平成29年3月23日判決言渡し平成26年(ワ)第10806号損害賠償等請求事件 主文 1 被告は,原告P1に対し,4109円及びうち別紙7「残業手当差額(裁判所)」の「認定差額」欄記載の各金額に対する各「支給年月日」欄記載の日から,うち500円に対する平成26年5月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告P1のその余の請求及び同原告以外の原告らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,原告P1に生じた費用の1000分の1と被告に生じた費用の1000分の1を被告の負担とし,その余の費用を原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告P1に対し,1319万4385円及び(1) うち別紙1-1「原告P1本給差額」の「差額」欄記載の各金額に対する各「支給年月日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員(2) うち別紙2「原告P1賞与差額」の「差額」欄記載の各金額に対する各「支給年月日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員(3) うち別紙5「原告P1残業手当差額」の「差額」欄記載の各金額に対する各「支給年月日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員(4) うち3万円に対する平成28年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(5) うち369万6762円に対する平成26年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 2 被告は,原告P2に対し,1341万9369円及び(1) うち別紙1-2「原告P2本給差額」の「差額」欄記載の各金額に対する各「支給年月日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員(2) うち別紙2「原告P2賞与差額(L-3)」の「差額」欄記載の各 別紙1-2「原告P2本給差額」の「差額」欄記載の各金額に対する各「支給年月日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員(2) うち別紙2「原告P2賞与差額(L-3)」の「差額」欄記載の各金額に対する各「支給年月日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員(3) うち246万1000円に対する平成27年4月7日から支払済みまで年5分の割合による金員(4) うち421万2670円に対する平成26年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 3 被告は,原告P3に対し,1097万4609円及び(1) うち別紙1-3「原告P3本給差額」の「差額」欄記載の各金額に対する各「支給年月日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員(2) うち別紙2「原告P3賞与差額」の「差額」欄記載の各金額に対する各「支給年月日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員(3) うち224万7000円に対する平成26年4月7日から支払済みまで年5分の割合による金員(4) うち349万0419円に対する平成26年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 4 被告は,原告P4に対し,801万2917円及び(1) うち別紙1-4「原告P4本給差額」の「差額」欄記載の各金額に対する各「支給年月日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員(2) うち別紙2「原告P4賞与差額」の「差額」欄記載の各金額に対する各「支給年月日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員 (3) うち145万1680円に対する平成24年4月7日から支払済みまで年5分の割合による金員(4) うち297万3902円に対する平成26年5月1日から支払済みまで年5分の割合に 員 (3) うち145万1680円に対する平成24年4月7日から支払済みまで年5分の割合による金員(4) うち297万3902円に対する平成26年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,被告の契約社員として期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結し,東京メトロ駅構内の売店で販売業務に従事してきた原告らが,期間の定めのない労働契約を締結している被告の従業員が原告らと同一内容の業務に従事しているにもかかわらず賃金等の労働条件において原告らと差異があることが,労働契約法20条に違反しかつ公序良俗に反すると主張して,不法行為又は債務不履行に基づき,平成23年5月分から退職日(在職中の原告P1については平成28年9月分)までの差額賃金(本給・賞与,各種手当,退職金及び褒賞の各差額)相当額,慰謝料及び弁護士費用の賠償金並びに褒賞を除く各金員に対する支払期日以降(一部については訴え提起日以降)の民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者ア被告被告は,東京地下鉄株式会社(東京メトロ)の100%子会社として,東京メトロ駅構内における新聞,たばこ,飲食料品,酒類,雑貨類等の物品販売のほか,宝くじ・印紙類・航空券・入場券等の販売,鉄道運輸事業に係わる業務の受託,建築・電気工事の設計・施工及び請負並びに関連機材・資材等の販売,金銭等の集金及び運搬に関する事業,生命保険・損害保険・医療保険の代理事業,現金自動預入支払機・公衆電話機・自動写真 撮影機等の管理請負,コインロッカー事業,履物修理事業等の事業を行う株式会社である。 及び運搬に関する事業,生命保険・損害保険・医療保険の代理事業,現金自動預入支払機・公衆電話機・自動写真 撮影機等の管理請負,コインロッカー事業,履物修理事業等の事業を行う株式会社である。 被告の平成24年度の営業収入は169億6200万円であり,平成25年7月1日現在の従業員数は848名である(乙9)。 イ原告ら原告らは,いずれも「契約社員B」と称する区分の従業員として被告に採用され,期間1年以内の有期労働契約を反復更新して,被告の経営する東京メトロ駅構内の売店において販売業務に現に従事し,又は過去に従事していた者であり,全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合メトロコマース支部(以下「本件組合」という。)の構成員である。 (ア) 原告P1(昭和29年●月●日生。は,平成18年8月1日,契約社員Bとして被告に採用され,以後現在まで被告売店の販売員として勤務している。 (イ) 原告P2(昭和25年●月●●日生。)は,平成16年8月6日,契約社員Bとして被告に採用され,被告売店の販売員として勤務していたが,平成27年3月31日,被告を定年退職した。原告P2は,同年6月17日から被告に登録社員として再雇用され,現在まで勤務している。 (ウ) 原告P3(昭和23年●●月●●日生。)は,平成16年4月5日,契約社員Bとして被告に採用され,被告売店の販売員として勤務していたが,平成26年3月31日,被告を定年退職した。 (エ) 原告P4(昭和22年●月●●日生。)は,平成16年9月1日,契約社員Bとして被告に採用され,被告売店の販売員として勤務していたが,平成24年3月31日,被告を定年退職した。原告P4は,同年5月21日から契約期間を半年間とする登録社員として被告に雇用され,契約更新の上,平成25年11月26日に退職す 売員として勤務していたが,平成24年3月31日,被告を定年退職した。原告P4は,同年5月21日から契約期間を半年間とする登録社員として被告に雇用され,契約更新の上,平成25年11月26日に退職するまでの間,1日4時 間,週3日程度,被告売店の販売補助業務に従事した(甲6の1から6の3まで)。 (2) 被告の業務組織及び売店の状況ア被告は,本社に経営管理部,総務部,リテール事業本部,ステーション事業本部を設けており,このうちリテール事業本部は,被告の基幹事業として,現業のメトロス事業所を管轄し,同事業所が被告の経営する東京メトロ駅構内の各売店を管轄している。 イ被告の経営する売店数は,平成26年4月1日現在110店舗あり,そのうち56店舗は被告の直営する売店「P5」(以下,単に「売店」ということがある。)であり(うち8店舗は被告が個人に委託),その他の54店舗は他社に業務を委託している(弁論の全趣旨)。被告に雇用されている販売員は,被告の直営売店に配置される。 (3) 原告らと被告との間の労働契約ア原告P1は,平成18年8月1日,被告との間で,契約社員Bとして被告売店における販売業務に従事することを内容とする,期間1年以内の有期労働契約を締結し,以後現在まで当該有期労働契約を反復更新している。 平成26年3月3日に更新した原告P1の労働契約の内容は,次のとおりである(甲3の1)。 契約期間:平成26年4月1日から平成27年3月31日まで更新の有無:原則として更新する。ただし,一定の事由に該当する場合には,契約を更新しない場合がある。 就業場所:リテール事業本部メトロス事業所管轄P5売店(なお,平成25年度までの契約書には,「リテール事業本部メトロス事業所管轄駅構内」と記載されていた〔甲3の2〕。)従 しない場合がある。 就業場所:リテール事業本部メトロス事業所管轄P5売店(なお,平成25年度までの契約書には,「リテール事業本部メトロス事業所管轄駅構内」と記載されていた〔甲3の2〕。)従事する業務の種類:売店における販売及びこれに付随する業務(なお,平成25年度までの契約書には,単に「販 売業務」と記載されていた〔甲3の2〕。)就業時間:1日8時間以内(週40時間以内),早番と遅番の交替制休憩時間:実働6時間超につき45分,実働8時間超につき60分勤務日・休日:勤務日は週6日以内,休日は原則週1回(法定休日)基本賃金:時給1050円(当月末日締め,翌月20日支払)イ原告P2は,平成16年8月6日,被告との間で,契約社員Bとして被告売店における販売業務に従事することを内容とする,期間1年以内の有期労働契約を締結し,以後平成27年3月31日に被告を定年退職するまでの間,当該有期労働契約を反復更新してきた。平成26年2月26日に更新した原告P2の労働契約の内容は,次のとおりである(甲4の1)。 契約期間:平成26年4月1日から平成27年3月31日まで基本賃金:時給1050円(当月末日締め,翌月20日支払)その他の労働条件:更新の有無に関する部分を除き,上記ア(原告P1)と同内容ウ原告P3は,平成16年4月5日,被告との間で,契約社員Bとして被告売店における販売業務に従事することを内容とする,期間1年以内の有期労働契約を締結し,以後平成26年3月31日に被告を定年退職するまでの間,当該有期労働契約を反復更新してきた。平成24年3月5日に更新した原告P3の労働契約の内容は,次のとおりである(甲5の1)。 契約期間:平成24年4月1日から平成25年3月31日まで基本賃金:時給1030円(当月末 新してきた。平成24年3月5日に更新した原告P3の労働契約の内容は,次のとおりである(甲5の1)。 契約期間:平成24年4月1日から平成25年3月31日まで基本賃金:時給1030円(当月末日締め,翌月20日支払)その他の労働条件:上記ア(原告P1)と同内容エ原告P4は,平成16年9月1日,被告との間で,契約社員Bとして被告売店における販売業務に従事することを内容とする,期間1年以内の有期労働契約を締結し,以後平成24年3月31日に被告を定年退職するまでの間,当該有期労働契約を反復更新してきた。平成23年3月29日に 更新した原告P4の労働契約の内容は,次のとおりである(甲6の4)。 契約期間:平成23年4月1日から平成24年3月31日まで基本賃金:時給1020円(当月末日締め,翌月20日支払)その他の労働条件:上記ア(原告P1)と同内容(4) 被告における雇用形態ア被告の従業員には,「社員」,「契約社員A」及び「契約社員B」という名称の雇用形態の区分が設けられており,それぞれ適用される就業規則が異なる(以下,被告との間で期限の定めのない雇用契約を締結している従業員〔就業規則上は「社員」〕のことを「正社員」と呼称する。)。 イ正社員正社員と被告との契約は,65歳定年の期間の定めのない労働契約である(甲7・40条)。 正社員は,本社(経営管理部,総務部,リテール事業本部,ステーション事業本部)の各部署及び現業(メトロス事業所,保守管理事業所,ストア・ショップ事業所,被告の経営する各チケットセンター等)に配置されている(甲2)。 平成27年1月現在,メトロス事業所が管轄する各売店において販売業務に従事する正社員は18名である(弁論の全趣旨)。 ウ契約社員A契約社員Aと被告との契約は, )に配置されている(甲2)。 平成27年1月現在,メトロス事業所が管轄する各売店において販売業務に従事する正社員は18名である(弁論の全趣旨)。 ウ契約社員A契約社員Aと被告との契約は,主に1年間の期間の定めのある有期労働契約である(就業規則上は3年以内の有期契約とされている〔乙10・2条〕。)。期間満了後は,労働契約書兼労働条件通知書所定の一定の事由に該当しない場合は原則として契約が更新され,定年は65歳である(甲10,乙10)。 契約社員Aは,平成26年6月現在,本社の施設課,メトロス事業所,ストア・ショップ事業所以外には配置されていない。 平成27年1月現在,メトロス事業所が管轄する各売店において販売業務に従事している契約社員Aは14名である(弁論の全趣旨)。 なお,平成28年4月から,契約社員Aの名称が「職種限定社員」と改められ,その職務内容は従前とおおむね同様であるが,有期労働契約を無期労働契約に改めるなどの変更が行われた(甲56の2,乙14)。 エ契約社員B契約社員Bは,1年以内の期間を定めて被告と労働契約を締結した者で,一時的,補完的な業務に従事する者をいうものとされており(甲8・2条),契約期間は3か月,6か月及び1年とされている。期間満了後は,労働契約書兼労働条件通知書所定の一定の事由に該当しない場合は,原則として契約が更新され,定年は65歳である。 平成27年1月現在,メトロス事業所が管轄する各売店において販売業務に従事している契約社員Bは78名である(弁論の全趣旨)。 (5) 正社員の労働条件被告の正社員の労働条件は,概ね以下のアからクまでのとおりである。 ア賃金構成正社員の月例賃金は,基準賃金と基準外賃金からなり,昇給及び昇職制度がある(甲7,乙2の1)。 基準賃金は 条件被告の正社員の労働条件は,概ね以下のアからクまでのとおりである。 ア賃金構成正社員の月例賃金は,基準賃金と基準外賃金からなり,昇給及び昇職制度がある(甲7,乙2の1)。 基準賃金は,本給,資格手当又は成果手当,住宅手当,家族手当によって構成され,基準外賃金は,販売見習手当,販売教習手当,長日勤手当,年末年始出勤手当,深夜労働手当,早出残業手当,休日労働手当,特別休日労働手当,代休手当,通勤手当,宿泊手当,調整手当によって構成される(乙2の1・3条)。 イ基準賃金(ア) 本給本給は,職務給と年齢給で構成される(乙2の1・3条,21条)。 ①年齢給 18歳5万円で始まり,年齢が上がるに従って1000円ずつ金額が増額。