令和2(ワ)11295 債務不存在確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年8月31日 東京地方裁判所
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令和4年8月31日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和2年(ワ)第11295号債務不存在確認等請求事件口頭弁論終結日令和4年6月29日判決原告株式会社M・Kロジ (以下「原告M・Kロジ」という。)原告株式会社シプソル(以下「原告シプソル」)という。 上記両名訴訟代理人弁護士小林幸夫 木村剛大 河部康弘被告株式会社ダイワハイテックス同訴訟代理人弁護士麻布秀行同補佐人弁理士嶋 宣之 主文 1 被告が、原告M・Kロジに対し、原告M・Kロジによる別紙原告製品目録記載の梱包体の使用及び譲渡並びにその譲渡の申出(譲渡のための展示を含む。)について、別紙特許権目録記載の特許権に基づく差止請求権並びに同特許権侵害を理由とする損害賠償請求権及び不当利得返還請求権をいずれも有しないことを確認する。 2 被告が、原告M・Kロジに対し、原告M・Kロジによる別紙原告方法目録記載の梱包方法の使用について、別紙特許権目録記載の特許権に基づく差止請求権並びに同特許権侵害を理由とする損害賠償請求権及び不当利得返還請求権をいずれも有しないことを確認する。 3 被告は、第三者に対し、文書、口頭又はインターネットを通じて、原告シプ ソルが製造、販売する別紙物件目録記載の製品又は別紙物件目録記載の自動梱 包ラインが製造する梱包体が特許第6466029号の特許権を侵害する、又は侵害するおそれがあるとの事実を告知し、又は流布してはならない。 4 被告は、原告シプソルに対し、35万円及びこれに対する平成31年3月25日か 体が特許第6466029号の特許権を侵害する、又は侵害するおそれがあるとの事実を告知し、又は流布してはならない。 4 被告は、原告シプソルに対し、35万円及びこれに対する平成31年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用中、原告M・Kロジに生じた費用と被告に生じた費用の17分の15との合計はこれを10分し、その1を原告M・Kロジの、その余を被告の各負担とし、原告シプソルに生じた費用と被告に生じた費用の17分の2との合計はこれを3分し、その2を原告シプソルの、その余を被告の各負担とする。 7 この判決は、第4項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1項及び第2項と同旨 2 被告は、第三者に対し、文書、口頭又はインターネットを通じて、原告M・Kロジが製造、販売又は使用する別紙原告製品目録記載の梱包体及び原告M・ Kロジが使用する別紙原告方法目録記載の梱包方法が特許第6466029号の特許権を侵害する、又は侵害するおそれがあるとの事実を告知し、又は流布してはならない。 3 被告は、原告M・Kロジに対し、200万円及びこれに対する令和2年4月6日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 4 主文第3項と同旨 5 被告は、原告シプソルに対し、400万円及びこれに対する平成31年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等事案の要旨 本件は、段ボール箱と板材の組合せによって構成される梱包体を製造、販売 する原告M・Kロジと、原告M・Kロジに梱包体を製造する機械を販売した原告シプソル(以下、原告M・Kロジと原告シプ 本件は、段ボール箱と板材の組合せによって構成される梱包体を製造、販売 する原告M・Kロジと、原告M・Kロジに梱包体を製造する機械を販売した原告シプソル(以下、原告M・Kロジと原告シプソルを総称して「原告ら」ということがある。)が、被告に対し、次の請求をする事案である。 原告M・Kロジが、原告M・Kロジによる別紙原告製品目録記載の梱包体(以下、これらを総称して「原告製品」といい、これらの梱包体の梱包方法 である別紙原告方法目録記載の方法を「原告方法」という。)の使用等は、被告が保有する別紙特許権目録記載の特許権(以下「本件特許権」という。)を侵害しないと主張し、原告M・Kロジによる原告製品及び原告方法の使用等について、被告が原告M・Kロジに対して特許法100条1項に基づく差止請求権、民法709条に基づく損害賠償請求権及び同法703条に基づく不 当利得返還請求権をいずれも有しないことの確認を求めるもの原告M・Kロジが、被告は原告製品及び原告方法が本件特許権を侵害するとの虚偽の事実を告知又は流布して不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項21号所定の不正競争行為に及ぶおそれがあると主張し、同法3条1項に基づき、原告製品及び原告方法が特許第6466029号の特許権を 侵害する又は侵害するおそれがあるとの事実の告知又は流布の差止めを求めるもの原告M・Kロジが、被告が原告M・Kロジに対して前記(2)の不正競争行為に及ぶおそれがあったことから、本件訴訟を提起せざるを得ず、弁護士費用相当額の損害を被ったと主張し、同法4条に基づき、損害金200万円及び これに対する令和2年4月6日(不正競争行為の日又は不正競争行為の後の日)から支払済みまで民法所定年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求 張し、同法4条に基づき、損害金200万円及び これに対する令和2年4月6日(不正競争行為の日又は不正競争行為の後の日)から支払済みまで民法所定年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めるもの原告シプソルが、被告は別紙物件目録記載の製品(以下「原告機械」という。)が本件特許権を侵害するとの虚偽の事実を告知又は流布して、平成30 年法律第33号による改正前の不競法(以下「改正前不競法」という。)