平成20(ネ)10067 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成20年11月26日 知的財産高等裁判所 2部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 平成20(ワ)8836
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判決文本文7,915 文字)

- 1 -判決言渡平成20年11月26日平成20年(ネ)第10067号損害賠償請求控訴事件(原審・東京地裁平成20年(ワ)第8836号)口頭弁論終結日平成20年10月29日判決控訴人株式会社イー・ピー・ルーム被控訴人住石マテリアルズ株式会社(旧商号住友石炭鉱業株式会社)訴訟代理人弁護士冨永敏文同尾原央典主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人は控訴人に対し,10万円及びこれに対する平成20年3月15日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は,第1,2審を通じて,被控訴人の負担とする。 第2事案の概要【以下,略称は原判決の例による】。 本件は,一審原告である控訴人が,その作成に係る放電プラズマ焼結機の設計図に加筆修正を加えた図面(本件訂正図面)及び部品図面50枚(本件部品図面)の原紙を一審被告である被控訴人が控訴人を欺いて交付させ,被控訴人がこれらを用いてCらに放電プラズマ焼結機を製造販売させた行為は,控訴人が所有権を有する本件訂正図面及び本件部品図面についての詐欺,横領に該当- 2 -する不法行為であり,これにより控訴人は放電プラズマ焼結機の販売による150万円の得べかりし利益を失ったと主張して,被控訴人に対し損害賠償金の一部として10万円とこれに対する平成20年3月15日から支払済みに至るまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原審の東京地裁は,平成20年8月28日,控訴人の本件訴えは,東京地方裁判所平成18年(ワ)第22355号事件及びその控訴審(ただし,控訴審において,訴えの一部取下げと新請求の追加がある)である知的財産高等 京地裁は,平成20年8月28日,控訴人の本件訴えは,東京地方裁判所平成18年(ワ)第22355号事件及びその控訴審(ただし,控訴審において,訴えの一部取下げと新請求の追加がある)である知的財産高等裁判所平成19年(ネ)第10015号事件(以上を以下「前訴」という)における損害賠償請求と同一の不法行為に基づく損害賠償請求の残部を請求するものであるところ,前訴については原告たる控訴人敗訴の判決が確定しており,本件訴えは前訴で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものであり信義則に反し許されないとして,これを却下した。そこで,上記判決に不服の控訴人が本件控訴を提起した。 当審における争点は,訴えを却下した原判決の当否である。 第3当事者双方の主張 当事者双方の主張は,次に付加するほか,略称も含め,原判決の「事実」欄の「第2当事者の主張」のとおりであるから,これを引用する。 控訴人詳細は,別紙「控訴理由書」記載のとおりであるが,これを整理すると次のとおりである。 (1)本件訴訟は,原判決が判断の前提とした前訴の控訴審判決(乙2)が結審した平成19年7月3日より後の,①平成20年3月25日に結審した東京地裁平成19年(ワ)第23951号損害賠償請求事件の判決(甲16の1,②平成20年1月17日の期日において原告たる控訴人に確認した上)で作成された東京地裁平成19年(ワ)第23459号事件の第3回口頭弁論調書(甲8,③平成20年6月16日に結審した知財高裁平成20年(ネ))- 3 -第10040号損害賠償請求控訴事件の判決(甲31)を請求の原因とするから,原判決には,以下のとおり事実誤認・理由齟齬・法判断の誤り等の違法がある。 アまず,①について,上記東京地裁平成19年(ワ)第23951号損害賠償請求事件の判決には「第2 を請求の原因とするから,原判決には,以下のとおり事実誤認・理由齟齬・法判断の誤り等の違法がある。 アまず,①について,上記東京地裁平成19年(ワ)第23951号損害賠償請求事件の判決には「第2事案の概要」として「本件は,原告が,,,被告に対し,平成3年5月27日,原告・被告間において締結された原告代表者設計に係る放電焼結機(以下「本件製品」という)を原告が被,。 告に製造納入する旨の契約(以下「本件契約」という)に係る被告の,。 債務」と記載されているとおり,平成3年5月27日に控訴人・被控訴人間で締結された契約により,控訴人は被控訴人に対し放電焼結機を納入することとなり,また本件訂正図面及び本件部品図面の所有権も,控訴人にあるものである。 