40歳以降は一律7万2000円(乙2の3)。 ②職務給職務グループごとの資格及び号俸により定められる給与であり,資格・号俸ごとの職務給の額は,別紙6のとおりである。 (イ) 職務給正社員の一般職の職務グループは,スタッフ職として資格S-1(スタッフ1級),S-2(スタッフ2級),S-3(スタッフ3級)が,リーダー職として資格L-1(チーフリーダー),L-2(リーダー),L-3(サブリーダー)が,マネージャー職として資格M(マネージャー)が設けられている(乙1の1・3条及び別表)。 職務給の昇格および昇職の基準は,S-3が「実務年数2年以上,人事考課実績」,S-2及びS-1が「実務年数3年以上,人事考課実績」となっており,L-3,L-2及びL-1がいずれも「実務年数4年以上,人事考課実績」となっている(乙1の1・27条及び別表)。 高校卒の初任給は,入社時の4月1日現在の年齢による年齢給のほか,S-3資格1号俸の職務給が適用される(乙2の1・21条2項,22条,乙2の4)。 職務給は ている(乙1の1・27条及び別表)。 高校卒の初任給は,入社時の4月1日現在の年齢による年齢給のほか,S-3資格1号俸の職務給が適用される(乙2の1・21条2項,22条,乙2の4)。 職務給は,別紙6のとおり,S-3が1号俸10万8000円から16号俸11万4750円まで,S-2が1号俸11万5000円から41号俸13万5000円まで,S-1が1号俸12万7000円から41号俸14万9000円までとなっている。また,L-3が1号俸13万9000円から56号俸17万2000円まで,L-2が1号俸15万6400円から67号俸20万2600円まで,L-1が1号俸20万3000円から68号俸25万6600円までとなっている。 (ウ) 資格手当・成果手当55歳未満のL-3以上の資格の者については,3000円から50 00円の資格手当が支給される(乙2の1・24条,乙2の5)。 55歳以上のL-3以上の資格の者については,人事考課に応じて1000円から7000円までの成果手当が支給される(乙2の1・25条,乙2の6)。 (エ) 住宅手当扶養家族がある者には月額1万5900円,扶養家族がない者には月額9200円の住宅手当が,一律に支給される(乙2の1・26条)。 (オ) 家族手当家族手当は,扶養家族1人につき月額8000円,2人目以降1人につき月額4000円が支給される(乙2の1・27条)。 ウ基準外賃金(乙2の1)(ア) 年末年始出勤手当12月30日から翌年1月3日までの間に勤務した現業の正社員には,勤務1回につき①日勤の場合4000円,②長日勤の場合6000円,③宿泊・長泊勤の場合8000円の年末年始出勤手当が支給される(38条)。 (イ) 深夜労働手当午後10時から翌日午前5時までの深夜勤務について, 勤の場合4000円,②長日勤の場合6000円,③宿泊・長泊勤の場合8000円の年末年始出勤手当が支給される(38条)。 (イ) 深夜労働手当午後10時から翌日午前5時までの深夜勤務について,1時間につき通常の時間当たり賃金の3割5分増の深夜労働手当が支給される(39条)。 (ウ) 早出残業手当所定の労働時間を超える勤務について,始めの2時間までは1時間につき通常の時間当たり賃金の2割7分増,2時間を超える時間については当該賃金の3割5分増の早出残業手当が支給される(40条)。 (エ) 休日労働手当休日勤務について,1時間につき通常の時間当たり賃金の3割5分増 の休日労働手当が支給される(41条)。 (オ) 代休手当現業の正社員には特別の休日について,1年間19日の代休が与えられるが(乙1の1・72条),代休をその有効期間内にとらないときは,その残日数に対して1時間につき有効期間満了日の通常の時間当たり賃金の2割5分増の代休手当が支給される(43条)。 エ賞与(乙3)正社員は,毎年6月,12月の年2回の賞与が支給される。また,経営状況により,3月に特別手当が支給されることがある。 平成25年度の平均支給実績は,夏季及び冬季にそれぞれ月額給与の2か月分に17万6000円を加算した額が支給された(弁論の全趣旨)。 オ退職金正社員には退職金制度があり,勤続年数等に応じた金額(退職時の本給に勤務年数に応じて定められる支給月数を乗じた額)が支給される(乙1の1・54条,乙4の1)。 カ労働時間正社員の労働時間は,本社勤務の場合は1日7時間40分,週38時間20分であり,売店で販売員として勤務する場合は,1日7時間50分,週39時間10分である(乙1の1・55条)。 キ就業場所及び業務内容正 間は,本社勤務の場合は1日7時間40分,週38時間20分であり,売店で販売員として勤務する場合は,1日7時間50分,週39時間10分である(乙1の1・55条)。 キ就業場所及び業務内容正社員は,職務内容が限定されることはなく,就業場所も当然売店には限定されない。 ク配転・出向の有無正社員は,業務の必要により配置転換又は職種転換を命じられることがあり,正当な理由なしにこれを拒むことはできない。また,正社員は出向を命じられることがある。(乙1の1・5条,6条) (6) 契約社員Bの労働条件の概要(甲8)ア賃金構成契約社員Bの賃金は,時給制の本給及び諸手当からなる(41条)。 諸手当は,早出残業手当,休日労働手当,深夜労働手当,通勤手当,その他の手当があるが,正社員に支給される住宅手当,家族手当の支給はない(41条2項)。 毎月の賃金の支給日は,毎月月末締め,翌月20日払いである(42条)。 イ本給契約社員Bの本給は時間給が原則とされ,業務内容,技能,経験,業務遂行能力等を考慮して個別に定められる(41条1項)。 原告らが入社した当時は,契約社員Bの賃金は一律時給1000円で,昇給はなかった。平成21年5月以降,新たに入社した契約社員Bの時給は950円に引き下げられたが,平成22年4月以降,契約社員Bの時給は毎年10円昇給するものとされた。 原告らの平成23年以降の時給は,別紙1-1から1-4までのとおりである。 ウ手当(41条2項)(ア) 早出残業手当所定労働時間を超える勤務について,1時間につき通常の時間当たり賃金の2割5分増の早出残業手当が支給される。 (イ) 休日労働手当休日勤務について,1時間につき通常の時間当たり賃金の3割5分増の休日労働手当が支給される。 (ウ) につき通常の時間当たり賃金の2割5分増の早出残業手当が支給される。 (イ) 休日労働手当休日勤務について,1時間につき通常の時間当たり賃金の3割5分増の休日労働手当が支給される。 (ウ) 深夜労働手当午後10時から翌日午前5時までの深夜勤務について,1時間につき通常の時間当たり賃金の2割5分増の深夜労働手当が支給される。 (エ) 年末年始出勤手当平成21年度から,12月30日から翌年1月3日までの間に原則として1日7時間以上勤務した契約社員Bに対して,勤務1回につき3500円の年末年始出勤手当(その後4000円に改定)が支給されるようになった(乙5の1・2)。 (オ) 早番手当平成22年4月1日から,早番1回につき売店ごとにA売店150円,B売店200円,C売店300円の早番手当が支給されるようになった。 なお,遅参又は早退により所定労働時間の全部又は一部を勤務しなかった場合は,当該勤務に対する早番手当は支給されない。(乙6)(カ) 皆勤手当平成22年4月1日から,月の全ての所定労働日に出勤し,かつ所定労働時間勤務に就いた契約社員B(週の所定労働時間が30時間以上かつ所定労働日数が5日以上の者)に対し,月額3000円の皆勤手当が支給されるようになった。ただし,土日祝祭日及び会社の定める休日を除いた前々日の17時以降に申請した年次有給休暇を取得した者は支給対象外とされている。(乙7)エ賞与契約社員Bは,毎年6月,12月の年2回賞与が支給され,その金額は各12万円の定額である。また,経営状況により,3月に特別手当が支給されることがある。 オ退職金契約社員Bには,退職金制度はない(43条)。 カ労働時間契約社員Bの労働時間は1日8時間以内であるが,個別契約によって異なる(44条)。大 特別手当が支給されることがある。 オ退職金契約社員Bには,退職金制度はない(43条)。 カ労働時間契約社員Bの労働時間は1日8時間以内であるが,個別契約によって異なる(44条)。大半の者は,月曜日から金曜日までの各日8時間合計週 40時間,または月曜日から金曜日までの各日7時間及び土曜日5時間の合計週40時間のいずれかと定められている。 売店業務は早番・遅番制の2交替制が採られており,早番の所定労働時間は午前6時から午後3時まで(うち休憩1時間),遅番の所定労働時間は午後2時から午後11時まで(うち休憩1時間)の各8時間である。 キ就業場所及び業務内容契約社員Bは,被告リテール事業本部において採用され,就業場所は「リテール事業本部メトロス事業所管轄P5売店」に限定されており,業務の種類も売店における販売及びこれに付随する業務に限定されている。 ク配転・出向の有無契約社員Bは,業務の場所の変更を命じられることはあるが,正社員と異なり,配置転換や出向を命じられることはない(甲8・4条)。 (7) 契約社員Aの労働条件の概要(甲10)ア賃金構成契約社員Aは月給制であり,月例賃金額は16万5000円である。本給のほか,早番手当,早出残業手当,通勤手当その他の諸手当が支給される。また,会社の業績及び本人の勤務成績等による昇給制度が設けられている。 イ賞与契約社員Aは,年2回の賞与が支給され,その金額は年額59万4000円(ただし初年度は年額44万7000円)である。また,経営状況により,3月に特別手当が支給されることがある。 ウ退職金契約社員Aには,退職金制度はない(ただし,平成28年4月に「職種限定社員」に名称変更された後の契約では,退職金制度が設けられている〔甲56の に特別手当が支給されることがある。 ウ退職金契約社員Aには,退職金制度はない(ただし,平成28年4月に「職種限定社員」に名称変更された後の契約では,退職金制度が設けられている〔甲56の2〕。)。 (8) 原告らに対する支給賃金額被告が原告らに対し平成23年5月以降に支給した賃金の額及び原告らによる各月の労働時間は,別紙1-1から1-4までの「契約社員B(各原告)」の「本給(h)」欄及び「労働時間(g)」欄記載のとおりである。 第3 争点及びこれに関する当事者の主張 1 労働契約法20条違反の成否(争点1)(原告らの主張)(1) 不合理な労働条件の禁止労働契約法20条は,有期労働契約を締結している労働者の労働条件が,同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働条件と相違する場合において,当該労働条件の相違が,労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容),当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して不合理と認められるものであってはならない旨を規定している。 原告P1及び原告P2は,平成26年4月1日から平成27年3月31日までの1年間の期間の定めのある有期労働契約を締結している労働者であり,それまで1年以内の労働契約を反復更新してきた。また,原告P3は平成26年3月31日まで,原告P4は平成25年3月31日まで,いずれも期間を1年以内とする有期労働契約を反復更新して締結する労働者であった。 したがって,原告らについては,被告と期間の定めのない労働契約を締結している労働者である正社員との労働条件の相違が,①労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容),②当該職務の内容及び配置の変更の範囲,③その他の事情を考慮して,不合理と認められるものであ る労働者である正社員との労働条件の相違が,①労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容),②当該職務の内容及び配置の変更の範囲,③その他の事情を考慮して,不合理と認められるものであってはならない。 (2) 原告らと正社員との労働条件の相違の存在被告と有期労働契約を締結している原告らと正社員との間には,後記(6)ア からカまでのとおり,月例賃金,賞与,各種手当,退職金及び褒賞における相違が存在する。 (3) 業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)ア業務の同一性売店での販売業務の内容は,正社員と契約社員Bとで,開店・閉店作業,商品の陳列・販売,発注・返品,納金等の業務の内容は全く同一である。 これは,正社員と契約社員Bとが同一の店舗に配置されている店舗もあれば,同一の店舗に契約社員Bのみが2名配置されている店舗もあることからも明らかである。店舗を担当する販売員が休暇,欠勤,休憩中など店舗を不在とする場合の交代要員として店舗に入り販売業務を行う代務員の業務についても,正社員,契約社員Bそれぞれに代務員の業務を専門として行う者がおり,両者の間で違いはない。 また,原告ら契約社員Bの業務は,それがなければ被告の売店の営業が不可能となる重要な職務であり,補助的・臨時的なものではなく基幹的職務であって,正社員と同一である。 イ責任の同一性商品の発注や返品については,正社員と契約社員Bのいずれにも,店舗の特色や商品の売上げの動向を把握し,自らの判断と責任で商品を発注し返品もする権限を与えられており,原告らも,正社員と同様に自らの判断で商品の発注や返品を行っている。売上げの納金や金庫への保管業務についても,正社員と契約社員Bとで異なることはなく,現金やカード利用額等の管理も行っている。 し 原告らも,正社員と同様に自らの判断で商品の発注や返品を行っている。売上げの納金や金庫への保管業務についても,正社員と契約社員Bとで異なることはなく,現金やカード利用額等の管理も行っている。 したがって,業務に伴う責任の程度も,原告ら契約社員Bと正社員とでは何ら変わりがない。 (4) 職務の内容及び配置の変更の範囲ア店舗間の異動,他部署への異動 正社員も契約社員Bも,就業規則上,勤務場所の変更を命ずる旨の規定があり(甲7・5条,甲8・4条),これまで正社員か契約社員Bかを問わず,被告が店舗の異動を命ずる運用がされてきた。また,正社員については,就業規則上,業務の必要により配置転換又は職種転換を命じることがある旨の規定があり(甲7・5条),実際に男性正社員が他部署へ異動している例があるが,メトロス事業所に販売員として配置された女性正社員が他部署へ異動する例はほとんどない。これに対し,契約社員Bの中にも,売店での販売員からオートメトロス(自動販売機)の管理部門へ異動した者がいる。 イこのように,被告の売店における販売員は,他部署へ異動することがあっても,正社員か契約社員Bかの違いによるものではないから,正社員と契約社員Bとは,職務内容・配置変更の範囲が同一である。 (5) その他の事情ア被告の不誠実な対応原告らは,被告に対し,本件組合を通じて正社員と比較して賃金格差等の格差の是正を求めてきたが,これを実現するためには,比較対象となる正社員及び契約社員Aの労働条件を把握することが不可欠である。そのため,原告らは被告に対し,本件組合を通じて何度も繰り返し正社員及び契約社員Aの各就業規則や年収等の労働条件の開示を求めてきたが,被告は,賃金等の重要な労働条件についての資料を隠蔽し,労働契約法20条等に基づく正当な 対し,本件組合を通じて何度も繰り返し正社員及び契約社員Aの各就業規則や年収等の労働条件の開示を求めてきたが,被告は,賃金等の重要な労働条件についての資料を隠蔽し,労働契約法20条等に基づく正当な権利の実現を妨害するという不誠実な対応をとり続けている。 イ 「販売員」としての募集・採用原告P1及び原告P3は,売店の壁に貼付されていた「販売員募集」のポスターを見て被告に応募し,採用された。また,原告P2は既に販売員として勤務していた知り合いから紹介があり,被告に採用された。