平成23(ワ)1595 損害賠償等

裁判年月日・裁判所
平成29年3月1日 さいたま地方裁判所
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判決文本文49,263 文字)

- 1 - 主文 1 被告Cは,原告Aに対し,39万6348円及びうち10万円に対する平成22年9月6日から,うち29万6348円に対する平成23年7月2日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Cは,原告Bに対し,1539万5138円及びうち20万円に対する平成22年9月6日から,うち1519万5138円に対する平成23年10月20日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らの被告Cに対するその余の請求及び被告会社に対する請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,第1事件及び第2事件を通じ,原告Aに生じた費用の5分の4,被告Cに生じた費用の30分の1及び被告会社に生じた費用の20分の1を原告Aの負担とし,原告Bに生じた費用の3分の2,被告Cに生じた費用の5分の2及び被告会社に生じたその余の費用を原告Bの負担とし,原告ら及び被告Cに生じたその余の費用を被告Cの負担とする。 5 この判決は,第1,2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,原告Aに対し,連帯して100万円及びこれに対する平成22年9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Cは,原告Aに対し,29万6348円及びこれに対する平成23年7月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告らは,原告Bに対し,連帯して2044万6586円及びうち100万円に対する平成22年9月6日から,うち1944万6586円に対する平成23年10月20日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 - 2 - 4 被告Cは,原告Bに対し,561万4221円及びこれに対する平成23年10月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支 ら,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 - 2 - 4 被告Cは,原告Bに対し,561万4221円及びこれに対する平成23年10月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告会社ないし被告Cが管理する宿泊施設で生活していた原告らが,①被告会社及び被告Cにより生活保護費を不当に搾取され,生存権等の人権を侵害されたなどと主張して,被告会社については,民法709条に基づき,被告Cについては,民法709条又は会社法429条1項に基づき,連帯して慰謝料各100万円及びこれに対する不法行為の終了日である平成22年9月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求め,また,②同施設で生活するに当たり,被告Cとの間で締結された後記本件契約は,公序良俗に反して無効であり,また,特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)4条又は5条に違反しており,特商法9条1項に基づき解除したと主張して(ただし,特商法違反の主張は原告Aに限る。),被告Cに対し,原告Aは,不当利得返還請求権又は解除による原状回復請求権に基づき,29万6348円及びこれに対する第1事件訴状送達の日の翌日である平成23年7月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,原告Bは,不当利得返還請求権に基づき,561万4221円及びこれに対する第2事件訴状送達の日の翌日である平成23年10月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求め,さらに,③原告Bは,被告会社及び被告Cの管理下において労働に従事させられ,これに起因する事故に遭ったと主張して,被告らに対し,債務不履行(安全配慮義務違反)に基づく損害賠償として,連帯して1944万6 ,③原告Bは,被告会社及び被告Cの管理下において労働に従事させられ,これに起因する事故に遭ったと主張して,被告らに対し,債務不履行(安全配慮義務違反)に基づく損害賠償として,連帯して1944万6586円及びこれに対する第2事件訴状送達の日の翌日である平成23年10月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実等(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によっ - 3 -て容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告Aは,昭和23年4月9日生まれの男性であり,原告Bは,昭和15年3月26日生まれの男性である。(甲8の426頁,甲9の2頁)イ被告会社は,ダイカスト製品の生産及び販売等を目的とする株式会社であり,被告Cは,被告会社の代表取締役である。 (2) 本件契約の締結等被告Cは,路上生活等をしていた原告らとの間で,原告Bとは遅くとも平成17年4月1日までに,原告Aとは平成22年4月頃に,被告Cが管理する複数の寮(以下,まとめて「被告寮」という。)の一つであるD荘(さいたま市桜区ab-c-d所在)に原告らを入居させ,食事や衣服等を提供する代わりに,原告らが受給した生活保護費を受け取ることなどを内容とする契約(以下「本件契約」という。)を締結した。(甲26,28,乙8,原告A本人,被告C本人)そして,原告Bは,遅くとも平成17年4月1日から平成22年9月6日までの間,原告Aは,平成22年4月頃から同年9月6日までの間,それぞれ,D荘に入居して被告Cから食事や衣服等の提供を受けて生活するとともに,受給した生活保護費全額を被告Cに交付していた。(甲8の451頁,甲9の40頁,59頁,甲26,28,乙8,原告A本人,被告C本人)(3) 本件事故 ら食事や衣服等の提供を受けて生活するとともに,受給した生活保護費全額を被告Cに交付していた。(甲8の451頁,甲9の40頁,59頁,甲26,28,乙8,原告A本人,被告C本人)(3) 本件事故の発生等原告Bは,D荘に入居中の平成17年6月24日,被告会社が以前管理していた埼玉県戸田市eにある工場(以下「本件工場」という。)内で,機械に右手を巻き込まれ,右示指中指切断,環指挫滅創の傷害を負い(以下,この事故を「本件事故」という。),同日から同年8月4日までの間,E大学医学部付属病院(以下「本件病院」という。)で入院治療を受けた。(甲13,28) - 4 -(4) 刑事事件被告Cは,平成26年,所得税法違反被告事件で起訴され(さいたま地方裁判所平成26年(わ)第1322号),平成27年6月26日,同庁から有罪判決を受けた(以下,単に「刑事事件」という。)。(甲43の1) 2 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 生活保護費用の搾取,生存権侵害等による不法行為の成否(原告らの主張)ア被告らの事業被告らは,以下のとおり,生活保護受給者などの生活困窮者から生活保護費などの大部分を搾取する目的で,極めて粗末な集団施設を多数準備し,極めて多数の路上生活者を巧みに同施設に誘い込み,極めて粗末な居住スペース及び食事を提供する対価として,生活保護を受給させた上で,その大部分や携帯電話などを取り上げるという方法により,暴利をむさぼる組織を構築し,長期間にわたり莫大な利益を得てきた。 (ア) 目的の悪質性,計画性被告らは,組織的に暴利をむさぼる目的で,内部に,「救済係」や「受入係」などの部署を作って多数の路上生活者を施設に囲い込み,生活保護を受給させてその大半を取り上げる一方で,従順で稼働能力のありそうな 告らは,組織的に暴利をむさぼる目的で,内部に,「救済係」や「受入係」などの部署を作って多数の路上生活者を施設に囲い込み,生活保護を受給させてその大半を取り上げる一方で,従順で稼働能力のありそうな者に対しては,被告Cが経営する店舗や工場などでただ働き同然で酷使するという組織体制を構築してきたものであり,被告らの暴利行為は極めて悪質かつ計画的である。 具体的には,被告らは,「救済係」に属する人達に対し,L公園やK駅周辺において,施設の入居者の大半を占めることになる路上生活者を勧誘する作業を行わせるとともに,勧誘した路上生活者を「本部」と呼ばれる寮に連れて来させた後,「受入係」と呼ばれる人達に対し,路上生活者の出迎え,氏名,生年月日,本籍地などの聞き取り,食事や入浴 - 5 -の手配などを行わせた上で,被告Cにおいて,路上生活者に対する詳細な面接を通じて,生活保護受給予定者や年金受給者と稼働能力者への振り分けを行い,彼ら全員から,預金通帳と携帯電話を取り上げて,被告寮に入所させた上,生活保護受給予定者には,生活保護を申請させて,生活保護費の大半を取り上げ,年金受給者からは,年金の大半を取り上げ,稼働能力者には,被告Cが経営する店舗や工場などでただ働き同然で酷使していた。 (イ) 手段,方法の悪質性被告らは,老朽化した一戸建てやアパートを安価で賃借した後,その内部をベニヤ板や間柱材などで仕切るなどの粗末な改造を加えたり,水道の配管工事,排水工事,電気設備の工事などをすることにより,3畳程度の狭小な入居スペースを複数作り出した上で,各スペースを「住居」として入居者に提供している。 そして,被告らは,路上生活者に対し,生活保護制度について十分な説明をしないまま,「小遣いを一日に500円あげる。」,「3食食べられて,お ,各スペースを「住居」として入居者に提供している。 そして,被告らは,路上生活者に対し,生活保護制度について十分な説明をしないまま,「小遣いを一日に500円あげる。」,「3食食べられて,お風呂に入れて,寝るところもある。」などと言葉巧みに勧誘し,極めて多数の路上生活者を粗末で狭小な居住スペースに入居させるとともに,入居者が外部と連絡を取るのを妨げるため,携帯電話を取り上げていた。 その上で,年金収入などがない入居者に対しては,生活保護の申請をするように命じ,その際,「都内から来たことは言っては駄目だよ。」「さいたま市内で声を掛けられたことにしてよ。」などと窓口で虚偽の申告をするように指導して,生活保護の申請をさせた。 そして,入居者が生活保護を受給するようになると,被告らは,毎月,車で入居者を区役所に搬送し,逃げないように見張りを置くなどの方法により,入居者が支給を受けた生活保護費を未開封の状態で車の中 - 6 -で取り上げた。 このように,被告らは,極めて粗末な集団施設を多数準備して,極めて多数の路上生活者を巧みに同施設に誘い込み,生活保護を受給させ,極めて粗末な居住スペース及び食事を提供する対価として,生活保護費の大部分を取り上げているのであり,その手段,方法も極めて悪質である。 (ウ) サービスと対価との著しい不均衡被告らの事業の悪質性は,以下のとおり,被告らが提供するサービスと対価との間に著しい不均衡があることからも明らかである。 ① 被告らの売上生活保護を受給していた入居者は,住宅扶助が2万円程度の場合は10万円程度,住宅扶助が4万円程度の場合には12万円程度の支給を毎月受けており,支給を受けると未開封の状態で直ちにこれを被告Cに渡していた。 被告Cが作成した資料によると 2万円程度の場合は10万円程度,住宅扶助が4万円程度の場合には12万円程度の支給を毎月受けており,支給を受けると未開封の状態で直ちにこれを被告Cに渡していた。 被告Cが作成した資料によると,被告らの売上(入居者から受領した生活保護費等)は,平成20年度は2億8389万円,平成21年度は4億2425万円,平成22年度は4億8701万円であった。 ② 被告らの経費a 食費被告らの施設では,担当者が週に2回,食材の買い出しに行くことになっており,その購入費用は,1回の買い出しで多く見積もっても30万円程度であったから,1週間の食費は60万円程度であった。 仮に,平成22年3月19日時点にこの金額で食費を賄っていたとすると,同日時点での被告寮の全入居者は386人であることから,1人当たりの毎月の食費は6660円程度となる。 - 7 -b 家賃すべての被告寮の家賃が分かるわけではないが,F荘については,被告会社が家賃7万5000円で借り上げている一方,その入居定員は15人とされていることから,1人当たりの毎月の家賃負担分は5000円となる。 c 寮の改装費被告寮の改装工事をしていた入居者のGは,1つの寮の改装工事費は5,6万円かそれ以下と供述しており,概ね5万円程度と推定できる。 そして,被告寮の改装は,クロスの耐用年数に準じて7年の耐用年数があると仮定した場合,1月当たり,1つの寮全体で694円の工事費がかかっていることになる。 各寮で入居者数は異なるものの,7名で入居している寮であれば,1人当たり毎月100円の経費がかかっていることになる。 d 水道代平成22年12月に2か月分として支払われた水道代は42万7774円であるから,1か月分の水道料金は21万3887円である。 上記 毎月100円の経費がかかっていることになる。 d 水道代平成22年12月に2か月分として支払われた水道代は42万7774円であるから,1か月分の水道料金は21万3887円である。 上記のとおり,入居者数は386人であるから,入居者1人当たりの毎月の水道料金は554円となる。 e 入居者への支払入居者に対しては,1日につき500円及び月に一度5000円が配られていたから,1人当たりの交付額は毎月2万円となる。 f 電気,ガス代電気代やガス代については,資料がないため計算できないが,仮に水道料金と同程度とすると,それぞれ554円程度となる。 - 8 -g 合計上記経費を合計すると,月額3万3422円となる。 ③ 被告らの取り分そうすると,生活保護を受給していた入居者1人当たりの被告らの取り分は,受給月額10万円ないし12万円から経費月額3万3422円を控除した残額の月額7万円ないし9万円程度に上り,被告らが提供するサービスと対価との間に著しい不均衡があり,被告らの事業の悪質性が裏付けられている。 