昭和22(れ)313 窃盗、住居侵入未遂

裁判年月日・裁判所
昭和23年4月17日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 広島高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。          理    由  被告人の弁護人中山義郎上告趣意書第一点は「一、被告人Aハ十八才未満ノ少年 ニテ少年法第六十四条ノ適用ヲ受クルノ結果同法第

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判決文本文3,897 文字)

主    文      本件上告を棄却する。          理    由  被告人の弁護人中山義郎上告趣意書第一点は「一、被告人Aハ十八才未満ノ少年 ニテ少年法第六十四条ノ適用ヲ受クルノ結果同法第三十一条所定ノ事件ノ関係及本 人ノ性行境遇経歴心神ノ状況教育ノ程度等ノ身上ノ調査ヲ要スルト共ニ身心ノ状況 ニ付テハ成ルヘク医師ヲシテ診察ヲ為サシムルヘキコト明白ナルニ不拘記録ニ徴ス ルニ被告人ノ自陳ヲ外ニシテ叙上重要事項ニ関スル調査ノ為サレタル事跡ノ見ルヘ キモノナシ而シテ少年法ハ少年犯ニ対シテハ特ニ叙上ノ調査ヲ為スト共ニ其ノ調査 ノ結果ト他ノ諸般ノ事情ヲ取調ヘタル上慎重ニ審判スヘク同法第六十四条ニ明定セ ルニ不拘原審ハ叙上調査手続ヲ怠リ漫然他ノ一般事件ニ対スルト均シク審理判決シ タルハ其ノ訴訟手続ニ於テ違法アルモノニシテ叙上法令違反ハ判決ニ影響ヲ及ホス ヘキコト明白ナルヲ以テ原審判決ハ此ノ点ニ於テ破毀ヲ免レサルモノト信ス」 と謂ふにある。少年法第六十四条は「少年ニ対スル刑事事件ニ付テハ第三十一条ノ 調査ヲ為スヘシ。少年ノ身上ニ関スル事項ノ調査ハ少年保護司ニ嘱託シテ之ヲ為サ シムルコトヲ得」と規定し、次に同法第三十一条は、「少年審判所審判ニ付スヘキ 少年アリト思料シタルトキハ事件ノ関係及本人ノ性行、境遇、経歴、心身ノ状況、 教育ノ程度等ヲ調査スベシ。心身ノ状況ニ付テハ成ルヘク医師ヲシテ診察ヲ為サシ ムヘシ」と規定してゐる。這は、少年は其の身体並に知能の発育未熟なるを以て、 之等少年の刑事々件に付ては有罪の場合と雖ども特に其の科刑上又は行刑上の処遇 に関し、家庭の状況並に環境其の他凡そ前示少年法所定の各事項を充分考慮し、以 て之が各処遇を適正妥当ならしむる為め、其の少年の身上に関する調査を能う限り 懇切周到に、又科学的により正確ならしめんとする立法の趣旨に出でたものと解す べきで そ前示少年法所定の各事項を充分考慮し、以 て之が各処遇を適正妥当ならしむる為め、其の少年の身上に関する調査を能う限り 懇切周到に、又科学的により正確ならしめんとする立法の趣旨に出でたものと解す べきである。左れば、少年法該当刑事事件の事実承審裁判所たるもの、須からく右 - 1 - 少年法の趣旨精神を体し、出来得る限り法の要求する調査審理を行はねばならぬ。 然し乍ら、少年法第六十四条は、其の身上に関する事項の調査の方法に付ては、格 別なる制限を設けて居るものとは解することを得ないから、其の調査の目的を達す るに適当なる限り、当該裁判所の適当と認むる方法に依り之を施行することを妨げ るものとは謂ひ得ない。