令和7(モ)60501 保全異議申立事件

裁判年月日・裁判所
令和7年7月17日 大阪地方裁判所
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判決文本文7,634 文字)

令和7年(モ)第60501号保全異議申立事件(基本事件:令和6年(ヨ)第20009号)決定 債権者株式会社ホリーズ 同代表者代表取締役同代理人弁護士置田文夫同村田純江同服部達夫同中野彩子 同日高麗衣同大澤祐紀同林晃平同中嶋章人 債務者株式会社KGF&BJAPAN同代表者代表取締役同代理人弁護士手塚崇史同星野真太郎同森茜 主文 1 債権者と債務者間の大阪地方裁判所令和6年(ヨ)第20009号商標権侵害行為差止等仮処分命令申立事件について、同裁判所が令和7年2月13日にした仮処分決定を認可する。 2 申立費用は債務者の負担とする。 理由 第1 申立ての趣旨 1 債権者と債務者間の大阪地方裁判所令和6年(ヨ)第20009号商標権侵害行為差止等仮処分命令申立事件について、同裁判所が令和7年2月13日にした仮処分決定を取り消す。 2 債権者の上記商標権侵害行為差止等仮処分命令の申立てを却下する。 第2 事案の概要(略語は、原決定の表記による。) 1 基本事件は、①主位的に、債務者による債務者各標章の使用が債権者の有する本件各商標権を侵害すること、②予備的に、債務者による債務者各表示の使用が不正競争(不競法2条1項1号)に該当することを主張して、債権 者が、債務者に対し、債務者各標章の使用の差止め等を求め る本件各商標権を侵害すること、②予備的に、債務者による債務者各表示の使用が不正競争(不競法2条1項1号)に該当することを主張して、債権 者が、債務者に対し、債務者各標章の使用の差止め等を求める事案である(なお、債務者各標章と債務者各表示は同一である。)。 2 当庁は、基本事件について、令和7年2月13日、債権者商標1ないし3と債務者各標章が類似するとして、本件各商標権に基づき、債務者各標章の使用の差止等を認める決定をした(以下「原決定」という。)。 債務者は、原決定を不服として、本件保全異議申立てをした。 なお、原決定は、債権者の申立て(主位的)のうち、本件各商標権に基づく差止請求権(商標法36条1項)及び廃棄請求権(同法36条2項)の効力が及ぶ範囲に限って、これを認容する一方、これの及ばない部分については却下したものと解されるが、この却下部分について、債権者は不服を申し 立てるものではない。 3 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、原決定「理由」中の第2の2及び3並びに第3に記載のとおりであるから、これらを引用するほか、異議審における債務者の主張は、保全異議申立書及び保全異議準備書面(令和7年6月3日付け)のとおりであり、債権者の主張は、保全答弁書のとお りであるから、これらを引用する。異議審において、債務者は、原決定では 考慮されていない事情として、KG社による債務者標章1に係る商標登録出願について令和7年1月28日に登録査定がされたことを指摘しつつ、債権者各商標と債務者各標章は類似しないなどと主張するものである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、本件仮処分命令申立てには、主位的請求に係る被保全権利及 び保全の必要性が認められるから、原決定の主文掲記の限 標章は類似しないなどと主張するものである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、本件仮処分命令申立てには、主位的請求に係る被保全権利及 び保全の必要性が認められるから、原決定の主文掲記の限りにおいて、これを認容した原決定は相当であると判断する。その理由は、以下のとおり補正し、後記2の判断を付加するほかは、原決定「理由」中の第4(本文中で引用する別紙を含む。)記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原決定5頁19行目を次のとおり改める。 「(6) KG社の商標出願に対する登録査定ア特許庁は、令和7年1月20日、KG社の商標登録出願に係る商標「KHOLLYS」、「CROWNHOLLYS」及び「HOLLYSTAR」について登録査定した。(乙66ないし68)イ特許庁は、同月28日、KG社の商標登録出願に係る債務者標章1 について登録査定をした。(乙65)」(2) 原決定15頁8行目から16頁10行目までを次のとおり改める。 「ア債権者商標1債権者商標1の構成は、別紙商標目録1記載のとおりである。 