平成17(ワ)145 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成20年11月18日 福島地方裁判所 棄却
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判決文本文27,214 文字)

主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求被告らは,連帯して,原告Aに対し3億4553万3440円,原告Bに対し660万円,及びこれらに対する平成14年7月13日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告A(以下「原告A」という)が,被告Cが設置するD高等学。 校(以下「D高校」という)の校舎内において意識を失い,その後被告医療。 法人E(以下「被告E」という)が開設するF病院(以下「被告病院」とい。 う)において,同病院の医師である被告G(以下「被告G」という)及び。 。 被告H(以下「被告H」という)による診療を受けたが,ウイルス性脳炎に。 よる後遺障害を負ったことについて,被告医師らが原告Aのヘルペス脳炎の可能性を認識し得たにもかかわらず,ヘルペス脳炎であるかについて確実な鑑別のための検査をして,治療を開始しあるいは高次医療機関に転院させる義務を怠った結果,原告Aが重篤な後遺障害を負うこととなった,また,D高校の教職員が原告Aが意識を失ったときの状況等,診断に有益と考えられる諸情報を病院等に正確に伝達するなどの安全配慮義務を怠ったことも,そのような事態,(「」に至った一因であるとして原告A及び同人の母である原告B以下原告Bという)が,被告らの行為により被った損害の賠償として被告Cに対し国家。 賠償法1条1項に基づき,被告Eに対し民法715条による使用者責任又は診療契約の債務不履行責任に基づき,被告H及び被告Gに対し不法行為責任に基づき,それぞれ連帯して,原告Aに対し3億4553万3440円,原告Bに対し660万円及びこれらに対する被告Eの診療行為の終了日である平成14 年7月13日から支払済みまで民法所定 法行為責任に基づき,それぞれ連帯して,原告Aに対し3億4553万3440円,原告Bに対し660万円及びこれらに対する被告Eの診療行為の終了日である平成14 年7月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 前提事実(争いがないか掲記の証拠により容易に認められる事実。以下,原則として,平成14年の出来事は月日のみで表示する)。 (1)当事者原告Aは,平成14年7月当時,D高校3年に在学していた者である。 原告Bは,原告Aの母であり,原告Aの成年後見人である。 被告Cは,D高校を設置し管理する普通地方公共団体である。 被告Eは,福島県本宮市ab番地所在の被告病院を開設している医療法人であり,被告病院は,精神科単科の病院である。被告H及び被告Gは,被告病院に勤務し,原告Aを診察,治療した医師である(以下,被告E,被告H及び被告Gをあわせて「被告Eら」という。 。)(2)経過ア原告Aは,7月9日,D高校の授業を欠席した。この際,D高校には,原告Aが風邪で休むとの連絡があった(弁論の全趣旨)。 原告Aは,同月10日,D高校に登校したが,同校舎内3階廊下で気を失って倒れ,午前8時45分ころ,担架で同校保健室に運ばれた。同校からの連絡を受けた原告Bは,同日午前9時ころ,同校保健室に到着した。 ,(。 「」。),当時同校の養護教諭であったI旧姓J以下J教諭というは原告Bに対し,原告Aが廊下で気を失っていたことを説明し,病院での受診を勧めた。 イ7月10日のK病院での診察状況等原告Aは,原告Bとともに,福島県本宮市cd所在の総合病院である医療法人K(以下「K病院」という)に行き,診察を受けた。原告Aは,。 頭部CTの検査結果に異常はなく,K病院内科医師L(以下「L医師」と 告Aは,原告Bとともに,福島県本宮市cd所在の総合病院である医療法人K(以下「K病院」という)に行き,診察を受けた。原告Aは,。 頭部CTの検査結果に異常はなく,K病院内科医師L(以下「L医師」という)から点滴やボルタレン坐薬の投薬を受けるなどして,午後1時3。 0分ころ帰宅し,夕方には熱が下がった。 ウ7月11日のK病院での診察状況等原告Aは,午前4時ころに起床し,学校へ行くなどと言って入浴した。 その後,原告Aは,原告Bによって寝かせられたが,午前7時ころ,再度起床し,学校へ行くなどと言った。 同日,D高校は台風により休校となり,原告らは,避難勧告を受け,避難所である小学校に避難した。原告Aは,避難所で興奮して大声を出すなどし,原告BらによりK病院に連れて行かれ,同病院内科において,セルシン,フェノバールの注射を受けたが,十分な効果はなかった。 エ7月11日午前の被告病院初診時の診察状況原告Aは,午前11時ころ,L医師の紹介により,原告Bとともに,被告病院に来院した。被告Gは,傷病名として「#1興奮状態#2発熱」と記載されたL医師作成の紹介状(甲A1)を読んだ上,原告Bから前日の経過を聴取するなどし,また,来院時には落ち着いてきていた原告Aに対し,問診を行った。この際,原告Aは,意思の疎通性は良好であり,会話も正常で,言葉の流れも内容も円滑で妥当なものであり,興奮や不穏等の状態は認められず,ベッドに臥床したまま穏やかに話しており,幻聴や妄想も認められなかった。そのため,被告Gは,症状の再燃時には身体科の病院を受診するよう原告Bに話し,午前11時35分ころ,原告Aを帰宅させ,同日付けのL医師への返信(甲A1)には「一過性の心因反応,,。」。 と思われますが髄膜炎の可能性はいかがでしょうかなどと記載したオ被告病 話し,午前11時35分ころ,原告Aを帰宅させ,同日付けのL医師への返信(甲A1)には「一過性の心因反応,,。」。 と思われますが髄膜炎の可能性はいかがでしょうかなどと記載したオ被告病院入院時の経過(ア)7月11日その後,原告Aの症状が再燃したため,原告Bは,K病院に連絡したが,同病院からは被告病院を受診するよう勧められた。そこで,原告Aは,午後4時ころ,原告Bとともに,被告病院の外来を受診したが,被 告Gによる診察の際「部活に行かないといけない「すぐそこで吹奏,。」楽が聞こえる「行かないといけないのがわからないのか「何度も。」。」同じことを言わせるな「呼んでいる声が聞こえる。行かなくては」。」。 などと大声で支離滅裂な訴えをし,大興奮状態にあった。被告Gは,原告Aに対し,鎮静剤としてヒルナミンの筋肉注射を実施したが,原告Aは幻覚妄想状態にあったため,親権者である原告Bの同意による医療保護入院とされた。 原告Aは,午後4時30分ころ,看護師4名に付き添われ,歩いて被告病院に入院した。この際,原告Aは興奮が著しく「部活に行くって,。」,ってんのが分かんねえのかなどと支離滅裂なことを大声で叫んだり一転して「お母さん,こんな私でごめんね」と涙ぐんだりし,情動が。 不安定な状態であった。原告Aは,被告Gや看護師からの説明に対しては「はいわかりました」と返答したが,態度は拒絶的で,不穏,興,。 奮が著しい状態が持続していた。被告病院においては,保護及び医療の必要性から,原告Aを保護室に収容した上,四肢体幹を抑制し,精神症状を改善する目的で抗精神病薬1日分を処方した。この時点の入院診療計画には病名「統合失調症の疑い」との記載がある。 原告Aは,午後4時50分ころ,体温37.4度であり,勧めにより吸い 抑制し,精神症状を改善する目的で抗精神病薬1日分を処方した。この時点の入院診療計画には病名「統合失調症の疑い」との記載がある。 原告Aは,午後4時50分ころ,体温37.4度であり,勧めにより吸い込みで水を飲んだ。原告Aは,午後5時ころ,介助により夕食をほぼ全量摂取し,午後7時ころには「部活に行かなくちゃ」と何度も言うなど多弁であり,抑制帯を気にして両手を動かすなどしていた。 