平成29(行ウ)192 課徴金納付命令取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年12月9日 東京地方裁判所
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判決文本文79,829 文字)

令和3年12月9日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成29年(行ウ)第192号課徴金納付命令取消等請求事件口頭弁論終結日令和3年7月20日判決主文 1 金融庁長官が平成29年4月11日付けで原告に対してした課徴金351万円の納付を命ずる旨の決定を取り消す。 2 被告は,原告に対し,120万円及びこれに対する平成28年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,これを9分し,その4を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 主文第1項と同旨 2 被告は,原告に対し,500万円及びこれに対する平成28年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要上場会社である株式会社SHIFT(以下「本件会社」という。)の取締役 であった原告は,金融商品取引法(令和元年法律第71号による改正前のもの。 以下「金商法」という。)に違反したとして,証券取引等監視委員会(以下「監視委員会」という。)の勧告(以下「本件勧告」という。)及び金商法所定の審判手続を経て,金融庁長官(処分行政庁)から,平成29年4月11日付けで課徴金納付命令(課徴金351万円の納付を命ずる旨の決定。以下「本件処 分」という。)を受けた。本件処分の理由は,概要,原告が本件会社の役員と しての職務に関して知った平成27年9月1日から平成28年8月31日までの会計期間(以下「本件会計期間」という。)の通期における本件会社の属する企業集団(以下「本件グループ」という。)の純利益(以下「本件純利益」という。)について,公表された直近の予想値に比較して本件会 会計期間(以下「本件会計期間」という。)の通期における本件会社の属する企業集団(以下「本件グループ」という。)の純利益(以下「本件純利益」という。)について,公表された直近の予想値に比較して本件会社が新たに算出した予想値において投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとなる差異 が生じたこと(以下「本件重要事実」という。)を,友人であるAに対し,本件重要事実が公表されたこととなる前に本件会社の株式(以下「本件株式」という。)の売買をさせることにより同人の損失の発生を回避させる目的(以下「損失回避目的」という。)をもって伝達したというものであった(以下,本件処分において認定された上記の違反行為を「本件対象行為」という。)。 本件は,原告が,被告を相手に,①本件対象行為の不存在を主張して本件処分の取消しを求めるとともに,②本件処分及びこれに至る各種の手続は国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項の適用上違法であり,これにより1617万7772円の損害が生じたと主張して,その一部請求として500万円及びこれに対する本件勧告の日である平成28年3月25日から支払済みま で民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 関係法令等の定め⑴ 本件に関する金商法の定めは,別紙2-1記載のとおりであり,有価証券の取引等の規制に関する内閣府令(以下「取引府令」という。)の定めは, 別紙2-2記載のとおりである。 ⑵ 上場会社等の役員で,当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実(金商法166条2項に掲げる事実。以下,単に「重要事実」という。)をその者の職務に関し知ったものは,他人に対し,当該重要事実について公表がされたこととなる前に当該上 等に係る業務等に関する重要事実(金商法166条2項に掲げる事実。以下,単に「重要事実」という。)をその者の職務に関し知ったものは,他人に対し,当該重要事実について公表がされたこととなる前に当該上場会社等の特定有価証券等(当該上場会社等の株 券等。同法163条1項参照)に係る売買等をさせることにより当該他人に 利益を得させ,又は当該他人の損失の発生を回避させる目的をもって,当該重要事実を伝達してはならない(金商法167条の2第1項,166条1項)。 これに違反する行為があるときは,当該伝達を受けた者が当該重要事実について公表がされたこととなる前に特定有価証券等に係る売買等をした場合に限り,内閣総理大臣は,当該違反者に対し,課徴金を国庫に納付することを 命じなければならない(同法175条の2第1項。なお,同法による内閣総理大臣の権限は,同法194条の7第1項の規定により金融庁長官に委任されている。)。 重要事実には様々なものがあるが,その一つとして,金商法166条2項3号は,当該上場会社等の属する企業集団の純利益(以下,単に「純利益」 という。)について,公表がされた直近の予想値(当該予想値がない場合は,公表がされた前事業年度の実績値。以下「直近予想値」という。)に比較して,当該上場会社等が新たに算出した予想値(以下「新予想値」ということがある。)において差異(投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとして内閣府令で定める基準に該当するものに限る。)が生じたことを定めてい る。そして,取引府令51条3号は,上記の基準として,新予想値を直近予想値で除して得た数値が1.3以上又は0.7以下(直近予想値を基準とした増減率〔以下,単に「増減率」という。〕が±30%以上。以下,この数値(±30%)を「基準値」という。な して,新予想値を直近予想値で除して得た数値が1.3以上又は0.7以下(直近予想値を基準とした増減率〔以下,単に「増減率」という。〕が±30%以上。以下,この数値(±30%)を「基準値」という。なお,「-30%以上」のように増減率をマイナスで表記する場合であっても,その絶対値が基準値と同等かそれ より大きいことをもって「以上」と表記する。)であり(以下「変動率基準」という。),かつ,新予想値と直近予想値との差額(いずれか少なくない数値から他方を減じて得たもの)を前事業年度の末日における純資産額と資本金の額とのいずれか少なくない金額で除して得た数値が100分の2.5以上であること(以下「変動幅基準」という。)を定めている。なお,当該上 場会社等の属する企業集団の売上高(以下,単に「売上高」という。)につ いては,新予想値を直近予想値で除して得た数値が1.1以上又は0.9以下(増減率が±10%以上)である場合に重要事実に当たることとされている(金商法166条2項3号,取引府令51条1号)。 東京証券取引所に上場している株券等の発行者は,新たに算出した売上高の予想値に係る増減率が±10%以上である場合や,新たに算出した純利益 の予想値に係る増減率が±30%以上である場合などには,直ちにその内容を開示しなければならないとされているが(以下「適時開示」という。東京証券取引所有価証券上場規程〔以下「上場規程」という。〕405条1項,同規程施行規則407条1項4号),これらを下回る増減率であったとしても,発行者の判断でその内容が任意に開示されることがある。 3 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠〔書証番号は,特記しない限り枝番を含む。〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者等 開示されることがある。 3 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠〔書証番号は,特記しない限り枝番を含む。〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者等ア本件会社は,ソフトウェアテスト事業等を行う株式会社(取締役会設置会社)であり,平成26年11月13日,その発行する株式が東京証券取 引所マザーズ市場に上場され,本件会計期間において金商法163条1項所定の「上場会社等」であった。本件会計期間の前年度の末日(平成27年8月31日)における純資産額は約15億1623万円,資本金額は約5億7084万円であった。(甲24,56,乙9)イ原告は,公認会計士の資格を有しており,監査法人勤務を経て,平成2 4年11月に本件会社の取締役(CFO〔最高財務責任者〕。以下,このような原告の役職を「取締役CFO」ということがある。)に就任した(乙22,24)。 ウ本件会社の役員は,本件会計期間において,原告のほか,B(代表取締役社長。以下「B社長」という。),C(取締役。以下「C取締役」とい う。),D(取締役。以下「D取締役」という。),E(社外取締役。以 下「E取締役」という。),F(社外監査役〔常勤〕。以下「F監査役」という。),G(社外監査役〔非常勤〕。以下「G監査役」という。),H(社外監査役〔非常勤〕)であった。(甲55。以下,上記の本件会社の役員らを「本件役員ら」ということがある。)。 エ原告とAは高等学校時代の同級生であり,年に1,2回ほど帰省する際 に,他の同級生とともに酒席を囲むのが通例であった(乙16,24)。 ⑵ 本件重要事実の公表の経緯等ア本件会社は,平成27年10月8日,同社の属する企業集団(本件グループ)の同年9月1日から平成28年8月3 とともに酒席を囲むのが通例であった(乙16,24)。 ⑵ 本件重要事実の公表の経緯等ア本件会社は,平成27年10月8日,同社の属する企業集団(本件グループ)の同年9月1日から平成28年8月31日までの会計期間(本件会計期間)通期の業績予想(以下,本件会計期間については,特に断りのな い限り通期を指すものとする。)として,親会社株主に帰属する当期純利益(本件純利益)の予想値が2億8800万円である旨を公表した(乙9。 以下,同予想値を「本件直近予想値」という。)。 なお,本件会社では,翌会計期間の予算について,取締役CFOである原告が取りまとめを行い(具体的には,表計算ソフトウェアを用いて原告 が作成したフォーマットに各部門の予算係数が入力され,これに,原告が管理部門や子会社の予算係数を加えて,連結の予算案を作成する。),作成した予算案をパワーランチ(毎週月曜日に常勤役員らが昼食をとりながら行う会議のこと)で検討した上,最終的に8月の取締役会で承認し,これに基づき翌会計期間の業績予想を公表するのが通例であった(甲50の 1・3,乙26の2)。 イ平成27年11月頃,本件会社において進めていた二つの案件,すなわち①株式会社リベロ・プロジェクト(以下「リベロ社」という。)の株式を取得して子会社化するという案件(以下「リベロ社取得」ということがある。)及び②ベトナムにおいて新会社(以下「ベトナム法人」という。) を設立するという案件(以下「ベトナム進出」ということがある。)が, 本件会計期間中に実現する見込みとなり,同年12月22日に開催される取締役会(以下「本件取締役会」という。)において承認の決議を行うこととなった(甲1,乙12)。 ウ本件会社の従業員で取締役会の事務を担当するI(以下,G監査役と り,同年12月22日に開催される取締役会(以下「本件取締役会」という。)において承認の決議を行うこととなった(甲1,乙12)。 ウ本件会社の従業員で取締役会の事務を担当するI(以下,G監査役と区別して単に「I」という。)は,平成27年12月21日午前10時頃, 翌22日に開かれる本件取締役会の議事次第及び議事資料(乙12の取締役会議事録に係る添付資料。以下「本件アジェンダ」という。)の案をサーバーにアップロードし,その旨を本件役員らにメールした。同案は,少なくとも後記の業績予想修正に関する点については,特に修正されないまま,本件取締役会の資料として用いられた。 本件アジェンダには,本件取締役会における決議事項1としてリベロ社取得,決議事項2としてベトナム進出が記載されていたほか,協議事項1として「今後の業績見込みについて」という件名で,第1四半期終了時の予算乖離状況並びにリベロ社取得及びベトナム進出による影響を考慮した業績予想修正(以下「本件業績予想修正」という。)について記載され ており,そのうち本件純利益の予想値については,1億8936万1000円で,本件直近予想値からの増減率(以下「本件増減率」という。)が-34.25%である旨が記載されていた。本件アジェンダに記載された①本件純利益に係る本件増減率の上記数値及び②リベロ社取得による売上高の予想値の増加(以下,本件グループの本件会計期間における売上高 を「本件売上高」という。)は,いずれも,適時開示及び重要事実の対象となる基準値(関係法令⑵)を超えるものであった。(甲5,50の6,乙12,15)エ原告は,平成27年12月22日,本件取締役会に出席し,今後の業績見込みについて,第1四半期終了時の予算乖離状況,リベロ社取得及びベ トナム あった。(甲5,50の6,乙12,15)エ原告は,平成27年12月22日,本件取締役会に出席し,今後の業績見込みについて,第1四半期終了時の予算乖離状況,リベロ社取得及びベ トナム進出による各影響につき説明するとともに,平成28年1月12日 の第1四半期決算発表(以下「本件決算発表」という。)時に業績予想修正(本件業績予想修正)をしたい旨の説明をした。 本件取締役会の議事録(乙12。以下「本件議事録」という。)には,原告から本件アジェンダのとおり今後の業績見込みについて説明があった旨の記載があり,本件アジェンダが添付されている。他方,本件取締役 会で書記を務めたIが作成した議事メモ(甲7。以下「本件議事メモ」という。)には,原告が「今の読みなら-29%で業績下方修正はいらないけどギリギリ」と発言した旨の記載がある。 本件取締役会においては,リベロ社取得及びベトナム進出のいずれについても承認する旨の決議がされ,その旨が平成27年12月22日中に公 表された。これに対し,本件業績予想修正については,同日には公表されず,平成28年1月12日に予定されていた本件決算発表と同時に公表することとされた。なお,本件純利益の予想値について下方修正の適時開示(本件増減率が-30%以上であることの開示)が本件取締役会で承認されたかについては,本件訴訟において当事者間に争いがあるが,リベロ社 取得に伴い本件売上高の予想値が10%以上の増加となることはこの時点でほぼ確実であったため,少なくとも本件売上高の予想値については上方修正の適時開示を行う必要があった。 (以上につき,甲7,21,28,29,乙12)オ原告は,平成27年12月30日,広島県内において,Aを含む高等学 方修正の適時開示を行う必要があった。 (以上につき,甲7,21,28,29,乙12)オ原告は,平成27年12月30日,広島県内において,Aを含む高等学 校時代の友人たちと同窓会(以下「本件同窓会」という。)を開き,その際に,Aと二人で話をする機会があった(乙23,24)。 カ本件会社は,平成28年1月7日,監査法人トーマツ(以下「監査法人」という。)に対し,本件業績予想修正の公表案(以下「本件公表案」という。)を送付し,内容の確認を依頼した。本件公表案に記載されていた本 件純利益の予想値は2億0200万円,本件増減率は-29.7%であっ た。ところが,同日,監査法人から,ベトナム法人設立に伴う繰延税金資産の計上は見送るべきとの指摘を受けたため,本件会社において,これに従って数値の修正をしたところ,本件純利益の予想値は1億7805万7000円,本件増減率は-38.2%となった。(甲10,45~48)キ Aは,平成28年1月8日から同月12日(後記クの公表前)にかけて 複数回にわたり,本件株式合計2万株を売付価格合計2061万0200円で売却した(乙1,17~20)。 