イ原告らが本件契約を締結した経緯(ア) 原告A原告Aは,大工のとび職などをして稼働していたが,折からの不況で仕事がなくなり,路上生活を余儀なくされるようになった。 原告Aは,平成22年4月初旬頃,所持金も尽きて東京都K区内のJRK駅の駅構内などで路上生活をしていたところ,被告Cの従業員らしき人物から声を掛けられ,「うちは,500円支給して,寝るところも食事も全く困らないから,とりあえず入った方がいいよ。体調を整えてゆっくりしたらいい。」などと被告寮に入ることを勧誘された。 その後,原告Aは,車で,埼玉県内の「本部」と呼ばれる場所に連れて行かれ,同所で一泊し,翌日の同月10日頃,入居 がいいよ。体調を整えてゆっくりしたらいい。」などと被告寮に入ることを勧誘された。 その後,原告Aは,車で,埼玉県内の「本部」と呼ばれる場所に連れて行かれ,同所で一泊し,翌日の同月10日頃,入居契約書らしき書面に,名前,生年月日,本籍,日付などを記載し,被告Cとの間で本件契約を締結したが,被告Cから本件契約の有利な点のみを簡単に説明されたにとどまり,契約書面その他書面の類は一切交付を受けていない。 原告Aは,その時点で既に行き場がなくなっており,本件契約の締結を拒否すれば,改めて就職活動をする必要に迫られるばかりか,居住場所を確保しなければならなかったことから,本件契約の締結により,自己にいかなる不利益が生じるのかを検討することができないままに本件 - 9 -契約を締結せざるを得なかった。 (イ) 原告B原告Bは,主に建築現場などで就労して生計を立てていたが,股関節の痛みが激しくなったため,平成16年12月頃に失業し,飯場を出て居住地を失い,路上生活者となった。 その後,原告Bは,「部落解放連合会」という団体のPらに声を掛けられ,生活保護を受けることを勧められて被告寮に入所し,平成17年4月1日,さいたま市桜区役所に生活保護を申請した。 以上のように,原告Bは,被告寮に入る際,傷病により就労できず,路上生活をせざるを得ない状態に陥っていた。そのような状況で,被告Cは,自ら経営するD荘の居住環境及び同所で提供するサービス等が劣悪であり,そのことを認識していたにもかかわらず,原告Bの窮状無知に乗じて,同人との間で本件契約を締結した。 ウ原告らの生活状況被告Cは,原告らから生活保護費を全額取り上げる反面,原告らに対しては,毎日500円,月に一度5000円を支給するだけであった。 そして,原告らが居住し 件契約を締結した。 ウ原告らの生活状況被告Cは,原告らから生活保護費を全額取り上げる反面,原告らに対しては,毎日500円,月に一度5000円を支給するだけであった。 そして,原告らが居住していたD荘は,6,7畳の部屋にそれぞれ2人ずつ共用で入居する形であり,原告らが単独で使用できる居住スペースは3畳から3畳半程度の狭いものであった。さらに,原告らの居室にはエアコンがなく,窓には網戸やカーテンもないため,夏期は室内が非常に暑くなり,劣悪な居住環境であった。 また,食事についても,昼食はカップラーメンやインスタントラーメンが支給されるだけであり,夕食は主菜が一品出されるだけで,副菜は全く出なかった。原告ら代理人がD荘の米を採取して分析したところ,粒径が小さい,食味に顕著に影響する砕粒,粉状質米,被害粒を多量に含む,米穀公正取引推進協議会が定めるガイドラインに適合する品位ではない,鮮 - 10 -度が極めて低下しているという特徴が確認された。 さらに,被告Cは,原告Aを通じ,さいたま市桜区福祉事務所に対し,原告Aのために布団や衣服を購入したとする請求書を提出したが,実際には,原告Aのために新しい布団は購入されず,衣服も最低限の下着と靴下が支給されたにとどまった。 原告Bには布団が与えられたものの,これは原告Bに支給された生活保護費で購入されたものであるから,被告Cから提供された物品とはいえず,また,その他家具什器類についても,被告寮に備え付けられたものを除き,原告Bのために提供されたものは特になかった。 さらに,原告Bは被告らから十分なサービスを受けなかったばかりか,後記(4)のとおり,安全配慮義務が尽くされないまま,本件工場で作業までさせられていた。 エ被告らの不法行為(ア) 人権侵害被告らが,本件契約を締 十分なサービスを受けなかったばかりか,後記(4)のとおり,安全配慮義務が尽くされないまま,本件工場で作業までさせられていた。 エ被告らの不法行為(ア) 人権侵害被告らが,本件契約を締結するなどして,原告らを上記生活環境に置いたことは,以下のとおり,原告らの人権を侵害するものとして不法行為を構成する。 ① 生存権に対する侵害被告らは,極めて粗末な居住スペース及び食事を提供する対価として,入居者から生活保護費の大部分を取り上げてきたのであるが,人が文化的で最低限度の生活をするためには,快適に居住できるスペースと栄養価の高い食事が最低限必要であることに照らすと,被告らが提供した上記のような極めて粗末な居住スペースと食事が,日本国憲法で保障された原告らの生存権を侵害することは明らかである。 ② 財産権に対する侵害被告らは,生活保護受給日に,被告寮の入居者を合計5台くらいの - 11 -車で区役所に搬送し,入居者が逃げないように見張りを置くなどの方法により,入居者が福祉事務所で支給を受けた生活保護費を未開封の状態で車の中で取り上げていたが,このように,入居者に金銭管理を全く認めない被告らの行為が,日本国憲法で保障された原告らの財産権を侵害することは明らかである。 ③ 勤労の権利及び職業選択の自由に対する侵害被告らは,入居者から生活保護費はもちろん,携帯電話も取り上げてしまうとともに,稼働能力を有する入居者に対しては,被告Cが経営する店舗などでただ働き同然で酷使してきたのであり,後記のとおり,原告Bは,給料も支給されずに,本件工場で作業に従事させられていた。 就職活動にとって,活動費,活動時間及び連絡手段が不可欠なものであり,かつ勤労する際には,正当な対価を得る権利を保障すべきことは当然であることに されずに,本件工場で作業に従事させられていた。 就職活動にとって,活動費,活動時間及び連絡手段が不可欠なものであり,かつ勤労する際には,正当な対価を得る権利を保障すべきことは当然であることに照らすと,上記のような被告らの行為が日本国憲法で保障された原告らの勤労の権利及び職業選択の自由を侵害することは明らかである。 ④ プライバシー権に対する侵害被告らが提供していた居住スペースは,老朽建物の内部をベニヤ板などで仕切っただけで,クロスも張っておらず,狭小である上,隣のスペースに物音が筒抜けになっている状態であったから,被告らが日本国憲法で保障された原告らのプライバシー権を侵害したことは明らかである。 ⑤ 居住移転の自由に対する侵害被告らは,入居者と外部との連絡を絶つために,入居の時点で入居者から携帯電話を取り上げるとともに,入居者が生活保護決定を受けた時点で入居者から生活保護受給証を取り上げていたが,入居者が福 - 12 -祉事務所で転居のための手続をするためには,外部への連絡手段である携帯電話と生活保護受給の事実を証する生活保護受給証の所持が不可欠であるから,被告らの上記行為が日本国憲法で保障された原告らの居住移転の自由を侵害することは明らかである。 (イ) 勧誘行為の違法被告らは,原告らを勧誘するに際し,原告らが得る生活保護費を自分たちの収入源とし,それを確実なものとするために,被告寮で生活させる目的,寮生活の内容,生活保護費を搾取されること,劣悪な衣食住を強いられることや,いつでも本件契約を解除できることを告げなかった。 上記被告らの勧誘行為は,被告らが企図する目的や原告らのその後の生活実態を見れば,それ自体違法なものであり,不法行為を構成することは明らかである。 オ小括したがって, げなかった。 上記被告らの勧誘行為は,被告らが企図する目的や原告らのその後の生活実態を見れば,それ自体違法なものであり,不法行為を構成することは明らかである。 オ小括したがって,被告らは,原告らに対し,それぞれ民法709条に基づく不法行為責任を負い,さらに,被告Cは,被告会社の代表取締役であり,被告会社による活動を自ら計画主導していたから,会社法429条1項に基づく責任も負う。 (被告らの主張)ア 「ユニティー出発の寮」の運営(ア) 被告Cは,人を助けたいとの気持ちから,「ユニティー出発の寮」という名称で,元路上生活者らの生活を支援する組織を立ち上げ,その代表者となった。「ユニティー出発の寮」は法人格がないため,対外的には被告会社の名義を用いることはあるが,あくまで形式的なものであり,「ユニティー出発の寮」は実質的には被告C個人が運営している。 「ユニティー出発の寮」は,入居者それぞれが希望を持ち,前向きに - 13 -支え合って,和気あいあいと仲良く生活していくための寮であり,入居希望者に対しては,入居に当たり,実際に約2か月間,寮での暮らしを実際に体験してもらい,その上で,自主的に入居するか決定してもらっており,いったん入居しても,不満があればいつでも自由に退去できる。 被告Cが,都内等で路上生活者に「ユニティー出発の寮」への入居を勧める活動をしていたのは事実であるが,より多くの路上生活者を支援,救済するためであり,寮に囲い込んで暴利を上げるためのものではない。 また,被告Cは,路上生活者に対し,寮で暮らしていく場合には,生活保護費全額を拠出してもらい,小遣いとして1日500円を渡すこと,携帯電話を預かることなどを説明し,了解を得て,そうした運用をしていたが,これらは,元路上生活者が金銭を計画 らしていく場合には,生活保護費全額を拠出してもらい,小遣いとして1日500円を渡すこと,携帯電話を預かることなどを説明し,了解を得て,そうした運用をしていたが,これらは,元路上生活者が金銭を計画的に使っていくことが苦手であったことや,携帯電話を利用したトラブルが多発したことなどの合理的理由に基づくものである。 さらに,入居者に被告Cの店舗などで手伝いをしてもらったことはあるが,これは,そうした手伝いをすることで社会性を回復してもらうという意味で,元路上生活者の支援,救済に資するものであり,半ば強制的に作業をさせていたわけでもない。 (イ) また,「ユニティー出発の寮」の運営による利益という観点からみても,同運営は全く悪質なものではない。 すなわち,被告Cは,刑事事件で有罪判決を受けたが,同判決において,被告Cの所得として認定されたのは,平成21年分が7483万5640円,平成22年分が9513万7849円であった。この所得には年金分の所得も含まれており,これを控除すると,平成21年分が7325万0940円,平成22年分が9355万3153円となる。 - 14 -「ユニティー出発の寮」の入居者は,平成21年には300人を超えたが,入居者を300人,上記年金分を控除した被告Cの所得がすべて「ユニティー出発の寮」の運営から得たものであることを前提として計算しても,1か月当たりの入居者1人当たりの所得は,平成21年分は約2万0347円,平成22年分は約2万5986円となる。したがって,入居者1人当たりの毎月の拠出金が10万円であるとしても,被告Cの所得とされるのはそのうちの25%程度であり,大部分はその経費,運営費などに充てられていることになる。 イ原告らが本件契約を締結した経緯原告らは,年配の成年者であり,かつ十分な ,被告Cの所得とされるのはそのうちの25%程度であり,大部分はその経費,運営費などに充てられていることになる。 イ原告らが本件契約を締結した経緯原告らは,年配の成年者であり,かつ十分な意思能力を有する者たちであって,これまでに長い人生を歩み,何度か人生の山場を乗り越えて,色々な経験を積んできたものと思われ,相応の決断力と対処能力を有していた。 被告Cは,原告らと面談した際,原告らに対し,実際に寮での暮らしを一定期間体験してもらい,その上で寮での暮らしを続けていくのかを決めてもらい,嫌だと思えばいつでも出ていくことができること,寮での暮らしを続けていくと決めた場合には,生活保護費を拠出してもらうが,毎日500円が支給され,これとは別に毎月5000円が支給されること,寮では携帯電話を預からせてもらうことなどを説明している。 そして,実際に,原告らは,急ぐことなく寮で暮らしてみて,実際の体験を踏まえて納得した上で,入居の意思決定をしたのであり,また,寮が嫌であれば,我慢することなく,いつでもそこから出ていけたのであるから,原告らは,自主的に「ユニティー出発の寮」に入る決断をしたというべきである。 ウ原告らの生活状況原告らが暮らしていた部屋は,1か月分の賃料を2万3850円とする - 15 -のに見合ったものであり,そのため,福祉事務所においても同額を家賃として認定している。 食事についても,各寮から必要な調理用食材の要望を受け,その要望に沿って各寮に食材が提供され,調理担当の入居者が提供された食材を使って食事を作っており,原告らは,手作りの温かい食事をとることができたのであり,しかも,うどんや即席麺,お茶,麦茶,コーヒーが常備されており,いつでもこれらを食べたり飲んだりすることができた。被 使って食事を作っており,原告らは,手作りの温かい食事をとることができたのであり,しかも,うどんや即席麺,お茶,麦茶,コーヒーが常備されており,いつでもこれらを食べたり飲んだりすることができた。被告寮で提供している米は,さいたま市で有力な米取扱い業者として定評のある株式会社ナンブから仕入れている精白米であり,その銘柄は「自然と大地の実り」で,入居者に好評である。なお,原告らが分析した米粒は,D荘の入居者であった訴外H(以下「H」という。)が,暴力事件を起こして逮捕勾留された腹いせに,釈放後にまき散らして足で踏みまくり,その後,その米が放置されて外気にさらされ劣化したものであるから,常用の米とは異なる。 また,原告らは,日常の暮らしの必需品全般について,「ユニティー出発の寮」から提供を受けている。すなわち,部屋にテレビが備え付けられており,扇風機も1人1台ずつ用意され,ノーマットタイプの蚊取線香,タオルも支給されているほか,食器類,歯磨き,入浴用品も用意されており,いつでも使用できる。また,私物を洗濯しようとする場合には,寮に備え付けの洗剤と洗濯機を使用でき,外部との連絡が必要である場合には,寮に備え付けの電話やファックスを利用できる。 さらに,原告Aが福祉事務所に提出した請求書記載の布団及び被服類は,すべて被告Cが購入して原告Aに交付しており,被告Cが,福祉事務所から支給された布団代及び下着代を着服したことは一切ない。 