午後8時ころ,看護師から就眠前薬であるヒルナミンを勧められたのに対し,原告Aは「さっき飲みましたよ」と答えたが,スムーズに,。 内服した。原告Aは,このときも多弁で,まとまりのない話をした。 原告Aは,午後8時40分ころ,体温が37.7度であり,アイスノ,「。」「,ンを貼付されたが熱また出たんですかきのうも部活休んだのに まじで」などと話し,病院にいるということは分かっていない様子で。 あった。原告Aは,午後9時40分ころ「ここの下はホテル,旅館」,などと大きな声で独り言を言い,他の患者の奇声に笑ったり「合唱部,ですね」と言って笑ったりしていたが,その後入眠した。 。 (イ)7月12日午前1時ころ,原告Aの体温は37.4度であった。 原告Aは,午前4時10分ころ,大声を出し,そのため病室に行った看護師に対し「開けないでー」と言った後,多弁で,支離滅裂なこ,。 とを言い,また抑制帯を気にして「ここを取って下さい」と言った。 。 ,,,. 原告Aは午前6時40分ころ覚醒したがそのときの体温は366度であり,時々大声を上げ泣き声を出したかと思うと普通に話したりし,感情の抑制が不能な状態であった。このころ,原告Aは,介助を受けて水150ミリリットルを摂取した。 原告Aは,午前9時ころ,被告Hの診察を受け,看護師に対し「こ,こに来るはずじゃな に話したりし,感情の抑制が不能な状態であった。このころ,原告Aは,介助を受けて水150ミリリットルを摂取した。 原告Aは,午前9時ころ,被告Hの診察を受け,看護師に対し「こ,こに来るはずじゃなかった」と話し,被告Hに対し「何がなんだか。 ,わからない。今は聞こえないが,前は楽器の音やら,人の声やらいろいろ聞こえてきた」などと話し,熱があるようなので点滴をするとの被。 告Hによる説明に対し「はい」と小声で答え,服薬し,アイスノン,。 による冷却処置を受けた。このときの原告Aの体温は37.9度,脈拍は1分あたり120回であり,穏やかな状態であった。また,原告Aに尿意がないため,入院時検査のための採尿は延期された。 原告Aは,午前9時30分ころ,洗面し,介助を受けて朝食の約3分の2を摂取したが,食事中に入眠してしまう状態であった。 午前10時ころ,原告Aに対し,検査のための採血と導尿による採尿。 ,,,,を実施したこの際原告Aは多弁で支離滅裂に話し感情失禁をし泣いたり笑ったりしていた。 午前10時45分ころ,抗生剤であるペントシリンのテストの結果,アレルギー反応が認められたことから,ペントシリンの使用を中止し,抗生剤としてホスミシンを使用することとなった。原告Aは,閉眼していたが,水50ミリリットルを摂取した。 原告Aは,午前10時50分ころ,被告Hの診察を受け「6組の先,生ですね「1個しかないのにばれてしまいました」などとつじつま。」。 の合わないことをを話した。被告Hは,原告Aに,楽器の音の幻聴があること,頭痛や吐き気,頚部硬直がないことを確認した。 午前11時ころ,原告Aの血液及び尿検査の結果が判明した。血液検査の結果は,CPKが420IU/l,カリウム2.9mEq/l,血糖値120mg/dl,白血球数 吐き気,頚部硬直がないことを確認した。 午前11時ころ,原告Aの血液及び尿検査の結果が判明した。血液検査の結果は,CPKが420IU/l,カリウム2.9mEq/l,血糖値120mg/dl,白血球数9400/㎜,尿検査の結果は,蛋 白±,ウロビリノーゲン+,ケトン体+++などというものであった。 また,服薬する向精神薬がセルシン,セレネース,テグレトール等に変更された。 原告Aは,午前11時30分から午後1時30分までの間,ポタコールR,ホスミシン及びセレネースの点滴を受けた。原告Aは,午後1時30分,昼食を少量摂取し,薬を飲んだが,時々独り言を言っていた。 午後1時45分,原告Aの体温は37.9度,脈拍は1分あたり120回であった。午後1時50分ころ,被告Hは,原告Aの胸部を聴診したところ,肺雑音はなかった。 原告Aは,午後3時から午後6時30分までの間,ポタコールR及びホスミシンの点滴を受けた。被告Hが午後3時ころに原告Aを診察した際,原告Aは「マー君と私は同級生「それ一番嫌いなこと「写メー,」」」,,,ルの電話などととりとめのないことを話しながら大声を出したり泣き出したりする状態であった。 午後4時ころ,原告Aの体温は37.6度であり,多量の排尿,顔面 ,。 ,紅潮熱感が認められた被告Hが午後4時ころに原告Aを診察した際原告Aの体温は38度,血圧は収縮期120,拡張期84であったことから,被告Hは,原告Aに対し,解熱剤であるボルタレン坐薬を投与した。 原告Aは,午後5時ころ,看護師の声かけに対し,閉眼したまま「食べる」と答え,介助により夕食を主食,汁物ともに3,4口ずつ摂取。 し,食後に薬を服用した。 原告Aは,午後6時ころ,傾眠傾向にあったが,看護師から検温することを伝えられると「ハーイ」と返答した。 べる」と答え,介助により夕食を主食,汁物ともに3,4口ずつ摂取。 し,食後に薬を服用した。 原告Aは,午後6時ころ,傾眠傾向にあったが,看護師から検温することを伝えられると「ハーイ」と返答した。このとき,原告Aの体温は37.5度であった。 原告Aは,午後8時ころ,眠剤をスムーズに服用した。 (ウ)7月13日,,. ,原告Aは朝まで入眠しており午前5時ころの体温は368度で少量の痰のからみが認められた。原告Aは,午前6時30分ころ,看護師の声かけに反応していたが,その内容はよく聞き取れないものであった。原告Aは,午前8時ころ,看護師の声かけに開眼するも,すぐに目を閉じて入眠した。 ,,,午前8時20分ころ原告Aの鼻孔から淡緑色の喀痰がみられ鼻腔口腔から粘稠喀痰の吸引を行った。このとき,原告Aの血圧は,収縮期108,拡張期64であった。 被告病院は,午前8時30分ころ,原告ら方に電話を掛けたが,連絡が取れず,その後も,原告Bに対し,繰り返し電話を掛けたものの,連絡が取れなかったため,同日午前9時30分ころまでの間に,原告ら方の留守番電話に折り返し電話をしてほしい旨録音した。 被告Hは,午前8時40分ころ,原告Aを診察した。このときの原告Aの体温は36度台であり,対光反射は迅速で,バビンスキー反射も問 題なく,胸部の聴診による肺雑音は認められなかった。しかし,原告Aの意識レベルは低下した状態であったため,被告Hは,原告Aを福島県二本松市ef番地所在の医療法人M(以下「M病院」という)に紹介す。 ることにした。 被告Hは,午前9時ころ,看護師らに対し,原告Aに対する抑制の解除,朝の投薬及び予定していた点滴の中止を指示した。午前9時30分ころ,原告Aの体温は37.2度,血圧は収縮期130,拡張期90,脈拍は1分あたり12 時ころ,看護師らに対し,原告Aに対する抑制の解除,朝の投薬及び予定していた点滴の中止を指示した。午前9時30分ころ,原告Aの体温は37.2度,血圧は収縮期130,拡張期90,脈拍は1分あたり120回であり,痛覚反応が+,呼名反応が±であるなど,意識の低下が認められた。 被告病院は,午前9時40分ころ,M病院に対し,電話で原告Aの診察を依頼し,原告Aを出発させた。その際,原告Aは,閉眼しているものの,声掛けに対し,小さな声で反応していた。 カM病院での診察経過等(乙A4)原告Aは,7月13日午前10時20分,M病院で診察を受け,精査及び身体管理のために同病院に入院した。 同病院脳神経外科医師は,入院時,原告Aに意識障害(意識レベル日本式昏睡尺度(JCS)で300)及び低酸素血症があることを認め,気管内挿管し,呼吸管理を行うこととした。原告Aは,入院時検査において,CTでは明らかな異常はなかったが,頭頂の脳溝の抽出が不良で静脈洞血栓症も疑われたため,脳血管撮影を施行した。その結果,明らかな静脈洞閉塞はなかったが,頭頂側の静脈循環遅延も疑われ,ウロキナーゼ,ラジカット,抗生剤を投与した。 同病院医師は,原告Aに7月14日朝から38度の発熱があることや,血液検査の結果,CRP値の上昇を認めたことから,γ-グロブリンの投与を開始した。 