2条 1項15号所定の不正競争行為に及んだと主張し、不競法3条1項に基づき、原告機械又は原告機械の製造する梱包体が本件特許権を侵害する又は侵害するおそれがあるとの事実の告知又は流布の差止めを求めるもの原告シプソルが、被告が前記(4)の不正競争行為に及び、これにより営業上の信用が毀損され無形の損害を被ったと主張し、不競法4条に基づき、損害 金400万円及びこれに対する平成31年3月25日(不正競争行為の日又は不正競争行為の後の日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるもの前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠(以下、書証番号は 特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)当事者ア原告M・Kロジは、物流・配送に伴う貨物の仕分荷造、検品、梱包作業等請負を目的とする株式会社である。 原告シプソルは、物流システム及び物流資材の提供を目的とする株式会 社である。 イ被告は、包装機器の設計、開発、製造、販売及び保守、並びに輸出入を目的とする株式会社である。 ウ原告らと被告とは、それぞれ改正前不競法2条1項15号及び不競法2条1 社である。 イ被告は、包装機器の設計、開発、製造、販売及び保守、並びに輸出入を目的とする株式会社である。 ウ原告らと被告とは、それぞれ改正前不競法2条1項15号及び不競法2条1項21号所定の競争関係にある。 被告の特許権被告は、本件特許権(以下、本件特許権に係る特許を「本件特許」と、特許請求の範囲の請求項1記載の発明を「本件特許発明1」と、同4記載の発明を「本件特許発明2」といい、本件特許発明1及び2を総称して「本件特許発明」という。)の特許権者である。 原告らによる梱包体の製造、販売等 原告M・Kロジは、物流代行サービスを提供しており、顧客の依頼を受けて、通信販売の商品を運搬するための梱包体を製造、販売している。当該梱包体は、段ボール箱と板材の組合せによって構成されている。 原告シプソルは、自動梱包ラインである原告機械を製造して、原告M・Kロジに販売した。 被告による通知等ア被告訴訟代理人弁護士は、被告の代理人として、原告M・Kロジに対し、被告は本件特許権を保有しているところ、「貴社が箱詰めに利用している梱包体と梱包方法の一部(例えば、①商品名が「夜スリムトマ美ちゃん酵素プラス」で、発送元が肌ナチュール「(住所省略)」のものや②商品名が 「肌ナチュールクレンジング」で、発送元が上記①と同じもの、③商品名が「クリアゲルクレンズ」で、発送元が「(住所省略)」であり、依頼会社がメディカルコート株式会社であるもの、④商品名が「ザ・クレンジングバーム」であり、依頼会社がプレミアアンチエイジング株式会社のもの(略))に本件特許を侵害する梱包体と梱包方法が認められました(略)。 (略)通知人は、貴社に対し、通知人の有する本件特許を侵害することとなる貴社梱包体の レミアアンチエイジング株式会社のもの(略))に本件特許を侵害する梱包体と梱包方法が認められました(略)。 (略)通知人は、貴社に対し、通知人の有する本件特許を侵害することとなる貴社梱包体の廃棄と利用の停止を求めます。(略)通知人には、貴社に対し、貴社が本件特許を侵害したことに基づく損害の賠償を求める用意もございます。しかし、貴社が、本件梱包体を作成する機械を貴社に対して売却した企業名や導入に際してのやりとりについて通知人に開示し、当該 企業への責任追及に協力してくださるのであれば、損害の賠償を免除することを検討することは可能です」との旨が記載された平成31年3月25日付け書面による通知(甲3。以下「甲3通知」という。)をした。 イ被告従業員は、平成31年4月17日、株式会社MYTH(以下「MYTH」という。)代表者に対し、「御社が導入予定のシプソル社の自動梱包 ラインですが、弊社の特許技術に抵触しております。実際の導入先様も機 械使用が出来ないとお困りの声がございます。」との旨が記載されたメール(甲21。以下「甲21メール」という。)を送信した。 争点 本案前の争点原告M・Kロジの原告製品及び原告方法の使用等についての債務不存在確 認請求に係る訴えに確認の利益があるか(争点1)本案の争点ア原告M・Kロジの営業上の利益が侵害されるおそれの有無(争点2)イ原告M・Kロジの不競法4条に基づく損害賠償請求の当否(争点3)ウ原告シプソルの営業上の信用を害する虚偽の事実の告知の有無(争点4) エ原告シプソルに生じた損害の有無及びその額(争点5)争点に関する当事者の主張争点1(原告M・Kロジの原告製品及び原告方法の使用等についての債務不存在確認請求に係 無(争点4) エ原告シプソルに生じた損害の有無及びその額(争点5)争点に関する当事者の主張争点1(原告M・Kロジの原告製品及び原告方法の使用等についての債務不存在確認請求に係る訴えに確認の利益があるか)について(原告M・Kロジの主張) ア前提事実(4)アのとおり、被告は、原告M・Kロジに対し、甲3通知により、原告製品及び原告方法が本件特許権を侵害すると警告した。 その後、原告M・Kロジと被告は、代理人を通じて、和解による解決を図るため交渉を続け、原告M・Kロジが、被告に対し、今後も原告M・Kロジに金銭要求を続けるのかどうかについて回答を求めたところ、被告は、 令和2年4月6日付けの書面(甲14)により、本件特許権の存在を理由として、原告製品及び原告方法の使用差止めと解決金の支払を要求した。 したがって、被告は、原告M・Kロジに対し、現に本件特許権に基づく原告製品及び原告方法の使用の差止めと解決金の支払を要求しているから、原告M・Kロジには、本件特許権に基づく差止請求権及び損害賠償請求権 等の存否につき、現実の不安が生じているといえる。 イ被告は、原告M・Kロジの顧客が本件特許権を侵害する者であると主張する。 しかし、梱包体の組立て及び配送の全てを担当しているのは原告M・Kロジである。原告M・Kロジの顧客は、単に原告M・Kロジに配送サービス全般を委託しているだけで、具体的な梱包方法、配送方法に一切関与し ていない。 