平成23(ワ)33222等 就業規則無効確認等請求事件,未払賃金等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年1月17日 東京地方裁判所
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判決文本文32,812 文字)

平成25年1月17日判決言渡平成23年(ワ)第33222号就業規則無効確認等請求事件(甲事件)平成24年(ワ)第25035号未払賃金等請求事件(乙事件) 主文 1 原告組合と被告との間において,被告の平成23年4月1日施行の就業規則及び諸規程中,別紙「労働協約・改定就業規則対照表」の「B就業規則及び諸規程の觝触部分」欄記載の各条項の赤色部分が無効であることの確認を求める訴えを却下する。 2 原告組合と被告との間において,原告組合と被告との間の平成18年2月21日付け覚書で引用する平成18年3月15日現在の労働協約及び別紙「労働協約・改定就業規則対照表」の「原初労働協約」欄記載の各労働協約(対応関係は別紙「原初労働協約一覧表」記載のとおり)中,別紙「労働協約・改定就業規則対照表」の「A労働協約の規定」欄記載の各条項の緑色部分が効力を有することの確認を求める訴え(主位的請求に係る訴え)並びに原告組合の被告に対する上記緑色部分の履行を求める訴え(予備的請求に係る訴え)をいずれも却下する。 3 原告A,同B,同C,同D,同E,同F及び同Gの被告に対する将来請求部分に係る訴えをいずれも却下する。 4 原告A,同B,同C,同D,同E,同F及び同Gが被告に対し,別紙「労働協約・改定就業規則対照表」の番号1,同3ないし13の各項目に係る「A労働協約の規定」欄記載の各条項の緑色部分を労働契約の内容とする労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 5(1) 被告は,別紙「未払賃金等一覧表」の番号2,8記載の各原告に対し,平成23年5月1日から本判決確定の日まで毎月25日限り,それぞれ1か月当たり同表「f配偶者手当月額」欄記載の金額の割合による金員及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合によ 平成23年5月1日から本判決確定の日まで毎月25日限り,それぞれ1か月当たり同表「f配偶者手当月額」欄記載の金額の割合による金員及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金 員を支払え。 (2) 被告は,別紙「未払賃金等一覧表」記載の各原告に対し,平成23年5月1日から本判決確定の日まで(原告Hについては平成24年2月まで)毎月25日限り,それぞれ1か月当たり同表「g住宅手当月額」欄記載の各金額の割合による金員及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (3) 被告は,別紙「未払賃金等一覧表」の番号2,5,6,8記載の各原告に対し,それぞれ同表「h財形貯蓄に関する利子補給分」欄記載の金員及びこれらに対する平成23年11月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (4) 被告は,原告Hに対し,98万4923円及びこれに対する平成24年2月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 6 原告A,同B,同H,同C,同D,同E,同F及び同Gのその余の請求をいずれも棄却する。 7 訴訟費用は,これを10分し,その6を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 8 この判決は,第5項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 甲事件(1) 原告組合と被告との間において,被告の平成23年4月1日施行の就業規則及び諸規程中,別紙「労働協約・改定就業規則対照表」の「B就業規則及び諸規程の觝触部分」欄記載の各条項の赤色部分が無効であることを確認する。 (2) (主位的)原告組合と被告との間において,原告組合と被告との間の平成18年2 月21日付け覚書で引用する平成18年3月15日現在の労働協約及 の赤色部分が無効であることを確認する。 (2) (主位的)原告組合と被告との間において,原告組合と被告との間の平成18年2 月21日付け覚書で引用する平成18年3月15日現在の労働協約及び別紙「労働協約・改定就業規則対照表」の「原初労働協約」欄記載の各労働協約(対応関係は別紙「原初労働協約一覧表」記載のとおり)中,別紙「労働協約・改定就業規則対照表」の「A労働協約の規定」欄記載の各条項の緑色部分が効力を有することを確認する。 (予備的)被告は,原告組合に対し,上記緑色部分の規定に従え。 (3) 原告A,同B,同H,同C,同D,同E及び同Fが被告に対し,別紙「労働協約・改定就業規則対照表」の「A労働協約の規定」欄記載の各条項の緑色部分を労働契約の内容とする労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 (4)ア被告は,別紙「未払賃金等一覧表」の番号1ないし6記載の各原告に対し,①平成20年4月1日,②平成21年4月1日,③平成22年4月1日,④平成23年5月1日,⑤平成24年5月1日からそれぞれ毎月25日限り1か月2000円の割合による金員及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 イ被告は,別紙「未払賃金等一覧表」の番号7記載の原告に対し,①平成20年4月,②平成21年4月,③平成22年4月,④平成23年5月からからそれぞれ平成24年2月まで毎月25日限り月額2000円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 ウ被告は,別紙「未払賃金等一覧表」の番号2記載の原告に対し,平成23年5月1日から毎月25日限り,1か月当たり同表「f配偶者手当月額」欄記載の金額の割合による金員及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みま 未払賃金等一覧表」の番号2記載の原告に対し,平成23年5月1日から毎月25日限り,1か月当たり同表「f配偶者手当月額」欄記載の金額の割合による金員及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 エ被告は,別紙「未払賃金等一覧表」の番号1ないし7記載の各原告に 対し,平成23年5月1日から毎月25日限り(原告Hについては終期を平成24年2月までとする。),それぞれ1か月当たり同表「g住宅手当月額」欄記載の各金額の割合による金員及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 オ被告は,別紙「未払賃金等一覧表」の番号2,5,6記載の各原告に対し,それぞれ同表「h財形貯蓄に関する利子補給分」欄記載の金員及びこれらに対する平成23年11月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 カ主文5(5)と同旨 2 乙事件(1) 原告Gが被告に対し,別紙「労働協約・改定就業規則対照表」の「A労働協約の規定」欄記載の各条項の緑色部分を内容とする労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 (2)ア被告は,別紙「未払賃金等一覧表」の番号8記載の原告に対し,①平成20年4月1日,②平成21年4月1日,③平成22年4月1日,④平成23年5月1日,⑤平成24年5月1日からそれぞれ毎月25日限り1か月2000円の割合による金員及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 イ被告は,別紙「未払賃金等一覧表」の番号8記載の原告に対し,平成23年5月1日から毎月25日限り,1か月当たり同表「f配偶者手当月額」欄記載の金額の割合による金員及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 対し,平成23年5月1日から毎月25日限り,1か月当たり同表「f配偶者手当月額」欄記載の金額の割合による金員及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 ウ被告は,別紙「未払賃金等一覧表」の番号8記載の原告に対し,平成23年5月1日から毎月25日限り,1か月当たり同表「g住宅手当月額」欄記載の金額の割合による金員及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 エ被告は,別紙「未払賃金等一覧表」の番号8記載の原告に対し,同表「h財形貯蓄に関する利子補給分」欄記載の金員及びこれに対する支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案要旨本件は,原告組合が被告に対し,①平成18年2月21日付け覚書(以下「本件覚書」という。)で引用する同年3月15日現在の労働協約(以下「本件労働協約」という。)の規定に觝触する平成23年4月1日施行の就業規則及び関係諸規程(以下「本件就業規則」という。)の各条項の無効確認を求めるとともに,②主位的に,本件労働協約及び別紙「原初労働協約一覧表」記載の各労働協約(以下「本件原初労働協約」という。)の各条項が効力を有することの確認,予備的に,当該条項の履行をそれぞれ求め,原告組合を除く原告ら(以下「原告組合員ら」という。)