- 1 - 主文 被告人を懲役30年に処する。 未決勾留日数中630日をその刑に算入する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 A,B及びCと共謀の上,D(当時28歳)を生命又は身体に対する加害の目的で誘拐しようと企て,平成30年2月23日午後1時10分頃から同日午後1時50分頃までの間,名古屋市a区b地内の甲において,前記Bが資金運用の依頼名目で呼び出していた前記Dに対し,同居人が投資話を聞きたがっている旨の虚偽の事実を言って,前記Dにその旨誤信させ,よって,同日午後2時3分頃,被告人,前記A及び前記Cが付近で待機している名古屋市c区de丁目f番g号乙h号室まで前記Bが前記Dを同行した上,同室内に同人を入室させ,もって生命又は身体に対する加害の目的で同人を誘拐し,さらに,同日午後2時8分頃から同日午後2時35分頃までの間に,同所において,同人に対し,その顔面を拳で複数回殴る暴行を加え,よって,同人に全治約3週間を要する顔面打撲等の傷害を負わせ第2 前記A,前記B及び前記Cと共謀の上,同日午後2時8分頃から同日午後2時49分頃までの間,前記乙h号室において,前記Dに対し,その両手首及び両足首をひも様のものでそれぞれ緊縛するなどした上,同人を黒色手提げバッグ内に詰め込むなどし,同人を同室内から脱出することを不可能にさせ,もって同人を不法に逮捕監禁し第3 同日午後3時34分頃から同月24日午前6時26分頃までの間に,名古屋市i 区j 町k 丁目l 番地所在の丙m号室において,殺意をもって,不詳の方法により,前記Dを死亡させて殺害し第4 同月23日午後3時34分頃から同月24日午後6時1分頃までの間に,前記 - 2 -丙m k 丁目l 番地所在の丙m号室において,殺意をもって,不詳の方法により,前記Dを死亡させて殺害し第4 同月23日午後3時34分頃から同月24日午後6時1分頃までの間に,前記 - 2 -丙m号室において,包丁等を用いて,前記Dの死体を切断するなどし,さらに,Eと共謀の上,同日午後6時57分頃から同月25日午前8時48分頃までの間に,愛知県稲沢市n町op番qの土地において,その切断するなどした前記Dの死体の頭部,上腕部及び胸部等を同所に設置されたドラム缶に入れて焼却し,もって死体を損壊したものである。 (事実認定の補足説明)第1 争点弁護人及び被告人は,判示第1から第4のすべての事実につき被告人の関与を争うところ,当裁判所は,関係各証拠によって上記の各事実はいずれも認定でき,被告人はいずれの事実についても有罪であると判断したので,その理由について以下補足して説明する(なお,以下の日付は,特に記載のない限り,平成30年のものである。)。 第2 判示第1及び第2の各事実(生命身体加害誘拐,傷害,逮捕監禁)について 1 証拠上認定できる事実(前提事実)関係各証拠によれば,2月23日午後1時10分頃から同日午後2時50分頃までにかけて,Bが,被害者D(以下「被害者」という。)を資金運用の依頼の名目で甲へ呼び出し,同所にて,Bが被害者に対して同居人が被害者の話を聞きたがっている旨の嘘を言って乙h号室(以下「h号室」という。)へ同行するように仕向け,Bが被害者と共にh号室へ入室したこと,その後,Cが同所に入室し,さらに引き続き被告人とAもそれぞれ同所へ入室した結果,同室内は,B,C,A(以下これら3名を「共犯者ら」という。),被告人及び被害者のみとなったこと,そして,被害者は,手足を緊縛された後,被告人が準備した黒色手 被告人とAもそれぞれ同所へ入室した結果,同室内は,B,C,A(以下これら3名を「共犯者ら」という。),被告人及び被害者のみとなったこと,そして,被害者は,手足を緊縛された後,被告人が準備した黒色手提げバッグ(以下「本件バッグ」という。)に詰められ,被告人のみが乗車し,運転するバモスに積み込まれて運び去られたことが認められる。 