従つて其の方法として裁判所が適当と思料するときは、公 判廷に於て被告人に対し、裁判所自から之等の点に付き直接訊問の方法のみに依り 調査を遂げたとしても、敢て之を違法と断ずることは出来ない。然しさればと云つ て、此の直接訊問のみに依る調査が違法でないからとて、常に少年事件の全部に関 し此の方法のみを実施するも悉な適法なりとも断じ得ないのであつて、要は当該具 体的事件毎に諸般の状況を考量して、果して当該調査の方法が少年法の要求する所 と背馳することなきや否やに依つて判決するの外なきものと思料する。今本件事案 を看るに、原審は広島高等裁判所、第一審は岡山地方裁判所であるのであるが、記 録を精査するに第一審裁判所に於ては少年法第六十四条所定事項に関し殆んど調査 を遂げた事跡を観ざるも、原審公判調書に依れば、当該調査事項に関し、公判廷に 於て裁判所自からの直接訊問の方法のみではあるけれども、其の調査事項は逐一取 調べられて在ることを確認することが出来る、又原審が少年法第三十一条第二項の 医師の診察を為さしめなかつたのは所論指摘の通りであるが這は原審が其の必要な しと認めたに因るものと解す 其の調査事項は逐一取 調べられて在ることを確認することが出来る、又原審が少年法第三十一条第二項の 医師の診察を為さしめなかつたのは所論指摘の通りであるが這は原審が其の必要な しと認めたに因るものと解すべきである。以上の如くであるから原判決には所論の 如き違法はないものと謂ふべく従つて論旨は理由がないものと謂はねばならぬ。止 だ、以上当裁判所の直接訊問のみの方法に依る調査も適法なりとの趣旨を誤解し、 或は医師の診察を遂げしむるの要否は裁判所の判断に依るとの趣旨を良いことにし て、爾今少年法事件の審理裁判に当り、同法の精神を蹂り事案の性質難易、被告人 の住居地又は其の家庭と裁判所との遠近、其の他諸般の条件を無視して、以て漫然 直接訊問のみの調査に依拠し及び医師の診察を排して、すべて安易の方法のみを施 - 2 - 用して事足れりと為すが如きことあらんか、之れ少年法の精神と重要性を解せざる ものであつて、之を戒しめねばならぬこと勿論である。  同上告趣意書第二点は「茲ニ弁護人ハ少シク被告人ノ叙上身上調査ニ関スル事項 ヲ参考トシテ開陳シ御審理ノ資料二供セントスルモノナリ。被告人ハ父B当五十四 年イチ当四十一年ノ長男トシテ生レ他ニ妹二人在リ五人暮シナルカ唯一ノ男子ナル ノ故ヲ以テ幼時ヨリ父母ノ愛撫ヲ受ケ素直ニ成長シテ昭和二十年春岡山市内C国民 学校高等科ヲ卒業シタルカ家カ貧困ナルノ故上級学校入学ノ希望ヲ棄テ直チニ進駐 軍雑役夫トシテ約半ケ年間真面目ニ働キタルカ父母熟慮ノ結果被告人ノ将来ノ職業 トシテ大工職ヲ択フコトヲ最上ナリトシテ被告人ヲシテ岡山市a居住ノ大工職D某 ニ弟子入セシメタリ被告人ノ父ハ嘗テハ養豚業ヲ為シ相当ノ生活ヲ為シ居リタルカ 終戦ノ影響ニテ飼料難ニ陥リ廃業ノ止ムナキニ立至リ父モ進駐軍雑役ニ転シタルカ 病弱ニテ休業ノ日多ク生活ハ極度ニ困窮スルニ至リ被告人ノ得ル給料八百円余 人ノ父ハ嘗テハ養豚業ヲ為シ相当ノ生活ヲ為シ居リタルカ 終戦ノ影響ニテ飼料難ニ陥リ廃業ノ止ムナキニ立至リ父モ進駐軍雑役ニ転シタルカ 病弱ニテ休業ノ日多ク生活ハ極度ニ困窮スルニ至リ被告人ノ得ル給料八百円余ノ大 半ハ挙ゲテ母ニ提供シテ家助ト為シ来タル処被告人ハ生来算数的頭脳乏シキ処ヨリ 