すなわち,平成3年5月27日,被控訴人の当時の技術本部研究開発部長A,同技術本部研究開発部マーケテイングマネージャーBに対し,控訴人代表者(X)が,控訴人において当時出願中の特許第2640694号(甲1,特開平8-73904号公報(甲2)記載の発明による放電プ)ラズマ焼結機による問題解決について説明したところ,被控訴人と控訴人との間で放電プラズマ焼結機の製造納入に関する契約の締結に至ったものである。上記契約は,電極の端面の平行度をねじ又は楔等で調整することができる電極を有する放電プラズマ焼結機に関する納入契約であり,また書面によらず意思表示の合致により成立したものである。控訴人において出願中の特願平2-23962号(甲20の1,2,同平2-2480)85号(甲21の1,2)について,控訴人が特許を受ける権利を有すること等も内容の一部となっていた。 また,同じ平成3年5月27日に,放電焼結機の中央部にある一対の電極の間に出し入れする装置(ワークローダ)についても,控訴人が被控訴 訴人が特許を受ける権利を有すること等も内容の一部となっていた。 また,同じ平成3年5月27日に,放電焼結機の中央部にある一対の電極の間に出し入れする装置(ワークローダ)についても,控訴人が被控訴- 4 -人に納入する旨の契約が書面によらず成立した。このワークローダに関する契約については契約どおり履行されるとともに,ワークローダの図面原紙は控訴人が所有しており,現に控訴人が所持している。 上記によれば,被控訴人に放電プラズマ焼結機を製造納入する上記平成3年5月27日成立の契約を履行するための控訴人作成の本件訂正図面及び本件部品図面の所有権は控訴人にあることが明らかである。 そして,被控訴人は,平成6年10月7日,図面の修正・加筆の必要がある旨欺いて本件訂正図面と本件部品図面を交付させ,平成7年2月21日ころまでにC等にこれを頒布して放電プラズマ焼結機を製造・販売等させたものであるから,被控訴人の行為は,詐欺,横領に該当するものである。 上記について判断しない原判決は誤りである。 イ次に上記②の点について,本件訴えは,前訴の控訴審の口頭弁論が終結した後である平成20年1月17日に作成された平成19年(ワ)第23459号事件の第3回口頭弁論調書(甲8)により「4(1)被告が本件原,告設計図の原紙(甲1の1はその写し)の原告名称欄を切除して被告名称に改変した事実を原告が知ったのは,平成6年10月14日ころのことである。原告は,当時,被告が原告に対して上記改変後の本件原告設計図の写しを返送してきたことから,それを見て上記の事実を知った。(2)被告が前記改変後の本件原告設計図の原紙(甲16はその写し)及び部品図の原紙(甲1の2~51はそれらの写し)をそれぞれ複製し,C等に頒布した事実を原告が知ったのは,平成7年2月21日ころのことである 告が前記改変後の本件原告設計図の原紙(甲16はその写し)及び部品図の原紙(甲1の2~51はそれらの写し)をそれぞれ複製し,C等に頒布した事実を原告が知ったのは,平成7年2月21日ころのことである」。 との事実を基礎とするものである。そうすると,本件訴えは信義則に反しない。 ウ次に上記③の点については,知財高裁平成20年(ネ)第10040号損害賠償請求控訴事件の判決(甲31)において,被控訴人は,控訴人が本- 5 -件訂正図面に被控訴人が署名欄を切除して改変したのを知ったのは平成6年10月14日ころのころであり,これを複製してCに頒布したこと,控訴人が得べかりし利益を失ったことを知ったのは平成7年2月21日ころのことであるとの抗弁主張をし,判決も消滅時効を認めた。この判決記載の,被控訴人が占有する控訴人の図面一式を複製してCに頒布等した被控訴人の行為は詐欺,横領に該当するものである。 (2)原判決は,前訴の判決(乙1,2)を援用して,詐欺,横領の不法行為の成立を裏付ける証拠等は提出されておらずその成立を認めることはできない旨認定したが,本件訴えは上記(1)のとおりの証拠をもって主張するものであり,原判決は誤りである。また前訴の判決(乙1,2)には,取引基本契約書(甲32)等に関する認定にも誤りがある。 (3)原審がその根拠とした最高裁判所の判例(最高裁平成9年(オ)第849号平成10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1147頁)は,不動産に関する判例であり,これを本件に適用するのは誤りである。また,原判決が本件訴えを却下したのは著しく公平を欠くものである。 (4)原判決第2,1(1)イに「被告は,放電焼結機の設計及び製造を外注して販売することを業として行う株式会社である」とあるが,被控訴人の上申。 