したがって、本件特許権を侵害したかどうかが問われるのは原告M・Kロジであって、原告M・Kロジの顧客ではない。 ウ以上のとおり、原告M・Kロジには、本件特許権に基づく差止請求権及び損害賠償請求権等の存否につき、即時確定の利益があり うかが問われるのは原告M・Kロジであって、原告M・Kロジの顧客ではない。 ウ以上のとおり、原告M・Kロジには、本件特許権に基づく差止請求権及び損害賠償請求権等の存否につき、即時確定の利益があり、原告製品及び 原告方法の使用等についての債務不存在確認請求に係る訴えには、確認の利益が認められる。 (被告の主張)本件特許権を侵害する者は、梱包体を利用している原告M・Kロジの顧客であって、原告M・Kロジではないから、被告は、原告M・Kロジに対し、 本件特許権に基づく差止請求権及び損害賠償請求権等を有していない。被告が本件特許権侵害を理由として損害賠償請求権や不当利得返還請求権を行使すべき相手方は、梱包体を利用している企業であり、原告M・Kロジでないことは、被告が原告M・Kロジに送付した書面(甲12、14)においても明記している。 また、被告は、本件訴訟において、原告製品及び原告方法が、本件特許発明の技術的範囲に属することについて積極的に主張しない。 以上のとおり、原告M・Kロジが被告から本件特許権に基づく差止請求権及び損害賠償請求権等をされるという不安を抱える理由はなく、即時確定の利益はない。 したがって、原告製品及び原告方法の使用等についての債務不存在確認請 求に係る訴えは、確認の利益がなく、却下されるべきである。 争点2(原告M・Kロジの営業上の利益が侵害されるおそれの有無)について(原告M・Kロジの主張)原告製品及び原告方法は、本件特許発明の技術的範囲に属さないから、被 告が、原告MKロジの顧客に対し、本件特許権侵害を理由とする警告等をすれば、これが不競法2条1項21号所定の「虚偽の事実」の「告知」に当たるのは明らかである。 原告M・Kロジ さないから、被 告が、原告MKロジの顧客に対し、本件特許権侵害を理由とする警告等をすれば、これが不競法2条1項21号所定の「虚偽の事実」の「告知」に当たるのは明らかである。 原告M・Kロジは、現時点において、被告が原告M・Kロジの顧客に本件特許権侵害を理由とする警告等をしたという事実を把握していない。しかし、 被告は、原告M・Kロジに対し、再三にわたって、原告M・Kロジの顧客に本件特許権侵害を理由とした警告等を行う旨を主張しているから、不競法3条1項所定の原告M・Kロジの「営業上の利益を」「侵害されるおそれ」がある。 したがって、原告M・Kロジは、被告に対し、不競法3条1項に基づき、 原告製品及び原告方法が本件特許権を侵害する又は侵害するおそれがあるとの事実の告知又は流布の差止めを求める。 (被告の主張)被告は、これまで、原告M・Kロジの顧客に対して警告等をしていない。 また、前記(1)(被告の主張)のとおり、被告は、原告M・Kロジの顧客こ そが本件特許権を侵害する者と考えているところ、被告が当該侵害者に警告をすることは、被告の正当な権利行使であり、当該侵害者がたまたま原告M・Kロジの取引先であったとしても、原告M・Kロジの営業上の利益を害することはない。 したがって、被告が、原告M・Kロジに係る虚偽の事実を告知又は流布し、 営業上の利益を侵害するおそれはない。 争点3(原告M・Kロジの不競法4条に基づく損害賠償請求の当否)について(原告M・Kロジの主張)前記(2)(原告M・Kロジの主張)のとおり、原告M・Kロジは、被告が、金銭要求に応じないと虚偽事実を告知する旨を執拗に通知しており、不競法 2条1項21号所定の不正競争行為に及ぶおそれがあっ 前記(2)(原告M・Kロジの主張)のとおり、原告M・Kロジは、被告が、金銭要求に応じないと虚偽事実を告知する旨を執拗に通知しており、不競法 2条1項21号所定の不正競争行為に及ぶおそれがあったことから、弁護士を選任した上、本件訴訟を提起することを余儀なくされた。これにより、原告M・Kロジには、弁護士費用相当額の損害が生じ、その額は200万円を下らない。 したがって、原告M・Kロジは、被告に対し、同号及び同法4条に基づき、 損害金200万円及びこれに対する令和2年4月6日(不正競争行為の日又は不正競争行為の後の日)から支払済みまで民法所定年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)被告が原告M・Kロジの顧客に対して告知しようとする内容は、虚偽の事 実ではない。 また、被告による虚偽事実の告知がされていないことから、基礎となる損害が実際に生じていないにもかかわらず、単に弁護士に対応を依頼したことのみをもって、弁護士費用相当額の損害が生じることはない。 争点4(原告シプソルの営業上の信用を害する虚偽の事実の告知の有無) について(原告シプソルの主張)ア甲3通知について(ア) 甲3通知の内容は、原告M・Kロジが本件特許権を侵害していると主張した上で、原告M・Kロジに梱包体を製造する機械を売却した企業へ の「責任追及」をするというものである。そして、これを読んだ者は、 「責任追及」とは本件特許権侵害に基づく差止請求権及び損害賠償請求権を行使することであり、梱包体を製造する機械を販売した原告シプソルが本件特許権を侵害していることを意味すると考えるのが通常である。 したがって、甲3通知には、原告シプソルが原告製品及び原告方法との を行使することであり、梱包体を製造する機械を販売した原告シプソルが本件特許権を侵害していることを意味すると考えるのが通常である。 したがって、甲3通知には、原告シプソルが原告製品及び原告方法との関係で本件特許権の侵害行為をしている旨が記載されているというべ きである。 (イ) ところで、本件特許発明1は、特許請求の範囲において、圧接部を凹みにグリップさせて梱包対象物とともに板材が箱の底面に密着される状況にすることを規定している。また、本件特許発明2も、特許請求の範囲において、シュリンク包装された板材の圧接部を、底面とそれに連続 する側片との折り曲げ部分に押し込み、この折り曲げ部分に形成された凹みに圧接部をグリップさせることを規定している。 