平成13(ネ)1477 損害賠償請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成14年12月5日 東京高等裁判所
ファイル
hanrei-pdf-58.txt

判決文本文27,879 文字)

主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らは,控訴人に対し,各自金1000万円及びこれに対する平成9年6月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを4分し,その1を控訴人の負担とし,その余を被控訴人らの負担とする。 4 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人主文1,2項同旨 2 被控訴人ら控訴棄却第2 事案の概要本件は,被控訴人株式会社ノエビア(被控訴人会社)の製造,販売にかかる化粧品(ノエビア化粧品)の販売会社(販社)であった控訴人が,被控訴人会社と締結したノエビア化粧品の販社販売業務委託契約(本件委託契約)を平成9年6月に解除されたことについて,それが私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)19条で禁止されている不公正な取引方法(不当な取引拒絶)であり,不法行為に当たるとして,本件解除によって控訴人が被った逸失利益3億1465万6512円及び弁護士費用2994万9390円の計3億4460万5902円の内金3億円及びこれに対する遅延損害金の賠償を請求している事案である。 原判決は,控訴人の請求をいずれも棄却した。これに対して控訴人が不服を申し立てたものである。なお,控訴人は,当審において,本訴で請求する損害賠償を前記逸失利益の内金500万円と慰謝料500万円の計1000万円に変更した。 1 前提となる事実(証拠を掲げたもの以外は争いがない。)(1) 当事者等ア控訴人は,化粧品等の販売を目的として昭和61年9月22日に設立された有限会社であり,Aはその代表者である。 イ被控訴人会社は,化粧品等の製造,販 がない。)(1) 当事者等ア控訴人は,化粧品等の販売を目的として昭和61年9月22日に設立された有限会社であり,Aはその代表者である。 イ被控訴人会社は,化粧品等の製造,販売,輸出入等を目的とする株式会社である。また,平成9年当時,被控訴人Cは被控訴人会社大宮支店(大宮支店)の支店長,被控訴人Dは同支店の副支店長であった。 (2) 本件委託契約の締結控訴人は,昭和61年9月22日,それまでの代理店の地位から昇格し,被控訴人会社との間で,ノエビア化粧品の委託販売を目的として,次の約定を含む本件委託契約を締結し(甲11号証),以後,被控訴人会社の販社としての活動をしていた。 ア被控訴人会社は,控訴人に対し,被控訴人会社の販社として本件委託契約の条項及び被控訴人会社の「ノエビア化粧品販社業務規程」(甲12号証,本件規程)にしたがい,ノエビア化粧品の販売をすることを委託し,控訴人はこれを受託する(本件委託契約1条)。 イ控訴人は,ノエビア化粧品以外の化粧品を取り扱ったり,販社であることを利用して他社の製品を販売したり,取扱いをしてはならない(本件委託契約3条,本件規程4条1,2項)。また,控訴人は,販社であることを利用して,自己に所属する代理店もしくはビューティアドバイザー(所属代理店等)に他社製品を取り扱うよう勧誘してはならない(本件規程4条3項)。 ウ控訴人に次の事由が生じたときは,被控訴人会社は直ちに本件委託契約を解除することができる。 ① 控訴人が故意に被控訴人会社やノエビア化粧品の信用を傷つけるような言動をするなど,控訴人に本件委託契約又は本件規程(本件委託契約等)に違反する著しい不信行為があるとき(本件委託契約14条2項,本件規程30条3項,7項)② ア化粧品の信用を傷つけるような言動をするなど,控訴人に本件委託契約又は本件規程(本件委託契約等)に違反する著しい不信行為があるとき(本件委託契約14条2項,本件規程30条3項,7項)② ①のほか,控訴人が本件委託契約に違反した行為をし,被控訴人会社の催告にもかかわらず,控訴人が直ちに当該行為を中止しないとき,又は中止後再度同一の行為をしたとき(本件委託契約14条3項,本件規程30条8項)(3) 本件委託契約の解除被控訴人会社は,控訴人に対し,平成9年6月6日付内容証明郵便(甲9号証)により,本件委託契約3条,14条2項及び3項並びに本件規程4条1項ないし3項,30条3項,7項及び8項に基づき本件委託契約を解除するとの意思表示をし(本件解除),同日以降,控訴人との取引を拒絶した。 2 控訴人の主張(請求原因)(1) 本件解除に至る経緯ア控訴人代表者のAは,昭和56年10月,被控訴人会社の2次代理店となり,昭和57年3月には所定の販売実績を達成して1次代理店に昇格し,同年9月からはその夫も銀行を退職して控訴人の経営に専従することになった。そして,昭和61年2月には,6か月間の販売実績6000万円を達成し,販社に昇格したが,被控訴人会社から苛酷な売上ノルマを課されてその仕入れを増大させ,販売活動を続けた結果,大量の在庫を抱えるに至った。 イ昭和61年に被控訴人会社の販売システムが売買から委託に代わり,一旦は,控訴人の在庫負担もなくなった。しかし,平成3年2月ころから,再び被控訴人会社による傘下の販社・代理店への押込み圧力が強まってきたが,表向きは委託販売となっていたため,被控訴人会社の指示による在庫隠しすなわち販売済みを仮装することが強制されるようになっていった。 ウ平成7年12月5 代理店への押込み圧力が強まってきたが,表向きは委託販売となっていたため,被控訴人会社の指示による在庫隠しすなわち販売済みを仮装することが強制されるようになっていった。 ウ平成7年12月5日,被控訴人Cは,大宮支店において,控訴人の傘下の2次代理店の「新小松」と「松原3丁目」を控訴人に無断で昇格させようとした。これを知った原告代表者のAは,不正流通(バッタ屋等への横流し)の可能性もあり,昇格は無理であると反対したが,聞き入れられなかった。その後,「新小松」による不正流通が明らかになった。 エ控訴人は,平成8年8月2日,大宮支店の被控訴人Cから,前記不正流通の責任を問われ,「新小松」への販売手数料全額を支払うことになり,始末書も提出した。また,控訴人は,同月5日,販社長手当16万円の13か月分208万円の辞退書を書くよう命じられ,これに応じざるを得なくなり,これによって控訴人の資金繰りは一挙に苦しくなった。当時,控訴人は,その傘下に1次代理店23,2次代理店320を擁していたが,その販売組織内に約1億円の表に出ない流通在庫(隠し在庫)があり,その事実上の買取代金として販社が立替払するための借入金約6000万円があった。 オ平成9年3月10日,被控訴人Dがサマーキャンペーンの注文を取りに来た際,控訴人代表者のAが,在庫が多いためこれを断ったにもかかわらず,被控訴人Dは,セット数をメモ書きしてAに渡し,同月14日までに正式な注文の書面を持ってくるよう指示した。 また,同月11日,在庫負担による経済的な事情から控訴人の傘下代理店の「久保島第3」から解約申し出があり,その夫からは強硬な返品要求があったため,控訴人は在庫総額1500万円の返品を受け入れざるを得なかった。そのため,控訴人代表者のAは,大宮支店に返品を申し入れた。 久保島第3」から解約申し出があり,その夫からは強硬な返品要求があったため,控訴人は在庫総額1500万円の返品を受け入れざるを得なかった。そのため,控訴人代表者のAは,大宮支店に返品を申し入れた。しかし,被控訴人Cはこれを拒否し,Aが再三依頼した結果,やっと600万円分だけについて返品が認められた。 カ平成9年4月7日,控訴人代表者のAがキャンペーンセットの注文を断り,注文票を出していないにもかかわらず,被控訴人会社から一方的に200セットが送り付けられてきて,その代金を販社である控訴人が立て替えて払うよう指示した。控訴人は,これを出荷せず,在庫として保管した。 キ前記のような経過で,平成9年春ころ,控訴人の被控訴人会社に対する信頼は崩壊寸前に至っていた。