主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,1億3012万1992円及びこれに対する平成13年2月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,自殺したAの父である原告が,Aは,同人の勤務していた被告における過剰な業務等の結果,うつ病に陥り自殺したとして,被告に対し,不法行為又は債務不履行(安全配慮義務違反)に基づき,損害賠償を請求したものである。 1 争いのない事実等(1) Aの身上,経歴,被告における業務内容等ア Aは,原告を父とし,亡Bを母として,昭和43年2月24日に出生し,平成3年3月,北海学園大学を卒業し,同年4月1日付けで被告に入行し,札幌a支店に配属された。その後,Aは,帯広b支店,札幌c支店,d支店及びe支店各勤務を経て,平成12年4月,札幌f支店(以下「本件支店」という。)の得意先係に配属された。 イその当時の本件支店の支店長はC,次長はDであり,その下に得意先係,融資係及び営業係を担当する3名の支店長代理がおり,得意先係には支店長代理のE,主任のFの外,Aを含む4名の行員が所属していた(甲14,乙1)。得意先係におけるAの主な業務は,担当地域内の顧客を訪問し,定期預金及び住宅ローン等の取り入れ並びに投資信託の販売等を行い,さらに,新規の融資先を開拓するなどというものであった。 (2) Aの自殺Aは,平成13年2月22日(推定),北海道勇払郡g村において自殺(縊死)した。 2 争点(1) Aの被告における業務の状況,Aの自殺と業務等との相当因果関係(原告の主張)ア Aは,平成12年4月から本件支店で勤務していたが,帰宅時間は午後10時ないし11時ころという長時間労働が常態化し Aの被告における業務の状況,Aの自殺と業務等との相当因果関係(原告の主張)ア Aは,平成12年4月から本件支店で勤務していたが,帰宅時間は午後10時ないし11時ころという長時間労働が常態化しており,公休日である土曜日,日曜日に出勤することも多かった。 イまた,被告では,平成12年10月から平成13年3月までの間(以下「平成12年下半期」という。),リスク商品である投資信託の販売強化に重点を置いた施策が行われており,Aは,平成12年10月,本件支店における投資信託販売の推進担当(以下「本件推進担当」という。)に任命され,本件支店の販売目標を達成するための推進責任者として仕事をしていた。当時,投資信託の基準価格は下落傾向にあり,販売実績を伸ばすことは困難であったにもかかわらず,被告は,Aに対し,苛酷な販売目標を課した上,「リスクを説明して,かつ,大量に売れ。」という矛盾する内容の指示をした。 ウ Cは,被告の全支店の中でも,特に目標達成に厳しい支店長として有名であり,Aに対し,「お前のせいで目標に行かない。」などと言って,個人攻撃を繰り返していた。平成13年2月上旬,本件支店で開催された渉外会議(以下「本件渉外会議」という。)においても,Aに対し,投資信託の販売目標達成率が低いことなどを理由に,「ふざけるな,この野郎。」などと言って,厳しく叱責した。こうした中で,Aは,相当精神的に追い詰められていた。 エさらに,Aは,本件支店において,オンライン取引であるファームバンキングサービスの担当者であったところ,平成12年7月ころ,顧客のG株式会社(以下「G」という。)から,同サービスを解約する旨の申し出を受け,解約に必要な書類を預かった。Aは,C又はDから解約件数を抑えるように強く指導されていたこともあり,解約処理をすること のG株式会社(以下「G」という。)から,同サービスを解約する旨の申し出を受け,解約に必要な書類を預かった。Aは,C又はDから解約件数を抑えるように強く指導されていたこともあり,解約処理をすることができず,手数料1050円の自動振替日である毎月15日の到来する前に,自動振替の停止処理を行い,自ら立替払をした上,自動振替日が経過した後,上記自動振替停止を解除するという処理を行っていた。なお,被告では,このような行員による立替払は禁止されていた。Aは,同年10月17日,同年11月16日,同年12月15日及び平成13年1月15日の4回にわたり,合計4200円の立替払をしていた(以下「本件立替払」という。)