その上,原告らは,「ユニティー出発の寮」から1日当たり500円を支給され,これとは別に少なくとも毎月5000円を支給されており,電 - 16 -気・ガス・水道・電話代を負担する必要もなく,暮らしの必需品の提供も受けていたから,毎月支給される2万円を適宜自己の必要に充てることができた。 以 00円を支給されており,電 - 16 -気・ガス・水道・電話代を負担する必要もなく,暮らしの必需品の提供も受けていたから,毎月支給される2万円を適宜自己の必要に充てることができた。 以上に加え,原告らは,就職活動に対する費用援助,住民票の転入手続の援助等,暮らしのための補助行為も受けていたから,原告らの居住環境が劣悪であるとはいえない。 エ不法行為に対する個別の反論(ア) 人権侵害について① 生存権について「ユニティー出発の寮」は,入居者のため健康で文化的な最低限度の生活にとどまらず,それを上回る精神的,物的な暮らしができるように配慮してきた。 そして,原告らは,多様な暮らしのうち,こうした「ユニティー出発の寮」での暮らしを自ら選択し,同所で暮らすことで,生存権を享有するという目的を達成しているのであるから,生存権侵害はない。 ② 財産権について原告らが「ユニティー出発の寮」で生活するために生活保護費を拠出することは財産権の適正な行使であり,被告Cがこれを受け取ることにも合理的理由があるのであるから,財産権侵害はない。 ③ 勤労の権利及び職業選択の自由について「ユニティー出発の寮」は,就職活動に必要な交通費等の費用を援助しており,入居者はいつでも外出できたから,原告らに意欲があって挑戦するならば,勤労の権利及び職業選択の自由を容易に行使できた。 実際に,原告Aは就職活動をしていたし,他方で,原告Bは,入居当時より,労働能力及び労働意欲がなく,後記(4)のとおり,本件工 - 17 -場で作業に従事したこともないのであるから,原告らの勤労の権利及び職業選択の自由が侵害されたことはない。 ④ プライバシーについて「ユニティー出発の寮」では,入居者は改造して間仕切りが設置された部屋で生活 したこともないのであるから,原告らの勤労の権利及び職業選択の自由が侵害されたことはない。 ④ プライバシーについて「ユニティー出発の寮」では,入居者は改造して間仕切りが設置された部屋で生活しており,プライバシーが保たれている。 もっとも,原告Aについては,間仕切りがない二人部屋で生活していたが,そのことで苦情はなかった。 ⑤ 居住移転の自由について上記イのとおり,原告らは,被告寮への入居を自主的に決定したもので,入居した後もいつでも自由に退去できるのであるから,居住移転の自由が確保されていた。 (イ) 勧誘行為の違法について上記ア,イのとおり,被告Cの「ユニティー出発の寮」への入居を勧める活動は,より多くの路上生活者を支援,救済するためであり,寮に囲い込んで暴利を上げるためのものではないし,また,被告Cは,路上生活者に対し,寮で暮らしていく場合には,生活保護費全額を拠出してもらい,小遣いとして1日500円を渡すこと,携帯電話を預かることなどを説明し,了解を得ていたのだから,勧誘行為が不法行為を構成することはない。 オ公序良俗違反,信義則違反及び権利濫用仮に不法行為が成立し得るとしても,上記イのように,原告らは,入居前2か月間の寮体験をし,その実情を知って納得の上で入居し,入居後もいつでも退去できたのであるから,精神的苦痛を受けるほどの状況だというならば,自ら故意に精神的苦痛を受容したことになるのであって,それにもかかわらず,被告らに対して慰謝料まで求めることは,公序良俗に反して無効であるし,信義則にも反し,権利の濫用である。 - 18 -(2) 本件契約の有効性(社会福祉法違反,公序良俗違反等の有無)(原告らの主張)本件契約は,以下のとおり,社会福祉法に違反する上,いわゆる暴利行為で ,権利の濫用である。 - 18 -(2) 本件契約の有効性(社会福祉法違反,公序良俗違反等の有無)(原告らの主張)本件契約は,以下のとおり,社会福祉法に違反する上,いわゆる暴利行為であり,契約締結過程も違法,不当であるから,公序良俗に反して無効である。したがって,原告らは,被告Cに対し,拠出した生活保護費相当額(原告らに返金された部分は除く。)の不当利得返還請求権を有する。 ア社会福祉法違反被告Cは,いわゆる無料低額宿泊所を経営し,社会福祉法上の社会福祉事業を営んでいる。そして,被告らの主張によれば,被告Cは,衣食住を始め,暮らしの必需品に及ぶ生存のための物的供与と安心できる暮らしのための補助行為を提供していたというのであるから,被告Cは,原告らに対し,単に被告寮を利用させるのみではなく,「生活の扶助」(社会福祉法2条2項1号)を行っているのであり,被告Cの事業は,第1種社会福祉事業に該当する。 そして,第1種社会福祉事業については,国,地方公共団体又は社会福祉法人が経営することが原則であり(同法60条),これ以外の者が経営する場合は,事業の開始前に都道府県知事の許可を受けなければならず(同法62条2項),これに違反した場合には,6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる(同法131条2号)。それにもかかわらず,被告Cは,第1種社会福祉事業の許可を受けていないのであるから(なお,第2種社会福祉事業の際に必要な届出(同法69条1項)もしていない。),被告Cの事業は同法62条2項に違反する違法な事業である。 そして,社会福祉法が第1種社会福祉事業を許可制にして,罰則付きの強い規制を行っている目的,趣旨は,第1種社会福祉事業の大部分は,施設利用者がその生活の大部分を施設の中で営むため,当該事業が施設利用 そして,社会福祉法が第1種社会福祉事業を許可制にして,罰則付きの強い規制を行っている目的,趣旨は,第1種社会福祉事業の大部分は,施設利用者がその生活の大部分を施設の中で営むため,当該事業が施設利用 - 19 -者の人格に与える影響が大きく,非常に重大な人権侵害を生ずる可能性があることから,事業の適正な運営を図ることにある。 そうすると,社会福祉法62条2項に違反する行為は,非常に重大な人権侵害を生ずる結果を生じ,憲法秩序を害する著しく反社会性の強いものであるから,本件契約は公序良俗に反して無効である。 イ契約内容及び契約成立過程の違法・不当性上記(1)(原告らの主張)で詳述したとおり,本件契約において原告らに提供された居住環境は劣悪で,現金,物品及びサービスも乏しかったのであるから,被告Cが提供したサービスと対価が著しく均衡を欠いており,本件契約の内容自体,暴利行為であることは明らかである。 また,被告Cは,原告らの窮状及び生活保護に関する無知を知りながら,敢えてこれに乗じているのであるから,原告らにおいて,本件契約の締結を拒むことは著しく困難であって,契約成立過程も違法・不当である。 以上からすると,本件契約は公序良俗に反して無効である。 (被告Cの主張)ア社会福祉法違反について被告Cが,被告寮について,当時,第1種社会福祉事業の許可を得ておらず,第2種社会福祉事業の届出もしていないことは認めるが,「ユニティー出発の寮」は,第1種社会福祉事業及び第2種社会福祉事業のいずれにも該当しないから,社会福祉法に違反しない。 すなわち,社会福祉法2条2項1号は,「生活保護法に規定する救護施設,更生施設その他生計困難者を無料又は低額な料金で入所させて生活の扶助を行うことを目的とする施設を経営する事業」を第1 しない。 すなわち,社会福祉法2条2項1号は,「生活保護法に規定する救護施設,更生施設その他生計困難者を無料又は低額な料金で入所させて生活の扶助を行うことを目的とする施設を経営する事業」を第1種社会福祉事業としているところ,「無料」とは,入所者の負担が全くないことであり,「低額な料金」とは入所者にも一部だけ負担させることであり,入所者が - 20 -負担していない経費は,補助金など別途の収入で補うことになる。 しかし,「ユニティー出発の寮」は,入居者の拠出金によって,その経費をすべて賄っているから,「無料又は低額な料金で」という要件に該当せず,第1種社会福祉事業に当たらない。 また,社会福祉法2条3項1号は,「生計困難者に対して,その住居で衣食その他日常の生活必需品若しくはこれに要する金銭を与え,又は生活に関する相談に応ずる事業」を,同項8号は,「生計困難者のために,無料又は低額な料金で,簡易住宅を貸し付け,又は宿泊所その他の施設を利用させる事業」を,それぞれ第2種社会福祉事業としているが,前者は給付内容等が限定されており,後者は上記同様に「無料又は低額な料金」という要件があるから,「ユニティー出発の寮」はいずれにも該当しない。 イ契約内容及び契約成立過程について上記(1)(被告らの主張)で詳述したとおり,原告らの居住環境が劣悪であるとはいえないし,入居者からの拠出金の大部分は,経費,運営費などに充てられているから,暴利行為であるとはいえない。 また,原告らは,急ぐことなく被告寮で暮らしてみて,実際の体験を踏まえて納得した上で,入居の意思決定をしたのであり,また,被告寮が嫌であれば,我慢することなく,いつでもそこから出ていくことができたのであるから,原告らは,自主的に被告寮に入る決断をしたというべきであって 得した上で,入居の意思決定をしたのであり,また,被告寮が嫌であれば,我慢することなく,いつでもそこから出ていくことができたのであるから,原告らは,自主的に被告寮に入る決断をしたというべきであって,契約成立過程にも何ら問題はない。 ウ信義則違反及び権利の濫用原告らは,実際に被告寮で相当な物的供与を受け,安心できる暮らしを送っていたのであり,それにもかかわらず,不当利得返還請求をして拠出金の返還を求め,平然と踏み倒そうとするのは,余りに非常識といえる上,原告らが,「ユニティー出発の寮」の実情を知り,その実情が不法であると認識したにもかかわらず,敢えて入居したのであれば,自業自得と - 21 -いうべき事態であり,その責めを被告Cに転嫁して不当利得返還請求をすることは,信義則に反し,権利の濫用である。 (3) 本件契約を特商法9条1項に基づき解除することの可否(原告Aの主張)ア本件契約が特商法上の「訪問販売」に該当することまず,被告Cは,自ら管理する施設に利用者を入居させ,そこで食事を提供するなどしているから,特商法上,「役務提供事業者」に該当する(同法2条1項1号参照)。 また,原告Aは,K駅構内で被告Cの従業員に声を掛けられ,そのまま同人に自動車で埼玉県内の事務所に連れて行かれており,「営業所等以外の場所において呼び止めて営業所等に同行させた者」であり,「特定顧客」に該当する(同項2号)。 そして,「役務提供事業者」である被告Cは,その営業所において,「特定顧客」である原告Aとの間で,平成22年4月16日頃,本件契約を締結したが,本件契約は,毎月支給される生活保護費から施設利用費を支払って,施設の利用,食事などのサービスの提供を受けることを内容とする契約であるから,「役務を有償で提供する契約」( 頃,本件契約を締結したが,本件契約は,毎月支給される生活保護費から施設利用費を支払って,施設の利用,食事などのサービスの提供を受けることを内容とする契約であるから,「役務を有償で提供する契約」(同項1号参照)に該当し,その後,被告Cは,原告Aに対し,D荘を利用させ,そこで食事を提供するなど,「役務の提供」をした。 したがって,本件契約は,特商法上の「訪問販売」に当たる(同項2号)。 イ特商法9条1項に基づく本件契約の解除被告Cは,本件契約を締結した際,原告Aに対し,契約書のコピー等契約に関する書類を渡さなかったから,特商法が役務提供者に対して義務付けている書面の交付をしていない(同法4条,5条)。 そこで,原告Aは,平成23年7月2日に送達された第1事件訴状によ - 22 -り,特商法9条1項に基づき,本件契約を解除する旨の意思表示をしたから,原告Aは,被告Cに対し,解除に基づく原状回復請求権を有する。 (被告Cの主張)特商法は,経済取引に関する調整にすぎない一方,「ユニティー出発の寮」の目的・機能は,入居者に生きる感動を与え,幸福追求を志向させ,入居者の精神の高揚と人生の幸福化という崇高な使命を達成するものであり,特商法とは異次元のものであるから,特商法の適用はない。 すなわち,「ユニティー出発の寮」は,経済取引による利益追求を行っておらず,入居者の幸福追求のため,入居者の個性も尊重し,入居者が多様な人生を歩めるようにするのであるから,特商法の「事業者」に該当せず,他方で,入居者にも幸福追求への自覚と自発性が期待されるのであり,経済取引の相手方である「特定顧客」とも異なる。 そして,「ユニティー出発の寮」の崇高な使命達成には,入居者の自発性と積極性を伴う自助努力も大切なのであるから,「ユニティー出発 待されるのであり,経済取引の相手方である「特定顧客」とも異なる。 そして,「ユニティー出発の寮」の崇高な使命達成には,入居者の自発性と積極性を伴う自助努力も大切なのであるから,「ユニティー出発の寮」と入居者との関係は,経済取引である「役務提供契約」と全く異なる。 したがって,本件契約は特商法2条1項2号の「訪問販売」に該当しないから,特商法9条1項に基づく本件契約の解除は認められない。 仮に本件契約の解除が認められるとしても,原告Aの原状回復請求権の行使が信義則違反,権利濫用となるのは上記(2)と同様である。 (4) 本件事故に関する安全配慮義務違反の有無(原告Bの主張)ア原告Bは,平成17年4月頃,被告Cから,宿泊場所と食事の提供の対価として,本件工場で仕事をするように命じられ,言われるままに,切断機による電線の切断,外側のビニール樹脂の剥ぎ取り,電線の運搬などの作業に従事していた。なお,原則として,作業日は日曜日を除く週6日で,作業時間は午前8時から午後5時までであり,給料は支給されなかっ - 23 -た。 そして,本件事故当時も,原告Bは,切断機で電線の外側を剥ぐ作業に従事しており,切断機に電線が詰まったことから,小型のバールで取り除こうとした際,切断機に右手が巻き込まれて受傷した。 なお,原告Bは,本件事故当時,股関節の痛みを抱えていたが,原告Bが主として行っていた作業は,切断機で電線を切断するものであって,それまで原告Bが従事してきたような建設現場の仕事と異なり,股関節の痛みを押して歩行しなければ遂行できないような作業ではなかったし,D荘から本件工場までは,被告らの自動車に乗せられて移動していた。 