平成27年6月24日判決言渡平成26年(行ケ)第10230号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成27年4月27日判決 原告 X訴訟代理人弁護士松本司同田上洋平 被告セキ工業株式会社 訴訟代理人弁護士北山元章同植松祐二同清水扶美同大澤久志訴訟代理人弁理士前田弘同竹内宏同河部大輔 主文 1 特許庁が無効2013-800145号事件について平成26年9月9日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文と同旨第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがないか弁論の全趣旨により容易に認められる事実。)原告は,平成8年12月28日に出願され(特願平8-359913号),平成14年5月24日に設定登録された,発明の名称を「プロジェクションナットの供給方法とその装置」とする特許第3309245号(以下「本件特許」という。請求項の数は4である。)の特許権者である(なお,原告は,平成24年8月1日付けで訂正審判請求(訂正201 クションナットの供給方法とその装置」とする特許第3309245号(以下「本件特許」という。請求項の数は4である。)の特許権者である(なお,原告は,平成24年8月1日付けで訂正審判請求(訂正2012-390099号)をし(以下「本件訂正」という。),同月28日付けで訂正認容審決がなされた。)。 被告は,平成25年8月1日,特許庁に対し,本件特許の請求項全部を無効にすることを求めて審判の請求をした。特許庁は,上記請求を無効2013-800145号事件として審理をした結果,平成26年9月9日,「特許第3309245号の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をし,その謄本を,同月19日,原告に送達した。 原告は,平成26年10月15日(訴状受付日),上記審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。 2 特許請求の範囲の記載(甲50)本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載は,以下のとおりである(以下,同請求項1に記載された発明を「本件発明1」のようにいう。また,本件発明1ないし4を併せて「本件発明」といい,本件訂正後の本件特許の明細書及び図面をまとめて「本件明細書」という。)。 「【請求項1】円形のボウルに振動を与えてプロジェクションナットを送出するパーツフィーダとこのパーツフィーダからのプロジェクションナットをストッパ面に当てて所定位置に停止させ,その後,供給ロッドのガイドロッドをプロジェクションナットのねじ孔内へ串刺し状に貫通させてプロジェクションナットを目的箇所へ供給する形式のものにおいて,パーツフィーダに設置した計 測手段により正規寸法よりも大きいプロジェクションナットを排除して正規寸法あるいはそれ以下のプロジェクションナットだけを通過させ,ガイドロッドの外径は正規寸法のプ ーツフィーダに設置した計 測手段により正規寸法よりも大きいプロジェクションナットを排除して正規寸法あるいはそれ以下のプロジェクションナットだけを通過させ,ガイドロッドの外径は正規寸法のプロジェクションナットのねじ孔の内径よりもわずかに小さく設定されていると共に正規寸法よりも小さいプロジェクションナットのねじ孔の内径よりも大きく設定されており,ストッパ面に位置決めされた正規寸法よりも小さいプロジェクションナットを供給ロッドの進出時にそのガイドロッド先端部で弾き飛ばすことを特徴とするプロジェクションナットの供給方法。 【請求項2】円形のボウルに振動を与えてプロジェクションナットを送出するパーツフィーダとこのパーツフィーダからのプロジェクションナットをストッパ面に当てて所定位置に停止させ,その後,供給ロッドのガイドロッドをプロジェクションナットのねじ孔内へ串刺し状に貫通させてプロジェクションナットを目的箇所へ供給する形式のものにおいて,正規寸法よりも大きいプロジェクションナットを排除し正規寸法あるいはそれ以下のプロジェクションナットを通過させる計測手段をパーツフィーダの送出通路に設置し,ストッパ面に位置決めされた正規寸法よりも小さいプロジェクションナットを供給ロッドの進出時にその先端部で弾き飛ばすガイドロッドの外径は正規寸法のプロジェクションナットのねじ孔の内径よりもわずかに小さく設定されていると共に正規寸法よりも小さいプロジェクションナットのねじ孔の内径よりも大きく設定されていることを特徴とするプロジェクションナットの供給装置。 【請求項3】請求項2において,ストッパ面に当たって一時係止されている正規寸法のプロジェクションナットのねじ孔軸心とガイドロッドの軸心とが同軸とされていることによりプロジェクションナットの 【請求項3】請求項2において,ストッパ面に当たって一時係止されている正規寸法のプロジェクションナットのねじ孔軸心とガイドロッドの軸心とが同軸とされていることによりプロジェクションナットの所定位置が設定されていることを特徴とするプロジェクションナットの供給装置。 【請求項4】請求項3において,計測手段は送出通路に閉断面状の形態で設置され,プロジェクションナットの高さあるいは幅が正規寸法またはそれ以下 のものだけを通過させる構造とされていることを特徴とするプロジェクションナットの供給装置。」 3 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。その要旨は,①甲第1号証の1(平成25年1月16日付け事実実験公正証書)に示されたナットフィーダ(以下「本件ナットフィーダ」という。)と,本件特許出願前の平成5年に製造され,同年12月に被告に公然と譲渡された株式会社電元社製作所(以下「電元社」という。)製ナットフィーダ(以下「平成5年製ナットフィーダ」という。)とは同一であり,本件発明2は,本件ナットフィーダに基づいて認定できる発明(以下「公然実施発明2」という。)