売上額から原材料費その他変動費を控除した利益(限界利益)は,1台当たり約4800円である。 原告は,平成16年1月から平成18年12月までの間に,原告製品を少なくとも合計1 請求(ア) 被告製品の売上額から原材料費その他変動費を控除した利益(限界利益)は,1台当たり約4800円である。 原告は,平成16年1月から平成18年12月までの間に,原告製品を少なくとも合計1万2000台(同販売台数は,被告が製造販売可能であった被告製品の個数を超えるものではない。)販売したから,被告が原告の同販売行為によって被った損害は5760万円(4800円×1万2000台)となる(意匠法39条1項,不正競争防止法5条1項)。 - 17 -(イ) 被告は本件訴訟の追行を弁護士及び弁理士に依頼したが,原告の意匠権侵害行為ないし不正競争行為と相当因果関係が認められる弁護士及び弁理士費用の相当額は300万円を下らない。 (ウ) よって,被告は,原告に対し,意匠法39条1項,不正競争防止法2条1項1号ないし3号,4条に基づく損害賠償として,6060万円(5760万円+300万円)及びこれに対する不法行為の後の日である平成19年1月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (原告の主張)被告の主張は否認しないしは争う。 本訴請求について(1) 争点(2)ア(民法709条の不法行為及び不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為)について(原告の主張)ア被告は,くろがね工作所に対し,次のとおり2度にわたって,警告行為を行った。 (ア) 被告は,平成16年2月26日,原告の取引先であるくろがね工作所に対し,原告製品は本件登録意匠1・2及びこれらの意匠と同日に出願された8件の登録意匠に係る意匠権を侵害する旨の警告書(甲1号証の1。本件書面1)を送付した。 (イ) 本件書面1を受け取ったくろがね工作所は,同年2月27日,原告に対し,上記警告に対して責任をもって対処するよう通知した。 (ウ) 弁理士廣江 の警告書(甲1号証の1。本件書面1)を送付した。 (イ) 本件書面1を受け取ったくろがね工作所は,同年2月27日,原告に対し,上記警告に対して責任をもって対処するよう通知した。 (ウ) 弁理士廣江武典は原告の代理人として,被告代理人弁理士足立勉に対し,同年3月5日付けの回答書により,調査検討のため期間が必要である旨,原告製品の意匠権の問題は今後は原告の責任として対応する旨を通知した(甲1号証の2)。 - 18 -原告は,同年4月16日,足立弁理士に対し,検討した結果,原告製品は,被告の本件意匠権1・2等を侵害していない旨を理由を付して通知した(甲1号証の3)。 (エ) 廣江弁理士は,同年5月31日,被告を訪問して,非侵害である旨を口頭で説明した。 (オ) 被告は,同年6月9日,くろがね工作所に対し,「貴社商品『MS22シリーズ』の件」と題する書面に「拝啓貴社時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。さて頭書の件に関し,平成16年3月9日付けの貴回答書確かに拝受いたしました。先日藤沢工業および同社顧問弁理士より直接説明を受け,その後検討しましたが,当方としましてなお納得できない状況です。この旨貴社に連絡します。」と記載して送付した(甲1号証の6。本件書面2)。 イ被告のくろがね工作所に対する本件書面1・2による警告行為は,次のとおり,民法709条の不法行為及び不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に当たる。 (ア) 本件書面1においては,被告は10件の登録意匠の構成等に何ら言及することなく,原告製品が上記登録意匠と同一であり若しくは類似して侵害であるとしている。なお,原告製品と上記登録意匠との関係について「類似」は問題となり得ても,「同一」の問題はいかなる意味においても生じ得ない。 (イ) 本件書面2は,本件書面1の警告内 類似して侵害であるとしている。なお,原告製品と上記登録意匠との関係について「類似」は問題となり得ても,「同一」の問題はいかなる意味においても生じ得ない。 (イ) 本件書面2は,本件書面1の警告内容を維持したものと考えられるが,原告の平成16年4月16日付けの回答書(甲1号証の3)における非侵害の反論に対して,何ら具体的に応答することなく,かつ,原告製品の意匠の問題については,原告において対応する旨通知しているにもかかわらず,直接くろがね工作所に再度警告している。 (ウ) 原告は,資本金3800万円の会社であるのに対し,被告は,資本金- 19 -2億0135万円で,原告の会社規模をはるかにしのぐ規模である。さらに,くろがね工作所は資本金29億9845万円の大会社である。 したがって,原告の会社規模をはるかにしのぐ被告が,大会社であるくろがね工作所に対して,本件書面1・2を送付すれば,その企業規模,力関係から,くろがね工作所との原告製品の取引が停止になる可能性が極めて高いことは容易に予測できた。 (エ) 被告は,本件反訴状においても,本件登録意匠1・2,原告製品の構成について,具体的な検討を加えることなく,類似であると主張していることから,本件書面1・2の発送時においても,詳細な検討をしていなかったと考えられる。 (オ) 被告は,本件反訴において,6000万円を超える損害があると主張するにもかかわらず,平成16年6月9日付けの本件書面2を発送した後,意匠権侵害に基づく訴訟等を積極的に提起せず,原告が平成18年7月19日に本件の債務不存在確認の訴えを提起して半年余り経った平成19年1月29日になって,本件反訴を提起している。また,被告は,本件訴訟手続において,当初反訴請求と仮処分を申し立てる予定である旨申し述べながら,仮処分の申立てを断 えを提起して半年余り経った平成19年1月29日になって,本件反訴を提起している。また,被告は,本件訴訟手続において,当初反訴請求と仮処分を申し立てる予定である旨申し述べながら,仮処分の申立てを断念している。 したがって,被告は,原告製品の意匠と本件登録意匠1・2との類似について確証がないまま,本件書面1・2を発送したものと強く推認できる。 (カ) 既に述べたとおり,原告製品が本件登録意匠1・2と類似していないことは明らかであって,被告が類似判断を誤って2度にわたってくろがね工作所に対し警告書を送付したことについて過失があるから,被告は,民法709条の不法行為責任を負う。 また,上記の事情に照らせば,被告が,くろがね工作所に意匠権侵害を警告する旨の本件書面1・2を送付したことは,意匠権者としての正- 20 -当な権利行使とは認められず違法であり,またそのことについて過失が認められるから,不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に当たる。 (被告の主張)ア原告の主張アのうち,(ア),(ウ)ないし(オ)の各事実は認めるが,(イ)の事実は知らない。なお,本件書面2はその文面からして明らかに警告書ではない。 イ原告の主張イは否認しないしは争う。 被告がくろがね工作所に本件書面1・2を送付したことは,意匠権者としての正当な権利行使であり,何ら違法性はなく,民法709条の不法行為ないし不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為には当たらない。 (2) 争点(2)イ(損害賠償請求及び信用回復措置請求)について(原告の主張)ア損害賠償請求(ア) 逸失利益原告は,本件書面1・2により,くろがね工作所との原告製品に関する取引は,平成16年をもって停止され,平成17年以降の取引は一切なくなった。 原告の平成16年の販売実績によれば,原告製品の 逸失利益原告は,本件書面1・2により,くろがね工作所との原告製品に関する取引は,平成16年をもって停止され,平成17年以降の取引は一切なくなった。 原告の平成16年の販売実績によれば,原告製品の販売数のうち,くろがね工作所に対する販売数の割合は27%であった。 原告製品の売上高は,平成17年が1397万8596円,平成18年が1835万0808円であったから,被告の上記不正競争行為がなければ,原告製品のくろがね工作所に対する平成17年及び平成18年の売上高は,872万8939円((1397万8596円+1835万0808円)×0.27)であったと予想できる。 原告製品の利益率は40%であるから,原告は,被告の上記不正競争- 21 -行為によって被った逸失利益は,約349万円(872万8939円×0.4〔1万円未満切捨て〕)となる。 (イ) 信用毀損による無形の損害被告は,上記不正競争行為により,くろがね工作所に対する信用,すなわち,原告が被告の本件意匠権1・2等を侵害する製品を製造販売したとの疑念を抱かせた。 また,意匠権侵害に関する本件紛争は,くろがね工作所と原告との間では,原告が責任をもって対処するとの合意があり,それを被告に告知したにもかかわらず,被告はあえて本件書面2をくろがね工作所に直接発送したため,原告は,くろがね工作所からの信用を失い,その結果,現在も原告製品の取引が停止させられている。 