イ一般的に,使用者は,雇用契約の相手方である労働者に対し,業務遂行のために提供する場所・施 行できないような作業ではなかったし,D荘から本件工場までは,被告らの自動車に乗せられて移動していた。 イ一般的に,使用者は,雇用契約の相手方である労働者に対し,業務遂行のために提供する場所・施設・設備・原材料等の物的環境,業務遂行上の人的配置及び労働条件等の人的環境の管理に当たって,労働者の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき信義則上の安全配慮義務を負うところ,原告Bが作動していた切断機は,旧式のもので,安全装置は付いておらず,切断機を作動中に指などを切断する危険性は極めて大きかった。 それにもかかわらず,原告Bは,切断機による作業を命じられた際,被告Cから,1,2回見本を見せられただけで,安全に作業するための具体的な指導指示や講習を受けたことはなく,また,作業に先立って,被告らから手袋などの装具の提供を一切受けなかったのであるから,被告らが上記安全配慮義務に違反し,その結果,本件事故を惹起したことは明らかである。 ウなお,被告会社は,被告Cが事業を営むに当たり,対外的には契約の主体として賃貸借契約を締結したり,売買契約を締結したりして,活動を行っているから,原告Bの労働に関しても,一個の独立した存在と扱うべきであり,被告らは,双方とも独立の主体として,原告Bと一定の社会的接 - 24 -触を持つに至ったのであるから,双方が共同して,原告Bの安全に配慮すべき信義則上の義務を負っていたというべきである。 そして,被告らは,同時に上記安全配慮義務に違反したため,本件事故を惹起したから,原告Bに対し,連帯して債務不履行責任を負う。 (被告らの主張)ア原告Bは,本件工場に眼鏡を直すために来て,勝手に機械を動かして自傷したものであり,就業中に本件事故に遭ったものではないから,被告らに安全配慮義務違反はない。 責任を負う。 (被告らの主張)ア原告Bは,本件工場に眼鏡を直すために来て,勝手に機械を動かして自傷したものであり,就業中に本件事故に遭ったものではないから,被告らに安全配慮義務違反はない。すなわち,被告会社は,本件事故当時,既に休眠状態になっており,被告会社が占有していた本件工場も操業を停止していたのであって,被告らが,原告Bを本件工場で就労させていたことはない。 そもそも,原告Bは,本件事故当時,股関節の痛みにより就労できない状態にあり,労働能力を喪失していたのであって,原告Bが主張するような電線を切断する作業に従事することは不可能である上,原告Bが暮らしていたD荘から本件工場までは約8キロメートル離れており,この間を,股関節の痛みがある原告Bが連日徒歩や電車で移動することはとても無理である。 イ仮に被告らについて不法行為が成立するとしても,事故発生時から既に3年以上が経過しているため,消滅時効を援用する。 (5) 原告らの損害額(不当利得等の範囲を含む。)(原告らの主張)ア不法行為による慰謝料被告らの不法行為(争点(1))により,原告らは数々の権利を侵害され,多大な精神的苦痛を受けた。これを慰謝するための金額は,原告らそれぞれにつき,各100万円を下らない。 イ不当利得ないし原状回復の範囲 - 25 -本件契約は無効ないし解除されたところ(争点(2),(3)),原告らは,D荘に居住していた間に受給した生活保護費をすべて被告Cに渡していた一方,被告Cからは,毎日500円のほか,毎月1回5000円の交付を受けるにすぎなかった。 したがって,原告らが求める不当利得返還請求ないし原状回復請求の範囲は,前者から後者を控除した金額であり,これを計算すると,以下のとおりとなる。 (ア) 原 円の交付を受けるにすぎなかった。 したがって,原告らが求める不当利得返還請求ないし原状回復請求の範囲は,前者から後者を控除した金額であり,これを計算すると,以下のとおりとなる。 (ア) 原告A別表1のとおり,原告Aが,D荘に居住していた間に受給した生活保護費は,合計37万8348円である一方,原告Aが被告Cから交付された現金は,合計8万2000円であった。 したがって,不当利得ないし原状回復の範囲は,29万6348円となる。 (イ) 原告B別表2のとおり,原告Bが,D荘に居住していた間に受給した生活保護費は合計691万1221円である一方,原告Bが被告Cから交付された現金は,合計129万7000円であった。 したがって,不当利得の範囲は,561万4221円である。 ウ安全配慮義務違反(争点(4))による原告Bの損害額(ア) 傷害慰謝料 300万円原告Bは,本件事故により,右示指中指切断などの重症を負い,本件病院で,平成17年6月24日から同年8月4日までの間,入院治療を受けており,負傷の部位・程度に鑑みれば,その精神的,肉体的苦痛は甚大であり,傷害慰謝料は300万円が相当である。 (イ) 逸失利益 917万8715円原告Bは,本件事故により,右中指については断端形成となり,右示 - 26 -指についても植皮術が施行されたものの関節拘縮の改善が認められないまま退院となっていることから,本件事故による後遺障害は,2指の用を廃したものに該当し,後遺障害等級第10級に相当する。 そして,原告Bは,本件事故の時点で満65歳であり,基礎収入は,賃金センサス平成23年・男性・65歳ないし69歳の平均年収額363万7800円, ものに該当し,後遺障害等級第10級に相当する。 そして,原告Bは,本件事故の時点で満65歳であり,基礎収入は,賃金センサス平成23年・男性・65歳ないし69歳の平均年収額363万7800円,労働能力喪失率は27パーセント,労働能力喪失期間は平均余命の半分である9.345年とするのが相当であるから,逸失利益は917万8715円となる。 計算式)363万7800円×0.27×9.345(ウ) 後遺障害慰謝料 550万円上記後遺障害を負ったことに対する原告Bの肉体的,精神的苦痛は甚大であり,後遺障害慰謝料は550万円が相当である。 (エ) 弁護士費用 176万7871円(オ) 合計 1944万6586円以上(ア)ないし(エ)を合計すると,1944万6586円となる。 (被告らの主張)ア不法行為による慰謝料否認ないし争う。 イ不当利得ないし原状回復の範囲(ア) 原告Aについて原告Aが受給した生活保護費及び被告Cが原告Aに交付した現金の各金額は認める。 (イ) 原告Bについて原告Bが受給した生活保護費の金額は認めるが,被告Cが原告Bに交付した現金額は否認する。 原告Bは,毎日の小遣いとして500円を受領する以外に,毎月1回 - 27 -1万2000円の交付を受けていたのであるから,原告Bが被告Cから交付を受けた金額は,原告Bが主張する129万7000円を上回ることは明らかである。 ウ安全配慮義務違反による原告Bの損害額(ア) 傷害慰謝料原告Bは,本件事故により,42日間の入院治療を受けたにとどまるから,傷害慰謝料は68万円が相当である。 (イ) 逸失利益原 配慮義務違反による原告Bの損害額(ア) 傷害慰謝料原告Bは,本件事故により,42日間の入院治療を受けたにとどまるから,傷害慰謝料は68万円が相当である。 (イ) 逸失利益原告Bは,本件事故当時,股関節を痛め,生活保護を受けていた高齢者であり,労働能力及び労働意欲がなく,就労の蓋然性もないから,労働能力の喪失による逸失利益は存しない。 仮に逸失利益が存するとしても,原告Bの学歴は中学卒業であるから,原告Bの基礎収入は,賃金センサス平成16年・男性・中卒・65歳以上の平均賃金293万4100円とすべきである。 そして,原告Bは,中指について断端形成となったことから,1指について1手の中指を失ったものとして,後遺傷害等級11級が相当であり,労働能力喪失率は20パーセントとすべきである。この点,原告Bは,示指について関節拘縮の改善が認められないまま退院に至っているが,これは,植皮術が施行されたものの,原告Bが禁煙の指示を遵守せず,リハビリに真摯に取り組まなかったためであるから,本件事故によって示指の用を廃したものとはいえない。 以上を前提に,労働能力喪失期間を平均余命の2分の1の9年とし,中間利息を控除して計算すると,原告Bの逸失利益は,最大でも417万0999円となる。 計算式)293万4100円×0.2×7.1078(9年に相当するライプニッツ係数) - 28 -(ウ) 後遺傷害慰謝料331万円が相当である。 (エ) 弁護士費用否認ないし争う。 第3 争点に対する判断 1 上記前提事実等に加え,証拠(各本文中に掲記の証拠のほか,甲21ないし28,43の3,32ないし39,乙8,原告A本人,被告C本人。ただし,以下の認定に反する部分は除く。)及び弁論の全趣旨を総合すると,以 提事実等に加え,証拠(各本文中に掲記の証拠のほか,甲21ないし28,43の3,32ないし39,乙8,原告A本人,被告C本人。ただし,以下の認定に反する部分は除く。)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 (1) 被告Cの事業ア概要被告会社は,被告Cが昭和47年4月20日に「株式会社和合ダイカスト」の商号で設立した会社であり(平成2年5月24日に現商号に変更),設立以来,本件工場でダイカスト製品の生産及び販売等の事業を営み,一時は30人程度の従業員を雇用する程度の規模に達したこともあったが,次第に業績が傾き,平成14年頃に2度目の手形の不渡りを出して事実上倒産し,同年5月頃には,一切の事業活動をせず,決算報告や税務申告も行わなくなった(ただし,被告会社の登記は残存した。)。(甲43の19,32)被告Cは,平成14年頃から,戸田市eにあった被告会社の事務所の2階をベニヤ板などで改造し,二段ベッドを多数設置するなどして寮(I寮)を作り,新たに「出発(たびだち)」,「ユニティー出発(たびだち)の寮」などの名で,路上生活者らを勧誘してI寮で生活させ,入居者に食事などを提供する代わりに,生活保護等を申請させて生活保護費や年金などを全額徴収し,あるいは被告Cの仕事を手伝わせるという事業(以下「本件事業」という。)を営むようになった。本件事業は,実質的に - 29 -は,被告Cの個人事業であったが,行政機関との折衝や賃貸借契約等の取引など対外的な場面では,相手方から信用を得やすくするため,事実上倒産した被告会社の名義を用いることがあった。(甲43の9,15,19,32,乙5,6)被告Cは,当初,ほぼ一人で本件事業を行っていたが,事業が拡大するにつれてI寮だけでは手狭になってきた した被告会社の名義を用いることがあった。(甲43の9,15,19,32,乙5,6)被告Cは,当初,ほぼ一人で本件事業を行っていたが,事業が拡大するにつれてI寮だけでは手狭になってきたため,埼玉県戸田市内やさいたま市内にI寮と同様の宿泊施設を数多く作り(被告寮),路上生活者を数多く勧誘して入居させるようになったため,被告寮の入居者は,平成18年頃には90人ないし100人程度となり(甲43の15),平成22年3月19日時点で,さいたま市内の被告寮入居者総数は約386人,関係者総数は約402人となるなど,その規模が拡大した。そのため,被告Cは,一部の入居者などに経費や給料を支払って本件事業を手伝わせるようになった(以下,被告Cの指示を受けて本件事業を手伝っていた者を単に「被告Cの従業員」ないし「従業員」という。)。(甲43の4ないし25)被告Cは,平成23年12月頃,I寮について第2種社会福祉事業の届出をしたほかは,被告寮について第1種社会福祉事業の許可申請ないし第2種社会福祉事業の届出をしなかった。(甲18,29,弁論の全趣旨)なお,被告Cは,本件事業以外にも,ラーメン店,居酒屋などの事業を営んでおり,平成19年頃以降は,アルミ缶の売却事業として,JやK方面の路上生活者からアルミ缶を仕入れ,本件工場で分別し,プレス機でプレスし,ブロックにして業者に販売するなどの業務を行うようになった。 (甲43の22,証人R)イ入居者の勧誘方法等本件事業では,まず,「救済係」と呼ばれる従業員が,東京都内のKやLなどにいる路上生活者らに対し,「埼玉に福祉の寮があるので来ません - 30 -か。」,「1日500円あげるよ。」,「3度の食事は心配しなくていい。」などと述べ,また,「ユニティー出発」の電話 Lなどにいる路上生活者らに対し,「埼玉に福祉の寮があるので来ません - 30 -か。」,「1日500円あげるよ。」,「3度の食事は心配しなくていい。」などと述べ,また,「ユニティー出発」の電話番号を記載した紙片を配布するなどして,被告寮に入居するように勧誘し(なお,被告Cはこの勧誘行為を「救済活動」と呼んでいた。),路上生活者らがこれに応じると,「本部」と呼ばれる被告寮に連れて行き,次に,「受入係」と呼ばれる従業員が,入居予定者から,氏名,生年月日,本籍地などを聞き取るとともに,食事や入浴をさせていた。(甲16,43の5,9ないし11,13,22ないし25)その後,被告C自身が,入居予定者と面談して経歴や嗜好などを聞き取り,生活保護を受給させるか,就労させるかを判断するとともに,入居先を決め,その際,入居予定者が携帯電話や預金通帳を持っている場合にはこれらを預かった。(甲14,43の5,11,22ないし25)そして,被告Cは,生活保護を受給させることにした者には,生活保護を受けてもらい,そこから家賃や食事代等を徴収すること,1日500円,月5000円を小遣いとして渡すこと,寝る場所や3度の食事は用意することなどを説明していた。(甲43の5,11,22ないし25)被告Cは,路上生活者らを被告寮に入居させるに当たり,当初は書面を作成していなかったが,平成17年ないし平成18年頃から,生活保護費を被告Cが預かることによるトラブルを回避する趣旨で,被告Cを代理人と定め,金銭管理や日常生活の保障などを委任する旨の「お願い書」や「委任状」などと題した書面を入居者に作成させるようになった。(甲43の5,24,乙2ないし4)ウ生活保護の申請等被告Cの従業員は,生活保護申請予定者の氏名などを一覧にした被告会社名義の生活 任状」などと題した書面を入居者に作成させるようになった。(甲43の5,24,乙2ないし4)ウ生活保護の申請等被告Cの従業員は,生活保護申請予定者の氏名などを一覧にした被告会社名義の生活保護予定者書や賃貸借契約書等の必要書類を区役所の担当者に提出して面接日を決めるとともに,面接日には入居者を区役所に連れて - 31 -行き,生活保護の申請をさせていた。その際,生活保護が認められやすくするため,各入居者に対し,都内から来たことは言わず,さいたま市内で声を掛けられたことにするようになどと指導していた。