書添付の現在事項全 は著しく公平を欠くものである。 (4)原判決第2,1(1)イに「被告は,放電焼結機の設計及び製造を外注して販売することを業として行う株式会社である」とあるが,被控訴人の上申。 書添付の現在事項全部証明書(甲35)によれば,放電焼結機の設計製造販売は登記されていないから誤りである。 (5)また,前訴判決(東京地裁平成18年(ワ)第22355号事件,知財高裁平成19年(ネ)第10015号事件。乙1,2)については,再審事由があり,再審の訴えが知財高裁平成20年(ム)第10004号事件として受理されており,前訴を根拠に本件訴えを却下することは許されない。 被控訴人控訴人の主張はいずれも否認する。控訴人の主張は,前訴の蒸し返しであり,信義則に反する訴えである。 - 6 -なお,控訴人は平成3年5月27日に本件契約成立と主張するが,取引基本契約書(甲32,乙9)の締結日は平成6年1月14日であるからそれ以前に本件契約が締結されたことはない。また,控訴人の作成した図面等の所有権が被控訴人に帰属する根拠は上記取引基本契約に基づくものである。 第4当裁判所の判断 当裁判所も,控訴人の被控訴人に対する本件訴えは,信義則に反し許されないから,不適法な訴えと判断する。その理由は,次の2のとおり付加するほか,原判決記載のとおりであるから,これを引用する。 当審における控訴人の主張に対する判断(1)控訴人は,①として,本件訴えは,前訴の控訴審の口頭弁論が終結した平成19年7月3日の後の平成20年3月25日に終結した東京地裁平成19年(ワ)第23951号損害賠償請求事件の判決の「第2事案の概要」に,「本件は,原告が,被告に対し,平成3年5月27日,原告・被告間において締結された原告代表者設計に係る放電焼結機(以下「本件製品」とい,う)を原 号損害賠償請求事件の判決の「第2事案の概要」に,「本件は,原告が,被告に対し,平成3年5月27日,原告・被告間において締結された原告代表者設計に係る放電焼結機(以下「本件製品」とい,う)を原告が被告に製造納入する旨の契約(以下「本件契約」という)。 ,。 に係る被告の債務」と記載されていることから,平成3年5月27日に控訴人・被控訴人間で締結された契約により本件訂正図面及び本件部品図面の所有権が控訴人にあるものを立証するものであり,前訴との関係で信義則に反するものではない旨主張する。 しかし,上記東京地裁判決の事案の概要の記載は,控訴人の主張に基づき事案の概要を述べたものにすぎず,本件訴えは,本件訂正図面及び本件部品図面についての被控訴人の詐欺・横領が不法行為に該当する旨主張して敗訴した前訴の残部請求であるとの認定を左右するものではなく,また本件訴えを提起することをやむを得ないとする特段の事情(原判決9頁15行,23行~24行)も認められないから,控訴人の上記主張は採用することができない。 - 7 -なお控訴人は,被控訴人の技術本部研究開発部長Aらから放電焼結機の電極の平行度を日本工業規格の2級にできないかとの質問を受けたこと等に関連して甲19(日本工業規格液圧プレスの試験方法及び検査,甲20の)),1,2(特願平2-23962号の特許願及び出願番号通知,甲21の12(特願平2-248085号の特許願及び出願番号通知)等を,ワークローダの納入に関する証拠として甲24(御証明願」と題する書面,平成1「9年3月15日控訴人作成のもの)等の証拠を提出するが,これらも上記認定を左右するものではない。 (2)次に控訴人は,②として,東京地裁平成19年(ワ)第23459号事件の第3回口頭弁論調書(平成20年1月17日,甲8) のもの)等の証拠を提出するが,これらも上記認定を左右するものではない。 (2)次に控訴人は,②として,東京地裁平成19年(ワ)第23459号事件の第3回口頭弁論調書(平成20年1月17日,甲8)には「…4(1)被,告が本件原告設計図の原紙(甲1の1はその写し)の原告名称欄を切除して被告名称に改変した事実を原告が知ったのは,平成6年10月14日ころのことである。原告は,当時,被告が原告に対して上記改変後の本件原告設計図の写しを返送してきたことから,それを見て上記の事実を知った。(2)被告が前記改変後の本件原告設計図の原紙(甲16はその写し)及び部品図の原紙(甲1の2~51はそれらの写し)をそれぞれ複製し,C等に頒布した事実を原告が知ったのは,平成7年2月21日ころのことである」との。 記載があり,控訴人はこの事実を基礎とする本件訴えは信義則に反しない旨主張する。 上記口頭弁論調書は,控訴人主張のとおり,東京地裁民事第46部A係裁),判所書記官作成の平成20年1月17日付けファクシミリ送信書(甲29平成20年1月19日控訴人代表者(X)作成の「調書記載事項(案)確認(甲30)を考慮して作成されたものであるとしても,上記調書の記載」は控訴人の主張内容を記載したものにすぎず,本件訴えが前訴の残部請求であるとの認定を左右するものではなく,また本件訴えを提起することをやむを得ないとする特段の事情に当たるとも認められない。