平成28(う)1788 死体遺棄

裁判年月日・裁判所
平成29年5月12日 東京高等裁判所 棄却 東京地方裁判所 平成27(わ)1757
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判決文本文9,316 文字)

- 1 -平成29年5月12日宣告東京高等裁判所第3刑事部判決平成28年1788号死体遺棄被告事件 主文 本件控訴を棄却する。 理由 本件控訴の趣意は,事実誤認の主張である。 理由不備・理由齟齬(刑事訴訟法378条4号)があるとしている点も,その実質は事実誤認の主張である。 1 原判決認定の犯罪事実その要旨は,被告人が,Aと共謀の上,平成25年7月19日,相模原市(以下省略)所在の墓地内の空き地において,ビニールシート等に包まれた女性(昭和62年7月31日生)の死体を,ビニールシート等の中身が人の死体かもしれないと認識しながら,同所に掘った穴に入れて埋め,死体を遺棄したというものである。 2 弁護人の主張その骨子は,被告人は,本件遺棄対象物の中身について,人の死体かもしれないとの認識を有しておらず,Aとの死体遺棄の共謀は存在しないのに,本件遺棄行為当時,被告人には少なくとも人の死体かもしれないという未必の故意が認められ,Aとの共謀も認定できるとした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるというものである。 3 原判決の判断の要旨 本件犯行に至る経緯,本件犯行状況,本件遺体発見の経緯等について,原判決が原審証拠によって認定できるとした事実の要点は,次のとおりである。 被告人は,平成24年秋頃からAと交際を始め,平成25年5月20日頃,Aの要求に応じて,東京都世田谷区内のマンションの一室(以下「被告人方」 - 2 -という)に転居した。その家賃は月額14万円であった。 は,Aとの交際中,Aの求めに応じて,レンタカーでAを送迎することを繰り返していたが,6月中旬頃,Aから東京都新宿区内の路上に迎えに来るように呼び出され,被告人がレンタカー 14万円であった。 は,Aとの交際中,Aの求めに応じて,レンタカーでAを送迎することを繰り返していたが,6月中旬頃,Aから東京都新宿区内の路上に迎えに来るように呼び出され,被告人がレンタカーで赴くと,Aが路上で台車の上に本件遺棄対象物を置いて待っていた。本件遺棄対象物は,ビニールシートに包まれ,厚みが30cm程度の楕円型で,台車から少しはみ出る程度の大きさであった。 被告人は,本件遺棄対象物をAと2人でレンタカーのトランクに積み込み,その後,2人で被告人方のリビングに運び入れ,Aから許可なく被告人方に立ち入らないように言われた。そのため,東京都内のホテルを転々とする生活をするようになり,6月23日から7月20日までの宿泊料金等は総額62万円余りに及び,全て被告人が支払った。 ④被告人は,本件遺棄対象物を被告人方に運び入れてから,Aと一緒にあるいは一人で,レンタカーで本件遺棄現場のほか,東京都町田市内や静岡県富士市内等を訪れて埋める場所を探した。 被告人らは,最終的に本件遺棄現場に埋めることとし,7月17日レンタカーを借り,翌18日には台車や軍手等を調達した。翌19日,被告人は,Aと共にレンタカーで本件遺棄現場に行き,Aの指示を受けながらシャベルで穴を掘った。穴を掘り終えた後,被告人は,Aと共に,本件遺棄対象物を取りに被告人方に戻ったが,室内に入ると強い異臭があり,本件遺棄対象物のビニールシートの下から赤褐色の液体が染み出していた。被告人は,ビニールシートで包み直した方がよいなどと提案し,自らビニールシート等を購入し,Aが一人で本件遺棄対象物を包み直した。その後,被告人は,Aと共に本件遺棄対象物を被告人方から台車に載せて運び出し,レンタカーで本件遺棄現場付近まで運搬した。被告人は,Aと2人で,本件遺棄対象物を台車に 人で本件遺棄対象物を包み直した。その後,被告人は,Aと共に本件遺棄対象物を被告人方から台車に載せて運び出し,レンタカーで本件遺棄現場付近まで運搬した。被告人は,Aと2人で,本件遺棄対象物を台車に載せたり,持ち上 - 3 -げるなどして本件遺棄現場まで運び,掘った穴の中に入れて土をかけて埋めた。 翌20日,被告人方から異臭がするとの通報が警察にあり,警察から呼び出された被告人は,Aから言われたとおり,知人から預かった犬2匹が弱って死んでしまったので,町田市(以下省略)に埋めたなどと説明した。