その頃,控訴人代表者のAは,ピリカの販売に携わっていた元の被控訴人会社の大宮支店長Eの来訪を受け,ノエビアをやめてピリカをやってはどうかとの勧誘を受けた。そこで,Aは,ピリカの代表者とその顧問弁護士である濱崎憲史(本訴の控訴人代理人,濱崎弁護士)に会って相談したところ,同人らから,まず在庫問題を解決して販社と傘下の代理店が窮状を脱出して健全な取引に戻るようにとの助言を受け,ピリカへの登録を思い止まり,ノエビアを続ける決意を固めた。 ク平成9年5月1日,控訴人は,被控訴人会社に対し,内容証明郵便で返品の通知をした。これに対し,被控訴人Dは,同月13日,控訴人の全部の商品を引き上げる旨を回答してきた。 ケ被控訴人C,同Dは,前記のように返品を求める控訴人に対し,他社商品の取扱いを理由とする本件委託契約の解約理由を作り出すため,平成9年5月上旬ころ,控訴人の1次代理店であるF及びG,2次代理店であるH及びFの顧客であるIに協力を求めた。 そして,被控訴人Dは 社商品の取扱いを理由とする本件委託契約の解約理由を作り出すため,平成9年5月上旬ころ,控訴人の1次代理店であるF及びG,2次代理店であるH及びFの顧客であるIに協力を求めた。 そして,被控訴人Dは,Gにカセットテープを渡して控訴人代表者を2度にわたって訪問させ,同月26日,ピリカの話をさせるように誘導してこれを密かにテープに取り,また,ピリカへの登録費用を被控訴人Dから受領したH及びIをして,同月28,29日に「ピリカへの登録をしたい」旨,Aに申し入れさせた。Aは,ノエビアを続ける決意を固めていたものの,これらの行為に騙されて上記両名をEの傘下としてピリカの販売員としての登録を仲介してしまった。 コ被控訴人会社は,前記ケのAの行為を証拠として,平成9年6月6日付内容証明郵便で,本件委託契約の解除通知を行った。 (2) 解除原因の不存在等ア控訴人には本件委託契約等に違反した事実はない。すなわち,控訴人及びその代表者のAは,本件解除当時,ピリカの販売員登録をしておらず,ピリカの販売その他の取扱いをしたこともない。F,H及びI(Fら3名)が使用したピリカの購入申込書のいずれにもAの名前の記載はなく,Aは被控訴人会社の偽計によりFら3名に申込書を交付したにすぎない。また,Aは,被控訴人会社の指示を受けたFら3名の熱心な要求に負けて同人らにピリカの購入を紹介したにすぎず,Aの方から積極的にピリカの取扱いを勧誘したことはない。しかも,Iは単なる顧客にすぎず,Hは控訴人所属の2次代理店として登録はしているが全く販売活動を行ってはおらず,いずれも実質的には控訴人の所属代理店等とはいえない。 イ仮に,Aの各行為が形式的に本件委託契約等に違反するとしても,本件解除を正当化するほどの著しい不信行為はない。Aは,最終的にはピリカの ずれも実質的には控訴人の所属代理店等とはいえない。 イ仮に,Aの各行為が形式的に本件委託契約等に違反するとしても,本件解除を正当化するほどの著しい不信行為はない。Aは,最終的にはピリカの販売員登録を諦めてノエビアの販売を続ける決意を固めていた。Aは,被控訴人らの偽計によりFら3名の販売員登録に関与したにすぎない。H,Iにピリカを販売する意思は全くなく,被控訴人会社に何ら損害は発生していない。被控訴人会社は,ピリカを取り扱っている別の販社に対しては,逆に取引継続を要請しており,控訴人との関係でのみ取引を拒絶したのは,控訴人が被控訴人会社に対して在庫商品全品の返品を申し入れたことに対する見せしめにほかならない。 ウ仮に,本件解除が形式上解除事由を伴うものであるとしても,その解除原因は,被控訴人らがFら3名及びGに依頼して偽計により作出したものである。 (3) 被控訴人らの不法行為前記(1)のように,控訴人は,被控訴人会社が控訴人及びその傘下の代理店の販売能力を超えた商品を押しつけること(押込み販売)や,隠し在庫の返品拒否が原因となって,多額の負債を抱えるに至った。そこで,控訴人は,このままでは販社として立ち行かなくなったため,被控訴人会社に返品を求めるとともに,たまたま紹介されたピリカの取扱いを検討した。すると,被控訴人らは,その返品に対する報復として,実際には本件委託契約の解除原因がないにもかかわらず,偽計と違法行為により解除原因を作出し,話し合いによる改善を求めることもなく,突然一方的に本件解除をし,控訴人との取引を打ち切ったものである。 これは,被控訴人会社が強者としての地位・立場を濫用し,不当に控訴人との取引を拒絶する行為であり,独占禁止法19条で禁止されている不公正な取引方法に当たる。このような行 を打ち切ったものである。 これは,被控訴人会社が強者としての地位・立場を濫用し,不当に控訴人との取引を拒絶する行為であり,独占禁止法19条で禁止されている不公正な取引方法に当たる。このような行為は,故意に基づく違法な債権侵害として不法行為を構成するから,被控訴人らは,控訴人に対し,後記の控訴人が被った損害を賠償する責任を負う。 (4) 損害額ア逸失利益 3億1465万6512円(本訴ではその内金500万円を請求)控訴人は,本件解除の前,受託販売受取手数料として年平均2078万1752円の収入を得ていた(直近3年間の平均額)。 控訴人代表者のAは,本件解除当時満38歳であり,今後29年間は控訴人の営業を続けることが可能であったから,その稼働年数に対応するライプニッツ係数を乗じて中間利息を控除し,逸失利益を算定すると3億1465万6512円となる。 イ慰謝料 500万円(5) まとめよって,控訴人は被控訴人らに対し,不法行為を理由に,1000万円及びこれに対する不法行為の後の日(本件解除の日の翌日)である平成9年6月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 3 請求原因に対する認否及び被控訴人らの反論(1) 請求原因(1)(本件解除に至る経緯)についてア同ア中,控訴人主張の代理店,販社への昇格の事実は認めるが,被控訴人会社が苛酷なノルマを課したとの事実は否認し,その余は不知。 イ同イの前段は認めるが,後段は争う。 ウ同ウ中,「新小松」による不正流通が明らかになったことは認めるが,その余は否認する。 エ同エ中,被控訴人会社が控訴人から販社長手当の辞 イ同イの前段は認めるが,後段は争う。 ウ同ウ中,「新小松」による不正流通が明らかになったことは認めるが,その余は否認する。 エ同エ中,被控訴人会社が控訴人から販社長手当の辞退書の提出を受けたことは認めるが,その余は否認ないし不知。なお,控訴人に約1億円相当の隠し在庫があったとの事実はないオ同オ中,控訴人の傘下代理店の「久保島第3」から解約申し出と返品要求があったことは認めるが,その余は否認する。被控訴人会社は,平成9年3月に607万7200円,同年4月に917万2500円の返品を受け入れている。 カ同カは否認する。 キ同キ中,控訴人代表者のAが,ピリカの販売に携わっていた元の大宮支店長Eの来訪を受け,ノエビアをやめてピリカをやってはどうかとの勧誘を受けたことは認めるが,その余は不知。 ク同クは認める。 ケ同ケ中,被控訴人Dが,Gにカセットテープを渡して控訴人代表者を2度にわたって訪問させ,同月26日,ピリカの話を密かにテープに取り,また,H及びIをして,同月28,29日に「ピリカへの登録をしたい」旨,Aに申し入れさせたことは認めるが,その余は否認する。 コ同コ中,被控訴人会社が,平成9年6月6日付内容証明郵便で,本件委託契約の解除通知を行ったことは認める。 (2) 請求原因(2)(解除原因の不存在等)についてア同アは争う。控訴人が本件委託契約3条,本件規程4条1項ないし3項に違反したことは,次の各事実から明らかである。 ① 控訴人代表者であるAは,控訴人所属の1次代理店であるFに対し,平成9年4月中旬ころ,ピリカへの転向を勧誘し,さらに同年5月1日,ピリカ化粧品の購入を勧誘した。 ② Aは,平成9年4月26日,控訴人所属の1次 は,控訴人所属の1次代理店であるFに対し,平成9年4月中旬ころ,ピリカへの転向を勧誘し,さらに同年5月1日,ピリカ化粧品の購入を勧誘した。 ② Aは,平成9年4月26日,控訴人所属の1次代理店であるGに対し,ピリカ化粧品の購入及びその販売員登録を勧誘した。 ③ Aは,控訴人所属の2次代理店であるHに対し,平成9年4月28日ころ,また,Fの顧客であるIに対し同月29日ころ,それぞれピリカ化粧品の購入及び販売員登録を勧誘した。 イ同イは争う。以下の事実に照らし,控訴人代表者Aの本件委託契約違反の行為は改善の見込みがないものであり,本件委託契約14条2項,本件規程30条7項所定の「著しい不信行為」に該当する。 ① Aは,控訴人のみならず,控訴人所属代理店を含めた組織ぐるみでのピリカ転向を図り,密かに控訴人所属代理店への説得工作を行っていた。 ② Aは,平成9年5月27日,被控訴人C及び同Dに対し,被控訴人会社との取引を継続する意思を表明しながら,その直後にH及びIに対し,ピリカ化粧品の購入及び販売員登録をあっせんした。 ③ Aは,同年6月3日,控訴人の反省の有無と最終的な意思を確認しようとした被控訴人C及び同Dに対し,ピリカ化粧品取扱いの事実をなお全面的に否定した。 ウ同ウは争う。前記ア,イのとおり,控訴人は,被控訴人らから釈明を求められたのに対し,全面的に疑惑を否定し,密かに不正行為を押し進めていたのであって,被控訴人会社がかかる事情のもとで疑惑の内容を解明するために,被控訴人Dにおいて,Fら3名及びGに調査協力を依頼した行為はやむを得なかったものであり,何ら違法ではない。 (3) 請求原因(3)(被控訴人らの不法行為)について同(3)は争う。 ア被控訴人 て,Fら3名及びGに調査協力を依頼した行為はやむを得なかったものであり,何ら違法ではない。 (3) 請求原因(3)(被控訴人らの不法行為)について同(3)は争う。 ア被控訴人会社が控訴人の意思を無視して商品を押し込んだり,精神的,物理的に脅迫や威力を加えて無理矢理商品を引き取らせるような行為はなかった。控訴人の主張する「押込み」とは自分の注文数量が過大でありすぎたり,在庫量から考えると余分に取りすぎであったため,資金繰りに苦労することになってしまったことである。なお,「押込み販売」が問題となるのは,販社の傘下代理店に対する商品出荷に関するものであり,その出荷は販社の意思と行為で実行されるものであって,被控訴人会社の意思や行為で実現できるものではない。被控訴人会社の営業担当が業績を上げるために商品の受入れや,傘下代理店への出荷を要請することがあったとしても,それは通常の営業活動のレベルの行為であり,控訴人の意思を無視したり,強制力を加える等,違法な手段で商品を引き取らせる行為などはなく,また,有力な販社であった控訴人に対し,そのような行為ができるわけもない。 イ傘下代理店から販社への返品に伴う販社から被控訴人会社への返品を被控訴人会社が拒否していた事実はない。久保島第3からの返品については,通常の取引継続を理由とする返品とは異なるのと,清算金の支払が以下のような特殊な事情があって2回に分けて処理をしただけであり,被控訴人会社が返品を拒否した事実はない。なお,販社の中には,被控訴人会社のルールに反し,不当に返品を拒否する場合もある。これは当該販社が無理に傘下代理店に商品を出荷し,その代金を受領してしまっている場合などに生じやすく,その場合,当該販社は,返品拒否をしづらいため,被控訴人会社が返品を受けつけないの る場合もある。これは当該販社が無理に傘下代理店に商品を出荷し,その代金を受領してしまっている場合などに生じやすく,その場合,当該販社は,返品拒否をしづらいため,被控訴人会社が返品を受けつけないので,自分も返品を受け入れられないなどと被控訴人会社に責任を転嫁する場合があり,控訴人の主張も同様のものである。 ウ在庫のうち,販社が保有しているものは,被控訴人会社の所有であり,本来の在庫ではなく,在庫とは,傘下の代理店が保有する商品である。被控訴人会社の販売システムからすれば,販社が傘下の代理店に商品を出荷したときから,代理店が販社に,販社が被控訴人会社に代金を支払うまでには40日から70日の期間があり,その間に商品を顧客に販売して代金を回収することが予定されている。したがって,代理店の保有在庫が2か月分くらいで販売可能な量であれば適正在庫の範囲内である。被控訴人会社の組織販売上,在庫は,コンピューターと棚卸し等で把握できるものをいうが(表在庫),他に,表在庫としては把握できないが傘下の代理店が保有する在庫(隠し在庫)がある。これは,代理店が自己の自由意思に基づいて入荷をしたが,思惑が外れて売れなくて在庫が膨らむ場合や,上位代理店や販社からの協力依頼を承諾して商品を引き受ける場合などがある。控訴人の傘下の代理店の保有在庫は異常に多いが,これは後者の原因によるものと考えられる。なお,控訴人主張の販社の隠し在庫とは,販社が傘下の代理店に商品を出荷した旨コンピューター入力をするが,現実の商品は代理店に移動せず,販社に残しておく場合や,販社が代理店から返品を受け入れたが返品入力をせず,商品を販社が保管する場合と思われるが,これは著しいルール違反である。 (4) 請求原因(4)(損害額)について同(4)は争う。 第3 当裁判所の判 から返品を受け入れたが返品入力をせず,商品を販社が保管する場合と思われるが,これは著しいルール違反である。 (4) 請求原因(4)(損害額)について同(4)は争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件の事実関係(1) ノエビア化粧品の販売システム等前記第2の1の争いのない事実等及び証拠(甲1及び2号証,11及び12号証,23号証,31号証の1ないし5,32ないし36号証,乙32号証の1,41号証)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア被控訴人会社は,化粧品等の製造,販売,輸出入等を目的とする株式会社である。被控訴人会社の販売システムは,全国47(平成14年5月当時,以下同じ。)の支店の下に販売代理店がある。販売代理店としては,まず約750の販社があり,その販社の傘下に約7500の1次代理店と約17万の2次代理店がある。ノエビア化粧品は,この2次代理店を通じて消費者に販売されるが,販社や1次代理店が直接消費者に販売することもできる。したがって,販社を含む各代理店の売上げは,消費者への販売分と傘下代理店への出荷分がある。なお,1次代理店の中にはさらにその傘下に1次代理店を持つことができる代理店があり,これを主任代理店という。2次代理店に登録するためには10万円の保証金が必要であり,1次代理店に登録するにはさらに10万円,合計20万円の保証金が必要である。これらは解約時には返戻される。 イ 2次代理店の販売手数料率は希望小売価格の35.0ないし45.4パーセントと定められているが,代理店契約後半年間は一律40.0パーセントである。その半年間の月平均売上げが120万円に達すると1次代理店に昇格することができ,販売手数料率は48.5ないし58.9パーセントとなる。さらにその月平均売上げが 後半年間は一律40.0パーセントである。その半年間の月平均売上げが120万円に達すると1次代理店に昇格することができ,販売手数料率は48.5ないし58.9パーセントとなる。さらにその月平均売上げが1000万円に達すると販売手数料率は59.7パーセントから64.3パーセントとなる。販社を含む各販売代理店がその地位を維持するための売上基準はないが,販社と1次代理店については,売上げに応じて下位の販売手数料率が適用されることがある。消費者に直接販売する場合は,この販売手数料率がそのまま粗利益率となり,傘下代理店に再委託して消費者に販売した場合には,これらの手数料率の差額が粗利益率となる。それらの粗利益率の平均は,販社及び1次代理店では10ないし15パーセントくらい,2次代理店では20ないし30パーセントくらいである。また,1次代理店は7級から特級まで,2次代理店は8級から13級まで分かれていて,売上げが増えると順次昇級するシステムである。 ウ各販売代理店の売上げが一定額に達した場合(月平均売上の3分の1以上の増加)には,販社長手当(販社),所長手当(1次・2次代理店)が支給される。これらの手当の金額は,売上規模に応じて金額が定められており,2次代理店の場合は1万円以内,1次代理店の場合は1万5000円から5万円,販社の場合は7万円以上となっている。