と同一であるから,本件発明2は,特許法29条1項2号の規定に該当する,②本件発明3は,公然実施発明2及び周知・慣用の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,③本件発明4は,公然実施発明2,実願昭59-38479号(実開昭60-151821号)のマイクロフィルム(甲16)に記載された事項(以下「甲16事項」という。)及び周知・慣用の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,④本件発明1は,本件ナットフィーダに基づいて認定できる発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明3,4及び 基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,④本件発明1は,本件ナットフィーダに基づいて認定できる発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明3,4及び1はいずれも特許法29条2項の規定に該当する,というものである。 第3 原告の主張審決には,本件発明2の新規性の有無の認定判断に関し,本件ナットフィーダの送給装置の公然実施の認定の誤り(取消事由1)及び一致点・相違点の認定の誤り(取消事由2)があるほか(したがって,本件発明2の新規性の有無に関する認定判断を前提とする本件発明3,4及び1の認定判断にも誤りがある。),本件発明4の進歩性の有無の認定判断に関し甲16事項の認定の誤り(取消事由3)があり,これらの誤りはいずれも審決の結論に影響するもので あるから,審決は違法として取り消されるべきである。 1 取消事由1(本件ナットフィーダの送給装置の公然実施の認定の誤り)審決は,本件ナットフィーダの送給装置(以下「本件ナットフィーダ送給装置」という。)と平成5年製ナットフィーダの送給装置との同一性の判断において,①ナットフィーダ送給装置は,ナットフィーダ本体と送給チューブ等のチューブ類のみにより接続され容易に分離可能であるところ,本件ナットフィーダ送給装置は,平成5年製ナットフィーダのナットフィーダ本体とセットで譲渡されたものか否か,②本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルは交換可能なものであることは両者に争いがないところ,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルは,被告が譲り受けた後,交換されたものか,③本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルとその先端のガイドロッドは螺合されている可能性があるところ,本件ナットフィーダ送給装置のガイドロッドは,被告が譲り受けた後,交換され 後,交換されたものか,③本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルとその先端のガイドロッドは螺合されている可能性があるところ,本件ナットフィーダ送給装置のガイドロッドは,被告が譲り受けた後,交換されたものか,について検討する必要があるとした。その上で,審決は,①について,本件ナットフィーダ送給装置は,平成5年製ナットフィーダのナットフィーダ本体とセットで譲渡されたものであると推認できる,②について,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルは,被告が譲り受けた後,交換されていないものと推認でき,その同一性を肯定できる,③について,本件ナットフィーダ送給装置のガイドロッドは,被告が譲り受けた後,交換されていないものと推認でき,その同一性を肯定できる,とし,本件ナットフィーダ送給装置と平成5年製ナットフィーダの送給装置とが同一である旨認定した。 しかし,審決は,上記認定をするに当たり,以下の各点において認定判断を誤っている。したがって,審決の上記認定は誤りである。 (1) 電元社による発明(甲40)とガイドの構成について審決は,本件ナットフィーダの先端のガイドロッドは交換されていないものと推認できると認定判断した。 しかし,本件ナットフィーダのガイドロッド先端の「ガイド」は,ナットを串刺しする長さである(判決注。ここで原告の主張する「ガイドロッド」と「スピンドル」は同義であり,「ガイド」と「ノーズピン」も同義であると解される。)。これに対し,平成5年製ナットフィーダは電元社の発明(特公昭56-10134号。甲40。以下「電元社発明」という。)の実施品であるところ,電元社発明は,電元社発明の課題解決方法や先行特許発明(特公昭49-22747号)を回避する必要性から,ガイドがナットを串刺しする長さを有する構成を採用していない。した う。)の実施品であるところ,電元社発明は,電元社発明の課題解決方法や先行特許発明(特公昭49-22747号)を回避する必要性から,ガイドがナットを串刺しする長さを有する構成を採用していない。したがって,本件ナットフィーダのガイドロッド先端の「ガイド」の構成は,平成5年製ナットフィーダが採用していたはずの電元社発明の構成と整合しない。 そうすると,本審決の上記認定は誤りであり,本件ナットフィーダが被告による購入時と同じものか否かについて,少なくとも,後に先端のガイドロッドは交換されたのではないかという疑義が生ずる。 (2) ①についてアチューブ接続管から導かれる事実認定の誤り審決は,本件ナットフィーダの送給装置のチューブ接続管に,M10用ナットフィーダ本体の銘板の製造番号「6132」と下三桁が整合する番号が刻印され,M10ナット用である点も整合する記号「M10」が刻印されていると認定し,本件ナットフィーダの送給装置は,平成5年製ナットフィーダ本体とセットで譲渡されたそのものである蓋然性が極めて高いと認定判断した。 しかし,上記事実から導かれるのは,本件ナットフィーダ送給装置のチューブ接続管は,平成5年製ナットフィーダの送給装置におけるチューブ接続管と同一性があるということにすぎない。そして,スピンドルないしノーズピンを交換するためにチューブ接続管を交換する必要はないから,チューブ接続管は元のものを用いつつ,スピンドルないしノーズピンが交 換された可能性は否定できない。 