主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告Aに対し,7000万円及びこれに対する平成12年10月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,360万円及びこれに対する平成12年10月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告の設置管理するリング式ブランコの瑕疵により,又は,被告の職員による違法な公権力の行使により,Cが死亡したとして,同人の母である原告A,弟である原告Bが,被告に対し,国家賠償法1条又は2条に基づいて,損害賠償を求めた事案である。 1 当事者間に争いのない事実(1) 原告Aは,C(死亡時8歳)の母親であり,原告Bは,Cの弟である。なお,Cには,原告Aと離婚したDが実父として存在する。 (2) Cは,平成12年10月15日(日曜日)午後3時ころ,宮城県気仙沼市所在の気仙沼市立a保育所兼b児童遊園(本件児童遊園)において,被告によって設置されたリング式ブランコ(本件ブランコ)をつなぎ止めていたビニールロープが本件ブランコの手すりに通されて首に絡み,宙づりになっているところを付近住民に発見され,救急車で公立気仙沼総合病院に搬送されたが,同日午後4時10分,窒息による死亡が確認された(本件事故)。 (3) 本件児童遊園は,被告が,気仙沼市児童厚生施設設置条例(昭和39年条例第16号)2条によって設置し,「b児童遊園」の名称で児童の使用の用に供している施設である。敷地内には「a保育所」が設置運営されている。本件児童遊園は,平日は午前8時30分から午後5時15分まで,第1,第3土曜日は午前8時30分から午後零時30分まではa保育所の園庭として使用され,保育所園児以外の者は自由 」が設置運営されている。本件児童遊園は,平日は午前8時30分から午後5時15分まで,第1,第3土曜日は午前8時30分から午後零時30分まではa保育所の園庭として使用され,保育所園児以外の者は自由に立ち入ることはできない状態になっているが,それ以外の時間は,日中夜間とも一般に開放され,誰でも出入りできる状態で管理されていた。 本件児童遊園内には,被告によって,北東側フェンスから約1.1メートル,南東側フェンスから約1.2ないし1.7メートルの地点に本件ブランコが設置されているほか,滑り台,鉄棒,グローブジャングル,遊動木,回旋塔,4連ブランコ等の遊具が設置されていた。 (4) 本件ブランコは,支柱によって支えられた梁に2つの吊り金具でつるされていて,対面するベンチ状の座席があるかご部分を振り子状に前後に揺らして遊ぶ遊具である。 本件ブランコは,2人がけ座席に対面して4人が座ることのできる構造であり,同じものが北東側と南西側に並んで2基設置されている。 支柱の高さは約1.82メートルであり,支柱は三角形の鉄柱が3対立ち,各上部頂点に梁として一本の鉄棒が渡されていて,支柱と支柱の間に,2つの吊り金具で本体部分が梁と連結されている。 (5) 本件ブランコは,本件事故発生直前まで,2基ともそれぞれに支柱と本体部分で4箇所ずつ,ビニールロープを用いてつなぎ止められていて使用されていたものであるが,本件事故当時,北東側ブランコの西角だけほどかれており,このビニールロープがCの首に巻き付いていた。 ビニールロープは被告の設置運営しているa保育所の備品であり,ブランコの支柱と本体部分をつなぎ止める作業は,被告の職員であるa保育所職員が日常的に行っていた。 2 争点(1) 本件ブランコの設置管理の瑕疵(国家賠償法2条)の有無(争点1)(2) 被告の ,ブランコの支柱と本体部分をつなぎ止める作業は,被告の職員であるa保育所職員が日常的に行っていた。 2 争点(1) 本件ブランコの設置管理の瑕疵(国家賠償法2条)の有無(争点1)(2) 被告の職員が本件ブランコをビニールロープでつなぎ止めたことの違法性及び過失(国家賠償法1条)の有無(争点2)(3) 損害額(争点3) 3 争点に対する当事者の主張(争点1についての原告らの主張)(1) 国家賠償法2条1項にいう「公の営造物の設置又は管理に瑕疵」があるとは,公の営造物が通常備えるべき安全性を欠く場合をいい,その判断は,公の営造物の構造,用法,場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的かつ個別的に判断すべきものである。 (2) 本件ブランコを含むリング式ブランコは,全国で危険性が指摘されていた遊具である。 本件ブランコを撤去するか金具で完全固定すれば,安全対策として適切であったが,被告は,その危険性を回避するために,ビニールロープでつなぎ止めて固定するという方策をとった。しかし,このビニールロープによるつなぎ止めは,Cのような女子児童が容易にほどくことが可能なものであった。一部のつなぎ止めがほどかれた本件ブランコは,危険性を帯びた遊びに転用される可能性があり,かつ,本件ブランコを揺すった際に乗っている児童に不規則な動きにより衝撃を与えるような遊具であったのである。 (3) したがって,本件ブランコは,常時監視する者のいない児童遊園における遊具が通常備えるべき安全性を備えていないというべきであって,「公の営造物の設置又は管理に瑕疵」があったというべきである(国家賠償法2条1項)。 (4) そして,そのように,ビニールロープによる本件ブランコのつなぎ止めが不十分であったため,Cらがブランコを揺すったりビニールロープに乗ったりする があったというべきである(国家賠償法2条1項)。 (4) そして,そのように,ビニールロープによる本件ブランコのつなぎ止めが不十分であったため,Cらがブランコを揺すったりビニールロープに乗ったりするなどの遊びを誘発する結果となり,ビニールロープのつなぎ止めが一か所支柱側から自然にほどけ,あるいはCによってほどかれ,Cによってビニールロープの一端を肩ないし上腕の上から胸に巻き付けた上でひじ掛け手すり又はリング補強柱に巻き付けられた。この状態でCは踊り場に立ってブランコを揺すり,ブランコが不規則に揺れたために衝撃を受け,あるいはその結果バランスを崩して転倒した。Cが転倒する際,肩又は上腕部からビニールロープが滑ってCの首に絡み,一気に強い力で締め上げられて窒息して死亡した。 このように,Cの死亡という結果は,本件ブランコがビニールロープでつなぎ止められたことによって危険性を帯びた遊びに転用される可能性があり,かつ,本件ブランコを揺すった際に乗っている児童に衝撃を与えるような遊具となったことから生じたものである。 (争点1についての被告の主張)(1) 公の営造物の設置,管理に瑕疵があるか否かは,営造物の本来の用法を前提として判断すれば足りるものである。 本件ブランコを含むリング式ブランコは,1人又は複数の児童が乗り込んで第三者(たとえば保育士)が押して初めて作動するものである。リング式ブランコは,一度作動するとブランコが重いため重量反動が大きく,したがって揺れも大きくなるため,その大きな揺動が事故につながる旨の指摘もされている。 本件児童遊園内に設置されているb保育所は,平成9年4月から3歳児の保育を受け入れ始めたが,そのころより,本件ブランコの大きな揺動から保育児童を守るための措置が必要となった。被告の職員は,その措置として,本件ブラン 設置されているb保育所は,平成9年4月から3歳児の保育を受け入れ始めたが,そのころより,本件ブランコの大きな揺動から保育児童を守るための措置が必要となった。被告の職員は,その措置として,本件ブランコの四隅をビニールロープで支柱につなぎ止める措置をとった。この措置は,本件ブランコの可動範囲を制限するので,安全対策として適切である。 原告らは,本件ブランコを撤去するか金具による完全固定の方法をとるべきであったと主張するが,前記のとおり本件ブランコの可動範囲を制限すれば安全対策としては十分であって,仮に金具による完全固定の方法をとると逆に保育児童の手足が挟み込まれる危険が発生しかねず,適切でない。 (2) 原告ら主張の,Cの死亡経緯は否認ないし争う。 Cは,自ら本件ブランコをつなぎ止めているビニールロープを首に巻き付けたのであり,その結果,窒息死するに至ったものである。そのような態様で遊ぶという行為は,本件ブランコの設置管理者である被告が通常予測し得ない行為である。本件事故は,このような異常な方法で本件ブランコを使用した結果発生したものであって,通常の使用の結果発生したものではないから,被告に責任はない。 (争点2についての原告らの主張)(1) 本件ブランコをつなぎ止めていたビニールロープは,ブランコ利用者が揺らすことにより,容易に緩み得る状態にあった。また,本件児童遊園の利用者には冒険心旺盛な児童が存在し得ることからすると,そのような児童によって緩んだビニールロープがさらに緩み,あるいはほどかれる可能性も十分に存在した。