上記の信用毀損による損害は,200万円が相当である。 (ウ) 弁護士・弁理士費用原告は,本件訴訟の追行を弁護士及び弁理士に依頼したが,原告の意匠権侵害ないし不正競争防止法違反の行為と相当因果関係が認められる弁護士及び弁理士費用の相当額は300万円を下らない。 (エ) よって,原告は,被告に対し,民法709条,不正競争防止法2条1項1 意匠権侵害ないし不正競争防止法違反の行為と相当因果関係が認められる弁護士及び弁理士費用の相当額は300万円を下らない。 (エ) よって,原告は,被告に対し,民法709条,不正競争防止法2条1項14号,4条に基づく損害賠償として,849万円(349万円+200万円+300万円)及びこれに対する不法行為の後の日である平成19年1月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 イ信用回復措置請求原告は,被告の本件書面1・2による違法な警告行為によって,くろがね工作所との原告製品に関する取引を停止させられ現在も取引が回復していない。上記損害賠償だけでは,被告によって害された信用を回復することができないので,原告は,被告に対し,損害賠償と併せて,別紙謝罪文- 22 -を原告及びくろがね工作所に送付することを求める。 (被告の主張)原告の主張は,不知ないしは争う。 第4争点に対する判断 争点(1)ア(意匠権侵害)について(1) 本件登録意匠1・2及び原告製品の各構成は,別紙「本件登録意匠1・2と原告製品との対比表(原告主張)」のとおりと認められる。 被告は,各製品の構成を別紙「本件登録意匠1・2と原告製品との対比表(被告主張)」のように捉えるべきである旨主張するが,被告が主張する構成は,いすの全体的な構成を捉えているものの,背もたれ,座及び脚フレームの具体的な構成を捨象した内容となっているから,本件登録意匠1・2や原告製品の各意匠の類比を判断するために必要な意匠上の特徴を表現できておらず,これを採用することはできない。 (2) 本件登録意匠1・2の要部についてア意匠の類否を判断するに当たっては,意匠を全体として観察することを要するが,この場合,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらには公知意匠にな ない。 (2) 本件登録意匠1・2の要部についてア意匠の類否を判断するに当たっては,意匠を全体として観察することを要するが,この場合,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらには公知意匠にない新規な創作部分の存否等も参酌して,需要者の注意を最も惹きやすい部分を意匠の要部として把握し,両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察して,両意匠が全体として美感を共通にするか否かを判断すべきである。 イそこで,本件登録意匠1・2の要部を検討すると,当該意匠に係る物品は,スタッキング可能な汎用のいすであって,背もたれ,座及び左右一対の脚フレームの3要素から成り立ち,これらの3要素が座の後方左右(背もたれ下端左右)を支点に連結された基本的構造を有するものであるから,需要者が最も注目するのは,座った際に人体に直接触れる部分,すなわち背もたれ及び座の形状であり,また,背もたれ,座及び脚フレームの連結- 23 -部位もいす全体の美感を左右する重要な要素と考えられる。 本件登録意匠1・2は,背もたれが正面から見て略矩形の薄板状であって,上下辺が上下対称な円弧状に湾曲し,左右の両端辺が,本件登録意匠1では上下の平行に配し,本件登録意匠2では左右対称にそれぞれ下方から上方に向けて漸次内側へ湾曲傾斜し,いずれも4隅は鋭角な点,とりわけ,上下辺が上下対称な円弧状に湾曲した点(背もたれの外周形状)は,需要者の注意を惹く部分であり,従前の意匠には見られない特徴的な要素と認められる(なお,公知意匠④では,背もたれの上下辺が上下対称な円弧状であるが,左右の両端辺に屈曲部位がある特異な形状であるし,公知意匠⑤では,背もたれの下辺は円弧状であるものの,上辺はやや弧を描いているがその円弧形状は顕著ではない。)。 また,背もたれ,座及び脚フレームの連結部 の両端辺に屈曲部位がある特異な形状であるし,公知意匠⑤では,背もたれの下辺は円弧状であるものの,上辺はやや弧を描いているがその円弧形状は顕著ではない。)。 