2 h号室内での被害者に対する傷害結果及び暴行態様 - 3 -まず,被害者とBがh号室へ向かう際に乗車したタクシーのドライブレコーダー画像によれば,被害者の顔面には腫れ等の外傷は認められない一方,h号室内にてAによって撮影された動画(以下「本件動画」という。)によれば,被害者の顔面が腫れあがっていることが認められる。そして,同動画を視聴したJ医師が,当時の被害者の負傷状況につき,顔面打撲と皮下出血で全治約3週間程度の傷と診断し,その原因たる暴行につき,複数回にわたって顔面を拳で殴るという態様であるとしても矛盾しない旨供述している。同医師が経験豊富な救命治療の専門医で,その証言内容も医学的知見に基づくものと認められることを踏まえれば,同供述は信用できる。 そして,Bは,被告人及びAが被害者の顔や胴体を拳で複数回殴っていた旨供述する。Bの供述については,一連の事実経過につきCの供述と基本的に合致しているのみならず,防犯カメラ映像の解析結果等の客観証拠とも整合している。被告人の暴行に関する上記供述部分についても,少なくともAも被害者の顔面を殴ったという限度ではAの供述とも一致しており,Cの供述とも矛盾はしていない。また,後述のとおり,被告人が被害者に深い恨みを抱き,被告人が,Aらの協力を得ることで本件犯行を実現させたという経緯,被告人がh号室に入室直後,被害者の背中を率先して蹴ったこと(共犯者ら3名の供述 また,後述のとおり,被告人が被害者に深い恨みを抱き,被告人が,Aらの協力を得ることで本件犯行を実現させたという経緯,被告人がh号室に入室直後,被害者の背中を率先して蹴ったこと(共犯者ら3名の供述が合致しており,十分に信用できる。)も,上記供述内容と親和的といえる。Bが,自らの裁判の際には被告人及びAの前記暴行について供述しなかった理由についても,自己の裁判では自己保身を考えていたものの,現時点では,被害者遺族の発言を聞き,本件の刑に服する中で,同人のためにも記憶のとおり供述しようと考えるに至ったためである旨供述しており,その変遷理由にも合理性が認められる。よって,Bの上記供述は信用できる。 以上より,被害者は,h号室内において,被告人及びAからその顔面を拳で複数回殴打する暴行を受け,よって全治約3週間の顔面打撲及び皮下出血の傷害を負ったことが認められる。 3 加害目的及び共謀について - 4 -被告人が,h号室内において,被害者の背中を蹴ったのみならず,前記暴行にも及び,その後,後述のとおり被害者を殺害していることを併せれば,本件一連の犯行に当たって,被告人に,被害者の生命又は身体に対する加害の目的があったことは明らかである。 そして,本件犯行に先立つ被告人及びAらのメッセージのやり取りの内容から明らかなように,被告人は,そのような自身の加害目的を実現するため,Aに対して報酬を約束して被害者を捕まえるように依頼し,被害者を誘い出す日時につき具体的な要望を共犯者らに伝えるなど事前の計画にも一定の関与をしており,共犯者らにおいても,h号室内で被害者に対する暴力の発生が予想されていたことが認められる。また,逮捕監禁については,共犯者ら3名の供述(以下の点についてはおおむね合致しており,十分に信用できる。)によれば,被告人 ても,h号室内で被害者に対する暴力の発生が予想されていたことが認められる。また,逮捕監禁については,共犯者ら3名の供述(以下の点についてはおおむね合致しており,十分に信用できる。)によれば,被告人は自ら用意した本件バッグをCにh号室内に運び込ませ,B又はCに被害者の手足を縛るように指示して,本件バッグ内に入っていたひも様のもので被害者を緊縛させ,その後,h号室外に出た被告人から連絡を受けたAが,被害者に本件バッグに入るよう指示し,共犯者らが,被害者を詰め込んだ本件バッグを被告人運転のバモスに運び入れたことが認められる。以上を踏まえれば,生命身体加害誘拐はもちろん,逮捕監禁及び傷害についても,被告人を含む共犯者らとの間でそれぞれ共謀が認められる。 4 被告人供述の信用性等についてこの点につき,被告人は,被害者に対する上記一連の行為につき,Aが主導して行っており,自身はその流れに身を任せたにすぎず,被害者とは話をしたかっただけであり,また,被害者に意図的に攻撃を加えたことはない旨供述する。 