原告Aは,7月15日午前9時50分及び午後2時ころ,全身性けいれ んを起こした。MRI検査では異常はなかったが,同日実施した髄液検査の結果は,細胞数163/3(リンパ球153,蛋白定量49mg/d),,。 ,l糖定量68mg/dlでありウイルス感染所見があったこのため同病院医師は,ウイルス性脳炎の疑いにより,原告Aを,福島市gh番地所在のN病院(以下「N病院」という)の神経内科に紹介することと l糖定量68mg/dlでありウイルス感染所見があったこのため同病院医師は,ウイルス性脳炎の疑いにより,原告Aを,福島市gh番地所在のN病院(以下「N病院」という)の神経内科に紹介することとし。 た。 原告Aは,同日午後5時45分ころ,N病院に転院した。 キN病院での診療経過等(乙A5)(ア)原告AがN病院に転院した際,意識レベルはJCSで300,脳幹反射はすべて消失しており,弱い自発呼吸が認められる状態であった。 N病院神経内科医師は,髄液所見のほか,経過とあわせて,原告Aにつ,,。 き重症のウイルス性脳炎と診断しICUの管理下に置くこととした原告Aは,同月23日に一般病棟に移った。 その後,ウイルス性脳炎の病因に関し,原因ウイルスの特定には至らなかった。 (イ)N病院神経内科医師O作成の入院総括の記載入院までの経過として「2002年7月10日朝から37度台の発熱と悪心が出現した。学校で白目をむき,泡を吹いて倒れ,頭部を打撲した。K病院を受診しCTを受けたが『異常なし』と言われて帰宅した。 ,,,,,,。 鼻汁咳咽頭痛呼吸困難耳痛腹痛腰痛などの症状はなかった,,,。 翌11日早朝から幻覚妄想興奮が出現しF病院精神科を受診した統合失調症と診断され,同院に入院した」との記載がある。 。 ク原告Aは,12月16日,M病院に転院し,ウイルス性脳炎による遷延,,。 性意識障害症候性てんかんの病名で現在も同所において入院中である(甲A5) 争点 本件における争点は,被告G又は被告Hによる原告Aに対する診療行為において注意義務違反があるか,また,同義務違反と原告Aの後遺障害との因果関係があるか(争点1,D高校の教職員の生徒に対する安全配慮義務違反があ),,(),るかまた同義 対する診療行為において注意義務違反があるか,また,同義務違反と原告Aの後遺障害との因果関係があるか(争点1,D高校の教職員の生徒に対する安全配慮義務違反があ),,(),るかまた同義務違反と原告Aの後遺障害との因果関係があるか争点2被告らに原告らに対する損害賠償責任が認められる場合にその損害額はいくらか(争点3)という点にある。 (1)争点1(被告Eらの注意義務違反及び原告Aの後遺障害との因果関係)について(原告らの主張)被告G及び被告Hには,原告Aの担当医師として原告Aに対して,下記アないしウのとおりの注意義務違反があり,原告らが被った損害を賠償する責任がある。また,被告Eは,被用者である被告G及び被告Hの過失による不法行為について民法715条による使用者責任又は原告Aとの診療契約に基づき履行補助者である被告G及び被告Hの過失による注意義務違反について債務不履行責任を負う。 ア被告Gの7月11日午前11時30分ころの鑑別義務違反原告Aには,7月8日から38度台ないし39度台に発熱,同月7日から頭痛,同月11日以降に異常行動をしていたこと,同月10日にD高校で倒れた際,白目をむき,口から泡を吹いて倒れ,頭部を打撲しておりけいれん発作を起こしていたこと,同日には悪心,同月11日午前11時ころには記憶障害の症状が存在していた。 これらのうち,被告Gは,7月11日午前11時30分ころには,原告Aの発熱,異常行動,記憶障害を認識し,頭痛,けいれん発作の存在や悪心については認識可能であった。 原告Aは,遅くとも7月10日にはウイルス性脳炎に罹患していたと考えるべきであるところ,異常行動等の精神症状が認められる患者において は,異常行動が現れた時期の前後も含めて,発熱や頭痛などの髄膜刺激症状の有無を確認すべき注意義務があ 性脳炎に罹患していたと考えるべきであるところ,異常行動等の精神症状が認められる患者において は,異常行動が現れた時期の前後も含めて,発熱や頭痛などの髄膜刺激症状の有無を確認すべき注意義務があるが,その結果,発熱や頭痛などの症状が認められた場合,ヘルペス脳炎の可能性が高まることから,確実な鑑,,,。 別のためにCTMRI脳波検査髄液検査などの検査をすべきであるしかし,被告Gは,受診当日及び異常行動の現れた時期の前後における原告Aのけいれんの有無や頭痛などの症状の有無を十分問診したり,D高校への転倒状況についての照会やK病院への問診状況や投薬状況についての照会をしたりすることなく,受診時の原告らからの聴取内容及び原告Aの診察時の行動だけから,直ちにヘルペス脳炎の鑑別のための検査ないしそのための転院の措置を講ぜず,髄膜炎の可能性を認識しながらも,経過,,,観察とし原告Aを帰宅させているのであるからヘルペス脳炎について十分な問診・照会等をせず,その上で鑑別に必要な検査を行わなかった,あるいは,それが可能な病院へ転院させなかったという注意義務違反がある。 イ被告Gの7月11日午後4時ころの鑑別義務違反仮に,被告Gに上記ア記載の過失がないとしても,同日午後4時ころには,原告Aに明らかな幻覚・妄想等の異常行動等の精神症状が認められていたから,上記ア記載の症状をも併せ考慮すれば,被告Gには,ヘルペス脳炎について,十分な問診・照会等をせず,その上で鑑別に必要な検査を行わなかった,あるいは,それが可能な病院へ転院させなかったという注意義務違反がある。 ウ被告Hの7月11日午後4時から同月12日午前11時ころまでの間の鑑別義務違反被告Gの同月11日の診療に関与し,少なくとも,同月12日午前11時ころ原告Aを診察した被告Hは 意義務違反がある。 ウ被告Hの7月11日午後4時から同月12日午前11時ころまでの間の鑑別義務違反被告Gの同月11日の診療に関与し,少なくとも,同月12日午前11時ころ原告Aを診察した被告Hは,それまでの被告Gの診療結果を確認した上で,同一の診断・治療方針のもとに診療にあたっていたと考えられる ので,上記イと同様の注意義務違反がある。 エ因果関係本件において,医学的に原因ウイルスがヘルペス性のものであると特定,,できないとしてもウイルス性脳炎の中で単純ヘルペス脳炎が多数を占め原告Aの予後が現に不良であったことから,原告Aがヘルペス脳炎に罹患していた可能性が高い。そして,ヘルペス脳炎に対する抗ウイルス薬投与の効果は明らかであるから,かような可能性をもって被告病院の医師の過失と原告Aの後遺症との間に相当因果関係を認めることができる。 仮に,ヘルペス脳炎に罹患していた可能性が高いとまではいえないとしても,非ヘルペス脳炎であっても,意識障害が進行する前に抗ウイルス薬を投与した場合に予後が良好である研究例が複数ある事実をも併せ考慮すると,7月11日あるいは12日ころに抗ウイルス薬が投与されていれば重度の後遺症を残さなかった蓋然性が高いと認められるから,相当因果関係は認められるべきである。 (被告Eらの主張)ア原告らの義務違反の主張について(ア)被告病院医師らは,原告らに原告Aの発熱状況,統合失調症に関する家族歴,精神病院入院歴などについて問診し,髄膜炎等の可能性も排除せず原告Aの病状を検討しているが,K病院における身体疾患のスクリーニングを受けても異常所見は見当たらず,被告病院の通院,入院中に髄膜炎等の中枢神経感染症を示す明らかな所見は認められなかったのであるから,被告病院において直ちに髄液検査等を実施すべき義務は認められ ニングを受けても異常所見は見当たらず,被告病院の通院,入院中に髄膜炎等の中枢神経感染症を示す明らかな所見は認められなかったのであるから,被告病院において直ちに髄液検査等を実施すべき義務は認められない。 また,7月13日朝には,被告Hの診察により,原告Aは解熱してい,,るものの意識レベルの低下が認められたことから同日午前10時ころM病院に原告Aを転送しており,転院も適切であった。 