大工職ニ適セズ日ヲ経ルニ従ヒ之ヲ嫌悪スルニ至リ遂ニハ日々仕事ニ赴クカ如ク家 ヲ出ツルモ秘ユ途中b駅附近ノ闇市ニテ遊ヒ廻リ居ル内友人Eノ誘惑ニ依リ年少思 慮足ラザリシ処ヨリ偶発的ニ本件犯行ニ及ヒタルモノニテ実ニ父母ノ被告人ノ将来 ノ職業ニ対スル選択ヲ誤リタルト思慮浅キ少年ノ一時的悪事ニシテ生来盗癖アル少 年ノ所為ニ非ルナリ加之現時ノ少年犯タルヤ終戦後ノ虚脱放心インフレ大人ノ背後 ノ使嗾等混乱シタル社会状勢ノ責ニ原因セルコト明白ナルヘク被告人ハ叙上ノ如キ 混乱シタル社会ノ渦巻ニ在リテ年少思慮ヲ欠ケル処ヨリ他ノ誘惑ニ陥リ本件犯行ニ 及ヒタルモノニシテ之ヲ独リ被告人ノ責任ナリトシテ特ニ厳罰ヲ以テ処スルハ酷ナ リト謂ハサルヘカラス被告人ハ前科ナク且昭和六年五月五日生レノ年少者ニシテ第 一審判決後保釈出所ヲ許サルルヤ父母ノ膝下ニ在リテ謹慎良ク之ニ仕へ現在土工ニ 従事シツヽ父母ノ家計ヲ扶ケツヽアルモノニシテ現在全ク改悟セル少年ナリ尚被告 - 3 - 人ノ父母ニ於テモ被告人ノ改悟ヲ喜ヒ監督ヲ厳重ニスルト共ニ其ノ就クヘキ職業ニ 付キテモ慎重考慮シ再ヒ被告人ヲシテ過誤ナカラシムヘク誓ヒ日日之ヲ善導シツツ アルモノトナリ被告人ハ第一審判決後保釈出所ヲ許サルル迄相当ノ期間拘禁セラレ 居リタルモノナレハ其ノ未決勾留ハ斯クノ如キ年少者ニ於テモ身ニ徹シ十分懲戒ノ 目的ヲ達セラレタモノニテ本件被害ニ付テモ其ノ父ニ於テ困窮ノ内ニモ全部賠償ヲ 為シ被害者ニ於テモ本件ハ被告人カ年少思慮ヲ欠キタルニ原因セルト被告人ノ将来 ヲ思ヒ寛大ナル 年少者ニ於テモ身ニ徹シ十分懲戒ノ 目的ヲ達セラレタモノニテ本件被害ニ付テモ其ノ父ニ於テ困窮ノ内ニモ全部賠償ヲ 為シ被害者ニ於テモ本件ハ被告人カ年少思慮ヲ欠キタルニ原因セルト被告人ノ将来 ヲ思ヒ寛大ナル御処分ヲ希望セルモノナルコト原審提出ノ各被害者ノ受領証ト歎願 書ニ徴シ明白ナリ左レハ此ノ際被告人ニ実刑ヲ科シ自暴自棄ニ陥ラシメ其ノ将来ヲ 抹殺セシムルヨリハ此ノ際執行猶予ノ寛大ナル御恩典ヲ与ヘラレ改悟セル被告人ヲ シテ再建日本ノ為メ敢闘セシムヘキヲ至当ナリト愚考スルモノナリ仍テ少年法ノ適 用ヲ為ササル訴訟手続ノ違法ヲ理由トシテ叙上関係ヲ具陳シ本上告ニ及ヒタル次第 ナリ。」と謂うにある。  右は要するに、原判決が被告人に刑の執行猶予を与えなかつたこと、即ち結局量 刑の不当を主張するに帰する。然し、日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的 措置に関する法律第一三条第二項によれば、量刑を不当とする主張は之を適法な上 告理由とすることは許されないのであるから、本論旨も採用し難い。以上の理由に 依り刑事訴訟法第四百四十六条に則り、主文の如く判決する。  此の判決は裁判官全員の一致した意見に依るものである。  検察官福尾彌太郎関与   昭和二十三年四月十七日      最高裁判所第二小法廷          裁判長裁判官    塚   崎   直   義             裁判官    霜   山   精   一             裁判官    小   谷   勝   重 - 4 -             裁判官    藤   田   八   郎 - 5 -

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