しかし,Aへの報酬約束等の本件犯行に先立つ被告人とAらとのメッセージのやり取りの内容を踏まえれば,被告人が主導して,Aらの協力の下,被害者を呼び出し,少なくとも捕まえようとしていることは明らかである。また,被告人は,本件犯行時にh号室内において被害者と話をする機会があったにもかかわらず,実際にはほとんど会話をしていない。加えて,共犯者らが被害者を本件バッグに詰め込ん - 5 -でバモスに運び入れた際にも,被告人は特段の疑問を示すこともなく本件バッグを乗せたまま同車を発進させており,そのバッグを事前に準備したのが被告人であることも相まって,被告人が事前にこれら一連の流れを予想していなかったとは到底考えられない。 以上を踏まえれば,被告人 を乗せたまま同車を発進させており,そのバッグを事前に準備したのが被告人であることも相まって,被告人が事前にこれら一連の流れを予想していなかったとは到底考えられない。 以上を踏まえれば,被告人の上記供述は信用できず,弁護人指摘の点を検討しても,上記判断は左右されない。 5 小結以上によれば,被告人につき,判示第1及び第2の各犯罪の成立が認められる。 第3 判示第4の事実(死体損壊)について 1 証拠上認定できる事実(前提事実)関係各証拠によれば,2月23日午後2時50分頃,両手足を縛られ,さらに本件バッグに詰められた状態の被害者を乗せたバモスが乙付近を出発し,同日午後3時34分頃,同車が丙付近に到着したこと,その後,同月24日午後5時35分頃,当時被告人が経営に携わっていた会社の従業員であるEが丙に到着し,同月25日午前8時48分頃までの間に,Eと被告人は,丙からEの実家付近に設置されたドラム缶(以下「本件ドラム缶」という。)まで3回車で同行し,同ドラム缶において,何らかの物を焼却したこと,そして,バモスが乙付近を出発した以降,被害者の生存は確認できず,その遺体も発見されていないことが認められる。 2 被告人とEがドラム缶の中で燃やしたものが被害者の死体であること⑴ まず,被告人とEは,合流した直後から,上記のとおり夜通しで本件ドラム缶と丙m号室(以下「m号室」という。)とを繰り返し往復し,同ドラム缶を用いて何らかの物を焼却しているところ,寒さも厳しい2月の夜間に,長時間にわたって人気のない野外で焼却作業を行っていることからすれば,被告人らが燃やしたものは,その直前にm号室から運び出したものであり,さらには人に見られては困る性質のものであることがうかがわれる。 ⑵ 次に,m号室の検証結果等によれば,同室内の天井やフ すれば,被告人らが燃やしたものは,その直前にm号室から運び出したものであり,さらには人に見られては困る性質のものであることがうかがわれる。 ⑵ 次に,m号室の検証結果等によれば,同室内の天井やフロアタイルなど複数箇所 - 6 -から被害者の血液が検出され,特にフロアタイル下のクッションフロアシートには,フロアタイルの継ぎ目から浸透したと思われる被害者の血液が広範囲に広がっており,さらには,その下の床材にまで,フロアタイル及びクッションフロアシートを貫通したごく小さな傷跡を介してその血液が広がっていることが認められる。 加えて,上記運搬及び焼却行為を経た後,Eが自ら壁紙を剥がすなどした上で,リフォーム業者に同室の壁紙と床材の張替えを依頼していたことも併せれば,m号室内において,広範囲に血痕が広がるほどに相当量の出血をするような出来事が被害者に起こったことが強くうかがわれる。そして,このような出血の機会は,被告人が被害者をバモスで丙に運んだ以前には想定し難い。 ⑶ そして,本件ドラム缶直下の土中からは複数の骨片様のものが発見され,その一部については,人の頭部,上腕部,胴体部の骨の一部である旨の鑑定がなされている。同鑑定を実施したK技官が人骨の鑑定につき豊富な経験を有することに加え,その結論を導く過程についても,同人が当公判廷においてその科学的根拠を明示した上で供述しており,その内容に正確性を疑わせるような事情も認められないことからすれば,同鑑定は信用できる。