原告P4は,フリーペーパーの募集広告を見て被告に応募し,採用された。原告 らは,いずれも正社員と契約社員との区別も分からないまま勤務しているうちに,賃金等の労働条件の格差に気付いたものである。 ウ同じ制服を着用販売員は制服を着用し名札を装着するが,正社員も契約社員も全く同じ制服であり,名札の色や形状にも違いはない。そのため,被告の社員ですら,一緒に組む販売員が正社員なのか契約社員なのかが明らかでない場合がある。 エ新人研修の対象・指導員も同一新しく被告に入社した社員への見習研修の指導員を,正社員だけでなく契約社員Bが担当することもある。現に原告P1は,入社から2か月間正社員から指導を受けたが,原告P3及び原告P4は,契約社員Bから指導を受けた。 オ正社員登用制度契約社員Aにのみ正社員への登用制度があるが,契約社員Bから正社員に直接登用される制度はない(契約社員Bから契約社員Aへの登用制度はある。)。しかし,この登用制度が導入されるまで,被告の裁量によって契約社員Bが突然契約社員Aに登用されることがあるなど不透明な運用がされており,その結果,契約社員Bから契約社員Aや正社員となった販売員が現在も販売員として就労している。 (6) 契約 量によって契約社員Bが突然契約社員Aに登用されることがあるなど不透明な運用がされており,その結果,契約社員Bから契約社員Aや正社員となった販売員が現在も販売員として就労している。 (6) 契約社員Bと正社員との間の賃金等の不合理な格差ア本給(年齢給・職務給)及び資格手当における不合理な格差(ア) 正社員は,基本的に年功とともに賃金が増加する制度となっており,経験年数を経て賃金が上がり,L-3以上の資格には資格手当又は成果手当が支給される。また,勤続年数にかかわらず住宅手当が必ず支給され(扶養家族がいる場合にはその額が増額される。),家族手当も支給される。他方,契約社員Bである原告らは,年功に従って時給が必ず上 がるわけではなく,資格手当又は成果手当も支給されないし,住宅手当及び家族手当も支給されない。 契約社員Bと正社員とは,売店の販売員として従事する業務は同一であり,業務内容の質と量において正社員と何ら異なるところはないにもかかわらず,両者の間には著しい賃金の格差がある。この格差は有期労働契約か否かという違いによるものであり,不合理な格差である。 (イ) 本給(年齢給・職務給)の相違売店における販売業務に従事する正社員と契約社員Bとの間には,「職務の内容」,「職務の内容と配置の変更の程度」において異なるところはないところ,年齢給は,職務にかかわらず年齢という属性によってのみ支給額が決まる制度である以上,契約社員Bにこの適用を排除することは不合理である。 職務給は,職務の経験年数に応じて昇給する制度であり,正社員と職務内容等において異なるところのない契約社員Bに,この制度の適用を排除することは不合理である。 例えば,L-3資格の正社員と同程度の勤続年数の契約社員Bとの間の本給には,1時間当たり25 員と職務内容等において異なるところのない契約社員Bに,この制度の適用を排除することは不合理である。 例えば,L-3資格の正社員と同程度の勤続年数の契約社員Bとの間の本給には,1時間当たり250円程度の相違があり,契約社員Bの本給は正社員の約8割にとどまる。この差は年単位では約50万円の収入差となる。 (ウ) 資格手当売店の販売業務を担当している正社員については,Sの資格とLの資格に業務内容の異同はなく,資格手当は,単に資格がLに格付けられたことによる加算額にすぎない。契約社員Bである原告らは,現に売店の販売業務を担当している正社員との間で職務の内容等に異なるところはないのであるから,L-3資格に位置付けられる同じ経験年数の正社員に支給される資格手当を原告らに支給しないことは,不合理な格差に当 たる。 イ住宅手当における不合理な格差住宅手当は,正社員の場合には,年齢,資格を問わず,持ち家であれ賃貸であれ必ず支給される。被告の事業所は都内のみであり,転居を伴う異動の可能性もなく,正社員も契約社員Bも同じ都内の就労場所に通勤する点で何ら違いがない。住宅手当の性質は,住宅を維持するのに必要な費用に対する被告からの家計補助的な手当であると考えられるところ,契約社員Bも正社員と同様に住宅を有し,それに費用を必要としていることに照らせば,原告らに対してこれを支給しないことは不合理な格差に当たる。 ウ賞与における不合理な格差被告において,売店の販売業務に従事する正社員と原告ら契約社員Bは同一の責任の下に同一の業務を行っているのであるから,両者の勤務に対応する賞与に著しい格差を設けることは不合理である。 平成27年度の賞与でみると,正社員には,夏季・冬季合わせて月額給与4か月分に35万2000円を加算した金額(原告P1 であるから,両者の勤務に対応する賞与に著しい格差を設けることは不合理である。 平成27年度の賞与でみると,正社員には,夏季・冬季合わせて月額給与4か月分に35万2000円を加算した金額(原告P1と同程度の勤続年数の正社員〔L-3・1号俸〕を基準にした場合は122万6000円)が支給されるのに対し,原告ら契約社員Bには24万円が支給されるにすぎず,正社員との間に著しい格差がある。期末調整手当についても,契約社員Bは正社員の約5分の1程度しか支給されていない。 また,正社員の賃金体系上,賞与は制度化されており,賃金の後払い的性格を有することに加え,賞与が年収の約3分の1という非常に高い割合を占める実態からすれば,被告における賞与は,単なる補助的・一時的な賃金ではなく,年間の生計費を算出する上で不可欠の収入である。したがって,正社員の月例賃金と賞与とは切り離すことのできない労働条件であるから,両者の格差を総合的に比較して,不合理性の有無を判断すべきである。 エ退職金における不合理な格差被告においては,正社員の場合,定年退職(65歳の誕生日),定年前の自己都合退職,早期退職のいずれの場合でも退職金が支給され,定年退職の場合であれば,本給(年齢給・職務給)に勤続年数に応じた支給月数を乗じた退職金が支給される。他方,契約社員Bには退職金制度が存在しないため,定年退職しても退職金は一切支給されない。 正社員と同一の責任の下で同一業務を行い,同じ勤続年数の契約社員Bに退職金を支給しないのは,労働契約における期間の定めの有無という違いのみを理由とする相違であり,不合理な格差である。 オ褒賞における不合理な格差被告においては,正社員の場合,勤続10年,15年,30年,40年,定年退職時という勤続年数に応じて,一律に褒賞が支給さ を理由とする相違であり,不合理な格差である。 オ褒賞における不合理な格差被告においては,正社員の場合,勤続10年,15年,30年,40年,定年退職時という勤続年数に応じて,一律に褒賞が支給されるのに対し,契約社員Bは特殊な場合にしか褒賞が支給されず,原告らには勤続10年の褒賞(原告P1,原告P2,原告P3)も,定年退職時の褒賞(原告P2,原告P3,原告P4)も支給されなかった。 正社員と同一の責任の下で同一業務を行い,同じ勤続年数の契約社員Bに褒賞を支給しないのは,労働契約における期間の定めの有無という違いのみを理由とする相違であり,不合理な格差である。 カ早出残業手当における不合理な格差早出残業手当については,そもそも前記アのとおり,1時間当たりの基準賃金における不合理な格差がある。また,契約社員Bは,正社員よりも1日10分,週50分所定労働時間が長いために,同じ時間働いても契約社員Bは所定内労働時間で,正社員は所定外労働時間になるという不合理がある。その上,正社員については,所定労働時間を超える勤務について,始めの2時間までは通常の時間当たり賃金の計算額の2割7分増,2時間を超える時間については3割5分増の早出残業手当が支給されるが,契約 社員Bは超過時間にかかわらず2割5分増の割増率となっており,不合理な格差がある。労働基準法が使用者に時間外労働等に対する割増賃金の支払を義務付けている趣旨は,使用者に経済的負担を課して所定外労働を抑制するという点にあり,この点からも正社員と契約社員Bに違いはない。 なお,契約社員Bには,正社員にはない早番手当及び皆勤手当があるが,早番手当は早番の週の労働についてのみ支給されるため,1か月の支給見込額はせいぜい1650円にすぎない。また,皆勤手当は月額3000円の支給にすぎ には,正社員にはない早番手当及び皆勤手当があるが,早番手当は早番の週の労働についてのみ支給されるため,1か月の支給見込額はせいぜい1650円にすぎない。また,皆勤手当は月額3000円の支給にすぎない。したがって,両手当の存在をもって,契約社員Bと正社員との著しい賃金格差の不合理性に影響を与えるものではない。 (7) 違法性ア以上のとおり,原告らの業務の内容及び責任,職務等の変更の範囲は正社員のそれとほぼ同一であり,原告らは恒常的に基幹的業務に従事してきた。それにもかかわらず,原告ら契約社員Bと正社員との労働条件は,月例賃金,諸手当,賞与,退職金等において大きく異なるから,原告らと正社員との間の労働条件の相違は,業務内容や責任の程度等に照らして不合理であり,労働契約法20条に違反する。原告らは,上記労働条件の相違により,個人の尊厳を傷つけられ,著しい不利益を受けていることから,その違法性は重大であり,不法行為法上違法である。 イ労働契約法20条は,有期雇用であることによる不合理な労働条件を禁止し,有期労働者と無期労働者の労働条件の相違が不合理と認められるものではあってはならないという立法趣旨から,使用者に対して,労働契約上の付随義務として,有期労働契約であることを理由とする不合理な労働条件を設けてはならないという義務(有期雇用を理由とする不合理な労働条件を設定してはならない義務)を課している。そうすると,被告は,有期雇用を理由とする不合理な労働条件を設定してはならない義務に違反して,原告らに対し,上記の各労働条件の不合理な相違を設定したのである から,債務不履行に基づきそれにより生じた損害を賠償する義務を負う。 (被告の主張)(1) 労働契約法20条違反の成否平成24年法律第56号による改正により労働契約法20 したのである から,債務不履行に基づきそれにより生じた損害を賠償する義務を負う。 (被告の主張)(1) 労働契約法20条違反の成否平成24年法律第56号による改正により労働契約法20条の規定が置かれたが,改正法の施行日は平成25年4月1日であり,同日以前には,同条に基づく原告らの請求は成立し得ないから,その限度において原告らの主張は失当である。 また,契約社員Bである原告らと正社員との労働条件の相違は,両者の業務内容及び責任の相違等に基づく合理的なものであって,労働契約法20条に反するものではない。 (2) 被告の業務体制及び各従業員の位置付けア被告の沿革と社員制度の変遷(ア) 被告は,昭和32年銀座地下鉄興業株式会社として設立され,昭和57年株式会社地下鉄トラベルサービスに名称変更した。当時は,売店業務は被告の業務ではなかった。その後,平成12年10月,被告を含む営団地下鉄(当時)グループの関連会社等の再編成に伴い,被告は,売店事業を行っていた財団法人地下鉄互助会(現メトロ文化財団。以下「互助会」という。)から売店等の物販事業に関する営業を譲り受け,また,互助会及び株式会社メトロセルビス(以下「セルビス」という。)から広告取扱業務の営業を譲り受けた。被告は,平成16年6月,商号を現在の「株式会社メトロコマース」に改め,現在に至っている。 (イ) 平成12年10月の関連会社再編前までは,売店業務は互助会の業務であった。被告(当時の地下鉄トラベルサービス)には月給制の正社員のみがおり,互助会には月給制の正社員及び売店業務等に従事していた時間給制のパートタイマーがいた。平成14年4月,被告は,駅業務全体を受託するに当たり社員の名称を改め,月給制の嘱託社員を契約社 員A,パートタイマーを契約社員Bとし,契 業務等に従事していた時間給制のパートタイマーがいた。平成14年4月,被告は,駅業務全体を受託するに当たり社員の名称を改め,月給制の嘱託社員を契約社 員A,パートタイマーを契約社員Bとし,契約社員制度を導入した。その後,契約社員Bから契約社員Aへの登用が始まった。 以上の結果,被告の売店業務に従事する正社員は,①互助会より引き続き雇用されている正社員,②登用により契約社員Bから契約社員Aを経て正社員になった者,③被告において正社員として新たに採用され,異動により売店業務に従事する者に分けられる。 イ被告の業務体制及び売店業務の位置付け被告の組織は,①経営管理部,②総務部,③リテール事業本部,④ステーション事業本部の4つに分かれている。リテール事業本部の業務は,売店業務のほか,コインロッカー等の営業・管理,ストア・ショップの直営・委託等多岐にわたる。売店業務は,被告のリテール事業本部の営業第一部メトロス事業所に位置付けられる業務であり,原告らは,駅売店「P5」に配置され売店業務に従事している。 ウ被告における正社員,契約社員の業務体制被告には,鉄道事業を含めた約600名の正社員がいるが,そのうち売店業務に従事する者は18名(平成27年1月現在)にすぎず,その他の者は,ステーション事業本部,リテール事業本部のうちメトロス事業所以外の部署及び管理部門に配属されるほか,関連会社に出向する者もいる。 他方,契約社員Bは,駅売店における売店業務のみに従事している。 平成27年1月現在,メトロス事業所の売店業務に従事する従業員(代務者,休憩交代要員を含む。)の総数は110名であり,その内訳は正社員が18名,契約社員Aが14名,契約社員Bが78名である。 (3) 業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度ア以下のとおり,正 務者,休憩交代要員を含む。)の総数は110名であり,その内訳は正社員が18名,契約社員Aが14名,契約社員Bが78名である。 (3) 業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度ア以下のとおり,正社員と契約社員Bの賃金や諸手当等の労働条件に相違があることは,両者の業務内容及びこれに伴う責任の程度等の相違に基づくものであり,合理的なものである。 イ業務内容の相違(ア) 固定売店販売員の業務は,①メトロス売店の管理,②接客販売,③商品の管理・準備,④商品の陳列,⑤伝票・帳票類の取扱い,⑥売上金等の金銭取扱い,⑦その他からなる。これらの業務の形式的な内容自体は,正社員,契約社員A・Bいずれについても相違はない。 (イ) しかしながら,前記(2)のとおり,そもそも正社員の業務は売店業務に限られるものではなく多岐にわたっている。また,売店における販売業務においても,正社員は,各エリア内の売店を統括するエリアマネージャー業務や代務の業務に従事するのに対し,契約社員Bは,エリアマネージャー業務に従事することはなく,原則として代務に従事することもないという違いがある。 (ウ) 固有の売店業務に限ってみても,配置される個別店舗の業務密度については明らかな差異がある。すなわち,被告は,諸般の事情を考慮して固定売店販売員の配置を決定するが,売上げの多い売店には正社員及び契約社員Aを配置している。これは,売店の規模や取り扱う商品に大きな差異がないため,売上げの多寡が売店の繁忙度,ひいては業務密度に直結するためである。契約社員Bである原告らの勤務する売店と,同規模で最も売上げの多い売店とでは,業務量に3倍程度の差異がある。 (エ) このように,正社員と原告ら契約社員Bとでは,業務内容や業務密度の点において相違があり,比較の前提を欠くというべ 売店と,同規模で最も売上げの多い売店とでは,業務量に3倍程度の差異がある。 (エ) このように,正社員と原告ら契約社員Bとでは,業務内容や業務密度の点において相違があり,比較の前提を欠くというべきである。 ウ責任の相違正社員,契約社員A及び契約社員Bの間の賃金の相違は,業務量,業務密度の違いを含む,各職種の役割,責任等の相違に基づくものである。 