(甲43の9,23)そして,入居者が生活保護を受給するようになると,被告Cの従業員は,生活保護の受給に必要な生活保護受給証及び印鑑(以下「受給証等」という。)を回収して管理し,生活保護費の受給日には,入居者を車で区役所に搬送して受給証等を返却し,入居者が逃げないように見張りを置いたり,福祉課の窓口まで付き添うなどして,入居者に生活保護費を受給させた上,生活保護費とともに再び受給証等を回収していた。(甲43の13,22,24)なお,被告Cが作成した「売上の推移」と題する書面には,各入居者から回収した生活保護費等を「売上」とし,平成20年度は2億8389万円,平成21年度は4億2425万円,平成22年度は4億8701万円の各「売上」があった旨の記載がされていた。(甲43の31)エ被告寮の借り上げ等被告C及びその従業員は,被告寮として一軒家やアパートを借り上げる際,賃貸人に対し,路上生活者の寮にすることは秘し,被告会社の社宅に用いる旨虚偽を述べて,被告会社名義で賃貸借契約を締結しており,D荘については,平成17年1月31日,所有者であった亡Mとの間で被告会社名義で賃貸借契約を締結した。なお,被告Cは,平成16年頃, に用いる旨虚偽を述べて,被告会社名義で賃貸借契約を締結しており,D荘については,平成17年1月31日,所有者であった亡Mとの間で被告会社名義で賃貸借契約を締結した。なお,被告Cは,平成16年頃,D荘を借り上げるに当たり,Mに対し,自分の会社で仕事をする人を住まわせる場所を提供して欲しいと依頼し,本件工場を案内して見学させたことがあった。(甲12,甲43の9)平成22年3月19日時点で定員15人のうち11人が入居していたF荘(さいたま市西区Ff番地g所在)の賃料は月額7万5000円であ - 32 -り,同日時点で定員15人のうち14人が入居していたD荘の賃料は月額合計13万3000円であり,その他の被告寮の賃料も同程度であった。 (甲12,甲43の9,被告C本人)被告寮の各部屋は,被告Cの従業員により,電気水道工事のほか,大きな二段ベッドを作って部屋の中に入れたり,ベニヤ板などで間仕切りを作る工事などが行われ,1部屋に2人が居住できるようになっていた。なお,間仕切り工事の材料費は,1部屋当たり概ね5,6万円程度であった。(甲43の17,18)オ食材及び日用品の費用等被告Cの従業員は,毎週2回,食材の買い出しをして各被告寮に配達しており,その買い出し費用は,平成21年ないし平成22年頃当時,1回当たり概ね30万円以内であった。(甲43の6)また,衣服(下着類)については,6月と10月の年2回に分けて,寮の全入居者の人数分及び新規入居者用の予備分をまとめて購入し,入居者1人につき,毎年6月,夏用の丸首半袖シャツ2枚入り及び柄パンツ2枚入りを各1組,靴下2足を,毎年10月,冬用の丸首長袖シャツ2枚入り,もも引き2枚入り及び柄パンツ2枚入りを各1組,靴下2足を各支給しており,平成22年頃以降は,社宅とし ツ2枚入り及び柄パンツ2枚入りを各1組,靴下2足を,毎年10月,冬用の丸首長袖シャツ2枚入り,もも引き2枚入り及び柄パンツ2枚入りを各1組,靴下2足を各支給しており,平成22年頃以降は,社宅として借り上げた被告寮の入居者が仕事をしているように装うため,新たに作業着を購入して支給するようになった。さらに,入居期間が3年を超える入居者については,掛け布団,枕,毛布,マットなどを新規に購入して支給していた。(甲43の14)カ小遣いの支給被告Cは,被告寮の入居者に対し,日払いの小遣いとして毎日500円(ただし,土曜日は日曜日の分と合わせて1000円。以下同じ)を支給したほか,生活保護を受給している入居者に対しては,月払いの小遣いとして,原則,毎月5000円を支給していた。ただし,月払いの小遣い - 33 -は,被告Cの事業を手伝うなどの各入居者の貢献度や入居期間に応じて増額されることがあった。(甲43の6,8,19)さらに,被告Cは,平成17年頃以降,毎年12月28日頃に,月払いの小遣いを支給されている者に対し,一律5000円を追加で支給していた。(甲43の8)キ刑事事件被告Cは,平成27年6月26日,さいたま地方裁判所において,所得税法違反被告事件について,懲役1年6月及び罰金1500万円,懲役刑につき執行猶予3年の有罪判決を受けたが,同判決では,被告Cの実際総所得金額が,平成21年分は7483万5640円,平成22年分は9513万7849円であったと各認定された。(甲43の1)(2) 本件契約の締結に至る経緯等ア原告A原告Aは,昭和23年4月9日に神奈川県秦野市で出生し,昭和41年3月に地元の高等学校を卒業した後,神奈川県内の中小企業への就職及び退職を繰り返し,その間,機械の図面作成や土 緯等ア原告A原告Aは,昭和23年4月9日に神奈川県秦野市で出生し,昭和41年3月に地元の高等学校を卒業した後,神奈川県内の中小企業への就職及び退職を繰り返し,その間,機械の図面作成や土木工事などで生計を立て,昭和50年6月にはNと婚姻したが,その後,収入が減少するなどしたため昭和61年7月にNと離婚し,飯場を転々とするなどして生活し,平成16年3月以降は,「FIS青葉」などの無料低額宿泊所に入所して横浜市青葉区等から生活保護を受給するなどしていた。(甲8の443頁)原告Aは,平成21年12月以降,再度,飯場を転々とするなどして自立した生活をするようになったものの,平成22年4月頃,再び仕事がなくなったことから,K駅近くのカプセルホテルや漫画喫茶で寝泊まりをするようになり,所持金が尽きかけ,仕事を探すためにK駅構内にいたところ,被告Cの従業員から,「うちは500円支給して,寝るところも食事も全く困らないから,とりあえず入った方がいい。体調を整えて,ゆっく - 34 -りしたらいい。」などと被告寮に入居するよう誘われ,1日当たり500円が支給され,かつ部屋も食事も用意されるものと考えて,被告寮に入居することとした。 原告Aは,同日,被告Cの従業員に車で埼玉県内の「本部」と呼ばれる事務所に連れて行かれ,3,4種類の書面に名前や生年月日等を記入して「本部」等に宿泊するなどし,同月19日頃には,被告Cの従業員の指示で,被告Cを代理人と定め,金銭に関する諸問題などを委任する旨の委任状(乙4)を作成するなどしたが,その際,作成した書類の写しなどは交付されなかった。 原告Aは,上記「本部」等に宿泊した際,被告Cと面接し,同月16日頃,被告Cとの間で本件契約を締結して,D荘8号室に入居して生活するようになり,約2か月間, 書類の写しなどは交付されなかった。 原告Aは,上記「本部」等に宿泊した際,被告Cと面接し,同月16日頃,被告Cとの間で本件契約を締結して,D荘8号室に入居して生活するようになり,約2か月間,1日500円の小遣いを被告Cの従業員から受領していた。 原告Aは,同年6月9日,被告Cの従業員に連れられて,さいたま市桜福祉事務所(以下,単に「福祉事務所」という。)を訪れて生活保護を申請し,生活保護を受給するようになった。その際,被告Cの従業員から,「声を掛けられた所は大宮駅の東口だったと言うように。間違っても,Kから連れて来られたとは言わないように。」との注意を受けたため,これに従い,福祉事務所職員に対し,その旨申告するとともに,賃貸人を被告会社,賃借人を原告AとするD荘8号室の同月9日付け賃貸借契約書(甲8の435頁)を提出した。 原告Aは,平成22年7月13日,最初の生活保護費の支給を受け,同月以降,1日500円の小遣いのほか,毎月5000円の小遣いを被告Cの従業員から受領するようになった。なお,原告Aは,生活保護の支給を受ける際,被告Cの従業員4,5名に付き添われる形で福祉事務所に車で連れて行かれ,福祉事務所で生活保護費を受領すると,車で待機していた - 35 -被告Cの従業員に対し,未開封のまま,受給証等とともに交付していた。 (以上につき,甲8の426頁ないし508頁,甲26,原告A本人)イ原告B原告Bは,昭和15年3月26日に宮城県志田郡hで出生し,昭和32年3月に地元の中学校を卒業し,昭和39年から平成16年までの間,関東以西の各地を転々し,主に建築現場などで就労して生計を立てていたが,平成16年11月頃,職場で転倒したことから股関節が痛くなり,医師から股関節の軟骨がすり減っている旨の診断を受けたため, の間,関東以西の各地を転々し,主に建築現場などで就労して生計を立てていたが,平成16年11月頃,職場で転倒したことから股関節が痛くなり,医師から股関節の軟骨がすり減っている旨の診断を受けたため,就労を断念し,以後,東京近郊の駅や公園等で路上生活をするようになった。(甲9の45,46頁)原告Bは,その頃,都内の公園で,被告Cの従業員から,「いい仕事があるから,行かないか。」などと誘われ,被告寮(I寮)に入居しながら,埼玉県戸田市Iにある被告Cの工場(本件工場)で働くこととなり,電線の皮を剥ぐなどの作業に従事した。原告Bは,約1か月後に群馬県内の工場で働くようになったがまもなく本件工場に戻り,遅くとも平成17年4月1日までに,被告Cとの間で,本件契約を締結して,D荘2号室に入所した。 原告Bは,同日,福祉事務所で生活保護を申請したが,その際,被告Cの従業員の指示により,福祉事務所職員に対し,O駅周辺で部落解放連合会のPらに声を掛けられた旨の虚偽の申告をし,生活保護を受給するようになった。(甲9の62頁)なお,原告Bは,平成17年4月1日及び平成19年4月1日付けで,賃貸人をD荘の所有者であった亡Mとし,賃借人を原告Bとする平成17年4月1日付け賃貸借契約書及び平成19年4月1日付け賃貸借契約書(甲9の39,40頁)を,また,平成22年3月1日付けで,「ユニティー出発」に金銭管理を委ねる旨の同意書(甲9の81頁)を,それぞれ作成して福祉事務所に提出した。 - 36 -原告Bは,平成17年4月22日,最初の生活保護費の支給を受け,以後,被告Cの従業員から月1度の割合で5000円の小遣いを受けるようになったが(その後,時期は特定できないものの,D荘での滞在期間が長くなるにつれ,月1度の小遣いは1万2000円まで引き上げら ,以後,被告Cの従業員から月1度の割合で5000円の小遣いを受けるようになったが(その後,時期は特定できないものの,D荘での滞在期間が長くなるにつれ,月1度の小遣いは1万2000円まで引き上げられた。),原告Aと同様,生活保護費の支給を受ける際は,被告Cの従業員に付き添われる形で車で福祉事務所に連れて行かれ,生活保護費の支給を受けると,未開封のまま,受給証等とともに被告Cの従業員に交付していた。なお,原告Bは,被告寮に居住するようになってから,1日500円の小遣いを受領していたが,本件工場での作業に対する報酬は受領していなかった。(以上につき,甲9の2頁ないし109頁,甲28)(3) 原告らの生活保護受給額ア原告A原告AがD荘に居住していた間に受給した生活保護費は,別表1のとおりであり,平成22年4月から同年9月までの間,のべ4回にわたり,生活扶助として1月当たり1万5906円ないし7万9530円,住宅扶助として1月当たり2万3850円の支給を受けたほか,一時扶助として,平成22年7月13日頃に敷金等4万7700円,前家賃1万7490円,布団類代1万7300円及び平常着代1万0100円の支給を受け,いずれも被告Cに交付した。(争いがないほか,甲8の427頁ないし431頁,462頁ないし466頁)イ原告B原告BがD荘に居住していた間に受給した生活保護費は,別表3のとおりであり,平成17年4月から平成22年9月までの間,生活扶助として1月当たり約8万円(月によって変動がある。),住宅扶助として1月当たり2万3850円の支給を受けたほか,一時扶助として,平成17年4月22日までに敷金等9万5400円,前家賃2万3850円,布団代1 - 37 -万8375円等の支給を受け,いずれも被告Cに交付した。(争 50円の支給を受けたほか,一時扶助として,平成17年4月22日までに敷金等9万5400円,前家賃2万3850円,布団代1 - 37 -万8375円等の支給を受け,いずれも被告Cに交付した。(争いがないほか,甲9の3頁ないし35頁)(4) 原告らのD荘における生活状況ア居住環境D荘は,老朽化した木造2階建のアパートで,各入居者の部屋が1号室から8号室までの8室(いずれも2人部屋。以下「本件各居室」という。)までがあるほか,共用の台所・食事室及び1人用の浴室が各1室,トイレが2室あり,外に洗濯機が1台設置され,原告らが入居していた当時,十数人程度が入居していた。(甲5,10,12)原告Bが入居していた2号室及び原告Aが入居していた8号室は,元々6畳間程度の広さしかない一つの部屋で,その中央に置かれた二段ベッドにより区切られた各スペースを入居者2人がそれぞれ利用するものであり,間仕切り等は存しなかった。 そして,本件各居室ごとに,洗面台,テレビ,扇風機などが設置されていたが,洗面台の排水設備は,排水口の下にポリタンクを設置した簡易なもので,また,テレビや扇風機は,古く小さいものであった。 共用の台所・食事室にはエアコンが設置されていたが,本件各居室にはエアコンが設置されておらず,窓には網戸やカーテンもなかった。(甲9の56頁)D荘の台所・食事室には,電話機及びファックスが設置されていたものの,電話機は寮長の許可を得なければ使えず,ファックスは「本部」と呼ばれる被告寮との連絡に使用することが許されるのみで,各入居者が私用で使うことはできなかった。 なお,上記2号室及び8号室にはそれぞれ1名の同居者がおり,とりわけ原告Aは,同居人の男性に女装趣味があったことなどから,8号室 ることが許されるのみで,各入居者が私用で使うことはできなかった。 なお,上記2号室及び8号室にはそれぞれ1名の同居者がおり,とりわけ原告Aは,同居人の男性に女装趣味があったことなどから,8号室での生活に多大な嫌悪感を抱いており,ケースワーカーにたびたび不満を訴え - 38 -ていた。(甲8の448頁,原告A本人)イ食事D荘では,入居者のうち炊事を担当する者が,被告Cの従業員により配達された食材を調理して,各入居者に食事を提供していた。 食事のメニューは,朝食はご飯,味噌汁及び納豆又は生卵など,昼食はカップラーメンや袋入りラーメンなど,夕食はご飯,味噌汁及びレトルト食品を中心とした主菜一品であり,原則として付け合わせの野菜などの副菜は用意されなかった。(甲8の448頁,甲9の56頁,甲26)なお,D荘には,乾麺,米,卵,納豆のほか,冷水,お湯,お茶,コーヒーの飲み物が常備されており,入居者はこれを自由に食べたり飲んだりすることができた。 