このように、本件特許発明の構成要件に照らせば、実際の梱包作業に携わらない限り、本件特許権を侵害することは物理的に不可能である。 そして、原告シプソルは、原告M・Kロジに原告機械を販売しているも のの、原告M・Kロジの梱包作業に携わっていない。 (ウ) したがって、原告シプソルが原告製品及び原告方法との関係で本件特許権を侵害しているという甲3通知の内容は、改正前不競法2条1項15号所定の虚偽の事実に当たる。 イ甲21メールについて (ア) 甲21メールの内容は、原告シプソルが製造した原告機械が被告の特許権を侵害していると断定するものである。しかし、自動梱包ラインである原告機械が、梱包体及び梱包方法そのものについての本件特許権を侵害することはあり得ないし、前記ア(イ)のとおり、原告シプソルが、原告製品及び原告方法との関係で、本件特許権を侵害することは物理的に 不可能である。仮に梱包体の箱の内寸と板材の長さとの一部の組合せが 本件特許 記ア(イ)のとおり、原告シプソルが、原告製品及び原告方法との関係で、本件特許権を侵害することは物理的に 不可能である。仮に梱包体の箱の内寸と板材の長さとの一部の組合せが 本件特許権を侵害するとしても、甲21メールが当該一部の組合せを特定して特許権を侵害すると告知したものであるとは理解できないから、虚偽の事実を告知したことに変わりはない。 また、甲21メールのうち、導入先から機械が使用できず困っているとの声があるとの記載が虚偽であることは、被告も自認している。 したがって、甲21メールの内容は、改正前不競法2条1項15号所定の虚偽の事実に当たる。 (イ) 被告は、甲21メールについて、被告の営業職員が勇み足で送信したものであると主張する。 しかし、被告が甲21メールの送信前に甲3通知を送付していること や、甲21メールがMYTHの代表者宛に送信されていることなどからすると、甲21メールの送信は会社である被告の行為と評価すべきである。 仮に甲21メールの送信が被告の指示に基づくものでないとしても、被告は使用者責任を免れない。 ウ小括以上のとおり、被告は、甲3通知及び甲21メールにより、原告機械及び原告機械によって製造される梱包体が本件特許権を侵害するとの、原告シプソルの営業上の信用を害する虚偽の事実の告知をした。これは、改正前不競法2条1項15号所定の不正競争行為であり、被告の故意による行 為と同視すべき程度のものである。 したがって、原告シプソルは、被告に対し、不競法3条1項に基づき、原告機械又は原告機械の製造する梱包体が本件特許権を侵害する又は侵害するおそれがあるとの事実の告知又は流布の差止めを求める。 (被告の主張) ア甲3通知につ 競法3条1項に基づき、原告機械又は原告機械の製造する梱包体が本件特許権を侵害する又は侵害するおそれがあるとの事実の告知又は流布の差止めを求める。 (被告の主張) ア甲3通知について 甲3通知には、原告シプソルの名称が記載されていないし、被告も、これを送付した時点で、原告M・Kロジに原告機械を販売したのが原告シプソルであることを把握していなかった。 したがって、甲3通知の送付は、原告シプソルとの関係で虚偽の事実の告知に当たらない。 イ甲21メールについて(ア) 甲21メールのうち、「御社が導入予定のシプソル社の自動梱包ラインですが、弊社の特許技術に抵触しております。」との記載は、原告シプソルが製造した自動梱包ラインで製造された梱包体は、必ずしも本件特許権を侵害するものではないから、誤りである。また、導入先から困って いる旨の声も把握していないから、同旨の記載も誤りである。したがって、甲21メールは、表現だけに着目すれば、実態と異なる不正確なものである。 しかし、甲21メールによって伝えようとした内容は、原告シプソルが製造した自動梱包ラインによって製造される梱包体が、箱の内寸と板 材の長さとの組合せによっては被告の特許権を侵害する可能性があるということである。そして、梱包体の箱の内寸と板材の長さとの組合せによっては本件特許権を侵害することになるのだから、甲21メールを正しく理解すれば、必ずしも被告が虚偽の告知をしたとはいえない。 (イ) 被告は、甲3通知を発送後、原告らとの交渉の方向性が定まるまで、 取引先等への告知を控えるとの方針をとっていた。甲21メールを送信した被告の従業員は、何の役職もない営業職員であるところ、当該営業職員は、営業先と 送後、原告らとの交渉の方向性が定まるまで、 取引先等への告知を控えるとの方針をとっていた。甲21メールを送信した被告の従業員は、何の役職もない営業職員であるところ、当該営業職員は、営業先との契約を原告シプソルに取られたことがあり、被告の指示によることなく、勇み足で甲21メールを送信したものであるから、被告が甲21メールを送信したと評価することはできない。 なお、被告が使用者責任を負うとの原告の主張については積極的に争 わない。 争点5(原告シプソルに生じた損害の有無及びその額)について(原告シプソルの主張)ア原告シプソルは、故意によるものと同視すべき程度の被告の不正競争行為によって営業上の信用を毀損され、無形の損害を被った。 原告M・Kロジは、従前、自動梱包ラインを原告シプソルからのみ購入していたが、甲3通知受領後、自動梱包ラインを扱ったこともない他社に発注した。これは、甲3通知によって原告シプソルの信用が大きく毀損されたからにほかならない。 このように、告知・流布された事実による信用毀損の程度、告知・流布 の範囲や相手方、違法性の程度などに鑑みれば、原告シプソルに生じた無形損害の額は200万円を下らない。 イ原告シプソルは、被告が虚偽事実を告知したことにより、弁護士を選任して、本件訴訟を提起することを余儀なくされた。 これにより、原告シプソルには、弁護士費用相当額の損害が生じ、その 額は200万円を下らない。 ウしたがって、原告シプソルは、被告に対し、改正前不競法2条1項15号及び不競法4条に基づき、損害金400万円及びこれに対する平成31年3月25日(不正競争行為の日又は不正競争行為の後の日)から支払済みまで改正前民法所定年5分の 告に対し、改正前不競法2条1項15号及び不競法4条に基づき、損害金400万円及びこれに対する平成31年3月25日(不正競争行為の日又は不正競争行為の後の日)から支払済みまで改正前民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)原告シプソルは、甲21メールが送付された後、その送付先であるMYTHとの間で機械導入に関する契約を締結したと聞いている。