控訴人の上記主張は- 8 -採用することができない。 (3)次に控訴人は,③として,知財高裁平成20年(ネ)第10040号損害賠償請求控訴事件において,控訴人が本件訂正図面に被控訴人が署名欄を切除して改変したのを知ったのは平成6年10月14日ころのころであり,これを複製してCに頒布したこと,控訴人が得べかりし利益を 損害賠償請求控訴事件において,控訴人が本件訂正図面に被控訴人が署名欄を切除して改変したのを知ったのは平成6年10月14日ころのころであり,これを複製してCに頒布したこと,控訴人が得べかりし利益を失ったことを知ったのは平成7年2月21日ころのことであるとの抗弁を被控訴人が主張し,判決(甲31)もこの消滅時効の抗弁を認めたものであるところ,この判決に記載された被控訴人が占有する控訴人の図面一式を複製してCに頒布等した被控訴人の行為は,詐欺・横領に該当する旨も主張する。 しかし,上記判決(甲31)も,被控訴人の消滅時効の抗弁を容れて控訴人の設計図の著作権侵害の主張を排斥したものにすぎず,これも本件訴えが前訴の残部請求であるとの認定を左右するものではなく,また本件訴えを提起することをやむを得ないとする特段の事情に当たるとも認められないから,控訴人の主張は採用することができない。 (4)次に控訴人は,原判決は前訴の判決(乙1,2)を援用し,詐欺,横領の不法行為の成立を裏付ける証拠等は提出されておらずその成立を認めることはできない旨認定したが,本件訴えは上記のとおりの証拠をもって主張するものであり,また前訴の判決(乙1,2)の取引基本契約書(甲32)等に関する認定にも誤りがある旨主張する。 しかし,控訴人の主張する前記①・②・③の判決又は調書は,いずれも控訴人の主張内容ないしこれを援用する被控訴人の主張等を記載したものにすぎず,本件訴えが前訴の残部請求であるとの認定を左右するものではなく,また本件訴えを提起することをやむを得ないとする特段の事情であるとも認められないから,控訴人の上記主張は採用することができない。 (5)次に控訴人は,原審がその根拠とした最高裁判所の判例(最高裁平成9年(オ)第849号平成10年6月12日第二小法廷判決・民集5 も認められないから,控訴人の上記主張は採用することができない。 (5)次に控訴人は,原審がその根拠とした最高裁判所の判例(最高裁平成9年(オ)第849号平成10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1- 9 -147頁)は,不動産に関する判例であり,これを適用するのは誤りであり,また本件訴えを却下したのは著しく公平を欠く旨も主張するが,上記判例は本件と同じく金銭債権に関する判例であり,本件事案に適切であるから,控訴人の上記主張は採用することができない。 (6)次に控訴人は,原判決第2,1(1)イに「被告は,放電焼結機の設計及び製造を外注して販売することを業として行う株式会社である」とあるが,。 被控訴人の上申書添付の現在事項全部証明書(甲35)によれば,放電焼結機の設計製造販売は登記されていないから誤りである旨主張する。 しかし,弁論の全趣旨によれば,被控訴人が放電焼結機の設計及び製造を外注して販売することも業として行う株式会社であることが認められる(なお,上記甲35には,その目的17号に「その他前各号に附帯又は関連する事業」も会社の目的である旨の記載がある)から,控訴人の上記主張は採用することができない。 (7)さらに控訴人は,前訴判決(乙1,2)については,再審事由があり,再審の訴えが知財高裁平成20年(ム)第10004号事件として受理されており(甲18の1ないし4,前訴を根拠に本件訴えを却下するのは許され)ない旨主張するが,原判決が説示(10頁22行~24行)するとおり,再審の訴えを提起したこと自体が本件訴えを提起することがやむを得ないとする事情には当たらないから,控訴人の上記主張は採用することができない。 結語以上によれば,控訴人の被控訴人に対する本件訴えは,信義則に反する不適法なものとして却下すべきであり, やむを得ないとする事情には当たらないから,控訴人の上記主張は採用することができない。 結語以上によれば,控訴人の被控訴人に対する本件訴えは,信義則に反する不適法なものとして却下すべきであり,これと結論を同じくする原判決は相当である。 よって,控訴人の本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部- 10 -裁判長裁判官中野哲弘裁判官今井弘晃裁判官清水知恵子

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