ク本件会社は,平成28年1月12日,本件業績予想修正(本件純利益の予想値を1億7805万7000円とし,本件増減率を-38.2%とするもの。)を承認するとともに,その旨を公表する旨の取締役会決議を書 面決議の方法で行い(以下「本件書面決議」という。),同日,本件会計期間に係る第1四半期決算の発表(本件決算発表)と併せて,本件業績予想修正の公表をした(本件重要事実の公表。乙10,11)。 ⑶ 原告に対する調査の経緯等ア本件に係る調査を担当した監視委員会の証券調査官ら(以下,単に「証 算発表)と併せて,本件業績予想修正の公表をした(本件重要事実の公表。乙10,11)。 ⑶ 原告に対する調査の経緯等ア本件に係る調査を担当した監視委員会の証券調査官ら(以下,単に「証 券調査官ら」という。)は,当初,本件会社が平成27年1月9日に公表した株式分割を行う旨の決定に関し,原告が,公表前の同月2日にAに対しその情報を伝達した疑いがあるとして,その案件(以下「株式分割事案」という。)等に係る調査を実施していたところ,同調査が進む中で,前記⑵キの取引(本件重要事実の公表前におけるAの株式売却)が発覚し,原 告が同年12月30日(本件同窓会の開催日)にAに対して本件純利益の予想値に重要な差異が生じたこと(本件重要事実)を伝達したかどうか(以下「予想値事案」ということがある。)に係る調査を実施することとなった(乙31,32)。証券調査官らのうち,予想値事案について原告の質問調査を担当したのは,J(以下「J調査官」という。),K(以下「K 調査官」という。)及びL(以下「L調査官」という。)の3名である(以 下,上記3名を併せて「本件証券調査官ら」という。)。 イ証券調査官らは,平成28年2月2日から4日まで,8日,10日,15日及び17日の合計7日間にわたって,原告に対し,株式分割事案ないし予想値事案について質問調査を行った(甲21,23,乙22~24。 以下,原告に対する上記一連の質問調査を含む調査手続を「本件調査手続」 という。)。 ウ平成28年2月10日の原告に対する質問調査(以下「2月10日調査」ということがある。)は,本件会社の会議室においてL調査官とJ調査官が実施した。その際,原告は,自らが使用しているノートパソコンを会議室に持ち込み,その画面上にGoogleスプレッドシート(以下「 ということがある。)は,本件会社の会議室においてL調査官とJ調査官が実施した。その際,原告は,自らが使用しているノートパソコンを会議室に持ち込み,その画面上にGoogleスプレッドシート(以下「スプ レッドシート」という。)を表示させた上で,質問に応じた。なお,スプレッドシートは,ウェブブラウザ上で動く表計算ソフトウェアであり,原告はこれを用いて決算値や業績予想の試算等を行っていた。スプレッドシートの機能としては,ウェブブラウザ上で文字や数値を入力すると,Googleのデータストレージ(データの保管庫)中に自動的に即時保存さ れること,保存された変更履歴を閲覧することができ,過去の特定時点のデータの内容を復元し表示することができること,復元したこと自体も変更履歴として保存されることなどがある。 上記の質問調査において,原告は,L調査官及びJ調査官に対しスプレッドシートの変更履歴から復元した過去のデータの内容をプリントアウ トした資料を交付しており,同資料には,本件増減率について「-38. 21%」と記載されているもの(乙26の3)と,「-34.25%」と記載されているもの(乙26の6)が含まれていた。 (以上につき甲23の5,甲29,40,乙26)エ原告に対する質問調査では,合計4通の供述調書(以下,質問調査の際 に作成された供述調書を「質問調書」という。)が作成されたところ,平 成28年2月17日に実施された質問調査(担当はK調査官及びL調査官)において作成された同日付け質問調書(甲21。以下「2月17日付け調書」といい,他の質問調書についても同様に表記する。)には,①リベロ社取得及びベトナム進出の影響により業績予想修正が必要になったところ,原告が平成27年12月中旬頃に試算した結果,本件売上 日付け調書」といい,他の質問調書についても同様に表記する。)には,①リベロ社取得及びベトナム進出の影響により業績予想修正が必要になったところ,原告が平成27年12月中旬頃に試算した結果,本件売上高は10%ほど 増加する一方,本件純利益は30%以上減少することが分かったこと,②同月21日(本件取締役会の前日)のパワーランチの場で,原告がB社長ら取締役に対し,資料(本件アジェンダのうち,今後の業績見込みに関する部分〔前記⑵ウ参照〕)を示し,「業績予想の下方修正は免れない状況である」との説明を行ったところ,B社長からは「仕方ないんじゃないの。 会社全体を大きくするためには必要なんだから。それでもやるべきだよね。 今は耐えるときだ」という発言があり,他の取締役からも特段の意見はなかったため,本件取締役会に業績予想の修正を付議したこと,③その後,おそらく平成28年1月4日に,C取締役からベトナム法人の設立に関して数値の微調整があった旨の連絡を受け,原告がこの微調整を業績予想に 反映させたところ,本件純利益の予想値が1億7800万円(本件決算発表時に公表された予想値〔前記⑵ク〕)となったことなどが記載されている(甲21,23の8)。 なお,実際には,平成27年12月21日はB社長が不在のためパワーランチは開かれておらず(争いがない。),本件純利益の予想値が1億7 800万円に修正されたのは,前記⑵カのとおり監査法人の指摘を受けたことによるものであった。 ⑷ 本件処分に至る経緯ア監視委員会は,平成28年3月25日,内閣総理大臣及び金融庁長官に対し,原告及びAに対する課徴金納付命令を発出するよう勧告し(本件勧 告),その旨公表した(以下「本件勧告公表」という。)(甲2の2)。 本件勧告公表に 総理大臣及び金融庁長官に対し,原告及びAに対する課徴金納付命令を発出するよう勧告し(本件勧 告),その旨公表した(以下「本件勧告公表」という。)(甲2の2)。 本件勧告公表により公表された法令違反の事実は下記のとおりである(なお,同公表において,課徴金納付命令対象者⑴〔以下「対象者⑴」という。〕はA,同⑵〔以下「対象者⑵」という。〕は原告に該当するところ,いずれもその氏名は公表されていない。)。 記 対象者⑴は,本件会社の役員として勤務している対象者⑵から,同人がその職務に関し知った,本件会社の業務執行を決定する機関が株式の分割を行うことについての決定をした旨の,本件会社の業務等に関する重要事実の伝達を受けながら,上記重要事実の公表がされた平成27年1月9日午後3時頃よ り前の同日午後2時17分頃,自己の計算において,本件株式合計2000株を買付価額合計1035万円で買い付け(株式分割事案), 本件グループの本件会計期間の純利益(本件純利益)について,平成27年10月8日に公表された本件直近予想値(親会社株主に帰属する当期純利益2億8800万円)に比較して,本件会社が新たに算出した 予想値において,投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとなる差異が生じた旨の重要事実(本件重要事実)の伝達を受けながら,本件会社において新たに算出した本件会計期間の予想値(親会社株主に帰属する当期純利益1億7800万円)の公表がされた平成28年1月12日午後3時頃より前の同月8日から同月12日午後2時58分頃までの間, 自己の計算において,本件株式合計2万株を売付価額合計2061万0200円で売り付けた(予想値事案)。 ただし,本件勧告公表において の同月8日から同月12日午後2時58分頃までの間, 自己の計算において,本件株式合計2万株を売付価額合計2061万0200円で売り付けた(予想値事案)。 ただし,本件勧告公表において,対象者⑵(原告)については,株式分割事案に関しては重要事実の伝達につき利得を得させる目的が認められないとして,予想値事案に関してのみ課徴金納付命令の対象とされた。 イ原告は,本件勧告公表がされた平成28年3月25日,本件会社の取締役を辞任した。なお,本件会社では,本件調査手続と並行して独自に特別調査委員会を設置し,事実関係の確認を行っていたところ,原告は,株式分割事案及び予想値事案の双方について,重要事実に該当し得る情報を社外に漏らしたことを認めていた。(乙30) ウ金融庁長官は,平成28年3月28日付けで原告に対し,予想値事案について金商法178条1項17号に基づき審判手続(以下「本件審判手続」という。)を開始する旨の決定をした(乙1)。 エ金融庁長官は,平成28年4月21日付けで,Aに対し,株式分割事案及び予想値事案について課徴金1380万円の納付を命ずる旨の決定を した(甲31,乙21)。 オ金融庁長官は,平成29年4月11日付けで,本件審判手続を担当する審判官ら(以下「本件審判官ら」という。)から提出された決定案(以下「本件処分案」という。)に基づき,原告に対し,同年6月12日までに課徴金351万円を国庫に納付することを命ずる旨の決定(本件処分)を し,その旨公表した(以下「本件処分公表」といい,本件処分及び本件勧告公表と併せて「本件処分等」という。)。なお,本件処分公表においても,原告は「被審人」と表記され,その氏名は公表されていない。(甲1,甲2の1)カ本件処分にお 表」といい,本件処分及び本件勧告公表と併せて「本件処分等」という。)。なお,本件処分公表においても,原告は「被審人」と表記され,その氏名は公表されていない。(甲1,甲2の1)カ本件処分において認定された事実は以下のとおりである(甲1)。 原告は,本件会社の取締役であったが,その職務に関し知った,本件会社の属する企業集団(本件グループ)の本件会計期間の純利益(本件純利益)について,平成27年10月8日に公表された本件直近予想値(親会社株主に帰属する当期純利益2億8800万円)に比較して,本件会社が新たに算出した予想値において,投資者の投資判断に及ぼす影響が重要な ものとなる差異が生じた旨の業務等に関する重要事実(本件重要事実)を, 同年12月30日,広島県福山市内又はその周辺において,Aに対し,本件会社において新たに算出した本件純利益の予想値の公表がされる前に本件株式の売付けをさせることによりAの損失の発生を回避させる目的(損失回避目的)をもって伝達した。Aは,本件重要事実の公表(親会社株主に帰属する当期純利益1億7800万円)がされた平成28年1月12日 午後3時頃より前の同月8日午後1時2分頃から同月12日午後2時58分頃までの間,株式会社SBI証券を介し,東京証券取引所において,本件株式合計2万株を売付価額合計2061万0200円で売り付けた。 ⑸ 本件訴訟の提起原告は,平成29年5月1日,原告訴訟代理人である平山剛弁護士らに委 任して本件訴訟を提起した(顕著な事実)。 4 争点及び当事者の主張本件の争点は,以下のとおりであり,争点に関する当事者の主張の要旨は,別紙3記載のとおりである(同別紙で定義した略語は本文においても用いる。)。 ⑴ 平成27年12月30日以前に本件重要 者の主張本件の争点は,以下のとおりであり,争点に関する当事者の主張の要旨は,別紙3記載のとおりである(同別紙で定義した略語は本文においても用いる。)。 ⑴ 平成27年12月30日以前に本件重要事実が発生したか否か ⑵ 原告が平成27年12月30日にAに本件重要事実を伝達したか否か⑶ 原告が損失回避目的を有していたか否か⑷ 本件調査手続又は本件審判手続の違法により,本件処分は取り消されるべきか⑸ 国賠法1条1項所定の違法の有無 ⑹ 原告の損害第3 当裁判所の判断当裁判所は,平成27年12月30日以前に本件重要事実が発生した事実は認められず,本件対象行為の存在は認められないから,本件処分は違法であり,原告の取消請求は理由があるため認容すべきものであり,また,本件証券調査 官らの一部の行為について国賠法1条1項の違法が認められ,被告はこれによ って原告に生じた損害を賠償する責任があるから,原告の国家賠償請求は主文第2項記載の限度で理由があり認容すべきものと判断する。その理由の詳細は,以下のとおりである。 1 認定事実前記前提事実並びに掲記の証拠(書証番号は,特記しない限り枝番を含む。) 及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ⑴ 本件重要事実の公表に至る経緯ア本件会社は,平成27年10月8日,本件グループに係る本件会計期間の業績予想として本件売上高の予想値が46億8700万円,本件純利益の予想値が2億8800万円(本件直近予想値)である旨を公表したとこ ろ,同年11月頃,本件会社において進めていたリベロ社取得及びベトナム進出に係る各案件(前者の担当は原告であり,後者の担当は,当初はC取締役のみで,後からD取締役も加わった。)がいずれも本件会計期 ろ,同年11月頃,本件会社において進めていたリベロ社取得及びベトナム進出に係る各案件(前者の担当は原告であり,後者の担当は,当初はC取締役のみで,後からD取締役も加わった。)がいずれも本件会計期間中に実現する見込みとなり,上記各案件の承認についての決議が予定されていた同年12月22日開催の本件取締役会に向けて,上記各案件の実現に 伴う業績予想の修正(本件業績予想修正)についての検討が必要となった(前提事実⑵ア,イ,甲29,59,乙9,原告本人)。 イリベロ社取得に伴う業績予想の修正については,リベロ社の過去の業績推移をベースにその影響を試算することができたため,本件取締役会前日の平成27年12月21日までに,ほぼ確実なものとして試算された数値 が存在しており,これによれば,リベロ社取得に伴う本件売上高の予想値の増加は,適時開示の対象となる基準値を超え,上方修正に係る適時開示をしなければならないことが明らかであったので,本件決算発表時に併せてその公表をすることが予定されていた。一方,ベトナム進出により新規に設立される法人(ベトナム法人)については,一から予算計画を策定す る必要があったところ,ベトナム法人に関して見込まれる予算(ベトナム 予算)については,同月21日午前中の時点では,C取締役が同月中旬頃までに暫定的に試算したもの(以下「修正前ベトナム予算」という。)しか存在せず,さらにC取締役及びD取締役において各種費用等を精査した予算案を作成することが予定されていた。したがって,ベトナム予算の数値に連動することとなる本件純利益の予想値は,同日午前中の時点では, 未だ不確定な状態であった。(前提事実⑵ウ,エ,甲29,59,原告本人)ウこのように,本件純利益の予想値が未だ不確定な状態で ることとなる本件純利益の予想値は,同日午前中の時点では, 未だ不確定な状態であった。(前提事実⑵ウ,エ,甲29,59,原告本人)ウこのように,本件純利益の予想値が未だ不確定な状態であったにもかかわらず,平成27年12月22日開催の本件取締役会においては本件業績予想修正も協議事項とされたが,これは,本件業績予想修正を決定する取 締役会決議(本件書面決議)が,第1四半期決算発表を決議するためのもので,書面決議の方法によることが予定されていたため,本件役員らの実質的な協議を経るには本件取締役会において協議するほかなかったためであった。原告は,本件取締役会の前日である同月21日午前中に本件役員らの間で共有される本件アジェンダに掲載するための資料を作成する に当たり,上記イの修正前ベトナム予算を用いてその数値を本件会社の業績予想を算出するスプレッドシートに入力したところ,本件純利益の予想値に係る本件増減率は-34.25%となった(甲6の1。以下,この時点のスプレッドシートを「-34.25%のシート」という。)。本件アジェンダ(案)は,同日午前10時頃までに本件会社のサーバーにアップ ロードされ,本件取締役会の事務を担当するIは,同日午前10時06分,本件役員ら全員に対し,メールでその旨を周知するとともに,本件アジェンダに掲載するファイルの更新があれば別途連絡する旨を伝えた。