商品の発注権限等につき,正社員と契約社員Bに共通する権限が存在することを否定するものではないが,契約社員Bに認められる発注権限は定型的な補充発注にすぎない。 (4) 職務の内容及び配置の変更の範囲正社員は,就業規則に基づく配置転換,職種転換及び出向の可能性があり,人事異動によりキャリア形成過程において一時期売店業務に従事したとしても,会社の判断に基づいて他の現業業務,本社業務や配置転換,職種転換及び他社への出向がされ得る。なお,前述したとおり,正社員の中にも例外的に売店業務のみに従事する者が僅かに存在するが,これは,平成12年の会社再編により被告が売店業務を担う互助会から正社員を引き継いだという歴史的経緯や,登用制度により契約社員Bが契約社員Aを経て正社員に登用されたことによるものである。 これに対し,契約社員Bは,固定売店間という就業場所の変更があるだけであり,業務内容に変更はなく,原則として配置転換,職種転換や出向を命じられることはない。 このように,正社員と契約社員Bは,職務の内容及び配置の変更の範囲に大きな相違がある。 (5) その他の事情についてア原告らの主張は否認ないし争う。 イ登用制度の存在被告は,売店業務に従事する契約社員Bにキャリアアップの機会を与えるため,適正な登用制度を設けてこれを運用している。登用制度を利用することにより,契 主張は否認ないし争う。 イ登用制度の存在被告は,売店業務に従事する契約社員Bにキャリアアップの機会を与えるため,適正な登用制度を設けてこれを運用している。登用制度を利用することにより,契約社員Bから契約社員Aに,契約社員Aから正社員になる機会が与えられている。 前記(3)及び(4)の点に加え,登用制度の存在をも踏まえると,正社員と契約社員Bとの労働条件の相違が不合理とされる余地はない。 (6) 原告らの主張する各労働条件の相違についてア本給(年齢給・職務給)及び資格手当における相違(ア) 正社員の本給は,年齢給及び職務給により構成され,大卒,短大・ 専門学校卒,高卒に分けられ,各々の最初の職務給が定められている。 その後,正社員の昇格及び昇給は,毎年の成績評価により行われ,職務給が定められる。また,正社員の場合,年齢給表に従って算出された年齢給が加算される。 これに対し,契約社員Bの本給は時給計算で算出される。 (イ) 以上の正社員と契約社員Bの本給の相違は,被告における各社員の給与に関する制度設計によるものであって,これ自体が不合理といえないことは明らかである。 また,処遇の面でも,常勤の契約社員Bの1か月の労働時間はおよそ160から170時間程度であり,時給1000円としても社員の本給の8割から9割程度の処遇がされており,およそ不合理とはいえない。 (ウ) 資格手当についても,同様に社員の職務内容と責任の相違から被告が処遇として制度設計したものであり,時間給を採用している契約社員Bには想定できないし,仮に想定し得たとしても時間給の中に含まれるものであり,別途請求し得る性質のものではないから,契約社員Bに資格手当を支給しないことは不合理とはいえない。 イ住宅手当における相違被告が正社員に 仮に想定し得たとしても時間給の中に含まれるものであり,別途請求し得る性質のものではないから,契約社員Bに資格手当を支給しないことは不合理とはいえない。 イ住宅手当における相違被告が正社員にのみ住宅手当を支給しているのは,一般的に,長期雇用関係を前提とした配置転換のある正社員への住宅費用の援助及び福利厚生を手厚くすることによって,有為な人材の獲得・定着を図るという目的がある。これに対し,短期雇用者である契約社員Bについては,制度設計として住宅手当を設けないことが不合理であるとはいえない。 ウ賞与における相違正社員の賞与については,全社的に当該年度の被告の賞与原資を前提に,労働組合との交渉に基づいてその金額が決定されている。また,制度設計上,正社員の金額とは異なるものの,契約社員Bに対しても一定額の賞与 が支給されることとされており,被告として必要な配慮を行っている。 そして,正社員と契約社員Bとの間には,職務の内容,配置の変更の範囲その他の事情を考慮すれば明確な相違があること,長期雇用を前提とする正社員に対する継続雇用に期待する功労や福利厚生の要素,有為な人材の確保及び定着を図る目的等を踏まえると,賞与の支給金額の違いが不合理であるとはいえない。 エ退職金における相違一般的に有期労働者と期間の定めのない労働者とでは,給与の体系や考え方が異なり,退職金についての考え方も異なる。期間の定めのない労働者は終身雇用を基本として,会社の考える功労のあり方が有期労働者と異なることも当然である。会社によっては退職金制度のない会社もあるし,中小企業退職金共済制度などの外部制度を利用するものもある。その意味で,退職金制度を有期労働者に設けるか否かは会社の裁量事項であって,これを設けないことを不合理とすることは困難である。 社もあるし,中小企業退職金共済制度などの外部制度を利用するものもある。その意味で,退職金制度を有期労働者に設けるか否かは会社の裁量事項であって,これを設けないことを不合理とすることは困難である。 本件においては,正社員と契約社員Bとの間には,職務の内容,配置の変更の範囲その他の事情を考慮すれば明確な相違があること,長期雇用を前提とする正社員に対する継続雇用に期待する功労や福利の要素,有用な人材の確保及び定着を図る目的等を踏まえると,契約社員Bに対して退職金制度を設けないことが不合理であるとはいえない。 オ褒賞における相違褒賞は,勤続年数に応じて会社が特別な功労として支給するものであるが,後払い的な性格を含め労働の対価の要素は皆無であり,労働契約法の範囲に含まれる性格のものとはいえない上,期間の定めのない従業員である正社員を念頭に置いた制度であることは明らかである。 したがって,契約社員Bに褒賞を支給しないことが不合理であるとはいえない。 カ早出残業手当における相違被告が,正社員の時間外労働について労働基準法の定める割増率を超える割増率を設けたのは,多様な業務に従事する正社員に特別に認める趣旨であるから,業務内容が極めて限定されている契約社員Bに妥当するものではない。また,時間外労働の始めの2時間に適用される2割7分の割増率と2時間を超える部分に適用される3割5分の割増率は,いずれも多数組合が被告との交渉の上で正社員の処遇に関する成果として成立したものであるから,直ちに契約社員Bに適用される性質のものではない。したがって,早出残業手当における相違が不合理であるとはいえない。 (7) 違法性ア以上のとおり,正社員と契約社員Bの労働条件の相違は,いずれも制度設計上長期雇用を前提とする正社員と短期雇用を前提と って,早出残業手当における相違が不合理であるとはいえない。 (7) 違法性ア以上のとおり,正社員と契約社員Bの労働条件の相違は,いずれも制度設計上長期雇用を前提とする正社員と短期雇用を前提とする契約社員Bとの処遇の違いに基づくものである上,被告は契約社員Bの労働条件についてできる限り配慮をしてきたものであるから,両者間の労働条件の相違は不合理とはいえず,不法行為法上の違法性は認められない。 イ原告らは,労働契約法20条違反が債務不履行を構成すると主張して,債務不履行による損害賠償も併せて請求しているが,かかる解釈は,労働契約法20条に正社員と契約社員Bの処遇の相違を定めた契約,規則類を無効とする効力のみならず,新たな契約,規則類の創設的効力を認めることとなり,法解釈として成立し得ないというべきである。 2 公序良俗違反の成否(争点2)(原告らの主張)(1) 同一労働同一賃金原則「およそ人はその労働に対して等しく報われなければならない」という理念(均等待遇の理念)は,国際社会において普遍的な原則として確立している。たとえば,ILOの国際労働憲章,「同一価値の労働についての男女労 働者に対する同一報酬に関する条約」,国連女子差別撤廃条約11条1項(d)によって規定され,また,世界人権宣言23条2項における「すべて人は,いかなる差別も受けることなく,同一の労働に対し,同一の報酬を受ける権利を有する」との規定は国際人権規約A規約7条において,公正な賃金及びいかなる差別もない同一価値の労働についての同一報酬を受ける権利として具体化されている。そして,これらの条約を批准する日本は,その労働法の枠組みの中に,諸条約に現れている均等待遇の理念を取り込まなければならない。この理念は,憲法14条,13条,労働保護法規及び国際条 具体化されている。そして,これらの条約を批准する日本は,その労働法の枠組みの中に,諸条約に現れている均等待遇の理念を取り込まなければならない。この理念は,憲法14条,13条,労働保護法規及び国際条約等に照らして,日本の労働法の基礎に置かれるべき重要な理念である。 (2) 法規範性同一(価値)労働同一賃金の原則の基礎にある均等待遇の理念は,賃金格差の違法性判断において,ひとつの重要な判断要素として考慮されるべきものであって,その理念に反する賃金格差は,使用者に許された裁量の範囲を逸脱したものとして,公序良俗違反の違法を招来する場合があり,許容される賃金格差の範囲を明らかに超えた場合,その限度において被告の裁量が公序良俗違反として違法となる。 前記のとおり,原告らと正社員との業務内容及びその責任,それらの変更の範囲が全く同一であるにもかかわらず,原告らと正社員との間に賃金等について大きな格差があることは,許容される賃金格差の範囲を明らかに超え,同一労働同一賃金の原則(均等待遇の原則)に反し,公序良俗に違反する。 (被告の主張)(1) 同一労働同一賃金原則について原告らの主張は,ILOの国連憲章等の条約が存在するなどの客観的事実の限度で認め,その余は争う。 (2) 法規範性に関する原告らの主張は否認する。一般には,同一価値労働同一賃金の原則の法規範性は否定されている。したがって,正社員と契約社員B との間の賃金格差が直ちに公序良俗違反となることはない。 また,前記のとおり,被告における正社員と契約社員Bとの間の賃金格差には合理性が認められるから,そもそも公序良俗違反が問題となる余地はない。 3 原告らの損害(争点3)(原告らの主張)(1) 月例賃金差額及び資格手当相当損害金原告らと同じ勤続年数の正社員に 合理性が認められるから,そもそも公序良俗違反が問題となる余地はない。 3 原告らの損害(争点3)(原告らの主張)(1) 月例賃金差額及び資格手当相当損害金原告らと同じ勤続年数の正社員に支給される本給(月例賃金)は,別紙1の1から1の4までの「正社員」の「職務給」欄及び「年齢給」欄記載のとおりである(正社員の職務給は経験年数に応じて昇格・昇給することから,勤続9年目以降はL-3資格に昇格した上で毎年5号俸ずつ昇給したものとして算定した。)。また,55歳未満の正社員のうちL-3以上の資格の者には,資格手当が支給される(L-3資格の場合は3000円)。他方,原告らが平成23年5月以降に被告から実際に支給された本給月額は,別紙1の1から1の4までの「契約社員B」の「本給」欄に記載のとおりである。 したがって,本給の不合理な格差により原告らが受けた損害は,別紙1-1から1-4までの「本給差額」欄記載のとおりとなる。 (2) 住宅手当相当損害金扶養家族のない正社員には,月額9200円の住宅手当が支給される。これに対し,契約社員Bである原告らには住宅手当は全く支給されていない。 したがって,原告らは,住宅手当が支給されないことにより,別紙1-1から1-4までの「住宅手当」欄のとおり毎月9200円の損害を被っているから,その損害の合計額は,別紙請求債権目録の「住宅手当」欄記載のとおりである。 (3) 賞与の差額相当損害金正社員には,毎年6月に夏季,12月に冬季の賞与が支給される。正社員 に支給される賞与額は基本給の額に連動し,例えば平成23年夏季分であれば「基本給(職務給+年齢給)×2か月分+17万円」の支給基準により算定される。平成23年以降の正社員に対する各期の賞与の支給基準は,別紙2の「正社員(S-1→L-3)」の「 平成23年夏季分であれば「基本給(職務給+年齢給)×2か月分+17万円」の支給基準により算定される。平成23年以降の正社員に対する各期の賞与の支給基準は,別紙2の「正社員(S-1→L-3)」の「算定方法」欄記載のとおりである。 他方,契約社員Bである原告らには,勤続年数にかかわらず,毎年夏季及び冬季の賞与として各12万円が支給されるにすぎない(これとは別に年度末である3月に,2万円程度の期末手当が支給されることもあった。)。 平成23年以降,原告らに支給された賞与の額及び支給年月日は,別紙2の「契約B・支給額」欄及び「支給年月日」欄記載のとおりである。また,仮に原告らと同じ勤続年数の正社員であれば,平成23年以降,別紙2の「正社員(S-1→L-3)」の「支給額」欄記載の賞与が支給されたはずである。 そうすると,賞与の不合理な格差により,平成23年以降に原告らが受けた損害は,それぞれ別紙2の「差額」欄記載のとおりであり,その合計額は別紙請求債権目録の「賞与」欄記載のとおりである。 (4) 退職金相当損害金各原告の定年までの勤続年数は,原告P2が10年8か月,原告P3が10年,原告P4が7年7か月である。仮に,正社員が上記原告らと同じ勤続年数で定年退職した場合,退職金規程に基づき,退職時の本給に勤続年数に応じた支給月数を乗じた退職金が支払われる。上記原告らと同じ勤続年数の場合の支給月数は,原告P2であれば11.50月,原告P3であれば10. 50月,原告P4であれば6.88月となるところ,契約社員Bである原告らには退職金が一切支給されなかった。 したがって,退職金の不合理な格差により上記原告らが被った損害は,別紙3の「退職金額」欄及び別紙請求債権目録の「退職金」欄記載のとおりとなる。 (5) 褒賞相当損害金正社員には た。 したがって,退職金の不合理な格差により上記原告らが被った損害は,別紙3の「退職金額」欄及び別紙請求債権目録の「退職金」欄記載のとおりとなる。 (5) 褒賞相当損害金正社員には,勤続10年の褒賞として3万円の賞金,定年退職時の褒賞として5万円相当の記念品が支給されるが,契約社員Bである原告らには支給されない。これは不合理な労働条件の相違であるから,原告らは,それぞれの勤続年数及び定年退職の有無に応じて,別紙4(褒賞差額)及び別紙請求債権目録の「褒賞」欄記載の損害を被っている。 (6) 早出残業手当の差額相当損害金ア原告P1は,被告において,平成23年4月から平成28年8月までの間,別紙5の「契約社員B(原告P1)」の「労働時間」欄記載のとおり就労しているところ,上記期間中の原告P1の早出残業時間は,同別紙の「契約社員B(原告P1)」の「早出残業時間」欄記載のとおりである。 原告P1と同じ勤続年数の正社員が,原告P1の上記早出残業時間と同じ時間の早出残業をしたと仮定した場合の早出残業手当の額は,同別紙の「正社員(S-1→L-3)」の「早出残業手当」欄記載のとおりであるところ,上記期間中原告P1に実際に支給された早出残業手当の額は,同別紙の「契約社員B(原告P1)」の「早出残業手当」欄記載のとおりであるから,上記手当の不合理な相違により原告P1が受けた損害は,同別紙の「差額」欄記載のとおりであり,合計91万5110円となる。 イ消滅時効の抗弁について(ア) 原告らは,本件組合を通じて,平成21年3月以降,正社員の賃金規程を含む就業規則の開示を求め続けてきたが,被告は開示する必要性がないとして拒み続け,本件訴訟提起後の平成26年7月10日に初めて賃金規程を開示したものである。原告P1は,被告が正社員の賃金規 規程を含む就業規則の開示を求め続けてきたが,被告は開示する必要性がないとして拒み続け,本件訴訟提起後の平成26年7月10日に初めて賃金規程を開示したものである。原告P1は,被告が正社員の賃金規程を開示するまで,正社員と契約社員Bとの間に,早出残業手当の割増率の相違があることを全く知らなかった。