これとは別にキャンペーンのノルマを達成すると,「達成費」として1セット当たりいくらという金額が支給される。また,販社が傘下代理店の昇格等により自身の傘下代理店を喪失してしまう場合,たとえば,1次代理店が販社に昇格した場合には,当該販社は,その1次代理店との取引から得ていた利益を失う反面,被控訴人会社は,昇格した販社と直接取引を行うため,利益が増加することになる。そこで,その利害を調整するため 店が販社に昇格した場合には,当該販社は,その1次代理店との取引から得ていた利益を失う反面,被控訴人会社は,昇格した販社と直接取引を行うため,利益が増加することになる。そこで,その利害を調整するため一定期間営業補償金が支払われる。なお,昇格の場合には海外旅行,昇級の場合には一流ホテルで行われる全国大会への招待などの特典(いずれも費用は被控訴人会社負担)がある。 エ販社の被控訴人会社への通常の商品の注文は,販社が受託業務の遂行に必要な商品をその傘下代理店の販売能力・販売実績等を勘案し,コンピューターに注文入力する方法で発注する。もっとも,キャンペーン商品などの場合には,そのキャンペーンの都度,各販社ごとの販売目標が設定され,被控訴人会社がその割当数量を決定して販社にその旨の指示をする場合も多かった。被控訴人会社は,販社の要請に従って商品を販社に出荷して預託するが,この段階では,商品は被控訴人会社の在庫であり,売上げは立たず,販社の受託手数料も発生しない。なお,被控訴人会社の販社に対する預託商品は,当該販社の販売実績等を考慮して一定の量(与信枠)が設定されており,これを超えた場合は,コンピューター上,入荷入力ができなくなり,被控訴人会社からの出荷は停止される(ロック)。なお,被控訴人会社ではキャンペーン商品が売上高に占める割合は相当高かった。 オ販社は,傘下代理店の要請により商品を出荷するが,この段階で被控訴人会社は,販社に対し,代金請求権と手数料支払債務が発生する。この販社から傘下代理店への出荷の数量についても,被控訴人会社が事実上これに関わり,その指示をすることがあり,特にキャンペーン商品の場合には,それが顕著だった。販社から商品を受領した代理店は商品を顧客に販売し,その代金を回収したうえ,販社との代金及び手数料を清算す 上これに関わり,その指示をすることがあり,特にキャンペーン商品の場合には,それが顕著だった。販社から商品を受領した代理店は商品を顧客に販売し,その代金を回収したうえ,販社との代金及び手数料を清算する。その清算基準日は毎月20日である。前月の21日から当月20日までに販社が傘下代理店からの注文により商品を出荷した商品につき,商品代金と受託販売手数料の清算義務が発生し,基準日の翌々月5日に決済する。キャンペーン商品の決済方法は,所定の期間延長される。その清算方法は,商品代金と受託販売手数料の相殺である。商品が清算日までに顧客に販売できないときは,その未販売商品は1次代理店に残留することになる。この残留商品の代金・手数料を清算日に決済した場合は,残留商品は現実に販売が終了するまでは1次代理店が保有することになるが,本社の在庫としては計上されない(代理店の裏在庫)。 カ前記のように販社が保管する商品は,被控訴人会社の在庫であり,商品代金・受託販売手数料の清算義務は発生しない。したがって,販社が被控訴人会社から預かっている商品を本社に返す場合は,預かっていた商品を返すだけであり,特に清算義務等は生じない(これを返品と区別する意味で「返還」という。)。これに対し,1次代理店は,清算日までに顧客に商品を販売できなかった場合には,販社に返品の申入れを行い,代金支払義務を免れることができる。その場合,販社はそのコンピューターに返品入力するとその段階で販社及び本社に返品の効力が発生し,本社と販社間,販社と1次代理店間にそれぞれ代金と販売手数料の清算義務が発生する。 キもっとも,上記のように販社がその傘下代理店からの返品を受け入れると,表在庫が増大して与信枠がなくなり,ロックがかかることや,それが被控訴人会社の売上減につながり,被控訴人会 発生する。 キもっとも,上記のように販社がその傘下代理店からの返品を受け入れると,表在庫が増大して与信枠がなくなり,ロックがかかることや,それが被控訴人会社の売上減につながり,被控訴人会社がその受け入れを事実上拒む場合もあることなどから,各販社において,傘下代理店からの返品を受け入れながら,それを販社の在庫として抱え込むこともあった(販社の裏在庫)。また,被控訴人会社が販社からの返還,返品を受け入れても,それと同額の他の商品を販社に預託する場合(交換)も多かった。なお,被控訴人会社が販社を通じて受け入れる返品の中には,古くなった商品を廃棄処分(ディスコン)し,新たな商品と入れ替えるためのものもあった。これとは逆に,販社が,傘下代理店からの返品を受け入れると,清算金を返還しなければならないが,販社がそれを被控訴人会社に返品の処理をしても,商品代金と相殺されるだけであり,実際に代金の返還が受けられるわけではないため,資金繰りに余裕がない販社の中には,代理店からの返品を事実上拒否したり,交換の処理をする場合もあった。 ク 1次代理店が顧客に販売できなかった商品を全部残すか,又はいかなる商品を残すか等は,1次代理店の判断で決定することができるが,傘下の2次代理店や顧客からの注文に応じて迅速に商品供給ができるためには,当該1次代理店の能力,販売実績等を勘案し,必要と思われる商品を保有するのが通常である。このような適正な商品保有量(適正在庫)は,概ね決済サイトである45日から75日に販売可能な商品量,すなわち,約2か月分の販売量である。被控訴人会社は在庫管理のため,販社に対しては毎月実地棚卸しを行って確認し,1次代理店には半年に一度,実地棚卸しを実行させ,その内容を報告させて管理していたが,前記オのように本社で確認できない在庫(裏在 訴人会社は在庫管理のため,販社に対しては毎月実地棚卸しを行って確認し,1次代理店には半年に一度,実地棚卸しを実行させ,その内容を報告させて管理していたが,前記オのように本社で確認できない在庫(裏在庫)もあった。 (2) 控訴人と被控訴人会社との取引経過等前記第2の1の争いのない事実等に加え,証拠(甲3号証の1ないし3,4号証,5号証の1,6ないし9号証,13号証,20号証,38ないし45号証,47ないし50号証,53号証の1ないし3,乙1及び2号証,14号証,17ないし20号証,22号証,23号証の1,2,27号証の1ないし8,32号証の2,40号証)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア控訴人は,化粧品等の販売を目的として昭和61年9月22日に設立された有限会社であり,Aはその代表者である。Aは,昭和56年10月に被控訴人会社の2次代理店になり,昭和57年3月に埼玉中央販社傘下の1次代理店に昇格し,同年9月に4級になり,代理店名を新北本とした。Aの夫もそれまで勤めていた銀行を退職し,夫婦で代理店の経営に当たった。昭和59年9月に2級に昇級したのち,6か月の査定期間の売上実績6000万円を達成して昭和61年2月に販社に昇格した。昇格後,Aは,同年9月22日,控訴人を設立してその代表者となり,被控訴人会社との間で,ノエビア化粧品の委託販売を目的とする本件委託契約を締結した(甲11号証)。 イ Aは,販社に昇格する前に金融機関から営業資金等として,300万円くらいを借り入れていたが,昭和61年に販社に昇格後,次第にその借金が増えていき,平成3年度の期末(翌年2月20日現在,以下同じ。)にはそれが4868万円(万円未満切捨て,以下同じ。)に達した(甲38号証)。この借金の原因は必ずしも明らかでないが, ,次第にその借金が増えていき,平成3年度の期末(翌年2月20日現在,以下同じ。)にはそれが4868万円(万円未満切捨て,以下同じ。)に達した(甲38号証)。この借金の原因は必ずしも明らかでないが,控訴人は,昭和62年2月に事務所を新築しており,その建築資金の借入れのほか,控訴人から傘下代理店に出荷した商品代金の未回収分を控訴人が被控訴人会社に払わなければならない関係で資金を借り入れたものもあったと考えられる。