が被告に対し,③本件労働協約の関係条項を労働契約の内容とする労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,④本件労働協約の規定に従って,平成20年4月以降の年齢給・勤続給の昇給分及び各種手当等(原告B,同Gにおいて配偶者手当,原告組合員ら全員において住宅手当,原告Hにおいて退職金差額分)並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求める事案である。 降の年齢給・勤続給の昇給分及び各種手当等(原告B,同Gにおいて配偶者手当,原告組合員ら全員において住宅手当,原告Hにおいて退職金差額分)並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(証拠等の掲記のない事実は争いがない。)(1) 当事者被告は,音楽に関する図書の出版と販売,音楽に関する雑誌類の出版と販売等を目的とする株式会社である。 原告組合は被告の従業員等によって組織される労働組合であり,原告Aは原告組合代表者執行委員長である。また,原告A,同B,同C,同D,同E,同F,同Gは,いずれも被告の従業員であり,原告組合の組合員である。原告Hは,被告の従業員で,原告組合の組合員であったが,平成2 4年1月31日付けで被告を退職した。 (2) 「確認書」の締結,改定,配付の経緯ア原告組合と被告とは,昭和45年4月23日,「確認書」と題する書面(以下,「昭和45年確認書」といい,特に断りのない限り,その後に締結された確認書についても同様に年号を付して呼称する。なお,同年度に複数の確認書が存在する場合には,年号と月とで呼称する。)を締結したところ,昭和45年確認書には,非管理職1人当たりの昇級総額,給与規定案の修正等の事項に関する規定が存在し,原告組合執行委員長と被告総務部長の記名押印がある(甲14)。 イ原告組合と被告とは,昭和47年5月25日,「確認書」と題する書面(昭和47年5月確認書)を締結したところ,昭和47年5月確認書には,基準内昇給総額・内訳,基本給,アルバイトの日給,初任給,各種手当,社会保険料の負担割合,退職金,業務外事由の傷病欠勤者の賃金,労働時間,労働環境等の事項に関する規定が存在し,退職金の算定方法については,「基準給×勤続年数相当の支給率+(勤続年数を切上げた支給率- 会保険料の負担割合,退職金,業務外事由の傷病欠勤者の賃金,労働時間,労働環境等の事項に関する規定が存在し,退職金の算定方法については,「基準給×勤続年数相当の支給率+(勤続年数を切上げた支給率-勤続年数を切捨てた支給率)×基準給×端数月数÷12=退職金」「端数月数は1カ月未満を切捨てる。」と定められ,原告組合執行委員長と被告取締役社長の記名押印がある(甲6)。また,原告組合と被告とは,同年8月4日,「確認書」と題する書面(昭和47年8月確認書)を締結したところ,昭和47年8月確認書には,産時休暇に関する規定が存在し,原告組合執行委員長と被告社長の記名押印がある(甲15)。 ウ原告組合と被告とは,昭和49年5月10日,「確認書」と題する書面(昭和49年確認書)を締結したところ,昭和49年確認書には,非管理職の基準内昇給額,初任給,アルバイトの日給,各種手当,社会保険料の負担割合,休日,三六協定の一部改定等に関する規定が存在し, 原告組合組合長と被告取締役社長の記名押印がある(甲16)。 エ原告組合と被告とは,昭和50年5月19日,「確認書」と題する書面(昭和50年確認書)を締結したところ,昭和50年確認書には,非管理職の昇給額,初任給,臨時雇用者の日給,失業保険料の負担割合,退職金規定の係数の改定(昭和47年5月確認書の係数を引き上げる方向で改定するもの),年次有給休暇,出張規定の改定等の事項に関する規定が存在し,原告組合組合長と被告取締役社長の記名押印がある。また,昭和50年確認書は,同年6月中旬までに,被告の全従業員に配付された。 (甲7,弁論の全趣旨)オ原告組合と被告とは,昭和53年5月29日,「確認書」と題する書面(昭和53年確認書)を締結したところ,昭和53年確認書には,非管理職の賃金改定額,初任給の基準 た。 (甲7,弁論の全趣旨)オ原告組合と被告とは,昭和53年5月29日,「確認書」と題する書面(昭和53年確認書)を締結したところ,昭和53年確認書には,非管理職の賃金改定額,初任給の基準内賃金,臨時雇用者の日給,夏期休暇の日数,年末年始の休日,住宅資金融資制度,財形貯蓄制度等に関する規定が存在し,原告組合組合長と被告取締役社長の記名押印がある(甲17)。 カ原告組合と被告とは,昭和54年12月4日,「確認書」と題する書面(昭和54年確認書)を締結したところ,昭和54年確認書には,「財形貯蓄に関する利子補給の取扱い」に関する規定が存在し,「一,利率年2%とする。二,限度額預入残高200万円までとする。三,決算日計算の締切日(決算日)は毎年9月末日とする。四,支払日毎年10月末日とする。」などと定められ,原告組合組合長と被告取締役社長の記名押印がある(甲18)。 キ原告組合と被告とは,平成元年5月22日,「確認書」と題する書面(平成元年確認書)を締結したところ,平成元年確認書には,非管理職の賃金改定額,初任給に関する規定が存在するほか,労働条件として, 「労働協約書」を毎年全社員に配付することなどが定められ,原告組合執行委員長と被告取締役社長の記名押印がある(乙34)。 ク原告組合と被告とは,平成4年4月21日,「確認書」と題する書面(平成4年確認書)を締結したところ,平成4年確認書には,非管理職の賃金改定額,初任給,その他労働条件(出張宿泊費,夏期休暇)等に関する規定が存在し,原告組合執行委員長と被告取締役社長の記名押印がある(甲19)。 ケ原告組合と被告とは,平成10年7月15日,「確認書」と題する書面(平成10年確認書)を締結したところ,平成10年確認書には,非管理職の賃金改定額,初任給,基準外 記名押印がある(甲19)。 ケ原告組合と被告とは,平成10年7月15日,「確認書」と題する書面(平成10年確認書)を締結したところ,平成10年確認書には,非管理職の賃金改定額,初任給,基準外手当(住宅手当,配偶者手当,家族手当),社内融資,出張手当,夏期休暇,年末休日等に関する規定が存在し,原告組合執行委員長と被告取締役社長の記名押印がある(甲8)。 コそして,原告組合と被告とは,それまでに,順次締結・改定された確認書の内容を,平成10年4月現在の「労働協約」と題する書面(以下,「平成10年労働協約」といい,特に断りのない限り,その後に作成された「労働協約」についても同様に年号を付して呼称する。)に取りまとめ,その末尾には,「時間外および休日労働の取り扱い」と題する労使協定(三六協定。以下,「平成10年三六協定」といい,特に断りのない限り,その後に協定された三六協定についても同様に年号を付して呼称する。)を添付し,その頃,被告の従業員全員に配付した。なお,平成10年労働協約そのものには,原告組合と被告の署名,又は記名押印はない。 (甲9,弁論の全趣旨)サ原告組合と被告とは,平成11年7月21日,「確認書」と題する書面(平成11年確認書)を締結したところ,平成11年確認書には,非管理職の賃金改定額(一律2000円),基準外賃金(重労手当を廃止 し,住宅手当,家族手当,配偶者手当を現行通りとするもの),社内融資,出張手当,年末休暇,夏期休暇等に関する規定が存在するほか,夏期一時金の算定方法等が定められ,原告組合執行委員長と被告代表取締役社長の記名押印がある(甲10)。 シその後,原告組合と被告とは,「確認書」を締結しないまま,それまでに合意された労働条件(給与,賞与,退職金,その他,財形貯蓄制度等)を記載した平成 代表取締役社長の記名押印がある(甲10)。 シその後,原告組合と被告とは,「確認書」を締結しないまま,それまでに合意された労働条件(給与,賞与,退職金,その他,財形貯蓄制度等)を記載した平成16年1月現在の「労働協約」と題する書面(平成16年労働協約),平成17年5月現在の「労働協約」と題する書面(平成17年労働協約)を順にとりまとめ,いずれも上記の頃,被告の従業員全員に配付した。なお,平成16年労働協約及び平成17年労働協約そのものには,原告組合と被告の署名,記名押印はない。 そして,平成16年労働協約ないし平成17年労働協約は,その配付当時,原告組合員らを含む被告の従業員と被告との間の労働契約関係を直接規律する規範として機能していた。 (甲11,12,33,乙38,弁論の全趣旨)(3) 被告の就業規則の作成,届出被告は,就業規則を作成してはいたものの,労働基準監督署に届け出ておらず,就業規則は,従業員との間の労働契約関係を規律する規範としての機能を備えていなかったため,就業規則の実効化を図るべく,平成13年頃から,原告組合との間で,その改訂に向けて協議を重ねるようになり,平成18年3月15日,同日改訂の就業規則(甲1の1)及び就業規則運用規程(甲1の2)を作成し(以下「平成18年就業規則」という。),労基法90条1項所定の「労働者の過半数を代表する者」に選出された原告組合執行委員長Iの意見を記した書面を添付して新宿労働基準監督署に届け出た(乙36)。 (4) 本件覚書,本件労働協約の作成 原告組合と被告とは,平成18年2月21日,本件覚書を作成した(甲2の1)。本件覚書には,「平成18年3月15日改訂『就業規則及び就業規則運用規程』に関し,従業員の過半数を代表する者の意見書を提出するにあたり,会社 ,平成18年2月21日,本件覚書を作成した(甲2の1)。本件覚書には,「平成18年3月15日改訂『就業規則及び就業規則運用規程』に関し,従業員の過半数を代表する者の意見書を提出するにあたり,会社は,以下の通り貴組合に約束し覚書とする。