主文 一本件控訴について 1 第一審被告富士電機株式会社、同株式会社山武の本件控訴に基づき、原判決中同被告らに関する部分を次のとおり変更する。 (一) 第一審被告富士電機株式会社は、同横河電機株式会社、同株式会社日立製作所と連帯して、奈良県に対し、金4,040万円及びこれに対する平成8年3月5日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。 (二) 第一審原告らの第一審被告富士電機株式会社に対するその余の請求を棄却する。 (三) 第一審原告らの第一審被告株式会社山武に対する請求を棄却する。 2 第一審被告横河電機株式会社、同株式会社日立製作所の本件控訴を棄却する。 二本件附帯控訴について 第一審原告らの本件附帯控訴を棄却する。 三訴訟費用の負担について 1 第一審原告らと第一審被告横河電機株式会社、同株式会社日立製作所、同富士電機株式会社との間に生じた訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを2分し、その1を同被告らの連帯負担とし、その余を第一審原告らの負担とする。 2 第一審原告らと第一審被告株式会社山武との間に生じた訴訟費用は、第一、二審とも第一審原告らの負担とする。 事実 第一当事者の求める裁判 一第一審被告ら 1 本件控訴に基づき、原判決中第一審被告ら敗訴部分を取り消す。 2 第一審原告らの請求を棄却する。 3 本件附帯控訴を棄却する。 4 訴訟費用は第一、二審とも第一審原告らの負担とする。 二第一審原告ら 1 本件附帯控訴に基づき、原判決中第一審被告らに関する部分を次のとおり変更する。 2 第一審被告らは連帯して奈良県に対し、金2億0,628万4,000円及びこれに対する平成8年3月5日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。 3 本件控訴を棄却する。 4 訴訟費用は第一、二審とも第一審被告らの負担とする。 対し、金2億0,628万4,000円及びこれに対する平成8年3月5日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。 3 本件控訴を棄却する。 4 訴訟費用は第一、二審とも第一審被告らの負担とする。 第二当事者の主張一原判決の引用、補正 1 引用(一) 当事者の主張は、次の二のとおり附加する外、原判決第二「事案の概要」欄(2頁3行目から35頁5行目まで)中、第一審原告らと第一審被告らに関する部分記載のとおりであるから、これを引用する。 (二) なお、第一審原告らは、当審において株式会社島津製作所に対する訴えを取り下げた。 2 補正ただし、次のとおり補正する。 (一) 右引用部分中の「被告島津製作所」を「訴え取下前の第一審被告島津製作所」と改める。 (二) 原判決11頁3行目の「これを同視し得る」を「これと同視し得る」と改める。 二当審附加主張 1 第一審被告ら(一) 本案前の抗弁について(1) 監査請求期間の徒過イ結論原判決は、監査請求期間の起算点について、奈良県による本件各工事の代金支払が完了したとき(本件工事①は平成6年4月28日、本件工事②は平成7年10月31日)と判断した。それ故、本件工事②に関する監査請求は、1年の監査請求期間(地方自治法〔以下、法という〕242条2項)を徒過していないという。 しかし、この判断は誤っている。監査請求期間の起算点は、奈良県が第一審被告横河電機と本件各契約(請負契約)を締結した日(本件契約①は平成5年3月9日、本件契約②は平成6年2月21日)である。本件監査請求は平成7年11月27日にされているので、本件各工事に関する監査請求はいずれも1年の監査請求期間を徒過している。 ロ根拠第一審原告らの主張によると、奈良県は、第一審被告らの違法な談合により、第一審被告横河電機との間で違法 ているので、本件各工事に関する監査請求はいずれも1年の監査請求期間を徒過している。 ロ根拠第一審原告らの主張によると、奈良県は、第一審被告らの違法な談合により、第一審被告横河電機との間で違法、無効な本件各契約を締結させられた。そのため、過大な請負代金額の支払債務を負担させられると同時に、第一審被告らに対し、談合による違法、無効な請負契約を締結させられたことによる損害賠償請求権を取得することになる。 この場合、第一審原告らは、本件各契約の締結に関する違法性を問題としているのであるから、本件各契約締結日を監査請求期間算定の起算点とすべきである。本件各契約の履行行為(請負代金の支払)に違法性があることを理由とする監査請求においても、履行行為固有の違法事由を主張しているのではないから、監査請求期間の起算日は契約締結日である。 そうでなければ、当該財務会計上の行為(契約の締結)を違法であると主張し、当該財務会計上の行為の履行行為に基づく実体法上の請求権に関する怠る事実と主張して監査請求を行いさえすれば、監査請求期間の起算点を財務会計上の行為の履行行為の終了時点とすることができる。こうして履行行為の終了時点が20年先、30年先であれば、それまで監査請求期間の起算点が延長されるのである。 これでは、財務会計上の行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とする住民監査請求については、財務会計上の行為のあった日又は終わった日を基準として地方自治法242条2項の規定を適用すべきであると判示した最高裁判例(最判昭和62・2・20民集41巻1号122頁)に反することになる。 (2) 正当理由の不存在原判決は、本件工事①につき、本件監査請求が1年の監査請求期間を徒過したものであることを認めながら 例(最判昭和62・2・20民集41巻1号122頁)に反することになる。 (2) 正当理由の不存在原判決は、本件工事①につき、本件監査請求が1年の監査請求期間を徒過したものであることを認めながら、地方自治法242条2項但書所定の正当理由があるものとして、本件監査請求を適法とした。前示(1)のとおり、本件工事②についても、本件監査請求は監査請求期間を徒過しているのであるが、原判決の論理に従えば、ここでも、本件監査請求は適法とされることになろう。 しかし、本件各工事の監査請求は、いずれも地方自治法242条2項但書所定の正当理由があるものとは認められない。その理由は、原審で述べたとおりである。 (二) 本案について(1) 談合による入札でないイ談合行為の不存在山手会は第一審被告らの情報交換の場であり、同被告らの担当者が市場動向、業界動向の外、地方公共団体が発注する計装設備工事について、指名の有無、受注希望の有無、入札予定価格、落札者、落札価格等に関する報告をしていた。 確かに、山手会では、受注希望の有無の表明、入札予定価格の連絡をしていた。 しかし、その目的は、受注を希望しない指名業者にとっては誤って受注することを避けるためのものであり、受注を希望する業者はそのために価格連絡により協力していたにすぎない。 山手会では、受注予定者を決定したり、落札価格の低落防止を目的とする談合はしていない。山手会で不正な談合、受注予定者の決定をしていたと認定した原判決は事実を誤認している。 ロアウトサイダーの存在山手会に参加していたのは、第一審被告ら4社と株式会社島津製作所だけである。他方、地方公共団体が発注する上水道計装設備の入札において、第一審被告ら4社以外にも多数の大手電機メーカー(アウトサイダー)が指名されていた。 現に、本件工事①では と株式会社島津製作所だけである。他方、地方公共団体が発注する上水道計装設備の入札において、第一審被告ら4社以外にも多数の大手電機メーカー(アウトサイダー)が指名されていた。 現に、本件工事①では、第一審被告横河電機、同日立製作所以外に、明電舎、日新電機、三菱電機、沖電気工業が入札業者に指名されていた。本件工事②では、第一審被告横河電機、同日立製作所、同富士電機以外に、明電舎、日新電機、沖電気工業、シャープが入札業者に指名されていた。 このように、本件各工事には、多数の大手電機会社(アウトサイダー)が指名されていた。それ故、第一審被告横河電機、同日立製作所、同富士電機だけで、本件各工事の受注予定者を決定することは不可能であった。 ハ指名業者ではない第一審被告山武は、本件各工事について、奈良県から指名業者としての指名を受けていない。したがって、同被告は、本件各工事の入札には一切関係がなく、当該入札に何らの影響も行使することができない。 (2) 損害の不発生イ他社は受注不可能(イ) 本件各工事の内容a 本件各工事は、いずれも第一審被告横河電機が以前に施工した次の計装設備工事(以下、特定計装設備工事という)の改良増設工事である。 