翌21日の引き当たり捜査においても,被告人は,Aと共に埋めた場所についてうその説明をして案内した。その結果,埋めた場所については不明のまま,捜査はいったん終了した。 平成26年12月,本件で遺棄された女性の父親から捜索願が出され,捜査が進められる中,被告人は,平成27年4月頃から,警察の事情聴取を受けるなどし,6月24日,警察官を本件遺棄現場に案内した結果,本件遺棄対象物が発見された。その大きさは,縦約79cm,横約110cm,厚さ約41cmで,その中に本件遺体が包まれていた。 その上で,原判決は,①上記のような被告人の本件遺棄対象物の運搬状況,本件遺棄対象物の発見時の大きさ,友人らの原審証言及び被告人の原審公判供述によって認められる被告人が友人に話した内容からすれば,被告人は,本件遺棄対象物について,自分くらいの大きさで,持ったときの感触がずっしり重いものであると認識していたと認められ,さらに,②被告人は,Aから,本件遺棄対象物を被告人方に運び入れる際に中身は虎の死体と言われ,その後も中身が腐っているなどと言われており,本件当日には,本件遺棄対象物から腐敗臭のような強い異臭が発生していて,血液様の液体が染み出ていることを 被告人方に運び入れる際に中身は虎の死体と言われ,その後も中身が腐っているなどと言われており,本件当日には,本件遺棄対象物から腐敗臭のような強い異臭が発生していて,血液様の液体が染み出ていることを認識していたことが認められるとし,これらのことからすると,被告人は,遅くとも本件当日までには,本件遺棄対象物の中身が,被告人と同程度の大きさで相当の重量のある何らかの死体であることを認識していたと推認できるとした。 また,原判決は,上記のとおり,①被告人は,生活上の支障や金銭的負 - 4 -担をも甘受しながら約1か月間にわたって被告人方に本件遺棄対象物を保管していたものであること,②その間,被告人は,相当な労力を払って遺棄場所を探して遺棄しているものであること,③本件後,被告人は,本件遺棄対象物が発見されるのを隠そうとしていたことからすると,被告人は,本件遺棄対象物の中身である死体について,容易には処分できない死体であり,かつ,警察官に対しても積極的にうそをついてまで隠しておくべき死体であると考えていたことが推認できるとした。 原判決は,このことに加えて,被告人が認識していた本件遺棄対象物の大きさや重さ等を併せ考えると,そのような死体としては,少なくとも人の死体かもしれないと頭に浮かぶはずであり,人の死体である可能性はないなどと認識することは通常考えられないのであって,被告人は,本件遺棄対象物の中身について,人の死体である可能性はないと認識するような特段の事情がない限り,少なくとも人の死体かもしれないという認識を有していたものと推認することができるとした。 他方で,原判決は,被告人が,原審公判において,本件遺棄対象物を被告人方に運び入れる際,Aから,Bの社長が飼っていた虎が死んでその処分を頼まれ,本件遺棄対象物の中身は ことができるとした。 他方で,原判決は,被告人が,原審公判において,本件遺棄対象物を被告人方に運び入れる際,Aから,Bの社長が飼っていた虎が死んでその処分を頼まれ,本件遺棄対象物の中身はその死体であると聞いたが,その説明に納得できず「本当に虎なのか。犬なんじゃないの」などと尋ねると,Aが黙ったことから,図星であり,犬だと思った,人であるとは思い付かなかったなどと供述していることについて,①犬だと思い付いた理由は想像の域を出ないあいまいなもので,犬だと認識したという点もさしたる根拠のないものであること,②被告人は,Aから本件遺棄対象物を被告人方で保管してほしいと言われた際「なんで私の家にそんな分かんないものを保管しなきゃならないの」と言って口論になっており,本件遺棄対象物の中身について強い疑念を抱いていたとうかがわれるのに,それ以上に中身について積極的に確認することもなく,ずっ - 5 -と犬だと思っていたというのは不可解であること,③被告人は,本件の数日前である7月15日頃,友人に対し,Aが虎の死体の処理を頼まれ,埋めるまで置く場所がないので被告人方に置いてあるなどと,犬の死体と認識していたことと相容れない説明をしていること,④被告人の上記供述を前提にすれば,犬の死体を処分するのに,約1か月もの間,遺棄場所の下見を繰り返し,その間,自宅も使えず,高額の費用を掛けてホテル暮らしを続けたということになるが,それ自体不合理であることからすると,到底信用できないとした。 