記 1)平成18年3月15日改訂『就業規則及び就業規則運用規程』(以下『当該就業規則』という)と平成18年3月15日現在の『労働協約』(以下『当該労働協約』という)を,平成18年2月23日付けで全従業員に配布する。2)『当該就業規則』の運用に於いて『当該労働協約』と相違がある場合は,『労働協約』を以て行う。」と記載されており,平成18年就業規則と本件労働協約及び本件労働協約の末尾に添付された「時間外および休日労働の取り扱い」に関する労使協定(以下「本件三六協定」という。)とは,平成18年2月23日に被告の全従業員に配付された。なお,本件労働協約には,原告組合と被告の署名,記名押印はない。 本件労働協約の内容は,平成16年労働協約ないし平成17年労働協約の内容と同一である(なお,本件労働協約の末尾に添付された本件三六協定の内容は,平成16年三六協定ないし平成17年三六協定の内容とほぼ同一であるが,月平均就労日数や有効期間等の点に若干の相違がある。)。 (5) 本件就業規則の作成,届出に至る経緯被告は,原告組合に対し,平成19年9月頃,①退職金制度の廃止,②「年払常勤手当」制度の導入,③定期昇給の廃止,④住宅手当の廃止等を内容とする平成19年9月21日就業規則改訂案を提示し,その後も,同就業規則改訂案とほぼ同内容の平成20年6月30日就業規則改訂案,平成21年4月1日就業規則改訂案を提示し,原告組合との間で,就業規則の内容を巡って交渉を重ねたものの,結局,交渉はまとまらなかった。 そのような中 ぼ同内容の平成20年6月30日就業規則改訂案,平成21年4月1日就業規則改訂案を提示し,原告組合との間で,就業規則の内容を巡って交渉を重ねたものの,結局,交渉はまとまらなかった。 そのような中,被告は,平成23年4月1日施行予定の就業規則(甲4の1),賃金規程(甲4の2),家族手当支給規程(甲4の3),配偶者 手当支給規程(甲4の4),年払常勤手当支給規程(甲4の5),定年後再雇用規程(甲4の6),母性健康管理規程(甲4の7),育児休業および育児短時間勤務に関する規程(甲4の8),介護休業および介護短時間勤務に関する規程(甲4の9。前記のとおり,以上を併せたものが本件就業規則である。)を作成し,平成23年2月23日,新宿労働基準監督署に届け出た。 (6) 本件労働協約及び本件就業規則の内容並びに本件労働協約と本件就業規則との関係別紙「労働協約・改定就業規則対照表」の番号1ないし13記載の各項目について,本件労働協約は,同表「A労働協約の規定」欄記載の各条項のとおり規定している(以下,「本件労働協約規定」といい,本件労働協約規定のうち,毎年4月1日に年齢給1000円の昇給を規定する第8条と勤続給1000円の昇給を規定する第9条とを併せて「本件昇給条項」という。)のに対し,本件就業規則は,同表「B就業規則及び諸規程の觝触部分」欄記載のとおり規定しており(以下「本件就業規則規定」という。),本件就業規則規定の内容は,本件労働協約規定の内容に觝触している。 また,本件労働協約の「財形貯蓄制度」は,「財形貯蓄制度による預金額については,昭和53年4月1日以降に預入れた預金額につき,最高200万円を限度として年2%の利子を上積み補給する」とし,上積み補給する利子の計算の締切日(決算日)を毎年9月末日とし,支払日を毎年10月末 は,昭和53年4月1日以降に預入れた預金額につき,最高200万円を限度として年2%の利子を上積み補給する」とし,上積み補給する利子の計算の締切日(決算日)を毎年9月末日とし,支払日を毎年10月末日と規定している。 なお,被告における賃金の支払方法は,毎月10日締め当月25日払いであったが,平成23年4月以降,毎月末日締め翌月25日払いとなった。 (7) 本件就業規則の施行被告は,原告組合員らに対し,平成20年4月,平成21年4月,平成22年4月の年齢給・勤続給の昇給をいずれも実施せず,平成23年4月 1日には,本件就業規則規定を含む本件就業規則を施行して,同月及び平成24年4月の年齢給・勤続給の昇給を実施せず,平成23年4月以降,配偶者手当,住宅手当,財形貯蓄に関する利子補給分の支払をしなかった。 (8) 本件覚書及び本件労働協約の解約被告は,平成23年11月11日,同日付け答弁書をもって,原告組合に対し,本件覚書及び本件労働協約を解約する旨の意思表示をした。 (9) 原告Hの退職等原告Hは,平成24年1月31日付けで定年退職し,被告は,同日,原告Hに対し,退職金として1668万3443円を支払った。 3 争点及び当事者の主張(1) 本訴における各訴えの確認の利益の有無ア本件就業規則規定の赤色部分の無効確認を求める訴えについて【原告組合の主張】本件就業規則規定は,本件労働協約規定の優位性によって無効となるのであるから,原告組合には,本件就業規則規定の赤色部分の無効確認を求める法律上の利益がある。 【被告の主張】就業規則は,使用者と個々の労働者との間の労働契約の内容を規律するものであり,就業規則によって規律される権利関係の当事者は,個々の労働者であるから,当該労働者が所属する労働組合に 【被告の主張】就業規則は,使用者と個々の労働者との間の労働契約の内容を規律するものであり,就業規則によって規律される権利関係の当事者は,個々の労働者であるから,当該労働者が所属する労働組合には,就業規則の無効確認を求める法律上の利益がない。 したがって,原告組合による本件就業規則規定の赤色部分の無効確認を求める訴えは不適法である。 イ本件労働協約規定の緑色部分の効力確認等を求める訴えについて【原告組合の主張】労働協約の効力を巡る紛争は,正に,締結当事者である労働組合と使 用者との間の直接的な紛争であるということができるし,労働組合と使用者との間で当該労働協約の効力が確定することによって,その効果が労働組合に所属する個々の労働者にも反射的に及び,当該労働者と使用者との間の具体的な権利義務関係が規律されることが期待されるから,労働組合と使用者との間で労働協約の効力確認をすることは,上記の紛争解決に直截的かつ有効であるといえる。 したがって,原告組合が主位的に本件労働協約規定の緑色部分の効力確認を求める訴え,予備的にその履行を求める訴えは,いずれも確認の利益があり適法である。 【被告の主張】労働協約は,その規範的部分の規範的効力により,個々の労働者との間の労働契約の内容を規律することになるから,当該労働協約を締結した労働組合所属の個々の労働者は,使用者を相手方として,当該労働協約の内容に基づく労働契約上の地位確認を訴求することができる一方,労働組合が使用者を被告として訴求した労働協約無効確認請求訴訟の既判力は,労働組合所属の個々の労働者には及ばないから,当該労働者が労働協約の内容に基づく労働契約上の地位確認を求めるのが最も直截的であるといえる。しかも,本訴においては,実際に,原告組合員らが本件労働協約 労働組合所属の個々の労働者には及ばないから,当該労働者が労働協約の内容に基づく労働契約上の地位確認を求めるのが最も直截的であるといえる。しかも,本訴においては,実際に,原告組合員らが本件労働協約の内容に基づく労働契約上の地位確認を訴求しており,その判決によって,原告組合員らと被告との間で本件労働協約規定の緑色部分の効力確認がされるのであるから,原告組合の本件労働協約規定の緑色部分の効力確認を求める訴えは,確認の利益を欠き不適法である。 (2) 本件覚書及び本件労働協約の労働協約該当性並びにその適用範囲【原告らの主張】本件労働協約は,平成16年労働協約ないし平成17年労働協約と全く同一の内容であり,本件覚書の締結の際,原告組合と被告との間でその内 容は確定し,共通認識とされていたから,本件覚書と一体のものとして,労働協約としての効力を有するというべきである。そして,本件労働協約と本件三六協定とが一体のものであるということはできないし,本件労働協約が労働協約としての効力を有する以上,平成18年就業規則ばかりでなく,これを改訂した本件就業規則に対しても優先適用されることになる。 【被告の主張】原告らは,本件労働協約が,原告組合と被告の記名押印のある本件覚書と一体をなすものとして,労働協約としての効力を有する旨主張するが,本件覚書が締結されたのは平成18年2月21日であり,本件労働協約は同年3月15日現在のもので,本件覚書が締結された際にはいまだ存在していなかったのであるから,本件覚書と一体のものとはいえない。また,本件労働協約には,原告組合と被告の署名又は記名押印がないから,労働協約としての効力を有しない。 仮に,本件労働協約が労働協約としての効力を有するとしても,本件労働協約と本件三六協定とは1冊の冊子としてつづ には,原告組合と被告の署名又は記名押印がないから,労働協約としての効力を有しない。 仮に,本件労働協約が労働協約としての効力を有するとしても,本件労働協約と本件三六協定とは1冊の冊子としてつづられており,当該冊子を構成する諸規程は,全体として不可分一体のものとして取り扱われるべきであるから,本件労働協約も,本件三六協定の有効期間の満了する平成18年3月31日をもって失効するというべきである。また,本件覚書は,平成18年就業規則に関する覚書であり,平成18年就業規則の運用において,本件労働協約に相違がある場合に,本件労働協約をもって運用する旨を規定しているにすぎないから,本件労働協約は,平成18年就業規則を大幅に改訂した本件就業規則との関係で労働協約としての効力を有するものではない。 (3) 本件昇給条項の効力【被告の主張】過去に締結された確認書及び「労働協約」と題する書面(以下「確認書 等」という。)には,年齢給・勤続給の昇給に係る条項が存在していたが,原告組合は,毎年,労使交渉の場において,被告に対し,年齢給・勤続給の昇給に関する要求をしていたから,過去の確認書等の昇給条項は,当該年度の昇給について規定するにすぎず,当該年度の経過によって労働協約としての効力を失効する性質のものであった。