すなわち、甲21メールによってMYTHの原告シプソルに対する信頼は揺らがなかったといえる。 したがって、原告シプソルには何らの損害も生じていない。 第3 当裁判所の判断争点1(原告M・Kロジの原告製品及び原告方法の使用等についての債務不存在確認請求に係る訴えに確認の利益があるか)について前提事実及び後掲各証拠によれば、次の事実を認めることができる。 ア被告は、原告M・Kロジに対し、甲3通知により、原告M・Kロジが箱 詰めに利用している梱包体と梱包方法の一部である原告製品及び原告方法が本件特許権を侵害するとして、梱包体の利用の停止と廃棄を求めるとともに、原告M・Kロジが、当該梱包体を製造する機械を同社に販売した企業名等を開示し、当該企業への責任追及に協力するのであれば、原告M・Kロジに対する損害賠償の免除を検討することができる旨を通知した(前 提事実(4)ア)。 イ原告M・Kロジと被告は、それぞれ代理人を通じて交渉したところ、被告は、令和2年1月31日、原告M・Kロジに対し、原告M・Kロジが①被告に解決金として1000万円を支払うこと及び②本件特許権を侵害する態様での梱包の利用をやめることを骨子とする和解案を提示した(甲1 2)。 ウその後、原告M・Kロジは、被告に対し、製造が許される梱包方法を和解条項 を支払うこと及び②本件特許権を侵害する態様での梱包の利用をやめることを骨子とする和解案を提示した(甲1 2)。 ウその後、原告M・Kロジは、被告に対し、製造が許される梱包方法を和解条項において特定するためとして、許容される箱の寸法を尋ねた。 これに対し、被告は、原告M・Kロジに対し、令和2年3月10日付けの書面により、原告M・Kロジの上記質問に対する回答は、解決金の額が ある程度固まってからすべきものと考えるとした上で、原告M・Kロジから同月末日までに解決金についての回答がない場合には、原告M・Kロジとの協議を打ち切らざるを得ず、その後、原告M・Kロジに梱包を指示した各取引先に対し、訴訟提起を前提とした交渉をする予定であることを通知した(甲12)。 エ原告M・Kロジは、被告に対し、令和2年3月19日付けの書面により、 原告M・Kロジの利用している梱包体が本件特許発明の技術的範囲に属さないことは明らかであって、解決金を支払うことはできない、被告が今後も金銭要求を維持するのであれば債務不存在確認等を求める訴訟を提起せざるを得ないと回答した(甲13)。 オ被告は、原告M・Kロジに対し、令和2年4月6日付けの書面により、 被告は原告らから開示されたデータに基づいて請求しているとした上で、当該書面到達の日から2週間が経過する日までに、解決金を支払う意向の有無の回答を求め、回答がない場合には、原告M・Kロジとの協議を打ち切り、原告M・Kロジに梱包体の利用を指示した各取引先に対して訴訟提起を前提とした交渉を行う予定であると通知した(甲14)。 カ原告らは、令和2年5月1日、被告を相手方として、本件訴訟を提起した(裁判所に顕著な事実)。 前記第2の4(1)(被告の主張)のとおり、被 交渉を行う予定であると通知した(甲14)。 カ原告らは、令和2年5月1日、被告を相手方として、本件訴訟を提起した(裁判所に顕著な事実)。 前記第2の4(1)(被告の主張)のとおり、被告は、本件訴訟において、本件特許権を侵害する者は、梱包体を利用している原告M・Kロジの顧客であって、原告M・Kロジではないと主張するとともに、原告製品及び原告方法 が本件特許発明の技術的範囲に属することについて積極的に主張しないとしている。 しかし、前記(1)において認定したとおり、被告は、原告M・Kロジとの代理人を通じた約1年間に及ぶ交渉を経ても、原告らが本件訴訟を提起する直前まで、原告M・Kロジによる原告製品及び原告方法の利用が本件特許権を 侵害するとの主張の正当性を指摘しつつ、原告M・Kロジに対し、原告製品及び原告方法の利用の停止等を求めるとともに、被告に協力すれば損害賠償の免除を検討する用意があることを通知したり、解決金支払の意向を繰り返し確認したりしたことが認められる。このような従前の被告の対応に鑑みれば、本件訴訟における被告の上記主張及び応訴態度を考慮しても、原告M・ Kロジにおいて、被告から、原告製品及び原告方法の使用等について、特許 法100条1項に基づく差止請求権、民法709条に基づく損害賠償請求権及び同法703条に基づく不当利得返還請求権の行使を受ける現実の不安が生じているというべきであり、被告がこれらの請求権を有しないことの各確認を求めることは、原告M・Kロジの被告に対する権利法律関係を明らかにし、原告M・Kロジの地位の不安を除去するために、有効適切なものである と認められる。 したがって、原告M・Kロジの原告製品及び原告方法の使用等についての債務不存在確認請求に係る訴えには、確認の 、原告M・Kロジの地位の不安を除去するために、有効適切なものである と認められる。 したがって、原告M・Kロジの原告製品及び原告方法の使用等についての債務不存在確認請求に係る訴えには、確認の利益があるというべきである。 以上のとおり、原告M・Kロジの原告製品及び原告方法の使用等についての債務不存在確認請求に係る訴えに確認の利益が認められ、他方、原告製品 及び原告方法が本件特許発明の技術的範囲に属することについて、被告による具体的な主張立証はないから、被告の原告M・Kロジに対する特許法100条1項に基づく差止請求権、民法709条に基づく損害賠償請求権及び同法703条に基づく不当利得返還請求権が存在するとは認められない。 したがって、原告M・Kロジの原告製品及び原告方法の使用等についての 債務不存在請求はいずれも理由がある。 争点2(原告M・Kロジの営業上の利益が侵害されるおそれの有無)について原告M・Kロジは、被告が原告M・Kロジの顧客に本件特許権の侵害を理由とする警告等をすることは、不競法2条1項21号所定の「虚偽の事実」 の「告知」に当たるところ、被告が当該警告等を行う旨を主張しているから、当該不正競争行為によって、同法3条1項所定の原告M・Kロジの「営業上の利益」「を侵害されるおそれ」があると主張する。 