原告らは,被告による開示を受けて,同年10月16日付け準備書面において,割増率の相違が不合 理であることを初めて主張した。 (イ) 被告は,原告P1による早出残業手当差額相当損害金の請求は,債務不履行による請求であり不法行為に基づく請求ではないから,2年の時効期間が適用されると主張する。しかし,原告P1の契約社員Bとしての労働契約に基づく早出残業手当は支給されており,未払いはないから債務不履行ではない。原告P1は,あくまで正社員の残業手当と比較した場合の差額が不合理な差別に当たることから,労働契約法20条及び公序良俗違反により不法行為に基づく損害賠償として請求しているものであり,時効期間は3年である。また,原告P1が「損害及び加害者を知った時」は,被告が正社員の賃金規程を開示した平成26年7月10日であるから,上記アの訴えの変更申立てまでに3年を経過していない。したがって,被告の消滅時効の主張は失当である。 (ウ) 仮に,消滅時効の援用が可能であるとしても,上記(ア)で述べた被告の対応は,原告P1による請求権行使を故意に妨げてきたものというべきであるから,被告による消滅時効の援用は,信義則に反し許されない。 (7) 慰謝料原告らは,被告の定めた不合理な労働条件の相違により,多大な精神的苦痛を被っており,その慰謝料額は1年につき各50万円を下回ることはない(原告P1,原告P2及び原告P3は3年分で150万円,原告P4は2年半分 告の定めた不合理な労働条件の相違により,多大な精神的苦痛を被っており,その慰謝料額は1年につき各50万円を下回ることはない(原告P1,原告P2及び原告P3は3年分で150万円,原告P4は2年半分で125万円)。以上に加え,原告P2,原告P3及び原告P4は,被告を退職した時に正社員には支給される退職金が一切支給されなかったことにより,多大な精神的苦痛を被り,その額は100万円を下回ることはない。 さらに,原告P1は本件訴訟提起から2年以上が経過した現在まで,原告P2は本件訴訟提起後定年退職するまでの1年間,いずれも不合理な労働条件で販売業務に従事しているため,更なる精神的苦痛を受けており,その額は 原告P1につき100万円,原告P2につき50万円を下らない。 したがって,各原告の慰謝料額は,別紙請求債権目録の「慰謝料」欄記載のとおりとなる。 (8) 弁護士費用原告らは,被告による不法行為等による損害回復のために弁護士を依頼したから,各原告につき,その弁護士費用として上記(1)から(7)までの損害の合計額の約1割に相当する損害(別紙請求債権目録の「弁護士費用」欄記載の額)を被った。 (9) まとめ上記(1)から(8)までを合計すると,各原告の損害額は,別紙請求債権目録の「合計」欄記載のとおりとなる。 (被告の主張)(1) 原告らの損害について原告らの主張はいずれも否認ないし争う。 (2) 月例賃金差額及び資格手当相当損害金について原告P3の別紙1-3について,平成16年と平成17年の資格をS-3として,その翌年にS-2への昇格を前提としているが,被告の昇給・昇格は毎年4月1日に行われるところ,原告P3の入社は期中(4月5日)の入社であるから,S-3の勤務年数は2年に満たない。また,S-3からS-2への昇格基 2への昇格を前提としているが,被告の昇給・昇格は毎年4月1日に行われるところ,原告P3の入社は期中(4月5日)の入社であるから,S-3の勤務年数は2年に満たない。また,S-3からS-2への昇格基準は「実務年数2年以上」であるところ,原告P3は昇格すべき時期がこの基準より1年先行した時期である旨主張しており,誤りである。 (3) 賞与差額相当損害金について被告は,原告らの賞与差額の損害自体を争うものであるが,原告らは,賞与の計算方法について,甲第61号証を根拠に,「基本給(職務給+年齢給)×2.7か月分+17万6000円」を基準としているが,賞与は飽くまでも「基本給×2か月分+α」であり(α=17万6000円),2か月分を 超える0.7か月分は「+α」に含まれる。 (4) 退職金相当損害金について被告は,原告P1を除く原告ら3名に対する退職金の支給自体を争うものであるが,同原告らの主張を前提としても次の点は誤りである。すなわち,原告P4の退職日が平成24年3月31日であるとすれば,職務給は平成23年度の扱いとなりS-1の6号俸であるべきところ(別紙1-4参照),原告P4の主張ではL-3の1号俸を前提として算定されている点で誤りである。 (5) 褒賞相当損害金について原告P1を除く原告ら3名は,定年退職時における褒賞相当の損害を主張するが,被告における定年退職時の褒賞は「感謝状と5万円相当の記念品」であり,現金として支給されるものではないから,これを損害として主張するのは失当である。 また,原告P3は,勤務年数が10年であることを前提に損害額を算定しているが,同原告の勤続年数は平成16年4月5日から平成26年3月31日までであり10年に満たないから(端数の日数を1か月に切り上げる運用はない。),勤続10年の褒 であることを前提に損害額を算定しているが,同原告の勤続年数は平成16年4月5日から平成26年3月31日までであり10年に満たないから(端数の日数を1か月に切り上げる運用はない。),勤続10年の褒賞の対象とはならない。 (6) 原告P1の早出残業手当の差額相当損害金についてア原告P1の主張のうち,別紙5記載の原告P1が支給された「本給」「皆勤手当」「早番手当」「早出残業手当」の額及び「労働時間」「早出残業時間」はいずれも認め,その余は否認ないし争う。 イ原告P1の主張では,1か月の所定労働時間を158時間とし,その前提として国民の祝祭日等の特別の休日である19日を労働日より控除しているが,誤りである。契約社員Bは現業社員として扱われ,特別の休日は付与されないため(就業規則71条4項),所定労働時間は158時間ではなく,約170時間となる。 また,原告P1は,月単位で早出残業の始めの2時間を割増率2割7分,2時間を超える分を割増率3割5分で計算しているところ,時間外手当の計算は1日単位で行うものであるから,上記計算方法は失当である。原告P1の主張を前提としても,原告P1の早出残業時間は1か月当たり最も長くて30時間,大半が10時間以下であり,1日単位で計算する限り,早出2時間を超える割増率3割5分の適用の余地はないというべきである。 ウ消滅時効の抗弁原告P1は,平成28年11月22日付け訴えの変更申立書で初めて残業手当の差額相当損害金を請求したものであるから,2年間の時効期間経過後である平成26年10月以前に生じた残業手当については,消滅時効を援用する。 なお,労働契約法20条違反の効果は不法行為と考えられるところ,早出残業手当の請求は明らかに債務不履行に基づく請求であって,特段の事情のない限り債務不履行 業手当については,消滅時効を援用する。 なお,労働契約法20条違反の効果は不法行為と考えられるところ,早出残業手当の請求は明らかに債務不履行に基づく請求であって,特段の事情のない限り債務不履行は不法行為を構成しない。原告P1による労働契約法20条違反の主張は,あくまで正社員と契約社員Bの残業手当の割増率や単価の相違にとどまるものであるから,不法行為責任を前提とした消滅時効を考慮する余地はない。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実当事者間に争いのない事実,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件の争点に関連する事実として以下の事実を認めることができる。 (1) 被告の沿革等ア被告は,昭和32年銀座地下鉄興業株式会社として設立され,昭和57年株式会社地下鉄トラベルサービスに商号を変更した。当時は,売店業務は被告の業務ではなかった。その後,平成12年10月,被告を含む営団地下鉄(当時)グループの関連会社等の再編成に伴い,被告は,売店事業 を行っていた互助会から売店等の物販事業に関する営業を譲り受け,また,互助会及びセルビスから広告取扱業務の営業を譲り受けた。 被告は,平成16年6月,商号を現商号に改め,現在に至っている。 (乙13,弁論の全趣旨)イ被告の会社再編に伴う人事制度の変遷平成12年10月の関連会社再編前までは,被告(当時は株式会社地下鉄トラベルサービス)には月給制の正社員のみがおり,売店業務を行っていた互助会には,月給制の正社員及び売店業務等に従事していた時間給制のパートタイマーが存在した。また,広告取扱業務を行っていたセルビスには,月給制の正社員及び準社員(広告の取付け業務に従事する者)が存在した。同年10月の関連会社再編に当たり,被告では人事制度を統一する必要が生じ,月給制の正社員,月給制の嘱 務を行っていたセルビスには,月給制の正社員及び準社員(広告の取付け業務に従事する者)が存在した。同年10月の関連会社再編に当たり,被告では人事制度を統一する必要が生じ,月給制の正社員,月給制の嘱託社員(セルビスの準社員),時間給制のパートタイマーの三つに区分されることとなった。さらに,平成14年4月,被告は駅業務全体を受託することになり,その際社員の名称を改め,月給制の嘱託社員を契約社員A,パートタイマーを契約社員Bとし,契約社員制度を導入した(契約社員制度導入時点では,売店業務には契約社員Aは存在しなかった。)。 以上の結果,被告の売店業務に従事する従業員は,①互助会より引き続き雇用されている正社員,②会社再編時にパートタイマーであった者が契約社員Bとなり,引き続き契約社員Bとして雇用されている者,③登用により契約社員Aや正社員となった者,④被告において正社員として新たに採用された者,⑤被告において契約社員Bとして新たに採用され,引き続き契約社員Bとして雇用されている者,⑥被告において契約社員Bとして新たに採用され,後に登用によって契約社員Aや正社員となった者が,並存することになった。 (乙13,証人P6,弁論の全趣旨) ウ従業員数被告の従業員840名余のうち,正社員は約600名であり,そのうち売店業務に従事しているのは18名(平成27年1月現在)である。 (2) 各社員の業務内容等(乙9,13,14,証人P6,弁論の全趣旨)ア正社員(ア) 正社員と被告との契約は,職務の限定がなく,期間の定めもない労働契約(無期労働契約)であり,おおむね18歳から22歳までの間に採用され,被告本社の経営管理部,総務部,リテール事業本部及びステーション事業本部の各部署で働くほか,メトロス事業所やストア・ショップ事業所 無期労働契約)であり,おおむね18歳から22歳までの間に採用され,被告本社の経営管理部,総務部,リテール事業本部及びステーション事業本部の各部署で働くほか,メトロス事業所やストア・ショップ事業所などの現業部門で働く場合や,関連会社に出向する場合もある。 正社員は,業務の必要により配置転換,職種転換又は出向を命じられることがあり,正当な理由なしにこれを拒むことはできない。 (イ) 新規に被告に入社した正社員は,新人社員としての接客・販売教育などのため,キャリア形成の一環として売店における販売業務に従事することがあるが,その期間は1,2年程度である。 正社員の中には,例外的に専ら売店業務に従事する者がいるが,これは前述したとおり,被告の関連会社再編前に売店業務を担っていた互助会に正社員として入社した者が引き続き被告に在籍し売店業務に従事している場合か,登用制度により契約社員Bから契約社員Aを経て正社員に登用された者が売店業務に従事する場合に限られる。 (ウ) 売店業務に従事する場合であっても,正社員と契約社員Bの業務内容には違いがある。すなわち,正社員は代務業務(休暇や欠勤で不在の固定売店販売員に代わり,毎日異なる売店において早番及び遅番の業務を行う業務)に従事するのに対し,契約社員Bは原則として代務業務を行わない。また,各固定売店は約10店舗ずつ4つのエリアに分けられ ており,各エリアに1名ずつエリアマネージャーが置かれているところ,エリアマネージャー業務は正社員のみが従事し,契約社員A及びBは当該業務を行わない。エリアマネージャーの業務は,売上向上のための指導・改善業務,売店の巡回・代務,事故対応,営業設備の不良対応・修繕改修事務,その他必要な事務処理等多岐にわたり,売店業務のサポート,トラブル処理,商品補充に ネージャーの業務は,売上向上のための指導・改善業務,売店の巡回・代務,事故対応,営業設備の不良対応・修繕改修事務,その他必要な事務処理等多岐にわたり,売店業務のサポート,トラブル処理,商品補充に関する業務を行うほか,メトロス事業所に情報をフィードバックする役割も担っている。 イ契約社員B契約社員Bと被告との契約は職務限定契約であり,契約社員Bは,駅売店における販売業務及びその付随業務にのみ従事している。契約社員Bとして新規に採用される者の平均年齢は47歳程度である(弁論の全趣旨)。 ウ契約社員A(ア) 契約社員Aは,被告の沿革上,平成12年の関連会社再編の際に受け入れた関連会社の月給制の嘱託社員について,平成14年の契約社員制度導入に伴い,その名称を契約社員Aに改めたものである。同年以降,被告において契約社員Aを新たに採用したことはなく,被告に在籍する契約社員Aは,上記の嘱託社員として被告に継続雇用されている者か,登用制度により契約社員Bから契約社員Aに登用された者のいずれかであり,契約社員Aは,いわば契約社員Bのキャリアアップの雇用形態として位置付けられている。 (イ) 契約社員Aの契約は職務限定契約であり,本社の施設課,メトロス事業所,ストア・ショップ事業所の各業務に従事し,それ以外の部署には配置されていない(弁論の全趣旨)。 (3) 売店業務における各社員の配置等(乙13,弁論の全趣旨)ア平成27年1月現在,メトロス事業所に在籍する従業員の総数は133名であり,うち売店業務に従事する従業員(代務者,休憩交代要員を含む。) の総数は110名であり,その内訳は正社員が18名,契約社員Aが14名,契約社員Bが78名である。 イ売店業務に従事する正社員18名のうち,9名が固定売店業務に従事し,残りの9 含む。) の総数は110名であり,その内訳は正社員が18名,契約社員Aが14名,契約社員Bが78名である。 イ売店業務に従事する正社員18名のうち,9名が固定売店業務に従事し,残りの9名は代務者(休暇や欠勤で不在の固定売店販売員に代わり,毎日異なる売店において早番及び遅番の業務を行う者)である。固定売店業務は,指定された担当売店において販売業務を行うものであり,正社員の担当する売店では,新入社員の接客及び販売教育を行うことがある。 ウ売店業務に従事する契約社員A14名のうち,11名が固定売店業務に従事し,残りの3名は代務者である。この14名は,いずれも契約社員Bから登用された者であり,契約社員Aとして被告に新規採用された者はいない。 エ売店業務に従事する契約社員B78名のうち,固定売店業務に従事する者は68名(うち1名は契約社員Aの定年後再雇用者)であり,残り10名は,固定売店販売員の休憩時の交代要員として,毎日定められたコースで各売店の休憩時間中の売店業務と商品補充等の手伝いを行う業務に従事する者(休憩交代要員)である。 オなお,上記アの時点以降,被告売店の店舗数は14店減少し,平成27年8月1日現在の店舗数は42店(うち個人の委託が7店)となった。これに伴い,固定売店業務に従事する従業員数は88名(うち正社員が10名,契約社員Aが15名,契約社員Bが63名)に減少した(乙13)。 (4) 売店における業務内容及び関連業務ア固定売店における販売員の売店業務の内容は,①メトロス売店の管理(開店・閉店の準備,売店内外の清掃及び周辺の整理整頓,販売に必要な備品・消耗品等の管理等),②接客販売,③商品の管理・準備(商品の補充・発注,商品の受入れ・返品等),④商品の陳列,⑤伝票・帳票類の取扱い,⑥売上金等の金銭取 の清掃及び周辺の整理整頓,販売に必要な備品・消耗品等の管理等),②接客販売,③商品の管理・準備(商品の補充・発注,商品の受入れ・返品等),④商品の陳列,⑤伝票・帳票類の取扱い,⑥売上金等の金銭取扱い,⑦その他付随する業務(勤務交代時の引継ぎ, 棚卸し等)がある。