以上のことなどから,原判決は,被告人が本件遺棄対象物の中身について人の死体である可能性はないと認識するような特段の事情はうかがえないのであって,被告人は,本件犯行当時,本件遺棄対象物の中身について,少なくとも人の死体かもしれないという認識を有していたと について人の死体である可能性はないと認識するような特段の事情はうかがえないのであって,被告人は,本件犯行当時,本件遺棄対象物の中身について,少なくとも人の死体かもしれないという認識を有していたと認められ,死体遺棄罪の故意が認定できるとした。 さらに,原判決は,Aが原審公判の罪状認否において本件公訴事実を認めているところ,被告人は,本件遺棄対象物の中身について,少なくとも人の死体かもしれないという認識を有しながら,Aの指示を受け,その意思に沿う形で,本件遺棄現場で穴を掘り,本件遺棄対象物を被告人方から運び出して埋めていることから,被告人とAとの共謀も認められるとした。 4 当裁判所の判断原判決の判断は,主要な説示において経験則等に照らして不合理なところはなく,原審記録を検討しても,原判決に事実の誤認はない。 以下,弁護人の主張を踏まえて補足する。 故意についてア原審証拠によれば,①本件遺棄対象物は,被告人が警察官を本件遺棄現場に案内して発見されたものであること,②そのときの本件遺棄対象物の大きさは,最長箇所で縦約79cm,横約110cm,厚さ約41cmであったこ - 6 -と,③本件当日,被告人は,Aと一緒に台車を使って本件遺棄対象物を被告人方から運び出していること,④その際,本件遺棄対象物は,強い腐敗臭を発しており,赤褐色の血液様の液体が染み出していたこと,⑤本件4日前の7月15日頃,被告人は,友人から引っ越したばかりの被告人方に住むことができずにホテル暮らしをしている理由を尋ねられた際,Bの社長が飼っていた虎が死んでしまい,Aがその死体の処理を頼まれ,その死体が被告人方に置いてあるなどと話した中で,本件遺棄対象物について,自分くらいの大きさと説明していることが認められる。これらのことからすると いた虎が死んでしまい,Aがその死体の処理を頼まれ,その死体が被告人方に置いてあるなどと話した中で,本件遺棄対象物について,自分くらいの大きさと説明していることが認められる。これらのことからすると,被告人は,遅くとも本件遺棄行為時までには,本件遺棄対象物の中身が自分くらいの大きさと重量のある何らかの死体であると認識していたと推認することができる。 さらに,原審証拠によれば,①遅くとも平成25年6月22日までに本件遺棄対象物が被告人方に運び込まれ,被告人は,その頃から本件当日までの約1か月もの間,Aに頼まれて被告人方に本件遺棄対象物を置き続けるという状況になっていったこと,②その間,被告人は,ホテルを転々としながら,ほとんどホテルに宿泊しており,その宿泊代金等として合計62万円余りも負担していること,③一方で,被告人は,本件遺棄現場に下見に行ったほか,町田市(以下省略)等にも行って,本件遺棄対象物を埋めるのに適した場所を探すなどしていること,④本件当日,被告人は,Aと共にレンタカーで本件遺棄現場まで行き,上記のような大きさの本件遺棄対象物を埋めるのに適した広さと深さの穴を掘って,本件遺棄対象物を埋めていることが認められる。このように,本件遺棄行為当時,被告人は,本件遺棄対象物を埋めるために,約1か月にわたり自宅で生活できず,相当の金銭的な負担をするという状況になっていた上,本件遺棄対象物を埋める場所を探すなどして相当の手間と時間を掛け,本件当日も,本件遺棄対象物を埋めるために,かなりの労力と時間を掛けているのである。そうすると,被告人は,本件遺棄行為時までに,本件遺棄対象物の中身 - 7 -について,警察に発覚しないようにかなり慎重に埋めなければならない死体であると認識するに至っていたと推認することができる。 以上のとおり,被 遺棄行為時までに,本件遺棄対象物の中身 - 7 -について,警察に発覚しないようにかなり慎重に埋めなければならない死体であると認識するに至っていたと推認することができる。 