なお,平成3年度の未収金は3076万円であり,期末在庫(上代価格で計算した表在庫,実価はその約半額,以下も同じ。)は2670万円であった。いざというときに在庫を引き揚げて未収金と相殺することができることを考えれば,財務内容としては,在庫の実価と未収金が拮抗していることが望ましいが,その観点からすると,未収金がかなり多い状態である。 ウ控訴人の平成4年度の期末の借入金は3466万円に減少し,未収金も3041万円となったが(甲39号証),平成5年度には期末借入金が4813万円となり,未収金も4658万円と増加し(甲40号証),期末在庫は8893万円となった。もっとも,同年度の被控訴人会社からの売上収入は3182万円に増加しており,控訴人は,同年度にゴルフ会員権を720万円で,外車を635万円で,それぞれ購入している。控訴人の平成6年度の期末借入金は3715万円,未収金は3993万円であり(甲10号証の1),在庫は6141万円と減少したが,平成7年度にはその期末借入金は3819万円とさほど変化はないものの,未収金は4311万円であり(甲10号証の2),期末在庫も8161万円と再び増加した。これは,未収金とのバランスはとれているものの,控訴人に対する被控訴人会社の与信枠が3000万円くらいであったことからすれば,在庫量としてかなり過 0号証の2),期末在庫も8161万円と再び増加した。これは,未収金とのバランスはとれているものの,控訴人に対する被控訴人会社の与信枠が3000万円くらいであったことからすれば,在庫量としてかなり過剰である。 エ平成7年12月当時,被控訴人の大宮支店は,控訴人の傘下の2次代理店である「新小松」と「松原3丁目」を5級に昇級させるため,商品の出荷数量を増やしたいとの意向であった。これに対し,Aは,無理に商品を出荷すると不正流通(バッタ屋等への横流し)の可能性があるとして,これに反対したが,聞き入れられなかった。その後,「新小松」による不正流通が明らかになり,Aは,平成8年8月2日,被控訴人Cから大宮支店に呼び出しを受け,責任を問われて,「新小松」への販売手数料全額を支払うことになった。また,控訴人は,同月5日,販社長手当16万円の13か月分208万円の辞退書を書くよう命じられ,これに応じざるを得なくなった。これらの減収もあり,控訴人の平成8年度の期末借入金は5603万円となり,未収金も5733万円となった(甲10号証の3)。同年の期末在庫は1億0596万円であるが,傘下の代理店の及び控訴人自身の裏在庫を合わせるとそれらの在庫はさらに多額になった。もっとも,その額を的確に明らかにする資料はない。 オ被控訴人Dは,平成8年7月に被控訴人の大宮支店の副支店長として赴任し,被控訴人Cから販社である控訴人を専属的に担当するよう命ぜられた。被控訴人Dは,平成9年1月に控訴人のAと控訴人の経営,営業方針,傘下代理店の指導・育成方針等を打ち合わせた(甲47号証)。その際,被控訴人Dは,控訴人に対し,その1次代理店であるMを昇格後に形にする,すなわち,現段階では必ずしも昇格に見合う十分な販売能力がないけれども,昇格後にそれに見合う販売力を付けさ 甲47号証)。その際,被控訴人Dは,控訴人に対し,その1次代理店であるMを昇格後に形にする,すなわち,現段階では必ずしも昇格に見合う十分な販売能力がないけれども,昇格後にそれに見合う販売力を付けさせたい旨を話した。また,当時,被控訴人Dは,控訴人の傘下の代理店の流通在庫が8000万円くらいであり,在庫として過剰であること,また,控訴人に6000万円くらいの負債があって,その資金繰りに余裕がないことも知っていた。当時,被控訴人Dは,それに対する方策として,実際に販売する商品の数量を増やして売上を伸ばし,徐々に在庫を解消するとともに,負債も減らしていくという考えだった。 カ平成9年3月10日,被控訴人Dがサマーキャンペーンの注文を取りに来た際,控訴人代表者のAが流通在庫が多いので,今回はそれを販売したいので勘弁してほしいと断ったが,被控訴人Dは,セット数をメモ書きしたものをAに渡し(甲13号証),同月14日までに正式な注文の書面を持ってくるよう指示した。その後,Aは,後記のようなJの返品問題もあり,キャンペーン商品の注文を出せる状況ではなく,注文票を出さなかったが,同年4月7日,被控訴人会社から前記キャンペーン商品200セットが送られてきた。控訴人は,これを出荷せず,販社の在庫として保管した。 キ平成9年3月11日,在庫負担による経済的な事情から控訴人の傘下代理店の「久保島第3」の代表者JからAに代理店の解約申し出があり,その夫からは脅迫的で強硬な返品要求があった。当時,同代理店の在庫としては,被控訴人会社に報告していた表在庫が600万円,未報告の裏在庫が900万円あった。控訴人のAがその対処を大宮支店に相談したところ,同支店の被控訴人Cは,表在庫の650万円については返品を認めて控訴人と相殺の形で代金の清算をするけれども 00万円,未報告の裏在庫が900万円あった。控訴人のAがその対処を大宮支店に相談したところ,同支店の被控訴人Cは,表在庫の650万円については返品を認めて控訴人と相殺の形で代金の清算をするけれども,裏在庫の900万円については,前記代理店が以前に控訴人以外の販社に属していたこともあるので,その事実関係をよく確認のうえ返品に応じるか否かを検討した方がよいと話した。ただ,当時,Aは,控訴人の資金繰りが苦しい上に,このような問題が起き,追いつめられたような状態になっていた。 クその後,控訴人は,大宮支店の被控訴人Dに前記の返品分については,出荷商品の代金との相殺ではなく,控訴人に返金してほしいと頼んだが受け入れられなかった。 控訴人代表者のAはその旨をJに話したが,同人の夫は納得せず,大宮支店に直接苦情を申し入れるなどしたため,平成9年4月20日,控訴人の事務所で被控訴人Dが立会いの上,AとJ夫婦らとで話し合いが行われた結果,控訴人からJへの返金額を約567万円とし,そこから既払分を差し引いた約470万円を同年5月10日までに控訴人が返金することになった。ただ,その期日までに履行がされなかったため,同年5月30日にAの夫とJの夫との間で再度念書(甲26号証の5)が取り交わされ,それに基づき,前記返金額を被控訴人会社が立替払いする形で,その清算がなされた。 ケ前記のような経過で,平成9年3月ころから,Aは控訴人の資金繰り等の問題で,心理的に追いつめられた状態になるとともに,被控訴人会社の販売方法等に関して不信感を抱くようになっていた。その頃,Aは,ピリカの販売に携わっていた元の被控訴人の大宮支店長Eの来訪を受け,ノエビアをやめてピリカをやってはどうかとの勧誘を受けた。 そこで,Aは,ピリカの代表者Kに相談したところ,まず,その顧問弁 頃,Aは,ピリカの販売に携わっていた元の被控訴人の大宮支店長Eの来訪を受け,ノエビアをやめてピリカをやってはどうかとの勧誘を受けた。 そこで,Aは,ピリカの代表者Kに相談したところ,まず,その顧問弁護士である濱崎憲史(本訴の控訴人代理人,濱崎弁護士)に相談するよう勧められた。そこで,Aが濱崎弁護士に相談したところ,同人から,まず在庫問題を解決して販社と傘下の代理店が窮状を脱出して健全な取引に戻ること,今,一挙にピリカに切り替えれば,傘下の切り崩しにかかられ,組織が崩壊してしまい,ピリカに転向しても意味がないので,組織を立て直してからノエビアに残りたい人は残し,できるだけ円満に行くよう努力してはどうかとの助言を受けた。 コ前記濱崎弁護士の助言を受け,Aは大宮支店に在庫の返品の申入れをしたが,受け付けられなかった。そこで,Aは,L弁護士に依頼し,平成9年5月1日付で控訴人及びその傘下代理店のすべての在庫並びに同年4月4日に配達納品された前記キャンペーン商品を返品する旨の内容証明郵便(乙1号証)を送付した。これに対し,被控訴人会社は,代理人弁護士小島将利を通じて,本件委託契約等に基づき,控訴人から具体的な在庫商品の返品申し出があり次第,これを受諾して実施する旨を回答した(乙2号証)。 サ Aは,濱崎弁護士の助言を受け,一旦,在庫を整理して再出発したいと考えていたものの,過去の例や他の販社の話などからすれば,返品は無理ではないかとの気持ちもあり,また,大量の返品をする以上,本件委託契約を解約される可能性もあると考え,その場合にはピリカに転向するのもやむを得ないと考えていた。