さらに,身近なものを利用,工夫して遊びを発見しようとする児童によって,緩んだりほどけたりしたビニールロープを体や首に巻き付けて遊びに利用する可能性も高い。 本件ブランコをつなぎ止めていたビニールロープが1か所又は数か所 ,工夫して遊びを発見しようとする児童によって,緩んだりほどけたりしたビニールロープを体や首に巻き付けて遊びに利用する可能性も高い。 本件ブランコをつなぎ止めていたビニールロープが1か所又は数か所で緩むと,ブランコの固定性が失われるか,あるいは減少し,不安定な動きをする可能性が生ずる。そうすると,体や首にビニールロープを巻き付けた児童が,ブランコの予想し難い運動に足を取られ,首が絞まる可能性がある。 以上の事実は,本件ブランコを管理してその一環としてビニールロープをつなぎ止めていた被告のa保育所職員においても当然に予測可能であったのであり,本件ブランコを撤去するか,金属製の部品による完全固定の方法がとられていれば,本件事故は未然に回避できたものである。そうであるにもかかわらず,被告の職員が本件ブランコにビニールロープを漫然とつなぎ止め続けたことは,違法でありかつ過失があったというべきである。 (2) Cは,(争点1についての原告らの主張)(4)記載の経緯で死亡に至ったものであるが,これは,前記のとおり,危険を予見可能であったのにあえて本件ブランコをビニールロープでつなぎ止め続けたという被告の行為によって生じたものである。 (争点2についての被告の主張)(1) (争点1についての被告の主張)(1)記載のとおり,本件ブランコの設置されている本件児童遊園は保育所と併設されており,主として利用するのが3歳以上の保育園児であることからすると,可動領域を狭めることが安全対策として必要であり,かつ,そのための方策として,四隅をビニールロープで支柱につなぎ止めたことは適切であった。 (2) 前記のとおり,Cは自らビニールロープを首に巻き付け,その結果死亡したものである。このビニールロープをほどいて体に巻き付けて遊ぶことは,通常予想し得ない異常な行動 めたことは適切であった。 (2) 前記のとおり,Cは自らビニールロープを首に巻き付け,その結果死亡したものである。このビニールロープをほどいて体に巻き付けて遊ぶことは,通常予想し得ない異常な行動であり,このような行為に対しては被告は国家賠償法上の責任を負わない。 (争点3についての原告らの主張)(1) Cの逸失利益319万2000円(平均賃金)×0.7(生活費控除)×29.663(年利利率を2パーセントとする修正ホフマン係数)×1.2(被告の対応の不当性を根拠に懲罰的な加重賠償)=7953万4808円(2) Cの慰謝料2000万円(死亡慰謝料)×1.2(被告の対応の不当性を根拠に懲罰的な加重賠償)=2400万円(3) 原告Aの損害7953万4808円(Cの逸失利益)+2400万円(Cの慰謝料)=1億0353万4808円(Cの相続人として相続した損害額)300万円(近親者固有の慰謝料)×1.2(被告の対応の不当性を根拠に懲罰的な加重賠償)=360万円(原告A固有の慰謝料)1億0353万4808円(Cの相続人として相続した損害額)+360万円(原告A固有の慰謝料)=1億0713万4808円(4) 原告Bの損害300万円(近親者固有の慰謝料)×1.2(被告の対応の不当性を根拠に懲罰的な加重賠償)=360万円(原告B固有の慰謝料)(5) 請求よって,原告らは,被告に対し,国家賠償法1条又は2条に基づき,原告Aにおいては前記の損害額合計の内金7000万円,原告Bにおいては前記の損害額全額の360万円及びいずれも事故発生日である平成12年10月15日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (争点3についての被告の主張)争う。 第3 争点に対する判断 1 争点1(本件ブランコの設置,管理の瑕疵の る平成12年10月15日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (争点3についての被告の主張)争う。 第3 争点に対する判断 1 争点1(本件ブランコの設置,管理の瑕疵の有無)について(1) 国家賠償法2条1項にいう「公の営造物の設置又は管理に瑕疵」があるとは,公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい,その安全性を欠いているか否かの判断は,当該営造物の構造,本来の用法,場所的環境及び利用状況等の諸般の事情を総合考慮して決すべきである。 