債権者商標1は、欧文字「Holly’sCafé」を白抜き文字、 同一のフォントサイズ、丸みも施されたセリフ体調で横書きしたもので、「Holly’s」と「Café」の2語からなるが、フォントのサイズや字体が全体として同一であり、体裁面で、「Holly’s」の部分のみを際立たせたり、「Café」部分との分離、独立を殊に印象づけるものとなっているわけではない。また、「Holly’s」と「Caf é」との間には空白部分があるところ、このことは、空白部分がない場合 と比べれば、分離観察の余地を生じさせるものではあるが、欧文字を用いる言語としては自然な ly’s」と「Caf é」との間には空白部分があるところ、このことは、空白部分がない場合 と比べれば、分離観察の余地を生じさせるものではあるが、欧文字を用いる言語としては自然なことではあり、各語について、分離、独立の印象を積極的に与える要素とまではいえない。 しかし、「Café」は「主としてコーヒーなどの飲み物を供する店」(広辞苑第7版参照)を意味するから、「Café」部分は、債権者商標 1の指定役務「第43類コーヒーを主とする飲食物の提供、その他の飲食物の提供」との関係では、役務の内容を示す普通名称にすぎず、その文字自体には、自他役務識別機能がないといえる。他方で、「Holly’s」の部分は、指定役務の内容などに関連する意味を有しないことはもちろんのこと、需要者にとって、その文字そのもの以上の特定の 観念を生じさせる語ではなく、出所識別標識としての機能を強く果たす部分といえる。そして、債務者も認めるとおり、上記役務の提供において、「カフェ」ないし「コーヒー」との称呼を生じる文字を末尾又は冒頭に含む標章はごく一般に広く利用されているものであるところ(甲20、21、27、乙10、11、31、33、顕著な事実)、需要者に とって、このような「カフェ」ないし「コーヒー」との称呼が生じる文字部分は、特に欧文字又は片仮名文字の場合において、自他を識別する機能に乏しく、同部分を分離した残りの部分をもって、出所を識別することを通例とする取引の実情があるともいえる。 他方で、債権者商標1の「Holly’s」部分中の「’」は、直後 に「s」の文字が続いているので所有格を示す記号ではあり、文法として厳密に考えれば、「Café」部分と連なった表現になっていることを否定するものではない。しかし、商標 部分中の「’」は、直後 に「s」の文字が続いているので所有格を示す記号ではあり、文法として厳密に考えれば、「Café」部分と連なった表現になっていることを否定するものではない。しかし、商標の類否判断は、あくまで需要者の観点から、その通常の注意力のもとで与えられる印象等を総合して決せられるべきものであるところ、上記のような債権者商標1の「Holl y’s」部分と「Café」部分との各識別力や取引の実情などの総合的 な考慮のもとでは、「l」と「s」との間に小さく表記されるにとどまる「’」の存在のみをもって、上記各部分の分観観察が取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとの印象を与える要素になっているとはいえない(なお、末尾を「’s」とする1語をもって、出所識別標識として機能する例は、他にも存在するところである[甲30、 乙28]。)。 したがって、債権者商標1については、上記(1)の規範のもと、その構成中で識別力の乏しい「Café」部分を分離し、出所識別標識として強く支配的な印象を与える「Holly’s」の文字部分を抽出した上で、当該文字部分だけを債務者各標章と比較して商標の類否を判断すること が許されるというべきである。 イ債権者商標2及び同3債権者商標2及び同3の構成は、別紙商標目録2及び同3記載のとおりであり、各商標は指定商品及び指定役務を異にするが、各商標の構成は同じである。 債権者商標2及び同3は、欧文字「Holly’sCafé」を赤文字、同一のフォントサイズ、丸みも施されたセリフ体調で横書きしたもので、「Holly’s」と「Café」の2語からなるもので、フォントの色を除くと、債権者商標1と異なるところはないが、フォント 赤文字、同一のフォントサイズ、丸みも施されたセリフ体調で横書きしたもので、「Holly’s」と「Café」の2語からなるもので、フォントの色を除くと、債権者商標1と異なるところはないが、フォントの色が、分離観察の可否に差異をもたらすものでないことは明らかである。 