平成9年4月ころ,Aは,その実母であるNをピリカの販売員に登録させた。また,Aは,同月下旬,Fなど控訴人傘下の1次代理店の者数名を集め,被控訴人会社のシステムに 向するのもやむを得ないと考えていた。平成9年4月ころ,Aは,その実母であるNをピリカの販売員に登録させた。また,Aは,同月下旬,Fなど控訴人傘下の1次代理店の者数名を集め,被控訴人会社のシステムに不満を感じており,弁護士に依頼して返品交渉をしていること,これからは在庫を抱えないで仕事をしたいが,万一,控訴人が被控訴人会社から解約された場合には,ピリカの仕事をする考えであるとして,その内容やシステムを説明した。そして,Aは,同年5月1日ころ,Fにピリカ化粧品の購入申込書(乙9号証の1)を交付した。同申込書の紹介者欄には前記Nの氏名が記載されている。 シ被控訴人Dは,平成9年5月13日ころ,FからAがピリカ化粧品の購入を仲介したと聞き,前記購入申込書の写しを入手した。被控訴人会社の大宮支店では,Aの動向を調査すべく,被控訴人Dが,同月24日及び26日,Gに対し,ピリカに関するAとの会話をカセットテープに秘密に録音するよう依頼した(乙13号証)。Gは,同月26日,その依頼に基づき,控訴人の事務所を訪れたところ,Aは,同人にピリカ化粧品やその販売システムを説明して,その販売員登録を勧めるとともに,そのシステムの方が被控訴人会社のそれよりも利益を上げやすいこと,控訴人がノエビア化粧品とピリカ化粧品の両方について代理店等から注文を受けようと考えていること,そのことは被控訴人会社には内緒であることなどを話した。 ス被控訴人C及び同Dは,平成9年5月27日,A及びその夫を被控訴人大宮支店に呼び,在庫がない状態でどのように販社の業務を続けるのかを確認したところ,受注・発注でやっていくので問題ないと答え,ピリカの話は出てこなかった。そこで,被控訴人Dは,さらに事実関係を確認すべく,H及びIに対し,控訴人の事務所を訪れてAのピリカへの関与に 確認したところ,受注・発注でやっていくので問題ないと答え,ピリカの話は出てこなかった。そこで,被控訴人Dは,さらに事実関係を確認すべく,H及びIに対し,控訴人の事務所を訪れてAのピリカへの関与につき調査するよう依頼した。Aは,同月28日から29日にかけて控訴人の事務所を訪れた両名に対し,ピリカの販売システムを説明し,ピリカ化粧品の購入申込書(乙10及び11号証の各2)の用紙などを交付し,その後,その記載済みの申込書を受領した。 セ平成9年6月3日,被控訴人Cと同Dは,控訴人の事務所を訪れ,Aにピリカへの関与を尋ねたが,同人はこれを否定した。被控訴人会社は,控訴人が被控訴人会社を偽ってピリカ化粧品を販売し,また,所属代理店に積極的にその取扱いを勧誘していることを理由に,平成9年6月6日付内容証明郵便(甲9号証)で,本件委託契約の解除を通知した。なお,控訴人は,その傘下の1次代理店の一部に対し,2次代理店との契約を解除するよう指示していたところ,同年6月27日に152名の2次代理店からの解約依頼書が被控訴人大宮支店に提出された。このうち,106名分は,同月5日以前に作成されたものである。 2 被控訴人らの不法行為の有無(1) 被控訴人会社の販売システムの問題点ア前記認定事実からすれば,被控訴人会社の販売システムは基本的に化粧品の連鎖販売取引である。そこでは昇格制度が採用され,売上げに応じて2次代理店から1次代理店へ,1次代理店から販社へと昇格する制度が採られている。そして,その昇格に伴って取得できる手数料率が増大するとともに,傘下の代理店の数も幾何級数的に増加し,それに伴って販売利益は急激に上昇していく。加えて,前記のような昇格あるいは代理店の級の上昇すなわち昇級に際しては,海外旅行や一流ホテルで行われる全国大会への ,傘下の代理店の数も幾何級数的に増加し,それに伴って販売利益は急激に上昇していく。加えて,前記のような昇格あるいは代理店の級の上昇すなわち昇級に際しては,海外旅行や一流ホテルで行われる全国大会への招待などの特典が設けられており,これも各代理店や販社にとっては魅力的な誘因になっていると考えられるが,これらの昇格及び昇級の基準はすべて一定期間の売上額によって定められる。また,キャンペーン商品などでは,そのキャンペーンの都度,各販社あるいは代理店ごとの販売目標が設定される場合も多く,それらの目標が達成された場合には,達成費などの報償が受けられることになっていた。 イ上記のような販売システムのもとでは,いきおい,その販社あるいは代理店の中に,目標達成のために無理に売上げを増やそうとしたり,あるいは,実際には売上げがなくても,売上げがあったように架空の販売実績を計上したりするものが生じることは見やすい道理である。また,そのような架空の売上げを計上すれば,それに見合う売上代金は販社を経て被控訴人会社に支払わざるを得ないのであるから,それに伴う資金繰りに迫られることになり,金融機関等からの借入れも増えていくことになる。ただ,このような目的の融資が簡単に承認されるわけでもないので,中には,金融機関をいつわってマイカーローンを利用して借り入れたり,夫の名義でカードローンを利用していた販社もあったし,また,約定どおりの返済が滞り,実現性のない収支計画を金融機関に示して,その追及をかわしている実態もあった(当審での控訴人代表者)。 ウむろん,上記のような形で,販社あるいは代理店が無理に売上げを伸ばし,あるいは実体に合わない販売実績を計上すれば,それがいずれは自らの経営を圧迫する可能性が高いことは自明のことである。そうすると,そのような不健全 ような形で,販社あるいは代理店が無理に売上げを伸ばし,あるいは実体に合わない販売実績を計上すれば,それがいずれは自らの経営を圧迫する可能性が高いことは自明のことである。そうすると,そのような不健全な取引に陥ることなく,堅実な業務運営をすべきことは基本的に各代理店及び販社の自己責任である。 しかし,上記のような販売システムの中に埋没し,日夜,その実績を挙げようと努力している販社や代理店にとっては,いわば他人の意思で動かされているようなものであり(当審において控訴人代表者は,本件のような不健全な状態が生じた原因の一つは,自分ががまんすればよい,自分に責任があると思って,本音で闘えない自分がいたことにもあると供述しているが,この供述は,本文で述べた「他人の意思で動かされている」実態を如実に物語っているものと認められる。),冷静な立場でそのような堅実な業務運営を目指すことは実際上困難な面があると考えられる。 エこれに対し,被控訴人会社は,上記のような問題を含む販売システムを利用し,その上に構築された販社及び代理店の販売網を利用して収益を挙げ,それを会社存立の基盤としているものであるし,その人的・物的な資源及び組織力等からしても,その傘下の販社及び代理店の経営内容の問題点等を見抜き,それに対する対応策を立てることができる立場にあるものと考えられる。 そうすると,被控訴人会社は,その販売システムが不健全な形に陥ることのないよう,その傘下の販社及び代理店に対し,いたずらにその昇格等の意欲を煽り立て,あるいはその営業実績を競うあまり無理な販売活動をするなどして,その経営基盤を危うくしたりすることのないよう指導監督していくべき責任がある。 なお,被控訴人会社の傘下の販社及び代理店は,ノエビア化粧品の販売が主たる存立の基盤であり,化粧品以外の商 るなどして,その経営基盤を危うくしたりすることのないよう指導監督していくべき責任がある。 なお,被控訴人会社の傘下の販社及び代理店は,ノエビア化粧品の販売が主たる存立の基盤であり,化粧品以外の商品を扱っていたとしても,その売上げの比率が高かったとは思われないのであるから,実質的にはこれらの販社及び代理店は,被控訴人会社の子会社あるいはその1部門ともいえる関係であった。このことは,被控訴人Dが大宮支店において,控訴人専属の担当者として,控訴人代表者と日常的に密接に連絡を取り,その傘下の各代理店をどのように育成するか,その昇級,昇格等についても,各経営者の人柄,能力,性格傾向等にまで立ち入って,種々の指示をしていること(甲47号証,当審での控訴人代表者)からも裏付けられる。 