イエアシリンダーに関する事実認定の誤り審決は,本件ナットフィーダ送給装置のエアシリンダーにはラベルが一部欠けた状態で残っており,そのラベルには「KD//CYLINDER」等の表示があり,そのうち「KD」は二重書き 定の誤り審決は,本件ナットフィーダ送給装置のエアシリンダーにはラベルが一部欠けた状態で残っており,そのラベルには「KD//CYLINDER」等の表示があり,そのうち「KD」は二重書きデザインの角張った書体であると認定し,CKD株式会社のロゴは,平成7年10月までは,二重書きデザインの角張った書体であったから,本件ナットフィーダ送給装置が平成7年10月以前に製造されたと認定した。 しかし,実際にどのようにCKD株式会社のロゴが変更されたかは必ずしも明らかではない。また,平成7年10月に,CKD株式会社が販売する製品に付された全てのラベルのロゴが,二重書きデザインの角張った書体から変更されたことを示す証拠もない。 仮に,CKD株式会社のロゴが,平成7年10月までは,二重書きデザインの角張った書体であったとしても,本件ナットフィーダ送給装置のエアシリンダーが平成7年10月以前に販売されたものである事実が導かれるにすぎず,本件ナットフィーダ送給装置のエアシリンダーが平成5年製ナットフィーダの送給装置に用いられたものであるか否かは必ずしも明らかではない。まして,スピンドルやノーズピンは取り外し可能なのであるから,平成5年製ナットフィーダの送給装置において,エアシリンダーは元のものを用いつつ,スピンドルないしノーズピンが交換された可能性は否定できない。 (3) ②及び③についてアロックナットの傷跡に関する証拠評価の誤り(②)審決は,「スピンドルを固定しているロックナットは締付方向の傷痕のみで,取り外す方向の傷痕は発生していないと判断できる」との独立行政法人国立高等専門学校機構呉工業高等専門学校機械工学分野A教授(以下 「A教授」という。)作成の調査報告書の記載(甲35)によれば,本件 方向の傷痕は発生していないと判断できる」との独立行政法人国立高等専門学校機構呉工業高等専門学校機械工学分野A教授(以下 「A教授」という。)作成の調査報告書の記載(甲35)によれば,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルは,被告が譲り受けた後,交換されていないものである蓋然性が高いとするとともに,機械部品の交換は消耗品のみ行うのが通常であって,消耗品であるスピンドルと共に消耗品でないロックナットまでも交換する可能性は低い,などと認定判断した。 しかし,スピンドルを交換する際に,ロックナットも新品に交換したとすれば,取り外す方向の傷痕がないのは当然である。また,上記認定判断は,被告が,本件特許を無効とする証拠を得るため,本来のものとは形状の異なるスピンドルをあえて用いてスピンドルの交換をした可能性を検討していない。 イ擦過痕に関する証拠評価の誤り(②及び③)審決は,検証調書(甲47)の写真19において撮影されているスピンドルの擦過痕から,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルが少なくとも数年間使用されたことを推認できる旨判断した。 しかし,上記擦過痕から推認できるのは,当該スピンドルがナットフィーダにおいて繰返し使用されたという事実のみにすぎないから,これによってスピンドル交換の可能性が排除されると考えるのは誤りである。 また,審決は,上記写真にて撮影されたノーズピンの擦過痕と,スピンドルの擦過痕について,痕の性状及び方向並びに周方向の位置が類似しているから,同じ使用期間の間に生じたものと考えるのが合理的であるとし,ノーズピンは,被告が譲り受けた後,交換されていない蓋然性が高いと判断した。 しかし,仮に,被告において,本件特許を無効とするための証拠を得る目的で,ノーズピンを るのが合理的であるとし,ノーズピンは,被告が譲り受けた後,交換されていない蓋然性が高いと判断した。 しかし,仮に,被告において,本件特許を無効とするための証拠を得る目的で,ノーズピンを本来の形状とは異なる形状のものに交換したとすると,スピンドルと同程度に摩耗している使用済みのノーズピンを用いるはずであるし,痕の性状及び方向並びに周方向の位置が一致するように,ス ピンドルに螺合するはずである。審決は,被告が,ノーズピンを購入時と異なるものに交換した可能性を検討していないのであって,上記判断も誤りである。 (4) 被告代表者の尋問に関する評価の誤り審決は,被告代表者B(以下「B」という。)の当事者尋問には,送給装置を入れ替えていないこと,スピンドルを交換していないこと,及びノーズピンを交換していないことと矛盾するような陳述はみられなかったと認定した。 しかし,Bの陳述には,不自然・不合理な点がみられる上,平成5年製ナットフィーダの使用期間や一部の部品の交換に至った経緯などの重要な事項においてすら誤りが見られるのであるから,これを信用することはできない。 (5) 説明書の記載及びヒンジ板の相違について本件ナットフィーダのストッパーの取付け位置が,取扱説明書(甲1の1添付の資料1)と異なっており,この点からも,本件ナットフィーダ送給装置と平成5年製ナットフィーダの送給装置が同一であるなどと認定することはできない。 また,送給チューブ及びヒンジ板が購入当初のものから交換されているという事実は,他の部材,特に消耗部材であるスピンドル及びノーズピンも交換されていることを強く推認させる。 2 取消事由2(一致点・相違点の認定の誤り)審決の公然実施発明2の認定のうち,少なくとも,「スピンドル 部材,特に消耗部材であるスピンドル及びノーズピンも交換されていることを強く推認させる。 2 取消事由2(一致点・相違点の認定の誤り)審決の公然実施発明2の認定のうち,少なくとも,「スピンドルのガイドロッドをプロジェクションナットのねじ孔内へ串刺し状に貫通させてプロジェクションナットを目的箇所へ供給する形式のものにおいて」の構成を備えるとの認定は誤りである。 すなわち,本件ナットフィーダ送給装置は,電元社発明の実施品であり,永 久磁石方式を採用するものであって,正規寸法よりも小さいナットが目的箇所に供給されることがある。これに対し,本件発明2の「正規寸法よりも小さいナットに対してガイドロッドの先端部が確実に干渉して弾き飛ばしがなされ,信頼性の高い作動が実現する。」(本件明細書【0015】)との効果は,電元社発明の採用する永久磁石方式では生じ得ない効果である。 