また,これら各骨片の表面がすすけていること及びK技官の供述によれば,それら人骨は焼却後のものであると認められるところ,別の場所で焼却された人骨が,他人の敷地にまかれることは想定し難いことからすれば,上記骨片の存在は,本件ドラム缶にて人の身体が焼却されたことを強く推認させる。 ま のものであると認められるところ,別の場所で焼却された人骨が,他人の敷地にまかれることは想定し難いことからすれば,上記骨片の存在は,本件ドラム缶にて人の身体が焼却されたことを強く推認させる。 また,長年にわたって火葬業務に携わる斎場職員の供述によれば,ドラム缶で人の身体を焼却した場合,不快な臭いが強く漂うことが認められるところ,本件ドラム缶設置場所の近隣住民が,被告人らが本件ドラム缶にて何らかの物を燃やしていたとうかがわれる時間帯に,強い不快な臭いがした旨を供述していることも,本件ドラム缶において焼却されたものが人の身体であることと整合する。 ⑷ 以上の各事実を併せれば,被告人らが本件ドラム缶において焼却したものは,人の身体であると認められ,これに同焼却に先立つ判示第1及び第2の事実を含む被 - 7 -害者が丙に運ばれるまでの一連の経緯,さらには上記のとおり,その後被害者にm号室内で相当量の出血をする出来事があったことに加え,焼却された物がm号室から持ち出されたものであることも併せれば,焼却された身体は被害者のものであることが認められる。 3 本件焼却に先立って,被告人が被害者の死体を切断したこと⑴ まず,前記斎場職員の供述によれば,ドラム缶で人体を焼却するためには,それを切断した上で燃料と共に少しずつ投入する必要があると認められることからすれば,被告人らは,少なくとも本件焼却行為に先立って,被害者の身体を切断していたと認められる。そして,被告人がEに指示してm号室の鍵を管理会社に無断で付け替えさせたことに加え,上記2⑵で述べたとおりm号室内で被害者が相当量の出血をした出来事があったと認められることからすれば,上記切断行為はm号室内で行われたと認められる。 ⑵ そして,被告人は,本件犯行に先立ち,獣の骨を切るための道具である m号室内で被害者が相当量の出血をした出来事があったと認められることからすれば,上記切断行為はm号室内で行われたと認められる。 ⑵ そして,被告人は,本件犯行に先立ち,獣の骨を切るための道具であるチョッパーナイフやクレーバーナイフを取り寄せて購入する(購入者が被告人であることは,購入者の連絡先が被告人の携帯電話番号であることから明らかである。)と共に,切断後の被害者の身体を一時的に保管するために用いうる冷蔵庫(なお,同冷蔵庫から被害者の血液が検出されている。)をEと共に調達し,さらには被害者の身体の切断が行われたm号室をEに賃借させて確保するなどの事前準備を行い,被害者が丙に運ばれた後,m号室から荷物を運ぶための車を用意するようEを電話で呼び出した上で,被害者の身体の運搬・焼却行為に及んでいる。これに加えて,2月23日午後3時34分頃に被告人が被害者を丙へ運んでから,同月24日午後5時35分頃にEが丙に到着するまでは1日強の時間があるのに対し,Eが丙に到着した後,同所で荷物を積み込み,同日午後6時1分頃に最初に被告人と共に本件ドラム缶付近に向けて出発するまでの時間は30分弱にとどまること,証拠上,被告人及びE以外の第三者の関与を疑わせるような事情も見当たらないことからすれば,m号室での上記切断行為については専ら被告人が行ったものと認められる。 - 8 - 4 Eとの共謀について以上のとおり,被告人は,自ら被害者の死体を切断した上で,Eと共にその運搬及び焼却に携わったのであるから,被告人に本件死体損壊の故意があることは明らかである。 