また,背もたれ,座及び脚フレームの連結部において,連結フレームが座面より下方に露出して現れ,座面から上方においては,フレーム部材は座及び背もたれの構成部材によって覆われ,脚フレームが露出して現れることがないこと(脚フレームの露出範囲)についても,座面と背もたれの一体感が表現され,シンプルで洗練されたデザインとなる点であって,需要者の注意を惹く部分であり,従前の意匠には見られない特徴的な要素と認められる。 そして,背もたれの上下辺が上下対称な円弧状であることや,背もたれ及び座をフレームを露出させることなく連結したことに伴って,背もたれと座の間隙が略凸レンズ断面状に現れる点(背もたれと座の間隙)も,いすの意匠上の特色であって,需要者の注意を惹く部分と認められる。 したがって,上記の背もたれの外周形状,脚フレームの露出範囲,背もたれと座の間隙が,本件登録意匠1・2の要部と認めることができ,他の構成要素は,公知意匠①ないし⑥に見られるところであり,あるいは需要者の注意を惹かない微細な点であって,意匠上の特徴的な部分とは認めら- 24 -れない。 (3) 本件登録意匠1・2と原告製品の類否についてア原告製品は,本件登録意匠1・2の要部のうち,背もたれの外周形状については,上下辺が上下対称な円弧状に湾曲するという同要部に該当する外周形状を備えているが,脚フレームの露出範囲については,後脚フレームの上方延伸部が座面から露出して現れ,連結部に後脚フレーム上方延伸部が露出して現れるから,同要部に該当する形状を備えておらず,また,背もたれと座の間隙については,後脚フレーム上方延伸部が露出して現れ の上方延伸部が座面から露出して現れ,連結部に後脚フレーム上方延伸部が露出して現れるから,同要部に該当する形状を備えておらず,また,背もたれと座の間隙については,後脚フレーム上方延伸部が露出して現れる分だけ厚い凸レンズ断面状になっており,本件登録意匠1・2のスマートな印象を与える凸レンズ断面状とは異なる形状となっている。 イこれらの要部についての一致不一致のほか,本件登録意匠1・2と原告製品の各構成は,別紙「本件登録意匠1・2と原告製品との対比表(原告主張)」記載のとおり,それぞれ下線を付した部分が相違し,それ以外の部分は共通する。 本件登録意匠1・2と原告製品の各構成を対比すると,背もたれ,座,背もたれと座の境界コーナー,左右一対の脚フレームに関する基本的構成態様はすべて共通しており,また,脚フレームの具体的構成態様のうち,左右一対の脚フレームが,前脚,後脚,前後脚架橋,左右脚架橋その他からなり,前端の左右端から前脚が,後端の左右端から後脚がそれぞれ垂下するという点が共通している。これらの共通点は,両意匠の全体的かつ基本的な構成を決定するものといえるものの,公知意匠①ないし⑥に照らせば,これらの点はスタッキング可能ないすが通常備える構成にすぎないものであるから,需要者から見たいすの美感を特徴付ける部分とはいえない。 ウ一方,本件登録意匠1・2と原告製品とは,上記の脚フレームの露出範囲や,背もたれと座の間隙が相違するほか,次の相違点がある。 (ア) 背もたれ(本件登録意匠1・2と原告製品との相違点)- 25 -本件登録意匠1・2は,背もたれに関し六角形状の小貫通孔をまんべんなくメッシュ状に配設したのに対して,原告製品は,円形の小貫通孔を適当な間隔を置き列状に配設し,その背面側には下辺縁に沿った凸条のほかに脚フレーム収納用(スタッキ に関し六角形状の小貫通孔をまんべんなくメッシュ状に配設したのに対して,原告製品は,円形の小貫通孔を適当な間隔を置き列状に配設し,その背面側には下辺縁に沿った凸条のほかに脚フレーム収納用(スタッキング用)の縦長凸部を設け,左右間で前側に円弧状に湾曲した態様において両端近傍がわずかに拡開している。 (イ) 座(本件登録意匠1・2と原告製品との相違点)本件登録意匠1・2は,座の側面視において略「へ」の字状に上方に湾曲し,前端部が前脚フレーム位置からわずかに斜め下方前に突出し,後端部が,後脚フレーム及び架橋フレーム位置から後方・左右外方にわずかに突出しているのに対し,原告製品は,平面状(直線状)であり,前端部には前脚フレーム位置から下方に前垂れ部を形成している。 (ウ) 背もたれの周縁部(本件登録意匠2と原告製品との相違点)本件登録意匠2は,周縁部は上端辺縁と左右辺縁は一定の枠状余白を,下端辺縁に中央部を微幅としかつ左右端に向けて漸次拡幅する枠状余白を残して六角形状の細かな貫通孔をまんべんなく密集配設して「メッシュ部」を形成し,背面側の下端辺縁には,表面側の下端辺縁と略同形の中央部を微幅としかつ左右端に向けて漸次拡幅する凸条を配するのに対し,原告製品は,周辺縁に余白を設けている。 