浄水場の水道施設に係るプロセス用監視制御システムを専らデジタル制御システムにより構成する計装設備工事。 b 本件各工事には、既設のDDC装置及びCRT装置の機能追加工事(以下、本件機能追加工事という)、及び既設のシステムに新たなCRT装置又はDDC装置を増設する工事(以下、本件増設工事という)が含まれる。 既設のDDC装置及びCRT装置を含むシステムは、いずれも第一審被告横河電機製である。 (ロ) 他社が受注不可能な理由a 本件機能追加工事のためには、既存のソフトウエアの改造が必要であるところ、他社に のDDC装置及びCRT装置を含むシステムは、いずれも第一審被告横河電機製である。 (ロ) 他社が受注不可能な理由a 本件機能追加工事のためには、既存のソフトウエアの改造が必要であるところ、他社には第一審被告横河電機製のソフトウエアを改造できるようなエンジニアは存在しない。したがって、本件機能追加工事は第一審被告横河電機以外にはできない工事である。 b 本件増設工事についても、接続用のバスの仕様は第一審被告横河電機独自のものであり、公開されていないため、他社は自社の装置を直接接続することは不可能である。もっとも、他社がインターフェイス装置を用いて接続することは、理論的には可能であるが、次の(a)ないし(e)の理由により事実上不可能である。 (a) 奈良県の仕様書(本件①工事分が乙19、本件②工事分が乙20)の記載に反することになる。 (b) 工事の効率やデータ信号の制御方法を無視せざるを得ない。 (c) 約1億円の費用を要する。 (d) インターフェイス装置を制作するのに第一審被告横河電機の協力が必要である。 (e) 処理速度が遅くなり安定性も低下するため、全く実用的でない。 c もっとも、他社は、第一審被告横河電機に本件機能追加工事、本件増設工事を下請発注すれば、施工できないではない。 しかし、本件各工事の主要部分である本件機能追加工事、本件増設工事を第一審被告横河電機に下請発注することを前提とすると、他社にとっては採算の予想が全くたたない。 それに、保守についても自分では全く責任を負うことができなくなる。 したがって、前示下請発注は机上の空論である。 (ハ)小括以上のとおり、特定計装設備工事については、業者毎にシステムに使用されているソフトウエアが異なるため、既設業者以外の業者には、既設設備の改良増設工事の施工が技術的、経済的に事実上 る。 (ハ)小括以上のとおり、特定計装設備工事については、業者毎にシステムに使用されているソフトウエアが異なるため、既設業者以外の業者には、既設設備の改良増設工事の施工が技術的、経済的に事実上不可能である。 それ故、第一審被告横河電機だけが本件各工事を受注することができ、他社がこれを受注することは事実上不可能であった。 ロ損害の不発生したがって、山手会が存在しようとしまいと、本件各工事の入札に当たっては、もともと、第一審被告横河電機のみが落札して受注することができ、他社は受注できなかったものである。このことは、第一審被告横河電機にとっても他の指名業者にとっても自明のことであり、本件各工事の入札において実質的な競争は存在しなかった。 第一審被告横河電機のみが落札して受注でき、他社は受注できない状況では、入札希望の有無、その価格に関する連絡の有無にかかわらず、同被告は自ら積算した価格で応札し、他社は落札できない高値で入札せざるを得ない。価格連絡は、他社の応札価格の算定を容易あるいは不要にしたにすぎない。 本件各工事の入札については、山手会及び価格連絡の有無にかかわらず、いずれにせよ、第一審被告横河電機が積算した価格で落札することになるものであって、山手会での価格連絡によって奈良県には何らの損害も生じていない。 2 第一審原告ら(一) 本案前の抗弁について本件監査請求は、第一審被告らが談合という不法行為を行って、奈良県に損害を与えたにもかかわらず、奈良県が損害賠償請求を怠っていることを理由とするものである。すなわち、本件監査請求の対象は、談合という不法行為を根拠とするものであり、請負契約という財務会計行為の違法、無効を理由とするものではない。したがって、本件監査請求は、真正怠る事実に該当し、1年の監査請求期間の制限に服さない は、談合という不法行為を根拠とするものであり、請負契約という財務会計行為の違法、無効を理由とするものではない。したがって、本件監査請求は、真正怠る事実に該当し、1年の監査請求期間の制限に服さないものである。 ところが、原判決は、本件損害賠償請求が成立するためには、第一審被告横河電機と奈良県との間で不当に高い金額で請負契約が締結されることが論理的前提であるという。そして、本件監査請求は不真正怠る事実を対象とするものであり、1年の監査請求期間の期限に服すると判断しているが、誤りである。 (二) 本案について(1) 談合による入札山手会のメンバーは、山手会以外の指名業者(アウトサイダー)とも入札価格の連絡を取り合い、山手会で決定した受注予定者が落札できるようにしていた。 (2) 損害の発生イ談合の目的からの推測業者が談合する目的は、業者間で特定の工事毎に受注予定業者を定めて受注量を調整するとともに、予定価格ぎりぎりで落札して最大限の利益を確保するところにある。本件各工事についても談合がある以上、とりも直さず談合がされなかった場合よりも工事価格が高額であることを示している。 ロ他社も受注可能(イ) 日本水道協会発行の「水道施設設計指針・解説」(厚生省監修)(甲50)には、次のa、bのとおり記載されている。もともと、水道施設は日本中で作られているから、第一審被告横河電機が他社による改良増設工事が不可能な既設設備を作っていた筈がない。他の指名業者も本件各工事を受注することが可能な筈である。 a 水道施設の計装化には、信号の取り合い仕様の明確化、統一化、標準化等を図ることが特に重要である。統一化の代表例には、コンピューターやネットワークを相互に接続する国際的な規格OSIがある。 b 伝送設備の信号の取り合いは、装置や機器の種類に関係な 化、統一化、標準化等を図ることが特に重要である。統一化の代表例には、コンピューターやネットワークを相互に接続する国際的な規格OSIがある。 b 伝送設備の信号の取り合いは、装置や機器の種類に関係なくできるだけ標準化し、いかなるシステムにも柔軟に適合できるようにする。 (ロ) 次の各事実に照らしても、本件各工事は他の指名業者も受注が可能であった。 a 他の指名業者も受注が可能であるからこそ、山手会で落札予定者を決定していた。 b 第一審被告横河電機以外は受注が不可能であるならば、奈良県は本件各工事を指名競争入札に付さない。 c 第一審被告横河電機以外は受注不可能であるならば、他の指名業者は、指名を辞退するか入札しない筈である。ところが、他の業者は、そのような対応をとっていない。 (3) 損害額イ談合による損害本件工事①の落札率(予定価格に対する落札価格の割合)は99%、本件工事②の落札率は99.5%であった。談合がなく自由競争であった場合の落札率の平均は80%前後である。それ故、奈良県は、第一審被告らの談合により、本件各工事の落札価格の20%である1億8,828万4,000円の損害を被った。 仮に前示主張が認められないとしても、第一審被告らの談合により奈良県が受けた損害は、民訴法248条により、少なくとも本件各工事の契約価格の10%である9,142万円と認めるべきである。ところが、原判決は、本件各工事の契約価格の5%である4,571万円の損害しか認めておらず、低額すぎる。 ロ弁護士報酬原判決は、第一審原告らの弁護士報酬請求を認めなかった。しかし、この判断は誤っている。住民訴訟としての代位請求訴訟の判決確定前においても、奈良県が第一審原告らに支払うべき弁護士報酬額を確定し、これを奈良県の損害として、第一審被告らの代位請求訴訟の た。しかし、この判断は誤っている。住民訴訟としての代位請求訴訟の判決確定前においても、奈良県が第一審原告らに支払うべき弁護士報酬額を確定し、これを奈良県の損害として、第一審被告らの代位請求訴訟の判決の中で支払を命ずるべきである。 理由 第一判断の大要当裁判所は、大要次のとおり判断する。次の第二ないし第四でその理由を述べる。 一事実の要点 1 当事者第一審原告らは、いずれも奈良県の住民である。第一審被告らは、特定計装設備工事の施工業者である。第一審被告横河電機は、奈良県から指名競争入札の方法により、本件各工事(特定計装設備工事)を受注した。 2 課徴金納付命令の発付公正取引委員会は、平成7年8月8日第一審被告らに対し、地方公共団体が指名競争入札の方法で発注した特定計装設備工事27件(本件各工事を含む)について、第一審被告らが独占禁止法で禁止されている違法な談合をしたとして、課徴金納付命令を発した。 