オところが,被控訴人会社においては,販社の預託商品が一定額以上に増大するのを防ぐため,コンピューター上,入荷入力ができなくなる措置(ロック)はとられていたものの,前記1(1)認定のように,キャンペーン商品につき,被控訴人会社が各代理店ごとの割当数量を決定して販社にその旨の指示をしたり,同(2)カの例にみられるように,販社の意向を無視する形でキャンペーン商品を割り当てたり(控訴人がいうところの押込み販売,これが他のいかなる販社,代理店でどの程度行われていたかを的確に認めるに足る証拠はないが,程度の差はあれ,他にも同様のことはあったものと推認される。)していたほか,同(1)ケ認定のように,被控訴人会社において,返品受入れを事実上拒んだり,販社からの返還や返品を受け入れても,それと同額の商品を販社に預託する場合(交換)も多かった。 もっとも,本件委託契約上は,これらの商品を割り当てられたからといって,それを無条件で受け入れなければならないわけではないし,返還や返品 ,それと同額の商品を販社に預託する場合(交換)も多かった。 もっとも,本件委託契約上は,これらの商品を割り当てられたからといって,それを無条件で受け入れなければならないわけではないし,返還や返品についても,交換という形をとることを拒否することも可能であったと認められる。しかし,継続的に取引を続ける中で,親会社的な立場にある被控訴人会社の担当者からの割当て数量の指示や,返品の申入れについて他の商品との交換の要請を断ることは実際問題としては難しい面があったと考えられる。 カ前記(2)認定のように,控訴人は,平成9年1月当時,6000万円近い借入金があり,未収金も5733万円に達し,また,傘下の代理店及び販社である控訴人の裏在庫を合わせると1億円をかなり上回る流通在庫を抱えていた。これらの借入金が生じたのは,事務所の新築やゴルフ会員権の購入などによる面があったと考えられるし,その在庫が膨らんだのも,控訴人がその販売能力に見合わない商品を注文したなど,控訴人(A)自身の問題に起因する面も大きいと思われる。しかし,その背後には,上記のような被控訴人会社の販売システムの問題があり,それに起因する面も大きかったと考えられる。 なお,乙40号証には,被控訴人会社の大宮支店の主要販社9社の流通在庫は,概ね2か月分前後であるのに対し,控訴人のみが7.6か月と突出して多いとの記載があるけれども,これは同支店内の販社すべてを網羅したものではないし,当審における控訴人代表者の供述からしても,控訴人以外にも多額の在庫を抱えている販社があったものと推認されるのであるから,この点も上記の判断を左右するに足るものではない。 (2) 被控訴人会社の控訴人に対する対応についてア前記のように,控訴人は平成9年1月ころの時点で,6000万円近い借入金があ あるから,この点も上記の判断を左右するに足るものではない。 (2) 被控訴人会社の控訴人に対する対応についてア前記のように,控訴人は平成9年1月ころの時点で,6000万円近い借入金があり,未収金も5733万円に達し,また,1億円を上回る流通在庫を抱えており,早急にその経営状態の改善を図る必要があった。 イところが,大宮支店の被控訴人Dは,そのような状況下にあっても,十分な販売実績のない代理店を昇格させたうえ,昇格後のそれに見合う販売力を付けさせるなどとAに述べるなど,そのような被控訴人会社の販売システムの問題点を踏まえた指導をしていた形跡が認められない。のみならず,平成9年1月ころには,控訴人が上記のように資金繰りに余裕がないことを知りながら,それに対する方策として,さらに販売する商品の数量を増やして,売上げを伸ばし,回収資金の増加で在庫の解消を図るなどの方針をとった。 これは,控訴人のこれらの過剰在庫が直接には控訴人が実際の販売能力に見合った以上の商品を仕入れるなどしてきたことによるものであること,その背後には前記のような被控訴人会社の販売システムの抱える問題点があることに目をふさいだ対応であるといわざるを得ない。このような対応策では,被控訴人会社の販売量は減らず,大宮支店の営業実績は落ちないにしても,控訴人の過剰在庫は一向に解消されず,資金繰りが圧迫される状態が続き,経営が健全化されないことは明らかであり,到底,実態に見合った解決策とはいえない。 ウそれに加えて,被控訴人Dは,平成9年3月,控訴人代表者のAが流通在庫が多いので,今回は,サマーキャンペーン商品の発注を勘弁してほしいと述べているにもかかわらず,その十分な了解も得ないまま,同年4月7日にキャンペーン商品を控訴人に送り付け,Aを困惑するような状況 庫が多いので,今回は,サマーキャンペーン商品の発注を勘弁してほしいと述べているにもかかわらず,その十分な了解も得ないまま,同年4月7日にキャンペーン商品を控訴人に送り付け,Aを困惑するような状況に追い込んだ。また,ちょうどそのころ起きたJからの在庫の返品要求に対する対応も,当時,控訴人が資金繰りに窮する状態であったため,出荷代金との相殺ではなく,返金を頼んでいるにもかかわらず,それを聞き入れないなど,資金繰りに苦しんでいる控訴人に対し,その必要に応じた対応策を講じなかった。これらも,上記のような問題点を無視した形式的な対応であるといわざるを得ない。 エ前記のような被控訴人会社大宮支店の控訴人に対する一連の対応をみれば,控訴人代表者のAにおいて,当時は,相当程度,心理的に追いつめられた状態になっていたこともあり,被控訴人会社との取引を続けるとすれば,一旦,全商品の返品,引取りを求めるほかないと考えたことは無理からぬ面がある。そして,それが受け入れられなかったため,弁護士を通じて内容証明郵便で返品の申入れをしたこともやむを得ない措置であったと考えられる。ところが,それに対して,被控訴人会社は,そこまで追いつめられた控訴人代表者Aの真意を確認し,対応策をともに検討するなど,それに対して真摯な対応をしようとしなかった。この段階で,双方の話し合いによって,過剰在庫について,ある程度の整理ができれば,控訴人の経営を健全化することは十分可能であったと認められるし,Aがピリカの取扱いを考えるということも起きなかったと考えられる。 オ上記のような状況を踏まえて考えれば,控訴人において,前記のような問題を含む化粧品の販売システムを脱却し,場合によっては他の系列の化粧品の販売システムに移行したいと考え,その取扱いを検討したからといって,その な状況を踏まえて考えれば,控訴人において,前記のような問題を含む化粧品の販売システムを脱却し,場合によっては他の系列の化粧品の販売システムに移行したいと考え,その取扱いを検討したからといって,その程度いかんにかかわらず,それが直ちに本件委託契約上の債務不履行に当たるとはいえないと考えられる。 カ前記1(2)の事実からすれば,平成9年春ころ,Aがピリカへの移行を検討し,それに向けての活動を開始していたことが認められるけれども,その一方で,同人は,ノエビア化粧品の販売活動を続けたいという希望も有していたと認められる。控訴人は,それまで15年以上にわたりノエビア化粧品の販売を続けてきて,その間,相当の収入も上げてきたものであるから,被控訴人会社との取引を打ち切り,他の化粧品を取り扱うということはたやすく決断できることではなかったと考えられる。そして,Aは,そのころから,実母Nをピリカの販売員に登録したり,みずからFらにピリカのシステムを説明したり,その購入申込書を交付するなどしているけれども,未だ実際にその販売活動を開始していたわけではない。また,控訴人の傘下の代理店であったFらも,Aから一応の説明を受けたとはいえ,その段階では,未だAの態度が固まっていなかったこともあり,被控訴人会社の代理店を離脱するか否かも未定の状態であった。なお,控訴人がその傘下の1次代理店の一部に対し,2次代理店との契約を解除するよう指示し,これに応じて相当数の解約依頼書が集められていたことは前記1(2)認定のとおりであるけれども,それが実際に被控訴人会社に提出されたのは,契約解除後のことであるし,Aの話を聞いた各代理店がいわば過剰な反応を示したということも考えられるのであるから(当審での控訴人代表者),このことから,直ちにAの被控訴人会社からの離脱意思が明確 のは,契約解除後のことであるし,Aの話を聞いた各代理店がいわば過剰な反応を示したということも考えられるのであるから(当審での控訴人代表者),このことから,直ちにAの被控訴人会社からの離脱意思が明確なものであったとはいえない。 