(前提事実⑵ウ,⑶ウ,甲5,6の1,29,乙12,15)ベトナム出張中であったD取締役は,平成27年12月21日午前9時 57分(日本時間。以下同じ),本件アジェンダに掲載すべきベトナム法 人の設立に関する資料(本件ベトナム資料の当初版)をメールでIに送付していたところ,同日午後0時00分,Iに対し,本件ベトナム資 分(日本時間。以下同じ),本件アジェンダに掲載すべきベトナム法 人の設立に関する資料(本件ベトナム資料の当初版)をメールでIに送付していたところ,同日午後0時00分,Iに対し,本件ベトナム資料は更新予定である旨のメールを送った。IからD取締役に対して「更新が完了しましたら,メールで共有をお願いいたします。役会では,最新の資料でご説明いただければ幸いです。」旨の返信がされた。更新後の本件ベトナ ム資料(甲8。以下,本件ベトナム資料については,特段の断りのない限り,更新後のものを指す。)は,後記カのとおり,翌22日朝にD取締役から送信され,本件アジェンダの別添資料として扱われた。(甲9,乙12,原告本人)エ本件アジェンダのうち,協議事項1(今後の業績見込みについて)の箇 所には,-34.25%のシートが掲載されるとともに,「1Q(第1四半期)終了時の予算乖離状況,L社(リベロ社のこと。以下同じ)取得による影響,ベトナム進出による影響を加味して1月12日の決算発表時に業績予想値の修正を行いたい。」,「L社については現状の想定では売上5億のプラスが見込めるものの,利益ベースでのインパクトは薄い」,「ベ トナムでは営業利益ベースで▲1.2億のインパクト。」などの記載がある。 本件アジェンダに掲載された-34.25%のシートには,リベロ社について,売上高(予想値。以下,後記オまでにおいて同じ)が4億9726万円(1万円未満の金額は省略。以下同じ)である旨が記載されていた ほか,ベトナム法人について,売上高が7806万円,売上原価が9618万円,売上総利益が-1811万円,販売費及び一般管理費(以下「販管費」という。)が1億0073万円,営業利益,経常利益及び税前利益がいずれも-1億1885万円,当期純 06万円,売上原価が9618万円,売上総利益が-1811万円,販売費及び一般管理費(以下「販管費」という。)が1億0073万円,営業利益,経常利益及び税前利益がいずれも-1億1885万円,当期純利益が-9292万円である旨が記載されており,また,本件グループの当期純利益(本件純利益)が1億 8936万円,本件増減率が-34.25%である旨が記載されていた。 (以上につき,前提事実⑵ウ,甲6の1,乙12)オ平成27年12月21日昼は,B社長の不在のため,恒例のパワーランチは開催されず,原告とC取締役は,午後0時29分頃から午後1時10分頃までの間,同取締役とD取締役が新たに試算したベトナム予算(以下「修正後ベトナム予算」という。)の数値をスプレッドシートに転記する 作業を行い(甲6の2~13,甲59,60,原告本人),その結果,本件増減率は-27.47%となった(甲6の13。以下,この時点のスプレッドシートを「-27.47%のシート」という。)。 -27.47%のシートの内容は,リベロ社に関しては上記エと同内容であり,ベトナム法人に関しては,売上高が5244万円,売上原価が7 979万円,売上総利益が-2735万円,販管費が7037万円,営業利益,経常利益及び税前利益がいずれも-9773万円,税金費用が-2432万円,当期純利益が-7341万円である旨が記載され,また,本件純利益が2億0887万円,本件増減率が-27.47%である旨が記載されていた。 同日午後2時26分頃から同44分頃までの間,原告は,一人でスプレッドシートを開きながら入力内容の確認・修正作業を行い(甲6の14~26),その結果,本件純利益は2億0237万円,本件増減率は-29. 73%となった(甲6の26。以下 での間,原告は,一人でスプレッドシートを開きながら入力内容の確認・修正作業を行い(甲6の14~26),その結果,本件純利益は2億0237万円,本件増減率は-29. 73%となった(甲6の26。以下,この時点のスプレッドシートを「-29.73%のシート」という。)。これは,リベロ社の少数株主損益を 変更した結果であり,リベロ社に係るその他の数値は-34.25%のシートから変更されておらず,ベトナム法人に係る数値は-27.47%のスプレッドシートから変更されていない(甲60)。 以上の過程については,スプレッドシートの変更履歴により確認することができる(甲6,60)。なお,スプレッドシートの変更履歴の大部分 は,変更を加えた者について「削除されたユーザー」と表示されているが, スプレッドシートの修正は主に原告が行っていたこと,原告が平成28年3月25日に本件会社の取締役を辞任し(前提事実⑷イ),原告のアカウントが削除されていること(甲59)等からすれば,「削除されたユーザー」とは原告を指すものと認められる(以下におけるスプレッドシートの変更・復元等に係る事実の認定は,スプレッドシートの変更履歴に基づく ものである。)。 カ D取締役は,本件取締役会当日である平成27年12月22日午前9時8分(日本時間),Iに対し,メールで,本件ベトナム資料(更新版。甲8)を送信した(甲9)。 本件ベトナム資料の更新版は,修正後ベトナム予算の数値に基づくもの であり,2016年8月期(本件会計期間)について「売上52百万円粗利-27百万円営利-97百万円」と記載され,その内容は上記オの-27.47%のシート及び-29.73%のシートの内容と整合している。 また,事業数値計画(月次,四半期毎)について,いずれも,販管費等の 27百万円営利-97百万円」と記載され,その内容は上記オの-27.47%のシート及び-29.73%のシートの内容と整合している。 また,事業数値計画(月次,四半期毎)について,いずれも,販管費等のコストにつき精査中である旨注記されている。(甲8) キ平成27年12月22日午前10時から午前11時15分頃まで,本件取締役会が開催された。D取締役は,出張先からインターネット会議システムを用いて出席し,決議事項2(ベトナム進出)について,本件ベトナム資料(更新版)に基づき説明した。原告は,本件業績予想修正について,午前10時58分頃,修正後ベトナム予算の数値を反映した最新版である -29.73%のシートを会議室のスクリーンに投影しながら,本件純利益の予想値に係る本件増減率が-29.73%であることを前提として説明したが,その際,これ以外のシートを投影することはなかった。(前提事実⑵エ,甲6の27,甲60,乙12,原告本人)Iが作成した本件議事メモ(同人が自身の手控えとして作成したもの) には,決議事項2(ベトナム進出)に関し,E取締役(社外取締役)及び 原告から次のような発言があった旨の記載がある(甲7,原告本人)。 「やらない理由はないけど,インパクトは大きいね,1億(E」「今の読みなら,-29%で業績下方修正はいらないけどギリギリ(M」「どっちにも振れる話,成長・投資の話なので積極的に出すべき(E」「L(リベロ社)を買うと,売上は伸びて,利益は下がるというストーリ ーになる,成長を見せられる」また,協議事項1(本件業績予想修正)については,原告の説明やF監査役からの質問として次のような発言があった旨の記載がある(甲7)。 「ベトナムで1億の利益マイナスになる」「リリースはどうするの?(F 協議事項1(本件業績予想修正)については,原告の説明やF監査役からの質問として次のような発言があった旨の記載がある(甲7)。 「ベトナムで1億の利益マイナスになる」「リリースはどうするの?(F」 「L社もベトナムも本日リリース,利益に与えるインパクトは速やかに開示という体裁」ク本件会社は,本件取締役会でリベロ社取得及びベトナム進出につき承認決議がされたことを受け,平成27年12月22日午後3時,その旨をそれぞれ公表した。このうち,ベトナム進出に関しては,平成28年4月に ベトナム法人を設立する予定であること,設立初年度は立ち上げメンバーとしてベトナム全域から100名規模のテストエンジニアの採用を行い,人材育成を進めること等も公表した。また,これらの公表において,リベロ社取得及びベトナム進出に伴い本件会社の業績及び財務状況に与える影響については,今後,明らかになった時点で速やかに開示することとさ れた。(前提事実⑵エ,甲4,14,乙13,14)。 ケ原告は,広島県に帰省していた平成27年12月30日,Aら高校時代の同級生と本件同窓会に出席した。その帰りに,原告はAから「会社の状況はどう。次の決算発表はどうなの」などと聞かれて「良いっちゃいいし,悪いっちゃ悪い」「売上げはいいけど,М&Aの案件で想定よりも費用が かさんで,利益が下がってしまった。」などと答え,Aから「じゃあ,そ のまま持っておくのがいいのか,売っちゃった方がいいのか,どっちかな」と聞かれて,「売った方がいいんじゃない」と答えた。(乙17,18)コ本件取締役会終了後から平成28年1月6日までの間,スプレッドシートを用いた本件業績予想修正の公表に向けての準備作業や確認作業が行われたが,ベトナム法人 ない」と答えた。(乙17,18)コ本件取締役会終了後から平成28年1月6日までの間,スプレッドシートを用いた本件業績予想修正の公表に向けての準備作業や確認作業が行われたが,ベトナム法人に係る数値に変更はなく,本件純利益の予想値に 係る本件増減率は-29.73%のままであった(甲6の28~34,甲60,原告本人)。 同日,原告は,スプレッドシートのコメント欄に,「本内容にて業績予想修正を行うため,以後の編集は不可としました。」とのコメントを入力した(甲6の35)。これを受けて,本件会社の従業員で経営管理本部長 であるNは,同日,平成28年1月12日に予定されている本件書面決議の資料(以下「本件書面決議資料」という。)をサーバーにアップロードしたが,同資料においても,本件増減率は-29.73%となっていた(甲11,12)。 なお,本件増減率が-29.73%である場合には適時開示の対象とは ならない(関係法令⑵)が,本件業績予想修正については,少なくともリベロ社取得に伴う本件売上高の予想値は上方修正の適時開示の必要があった(前提事実⑵エ)ことから,本件純利益の予想値に係る本件増減率が-30%未満である場合にも,任意にこれを開示することとされていたものである。 サ Nは,平成28年1月7日,監査法人の担当者に対して,本件業績予想修正の公表案(本件公表案)につき確認を依頼した。本件公表案には,平成28年1月12日開催の取締役会(本件書面決議)において,最近の業績の動向,平成27年12月22日に開示したリベロ社取得及びベトナム進出等を踏まえ,本件直近予想値を修正する旨の記載があり,平成28年 8月期(本件会計期間)通期業績予想数値の修正として,親会社株主に帰 属する当期純利益(本件純利益)の 得及びベトナム進出等を踏まえ,本件直近予想値を修正する旨の記載があり,平成28年 8月期(本件会計期間)通期業績予想数値の修正として,親会社株主に帰 属する当期純利益(本件純利益)の予想値は202百万円で増減率は-29.7%である旨の記載がある。なお,本件公表案においては,通期業績予想修正の理由として,「当該子会社(ベトナム法人)の立ち上げにおいては,拠点設置,人材採用,教育,オペレーション構築,渡航駐在費用など相当程度の費用が先行することが見込まれるため,通期業績予想に新た に1億円程度の投資予算を織り込みました。」などと記載されている。(前提事実⑵カ,甲45,46)ところが,監査法人は,平成28年1月7日,本件公表案に関し,ベトナム法人について設立1年目のため繰延税金資産の計上は見送るべきである旨の指摘をした。Nからその旨の報告を受けた原告は,同日,本件会 社にいたB社長,C取締役,F監査役に口頭で報告し,監査法人から指摘されたとおりの修正をすることにつき了承を得た。(前提事実⑵カ,甲13の1,原告本人)Nは,同日,原告からの指示で,スプレッドシートを修正し,ベトナム法人につき税金費用として計上されていた-2432万円(上記オ)を0 円とした結果,本件純利益の予想値は1億7805万円,本件増減率は-38.21%となった(前提事実⑵カ,甲6の35,10,60。以下,この時点のスプレッドシートを「-38.21%のシート」という。)。 Nは,本件公表案についても,本件純利益を1億7800万円,本件増減率を-38.2%に修正した(甲47,48)。 Nは,同月8日,Iに対して,監査法人からの指摘を受けて修正した本件書面決議資料(以下,本件書面決議資料については,特に断りのない限り,修正版を指す 38.2%に修正した(甲47,48)。 Nは,同月8日,Iに対して,監査法人からの指摘を受けて修正した本件書面決議資料(以下,本件書面決議資料については,特に断りのない限り,修正版を指す。)を本件会社のサーバーにアップロードしたこと,同資料を本件役員らに送付してほしいことをメールで伝えた(甲13の2)。 これを受けて,Iは,同日,本件役員らに対し,メールで,本件書面決議 資料がアップロードされていることを伝えるとともに,本件業績予想修正 について,「前回の経営会議で内容共有していただいていますが,監査法人からの指摘によりベトナムの税効果を見合わせたため,最終の利益がその時よりも小さくなっています。」と伝えた(甲13の3)。 また,上記のとおり本件役員らに提供された本件書面決議資料は,本件純利益の予想値として1億7805万円,本件増減率として-38.2% と記載された計算表(-38.21%のシートと同内容)が掲載された一枚紙の資料であり,その左下部分に,計算表の内容の説明として「経営会議ではベトナムで繰延税金資産の計上を見込んだ数値を出しておりましたが,監査人指摘により,保守的に繰延税金資産を計上しないこととした(影響額△24百万円)ため,経営会議時で検討時よりも当期純利益の着 地見込みが下がっております。」と注記されており(以下「本件注記部分」という。),同部分は目立つように枠囲いがされていた(甲47の3,乙10)。 シ平成28年1月12日,本件書面決議において,本件決算発表等を承認するとともに,本件業績予想修正を承認し,これを同日付けで公表する旨 の取締役会決議が成立し,同日,本件決算発表と併せ,上記サのとおり修正された本件公表案のとおりの本件業績予想修正が「業績予想の修正に関するお 業績予想修正を承認し,これを同日付けで公表する旨 の取締役会決議が成立し,同日,本件決算発表と併せ,上記サのとおり修正された本件公表案のとおりの本件業績予想修正が「業績予想の修正に関するお知らせ」として公表された。なお,本件書面決議に係る取締役会議事録には,本件書面決議資料がそのまま添付された(前提事実⑵ク,乙10,11)。 ス Iは,平成28年1月15日,本件取締役会の議事録(本件議事録)及び本件書面決議に係る取締役会議事録(上記シ)をサーバーにアップロードし,本件役員らに内容の確認を依頼した。これに対し,E取締役から一部修正の意見(ただし,本件の争点とは関係しない部分である。)があったほかは,特段の意見はなかった。(乙37) 本件議事録には,協議事項1(本件業績予想修正)につき次のような記 載がある(乙12)。 「取締役Mより,別添「定時取締役会アジェンダ」のとおり,今後の業績見込みについて説明があった。 報告及び議論された内容は以下のとおりである。 1)取締役Mより,以下の説明があった。 第1四半期終了時の予算乖離状況,L社取得による影響,ベトナム進出による影響を加味して2016年1月12日の決算発表時に業績予想値の修正を行いたい。 ベトナム進出は,営業利益ベースで120百万円を押し下げるインパクトがある。 L社については,売上で500百万円押し上げが見込めるものの,利益ベースでのインパクトは薄い。 2)その他,以下の議論がなされた。 監査役Fより,リリースのタイミング全般について質問があり,取締役Mより,利益に与える影響が大きい意思決定を速や ンパクトは薄い。 2)その他,以下の議論がなされた。 