3 本訴請求第一審原告らは、次のとおり主張して、第一審被告らに対し、奈良県に代位して、奈良県への損害賠償金の支払を求める本件住民訴訟を提起した。 (一) 第一審被告横河電機の本件各工事の受注は、第一審被告らの違法な談合によるものである。 (二) 奈良県は、第一審被告らの談合(共同不法行為)により、第一審被告横河電機との間で、不当につり上げられた高い価格で本件各契約を締結させられ、損害を被った。 (三) ところが、奈良県は、第一審被告らに対し、不法行為による損害賠償金の支払を求めない。 (四) そこで、奈良県の住民である第一審原告らは、奈良県に代位して、第一審被告らに対し、奈良県への損害賠償金の支払を求める。 二判断の要点 1 本案前の抗弁について本件監査請求は適法であり、これを前提とする本件訴えも適法である 第一審原告らは、奈良県に代位して、第一審被告らに対し、奈良県への損害賠償金の支払を求める。 二判断の要点 1 本案前の抗弁について本件監査請求は適法であり、これを前提とする本件訴えも適法である。その理由は、以下のとおりである。 (一) 監査請求期間の制限規定の不適用本件監査請求は、違法な談合に基づく損害賠償請求権を行使しないという財産管理を怠る事実を対象とするものであるから、法242条2項が定める監査請求期間の制限規定の適用はない。 (二) 正当な理由の存在仮に、本件監査請求にも監査請求期間の制限規定の適用があり、同期間1年を徒過したと解されるとしても、本件については徒過したことに正当な理由(法242条2項但書)が認められる。 2 本案について(一) 不正な談合行為の存在第一審被告横河電機、同日立製作所、同富士電機は、奈良県が指名競争入札の方法で発注した本件工事①②(同富士電機は本件工事②のみ)について、他の指名競争入札者との間で不正な談合をしていた。これは奈良県に対する共同不法行為と認められる。 (二) 損害の発生、損害額(1) 本件各工事は既設の特定計装設備工事の改良増設工事であるが、既設業者である第一審被告横河電機以外の指名業者も、受注して施工することが技術的、経済的に可能であった。 (2) 奈良県は、第一審被告横河電機、同日立製作所、同富士電機の共同不法行為(談合)により、次のイ、ロ(同富士電機はロのみ)の合計4,571万円の損害を被った。 イ本件工事①の契約価格の5%に当たる531万円の損害。 ロ本件工事②の契約価格の5%に当たる4,040万円の損害。 三原判決の当否 1 原判決は、第一審被告ら4社に対し、損害賠償金4,571万円(本件工事①②双方)の連帯支払を命じた。 2 当裁判所の判断は、次のとおりである の5%に当たる4,040万円の損害。 三原判決の当否 1 原判決は、第一審被告ら4社に対し、損害賠償金4,571万円(本件工事①②双方)の連帯支払を命じた。 2 当裁判所の判断は、次のとおりである。 (一) 第一審被告横河電機、同日立製作所は、損害賠償金4,571万円の連帯支払義務がある。 (二) 第一審被告富士電機は、同横河電機、同日立製作所と連帯して、損害賠償金4,040万円(本件工事②のみ)の支払義務がある。 (三) 第一審被告山武は、損害賠償金の支払義務がない。 3 したがって、原判決中、第一審被告富士電機、同山武に関する部分は、同被告らの控訴に基づき変更を免れない。 第二争いのない事実等一第一審原告らの立場、本件各契約の締結、本件課徴金納付命令の存在、本件監査請求の経過等については、原判決3頁5行目から同7頁2行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。 二なお、本件各工事についてはいずれも、第一審被告横河電機が落札後発注者(奈良県)側と打ち合わせをした際、発注者側は一部工事が不要ということになり、設計変更が行われた。その結果、本件各契約価格は、各落札価格よりも減額されることになった(弁論の全趣旨)。 第三本案前の抗弁の検討一監査請求期間の徒過の検討 1 法242条2項の適用の有無(一) 「当該行為」「怠る事実」と監査請求期間の制限住民監査請求は、財務会計上の行為(当該行為)のあった日又は終わった日から1年を経過したときは、「正当な理由」がない限り、これをすることができない(法242条2項)。 このように、法242条2項が監査請求期間を原則として1年と制限しているのは、「当該行為」(具体的には、法242条1項所定の公金の支出、財産の取得、管理、処分、契約の締結、履行、債務その他の義務の負担をいう)についての監 2項が監査請求期間を原則として1年と制限しているのは、「当該行為」(具体的には、法242条1項所定の公金の支出、財産の取得、管理、処分、契約の締結、履行、債務その他の義務の負担をいう)についての監査請求である。 「怠る事実」(具体的には、法242条1項所定の公金の賦課、徴収、財産の管理を怠る事実をいう)の監査請求については、監査請求期間の制限について規定していない。怠る事実については、財務会計上の行為のあった日又は終わった日という観念を入れる余地がないからである。 したがって、普通地方公共団体の住民が、当該普通地方公共団体において違法に財産の管理を怠る事実があるとして、法242条1項の規定により適当な措置を求めた住民監査請求については、同条2項が定める監査請求期間の制限の適用がない(最判昭和53・6・23判例時報897号54頁)。 (二) 「当該行為」と表裏一体の関係に立つ「怠る事実」の監査請求(1) 普通地方公共団体において違法に財産の管理を怠る事実があるとして、法242条1項の規定による住民監査請求があった場合でも、同監査請求が、当該普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為を違法であるとし、当該行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものがある。 このような住民監査請求については、当該怠る事実に係る請求権の発生原因たる当該行為のあった日又は終わった日を基準として、法242条2項の規定を適用すべきものと解するのが相当である。 (2) 何故ならば、法242条2項の規定により、当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過した後にされた監査請求は不適法とされ、当該行為の違法是正等の措置を請求することができないものとされている。 ところが、監査請 42条2項の規定により、当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過した後にされた監査請求は不適法とされ、当該行為の違法是正等の措置を請求することができないものとされている。 ところが、監査請求の対象を、当該行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使という怠る事実として構成することにより、法242条2項の定める監査請求期間の制限を受けずに当該行為の是正等の措置を請求し得るものとすれば、法が同項の規定により監査請求に期間制限を設けた趣旨が没却されるからである(最判昭和62・2・20民集41巻1号122頁)。 (3) すなわち、「当該行為」についての監査請求期間が満了した後も、当該行為と表裏一体の関係に立つ、当該行為によって生じた地方公共団体の実体法上の請求権の行使を怠る事実について、いつまでも適法に監査請求を提起できるとするのは不合理である。 そこで、このような怠る事実については、表裏一体の関係に立つ当該行為と同一の監査請求期間の制限規定が適用される。 (三) 法242条2項の適用の有無(1) 本件監査請求及び本訴請求の法的構成第一審原告らは、本件監査請求及び本訴請求の法的構成として、次のとおり主張している。 イ本件監査請求は、第一審被告らが談合という共同不法行為を行って、奈良県に損害を与えたにもかかわらず、奈良県が損害賠償請求を怠っていることを理由とするものである。 ロすなわち、本件監査請求の対象は、談合という共同不法行為を理由とするものであり、請負契約という財務会計行為の違法、無効を理由とするものではない。 (2) 本件監査請求が「当該行為」の監査請求と表裏一体関係の有無イ本件監査請求では、第一審被告らによる共同不法行為(談合)の有無と、それと相当因果関係のある奈良県の損害の有無、程度が問題とさ 。 (2) 本件監査請求が「当該行為」の監査請求と表裏一体関係の有無イ本件監査請求では、第一審被告らによる共同不法行為(談合)の有無と、それと相当因果関係のある奈良県の損害の有無、程度が問題とされている。