平成15年11月28日判決言渡平成12年(行ウ)第193号違法公金支出差止等請求事件(以下「193号事件」という。)平成12年(行ウ)第242号追加的併合請求事件(以下「242号事件」という。)判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 本件各訴えのうち、被告東京都知事及び被告東京都特別企業出納員に対する訴えをいずれも却下する。 2 原告らの被告Kに対する請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 193号事件(1) 被告東京都知事は、東京都が別紙東京港図赤色斜線部分に計画している埋立事業に関し、契約を締結若しくは履行、債務その他の義務を負担、又は企業債若しくは地方債の起債手続をしてはならない。 (2) 被告東京都特別企業出納員は、同埋立てに関し、埋立工事費用等一切の公金を支出してはならない。 2 242号事件被告Kは、東京都に対し、金2億2510万円及びこれに対する平成12年4月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、東京都の住民である原告らが、別紙東京港図赤色斜線部分(以下「本件埋立地」という。)に計画している埋立事業(臨海副都心有明北地区埋立事業、以下「本件埋立事業」という。)について、同埋立は経済的合理性を欠き、また、公有水面埋立法4条の免許基準に合致しないものであるから、同事業を行うことは違法であるとして、平成14年法律4号による改正前の地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項1号に基づき、被告東京都知事(以下「被告知事」という。)に対し、本件埋立事業に係る契約の締結若しくは履行、債務その他の義務の負担、又は企業債若しくは地方債の起債手続をすることの差止め、被告東京都特別企業出納員(以下「 京都知事(以下「被告知事」という。)に対し、本件埋立事業に係る契約の締結若しくは履行、債務その他の義務の負担、又は企業債若しくは地方債の起債手続をすることの差止め、被告東京都特別企業出納員(以下「被告出納員」という。)に対し、本件埋立事業に係る公金の支出をすることの差止めをそれぞれ求めるとともに(193号事件)、本件事業につき被告K(以下「被告K」という。)が東京都知事として、本件埋立事業に係る運輸大臣(当時、以下同じ)の認可を受ける前に同事業に係る工事請負契約を締結し、前払金2億2510万円を支出したこと(以下「本件支出」という。)が、公有水面埋立法の趣旨に反する違法な支出であるとして、被告Kに対し、法242条の2第1項4号前段に基づき同支出額である2億2510万円の損害賠償及びこれに対する支出日である平成12年4月19日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の各支払いを求めるものである。 これに対し、被告知事及び被告出納員は、①本件各訴えが不適法であることを主張し、本件各訴えの却下を求めるとともに、②本件埋立事業が適法であることを主張し、また、被告Kは、本件支出が適法なものであることを主張し、原告らの主張を争っている。 2 判断の前提となる事実(1) 当事者ア原告らは、いずれも東京都の住民である。 イ東京都は、東京都地方公営企業の設置等に関する条例1条において、地方公営企業法2条3項により同法の一部を適用する事業の一つとして、埋立事業を設置している。同事業については、同法34条の2本文により、被告知事が管理者の権限を行うこととされている。 ウ東京都は、東京都港湾管理者であり、その長である被告知事は、港湾法58条2項により、同港湾区域内の公有水面の埋立に係る埋立地について、公有水面法の規定による都道府県知事の職権を行う地位にあ る。 ウ東京都は、東京都港湾管理者であり、その長である被告知事は、港湾法58条2項により、同港湾区域内の公有水面の埋立に係る埋立地について、公有水面法の規定による都道府県知事の職権を行う地位にある。 エ被告出納員は、出納室勤務の副出納長をもって充てるものとされ(東京都特別企業出納員事務取扱規則3条)、被告知事から、地方公営企業法の規定の一部の適用を受ける準公営企業の業務に係る公金の支払及び保管の事務の委任を受けているものである(同規則4号)。 オ被告Kは、本件支出当時、東京都知事の地位にあったものである。 (2) 事実の経緯等(いずれも当事者間に争いがないか、各項目掲記の証拠により容易に認定できる事実である。)ア本件埋立事業の対象地である有明北地区は、東京港の港湾区域内の東京都江東区有明一丁目地先(別紙東京港図赤色斜線部分、本件埋立地)に位置し、昭和31年8月から、有明貯木場として使用され、西側部分は平成6年度まで、東側部分は平成7年度まで、原木貯留のための専用許可が行われていたが、平成12年3月31日、貯木場としての供用が廃止された。 イ東京都は、昭和61年11月、「第2次東京都長期計画」(乙8)を策定し、有明地区を含む地域を臨海副都心と定めるとともに、同地区を埋め立て、国際化にも対応した居住機能の立地を進め、あわせて商業や文化等の機能の導入を図ることとした。 ウ東京都は、上記の「第2次東京都長期計画」に基づき、昭和63年3月、「臨海部副都心開発基本計画」(乙9))を策定し、有明北地区の埋立面積を約41ヘクタールとし、超高層、中高層の住宅を中心に配置することとした。 エ東京都は、平成元年4月、「臨海副都心開発事業化計画」(乙12)を策定し、埋立地の幹線道路周辺に業務・商業施設を配置し、背後に超高層、高層の住宅を生活関連施設とともに 中心に配置することとした。 エ東京都は、平成元年4月、「臨海副都心開発事業化計画」(乙12)を策定し、埋立地の幹線道路周辺に業務・商業施設を配置し、背後に超高層、高層の住宅を生活関連施設とともに配置することとした。 オ被告知事は、平成7年7月18日、臨海副都心開発について総合的な見直しを行うため、被告知事の諮問機関として「臨海副都心開発懇談会」を(乙13)、また、東京都議会は、同年9月29日、「臨海副都心開発特別委員会」を(乙14)、それぞれ設置した。 カ東京都は、平成8年7月、前記オの「臨海副都心開発懇談会」の最終報告及び「臨海副都心開発特別委員会」の審議を受けて、「臨海副都心開発の基本方針」(乙15)を策定し、有明北地区については、自然環境を再生・保全し、うるおい豊かな水辺環境を創出する観点から埋立規模を縮小することとした。 キ東京都は、平成9年3月、「臨海副都心まちづくり推進計画」(乙18)を策定し、有明北地区の埋立地には、うるおい豊かな都市型住宅を配置し、ウォーターフロントの景観を生かした店舗等の設置を図ることとした。 ク東京港港湾管理者である東京都は、平成10年1月26日、上記の「臨海副都心まちづくり推進計画」に基づいて、港湾法3条の3第3項の規定に基づき、東京都港湾審議会の答申(乙19)を受けて、同年2月4日「東京港第6次改定港湾計画(一部変更)」(乙20、40)を決定し、有明北地区の埋立面積を、約35ヘクタールに縮小し、埋立の形状を定め、同月5日、港湾法3条の3第4項の規定に基づき、当該港湾計画を運輸大臣に提出した(乙21)。そして、同年3月30日、運輸大臣が東京港港湾管理者の長である被告知事に対し、港湾法3条の3第7項の規定に基づいて、「東京港第6次改定港湾計画(一部変更)」は港湾計画として適切であると認める旨通知した( て、同年3月30日、運輸大臣が東京港港湾管理者の長である被告知事に対し、港湾法3条の3第7項の規定に基づいて、「東京港第6次改定港湾計画(一部変更)」は港湾計画として適切であると認める旨通知した(乙22)ので、同年4月13日、東京港港湾管理者の長である被告知事がこれを告示した(乙23)。 