したがって,本件昇給条項も,平成19年3月31日の経過をもって失効しているというべきである。 また,原告組合と被告とは,平成11年10月1日付けで組合員の賃金を減額する旨の確認書を締結し(以下,当該賃金減額を「本件賃金カット」という。),本件賃金カット以降,確認書等で規定された昇給条項に基づく年齢給・勤続給の昇給は実施されてこなかったから,原告組合と被告との間においては,当該条項の効力は停止ないし消滅したものとして取り扱われ ),本件賃金カット以降,確認書等で規定された昇給条項に基づく年齢給・勤続給の昇給は実施されてこなかったから,原告組合と被告との間においては,当該条項の効力は停止ないし消滅したものとして取り扱われていたというべきである。仮に,当該条項の効力が停止されたにすぎないとしても,原告組合と被告との間でこれを復活させる旨の合意はされていない。 したがって,本件昇給条項は,規範としての効力を喪失しており,原告らの定期昇給権を根拠付けるものではない。 【原告らの主張】本件賃金カット以前の年齢給・勤続給の昇給は,臨時調整給の昇給とは異なり,原告組合と被告との間の労使交渉の結果に基づいて実施されていたわけではなく,確認書等に規定された昇給条項に基づいて実施されていた。確かに,確認書等に規定された昇給条項は,本件賃金カット以降,一次的に効力を停止されていたが,平成19年10月に本件賃金カット以前の賃金水準が回復されことを契機として,その効力が復活したというべきである。 したがって,原告らは,平成20年4月以降,被告に対し,本件昇給条項に基づく年齢給・勤続給の昇給を求めることができる。 (4) 本件覚書及び本件労働協約の解約の有無並びにその効力【被告の主張】被告は,平成19年8月29日,原告組合に対し,平成18年就業規則の見直しを目指して労使交渉の実施を申し入れ,その中で同年12月31日までに平成18年就業規則の見直しに関する労使合意を締結し,その締結と同時に就業規則と労働協約との一元化交渉を開始し,平成20年3月31日までに労使合意を締結することを目指すことを伝えた。その後,被告は,平成19年9月21日付けで就業規則の改訂案を作成し,同年12月25日に原告組合員らを含む全従業員に提示した上,平成20年1月に全従業員を対象に を締結することを目指すことを伝えた。その後,被告は,平成19年9月21日付けで就業規則の改訂案を作成し,同年12月25日に原告組合員らを含む全従業員に提示した上,平成20年1月に全従業員を対象に説明会を開催し,①賃金規程の見直し,②退職金規程を廃止しての年払型退職手当制度(年払常勤手当)の導入,③再雇用制度の制定,④その他新設諸規程の締結等について説明し,原告組合との間で交渉を重ねたが,労使合意の締結には至らなかった。そこで,被告は,平成21年11月13日付け文書(以下「平成21年文書」という。)をもって,原告組合に対し,被告の最終案として,退職金制度の廃止に当たり,既に積み立てられた退職金については分割支給し,平成22年度から毎年4月末に年払常勤手当を支給する旨通知した。以上の経緯の下で原告組合に対して発せられた平成21年文書は,本件労働協約の解約の意思表示を含むものであると解すべきである(以下,当該意思表示に基づく解約を「本件解約1」という。)。 仮に,本件解約1が認められないとしても,被告は,平成22年9月6日及び同月29日付け会社広報において,改めて,①新賃金制度への移行,②退職金規程を廃止しての年払型退職手当制度の導入を発表し,全従業員を対象に本件労働協約の下での退職金の清算方法についての個別面談とアンケートとを実施し,多数の従業員の同意を得た上で,同年12月17日付け会社広報で平成23年4月1日から新就業規則を施行することを発表 した。そのような中,被告は,「『就業規則および諸規程』平成23年4月1日施行にあたり」と明記した平成23年1月17日付け文書(以下「平成23年文書」という。)をもって,原告組合に対し,定年後再雇用制度の適用対象者の基準に関する労使協定書の調印を申し入れた。以上の経緯の下で原告組合に対 記した平成23年1月17日付け文書(以下「平成23年文書」という。)をもって,原告組合に対し,定年後再雇用制度の適用対象者の基準に関する労使協定書の調印を申し入れた。以上の経緯の下で原告組合に対して発せられた平成23年文書は,本件労働協約の解約の意思表示を含むものであると解すべきである(以下,当該意思表示に基づく解約を「本件解約2」という。)。 仮に,本件解約2が認められないとしても,被告は,本件労働協約の規定に反する本件就業規則の規定は無効であるとし,本件労働協約の規定に牴触する「改定新賃金による給与の支給」の停止を求めるとともに,平成23年4月以降の賃金について,年齢給・勤続給の定期昇給の実施,配偶者手当及び住宅手当の支給を求める内容の原告組合の平成23年4月21日付け要求書の受領を拒否した上,同年5月27日付け回答書(以下「平成23年回答書」という。)をもって,原告組合に対し,改めて本件就業規則の運用に対する協力を求めたから,平成23年回答書は,本件労働協約の解約の意思表示を含むものであると解すべきである(以下,当該意思表示に基づく解約を「本件解約3」という。)。 仮に,本件解約3が認められないとしても,被告は,平成23年11月11日,同日付け答弁書をもって,原告組合に対し,本件覚書及び本件労働協約を解約する旨の意思表示をしたから,同日の翌日から起算して90日を経過した平成24年2月10日に本件覚書及び本件労働協約の解約の効果が生じたということができる(以下,当該意思表示に基づく解約を「本件解約4」という。)。 【原告らの主張】平成21年文書,平成23年文書,平成23年回答書には,本件労働協約の改訂に関する交渉の通知や申入れは一切含まれておらず,各文書に本 件労働協約の解約の意思表示が含まれていると解するこ 張】平成21年文書,平成23年文書,平成23年回答書には,本件労働協約の改訂に関する交渉の通知や申入れは一切含まれておらず,各文書に本 件労働協約の解約の意思表示が含まれていると解することはできない。また,原告組合は,本訴に至るまで,被告から本件労働協約の改訂の交渉を求められたり,その解約の意思表示を受けたりしたこともない。 仮に,本件解約4によって本件労働協約が解約されたとしても,本件原初労働協約は解約されないから,本件原初労働協約に反する本件就業規則が無効であることに変わりはない。そして,就業規則が労働協約に反して無効となった後,労働協約が失効しても,いったん無効となった就業規則の効力は復活しないから,本件就業規則規定中の赤色部分が有効となるわけではない。 (5) 原告H及び同Cの被告に対する退職金制度の廃止を含む本件就業規則の作成についての個別同意の可否【被告の主張】被告は,平成22年11月9日及び同月10日に,①「現行(退職金)制度での退職金支給予定額及び新基本給額の通知書」と題する書面,②平成23年3月31日時点における現行退職金制度による各人の退職金額を記載するとともに,当該退職金について,<ア>退職時一時払いとするか,<イ>平成23年3月31日を1回目とする7年間での分割払とするかの選択を求める文書を従業員に配付したところ,原告H及び同Cは,いずれも,退職金の清算方法の選択を求める②の文書について,それぞれの選択する内容を記入して被告に提出した。 したがって,上記原告両名は,被告との間で,退職金制度の廃止を含む本件就業規則の作成について,個別同意したものというべきである。 【原告H及び同Cの主張】退職金規程の廃止を含む本件就業規則の規定は,本件労働協約に反して無効であるから,本件労働協 廃止を含む本件就業規則の作成について,個別同意したものというべきである。 【原告H及び同Cの主張】退職金規程の廃止を含む本件就業規則の規定は,本件労働協約に反して無効であるから,本件労働協約に反する本件就業規則の作成に個別同意することはできないし,原告H及び同Cが被告に提出した上記各文書は,従 業員から,退職金規程の廃止を含む本件就業規則が効力を生じた場合の希望を確認するものにすぎず,当該文書の提出をもって,本件就業規則の作成に個別同意したものと認めることもできない。 (6) 本件覚書及び本件労働協約の失効後の法律関係【原告らの主張】労働協約の効力が失効しても,その後も存続する労働契約の内容を規律する補充規範が必要であることに変わりはなく,就業規則等の補充規範たり得る合理的基準がない限り,従前妥当した労働協約の基準が労働契約関係をなお規律するものと解するのが相当であるところ,本件就業規則は,本件労働協約に反して無効であり,原告組合員らの労働契約の内容を規律する補充規範たり得ないから,本件就業規則規定の緑色部分の内容が依然として効力を有するというべきである。 【被告の主張】本件労働協約の失効後,本件就業規則が原告組合員らと被告との間の労働契約の内容を規律する補充規定としての効力を有するから,本件就業規則規定中の赤色部分が有効となる。 (7) 原告らの請求のまとめ【原告らの主張】ア確認請求について(ア) 本件就業規則中,本件就業規則規定の赤色部分は,本件労働協約規定に抵触するから,原告組合と被告との間において,上記赤色部分が無効であることの確認を求める。 (イ) 本件覚書で引用する本件労働協約及び本件原初労働協約は,いずれも労働協約としての効力を有することが明らかであるから,原告組合と被告との いて,上記赤色部分が無効であることの確認を求める。 (イ) 本件覚書で引用する本件労働協約及び本件原初労働協約は,いずれも労働協約としての効力を有することが明らかであるから,原告組合と被告との間において,主位的に,本件労働協約規定の緑色部分が効力を有することの確認を求める。仮に,これが認められないとして も,予備的に,原告組合は,被告に対し,上記緑色部分の履行を求める。 (ウ) 本件労働協約又は本件原初労働協約の効力は,いまだ失効していないから,原告組合の組合員である原告A,同B,同H,同C,同D,同E,同F及び同Gは,被告に対し,本件労働協約規定の緑色部分を労働契約の内容とする労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める。 イ金銭請求について(ア) 本件昇給条項によれば,毎年4月1日を基準として,年齢給・勤続給がそれぞれ月額1000円ずつ昇給するから,別紙「未払賃金等一覧表」の番号1ないし6,8記載の各原告は,被告に対し,①平成20年4月1日,②平成21年4月1日,③平成22年4月1日,④平成23年5月1日,⑤平成24年5月1日からそれぞれ毎月25日限り,月額2000円の年齢給・勤続給の定期昇給分の支払を求める。 (イ) 上記(ア)と同様に,別紙「未払賃金等一覧表」の番号7記載の原告(原告H)は,被告に対し,①平成20年4月,②平成21年4月,③平成22年4月,④平成23年5月からそれぞれ退職日の翌月である平成24年2月まで毎月25日限り,月額2000円の年齢給・勤続給の定期昇給分の支払を求める。 (ウ) 本件労働協約規定第17条は,配偶者がいる従業員に対して配偶者手当を支給する旨規定しているところ,別紙「未払賃金等一覧表」の番号2,8の各原告にはそれぞれ配偶者がいるから,同原告らは,被告に対し,平成 労働協約規定第17条は,配偶者がいる従業員に対して配偶者手当を支給する旨規定しているところ,別紙「未払賃金等一覧表」の番号2,8の各原告にはそれぞれ配偶者がいるから,同原告らは,被告に対し,平成23年5月1日から毎月25日限り,それぞれ1か月当たり同表「f配偶者手当月額」記載の金員の支払を求める。 (エ) 本件労働協約規定第18条は,同条所定の支給区分に従って,「家族持ち」に月額1万0500円,「単身世帯」に月額9000円,「世 帯員」に月額2000円の住宅手当を支給する旨規定しているところ,別紙「未払賃金等一覧表」記載の各原告は,上記支給区分に従い,被告に対し,平成23年5月1日から毎月25日限り(原告Hについては終期を平成24年2月までとする。),それぞれ1か月当たり同表「g住宅手当月額」欄記載の各金員の支払を求める。 (オ) 本件労働協約規定の「財形貯蓄制度」は,「財形貯蓄制度による預金額については,昭和53年4月1日以降に預入れた預金額につき,最高200万円を限度として年2%の利子を上積み補給する」と規定し,上積み補給する利子の計算の締切日(決算日)を毎年9月末日,支払日を毎年10月末日と規定しているところ,別紙「未払賃金等一覧表」の番号2,5,6,8記載の各原告は,財形貯蓄制度に加入し,200万円以上の預金を有するから,被告に対し,平成23年10月31日を支払期日とする上積み補給される利子として,同表「h財形貯蓄に関する利子補給分」欄記載の金員の支払を求める。 (カ) 本件労働協約規定第28条によれば,原告Hの退職金額は,次の計算式のとおり,1766万8366円となる。 計算式:426,944 円(平成24 年1月の基準給)×31 年×1.3+426,944 円×(32 年×1.3-31 年×1.3)×10 次の計算式のとおり,1766万8366円となる。 計算式:426,944 円(平成24 年1月の基準給)×31 年×1.3+426,944 円×(32 年×1.3-31 年×1.3)×10 か月÷12か月=17,668,366 円しかるに,被告は,平成24年1月31日に1668万3443円を支払ったのみであり,その差額である98万4923円が未払であるから,原告Hは,被告に対し,未払退職金98万4923円の支払を求める。 【被告の主張】争う。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(本訴における各訴えの確認の利益の有無)について(1) 本件就業規則規定の赤色部分の無効確認を求める訴えについてそもそも就業規則とは,使用者が,多数の労働者を協働させる事業において,労働条件を公平・統一的に設定し,かつ職場規律を規則として設定するという事業経営の必要上,制定するものであり,当該事業場で協働する個々の労働者に適用することを目的としているから,使用者との間で就業規則の効力を巡る紛争が生じた場合には,その効力を争う個々の労働者が原告として訴訟遂行するのが直截的かつ有効であると解される。この点,本件就業規則規定の効力を巡って,被告の従業員の原告組合員らと被告との間で紛争が生じており,実際に,原告組合員らは,被告を相手方として,本件就業規則規定が本件労働協約規定に觝触し無効であると主張して,本件労働協約規定を労働契約の内容とする労働契約上の権利を有する地位にあることの確認のほか,本件労働協約規定に基づく賃金等の支払を請求しており,原告組合員らと被告との間で紛争解決を図るのが直截的かつ有効であるから,原告組合員らの所属する原告組合が原告となって,被告との間で,本件就業規則規定の赤色部分の無効確認を求める法律上の利益は ており,原告組合員らと被告との間で紛争解決を図るのが直截的かつ有効であるから,原告組合員らの所属する原告組合が原告となって,被告との間で,本件就業規則規定の赤色部分の無効確認を求める法律上の利益は存在しないというべきである。 したがって,原告組合による本件就業規則規定の赤色部分の無効確認を求める訴えは,不適法であり却下を免れない。 (2) 本件労働協約規定の緑色部分の効力確認等を求める訴えについてア前提事実によれば,被告が,平成18年2月21日に原告組合との間で本件覚書を締結し,本件労働協約を平成18年就業規則に優先して適用する旨合意し,その後,原告組合に対し,①退職金制度の廃止,②「年払常勤手当」制度の導入,③定期昇給の廃止,④住宅手当の廃止等を内容とする平成19年9月21日就業規則改訂案を提示し,その後も,同就業規則改訂案とほぼ同内容の平成20年6月30日就業規則改訂案, 平成21年4月1日就業規則改訂案を提示し,原告組合との間で,就業規則の内容を巡って交渉を重ねたものの,結局,交渉はまとまらなかったにもかかわらず,平成23年4月1日に本件労働協約に觝触する内容の本件就業規則を施行し,本件労働協約の効力を巡って紛争が生じたため,原告組合が,本件労働協約規定が有効であると主張して本件訴えを提起したものであることが認められる。 そして,本件労働協約規定は,年齢給・勤続給の定期昇給(本件昇給条項),配偶者手当・住宅手当の支給,退職金制度,財形貯蓄に関する利子補給等を内容としており,原告組合員らの労働条件や待遇等について協定する内容のものであることが認められる上,原告組合の組合員である原告組合員らは,実際に,本件訴訟において,本件労働協約規定が有効であることを前提として,当該規定を労働契約の内容とする労働契約上の権 する内容のものであることが認められる上,原告組合の組合員である原告組合員らは,実際に,本件訴訟において,本件労働協約規定が有効であることを前提として,当該規定を労働契約の内容とする労働契約上の権利を有する地位にあることの確認の訴えを提起している。 イそうすると,原告組合の主張によれば,本件労働協約規定は,本件労働協約の規範的部分として規範的効力を有し,原告組合員らと被告との間の労働契約の内容を直接規律するため,当該規定に係る具体的権利義務関係を巡る紛争は,原告組合員らと被告との間に生じることになるから,本件労働協約規定の効力については,原告組合員らと被告との間の具体的権利義務関係を巡る紛争の前提問題として争わせれば足りるということができる。また,労働組合と使用者との間の確認訴訟の既判力は,組合員と使用者との間の労働契約関係には及ばないから,労働組合と使用者との間で労働協約の規範的部分の効力を巡って争わせることは,直截的かつ有効とはいえない。しかも,本件訴訟において,実際に,原告組合員らは,本件労働協約規定が有効であることを前提として,当該規定の緑色部分を労働契約の内容とする労働契約上の権利を有する地位にあることの確認の訴えをそれぞれ提起しているのであるから,本件労働 協約規定を巡る紛争については,その解決にゆだねるのが直截的かつ有効であるというべきである。 したがって,原告組合による本件労働協約規定の緑色部分の効力確認(主位的請求)及び当該部分の被告に対する履行(予備的請求)を求める訴えは,いずれも訴えの利益を欠き不適法であるというべきである。 2 争点(2)(本件覚書及び本件労働協約の労働協約該当性並びにその適用範囲)について(1) 本件覚書は,原告組合と被告との間で平成18年2月21日に締結されたこと,本件覚 というべきである。 2 争点(2)(本件覚書及び本件労働協約の労働協約該当性並びにその適用範囲)について(1) 本件覚書は,原告組合と被告との間で平成18年2月21日に締結されたこと,本件覚書には,「平成18年3月15日改訂『就業規則及び就業規則運用規程』に関し,従業員の過半数を代表する者の意見書を提出するにあたり,会社は,以下の通り貴組合に約束し覚書とする。記 1)平成18年3月15日改訂『就業規則及び就業規則運用規程』(以下『当該就業規則』という)と平成18年3月15日現在の『労働協約』(以下『当該労働協約』という)を,平成18年2月23日付けで全従業員に配布する。2)『当該就業規則』の運用に於いて『当該労働協約』と相違がある場合は,『労働協約』を以て行う。」と記載され,平成18年就業規則と本件労働協約及び本件労働協約の末尾に添付された本件三六協定とが平成18年2月23日に被告の全従業員に配付されたこと,本件労働協約そのものには,原告組合と被告の署名,記名押印がないことは,前提事実(4)のとおりである。 (2) 上記(1)の事実によると,確かに,本件覚書の締結時には,いまだ本件労働協約が冊子として存在せず,原告組合員らを含む従業員に配付されていなかったことになる。しかしながら,①本件労働協約の内容は,平成16年労働協約ないし平成17年労働協約の内容と同一であること(前提事実(4)),②被告においては,従業員の労働条件は,本件原初労働協約を含む確認書等の締結によって合意されてきた経緯があり,本件覚書の締結時 には,平成16年労働協約ないし平成17年労働協約が被告と原告組合員らを含む従業員との間の労働契約関係を直接規律する規範として機能していたこと(前提事実(2)),③平成16年労働協約,平成17年労働協約,本件労働協 働協約ないし平成17年労働協約が被告と原告組合員らを含む従業員との間の労働契約関係を直接規律する規範として機能していたこと(前提事実(2)),③平成16年労働協約,平成17年労働協約,本件労働協約のマスターデータは,被告が所持していたこと(甲33,乙38,弁論の全趣旨)にかんがみれば,本件覚書の締結の際,原告組合と被告との間で本件労働協約の内容はその記載のとおり確定しており,両当事者間の共通認識とされていたと認めるのが相当である。 そして,上記(1)のとおり,本件労働協約そのものには,原告組合と被告の署名,記名押印がないものの,本件覚書が労働組合法14条所定の要件を具備していることは明らかであるから,本件覚書の締結時に,本件覚書と一体のものとして労働協約の内容となり,その規範的部分は規範的効力を取得したというべきである。 (3) この点,被告は,本件労働協約と本件三六協定とは1冊の冊子としてつづられており,当該冊子を構成する諸規程は,全体として不可分一体のものとして取り扱われるべきであるから,本件労働協約も,本件三六協定の有効期間の満了する平成18年3月31日をもって失効すると主張する。 しかしながら,本件労働協約と本件三六協定とは別個の規程であることが明らかであるし,単に,物理的に1冊の冊子としてつづられていたにすぎず,全体として不可分一体のものとして取り扱うべきものということはできないから,本件三六協定に有効期間が定められているからといって,本件労働協約についても本件三六協定と同様の有効期間をもって失効するということはできない。したがって,被告の上記主張は失当である。 また,被告は,本件覚書は,平成18年就業規則に関するものであり,平成18年就業規則の運用において,本件労働協約に相違がある場合に,本件労働協約をもって たがって,被告の上記主張は失当である。 また,被告は,本件覚書は,平成18年就業規則に関するものであり,平成18年就業規則の運用において,本件労働協約に相違がある場合に,本件労働協約をもって運用する旨を規定しているにすぎないから,本件労働協約が平成18年就業規則を大幅に改訂した本件就業規則との関係で労 働協約としての効力を有するものではないと主張する。しかしながら,労働基準法92条1項は,「就業規則は,法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。」と規定しており,労働組合と使用者とが,当該労働協約にあえてその適用範囲を明記するなどの特段の事情のない限り,当該労働協約が特定の就業規則との関係においてのみ労働協約としての効力を有すると解釈することはできないというべきである。もっとも,前提事実(4)のとおり,本件覚書の前文には,「平成18年3月15日改訂『就業規則及び就業規則運用規程』に関し,従業員の過半数を代表する者の意見書を提出するにあたり,会社は,以下の通り貴組合に約束し覚書とする。」と記載されており,その本文には,「1)平成18年3月15日改訂『就業規則及び就業規則運用規程』(以下『当該就業規則』という)と平成18年3月15日現在の『労働協約』(以下『当該労働協約』という)を,平成18年2月23日付けで全従業員に配布する。2)『当該就業規則』の運用に於いて『当該労働協約』と相違がある場合は,『労働協約』を以て行う。」と記載されているところ,上記前文は,平成18年就業規則の届出のために従業員代表の意見書を提出するに当たって,本件覚書を締結する旨が宣言されているにすぎず,これをもって本件労働協約が平成18年就業規則との関係に限って労働協約としての効力を有する旨を合意したものと解することはできない。また, るに当たって,本件覚書を締結する旨が宣言されているにすぎず,これをもって本件労働協約が平成18年就業規則との関係に限って労働協約としての効力を有する旨を合意したものと解することはできない。また,上記本文の文言についても,原告らが主張するように,労働基準法92条1項所定の労働協約の効力を注意的に規定したにすぎないと解することも可能であるし,本件覚書の締結の当時に想定された就業規則は,平成18年就業規則のみであったから,本件覚書が,本件労働協約と平成18年就業規則との適用関係について規定しているからといって,本件労働協約の適用範囲を平成18年就業規則との関係に限定したものと解することはできないのは明らかである。そうすると,上記特段の事情は認められないというべきである。 したがって,被告の上記主張も失当である。 3 争点(3)(本件昇給条項の効力)について(1) 前提事実(2)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,確認書等に基づき毎年4月1日を基準日として,年齢給・勤続給の定期昇給を実施してきたが,本件賃金カット以降は,平成16年労働協約ないし平成17年労働協約に年齢給・勤続給の定期昇給に係る規定があるにもかかわらず,これを実施してこなかった経緯が認められる。 また,原告組合は,本件賃金カット以降,年齢給・勤続給の定期昇給に係る規定は一次的に効力が停止されたものとして理解し,被告に対し,本件昇給条項を含む本件労働協約が締結された際にも,本件昇給条項の適用を求めなかったが,平成19年10月に基準給及び諸手当が本件賃金カット以前の水準に復元されたことを契機として,2008年7月2日付け要求書(乙15)をもって,①平成20年4月以降の給与について本件賃金カット前の基準に復元したことを明確にすること,②同月給与から,年齢給と勤続給に 元されたことを契機として,2008年7月2日付け要求書(乙15)をもって,①平成20年4月以降の給与について本件賃金カット前の基準に復元したことを明確にすること,②同月給与から,年齢給と勤続給について,毎年1回の定期昇給を復活すること,③夏期一時金を同年7月18日までに支払うことなどを求めたところ,被告は,同月9日付け回答書(乙16)をもって,①について,被告は,平成19年10月15日付けで,「2007年10月支給分から2008年3月分まで,1999年9月の水準に完全に復して支給する」と広報しており,平成11年10月水準にはその時点で復元していること,②について,新制度についての議論として問題を集約してゆく考えであること,③について,概ね原告組合の要求通りの夏期一時金を支払うことを回答するとともに,原告組合との間で,平成20年7月15日付け確認書(乙17)を締結し,年齢給・勤続給の定期昇給前の賃金水準で夏期一時金を支払う旨を妥結したものの,年齢給・勤続給の定期昇給の復活については,何らの合意もしなかった(甲26,33,乙3,弁論の全趣旨)。その後,原告組合は, 平成21年4月27日,本件労働協約に基づく退職金制度を廃止し,常勤年払手当の導入を図ろうとしていた被告に対し,仮に当該手当を導入するとしても,当該手当の計算の基数となる給与については,2000円の定期昇給を復活することを提案するとともに(乙32),2009年5月22日付け組合ニュースにおいて,改めて年齢給月額1000円・勤続給月額1000円の定期昇給の再開の確約を求めることを明らかにした(乙33)。続いて,原告組合は,被告に対し,2009年6月2日付け要求書(乙19)をもって,平成21年4月給与から,年齢給と勤続給について,年1回の定期昇給を実行することを求めたが,被 らかにした(乙33)。続いて,原告組合は,被告に対し,2009年6月2日付け要求書(乙19)をもって,平成21年4月給与から,年齢給と勤続給について,年1回の定期昇給を実行することを求めたが,被告はこれを受け入れず(乙20),また,原告組合は,2009年6月29日付け要求書(乙21)をもって,年齢給・勤続給の定期昇給後の基準給を基準に算定した夏期一時金の支払を求めたが,結局,定期昇給前の基準給を基準とする夏期一時金の支払をもって被告と妥結した(乙22)。その後も,原告組合は,被告に対し,複数回にわたって,定期昇給後の基準給を基準に算定した一時金の支払を求めたものの,被告はいずれも同意せず,原告組合は,定期昇給前の基準給を基準とする一時金の支払をもって被告と妥結することを繰り返した(乙23ないし31)。また,原告組合は,2011年4月21日付け要求書(乙13)をもって,改めて年齢給・勤続給の定期昇給を求めたが,被告はこれに同意しなかった(乙14)。 (2) 上記(1)の事実によれば,原告組合と被告とは,平成11年10月1日付けで組合員の賃金を減額する旨の確認書を締結し(本件賃金カット),本件賃金カット以降,確認書等で規定された昇給条項に基づく年齢給・勤続給の昇給は実施されておらず,原告組合も,年齢給・勤続給の昇給の定めは一時的に効力が停止されたものと理解していたから,原告組合と被告との間においては,そのころ,当該条項の効力を停止する旨の合意が成立したと認めるのが相当である。したがって,本件昇給条項についても,平 成18年2月21日に締結されたものの,直ちに効力が停止され,有名無実化したものと解すべきである。 そして,原告組合と被告とは,本件昇給条項の効力の復活の要件について何らの定めもしていなかったから,その復活をするた 結されたものの,直ちに効力が停止され,有名無実化したものと解すべきである。 