奈良県の財務関係職員は、第一審被告らによる共同不法行為(談合)により騙された被害者側の人間である。第一審原告らは、本件監査請求、本訴請求では、騙された奈良県の財務関係職員の違法を問題としていない。 ロ談合という違法行為と、請負契約の違法とは別の法的行為である。業者が普通地方公共団体の請負工事の入札において談合すれば、それだけで普通地方公共団体に対する違法行為が完了する。 すなわち、普通地方公共団体は、談合により決められた業者と決められた金額で請負契約を締結するのであるが、請負契約締結前に業者が談合していたことが発覚し、そのために請負契約が締結されなくとも、業者の談合という違法行為が完了する。 ハ例えば、普通地方公共団体が、業者に談合されたために請負工事の入札のやり直しを余儀なくされ、その結果、請負工事が遅延したりして余分に経費を要した場合は、普通地方公共団体の損害となり、談合した業者にその損害賠償義務が生じる。 普通地方公共団体が談合により不当に高くなった金額で請負契約を締結した場合は、高くなった請負代金額が普通地方公共団体の損害となる。 このように、業者による談合という不法行為が成立するには、請負契約の締結が不可欠の前提ではない。 ニまた、業者が談合をした場合、談合に加わった業者すべてが不法行為による損害賠償義務者となる。ところが、談合により請負代金が不当につり上げられ、金額が高いために請負契約が違法となっても、債務不履行による損害賠償義務者は、請負契約の当事者だけである。 住民監査請求において、談合という不法行為が問題 、談合により請負代金が不当につり上げられ、金額が高いために請負契約が違法となっても、債務不履行による損害賠償義務者は、請負契約の当事者だけである。 住民監査請求において、談合という不法行為が問題となっている場合は、業者が談合したかどうか、業者の談合により普通地方公共団体に損害が生じたか否かが監査の対象となる。請負代金が高いために請負契約が違法であるかが問題となっている場合は、請負代金が違法に高いかどうかが監査の対象となる。 ホ以上のとおり考察を進めてくれば、次の(イ)の「怠る事実」の監査請求(本件監査請求)が、次の(ロ)の「当該行為」の監査請求と表裏一体の関係にはないことが明らかとなる。 (イ) 奈良県が、第一審被告らの談合(共同不法行為)により不当に高くなった金額による請負契約(本件各契約)を締結させられたことによる損害について、談合をした業者(第一審被告ら)に対する損害賠償請求権の行使を怠っていることを理由とする監査請求。 (ロ) 奈良県の財務関係職員が不当に高額な金額による請負契約(本件各契約)を締結したことによる請負契約上の違法についての監査請求。 (3) 小括以上によると、本件監査請求は、「当該行為」と表裏一体の関係に立つ「怠る事実」の監査請求ではなく、純然たる「怠る事実」の監査請求であり、法242条2項所定の監査請求期間の制限規定の適用がない。それ故、1年の監査請求期間の徒過を理由とする第一審被告らの本案前の抗弁は理由がない。 2 正当な理由の有無以上の1の判断とは異なり、第一審被告らが主張するとおり、仮に本件監査請求について法242条2項本文の適用があり、本件監査請求期間の起算点が本件各契約の締結日(本件契約①は平成5年3月9日、本件契約②は平成6年2月21日)であるとしても、次のとおりその徒過につき正当理由がある て法242条2項本文の適用があり、本件監査請求期間の起算点が本件各契約の締結日(本件契約①は平成5年3月9日、本件契約②は平成6年2月21日)であるとしても、次のとおりその徒過につき正当理由がある。 (一) すなわち、この場合にも、本件監査請求(平成7年11月27日付)は、法242条2項但書所定の正当理由があるものと認める。 (二) その理由は、原判決48頁9行目から59頁7行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、次のとおり補正する。 (1) 前示原判決中の「被告ら五社」を「第一審被告ら四社」と改める。 (2) 原判決52頁1行目の「乙一○、一六」の次に「、もっとも、この新聞報道は、上水道(あるいは浄水場)を下水道(あるいは下水処理場)と誤記している。」を加える。 (3) 同58頁4行目の「A」の次に「(ただし、A弁護士は、控訴審では第一審原告らの代理人となっていない)」を加える。 (三) 以上によると、仮に本件監査請求が1年の監査請求期間を徒過した後にされたものとしても、同期間を徒過したことに正当な理由があるから、法242条2項但書により本件監査請求は適法なものと認められる。 いずれにしても、第一審被告らの本案前の答弁は理由がない。 二違法に怠る事実の有無の検討 1 第一審被告らは、本案前の抗弁として、奈良県には「違法に怠る事実」はないと主張している。 2 しかし、訴訟要件の判断に当たっては、第一審原告らの主張の事実からその当否を判断すべきものであって、その実体的存否によってこれを決すべきものではない。それは請求の当否という本案の判断そのものだからである。 そして、第一審原告らは、奈良県は第一審被告らに対して談合という不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているにもかかわらず、奈良県知事はこれを行使しないと主張している以上 判断そのものだからである。 そして、第一審原告らは、奈良県は第一審被告らに対して談合という不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているにもかかわらず、奈良県知事はこれを行使しないと主張している以上、これに従って一応損害賠償請求権が存在するものと措定して考えるべきものである。 そうだとすると、奈良県が本件においてこの損害賠償請求権を行使していないことは明らかであって、これが法242条の2第1項4号の代位請求の要件である怠る事実が存在するというべきである。 3 その理由は、原判決60頁1行目から63頁5行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決60頁1行目の「法二三七条」を「法二三七条一項」と改める。 4 よって、第一審被告らの前示1の本案前の抗弁も理由がない。 第四本案の検討一山手会会員による談合行為の有無の検討 1 第一審被告らは、遅くとも平成元年1月から平成6年3月まで、山手会と称する談合組織を設け、地方公共団体が指名競争入札の方法により発注する特定計装設備工事について、受注価格の低落防止を図るため、不正な談合行為を繰り返していた事実が認められる。 2 その詳細については、原判決65頁3行目から同70頁8行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、同原判決中の「被告ら五社」「五社」をいずれも「第一審被告ら」と改める。 二本件入札と不正な談合の検討 1 不正な談合(一) 第一審被告らは、山手会では、受注予定者を決定したり、落札価格の低落防止を目的とする不正な談合はしていないと主張する。 (二) しかし、前示一で原判決の引用、補正により認定したとおり、山手会では、地方公共団体発注の特定計装設備工事を競争によって受注することを避け、受注予定者を決定したり受注価格の調整をしたりして、落札価格の低落防止を 示一で原判決の引用、補正により認定したとおり、山手会では、地方公共団体発注の特定計装設備工事を競争によって受注することを避け、受注予定者を決定したり受注価格の調整をしたりして、落札価格の低落防止を目的とする不正な談合をしていたことが認められる。 このことは、次の各証拠からも明らかである。 (1) 第一審被告横河電機のIA営業統括本部室課長のBは、公正取引委員会審査官に対する供述調書(甲5)の中で、次のとおり認めている。 山手会では、受注予定者を決定したり、受注価格の調整をしたりして、落札価格の低落防止を目的とする不正な談合をしていた。 (2) 株式会社島津製作所が公正取引委員会に提出した山手会の憲章(基本ルール)を記載した文書(甲9の6)には、「取組み姿勢(概念)」の表題で、「取り合いの場ではなく、秩序を持たせ価格を維持することが目的」と記載されている(甲9の1、甲9の6)。 この山手会の憲章(物的証拠)からも、山手会では、競争によって受注することを避け、受注予定者を決定したり受注価格の調整をしたりして、落札価格の低落防止を目的とする不正な談合をしていたことが裏付けられる。 (三) 第一審被告らの前示(一)の主張は採用できない。 