ケ東京都は、東京都環境評価条例(昭和55年東京都条例96号)所定の手続きを経て、平成11年3月、本件事業に係る環境影響評価書(乙27)及びその概要(乙28)を作成し、被告知事(環境保全局)は、平成11年3月23日、同条例24条に基づき、本件事業に係る環境影響評価書の概要を公示し、翌24日から当該評価書を縦覧に供した(乙29)。 コ東京都は、平成11年8月11日、公有水面埋立法2条及び港湾法58条2項の規定により、東京港港湾管理者の長である被告知事に対して有明北地区の埋立免許(以下「本件埋立免許」という。)を出願した(乙30)。 サ東京港港湾管理者の長である被告知事は、平成11年8月20日、公有水面埋立法3条1項に基づき、本件埋立免許の出願があったことを告示し、同日、当該出願図書を縦覧に供した(乙32)。 シ東京港港湾管理者の長である被告知事は、平成11年9月17日、公有水面埋立法3条3項の規定に基づき、利害関係を有する東京都(環境保全局及び都市計画局)及び東京海上保安部に対し意見照会を行い、東京都の両局からは、留意すべき事項を指摘されたものの、いずれからも特に支障がない旨の回答を得た(乙33の1及び2、34の1及び2、35の1及び2)。 ス東京港港湾管理者の長である被告知事は、公有水面埋立法3条1項の規定に基づき、東京都江東区長に意見照会を行い、同区長から同年12月22日、同区議会の議決を経て「大枠で了承する」旨回答を得た(乙36の1及び2)。 セ被 である被告知事は、公有水面埋立法3条1項の規定に基づき、東京都江東区長に意見照会を行い、同区長から同年12月22日、同区議会の議決を経て「大枠で了承する」旨回答を得た(乙36の1及び2)。 セ被告知事は、平成12年2月22日、請負工事業者との間で平成11年度有明北地区浚渫工事請負契約(乙117)を締結し、同月29日、同じく平成11年度有明北地区しゅんせつ工事請負契約(その2)(乙118)を締結した(以下あわせて「本件各契約」という。)。 ソ東京港港湾管理者の長である被告知事は、本件埋立免許の出願が、公有水面埋立法4条1項各号の規定に適合すること及び同条3項1号の権利者の同意があることを認め、平成12年3月10日、公有水面埋立法47条1項及び同法施行令32条1号の規定に基づき、運輸大臣に対して本件埋立免許の認可を申請した(乙37)。 タ被告出納員は、平成12年4月19日、上記セ記載の各契約の代金としてそれぞれ1億0500万円及び1億2010万円の前払金を支払った。 チ運輸大臣は、平成12年8月17日、公有水面埋立法47条1項の規定に基づき、東京港港湾管理者の長である被告知事に対して、本件埋立免許について認可した(乙38)。 ツ東京港港湾管理者の長である被告知事は、平成12年8月17日、東京都に対して、公有水面埋立法2条1項の規定に基づき有明北地区の埋立について免許した(乙39)。 (3) 監査請求ア原告ら(ただし、原告Gの監査請求が有効であるか否かについては下記のとおり争いがある。)は、平成12年5月24日、法242条1項に基づき、東京都監査委員に対し「有明北地区埋立事業に対する公金支出差止、その他必要な措置を講ずること」を求める住民監査請求(以下「本件第1監査請求」という。)を行った(甲2の1ないし8)。 イ東京都監査委員は、平成6 員に対し「有明北地区埋立事業に対する公金支出差止、その他必要な措置を講ずること」を求める住民監査請求(以下「本件第1監査請求」という。)を行った(甲2の1ないし8)。 イ東京都監査委員は、平成6年6月26日付けで、上記アの監査請求は不適法である旨決定し、この旨請求人らに通知した(甲3)。 ウ 242号事件原告らほか2名は、平成12年6月30日、法242条1項に基づき、東京都監査委員に対し、本件埋立事業に係る免許交付前に本件各契約を締結し、本件支出をしたことが違法であるとして、被告知事に対し、「契約の取消しと前払金の回収その他の必要な措置を講ずること」を求める住民監査請求(以下「本件第2監査請求」という。)を行った(甲4の1ないし4)。 エ東京都監査委員は、平成12年8月28日、上記ウの監査請求につき、本件契約の締結に当たり事務処理に適切を欠く点が見受けられたので、港湾局に対し「公有水面の埋立事業に関する契約事務については、今後、公有水面埋立法に定める免許手続の趣旨を踏まえ、適切に行うよう努められたい。」との要望を行った上、同監査請求につき理由がない旨の決定をし、この旨請求人らに通知した(甲5)。 第3 本件の争点及び争点に関する当事者の主張 1 争点本件の争点は①被告知事及び被告出納員に対する訴えの適法性(争点1)、②本件埋立事業に係る違法性の存否(争点2)、③本件支出の違法性及びそれに基づく損害の存否(争点3)である。 2 争点1(被告知事及び被告出納員に対する訴えの適法性)に関する当事者の主張(1) 被告知事及び被告出納員ア監査請求前置(ア) 原告Gについて原告らがした本件第1監査請求において、原告Gは請求者となっておらず、同人の訴えは、監査請求を前置していない違法なものといわざるを得ない。 すなわち、原告らが自認するとおり、 ア) 原告Gについて原告らがした本件第1監査請求において、原告Gは請求者となっておらず、同人の訴えは、監査請求を前置していない違法なものといわざるを得ない。 すなわち、原告らが自認するとおり、原告Gの措置請求書には、署名はあったが、押印がされておらず、東京都監査事務局職員の指摘にもかかわらず、原告Gは、押印について補正をしなかったのであるから、法施行令172条1項及び法施行規則13条に照らし、適法な監査請求を行っていないものである。 (イ) 監査請求と本件訴えの対象の同一性住民訴訟において監査請求前置の要件を満たすためには、監査請求の対象とされた行為又は事実と、住民訴訟において対象とされたそれとが同一であることが必要である。 これを本件についてみると、原告らは、本件監査請求の「措置請求」において、「埋立事業への公金支出差止、その他必要な措置を講ずること」を求めており、これらの記載から、監査請求の対象に契約の締結もしくは履行、債務その他の義務の負担、または企業債若しくは地方債の起債手続の差止めが含まれるとは解されず、また、前記公金支出から、契約の締結若しくは履行、債務その他の義務の負担、または企業債若しくは地方債の起債手続が派生し、又はこれに後続することが当然に予測されるものとは解されない。 したがって、本件訴えにおいて差止めの対象とされた行為のうち、契約の締結若しくは履行、債務その他の義務の負担、または企業債若しくは地方債の起債手続の差止めは、本件監査請求の対象と同一性を有せず、この部分については監査請求を経ていないというべきである。 イ回復の困難な損害を生ずるおそれの不存在法242条の2第1項1号に定める差止請求の訴えは、当該行為により地方公共団体に回復の困難な財産的損害が生じるおそれのあることが訴訟要件と解するべきである。 復の困難な損害を生ずるおそれの不存在法242条の2第1項1号に定める差止請求の訴えは、当該行為により地方公共団体に回復の困難な財産的損害が生じるおそれのあることが訴訟要件と解するべきである。 これを、本件についてみれば、本件埋立事業に要する費用は、埋立事業費400億円及び補償金(調査費含む)129億円の合計529億円であり、これに企業債利子120億円及び地区内道路等の基盤整備費を含む収支差額予定金101億円を加えても750億円であるところ、これに対して本件埋立事業によって東京都が所有権を取得する土地の価格を、本件埋立地に最も近接する東京都基準地の平成12年東京都基準地価格をもって見積もると約1232億円と算定され、本件埋立事業に要する費用を相当上回っているから、本件埋立事業の実施は採算性のある事業なのであり、同事業に係る公金の支出、契約の締結若しくは履行、債務その他の義務の負担、企業債若しくは地方債の起債は、東京都に何ら回復困難な財産的損害を生ぜしめないものである。