以上のとおり,被告人は,遅くとも本件遺棄行為時までには,本件遺棄対象物について,その中身が自分くらいの大きさと重量のある何らかの死体で,しかも,警察に発覚しないようにかなり慎重に埋めなければならない死体であると認識するに至っていたといえることからすると,それまでに,被告人が,本件遺棄対象物の中身について,人の死体である可能性を全く考えないということはあり得ないのであって,少なくとも人の死体であるかもしれないとの認識を有していたと推認することができる。 さらに,原審証拠によれば,本件翌日,被告人は,異臭がするとの通報を受けて被告人方に臨場した警察官に対し,Aが連れてきた犬が留守中に死んで腐ってしまい,その死体を運び出して埋めてきたなどと作り話をした上,警察署においても,その死体を埋めた場所がC駅近くであると虚偽の説明をし,その翌日には,Aと共に,警察官をその死体を埋めた場所に案内する振りをしたことが認められる。このことは,被告人が,本件遺棄対象物の中身について,警察に対してうそを言ってまでその所在を知られたくない死体であると考えていたことを示すものであって,上記推認を支えているといえる。 これに対して,被告人は,原審公判において,原判決指摘のとおりの供述をしているが,本件遺棄対象物の中身について,被告人が犬の死体だと思ったのは,被告人方での保管を頼んできた際にAが本件遺棄対象物を運び出していた場所柄やその際のその中身に関するAの応答振りからの推測にすぎないところ,犬の死体であれば,ペットとして飼っていた犬が死んだときの処分方法を調べたり,聞いたりするなどし 件遺棄対象物を運び出していた場所柄やその際のその中身に関するAの応答振りからの推測にすぎないところ,犬の死体であれば,ペットとして飼っていた犬が死んだときの処分方法を調べたり,聞いたりするなどして対処すればよいのであって,合法的に処分することはさほど困難でないのに,被告人は,そのような行動を取ることなく,上記のとおり,約1か月もの間,自宅を使えずホテル暮らしを続けるとともに,本 - 8 -件遺棄対象物を埋めるために下見をするなど相当の手間と時間を掛けるなどしているのであって,犬の死体だと思い続けていたとの被告人の原審公判供述は,これらのことに照らして不合理であり,かなり不自然である。したがって,被告人の上記公判供述は信用できないとした原判決の判断に誤りはない。 以上のことからすると,被告人が,本件犯行当時,少なくとも本件遺棄対象物の中身が人の死体であるかもしれないとの認識を有していたものと認められるとした原判決の判断に誤りはない。 イ弁護人は,本件遺棄行為時における被告人の認識を正確に理解するためには,Aとの特殊な関係が被告人の認識に与えた影響を検討することが不可欠であるのに,原判決はそれを無視して,誤った判断を導いているなどと主張する。 しかし,被告人は,原審公判において,Aから本件遺棄対象物を被告人方で保管してほしいと言われたのに対し,「何で私の家にそんな分かんないものを保管しなきゃならないの」と言って口論になった,本件遺棄対象物について,Aは「Bの社長が飼っていた虎が死んでしまって,その処分を頼んできた」と言っていたが,虎の死体とは思っていなかった,ホテル代やレンタカー代を全て自分が負担することについてAに文句を言ったなどと供述しており,このような被告人の供述からすると,本件当時,被告人が,Aの話を全面的に信用す の死体とは思っていなかった,ホテル代やレンタカー代を全て自分が負担することについてAに文句を言ったなどと供述しており,このような被告人の供述からすると,本件当時,被告人が,Aの話を全面的に信用するとともに,その指示に盲従していたわけではなかったと認められる。そうすると,弁護人が指摘するように,被告人が,輝かしい経歴等に関するAの話を信じ込んでおり,輝かしい将来を捨てて自分と結婚し実家の農業を継いでくれるという負い目があったとしても,被告人とAの関係は,本件故意に関する上記推認を妨げる事情とはいえないのであって,原判決の判断に誤りはない。 また,弁護人は,人目に付きやすい時間帯や場所で本件遺棄対象物を被告人方に搬入,搬出した被告人の行動は,その中身を人の死体かもしれないと認識 - 9 -していたとすれば,合理的に説明できないのに,矛盾しないとした原判決の判断は経験則等に反した不合理なものであると主張する。 しかし,原判決も指摘するとおり,本件遺棄対象物はビニールシート等で包まれていて中身が見えないようになっており,本件遺棄現場は人気のない場所である。