他方、債権者商標2の指定役務は「第35類飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便宜の提供」、債権者商標3の指定商品は「第21類、第29類、第30類食器類、コーヒー用クリーム、コーヒー用フレッシュクリーム(以下、略)」である点で、債権者商標1との違いがあるが、いずれの指定役務ないし指定商品も、債権者 商標1の指定役務と密接に関連する内容といえる上、取引の実情として も、債権者は、債権者商標2及び同3に係る役務の提供ないし商品販売等を、債権者商標1の指定役務に係る事業と一体的不可分的に展開しているものと認められる(甲19)から、需要者にとっては、債権者商標2及び同3のいずれについても、「Café」部分の識別力が乏しく、「Holly’s」の文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与 えることにつき、債権者商標1に関して上記アで検討したところと差異はないというべきである。 したがって、債権者商標2及び同3についても、その構成中で識別力の乏しい「Café」部分を分離し、出所識別標識として強く支配的な印象を与える「Holly’s」の文字部分を抽出した上で、当該文字部 分だけを債務者各標章と比較して商標の類否を判断することが許されるというべきである。」(3) 原決定17頁13行目から同18頁8行目の「といえる。」までを次のとおり改める。 「(イ) 称呼 債権者商標1の上記文字部分 を判断することが許されるというべきである。」(3) 原決定17頁13行目から同18頁8行目の「といえる。」までを次のとおり改める。 「(イ) 称呼 債権者商標1の上記文字部分からは、債権者店舗の店名の片仮名表記とされている「ホリーズ」との称呼が生じるもので、取引の実情としても、その商圏の需要者の間で、この称呼が定着していることもうかがわれる(甲25、乙35)。 他方で、債務者各標章についても、そのアルファベットのスペルは、 「’」を除いて債権者商標1と同一であり、そのうち「HO」を「ホ」と、「LLY」を「リー」と、単語末尾の「S」を「ズ」と読み、全体として「ホリーズ」との称呼が生じることは、需要者にとって自然な読み方の1つといえるから、債権者商標1と同一の称呼が生じるものというべきである。 この点、債務者は、債務者各標章から生じる称呼は、もっぱら「ハリ ス」又は「ハーリス」であり、「ホリーズ」といった称呼は生じない旨指摘する。しかし、 日本語で言うところの「ハーリ」に近似する発音の「holly」という英単語が存在する(乙4)ことからも、債務者各標章から「ハリス」や「ハーリス」といった称呼が生じることを否定するものではないが、需要者にとって一般的に知られている英単語ではな く、債務者各標章から生じる称呼がそれらに限定される根拠となるものではない(なお、英語と日本語の母音は一対一で対応しているわけではなく、「holly」の冒頭の発音も、「ハ」と「ホ」の中間的な音ともいえるから、この単語の存在を前提にしても、冒頭が「ホ」で始まる称呼が否定されるものではない。)。また、債務者は、債務者各標章と 需要者に広く知られている「Hollywood」(ハリウッド)とのスペルの共通性から、 在を前提にしても、冒頭が「ホ」で始まる称呼が否定されるものではない。)。また、債務者は、債務者各標章と 需要者に広く知られている「Hollywood」(ハリウッド)とのスペルの共通性から、もっぱら「ハリス」や「ハーリス」との称呼が生じる旨も指摘するが、およそ需要者が通常たどる思考過程とはいえず、やはり、債務者各標章の称呼が限定される理由とはならない。 よって、債務者各標章からは、債権者商標1と同一の称呼が生じるも のといえる。 (ウ) 観念債務者は、債権者商標1の「Holly’s」部分からは、「ホリーという人物の」という観念が生じるのに対し、債務者各標章からはそのような観念は生じないとの差異がある旨指摘するが、需要者にとって、 「Holly」が人物名であるとの観念が生じるものとはいえず、結局のところ、特定の観念を生じるものではない「Holly」に所有格を示す「’s」が付されているという以上に、特定の観念を生じさせるものではない。他方で、債務者各標章の「HOLLYS」は造語であり、その文字そのもの以上に特定の観念が生じるものではない。そうすると、 債権者商標1と債務者各標章は、末尾が所有格としての表現か否かとい う違いこそあるものの、いずれについても特定の観念を生じさせるものではなく、商標類否判断を左右するような観念の想起を伴うものではないといえる。 (エ) 小括以上によると、債権者商標1で分離観察が許される「Holly’s」 部分と債務者各標章は、外観において類似する上、同一の称呼が生じるものである一方、その印象を左右するような特定の観念の発生や観念上の差異があるわけでもなく、互いに類似するものといえる。」(4) 原決定19頁1行目の「類似する。」の次に以下のとおり加える。 じるものである一方、その印象を左右するような特定の観念の発生や観念上の差異があるわけでもなく、互いに類似するものといえる。」(4) 原決定19頁1行目の「類似する。」の次に以下のとおり加える。 「他方、債務者は、債務者標章2の使用に際して「ハーリス」との片仮名 表記を付記することがあるなど、一定の措置が講じているものではある(乙5、24、25)ものの、一部の場合に限られており(甲10~15)、誤認混同回避に十分な効果を生じさせているものと認めるに足りる証拠はない。」 2 異議審における債務者の主張に対する判断 (1) 被保全権利について債務者は、特許庁が、KG社から暫定的拒絶通報に対する意見書(乙64)の提出を受けて債務者標章1の商標登録査定をし、「HOLLYS」の文字を含む「KHOLLYS」などの商標登録出願についても登録査定をしたことから、債権者各商標と債務者各標章は類似しないと主張する。 しかし、債権者各商標と債務者各標章が類似することについては、前記1で補正の上で引用した原決定記載のとおりであり、上記のような商標登録査定がされたことをもって、この判断が左右されるものではない。また、上記意見書(乙64)での指摘が、本件における商標の類似性を否定する主張として採用できないことは、その主たる部分について、前記1の補正 として、改めて判断を示したところである。 なお、債務者は、欧文字又はその音訳からなる商標とこれに「Cafe」や「カフェ」を加えてなる商標とが類似しないことを前提とする審決例や併存登録例の存在も指摘するが、商標の類否判断は、商標の構成、指定役務又は指定商品、取引の実情等を踏まえて個別具体的に判断されるものであるから、債務者の指摘する審決例の存在が本件の 提とする審決例や併存登録例の存在も指摘するが、商標の類否判断は、商標の構成、指定役務又は指定商品、取引の実情等を踏まえて個別具体的に判断されるものであるから、債務者の指摘する審決例の存在が本件の類否判断に直ちに影響 を与えるものではない。さらに、これらの例をみても、その多くは、本願商標と引用商標の指定商品又は指定役務が異なるものであり、本件における類否判断には影響しない。 以上から、債務者の上記主張は採用できない。 (2) 保全の必要性について 債務者は、債権者の経営状態が良好であるから、債務者店舗の閉店に伴う債権者の影響はわずかであるのに対し、債務者は仮処分命令の発令によって韓国で長年使用していた標章を使用できなくなり、その影響は計り知れないこと、債務者店舗の看板等を「ハーリス」やハングル語に順次変更していることなどの事情をもって、保全の必要性はないと主張する。 しかし、債権者は、債務者店舗の所在する地域を含む関西に複数のカフェ店舗を展開している(甲2)一方、債務者も同一商圏で事業展開を行うものであるところ、債務者が債務者各標章の使用を継続すれば、需要者が債権者各商標と債務者各標章を誤認するなどして債権者に著しい損害が生じるおそれがあると認められる。他方で、債務者は、自認するとおり、店舗 名を称呼の揺れがない片仮名で表記するなど、債権者各商標との誤認混同のおそれを回避しながら事業継続する方法も持ち合わせている。また、債務者は、そのような措置を順次採っていることを保全の必要性を否定する理由として掲げながらも、韓国法人であるKG社において債務者標章1などの商標登録の手続を進めてきたほか、本件保全異議を申し立てた上で、 債務者各標章の使用が債権者商標権を侵害するものではないとの主 として掲げながらも、韓国法人であるKG社において債務者標章1などの商標登録の手続を進めてきたほか、本件保全異議を申し立てた上で、 債務者各標章の使用が債権者商標権を侵害するものではないとの主張を続 けているのであるから、債務者に債務者各標章の使用継続の意思があることは明らかであるところ、この点は、不服申立て等の手続に伴う面があるとはいえ、保全の必要性を根拠づける事情といえる。 以上の事情に照らせば、保全の必要性があると認められ、債務者の上記主張は採用できない。 3 よって、主文のとおり決定する。 令和7年7月17日大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官松川充康 裁判官阿波野右起 裁判官島田美喜子

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