原告らは,原告Aが遅くとも7月10日にはウイルス性脳炎に罹患していたと主張するが,その医学的根拠は不明である。 (イ)原告らが主張するような鑑別のための検査が必要な場合,被告病院には当時CT等の検査機器がなかったことから,被告病院としては検査等が可能な病院へ転送させることになる。 しかし,原告Aは,7月10日及び11日に身体疾患に関する専門性を有するK病院において問診,頭部CT等の検査を経た結果,脳炎ではなく精神疾患を疑われて,被告病院に転院されているのであって,このように転送を受けた被告病院としては,その診察時において特段の症状の発生や疑問が認められなければ,前医の診断内容や判断を信頼するほかない。被告Gは,7月11日午前11時ころの診察において,原告Bに対し,症状が再燃したり,発熱したときは身体科の病院を受診するよう説明し,同日午後4時ころの症状再燃時に,原告BがK病院に連絡をしたが被告病院を受診するよう勧められ,被告病院に来院しているという経緯もある。 そして,被告病院医師は,かようなK病院での診断結果などをも踏まえ,精神疾患を中心に,しかし身体疾患の可能性も除外せず鑑別のための観察と診療を行っていたところ,7月11日午前11時の時点での原告Aの症状はむしろ軽快傾向にあり,若干の見当識障害は認められたものの,興奮・妄想などもなく積極的に脳炎を 可能性も除外せず鑑別のための観察と診療を行っていたところ,7月11日午前11時の時点での原告Aの症状はむしろ軽快傾向にあり,若干の見当識障害は認められたものの,興奮・妄想などもなく積極的に脳炎を疑う根拠は認められなかったし,同日午後4時ころの時点では,原告Aは幻覚妄想状態で支離滅裂な訴えが聞かれたが,このときにも特段の髄膜刺激症状等は認められなかったのであるから,検査治療等を開始し,あるいは,検査等が可能である病院に転院させる義務はない。 もとより,本件のウイルス性脳炎は,K病院のみならず,被告病院からの転院先であるM病院でもその入院当初はウイルス性脳炎の診断治療 をしていないことなどに照らすと,鑑別が極めて困難な症例であったということができ,7月11日の時点において,原告Aが脳炎に罹患していると疑うべき状況がみられていなかったことは明白である。 なお,原告らは,被告Hについて,7月11日午後4時ころからの鑑別義務違反を主張するが,被告Hは同月12日午前9時に原告Aを診察するまで,原告Aの診察・診断に関与していない。 (ウ)原告らは7月10日の原告Aの転倒状況等についてD高校に照会すべき義務があるなどと主張するが,被告病院医師は,K病院からの情報提供を受けるに当たり,特段の事情がない限り重要な情報は記載されているものと信頼でき,また,診察に当たっては,患者自身や付添者から症状等を聞けば足りるのであって,本件においては,7月10日の原告Aの転倒状況等についてD高校等に問い合わせをすべき例外的な場合にはあたらず,十分な問診や照会等をしているというべきである。 (エ)原告らが主張する原告Aの被告病院受診時の症状についてK病院の診療録には7月7日ころから頭痛があったとの記載はあるが,同月10日,11日に受診のK病院からの情報提供には頭痛 というべきである。 (エ)原告らが主張する原告Aの被告病院受診時の症状についてK病院の診療録には7月7日ころから頭痛があったとの記載はあるが,同月10日,11日に受診のK病院からの情報提供には頭痛があったとする情報はなく,被告病院での問診中も頭痛を訴えたことも頭痛時の表情が見られたこともない。また,K病院受診時はもちろん各病院での診療中いずれも悪心の症状は見られない。原告Aの7月10日の転倒,,時にけいれん発作があったとの原告らの主張は根拠に乏しく原告Aは7月15日午前9時50分に初めてけいれん発作を起こしたものである。 この点,N病院O医師作成の入院総括(乙A5)には「7月10日,朝から37度台の発熱と悪心が出現した。学校で白目をむき,泡を吹いて倒れ,頭部を打撲した」といった記載があるが,もとよりこれは原。 告AのN病院退院時に作成された書面であり,後方視的な見地から記載 された書面である上,K病院の紹介状や診療録にはもちろん,M病院か「,,らN病院への紹介状にも悪心とか学校で白目をむき泡を吹いて倒れ頭部を打撲した」といった記載はなく,K病院の診療録にはけいれん。 やてんかんの存在を否定する記載があり,さらに被告病院での原告らからの問診でもかような事実を聞き取ることはなかったのであり,N病院での診療録の記載内容等にも照らすと,発熱が7月10日より前に存在したことのほかは,誤記または不正確な情報というべきである。 イ因果関係(ア)抗ウイルス薬投与の効果ウイルス性脳炎のうち,抗ウイルス薬はヘルペス脳炎にのみ有効であり,その他の脳炎では原則として無効であって,対処療法によらざるを得ない本件においては,そもそもウイルス性脳炎の原因となったウイルスが同定できず,また原告らが主張する単純ヘルペス脳炎の可能性は低い。しか の他の脳炎では原則として無効であって,対処療法によらざるを得ない本件においては,そもそもウイルス性脳炎の原因となったウイルスが同定できず,また原告らが主張する単純ヘルペス脳炎の可能性は低い。しかも,非ヘルペス脳炎である場合はもちろん単純ヘルペス脳炎であったとしても,抗ウイルス薬の投与の有効性が判然としないのであるから,仮に被告病院の医師に鑑別について過失が認められたとしても,原告Aの後遺症との因果関係を認めることができない。 原告らは,原告Aが非ヘルペス脳炎に罹患した場合についての因果関係の存在を主張しているが,そもそも非ヘルペス脳炎であることを前提とした過失の主張がない以上,因果関係は問題とならないし,もとより当時非ヘルペス脳炎の場合でも抗ウイルス薬を投与すべきであるとの医学的知見は一般化していなかった。 また,抗ウイルス薬投与は早いほうがよいとしても,本件では抗ウイ,,ルス薬の投与がN病院に転院時に開始されている事実からすれば仮に7月11日に鑑別診断ができるM病院に転送しても,髄膜刺激症状が顕在化していない原告Aの症状から早期に抗ウイルス薬の投与が開始され たといえるか疑問であって,早期の転送によって現在の原告Aの症状が生じなかったことを根拠付けることはできない。 原告Aが罹患した脳炎は,後医であるN病院においても,9月26日の診療録に「これまで経験のない症状の脳炎であり,脳炎の概念を広げて考えるべきかもしれない」とあるように,脳炎の症状自体が重篤で,予後に多大な影響を与えた可能性が極めて高い。 (イ)前後に診療をした病院の過失の存在原告らの主張を前提にすれば,K病院に十分な問診と鑑別診断をせずにウイルス性脳炎の診断をしなかった過失と原告Aを精神科病院である被告病院に転送した際,転送先に不正確な情報を提供したことによって 存在原告らの主張を前提にすれば,K病院に十分な問診と鑑別診断をせずにウイルス性脳炎の診断をしなかった過失と原告Aを精神科病院である被告病院に転送した際,転送先に不正確な情報を提供したことによって,,被告病院が原告Aの症状を正確に把握することを困難にした過失またM病院に十分な問診と鑑別診断をせず7月15日までウイルス性脳炎を疑わなかったことにより,原告Aに対する治療が遅れた過失,N病院に同病院入院中に生じた高熱・けいれん発作を止められなかった過失がそれぞれ認められ,それらにより本件結果が生じたとも考えられるから,仮に被告らに過失があるとしても,独立した前医・後医の行為によって生じた結果については責任を負うものではない。 ()() 争点2被告Cの安全配慮義務違反及び原告Aの後遺障害との因果関係(原告らの主張)ア原告Aが倒れD高校を出発するまでの事実経過D高校では,7月8日以前から,原告Aが38度前後の高熱があることを把握していた。 また,原告Aが同月10日に倒れたときの状況について,D高校では,,,原告Aが仰向けに倒れ口元に少量の唾液が泡状になっているものを認め呼びかけに返答がないといった認識をもっており,さらに原告Aが学校で白目をむき,泡を吹いて倒れ頭部を打撲したという目撃情報もあったもの と考えられる。