本件で設置又は管理に瑕疵があったか否かが問題となっているのは,4本のビニールロープで支柱につなぎ止められて可動範囲が制限されたリング式ブランコ(本件ブランコ)である。リング式ブランコは,1人又は複数の児童が乗り込み,これを揺らす方法で遊ぶ遊具である。本件ブランコは,ビニールロープで支柱につなぎ止められて可動範囲が制限されているものの,その本来の用法に本質的な変化はない。そうすると,本件ブランコが通常有すべき安全性を欠いていたといえるか否かは,児童が乗り込んでこれを揺らす方法で遊ぶという使用態様を前提として,何らかの危険発生の可能性があったといえるかによって決すべきである。そして,その危険性の発現としてCの窒息死という結果が発生したといえるのであれば,被告は,国家賠償法2条1項に基づき,その損害を賠償する責任を負うこととなる。 (2) まず,本件ブランコが,1人又は複数の児童が乗り込み,これを揺らす方法で遊ぶという使用態様を前提として,何らかの危険発生の可能性があったといえるか否かを検討する。 ア本件ブランコは,前記のとおり,日常的にビニールロープで本体部分と支柱部分とがつなぎ止められていたが,そのようなつなぎ止めがされている状態のままであれば,本件ブランコの可動 か否かを検討する。 ア本件ブランコは,前記のとおり,日常的にビニールロープで本体部分と支柱部分とがつなぎ止められていたが,そのようなつなぎ止めがされている状態のままであれば,本件ブランコの可動範囲は大幅に制限されることとなるのであるから,1人又は複数の児童が乗り込んで揺らして遊ぶという使用態様を前提とする限り何らの危険もないというべきである。 イ原告らは,本件ブランコのビニールロープのつなぎ止めは女子児童にも容易にほどけるものであり,一部のつなぎ止めがほどかれた本件ブランコは危険性を帯びた遊びに転用される可能性があり,かつ,本件ブランコを揺すった際に乗っている児童に不規則な動きにより衝撃を与えるような遊具であったと主張するので,その主張の当否について検討する。 甲第11号証(Eの私的鑑定書)及び証人Eの証言によれば,本件ブランコは運動力学的には単振子に該当し,位置エネルギーと運動エネルギーを絶えず転換させながら運動をし続けるもので,ビニールロープのような弾性のないひもで拘束すると本件ブランコの揺れに急制動がかけられることとなると認められるので,これらの事実によれば,本件ブランコがビニールロープでつなぎ止められた結果,ビニールロープが延びきった時点で急制動がかかり不規則な動きをする可能性があったことが認められる。しかしながら,その不規則な動きをする可能性をもって,本件ブランコに乗り込んでいる児童に何らかの危険が発生するおそれがあったといえるためには,その不規則な動きがどの程度の振幅に及び,乗り込んでいる児童にどの程度の強い力を与えたのかを認定した上,その振幅や力の強度が危険水準を超えているか否かを判断することが必要となるものである。 甲第11号証(Eの私的鑑定書)には,無拘束のブランコ,弾性があるゴムひもで拘束されたブランコ, 認定 した上,その振幅や力の強度が危険水準を超えているか否かを判断することが必要となるものである。 甲第11号証(Eの私的鑑定書)には,無拘束のブランコ,弾性があるゴムひもで拘束されたブランコ,ビニールロープのような弾性のないひもで拘束されたブランコのそれぞれの角加速度の変化を示したグラフが掲げられているが,そもそもこれらのグラフには単位が全く記載されていないし,そもそもビニールロープのつなぎ止めなどの諸条件が本件ブランコと同一であるか否かも明らかではないので,本件ブランコに乗っている児童にどれだけの強度の力がかかるのかが明らかでない。 証人Eは,車に乗って急ブレーキをかけたときの負荷が約0.7Gであり,岩手県大船渡市所在の同種のブランコで行った実験ではその3倍くらいの重力加速度を感じたと供述しているが,そもそも重力加速度の大きさは証人の感覚的なものであって正確な測定がされたものではなく,また,当該実験の条件も明らかではない。 そうすると,甲第11号証(Eの私的鑑定書)と証人Eの証言をもってしても,本件ブランコがビニールロープでつなぎ止められたことによって生ずる不規則な動きの振幅ないし強度が,乗っている児童に危険を与える程度にまで至っていたと認めるには足りず,その他これを認めるに足りる証拠はない。 