2 アウトサイダー(一) 次の事実は、当事者間に争いがない。 (1) 山手会に参加していたのは、第一審被告ら4社と株式会社島津製作所だけである。他方、地方公共団体が発注する特定計装設備工事の入札において、第一審被告ら4社以外にも多数の大手電機メーカー等(アウトサイダー)が指名されていた。 (2) 現に、本件工事①では、第一審被告横河電機、同日立製作所以外に、明電舎、日新電機、三菱電機、沖電気工業が入札業者に指名されていた。また、本件工事②では、第一審被告横河電機、同日立製作所、同富士電機以外に、明電舎、日新電 第一審被告横河電機、同日立製作所以外に、明電舎、日新電機、三菱電機、沖電気工業が入札業者に指名されていた。また、本件工事②では、第一審被告横河電機、同日立製作所、同富士電機以外に、明電舎、日新電機、沖電気工業、シャープが入札業者に指名されていた。 (二) そして、第一審被告横河電機のIA営業統括本部室営管部長であったDは、別件事件の証人尋問の中で、次の趣旨の証言をしている(乙22の174~176項)。 第一審被告横河電機が受注予定の特定計装設備工事で、山手会の会員以外の会社(アウトサイダー)が地方公共団体から入札参加の指名を受けていた場合には、同被告の方でアウトサイダーの会社に電話して、同被告が確実に受注できるように入札価格の連絡調整をしていた。 第一審被告横河電機も、平成12年5月31日付準備書面の10頁で、同被告がアウトサイダーの会社とも価格連絡をしていたことを認めている。 (三) したがって、第一審被告横河電機は、奈良県から本件各工事の入札業者に指名されていた山手会以外の会社(前示(一)(2)のアウトサイダー)に対しても、同被告が確実に本件各工事を受注できるように、入札価格の連絡調整をしていたことが認められる。 3 無指名業者前示2(一)(2)のとおり、本件工事①については、第一審被告富士電機、同山武が入札業者に指名されておらず、本件工事②については、第一審被告山武が入札業者に指名されていない。したがって、同富士電機は本件①工事の談合に加わっておらず、同山武は本件各工事のいずれの談合にも加わっていないものといわざるを得ない。 4 小括(一) 第一審被告横河電機、同日立製作所、同富士電機について以上の一及び二の1ないし3の認定事実を総合すると、第一審被告横河電機、同日立製作所、同富士電機は、次の(1)(2)のとおり不正な談 括(一) 第一審被告横河電機、同日立製作所、同富士電機について以上の一及び二の1ないし3の認定事実を総合すると、第一審被告横河電機、同日立製作所、同富士電機は、次の(1)(2)のとおり不正な談合をしていたのであり、これは奈良県に対する共同不法行為に当たると認められる。 (1) 本件工事①分第一審被告横河電機は、同日立製作所及び他の指名業者4社と連絡を取り合い、奈良県発注に係る本件工事①について、指名業者間で公正な競争をすることにより落札価格が低下することを防ぎ、契約価格をつり上げて不当な利益を図る目的の下に、予め落札者を第一審被告横河電機と取り決め、同被告が確実に落札できるように入札価格の調整をする談合をしていた。 (2) 本件工事②分第一審被告横河電機は、同日立製作所、同富士電機及び他の指名業者4社と連絡を取り合い、奈良県発注に係る本件工事②について、指名業者間で公正な競争をすることにより落札価格が低下することを防ぎ、契約価格をつり上げて不当な利益を図る目的の下に、予め落札者を第一審被告横河電機と取り決め、同被告が確実に落札できるように入札価格の調整をする談合をしていた。 (二) 第一審被告山武について前示3のとおり、第一審被告山武は本件各工事のいずれの談合にも直接加わっていないので、第一審原告らの同被告に対する本件損害賠償請求は、その余の点について論じるまでもなく、その前提において既に理由がない。 三損害の発生、損害額の検討 1 他社の受注可能の検討(一) 第一審被告らの主張(1) 本件各工事はいずれも、第一審被告横河電機が以前に施工した特定計装設備工事の改良増設工事である。 (2) 本件各工事には、既設のDDC装置及びCRT装置の機能追加工事、及び既設のシステムに新たなCRT装置又はDDC装置を増設する工事が含まれ 以前に施工した特定計装設備工事の改良増設工事である。 (2) 本件各工事には、既設のDDC装置及びCRT装置の機能追加工事、及び既設のシステムに新たなCRT装置又はDDC装置を増設する工事が含まれる。既設のDDC装置及びCRT装置を含むシステムは、いずれも第一審被告横河電機製である。 (3) 本件各工事のような特定計装設備工事については、業者毎にシステムに使用されているソフトウエアが異なる等のため、既設業者以外の業者には、既設設備の改良増設工事の施工が技術的、経済的に事実上不可能である。 それ故、もともと第一審被告横河電機だけが本件各工事を受注することができ、他社がこれを受注することは事実上不可能であった。 (二) 検討(1) B供述の検討イ B供述の内容B(第一審被告横河電機のIA営業統括本部室課長)は、公正取引委員会の審査官に対する供述調書(甲5)の中で、次のとおり供述している。 (イ) 山手会で報告される物件の8割強が既設物件、2割弱が新設物件であった。既設物件の場合、既設業者の尊重、客先意向というのが受注予定者決定の基本原則となっていた。 (ロ) 既設物件の場合、山手会の会合で「当社の既設です」と報告すると、他社はそれを確認のうえすんなり譲って既設業者が受注予定者と決まることが殆どであるが、それでも複数の受注希望がでることもあった。 (ハ) 既設物件の場合、発注元も既設設備を基本として工事内容を考えるし、既設業者が保守・点検等で発注元への出入りが多くなり、良い意味での人間関係ができているので、既設業者に有利に働く。 そして、既設業者側も、一度受注した物件の延長線にある既設物件を他社に取られたくないという意識が働き、営業活動にも励むため、どうしても既設業者に有利に働く。 ロ検討(イ) 本件課徴金納付命令の対象となった工事 者側も、一度受注した物件の延長線にある既設物件を他社に取られたくないという意識が働き、営業活動にも励むため、どうしても既設業者に有利に働く。 ロ検討(イ) 本件課徴金納付命令の対象となった工事は、いずれも特定計装設備工事(浄水場の水道施設に係るプロセス用監視制御システムを専らデジタル制御システムにより構成する計装設備工事)である。 前示イのB供述によると、山手会で報告される受注物件の8割強が既設の特定計装設備工事の改良増設に関するものであったが、山手会の会員各社は、既設物件についても自由競争に任せることをしていない。 すなわち、既設業者優先、客先尊重というルールを設けて競争を排除し、受注予定者と落札価格を決定する必要があった。既設物件について、既設業者尊重のルールに従わない複数の受注希望があったケースも若千見られたことを認めている。 (ロ) もし、第一審被告らの前示(一)の主張どおりだとすると、既設物件の改良増設工事を受注できるのは既設業者だけであり、他社がこれを受注することが技術的、経済的に事実上不可能である。そうであるなら、Bも当然審査官に対しそのことを述べる筈である。ところが、Bはそのようなことを審査官に述べていない。 また、第一審被告らの前示(一)の主張どおりであれば、発注物件が既設物件の改良増設工事であれば、自由競争にしても100%既設業者が落札する筈で、他社は絶対に落札できない。それ故、山手会という談合組織で、既設物件の受注予定者、入札価格を協議する必要もない筈である。ところが、山手会では、既設物件についても談合の対象とし、受注予定者と入札価格の調整をしている。 (ハ) 前示イ(ハ)のとおり、Bは、「既設業者側も、一度受注した物件の延長線にある既設物件を他社に取られたくないという意識が働き、営業活動にも励むため、どうし 注予定者と入札価格の調整をしている。 (ハ) 前示イ(ハ)のとおり、Bは、「既設業者側も、一度受注した物件の延長線にある既設物件を他社に取られたくないという意識が働き、営業活動にも励むため、どうしても既設業者に有利に働く」と供述している。 これは、既設業者が、もともと(互換性の問題だけでは)圧倒的に有利な立場にはないからこそ、既設物件の改良増設工事を他社に取られたくないとの意識を持って、懸命に営業活動を行い、その受注を取り付けるために努力していることを示している。 (ニ) 以上のとおり、第一審被告らの前示(一)の主張は、前示(二)(1)イのB供述に照らし採用できず、認めることができない。 (2) 本件課徴金納付命令を巡る第一審被告らの対応イ事実の認定証拠(甲3、甲9の2ないし5、乙15)及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。 (イ) 公正取引委員会の事前通知公正取引委員会は、平成7年7月6日、第一審被告らに対し、独占禁止法48条の2第4項、公正取引委員会の審査及び審判に関する規則21条の2に基づき、次の各事項を通知した(乙15)。 a 公正取引委員会が第一審被告らに対し、特定計装設備工事について、独占禁止法3条違反により課徴金の納付を命じることになった。 b 第一審被告らは、地方公共団体が指名競争入札の方法により発注する特定計装設備工事について、受注価格の低落防止を図るため、山手会と称する会合を開き、受注予定者を決定したうえ、受注予定者以外の相指名業者は、受注予定者の入札価格よりも高い価格で入札することにより、受注予定者が受注できるように協力していた。 c 第一審被告らの前示行為は、公共の利益に反して、地方公共団体が指名競争入札の方法により発注する特定計装設備工事の取引分野における競争を実質的に制限するものである。これ きるように協力していた。 c 第一審被告らの前示行為は、公共の利益に反して、地方公共団体が指名競争入札の方法により発注する特定計装設備工事の取引分野における競争を実質的に制限するものである。これは、独占禁止法2条6項に規定する不当な取引制限に該当し、同法3条の規定に違反する。 d 課徴金の額は、第一審被告横河電機が2億0,686万円、同日立製作所が2億1,679万円、同富士電機が9,729万円、同山武が2,385万円である。 e 第一審被告らは公正取引委員会に対し、以上の事前通知事項について、平成7年7月20日までに、文書により意見を述べ、証拠を提出することができる。 (ロ) 事前通知後の手続a しかし、第一審被告ら4社はその1社も、平成7年7月20日までに、前示(イ)eに基づく意見を述べたり、証拠を提出したりして、通知内容を争う措置をとらなかった。 b そこで、公正取引委員会は、平成7年8月8日、第一審被告らに対し、独占禁止法48条の2第1項に基づき、27件の特定計装設備工事(うち2件が本件各工事である)について、独占禁止法3条違反による課徴金納付命令(甲3)を発した。 c 第一審被告ら4社は、同課徴金納付命令について、独占禁止法48条の2第5項に基づく不服申立の手続をとらずこれを受け入れ、前示(イ)d記載の各課徴金を国庫に納付した。 ロ検討(イ) 課徴金納付命令の対象となった工事課徴金納付命令の対象となったのは特定計装設備工事27件であり、そのうちの2件が本件各工事である(甲3)。 山手会が談合の対象とする受注工事の8割強が既設工事の改良増設工事に関する分であるから(甲5)、課徴金納付命令の対象となった計装設備工の大部分も既設工事の改良増設工事に関する分と推認できる。 (ロ) 予想される第一審被告らの対応第一審被告らが前 の改良増設工事に関する分であるから(甲5)、課徴金納付命令の対象となった計装設備工の大部分も既設工事の改良増設工事に関する分と推認できる。 (ロ) 予想される第一審被告らの対応第一審被告らが前示(一)で主張するように、仮に既設業者以外の業者は、既設工事の改良増設工事の施工が事実上不可能であり、既設業者だけが受注可能であるとしよう。 その場合は、第一審被告らが山手会の場で入札希望の有無、入札予定価格について連絡し合っていても、既設工事に関する分については、実質的な競争存在しなかった。それ故、そのような行為は、「一定の取分野における競争を実質的に制限する」(独占禁止法2条6項)行為とはいえず、独占禁止法7条の2第1項、同3条、同2条6項所定の「不当な取引制限」には該当しない筈でる。 したがって、第一審被告らは、本件課徴金納付命令の内容を予め通知され、意見を述べたり証拠を提出できると告げられた時点で、公正取引委員会に前示(一)の意見を述べ、それを裏付ける証拠を提出していたであろう。そして、既設工事に関する分については、「不当な取引制限」に該当する行為をしていないと主張したに違いない。 また、本件課徴金の額は、最低の第一審被告山武でも2,385万円、最高の第一審被告日立製作所では2億1,679万円と巨額であった(前示(二)(2)イ(イ)d)。それ故、第一審被告らは、本件課徴金納付命令に対しても不服申立の手続(独占禁止法48条の2第5項)をとり、前示(一)のとおり主張して、既設工事に関する分(8割強を占める)については、本件課徴金納付命令を争う筈だと思われる。 (ハ) 第一審被告らの現実の対応から推測される事実ところが、不思議なことに、第一審被告ら4社は、1社もそのような手続をとっていない。事前通告に対し争う姿勢を示さなかったし、本件 だと思われる。 (ハ) 第一審被告らの現実の対応から推測される事実ところが、不思議なことに、第一審被告ら4社は、1社もそのような手続をとっていない。事前通告に対し争う姿勢を示さなかったし、本件課徴金納付命令に対しても争わずに、直ちに課徴金全額を国庫に納付している(前示(二)(2)イ(ロ))。 その理由について、第一審被告らは、こう主張する。山手会の場で受注予定者を決定していないものの、入札価格の連絡をしていたことは事実であった。それに加え、課徴金納付命令を争うことによる弁護士費用の負担や、制裁的意味合いでの公正取引委員会による刑事告発の可能性を考慮して、課徴金を納付したにすぎない、と。 しかし、既設業者以外の業者は、第一審被告ら主張のように、既設設備の改良増設工事の施工が事実上不可能であり、既設業者だけが受注可能であったとすると、同被告らが本件課徴金納付命令を争わず、直ちに課徴金全額を国庫に納付したことは、第一審被告らの前示弁解だけでは説明がつかない。 真実は、課徴金納付命令の対象となった工事中、本件各工事を含む既設設備の改良増設工事分についても、既設業者以外の業者も落札して受注することが、技術的、経済的にも可能であった。だからこそ、第一審被告らが山手会の場で不正な談合を行い、「不当な取引制限」に該当する行為をしていたのである。そこで、第一審被告らは、本件課徴金納付命令を争わず、直ちに課徴金全額を国庫に納付したと推認できる。 (二) 小括以上のとおり、第一審被告らの前示(一)の主張は、本件課徴金納付命令を巡る第一審被告らの対応に照らしても、採用することができない。 (3) 「水道施設設計指針・解説」の検討イ記載内容「水道施設設計指針・解説」(1990年版)(社団法人日本水道協会発行、厚生省監修)の「計装設備」の箇所 照らしても、採用することができない。 (3) 「水道施設設計指針・解説」の検討イ記載内容「水道施設設計指針・解説」(1990年版)(社団法人日本水道協会発行、厚生省監修)の「計装設備」の箇所には、次のとおり記載されている(甲50)。 (イ) 各施設に設置する計装用機器及び信号の形式は、保守の容易性、互換性、予備品確保などの上からも、統一することが望ましい(552頁)。 (ロ) 水道施設に増設や改造などの変更があれば、当然計装設備もこれに伴って変更しなければならない場合が多い。そのため、できるだけ変更に対して弾力性を持たせて計画すべきであり、保守管理の容易性などを考慮してできる限り簡素なものであることが望ましい(552頁)。 (ハ) 機種及び信号は、計画の容易性、保守の簡易性、機器の互換性及び予備品の共通性などから、できるだけ統一することが望ましい(555頁)。 (ニ) 伝送設備の信号の取り合いは、装置や機器の種類に関係なくできる限り標準化し、いかなるシステムにも柔軟に適合できるようにする(584頁)。 (ホ) 水道施設の計装化には、信号の取り合い仕様の明確化、統一化、標準化等を図ることが特に重要である。統一化の代表例には、コンピューターやネットワークを相互に接続する国際的な規格OSIがある(587頁)。 (ヘ) 現在までに各層の基本標準ができ、これを用いてパケット交換網、LANあるいはISDNで接続されたシステム相互間で、電子メールやファイル転送など数種の応用ができるようになった(592頁)。 (ト) GP-IBは、計測器を対象として機器相互の入出力信号や制御法はもとより、コネクタ、ケーブルまでも国際的に統一することを目的とした計測器用インターフェイスである(593頁)。 ロ検討(イ) 前示イの「水道施殻設計指針・解説」は、浄水場等の 力信号や制御法はもとより、コネクタ、ケーブルまでも国際的に統一することを目的とした計測器用インターフェイスである(593頁)。 ロ検討(イ) 前示イの「水道施殻設計指針・解説」は、浄水場等の水道施設に係るデジタル計装制御システムについて、各メーカー毎の製品の互換が不可能であることを前提とした記載にはなっていない。 