このような状況からすれば,当時原告Aにはけいれん発作が起こっていたと考えられる。 なお,被告Cは,7月10日の原告A転倒時に認識していた情報は,原告Bを通して医療機関に伝達されているなどと主張するが,原告Bが同日D高校で原告Aを引き取った際,原告Aが口から泡を出していたとの説明は受けていない。 イ被告Cの責任被告Cは,D高校の管理責任を負う者として,同校生徒に対し安全配慮義務を負い,この義務を履行補助 D高校で原告Aを引き取った際,原告Aが口から泡を出していたとの説明は受けていない。 イ被告Cの責任被告Cは,D高校の管理責任を負う者として,同校生徒に対し安全配慮義務を負い,この義務を履行補助者が怠ったという過失があるので,国家賠償法1条1項によりこれを賠償すべき義務がある。 すなわち,上記ア記載のような重い疾患の疑いのある原告Aの症状を認めた場合,学校としては,単に両親等の保護者に連絡を取り,保護者に引,,き渡せば足りるのではなく自ら病院等の医療機関に搬送する措置を取り診断に有益と考えられる諸情報を病院等に正確に伝達し,もって生徒の生命,身体等の危険から保護する義務があり,本件では,生徒の症状と情報の重要性に鑑み,複数回の情報の伝達が行われるべきで,その方法は時間が経過した情報について書面でされるべきであったが,D高校ではこのような義務を怠ったという過失がある。 そして,7月10日の原告A転倒時の状況が正確に医療機関に伝達されていれば,ウイルス性脳炎を疑いうる判断材料が増え,より容易にその疑いを持つことができたはずであるから,上記過失が結果の発生に寄与していることは明らかであり,相当因果関係も認められる。 (被告Cの主張)ア原告Aが倒れてからD高校を出発するまでの事実経過7月10日午前8時36分ころ,生徒から職員室に生徒が倒れたとの報告を受け,D高校教諭らやJ教諭は担架を手配して原告Aが倒れた3階廊 下に赴いた。原告Aが仰向けに倒れていた廊下中央の周囲は特に異常はなく,原告Aは,やや汗ばんだ感じで顔色はやや赤みを帯び,口元に少量の唾液が泡状になっているものを認められる状態であり,駆けつけた教諭の声かけに明確な声ではなかったが声を出して反応し,また同教諭から人差し指を顔の前に出されると眼球の動きも確認でき,脈拍・呼吸と 量の唾液が泡状になっているものを認められる状態であり,駆けつけた教諭の声かけに明確な声ではなかったが声を出して反応し,また同教諭から人差し指を顔の前に出されると眼球の動きも確認でき,脈拍・呼吸ともにやや早かったが十分に行っており,けいれん等も見当たらなかった。 担架に乗せられて保健室に搬送された原告Aは,学校からの連絡を受けて到着した原告Bから声をかけられると,突然起きあがり,原告Bと会話を交わした。J教諭は,原告Bに対し,原告Aの状況や原告Aが仰向けに倒れた際に頭を打ったのかもしれないなどと説明し,病院での受診を勧めた。その後,原告Aは,ベッドから起きあがり,原告Bに付き添われて自力で歩行して玄関まで行き,タクシーに乗車してK病院に向かった。 イ被告Cの責任本件のような場合,疾病や事故発生時の安全保持義務から派生する事後措置義務として,学校ないし教師は,保護者に対し事態に即して速やかに状況等を通知し,保護者の側からの対応措置を要請すれば,注意義務は尽くされたというべきであって,本件の事実関係からすれば,J教諭らは安全配慮義務を尽くしたといえる。 D高校教諭らは,けいれんの事実を確認しておらず,上記ア記載のとおりの7月10日の原告A転倒時に認識していた情報は,原告Bを通して医療機関に伝達されている上,これらの情報はウイルス性脳炎の診断に不可欠なものではないから,認識していた情報を医療機関に伝達すべき義務が,。 認められたとしてもこの義務違反と結果発生との間には因果関係がないさらに,仮に原告Aの上記転倒時にけいれん発作の事実が認められたとしても,原告らの主張によれば,被告病院医師によって髄膜炎の可能性を認識していたというのであるから,けいれんの事実が医療機関に伝達され なかったこととその後の経過との間に条件関係さえ認めること しても,原告らの主張によれば,被告病院医師によって髄膜炎の可能性を認識していたというのであるから,けいれんの事実が医療機関に伝達され なかったこととその後の経過との間に条件関係さえ認めることはできない。 (3)争点3(損害)について(原告らの主張)原告らは以下の損害を受け,被告らはこれらの損害について,不真正連帯責任を負う。 ア原告Aの損害3億4553万3440円(ア)治療費等3787万4586円,,原告Aは平成14年7月10日から平成17年4月30日までの間K病院,被告病院,M病院,N病院等における診療費,食事療養費,衣料代等として合計3787万4586円を要した。 (イ)入院雑費164万1000円原告Aは,平成14年7月11日から平成17年7月8日(1094日間)までの間,K病院,被告病院,M病院,N病院に入院した。この間,原告Aは,少なくとも1日1500円の入院雑費を支出したものと推認できる。 (ウ)将来の介護費用1億4959万6633円原告Aが退院を余儀なくされた場合には,訴え提起時から平均余命までの65年間,職業付添人1名及び補助付添人1名による常時介護が必要である。その費用として,1日当たりの介護料を2万1390円として,中間利息控除をして算定すると,1億4959万6633円を要する。 (エ)将来の治療費4414万6944円原告Aは,一応の症状固定後も平均余命までの65年間,生存のために医療行為を要する。その費用として,月額19万2000円(平成17年1月1日から4月30日までの間の平均治療費月額)として,中間 利息を控除して算定すると4414万6944円を要する。 (オ)将来的消耗品費1049万0648円原告Aは,平均余命までの65年間,消耗品費として,少なくとも1日1500円が必要 して,中間 利息を控除して算定すると4414万6944円を要する。 (オ)将来的消耗品費1049万0648円原告Aは,平均余命までの65年間,消耗品費として,少なくとも1日1500円が必要であると推認され,中間利息控除をして算定すると1049万0648円を要する。 (カ)家屋改造費720万3000円原告Aは,退院を余儀なくされると,同人の介護のため,原告A居住の家屋の出入口,床,風呂場等の改造を要し,このための費用として720万3000円を要する。 (キ)介護用品費244万1600円原告Aは,平均余命までの65年間,以下の介護用品が必要である。 ①電動ベッド63万9000円原告Aは寝返りができないため,介護のため電動ベッドが必要である。その費用として,電動ベッド1組の耐用年数を5年とし,中間利息控除をして算定すると63万9000円を要する。 ②車いす代18万8000円車いすの費用として,1組の耐用年数を4年とし,中間利息控除をして算定すると18万8000円を要する。 ③入浴用リフト92万4804円入浴用リフトの費用として,1組の耐用年数を5年とし,中間利息控除をして算定すると92万4804円となる。 ④マットレス68万9796円マットレスの費用として,1組の耐用年数を1年とし,中間利息控除をして算定すると68万9796円となる。 (ク)逸失利益6392万2176円原告Aは,本件事故に遭わなければ18歳から67歳までの49年間 就業することができた。女子労働者学歴計全年齢平均年収額351万8200円をもとに,中間利息控除をして算定すると6392万2176円が損害となる。 (ケ)入院慰謝料220万円原告Aは,平成14年7月11日から症状固定日に相当すると考えられる同年12月16日まで159日間入院し 中間利息控除をして算定すると6392万2176円が損害となる。 (ケ)入院慰謝料220万円原告Aは,平成14年7月11日から症状固定日に相当すると考えられる同年12月16日まで159日間入院しており,その間多大な苦痛を伴ったことやその後も長期にわたる入院生活を余儀なくされたことを考慮すれば,これに対する入院慰謝料は220万円が相当である。 (コ)後遺障害慰謝料3000万円原告Aは,自動車損害賠償保障法施行令別表第1後遺障害別等級表第1級に相当する後遺障害を負っていることから,後遺障害慰謝料は3000万円が相当である。 (サ)入院付添費102万0500円原告Aが入院している病院は完全介護であるが,実際には,家族の補,,助を必要とし平成14年7月11日から平成17年7月8日までの間1週間に1日の割合で合計157日付添いをした。このため,1日当たり6500円の入院付添費が損害となる。 (シ)看護のための近親者の交通費46万4720円原告Aの母である原告Bは,看護のため入院先までタクシーを利用せざるを得なかったため,付添いをした157日において1日当たり往復の交通費2960円を要した。 (ス)損害の填補による控除3688万0498円原告Aは,国民健康保険,高額医療費貸付制度,意識障害者治療研究事業により,損害の填補を受けた。 (セ)弁護士費用3141万2131円弁護士費用相当額は,3141万2131円である。 イ原告Bの損害660万円(ア)近親者慰謝料600万円近親者慰謝料として600万円が相当である。 (イ)弁護士費用60万円弁護士費用として60万円が相当である。 (被告らの主張)争う。 第3争点に対する判断 争点1(被告Eらの注意義務違反及び原告Aの後遺障害との因果関係)について(1)証拠(甲A 用60万円弁護士費用として60万円が相当である。 (被告らの主張)争う。 第3争点に対する判断 争点1(被告Eらの注意義務違反及び原告Aの後遺障害との因果関係)について(1)証拠(甲A2ないし5,7,乙A1ないし6,7の1ないし4,8の1ないし3,9の1ないし24,10の1ないし3,被告H,被告G,原告B各本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア被告Gによる7月11日午前11時30分ころの診察状況被告Gは,原告Aを診察するに当たり,まず,紹介の目的を把握するため,K病院からの紹介状を読み,次に,原告Bから,受診に至るまでの一連の経過を聞くとともに,原告Aの過去の病歴,精神科受診歴,遺伝,不眠の有無等について尋ね,その上で,原告Aの問診を行った。 被告Gは,原告Aに対し,具合や調子が悪いところがないか尋ねたところ,原告Aは「いいえ」と答えたり,首を横に振るなどして応答した。 ,その際,原告Aは落ち着いた様子で,受け答えもはっきりしており,不随意運動やけいれん,四肢麻痺,激しい頭痛等,脳炎や髄膜炎を疑うような所見は見られなかった。 そこで,被告Gは,精神的なショックやストレスにさらされた場合に引き起こされる一過性の精神病状態(心因反応)と疑われるが,髄膜炎等の身体疾患の可能性も否定できないと判断し,原告Bに対し,髄膜炎等を例 示しながら,経過観察にするが,原告Aに症状の再燃があった場合には,まず身体科であるK病院を受診するよう指示した。 イ被告Gによる同日午後4時ころの診察状況,,,同日午後4時ころ原告Aは意味不明のことを一方的にわめき散らし周囲の問いかけに対しても関係のないことを絶叫し,周囲の制止を振り切って突進しようとしたり,激しく暴れているような激しい興奮及び幻覚妄想状態で被告病院に来院 Aは意味不明のことを一方的にわめき散らし周囲の問いかけに対しても関係のないことを絶叫し,周囲の制止を振り切って突進しようとしたり,激しく暴れているような激しい興奮及び幻覚妄想状態で被告病院に来院した。 被告Gは,原告Bに対し,帰宅してから再度来院するまでの様子を尋ね,,,,ると帰宅後激しい興奮状態になったのでK病院に電話をしたところK病院の医師から被告病院へ行くよう指示されたことを聞いた。 被告Gは,原告Aの状態を見て,統合失調症の疑いがあるが,他の精神ないし身体疾患の可能性も排除できないと考えた。原告Aは激しい幻覚妄想状態にあり,問診は行えなかったが,けいれんや四肢麻痺,不随意運動等,脳炎や髄膜炎を疑わせるような所見はなかったため,被告Gは,転院に伴う危険を冒してまでも,神経内科や脳外科等の身体科に紹介するだけの根拠はないと判断した。そして,まずは鎮静をしないと一切の医療行為ができないと考え,原告Bに対し,統合失調症の可能性があること,鎮静をしないと治療ができず,原告A本人の安全も確保できないことから,精神科に入院して治療をする必要がある旨説明し,原告Bからその同意を得た。 被告Gは,原告Aを医療保護入院とし,隔離拘束を指示し,抗精神病薬を投与した。そして,夜勤の看護師に対し,原告Aは激しい興奮及び幻覚妄想状態にあるため,十分に注意するよう指示した。 ウ被告Hによる翌12日の診察状況被告Hは,午前8時30分ころ,被告Gから原告Aについて引継ぎを受け,看護師から,37度9分の発熱があることや,夜間の原告Aの状態等 を聞いた上,午前9時ころ,原告Aの病室へ行った。原告Aは,落ち着いて話ができる状態であり,前に幻聴があった旨を話した。 被告Hは,原告Aについて,発熱や疎通性,幻聴等から,何らかの身体疾患による意識混濁 た上,午前9時ころ,原告Aの病室へ行った。原告Aは,落ち着いて話ができる状態であり,前に幻聴があった旨を話した。 被告Hは,原告Aについて,発熱や疎通性,幻聴等から,何らかの身体疾患による意識混濁を基にしたせん妄状態の疑いが濃厚であるが,精神疾患の可能性も否定できないと考えた。そこで,K病院からの診療情報提供,,,,,書外来診療録入院診療録看護記録等を読み情報を収集したところK病院における頭部CTスキャンの結果に異常がなかったこと,原告Aの意識レベルに変動が見られたこと,被告GがK病院に宛てて髄膜炎の可能性を示唆した返事をした後に被告病院に入院していることなどから,原告Aについて,中枢感染症や脳の器質性の疾患は否定的であるとの判断がされていると感じた。 午前10時ころ,被告Hは,身体疾患の可能性を鑑別するため,原告A。 ,,の血液検査及び尿検査を指示したまた原告Aに発熱があったことから予後を考える上で重要な疾患である中枢感染症の可能性があると考え,抗生剤(ホスミシン)の点滴を行った。 午前10時50分ころ,被告Hが原告Aの病室に入ると,原告Aに人物や状況の誤認が起きており,幻聴があると認められた。そのため,被告Hは,髄膜炎を疑い,原告Aに対し,頭痛や吐き気があるか尋ね,頚部硬直の有無を確認したが,いずれの症状も見られなかったため,髄膜炎を積極的に考える状況にはないと判断した。 午前11時ころ,被告Hは,原告Aの尿検査及び血液検査の結果,夏の暑い時期の興奮過活動の影響が濃厚に出ているものの,何らかの特別な疾患の可能性を示唆する所見は見られなかったため,興奮過活動の影響が薄れた時期に再検査をすることが望ましいと判断した。また,興奮過活動による疲労が窺えたので,睡眠の確保と心身の安静を図ることが重要であると考え,原告 する所見は見られなかったため,興奮過活動の影響が薄れた時期に再検査をすることが望ましいと判断した。また,興奮過活動による疲労が窺えたので,睡眠の確保と心身の安静を図ることが重要であると考え,原告Aに対し,抗不安薬や感情調整薬等を点滴により投与した。 点滴が終了した午後1時50分ころ,原告Aになお37度9分の熱があったことから,被告Hは,肺炎を疑い,肺の聴診を行ったが,肺炎を示すような所見はなかった。また,呼吸困難も見られなかったので,呼吸不全によるせん妄は考え難いと判断した。 ,,,午後4時30分ころ原告Aにまだ38度の熱があったので被告Hは解熱を図った方がよいと判断し,ボルタレン坐薬を投与したが,診断の妨げとならないよう,少量にとどめた。 翌13日午前8時20分ころ,原告Aの鼻孔から淡緑色の粘液が出ていたため,被告Hは,直ちに吸引するよう指示した。原告Aは,吸引の操作に対し,顔をしかめるような反応を示していたが,チアノーゼなどは見ら,。 ,れず胸部の聴診によっても肺炎を思わせるような所見はなかったまた被告Hは,頭部を打撲した後,頭蓋内に遅発性の出血や硬膜下血腫ができることも想定し,原告Aの対光反射やバビンスキー反射を見たが,異常はなかった。被告Hは,原告Aのこれらの症状から,積極的に示唆する所見,,はないものの打撲によって遅発性の脳内出血や硬膜下血腫ができたためせん妄や喀痰の喀出困難が起きていることを想定し,原告Aを脳神経外科のあるM病院に転院させることにした。 原告Aは,M病院に転院する段階では,チアノーゼ等の症状はなく,表情も苦悶様ではないし,目は閉じているものの,声を掛けると何か返事をする状態であり,意識レベルは上がってきているような印象で,車いすに座ることは可能であった。 (2)被告Hらの注意義務の内容 ,表情も苦悶様ではないし,目は閉じているものの,声を掛けると何か返事をする状態であり,意識レベルは上がってきているような印象で,車いすに座ることは可能であった。 (2)被告Hらの注意義務の内容,,,,,ア一般的にウイルス性脳炎の臨床症状としては発熱頭痛意識障害けいれんなどがあり,髄膜の感染を伴うことが多く,脳幹の障害が強い場合には意識障害ばかりでなく,呼吸・循環器系の障害が前面に出るとされている。その診断方法は,臨床症状の他,髄液検査,脳波,CT,MRI ,。 などの画像診断ウイルス学的検査などから総合的に診断することになる脳炎の場合,治療の遅れは重篤な後遺症や死亡へつながるので,疑わしいときには,抗ウイルス薬治療が可能なヘルペスウイルス感染症であるかの鑑別が重要であり,病初のため鑑別困難で,ヘルペス脳炎の可能性があれば,まず抗ウイルス薬を使用しながら診断を進めることもある,とされている(甲B1)。 ,,,,なお単純ヘルペス脳炎の臨床症状としては発熱と多くは頭痛嘔気悪心・嘔吐,頚部硬直等の髄膜刺激症状が先行し,次いで,急性意識障害(覚醒度の低下,幻覚・妄想,錯乱等の意識の変容,異常行動,記銘力),,,,,障害けいれん発作片麻痺言語障害等が出現し深い意識障害に至り発症後1ないし3日で極期に至るとされている。また,髄膜炎はウイルス性脳炎と類似した臨床症状を示し,両者は判別し難い。 イそうすると,患者に発熱や精神錯乱,幻覚等の異常行動が認められる場合,医師としては,精神疾患のみならず脳炎や髄膜炎の可能性を念頭に置いた上,頭痛,嘔吐等の髄膜刺激症状やけいれんの有無を問診及び観察により確認すべき注意義務があり,このような症状が確認された場合には,ウイルス性脳炎等の可能性が高まる 脳炎や髄膜炎の可能性を念頭に置いた上,頭痛,嘔吐等の髄膜刺激症状やけいれんの有無を問診及び観察により確認すべき注意義務があり,このような症状が確認された場合には,ウイルス性脳炎等の可能性が高まることから,確実に鑑別診断をするために,髄液検査等を実施するなどの適切な処置(精神科のように検査等を実施することが困難な場合は,他の病院へ転院させることも含む)を採るべき注意義務がある。 (3)そこで,本件において,被告G及び被告Hが,上記の注意義務に違反したか否かを検討する。 ア原告Aの被告病院からM病院に転院後の状態及び診断は,前提事実及び証拠(乙A4,5,乙B37,被告H本人)によれば,以下のとおりである。 原告Aは,被告病院に入院後は,発熱があり,せん妄状態はみられたも のの,頭痛,悪心,頚部硬直等の髄膜刺激症状や不随意運動はみられなかったが,被告Hは,脳内出血等を想定して,7月13日,原告AをM病院に転院させた。同病院では,原告Aには,意識障害があったが,当初は不,,,随意運動もなくCT検査では異常は見られず脳血管造影検査が行われ静脈洞血栓症が疑われたこと,同月15日になって,原告Aに全身性けいれんがみられ,MRI検査では異常が発見できなかったが,髄液検査の結果ウイルス感染の所見があったことから,ウイルス性脳炎を疑い,N病院に転院させた。N病院では,原告Aを重症のウイルス性脳炎を疑ったが,ウイルスの特定には至らなかった。同病院では,原告Aに対し,アシクロビル,グリセオール,ステロイドパルス療法等が施され,髄液所見は正常に戻ったものの,不随意運動がみられるようになった。また,原告Aに頚部硬直がみられた。 一般的に,ウイルス性脳炎はヘルペス脳炎の比率が高いが,原告Aは,N病院において,ウイルス性脳炎と診断されたが,その原因と のの,不随意運動がみられるようになった。また,原告Aに頚部硬直がみられた。 一般的に,ウイルス性脳炎はヘルペス脳炎の比率が高いが,原告Aは,N病院において,ウイルス性脳炎と診断されたが,その原因となったウイ,,ルスは特定されていないことからすると被告病院で診察を受けた時点でウイルス性脳炎に罹患していた可能性はあるものの,それがヘルペス脳炎であったとは断定できないまたCT検査MRI検査で一定の割合 。 ,,(割ないし8割程度ともいう)で異常所見がみられるが,原告Aについて。 は,K病院,M病院の同検査では異常がみられなかったこと,N病院において,原告Aに対し,ヘルペス脳炎に有効とされているアシクロビルが投与されたものの,数日でその使用が中止されていることなど,原告Aがヘルペス脳炎に罹患していたことを否定する事情がある。 イ被告Gによる7月11日午前11時ころの診断について上記(1)で認定したとおり,被告Gは,原告Aの診察に際し,髄膜炎が重大な病気であり,精神疾患と紛らわしく鑑別が難しいことを念頭に置きながら診察に当たり,その結果,特に積極的に髄膜炎や脳炎を疑う所見 がなかったことから,経過観察としている。また,K病院からの紹介状の内容と,原告Bの説明とは概ね一致しており,上記紹介状に疑問を差し挟むことはないとの被告Gの判断は相当であったと認められる。さらに,被告Gは,K病院に対する返信に「髄膜炎の可能性はいかがでしょうか」,などと記載するとともに,原告Bに対しても,原告Aの症状が再燃した際には身体科の受診を勧めるなどしており,精神科の医師として,髄膜炎,脳炎等の可能性を考慮し,身体科の医師及び保護者への情報提供や注意喚起も適切に行っている。 そうすると,被告Gの処置は,その段階で医師として求められる注意義務 しており,精神科の医師として,髄膜炎,脳炎等の可能性を考慮し,身体科の医師及び保護者への情報提供や注意喚起も適切に行っている。 そうすると,被告Gの処置は,その段階で医師として求められる注意義務を尽くしていたと認められる。 なお,被告病院では,ウイルス性脳炎につき,積極的に検査を実施してはいないが,原告Aが,内科や外科を中心とした身体科の総合病院であるK病院から紹介された患者であり,K病院においてCT等の検査を行っていたことなども考慮すると,被告病院においては,K病院による検査結果を前提として診断を行ったとしても,それが相当性を欠くとはいえない。 したがって,この時点における原告Aの状態及び被告Gの診断の状況に照らすと,被告Gは,診断に際して求められる注意義務を尽くしたものと認められる。 ウ被告Gの同日午後4時ころの診断について上記(1)で認定したとおり,被告病院に再来院した原告Aは,激しい幻覚妄想及び興奮状態であり,問診もままならなかったが,被告Gは,けいれんや四肢麻痺,不随意運動等の脳炎や髄膜炎を疑わせるような所見がないことを確認した上,統合失調症の疑いとの診断をし,転院の危険を冒してまでも他の病院に鑑別診断を依頼する必要はないと判断している。 このように,被告Gは,髄膜炎や脳炎等の身体疾患の可能性も念頭に置き,けいれんや四肢麻痺等の症状についても観察していたのであるから, 必要な鑑別義務は尽くしていたといえる。 そして,上記のような原告Aの症状からすれば,被告Gが精神疾患である統合失調症との診断を行ったことに過失はないというべきである。 エ被告Hによる診察について被告Hにおいても,診察に先立ち,必要な情報を収集した上,原告Aの,,,状態から髄膜炎の可能性があることを念頭に置きながら頭痛や吐き気頚部硬直の有無等を確認 る。 エ被告Hによる診察について被告Hにおいても,診察に先立ち,必要な情報を収集した上,原告Aの,,,状態から髄膜炎の可能性があることを念頭に置きながら頭痛や吐き気頚部硬直の有無等を確認しており,必要な鑑別義務を尽くしていたといえる。