監査役Fより,リリースのタイミング全般について質問があり,取締役Mより,利益に与える影響が大きい意思決定を速やかに開 示するという考えに基づき,L社取得とベトナム進出の両方について,本取締役会終了後,午後3時に開示し,2016年1月12日の第1四半期決算短信と同時に業績予想の修正を開示する旨の説明があった。」その後本件議事録には,原告を含む本件役員らが全員,押印をした(原 告本人)。 ⑵ 証券調査官らによる調査の経緯(予想値事案の着手に至るまで)ア証券調査官らによる本件会社の株式取引に係る調査は,当初,株式分割事案及びAとは別の嫌疑者による内部者取引事案を端緒として開始された(甲50の2,乙32)。なお,証券調査官らは,原告の戸籍謄本を平 成27年8月24日に取得しており(甲30),遅くともこの頃には調査 に向けた検討が進められていたことがうかがわれる。 イ本件のような内部者取引に関する調査は,大きく分けて,株式を発行した上場会社に対して重要事実の決定・発生経緯等を確認する調査(以下「発行体調査」という。)と,嫌疑者やその関係者に対して違反行為の有無等を確認する調査(以下「伝達行為調査」という。)とがある(乙31。な お,本件において,原告は,違反行為の嫌疑をかけられていたことから伝達行為調査の対象とされると同時に,本件会社の経理担当役員であったことから発行体調査の対象ともされていた。)。 質問調査は,主担当と副担当の2名の証券調査官により行うこととされているが,質問を発するのは主に主担当であり,副担当はその場でメモを 取ったり,質問調査の翌日までに質問調査メモを作 質問調査は,主担当と副担当の2名の証券調査官により行うこととされているが,質問を発するのは主に主担当であり,副担当はその場でメモを 取ったり,質問調査の翌日までに質問調査メモを作成するなどの役割を担うのが通例である。質問調査メモは,被質問者の供述を備忘的に記載するもので,質問調書と異なり,課内の情報共有のために作成されていた。(乙31,証人L,証人J)ウ証券調査官らは,平成28年1月29日及び同年2月4日,株式会社S BI証券から,Aに係る証券口座関係資料,取引明細,注文約定照会を入手した(乙19,20)。 エ株式分割事案の伝達行為調査を担当したJ調査官及びもう1名の証券調査官は,平成28年2月2日,本件会社に赴き,原告に対して調査への協力を依頼し,原告を同行して監視委員会の取調室(以下,単に「取調室」 という。)で質問調査を行った。同日,原告は,証券調査官らに対し,自身が利用しているメールサービスのほか,SNSに登録しているメールアドレスやパスワード等を提供し,これらの情報に証券調査官らがアクセスすることを承諾した。また,J調査官は,原告に対し,関係者間で口裏合わせをすることがないよう,質問調査においてどのようなことを聞かれた かなどについて関係者に話をしないように注意した。 原告に対する株式分割事案の伝達行為に係る質問調査は,平成28年2月2日から同月4日まで,取調室で行われた。原告は当初,株式分割事案に係る伝達行為を否定していたが,4日の質問調査の際,Aが原告と異なる供述をしているとJ調査官から告げられると,平成27年1月にAに対し本件会社の株式分割について伝えたことを認め,その旨の質問調書に署 名・押印した。なお,原告は,その際,同質問調書の内容 異なる供述をしているとJ調査官から告げられると,平成27年1月にAに対し本件会社の株式分割について伝えたことを認め,その旨の質問調書に署 名・押印した。なお,原告は,その際,同質問調書の内容について4度にわたり追加訂正(Aに対しインサイダー取引はすべきでないと話したことを追加する旨の訂正を含む。)を申し入れ,その旨の追加訂正がされた。 原告は,平成28年2月4日の質問調査後,B社長に対し,SNSのメッセージ機能を使って,同級生に本件会社の内部情報を伝えた旨の質問調 書へ押印したこと,本件会社の業務全てについて辞意を表明することなどを伝え,B社長に迷惑をかけたことを詫びる旨のメッセージを送信した。 (以上につき,甲23の1~3,50の1及び2,乙22,33,36,証人J)オ証券調査官らによる本件会社関係者に対する質問調査は,平成28年2 月2日から同月8日までの間に,B社長(実施日は2日,3日,5日。以下,括弧内は実施日を指す。),C取締役(2日),D取締役(5日),E取締役(8日),本件会社の従業員であるO(2日),I(2日及び5日)に対し実施された。これらは主に株式分割事案に関するものであり,予想値事案に関するものではなかった。(甲25,50) カ証券調査官らは,平成28年2月2日から同月5日まで,財務省福岡財務支局(以下「福岡支局」という。)会議室において,Aに対する質問調査を実施し,同月4日,株式分割事案の伝達行為に係る質問調書を1通作成した。また,Aに対する質問調査を進める中で,予想値事案に関しても内部者取引の疑いが生じた。(甲22,乙16,32) ⑶ 証券調査官らによる調査の経緯(予想値事案への着手後) ア上記⑵カのとおり,Aに対する質問調 予想値事案に関しても内部者取引の疑いが生じた。(甲22,乙16,32) ⑶ 証券調査官らによる調査の経緯(予想値事案への着手後) ア上記⑵カのとおり,Aに対する質問調査をする中で予想値事案に関する疑いが生じたため,J調査官が予想値事案に係る伝達行為調査の主担当を,L調査官が発行体調査の主担当を務めることとなった(乙31,33)。 イ J調査官及びK調査官は,平成28年2月8日,取調室において,原告に対し,予想値事案の伝達行為に関し質問調査を実施した。原告は,同日 付け質問調書1通に署名・押印をしたところ,同調書には,原告が,平成27年12月30日,Aに対し,本件会社の業績について,M&Aで売上げは増えるはずだが,海外進出のための投資が増えるので会社全体の利益は下方修正であるなどと伝えた状況等について記載されている。(甲50の1,乙23,32,33) ウ証券調査官らは,平成28年2月8日,福岡支局会議室において,Aに対する質問調査を実施し,同日付け質問調書1通を作成した。同調書の内容は,予想値事案に関し,平成27年12月30日の原告との会話の内容(前記⑴ケのとおり)やその後の本件株式の売却に関するものだった。(乙17) なお,証券調査官らは,平成28年2月10日にも福岡支局会議室においてAに対する質問調査を実施し,同日付け質問調書1通を作成した。その内容は株式分割事案及び予想値事案の両方にわたるものであり,そのほかにも,原告から本件会社の内部情報を聞き出して株式の取引をしたことがある旨述べるものであった。(乙18) エ L調査官及びK調査官は,平成28年2月9日,本件会社の会議室で,N,D取締役及びC取締役に対し,予想値事案に係る質問調査を実施 をしたことがある旨述べるものであった。(乙18) エ L調査官及びK調査官は,平成28年2月9日,本件会社の会議室で,N,D取締役及びC取締役に対し,予想値事案に係る質問調査を実施した。 同質問調査において,Nは,同年1月12日の本件重要事実の公表に係る資料を作成したのはNだが,数字は原告が取りまとめて内容を精査した上で固めており,Nはその固まった数字をもとに資料を作成しただけである こと,平成27年12月中旬に,原告がベトナム進出とリベロ社取得に関 し,業績予想の修正を出さないといけない,売上げは上がるだろうが,費用先行だから利益は下方修正だと言っていた記憶があること,Nはこれらの予算には関わっていないことなどを供述した。D取締役は,ベトナム予算について作成した数字を原告に相談した記憶はないが,関係資料は平成27年12月中旬頃のパワーランチで取締役らに見せたように思うこと, みんなで話し合って内容を詰めたと思うが,この内容でいくと決めたのはパワーランチか役員ミーティングの場だと思うこと,ベトナム予算について数字を作成したのはD取締役だが,取りまとめたのは原告なので細かいところはよくわからないことなどを供述した。C取締役は,平成28年1月12日公表の業績予想の修正に関する話は,パワーランチや経営会議の 場で話が出たかもしれないが,経営会議は人の配置について話す場なので,話が出るとしたらパワーランチの場だと思うこと,業績予想の修正が必要かどうかの判断はC取締役らにはできないので原告が判断しているのだと思うことなどを供述した。(甲50の3,4,7,乙27~29)L調査官及びK調査官は,上記質問調査の際に,本件会社において,本 件取締役会議事録(本件議事録)及びその添付資料である本件 ことなどを供述した。(甲50の3,4,7,乙27~29)L調査官及びK調査官は,上記質問調査の際に,本件会社において,本 件取締役会議事録(本件議事録)及びその添付資料である本件アジェンダ,本件書面決議に係る取締役会議事録及びその添付資料である本件書面決議資料を入手した(乙10,12)。本件書面決議資料には前記⑴サのとおり本件注記部分が記載されているところ,同資料に記載された本件純利益の予想値(1億7805万円)に,本件注記部分に示された監査法人の 指摘により繰延税金資産を計上しないこととしたことによる影響額(2400万円)を加算すると,2億0205万円となり,同金額を本件純利益の予想値とした場合の本件増減率はおよそ-29.8%になる。これらの資料に係る資料入手報告書を作成したのはK調査官であるが,同調査官は,同資料を編てつしただけで,内容については主担当であるL調査官が見れ ばよいと考えて特に確認しなかった。他方,L調査官は,上記質問調査を 終えて監視委員会に戻った後に同資料を確認し,本件アジェンダに記載された本件増減率が-34.25%であったことや本件書面決議資料に記載された本件増減率が-38.2%であることは認識したものの,本件注記部分の記載については特に注意を払わず,上記のような監査法人の指摘に基づく影響額の加算やこれにより得られる本件増減率の計算は行わなか った(乙10,31,証人L,証人K)。 オ L調査官及びJ調査官(以下「L調査官ら」ということがある。)は,平成28年2月10日午後0時32分頃から午後3時25分頃までの間,本件会社の会議室で,原告に対する質問調査(2月10日調査)を実施した。この質問調査は予想値事案の発行体調査に係るもので,同日の主担当 はL調査 午後0時32分頃から午後3時25分頃までの間,本件会社の会議室で,原告に対する質問調査(2月10日調査)を実施した。この質問調査は予想値事案の発行体調査に係るもので,同日の主担当 はL調査官であり,上記イのとおり先に伝達行為調査を担当していたJ調査官は,原告と初対面のL調査官を原告に紹介する役割も兼ねて,副担当として同席した。 原告は,本件会社では業績予想等の計算のためにスプレッドシートを使っていることを説明し,自己が使用していたノートパソコンの画面にスプ レッドシートを表示してL調査官と二人でその画面を見ながら,同シートの機能(変更履歴の閲覧や,過去の特定の時点のデータを復元し表示することができること等)を説明した上で,本件業績予想修正について作成された各シートの説明をした。原告は,スプレッドシートの変更履歴の中から,まず,本件重要事実の公表時点(平成28年1月12日)のものとし て-38.21%のシートを復元表示し(甲20の5),次いで,本件取締役会時点(平成27年12月22日)及びその前日の最終時点のものとして-29.73%のシートを復元表示し(甲20の6,7。なお,これらの書証では本件増減率(シート上の項目名は「乖離率」)の表示が途中で切れているが,少なくとも-20%台であったこと及び本件純利益の予 想値が2億0237万円であったことは読みとれる。),さらに,それよ り前に作成されたものとして-34.25%のシートを復元表示し(甲20の11),L調査官はこれらが復元表示された画面を原告と共に見た。 原告がこれらの表示及び説明を行ったのは2月10日調査当日の午後1時22分頃から午後2時41分頃までである。 L調査官は,原告に指示して,-38.21%のシートをプリントアウ トさせてこれに手書 告がこれらの表示及び説明を行ったのは2月10日調査当日の午後1時22分頃から午後2時41分頃までである。 L調査官は,原告に指示して,-38.21%のシートをプリントアウ トさせてこれに手書きで「1/12公表」と記載させ(乙26の3),また,-34.25%のシートについても,そこに記載された本件増減率が本件議事録に添付された本件アジェンダに記載の本件増減率(前提事実⑵ウ,エ)と同じであることを確認した上で,プリントアウトさせてこれに手書きで「12/22時点」と記載させ(乙26の6),これらの資料の 提供を受けたが,上記のとおり原告が表示して見せた-29.73%のシートについては,プリントアウト等の指示をすることはなかった。 なお,株式分割事案及び予想値事案を通じ,2月10日調査以外の質問調査においては,当該調査後に質問調書を作成した場合を除き,調査が実施された全ての本件会社関係者について,副担当が被質問者の供述の要旨 を記載した質問調査メモを作成しているところ(甲50。なお,質問調書を作成した場合であっても質問調査メモが作成されることもある。),2月10日調査においては,その実施が3時間近くに及んだにもかかわらず,質問調書又は質問調査メモは作成されておらず(ただし,L調査官により質問調書案は作成されていたが,後記キ及びケの質問調査を経て完成され, 当該案自体は残されていないため,2月10日調査においてどのような供述があったかを知ることはできない。),副担当として同席したJ調査官を含め,手控えとしてのメモ等も一切残されていない(令和元年10月17日進行協議期日経過表,被告作成の同年11月27日付け上申書参照)。 (以上につき,甲20,23の5,60,乙26,31,33, 証人L,証人J,原告本人) ていない(令和元年10月17日進行協議期日経過表,被告作成の同年11月27日付け上申書参照)。 (以上につき,甲20,23の5,60,乙26,31,33, 証人L,証人J,原告本人) 〔事実認定の補足説明〕上記認定に関し,L調査官らは,2月10日調査において,原告から-29.73%のシートを示されたことも,本件取締役会時点における本件増減率が-29.73%であったとの説明を受けたこともない旨証言している(証人L,証人J)。しかし,スプレッドシートの変更履歴からは, 2月10日調査当日の午後2時12分頃,「削除されたユーザー」が-29.73%のシートを復元した事実が明らかである(甲20の6,7)ところ,前記⑴オのとおり原告による変更履歴はその後の辞任及びアカウントの削除により「削除されたユーザー」と表示されるようになったことに加え,-29.73%のシートを復元した直前である午後2時10分頃に は-38.21%のシートが原告(書証上は「削除されたユーザー」と表示)により復元されており(甲20の5),その復元表示された画面をL調査官も一緒に見ていた事実は同調査官らも認めていることからすると,その2分後に行われた-29.73%のシートの復元も原告によって行われたものであり,その復元表示された画面をL調査官も見たことが優に認 められるものである。また,-29.73%のシートが本件取締役会時点(平成27年12月22日)及びその前日の最終時点のものである旨の説明を原告がしたことについても,2月10日調査におけるスプレッドシートの復元の順序について,まず本件重要事実の公表時点のもの(-38. 21%のシート)を復元し,次に本件取締役会時点のものを復元したこと は,原告の供述及びL調査官の証言が一致するとこ ッドシートの復元の順序について,まず本件重要事実の公表時点のもの(-38. 21%のシート)を復元し,次に本件取締役会時点のものを復元したこと は,原告の供述及びL調査官の証言が一致するところであり,-38.21%のシートの直後に復元された-29.73%のシートは本件取締役会時点(ほぼ同時に復元されたもう一つの同シートは本件取締役会の前日の最終時点)のものとして示されたと考えるのが自然である(なお,-29. 73%のシートを復元してから次の操作が行われるまでには6分間の間 隔があったため〔甲60〕,この間に原告から更に敷衍した説明がされた 可能性がある。)。