ものの,同年2月15日に自動振替の停止処理を行っていなかったため,同日,手数料が引き落とされた。Aは,同月19日,通常どおり出勤し,午前中,支店長代理であるHに同行して営業のため外出していたところ,Gから上記手数料の引き落としに関して本件支店に電話で問い合わせがあったため,Dは,Aが立替払をしていたことを察知した。同日正午過ぎころ,Aが,本件支店に戻ってきたところ,Dは,Aに対し,「なんで立替払をしたのか。」などと言って,責任を厳しく追及した。 オ上記の長時間労働,投資信託の苛酷な販売目標及びCからの執拗で常識外の個人攻撃に起因する過度の精神的,肉体的負荷が,Aをして少なくとも中等症以上のうつ病に陥らせ,さらに,Aは,Dから,本件立替払に関して責任を厳しく追及されて急性ストレス反応を発現させ,その結果自殺したのであるから,Aの自殺と業務との間には相当因果関係がある。 このことは,平成11年に労働省(当時)が作成した「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(甲9)に照らしても認められるところである。 (被告の主張)ア は相当因果関係がある。 このことは,平成11年に労働省(当時)が作成した「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(甲9)に照らしても認められるところである。 (被告の主張)ア Aを含む得意先係の帰宅時間は,平均すると午後9時ころであった。被告では,毎月3回ないし4回,全店統一早帰り日が設定され,全行員が午後5時ころ帰宅していた外,本件支店独自の早帰り日も設定されていた。また,Aが,土曜日,日曜日に出勤することはほとんどなかった。特に,Aは,平成13年2月10日から同月12日まで公休日であり,同月13日,翌14日は冬季休暇を取り,同月15日,翌16日と出勤した後,同月17日,翌18日は公休日であった。したがって,Aの労働時間が過剰となった事実はない。 イ投資信託販売の職務内容を検討しても,被告が,Aに対し,「リスクを説明して,かつ,大量に売れ。」という指示をしたことはなく,販売目標も決して過重な負荷といえるものではなかった。 ウ Cが,Aに対し,個人攻撃を繰り返していたという事実はなく,また,本件渉外会議においても,Aが,本件支店における投資信託の販売実績を把握していなかったため,Aに対し,「販売推進担当者として,そのようなことでは困る。」などと言って,注意したことはあるものの,厳しく叱責した事実はない。 エ平成13年2月19日,Dは,Aに対し,「Gから,ファームバンキングサービスの解約について,電話で照会があったよ。解約書類は預かっているかい。」と聞くと,Aが「はい。」と答えたため,「それなら見せて。」と言ったところ,Aは,「分かりました。」と返事をして,営業室から出て行った。この時点において,Dは,Aが本件立替払をしていたことを知らなかったのであり,同人の責任を厳しく追及した事実はない。 オまた,原告 ろ,Aは,「分かりました。」と返事をして,営業室から出て行った。この時点において,Dは,Aが本件立替払をしていたことを知らなかったのであり,同人の責任を厳しく追及した事実はない。 オまた,原告はAがうつ病にり患したと主張するが,Aは毎年健康診断を受けており,精神障害を発病したとの診断はされておらず,精神的にうつ状態になったということはあり得ない。 したがって,Aの自殺と業務との間に因果関係はない。 (2) 被告の過失又は債務不履行(安全配慮義務違反)の有無(原告の主張)Aは,平成13年2月10日,引継書を提出せずに仕事を休んでいること,その際,Dは,Aの上記行動が平素と異なっていると認識していたこと,C及びDは,同年3月29日,原告方を訪問し,「A君は仕事上の中のできごとにストレス,悩み等を感じ,なくなったのではないかと思います。」と記載した書面(甲3。以下「本件メモ」という。)を作成していることからすれば,被告は,Aが仕事上の悩みを抱え,精神的ストレスを感じていることを認識していた。したがって,被告は,Aに対する販売目標を差し控えるなどして業務を軽減させAが自殺することを防止すべき注意義務があった。 