すなわち、計装制御システムを統一することが望ましいとの記載はあるが(前示イ(イ)(ハ))、むしろ、前示イ(ロ)、(ニ)ないし(ト)は、各メーカー毎の製品の互換が技術的にも可能なことを前提とする記載である。 (ロ) 第一審被告らは、浄水場等の水道施設に係るデジタル計装制御システムについて、他社が既設メーカーのシステムの改良増設工事をすることは、システムに使用されているソフトウエアが異なること等から技術的、経済的に事実上不可能であると主張する。 しかし、第一審被告らは、これを裏付ける客観的な技術文献を提出しない。ただ、第一審被告横河電機の技術部長(C)が、第一審被告らの主張に沿った陳述をし(乙23)、証人として当審でその主張に沿った証言をしているだけである。 (ハ) これでは、前示イの「水道施設設計指針・解説」の記載内容に照らしても、第一審被告らの前示(一)の主張は採用することができない。 (4) 指名競争入札の検討イ法、同施行令の定め(イ) 地方公共団体が締結する請負契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法による(法234条1項)。指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令に定める場合に該当するときに限り、これによることができる(法234条2項)。 (ロ) その性質又は目的により競争に加わるべき者の数が一般競争入札に付する必要はないと認められる程度に少数である請負契約を締結するときは、指名競争入 、これによることができる(法234条2項)。 (ロ) その性質又は目的により競争に加わるべき者の数が一般競争入札に付する必要はないと認められる程度に少数である請負契約を締結するときは、指名競争入札にすることができる(法施行令167条2号)。 (ハ) その性質又は目的が競争入札に適しない請負契約を締結するときは、随意契約によることができる(法施行令167条の2第1項2号)。 ロ本件各請負契約の締結方法等(イ) 本件課徴金納付命令の対象となった27件の特定計装設備工事は、新設工事が2割弱、既設設備の改良増設工事が8割強である(甲3、甲5)。 前示27件の工事発注者である地方公共団体は、そのすべてについて指名競争入札に付している。本件各工事についても、発注者である奈良県知事は指名競争入札に付している(甲3、甲4の1、2)。 (ロ) 第一審被告らの前示(一)の主張によると、本件課徴金納付命令の対象となった27件の工事中、既設設備の改良増設工事は既設業者だけが受注することができ、他社がこれを受注することは技術的にも経済的にも事実上不可能である。 そうだとすると、そのような工事についての請負契約は、前示イ(ハ)のその性質又は目的が競争入札に適しない請負契約であるから、指名競争入札ではなく随意契約でなくてはならない。 何故なら、既設設備の施工業者以外は、これを受注することが技術的、経済的に事実上不可能であるから、入札しないか、入札したとしても、既設業者の入札価格に比べて極めて高額な価格による入札しかしないことが、明らかだからである。 (ハ) ところが、本件各工事の発注者である奈良県を初めとして、多数の地方公共団体が、既設工事分についても指名競争入札に付している。 これは、奈良県を初めとする多数の地方公共団体の担当者が、既設設備の改良増設工事であ 件各工事の発注者である奈良県を初めとして、多数の地方公共団体が、既設工事分についても指名競争入札に付している。 これは、奈良県を初めとする多数の地方公共団体の担当者が、既設設備の改良増設工事であっても、既設業者以外の他の業者も、これを受注して施工することが技術的、経済的に可能と判断していたからに外ならない。 ハ C証言の検討(イ) 証言内容証人C(第一審被告横河電機の環境システム技術部長)は、当審で次のとおり証言する。 a 本件各工事は、第一審被告横河電機だけが受注することができ、他社がこれを受注することは技術的、経済的に事実上不可能であった。 b 奈良県の技術者も、本件各工事は第一審被告横河電機以外は受注することが事実上不可能であることを知っていたと思う(C証人調書34、35、40頁)。 (ロ) 証言の分析証人Cの前示証言が事実であるとすると、奈良県の担当者は、次のような認識を持ち、極めて欺瞞的で、矛盾に満ちた行動をとっていたことになる。 a 奈良県の担当者は、本件各工事は第一審被告横河電機以外は受注することが事実上不可能であることを知っていた。それにもかかわらず、同担当者は、同被告の外5社ないし6社を本件各工事の入札に参加するように指名し、本件各工事を6社ないし7社による指名競争入札に付した。 b 第一審被告横河電機以外の5社ないし6社は、本件各工事を受注することが事実上不可能であるから、指名業者間で談合しない場合は、おそらく入札を辞退するであろう。もし入札に参加するのであれば、第一審被告横河電機の入札価格よりも著しく高額の価格で入札する外ない。奈良県の担当者にも、当然そのことは分かるであろう。 ところが、本件各工事の指名業者6社ないし7社は、指名業者間で公正な競争をすることにより落札価格が低下することを防ぎ、契約価格をつり る外ない。奈良県の担当者にも、当然そのことは分かるであろう。 ところが、本件各工事の指名業者6社ないし7社は、指名業者間で公正な競争をすることにより落札価格が低下することを防ぎ、契約価格をつり上げて不当な利益を図る目的の下に、予め落札者を第一審被告横河電機と取り決め、同被告が落札できるように互いに入札価格の調整をする談合行為をしていた(前示二2(三)、同4(一))。 そして、前示6社ないし7社は、別紙入札結果一覧表(一)(二)記載のとおり、第一審被告横河電機の入札価格に近い価格で入札している(甲4の1、2、甲58の1、2)。 したがって、奈良県の担当者には、別紙入札結果一覧表(一)(二)の入札価格を見て、直ちに、この入札価格では、本件各工事の指名業者6社ないし7社が入札前に連絡をとって、入札価格の調整(談合)をしていることが分かる筈である。 c それにもかかわらず、奈良県の担当者は、本件各工事をあくまでも指名競争入札に付した上で、最低価格で入札した業者と請負契約を締結したという形を整えることに固執した。そして、談合により最低入札価格を投じたことが明らかな第一審被告横河電機との間で、本件各契約を締結した。 (ハ) 証言の信用性奈良県の担当者が、前示(ロ)のような認識を持って、極めて欺瞞的で、矛盾に満ちた行動をとっていたことを裏付ける的確な証拠がない。証人Cの前示(イ)の証言を論理的に押し進めていくと、奈良県の担当者はそのような行動をとっていたと認めざるを得ないが、そこまで認めることについては躊躇せざるを得ない。 何故なら、証人Cの前示(イ)の証言内容には無理があり、よほど的確な証拠でもない限り、同証言を真実と認めることができない。ところが、本件ではそのような的確な証拠はないので、証人Cの前示(イ)の証言は信用することができないの )の証言内容には無理があり、よほど的確な証拠でもない限り、同証言を真実と認めることができない。ところが、本件ではそのような的確な証拠はないので、証人Cの前示(イ)の証言は信用することができないのである。 (5) 小括以上の(1)ないし(4)の検討結果を総合すると、本件各工事は既設の特定計装設備工事の改良増設工事であるが、既設業者である第一審被告横河電機以外の指名業者(5社ないし6社)も、受注して施工することが技術的、経済的に可能であったと認められる。それ故、第一審被告らの前示(一)の主張は採用できない。 とはいうものの、このような既設の特定計装設備工事の改良増設工事については、各社毎にシステムに使用されているソフトウエアが微妙に異なること等から、既設業者が他社に比べて技術的、経済的に比較的優位な立場にあることも否定し難い(甲5)。その限りでは、Cの陳述書(乙23)や、当審での証言も採用することができる。 2 損害の発生、金額の検討(一) 判断の大要当裁判所は、大要次のとおり判断する。 (1) 奈良県は、第一審被告横河電機、同日立製作所、同富士電機の共同不法行為(談合)により、次の損害を被った。 イ第一審被告横河電機、同日立製作所による本件工事①に関する違法な談合(共同不法行為)により、本件契約①の契約価格の5%に当たる531万円(ただし、1万円未満切り捨て)の損害。 ロ第一審被告横河電機、同日立製作所、同富士電機による本件工事②に関する違法な談合(共同不法行為)により、本件契約②の契約価格の5%に当たる4,040万円(ただし、1万円未満切り捨て)の損害。 (2) 本件損害賠償代位請求訴訟は、未だ第一審原告らの勝訴が確定していない。