これらの売店における販売員の業務内容は,正社員,契約社員A・Bのいずれについても相違はなく,販売員に配布される販売マニュアルや接客マニュアルについても,従業員の地位による相違はない。 (乙11の1から3まで,乙13,弁論の全趣旨)イ固定売店においては,急な欠勤や有給休暇取得などにより勤務できない販売員に代わって販売業務に従事する「代務」という業務があり,代務者は,毎日異なる売店において早番及び遅番の業務を行っている。代務者を務めるのは原則として正社員及び契約社員Aであるが,例外的に契約社員Bが代務者を務めることもある。一方,休憩交代要員は,各売店の販売員が休憩を取る際に当該販売員に代わって一時的に売店業務を行う者をいい,休憩交代要員は主に契約社員Bが務めている。(乙13,証人P6,原告P1)(5) 原告らの配置及び業務の状況等ア原告P1は,平成18年8月に被告に入社後,見習い研修でP7線P8店に配置され,正社員の指導を受けて業務に従事し,平成21年10月まで同店舗で勤務した。その後,同年11月から平成24年10月まではP7線P9店の配置となり,同年11月からはP7線P10店の配置となり,売店における販売業務に従事している。なお,原告P1は,平成21年11月から平成23年3月までの間,上記P9店において正社員(リーダー職)と組んで売店業務に従事していた。(甲16,弁論の全趣旨)イ原告P2は,平成16年8月に被告に入社後,見習い研修でP7線P11店に配置 23年3月までの間,上記P9店において正社員(リーダー職)と組んで売店業務に従事していた。(甲16,弁論の全趣旨)イ原告P2は,平成16年8月に被告に入社後,見習い研修でP7線P11店に配置され,正社員の指導を受けて業務に従事し,同年11月からP7線P12店で勤務した。その後,P13線P14店,P7線P15店に配置されたが,骨折により平成18年4月から同年7月まで約4か月間休業し,復職後同年8月末までの1か月間は休憩交代要員として業務に従事した。同年9月以降,P16線P17店,同P18店の配置を経て,平成 21年11月から定年退職する平成27年3月末まではP16線P19店に配置され,売店業務に従事した。(甲17,弁論の全趣旨)ウ原告P3は,平成16年4月に被告に入社後,見習い研修でP13線P20店及びP7線P21店に配置され,定年後再雇用の元正社員や契約社員Bの指導を受けて業務に従事し,同年6月から同年12月まで同P21店で勤務した。平成17年1月以降,P13線P22店,P23線P24店,P25線P26店の配置となり,平成20年9月の1か月間は代務者や休憩交代要員として業務に従事した。その後,P16線P27店,同P28店,P13線P29店の配置を経て,平成24年5月から定年退職する平成26年3月末まではP7線P10店に配置され,売店業務に従事した。(甲18,弁論の全趣旨)エ原告P4は,平成16年9月に被告に入社後,見習い研修でP7線P30店に配置され,契約社員Bの指導を受けて業務に従事し,同年11月から平成18年までP7線P31店で勤務した。同年以降,P7線P32店,同P9店等の配置となり,平成19年3月には約1か月間休憩交代要員等の業務に従事した。その後,平成21年11月にP13線P14店に配置され,平成2 7線P31店で勤務した。同年以降,P7線P32店,同P9店等の配置となり,平成19年3月には約1か月間休憩交代要員等の業務に従事した。その後,平成21年11月にP13線P14店に配置され,平成22年12月から平成23年3月まで3か月間骨折により休業したが,同年4月には復職の上,定年退職する平成24年3月末日まで同店舗で勤務した。(甲19,弁論の全趣旨)(6) 登用制度ア契約社員には正社員のように職務によるキャリアアップの制度がないため,被告では,契約社員Bから契約社員A及び契約社員Aから正社員への各登用制度が設けられている(なお,平成28年度からは,契約社員Aの名称が職種限定社員に変更されたことに伴い,登用制度についても,契約社員Bから職種限定社員への登用及び職種限定社員から正社員への登用に変更された。)。売店事業における契約社員Bから契約社員Aへの登用は 平成15年4月から始まり,当初は所属長の推薦による登用のみであったが,その後平成22年4月度から登用試験が制度として導入され,原則として勤続1年以上の希望者全員に受験が認められることになった(なお,平成22年度の登用試験の対象者については,勤務成績が優秀なで所属長が推薦しかつ総務部長が認めた者との限定が付されていた。)。(乙12の1から6まで,乙13,14,証人P6,弁論の全趣旨)イ契約社員Bから契約社員Aへの登用試験は,一般教養や専門知識を問う筆記試験と論文試験からなる一次試験と,面接による二次試験がある。これらの試験を実施した上,勤務成績等を踏まえ,登用の是非が決定される。 契約社員Aから正社員への登用についても,同様に筆記試験と面接がある。 (乙12の1から6まで,乙13,証人P6,弁論の全趣旨)ウ平成22年度から平成26年度までの被告における登用試 決定される。 契約社員Aから正社員への登用についても,同様に筆記試験と面接がある。 (乙12の1から6まで,乙13,証人P6,弁論の全趣旨)ウ平成22年度から平成26年度までの被告における登用試験の受験者数及び合格者数は,次表のとおりである(なお,以下の表中のかっこ内の数字はメトロス事業所における人数である。)(甲68,弁論の全趣旨)。 契約社員B→Aへの登用契約社員A→正社員への登用受験者数合格者数受験者数合格者数平成22年度33(29)10(7)62(5)57(2)平成23年度37(32)7(4)14(9)7(2)平成24年度19(16)4(2)12(6)8(3)平成25年度26(17)1(0)9(7)2(1)平成26年度19(10)6(1)8(4)4(1)5年間合計134(104) 28 (14)105(31) 78 (9)エ原告らは,いずれも平成22年4月期及び平成23年4月期に契約社員Aへの登用試験を受験したが,いずれも不合格であった(甲47,証人P6)。 (7) 契約社員Bの労働条件に関する労使交渉 被告は,本件組合との団体交渉を経て,契約社員Bの労働条件に関し,①平成21年12月22日,年末年始出勤手当の導入(原則として1日7時間以上の勤務1回につき3500円を支給),②平成24年1月4日,年末年始出勤手当の額の改定(日勤の場合4000円,宿泊の場合8000円に増額),③平成22年4月1日,早番手当の導入(売店をA・B・Cの三つに区分し,早番勤務1回につきA売店150円,B売店200円,C売店300円を支給),④同日,精皆勤手当の廃止及び皆勤手当(月額3000円)の導入,⑤平成23年4 手当の導入(売店をA・B・Cの三つに区分し,早番勤務1回につきA売店150円,B売店200円,C売店300円を支給),④同日,精皆勤手当の廃止及び皆勤手当(月額3000円)の導入,⑤平成23年4月1日,年1日のリフレッシュ休暇及び会社創立記念休暇(いずれも有給休暇)の付与などを行った(乙5の1・2,乙6から8まで)。 (8) 正社員の標準的な昇給モデルについて(乙2の1から乙2の5まで,乙13,弁論の全趣旨)ア正社員の本給は,年齢に応じて加算される年齢給と資格・号俸に応じて加算される職務給からなるところ,被告における高卒の正社員の場合の賃金(本給)の標準的な支給水準は次のとおりとなる。 イ高卒の新規採用の正社員の場合,1年目の職務給は「S-3・1号俸」10万8000円であり,3年目には「S-2・1号俸」11万5000円,6年目には「S-1・1号俸」12万7000円,10年目には「S-1・21号俸」13万8000円となる。 また,高卒の新規採用の正社員(18歳)の年齢給は,1年目が5万円,3年目(20歳)が5万2000円,6年目(23歳)が5万5000円,10年目(27歳)が5万9000円である。なお,年齢給の上限は7万2000円(40歳以降)である。 したがって,高卒の新規採用の場合,正社員の本給(職務給と年齢給の合計額)は,1年目が15万8000円,3年目が16万7000円,6年目が18万2000円,10年目が19万7000円となる。 ウ高卒の新規採用の正社員(18歳)が,仮に9年目以降L-3資格に昇格した場合,9年目以降の職務給は「L-3・1号俸」の13万9000円であり,これに年齢給を加えると,9年目(26歳)の本給は19万7000円,10年目(27歳)の本給は19万8000円となり,これに資 場合,9年目以降の職務給は「L-3・1号俸」の13万9000円であり,これに年齢給を加えると,9年目(26歳)の本給は19万7000円,10年目(27歳)の本給は19万8000円となり,これに資格手当3000円が加算される。 2 争点1(労働契約法20条違反の成否)について(1) 労働契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違が不合理なものであることを禁止する趣旨の規定であると解されるところ,同条の「期間の定めがあることにより」という文言は,有期契約労働者の労働条件が無期契約労働者の労働条件と相違するというだけで,当然に同条の規定が適用されることにはならず,当該有期契約労働者と無期契約労働者の間の労働条件の相違が,期間の定めの有無に関連して生じたものであることを要するという趣旨であると解するのが相当である。 本件において原告らが主張する契約社員Bと正社員との間の賃金や諸手当等の労働条件の相違は,その内容に照らしていずれも期間の定めの有無に関連して生じたものであることが明らかであるから,労働契約法20条が施行された平成25年4月1日以降は,本件には同条の適用があるというべきである(なお,原告らの主張には,平成25年3月31日以前の労働条件の相違についても労働契約法20条の適用があることを前提としているように解し得る部分があるが,同条は施行日以前の労働条件の相違については適用されないから,原告らの主張が上記の趣旨をいうのであれば,その限度で失当である。)。 (2) 労働契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違について,職務の内容,当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して,「不合理と認められるものであってはならない」と規定し,「合理的でなければならない」との 労働者との間の労働条件の相違について,職務の内容,当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して,「不合理と認められるものであってはならない」と規定し,「合理的でなければならない」との文言を用いていないことに照らせば, 同条は,飽くまで問題とされている労働条件の相違が不合理と評価されるかどうかを問題としているというべきであり,合理的な理由があることまで要求する趣旨ではないと解される。したがって,同条の不合理性については,労働者は,相違のある個々の労働条件ごとに,当該労働条件が期間の定めを理由とする不合理なものであることを基礎付ける具体的事実(評価根拠事実)についての主張立証責任を負い,使用者は,当該労働条件が不合理なものであるとの評価を妨げる具体的事実(評価障害事実)についての主張立証責任を負うものと解するのが相当である。以上の結果,当該労働条件の相違について,労働契約法20条が掲げる諸要素を考慮してもなお不合理であるとまでは断定できない場合には,当該相違は同条に違反するものではないと判断されることになる。 (3) 正社員と契約社員Bの職務の内容等の相違ア職務の内容の相違(ア) 前記認定のとおり,被告の約600名の正社員のうち売店業務に従事する者はわずか18名(平成27年1月現在)であり,大半の正社員は,被告の各部署において売店業務以外の多様な業務に従事している。 正社員のうち,専ら売店業務に従事する者は,売店業務を担う互助会において正社員であった者が,平成12年の関連会社再編により引き続き被告の正社員として売店業務に従事する場合や,登用制度により契約社員Bから契約社員Aを経て正社員になった者に限られるのであって,その他の正社員は,キャリア形成の過程で一定期間(1,2年程度)売店業務に従事するにすぎない。 務に従事する場合や,登用制度により契約社員Bから契約社員Aを経て正社員になった者に限られるのであって,その他の正社員は,キャリア形成の過程で一定期間(1,2年程度)売店業務に従事するにすぎない。また,売店業務のみに従事する正社員とそれ以外の正社員とで,適用される就業規則に変わりはない。 (イ) 他方,契約社員Bは売店業務に専従し,数年おきに売店間での配置換え(メトロス事業所内での勤務場所の変更にすぎず配置転換とは異なる。)が行われることはあっても,売店業務以外の業務に従事すること はない。 (ウ) また,売店業務に限ってみても,代務業務は,原則として正社員及び契約社員Aが行い,契約社員Bは原則として行わないという相違があり,また,正社員は,複数の売店を統括し,その管理業務等を行うエリアマネージャーの業務に従事することがあるのに対し,契約社員Bがエリアマネージャーに就くことはない。 (エ) 以上のとおり,被告の正社員と契約社員Bの間には,従事する業務の内容及びその業務に伴う責任の程度に大きな相違があるものと認められる。 イ職務の内容及び配置の変更の範囲の相違(ア) 前記認定のとおり,被告の正社員は,各部署において多様な業務に従事し,業務の必要により配置転換,職種転換又は出向を命じられることがあり,正当な理由なくこれを拒むことはできない。このことは,専ら売店業務に従事する正社員であっても同様であり,それまでの担当業務や適性等を踏まえて配置が行われた結果,実際には売店業務のみに従事していたとしても,配置転換,職種転換又は出向を命じられ得る立場に置かれている点で,売店業務に専従していない正社員と変わるところはない。 (イ) 他方,契約社員Bは売店業務に専従し,業務の場所(売店)の変更を命じられることはあっても,配置転換 じられ得る立場に置かれている点で,売店業務に専従していない正社員と変わるところはない。 (イ) 他方,契約社員Bは売店業務に専従し,業務の場所(売店)の変更を命じられることはあっても,配置転換や出向を命じられることはない(例外的に登用により職種転換する場合を除く。)。 (ウ) なお,原告らは,契約社員Bの中にはオートメトロス(駅売店が閉店した跡地等に自動販売機を設置してある場所)を管理する部署に配置転換された者がいると主張する。しかし,オートメトロスに係る業務は駅構内における販売業務という点で売店業務と変わりはなく,メトロス事業所内における配置換えにすぎない(証人P6,弁論の全趣旨)から, 原告らの上記主張は,上記(イ)の判断を左右するものとはいえない。 (エ) 以上のとおり,被告の正社員と契約社員Bの間には,職務の内容及び配置の変更の範囲についても明らかな相違があるということができる。 ウこれに対し,原告らは,売店業務に従事する正社員と原告ら契約社員Bとの職務の内容及び配置の変更の範囲が同一であると主張する。しかしながら,原告らの上記主張は,売店業務に専従している正社員のみを比較の対象として,契約社員Bとの職務の内容及び配置の変更の範囲の同一性をいうものであり,失当といわざるを得ない。