にもかかわらず,被告はAの精神状態に何ら配慮することなく,漫然と苛酷な労働を継続させたうえ,平成13年2月19日,本件立替払に関し,Aの個人的責任として厳しく追及し,Aを自殺に追い込んだ。 (被告の主張)Aは,業務を支障なくこなしており,平成13年2月10日に引継書を提出せずに仕事を休んだこと以外,特に平素と異なる行動はなかったのであるから,Aがその業務に起因して自殺することを予見することは不可能であった。C及びDは,平成13年3月29日,原告方を訪れた際,原告及びIらから,Aの自殺が銀行業務に起因することを認める ったのであるから,Aがその業務に起因して自殺することを予見することは不可能であった。C及びDは,平成13年3月29日,原告方を訪れた際,原告及びIらから,Aの自殺が銀行業務に起因することを認めるように執拗に要求されたため,本件メモ(甲3)を作成したものであり,Aの精神状態が特段異常であると認識した事実はないし,Aが仕事上の悩みを抱え,精神的ストレスを強いられていたことを認識していたわけでもない。 争点(1)に関する被告の主張のとおり,被告がAに課した労働時間及び業務内容は特段過剰なものではなく,また,Cによる個人攻撃の事実も存在しないのであるから,被告には原告主張の義務違反はない。 (3) 損害(原告の主張)ア Aの損害① Aの逸失利益 6692万8220円Aの平成11年度の年収583万9206円を基礎とし,労働能力喪失期間を67歳までの35年間,生活費控除率を30%として,ライプニッツ係数(16.3741)により中間利息を控除すると,Aの逸失利益は次の計算式のとおりである。 583万9206円×(1-0.3)×16.3741=6692万8220円② Aの慰謝料 5000万円Aが被った精神的損害に対する慰謝料は5000万円が相当である。 ③ 相続Aの死亡により,原告は,上記損害賠償請求権を相続した。 イ葬儀費用 130万3000円ウ遺体運搬費用 3500円エ死体検案及び文書作成料 5万8000円オ弁護士費用 1182万9272円(被告の主張)原告の損害に関する主張は争う。 第3 争点に対する判断 1 本件の経緯証拠(段落末尾括弧内に掲記したものの外,乙1,4,5,証人C,同D)によれば,以下の事実が認められる。 (1) Aは, 原告の損害に関する主張は争う。 第3 争点に対する判断 1 本件の経緯証拠(段落末尾括弧内に掲記したものの外,乙1,4,5,証人C,同D)によれば,以下の事実が認められる。 (1) Aは,平成12年4月,本件支店の得意先係に配属され,同年4月から同年9月までの間(以下「平成12年上半期」という。),主として新規の法人向け融資先及び教職員給与振込口座の獲得などの業務に従事していた。Aは,個人向けローンの分野で高い実績を上げ,平成12年上半期の人事考課では,5段階評価のうち上から2番目のA評価を受けたが,法人向け融資の分野では,経験が浅かったこともあり,実績を上げることができずにいた。 (2) 勤務状況についてみると,Aは,午前8時ころ出勤し,帰宅時間が午後10時ないし11時ころになることもあったが,平均すると午後9時ころ帰宅していた。Aは,土曜日,日曜日に出勤することもあったが,休日には得意先の訪問ができなかったこともあり,休日出勤した日数は比較的少なかった。被告では,毎月3回ないし4回,全店統一早帰り日が設定され,全行員が午後5時ころ帰宅していた外,本件支店独自の早帰り日も設定されていた。また,被告では,毎年,全行員を対象に健康診断を実施しており,Aも毎年これを受診していたものの,特段の異常は見られなかった(甲11,乙2,3,弁論の全趣旨)。 (3) 被告では,平成12年下半期に,投資信託の販売強化に重点を置いた施策が行われ,Aは,同年10月,本件推進担当に任命された。平成12年下半期に本件支店に課せられた投資信託の販売目標は,3億ないし3億5000万円であり,そのうちA個人の販売目標は,5000万ないし6000万円であった。Aは,目標達成に向けて熱心に仕事に取り組んでいたものの,当時,投資信託の基準価格が下落傾向にあったことも 3億5000万円であり,そのうちA個人の販売目標は,5000万ないし6000万円であった。Aは,目標達成に向けて熱心に仕事に取り組んでいたものの,当時,投資信託の基準価格が下落傾向にあったこともあり,販売実績を伸ばすことができず,本件支店の販売目標達成率は低い状況にあった。 (4) 本件支店では,C又はDが,各行員に対し,直接に指導を行う機会は少なく,各行員に対する指導は,C又はDの意向を踏まえて,主に各支店長代理が行っていた。 (5) 本件支店では,毎月1回,C及びDの外,得意先係及び融資係の行員が出席して渉外会議が開かれ,得意先係の行員が,各自の推進担当項目について,前月までの進捗状況と今後の見通しを発表することになっていた。平成13年2月上旬,本件渉外会議において,Cは,Aに対し,前月の投資信託の販売実績について質問したところ,Aが販売実績を把握しておらず質問に答えることができなかったため,「販売推進担当者として,そのようなことでは困る。その程度のことは把握しておくように。」などと言って,厳しく注意したが,その際,Aは,責任を感じている様子であった。 (6) Aは,平成13年1月17日ころ,大学時代の友人であるJらと共に,同年2月10日から層雲峡の天人峡温泉へ旅行に行く約束をしており,同月13日,翌14日に冬季休暇を取るため事前に休暇申請をしていたものの,同月9日,本件支店に出勤した後,Jらに連絡もせず,上記温泉旅行に行くのを止めた(甲13)。 (7) この間,Aは,引継書を提出することなく,仕事を休んだ上,電話連絡もつかない状態にあり,得意先係の現場に混乱を生じさせたため,翌15日に出勤した際,Eから注意を受けた(乙3)。 (8) Aは,平成13年2月16日,通常どおり出勤し,就業時間後,C,D及び得意先係の行員らと共に,本件支 得意先係の現場に混乱を生じさせたため,翌15日に出勤した際,Eから注意を受けた(乙3)。 (8) Aは,平成13年2月16日,通常どおり出勤し,就業時間後,C,D及び得意先係の行員らと共に,本件支店近くのホルモン屋で飲食した。Aは,同日の午後11時ころ,帰宅途中のタクシー内からJに電話をかけ,「この前はごめん。温泉どころじゃなかった。仕事を辞めたい。」などと言った(甲13)。 (9) 平成13年2月17日,翌18日は公休日であり,Aは出勤しなかった。 (10) Aは,平成12年7月ころ,Gからファームバンキングサービスを解約する旨の申し出を受け,解約に必要な書類を預かった。被告では,行員による立替払が禁止されていたものの,Aは,解約処理をすることなく,手数料の自動振替日である毎月15日の到来する前に自動振替の停止処理を行い,自ら立替払をした上,自動振替日が経過した後,上記自動振替停止を解除するという処理を行っていた。 Aは,平成12年10月17日,同年11月16日,同年12月15日及び平成13年1月15日の4回にわたり本件立替払をしていたものの,同年2月15日に自動振替の停止処理を行っていなかったため,同日,手数料が引き落とされた。 (11) Aは,平成13年2月19日,通常どおり出勤し,勤務開始時間前に本件支店の駐車場の除雪作業をした後,午前中,Hに同行して営業のため外出していたところ,Gから上記手数料の引き落としに関して本件支店に電話で問い合わせがあった。同日正午過ぎころ,Aが本件支店に戻ってきたため,Dは,1階の営業室において,Aに対し,「Gから,ファームバンキングサービスの解約について,電話で照会があったよ。解約書類は預かっているかい。」と聞くと,Aが「はい。」と答えたため,「それなら見せて。」と言ったところ,Aは,「分かりました。」 ら,ファームバンキングサービスの解約について,電話で照会があったよ。解約書類は預かっているかい。」と聞くと,Aが「はい。」と答えたため,「それなら見せて。」と言ったところ,Aは,「分かりました。」と返事をして,営業室から出て行った。 Aは,本件支店の駐車場において,得意先係の同僚であるK(以下「K」という。)とすれ違い,同人から「お疲れ様です。」と声を掛けられたが,何の反応も示さずに無言で営業車に乗って走り去り,そのまま行方不明となり,同月22日(推定),北海道勇払郡g村で自殺(縊死)した(甲1,2,乙3)。 (12) Aの姉であるLが,平成13年2月20日,本件支店を訪問したところ,Dは,Lに対し,「あの時,もうちょっと違う言い方をしていればよかったかもしれません。」と言った(甲11)。 (13) C及びDは,平成13年3月29日,原告方を訪問し,原告及びIらの面前で本件メモ(甲3)を作成したが,その際,Dは涙ぐんでいた。 