D荘で提供されていた精白米は,農民運動全国連合会食品分析センターの分析によると,粒径が小さい,食味に顕著に影響する砕粒,粉状質米,被害粒を多量に含む,米穀公正取引推進協議会が定めるガイドラインに適合する品位ではない,鮮度が極めて低下しているなどと指摘されている。 (甲11の1ないし3)ウ衣服等原告Aが入居時に支給された衣類は,薄手のジャージ,下着及び靴下が各1組,タオルが1枚程度であり,また,支給された布団は,前の入居者が利用していたものであった(甲26)。しかし,被告Cは,被告会社名義で作成した布団及び衣服(夏用下着上下各4組,冬用下着上下各4組,靴下4足及び部屋着1着)の請求書及び領収書を,原告Aを通じて福祉事務所に提出し,新規に請求書記載の布団及び ,被告Cは,被告会社名義で作成した布団及び衣服(夏用下着上下各4組,冬用下着上下各4組,靴下4足及び部屋着1着)の請求書及び領収書を,原告Aを通じて福祉事務所に提出し,新規に請求書記載の布団及び衣服を購入したとして,上記(3)アのとおり,その費用として布団類代1万7300円及び平常着代1万0100円の支給を受けた。(甲8の446,464ないし466頁)原告Bには,入居時に新たに購入された布団が支給され,上記(3)イの - 39 -とおり,福祉事務所から支給された布団代1万8375円を被告Cの従業員が受領した。また,原告BがD荘に居住していた間,同人に対しては,上記(1)オの取扱いに従い,毎年2回,上下下着各1組,靴下2足程度の衣服が支給されていた。(甲9の50,73,74頁)エ小遣い原告らは,いずれもD荘に入居したときから,日払いの小遣いとして毎日500円の支給を受けたほか,生活保護を受給した後は,月払いの小遣いとして,原告Aは毎月5000円,原告Bは毎月5000円ないし1万2000円の支給を受け,さらに,原告Bは,毎年12月28日頃に5000円の支給を受けた。 オ就職活動ないし就労状況等原告Aは,被告Cから受領する1日500円の小遣いを主にたばこ購入費用に充て,就職活動をするための交通費や証明写真の撮影費用を工面することが困難であったため(甲26),D荘に入居していた当時,求職情報誌に掲載されていた会社に電話で問い合わせをするなどして求職活動をしたが,いずれも断られ,それ以上の求職活動を断念した。(甲8の469頁)原告Bは,後記(5)のとおり,被告Cの指示で本件工場での作業に従事していたが,上記小遣いを受領するほかに,特段,被告Cから給料等は支払われなかった。 また,被告Cが原告らのため 9頁)原告Bは,後記(5)のとおり,被告Cの指示で本件工場での作業に従事していたが,上記小遣いを受領するほかに,特段,被告Cから給料等は支払われなかった。 また,被告Cが原告らのために,就職活動に対する費用援助,住民票の転入手続の援助等の補助行為をしたこともなかった。 (5) 本件事故等原告Bは,D荘に入居した後の平成17年4月頃から,被告Cの指示により,本件工場で,主に切断機で電線を切断したり,電線の外側のビニール樹脂を剥ぐ作業に従事していた。 - 40 -原告Bは,同年6月24日,上記切断機を用いる作業に従事中,切断機に電線が詰まったことから,バールで取り除こうとした際,切断機に右手が巻き込まれ,右示指中指切断,環指挫滅創の傷害を負った(本件事故)。原告Bは,被告Cから手袋などの装具の提供を受けておらず,本件事故当時も右手に装具を付けていなかった。 原告Bは,同日から,本件病院に入院し,同日,再接着術を施されるも示指中指とも壊死に至り,同年7月5日,中指第2関節付近に断端形成術が,示指に人工真皮装着術が,各施行され,同月19日,同部分に植皮術が施行された。 原告Bは,その後,本件病院の医師から禁煙指示を受けたが,これを遵守せず,また,リハビリ意欲がなかったことから,同年8月4日,示指につき,関節拘縮の改善が認められず,拘縮のある状態で本件病院を退院した。 (以上につき,甲4,13)(6) 原告らのD荘からの退去原告らは,平成22年8月20日,弁護士の仲介によりNPO法人ほっとプラスの代表者であるQ(以下「Q」という。)と面談し,D荘での処遇に不満があること(具体的には,生活保護費を搾取されている,施設使用料が高額でサービスとの対価が見合わない,共同生活で部屋は狭く衛生面が悪い 表者であるQ(以下「Q」という。)と面談し,D荘での処遇に不満があること(具体的には,生活保護費を搾取されている,施設使用料が高額でサービスとの対価が見合わない,共同生活で部屋は狭く衛生面が悪い等)を伝えたところ,Q及び弁護士は,D荘からの早期退出が急務であると考え,原告らの希望に従い,大宮駅周辺の転居先を探し始めた。原告らは,同月23日,Qの仲介により,福祉事務所に対して転居費用一時金申請を行い,同月24日,ケースワーカーとの面接を経て,同年9月6日,転居費用一時金として各自18万8350円の支給を受け,また,転居先も決まったため,同日,D荘から原告ら肩書き住所地に転居した。なお,原告らの転居に伴い,さいたま市桜福祉事務所の生活保護は同月7日付けで廃止され,原告らは,現在,転居先を管轄するさいたま市大宮福祉事務所から新たに生活 - 41 -保護を受給している。(甲8の449頁ないし451頁,甲9の57頁ないし59頁,甲26,27) 2 争点(1)ないし(3)について(1)ア上記を前提に検討するに,まず,原告らが居住していたD荘は,老朽化した木造アパートであり,各入居者は,6畳間程度の本件各居室を2人で使用していたのであるから,入居者個人が自由に使えるのは3畳間程度の極めて狭小なスペースでしかなく,しかも,一部屋に2人が暮らし,原告らが入居していた2号室及び8号室に至っては,間仕切りさえ存しなかったのであるから,およそプライバシーが確保された空間であったとはいえない。また,本件各居室に設置された空調設備も,古い扇風機があるのみで,エアコンは設置されておらず,窓にカーテンすらなかったのであるから,原告Aが,夏は暑くてとても部屋には居られないと陳述し(甲26),原告Bが,D荘に入居していた当時,福祉事務所職員に対し,室内 で,エアコンは設置されておらず,窓にカーテンすらなかったのであるから,原告Aが,夏は暑くてとても部屋には居られないと陳述し(甲26),原告Bが,D荘に入居していた当時,福祉事務所職員に対し,室内が非常に暑く,熱中症になりそうだと述べている(甲9の56頁)のも,けだし当然である。 D荘で原告らに提供されていた食事をみても,昼食は乾麺以外に用意されず,夕食もご飯とみそ汁のほかは,レトルト食品を中心とした主菜一品しか提供されず,安価であったのみならず,栄養バランスも著しく欠いていたといわざるを得ず(そのため,原告Aは,ケースワーカーに対して「栄養失調になるのではないか」と不安を訴えており,原告Bも「満足な食事ができていない。」と訴えている(甲8の448頁,甲9の56頁)。),また,農民運動全国連合会食品分析センターの分析(上記1(4)イ)によると,米粒の品質も相当低いものであった。 さらに,被告寮の入居者は,平成22年頃以降に就労を偽装するための作業着が支給されるようになったほかは,毎年2回,最低限の下着や靴下(下着上下は2枚入りを各1組,靴下は2足)しか支給されず,原告Aの - 42 -入居時には,被告Cは,原告Aを通じ,福祉事務所に対し,新規に布団及び衣服(夏用下着上下各4組,冬用下着上下各4組,靴下4足及び部屋着1着)を各購入したとして,一時扶助として,布団類代1万7300円及び平常着代1万0100円の支給を受けさせ,これを徴収しながら,原告Aには,新品ではなく前の入居者が利用していた布団と,薄手のジャージ,下着及び靴下各1組程度しか支給しなかった。 イこの点,被告らは,上記分析の対象となった米粒は,D荘の入居者であったHが,平成23年10月29日に暴力事件を起こして逮捕勾留された腹いせに,釈放後にまき散らして足 度しか支給しなかった。 イこの点,被告らは,上記分析の対象となった米粒は,D荘の入居者であったHが,平成23年10月29日に暴力事件を起こして逮捕勾留された腹いせに,釈放後にまき散らして足で踏みまくり,その後,その米が放置されて外気にさらされ劣化したものであるから,常用の米とは異なる旨を主張し,被告寮で仕入れていた米は安心して食に供せられる良品であるとの内容の仕入れ先である株式会社ナンブが作成した書面(乙1)を提出する。しかしながら,同書面は,「(被告Cが購入している米の)銘柄は「自然と大地の実り」であり,その産地は茨城県あるいは千葉県であり,安心して食に供せられる良品です。」と記載するにとどまり,米の分析結果などからその品質を客観的に裏付けるものではないし,仮に被告らが主張するように,上記分析の対象となった米粒(甲10号証の写真1,22によれば,これは平成23年12月26日に原告訴訟代理人がD荘の食堂床にあった米を採取したものであることが認められる。)が,Hによってまき散らされた後,放置されたものであったとしても,同センターによれば,試料採取から試験までの間に経過した3か月程度では,高い湿度等の保存に適さない環境でない限り,試験結果への影響は小さいとされている(甲11の3)から,外気にさらされたのみで鮮度が著しく低下するとは思われないし,粒径の大きさ自体にも影響はないと考えられ,実際にD荘に入居していた原告Aは,米そのものが古古米のような米で,砕けたような米であったと供述しており,上記分析結果の妥当性が裏付けられてい - 43 -る。 また,被告らは,原告Aには,布団及び衣服を購入し支給していると主張し,確かに,福祉事務所が作成した生活指導記録表には,「なお,布団及び被服については平成22年6月14日訪問時に現物を -る。 また,被告らは,原告Aには,布団及び衣服を購入し支給していると主張し,確かに,福祉事務所が作成した生活指導記録表には,「なお,布団及び被服については平成22年6月14日訪問時に現物を確認し,マットレス・シーツ・毛布・掛け布団,半袖シャツ2枚・パンツ2枚・靴下1足・寝巻1着が新品で支給されたとのこと。」との記載がある(甲8の446頁)が,原告Aによれば,福祉事務所職員は,D荘を訪問した際,食堂を訪れたのみで,原告Aの部屋に立ち入って布団等の現物を確認したことはなかったというのであり,上記「支給されたとのこと。」との記載からしても,福祉事務所職員が,原告Aに支給したとされる布団等をすべて直接確認したわけではなく,D荘で応対した者からの聞き取りや支給物品と同種の物を確認したにすぎないとも考えられるから,上記生活指導記録表の記載を根拠に,請求書記載の布団等がすべて新品で購入され,原告Aに支給されたとは認められず,他方,原告Aは,支給された布団は使い回しのもので,衣服も,薄手のジャージ,下着及び靴下が各1組程度しか支給されなかった旨を供述ないし陳述(甲26)しており,特段,その信用性を疑うべき事情は存しないから,上記のとおり認定するのが相当である。 ウ以上によれば,原告らの生活状況は,相当劣悪なものであったことがうかがえ,実際に原告らにかかった経費をみても,D荘に居住していた原告らは,住宅扶助として1月当たり2万3850円の支給を受け(甲8,9),これを全額被告Cに交付していたが,D荘の月額賃料は13万3000円で,十数人(平成22年3月19日時点で14人)が入居していたから,D荘の借り上げ費用は1人当たり月額9500円にすぎず(13万3000円÷14人=9500円),1部屋の間仕切り工事費用に5,6万円を費やした 平成22年3月19日時点で14人)が入居していたから,D荘の借り上げ費用は1人当たり月額9500円にすぎず(13万3000円÷14人=9500円),1部屋の間仕切り工事費用に5,6万円を費やしたことや,各部屋のテレビ,扇風機等の備品の取得費用(正 - 44 -確な金額は不明であるが,ごく低廉な額と推認される。)を考慮しても,その経費はD荘の各入居者から徴収した住宅扶助の合計額を下回るものであったといえる。 また,原告らは,生活扶助として1月当たり約8万円の支給を受け(甲8,9),これを被告Cに交付していたが,平成21年頃ないし平成22年頃当時,本件事業全体での食材の買い出しは毎週2回なされ,その費用は,1回当たり概ね30万円以内であったから,入居者数を平成22年3月19日時点の386人として計算すると,1人当たりの食材費は毎月約6662円(≒30万円×2回÷7日×30日÷386人)にすぎず,他の備品費用や原告らに支給される毎月2万円ないし2万7000円の小遣い等を勘案しても,被告Cが提供していたサービスは,原告らが受けていた生活扶助の金額を大きく下回るものであったといわざるを得ない。 そして,原告らは,本件事業の経費を1人当たり月額3万3422円と推定計算した上,生活保護を受給していた入居者1人当たりの被告Cの取り分は,受給月額10万円ないし12万円から経費月額3万3422円を控除した残額の月額7万円ないし9万円程度に上ると主張するところ,原告らの推定計算には,1部屋当たりの工事費を寮全体の工事費とするなどその前提自体に誤りがある上,備品,衣服及び布団などの費用や従業員に対する給料などが考慮されていないから,これを直ちに採用することはできないけれども,上記のとおり,一人当たりの食費月額約6662円,家賃月額9500円, る上,備品,衣服及び布団などの費用や従業員に対する給料などが考慮されていないから,これを直ちに採用することはできないけれども,上記のとおり,一人当たりの食費月額約6662円,家賃月額9500円,小遣い月額2万円ないし2万7000円に,各部屋の工事費,水道光熱費,備品や衣服等の費用,従業員の給与等を考慮しても,原告らにかかった経費は,原告ら主張の金額と大きく異なることはなく,原告らが受給し,被告Cに交付していた生活保護費の額を大きく下回るものであったことは優にこれを推認することができる。 なお,この点に関し,被告らは,刑事事件の判決において,被告Cの所 - 45 -得として認定されたのは,平成21年分が7483万5640円,平成22年分が9513万7849円であり,ここから年金分の所得を控除すると,平成21年分が7325万0940円,平成22年分が9355万3153円となり,これを前提に1か月当たりの入居者1人当たりの所得を計算すると,平成21年分は約2万0347円,平成22年分は約2万5986円にすぎず,入居者から受け取った生活保護費の大部分は経費,運営費などに充てられていることになる旨を主張する。