そこで検討すると、被告が原告M・Kロジに送付した通知等には、梱包体を利用している企業に対し、差止めや損害賠償を求めるための通知等を発送 する予定であるとか(甲3)、関連する会社への協議の申出を含む訴訟等の手 続を検討する(甲10)、原告M・Kロジに梱包を指示した各取引先に対して訴訟提起を前提とした交渉を行う予定である(甲12、14)との内容が記載されていることが認めら 申出を含む訴訟等の手 続を検討する(甲10)、原告M・Kロジに梱包を指示した各取引先に対して訴訟提起を前提とした交渉を行う予定である(甲12、14)との内容が記載されていることが認められる。しかし、実際に、被告が、原告M・Kロジの顧客等に対し、原告M・Kロジによる本件特許権の侵害を理由とする警告等をしたことを認めるに足りる証拠はない。また、上記各記載は、被告が、 原告M・Kロジの顧客等に対し、訴訟提起を前提とした交渉を行う予定であるとの趣旨のものにとどまり、当該顧客等に原告M・Kロジが本件特許権を侵害したとの事実を告知することを示唆するものとも、そのような意図を有することを示すものともいえない。 このほか、本件に現れた事情を仔細に検討しても、被告が、原告M・Kロ ジの顧客などの取引先に対し、原告M・Kロジによる本件特許権の侵害を理由とする警告等をするおそれがあると認めることはできない。 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告M・Kロジの不競法3条1項に基づく請求は理由がない。 争点3(原告M・Kロジの不競法4条に基づく損害賠償請求の当否)につい て原告M・Kロジは、被告が不競法2条1項21号所定の不正競争行為に及ぶおそれがあることを理由として、同法4条に基づき、本件訴訟の提起のために要した弁護士費用相当額の損害金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。 しかし、前記2において説示したとおり、被告が、これまで、原告M・Kロジ の顧客などの取引先に対し、原告M・Kロジによる本件特許権の侵害を理由とする警告等をしたと認めるに足りる証拠はなく、このほかに、被告の不競法2条1項21号所定の不正競争行為により、原告M・Kロジの営業上の利益が侵害されたと認めるに足りる証拠もない。 侵害を理由とする警告等をしたと認めるに足りる証拠はなく、このほかに、被告の不競法2条1項21号所定の不正競争行為により、原告M・Kロジの営業上の利益が侵害されたと認めるに足りる証拠もない。 そうすると、その余の点について判断するまでもなく、原告M・Kロジの不 競法4条に基づく請求は理由がない。 争点4(原告シプソルの営業上の信用を害する虚偽の事実の告知の有無)について甲3通知の内容について前提事実(4)アのとおり、被告の原告M・Kロジに対する甲3通知には、原告M・Kロジが利用する原告製品及び原告方法が本件特許権を侵害している ことに加え、原告M・Kロジが原告製品を製造する機械を同社に販売した企業名等を開示し、被告の当該企業への責任追及に協力するのであれば、原告M・Kロジの損害賠償義務を免除するとの記載が存在した。このような原告製品及び原告方法が本件特許権を侵害しているとの記載や被告が原告製品を製造する機械を販売した企業への責任を追及する旨が示唆されている記載を 読んだ者は、原告M・Kロジに原告製品を製造する機械、すなわち原告機械を製造、販売した者が本件特許権を侵害していると考えるのが通常である。 そして、被告が指摘するとおり、甲3通知に原告シプソルの名称は記載されていないものの、原告M・Kロジは、当時、原告シプソルから梱包体を製造する自動梱包ラインである原告機械を購入していたことから(前提事実 (3))、甲3通知を受け取った原告M・Kロジは、原告シプソルが原告機械、原告製品及び原告方法について本件特許権を侵害していると理解するというべきである。 したがって、甲3通知には、原告シプソルが、原告機械の製造、販売、原告製品の製造及び原告方法の使用について、本件特許権を侵害してい 方法について本件特許権を侵害していると理解するというべきである。 したがって、甲3通知には、原告シプソルが、原告機械の製造、販売、原告製品の製造及び原告方法の使用について、本件特許権を侵害している旨が 記載されていると認めるのが相当である。 甲21メールの内容について前提事実(4)イのとおり、被告従業員がMYTH代表者に宛てて送信した甲21メールには、「御社が導入予定のシプソル社の自動梱包ラインですが、弊社の特許技術に抵触しております。実際の導入先様も機械使用が出来ないと お困りの声がございます。」との記載が存在した。このような記載内容に照ら せば、甲21メールを受け取ったMYTH代表者は、MYTHが原告シプソルから購入することを予定している自動梱包ラインそのものが、被告の保有する特許権を侵害するとの意味であると理解するものと認められる。 甲3通知及び甲21メールが原告シプソルに関する虚偽の事実の告知に当たるかについて ア甲3通知及び甲21メールにおいて原告シプソルにより侵害されたとされる本件特許権は、梱包体及び梱包方法に関する発明に係る特許権であるところ、梱包体を製造する機械である自動梱包ラインが梱包体及び梱包方法自体に関する本件特許発明の技術的範囲に属さないことは明らかである。 そして、被告は、原告シプソル宛の平成31年5月10日付けの書面(甲 8)において、原告シプソルの自動梱包装置について特許権の侵害を主張しているのではないと記載していることや、本件訴訟においても、当該自動梱包ラインによって製造される梱包体が、箱の内寸と板の長さとの組合せによっては被告の特許権を侵害する可能性があると主張するにとどまり、原告機械の製造、販売が特許権を侵害するとは主張していないことを考慮 す って製造される梱包体が、箱の内寸と板の長さとの組合せによっては被告の特許権を侵害する可能性があると主張するにとどまり、原告機械の製造、販売が特許権を侵害するとは主張していないことを考慮 すると、原告機械は、本件特許権ないし被告の保有する特許権に係る発明の技術的範囲に属さないというべきである。 