2 争点(1)(Aの被告における業務の状況,Aの自殺と業務等との相当因果関係)について(1) 原告は,被告における業務が,労働時間,業務内容及び上司の指導の厳しさにおいてAに過剰な負担を強いるものであり,Aはその負担に耐えきれずにうつ病にり患し,自殺したのであるから,Aの自殺と業務との間には相当因果関係があると主張する。 しかし,前記認定した事実に照らせば,被告からAに対し課せられていた労働時間及び業務内容は,相当量の残業があり,また,販売目標が課されていたものの,社会通念上許容される範囲を超えた過剰なものであったと認めることはできない。また,CがAに対して本件渉外会議において行った指摘や指導は,相当程度厳しいものであったことが推認されるものの,その程度は職場における上司の指導として社会通念上許容される限度を超え ことはできない。また,CがAに対して本件渉外会議において行った指摘や指導は,相当程度厳しいものであったことが推認されるものの,その程度は職場における上司の指導として社会通念上許容される限度を超えた過剰なものとまではいえず,C及びDがAに対して限度を超えた過剰に厳しい指導を行った事実を認めることはできない。 (2) また,Aは,平成12年10月,本件推進担当に任命され,本件支店及びAに課せられた投資信託の販売目標を達成するべく熱心に仕事に取り組んでいたが,思うように販売実績を上げることができず,本件渉外会議において,Cから厳しく注意されるなどして,相当の精神的ストレスを感じていたとは考えられるものの,Aは,平成13年2月10日に引継書を提出せずに仕事を休んだことを除き,通常の業務を従来どおり支障なく遂行しており,Aの業務や言動に関して特に異常な点は見受けられなかったこと,Aは,毎年健康診断を受けていたが,精神障害を発病したとの診断はなされなかったことなどからすれば,Aがうつ病にり患していたと認めることは困難である。 この点につき,Aが,過剰な業務負担等の結果,少なくとも中等症以上のうつ病にり患していた旨の精神科医の意見書(甲16)が提出されている。しかしながら,同意見書は,Aの帰宅が午後10時から11時過ぎになることが常態化しており,土日休日もろくにとれない状況であったという前記認定事実とは大きく異なる勤務状況や,Aが常日頃からCやDの方針とそりが合わずに対立することが多く,目を付けられていて「いじめ」のような過酷な仕打ちを受けていたという前記認定事実とは異なる上司との関係等を前提に意見,判断が記載されたものであって,前提としているAの勤務状況や上司との関係等が前記認定事実と大きく異なる以上,直ちに採用することはできない。 (3) 記認定事実とは異なる上司との関係等を前提に意見,判断が記載されたものであって,前提としているAの勤務状況や上司との関係等が前記認定事実と大きく異なる以上,直ちに採用することはできない。 (3) 以上によれば,Aには,許容される範囲を超えた過剰な業務負担があったとはいえず,Aの上司による限度を超えた指導,あるいはいじめがあったとも認められず,また,Aがうつ病にり患し,自殺に至ったものと認めることもできないのであるから,Aの自殺と被告の業務との間に相当因果関係を認めることもできない。 なお,Aは,平成13年2月19日,Dから,Gに関するファームバンキングサービスの解約について確認されるや,突然本件支店を飛び出したこと,その際,本件支店の駐車場でKから声を掛けられたが,何の反応も示さず無言で営業車に乗って走り去り,そのまま行方不明になったこと,Aはそのわずか3日後に自殺したことに照らすと,本件立替払をしてまでこの時期にGに関するファームバンキングサービスが解約されたことを被告行内に判明することを防ぎ,あるいは解約を先送りした形にしなければならなかった必要性は必ずしも明らかではないものの,Aは,投資信託の販売目標の達成ができなかったこと等について従前から相当の精神的ストレスを感じていた上に,被告において禁止されていた行員による立替払である本件立替払が発覚したことに衝撃を受け,従前は高い人事評価を受けていた銀行員としての経歴や評価に汚点を残す結果になること等について思い悩んだ末自殺した可能性が高いものと考えられる。