以上に加え,上記のとおり2月10日調査については質問調書及び質問調査メモが作成されず,手控えとしてのメモ等も一切残されていないことに照らせば,L調査官らの証言は,その記憶を正しく喚起し得る資料に基づかずにされたものというほかなく,上記認定に反する部分は信用することができない。 カ L調査官は,祝日である平成28年2月11日,発熱してインフルエンザと診断され,翌12日から休暇を取得した。そのためK調査官がL調査官に代わって予想値事案の発行体調査に係る原告の質問調査を主担当として行うことになり,K調査官は,L調査官が作成途中であった質問調書案のデータを引き継いだ。K調査官は,主担当を引き継ぐに当たり,既に 入手済みの資料(上記エ)のうち本件議事録やその添付資料である本件アジェンダの内容については確認したが,本件書面決議に係る取締役会議事録の添付資料である本件書面決議資料については特に確認せず,本件注記部分の記載についても認識していなかった。また,上記オのとおり,J調査官は2月10日調査について質問調査メモを作成していなかったが,同 調査官に 件書面決議資料については特に確認せず,本件注記部分の記載についても認識していなかった。また,上記オのとおり,J調査官は2月10日調査について質問調査メモを作成していなかったが,同 調査官に対し,同日の質問調査の内容について確認することもしなかった。 (乙31,証人L,証人K)キ平成28年2月15日の原告に対する質問調査は,取調室において前半と後半に分けて実施されたところ,前半(午後1時15分から2時25分まで)は,J調査官及びK調査官が,株式分割事案及び予想値事案に係る 伝達行為に関し,予め作成していた質問調書案の内容を確認するためのもので,原告はその内容を確認した上で署名・押印した。同調書には,①平成27年1月2日の同窓会でA(その当時はまだ本件株式の取引をしたことがなかった。)に対し,本件会社の重要な情報を知っていることを自慢したい気持ちなどから株式分割の予定を伝えたが,その一方でAには本件 株式の取引をしてほしくないと思っていたこと,②その後,同年3月及び 11月にも電話でAに対し本件会社の内部情報を伝えたこと,③同年12月30日に本件同窓会の会場に向かう前,原告の実家を訪れたAに対し,本件会社は売上げは増えるはずだが海外進出のため投資が増え,会社全体の利益としては下方修正になること,公表前に売った方がよいことなどを伝えたこと,④今回の件の責任を取って本件会社の取締役の職を辞し,本 件会社からのどのような処分も受け入れるつもりであり,現在,処遇について本件会社に一任していることなどが記載されていた。(甲23の6,乙24,32,証人K)後半(午後2時29分から午後6時15分まで)は,J調査官と入れ替わりで,同日,職場に復帰したL調査官が取調室に入り,K調査官が主担 当, 。(甲23の6,乙24,32,証人K)後半(午後2時29分から午後6時15分まで)は,J調査官と入れ替わりで,同日,職場に復帰したL調査官が取調室に入り,K調査官が主担 当,L調査官が副担当として,原告に対し,業績予想の修正の流れ等に係る質問調査を行った(以下,K調査官とL調査官を併せて「K調査官ら」といい,同日の後半の質問調査を「2月15日調査」ということがある。)。 原告は,2月15日調査において,①「12月中旬には,私がベトナムの費用を加味した修正後の業績予想をB社長に説明し『ベトナムを本気でや ると,当社の営業利益が3億ぐらいになってしまいます。』というと,B社長は『仕方がない。やるべきだよね。(会社を大きくしていくためには)今は耐えるときだ』などの返答であった。当社は営業利益率を10%で計画しており,3億円というのは10%を確保できる最低ラインである。」,②「12月22日の取締役会の場で,ベトナム現地法人設立及びリベロ・ プロジェクトの子会社化について決議しているが,同時に私から,業績予想修正を予定していることも説明している。その際には,各取締役からは特段異議や意見等はなかったと思う。」,③「東証の適時開示基準の10%,30%というのは,役員の中で意識しているのは,私ぐらいであるが,各役員としては,今回のベトナムとリベロを追加することにより,売上高1 0%増というのは確実であったので,12月の時点でも業績修正が必要で あることは認識していたと思う。当期利益の30%については,30%の基準を満たすかどうかは別として,下方修正はやむを得ないと認識していたと思う。」,④「この12月22日の取締役会の以前にもパワーランチなどでベトナムの進捗状況などについても話をしており,業績の下方修正 を満たすかどうかは別として,下方修正はやむを得ないと認識していたと思う。」,④「この12月22日の取締役会の以前にもパワーランチなどでベトナムの進捗状況などについても話をしており,業績の下方修正が必要であることなども話していたと思う。」,⑤「ベトナムの計数は, なかなか固まらなかったが,年明け1月4日のパワーランチか,1月7日には,少なくともB社長には,計数が確定したことを説明していると思う。」,⑥「12月22日付取締役会説明時の業績予想修正値と1月12日の公表値との差異は,ベトナムにかかるものがほとんどで,直近において,人材採用のタイミングや直近家賃などを考慮し,若干計数が修正され たのだと思う。また,監査法人のトーマツから税金費用の計上を否定され修正されたこともあったように思う。」などと供述した。K調査官は,原告の上記供述のうち,パワーランチで業績予想の下方修正について話をしたという部分(上記④)は,明確な記憶に基づくものというよりは,あまり記憶にない中で考えながら供述しているという印象を持った。K調査官 らは,本件取締役会終了後から本件重要事実の公表時までの業績予想の修正の経緯についてはそれ以上特に確認しなかった。同日の後半の質問調査では,質問調書は作成されず,L調査官による質問調査メモが作成された。 (甲23の7,50の1,乙31,32,証人L,証人K)。 ク証券調査官らは,平成28年2月15日,監視委員会の会議室において, B社長に対し質問調査を行ったが,作成した質問調書は,株式分割事案に係る株式分割の決定・公表に至る経緯についてのものであり(甲24),そのほか聴取した内容は,再発防止策や原告に対する処分,対外公表等についてであって,予想値事案に関する質問調査は行われなかった(甲50の2)。 の決定・公表に至る経緯についてのものであり(甲24),そのほか聴取した内容は,再発防止策や原告に対する処分,対外公表等についてであって,予想値事案に関する質問調査は行われなかった(甲50の2)。 ケ平成28年2月17日は,K調査官が主担当,L調査官が副担当として, 予想値事案の発行体調査に係る原告に対する質問調査を,午後3時49分から午後5時までの約1時間にわたり実施した(以下「2月17日調査」という)。K調査官は,L調査官から上記カのとおり引き継いだデータを用い,2月15日調査の結果を踏まえて質問調書案を作成していたところ,L調査官もその内容を事前に確認していた。K調査官は質問調書案の内容 を原告に確認させ,署名・押印をさせて,2月17日付け調書を作成した(同調書の概要は,前提事実⑶エのとおり。)。上記キのとおり,2月15日調査における原告の供述は,本件取締役会時点では,本件売上高の予想値に係る増減率は適時開示が必要となる10%の基準値を超えることが確実である一方,本件純利益の予想値に係る本件増減率については,- 30%の基準値を超えるかどうかは別として,下方修正はやむを得ないと認識されていたこと(上記キ③),本件取締役会時点の予想値と公表された予想値との差異は,ベトナム法人に係る費用の修正のほか,監査法人から税金費用の計上を否定されたことによるものであること(上記キ⑥)と理解されるものであったが,これに対し,2月17日付け調書では,①本 件純利益の予想値を1億8900万円(本件増減率は-34.25%)とする試算による資料(本件アジェンダに記載された本件業績予想修正に係る部分〔前提事実⑵ウ参照〕)に基づき,平成27年12月21日のパワーランチで説明し,全取締役から了承が得られたため,翌日の %)とする試算による資料(本件アジェンダに記載された本件業績予想修正に係る部分〔前提事実⑵ウ参照〕)に基づき,平成27年12月21日のパワーランチで説明し,全取締役から了承が得られたため,翌日の本件取締役会に業績予想の修正を付議し,本件取締役会で了承された,②その後,平 成28年1月4日頃,C取締役からベトナム法人の設立に関して当初計画より保守的に数値を積み上げるなどした結果,数値の微調整があったとの連絡を受けたため,この微調整を反映させた結果,本件純利益の予想値は1億7800万円(本件増減率は-38.2%)となった,③上記微調整は,大勢に影響がなく,適時開示が必要なことに変わりはなかった旨が記 載される一方,監査法人の指摘による修正については記載されなかった。 (甲21,23の8,乙31~32,証人L,証人K)コ本件会社は,株式分割事案及び予想値事案に係る証券調査官らの調査が開始された後,弁護士等を含む特別調査委員会を組織し,原告に係る証券調査官らによる一連の質問調査が終了した平成28年2月17日以降,特別調査委員会により原告に対する調査を行った。もっとも,これらは2月 17日付け調書を含む一連の質問調書に原告の署名・押印がされた後であり,原告は事実関係を積極的に争わなかった。(前提事実⑷イ,乙30,原告本人)サ本件会社は,平成28年3月25日,監視委員会が本件勧告公表(前提事実⑷ア)を行ったことを受け,勧告の概要及び本件会社の対応について 発表した(乙30)。同発表の内容は,勧告を受けた事由の概要を示した上,本件会社においても特別調査委員会を組織して事実確認を行った結果,原告が重要事実に該当し得る情報を開示前に社外に漏らした事実を認めたため,深刻な内部規程違反があったものとし た事由の概要を示した上,本件会社においても特別調査委員会を組織して事実確認を行った結果,原告が重要事実に該当し得る情報を開示前に社外に漏らした事実を認めたため,深刻な内部規程違反があったものとして,同月11日より原告の一切の業務執行を停止したというものであり,原告の実名と肩書を明記し ていた。また,同発表においては,原告が社外に漏らしたことを認めた情報は,平成28年1月12日に開示した業績予想の下方修正に係る情報(監視委員会から違反行為として認定された内容)と,平成27年1月9日に開示した株式分割に係る情報(内部規程違反として認定した内容)であるとされていた。 本件会社は,平成28年3月25日に開催した臨時取締役会において原告についてCFO兼経営管理本部長の職を解任し,原告は同日付けで本件会社の取締役を辞任した(甲51,乙30)。 ⑷ 本件審判手続の経緯ア本件審判手続においては,平成28年7月21日から同年12月9日ま での間に全4回の準備手続が実施された(甲27)。 イ原告は,平成28年8月31日に提出した準備書面(乙34)において,平成27年12月21日の時点でベトナム予算については荒い計画しかなく,これをベースに業績予想の試算をすると本件増減率が-30%を超えていたこと,ベトナム進出に係る投資コストを削減すれば下方修正しないことは可能だと思っていたこと,一方,平成28年1月12日の取締役 会が書面決議で行う予定とされていたことから,万一,下方修正を免れないことになった場合に不意打ち的な決議になることを避けるため,本件取締役会の段階で,下方修正が生じる可能性があることや,仮に下方修正が生じることになったとしてもそれを発表することについて協議しておこうと考えた た場合に不意打ち的な決議になることを避けるため,本件取締役会の段階で,下方修正が生じる可能性があることや,仮に下方修正が生じることになったとしてもそれを発表することについて協議しておこうと考えたことなどを主張し,また,平成27年12月21日のパワーラ ンチで資料(本件アジェンダに記載された本件業績予想修正に係る部分〔前提事実⑵ウ参照〕)を提示し,B社長を含む取締役に対し,同資料中の数値はC取締役が12月中旬頃までに試算した荒い数字をベースに作ったもので,あくまで最悪の状況を想定しているが,ベトナム法人の計画及び予算が確定すればここまで下回らないと説明したこと,2月17日付 け調書にあるような「業績予想の下方修正は免れない状況である」という説明(前提事実⑶エ②参照)はしていないことなどを主張した(乙34)。 ウ原告は,平成28年11月21日頃,本件会社の協力を得て,NやIからスプレッドシートの変更履歴,本件議事メモのスクリーンショット等の資料を入手し,同月25日,これらの資料及び同日付けの原告の陳述書(甲 29)等を証拠として提出し,本件取締役会の前日である平成27年12月21日に本件増減率として-29.73%の数値が算出されていたことなど,スプレッドシートに基づく主張を始めた。原告は,上記陳述書において,本件会社から上記資料の提供を受けて,適時開示が不要な-29. 73%の本件増減率を仮に算出していた時期が同月30日より前だった ことをようやく思い出した旨説明した。(甲6,29,乙35,原告本人) エ平成28年12月9日,第4回準備手続が実施され,原告は,原告本人及び本件証券調査官らの審問の申出をしたが,本件証券調査官らの審問申出については採用されず,準備手続は終結した(甲27の4,弁 エ平成28年12月9日,第4回準備手続が実施され,原告は,原告本人及び本件証券調査官らの審問の申出をしたが,本件証券調査官らの審問申出については採用されず,準備手続は終結した(甲27の4,弁論の全趣旨)。 オ平成29年1月27日,第1回審判期日が開かれた。原告本人の審問が 行われ,本件審判手続は終結した(甲27の5)。 本件審判官らが作成し金融庁長官に提出された本件処分案(前提事実⑷オ)には,①原告の審判段階における供述(本件取締役会の前日の作業の結果,本件純利益の予想値に係る本件増減率は-29.73%にとどまり,本件取締役会でも,原告から,本件業績予想の利益の着地見込みとして適 時開示が必要な30%以上の下方修正とはならない旨の発言があったこと,かかる数値はその後も維持されて平成28年1月6日にいったん確定数値として扱われたが,翌7日になって,監査法人からベトナム法人の繰延税金資産の計上は見送るべきである旨の指摘を受けたため,かかる指摘により修正したところ,本件増減率が-38.2%となったことなど)は 各資料に裏付けられ,基本的に信用できるものであり,2月17日付け調書のうちこれに反する部分は採用しない,②一方,本件取締役会において,ベトナム法人の営業利益やその影響については,数値が変動することを前提に説明されていたことがうかがわれ,ベトナム法人の営業利益の見通しに伴う本件純利益の予想値については,社内の一試算に基づく見通しとし て報告されたにとどまり,事前に共有された本件アジェンダの記載に基づく予想値を否定するものではなかったものといえる,③これらの点を考慮すると,本件取締役会で了承された本件純利益の予想値は,幅のあるものであったと評価でき,本件アジェンダに約34.25 ダの記載に基づく予想値を否定するものではなかったものといえる,③これらの点を考慮すると,本件取締役会で了承された本件純利益の予想値は,幅のあるものであったと評価でき,本件アジェンダに約34.25%減少する予想値が具体的に記載されていたことからすると,本件取締役会で了承された本件 純利益の予想値は,約29.73%から約34.25%の減少という幅で, 基準値の前後にまたがっているような状態で了承がされたものと評価できる,④また,本件重要事実の公表が書面決議によってされていることなどからすれば,実質的な最終協議の場であった本件取締役会において,既に,適時開示として下方修正を行うことも了承されていたとみるほかなく,本件取締役会においては,下方修正につき,予想値の修正公表が避けられ ない事態の報告がされて了承されていたと評価することもできる,⑤以上によれば,本件重要事実である差異が生じた時期は,本件取締役会時点といえ,平成27年12月30日以前であると認められる旨が記載されている(甲1)。 