また、仮に、本件埋立事業に原告らが主張する違法事由が存するとしても、請負工事に対する対価の支払を目的とするものであるから、東京都に損害が生ずることはあり得ない。 したがって、本件訴えは、法242条の2第1項柱書き中のただし書きに定める「回復の困難な損害を生ずるおそれがある場合」に当たらないから不適法な訴えである。 (2) 原告ア監査請求前置(ア) 原告Gの訴え原告らは、平成12年5月24日、本件埋立事業に関する公金支出について住民監査請求を行ったが、その際、原告G及びCの措置請求書には、署名はあったが押印がされていなかったため、事務局の職員から押印がない者の措置請求は無効であるとの見解が示された。そのため、原告Cは、同人の措置請求書を持ち帰り、押印の後再び持参したが 置請求書には、署名はあったが押印がされていなかったため、事務局の職員から押印がない者の措置請求は無効であるとの見解が示された。そのため、原告Cは、同人の措置請求書を持ち帰り、押印の後再び持参したが、原告Gの措置請求書は、監査委員事務局に保管されている。 法令上、措置請求書に請求者の押印をしなければならないと定めた規定はなく、原告Gの住民監査請求は有効にされたものであり、東京都監査委員は、法242条2項の規定に従って監査請求を行わなければならないにもかかわらず、違法に監査を行っていないだけであり、原告Gの訴えは、適法な監査請求を経たものとして適法である。 (イ) 監査請求と訴えの対象の同一性原告らの監査請求の趣旨は、本件埋立事業を行うことにより損失が増大することが確実であるから、本件埋立事業に関する財務会計上の行為は法等に違反する違法なものであるというものであり、これにかんがみれば、原告らが措置請求で求めた「その他の必要な措置」に契約締結等の差止めが含まれることは明らかであり、監査請求と本件訴えの対象は同一であるというべきである。 仮に、「その他必要な措置」に契約の締結等が含まれていると解し得ないとしても、本監査請求における措置請求で原告らが求めた措置と本件訴えの請求内容とは、対象となる行為の行為者、監査対象、違法事由の各点において同一であり、本件監査請求と本件訴えとは、対象となる行為者及び行為が同一なものにつき、違法事由を追加し、求める措置を特定したにすぎず、実質的にみれば、同一性があることは明らかである。 イ回復困難な損害を生ずるおそれ(ア) 後記3(3)ア(ア)のとおり、本件埋立事業へ公金支出等を行っても、それに見合うだけの結果が得られないどころか、莫大な財政赤字が残るだけであるというものであり、投入した資本に見合うだけの収益を得 ) 後記3(3)ア(ア)のとおり、本件埋立事業へ公金支出等を行っても、それに見合うだけの結果が得られないどころか、莫大な財政赤字が残るだけであるというものであり、投入した資本に見合うだけの収益を得ることができない事業への資金の投入により損害が生じることは明らかである。 (イ) 本件埋立事業に関する免許は、後記のとおり違法であり、無効又は取消し得べきものである。無効又は取消し得べき埋立免許に基づく埋立の法律効果は、免許を受けないで埋立工事をした場合と同一であって、東京都は、本件埋立事業の原状回復義務を負い(公有水面埋立法36条、同法35条1項)、仮に、原状回復義務を免除されたとしても、埋立地の所有権は無償で国に帰属することとなるため、本件埋立事業に関する公金支出が全て無駄となる結果を招く。 3 争点2(本件埋立事業に係る違法性の存否)に関する当事者の主張(1) 被告知事及び出納員ア本件埋立事業が地方公営企業法等に違反しないこと本件埋立事業は、前記2(1)イのとおり、経済的合理性を有し、地方公営企業法3条、地方財政法4条1項及び法2条14項の各規定に反するものではないから、本件各公金支出は適法である。 イ本件埋立事業が公有水面埋立法に違反しないこと本件埋立事業は、公有水面埋立法4条1項の定める国土利用上適正かつ合理的であること(1号)、その埋立が環境保全及び災害防止につき十分配慮せられたるものなること(2号)、埋立地の用途が土地利用又は環境保全に関する国又は地方公共団体の法律に基づく計画に違背せざること(3号)、埋立地の用途に照らし公共施設の配慮及び規模が適正なること(4号)、第2条第3項第4号の埋立にありては出願人が公共団体その他政令を以て定むる者なること並びに埋立地の処分方法及び予定対価の額が適正なること(5号)、出願人がその埋立を遂 及び規模が適正なること(4号)、第2条第3項第4号の埋立にありては出願人が公共団体その他政令を以て定むる者なること並びに埋立地の処分方法及び予定対価の額が適正なること(5号)、出願人がその埋立を遂行するに足る資力及び信用を有すること(6号)の各要件を充足し、適法である。 ウ本件埋立事業は環境影響評価条例に反しないこと東京都が埋立事業を実施するに当たって、環境影響評価条例の各規定に基づき本件埋立事業の環境影響評価を行った結果、本件埋立事業が大気汚染、悪臭、騒音、振動、水質汚濁、植物・動物及び景観に与える影響が少ないことから、本件埋立事業が環境影響評価条例に適合する事業である。 (2) 被告K本件埋立事業の適法性に関する主張は、被告知事の主張を援用する。 (3) 原告らア地方公営企業法違反(ア) 本件埋立事業に経済的合理性がないことa 本件埋立地の評価(a) 基礎となる地価について被告らの計画上の地価及び将来における地価上昇予測はおよそ根拠がない。 被告らは、近隣の土地である平成12年度東京都基準地価格の江東区有明一丁目5番9外2面の基準地価格は、1平方メートル当たり35万円であるが、平成13年度の同土地の価格は、下げ止まらない地価を反映して1平方メートル当たり33万5000円に値下がりし、翌14年度には下落は免れたものの横ばいであった。被告らの資金計画では平成12年以降2パーセントの地価上昇を見込んでいるところ、現実にこの計画は実現不可能となっている。そして、江東区の地価が平成7年から一貫して大幅に下落し、また、デフレが進行し、今後地価上昇の要因も見いだせない現状においては、被告らの計画とは逆にしばらくの間地価の下落が続くことがむしろ相当の確実性を以て予測される。さらに、創設される土地が埋立地であることから必要となる土地の沈下 価上昇の要因も見いだせない現状においては、被告らの計画とは逆にしばらくの間地価の下落が続くことがむしろ相当の確実性を以て予測される。さらに、創設される土地が埋立地であることから必要となる土地の沈下対策、液状化対策等の費用、近年の住宅及びオフィスビルの供給過剰、現に臨海副都心地区における需要がないことなど、本件埋立地については価格を押し下げる要因が目立ち、本件埋立地の評価は、近隣土地の評価をさらに下回ることが容易に予測される。 (b) 評価対象面積について本件埋立地は35.2ヘクタールであるが、その中には公園道路部分、雨水ポンプ施設用地など処分が不可能あるいは不適当な部分が多く含まれており、東京都の計画によったとしても、実際に処分可能な土地は35.2ヘクタール中の約20.7ヘクタールにすぎない。これらの土地を東京都が民間に売却するなどして換価処分することは予定されておらず、本件埋立事業の経済性を判断するという観点からの資産評価は0である。 したがって、東京都が本件埋立事業によって本件埋立地の所有権を取得することにより東京都が得る可能性のある利益は、20.7ヘクタールをもって評価がされなければならない。 (c) 現時点での予測評価額被告らの主張する計算方法によった場合、平成14年度の前記基準地の価格は1平方メートル当たり33万5000円であるから、今後のさらなる値下がりの可能性を一切考慮せずに同評価時点の地価により前記(b)の面積に基づいて計算したとしても、東京都が取得する処分可能な本件埋立地の価格は約693億4500万円である。 前述した本件埋立地固有の地価を押し下げる要因及び一般に地価下落が続く現状においては、今後本件埋立地を処分したとしても、その総額が前記価額を下回る可能性が高い。 b 本件埋立事業の費用(a) 計上されるべき費用 立地固有の地価を押し下げる要因及び一般に地価下落が続く現状においては、今後本件埋立地を処分したとしても、その総額が前記価額を下回る可能性が高い。 b 本件埋立事業の費用(a) 計上されるべき費用本件埋立地を創出することにより、被告らの認める埋立費用、調査費用及び起債利息の他、基盤整備費、区画道路整備費及び土地区画整理事業等の諸費用が必要となるところ、これらを含め本件埋立地を創出することにより支出が必要となる一切の費用が本件埋立事業と相当因果関係のある費用として考慮されなければならない。 (b) 原告らの調査により判明する費用本件埋立事業に関しては、少なくとも埋立事業、調査補償費及び起債利息として合計649億円、区画整理事業費として480億円、公園道路整備費として100億円及び区画道路整備費として90億円の合計1319億円の費用が必要となる。ただし、これらは現実に本件埋立事業に必要な費用の一部に過ぎないと推測される。 (c) 他の埋立地における実例東京都埋立事業報告書や東京都埋立事業会計決算審査意見書等によると、平成9年度に処分した埋立地の処分原価は73万2004円、平成11年度の同処分原価は59万3077円、平成12年度の同処分原価は43万6731円となり、これらの実例からすると、どんなに少なく見積もっても1平方メートル当たり40万円を下らない費用を要することが明らかである。 これを本件埋立事業に当てはめると、少なくとも1408億円を要することとなる。 c 結論以上によれば、本件埋立事業に対しては、少なくとも1408億円の費用が必要である一方、それにより多くても693億4500万円の価値の土地しか創設されず、結果、東京都に赤字が生じること、すなわち、本件埋立事業に経済的合理性はなく、地方公営企業法3条に違反することは明らかである。 一方、それにより多くても693億4500万円の価値の土地しか創設されず、結果、東京都に赤字が生じること、すなわち、本件埋立事業に経済的合理性はなく、地方公営企業法3条に違反することは明らかである。 (イ) 本件埋立事業に必要性がないことa 住宅地について東京都は、本件埋立事業を必要とする理由として、住宅地供給の必要性を挙げ、本件埋立地のうち25.4ヘクタールを住宅用(複合用を含む。)として使用すべき土地として計画しているが、都心に低・未利用地が多数存在するのであるから、それを利用するのが第一であり、それで足りるといえる。臨海部にも低・未利用地が多数存在し、莫大な公金支出を行って新たに埋立をする必要性は存しない。また、江東区及び東雲地区に高層住宅が造られるなど、臨海副都心周辺の住宅地は既に供給過剰の状態であり、いまだ埋立がされていない有明北地区を新たに埋め立てることによる住宅の供給という意義は完全に失われている。 また、本件埋立地付近は、東京でも1、2を争う大気汚染地帯となっていることや、本件埋立地付近には幹線道路3本、高速道路1本が建設されることになっており、大気汚染や交通騒音に悩まされることが必至であり、住環境としても不適切である。 b 商・業用地について本件埋立地は、住宅地の他、商・業用地として計画がされているが、都心のオフィスビルも、汐留や品川駅周辺などに超高層ビルが次々と完成し、すでに供給は過剰状態にある。さらに、現在も着々と新たな高層ビルの建築が進み、オフィスビルの供給は著しく過剰になり、空室率が大幅に上昇している。 また、臨海副都心における既存の埋立地については、本訴提起後現在に至るまでの約3年間の実績をみてもほとんど買手のない状態のまま放置されており、臨海副都心における商・業用地としての需要がないことは実証されている。 都心における既存の埋立地については、本訴提起後現在に至るまでの約3年間の実績をみてもほとんど買手のない状態のまま放置されており、臨海副都心における商・業用地としての需要がないことは実証されている。 c 環境破壊の点について本件埋立地付近は、東京湾にわずかに残された魚介類や鳥類の生息地であり、自然豊かな浅瀬である。また、本件埋立地付近では、環境庁のレッドリストにも指定されている絶滅危惧種である「エドハゼ」の生息も確認されており、本件埋立事業がこのような絶滅危惧種を含む多くの魚介類の生息状況に悪影響を与えることが必至である。このように環境保全への配慮を欠いたまま、自然を破壊してまで需要のない住宅地や商・業用地等を創設する必要はない。 d 結論本件埋立事業は、その必要性も乏しいものである。 (ウ) 以上より、本件埋立事業には、経済的合理性がないことが明らかであることに加え、その必要性も乏しいものであるから、地方公営企業法3条に違反するものであることは明らかである。 イ公有水面埋立法4条違反について(ア) 本件埋立事業は下記のとおり、国土利用上適正さを欠き環境保全への配慮を欠いたものであり、公有水面埋立法4条各号の免許基準を満たさない重大かつ明白に違法なものである。 (イ) 大気汚染について本件埋立地付近の平成8年度の二酸化窒素の濃度は、現段階で環境基準をはるかに越え、さらに、ダイオキシンの発生総量計算は、23区の中でも飛び抜けた最高値を出しており、東京でも1、2を争う大気汚染地帯となっている。そして、埋立地には、幹線道路3本、高速道路1本が500m及び800m間隔で建設されることになっているが、その結果、埋立地付近はさらなる自動車排気ガス汚染と交通騒音に悩まされることが必至である。 なお、被告らの行った環境影響評価は、4本の大型道路の自動 及び800m間隔で建設されることになっているが、その結果、埋立地付近はさらなる自動車排気ガス汚染と交通騒音に悩まされることが必至である。 なお、被告らの行った環境影響評価は、4本の大型道路の自動車交通の影響を取り入れた大気汚染の予測・評価を実施しておらず、実態を反映していない誤ったものである。 (ウ) 悪臭について被告らは、浚渫による悪臭を脱臭剤等で防ぐことができる旨主張するが、他の港での浚渫工事における脱臭剤の使用実例を示すこともできず、脱臭剤の効果及び生物に対する毒性の評価についても、全く説明を行うことができず、浚渫工事に伴う悪臭により周辺の環境が悪化することは必至である。 (エ) 騒音・振動について埋立工事に伴う工事車両に伴う騒音、建設機械による騒音は埋立地周辺の環境を著しく悪化させることが明らかであり、被告らは、この点について明確な反論をすることができないままである。 江東区から騒音測定器を借りて調べた結果によれば、70デシベル以上となる時間帯が圧倒的に多いとのことであり、その騒音は受忍限度を超えるものである。 (オ) 水質汚濁について平成10年12月17日に行われた東京都環境科学研究所の公開発表会の「東京湾内に生息する生物と浄化機能」という発表中において、「浅場では、水生生物の割合が沖合に比べて4~5倍も多く、また、都内湾全体のCOD浄化量のうち、約80%は水深10m未満の沿岸域が担っている。」と報告されており、有明北水面を埋め立てることにより、東京湾内の浄化作用が悪化することは明らかである。 (カ) 陸上動物について鳥類は、一般には人がにぎわう場所を好まないし、箱庭のような汐入に葦を植え止まり木を設けるなど海浜公園を整備しても鳥は集まらない。