したがって、原告機械そのものや(特許法の規定に照らせば、原告機械が特許権を侵害するとの告知内容自体誤りである。)、その製造、販売が本件特許権ないし被告の特許権を侵害する旨の告知は、原告シプソルに関す る虚偽の事実の告知に当たると認められる。 イ次に、原告機械によって製造される梱包体についてみると、原告シプソルは、原告機械を製造、販売した者にすぎず(前提事実(3))、原告製品などの梱包体の製造そのものには関与していないから、梱包体や梱包方法に関する発明である本件特許発明を実施していないというべきである。 そうすると、原告シプソルが原告製品の製造及び原告方法の使用につい て本件特許権を侵害する旨の告知は、原告シプソルに関する虚偽の事実の告知に当たると認められる。 ウ以上によれば、甲3通知及び甲21メールは、いずれも原告シプソルに関する虚偽の事実を告知するものと認められる。 被告の主張について ア被告は、甲3通知には、原告シプソルの名称が記載されていないし、被告も、この時点で、原告M・Kロジに原告機械を販売したのが原告シプソルであることを把握していなかったから、甲3通知を送付したことは、原告シプソルとの関係で虚偽の事実の告知に当たらないと主張する。 営業上の信用を害する虚偽の事実の告知等は、競争関係にある他人に関 するものでなければならない。しかし、当該告知等において当該他人の氏 係で虚偽の事実の告知に当たらないと主張する。 営業上の信用を害する虚偽の事実の告知等は、競争関係にある他人に関 するものでなければならない。しかし、当該告知等において当該他人の氏名や名称が明示されていなくとも、これを受け取った者が、特定の者の商品等について事実と異なるように捉えることがあれば、当該特定の者の営業上の信用を害するおそれがあることに変わりはない。 前記(1)において説示したとおり、原告M・Kロジは、原告シプソルから 原告機械を購入しており、甲3通知が指摘する原告製品を製造する機械を販売した企業とは原告シプソルであることを容易に認識できたといえる。 そうすると、甲3通知は、これを受け取った原告M・Kロジが原告シプソルの販売する原告機械について事実と異なるように捉えることがあると認められるから、原告シプソルの営業上の信用を害するものというべきであ る。 イまた、被告は、甲21メールのうち、「御社が導入予定のシプソル社の自動梱包ラインですが、弊社の特許技術に抵触しております。」との記載は、表現上不正確ではあるものの、原告シプソルの製造した自動梱包ラインによって製造される梱包体が、梱包体の箱の内寸と板材の長さとの組合せに よっては被告の特許権を侵害することになるから、甲21メールを正しく 理解すれば、必ずしも被告が虚偽の告知をしたとはいえないと主張する。 しかし、甲21メールは、原告シプソルが被告の特許権を侵害する主体であると理解されるものであるところ、仮に、被告が主張するように、梱包体の箱の内寸と板材の長さの一部の組合せが被告の特許権を侵害する可能性があるとしても、原告シプソルは、梱包体の製造そのものに関与して いないから、原告シプソルの製造した自動梱包ラインによっ 梱包体の箱の内寸と板材の長さの一部の組合せが被告の特許権を侵害する可能性があるとしても、原告シプソルは、梱包体の製造そのものに関与して いないから、原告シプソルの製造した自動梱包ラインによって製造される梱包体について、原告シプソルが被告の特許権を侵害していると告知することは、結局のところ、虚偽の事実を告知するものといわざるを得ない。 ウさらに、被告は、甲21メールにつき、甲3通知を発送後、原告らとの交渉の方向性が定まるまで、取引先等への告知を控えるとの方針をとって いたにもかかわらず、被告の営業職員が指示によることなく勇み足で送信したものであると主張し、甲21メールの送信主体が被告であることを争う。 しかし、甲21メールの表題及び署名にはいずれも被告の名称が記載され、送信先のメールアドレスのドメイン名からも甲21メールは被告の管 理する電子メールシステムから送信されたものと認められる上、甲21メールのその余の内容及び体裁に照らしても、甲21メールは、通常、被告の営業の一環として送信されたものと理解されるものである。 また、被告が主張するように、被告の営業職員が、被告の指示によることなく甲21メールを送信したことをうかがわせる証拠はないし、被告が、 甲3通知の発送後、原告らとの交渉の方向性が定まるまで取引先等への告知を控えるとの方針を定めたこと及びこの方針を従業員に伝達したことを認めるに足りる証拠もない。 したがって、甲21メールの送信主体は被告と認めるのが相当である。 エ以上によれば、これらの点についての被告の主張を採用することはでき ない。 小括ア甲3通知及び甲21メールの送付ないし送信の不正競争行為該当性について原告シプソル エ以上によれば、これらの点についての被告の主張を採用することはでき ない。 小括ア甲3通知及び甲21メールの送付ないし送信の不正競争行為該当性について原告シプソルが、原告機械の製造、販売や、原告製品の製造等について被告の特許権ないし本件特許権を侵害しているとの内容は、原告シプソル の営業上の信用を害するものであることは明らかであるから、被告が送付ないし送信した甲3通知及び甲21メールは、原告シプソルの営業上の信用を害する虚偽の事実の告知に当たる。 そして、原告シプソルと被告とは改正前不競法2条1項15号所定の「競争関係」にある(前提事実(1)ウ)。 したがって、被告による甲3通知及び甲21メールの送付ないし送信は、いずれも同号所定の不正競争行為に当たる。 イ原告シプソルの被告に対する差止請求について前記アによれば、原告機械又は原告機械の製造する梱包体が本件特許権を侵害する又は侵害するおそれがあるとの事実の告知又は流布の差止めを 求める原告シプソルの請求は理由がある。 