すなわち,前述したとおり,被告の正社員の大半は,その従事する業務は売店業務に限られず,被告の各部署において多様な業務に従事するのであって,ごく一部の正社員が,売店業務を担っていた互助会から被告に移籍したり,契約社員Bから登用されたりしたという経歴,担当業務を踏まえて売店業務に配置され,例外的に専従していると考えられる上,売店業務に専従する正社員とそれ以外の正社員とで適用される就業規則に違いがないことを踏まえると,契約社員Bとの労働条件 歴,担当業務を踏まえて売店業務に配置され,例外的に専従していると考えられる上,売店業務に専従する正社員とそれ以外の正社員とで適用される就業規則に違いがないことを踏まえると,契約社員Bとの労働条件の相違を検討する上では,売店業務に従事する正社員のみならず,広く被告の正社員一般の労働条件を比較の対象とするのが相当である。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 (4) 上記(2)及び(3)を踏まえ,原告らの主張する各労働条件の相違が不合理なものであるといえるかを以下検討する。 ア本給及び資格手当における相違について(ア) 前記のとおり,正社員は月給制で昇給があり,標準的な昇給モデルによれば,高卒の新規採用者(18歳)の場合の本給月額は,1年目が15万8000円,3年目が16万7000円,6年目が18万2000円,10年目が19万7000円となる(前記1(8))。仮に,上記高卒新規採用者が9年目以降L-3資格に昇格した場合の本給は,9年目 が19万7000円,10年目が19万8000円となり,これに資格手当3000円が加算される。 (イ) 他方,契約社員Bは時給制であり,原告らが入社した当時は一律時給1000円で昇給はなかったが,平成22年4月以降,毎年10円ずつ昇給するものとされた。原告らの平成23年以降の賃金をみると,平成23年の時給はいずれも1020円であり,その後毎年10円ずつ昇給している。原告らの1か月当たりの労働時間数は,おおむね160時間から170時間前後であるから,その本給月額は,時給1020円とすれば16万3200円から17万3400円程度(平均すると16万8300円程度)であり,時給1040円とすれば16万6400円から17万6800円程度(平均すると17万1600円程度)となる。 ま すれば16万3200円から17万3400円程度(平均すると16万8300円程度)であり,時給1040円とすれば16万6400円から17万6800円程度(平均すると17万1600円程度)となる。 また,契約社員Bには,資格手当の支給はない。 (ウ) 上記(ア)及び(イ)を踏まえ正社員(高卒の新規採用者)の本給と原告ら契約社員Bの本給を比較すると,1年目は契約社員Bの方が高く,3年目はおおむね同程度か労働時間数によっては契約社員Bの方が高いが,6年目以降はおおむね正社員の方が高額となっている(なお,月の労働時間数によっては,原告らが上記の6年目正社員の本給18万2000円を超える額を支給されている場合もある。)。また,10年目の正社員と契約社員B(最低でも原告P3の10年目と同額の時給1040円)の本給を比較すると,正社員がL-3資格に昇格している場合には,契約社員Bの本給額は正社員の本給(資格手当を含めて20万1000円)の85パーセント程度であり,正社員がL-3資格に昇格していない場合には87パーセント程度である(なお,正社員の年齢給は40歳以降一律7万2000円であることから,比較対象となる正社員の年齢給を当該上限額として算定すると,正社員〔L-3資格への昇格なし〕の本給は21万円となり,契約社員Bの本給はその82パーセント 程度となる。)。 (エ) 以上のとおり,正社員と契約社員Bの本給及び資格手当(以下「本給等」という。)には上記の相違があるが,前記(3)で説示したとおり,両者の間には職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲に大きな相違がある上,正社員には長期雇用を前提とした年功的な賃金制度を設け,短期雇用を前提とする有期契約労働者にはこれと異なる賃金体系を設けるという制度設計をすることには,企業の人事施策上の 範囲に大きな相違がある上,正社員には長期雇用を前提とした年功的な賃金制度を設け,短期雇用を前提とする有期契約労働者にはこれと異なる賃金体系を設けるという制度設計をすることには,企業の人事施策上の判断として一定の合理性が認められるといえる。また,契約社員Bの本給は高卒新規採用の正社員の1年目の本給よりも高く3年目でも同程度であり,10年目の本給を比較しても契約社員Bの本給は正社員の本給の8割以上は確保されている。以上に加え,契約社員Bの本給も毎年時給10円ずつの昇給が存在すること,契約社員Bには正社員にはない早番手当及び皆勤手当が支給されることなどを踏まえると,長期雇用を前提とした正社員と有期雇用である契約社員Bとの間で,本給等における上記の相違を設け,昇給・昇格について異なる制度を設けることは,不合理なものであるとは認められないというべきである。 イ住宅手当における相違について(ア) 前記前提事実(第2の2(5)イ(エ))のとおり,正社員の場合,扶養家族がある者には月額1万5900円,扶養家族がない者には月額9200円の住宅手当が一律に支給される。これに対し,契約社員Bの場合,扶養家族の有無を問わず,住宅手当は支給されない。 (イ) 被告における住宅手当が,住宅に要する費用負担の有無を問わず一律に支給されることからすれば,実際に支出した住宅費用の補助というよりは,正社員に対する福利厚生としての性格が強い手当ということができるところ,被告の正社員は転居を伴う可能性のある配置転換や出向が予定され,配置転換や出向が予定されない契約社員Bと比べて,住宅 コストの増大が見込まれることに照らすと,正社員に対してのみ住宅手当を支給することが不合理であるということはできない。また,長期雇用関係を前提とした配置転換のある正社員への住 と比べて,住宅 コストの増大が見込まれることに照らすと,正社員に対してのみ住宅手当を支給することが不合理であるということはできない。また,長期雇用関係を前提とした配置転換のある正社員への住宅費用の援助及び福利厚生を手厚くすることによって,有為な人材の獲得・定着を図るという被告の主張する目的自体は,人事施策上相応の合理性を有するものということができる。 (ウ) これに対し,原告らは,被告の営業所の所在地が東京都内に限定され,転居の伴う配置転換や出向はないことから,正社員のみに住宅手当を支給することは不合理であると主張する。しかしながら,東京都内の異動であっても転居の伴う場合が想定し得ることに加え,上記(イ)のとおり,正社員に対する福利厚生を手厚くすることにより有為な人材の獲得・定着を図るなどの人事施策上の目的が相応の合理性を有すると認められることを踏まえると,原告らの指摘する上記の点は,前記判断を左右するものではない。 (エ) したがって,住宅手当における正社員と契約社員Bとの相違は,不合理であるとは認められない。 ウ賞与における相違について(ア) 前記前提事実(第2の2(5)エ)のとおり,被告の正社員には,毎年夏季と冬季の年2回,原則として月額給与(本給)の2か月分に一定額を加算した賞与がそれぞれ支給される。また,平成23年以降の夏季及び冬季には,被告の正社員に対し,それぞれおおむね本給の2か月分に17万円又は17万6000円を加算した額の賞与の支給実績が認められる(甲61,弁論の全趣旨)。例えば平成25年度の夏季及び冬季には,本給の2か月分に17万6000円を加算した額が支給されたことから,高卒新規採用の正社員の賞与の額は,1年目であれば49万2000円,6年目であれば54万円,10年目(L-3資格に昇格した場 には,本給の2か月分に17万6000円を加算した額が支給されたことから,高卒新規採用の正社員の賞与の額は,1年目であれば49万2000円,6年目であれば54万円,10年目(L-3資格に昇格した場 合)であれば57万2000円となる。 これに対し,原告ら契約社員Bは,毎年夏季と冬季の年2回,一律各12万円の賞与がそれぞれ支給される。 以上のとおり,正社員と契約社員Bに支給される賞与には相違がある。 (イ) しかしながら,前記説示のとおり,被告の正社員と契約社員Bとの間には職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲に大きな相違があることや,契約社員Bにも夏季及び冬季に各12万円の賞与が支給されることに加え,賞与が労働の対価としての性格のみならず,功労報償的な性格や将来の労働への意欲向上としての意味合いも持つこと,かかる賞与の性格を踏まえ,長期雇用を前提とする正社員に対し賞与の支給を手厚くすることにより有為な人材の獲得・定着を図るという被告の主張する人事施策上の目的にも一定の合理性が認められることなどを勘案すると,賞与における正社員と契約社員Bとの上記相違は,不合理なものであるとまでは認められない。 (ウ)a これに対し,原告らは,被告においては,賃金において賞与の占める割合が約3分の1と非常に高いことから,被告における賞与は単なる補助的・一時的な賃金ではなく,月例賃金と切り離すことのできない不可欠の収入というべきであって,月例賃金(本給)と賞与の相違を総合的に比較して不合理性の有無を判断すべきであり,賞与を含めた正社員との賃金格差は不合理な相違に当たると主張する。 b そこで検討すると,前記1(8)で認定した高卒新規採用正社員の本給を前提に,原告ら契約社員Bとの間で,1年間に支給される本給及び賞与の合計額を比 との賃金格差は不合理な相違に当たると主張する。 b そこで検討すると,前記1(8)で認定した高卒新規採用正社員の本給を前提に,原告ら契約社員Bとの間で,1年間に支給される本給及び賞与の合計額を比較すると次のとおりである。 ①1年目正社員:本給158,000円×12+賞与492,000円×2=288万円契約社員B:本給165,000円(※)×12+賞与12万円×2=222万円 (正社員の約77%)(※時給1000円,1か月の労働時間165時間と仮定)②6年目正社員:本給182,000円×12+賞与54万円×2=326万4000円契約社員B:168,300円(※)×12+賞与12万円×2=225万9600円(正社員の約69%)(※時給1020円,1か月の労働時間165時間と仮定)③10年目正社員:本給198,000円×12+賞与572,000円×2=352万円契約社員B:171,600円(※)×12+賞与12万円×2=229万9200円(正社員の約65%)(※時給1040円,1か月の労働時間165時間と仮定)c 前記説示のとおり,被告の正社員と契約社員Bとの間には職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲に大きな相違があること,従業員の年間賃金のうちいかなる割合を賞与とするかは使用者に経営判断に基づく一定の裁量が認められると解されることに加え,上記bのとおり,正社員と契約社員Bとの賞与を含めた年間賃金を比較すると,契約社員Bの年間賃金は1年目では正社員の4分の3以上,6年目では7割弱,10年目でも65パーセント程度の水準が確保されていると認められること 社員と契約社員Bとの賞与を含めた年間賃金を比較すると,契約社員Bの年間賃金は1年目では正社員の4分の3以上,6年目では7割弱,10年目でも65パーセント程度の水準が確保されていると認められること(しかも有期雇用である契約社員Bの場合,必ずしも長期間の継続雇用が想定されるわけではない。)をも勘案すると,賞与を含む年間賃金を比較しても,両者の相違は,いまだ不合理なものとまでは認められないというべきである。 d したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 エ退職金における相違について(ア) 前記前提事実のとおり,正社員には退職金制度があり,勤務年数等 に応じた金額が支給されるのに対し,原告ら契約社員Bには退職金制度はなく,この点で両者の労働条件には相違がある。 (イ) そこで検討すると,一般に退職金が賃金の後払い的性格のみならず功労報償的性格を有することに照らすと,企業が長期雇用を前提とした正社員に対する福利厚生を手厚くし,有為な人材の確保・定着を図るなどの目的をもって正社員に対する退職金制度を設け,短期雇用を原則とする有期契約労働者に対しては退職金制度を設けないという制度設計をすることは,人事施策上一定の合理性を有するものと考えられる。これに加え,本件においては,前記説示のとおり被告の正社員と契約社員Bとの間には職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲に大きな相違があること,被告では契約社員Bのキャリアアップの制度として契約社員Bから契約社員A及び契約社員Aから正社員への登用制度が設けられ,実際にも契約社員Bから契約社員Aへの一定の登用実績(5年間で28名)があることなどを併せ考慮すると,退職金における正社員と契約社員Bとの間の相違は,不合理とまでは認められないというべきである。 (ウ) したがって ら契約社員Aへの一定の登用実績(5年間で28名)があることなどを併せ考慮すると,退職金における正社員と契約社員Bとの間の相違は,不合理とまでは認められないというべきである。 (ウ) したがって,この点に関する原告らの主張は理由がない。 オ褒賞における相違について(ア) 証拠(乙1の2)によれば,①被告においては,業務上特に顕著な功績があった社員に対して褒賞を行う旨の褒賞取扱要領が存在すること,②同要領によれば,正社員,契約社員A及びBを問わず褒賞が行われる場合として,(a)各種事故及び災害防止等の危難を防止したとき,(b)犯人逮捕等に協力し功績があったとき,(c)業務上優秀な提案,意見がなされ,又は論文が提出され業務の向上に寄与したとき,(d)営業成績の向上に努力し,会社の業績に著しく貢献したと認められるときなどが定められ,当該場合には対象社員に対し表彰状及び数千円から数万円程度の賞 金が支給されることとされていること,③同要領の3(1)「永年勤務に精励し,会社に功績があったとき」に褒賞を行うとの規定は正社員のみに適用され,契約社員A及びBには適用されないとされていること,④上記③の場合,正社員には勤続10年時に表彰状と3万円の賞金が支給され(以後勤続10年ごとに同じく褒賞の定めがある。),定年退職時に感謝状と5万円相当の記念品が贈呈されること,の各事実が認められる。 (イ) 上記(ア)のとおり,永年勤労以外の褒賞においては正社員と契約社員Bとの間に相違はないが,永年勤労に係る褒賞の有無の点で両者には相違が存在する。 (ウ) 被告における上記褒賞制度のうち永年勤労に係る褒賞は,永年勤続し被告に貢献した従業員に対し被告が特別に褒賞を支給するというものであるから,長期雇用を前提とする正社員のみを支給対象とし,有期労働 ) 被告における上記褒賞制度のうち永年勤労に係る褒賞は,永年勤続し被告に貢献した従業員に対し被告が特別に褒賞を支給するというものであるから,長期雇用を前提とする正社員のみを支給対象とし,有期労働契約を締結し短期雇用が想定される契約社員A及びBには褒賞を支給しないという扱いをすることは不合理とまではいえない。以上に加え,前記説示のとおり,正社員と契約社員Bとの間には職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲に大きな相違があること,長期雇用を前提とする正社員に対する福利厚生を手厚くすることにより有為な人材の確保・定着を図るという目的自体に一定の合理性が認められることからすれば,褒賞における正社員と契約社員Bとの間の相違は,不合理なものとまでは認められない。 (エ) したがって,この点に関する原告らの主張は理由がない。 カ早出残業手当における相違について(ア) 前記前提事実(5)ウ(ウ)のとおり,被告の正社員には,所定労働時間を超える勤務について,始めの2時間までは1時間につき通常の時間当たり賃金の2割7分増,2時間を超える時間については当該賃金の3割5分増の早出残業手当(労働基準法37条所定の割増率以上の割増賃金) が支給される。 