昭和44(オ)155 預金払戻請求

裁判年月日・裁判所
昭和49年9月30日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 福岡高等裁判所 昭和42(ネ)255
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。      上告費用は上告人の負担とする。          理    由  上告代理人安部萬太郎の上告理由(一)第一点ないし第三点及び同安部萬年の上告 理

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判決文本文5,068 文字)

主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人安部萬太郎の上告理由(一)第一点ないし第三点及び同安部萬年の上告理由第一点について。 原審の認定するところによれば、従前のD労働組合大分地方本部(以下、元大分地方本部という。)は、法人格を有する単一組合であるD労働組合(以下、D労組という。)の下部機関の一つであつて、F管理局に勤務するD労組の組合員をもつて組織され、D労組の規約や大会決議によつて拘束を受けるものの、自己固有の代表者、決議及び執行の機関を有し、地方本部規約、会計規則等を具え、D労組の方針に反しない範囲内で自主的に活動することを承認され、その財政的基礎は、D労組本部からの交付金のほか、地方本部が所属の組合員から独自に徴収したものによつて形成され、これを自らの責任においてその活動の用に供し、対外的にも自己の名で財産上の取引等を行なつていた、というのであり、右認定は、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)挙示の証拠に照らして肯認することができる。これによれば、元大分地方本部は、D労組の統制下にあるとはいえ、それ自体独立の団体としての組織を有し、代表の方法、財産の管理等団体としての主要な点についての定めがあり、かつ、構成員の変動にかかわらず団体として同一性を保持するものであつて、D労組とは別個の存在を有する権利能力なき社団としての実体を具えていたものと認められる。そして、このような権利能力なき社団の資産がその構成員に総有的に帰属するものと解すべきことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二七年(オ)第九六号同三二年一一月一四日第一小法廷判決・民集一一巻一二号一九四三頁、昭和三五年(オ)第一〇二九号同三九年一〇月一五日第一- 1 - ことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二七年(オ)第九六号同三二年一一月一四日第一小法廷判決・民集一一巻一二号一九四三頁、昭和三五年(オ)第一〇二九号同三九年一〇月一五日第一- 1 -小法廷判決・民集一八巻八号一六七一頁)。したがつて、右と同趣旨において原判示の預金を元大分地方本部の固有の資産であるとした原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。 また、原審は、所論のいう昭和三九年一〇月八日の元大分地方本部の組合大会なるものについて、当時同地方本部内において表面化しつつあつたD労組脱退の動きに対し後記のようにD労組本部から統制権が発動されることとなつたため、右脱退賛成派の一部の者が対策を協議するために集合した非公式の会合にすぎず、規約に従つて開かれた正規の組合大会ではなかつたとの事実を認定したうえ、右大会の決議により元大分地方本部が組織をあげてD労組から離脱したとする上告人組合の主張を排斥しているのであつて、右認定判断もまた、原判決挙示の証拠に照らし相当として是認することができる。この点に関する論旨は、ひつきよう、原審の認定と異なる事実を前提として原判決の違憲、違法をいうものにすぎず、採用することができない。 上告代理人安部萬太郎の上告理由(一)第四点について。 原判決の判文に徴すれば、所論の点に関する原審の認定判断に所論の違法のないことは明らかである。論旨は、原判決を正解しないものというほかなく、採用することができない。 同第五点について。 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠によつて肯認しえないものではなく、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。 上告代理人安部萬太郎の上告理由(二)及び同安部萬年の上告理由第二点について。 按ずるに、元大分地 の証拠によつて肯認しえないものではなく、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。 上告代理人安部萬太郎の上告理由(二)及び同安部萬年の上告理由第二点について。 按ずるに、元大分地方本部は、それ自体独立の社団ではあるが、単一組合であるD労組の構成分子として存在する一地方組織であり、その目的、機能も限定され、D労組の方針に反しないかぎりで自治を承認されていたにすぎないことは、先に判- 2 -示したとおりである。全国的な規模を有するD労組においては、組合本部が直接各組合員を把握し、内部統制を維持することが困難であるところから、地域別に地方本部等の下部組織を設け、これらの組織を通じて末端の組合員を把握し、組合活動及び内部統制を円滑かつ実効的ならしめるとともに、その組合活動にできるだけ末端組合員の意思を反映させるため、地方本部に前記の限度の自治を認めているのであつて、D労組の組織上、地方本部の社団としての独立性も本来D労組の内部的構成分子としての制約を免れることはできないものと解される。この点において、もともと独立して成立した企業別組合が単一組織の上部組合を結成し、企業別ごとに支部と称している場合のように、下部組織の上部組合に対する独自性が強く、上部組合は各支部の連合体のごとき実体しかもたない組織とは、異質のものと認められる。そして、右のように地方本部がD労組の規約によつて存在を認められた下部組織である以上、その構成員が全くなくなつたために自然消滅する場合のほかは、D労組の規約の変更によつて当該地方本部を廃止することが決定された場合でなければ、地方本部そのものが消滅するということはありえず、地方本部の組合員の多数がD労組の方針に反対して集団的に離脱したため、地方本部が事実上二分されたような場合においても、従前の地方本部にD労 なければ、地方本部そのものが消滅するということはありえず、地方本部の組合員の多数がD労組の方針に反対して集団的に離脱したため、地方本部が事実上二分されたような場合においても、従前の地方本部にD労組の方針に従う組合員がなお残留し、引き続き地方本部としての団体活動を継続しているかぎりは、右残留組合員の組織する地方本部が従前の地方本部と同一性を有するものとみなければならない。 