さらに、埋立によりCODが高くなり水質が汚濁することは明らかであり、そうした水 般には人がにぎわう場所を好まないし、箱庭のような汐入に葦を植え止まり木を設けるなど海浜公園を整備しても鳥は集まらない。さらに、埋立によりCODが高くなり水質が汚濁することは明らかであり、そうした水域に鳥類が集まることはあり得ないし、残された水域の利用を再開するなどということも常識としてあり得ない。 (キ) 水生生物について埋立予定地の貯木場には、実際に非常に多くの水生生物がおり、環境庁のレッドリストにも指定されている絶滅危惧種である「エドハゼ」の生息も確認されている。また、本件埋立地にはマハゼの産卵孔も観察されている。 そもそも、本件埋立地は、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)」1条の湿地であるところ、同条約4条は、登録の有無を問わず湿地の保全促進を定めており、本件埋立免許が鳥類の生息状況に悪影響を与えるのは必至である以上、本件埋立免許は同条約に違反するものである。被告らの主張する「干潟機能を持った汐入に泥だまりを設け、浚渫土を入れることにより、底生動物の生育環境に配慮する」という手法や、「埋立による水生生物の消滅を近自然ブロック、緩傾斜型護岸で補う」という方法は、全く科学的根拠を欠く工法であり、水生生物の保護に何ら効果が期待できない。前記(オ)の公開発表会の前記発表では、緩傾斜型護岸でのCOD浄化量は最低であることが報告されている。 被告らの「魚も鳥も工事中は他の場所に一時的に避難するので影響は少ない」という評価自体が、被告らの環境保全に対する認識の根本的な誤りを端的に現している。水面が35ヘクタールなくなることが、魚や鳥などの生き物にどのような影響を与えるかという点を評価すべきである。 ウ環境影響評価条例違反東京都環境影響評価条例9条2項は、事業者が「相互に関連する2以上の対象事業」を行うと なることが、魚や鳥などの生き物にどのような影響を与えるかという点を評価すべきである。 ウ環境影響評価条例違反東京都環境影響評価条例9条2項は、事業者が「相互に関連する2以上の対象事業」を行うときは、これら対象事業も合わせた評価書案を作成すべきことを定めているものであり、それぞれの対象事業ごとの評価書が提出されているだけでは足りず、相互に関連する複数の対象事業を合わせた事業全体の環境評価書案を作成しなければならないのであって、この事業全体の評価が行われておらず、本件埋立事業は同条例に違反するものである。 4 争点3(本件支出の違法性及びそれに基づく損害の存否)に関する当事者の主張(1) 被告Kア本件各契約に基づく前払金は、現場における工事着手の前に行う作業(①実施工程表、安全管理体制等を定めた施工計画書の作成、②労働基準法等に基づく労働基準監督署への届出等の諸法令に基づく手続、③施工機械の準備、作業労働者の確保等、現場の着手に向けた準備)に要する経費に充てるために、本件各契約に基づいて、請負工事業者からの請求を受けて支払ったものである。 イ公金の支出である前払金支出の権限は、被告出納員に委任されており、被告知事の権限ではないから、本件前払金の支払をもって、被告Kの財務会計行為とするのは誤りである。そして、本件各契約につき無効とすべき事由はないから、被告Kについて、被告出納員に対する指揮監督上の過失が存在することもない。 ウ本件各契約は、手続上いささかの瑕疵もなく、また、私法上も有効に成立しているのは明らかであって、同契約に基づいてした所定の前払金の支払いは、本件各契約の注文者である東京都の契約上の義務の履行としてされたものであり、この支払いをもって、東京都の損害であると認定する余地はない。 エ原告らの主張する法令違反を前提にしても、 前払金の支払いは、本件各契約の注文者である東京都の契約上の義務の履行としてされたものであり、この支払いをもって、東京都の損害であると認定する余地はない。 エ原告らの主張する法令違反を前提にしても、公法面から手続きを規定した法規に違反してされた契約が私法上当然に無効となるものではないことにかんがみれば、本件各請負契約が無効となることはなく、私法上有効に成立していることは明らかで、その契約に基づく義務の履行を東京都の損害であると観念する余地はない。 (2) 原告ら本件埋立事業に関しては、公有水面埋立法等の規定により、港湾管理者であるとの免許が必要であり、都が免許するに当たっては運輸大臣(当時)の認可が必要である。ところが、被告Kは、いまだ免許申請すら行われていないにもかかわらず、本件埋立事業に関する請負契約を各工事業者と締結した上、何ら認可が出ておらず、その後、工事を行うことになるか否かも不明であるにもかかわらず、平成12年4月19日に工事請負代金名目で、合計2億2510万円を前払した。 上記行為については、東京都監査委員も「契約事務処理に適切を各点が見受けられた」と指摘するとおり、違法・不当なものであることが明らかである。このような前払金の支払行為は、そもそも東京都にとって何ら必要な行為ではないし、もし埋立免許の認可が下りなかった場合には、当然に工事業者らからの回収をする必要が生じるが、そこにはデフォルトや倒産等のリスクも伴い、業者の利益にこそなれ、何ら東京都の利益になることではない。 また、前払金の支払が業者からの請求に基づくものだとしても、そもそも認可前にもかかわらず契約を締結していること自体が違法であり、業者も当然にそのことは知っていたはずである。 いずれにせよ、東京都が認可前に契約を締結したり、前払金を支出することについては、業者 もそも認可前にもかかわらず契約を締結していること自体が違法であり、業者も当然にそのことは知っていたはずである。 いずれにせよ、東京都が認可前に契約を締結したり、前払金を支出することについては、業者の利益にこそなれ、何ら東京都の利益にはならない。そして、被告Kも、認可がないにもかかわらず契約締結や前払金の支払を行った理由を未だ明らかにし得ないでいる。 このように、上記の2億2510万円については、適法な手続の下では、何ら東京都が支出を要しないはずのものであった。にもかかわらず、東京都が2億2510万円の支出を余儀なくされたのは、被告Kの違法行為に起因することが明らかであるから、東京都は被告Kの違法行為により2億2510万円の損害を被った。 第4 争点に関する当裁判所の判断 1 原告Gに係る監査請求前置(争点1、その1)原告らが平成12年5月24日に本件第1監査請求をした際、原告G及び同Cの措置請求書には、署名がされていたが押印がされておらず、この点につき事務局の職員から押印がない者の措置請求書は無効であるとの見解が示されたため、原告Cは、同人の措置請求書を持ち帰り、押印の後、再度監査請求事務局に提出したが、原告Gの措置請求書は、事務所に保管されたままであることは、原告らが自認するところである。 そして、法施行令172条2項は、住民監査請求の請求書は、自治省令(当時)で定める様式によりこれを調整しなければならないと規定し、法施行規則13条及び別記様式によれば、住民監査請求の請求者は、請求書の請求者欄に住所、職業を記載し、氏名を自署し、押印をすべきものとされているのであり、原告Gの監査請求は、形式的には法施行令及び法施行規則の定めに従っていないこととなる。 しかし、前記の各規定が請求人に対し自署に加え押印をも求めている趣旨は、請求人が真に監査 のとされているのであり、原告Gの監査請求は、形式的には法施行令及び法施行規則の定めに従っていないこととなる。 