エこれらの相違点のうち,背もたれの小貫通孔の配設状況の違いは,本件登録意匠1・2のように,まんべんなくメッシュ状に配設されていることで,通気性を備えることによる清涼感や,重量が減ることによる軽量感を与えるとともに,透視性を備えることでいすを並べた際にも開放感を与えるものであり,原告製品のように適当な間隔を置き列状に配設されているものと比較して,いす全体の美感を大きく左右する。 また,脚フレームの露出範囲や背もたれと座の間隙の違いは,本件登録- 26 -意匠1 のであり,原告製品のように適当な間隔を置き列状に配設されているものと比較して,いす全体の美感を大きく左右する。 また,脚フレームの露出範囲や背もたれと座の間隙の違いは,本件登録- 26 -意匠1・2のように,座面から上方においてフレーム部材が座及び背もたれの構成部材によって覆われて露出することがなく,また,背もたれと座との間隙が凸レンズ断面状であることで,上記(2)イで述べたとおり,原告製品との比較において,座面と背もたれの一体感が表現され,シンプルで洗練されたイメージを与えるものであり,この点もいす全体の美感を大きく左右する。 さらに,座を側面から見た際の形状の違いは,本件登録意匠1・2のように略「へ」の字状に上方に湾曲していることで,座り心地を良くするとともに,視覚的にも柔らかなイメージを与えるものであり,原告製品のように座面が平面状(直線状)で前方に前垂れ部が設けられているものと比較して,いす全体の美感を大きく左右する。 オ以上のとおり,本件登録意匠1・2と原告製品の差異点がいす全体に与える美感の違いは,背もたれの上下辺が上下対称な円弧状に湾曲している等の両意匠の共通点が美感に与える効果を優に超えるものであり,意匠全体として需要者に別異の美感を与えるものと認められるから,原告製品は,本件登録意匠1・2と類似するものとはいえない。 したがって,被告の意匠権侵害に基づく請求は理由がない。 争点(1)イ(不正競争防止法2条1項1号ないし3号の不正競争行為)について(1) 被告は,被告製品の形態が著名性・周知性を有するから,被告製品と類似する原告製品の製造販売行為は,不正競争防止法2条1項1号,2号の不正競争行為に当たる上,原告製品は被告製品を模倣したものであるから,同項3号の不正競争行為にも当たる旨主張する。 (2) 被告製品 する原告製品の製造販売行為は,不正競争防止法2条1項1号,2号の不正競争行為に当たる上,原告製品は被告製品を模倣したものであるから,同項3号の不正競争行為にも当たる旨主張する。 (2) 被告製品は,本件登録意匠1・2の実施品であり,本件登録意匠1・2でその形状が異なっている背もたれについては,その外周と六角形状の細かな貫通孔を密集配設した「メッシュ部」との間の枠状余白の領域が,下端辺縁- 27 -については,中央部を微幅としかつ左右端に向けて漸次拡幅する形状になっている点は本件登録意匠2を採用したものであり,その左右の両端辺の形状は,上下方向にほぼ平行に配されているものの,下方から上方に向けて漸次内側へ若干湾曲傾斜しており,本件登録意匠1・2の中間的な形態と認められるが,いずれにしても,被告製品の構成やその要部の捉え方については,争点(1)アにおいて本件登録意匠1・2と対比検討したところがそのまま当てはまる。 被告は,被告製品の著名性・周知性の根拠として,被告製品が,2003年度グッドデザイン賞や2003東京国際家具見本市の銀賞を得たことのほか,多数の雑誌に掲載され,海外の図書館や教会のいすとして採用され,そのことが被告会社のホームページに掲載されているなどと主張しているところ,仮に,これらの事情から被告製品が周知性を取得したとしても,被告製品と原告製品の構成の比較,両製品の意匠の類否については,争点(1)アで検討した本件登録意匠1・2と原告製品の意匠の類否についての判断がそのまま当てはまるから,被告製品の形態と原告製品の形態とは類似するものではないというべきである。 被告製品がグッドデザイン賞を得た際に,審査委員が「背面のメッシュ部分の処理は良く工夫されており,接合部を隠しながら適切にデザインしている。」との評価コメントを述べ ものではないというべきである。 被告製品がグッドデザイン賞を得た際に,審査委員が「背面のメッシュ部分の処理は良く工夫されており,接合部を隠しながら適切にデザインしている。」