令和5年12月11日判決言渡同日原本交付裁判所書記官令和5年(ワ)第3171号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和5年10月5日判決原告 A 同訴訟代理人弁護士河西邦剛同西山晴基被告株式会社スターレイプロダクション同訴訟代理人弁護士長町真一同松元優季 同朝妻健同伊 﨑 健太郎同古川弘基主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は、原告に対し、975万7000円及びこれに対する令和5年3月4日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告に対し、インターネット上で公開する自らのホームページ(http://以下省略)に掲載した別紙1記載の画像及び氏名(赤枠囲み内部分)並びにインターネット上で公開する自らのウェブページ(http://以下省略)に掲載した別紙2記載の記事及び画像を削除せよ。 第2 事案の概要 1 本件は、タレントである原告が、芸能活動に関し専属契約を締結していた被 告に対し、当該契約が解除されたにもかかわらず、被告がそのホームページ上に原告の肖像写真及び氏名等を掲載し続けているとして、主位的に当該掲載行為が肖 が、芸能活動に関し専属契約を締結していた被 告に対し、当該契約が解除されたにもかかわらず、被告がそのホームページ上に原告の肖像写真及び氏名等を掲載し続けているとして、主位的に当該掲載行為が肖像権及びパブリシティ権侵害を構成すると主張し、不法行為に基づき、損害賠償金975万7000円(損害金887万円及び弁護士費用88万7000円の合計額)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和5年3月4 日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払並びに上記肖像写真等の削除を求め、予備的に上記掲載行為が不正競争防止法2条1項1号に掲げる不正競争に該当すると主張し、同法4条に基づき、損害賠償金382万8000円(損害金348万円及び弁護士費用34万8000円の合計額)の支払を求める事案である。 なお、原告は、令和5年6月12日、本件訴えの全部を取り下げたものの、被告は、同月20日、これに同意をせず、同年10月5日、弁論が終結された。 2 前提事実(証拠等の記載のないものは当事者間に争いがない。)⑴ 当事者ア原告は、タレント、モデル、演劇その他の芸能活動を行ってきた者であ る。 イ被告は、タレントやモデルの育成及びマネジメントを主とするプロダクション業務等を業とする芸能プロダクションである。 ⑵ 本件契約原告と被告は、平成30年12月5日頃、原告が被告の専属タレントとし て、被告の指示に従って芸能活動を行い、被告が原告に対し、当該芸能活動に係る報酬等を支払うことを内容とする専属契約(以下「本件契約」という。)を締結した。(甲2、弁論の全趣旨)⑶ 本件契約の解除等原告は、本件契約締結から令和2年7月頃までの間、被告の専属タレント として芸能活動を行っていたが、同 契約」という。)を締結した。(甲2、弁論の全趣旨)⑶ 本件契約の解除等原告は、本件契約締結から令和2年7月頃までの間、被告の専属タレント として芸能活動を行っていたが、同月4日、被告の従業員に対し、事務所 (被告)を辞めたい旨伝えた。(弁論の全趣旨)そして、原告は、令和2年8月7日、被告に対し、本件契約を解除する旨の解除通知書(以下「本件通知書」という。)を送付した。(甲4、弁論の全趣旨)⑷ 別件訴訟 その後、被告は、原告に対し、本件契約の解除が無効であるとして、本件契約が存続していることの確認等を求める本訴(当庁令和3年第11918号。以下、下記反訴と併せて「別件訴訟」という。)を提起し、これに対して原告は、被告に対し、本件契約に基づく未払報酬等の支払を求める反訴(当庁令和4年第4871号)を提起したが、令和4年11月29日、上 記本訴請求及び反訴請求をいずれも棄却する旨の判決が言い渡された。(甲6、弁論の全趣旨)原告は、上記判決に対して控訴し、被告は附帯控訴したが、令和5年4月18日、原告が当該控訴を取り下げたため、上記判決は確定した。(弁論の全趣旨) ⑸ 本件掲載被告は、本件通知書の受領後である令和2年9月7日以降も、自社のホームページにおいて、原告の肖像写真及び氏名(別紙1の赤枠囲み内部分。以下「本件写真等1」という。)並びに原告のプロフィール及び肖像写真(別紙2。以下「本件写真等2」といい、本件写真等1及び2の肖像写真を、併 せて「本件写真」といい、本件写真等1及び2を、併せて「本件写真等」という。)を削除せず、その掲載(以下「本件掲載」という。)を続けた。 しかしながら、上記のとおり、別件訴訟の判決 せて「本件写真」といい、本件写真等1及び2を、併せて「本件写真等」という。)を削除せず、その掲載(以下「本件掲載」という。)を続けた。 