したがって,その余の事実を判断するまでもなく,本件ブランコは,ビニールロープによるつなぎ止めが一部ほどかれていた状態であったとしても,1人又は複数の児童が乗り込み,これを揺らす方法で遊ぶという使用態様を前提とする限り,何らかの危険発生の可能性があったと認めるに足りない。 (3) 前記のとおり,被告は,Cが首にビニールロープを巻き付けた状態で宙づりになって窒息死した経緯について,Cが自分の首に自らビニールロープを巻き付けたと主張しており があったと認めるに足りない。 (3) 前記のとおり,被告は,Cが首にビニールロープを巻き付けた状態で宙づりになって窒息死した経緯について,Cが自分の首に自らビニールロープを巻き付けたと主張しており,原告らは,その経緯について,Cが,ほどかれたビニールロープの一端を肩ないし上腕の上から腕に巻き付けた上でひじ掛け手すり又はリング補強柱に巻き付けたところ,ブランコの揺れから生じた衝撃によりビニールロープが首に絡み,一気に強い力で締め上げられたものと主張している。 Cの死亡の経緯が被告主張のものであった場合にはもちろんのこと,仮にその経緯が原告ら主張のとおりのものであったとしても,Cは,自らビニールロープを自己の身体に巻き付けたこととなるが,このような行為は本件ブランコの本来の用法からかけ離れたものといわざるを得ない。本件事故以前において,本件ブランコをつなぎ止めていたビニールロープを児童が自己の身体に巻き付けて遊ぶことが常態化していたのであれば,その状態を前提とした安全管理措置が執られていない限り,本件ブランコは通常有すべき安全性を欠いていたというべきであるが,本件事故以前において前記のような遊び方が常態化していたと推認させる証拠は全くない。 (4) 以上によれば,本件ブランコは本来の用法を前提とする限り何らかの危険発生の可能性があったと認めるに足りず,かつ,つなぎ止めのほどかれたビニールロープを自己の身体に巻き付けるという遊び方が常態化していたと認めるに足りないので,結局,本件ブランコが通常有すべき安全性を欠いていたと認めるに足りない。 よって,原告らの国家賠償法2条に基づく請求は,その余の事実を判断するまでもなく,理由がない。 2 争点2(本件ブランコをビニールロープでつなぎ止めたことの違法性及び過失の有無)について(1) 原告らは ,原告らの国家賠償法2条に基づく請求は,その余の事実を判断するまでもなく,理由がない。 2 争点2(本件ブランコをビニールロープでつなぎ止めたことの違法性及び過失の有無)について(1) 原告らは,本件ブランコをビニールロープでつなぎ止めたことが違法である根拠として,ビニールロープによるつなぎ止めでは,児童がブランコを揺らすことによって1か所又は数か所で緩む可能性が高く,そのような状態になった場合には,ブランコの固定性が失われるか,あるいは減少し,不安定な動きをする可能性が生じ,そうすると,体や首にビニールロープを巻き付けた児童がブランコの予想し難い運動に足を取られ,首が絞まる可能性を指摘している。結局,原告らは,本件ブランコをビニールロープでつなぎ止めたことが児童の窒息死という危険を引き起こすのであり,これをもって違法と主張しているものである。 しかしながら,前記のとおり,甲第11号証(Eの私的鑑定書)及び証人Eの証言によれば,本件ブランコがビニールロープでつなぎ止められた結果,ビニールロープが延びきった時点で急制動がかかり不規則な動きをする可能性があったことが認められるが,その不規則な動きの振幅ないし強度が,乗っている児童に危険を与える程度にまで至っていたと認めるには足りる証拠はない。したがって,本件ブランコをビニールロープでつなぎ止めたことが違法であると認めるに足りない。 (2) 原告らは,被告の職員が本件ブランコをビニールロープでつなぎ止めたことに過失があると主張する根拠として,児童がほどけたビニールロープを利用して危険な遊びを行う可能性があること及びその可能性が現実化して本件のような死亡事故が発生することを予見できたという点を挙げる。したがって,その当否を検討する。 ア乙第9号証(Fの報告書),証人Fの証言及び弁論の全趣旨 能性があること及びその可能性が現実化して本件のような死亡事故が発生することを予見できたという点を挙げる。