それ故、第一審原告らの訴訟代理人である弁護士に対する報酬は、奈良県の損害としては未だ発生してい 円未満切り捨て)の損害。 (2) 本件損害賠償代位請求訴訟は、未だ第一審原告らの勝訴が確定していない。それ故、第一審原告らの訴訟代理人である弁護士に対する報酬は、奈良県の損害としては未だ発生していないので、弁護士費用の請求は理由がない。 (二) 原判決の引用、補正(1) 前示(一)の判断の理由は、次の(三)のとおり附加する外、原判決75頁1行目から82頁6行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。 (2) ただし、原判決79頁7行目の「並びに」から同頁8行目末尾までを削る。 (三) 当審附加判断(1) 談合による場合の落札価格イ法が定める指名競争入札本件各工事に関する入札では、予め発注者である奈良県知事から予定価格と最低制限価格が定められていた(法234条3項、法施行令167条の13、同167条の10参照)。 そして、奈良県知事は、第一審被告横河電機ら6社ないし7社の指名業者間で公正かつ自由な価格競争が行われ、予定価格以下で最低の価格(ただし、最低制限価格以上の価格)で入札した者を契約の相手方として、請負契約を締結することを予定していた。 ロ談合により歪められた入札(イ) ところが、前示のとおり、第一審被告横河電機ら6社ないし7社の指名業者は、本件各工事の入札に先立ち、次のような違法な談合をしていた(前示二4(一)(1)(2))。 指名業者間で公正な競争をすることにより落札価格が低下することを防ぎ、契約価格を予定価格ぎりぎりまでつり上げて不当な利益を図る目的の下に、予め落札者を第一審被告横河電機と取り決め、同被告が確実に落札できるように互いに入札価格の調整(談合)をしていた。 (ロ) B(第一審被告横河電機のIA営業統括本部室課長)も、公正取引委員会の審査官に対して、2回目の入札になった場合に備えて、2回目は1回目 できるように互いに入札価格の調整(談合)をしていた。 (ロ) B(第一審被告横河電機のIA営業統括本部室課長)も、公正取引委員会の審査官に対して、2回目の入札になった場合に備えて、2回目は1回目よりも100万円位下げた価格で入札する、という打ち合わせまでしていたと供述している(甲5-14ないし16頁)。この供述からも、次の事実が認められる。 1回目の入札価格が予定価格を越え、落札できなかった場合に2回目の入札となる。その場合、山手会の会員各社は、2回目の入札では各社が1回目の入札よりも僅かに下げた価格で入札し、受注予定者が地方公共団体が定める予定価格ぎりぎりで落札して、最大の利益を得られるように画策していた。 (ハ) 現に、公正取引委員会が課徴金納付命令を出した特定計装設備工事27件中、2回目の入札まで実施された4件(本訴で証拠が提出されている分)の入札価格(単位は万円)、指名業者名は、別紙(三)ないし(六)記載のとおりである。 なお、別紙(五)(六)の予定価格は第一審原告ら代理人が推測した数値であり、証拠に基づき正確に認定したものではない(甲46、甲48の1ないし3、甲49の2、3)。 別紙(三)ないし(六)によると、すべての業者について、1回目と2回目の入札価格の差は僅かである。1回目と2回目では、2位以下の業者の順位はめまぐるしく変わっているが、1回目の入札で1番低い価格で入札した業者は、2回目の入札でも一番低い価格で入札し落札している。このことから、次のaないしcの事実が分かる。 a 指名業者間で談合して、1回目の入札で本命業者が予定価格ぎりぎりで落札しようと試みたが、予定価格が最低入札価格よりも低かったため失敗した。 b そこで、指名業者間で再度談合し、2回目の入札では、1回目の入札価格よりも僅かに下げた価格で入札している。 価格ぎりぎりで落札しようと試みたが、予定価格が最低入札価格よりも低かったため失敗した。 b そこで、指名業者間で再度談合し、2回目の入札では、1回目の入札価格よりも僅かに下げた価格で入札している。 c そして、本命業者が落札できるように、1回目の入札で1番低い価格で入札した業者(本命業者)は、2回目の入札でも一番低い価格で入札している。 ハ本件各工事の入札本件各工事の入札でも、第一審被告横河電機(本命業者)は、当初の意図どおり、1回目の入札で、本件工事①②の予定価格1億0,825万3,000円、8億3,811万1,000円をいずれもごく僅かに下回る1億0,712万円、8億3,430万円で落札することに成功している(甲58の1、2)。 (2) 談合しない場合の落札価格イ確かに、前示のとおり、本件各工事は、既設の特定計装設備工事の改良増設工事であり、各社毎にシステムに使用されているソフトウエアが微妙に異なる。そのようなこと等から、既設業者である第一審被告横河電機が、他社に比べて技術的、経済的に比較的優位な立場にあることは否定し難い(前示1(二)(5))。 ロしかし、本件各工事について、第一審被告横河電機が他の指名業者と前示2(三)(1)ロ(イ)の不正な談合をしていなければ、他社は、採算ラインぎりぎりで、場合によれば営業戦略上赤字受注覚悟の上で、採算ラインを割った低価格で入札していたかも知れない。 そのような懸念、不安があれば、第一審被告横河電機としても、本件各工事については、既設業者として他社に比べて技術的、経済的に比較的優位な立場にあるからといって、安閑とはしていられない。 何故なら、第一審被告横河電機は、前示2(三)(1)ハの本件各工事の落札価格のように、予定価格ぎりぎりで落札して、最大限の利益を上げることばかりを考えておれ らといって、安閑とはしていられない。 何故なら、第一審被告横河電機は、前示2(三)(1)ハの本件各工事の落札価格のように、予定価格ぎりぎりで落札して、最大限の利益を上げることばかりを考えておれば、他の競争相手(指名業者)に本件各工事を自社よりも低価格で落札されて、足下を掬われかねないからである。 ハしたがって、第一審被告横河電機は、本件各工事の入札に際しても、そのような懸念、不安を払拭し、本件各工事を確実に落札する必要がある。そのため、前示2(三)(1)ハの本件各工事の落札価格(談合価格)よりも控え目にみても5%程度は低い価格で入札し、安全策を講じていたであろうことは、十分推認することができる。 第五結論一本訴請求の当否以上によると、第一審原告らの本訴請求は、次の1、2の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないので棄却すべきである。 1 本件工事①に関する損害賠償金等第一審被告横河電機、同日立製作所は連帯して奈良県に対し、不法行為による損害賠償金531万円、及びこれに対する平成8年3月5日(不法行為後の日)から完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金。 2 本件工事②に関する損害賠償金等第一審被告横河電機、同日立製作所、同富士電機は連帯して奈良県に対し、不法行為による損害賠償金4,040万円、及びこれに対する平成8年3月5日(不法行為後の日)から完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金。 二原判決、本件控訴、附帯控訴の当否 1 第一審被告横河電機、同日立製作所に対する請求分前示一1、2と同旨の原判決は相当であり、本件控訴、附帯控訴は理由がないので棄却する。 2 第一審被告富士電機に対する請求分(一) 前示一1、2と一部異なる(本件工事①に関する損害賠償金等も認容した)原判決は、変更を免れない。 当であり、本件控訴、附帯控訴は理由がないので棄却する。 2 第一審被告富士電機に対する請求分(一) 前示一1、2と一部異なる(本件工事①に関する損害賠償金等も認容した)原判決は、変更を免れない。 (二) 本件控訴に基づき、原判決を本判決主文一1(一)(二)のとおり変更する。 (三) 本件附帯控訴は、理由がないので棄却する。 3 第一審被告山武に対する請求分(一) 前示一1、2と異なる(本件工事①②に関する損害賠償金等を認容した)原判決は、変更を免れない。 (二) 本件控訴に基づき、原判決を本判決主文一1(三)のとおり変更する。 (三) 本件附帯控訴は、理由がないので棄却する。 三よって、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第10民事部裁判長裁判官吉川義春裁判官大出晃之裁判官紙浦健二
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