これに対し,契約社員Bには,所定労働時間を超える勤務について,1時間につき通常の時間当たり賃金の2割5分増の早出残業手当(労働基準法37条所定の割増率と同一の割増賃金)が支給される。 以上のとおり,早出残業手当の支給について,正社員と契約社員Bとの間には相違が存在する。 (イ) ところで,早出残業手当は,その内容から,被告従業員の時間外労働に対する割増賃金としての性質を有するものと認められる。そして,労働基準法37条が時間外労働等に対する割増賃金の支払を義務付けている趣旨は,時 ,早出残業手当は,その内容から,被告従業員の時間外労働に対する割増賃金としての性質を有するものと認められる。そして,労働基準法37条が時間外労働等に対する割増賃金の支払を義務付けている趣旨は,時間外労働は通常の労働時間に付加された特別の労働であることから,使用者に割増賃金の支払という経済的負担を課すことにより時間外労働等を抑制することにある。かかる割増賃金の趣旨に照らせば,従業員の時間外労働に対しては,使用者は,それが正社員であるか有期契約労働者であるかを問わず,等しく割増賃金を支払うのが相当というべきであって,このことは使用者が法定の割増率を上回る割増賃金を支払う場合にも妥当するというべきである一方,長期雇用を前提とした正社員に対してのみ,福利厚生を手厚くしたり,有為な人材の確保・定着を図ったりする目的の下,有期契約労働者よりも割増率の高い割増賃金を支払うことには合理的な理由をにわかに見いだし難いところである。 (ウ) これを本件についてみると,上記(ア)のとおり,被告においては,所定労働時間を超える勤務すなわち時間外労働について,正社員の場合には最初の2時間までは2割7分,2時間を超える時間については3割5分の割増率による早出残業手当(割増賃金)が支払われるのに対し,契約社員Bの場合には法定の割増率と同じ2割5分の割増率による早出残業手当が支払われるにすぎず,両者の割増率には相違がある。割増賃 金の性質を有する早出残業手当におけるかかる相違は,労働契約の期間の定めの有無のみを理由とする相違であって,前述した労働基準法37条の趣旨に鑑みると,当該相違は不合理なものというべきである。 (エ) したがって,早出残業手当に関する正社員と契約社員Bとの間の相違は,労働契約法20条に違反するものと認められる。 キ小括(ア 趣旨に鑑みると,当該相違は不合理なものというべきである。 (エ) したがって,早出残業手当に関する正社員と契約社員Bとの間の相違は,労働契約法20条に違反するものと認められる。 キ小括(ア) 不法行為の成否以上のとおり,原告らの主張する正社員と契約社員Bとの労働条件の相違のうち,早出残業手当に関する相違については労働契約法20条に違反するものとして,原告P1と被告との労働契約のうち当該労働条件(早出残業手当)を定めた部分は無効であるから,平成25年4月1日以降,契約社員Bである原告P1に対して正社員よりも低い割増率による早出残業手当を支給した被告の対応は,原告P1に対する不法行為を構成するというべきである。 (イ) 債務不履行の成否原告らは,使用者は,労働契約上の付随義務として,有期労働契約であることを理由とする不合理な労働条件を設けてはならない義務を負っているところ,被告が当該義務に違反して原告らとの労働契約上不合理な相違を設けた行為は債務不履行を構成する旨主張する。しかしながら,労働契約法20条の解釈として,同条に違反する不合理な取扱いが不法行為を構成することは格別,使用者に対し同条に違反する不合理な労働条件を設けてはならないという契約上の義務を課したと解する根拠は見当たらない。原告らの上記主張は独自の見解であって,採用することができない。 3 争点2(公序良俗違反の成否)について(1) 前記2で説示したとおり,原告らの主張する労働条件の相違のうち早出残 業手当以外のもの(前記2(4)アからオまで)については,正社員との労働条件の相違が職務の内容の相違等に照らして不合理なものとは認められず,労働契約法20条に違反するとは認められない以上,それとは別に公序良俗違反を根拠付けるだけの事実は認め難いというべ 正社員との労働条件の相違が職務の内容の相違等に照らして不合理なものとは認められず,労働契約法20条に違反するとは認められない以上,それとは別に公序良俗違反を根拠付けるだけの事実は認め難いというべきである。 なお,原告らは,同一(価値)労働同一賃金の原則が,日本の労働法制上法規範性を有する旨主張する。しかし,我が国の現行法令上,原告の主張する上記原則を定めた規定と解されるものは見当たらない(前記2(1)で説示したとおり,労働契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違が不合理なものであることを禁止した規定であり,同一(価値)労働同一賃金の原則を定めたものと解することはできない。)。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 (2) また,労働契約法20条が施行されたのは平成25年4月1日であるから,同日より前の時点で有期契約労働者と無期契約労働者との間に労働条件の相違があったとしても,そのことから直ちに公序良俗に反することになるものではないというべきである。 前記2のとおり,原告らの主張する労働条件の相違のうち,早出残業手当における相違に基づく取扱いについては労働契約法20条に違反すると認められるものの,本件全証拠に照らしても,平成25年4月1日以前の段階において,早出残業手当における上記の相違に基づく被告の取扱いが公序良俗に反するものとまで認めることはできない。 (3) したがって,公序良俗違反に関する原告らの主張には理由がない。 4 争点3(原告らの損害)について(1) 早出残業手当の相違による損害ア原告P1は,平成23年4月分から平成28年8月分(支給日は各翌月20日)まで(以下「本件請求期間」という。)の早出残業手当の差額相当額を損害として主張しているところ,本件請求期 違による損害ア原告P1は,平成23年4月分から平成28年8月分(支給日は各翌月20日)まで(以下「本件請求期間」という。)の早出残業手当の差額相当額を損害として主張しているところ,本件請求期間中原告P1に支給さ れた各月の本給及び早出残業手当の額並びに各月の労働時間及び早出残業時間は,別紙5の各欄記載のとおりである(争いのない事実)。 イところで,原告P1は,早出残業手当における不合理な相違による損害を算定するに当たり,本給の額や早出残業時間についても原告P1が正社員であったと仮定して算定を行っている(例えば,平成23年9月20日支給分についてみると,原告P1は,①自分と同じ勤続年数の正社員であれば得られると仮定した本給を正社員の所定労働時間で除して時給を算出し,②早出残業時間については,原告P1の当月の労働時間に契約社員Bとしての早出残業時間を加算し,正社員の所定労働時間を減じた時間をもってあるべき早出残業時間を算出し,③当該残業時間に①で算出した時給と割増率を乗じて,あるべき早出残業手当の額を算定し,既払の当該手当との差額を算出している。)。しかしながら,原告らの主張する労働条件の相違のうち労働契約法20条に違反すると認められるのは早出残業手当に関する相違のみであるから,原告P1に生じた損害を算定するに当たっては,早出残業手当の割増率について正社員の定めを適用するほかは,すべて契約社員Bとしての労働条件を前提とすべきである。 したがって,本給の額や早出残業時間についても正社員であったと仮定する原告P1の上記算定方法は,前提を誤るものとして失当というべきである。 ウ上記ア及びイを前提として,原告P1に生じた損害を算定する。 (ア) 前記認定のとおり,被告においては,所定労働時間を超える勤務(時間外労働)につい 提を誤るものとして失当というべきである。 ウ上記ア及びイを前提として,原告P1に生じた損害を算定する。 (ア) 前記認定のとおり,被告においては,所定労働時間を超える勤務(時間外労働)について,正社員の場合には始めの2時間までは2割7分,2時間を超える時間については3割5分の割増率による早出残業手当(割増賃金)が支払われるところ,2時間を超える場合に割増率を上乗せしている趣旨からすれば,2時間を超えるかどうかは勤務日ごとに判断すべきであることは明らかである。 (イ) この点,原告P1は,早出残業手当の支給対象となる早出残業時間について,月ごとの合計時間しか主張しておらず(別紙5の「契約社員B(原告P1)」の「早出残業時間」欄参照),本件請求期間中の日々の早出残業時間は不明である。もっとも,別紙5のとおり,原告P1の早出残業時間は最も多い月で10時間30分(平成28年8月支給分)にとどまり,原告P1の所定休日が原則として週1日であり(甲3の1),1か月の勤務日数が24日前後であることからすれば,1日当たりの早出残業時間は多くても2時間以内であったと推認するのが相当であり,これを覆すに足りる証拠はない。 (ウ) したがって,原告P1の早出残業時間に対して適用すべき正社員の割増率は,本件請求期間を通じて2割7分とするのが相当であるから,原告P1は,平成25年4月1日以降,各月の早出残業手当の支給日に,契約社員Bに適用される2割5分の割増率との差である2パーセント分について損害を被っていたものと認められる。 (エ) 以上を前提とすれば,早出残業手当に関して原告P1に生じた損害は,別紙7の「認定差額」欄記載のとおり,3609円と算定される(計算式:原告P1の時間給(a)×0.02×早出残業時間(b)。なお,皆勤手当及び早番 れば,早出残業手当に関して原告P1に生じた損害は,別紙7の「認定差額」欄記載のとおり,3609円と算定される(計算式:原告P1の時間給(a)×0.02×早出残業時間(b)。なお,皆勤手当及び早番手当は,その性質上「臨時に支払われた賃金」〔労働基準法施行規則21条4号〕に該当するものと解されるから,早出残業手当算定の基礎賃金には算入されないというべきである。)。 エ消滅時効の抗弁について(ア) 被告は,労働契約法20条違反による早出残業手当の差額請求は,債務不履行に基づく請求であって2年間の短期消滅時効(労働基準法115条)にかかるとの見解を前提として,原告P1は平成28年11月22日付け訴えの変更申立書で初めて早出残業手当の差額相当損害金を請求したものであるから,2年間の時効期間経過後である平成26年1 0月以前に生じた残業手当については時効により消滅したと主張する。 (イ) しかしながら,原告P1は,契約社員Bとしての労働契約に基づき,被告から所定の割増率で算出された早出残業手当の支給を受けていたものであり,契約上の債務の未払はない。前記2(4)キ(ア)で説示したとおり,原告P1が早出残業手当における不合理な相違により受けた損害は,労働契約法20条違反の不法行為によって生じた損害というべきであり,その法的性質は,契約上の債務の不履行により生じた損害とは明らかに異なるというべきである。原告P1は,正社員との早出残業手当の相違に基づく取扱いが労働契約法20条違反の不法行為に該当すると認められて初めてその損害賠償を請求することができるのであるから,当該請求権は契約上の賃金請求権とは異なるものである。 したがって,被告の上記(ア)の主張は採用することができない。 (ウ) ところで,不法行為に基づく損害賠償請求権は,被害 きるのであるから,当該請求権は契約上の賃金請求権とは異なるものである。 したがって,被告の上記(ア)の主張は採用することができない。 (ウ) ところで,不法行為に基づく損害賠償請求権は,被害者が「損害及び加害者を知った時」から3年間行使しないときは時効により消滅する(民法724条)。 証拠(甲9,10,20の1から14まで,47,乙1の1・2,乙2の1から2の6まで)及び弁論の全趣旨によれば,原告らは,平成21年3月以降,本件組合を通じて被告に対し,正社員の賃金規程を含む就業規則の開示を求めてきたが,被告は開示の必要性がないとしてこれを拒否してきたこと,被告は本件訴訟提起後の平成26年7月10日,原告らの求釈明に応じる形で正社員の賃金規程(賃金規則)を開示したこと,原告P1は当該開示時点まで,正社員と契約社員Bとの間に早出残業手当の割増率の相違があることを知らなかったことの各事実が認められる。 そうすると,原告P1が早出残業手当における不合理な相違による「損害…を知った時」は,上記開示時点である平成26年7月10日と認め られるから,同日から早出残業手当に関する損害賠償請求権の時効が進行すると解するのが相当である。 (エ) 以上によれば,原告P1は,損害及び加害者を知った時である平成26年7月10日から3年以内である平成28年11月22日付け訴え変更申立書(同日被告に送達)により,被告に対して早出残業手当に係る損害賠償請求をしているから,当該請求権の消滅時効は中断したというべきである。 したがって,被告の消滅時刻の抗弁は理由がない。 (2) 慰謝料請求の成否ア原告らは,被告の定めた不合理な労働条件の相違により,多大な精神的苦痛を被ったとして慰謝料を請求している。 イ前記説示のとおり,早出残業手当 の抗弁は理由がない。 (2) 慰謝料請求の成否ア原告らは,被告の定めた不合理な労働条件の相違により,多大な精神的苦痛を被ったとして慰謝料を請求している。 イ前記説示のとおり,早出残業手当以外の原告らの主張する労働条件の相違については,不合理であるとは認められないから,慰謝料を認める余地はない。 ウ早出残業手当における不合理な相違に基づく被告の取扱いが原告P1に対する不法行為を構成することは,前記説示のとおりである。しかしながら,労働条件の不合理な相違により労働者が被る精神的苦痛は,当該損害賠償請求権に対する支払がされることにより慰謝されるのが通常であり,これによってもなお償うことのできない精神的苦痛を生ずる特段の事情があったときに,例外的に慰謝料請求が認められると解するのが相当であるところ,本件全証拠に照らしても,原告P1について上記特段の事情があったものと認めることはできない。 その他,原告らは,休暇制度や福利厚生など賃金以外の労働条件における正社員との不合理な差別によって精神的苦痛を受けたなどとも主張するが,本件に現れた諸般の事情を考慮しても,原告らの主張する賃金以外の労働条件の相違が慰謝料を認め得る程度の不合理な相違に当たるというこ とはできない。 エしたがって,原告らの慰謝料請求はいずれも理由がない。 (3) 弁護士費用弁論の全趣旨によれば,原告らは,被告の不法行為による損害賠償を求めるため,原告ら訴訟代理人弁護士に有償で訴訟委任し,本件訴訟の提起及び追行をした事実が認められるところ,本件に現れた一切の事情を考慮すれば,被告の不法行為と相当因果関係に立つ弁護士費用の額は500円と認めるのが相当である。 (4) 小括以上によれば,被告の不法行為により原告P1が受けた損害は上記(1)及び 切の事情を考慮すれば,被告の不法行為と相当因果関係に立つ弁護士費用の額は500円と認めるのが相当である。 (4) 小括以上によれば,被告の不法行為により原告P1が受けた損害は上記(1)及び(3)の合計4109円であり,原告P1の被告に対する請求は,不法行為に基づく損害賠償請求として4109円並びに各月の差額に対する各支払期日(不法行為日)から,及びうち500円に対する平成26年5月1日からいずれも支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 第5 結論よって,原告らの請求は,主文の限度で理由があるから認容し,その余は理由がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。なお,事案に鑑み,仮執行宣言は付さないものとする。 東京地方裁判所民事第36部 裁判長裁判官田徹 裁判官川淵健司 裁判官石田明彦
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