2 争点⑴(平成27年12月30日以前に本件重要事実が発生したか否か)に ついて⑴ 本件においては,被告が原告のAに対する本件重要事実の伝達行為があったと主張するのが平成27年12月30日であるから,同日以前に本件重要事実が発生したか否かが問題とされているところ,具体的には,同月22日の本件取締役会における本件業績予想修正の了承により本件重要事実が発生 したか否かが問題とされている。なお,本件純利益の予想値の公表が決定されたのは平成28年1月12日の取締役会(本件書面決議)である(前提事実⑵ク)が,本件純利益の予想値に係る本件増減率が基準値以上となることにつき本件会社の実質的な意思決定がされたのは本件書面決議より前であ は平成28年1月12日の取締役会(本件書面決議)である(前提事実⑵ク)が,本件純利益の予想値に係る本件増減率が基準値以上となることにつき本件会社の実質的な意思決定がされたのは本件書面決議より前であることを前提に,本件取締役会においてそのような意思決定がされたか否か, すなわち,本件取締役会において本件増減率が基準値以上となる本件純利益の予想値を「新たに算出した」(金商法166条2項3号)といえるか否かが問題とされているものである。 そこで,以下,この点について検討する。 ⑵ 金商法167条の2第1項,166条2項3号,取引府令51条3号は, 上場会社等又はその属する企業集団の純利益に係る新予想値について,直近 予想値を基準とした増減率が±30%(基準値)以上である場合(変動率基準を満たす場合)で,かつ,変動幅基準を満たす場合に,直近予想値と新予想値との間にそのような差異が生じたことをもって同法166条1項に定める重要事実とし,これを職務に関し知った当該上場会社等の役員が,重要事実の公表前に他人に利益を得させ又は損失の発生を回避させる目的をもって これを伝達することを禁止している(関係法令等⑵参照)。そして,この重要事実が発生した場合において,上記の禁止規定に違反する行為があったときには,金商法175条の2第1項による課徴金納付命令の対象となるほか,同法197条の2第14号による刑事罰の対象にもなる。 これは,純利益に係る直近予想値と新予想値との間に差異が生じたとの事 実が投資者の投資判断に及ぼす影響に鑑み,上場会社等の役員に対し,かかる事実に関する公表前の伝達行為を禁止することによって,当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等の取引の公正や,投資者の保護を図ろうとするものであるとともに( に鑑み,上場会社等の役員に対し,かかる事実に関する公表前の伝達行為を禁止することによって,当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等の取引の公正や,投資者の保護を図ろうとするものであるとともに(金商法1条参照),課徴金納付命令や刑事罰の対象とされる違反行為の内容を,投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なもの(す なわち,上記差異が上記各基準を満たすもの。)に限定したものであると解される。なお,上場規程等において,純利益の予想値に係る増減率が±30%以上となった場合に,その内容に係る情報の適時開示を義務付けている(関係法令等⑵)のも,このような情報が投資者の投資判断に及ぼす影響の大きさを考慮したものと解される。 ⑶ 金商法167条の2第1項等の上記⑵の趣旨に鑑みると,上場会社等において増減率が基準値以上となる純利益の予想値を「新たに算出した」(同法166条2項3号)といえるためには,当該予想値に係る業績予想修正につき当該上場会社等における正式な決定(本件では,本件書面決議による本件業績予想修正の承認)を必ず経なければならないものではなく,当該上場会社 等における実質的な意思決定がされれば足りるというべきである。 もっとも,上場会社等における業績予想修正についての実質的な意思決定としては,抽象的なものから具体的なものまで様々な内容を想定し得るところ,その内容によって,当該意思決定に係る情報が投資者の投資判断に及ぼす影響の大きさも異なると考えられることや,上記⑵のように課徴金納付命令や刑事罰の対象とされる違反行為の認定に関して相応の慎重さが要請され ることに鑑みれば,上場会社等において増減率が基準値以上となる純利益の予想値を「新たに算出した」場合に該当する実質的な意思決定がされたといえるためには,純利益の に関して相応の慎重さが要請され ることに鑑みれば,上場会社等において増減率が基準値以上となる純利益の予想値を「新たに算出した」場合に該当する実質的な意思決定がされたといえるためには,純利益の予想値に係る業績予想修正についての意思決定が,単に増減率が基準値以上となる抽象的な可能性の下に行われたというだけでは足りず,少なくとも,増減率が基準値以上となることにつき具体的な根拠 に基づいて行われたと認められることを要するというべきである。 ⑷ これを本件について見ると,認定事実⑴によれば,本件取締役会においては,その前日に算定された予算数値に基づき,本件純利益の予想値に係る本件増減率が-29.73%であることを前提に協議がされ,既に基準値を超え上方修正の適時開示を要することが確実となっていた本件売上高の予想値 と併せて,本件決算発表と同時に公表する旨が了承されたことが認められ,この時点において,本件増減率につき-30%以上の具体的な数値をもって公表する旨の了承がされた事実は認められない。 なお,本件取締役会において説明に用いられた本件ベトナム資料には,販管費等のコストにつき精査中である旨が付記されており(認定事実⑴カ),こ の時点のベトナム予算(修正後ベトナム予算)にはなお修正の余地があったと見ることもできるが,本件書面決議までの間にベトナム予算に係る修正が行われるか否かについては本件取締役会時点においては必ずしも明らかであったとはいえず,実際には,本件取締役会の後もベトナム予算の修正は行われず,本件書面決議直前の平成28年1月7日に本件公表案の確認をした監 査法人からベトナム法人につき繰越税金資産の計上を見送るべきである旨の 指摘を受けて修正をした結果,本件増減率が-38.21%となり基準値を超 28年1月7日に本件公表案の確認をした監 査法人からベトナム法人につき繰越税金資産の計上を見送るべきである旨の 指摘を受けて修正をした結果,本件増減率が-38.21%となり基準値を超えることになったものである(認定事実⑴コ,サ)。また,仮に,本件取締役会時点においてベトナム予算に係る修正が予定されていたと見ることができるとしても,修正の際にコストの合理化を図るなどして,純利益の予想値が本件取締役会時点よりも向上する(本件増減率が-29.73%よりも改 善する)可能性も十分に考えられたものであり,現に,本件取締役会の前日におけるベトナム予算の修正の結果,本件増減率は-34.25%から-29.73%へと大きく改善していることが認められる(認定事実⑴ウ,オ)。 一方,本件取締役会において,ベトナム予算の更なる修正により本件増減率の悪化が見込まれるような事情が協議に上っていたとはうかがわれない。 以上に照らすと,本件取締役会後におけるベトナム予算の修正の余地を考慮に入れるとしても,本件取締役会時点では,本件増減率が基準値以上となる抽象的な可能性があったと認められるにとどまり,本件増減率が基準値以上となる具体的な根拠に基づいた意思決定が行われたと認めることはできないから,本件取締役会において,本件増減率が基準値以上となる本件純利益 の予想値を「新たに算出した」場合に該当する実質的な意思決定がされたということはできない。 したがって,本件取締役会時点では,本件重要事実が発生したとは認められず,他に,平成27年12月30日よりも前に本件重要事実が発生したことをうかがわせる証拠もないから,同日以前に本件重要事実が発生したと認 めることはできない。 ⑸ 被告の主張について被告は以下のとおり主張するが, りも前に本件重要事実が発生したことをうかがわせる証拠もないから,同日以前に本件重要事実が発生したと認 めることはできない。 ⑸ 被告の主張について被告は以下のとおり主張するが,各主張について説示するとおり,いずれの主張も採用することができない。 ア被告は,本件取締役会において,本件増減率が-34.25%となるこ とについて了承された旨主張する。 しかし,被告が指摘する本件増減率-34.25%は,C取締役が試算した修正前ベトナム予算に基づき原告が計算し,本件取締役会の議事資料である本件アジェンダに掲載したものである(認定事実⑴イ,ウ)ところ,修正前ベトナム予算は暫定的に試算されたもので,追って精査したものを作成することが予定されており,本件取締役会の前日である平成27年1 2月21日午後にC取締役及びD取締役が新たに試算した修正後ベトナム予算に基づき原告が計算した結果,本件増減率は-29.73%となり(同オ),本件取締役会において原告が今後の業績見込みについて報告する際にも,-29.73%のシートのみを会議室のスクリーンに投影し,-34. 25%のシートを含む他のシートを投影することはなかったものである (同キ)。そして,本件議事メモに記載された原告の発言内容(「今の読みなら,-29%で業績下方修正はいらないけどギリギリ」)や,認定事実⑴コ及びサのとおり,本件取締役会終了後,平成28年1月6日までの間,スプレッドシートの本件増減率は-29.73%のままで変化はなく,同月7日に監査法人に確認を依頼した当初の本件公表案にも本件増減率とし て-29.73%の数値が記載されていたことを踏まえれば,本件取締役会において,本件増減率が-29.73%の見込みであることが説明された事実は認められる た当初の本件公表案にも本件増減率とし て-29.73%の数値が記載されていたことを踏まえれば,本件取締役会において,本件増減率が-29.73%の見込みであることが説明された事実は認められるが,-34.25%など,-30%以上となる具体的な数値が挙げられ,これが了承された事実は認めることはできない。 この点につき,被告は,本件アジェンダに掲載された本件増減率が-3 4.25%である旨の記載については本件ベトナム資料と異なり差し替えられていないこと,本件取締役会の結果を記載した本件議事録においても本件アジェンダと同様の記載があることを指摘する。 しかし,本件ベトナム資料につき本件取締役会当日の午前9時8分に,D取締役から取締役会担当であるIに対し更新版が送信された(認定事実 ⑴カ)のは,ベトナム進出が本件取締役会における重要な決議事項であっ たことから,その判断の基礎となるべき修正後ベトナム予算を記載した本件ベトナム資料は本件取締役会の直前であっても他の役員らと共有しておきたいとの理由によるものと考えられる。これに対し,本件業績予想修正は本件取締役会の協議事項の一つに過ぎないものであった上,本件アジェンダに記載された本件業績予想修正に係る数値は,本来はベトナム予算の 修正と併せて修正されるべきもので,本件ベトナム資料の更新版の送信が上記のとおり本件取締役会の直前となったことから,同送信を受けて本件業績予想修正に係る数値の差替えを行う時間的余裕はなかったものといえる。これに加え,本件取締役会ではスプレッドシートを会議室のスクリーンに投影して説明することが予定されていたから,本件アジェンダを差し 替えなくても,最新の数値に係るスプレッドシート(-29.73%のシート)を投影すれば,本件取締役会に トを会議室のスクリーンに投影して説明することが予定されていたから,本件アジェンダを差し 替えなくても,最新の数値に係るスプレッドシート(-29.73%のシート)を投影すれば,本件取締役会における協議に支障はなく,この点に照らしても,原告が本件アジェンダの掲載内容を差し替えなかったことが不自然であるとはいえない。 また,本件議事録に本件アジェンダと同内容の記載があることについて も,本件会社においては,取締役会議事録に出席役員に共有された議事次第・議事資料(アジェンダ)を添付する慣行となっていたことがうかがわれるところ,本件においては,本件アジェンダが差し替えられなかったことから,事務担当者において本件アジェンダをそのまま添付して本件議事録を作成した結果,本件議事録に本件アジェンダの内容に基づく誤った記 載が残ってしまったものと認められる。このことは,本件議事録において本件アジェンダの記載を引用した部分である「ベトナム進出は,営業利益ベースで120百万円を押し下げるインパクトがある」との記載が,本件取締役会で報告された修正後ベトナム予算に基づく数値(約1億円)と一致しないこと(認定事実⑴エ,オ,ス)からも裏付けられているといえる。 なお,本件議事録の内容につき本件役員らに確認依頼がされたのは,本件 業績予想修正の公表がされた後の平成28年1月15日であり(同シ,ス),既に公表された本件業績予想修正についてその公表に係る取締役会の了解が得られた旨が記載された部分について,原告を含む本件役員らが特段の関心を払わなかったとしても不自然,不合理ではない。 以上によれば,本件アジェンダが差し替えられなかったことや,本件議 事録に本件アジェンダと同内容の記載があることは,本件取締役会において を払わなかったとしても不自然,不合理ではない。 以上によれば,本件アジェンダが差し替えられなかったことや,本件議 事録に本件アジェンダと同内容の記載があることは,本件取締役会において本件増減率が-34.25%となることを了承したことの根拠となるものではなく,かかる事実を認めることはできない。 イ被告は,本件ベトナム資料に「※販管費等コスト精査中」との記載があることや,本件議事メモにおける「今の読みなら,-29%で業績下方修 正はいらないけどギリギリ」という原告の発言及びそれを受けたE取締役のどちらにも振れる話である旨の発言から,-29.73%という数値は確定した数値ではなく,むしろそれ以上の数値となる可能性が明確に織り込まれていたものというべきであり,本件アジェンダに記載された-34. 25%の増減率も否定されていなかったと主張する。 しかし,本件アジェンダに掲載されていた本件増減率が-34.25%である旨の記載は,上記アのとおり,修正前ベトナム予算に基づくものであるところ,同予算は早い段階で暫定的に試算されたものであって,その後の精査の結果,修正後ベトナム予算に基づき本件増減率が-29.73%であるとされたのであるから,修正前の暫定的な試算である-34. 25%という数値について本件取締役会における協議の対象とされていたと認めることはできず,本件増減率につき-30%以上の具体的な数値をもって公表する旨の了承がされた事実は認められない。また,本件取締役会時点において修正後ベトナム予算につき事後的な修正の見込みがあったとしても,本件増減率が基準値以上となる抽象的な可能性があったと 認められるにとどまることは上記⑷に説示したとおりであり,被告が主張 するように本件増減率が基準値以上とな 見込みがあったとしても,本件増減率が基準値以上となる抽象的な可能性があったと 認められるにとどまることは上記⑷に説示したとおりであり,被告が主張 するように本件増減率が基準値以上となる可能性が明確に織り込まれていたといえるものではない。(なお,本件取締役会において,ベトナム予算につき具体的に修正が予定されていることやその内容について報告がされていたものではなく,実際にも,本件取締役会終了後,修正後ベトナム予算については,「精査中」とされていた販管費を含め,更なる修正は されなかったものである。)。むしろ,本件取締役会後においても本件増減率につき-29.73%という数値が維持され,これに基づき本件書面決議資料及び本件公表案が作成されたことや,平成28年1月7日の監査法人の指摘に係る繰延税金資産の計上について本件取締役会では全く問題とされていなかったことに照らすと,本件取締役会において本件増減率の 具体的な数値として了承されたのは-29.73%のみであったというほかない。したがって,これらの点においても被告の上記主張は採用することができない。 