したがって,その当否を検討する。 ア乙第9号証(Fの報告書),証人Fの証言及び弁論の全趣旨によれば,平成9年4月より,本件児童遊園に併設されている保育所で3歳児を受け入れることとなり,本件ブランコが大きく揺れて幼児にぶつかる危険性があったことから,そのころより被告の職員であるa保育所職員が本件ブランコにつき支柱とリング部をビニールロープでつなぎ止める措置を執り始めたこと,ビニールロープは毎年交換し,本件事故の直近の交換は平成12年9月28日であったこと,本件事故直前である平成12年10月8日から10日までの3連休の間につなぎ止めていたビニールロープがすべて外されていたこと,その翌日である平成12年10月11日に本件ブランコをビニールロープでつなぎ止め直したことが認められる。 これらの事実によれば,被告の職員は,本件事故直前に,本件ブランコに対するビニールロープによるつなぎ止めがほどかれていた場面に直面していたのであるから,ビニールロープによるつなぎ止めが再びほどかれる可能性があったことを十分認識し得たというべきである。また,児童が手近に存在するものを遊びに用いることも決して稀ではないので,被告の職員において,児童がほどけたビニールロープを遊びに用いることも認識できたというべきである。 イ次に,被告の職員が,本件事故の時点で,児童がほどけたビニールロープを利用し,本件事故のような死亡事故を惹起するような危険な遊びを行う可能性があることを予見できたといえるかを検討する。 甲第6号証(事故調査結果報告書)によれば,平成13年4月1日現在で本件ブランコと同種のブランコは全国で7053台設置され,平成8年から平成12年までの事故件数は 予見できたといえるかを検討する。 甲第6号証(事故調査結果報告書)によれば,平成13年4月1日現在で本件ブランコと同種のブランコは全国で7053台設置され,平成8年から平成12年までの事故件数は146件(本件事故を含む。),死亡事故件数は2件(本件事故を含む。)存在したことが認められる。甲第6号証(事故調査結果報告書)は,本件事故後に作成されたものであるが,そこで報告されている事例自体は本件事故以前に発生したものも多数含まれている。したがって,被告が本件事故以前にこれらの事例のいくつかを把握し,本件ブランコを含むリング式ブランコによって類似の事故が発生する可能性を認識することは不可能とはいえないと解される。 そこで,甲第6号証(事故調査結果報告書)において,リング式ブランコについてどのような事故が報告されているのかをみると,本件以外の死亡事故としては,平成10年12月に11歳の女児がブランコの下に落ち,ブランコに頭と体を挟まれたというものであり,その他の事故の態様も,バランスを崩して落下し,あるいは足などの体の一部分を挟むというものばかりであったことが認められる。 原告らは,本件事故の態様を,Cがほどかれたビニールロープを自己の身体に巻き付けたことによって発生したと主張しているが,その態様は前記の報告に係る事故と全く異なるものである。本件事故以前において,本件ブランコをつなぎ止めていたビニールロープを児童が自己の身体に巻き付けて遊ぶことが常態化していたのであれば,被告としては,その状態を前提とした事故発生を予見する義務があったといえるが,本件事故以前において前記のような遊び方が常態化していたと推認させる証拠は全くない。 したがって,結局,被告が,本件事故の時点において,ほどけたビニールロープを利用して児童が危険な遊びを行う可能 ,本件事故以前において前記のような遊び方が常態化していたと推認させる証拠は全くない。 したがって,結局,被告が,本件事故の時点において,ほどけたビニールロープを利用して児童が危険な遊びを行う可能性があること及びその可能性が現実化して本件のような死亡事故が発生することを予見できたとは認めるに足りない。 (3) 以上によれば,被告の職員が本件ブランコをビニールロープでつなぎ止めたことが違法であると認めるに足りず,かつ,本件事故を予見しなかったことに過失があるとも認めるに足りない。 よって,原告らの国家賠償法1条に基づく請求は,その余の事実を判断するまでもなく,理由がない。 第4 結論よって,原告らの請求はいずれも理由がないので棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 仙台地方裁判所気仙沼支部裁判官森鍵一
▼ クリックして全文を表示