しかし,前記認定のとおり,Aが社会通念上相当な範囲を超えた過剰な業務を負担していたとまでは認められず,また,C及びDがAに対して過剰に厳しい指導やいじめを行っていたとも認められない以上,Aが本件立替払の発覚について悩み,自殺に至ったと 上相当な範囲を超えた過剰な業務を負担していたとまでは認められず,また,C及びDがAに対して過剰に厳しい指導やいじめを行っていたとも認められない以上,Aが本件立替払の発覚について悩み,自殺に至ったとしても,それは業務に関連する事柄が要因になっているとはいえ,あくまでもAの個人的な考え方や受け止め方によるものであり,Aの自殺について被告が債務不履行責任や不法行為責任を負う前提としての,業務自体との相当因果関係を認めることはできない。 3 争点(2)(被告の過失又は債務不履行の有無)について(1) 一般に,使用者は,その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身を損なうことがないよう注意する義務を負うと解され,その義務違反があった場合には,雇用契約上の債務不履行(いわゆる安全配慮義務違反)に該当するとともに,不法行為上の過失をも構成すると解すべきである。 しかしながら,前記認定のとおり,Aが社会通念上許容される範囲を超えた過剰な業務を負担していたとも,C及びDがAに対して限度を超えた過剰に厳しい指導やいじめを行ったとも認められず,また,Aがその結果自殺したものとも認められないのであるから,被告がAの自殺についてこれを防止すべき義務を負う旨の原告の主張は,その前提を欠くものである。 (2) なお,前記説示のとおり,Aはうつ病にり患していたとまでは認められないものの,仕事上相当の精神的ストレスを感じていたところで本件立替払の事実が発覚し,思い悩んだ末に自殺に至った可能性が高いものと考えられる。しかし,平成13年2月10日に引継書を提出せずに仕事を休んだという事情以外に,Aに異常な言動は見受けられず,Aから健康状態等を理由に業務の変更等を求める申し出もなかったこと 高いものと考えられる。しかし,平成13年2月10日に引継書を提出せずに仕事を休んだという事情以外に,Aに異常な言動は見受けられず,Aから健康状態等を理由に業務の変更等を求める申し出もなかったことに照らすと,被告において,Aの自殺等不測の事態が生じうる具体的危険性まで認識し得る状況があったとは認められないから,被告において,Aの精神状態に特段配慮し,労働時間又は業務内容を軽減するなどの措置を採るべき義務が生じていたということはできない。また,平成13年2月19日,DがAに対しGに関するファームバンキングサービスの解約について確認した際のやり取りに,特段不適切な点は認められないし,Aは,Dから解約について確認されると突然本件支店を飛び出し,そのまま行方不明になり,その3日後自殺に至ったのであるから,被告において,Aの自殺を防止するための措置を採ることができたとは認められない。 (3) これに対し,原告は,C及びDにおいて,Aが仕事上の悩みを抱え,精神的ストレスを感じていたことを認識しており,Aの自殺を予見できたと主張しており,その主張に沿う証拠として,本件メモ(甲3)の外,原告及びIらの陳述書(甲10,17~19)がある。しかし,本件メモは,その達成が容易でない仕事や課題を持つ者であれば誰しも一定の精神的ストレスを感じていることを前提に,事後的にみてAも仕事上精神的ストレスを感じていたのではないかという推測を表明した趣旨にとどまると解するのが相当であり,上記証拠によっても,C及びDにおいて,Aが自殺につながるような精神的ストレスを感じていたことを事前に認識していた事実や自殺を予見できた具体的状況があったことを認めることはできない。 第4 結論以上によれば,原告の本件請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないから棄却す 事前に認識していた事実や自殺を予見できた具体的状況があったことを認めることはできない。 第4 結論以上によれば,原告の本件請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第3部裁判長裁判官生野考司裁判官岡部純子裁判官蔵本匡成
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