しかしながら、上記のとおり、別件訴訟の判決が令和5年4月18日に確定したことから、被告は、同日、自社のホームページから、本件写真等を削除した。(乙1、7、弁論の全趣旨) 3 争点 ⑴ パブリシティ権侵害の有無(争点1)⑵ 肖像権侵害の有無(争点2)⑶ 不正競争防止法2条1項1号該当性(争点3)⑷ 損害発生の有無及びその額(争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(パブリシティ権侵害の有無)について(原告の主張)⑴ 人の氏名、肖像等(以下、併せて「肖像等」という。)が商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合、そのような肖像等を無断で使用する行為は、①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、② 商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、③肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合には、パブリシティ権を侵害するものとして、不法行為法上違法となると解される(最高裁平成21年(受)第2056号同24年2月2日第一小法廷判決・民集66巻2号89頁参照)。 この点について、まず、原告の写真集が販売されたり、肖像写真が広告宣伝に利用されたりしていたのであるから、原告の肖像等が商品の販売等を促進する顧客吸引力を有することは明らかである。 そして、芸能事務所である被告にとっては、制作会社等の取引先及び新たなタレント候補者との関係において、原告を含む所属タレント自体が商品で あるところ、本件掲載は、①原告の肖像等自体を独立して鑑賞の対象となる 所である被告にとっては、制作会社等の取引先及び新たなタレント候補者との関係において、原告を含む所属タレント自体が商品で あるところ、本件掲載は、①原告の肖像等自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用するものであること、②他の芸能事務所のタレントとの差別化を図る目的で、③被告の広告として原告の肖像等を使用するものであることが明らかであり、専ら原告の肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするものであるといえる。 したがって、本件掲載は、原告のパブリシティ権を侵害するものである。 なお、契約が明らかに終了した場合のみならず、肖像写真等の使用の承諾を撤回した場合も、パブリシティ権侵害が成立する。 ⑵ 被告は、タレント自体が商品等に該当するとは解されていないとして、前掲最高裁平成24年2月2日判決にいう第1類型(以下、同判決記載の①ないし③の類型を、順に第1類型ないし第3類型という。)に該当しないと主 張する。しかしながら、本件掲載により、被告が取引先を通じて原告の肖像写真等を使用して収益を上げることになること、被告が原告の肖像写真等に係るライセンス権を有しているかのような外観を作出するものであることなどに照らせば、本件掲載は、被告が原告の肖像写真等を写真集等に利用する行為と同視し得る行為といえる。 また、被告は、広告宣伝目的の掲載ではないから第3類型に該当しない旨主張する。しかしながら、本件掲載は、被告が取引先を介して原告の肖像写真等を広告等に利用する行為と同視できることや、被告自身の役務の宣伝・広告として利用している側面もあることからすれば、被告の主張は失当である。 (被告の主張)パブリシティ権の侵害は、専ら氏名や肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる行為に 広告として利用している側面もあることからすれば、被告の主張は失当である。 (被告の主張)パブリシティ権の侵害は、専ら氏名や肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる行為にのみ成立するところ、以下のとおり、本件掲載は、そのような行為に当たらないため、パブリシティ権侵害は成立しない。 まず、第1類型についてみるに、本件掲載は、原告の氏名や肖像自体を、グ ラビア写真のように主たる一部の構成物とした出版物として売り出しているものではない。また、本件掲載当時、被告のホームページには、100名近くの所属タレントに加え、スタッフ等も紹介されており、記事たる被告のホームページが「添え物」で、原告の肖像等が独立して鑑賞の対象となっているとはいえない。 第2類型についてみるに、本件掲載(原告の肖像等の掲載)は、被告のホー ムページ全体の1パーセントにも満たないから、同ホームページが原告の人物識別情報部分によって差別化されている(原告の人物識別情報が有する顧客吸引力を利用している)とはいえない。 第3類型についてみるに、本件掲載は、原告が被告の所属タレントである事実を示すにすぎず、何らかの商品等を広告宣伝する目的で掲載されたものでは ない。