キところが,被控訴人会社では,Fを通じてAがピリカへの移行の動きを始めたことを察知するや,その背景に控訴人が前記のように被控訴人会社の販売活動を続けてきたことによって債務や在庫を累積させたという問題があるにもかかわらず,また,被控訴人会社としては,前記(1)エのような,その傘下の販社及び代理店についての指導監督責任があるにもかかわらず,その原因を探知して,問題点を解消する努力をすることなく,控訴人の傘下の代理店等を通じてその動向を探らせたばかりか,積極的にピリカ化粧品の購入申込みをさせるなどして,本件解除に及んだものである。被控訴人会社がこのような行動に出たのは,今後,控訴人のような形で返品を申し入れる販社が続いた場合には,被控訴人会社の販売システムが崩れることを懸念し,それに対する報復としてなされたという面もあると考えられる。 クこのようにみてくると,本件におけるAの行為が直ちに本件委託契約上の債務不履行として,契約解除事由に当たるということはできないし,仮に形式的には解除事由に当たるとしても,その解除権の行使は著しく信義則に反するものというべきである。 (3) 被控訴人らの不法行為についてア被控訴人会社の化粧品販売システムが前記(1)のような問題点を多く抱えるものであったこと,被控訴人会社は,そのような問題点を踏まえ,傘下の販社及び代理店に対し,適切な指導監督をすべき責任があったにもかかわらず,それを真摯に改善する努力をしないまま,傘下の販社及び代理店を通じての売上げの拡大を図る方針 ,そのような問題点を踏まえ,傘下の販社及び代理店に対し,適切な指導監督をすべき責任があったにもかかわらず,それを真摯に改善する努力をしないまま,傘下の販社及び代理店を通じての売上げの拡大を図る方針を続けてきたこと,その中で大宮支店の販社であった控訴人が前記のような深刻な経営危機に陥っていたにもかかわらず,前記(2)のようにその在庫解消策等,根本的な経営改善策をとることもなく,さらに販売の拡大を目指して控訴人から申入れのあった返品要求にも応ぜず,やむなく控訴人が代理人弁護士を通じ,内容証明郵便で返品を申し入れるや,控訴人がピリカの取扱いを検討し始めていたことを利用し,その申し入れについての報復的措置として,本件委託契約違反の証拠を収集して本件解除に及び,以後,控訴人との取引を拒絶したものである。その結果,控訴人が長年培ってきた販売網は崩壊するに至った。 イこのような被控訴人会社の本件の一連の対応は,前記のような販売システムを構築し,それに基づく販売網を有する被控訴人会社において,その相手方である控訴人が被控訴人会社以外に容易に取引先を見出し得ないような事情の下に,取引の相手方の事業活動を困難に陥らせる以外に格別の理由がなく,取引を拒絶したものというべきであり,独占禁止法19条,公正取引委員会告示第15号(一般指定)2項の不当な取引拒絶に該当するおそれがあり,独占禁止法19条の不公正な取引方法に該当する可能性が高い。また,同法条に該当しないとしても,その趣旨に反する行為であることは明らかである。 このように本件解除は,独占禁止法19条あるいはその趣旨に違反するものであること,そして,前記(2)のように,それに至った一連の経緯からして,著しく信義則に反するものであることなどからすれば,本件解除を理由として,被控訴人会社が控訴人との本件 はその趣旨に違反するものであること,そして,前記(2)のように,それに至った一連の経緯からして,著しく信義則に反するものであることなどからすれば,本件解除を理由として,被控訴人会社が控訴人との本件委託契約に基づく取引を拒絶したのは,違法に控訴人の同契約上の受託者としての地位を侵害するものであり,不法行為に当たるというべきである。 また,被控訴人C及び同Dは,平成9年3月当時,大宮支店において,支店長及び副支店長の地位にあったものであり,被控訴人会社の基本的な方針に従ってしたものではあるが,前記のような被控訴人会社の本件解除の意思決定に直接関わったものと認められる。そして前記認定したように,不当な取引拒絶に加担したものと認められる。そうすると,上記両名は,被控訴人会社とともに不法行為責任を負う(共同不法行為)。 したがって,被控訴人らは,後記の控訴人の被った損害を連帯して支払う義務を負う。 (4) 損害についてア証拠(甲10号証の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,本件解除の前の3年間で,受託販売手数料として年平均2078万1752円の収入を得ていたこと,その代表者のAは本件解除当時満38歳であったことが認められる。 そうすると,本件解除当時,控訴人の資金繰りが逼迫し,その経営を続けるためには,相応の努力が必要とされ,一時期は減収が生じる可能性があったことなどを考慮しても,本件解除がなければ,その後少なくとも5年程度は,ひかえめにみても,上記金額の約半額である年間1000万円程度の収入を挙げることができたと考えられる。そうすると被控訴人らの不法行為による控訴人の損害は,5000万円を下まわることはないものと認められる(これについては,既に損害として発生しているものであるから,中間利息の控除の必要はない。)。したが すると被控訴人らの不法行為による控訴人の損害は,5000万円を下まわることはないものと認められる(これについては,既に損害として発生しているものであるから,中間利息の控除の必要はない。)。したがって,その内金500万円の支払を求める控訴人の請求は理由がある。 イ上記のような被控訴人会社の行為によって,控訴人がその法人としての名誉や信用が毀損され,種々の無形の損害が生じていることは明らかである。前記のような本件の一連の経過を考慮すれば,その損害は500万円を下まわることはないものと認めるのが相当であり,この点についての控訴人の慰謝料請求も理由がある。 ウなお,本件解除に至るについては,控訴人の側にもピリカの関係者との接触などという,表面的,形式的にみれば,本件委託契約上の信頼関係を損ないかねないような言動があり,それが本件解除につながったものであること,また,控訴人のこのような言動の原因となった資金繰りの問題についても,代表者の個人的な用途のために借入債務を増大させたり,必ずしもその販売能力に見合わない商品を注文するなどして在庫を増加させたという,控訴人自身の経営姿勢に起因する面もあることなどを考慮すれば,上記の損害については過失相殺をすることも考えられる。 しかし,その過失相殺をしたとしても,その認容額が上記の1000万円を下回ることはないと認められる(なお,控訴人は,本訴で,逸失利益の内金500万円と慰謝料500万円を請求しているけれども,弁論の全趣旨によれば,仮に後者が過失相殺によって500万円以下に減額されるとすれば,その部分については逸失利益による損害を拡張して請求する意思であると認められる。)。そうすると,この点も本件の結論に影響を及ぼすものではない。 (5) まとめ以上のとおり,不法行為を理由 の部分については逸失利益による損害を拡張して請求する意思であると認められる。)。そうすると,この点も本件の結論に影響を及ぼすものではない。 (5) まとめ以上のとおり,不法行為を理由に被控訴人らに対し,連帯して1000万円及びこれに対する不法行為日である平成9年6月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める控訴人の請求は,理由がある。そこで,控訴人の請求を棄却した原判決はこれを取り消し,控訴人の請求を認容することとする。 よって,主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結の日平成14年10月22日)東京高等裁判所第19民事部裁判長裁判官淺生重機裁判官及川憲夫 裁判官原敏雄

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る