そして,原告組合と被告とは,本件昇給条項の効力の復活の要件について何らの定めもしていなかったから,その復活をするためには,当事者双方の合意が必要であると解すべきところ,上記(1)のとおり,原告組合が被告に対して本件昇給条項の効力の復活を求める要求を繰り返していることからすると,原告組合も,復活に当たっては被告との合意が必要であると理解していた模様であるし,原告組合は,平成20年7月以降,被告に対し,本件昇給条項の復活を求めていたものの,被告がこれに応じなかったというのであるから,本件昇給条項は,規範としての効力をいまだ停止したままであると解するほかない。 したがって,本件昇給条項の効力は認められない。 4 争点(4)(本件覚書及び本件労働協約の解約の有無並びにその効力)について(1) 前提事実(5)のほか,証拠(乙2ないし14)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実を認めることができる。 ア被告は,平成19年8月29日,原告組合に対し,平成18年就業規則の見直しを目指して労使交渉の実施を申し入れた。その中で,被告は,原告組合に対し,①平成19年12月31日までに平成18年就業規則の見直しに関する労使合意を締結すること,②その締結と同時に就業規則と労働協約との一元化交渉を開始し,平成20年3月31日までに労使合意を締結することを目指すことなどを伝えた。 イ被告は,平成19年9月21日付けで,①退職金制度の廃止,②「年払常勤手当」制度の導入,③定期昇給の廃止,④住宅手当等の廃止等を内容とする就業規則の改訂案を作成し,遅くとも同年12月25日までに原告組合員らを含む全従業員に提示した上,平成20年1月に全従業 員を対象に説明会を開催し,<ア の廃止,④住宅手当等の廃止等を内容とする就業規則の改訂案を作成し,遅くとも同年12月25日までに原告組合員らを含む全従業員に提示した上,平成20年1月に全従業 員を対象に説明会を開催し,<ア>賃金規程の見直し,<イ>退職金規程を廃止しての年払型退職手当制度(年払常勤手当)の導入,<ウ>再雇用制度の制定,<エ>その他新設諸規程の締結等について説明し,原告組合との間で,新たに制定した就業規則と労働協約との一元化を目指して交渉を重ねたものの,原告組合が労働協約に反する就業規則の制定・施行に反対したため,労使合意の締結には至らなかった。 ウそのような中,被告は,平成21年11月13日,平成21年文書(乙6)をもって,原告組合に対し,被告最終案として,退職金制度の廃止に当たって既に積み立てられた退職金については分割支給し,平成22年度から毎年4月末に年払常勤手当を支給する旨を通知した。 もっとも,平成21年文書には,「新就業規則案」の会社最終案であるとして,会社最終案実施手順等のほか,現行退職金制度による確定退職金の支給のイメージとともに,当該退職金を分割して受給する際に発生する所得税についての説明が記載されているばかりであり,本件労働協約を解約する旨の文言はもちろんのこと,退職金制度以外の本件労働協約に基づく各種制度の帰趨,新就業規則案と本件労働協約との間の効力関係の調整等についても全く触れられていない。 エ続いて,被告は,平成22年9月6日及び同月29日付け会社広報において,改めて,①新賃金制度への移行,②退職金規程を廃止しての年払型退職手当制度の導入を発表し,全従業員を対象に本件労働協約に基づく退職金の清算方法についての個別面談とアンケートとを実施し,同年12月17日付け会社広報で平成23年4月1日から新就業規則を施 払型退職手当制度の導入を発表し,全従業員を対象に本件労働協約に基づく退職金の清算方法についての個別面談とアンケートとを実施し,同年12月17日付け会社広報で平成23年4月1日から新就業規則を施行することを発表し,平成23年1月17日,「『就業規則および諸規程』平成23年4月1日施行にあたり」と記載された平成23年文書(乙12)をもって,原告組合に対し,「定年後再雇用制度の適用対象者の基準に関する労使協定書」の調印を申し入れた。 オその後,本件労働協約の規定に反する就業規則の規定は無効であるとして本件労働協約の規定に反する「改定新賃金による給与の支給」の停止を求めるとともに,平成23年4月以降の賃金について,年齢給・勤続給の定期昇給の実施,配偶者手当及び住宅手当の支給を求める内容の原告組合作成の平成23年4月21日付け要求書(乙13)につき,被告は,その受領を拒否した上,同年5月27日,平成23年回答書(乙14)をもって,原告組合に対し,本件就業規則が,音楽業界の縮小傾向が継続することが予測されるとの認識の下,今後の事業継続の方策として4年以上をかけ,従業員の意見も取り入れながら作成したものであるとして,改めて本件就業規則の運用にすべての従業員の協力を求めた。 (2) 上記(1)の事実によれば,被告は,本件就業規則の制定に当たり,本件労働協約との一元化を図るべく,原告組合との間で交渉を重ねたが,労使合意の締結には至らなかったため,平成21年文書をもって,本件労働協約に規定された退職金制度の廃止及びこれに基づく退職金の清算,年払常勤手当制度の導入を被告最終案として提示したにとどまり,平成21年文書には,本件労働協約を解約する旨の文言はもちろんのこと,退職金制度以外の本件労働協約に基づく各種制度の帰趨,新就業規則案と本件労働 勤手当制度の導入を被告最終案として提示したにとどまり,平成21年文書には,本件労働協約を解約する旨の文言はもちろんのこと,退職金制度以外の本件労働協約に基づく各種制度の帰趨,新就業規則案と本件労働協約との間の効力関係の調整等についても全く触れられていなかったのであるから,被告が,平成21年文書をもって,本件労働協約の解約の意思表示をしたと解することはできない。したがって,本件解約1は理由がない。 次に,平成23年文書は,被告が原告組合に対し,「定年後再雇用制度の適用対象者の基準に関する労使協定書」の調印を求めるものであり,同協定書案が添付されていたにすぎないから,本件23年文書をもって,本件労働協約の解約の意思表示をしたと解することはできない。したがって,本件解約2は理由がない。 さらに,平成23年回答書についても,被告が原告組合に対し,本件就 業規則の運用について,従業員の協力を求める内容のものにすぎないから,平成23年回答書をもって,被告が本件労働協約の解約の意思表示をしたと解することはできない。したがって,本件解約3も理由がない。 (3) 翻って,被告が,平成23年11月11日,同日付け答弁書をもって,原告組合に対し,本件覚書及び本件労働協約の解約の意思表示をしたのは,前提事実(8)のとおりであるから,本件覚書及び本件労働協約は,同日の翌日から起算して90日を経過した平成24年2月10日に解約の効力が生じたというべきである。 したがって,本件解約4は理由があり,本件労働協約は,平成24年2月10日以降,労働協約としての効力を喪失したということができる。 5 争点(5)(原告H及び同Cの被告に対する退職金制度の廃止を含む本件就業規則の作成についての個別同意の可否)について被告は,平成22年11月9日及び ての効力を喪失したということができる。 5 争点(5)(原告H及び同Cの被告に対する退職金制度の廃止を含む本件就業規則の作成についての個別同意の可否)について被告は,平成22年11月9日及び同月10日に,①「現行(退職金)制度での退職金支給予定額及び新基本給額の通知書」と題する書面,②平成23年3月31日時点における現行退職金制度による各人の退職金額を記載するとともに,当該退職金について,<ア>退職時一時払いとするか,<イ>平成23年3月31日を1回目とする7年間での分割払とするかの選択を求める文書を従業員に配付したところ,原告H及び同Cが退職金の清算方法の選択を求める②の文書について,それぞれの選択する内容を記入して被告に提出したことをもって,被告との間で,退職金制度の廃止を含む本件就業規則の作成に個別同意した旨主張する。 しかしながら,労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は,無効となるから(労働契約法16条),労働協約に定める退職金制度を個別の労働契約によって廃止することはできないというべきである。しかも,前提事実(5)及び上記4(1)の事実によれば,上記②の文書は,被告が,本件労働協約の内容を見直し,労働契約関係を規 律する規範を本件就業規則に一元化することを目指して,原告組合との間で労使交渉を実施する中,新たに制定する本件就業規則の下での現行の退職金の清算方法に関する希望を確認するために,原告H及び同Cを含む従業員に対して提示したものであり,そのような経緯の中での当該文書に対する回答をもって,原告H及び同Cが退職金制度の廃止を含む本件就業規則の作成に個別同意したと解するのは相当でない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 6 争点(6)(本件覚 る回答をもって,原告H及び同Cが退職金制度の廃止を含む本件就業規則の作成に個別同意したと解するのは相当でない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 6 争点(6)(本件覚書及び本件労働協約の失効後の法律関係)について(1) 原告組合と被告との間で締結された昭和45年確認書,昭和47年5月確認書,昭和47年8月確認書,昭和49年確認書,昭和50年確認書,昭和53年確認書,昭和54年確認書,平成元年確認書,平成4年確認書,平成10年確認書及び平成11年確認書は,いずれも原告組合と被告との間の労働条件その他に関する労働協約であり,労働組合である原告組合と使用者である被告の記名押印があることは,前提事実(2)のとおりであるから,これによると,上記各確認書は,いずれも労働組合法14条所定の労働協約としての効力を有すると認めるのが相当である。