K病院における検査結果を前提とした診断が相当であることは上記で述べたとおりである。 なお,被告Hは,原告Aに喀痰の喀出困難が起きた時点で,頭部打撲による脳内出血等の可能性を疑い,脳神経外科のある病院へ転院させるとの判断をしているが,この時点においても,原告Aに脳内出血等を疑うべき所見は見当たらなかったというのであるから,被告Hの判断は,迅速なものであったということができ,注意義務違反は認められない。 オ以上のとおり,被告G及び被告Hは,原告Aの症状に対して,診察に際して医師として行うべき注意を払っていたということができ,原告Aの症状が前記のようにウイルス性脳炎として典型的なものではなく,脳炎等の可能性は否定できないが,それらを積極的に疑うべき所見に欠けていたこ(,,とM病院でも入院後3日目に原告Aにけいれん等が発症し検査の結果脳炎の診断に至っていることからも,原告Aの症状の鑑別は相当困難であったことが窺われる)からすれば,被告G及び被告Hが原告Aについて。 経過観察をしたことは相当であり,被告Gが統合失調症の疑いとの診断をしたことにも過失があったとはいえない。 したがって,被告H及び被告Gは,医師として行うべき診察,治療として,原告Aの症状について早期に脳炎,髄膜炎等の疑いを持ち,それらに対する抗ウイルス薬の投薬等の対処をすべきであったということはでき ず,同医師らに注意義務違反があったとはいえない。 争点2(被告Cの安全配慮義務違反及び原告Aの後遺障害との因果関係)について( 抗ウイルス薬の投薬等の対処をすべきであったということはでき ず,同医師らに注意義務違反があったとはいえない。 争点2(被告Cの安全配慮義務違反及び原告Aの後遺障害との因果関係)について(1)証拠(甲A6の2ないし6,7,証人I,原告B本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告Aは,7月8日午前8時40分ころ,D高校の保健室を訪れ,検温したところ,38度の熱があった。J教諭は,熱を下げるため,袋に氷を入れて原告Aに渡した。原告Aは,その氷を交換するため,同日,合計4回にわたり,保健室を訪れた。J教諭は,原告Aに対し,再三,熱も高いので早く帰って病院に行った方がいい旨を告げたが,原告Aは,吹奏楽部の部活動のため,午後7時ころに帰宅した。 この日に,原告Aが意味不明のことを口走ることはなく,頭痛や吐き気を訴えることもなかった。 イ7月9日,原告Aは,原告Bに対し,発熱と頭痛を訴え,学校を欠席した。この日は病院には行かず,市販の鎮痛解熱剤であるナロンエースを服用し,自宅で寝ていた。夕方,原告Aの体温は37度台まで下がっていたが,午後10時ころに38度台まで上昇したため,原告Bは,原告Aに対し,解熱剤を投与した。 ウ7月10日,原告Aは,午前6時ころ起床した。原告Bは,原告Aに対し,熱があるので,学校を休んで病院に行くよう説得したが,原告Aは,今日中に提出しないと赤点になる課題があるなどと言って口論となり,結局,登校した。 エ同日午前8時35分ころ,D高校の女子生徒が職員室を訪れ,人が倒れ。 ,,ているとの連絡をしたJ教諭が保健主事及び体育の教諭2名とともに3階の実践室の入口前辺りに向かうと,原告Aが廊下に大の字に倒れていた。J教諭は,原告Aの名前を呼んだり「大丈夫」などと呼びかけ,原, 告Aの をしたJ教諭が保健主事及び体育の教諭2名とともに3階の実践室の入口前辺りに向かうと,原告Aが廊下に大の字に倒れていた。J教諭は,原告Aの名前を呼んだり「大丈夫」などと呼びかけ,原, 告Aの状態を確認したところ,原告Aは息をしており,脈も正常で,呼びかけに対して目で反応するような状態であった。 J教諭は,原告Aにてんかんの既往がないことや,手足のけいれんが見られないこと,意識ももうろうとした状態ではあったものの,反応はあったことから,原告Aを担架に乗せて保健室に搬送した。 午前8時50分ころ,原告Aが保健室に到着すると,J教諭は,原告Aの体温を測り,タオルで頭部を冷やした。このとき,原告Aの体温は38度であった。 同じころ,P教諭は,原告Aの保護者(原告B)に対して連絡をするた,,,,め事務室へ向かい原告ら方に電話を掛け原告Bに対し原告Aが倒れ,。()保健室で休んでいるのですぐに学校へ来るよう話をした甲A6の6原告BがD高校へ来るまでの間,原告Aの友人らが保健室を訪れ,原告Aに声を掛けるなどしていた。このとき,原告Aは,言葉を発することはなかったが,うなずくなどの反応を示していた。 ,,,,オ午前9時ころ原告BがD高校に到着するとJ教諭は原告Bに対し原告Aが倒れた状況を説明し,倒れたときに頭を打った可能性があり,また,熱があるのに病院を受診していなかったことから,病院に行くよう勧めた。原告Bが原告Aに対し,名前を呼んだり「病院行くよ」などと,。 呼びかけると,原告Aは自ら起きあがり「お母さん」と言った。原告A,は,玄関まで自力で歩いて行き,原告Bとともにタクシーに乗ってK病院へ向かった。 (2)注意義務違反の有無についてア一般に,学校の教職員は,学校における諸活動によって生ずるおそれの た。原告A,は,玄関まで自力で歩いて行き,原告Bとともにタクシーに乗ってK病院へ向かった。 (2)注意義務違反の有無についてア一般に,学校の教職員は,学校における諸活動によって生ずるおそれの,,ある危険から児童・生徒を保護すべき義務を負っているところ教職員が,,上記義務の履行として保護者の対応を要請して生徒・児童を引き渡すか直ちに医療機関に搬送する措置を採るべきかは,事故時の状況,事故後に おける児童・生徒の行動・態度,児童・生徒の年齢・判断能力,予想される障害の種類・程度等の諸事情を総合して判断すべきである。そして,保護者に生徒・児童を引き渡す場合には保護者に対し,医療機関へ搬送する場合には医療機関に対し,事故時の状況等を通知し,その後の対応に有益な情報を,必要に応じて適切な方法により提供する義務があるというべきである。 イ本件においては,原告Aは,倒れた際,意識はあり,けいれんや泡を吹くなどの症状はなく,一刻を争う状態にはなかったものと認められる。特に,原告Aは,保健室で休養した後,原告Bの声掛けに対して自ら起きあがり,タクシーまで自力で歩くことが可能であったことなどが認められ,これらの諸事情を総合考慮すると,D高校の教職員において,原告Aが転倒した直後の段階で,直ちに脳炎等の重大な障害の可能性を具体的に予見することは困難であったというべきであり,直ちに救急車を要請しなければならない義務までは認められない。したがって,D高校の教職員が,救急車を要請することなく,原告Aを担架に乗せて保健室に運び,休養させるなどの措置を採った上,原告Bに引き渡した行為について,同教職員らに注意義務違反は認められない。 また,D高校教職員は,原告Bに対し,原告Aが倒れた際の状況を説明し,頭を打った可能性があるので医師に話すよう話 を採った上,原告Bに引き渡した行為について,同教職員らに注意義務違反は認められない。 また,D高校教職員は,原告Bに対し,原告Aが倒れた際の状況を説明し,頭を打った可能性があるので医師に話すよう話しており,保護者に提供すべき情報としては十分であったということができ,この点においても注意義務違反は認められない。 ウ以上によれば,原告AがD高校で倒れた際の同校の教職員の対応等に安全配慮義務違反があったとはいえない。 第4よって,原告らの請求は,その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないので,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 福島地方裁判所第一民事部 裁判長裁判官森高重久裁判官岡野典章裁判官明日利佳

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