しかし、前記の各規定が請求人に対し自署に加え押印をも求めている趣旨は、請求人が真に監査請求をする意思をもって監査請求をしたのかどうかを確認するためのものであると解されるから、仮に押印がされていなかったとしても、当該監査請求が請求人の意思に基づくものであることが確認できる以上、押印が欠けたことのみによってその監査請求を不適法とするのは相当ではないというべきである。本件第1監査請求について、原告Gが自署していたことは当事者間に争いがなく、他に監査請求が原告Gの意思に基づかずにされたと認めるに足りる特段の事情は存しないのであるから、原告Gの監査請求が自らの意思に基づいてされたことは明らかであるといえる。そうすると、原告Gのした監査請求は、適法なものと扱われるべきであり、これを理由に、原告Gが適法な監査請求を経ていないとする被告知事及び同出納員の主張は採用し得ない。 2 監査請求と住民訴訟の同一性(争点1、その2)甲第2号証の1によれば、原告らは、本件第1監査請求の監査請求書に、本件埋立事業への公金支出差止め及びその他必要な措置を講ずることを求める旨を記載し、その根拠としては、埋立事業が都財政を逼迫させ、最終的には都民がそのつけを負わされることになることが、法2条13項及び地方公営企業法3条に違反することや埋立事業が環境を破壊すること等を挙げている。 そうすると、当該監査請求は、本件埋立事業が経済的合理性を欠き、また、環境を破壊する違法なものであることを原因として、本件埋立事業に係る公金の支出の差止めを求めるとともに、それを代表的なものとして挙げながらも、求める措置を公金支出差止に限定することなく、公金の支出をはじめとする埋立事業に係る あることを原因として、本件埋立事業に係る公金の支出の差止めを求めるとともに、それを代表的なものとして挙げながらも、求める措置を公金支出差止に限定することなく、公金の支出をはじめとする埋立事業に係る財務会計行為全般を「その他必要な措置」として問題視し、必要があればそのような財務会計行為の差止めを求めているものと解すべきである。そうすると、原告らが本件訴訟において差止めを求めた本件埋立事業に係る契約の締結・履行、債務その他の債務の負担、企業債若しくは地方債の起債手続の各財務会計行為も、原告らが本件第1監査請求において措置請求の内容とされているものと解される。 したがって、本件第1監査請求と住民訴訟の対象が同一性を欠くとの被告知事及び同出納員主張は採用し得ない。 3 本件埋立事業により回復の困難な損害を生じるおそれがあるといえるかについて(1) 「回復の困難な損害を生じるおそれがある場合」の意義等法242条の2第1項1号は、地方公共団体の住民に普通地方公共団体の執行機関又は職員による財務会計上の違法な行為を予防するために、当該行為の差止請求権を認めたものである。このような制度の趣旨及び目的からすると、同項ただし書にいう「回復の困難な損害を生ずるおそれがある場合」とは、当該行為により普通地方公共団体が事後的に回復することが困難な財産的損害を被るおそれがある場合をいうと解するのが相当である。そして、住民訴訟は、自己の法律上の利益に直接かかわらない事項につき、普通地方公共団体の住民という資格で特に法によって出訴することが認められている民衆訴訟の一種であり、このうち同項1号所定の差止請求訴訟は、事後的な請求によっては目的を達することができない場合に限って提起することが認められる訴訟類型とみるべきであることによれば、回復困難な損害を生ずるおそれがない 、このうち同項1号所定の差止請求訴訟は、事後的な請求によっては目的を達することができない場合に限って提起することが認められる訴訟類型とみるべきであることによれば、回復困難な損害を生ずるおそれがないにもかかわらず提起された差止請求訴訟は、法により特に出訴が認められた住民訴訟の類型に該当しない訴えとして不適法といわざるを得ない(最高裁判所第三小法廷平成12年12月19日判決民集54巻9号2748頁)。 (2) 本件埋立事業の経済的合理性ア甲第31号証及び乙第92号証によれば、東京都は、本件埋立事業に要する費用として、埋立工137億9800万円、護岸工245億9400万円及び撤去工16億0800万円の埋立造成事業費小計400億円並びに関連工事として6億6800万円の合計406億6800万円の支出を見積り、その費用は都費6億6800万円及び起債400億円により調達するものとして、起債の償還は平成22年度(11年次)から26年度(15年次)にかけて行い、平成26年度(15年次)までの企業債利子は120億円に上るものと計算していたこと、このほかに埋立に係る補償・調査費129億円を加えると、本件埋立に要する費用の総額は629億円となること、他方、本件埋立地について、公園用地、雨水ポンプ施設、道路等の部分を除いた処分可能な土地約20.7ヘクタールを13の区画に区分し、平成20年度(9年次)に各区画を譲渡又は賃貸により処分することを計画しており、各土地の処分価格については、平成10年3月31日における近傍類似の土地価格に基づき埋立地の基準地価格を1平方メートル当たり138万円とし、地価上昇率について、平成11年度までは横ばい、平成12年度から16年度まで2パーセント、平成17年度以降は3パーセントと見積もり、それによる価格に、品等比較、画地条件、容積格差、用 138万円とし、地価上昇率について、平成11年度までは横ばい、平成12年度から16年度まで2パーセント、平成17年度以降は3パーセントと見積もり、それによる価格に、品等比較、画地条件、容積格差、用途格差の個別要因を考慮した上で算出したこと、処分価格の合計は、譲渡代金と賃貸物件の権利金の合計が628億9671万6000円、賃貸収入は、平成20年度(9年次)において14億7771万1000円で、3年ごとに3パーセント上昇するものとして、平成27年度(16年次)までに121億3492万4000円となり、平成27年度(16年次)までの収入の合計は1150億3164万円に上ると予定していたことが認められる。 イ原告らは、上記の見積もりが合理性を欠くものとして、前記第3、3(3)記載の主張をするため、以下それぞれについて検討する。 (ア) 創設される埋立地の評価についてa 原告らは、被告らが算出した処分価格の合計には、本件埋立地のうち、公園道路部分、雨水ポンプ施設など処分に不可能又は不適当な部分の価格が含まれている旨を主張するが、前記アのとおり、処分価格は、公園用地、雨水ポンプ施設、道路等を除いた土地を13の区画に区分し、その面積に応じて土地の価格を算出しており、13区画の合計面積は、原告らが主張する20.7ヘクタールになるのであるから、原告らの指摘は誤りというほかない。 b 原告らは、近隣の基準地の価格が、平成13年に値下がりし、平成14年も横ばいであったことを指摘し、被告が平成12年度以降2パーセント、平成16年度以後3パーセントの値上がりを見込んで算出していることに根拠はない旨を主張し、甲第26号証によれば、そのような事実が認められるが、その事実を前提に考えたとしても、平成13年から平成14年まで、その地価は下落しておらず、ほぼ横ばいの状態となっ いることに根拠はない旨を主張し、甲第26号証によれば、そのような事実が認められるが、その事実を前提に考えたとしても、平成13年から平成14年まで、その地価は下落しておらず、ほぼ横ばいの状態となっており、乙第88号証及び第97号証によれば臨海副都心地域における埋立地において売却方式による事業予定者が決定していることや、乙第98号証及び第99号証によれば平成15年1月1日現在の路線価が都心地域において上昇に転じていると認められること等にかんがみれば、少なくとも本件埋立地の価格が大幅に下落する可能性は低く、少なくとも横ばいの傾向が続くものと認められる。 