ところで、労働組合において、運動方針等をめぐる組合員間の対立から、組合内部に相拮抗する異質集団が成立し、その対立抗争が激しく、そのために組合が統一的組織体として存続し活動することが不可能若しくは著しく困難となり、遂にその異質集団に属する組合員が組合を離脱して新たな組合(以下、新組合という。)を結成し、旧組合の残留者による組合(以下、残存組合という。)と対峙するに至るという事実上の分裂現象は、しばしばみられるところである。所論は、右のような- 3 -組合の事実上の分裂を単なる集団脱退と区別し、この場合には新組合も残存組合も旧組合と同一性を有しないから、公平の観念上、双方の組合に旧組合の資産に対する持分を認めるべきであるとの見解を前提として、本件において元大分地方本部は後記のような内部的対立により上告人組合と被上告人地方本部とに分裂したものであるから、元大分地方本部の資産であつた本件預金については、上告人組合も権利を有する旨を主張する。 しかし、前記のようなD労組地方本部の下部組織としての特殊な性格からすれば、地方本部における組合員の集団的離脱が、当該地方本部の資産の帰属を問題とする関係において、所論のいう分裂にあたるものか、あるいは単なる集団脱退にとどまるものかについては、D労組の組織全体との関係からこれをみるべきであつて、その資産が地方本部に属することのゆえに、 題とする関係において、所論のいう分裂にあたるものか、あるいは単なる集団脱退にとどまるものかについては、D労組の組織全体との関係からこれをみるべきであつて、その資産が地方本部に属することのゆえに、D労組全体と切り離し地方本部だけに局限してこれを論ずるのは、下部組織としての制約を軽視するものといわなければならない。すなわち、地方本部においてD労組の方針に反対する組合員の集団的離脱があり、地方本部を独立の組合としてみれば事実上の分裂を生じたかのごとき観を呈するとしても、D労組そのものが統一的組織体としての機能を保持するかぎり、それは一部組合員のD労組からの集団脱退にほかならず、そうである以上、右離脱組合員又はその結成した新組合は、D労組本部の資産についてはもちろん、地方本部の資産についても、持分ないし分割請求権を有するものということはできない。 地方本部の資産についてまで、離脱者集団の権利を認めないことは一見公平を失するかのごとくであるが、もともと、地方本部の資産は、その地方本部がD労組の下部組織として同労組の方針に従つた自治活動を認められ、かかる活動のための物的基礎をなすものとして形成されてきたものであるから、D労組から脱退しこれとの関係を断つて独立の活動をしようとする離脱者集団が右資産について権利を主張することのできないことは、やむをえないところであつて、これをもつて、あながち- 4 -不合理不公平であるということはできないのである。 ところで、本件において原審の確定した事実関係は、おおむね次のとおりである。 D労組は、その基本的な運動方針として社会党支持を明らかにし、下部機関に対してはE評議会への加盟を要求していたが、元大分地方本部内においては、かねてから右方針の支持派と反対派とが対立し、久しく抗争を続けた結果、昭和三九年二月の大 して社会党支持を明らかにし、下部機関に対してはE評議会への加盟を要求していたが、元大分地方本部内においては、かねてから右方針の支持派と反対派とが対立し、久しく抗争を続けた結果、昭和三九年二月の大会において遂に反対派が多数を占め、民社党支持、E評議会からの脱退、同盟加入を決議し、同年九月の大会においても再びこれを承認し、執行部を反対派で固めるに至つた。これに対し、D労組本部は右決議の撤回を求めたが、同地方本部の執行部がこれに応じなかつたので、同年一〇月八日、D労組本部は、規約に基づく統制処分として、右地方本部執行部役員の執行権等を停止し、その代行機関を設置した。ここに至つて、同地方本部内の前記反対派は、D労組と袂を分かつて独自の行動に出るほかないとし、同月一六日、旧執行部役員を含む約二六〇〇名(同地方本部の当時の組合員総数の約三分の二)が参加して新たに上告人組合を結成するとともに、D労組本部に対して同人らの脱退届を一括提出した。しかし、元大分地方本部にはD労組支持派に属する組合員一二〇〇名がそのまま残留し、旧構成員及び役員の多数を失つたことによる解体の危機を克服して組織を立て直し、従前からのD労組規約及び同地方本部規約に基づきD労組の地方下部組織としてこれを組織運営しており、これが被上告人たる現在のD労組大分地方本部である。 以上の事実関係に徴すれば、元大分地方本部は、D労組の方針に従うかどうかをめぐつて事実上二派に分かれ、これに同労組本部からの介入も加わり、地方本部としての統一的活動が困難になつていたことは否定できないけれども、D労組の組織全体との関係からみれば、同労組の下部組織として同一性を保持しているのは被上告人地方本部であつて、前記反対派の離脱は、ひつきよう、D労組の方針に服することを好まない組合員が集団的に同労組を脱退したに 全体との関係からみれば、同労組の下部組織として同一性を保持しているのは被上告人地方本部であつて、前記反対派の離脱は、ひつきよう、D労組の方針に服することを好まない組合員が集団的に同労組を脱退したにすぎないものと認めるほかは- 5 -ない。してみると、右脱退者によつて結成された上告人組合には元大分地方本部の資産であつた本件預金に対する権利を認めることができないことは、先に説示したとおりであり、これと結論を同じくする原審の判断は、正当として是認すべきである。原判決に所論の違法はなく、右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は、独自の見解に立脚して原判決を非難するに帰し、すべて採用することができない。 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官岸盛一裁判官大隅健一郎裁判官藤林益三裁判官下田武三裁判官岸上康夫- 6 -

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