そもそも広告代理店等の取引先は、被告を始めとする芸能事務所のホームページを見て肖像等を利用したいタレントを選択するわけではない。 2 争点2(肖像権侵害の有無)について(原告の主張)芸能人は、どのような企業のどのような商品・サービス等の広告等に出演す るか、自己の意思に基づいて判断、決定できるものであり、芸能事務所に所属し続けるかどうかも自己の意思に基づいて判断、決定できる。したがって、自らの意思に反して、芸能事務所の所属タレントとして肖像が利用され 自己の意思に基づいて判断、決定できるものであり、芸能事務所に所属し続けるかどうかも自己の意思に基づいて判断、決定できる。したがって、自らの意思に反して、芸能事務所の所属タレントとして肖像が利用された場合には、慰謝料によって慰謝されるべきである。 (被告の主張) 本件写真は、原告の私的領域について撮影したものではないし、原告を侮辱するものでもなく、また、原告の私生活の平穏を害するものでもないから、肖像権を侵害するものとはいえない。 3 争点3(不正競争防止法2条1項1号該当性)について(原告の主張) ⑴ 商品等表示該当性原告は「A」という名称で芸能活動をしており、同名称は原告という商品の出所又は営業の主体を示す表示といえるから、「他人の商品等表示」に該当する。 また、原告の容ぼうを撮影した写真も、人の業務に係る標章に当たるから、 「他人の商品等表示」に該当する。 ⑵ 周知性原告は、平成30年にミス週刊少年マガジンを受賞するなど、著名な芸能人として需要者の間に広く認識されている。 ⑶ 混同惹起の有無被告が、本件契約解除後も、原告の氏名及び写真を掲載したこと(本件掲 載)により、需要者である取引先に対し、既にタレント(原告)自身が商品の出所又は営業の主体になっていたにもかかわらず、芸能事務所(被告)が商品の出所又は営業の主体になるという混同を生じさせた。 (被告の主張)⑴ 商品等表示該当性 不正競争防止法2条1項1号の「商品」とは、その経済的価値が社会的に承認され、独立して取引の対象とされているものを指すところ、原告という自然人自身が、独立して取引の対象とされているわけではないから、原告の名称及び容ぼうを撮影した写真が「他人の商品等表示」に当たること 認され、独立して取引の対象とされているものを指すところ、原告という自然人自身が、独立して取引の対象とされているわけではないから、原告の名称及び容ぼうを撮影した写真が「他人の商品等表示」に当たることはない。 ⑵ 周知性 原告が平成30年のミス週刊少年マガジンを受賞していても、当該コンテストのグランプリは原告ではなかったし、受賞から5年が経過しているから、取引先に広く知られるだけの知名度を獲得し、それが現在まで継続しているとはいえない。 ⑶ 「商品等を使用」について 上記のとおり、被告のホームページにおける原告の肖像等の掲載(本件掲載)は、同ホームページ全体の1パーセントにも満たない上、被告の商号が明記されているから、被告は、そもそも原告の肖像等を自己の商品等表示として用いるものではない。 4 争点4(損害発生の有無及びその額)について (原告の主張) ⑴ パブリシティ権及び肖像権侵害に係る損害ア財産的損害及び精神的損害原告は、本件掲載により、本件写真等の使用を許諾する場合に通常受領すべき金銭に相当する額の損害を受けた。 また、本件掲載は、原告が未だに被告に所属するタレントであるかのよ うな誤解を与えるものであるから、原告が他の芸能事務所等で芸能活動を行う機会を奪うものであり、原告が精神的苦痛を受けたことは明らかである。 したがって、本件掲載に基づく上記財産的損害及び精神的損害を合わせた損害額は、1日1万円を下回るものではない。そのため、少なくとも、 本件通知書の受領日である令和2年8月7日から30日経過後である同年9月7日から令和5年2月10日に至るまでの損害額は、合計887万円を下回るものではない。 イ弁護士費用本件掲載と相当因 通知書の受領日である令和2年8月7日から30日経過後である同年9月7日から令和5年2月10日に至るまでの損害額は、合計887万円を下回るものではない。 イ弁護士費用本件掲載と相当因果関係のある弁護士費用は、上記アの金額の1割相当 額である88万7000円を下回るものではない。 ⑵ 不正競争に係る損害ア被告の不正競争により、原告に出演等の業務依頼をしようとする取引先は、実際には原告が所属していない被告に依頼をしようとすることになるのであるから、原告は、適時の機会に出演等の業務を受託することができ なくなるなど、営業上の利益を侵害されたといえる。 そして、原告の芸能活動によって得られたであろう売上げは、月額12万0928円を下らないところ、被告との間の本件契約解除後、被告が原告の氏名及び肖像等を被告のホームページに掲載し続けた約2年5か月の間における原告の各月の売上げは、同金額をはるかに下回るものである。 したがって、被告の不正競争による営業上の利益の侵害に係る原告の損 害額は、348万円を下回るものではない。 イ弁護士費用本件掲載と相当因果関係のある弁護士費用は、上記アの金額の1割相当額である34万8000円を下回るものではない。 (被告の主張) 被告が、自社のホームページに本件写真等を掲載(本件掲載)したとしても、使用料等が生じるわけではないし、本件掲載によって原告のタレント活動に支障が生じてもいないから、本件掲載によって原告に損害は発生していない。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(パブリシティ権侵害の有無)について ⑴ 肖像等を無断で使用する行為は、①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、②商品等の差別 。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(パブリシティ権侵害の有無)について ⑴ 肖像等を無断で使用する行為は、①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、③肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、パブリシティ権を侵害するものとして、不法行為法上違法となると解するのが相当である(最高裁平成 21年(受)第2056号同24年2月2日第一小法廷判決・民集66巻2号89頁)。 これを本件についてみると、前提事実並びに証拠(甲11、乙1、7)及び弁論の全趣旨によれば、芸能プロダクションである被告は、被告に所属するタレントを紹介するために、そのホームページにおいて、他の所属タレン トと併せて原告の氏名及び肖像写真(本件写真等1)をトップページに掲載するとともに、原告のプロフィール及び肖像写真(本件写真等2)を所属タレントのページに掲載したことが認められる。 上記認定事実によれば、被告は、所属タレントを紹介する被告のホームページにおいて、原告が被告に所属する事実を示すとともに、原告に関する人 物情報を補足するために、本件写真等を使用したことが認められる。 そうすると、本件写真等は、商品等として使用されるものではなく、商品等の差別化を図るものでもなく、商品等の広告として使用されるものともいえない。 したがって、被告が本件写真等を使用する行為は、専ら原告の肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするものとはいえず、パブリシティ権を侵害 するものと認めることはできない。 ⑵ これに対し、原告は、本件写真等の掲載は原告の肖像写真等を写真集等に利用する行為と同視し得ると主張 の利用を目的とするものとはいえず、パブリシティ権を侵害 するものと認めることはできない。 ⑵ これに対し、原告は、本件写真等の掲載は原告の肖像写真等を写真集等に利用する行為と同視し得ると主張し、また、被告が取引先を介して原告の肖像写真等を広告等に利用する行為と同視し得る旨主張する。 しかしながら、本件写真等は、被告が所属タレントを紹介するために使用 されたにすぎないことは、上記において説示したとおりである。 そうすると、本件写真等が写真集等や広告等に利用されたといえないことは明らかである。したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。 2 争点2(肖像権侵害の有無)について ⑴ 肖像は、個人の人格の象徴であるから、当該個人は、人格権に由来するものとして、みだりに自己の容ぼう等を撮影等されず、又は自己の容ぼう等を撮影等された写真等をみだりに公表されない権利を有すると解するのが相当である(最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁、最高裁平成15年(受)第281号同 17年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁、前掲最高裁平成24年2月2日判決各参照)。他方、人の容ぼう等の撮影、公表が正当な表現行為、創作行為等として許されるべき場合もあるというべきである。 そうすると、容ぼう等を無断で撮影、公表等する行為は、①撮影等された者(以下「被撮影者」という。)の私的領域において撮影し又は撮影された 情報を公表する場合において、当該情報が公共の利害に関する事項ではない とき、②公的領域において撮影し又は撮影された情報を公表する場合において、当該情報が社会通念上受忍すべき限度を超えて被撮影者を侮辱するものであるとき、③公的領域におい 害に関する事項ではない とき、②公的領域において撮影し又は撮影された情報を公表する場合において、当該情報が社会通念上受忍すべき限度を超えて被撮影者を侮辱するものであるとき、③公的領域において撮影し又は撮影された情報を公表する場合において、当該情報が公表されることによって社会通念上受忍すべき限度を超えて平穏に日常生活を送る被撮影者の利益を害するおそれがあるときなど、 被撮影者の被る精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超える場合に限り、肖像権を侵害するものとして、不法行為法上違法となると解するのが相当である。 ⑵ これを本件についてみると、前記認定事実によれば、被告は、所属タレントを紹介する被告のホームページにおいて、原告が被告に所属する事実を示 すとともに、原告に関する人物情報を補足するために、本件写真を使用したものである。そして、証拠(甲11)及び弁論の全趣旨によれば、本件写真の内容は、白色無地の背景において、原告の容ぼうを中心として正面から美しく原告を撮影したものであることが認められる。 そうすると、本件写真は、私的領域において撮影されたものではなく、原 告を侮辱するものでもなく、平穏に日常生活を送る原告の利益を害するものともいえない。 したがって、被告が本件写真を使用する行為は、原告の肖像権を侵害するものと認めることはできない。 これに対し、原告は、自らの意思に反して芸能事務所の所属タレントとし て肖像が利用された場合には、精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超える場合に当たる旨主張する。しかしながら、原告は、肖像権侵害を主張するものの、肖像に化体しこれに紐づけられた法律上保護される利益(民法709条参照)を具体的に特定して主張するものではなく、主張自体失当というほかない。仮に、原 かしながら、原告は、肖像権侵害を主張するものの、肖像に化体しこれに紐づけられた法律上保護される利益(民法709条参照)を具体的に特定して主張するものではなく、主張自体失当というほかない。仮に、原告の主張を前提としても、前記前提事実によれば、本 件契約に係る解除が有効であるとする別件訴訟の棄却判決が、令和5年4月 18日に確定したところ、被告は、同日には、自社のホームページから、本件写真を削除したことが認められる。そうすると、原告の主張を十分に斟酌しても、本件契約の解除の有効性が訴訟で争われていた事情を考慮すれば、その間に本件写真を掲載した行為が、受忍限度を超える侮辱ということはできず、その他に、原告主張に係る精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を 超えることを裏付ける的確な証拠はない。したがって、原告の主張は、採用することができない。 3 争点3(不正競争防止法2条1項1号該当性)について不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」とは、人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示 するものをいう。 これを本件についてみると、原告の氏名又は肖像は、原告を示す人物識別情報であり、本来的に商品又は営業の出所表示機能を有するものではない。そして、前記前提事実によれば、原告は、芸能プロダクションである被告に所属する一タレントであったにすぎず、原告自身がプロダクション業務等を行ってい た事実を認めるに足りない。そして、本件全証拠をもっても、原告の氏名又は肖像が、その人物識別情報を超えて、原告自身の営業等を表示する二次的意味を有するものと認めることはできず、まして、原告の氏名及び肖像が、タレントとしての原告自身の知名度とは別に、原告自身の営業等を表示するものとして 別情報を超えて、原告自身の営業等を表示する二次的意味を有するものと認めることはできず、まして、原告の氏名及び肖像が、タレントとしての原告自身の知名度とは別に、原告自身の営業等を表示するものとして周知であるものとは、明らかに認めるに足りない。 したがって、原告の氏名又は肖像が周知な商品等表示に該当するものと認めることはできない。 これに対し、原告は、原告の氏名又は肖像が商品の出所又は営業の主体を示す表示である旨主張するものの、原告は、芸能プロダクションである被告に所属する一タレントであったにすぎず、本件全証拠によっても、原告自身が営業 等の主体である事実を認めるに足りないことは、上記において説示したとおり である。したがって、原告の主張は、不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」を正解するものとはいえず、採用することができない。 4 その他その他に、原告提出に係る準備書面及び証拠を改めて十分に検討しても、原告の主張は、パブリシティ権、肖像権、不正競争防止法にいう商品等表示の法 的性質をいずれも正解せずに主張するものに帰し、上記において説示したところに照らし、いずれも採用の限りではない。 第5 結論よって、原告の請求は、いずれも理由がないからこれらをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部裁判長裁判官 中島基至 裁判官 古賀千尋 裁判官 尾池悠子 (別紙1)(別紙2)いずれも省略 子 (別紙1)(別紙2)いずれも省略
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