しかしながら,刑事事件の判決は,実際総所得金額が摘示金額以上に存しないことまでをも認定したものではない上,被告Cは,本件事業以外にも,ラーメン店や居酒屋の経営,アルミ缶売却などの事業を行っており,被告Cによれば,赤字であったこれら他の事業の所得や経費も,刑事事件の所得計算に含まれているというのであるから,刑事事件の判決を根拠に,本件事業における被告Cの所得が上記各金額にとどまるものということはできず,被告らは,原告らにかかった経費を明らかにしないのであるから,被告らの主張は採用できない。 エ生活保護法は,健康で 本件事業における被告Cの所得が上記各金額にとどまるものということはできず,被告らは,原告らにかかった経費を明らかにしないのであるから,被告らの主張は採用できない。 エ生活保護法は,健康で文化的な最低限度の生活の保障という憲法25条の趣旨を具体化した法律の規定として,3条において,健康で文化的な生活水準を維持することができる最低限度の生活(以下,単に「最低限度の生活」という。)が保障されるべき旨を定め,8条2項において,保護の基準は最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これを超えないものでなければならない旨を定めているところ,上記のとおり,実際に原告らにかかった経費は,正当な利益分を考慮しても,生活保護費の額を大きく下回るものであったといわざるを得ず,このことは,原告らの生活状況が生活保護基準に満たない劣悪なものであったことを裏付けるものといえる。 そうすると,被告Cは,原告らから生活保護費を全額徴収しながら,原 - 46 -告らに対して,生活保護法に定める健康で文化的な最低限度の生活水準に満たないサービスしか提供せず,その差額をすべて取得していたのであり,かかる被告Cの行為は,生活保護法の趣旨に反し,その違法性は高いというべきである。 加えて,被告Cは,従業員を「救済係」として,多数の路上生活者を勧誘させ,同人らに対し,埼玉県内で声を掛けられたと虚偽の事実を述べるよう指導して生活保護を受給させ,生活保護費の受給日には,車で入居者らを送迎し,逃げないように見張りを立てたり,窓口まで付き添うなどして,受給した生活保護費や生活保護受給証をその場で徴収し,これを「売上」などとし,「来期年商5億円を目指します。」などと記載していたこと(甲43の31),受給した生活保護費は,被告寮の入居者や被 して,受給した生活保護費や生活保護受給証をその場で徴収し,これを「売上」などとし,「来期年商5億円を目指します。」などと記載していたこと(甲43の31),受給した生活保護費は,被告寮の入居者や被告Cの子らの名義の口座に入金し,被告Cの長男の住宅購入や娘らへの生活費の援助,自身の生活費などに費消していたこと(甲43の3,35,37)などに照らせば,結局,被告Cの本件事業は,生活保護費から利益を得ることを目的とし,路上生活者らを多数勧誘して被告寮に入居させ,生活保護を受給させた上でこれを全額徴収し,入居者らには生活保護基準に満たない劣悪なサービスを提供するのみで,その差額を収受して不当な利益を得ていたものであり,かかる事業の一環として原告らと被告Cとの間で締結された本件契約は,単に対価とサービスの均衡を欠くばかりか,上記のとおり,生活保護法の趣旨に反して,原告らを生活保護基準に満たない劣悪な環境に置くものであるほか,利用者の人権擁護の必要性から,第1種社会福祉事業についてその経営主体を原則として国,地方公共団体又は社会福祉法人とし,それ以外の者が経営する場合には都道府県知事等の許可にかからしめた社会福祉法の趣旨にも反し,原告らが生活に困窮していた状況に乗じて締結させたことなどその経緯や態様等に照らして,公序良俗に反し,無効というべきである。 - 47 -そして,上記のとおり,原告Aに関する本件契約は公序良俗違反により無効であるから,さらに特商法9条違反を理由とする解除の有効性について判断する要はない。 (2)アまた,上記のとおり,原告らは,被告Cにより,その事業の一環として本件契約を締結させられ,上記認定のような生活保護基準を下回る劣悪な環境で生活することを余儀なくされていたものであり,被告Cについては,原告らの とおり,原告らは,被告Cにより,その事業の一環として本件契約を締結させられ,上記認定のような生活保護基準を下回る劣悪な環境で生活することを余儀なくされていたものであり,被告Cについては,原告らの最低限度の生活を営む利益を侵害したものとして不法行為が成立するというべきであり,原告らが主張する各人権(第2の2(1)(原告らの主張)エ(ア)参照)は,実質的に同利益に含まれるものとして考慮することが相当である。 イまた,原告らは,被告らが原告らを勧誘するに際し,被告寮で生活させる目的,寮生活の内容,生活保護費を搾取されること,劣悪な衣食住を強いられることや,いつでも本件契約を解除できることを告げなかったとして,勧誘行為それ自体が不法行為となる旨主張する。 しかしながら,被告Cは,入居予定者との面接時に,生活保護を受給させることとした入居予定者には,生活保護を受けてもらい,そこから家賃や食事代等を徴収すること,1日500円,月5000円を小遣いとして渡すこと,寝る場所や3度の食事を用意することなど,本件契約の主要な内容自体は説明しており,上記内容を超えて,被告Cに,本件事業の目的や,寮生活の具体的な内容などを説明する義務があったとまでは解されない上,原告Aは,本件契約では,生活保護を受給することが前提だと思っていたと供述しており(原告A本人),原告Bについては,その陳述書(甲28)を含む本件全証拠によっても,具体的な勧誘内容や状況は明らかではないのであるから,原告らに対する勧誘行為それ自体が,独立して不法行為を構成するとまでは認められない。 ウなお,被告会社については,平成14年頃に事実上倒産した後は実質的 - 48 -な企業活動を行っておらず,被告C個人では家主との間で賃貸借契約等を締結することが困難であると れない。 ウなお,被告会社については,平成14年頃に事実上倒産した後は実質的 - 48 -な企業活動を行っておらず,被告C個人では家主との間で賃貸借契約等を締結することが困難であると考えられたことなどから,便宜上,D荘の賃貸借契約など対外的な場面でその名義を用いられたにすぎず,原告らとの関係においても,本件契約を締結したわけではなく,本件事業について,被告Cの活動を離れて実質的に具体的な活動をしていなかったのであるから,原告らの権利利益を侵害したとはいえず,原告らに対して不法行為責任を負うものとは認められず,したがって,被告Cについても,被告会社の役員としての職務執行を理由とする会社法429条1項に基づく責任を負うものとは認められない。 (3) 被告らは,入居希望者に対し,実際に約2か月間,寮での暮らしを実際に体験してもらった上で,自主的に入居するか決定してもらっており,いったん入居しても,不満があればいつでも自由に退去できるのであるから,不法行為は成立しないし,本件契約の成立過程にも問題はなく,仮にそうでないとしても,上記の事情からすれば,慰謝料や不当利得返還まで求めることは,公序良俗に反して無効であるし,信義則にも反し,権利の濫用である旨を主張する。 しかしながら,そもそも,被告Cないしその従業員が,各入居者に対し,被告らのいう2か月間の体験期間がある旨を説明していたとは認められない上,原告らが被告Cの従業員から勧誘を受けた際,原告Bは股関節の痛みから就労を断念して路上生活をしており,原告Aは仕事を失い,漫画喫茶などで寝泊まりをするも所持金が尽きかけ,いずれ路上生活をせざるを得ない状況に陥っていたから,原告らはいずれも,路上生活を避けるためには,本件契約を締結して被告寮に入居するしかない窮状に追い込まれていたと 寝泊まりをするも所持金が尽きかけ,いずれ路上生活をせざるを得ない状況に陥っていたから,原告らはいずれも,路上生活を避けるためには,本件契約を締結して被告寮に入居するしかない窮状に追い込まれていたというべきであり,D荘に入居する前後において,原告らがD荘の生活環境が劣悪であることを認識したとしても,路上生活をするよりはいくぶん有利と判断した上で,やむなくD荘での生活を開始したにすぎないものであり,被告Cも - 49 -原告らの不利な立場を十分認識していたと考えられる。 また,D荘への入居後も,原告らは最低限度の生活を下回る生活を余儀なくされていたのであるから,被告Cから支給される1日500円等の小遣いを貯蓄して転居費用とすることが容易であったとはいえず,また,原告らは生活保護の受給に必要な受給証等も被告Cないしその従業員に管理されていたことのほか,原告らが受給した生活保護費は被告Cの従業員に管理されていたことから,生活保護費を使って転居先を探すことも事実上困難であったといえる。そして,原告らは,携帯電話も所持しておらず(弁論の全趣旨),平成22年8月に弁護士からNPO法人の紹介を受けて初めて,福祉事務所から転居費用一時金の支給を申請し,その支給を受けた上で,転居先を確保することができたのであり,それまでは,そもそもD荘での生活に不満があっても,そこから転居することが事実上は不可能であると考えていたことも窺われるのである(甲27)。 そうすると,原告らが自己の意思によりD荘に入居し,また,D荘の生活が劣悪であると認識した後もD荘での生活を継続していたとしても,原告らに責めるべき点があるとはいえないから,原告らがD荘で生活することにより精神的苦痛を被ったとして,被告らに慰謝料を請求することが公序良俗に反するとか,同請求や公 の生活を継続していたとしても,原告らに責めるべき点があるとはいえないから,原告らがD荘で生活することにより精神的苦痛を被ったとして,被告らに慰謝料を請求することが公序良俗に反するとか,同請求や公序良俗違反を理由とする不当利得返還請求が信義則に反し,権利濫用として許されないなどということはできず,被告らの主張は採用できない。 3 争点(4)について(1) 前記第2の2(4)のとおり,原告Bが本件事故に遭った際,被告Cの指示により,本件工場で切断機を用いる作業に従事していたか否かに争いがあるので,検討する。 原告Bは,被告Cの指示により,切断機で電線の外側を剥ぐ作業に従事していた際,切断機に電線が詰まったことから,小型のバールで取り除こうと - 50 -したが,その際,切断機に右手が巻き込まれて受傷したと主張し,その旨陳述(甲28)しているところ,その内容は自然かつ合理的であるのみならず,本件病院の入院要約(甲13)にも「現病歴:平成17年6月24日電線の外側を剥ぐ機械に指を挟み込み受傷。救急搬送され緊急手術となる。」と記載されていることから,原告Bは,本件事故当日に本件病院で治療を受けるに当たり,本件工場で働いていて事故に遭った旨を申告したことが窺われ,その供述は一貫している上,医師に対し,あえて虚偽の供述をする理由もないことからすると,これを信用することができ,したがって,上記1(5)で認定したとおり,原告Bは,被告Cの指示により,本件工場で切断機を用いる作業に従事していた際に,本件事故に遭ったと認められる。 これに対し,被告らは,原告Bが,本件事故当時,眼鏡を直すために本件工場に来て,勝手に機械を動かして自傷したものであり,被告らが原告Bを就労させていたことはないと主張し,被告Cは,被告会社がダイカストの製 し,被告らは,原告Bが,本件事故当時,眼鏡を直すために本件工場に来て,勝手に機械を動かして自傷したものであり,被告らが原告Bを就労させていたことはないと主張し,被告Cは,被告会社がダイカストの製造販売業務を止めて以降,短期間,アルミ缶を潰す作業を行っていた以外に本件工場を操業したことは一切ないなどと供述し,本件事故当時,本件工場の上階のI寮に入居していたRも,平成19年ないし平成20年頃にアルミ缶を潰す作業をしていたほかに,本件工場で働いていた人はいない,また,本件事故の前日に,原告Bから眼鏡が壊れたのでドライバーを貸してほしいと頼まれたことや,入院中の原告Bから,「機械をいじっちゃったよ。ごめん。」などと言われたことから,原告Bは,眼鏡を修理するために本件工場で機械を動かした際に怪我をしたとしか考えられないなどと被告らの上記主張に沿う証言をし,同趣旨の陳述書(乙9)を提出する。 しかしながら,そもそも原告Bが,眼鏡を直すために本件工場の切断機を作動させるということ自体不自然である上,被告C及び証人Rは本件事故を現認したわけではなく,被告らの主張する事故態様は伝聞ないし推測の域を出ないものであり,証人Rは被告Cの従業員として路上生活者の受け入れ業 - 51 -務を行うなど,被告Cと相当に近い関係にあったこと(甲43の11,14)をも考慮すると,被告Cの供述及びRの証言は直ちに信用することができず,これにより本件事故の態様を認定することは到底できない。また,上記1(1)エで認定したとおり,被告Cは,平成16年頃,D荘を借り上げるに当たり,所有者であった亡Mに対し,自分の会社で仕事をする人を住まわせる場所を提供して欲しいと依頼し,本件工場を案内して見学させているのであるから,その頃,本件工場は実際に操業していたことが推認されるので ,所有者であった亡Mに対し,自分の会社で仕事をする人を住まわせる場所を提供して欲しいと依頼し,本件工場を案内して見学させているのであるから,その頃,本件工場は実際に操業していたことが推認されるのであって,アルミ缶を潰す作業をしていた時期を除き,本件工場で働く人はいなかった旨をいう被告Cの供述及びRの証言は,かかる事実とも整合しないものであって(なお,被告Cがアルミ缶売却事業として,本件工場でアルミ缶を分別し,プレスするなどの作業をしていた時期は,上記1(1)アで認定したとおり,平成19年頃以降である。),到底信用することができない。 なお,本件病院の入院要約(甲13)には,「当初そこで働いていて事故にあったといっていたが,後日会社に住み込みしている(?)生保の友人(S・T)が訪ねてきて,たまたま事故現場には工場に眼鏡を直すために来て,勝手に機械をいじって受傷したと申告してきた。労災ではなく生活保護で扱ってくれと言ってこられた。」と記載されており,SないしTなる者が被告らの上記主張に沿う申告を担当医師にしたことが認められる。しかし,SないしTの素性は判然としない上,このような申告をわざわざ原告Bの担当医師にした理由も不明であって信用できるものではなく,原告Bの担当医師も本件事故の態様を原告Bの申告に基づいて判断しており,SないしTの同申告に重きを置いていないことが窺われる。 