そうすると,公然実施発明2は「スピンドルのガイドロッドをプロジェクションナットのねじ孔内へ串刺し状に貫通させてプロジェクションナットを目的箇所へ供給する形式のものにおいて」との構成を備えていない。 以上に鑑みると,本件発明2と公然実施発明2の相違点として,「本件発明2は供給ロッドのガイドロッドをプロジェクションナットのねじ孔内へ串刺し状に貫通させてプロジェクションナットを目的箇所へ供給する形式を備えるのに対し,公然実施発明2は,永久磁石方式によりプロジェクションナットを目的箇所へ供給する形式である点。」が存在しているというべきであるから,審決の一致点・相違点の認定は誤っている。 3 取消事由3(甲16事項の認定の誤り)審決は,甲第16号証には,「プロジェクションナット用パーツフィーダーにおいて,チェックゲージは送出通路に門型の形状で設置され,プロジェ ている。 3 取消事由3(甲16事項の認定の誤り)審決は,甲第16号証には,「プロジェクションナット用パーツフィーダーにおいて,チェックゲージは送出通路に門型の形状で設置され,プロジェクションナットの高さが規定値以下のものだけを通過させる構造とされていること。」が記載されている旨認定した。 しかし,甲第16号証には「正規寸法よりも小さいプロジェクションナット」についての記載は一切なく,それゆえ「正規寸法よりも大きいプロジェクションナットを排除し正規寸法あるいはそれ以下のプロジェクションナットを通過させる計測手段」としての機能を有することについては記載も示唆も一切存在しない。つまり,甲第16号証はナットの表裏選別の発明であって,異状寸法のナットを排除することに関する発明ではないのである。 したがって,甲第16号証の記載に接した当業者が,「正規寸法あるいはそ れ以下のプロジェクションナットを通過させる計測手段」が開示されていると理解することはない。 よって,審決の上記認定は誤りである。 第4 被告の反論 1 取消事由1(本件ナットフィーダの送給装置の公然実施の認定の誤り)について以下のとおり,本件ナットフィーダ送給装置と平成5年製ナットフィーダの送給装置との同一性を肯定した審決の認定判断に誤りはない。 (1) 電元社による発明(甲40)とガイドの構成について本件ナットフィーダが電元社発明をそのまま実施したものかは不明である。仮に,実施品であったとしても,特許明細書及び図面の記載と本件ナットフィーダのガイドの長さが合致しなければならないものではない。 また,本件ナットフィーダの構成が電元社発明の課題解決方法と矛盾するものではない。 さらに,原告主張に係る先行特許の特許権の存続期間の満了日は のガイドの長さが合致しなければならないものではない。 また,本件ナットフィーダの構成が電元社発明の課題解決方法と矛盾するものではない。 さらに,原告主張に係る先行特許の特許権の存続期間の満了日は,平成元年6月11日であり,同特許権は,本件ナットフィーダが製造された平成5年11月以前に消滅している。 しかも,本件ナットフィーダに関する電元社に対する弁護士会照会(甲37)の照会事項2(4)に対する回答において,電元社は「弊社製品には,スピンドルの先端長さは,照会事項記載のM10ナットを使用した場合,M10ナットを貫通し反対側に突き抜けるほどの長さを備えております。」と明言している。 したがって,本件ナットフィーダにおいて,その「ガイド」が製造当初からナットを「串刺し」する長さを有していたものといえる。 (2) ①についてアチューブ接続管から導かれる事実認定の誤りについて 仮に,ノーズピンを備えたスピンドルを譲渡時と異なるものに交換したり,そのスピンドルをエアシリンダーと共に譲渡時と異なるものに交換したりすると,チューブ接続管の下端部(ガイドシリンダの先端部)に位置決めされるナットとスピンドルの芯がずれ,その結果,作動不良を生ずる懸念が出てくる。したがって,そのようなスピンドルないしエアシリンダーの交換はできるだけ避けるのが通常である。 そもそも,スピンドルをノーズピンと共に180度反転させ,摩耗を生じていない面を出すと作動不良が解消されるから,作動不良が生じた場合であっても,スピンドルないしノーズピンを交換する必要はない。 さらに,スピンドルは,エアシリンダーのロッドにねじ結合され,そのねじ結合のゆるみを防止するロックナットがスピンドルに締め付けられており,スピンドルを交換するにはロックナットを る必要はない。 さらに,スピンドルは,エアシリンダーのロッドにねじ結合され,そのねじ結合のゆるみを防止するロックナットがスピンドルに締め付けられており,スピンドルを交換するにはロックナットをゆるめる必要があるところ,A教授による調査報告書(甲35)によれば,ロックナットには締付方向の傷痕のみで,取り外す方向の傷痕がないということであり,スピンドルは被告譲受後に交換されていない蓋然性が高いという結果になっている。 イエアシリンダーに関する事実認定の誤りについてCKD株式会社は,平成7年10月に現行のものである新ロゴを制定し,銘板についても同時期より新ロゴを使用しているから,審決の判断に誤りはない。 また,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドル及びノーズピンが平成5年製ナットフィーダの送給装置のものであることは,電元社に対する弁護士会照会の回答(甲37)によっても裏付けられている。 (3) ②及び③についてアロックナットの傷跡に関する証拠評価の誤り(②)について前記(2)アのとおり,スピンドルの交換をしたことを推認させる事情は 存在しない。また,弁護士会照会(甲37)においても,電元社からスピンドルの形状が異なる旨の回答はない。 したがって,審決の認定に誤りはない。 イ擦過痕に関する証拠評価の誤り(②及び③)について審決は,検証調書(甲47)の写真19の擦過痕のみならず,被告が平成5年末に平成5年製ナットフィーダを購入したこと,平成11年1月にプレス事業を売却したこと,プレス加工事業以外にナットフィーダを使用する事情が見当たらないこと,並びに,Bの陳述書及びB本人尋問の内容を併せ考えて,スピンドルの使用期間を推認しているのであり,その判断に誤りは 売却したこと,プレス加工事業以外にナットフィーダを使用する事情が見当たらないこと,並びに,Bの陳述書及びB本人尋問の内容を併せ考えて,スピンドルの使用期間を推認しているのであり,その判断に誤りはないというべきである。 