そこで、被告らの見積もりのうち、年2パーセント又は年3パーセントの地価上昇、3年ごとに3パーセントの賃料の上昇を折り込まずに計算した場合、平成20年度における土地の処分価格は約506億円(628億9671万6000円÷1.242653)となり、また同年度における単年度の賃貸収入は、約11億8915万円(14億7771万1000円÷1.242653)となり、これに、賃貸開始時から起債償還時までの7年を乗じると約83億2405万円となり起債償還時までの合計は589億円となる。 そうすると、仮に、原告らが指摘する点を考慮し、土地の価格上昇率を考慮せず、地価が現時点でのものと同額程度で推移することを前提として評価すると、起債償還時までの収入は支出を約40億円程度下回ることとなるが、上記賃貸収入は、賃貸期間である30年が満了するまでさらに23年にわたって毎年発生するのであるから、なお270億円あまりの収入が見込まれることとなり、結局、収入金額は826億円程度に達し、本件事業が収入を上回る支出を要することはないこととなる。 c また、原告らは、近隣の基準地である江東区有明一丁目5番9外2面の土地が35万円である ることとなり、結局、収入金額は826億円程度に達し、本件事業が収入を上回る支出を要することはないこととなる。 c また、原告らは、近隣の基準地である江東区有明一丁目5番9外2面の土地が35万円であること及び前記a主張の売却可能土地の面積が20.7ヘクタールであることによれば、本件埋立地の価格が693億円にすぎない旨主張するが、乙第88号証によれば、平成14年度に公募された臨海副都心地区の土地賃貸に当たり算出された土地価格は、1平方メートル当たり83万9700円から138万1700円となり、35万円を大きく上回るものであるから、原告らの主張は前提に疑問がある。また、甲第31号証により認められる被告らの処分計画によれば、本件土地を13区画に区分し6区画は譲渡を行うものの、7区画については賃貸を行い、資産として所有したまま、賃貸収入を得る旨の計画をしているのであるから、原告らが主張するような方法により算出された価格を事業費と比較すること自体にも疑問があるといわざるを得ない。 (イ) 本件埋立事業に要する費用について原告らは、本件埋立事業には、埋立事業費、調査補償費、起債利息合計649億円に加え、少なくとも区画整理事業費480億円、公園道路整備費100億円及び区画道路整備費90億円の合計1319億円が必要であり、また、他の事業における処分原価によれば、処分原価は1平方メートル当たり40万円を下らないとし、本件土地の面積によれば約1408億円を要する旨主張する。 しかし、乙第91号証の1及び2、第104号証によれば、原告らが主張する土地区画整理事業はその事業名こそ「有明北土地区画整理事業」と称するものの、その施行地区は、本件埋立地に隣接する土地であり、本件埋立地を施行地区とするものではなく、その費用はもともと同事業の費用として支出されるものであるこ 業名こそ「有明北土地区画整理事業」と称するものの、その施行地区は、本件埋立地に隣接する土地であり、本件埋立地を施行地区とするものではなく、その費用はもともと同事業の費用として支出されるものであることが認められるから、これを本件埋立事業に要する費用に含めることは妥当ではない。また、本件埋立完成後、公園道路整備に費用を要することは明らかであり、この費用は本件埋立のために要する費用であるというべきであるが、本件書証をもってもこれにどの程度の金額を要するかは必ずしも明らかではないものの、その額が、前記(ア)で低く見積もった収入金額862億円と本件埋立に要する649億円との差額を上回るとは到底考えられない。 また、原告らは、他の埋立地の処分の実例を挙げ、それら実例における処分原価から、本件埋立事業には少なくとも約1408億円を要する旨の主張をするが、埋立事業における処分原価の大部分は、埋立工事であるところ、その金額は、原告らがその主張の根拠とする甲第33号証ないし第35号証により認められる平成9年、同11年及び同12年の処分原価に大幅な変動が見られるように、具体的な工事の内容によって大きく異なるものであるから、前記のような概算により処分原価を推認することはできないものというべきである。 (ウ) 以上によれば、原告ら指摘の点は、採用し得ないものか、仮に採用するとしても、本件埋立事業の経済的合理性を左右するに至らないものというべきである。 なお、被告らの見積もりのとおりの収入が得られるためには、実際に被告が計画するとおりの処分がされることが必要であり、それは、その時の経済状況や周辺地域の不動産の需給の状況にもかかわることであり、実現可能性について危惧がないでもないが、少なくとも、そのような事態が永続的に生ずるとは考えられず、東京都が処分し得べき財産を所 その時の経済状況や周辺地域の不動産の需給の状況にもかかわることであり、実現可能性について危惧がないでもないが、少なくとも、そのような事態が永続的に生ずるとは考えられず、東京都が処分し得べき財産を所有することにはなるのであるから、仮に処分が容易でない状況が一時的に生ずるとしても、そのことが本件埋立事業の経済的合理性を失わしめるものとはいえない。 このように本件事業の見積もりの合理性に疑いを抱かせる事由が見当たらない以上、本件埋立事業を行うこと自体によって東京都に回復困難な財産的損害が生じるおそれがあるとは認められないこととなる。 (3) 本件埋立事業の違法性ア原告らは、本件埋立事業が違法であり、本件埋立事業に係る免許が無効又は取り消し得るものであった場合、都が原状回復の義務を負うなどの損害を被り、「回復の困難な損害を生じるおそれ」が存する旨を主張する。 しかし、上記免許については、今日に至るまでその効力を争う争訟手続がとられた形跡がないから、これが取り消されることは想定し難く、都が原状回復義務を負うのは上記免許が無効な場合、すなわち、その違法性が重大かつ明白な場合に限られると考えられる。そこで、このような見地から次のイないしエにおいて本件埋立事業の違法性の存否について検討する。 イ本件埋立事業の必要性原告らは、本件埋立地付近での住宅地、商・業用地が供給過多であり、本件土地を埋め立ててまで、住宅地、商・業用地を創出する必要はない旨の主張をする。 確かに、甲第23号証には、臨海部等における低・未利用地の存在を指摘する記載もあるが、公営事業の必要性は、多分に当該地方公共団体における住民のニーズの多寡の分析や当該事業に関する経営判断など、判断的要素を含むものであり、当該事業が経済的合理性を有し、その事業により損失を生じる蓋然性が低い限りに 要性は、多分に当該地方公共団体における住民のニーズの多寡の分析や当該事業に関する経営判断など、判断的要素を含むものであり、当該事業が経済的合理性を有し、その事業により損失を生じる蓋然性が低い限りにおいては、それを行うか否かについては当該自治体、ひいては当該自治体の長の裁量に委ねられているというものであって、裁量権の行使に逸脱又は濫用がない限りは、その判断は適法とみるべきである。 本件においても、前記(2)のとおり、本件埋立事業に一定の経済的合理性が認められ、本件埋立地に対する需要が全く考えられないといった事情もないのであるから、本件事業が明らかに必要性を欠くものとも認められず、そうすると、本件埋立事業が必要性を欠くものであるとして、本件埋立事業を違法なものと断ずるのは困難といわざるを得ない。 ウ公有水面埋立法4条について(ア) 原告らは、本件埋立事業により、大気汚染、悪臭、騒音・振動、水質汚濁、陸上水中生物への影響が生じ、これによれば、本件埋立事業は、公有水面埋立法4条各号の免許基準を満たさない、重大かつ明白に違法なものである旨を主張する。 (イ) 原告らは、大気汚染について、本件埋立地に幹線道路3本、高速道路1本が設置され、自動車排気ガス汚染に悩まされる旨の主張をするが、これら道路の建設は、本件埋立事業の竣工後に建設されることになっており(乙第28号証)、形式的にみれば、前記の大気汚染は、本件埋立事業により生じるものとはいえないし、乙第27号証及び乙第41号証の環境影響評価書によれば、本件埋立事業・臨海部幹線道路建設事業、臨海部開発土地区画整理事業のそれぞれが環境基本法に定める環境基準を充足していると認められ、他にこの認定を妨げるに足りる証拠はないから、大気汚染により、本件埋立事業が公有水面埋立法4条各号の免許基準外のものとなるとは認め 事業のそれぞれが環境基本法に定める環境基準を充足していると認められ、他にこの認定を妨げるに足りる証拠はないから、大気汚染により、本件埋立事業が公有水面埋立法4条各号の免許基準外のものとなるとは認められない。なお、乙第111号証の平成15年6月提出の本件埋立事業にかかる事後調査報告書(工事の施工中その2)によれば、四季の代表的な1週間の平均値から求めた年平均値において、二酸化硫黄、一酸化炭素、二酸化窒素のいずれもが前記評価書の予測値を下回っていると認められる。 (ウ) 原告らは、悪臭について、埋立工事により浚渫により悪臭が発生し、本件でこれが発生しないことを認めることができない旨の主張をする。しかし、乙第110号証の平成13年5月提出の本件埋立事業にかかる事後調査報告書(工事の施工中その1)によれば、住宅地にもっとも接近して行った浚渫工事では、脱臭剤を散布したことにより底泥から発生する臭気(ヘドロ臭)は確認されなかったことが認められ、他にこれに反する証拠はないから、原告らの主張は採用し得ない。 (エ) 原告らは、騒音・振動について、埋立工事に伴う工事車両・建設機械による騒音振動が周辺の環境を悪化させる旨を主張するが、前記乙第110号証によれば、建築機械の稼働による建設作業騒音レベルが、PC杭撤去作業時に工事区域境界域において77デシベルであり、予測値及び都民の健康と安全を確保する環境に関する条例に基づく指定建設作業にかかる騒音の勧告基準を下回ったこと、また、同区域における建築機械稼働による建設作業振動レベルは68デシベルであり、予測値及び前記条例に基づく指定建設作業にかかる振動の勧告基準を下回ったことが認められ、他にこれに反する証拠はないから、原告らの主張は採用し得ない。 (オ) また原告らは、水質汚濁が生じ、陸上生物、水生生物についても影響 づく指定建設作業にかかる振動の勧告基準を下回ったことが認められ、他にこれに反する証拠はないから、原告らの主張は採用し得ない。 (オ) また原告らは、水質汚濁が生じ、陸上生物、水生生物についても影響が生じる旨を主張するが、環境影響評価書(乙27)には、これと反対の記載があり、原告らの主張を基礎付けるに足りる客観的な証拠はなく、乙第109号証によれば、近自然型護岸や汐入の設置の実証実験で、魚介類の生育に一定の結果を挙げていることが認められる以上、埋立により一般的に生じる水質汚濁、陸上生物、水生生物への影響のみによって、本件埋立事業が公有水面埋立法4条各号の免許基準を満たさない、重大かつ明白に違法なものであるとまではいえない。 エ環境影響評価条例適合性前記のとおり、本件事業について、原告らが指摘する大気汚染、悪臭、騒音・振動、水質汚濁、陸上水中生物への影響等につき環境影響評価条例の規定に違反する事実は認められない。 原告らは、本件において相互に関連する複数の対象事業を合わせた評価がされておらず、同条例9条2項に違反する旨を主張する。しかし、前記ウ(イ)のとおり、臨海部幹線道路建設事業及び臨海部開発土地区画整理事業は、本件埋立事業の竣工後に行われることになっているのであるから、本件埋立事業の環境影響評価に当たって、道路建設・土地区画整理の各事業を所与のものとして環境影響評価を行う必要はないのであり、原告らの主張は採用し得ない。なお、乙第41号証によれば、臨海部幹線道路建設事業及び臨海部開発土地区画整理事業の環境影響評価においては、本件埋立事業の結果が存在するものとして環境影響評価が行われている。 オ小括そうすると、本件埋立事業に重大かつ明白な違法はなく、都が原状回復を命ぜられることは想定し難いし、上記の諸事情からすると、都が本件事業を行 在するものとして環境影響評価が行われている。 オ小括そうすると、本件埋立事業に重大かつ明白な違法はなく、都が原状回復を命ぜられることは想定し難いし、上記の諸事情からすると、都が本件事業を行うことにつき多額の損害賠償を命ぜられる事態も想定し難いと認められる。 (4) 結論以上によれば、本件埋立事業により「回復困難な損害のおそれがある」とは認められず、そうすると、争点2について判断するまでもなく、原告らの被告知事及び被告出納員に対する訴えは、いずれも不適法ということになる。 2 争点3(本件支出の違法性及びそれに基づく損害の存否)本件においては、前記第2、2(2)セ及びタのとおり、東京都が運輸大臣に対して本件埋立事業に係る認可申請を行う前に業者との間で契約を締結し、被告出納員が、運輸大臣による同申請に対する許可がされる前に、同契約に基づく工事代金計2億2510万円の支払をしていることが認められる。 公有水面埋立法が公有水面の埋立を行うものに都道府県知事の免許を受けることを義務付け、免許の付与に当たっては運輸大臣の認可を要求し、埋立の施行の可否について慎重な判断の下、これを行うことも求めているのであって、運輸大臣が埋立の内容・目的、環境保全の配慮等について審査を行った上、場合によっては、認可が行われないことや、認可が行われたとしてもその認可内容が大幅に変更を余儀なくされること、また、認可が行われたとしてもそのために相当な長期間を要することも考えられ、免許の付与を受けないまま当該埋立工事にかかる契約を締結したり、運輸大臣の認可を受ける前に工事に係る公金を支出することは公有水面埋立法の趣旨に明らかに反するものであり、違法の疑いが濃いものといわざるを得ない。本件第2監査請求に対する監査結果においても、免許の交付前に契約を締結し、前払金を に係る公金を支出することは公有水面埋立法の趣旨に明らかに反するものであり、違法の疑いが濃いものといわざるを得ない。本件第2監査請求に対する監査結果においても、免許の交付前に契約を締結し、前払金を支出したことに問題があった旨の指摘をし、今後改善をする旨の要望を行っている。 しかし、本件においては、本件支出の後ではあるものの、平成12年8月17日に、運輸大臣の認可、それに伴う免許の付与が行われているのであり、結果的には、本件各契約の締結及び本件支出は、適法な免許に伴ってされたものとみることもできるのであって、それによれば、事後的にではあるが瑕疵が治癒したとみることもできなくはないし、仮に、事後的な瑕疵の治癒を認めることに問題があるとしても、東京都に対して損害が発生したことはないというべきである。 第5 結論以上によれば、原告らの被告知事及び被告出納員に対する訴えは不適法であるからこれを却下することとし、被告Kに対する請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法65条1項、61条を適用し、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行 裁判官廣澤諭裁判官加藤晴子当事者目録193号・242号事件原告 A同 B同 C同 D193号事件原告 E同 F同 G同 H同 I同 J193号事件被告東京都知事同東京都特別企業出納員 同 H同 I同 J193号事件被告東京都知事同東京都特別企業出納員242号事件被告 K以上(別紙東京港図略)
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