そして,Eについても,被害者の死体の切断に関しては関与の形跡が乏しく故意及び共謀を認めるに至らないが,死体の焼却に関しては,被告人と共にm号室内から荷物を運び出し,それを本件ドラム缶で焼却 そして,Eについても,被害者の死体の切断に関しては関与の形跡が乏しく故意及び共謀を認めるに至らないが,死体の焼却に関しては,被告人と共にm号室内から荷物を運び出し,それを本件ドラム缶で焼却したのであるから,その過程において,感触や臭いなどから焼却しようとしているものが死体である可能性を当然に認識しうるものであり,死体損壊の故意及び共謀が認められる(Eは,自身が運んで焼却したものが死体であるとは分からなかった旨供述するがその供述内容には曖昧な部分が多い上,人の身体をドラム缶で焼却すれば強い悪臭が生じるところ,現に焼却を行ったEがその臭いに気付かないはずはないにもかかわらず,焼却時の臭いは特に感じなかった旨供述していることからすれば,同供述は信用できない。)。 以上より,死体の切断については被告人が単独で,死体の焼却については被告人がEと共謀の上で行ったものと認められる。 5 被告人供述の信用性について被告人は,丙駐車場に被害者が乗ったバモスを止めた時には,被害者は死亡しており,その遺体を誰とは言えない別の者がm号室内に運び込んだ後に,自身は公園で車中泊などをし,2月25日にEを呼び出して同人と合流して,m号室内の品々を運び出すように指示したところ,Eは自身が運転してきたキャンターに同室内の品々を積み込んでは本件ドラム缶まで運び,そこで何かを燃やしたが,自身はずっと助手席で寝ていたため,何を燃やしたかは分からない旨供述する。 しかし,上記供述は,Eの携帯電話の位置情報解析結果や丙周辺の防犯カメラの解析結果等の客観証拠に反する上,なぜEを呼び出し,m号室内の品々を運び出させ,焼却させたのか,また,その対象となる品々には何が含まれるのか,などといった基本的な点について,何ら具体的な説明もできていない。さらには,上述のと なぜEを呼び出し,m号室内の品々を運び出させ,焼却させたのか,また,その対象となる品々には何が含まれるのか,などといった基本的な点について,何ら具体的な説明もできていない。さらには,上述のと - 9 -おり,m号室内にて被害者が相当量の出血をするような出来事があったと認められるところ,この点についても説明がつかない。 以上より,被告人の上記供述は信用できない。 6 弁護人の主張について弁護人は,前記斎場職員の供述によれば,火葬炉で遺体を火葬する際でも70分から80分はかかり,ドラム缶で死体を焼却する場合,燃料を入れ続けるなど付きっきりで行わない限り困難であるのみならず,相当の時間も要するところ,Eが本件ドラム缶付近にいた時間が,3回合計でも約7時間であり,そのような短時間に死体を焼却することは困難である旨主張する。 しかし,上述のとおり,本件においては,被害者の死体は焼却行為に先立ち切断されているところ,その際には相当量の出血を伴ったものと考えられることに加え,そもそも内臓等身体のすべてが同所において焼却されたとは限らないし(なお,被告人は,包丁を購入したのと同時期に妻名義でミキサー2台を購入している。),さらには焼却の程度も,葬祭場におけるそれとは異なり,ひとまず被害者の死体を隠滅するに足りる程度であった可能性も考えられること(Eは,被告人の指示により,本件ドラム缶内の残焼物を後日海岸に捨てに行った旨述べている。)などを踏まえれば,葬祭場における火葬と本件焼却では前提が大きく異なり,それに要する時間も当然異なってくるものと考えられる。また,上記のとおり,本件ドラム缶直下の土砂からすすけた人骨が現に発見されていることは,現に本件ドラム缶において被害者の死体が焼却されたことを強く基礎付けるものといえる。 よって,弁護 られる。また,上記のとおり,本件ドラム缶直下の土砂からすすけた人骨が現に発見されていることは,現に本件ドラム缶において被害者の死体が焼却されたことを強く基礎付けるものといえる。 よって,弁護人の主張は上記推認を妨げる事情とはならず,判断を左右しない。 7 小結以上より,被告人につき,判示第4の死体損壊罪が成立することが認められる。 