ウ原告シプソルの被告に対する損害賠償請求について被告は、包装機器の設計、開発、製造及び販売等を目的とする株式会社であるから(前提事実(1)イ)、この目的からうかがわれる業務内容に照らせば、原告機械ないし原告シプソルの販売する自動梱包ラインが被告の保 有する特許権を侵害するか否かを調査することは必ずしも困難とはいえないから、被告には、甲3通知及び甲21メールを送付ないし送信したことについて、少なくとも過失があったというべきである。 争点5(原告シプソルに生じた損害の有無及びその額)について無形損害について 前記4(1)及び(2)のとおり、甲3通知及び甲21メールの内容は、原告シ があったというべきである。 争点5(原告シプソルに生じた損害の有無及びその額)について無形損害について 前記4(1)及び(2)のとおり、甲3通知及び甲21メールの内容は、原告シ プソルが本件特許権を侵害している旨及びMYTHが原告シプソルから購入することを予定している自動梱包ラインが被告の保有する特許権を侵害する旨を告知するものである。そして、原告シプソルは、自動梱包ラインの専門会社であると認められるから(甲20、23)、主力商品ともいえる自動梱包ラインが他社の保有する特許権を侵害するとの事実が告知されたことにより、 原告シプソルの信用が毀損されたことは明らかであり、その程度も必ずしも小さいとはいえない。 しかし、被告から原告シプソルの取引先に対して虚偽事実の告知がされた回数は、本件全証拠によっても、甲3通知及び甲21メールの送付ないし送信の合計2回を超えて認められない。また、これらの通知等がされたことに より、原告M・Kロジ及びMYTHが原告シプソルとの取引を取り止めたと認めるに足りる的確な証拠はない(原告らは、原告M・Kロジが、甲3通知を受領した後、自動梱包ラインを他社に発注したと主張し、この点に関連して福岡パッケージ株式会社が発行した自動制函機、シュリンク包装装置等に係る見積書を証拠(甲26)として提出するが、原告M・Kロジが、これに 相当する機械を原告シプソルに発注する予定であったことを認めるに足りる証拠はないから、原告シプソルが甲3通知を契機として原告M・Kロジからの受注を失ったとまで認めることはできない。)。 これらの事情を含む本件に現れた諸事情を総合考慮すると、原告シプソルに生じた無形損害の額は30万円と認めるのが相当である。 弁護士費用について とまで認めることはできない。これらの事情を含む本件に現れた諸事情を総合考慮すると、原告シプソルに生じた無形損害の額は30万円と認めるのが相当である。 弁護士費用について被告の不正競争行為と相当因果関係にある弁護士費用の額は5万円と認められる。小括以上によれば、原告シプソルは、被告に対し、改正前不競法2条1項15号及び不競法4条に基づき、損害金35万円及びこれに対する平成31年3月25日(不正競争行為の日)から支払済みまで改正前民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 第4 結論以上によれば、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 小川暁 裁判官 間明宏充 別紙原告製品目録 原告M・Kロジが発送した、以下の商品名及び発送元又は依頼会社で特定される梱包体。 1 原告製品1商品名:夜スリムトマ美ちゃん酵素プラス発送元:(住所省略) 2 原告製品2商品名:肌ナチュールクレンジング発送元:(住所省略) 3 原告製品3商品名:クリアゲルクレンズ発送元:(住所省略)依頼会社:メディカルコート株式会社 原告製品2商品名:肌ナチュールクレンジング発送元:(住所省略) 3 原告製品3 商品名:クリアゲルクレンズ発送元:(住所省略)依頼会社:メディカルコート株式会社 4 原告製品4 商品名:ザ・クレンジングバーム依頼会社:プレミアアンチエイジング株式会社以上 別紙原告方法目録 原告M・Kロジが発送した、以下の商品名及び発送元又は依頼会社で特定される梱包体の梱包方法。 1 原告製品1商品名:夜スリムトマ美ちゃん酵素プラス発送元:(住所省略) 2 原告製品2商品名:肌ナチュールクレンジング発送元:(住所省略) 3 原告製品3 商品名:クリアゲルクレンズ発送元:(住所省略)依頼会社:メディカルコート株式会社 4 原告製品4 商品名:ザ・クレンジングバーム依頼会社:プレミアアンチエイジング株式会社以上 別紙物件目録 原告シプソルが販売する以下の名称の自動梱包ライン。 シプソルシュリンク自動包装ライン以上 別紙特許権目録 特許番号特許第6466029号発明の名称梱包体と梱包方法 出願日平成28年5月10日出願番号特願2018-516238登録日平成31年1月18日特許請求の範囲【請求項1】 矩形にした底面の4辺から起立した側片が備えられた段ボールからなる箱と、上記箱に押し込んだときに、上記4つの側片に圧接する少なくとも4箇所の圧接部を有する板材と、上記板材に載せた梱包対象物を固定する固定手段とからなり、上記底面とそれに連 えられた段ボールからなる箱と、上記箱に押し込んだときに、上記4つの側片に圧接する少なくとも4箇所の圧接部を有する板材と、上記板材に載せた梱包対象物を固定する固定手段とからなり、上記底面とそれに連続する側片との折り曲げ部分に形成されるつぶし代が相まって凹みが形成されるとともに、上記板材の圧接部はこの凹みに押し込まれてグリ ップされる寸法が保たれ、上記板材の圧接部がグリップされた状態で、梱包対象物とともに板材が箱の底面に密着される梱包体。 【請求項4】矩形にした底面の4辺から起立した側片を有する箱と、上記箱に押し込んだときに、上記4つの側片に圧接する少なくとも4箇所の圧接部を有する板材と、上 記板材とそこに載せた梱包対象物とを包装する熱収縮性のフィルムが備えられ、上記板材に梱包対象物を載せる工程と、これら板材と梱包対象物とを熱収縮性の上記フィルムで一体的に覆う工程と、上記フィルムを熱収縮させて、板材とともに梱包対象物をシュリンク包装する工程と、上記シュリンク包装された板材の上記圧接部を、上記底面とそれに連続する側片との折り曲げ部分に押し込み、この 折り曲げ部分に形成された凹みに上記圧接部をグリップさせる工程とからなる梱 包方法。 以上

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