との評価コメントを述べており(乙17号証の2),また,被告製品のカタログにおいても,背もたれに6角形のパンチングが施されていることや,座面が三次元カーブで構成されていることが特徴点としてアピールされているが(乙16号証),こうした評価コメントやカタログ上では,背もたれに小貫通孔がメッシュ状に配設されていること,接合部においてフレーム部材が座及び背もたれの構成部材によって覆われて露出することがないこと,座面が略「へ」の字状に上方に湾曲していることといった構成が被告製品の特徴部分として指摘されているにもかかわらず,原告製品は,これらの特徴- 28 -部分をいずれも備えていないのであるから,こうした点においても,被告製品と原告製品は,その形態において類似するものでないことは明らかである。 (3) なお,被告は,原告製品が,簡単に模倣できる箇所はそのまま被告製品を模倣し,製作が難しい箇所はこれを容易・安価な製作方法,デザイン,構造に変更して製作したもの(隷属的模倣,スラヴィッシュイミテーション)であって,被告製品のメッシュの座,メッシュに似せた背もたれ,座のフレーム等の特徴的な部分を模倣したものといわざるを得ない旨主張するが,既に述べたとおり,原告製品と被告製品はその形態において類似するものでない以上,被告製品に依拠して製作されたか否かなどの原告製品の製作過程のいかんは,不正競争防止法2条1項1号ないし3号の不正競争行為に当たるか否かの判断を左右するものとはいえない。 (4) 以上によれば,原告製品は,被告製品と類似しているとはいえず,また,被告製品を模倣したものともい 争防止法2条1項1号ないし3号の不正競争行為に当たるか否かの判断を左右するものとはいえない。 (4) 以上によれば,原告製品は,被告製品と類似しているとはいえず,また,被告製品を模倣したものともいえないから,その余の点について判断するまでもなく,原告製品の製造販売行為が不正競争防止法2条1項1号ないし3号の不正競争行為に当たるという原告の主張は理由がない。 争点(2)ア(民法709条の不法行為及び不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為)について(1) 不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為についてア不正競争防止法2条1項14号は,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」を不正競争行為の一類型として規定しているが,この規定は,競争関係にある者が,虚偽の事実を挙げて,競業者にとって重要な資産である営業上の信用を害することにより,競業者を不利な立場に置き,自ら競争上有利な地位に立とうとする行為が,不公正な競争行為の典型というべきものであることから,これを不正競争行為と定めて禁止したものと解される。 したがって,競業者に意匠権等を侵害する行為があるとして,競業者の- 29 -取引先等の第三者に対して警告を発する行為は,その後に,裁判所により競業者の行為が当該意匠権等を侵害しないと判断された場合には,不正競争防止法2条1項14号所定の虚偽の事実を告知ないし流布する行為に当たると認められる余地が高いということができる。 しかし,意匠権等を有する者が,意匠権等を侵害していると疑われる者に対し,通常必要とされる事実調査及び法律的検討を経た上で,文書等により,意匠権等を侵害している旨の警告を発する行為は,紛争の解決に向けていきなり訴訟を提起するのではなく,事前の警告等を行った上で話合いによる解決 とされる事実調査及び法律的検討を経た上で,文書等により,意匠権等を侵害している旨の警告を発する行為は,紛争の解決に向けていきなり訴訟を提起するのではなく,事前の警告等を行った上で話合いによる解決の可能性を探るためのものでもあって,意匠権等の権利行使の一環としてなされる正当な行為として許容されるものというべきである。 したがって,意匠権者等が競業者の取引先に対してする警告は,意匠権者等が,事実的,法律的根拠を欠くことを知りながら,又は,意匠権者等として,意匠権侵害訴訟等を提起するために通常必要とされる事実調査及び法律的検討をすれば,事実的,法律的根拠を欠くことを容易に知り得たといえるのに,あえて警告をなしたというような場合には,社会通念上許容される限度を超えた警告として,競業者の営業上の信用を害する虚偽事実の告知又は流布に当たる違法な行為に該当すると解すべきである。 そして,競業者の取引先に対する警告が,意匠権等の権利行使の一環としてされたものか,それとも意匠権者等の権利行使の一環としての外形をとりながらも,社会通念上許容される限度を超えた内容,態様となっているかどうかについては,当該意匠権等侵害の判断が容易であるか否かのほか,当該警告文書等の形式・文面,当該警告に至るまでの競業者との交渉の経緯,警告文書等の配布時期・期間,配布先の数・範囲,警告文書等の配布先である取引先の業種・事業内容,事業規模,競業者との関係・取引態様,当該製品への関与の態様,意匠権侵害争訟等への対応能力,警告文書等の配布への当該取引先の対応,その後の意匠権者等及び当該取引先の- 30 -行動等の,諸般の事情を総合して判断するのが相当である。 