また,原告は,被告がノーズピンを本来の形状とは異なる形状のものに交換した旨主張するが,「本来の形状」がどのような形状のものであるかは不明である。 さらに,ノーズピンをスピンドルと同程度に摩耗している使用済みのノーズピンに交換するとしても,ノーズピンの傷痕とスピンドルの傷痕の「周方向の位置」が一致するようにすることは困難である。 しかも,平成5年製ナットフィーダの取扱説明書(甲1の1添付の資料1)では,スピンドルについて消耗品として予備品を用意することが推奨されているものの(同取扱説明書16頁),それと螺合されるノーズピンに関しては記載がないことからすれば,ノーズピンはスピンドルと一体に扱われるものであり,ノーズピンのみをスピンドルとは別に交換することが通常であるとも考えられない。 (4) 被告代表者の尋問に関する評価の誤りについてBの尋問の内容について何ら不自然な点はなく,審決の判断に誤りはない。 (5) 説明書の記載及びヒンジ板の相違について 本件ナットフィーダ送給装置のストッパーは,平成5年製ナットフィーダの出荷時点で取り付けられていた「PFC-0023」のナットストッパーであり,別のストッパーには交換されてはいない。なお,取扱説明書(甲1の1添付の資料1)は,平成5年製ナットフィーダ用として個別に作成されたものではなく,電元社製のあらゆる種類のナットフィーダ共通のものとして作成されたものであるから,本件ナットフィーダ送給装置と上記取扱説明書との間に齟齬 成5年製ナットフィーダ用として個別に作成されたものではなく,電元社製のあらゆる種類のナットフィーダ共通のものとして作成されたものであるから,本件ナットフィーダ送給装置と上記取扱説明書との間に齟齬があったとしても,本件ナットフィーダ送給装置が平成5年製ナットフィーダの送給装置と異なることの根拠とはならない。 また,ヒンジ板や送給チューブが交換されているという事実は,スピンドル及びノーズピンが交換されているか否かとは無関係であり,スピンドル及びノーズピンが交換されたことを推認させるものではない。 2 取消事由2(一致点・相違点の認定の誤り)について本件ナットフィーダ送給装置においては,ノーズピンの外径が正規寸法のナットのねじ孔内径よりもわずかに小さく設定してあるので,ノーズピンが正規寸法よりも小さいナットのねじ孔に入らない結果,ノーズピンの先端部がその正規寸法よりも小さいナットに干渉し,そのナットが弾き飛ばされる。ナットがスピンドル本体の先端に吸着されることがあるとしても,ノーズピンの先端に吸着されることはないのであるから,正規寸法よりも小さいナットが目的箇所に供給されることがあるという原告の主張は失当である。 また,本件明細書には,本件発明2が永久磁石方式を含まないことを示唆する記載はない。 したがって,公然実施発明2が本件発明2の構成「供給ロッドのガイドロッドをプロジェクションナットのねじ孔内へ串刺し状に貫通させてプロジェクションナットを目的箇所へ供給する形式において」を備えていると認定した審決に誤りはない。 3 取消事由3(甲16事項の認定の誤り)について 甲第16号証におけるチェックゲージ10は,ナットNの表裏を判定するものであるが,「正規寸法よりも大きいプロジェクションナットを排除し正規寸法ある 16事項の認定の誤り)について 甲第16号証におけるチェックゲージ10は,ナットNの表裏を判定するものであるが,「正規寸法よりも大きいプロジェクションナットを排除し正規寸法あるいはそれ以下のプロジェクションナットを通過させる計測手段」としての機能も果たし得る。 なお,原告は,甲第16号証はナットの表裏選別の発明で,異状寸法のナットを排除することに関する発明ではないとも主張するが,その一方で,特許権侵害差止等請求事件(大阪地方裁判所平成24年(ワ)10746号。以下「別件訴訟」という。)においては,表裏選別か,異状寸法の排除かなどの発明の主観的な意図・目的は考慮される余地がないと主張していたのであり(上記事件第1準備書面第1の3(1)),本件における上記の原告主張は,原告自身の過去の主張と矛盾している。 第5 当裁判所の判断当裁判所は,原告主張の取消事由1は理由があるから,その余の点について判断するまでもなく,審決にはこれを取り消すべき違法があるものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 審決は,本件発明が,出願当時公然実施されていた発明と同一である(あるいは,公然実施されていた発明から容易に想到することができる)として本件特許を無効とした。そして,取消事由1において問題となっているのは,審決の上記判断の前提となった,「本件ナットフィーダと出願当時の公然実施品である平成5年製ナットフィーダは同一であるから,本件ナットフィーダ(本件ナットフィーダ送給装置も含む。)は,本件特許出願当時の公然実施品であったと認められる。」との判断が正しいかどうかであり,特に,両者のスピンドルとノーズピンが同一であって,スピンドルの先端に取り付けられたノーズピンが,ナットを貫通する長さを有する構成になっているとの判断 と認められる。」との判断が正しいかどうかであり,特に,両者のスピンドルとノーズピンが同一であって,スピンドルの先端に取り付けられたノーズピンが,ナットを貫通する長さを有する構成になっているとの判断が正しいかどうかが問題となる。 ところで,本件特許に新規性ないし進歩性欠如の無効事由が存することは, 本件特許が無効であると主張する側が立証すべき事柄であるから,その前提となる「本件ナットフィーダと平成5年製ナットフィーダが同一であること。」についても,本件特許が無効であると主張する側が立証責任を負うべきである。したがって,この点の立証が尽くされたと判断される場合に初めて,特許無効の判断をすることができる筋合いとなるが,この点を検討するのに当たっては,次の点を考慮する必要があると思われる。 まず,平成5年製ナットフィーダについては,その構造や構成を直接認定する根拠となるような図面等の証拠は存在しない(取扱説明書(甲1の1添付の資料1)は,被告も自認するとおり,平成5年製ナットフィーダ用として個別に作成されたものではなく,電元社製のあらゆる種類のナットフィーダ共通のものとして作成されたものであるから,これを直接の根拠として,平成5年製ナットフィーダの構造や構成を認定することはできない。)