ウ被告は,監査法人の指摘を受けて本件増減率が-38.2%になったにも関わらず,その数値の当否について改めて実質的な議論がされた形跡も なく本件書面決議が行われていることを根拠に,-38.2%という増減率も本件取締役会における想定の範囲内であったと主張する。 しかし,上記⑷のとおり,本件取締役会においては,本件純利益の予想値に係る本件増減率が-29.73%であることを前提に,既に基準値を超え上方修正の適時開示を要することが確実となっていた本件売上高の 予想値と併せて,本件決算発表と同時に公表する旨が了承されており,その公表に係る取締役会決議を書面決議で行 提に,既に基準値を超え上方修正の適時開示を要することが確実となっていた本件売上高の 予想値と併せて,本件決算発表と同時に公表する旨が了承されており,その公表に係る取締役会決議を書面決議で行うことも既定路線となっていたものである(認定事実⑴ウ)ところ,監査法人の指摘はベトナム法人の繰延税金資産の計上に関するもので,その指摘の当否について本件役員らにおいて実質的な議論をすることは想定されなかったものといえる。これ に加え,監査法人から上記指摘を受けた時点では公表予定日が5日後に迫 っており,本件役員らが参集する場を設けるのも困難であったこと,B社長ほか主立った役員に対しては,原告から口頭で報告し,監査法人の指摘のとおりの修正を行うことにつき了承を得たこと(認定事実⑴サ)などを併せ考慮すると,本件増減率が-38.2%であるとして本件業績予想修正を公表することにつき本件役員らによる実質的な議論を経ないまま本 件書面決議が行われたとしても不自然であるとはいえず,このように本件書面決議が行われたことをもって,-38.2%という増減率が本件取締役会において想定の範囲内とされていたことを根拠付けることはできない。 ⑹ 小括 以上のとおりであるから,被告が原告のAに対する伝達行為があったと主張する平成27年12月30日以前に本件重要事実が発生した事実は認められず,これに反する被告の主張はいずれも採用することができない。そうすると,争点⑵から⑷までについて判断するまでもなく,本件処分はその要件を欠く違法なものであるから,取り消されるべきである。 3 争点⑸(国賠法1条1項所定の違法の有無)について⑴ 公務員による公権力の行使に当たる行為が国賠法1条1項の適用上違法と評価されるのは,当該公務員が職 り消されるべきである。 3 争点⑸(国賠法1条1項所定の違法の有無)について⑴ 公務員による公権力の行使に当たる行為が国賠法1条1項の適用上違法と評価されるのは,当該公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と上記行為をしたと認め得るような事情がある場合に限られると解するのが相当である(最高裁平成元年(オ)第930号等同5年3月11日 第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁,最高裁平成17年(受)第530号同18年4月20日第一小法廷判決・集民220号165頁参照)。 ⑵ 本件証券調査官らの調査についてア L調査官の行為L調査官は,平成28年2月9日から予想値事案の発行体調査に関与 し,同日には主担当として関係者に対する質問調査を実施し,原告に対 する2月10日調査でも主担当を務め,その後病休したことによりK調査官と主担当を交替した後も,病気の回復後,原告に対する2月15日調査及び同月17日調査において副担当を務めた(認定事実⑶エ~キ,ケ)。 L調査官は,本件会社の会議室で行われた平成28年2月9日の関係 者に対する質問調査の際に,本件議事録及びその添付資料である本件アジェンダ,本件書面決議に係る取締役会議事録及びその添付資料である本件書面決議資料を入手し,同日中にその内容を確認して,本件アジェンダに記載されている本件増減率-34.25%と本件書面決議資料に記載されている本件増減率-38.2%とで,数値が異なることは認識 していた(認定事実⑶エ)。一方,本件書面決議資料には,本件増減率-38.2%に係る計算表の左下に,目立つように枠囲いがされて,「経営会議ではベトナムで繰延税金資産の計上を見込んだ数値を出しておりましたが,監査人指摘により,保守的に繰延 決議資料には,本件増減率-38.2%に係る計算表の左下に,目立つように枠囲いがされて,「経営会議ではベトナムで繰延税金資産の計上を見込んだ数値を出しておりましたが,監査人指摘により,保守的に繰延税金資産を計上しないこととした(影響額△24百万円)ため,経営会議時で検討時よりも当期純 利益の着地見込みが下がっております。」と記載した本件注記部分が存在していた(同⑴サ)から,本件書面決議資料を通常の注意力をもって読めば,本件増減率が-38.2%となった原因は監査法人の指摘により繰延税金資産を計上しないこととしたことによるものであること,その影響額が-2400万円であったことを当然に認識し得ると同時に, 上記影響額が上記計算表に記載された本件純利益の予想値約1億7805万円の1割を超えることも容易に理解し得たところである。そこで,上記影響額を加算して得られる金額を本件純利益の予想値として本件直近予想値(2億8800万円)で除すると,その値は約0.702(すなわち本件増減率は-29.8%)となるから,かかる計算を行うことに より,少なくとも,監査法人の指摘を受ける前に本件会社が公表しよう としていた本件増減率が,基準値に近接しながらもこれを下回るものであったことは,容易に認識し得たものといえる。しかし,L調査官は,本件書面決議資料を確認した際,本件注記部分の記載について注意を払わなかったため,本件増減率が-38.2%となった原因や監査法人の指摘による影響額の大きさに気付くことができなかった(同⑶エ)。 次に,L調査官は,主担当として行った2月10日調査において,原告からスプレッドシートの変更履歴について説明を受けた際,本件取締役会時点の本件増減率を示すスプレッドシートとして-29.73%のシートの復元表 査官は,主担当として行った2月10日調査において,原告からスプレッドシートの変更履歴について説明を受けた際,本件取締役会時点の本件増減率を示すスプレッドシートとして-29.73%のシートの復元表示を示された(認定事実⑶オ)のであるから,本件アジェンダに記載された本件増減率-34.25%との違いが生じているこ とを当然認識することができた。そこで,かかる数値の違いが生じた理由につき,その場で原告から詳しい説明を聞き,あるいは,原告の協力を得てスプレッドシートの変更履歴を更に詳しく調べることも可能であったが,L調査官は,かかる数値の違いを取り上げなかったばかりか,-29.73%のシートについて原告にプリントアウトさせることもな く,-38.21%のシート及び-34.25%のシートのみについてプリントアウトの指示をした(同⑶オ)。 イ K調査官の行為K調査官は,L調査官に代わって予想値事案の発行体調査に係る原告の質問調査の主担当となり,2月15日調査及び同月17日調査を実施 し,副担当となったL調査官と共に2月17日付け調書を作成した(認定事実⑶カ,キ,ケ)。 K調査官は,主担当を引き継ぐに当たり,既に入手済みの資料のうち本件議事録及び本件アジェンダの内容については確認したが,本件書面決議資料については確認せず,本件注記部分の記載についても認識して いなかった(認定事実⑶カ)。 また,K調査官は,2月15日調査において,原告が,①本件取締役会時点では,本件売上高の予想値に係る増減率は適時開示が必要となる10%の基準値を超えることが確実である一方,本件純利益の予想値に係る本件増減率については,-30%の基準値を超えるかどうかは別として,下方修正はやむを得ないと認識されていたこと,②本件取締役会 る10%の基準値を超えることが確実である一方,本件純利益の予想値に係る本件増減率については,-30%の基準値を超えるかどうかは別として,下方修正はやむを得ないと認識されていたこと,②本件取締役会 時点の予想値と公表された予想値との差異は,ベトナム法人に係る費用の修正のほか,監査法人から税金費用の計上を否定されたことによるものであることを供述していたにもかかわらず,これと異なる内容の2月17日付け調書を作成し,①本件純利益の予想値を1億8900万円(本件増減率は-34.25%)とする試算に基づき,本件取締役会で本件 業績予想修正の了承を得たこと,②平成28年1月4日頃,C取締役からベトナム予算に関する微調整の連絡を受けたため,この微調整を反映させた結果,本件純利益の予想値は1億7800万円(本件増減率は-38.2%)となったが,この微調整は,大勢に影響がなく,適時開示が必要なことに変わりはなかった旨を記載したものである(認定事実⑶ キ,ケ)。 かかる2月17日付け調書の内容は,本件書面決議資料における本件注記部分の記載から容易に認識し得る監査法人の指摘による予想値の修正(上記ア)と整合しないばかりでなく,2月15日調査における原告の上記供述内容とも齟齬するものであり,とりわけ,監査法人の指摘 による予想値の修正があったとの供述を一顧だにせず,かえって,本件アジェンダに記載された本件増減率-34.25%と公表された本件増減率-38.2%との差を,専らベトナム予算の微修正によるものとし,本件取締役会時点から一貫して基準値を超える増減率であったとする点で,原告の供述内容をその根幹において改変するものであったといえる。 ウ L調査官及びK調査官の注意義務違反について 金商法に基づく課徴金納 て基準値を超える増減率であったとする点で,原告の供述内容をその根幹において改変するものであったといえる。 ウ L調査官及びK調査官の注意義務違反について 金商法に基づく課徴金納付命令は,対象者に対して経済的な不利益を与えるのみならず,その名誉・信用にも少なくない影響を及ぼし,対象者にとっては相応に重大な処分であるから,その処分の根拠となる重要事実の発生の有無については,的確な調査により正しい事実認定がされることが要請されるところ,調査の物理的,時間的限界や資料の入手困 難など諸事情があり得ることを踏まえても,少なくとも,証券調査官において,①調査の当時に入手していた資料のうち重要性の高いものについては,これを通常の注意力をもって確認することにより,重要事実の発生につき重大な疑義を生じさせる情報の見落としを防止すべき職務上の注意義務を負うとともに,②調査の過程において重要事実の発生につ き重大な疑義を生じさせる情報に接した場合には,客観的資料を確認するなどしてその解明に努めるべき職務上の注意義務を負っているというべきである。 本件では,上記アのとおり,原告に対する質問調査の前に,監査法人の指摘による予想値の修正があった旨の本件注記部分が掲載された本 件書面決議資料を既に入手していたところ,本件書面決議資料は,本件業績予想修正の公表に係る取締役会決議(本件書面決議)の議事録に添付された資料であって,予想値事案の発行体調査においては最も基本的な資料の一つといえるものであり,しかも,本件では,本件議事録の添付資料である本件アジェンダに記載された本件増減率-34.25%は, 公表された本件増減率-38.2%とは数値が異なっていたのであるから,書面決議の方法により行われた取締役会の議事資料におい 付資料である本件アジェンダに記載された本件増減率-34.25%は, 公表された本件増減率-38.2%とは数値が異なっていたのであるから,書面決議の方法により行われた取締役会の議事資料において,予想値の変遷の経緯につき何らかの説明が記載されていることが容易に想像され,かかる意味においても確認すべき必要性の高い資料であったといえる。そして,本件書面決議資料は一枚紙の資料であり,本件増減率- 38.2%に係る計算表の左下に,目立つように枠囲いがされて本件注 記部分の記載があった(認定事実⑴サ)のであるから,これを確認することは容易に行い得るものであったといえる。 ところが,L調査官及びK調査官は,上記ア及びイのとおり,このように基本的な資料で確認の必要性が高く,容易に確認し得る本件書面決議資料について,通常払うべき注意をもってこれを確認すれば,本 件注記部分に記載された監査法人の指摘による予想値の修正という本件重要事実の発生に重大な疑義を生じさせる事情を発見することができたにもかかわらず,その注意を怠って漫然とこれを看過したものであるから,上記①のような職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしていなかったものというべきである。 また,L調査官は,上記アのとおり,2月10日調査において,本件取締役会時点の本件増減率を示すスプレッドシートとして-29.73%のシートの復元表示を示されたものであり,これによれば本件アジェンダに記載された本件増減率-34.25%と数値が異なるばかりでなく,本件取締役会においては本件純利益の予想値につき基準値を下回 る数値に基づき協議されたとの疑いが生じるため,本件重要事実の発生に重大な疑義を生じさせる情報であったといえる。 ところが,L調査官は,かかる情報 は本件純利益の予想値につき基準値を下回 る数値に基づき協議されたとの疑いが生じるため,本件重要事実の発生に重大な疑義を生じさせる情報であったといえる。 ところが,L調査官は,かかる情報に接したにもかかわらず,上記アのとおり,上記の数値の違いが生じた理由について調査をしなかったばかりか,-29.73%のシートにつきプリントアウトの指示すらし なかったものであるから,上記②のような職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしていなかったものというべきである。 さらに,K調査官は,2月15日調査において,上記イのとおり,原告の供述に,本件取締役会時点では本件純利益の予想値が基準値以上となるかが不確実であったことをうかがわせる情報や,公表された本件 増減率が-38.2%となった原因に監査法人の指摘による予想値の修 正があったことをうかがわせる情報が含まれており,これらは本件重要事実の発生について重大な疑義を生じさせるものであるにもかかわらず,これを解明するための調査を行わなかったばかりか,合理的な理由もなく上記供述内容をその根幹において改変する内容の2月17日付け調書を作成したものである。加えて,2月17日付け調書は,予想値事 案の発行体調査に関して作成された唯一の質問調書であって,予想値事案に係る行政処分の可否を検討するに当たって重要な資料となるから,その作成には相応の慎重さが求められるものであり,これらを踏まえると,K調査官は,上記②のような職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしていなかったものというべきである。 エ J調査官についてこれに対し,J調査官は,主に,株式分割事案及び予想値事案の伝達行為調査を担当していたものであり,予想値事案の発行体調査に関しては,2月10日調査に副担当と 。 エ J調査官についてこれに対し,J調査官は,主に,株式分割事案及び予想値事案の伝達行為調査を担当していたものであり,予想値事案の発行体調査に関しては,2月10日調査に副担当として立ち会ったに過ぎない(認定事実⑵エ,⑶ア,オ)。J調査官は,2月10日調査において,質問調査メモを作成し ていない(同⑶オ)が,質問調査メモは,証券調査官による質問調査の運用上,被質問者の供述を備忘的に記載するものであって,その作成が効率的で質の高い質問調査の実施に資するため通常は副担当においてこれを作成することが多いとしても,法令上その作成が義務付けられているものではなく,2月10日調査において主担当であるL調査官から質問調査メモ の作成を求められていたなどの事情もうかがわれないことからすると,質問調査メモを作成しなかったことから,直ちに,J調査官が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしていなかったと認めることはできない。 