イ原告の取引先であるくろがね工作所に対して,被告が行った警告行為について,後掲各証拠によれば,以下の事実が認められる。 先の- 30 -行動等の,諸般の事情を総合して判断するのが相当である。 イ原告の取引先であるくろがね工作所に対して,被告が行った警告行為について,後掲各証拠によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 被告は,平成16年1月23日,本件登録意匠1・2の登録を得て,同年2月26日,原告の取引先であるくろがね工作所に対し,くろがね工作所が販売している「MC22シリーズ」のいすは,本件登録意匠1・2及びこれらの意匠と同日に出願された8件の登録意匠と同一若しくは類似し,くろがね工作所の行為は意匠権侵害に当たると思われること,くろがね工作所に対し,同いすの販売中止,販売済みの同椅子の数量・販売先・販売単価の通知,流通段階にある同椅子の数量の報告・実施料の支払を求めること,2週間以内に回答が得られない場合には法的措置を講ずることもあること,などを記載した本件書面1を送付した(甲1号証の1)。 (イ) 本件書面1を受け取ったくろがね工作所は,同年2月27日,原告に対し,上記警告に対して責任をもって対処するよう通知した(甲1号証の5)。 (ウ) 廣江弁理士は原告の代理人として,被告代理人足立弁理士に対し,同年3月5日付けの回答書により,くろがね工作所が販売する「MC22シリーズ」のいすは,原告が製造した原告製品を納入したものであるから,これに関する意匠権の問題は今後は原告の責任として対応すること,本件意匠権1・2等の意匠公報がまだ発行されていないため,調査検討のため期間が必要であることなどを通知した(甲1号証の2)。 同月8日,本件登録意匠1・2等に係る意匠公報が発行された(甲18号証の1ないし3,甲19号証の1ないし5)。 くろがね工作所は,同月9日,被告に対し,「MC22シリーズ」のいすは,原告の製造に係る原告製品を品番を変えて販売しているだけ 匠公報が発行された(甲18号証の1ないし3,甲19号証の1ないし5)。 くろがね工作所は,同月9日,被告に対し,「MC22シリーズ」のいすは,原告の製造に係る原告製品を品番を変えて販売しているだけで,- 31 -くろがね工作所向けの仕様変更をしておらず,また在庫も持っていないこと,本件については,原告が責任を持って対応すると確約していることなどを記載した書面を送付した(乙32号証)。 原告は,本件登録意匠1・2等に係る意匠公報を基に原告製品がこれらの登録意匠と類似するか否かを検討した上,同年4月16日,足立弁理士に対し,原告製品は,被告の意匠権を侵害していない旨を,具体的な理由を付して通知し(争いがない。),併せて,公知意匠に関する資料や原告椅子の図面及び写真を送付した(甲1号証の4)。 (エ) 廣江弁理士は,同年5月31日,被告を訪問して,非侵害である旨を口頭で説明した(争いがない。)。 (オ) 被告は,同年6月9日,くろがね工作所に対し,「貴社商品『MS22シリーズ』の件」と題する書面(本件書面2)に「拝啓貴社時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。さて頭書の件に関し,平成16年3月9日付けの貴回答書確かに拝受いたしました。先日藤沢工業および同社顧問弁理士より直接説明を受け,その後検討しましたが,当方としましてなお納得できない状況です。この旨貴社に連絡します。」と記載して送付した(争いがない。)。 ウ原告は,被告がくろがね工作所に対して本件書面1・2を送付した行為が不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に当たる旨主張しており,本件書面1は,「MS22シリーズ」のいすが本件登録意匠1・2及びこれと同日出願の8件の登録意匠と同一若しくは類似するから,その販売行為は本件意匠権1・2等を侵害する旨を警告するものであるところ ,本件書面1は,「MS22シリーズ」のいすが本件登録意匠1・2及びこれと同日出願の8件の登録意匠と同一若しくは類似するから,その販売行為は本件意匠権1・2等を侵害する旨を警告するものであるところ,既に検討したように,「MS22シリーズ」のいす(原告製品)が本件登録意匠1・2と類似しているとは認められず,また同日出願の8件の登録意匠(甲18号証の1ないし3,甲19号証の1ないし5)とも類似しているとは認められないというべきである。 - 32 -しかし,くろがね工作所は,原告の製造に係る原告製品を「MS22シリーズ」という名称で自社製品として販売していたから(いわゆる「OEM」),本件意匠権1・2等を有する被告が,くろがね工作所の自社製品として販売されている「MS22シリーズ」のいすが同意匠権を侵害する旨の警告書を発することは,くろがね工作所に対する権利行使の前提として行う交渉行為として社会通念上許容されると解することができる。そして,その警告書の内容は,「MS22シリーズ」のいすの製造元が原告であることを意識したものではなく,原告の信用を毀損して被告が市場において優位に立つことを目的とするようなものではない。 また,本件書面2の送付行為についてみると,くろがね工作所からの平成16年3月9日付けの回答書に対し,原告及びその顧問弁理士から説明を受けて検討したが,原告から受けた説明には納得できない旨が記載されているにとどまるものであり,その内容も,被告と原告との交渉状況を伝える程度のものであって,あえて原告との交渉を避けてくろがね工作所に対し直接的な交渉を求めたり権利行使を行うものではなく,ことさらにくろがね工作所の原告製品の取引停止を企図したものとは認められない。 原告は,被告の意匠権侵害に関する調査ないし検討が不十分であったとも主張 接的な交渉を求めたり権利行使を行うものではなく,ことさらにくろがね工作所の原告製品の取引停止を企図したものとは認められない。 原告は,被告の意匠権侵害に関する調査ないし検討が不十分であったとも主張するが,既に述べたとおり,本件登録意匠1・2と原告製品とは,その要部の一つである背もたれの上下辺が上下対称な円弧状に湾曲しているという点が共通し,また,基本的構成態様もすべて共通しているから,被告の意匠権侵害の主張に事実的又は法律的な根拠がないことが明らかであるとか,またその判断が容易であるとはいえない上,原告が特許庁に対して判定請求を行い,平成16年12月21日付けで原告製品と本件登録意匠1・2とは類似していないとの判定結果を得たのは(甲16号証の1・2),被告が本件書面1・2を送付した後のことであるから,上記のとおり,被告が原告製品と本件登録意匠1・2が類似しているとの認識を持- 33 -って警告書を送付したとしても,そのことから,通常必要とされる事実調査及び法律的検討を怠ったものということはできない。 エそうすると,被告がくろがね工作所に対して本件書面1・2を送付したことは,社会通念上許容される限度を超える内容及び態様によるものではなく,違法性を帯びるほどのものとはいえないから,それが不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に当たるとは認められない。 (2) 民法709条の不法行為について上記検討の結果に照らせば,被告がくろがね工作所に対し本件書面1・2を送付したことは,社会通念上許容される限度を超える内容及び態様によるものとは認められないから,民法709条の不法行為を構成するものとも認められない。 第5以上のとおりであって,原告の本訴請求及び被告の反訴請求はいずれも理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき,民訴法61条,64 いから,民法709条の不法行為を構成するものとも認められない。 第5以上のとおりであって,原告の本訴請求及び被告の反訴請求はいずれも理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき,民訴法61条,64条本文を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部前田郁勝裁判官片山博仁裁判官裁判長裁判官中村直文は,転補につき署名押印することができない。 前田郁勝裁判官- 34 -(別紙)謝罪文弊社は,平成16年2月26日付,平成16年6月9日付の株式会社くろがね工作所宛の書簡において,藤沢工業株式会社が製造・販売する椅子が弊社の登録意匠を侵害する旨告知致しましたが,この告知は事実に反することが判明致しました。 ここに,弊社は,右告知を撤回し,右告知により,株式会社くろがね工作所,藤沢工業株式会社にご迷惑をお掛け致しましたことを陳謝致します。

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