平成24(わ)190 現住建造物等放火未遂被告事件

裁判年月日・裁判所
平成24年9月14日 高知地方裁判所
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判決文本文1,823 文字)

主文被告人を懲役3年に処する。 未決勾留日数中50日をその刑に算入する。 この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。 被告人をその猶予の期間中保護観察に付する。押収してあるライター1個を没収する。 理由 【犯罪事実】被告人は,妄想性人格障害や適応障害の影響もあって,夫の言動に対する不満や憎しみを募らせていたところ,平成24年5月23日ころから,気分が落ち込むようになったが,それを夫が気遣ってくれなかったと感じ,さらに憎しみを強めた。 被告人は,そのような自分の気持ちを分からせるために,同月30日午前10時15分ころ,夫が所有し,被告人と夫が住んでいる,高知市所在の木造アパート(床面積76平方メートル。以下「本件家屋」という。)1階玄関南側廊下において,プラスチックごみを詰めたビニール袋を同廊下床上に置いたうえ,これにライターで点火して火を放ち,その火を同廊下床板等に燃え移らせて同家屋を焼損しようとしたが,火災の発生に気付いた隣人及び消防士らに消火されたため,その目的を遂げなかったものである。【証拠の標目】(省略)【法令の適用】(省略)【自首の主張について】弁護人は,被告人に自首が成立すると主張するので検討する。 まず,捜査機関は,本件犯行による火災が鎮火した後,本件家屋内の2か所に,床の炭化や新聞紙の束の焼損が認められたこと,これら2か所の直近に火元が存在しなかったことから,上記火災が何者かの放火によるものであると判断していたのであるから,遅くとも被告人が警察署に出頭した平成24年5月30日午後6時25分の時点までには,合理的な根拠に基づいて,上記火災が何者かの放火によるものであると判断していたものと認められる。 次に,捜査機関は,焼損箇所がいずれも本件家屋内であるこ 30日午後6時25分の時点までには,合理的な根拠に基づいて,上記火災が何者かの放火によるものであると判断していたものと認められる。 次に,捜査機関は,焼損箇所がいずれも本件家屋内であること,本件家屋で唯一施錠されていなかった車庫奥の出入口から被告人と夫以外の第三者が侵入し,放火したとは考えにくいこと,被告人が出火後所在不明であること,夫が火災発生時には稼働先にいた事実が夫の同僚の供述により裏付けられたこと,夫が「妻は何日か前からしんどいと頻繁に言っていたので,もしかしたら妻が火を点けたのかもしれない」などと供述していることなどから,被告人が本件犯行を行ったと判断したと認められるから,遅くとも被告人が警察署に出頭した時点までには,合理的な根拠に基づき被告人が犯人であると特定していたということができる。 したがって,被告人に自首は成立しない。 【量刑の理由】本件犯行による被害はわずかに留まるが,本件家屋は木造で,住宅密集地にあり,最も近い隣家と本件家屋との距離はわずか約20センチメートルである。もし運良く早期に火災が発見されていなければ,本件家屋だけでなく,周辺の住宅にも火災が広がる可能性は高かった。周辺住民に与えた不安も大きい。 もっとも,被告人は,放火の危険性や,周辺住民に与える影響を顧みず,夫に自分の気持ちを分からせるためという身勝手な動機で本件犯行に及んだものであるが,本件犯行の動機形成には,被告人の妄想性人格障害や適応障害が一定程度影響しており,その分,非難の程度が弱まる。 このほかに,被告人が,本件犯行当日に警察署に出頭し,本件犯行を反省していること,被告人の夫が被告人を許し,今後,被告人と夫の田舎で同居して監督を続け,妄想性人格障害や適応障害について病院に通わせる旨法廷で約束しており,被告人もそれを受け入 出頭し,本件犯行を反省していること,被告人の夫が被告人を許し,今後,被告人と夫の田舎で同居して監督を続け,妄想性人格障害や適応障害について病院に通わせる旨法廷で約束しており,被告人もそれを受け入れる意思があることなどを考慮すれば,被告人に対しては,主文の刑を科し,その執行を4年間猶予して保護観察に付するのが相当である。 (検察官石垣麗子及び同菊池昌晴並びに弁護人田本捷太郎各出席。検察官の求刑:懲役4年,没収,弁護人の科刑意見:懲役2年6月,執行猶予3年,付保護観察)平成24年9月26日高知地方裁判所刑事部 裁判長裁判官平出喜一 裁判官大橋弘治 裁判官佃良平

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