さらに,被告らは,そもそも,原告Bは,本件事故当時,股関節の痛みにより就労できない状態にあり,労働能力を喪失していたのであって,原告Bが主張するような作業に従事することは不可能である上,D荘から本件工場までは約8キロメートル離れており,この間を股関節の痛みがある原告Bが - 52 -連日徒歩や電車で移動することは無理であるとも主張する。 しかし,仮に原告B は不可能である上,D荘から本件工場までは約8キロメートル離れており,この間を股関節の痛みがある原告Bが - 52 -連日徒歩や電車で移動することは無理であるとも主張する。 しかし,仮に原告Bが股関節の痛みを理由にそれまで従事していた建築現場での就労ができなくなっていたとしても(甲9の62頁,64頁及び67頁には,原告Bが股関節痛のため仕事ができない旨の記載がある。),当然に,切断機を用いて電線を切断する程度の軽作業までできなかったとまで断ずることはできず,また,原告Bの主張によれば,D荘から本件工場までは,被告らの自動車に乗せられて移動していたというのであるから,同主張に従えば,原告Bが本件工場での作業に連日従事することが不可能であったとはいえず,被告らの上記主張も採用できない。 (2) そして,上記1(5)で認定したとおり,被告Cは,平成17年4月頃から,原告Bに対し,本件工場で切断機を用いて電線を切断したり,電線の外側のビニールを剥ぐなどの作業をするように指示していたのであるから,原告Bとの間で特別な社会的接触の関係に入ったものとして,信義則上,原告Bに対しその生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負うところ(最高裁判所昭和50年2月25日第三小法廷判決・民集29巻2号143頁参照),原告Bが作動させていた切断機は,誤って指を切断するなどの危険性が高いものであったにもかかわらず,安全装置などが付いていた様子はなく,また,安全講習なども実施されなかったことは明らかであるから,被告Cが上記安全配慮義務に違反し,その結果,本件事故を惹起したことは明らかであり,被告Cは,原告Bに対し,債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。 被告らは,本件事故発生時から既に3年以上が経過しているとして民法724条に基づ の結果,本件事故を惹起したことは明らかであり,被告Cは,原告Bに対し,債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。 被告らは,本件事故発生時から既に3年以上が経過しているとして民法724条に基づく消滅時効を援用するが,本件訴訟において原告Bが主張するのは債務不履行に基づく損害賠償責任であり,その消滅時効の期間は10年であり(前掲最高裁昭和50年2月25日判決),原告Bは,本件事故発生日から10年が経過する前である平成23年10月12日に本件訴えを提起 - 53 -しているから,消滅時効は完成していない。 (3) 原告らは,被告会社についても,被告Cの事業に際し,対外的には契約の主体として賃貸借契約を締結したり,売買契約を締結したりして,活動を行っているから,原告Bの労働に関しても,一個の独立した存在として,一定の社会的接触を持つに至ったとして,原告Bの安全を配慮するべき信義則上の義務を負っており,債務不履行責任を負うと主張する。 しかしながら,上記1(1)アで認定したとおり,被告会社は,平成14年頃に事実上倒産した後は実質的な企業活動を行わず,本件事故当時も同様の状況にあった上,被告Cが,被告会社の名義を用いていたのは,行政機関との折衝や賃貸借契約等の取引などの対外的な場面で,相手方の信用を得るためであるから,入居者である原告Bを本件工場で作業させるに当たって,被告会社の名義を用いる必要はなく,また,実際にその名義が用いられたこともうかがわれない。そうであれば,被告会社が,原告Bとの間で,信義則上の安全配慮義務を負うべき特別な社会的接触の関係に入ったということはできないから,被告会社は,本件事故について,原告Bに対して安全配慮義務違反による債務不履行責任を負わない。 4 争点(5)(損害額等)について(1) 不法行為 的接触の関係に入ったということはできないから,被告会社は,本件事故について,原告Bに対して安全配慮義務違反による債務不履行責任を負わない。 4 争点(5)(損害額等)について(1) 不法行為による慰謝料上記2で認定説示した原告らのD荘での生活状況,原告らがD荘に入居していた期間その他本件に現れた一切の事情を勘案すると,被告Cの不法行為によって原告らが受けた精神的苦痛に対する慰謝料は,原告Aについて10万円,原告Bについて20万円をもって相当と認める。 (2) 不当利得の範囲ア原告A別表1のとおり,原告AがD荘に居住していた間に受給し,被告Cに交付していた生活保護費は合計37万8348円である一方,原告Aが被告 - 54 -Cから交付された現金は合計8万2000円であったことは争いがないから,不当利得の範囲はその差額29万6348円となる。 イ原告B原告Bが被告Cから支給を受けた月払いの小遣い額については,1月当たり5000円ないし1万2000円の範囲で争いがあるので検討するに,その金額を示す明確な書証等はないものの,原告B自身,被告寮にいる期間が長くなると最後は1万2000円くらいもらえるようになった旨を陳述し(甲28),また,原告A及び訴外Uとの会話で,半年ぐらいいれば1000円ぐらい上がる旨述べている(甲24)ことからすると,月払いの小遣い額は,D荘に入居した当初は原則どおり5000円であり,そこから1万2000円に達するまで6か月で1000円ずつ漸増したものとして算定するのが相当であり,これに反する証拠はない。 また,上記1(4)エで認定したとおり,原告Bは,毎年12月28日頃に,月払いの小遣いとは別に,5000円の支給を受けていたと認められる。 そうすると,別表3のとおり,原告B る証拠はない。 また,上記1(4)エで認定したとおり,原告Bは,毎年12月28日頃に,月払いの小遣いとは別に,5000円の支給を受けていたと認められる。 そうすると,別表3のとおり,原告Bは,本件契約に基づき,被告Cに対し,生活保護費として受給した691万1221円を交付した一方,被告Cからは,合計162万9500円の現金を交付されたと認められるから,不当利得の範囲はその差額528万1721円となる。 (3) 安全配慮義務違反による原告Bの損害額ア傷害慰謝料 72万円原告Bは,本件事故により,右示指中指切断,環指挫滅創の傷害を負い,平成17年6月24日から同年8月4日までの間,外科手術を含む入院治療を受けており,入院期間及び負傷の部位,程度等一切の事情を勘案すると,傷害慰謝料は72万円をもって相当と認める。 イ逸失利益 379万3554円 - 55 -(ア) 原告Bは,本件病院を退院した当時65歳で,学歴は中学卒業であり(甲9の45頁),本件事故当時,股関節の痛みで建築現場等での就労を断念し,本件工場で電線を切断するなどの作業に従事していたことなどからすれば,原告Bの基礎収入は,賃金センサス平成17年・男性・中卒・65歳以上の平均賃金282万3900円の7割である197万6730円と認めるのが相当であり,これを超える基礎収入があったと認めるべき的確な証拠はない。 被告らは,原告Bが,本件事故当時,股関節を痛め,生活保護を受けていた高齢者であるから,労働能力及び労働意欲がなく,就労の蓋然性もないと主張するが,上記3(1)のとおり,原告Bが股関節を痛めていたといっても,これによって当然に一切の労働に従事できないわ を受けていた高齢者であるから,労働能力及び労働意欲がなく,就労の蓋然性もないと主張するが,上記3(1)のとおり,原告Bが股関節を痛めていたといっても,これによって当然に一切の労働に従事できないわけではなく,本件事故当時,現に切断機で電線を切断するなどの作業に従事していたことからすると,原告Bに就労の蓋然性がないとはいえず,被告ら主張の事情は基礎収入の算定において考慮すれば足りるのであって,これに反する被告らの主張は採用できない。 (イ) そして,上記1(5)認定のとおり,原告Bの右示指中指は,本件事故により切断され,本件病院において再接着術を施されるも壊死に至り,右中指については,第2関節付近で断端形成術が施され,右示指については,人工真皮装着術等が施されるも,関節拘縮の改善が認められず,拘縮のある状態で本件病院を退院し,その後も,原告Bの右示指中指の状態は改善していないことがうかがわれる(甲4)から,本件病院を退院した平成17年8月頃,同状態で症状固定したものと推認される。 そうすると,右中指については,近位指節間関節以上を失い,1手の中指を失ったものとして,労働基準法施行規則別表第2の身体障害等級(以下「後遺障害等級」という。)第11級の6に相当する後遺障害であり,右示指については,中手指節関節又は近位指節間関節に著しい運 - 56 -動障害を残し,1手の示指の用を廃したものとして,後遺障害等級第12級の9に相当する後遺障害であると認められるから,以上を総合すると,原告Bの後遺障害は,後遺障害等級準用第10級に相当するものというべきであり,労働能力喪失率は27%とするのが相当である。 これに対し,被告らは,原告Bが,担当医師による禁煙の指示を遵守せず,リハビリにも真摯に取り組まなかったため,右示指の関節拘縮の いうべきであり,労働能力喪失率は27%とするのが相当である。 これに対し,被告らは,原告Bが,担当医師による禁煙の指示を遵守せず,リハビリにも真摯に取り組まなかったため,右示指の関節拘縮の改善が認められないまま,本件病院を退院したのであるから,本件事故によって示指の用を廃したものとはいえないとして,因果関係が認められない旨を主張するようである。 しかしながら,本件事故によって原告Bが負った傷害は,それ自体,右中指示指切断等という手指の欠損障害又は機能障害を残す危険性が極めて高いものであり,実際,本件病院で,右中指示指の再接着術を施されるも,いずれも壊死に至っていたというのであるから,右示指の用を廃したのは,本件事故の危険が現実化したものにほかならず,原告Bの治療中の上記態度が治療の効果を減殺したとしても,それは,後記エのとおり,過失相殺において考慮すべき事情にとどまり,因果関係を否定するものではない。 (ウ) そして,原告Bの労働能力喪失期間は,65歳の平均余命の2分の1である9年であり,以上を前提に中間利息を控除して計算すると,原告Bの逸失利益は,379万3554円となる。 計算式)197万6730円×0.27×7.1078(9年に対応するライプニッツ係数)=379万3554円ウ後遺傷害慰謝料 550万円原告Bの負った後遺障害の程度等一切の事情を勘案すると,後遺傷害慰謝料は550万円をもって相当と認める。 エ過失相殺 - 57 -上記1(5)で認定したとおり,原告Bの禁煙の不遵守やリハビリ意欲の不存在が治療の効果を減殺したことは否定できず,その結果,後遺障害の程度にも影響を与え,損害の拡大に寄与したものとい 57 -上記1(5)で認定したとおり,原告Bの禁煙の不遵守やリハビリ意欲の不存在が治療の効果を減殺したことは否定できず,その結果,後遺障害の程度にも影響を与え,損害の拡大に寄与したものというべきであるから,過失相殺として1割を減ずべきであり,上記アないしウの合計額1001万3554円から1割を減じると,901万2198円となる。 オ弁護士費用 90万1219円認容額等一切の事情を勘案すると,弁護士費用は90万1219円をもって相当と認める。 カ合計 991万3417円以上を合計すると,991万3417円となる。 5 小括(1) 以上によると,被告Cは,原告Aに対し,不法行為に基づき,10万円及びこれに対する一連の不法行為の終了日である平成22年9月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,不当利得として,29万6348円及びこれに対する第1事件訴状送達の日の翌日である平成23年7月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,各支払う義務を負う。 また,被告Cは,原告Bに対し,不法行為に基づき,20万円及びこれに対する一連の不法行為の終了日である平成22年9月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,不当利得として,528万1721円及びこれに対する第2事件訴状送達の日の翌日である平成23年10月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,債務不履行(安全配慮義務違反)に基づく損害賠償として,991万3417円及びこれに対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,各支払う義務を負う。 (2) なお,原告Bは,平成26年8 配慮義務違反)に基づく損害賠償として,991万3417円及びこれに対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,各支払う義務を負う。 (2) なお,原告Bは,平成26年8月13日,「訴えを全部取り下げま - 58 -す。」などと記載した同月9日付け取下書及び同日付け弁護士解任届を当裁判所に提出したが,原告Bについては,同月7日付け診断書(成年後見用)において,同年7月2日に実施された改訂長谷川式簡易知能評価スケールの結果が30点中1点であることなどを理由に,自己の財産を管理・処分することができない(後見相当)と診断され(甲41),同年10月24日,成年後見開始の審判がされ,同年11月12日,同審判が確定したことが認められる(甲42の1及び2)から,原告Bは,同取下書及び同解任届を作成した当時,訴えの取下げないし訴訟代理人解任の効果を判断する精神能力を有しておらず,意思能力を欠いていたことは明らかであるから,上記訴えの取下げ及び訴訟代理人解任は無効である。 第4 結論よって,原告らの請求は主文1,2項の限度で理由があるからその限度で認容し,その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 さいたま地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官脇 由紀 裁判官山口和宏 裁 裁判官 山口和宏 裁判官 山田悠一郎

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