しかも,その中に人の死体が包まれていることを明確に知っているAが,本件遺棄対象物の被告人方への搬入・搬出等を主導していたことからすると,Aが人の死体を運んでいると発覚しないようそれなりに合理的に考えて行動していたものと推認することができる。これらのことからすると,本件遺棄対象物の被告人方への搬入・搬出等における被告人の行動が,本件遺棄対象物の中身について人の死体かもしれないと被告人が認識していたことと矛盾するとはいえず,原判決の判断に誤りはない。 弁護人は,被告人が本件遺棄対象物の中身を人の死体かもしれないと認識していたとすれば,第三者に犯行を知られるような態様で話をするはずはない いたことと矛盾するとはいえず,原判決の判断に誤りはない。 弁護人は,被告人が本件遺棄対象物の中身を人の死体かもしれないと認識していたとすれば,第三者に犯行を知られるような態様で話をするはずはないから,周囲に多数の者がいる大学の食堂で友人に虎の死体の話をした被告人の行動を合理的に説明できないのに,これを排斥した原判決の判断は経験則等に反した不合理なものであると主張する。 しかし,原審証拠によれば,被告人は,友人から,引っ越したばかりの被告人方に住むことができずにホテル暮らしをしている理由を問い詰められていった中で,虎の死体の話をしたもので,自ら積極的に話したわけではないことが認められる。また,その友人は,別の友人らにLINEで,被告人から聞いた虎の死体の話を伝えるに当たり,被告人から誰にも言わないでほしいと言われたと記載していることが認められるが,このことからすると,被告人が大学の食堂で友人に虎の死体の話をした際,第三者に知られないように配慮していたものと推認することができる。これらのことからすると,被告人が大学の食堂で友人に虎の話をしたことは,本件犯行当時,本件遺棄対象物が人の死体かも - 10 -しれないと被告人が認識していたことと矛盾するとはいえない。したがって,原判決の判断が不合理であるとはいえない。 さらに,弁護人は,被告人が警察官を本件遺棄現場に案内したことは,被告人が本件遺棄対象物の中身が人の死体であると認識していたとすれば,合理的な説明ができないのに,反省あるいは自己保身等の心境から案内したことも考えられるとした原判決の判断は不合理であると主張する。 しかし,被告人は,平成27年6月中旬頃から,Aが関係している女性が行方不明になっている件について,繰り返し事情聴取を受けていたのであって,このことなどからする 決の判断は不合理であると主張する。 しかし,被告人は,平成27年6月中旬頃から,Aが関係している女性が行方不明になっている件について,繰り返し事情聴取を受けていたのであって,このことなどからすると,Aと共に本件遺棄対象物を遺棄したこと自体は隠し通すことはできないなどと考えるとともに,人の死体とは知らなかったと供述すれば,自らは刑事責任を問われることはないと考えて,本件遺棄現場を案内した可能性があり,被告人が警察官を本件遺棄現場に案内したことは,本件故意に関する上記推認を妨げるほどの事情とはいえないのであって,原判決の判断が不合理であるとはいえない。 共謀について原審証拠によれば,Aは,本件遺棄対象物の中に人の死体が包まれていることを明確に認識しており,本件犯行の故意を有していたと認められる。上記のとおり,本件犯行時,少なくとも本件遺棄対象物の中身が人の死体かもしれないという認識を有していた被告人が,本件犯行の故意を有するAの指示を受けて,本件遺棄現場で穴を掘り,本件遺棄対象物を被告人方から運び出して埋めていることからすると,被告人は,本件犯行時までにAとの間で本件死体遺棄の意思を相通じていたと認められるのであって,これと同趣旨と解される原判決の判断に誤りはない。 まとめ以上のことからすると,そのほかに弁護人が主張する点を踏まえて検討して - 11 -も,本件死体遺棄を認定した原判決に事実の誤認はない。 5 結語以上のとおり,本件控訴の趣意は理由がないから,刑事訴訟法396条により本件控訴を棄却する。 平成29年5月12日東京高等裁判所第3刑事部 裁判長裁判官秋葉康弘 裁判官須田雄一 裁判官香川徹也は転補のため署名押印で 平成29年5月12日 東京高等裁判所第3刑事部 裁判長 裁判官 秋葉康弘 裁判官 須田雄一 裁判官 香川徹也は転補のため署名押印できない。 裁判長 裁判官 秋葉康弘

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