第4 判示第3の事実(殺人)について 1 被害者の死亡原因について被害者は,2月23日午後2時50分頃,両手足を縛られ本件バッグに詰められ - 10 -た状態で,被告人が運転するバモスに乗せられたところ,B及びCの供述によれば,その際,被害者は被告人の指示に応じる形で,自ら同車後部座席上を奥の方へ移動したとのことであるから,少なくとも同時点においては,被害者は生存していたと認められる一方,上述のとおり,被害者は同月24日午後6時過ぎには,既に切断された状態で,m号室から搬出されている。 そして,J医師は,本件動画撮影時点における被害者の頭部の受傷状況につき,同動画において,被害者は質問に応じて返答し,かみ合った会話ができていることから意識障害はなく,仮に頭蓋内出血があったとしても,動脈からではなく静脈からの出血等によるものと考えられ,その程度も軽度であるから,別の要因が加わらない限り死亡する可能性はほとんどゼロに近い旨供述する。さらに,共犯者らはいずれも,同動画が撮影された時点からh号室外へ運び出されるまでの間に被害者が暴行を受けることはなかった旨供述するところ,そもそも動画撮影時から搬出時までは数分程度と短時間であり,その間も少なくともAは被告人と断続的に電話をしていることに加え,既に手足を縛られた状態の被害者に対し,共犯者らが更なる暴行を加える必要性も考え難いことからすれば, 時までは数分程度と短時間であり,その間も少なくともAは被告人と断続的に電話をしていることに加え,既に手足を縛られた状態の被害者に対し,共犯者らが更なる暴行を加える必要性も考え難いことからすれば,共犯者らの上記供述は信用でき,動画撮影後の被害者への暴行はなかったと認められる。そうすると,被害者がh号室から搬出されるまでに受けた暴行を原因として被害者が死亡した可能性は考えられない。 そして,被害者は特段の持病もない若年の成人男性であることも併せれば,病死などの死因も考え難い。 以上より,被害者は,h号室から丙へ運ばれて以降,遅くとも2月24日午後6時過ぎまでの間に,いずれかの者の作為によって死亡させられたことが認められる。 2 被害者を死亡させた者が被告人であるのみならず殺意も認められること被告人は,これまで認定してきたとおり,死体損壊に用いる場所及び道具等を事前に準備し,共犯者らの協力の下,だまして誘い出した被害者を,その手足を縛り, - 11 -本件バッグに詰めた状態で,単独でm号室へ運び込み,同所で同人の身体を切断している。これら一連の事実経過を踏まえれば,被告人は,身動きのできない被害者を,事前に準備しておいたm号室へ運び込んだ上で,同所において,誰にも邪魔されることなくほしいままに被害者を殺害し,その死体を切断して冷蔵庫に隠すなどして犯行を隠蔽することを計画していたとみるほかない。以上に加え,被害者は丙へ運ばれてから1日強の間に殺害,切断され(2月23日午後3時34分頃,被害者を乗せた被告人運転のバモスが丙付近に到着し,翌24日午前6時26分頃,同車が丙付近から立ち去り,その直後に付近のコンビニエンスストアで消臭剤類4点が購入され,同日午後6時1分頃,被告人及びEがm号室から搬出した荷物を積んだキャンタ 到着し,翌24日午前6時26分頃,同車が丙付近から立ち去り,その直後に付近のコンビニエンスストアで消臭剤類4点が購入され,同日午後6時1分頃,被告人及びEがm号室から搬出した荷物を積んだキャンターで丙を出発している。),その間にm号室に被告人及び被害者以外の第三者が存在したことをうかがわせる事情も証拠上見当たらないことも考慮すれば,被告人が当初の計画どおりに同所にて被害者を殺害したことが強く推認される。また,被告人が被害者の死亡に関与していないのであれば,被害者の死体の徹底的な損壊行為を行ったことの説明が困難である。 そして,経緯につき明らかでない点があるにしても,当時被告人が経営に携わっていた会社の従業員らの供述及び同人らと被告人のメッセージ等関係証拠によれば,被告人と被害者の間には,本件犯行に先立ち,少なくとも何らかのトラブルがあったことに加え,被告人は,本件犯行以前に,前記従業員に指示して,被害者を拉致しようとしたり,被害者方マンション居室の空室状況や同室の郵便受けの中身の確認をさせるなどして,被害者の所在を確かめようとしたのみならず,被害者を捕まえれば報酬が出る旨を伝えたりしていることが認められ,最終的には,前記従業員を介して知り合ったAらの協力を得て判示第1及び第2の一連の犯行を計画し,実行させていることなどからすれば,被告人は,被害者への接触ないしその身柄の確保に極めて強い執着を持っていたことが認められる。