。そのため,間接事実に基づいて,現存する本件ナットフィーダと平成5年製ナットフィーダが同一かどうかを判断しなければならないことになる。 しかし,この同一性の認定に当たっては,次のような問題点が存することを考慮する必要がある。第1に,本件ナットフィーダは,ナットフィーダ送給装置(本件ナットフィーダ送給装置)のスピンドル先端に付けられたノーズピンが,ナットを「串刺し」にして貫通する長さを有する構成(以下「串刺し方式」という。)になっている(甲1 は,ナットフィーダ送給装置(本件ナットフィーダ送給装置)のスピンドル先端に付けられたノーズピンが,ナットを「串刺し」にして貫通する長さを有する構成(以下「串刺し方式」という。)になっている(甲1の1,47)。これに対し,平成5年製ナットフィーダを製作したのは電元社であるところ,電元社は,もともと,電元社発明(昭和51年出願。甲40)の実施品としてナットフィーダの製造を始めた可能性がある。そして,電元社発明は,串刺し方式の場合の,ナットが串刺しロッドを回転しながらすべり落ちるために生じる降下速度のばらつきの問題を解消すべく,ナットをロッドで串刺しにして保持する代わりに,磁石で吸着して保持することを特徴としていた(これを「磁石吸着方式」という。)のであるから,電元社がもともと製造していたナットフィーダも,串刺し方式では なく,磁石吸着方式を採用していた可能性があることは否定できない(当初は,磁石吸着方式を採用していたとまで認定することはできないが,電元社の当初の製品がどのような構造や構成を持つものであったかを認めるに足りる証拠はない以上,その可能性を排除することはできないという趣旨である。)。このように,本件ナットフィーダと電元社がもともと製造していたナットフィーダとは,異なる構成であった可能性を否定することができないのであって,このことは本件ナットフィーダと平成5年製ナットフィーダも異なる構成であった一般的可能性を否定することができないことを意味する(平成5年以前に構成を変更した可能性もあるが,変更時期や変更内容を認定するに足りる的確な証拠はない。)。第2に,平成5年製ナットフィーダは,平成5年12月に購入され,平成10年末まで使用された後は,使用されないまま被告社内において保管されていたものであるが,その間に,その部品の 確な証拠はない。)。第2に,平成5年製ナットフィーダは,平成5年12月に購入され,平成10年末まで使用された後は,使用されないまま被告社内において保管されていたものであるが,その間に,その部品の一部であり,使用時には存在していたヒンジカバー,キックバネ及びチューブがなくなるなどしていたことが認められる(甲1の1,甲48。なお,この点については,後記の2(2)ウも参照。)。このように,平成5年製ナットフィーダは,その使用が停止されてから,平成25年1月にその形状等の確認が行われる(甲1の1)まで,約15年間も使用されないまま放置されていた上(その間,使用価値のなくなった機械が厳重に管理されていたとは到底考えられない。),その部品の一部が実際に紛失するなどしてしまっているのであるから,平成5年製ナットフィーダが,その同一性を完全に保持したまま保管されていた(したがって,本件ナットフィーダと完全に同一である)と認定することができないことは明らかである。そうであるとすると,他の部品も,失われるなどした一般的可能性があることは否定できない。 したがって,平成5年製ナットフィーダと本件ナットフィーダが同一かどうかを判断するのに当たっては,以上のような事情を考慮してもなお同一といえるだけの証拠や根拠があるかという観点からの検討が必要であると考えられる ところ,次項において説示するとおり,本件審決には,少なくとも,スピンドル交換の可能性はない(したがって,平成5年製ナットフィーダと本件ナットフィーダのスピンドルは同一である)と判断した点において,誤りがあったと考えざるを得ない。 2 スピンドルの交換の有無に関する審決の認定判断について(1) 審決は,①A教授が「スピンドルを固定しているロックナットは締付方向の傷痕のみで,取 て,誤りがあったと考えざるを得ない。 2 スピンドルの交換の有無に関する審決の認定判断について(1) 審決は,①A教授が「スピンドルを固定しているロックナットは締付方向の傷痕のみで,取り外す方向の傷痕は発生していないと判断できる」との所見を示しており(甲35),機械部品の交換は消耗品のみ行うのが通常であって,消耗品であるスピンドルと共に消耗品でないロックナットまでも交換する可能性は低いこと,②被告が,遅くとも昭和44年以降,プレス加工を業として行っており(甲27),平成5年末に,電元社から平成5年製ナットフィーダを購入したが,平成11年1月に,プレス加工事業を売却したという経緯に加え,被告がプレス加工事業以外にナットフィーダを使用する事情が見当たらないことや,Bの陳述内容を併せ考えると,被告は平成5年末に平成5年製ナットフィーダを購入した後,約5年間のみ平成5年製ナットフィーダを使用していたものと考えることができるところ,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルの本体先端付近の裏側面に平面状の擦過痕が存在しており,その擦過痕の状況からして,上記スピンドルは少なくとも数年間使用されたことが推認されることからすれば,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルは,電元社からの購入後,その使用停止まで継続して使用されていたもので,交換されたとは考え難いこと,③Bの当事者尋問に,スピンドルを交換していないことと矛盾するような陳述はみられなかったことを根拠として,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルは,被告が譲り受けた後には交換されていないものと推認することができるとして,平成5年製ナットフィーダのスピンドルと本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルの同一性を肯定している。 (2)アしかし,①については,A教授の前記( と推認することができるとして,平成5年製ナットフィーダのスピンドルと本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルの同一性を肯定している。 (2)アしかし,①については,A教授の前記(1)の見解を前提としても,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルを固定するロックナットについて,一度締め付けられた後取り外されたことがないことが示されるにすぎないのであって,スピンドルがロックナットと共に交換されていれば,審決の判断が成り立たなくなることは明らかである。 また,審決の述べるように,機械部品の交換は消耗品のみ行うのが通常であって,消耗品であるスピンドルと共に消耗品でないロックナットまでも交換する可能性は低いといえるとしても,それはあくまでも,通常の業務が行われている中では交換の可能性が低いというにとどまり,そのことから直ちに,上記ロックナットが交換されてはいないと断定することは困難である。まして,前記1において指摘した諸事情,すなわち,機械の長期間の放置やその間における一部部品の紛失,平成5年製ナットフィーダと本件ナットフィーダとでは,スピンドル(及びノーズピン)の構成に違いがある可能性を否定できないことなどといった事情を考慮してもなお,スピンドルの同一性を肯定する根拠となし得るものではない。 したがって,①の事実をもって直ちに,平成5年に被告が電元社から購入した平成5年製ナットフィーダの送給装置のスピンドルと,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルとが同一であることの根拠とすることはできない。 イ ②についても,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルの本体先端付近の裏側面に平面状の擦過痕が存在していることからは,当該スピンドルがナットフィーダにおいて繰り返し使用されたことが認定できるにとどまり ついても,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルの本体先端付近の裏側面に平面状の擦過痕が存在していることからは,当該スピンドルがナットフィーダにおいて繰り返し使用されたことが認定できるにとどまり,上記スピンドルが少なくとも数年間使用されたことが推認されるとまではいい難い。まして,上記の事実は,上記スピンドルが,どのナットフィーダに取り付けられて使用されていたのかについては,何ら示唆を与えるわけではない。 そして,被告が平成5年末に平成5年製ナットフィーダを購入した後,約5年間のみ平成5年製ナットフィーダを使用していたとの事実を前提としても,それは,せいぜい,上記スピンドルの使用期間と,平成5年製ナットフィーダの使用期間とが一致する可能性がある(あるいは,使用期間に矛盾は生じない)ということを意味するだけで,そのことから直ちに,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルが購入当初から本件ナットフィーダ送給装置に取り付けられていたことが裏付けられるものでもない。 このことに,前記1で指摘した諸点を併せ考えると,②の事実をもって直ちに,平成5年に被告が電元社から購入した平成5年製ナットフィーダの送給装置のスピンドルと,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルとが同一であることの根拠とすることはできないというべきである。 ウ ③についても,Bは,購入以後,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルを交換したことはない旨陳述ないし供述する(甲12,48)ものの,本件ナットフィーダのメンテナンスの記録等,上記陳述ないし供述を裏付ける客観的証拠の提出はなく,上記陳述ないし供述のみをもって直ちに,平成5年に被告が電元社から購入した平成5年製ナットフィーダの送給装置のスピンドルと,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルとが同一であること 拠の提出はなく,上記陳述ないし供述のみをもって直ちに,平成5年に被告が電元社から購入した平成5年製ナットフィーダの送給装置のスピンドルと,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルとが同一であることを認定することはできない。 さらに,審判におけるBの供述(甲48)によれば,本件ナットフィーダは,使用しなくなった後は,工場の中二階にビニールの袋をかぶせて保管していた(甲48・046)というのであるが,本件ナットフィーダの本体と送給装置の保管方法について判然としない部分もあること(甲48・051ないし053),使用時には存在していたヒンジカバー,キックバネ及びチューブがなくなっていたりし(甲1の1,甲48・058,094,162),その理由について,Bの認識(甲48・126)と被告C取締役の認識(甲1の1・6頁)に食い違いが見られること,使用当 時は動いていたシリンダーが破損していること(甲48・062,063)などに照らすと,本件ナットフィーダの保管状況には判然としない部分があるというほかなく,このことも,Bの供述,ひいては本件ナットフィーダの送給装置と平成5年に被告が電元社から購入した平成5年製ナットフィーダの送給装置との同一性について疑問を生じさせる事情であるということができる。 したがって,③のBの陳述ないし供述をもって直ちに,平成5年に被告が電元社から購入した平成5年製ナットフィーダの送給装置のスピンドルと,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルとが同一であることの根拠とすることはできない。 エそうすると,審決の挙げた前記①ないし③の事情から,平成5年に被告が電元社から購入した平成5年製ナットフィーダの送給装置のスピンドルと,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルとが同一であることを認 そうすると,審決の挙げた前記①ないし③の事情から,平成5年に被告が電元社から購入した平成5年製ナットフィーダの送給装置のスピンドルと,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルとが同一であることを認定することはできない。 