そして,原告組合と被告との間においては,上記確認書の締結によって合意された労働条件その他に関する定めが平成16年労働協約ないし平成17年労働協約に取りまとめられ,その配付当時,原告組合員らを含む被告の従業員と被告との間の労働契約を直接規律する規範として機能していたことも,前提事実(2)のとおりであり,平成16年労働協約ないし平成17年労働協約と同一の内容を定めた本件労働協約が,本件覚書の締結によって労働組合法14条所定の労働協約としての効力を取得したことは,上記2で判示したとおりである。 もっとも,上記4で判示したとおり,本件労働協約の規範的効力は,本件解約4によって,平成24年2月10日に失効したと解すべきであるが, 原告組合と被告との間の労働条件は,本件労働協約を含む確認書等により,長年にわたって規律されており,平成24年2月10日時点において,原告組合所属の原告組 10日に失効したと解すべきであるが, 原告組合と被告との間の労働条件は,本件労働協約を含む確認書等により,長年にわたって規律されており,平成24年2月10日時点において,原告組合所属の原告組合員らと被告との間で,労働契約の内容とされていたと認めるのが相当であるから,本件労働協約が失効した後においても,効力停止中の本件昇給条項を除く本件労働協約規定に基づく労働条件は,新たな労働協約の成立や就業規則の合理的改訂・制定が行われない限り,原告組合員らと被告との間の労働契約を規律するものとして存続するものと解すべきである。 (2) この点,被告は,本件就業規則が本件労働協約失効後の原告組合員らと被告との間の労働契約を規律する補充規定としての効力を有するから,本件労働協約規定に基づく労働条件による原告組合員らと被告との間の労働契約関係は終了している旨主張する。 しかしながら,本件就業規則規定は,本件労働協約規定に定める「賞与の支給,配偶者手当,住宅手当,病気やけがによる欠勤・休職と給与,退職金制度,生理休暇と給与,非常払の要件,定年後の昇給,および諸手当,年次有給休暇付与日数,産前産後の休暇の日数,育児休業期間の勤続年数への加算の有無,財形貯蓄に関する利子補給」などの労働条件(なお,本件昇給条項が効力停止中であるのは,前記3で判示したとおりである。)を,原告組合員らに不利益に変更するものであるところ,被告は,このような不利益変更を容認することができる合理的理由につき全く主張していない。 もっとも,証拠(乙2,4,37)によれば,被告は,過去において,過大な借入金によって人件費を捻出するため,出版物を大量に発行したことによって在庫を抱え,平成8年頃以降,深刻な経営危機を経験した経緯がある上,その後,新しい環境に適合した人事賃金 ,過去において,過大な借入金によって人件費を捻出するため,出版物を大量に発行したことによって在庫を抱え,平成8年頃以降,深刻な経営危機を経験した経緯がある上,その後,新しい環境に適合した人事賃金制度を内容とする新就業規則の制定に着手し,平成17年頃から原告組合に対して新就業規則の 制定に向けての労使交渉を求めるようになったことがうかがわれる。その間,原告組合が平成11年10月に被告の求める本件賃金カットに協力したのは,前記判示のとおりである。また,上記証拠によれば,確かに,昭和56年度(第46期)以降,被告の売上金は減少傾向を示すようになり,平成3年度(第56期)には,売上金が58億4900万円のところ,借入金が35億9600万円にものぼり,棚卸資産合計として24億5900万円を計上し,その頃,最悪の在庫回転率を記録したことが認められるが,その間の被告の財務状況や経済規模・取引先の状況等を示す証拠は全く提出されておらず,本件全証拠をもってしても,被告の財務状況及び経営実態を正確に把握することはできない。しかも,乙2によっても,売上金の減少傾向は続いているものの,上記会計年度の頃をピークとして,平成20年度(第72期)にかけて借入金額は大幅に減少し,在庫回転率も次第に改善されている経緯が認められるのであるから,被告が,本件労働協約が本件解約4によって失効した平成24年2月10日当時,退職金制度を廃止しての年払型退職手当制度(年払常勤手当)の導入,各種手当の廃止等の実質的な賃金減額を伴う労働条件の切下げを実行しなければならない具体的な必要性及びその相当性については,いまだ立証が尽くされていないといわなければならない。 そうすると,本件就業規則の改訂が合理的なものと認めることはできないから,本件就業規則規定が本件労働協約失効 要性及びその相当性については,いまだ立証が尽くされていないといわなければならない。 そうすると,本件就業規則の改訂が合理的なものと認めることはできないから,本件就業規則規定が本件労働協約失効後の原告組合員らと被告との間の労働契約を規律する補充規定としての効力を有すると認めることはできないといわざるを得ない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 7 争点(7)(原告らの請求のまとめ)について(1) 確認請求についてアこれまで判示してきたところによれば,原告組合の各確認の訴えは, いずれも不適法であって却下を免れない。 イ原告A,同B,同C,同D,同E,同F及び同Gが被告に対し,別紙「労働協約・改定就業規則対照表」の番号1,同3ないし13の各項目に係る「A労働協約の規定」欄記載の各条項の緑色部分を労働契約の内容とする労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める部分は理由がある。 他方,原告Hは,平成24年1月31日付けで被告を退職し,被告との間の労働契約関係は終了しているから,同原告が被告に対し,本件労働協約規定の緑色部分を内容とする労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める部分は理由がない。 また,本件昇給条項の効力は,平成11年10月以降,停止されたままであるため,原告A,同B,同C,同D,同E,同F及び同Gが被告に対し,別紙「労働協約・改訂就業規則対照表」の番号2の項目に係る「A労働協約の規定」欄記載の各条項の緑色部分を内容とする労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める部分はいずれも理由がない。 (2) 金銭請求についてア原告A,同B,同C,同D,同E,同F及び同Gの被告に対する将来請求部分に係る訴えは,民事訴訟法135条所定の「あらかじめ の確認を求める部分はいずれも理由がない。 (2) 金銭請求についてア原告A,同B,同C,同D,同E,同F及び同Gの被告に対する将来請求部分に係る訴えは,民事訴訟法135条所定の「あらかじめその請求をする必要がある場合」に当たると認めることができないから,訴えの利益を欠き不適法である。 イ原告B及び同Gにそれぞれ配偶者がいることには特段の争いがないから,同原告らは,本件労働協約規定第17条に基づき,被告に対し,平成23年5月1日から本判決確定の日まで毎月25日限り,それぞれ月額1万円の配偶者手当の支払を求めることができる。 ウ原告B及び同Gが本件労働協約規定第18条所定の支給区分の「家族 持ち」,原告A,同C,同D及び同Fが同「単身世帯」,原告Eが同「世帯員」に当たることには特段の争いがないから,別紙「未払賃金等一覧表」の番号1ないし6,8の各原告は,本件労働協約規定第18条に基づき,被告に対し,平成23年5月1日から本判決確定の日まで毎月25日限り,それぞれ1か月当たり同表「g住宅手当月額」欄記載の各金員の支払を求めることができる。 エ原告B,同E,同F及び同Gが本件労働協約規定所定の財形貯蓄制度において200万円以上の預金額を有していることには特段の争いがないから,被告は,本件労働協約規定所定の財形貯蓄制度に基づき当該預金を有する従業員に最高200万円を限度として年2%の利子を上積補給する義務があり,その支払日は平成23年10月31日であるから,上記原告らは,被告に対し,それぞれ4万円の利子相当額の支払を求めることができる。 オ本件労働協約規定第28条によれば,原告Hの退職金額は,次の計算式のとおり,1766万8366円となる。 計算式:426,944 円(平成24 年1月の基準給)×31 年×1.3 ができる。 オ本件労働協約規定第28条によれば,原告Hの退職金額は,次の計算式のとおり,1766万8366円となる。 計算式:426,944 円(平成24 年1月の基準給)×31 年×1.3+426,944円×(32 年×1.3-31 年×1.3)×10 か月÷12 か月=17,668,366 円しかるに,被告は,平成24年1月31日に1668万3443円を支払ったのみであるから,原告Hは,被告に対し,その差額である98万4923円の支払を求めることができる。 カ前記3で判示したとおり,本件昇給条項は,平成11年10月以降,その効力が停止されたままであるから,原告組合員らは,被告に対し,いずれも,①平成20年4月,②平成21年4月,③平成22年4月,④平成23年5月,⑤平成24年5月(原告Hについては①ないし④の各月)からそれぞれ本判決確定の日まで(原告Hについては平成24年 2月まで)毎月25日限り,月額2000円の年齢給・勤続給の定期昇給分の支払を求めることはできない。 8 結論よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第11部 裁判官菊池憲久

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