以上に加えて,被告人は,本件犯行前に「D,殺してえ」,「あのがきだけは必ず殺す」,「俺が欲しいのはあいつの身柄」,「めちゃくちゃでかいカナヅチ買ったから,それでDの頭蓋 - 12 -骨をかち割ることしか今は考えられない」などの被害者への敵意ないし害意を示すメッセージを複数人に対して,多数回にわたって送信している ゃくちゃでかいカナヅチ買ったから,それでDの頭蓋 - 12 -骨をかち割ることしか今は考えられない」などの被害者への敵意ないし害意を示すメッセージを複数人に対して,多数回にわたって送信していることからすれば,被告人は,本件各犯行に際し,被害者に対する強い害意及び執着を有していたことは明らかであり,これも,被害者を死亡させた者が被告人であり,それが殺意に基づくことを推認させる事情の一つである。 以上を併せれば,被告人が,m号室において,被害者を殺意を持って殺害したことが認められる。 3 被告人供述の信用性について被告人は,一人でh号室を出た後,Aに電話をかけたところ,Aの息が荒いことなどから同人らが被害者に更なる暴行を加えていると思い,暴行をやめて被害者を解放するように求めたところ,予想外にも共犯者らは被害者を本件バッグに詰めた状態で運んできて自身が運転席に乗車して待機していたバモスの後部座席に積み込んできたため,ひとまず同車を発進させて被害者に声を掛けたが応答はなく,丙の駐車場に着いたところで運転席に座ったまま被害者の様子を確認すると,被害者は既に死亡していた旨供述する。 しかし,上記供述は,被告人退室後の状況に関する共犯者らの供述に反するほか,被害者の身を案じてその解放を求めながら,声掛けに応答しない被害者を乗せたまま漫然と丙に向かうというのは行動として矛盾しており,およそ不合理である。被害者が死亡したと判断した理由やその確認方法についても,供述に具体性がなく,被害者の死亡が想定外であったにしては,被告人においてAなり誰かに連絡するなど特段の対応を取った形跡がない(被告人は被害者の死亡をAに伝えなかった旨述べており,A及びBの供述によれば,被告人からAに電話がかかってきたが,その内容は被害者の所持品の処分の話 誰かに連絡するなど特段の対応を取った形跡がない(被告人は被害者の死亡をAに伝えなかった旨述べており,A及びBの供述によれば,被告人からAに電話がかかってきたが,その内容は被害者の所持品の処分の話などであった。)のも余りに不自然である。 以上より,被告人の上記供述は信用できない。 4 弁護人の主張について弁護人は,本件動画が撮影された以降にもAが被害者に更なる暴行を加えた可能 - 13 -性や,被害者が本件バッグに詰められてh号室からバモスへ運ばれる際に頭を打ち付けるなどした可能性,さらには被害者が低体温症を発症した可能性などを指摘し,被害者が被告人に殺害される以外に死亡する可能性がないとは言えない旨主張する。 しかし,同動画撮影以降にAを含む共犯者らが被害者を暴行していないと認められることは上述のとおりである。また,被害者をh号室からバモスへ運搬する際の経路に被害者の血痕が付着していることは認められるものの,いずれの血痕についても微量にとどまり,運搬状況に関する共犯者らの供述からしても,被害者の死因となり得るほどの打撃が加わったとは考え難い。そして,低体温症についても,本件犯行が行われたのが冬季で,被害者は着衣を裁断され,手足を縛られていたとはいえ,若年の成人男性で意識障害もない被害者が,車内や居室など直接外気にさらされることはない環境下で仮に相当期間放置される機会があったとしても,前記J医師の供述によれば,低体温症を発症し,それが原因で死亡することは想定し難い。 以上より,弁護人の上記主張は採用できず,弁護人のその余の主張を踏まえても,上記判断は覆らない。 