オなお,審決は,①本件ナットフィーダの送給装置のチューブ接続管に,M10用ナットフィーダ本体の銘板の製造番号「6132」と下三桁が整合する番号が刻印され,M10ナット用である点も整合する記号「M10」が刻印されていることからすると,本件ナットフィーダの送給装置は,ナットフィーダ本体とセットで譲渡されたと考えられること,②本件ナットフィーダ送給装置のエアシリンダーにはラベルが一部欠けた状態で残っており,そのラベルには「KD//CYLINDER」等の表示があり,そのうち「KD」は二重書きデザインの角張った書体で書かれているところ,エアシリンダーの製造会社であるCKD株式会社のロゴは,平成7年10月までは,二重書きデザインの角張った書体であったから,本件ナットフィーダ送給装置も平成7年10月以前に製造されたものと推認できることなどをも同一性肯定の根拠としている。しかし,スピンドルは, 本件ナットフィーダ送給装置のチューブ接続管やエアシリンダーとは別に交換することができる以上,上記①,②の点は,スピンドルが(ノーズピンとともに)交換された可能性を否定できないという上記の認定判断を何ら左右するものではない。 (3) なお,電元社の機械技術部長は,弁護士法23条の2に基づく照会において,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルの写真を付して,銘板に「MODELAF-VMU-H10-DR」,「SERIALNO. 6582」,「MFD.NO. 93-6132」及び「MFD.DATE993-11」の記載が スピンドルの写真を付して,銘板に「MODELAF-VMU-H10-DR」,「SERIALNO. 6582」,「MFD.NO. 93-6132」及び「MFD.DATE993-11」の記載があるナットフィーダ(すなわち,本件ナットフィーダ)のスピンドルについて,上記写真のとおりかどうか照会され,①上記写真が上記銘板を正当に付した電元社の製品のスピンドル部分を撮影したものであれば上記写真のとおりであり,②電元社の製品は,スピンドルの長さは,M10ナットを使用した場合,M10ナットを貫通し反対側に突き抜けるほどの長さを備えている旨回答している(甲37・照会事項2(4))。 しかし,上記①の回答は,上記写真が上記銘板の付された製品のスピンドルを撮影したものであれば,上記銘板の付された製品のスピンドルは上記写真のとおりであると述べているにすぎないとも解されるのであって,そもそも,上記写真において撮影されたスピンドルが平成5年製ナットフィーダの送給装置のスピンドルと同一かどうかを述べているものかどうかが判然としない。仮に,上記写真において撮影されたスピンドルが平成5年製ナットフィーダの送給装置のスピンドルと同一である旨を述べているとしても,どのような根拠に基づいて,上記写真に撮影されたスピンドルと平成5年製ナットフィーダの送給装置のスピンドルとの同一性を判断しているのかも明らかではない。 また,上記②の回答についても,平成5年製ナットフィーダを含む趣旨の回答であるのかどうかは,その回答のみから判然としないし,仮に含むもの であるとしても,どのような根拠に基づくものかは明らかではない。 そうすると,上記甲第37号証の記載をもって,平成5年に被告が電元社から購入した平成5年製ナットフィーダの送給装置のスピンドルと,本件ナットフ ても,どのような根拠に基づくものかは明らかではない。 そうすると,上記甲第37号証の記載をもって,平成5年に被告が電元社から購入した平成5年製ナットフィーダの送給装置のスピンドルと,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルとが同一であることを裏付けるものとすることはできない。 (4) そして,他に平成5年に被告が電元社から購入した平成5年製ナットフィーダの送給装置のスピンドルと,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルとが同一であることを認めるに足りる証拠はない。 なお,被告は,仮に,ノーズピンを備えたスピンドルを譲渡時と異なるものに交換したり,そのスピンドルをエアシリンダーと共に譲渡時と異なるものに交換したりすると,チューブ接続管の下端部(ガイドシリンダの先端部)に位置決めされるナットとスピンドルの芯がずれ,その結果,作動不良を生ずる懸念が出てくるから,そのようなスピンドルないしエアシリンダーの交換はできるだけ避けるのが通常であるとか,スピンドルをノーズピンと共に180度反転させて,摩耗を生じていない面を出すと,作動不良が解消されるのであるから,スピンドルないしノーズピンを交換する必要はないなどと主張する(前記第4の1(2)ア)。 しかし,スピンドルを交換すること自体は可能である以上,上記各主張は前記(2)及び(3)の認定を左右するものとはいえない。 3 小括以上によれば,被告が平成5年に電元社から購入した平成5年製ナットフィーダの送給装置のスピンドルと,本件ナットフィーダ送給装置のスピンドルとが同一であることを認めることはできない。したがって,本件ナットフィーダが平成5年製ナットフィーダと同一であるとした審決の認定には誤りがある。 そして,上記の誤りは,公然実施発明2の認定に影響を及ぼすものであり,ひいては, とはできない。したがって,本件ナットフィーダが平成5年製ナットフィーダと同一であるとした審決の認定には誤りがある。 そして,上記の誤りは,公然実施発明2の認定に影響を及ぼすものであり,ひいては,本件発明2との間の新たな相違点を生じさせるものであるから,審 決の結論に影響を及ぼすものであることが明らかである。 さらに,本件発明1,3及び4についての審決の認定判断も,同様に誤りがある。 第6 結論よって,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官鶴岡稔彦 裁判官大西勝滋 裁判官神谷厚毅
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