第5 結論以上より,被告人に判示第1ないし第4のすべての犯罪が成立する。 (法令の適用) 1 罰条判示第1のうち生命身体加害誘拐の点 まえても,上記判断は覆らない。 第5 結論以上より,被告人に判示第1ないし第4のすべての犯罪が成立する。 (法令の適用) 1 罰条判示第1のうち生命身体加害誘拐の点刑法60条,225条傷害の点刑法60条,204条判示第2について刑法60条,220条判示第3について刑法199条判示第4について刑法60条,190条 2 科刑上一罪の処理判示第1につき,刑法54条1項後段,10条(生 - 14 -命身体加害誘拐と傷害との間には手段結果の関係があるので,1罪として重い傷害罪について定めた懲役刑(ただし,短期は生命身体加害誘拐罪のそれによる。)で処断)なお,生命身体加害誘拐は殺人の手段でもあるが,その間に被害者が逮捕監禁され移動させられたという事情が認められ,犯行の日時・場所も異なることからすれば,両罪は併合罪と解すべきである。 3 刑種の選択判示第3について有期懲役刑を選択 4 併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重) 5 未決勾留日数の算入刑法21条 6 訴訟費用の負担刑事訴訟法181条1項本文(量刑の理由)本件は,知人である被害者に対して何らかの理由で深い恨みを抱いた被告人が,その殺害を計画し,共犯者を利用するなどして実行した一連の犯行である。被告人は,被害者を運搬するための車両,殺害及び死体切断のために使用する部屋,死体切断に使う包丁,死体を入れるための冷蔵庫などの犯行用具等を準備するなど事前に被害者の殺害・死体切断まで計画した上,共犯者らに被害者の誘拐等を指示し,バ 両,殺害及び死体切断のために使用する部屋,死体切断に使う包丁,死体を入れるための冷蔵庫などの犯行用具等を準備するなど事前に被害者の殺害・死体切断まで計画した上,共犯者らに被害者の誘拐等を指示し,バッグに詰め込まれ身動きできない状態の被害者を殺害現場となった部屋に連れ込み殺害に及び,さらに,その死体を切断し焼却するなどの徹底的な損壊行為にまで及んでいる。 一連の犯行は,計画性も高く,残虐なものというほかない。 また,被告人が被害者に恨みを抱いた理由は明らかではないが,被害者に落ち度といえるような事情は一切うかがえず,自己中心的で身勝手な動機によるものとしか言いようがない。 さらに,被告人は,被害者を誘拐等する際には被害者のことを知っていたAらに報 - 15 -酬を約束してこれを行わせ,被害者の死体を損壊する際には部下であるEに指示して手伝わせるなど,多数の共犯者を利用し,被害者を殺害してその死体を処分するという目的を遂げている。被告人は,犯行の正に主犯という立場であり,その責任は格段に重い。 被害者の死亡という被害結果の重大性はいうまでもなく,抵抗できない状態でバッグに詰め込まれ,その後,殺害されるに至った被害者の感じた恐怖心,絶望感は計り知れない。被害者は交際相手との結婚を約束する中,28歳の若さで命を絶たれ,被告人による徹底的な死体損壊行為により被害者のものと確認できる遺骨すら発見されておらず,被害者遺族が死刑以外あり得ないと述べるなど,その処罰感情が極めて厳しいのも当然である。 そうすると,本件は計画的な殺人の中でも相当に重い部類に属するものである。 以上に加え,被告人が法廷で不合理な弁解に終始し,反省の態度が全くみられないことも考慮すると,被告人に前科がないことなどを加味しても,有期懲役刑の上限をもって処断すべ い部類に属するものである。以上に加え,被告人が法廷で不合理な弁解に終始し,反省の態度が全くみられないことも考慮すると,被告人に前科がないことなどを加味しても,有期懲役刑の上限をもって処断すべきである。(求刑懲役30年) 令和3年3月24日 名古屋地方裁判所刑事第2部 裁判長 裁判官 齋藤千恵 裁判官 棚村治邦 裁判官 石川颯人
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