オ本件証券調査官らに関する国賠法上の違法の有無に係る小括以上のとおりであるから,L調査官及びK調査官は,監視委員会が本件 勧告をするか否かを判断するための必要な調査をするに当たって,職務上 通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と調査し,その結果,客観的事実に反する2月17日付け調書を作成したものであるから,L調査官及びK調査官のこれらの行為は,国賠法1条1項の適用上違法というべきであり,また以上説示したところに照らせばL調査官及びK調査官のこれらの行為につき過失も認められる。他方,J調査官の行為については,同 項の適用上違法であると認めることはできない。 カ被告の主張について被告は以下のとおり主張するが,各主張について説示するとおり,いずれの主張も採用することができ の行為については,同 項の適用上違法であると認めることはできない。 カ被告の主張について被告は以下のとおり主張するが,各主張について説示するとおり,いずれの主張も採用することができない。 被告は,2月10日調査において,原告が-34.25%のシートを プリントアウトし,これに「12/22時点」と手書きした上で提出したこと(認定事実⑶オ)をもって,原告が本件取締役会時点の本件増減率が-34.25%であることを自ら認めていた旨主張する。 しかし,原告は,上記の提出行為に先立ち,同日の調査中に,本件取締役会時点の本件増減率を示すものとして-29.73%のシートを復 元表示していたのであるから,原告が自ら進んで上記のプリントアウトや手書きの表記をしたとは考え難い。むしろ,L調査官が2月10日調査の前日に本件アジェンダの記載を確認し,本件取締役会時点の本件増減率は-34.25%である旨の認識を有していたことからすると,同調査官において,同調査時に,スプレッドシートの変更履歴のうちこれ と合致する数値が記載されたものを選んで,原告に対しプリントアウトを指示するとともに,それが平成27年12月22日の本件取締役会時点のものである旨を手書きで記入するよう指示した可能性が高いというべきである(なお,原告は,平成28年2月4日,株式分割事案につきAへの伝達行為を認める内容の質問調書に署名・押印し,B社長に対し て辞意を表明しており〔認定事実⑵エ〕,予想値事案の帰すうにかかわ らず,自らの社会的地位に影響を被ることが必至である状況にあったことなどに鑑みると,原告において,2月10日調査の時点では積極的に防御活動を行う意思を喪失していた可能性が高いと考えられ,L調査官の指示に従って上記の各行為を 響を被ることが必至である状況にあったことなどに鑑みると,原告において,2月10日調査の時点では積極的に防御活動を行う意思を喪失していた可能性が高いと考えられ,L調査官の指示に従って上記の各行為を行ったとしても不自然であるとはいえない。)。 以上によれば,被告の指摘する上記事情は,L調査官の行為に関する国賠法上の違法の有無に係る上記認定判断を左右するものとはいえない。 被告は,原告が,本件会社が組織した特別調査委員会の調査において予想値事案に係る違反行為を認めていたこと(認定事実⑶コ)をもって,本件証券調査官らによる質問調査においても本件重要事実の発生を争っ ていなかった旨主張する。 しかし,本件会社の特別調査委員会において原告に対する質問調査が実施されたのは,証券調査官らによる一連の質問調査が終了した平成28年2月17日以降であり,原告は,この時点では,株式分割事案及び予想値事案に係る全ての質問調書に署名・押印し,本件会社に対しても 辞意を表明していたのであるから(認定事実⑶キ,コ),原告が特別調査委員会の調査に対して積極的に防御する姿勢を示していなかったとしても不自然ではなく,被告の指摘する上記事情は,L調査官及びK調査官の行為に関する国賠法上の違法の有無に係る上記認定判断を左右するものとはいえない。 ⑶ 本件勧告及び本件勧告公表について原告は,監視委員会が本件勧告及び本件勧告公表をするに当たって,本件証券調査官らの調査結果を鵜呑みにし,同調査官らの収集・作成した資料の精査や検討を怠ったと主張する。 しかし,監視委員会は,金商法違反行為に係る勧告及びその公表をするに 当たって,証券調査官らによって収集された証拠・資料に基づいて行うこと が制度上予定されているというこ と主張する。 しかし,監視委員会は,金商法違反行為に係る勧告及びその公表をするに 当たって,証券調査官らによって収集された証拠・資料に基づいて行うこと が制度上予定されているということができ(金融庁設置法20条1項,金融庁組織規則23条14項から16項まで,18項参照),本件において,本件証券調査官らが収集した証拠・資料が一見して明らかに客観的事実に反するものであったなどの事情もうかがわれないから,これらの証拠・資料に基づき監視委員会が本件対象行為の認定をしたとしても,監視委員会の委員長 ないし委員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件勧告及び本件勧告公表をしたと認めることはできないから,監視委員会が本件勧告を行い,これを公表したことについて,国賠法1条1項の適用上違法であると認めることはできない。 ⑷ 本件審判手続における本件審判官らの行為について ア金融庁長官は,課徴金納付命令の対象となる事実があると認めるときは,審判手続開始の決定をしなければならないものとされているところ(金商法178条1項),審判手続は,原則として3人の独立の地位を与えられた審判官をもって構成する合議体が行い(金商法180条1項,4項,金融商品取引法第六章の二の規定による課徴金に関する内閣府令6条1項 等),その審判手続は,裁判に類似した準司法手続によって行われ(金商法180条から185条の13まで),審判官の作成した決定案に基づいてされた金融庁長官の決定に対しては,行政手続法の規定が除外され(同法185条の20),行政不服審査法による不服申立てをすることもできないものとされており(金商法185条の21),この決定に不服がある 場合には,決定の効力発生の日から30日以内に限り提起することが 5条の20),行政不服審査法による不服申立てをすることもできないものとされており(金商法185条の21),この決定に不服がある 場合には,決定の効力発生の日から30日以内に限り提起することができる取消訴訟によってのみ争うことができるものとされ(同法185条の18),当該紛争の終局的な解決を専ら取消訴訟に委ねていることからすれば,国の機関である審判官がした審判手続上の行為について国賠法1条1項にいう違法行為があったものとして国の国家賠償責任が肯定されるた めには,取消訴訟によって是正されるべき法令違背等の瑕疵が存在すると いうだけでは足りず,違法な行為に対する救済を取消訴訟による是正に委ねるとするだけでは不相当と解されるような特別な事情のあることを要するものと解すべきである。 イ本件において,原告は,本件審判官らが,規範を恣意的に変え,客観的証拠からは認められない事実を認定した上で,誤った推論過程を経て違反 事実ありとする本件処分案を作成したこと,本件証券調査官らを参考人とする原告の審問申出を採用しなかったこと等をもって違法事由として主張するが,原告の主張は,結局,本件審判官らの判断内容や証拠の採否について論難するものであり,違法な行為に対する救済を取消訴訟による是正に委ねるとするだけでは不相当と解されるような特別な事情を主張す るものではなく,原告の主張は採用することができない。したがって,本件審判手続における本件審判官らの行為が国賠法1条1項の適用上違法であるとは認められない。 ⑸ 金融庁長官による本件処分について原告は,金融庁長官は,違反事実の存否を自ら調査確認する義務を怠り, 誤った判断に基づいた決定案に基づき本件処分をしたもので,国賠法1条1項の違法があると主張するが,金 よる本件処分について原告は,金融庁長官は,違反事実の存否を自ら調査確認する義務を怠り, 誤った判断に基づいた決定案に基づき本件処分をしたもので,国賠法1条1項の違法があると主張するが,金融庁長官による課徴金納付命令の決定は,審判手続を経て,審判官が作成した決定案に基づいて行われるものであり(金商法185条の7第19項),金融庁長官が自ら違反事実の存否を調査確認すべき職務上の法的義務を負うものではないから,原告の主張は採用するこ とができない。したがって,金融庁長官の本件処分が国賠法1条1項の適用上違法であるとは認められない。 4 争点⑹(原告の損害)について⑴ 前記3⑵のとおり,L調査官及びK調査官は,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と調査し,その結果,客観的事実と明らかに反す る2月17日付け調書を作成したものであり,これらの行為は国賠法1条1 項の適用上違法というべきであるから,被告は,これにより原告が被った損害について同項に基づき賠償すべき義務を負う。そして,上記各調査官らが,通常尽くすべき注意義務を尽くしていたとすれば,本件重要事実が平成27年12月30日以前に発生していないことが判明し,本件処分等が行われることはなかったものと認められるから,原告が本件処分等によってこれと相 当因果関係のある損害を被った場合には,そのような損害は,上記各調査官らの上記違法行為とも相当因果関係があるというべきである。 なお,本件審判官らが作成し金融庁長官に提出された本件処分案では,本件取締役会で示された本件増減率は-29.73%であり,2月17日付け調書のうちこれに反する部分は採用できないとされている(認定事実⑷オ) が,それにもかかわらず本件処分案が原告の本件対象行為を 取締役会で示された本件増減率は-29.73%であり,2月17日付け調書のうちこれに反する部分は採用できないとされている(認定事実⑷オ) が,それにもかかわらず本件処分案が原告の本件対象行為を認めたのは,本件取締役会における本件増減率の了承は-29.73%から-34.25%の幅で基準値の前後にまたがっている状態でされたものであり,これを前提とすると本件取締役会時点で本件重要事実が発生しているとする誤った認定判断がされたためであるところ,これらの認定判断は本件審判手続における 証拠関係(スプレッドシートの変更履歴等〔認定事実⑷ウ〕)と整合せず,-34.25%の数値が修正前ベトナム予算に基づくものであって同予算の修正後である本件取締役会時点では意味を持たないものとなっていたという事実経過に照らしても,誤った認定判断であることは明らかである。そうすると,上記各調査官らが通常尽くすべき注意義務を尽くしていたとすれば, そもそも,予想値事案に関しては監視委員会による本件勧告がされなかったものと考えられるから,上記のとおり,本件処分等によって原告が被った損害と上記各調査官らの注意義務違反との間には相当因果関係が認められるというべきである。 ⑵ 原告の逸失利益について 原告は,本件処分等により,本件会社の取締役を辞任したことや,辞任後 に公認会計士や税理士としての業務を行うことをちゅうちょした結果としての逸失利益を主張する。しかし,原告は,証券調査官らが予想値事案の調査に着手する前の平成28年2月4日時点で,株式分割事案につき伝達行為を認める旨の質問調書に署名・押印をしたことを契機に,B社長に対して辞意を表明していたものと認められ(認定事実⑵エ),本件予想値事案について 正しい調査がされていたとし 式分割事案につき伝達行為を認める旨の質問調書に署名・押印をしたことを契機に,B社長に対して辞意を表明していたものと認められ(認定事実⑵エ),本件予想値事案について 正しい調査がされていたとしても,株式分割事案に係る内部規程違反により,本件会社の取締役を辞任することは免れなかったものといえる(認定事実⑶サ参照)。また,原告が本件会社の退職後に公認会計士等の業務を行うことをちゅうちょしたとしても,これが本件処分等によるものとは直ちに評価することができない。そうすると,本件処分等と原告の上記辞任等との間に相 当因果関係があると認めることはできないから,逸失利益に係る原告の主張は採用することができない。 ⑶ 精神的損害について本件勧告公表により原告の氏名そのものは公表されていない(前提事実⑷ア)ものの,本件会社の名称やその事実関係が明らかになれば,本件会社の 取引先等の関係者には原告が金商法違反行為を行ったものと特定することも可能であったと認められ,このことに照らすと,本件勧告公表により,原告の名誉や信用が毀損され得たものというべきである。また,本件会社による原告の氏名の公表が同社の判断によるものであるとしても,本件会社は,本件勧告公表がされたことを受け,原告の氏名を明示した上で本件会社の役職 の解任を発表することとしたのであり(認定事実⑶サ),かかる経緯は,その精神的損害の程度を判断する上でしんしゃくされるべき事情である。 以上を含む本件に係る一切の事情を考慮すると,L調査官及びK調査官による前記行為並びに本件処分等によって原告が被った精神的損害に対する慰謝料額としては100万円が相当である。 ⑷ 弁護士費用について 前提事実⑸のとおり,原告は,原告訴訟代理人である平山 本件処分等によって原告が被った精神的損害に対する慰謝料額としては100万円が相当である。 ⑷ 弁護士費用について 前提事実⑸のとおり,原告は,原告訴訟代理人である平山剛弁護士らに委任して本件訴訟を提起したものであるところ,本件事案の内容,性質に加え,本件処分における課徴金の額及び上記⑶の金額その他本件にあらわれた一切の事情を考慮すれば,L調査官及びK調査官による前記行為並びに本件処分等と相当因果関係のある弁護士費用としては20万円が相当である。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,本件処分の取消し並びに被告に対し国賠法1条1項に基づき120万円及びこれに対する本件勧告の日である平成28年3月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容すべきであり,その余の請求には理由 がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 なお,仮執行宣言は相当でないからこれを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官清水知恵子 裁判官釜村健太 裁判官 溝渕章展 (別紙2-1) ○ 金融商品取引法(令和元年法律第七十一号による改正前のもの) (会社関係者の禁止行為) 第百六十六条 金融商品取引法(令和元年法律第七十一号による改正前のもの) (会社関係者の禁止行為) 第百六十六条 次の各号に掲げる者(以下この条において「会社関係者」という。 )であつて、上場会社等に係る業務等に関する重要事実(当該上場会社等の子会社に係る会社関係者(当該上場会社等に係る会社関係者に該当する者を除く。 )については、当該子会社の業務等に関する重要事実であつて、次項第五号から第八号までに規定するものに限る。 以下同じ。 )を当該各号に定めるところにより知つたものは、当該業務等に関する重要事実の公表がされた後でなければ、当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買その他の有償の譲渡若しくは譲受け、合併若しくは分割による承継(合併又は分割により承継させ、又は承継することをいう。 )又はデリバティブ取引(以下この条、第百六十七条の二第一項、第百七十五条の二第一項及び第百九十七条の二第十四号において「売買等」と の条、第百六十七条の二第一項、第百七十五条の二第一項及び第百九十七条の二第十四号において「売買等」という。 )をしてはならない。 当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を次の各号に定めるところにより知つた会社関係者であつて、当該各号に掲げる会社関係者でなくなつた後一年以内のものについても、同様とする。 一 当該上場会社等(当該上場会社等の親会社及び子会社並びに当該上場会社等が上場投資法人等である場合における当該上場会社等の資産運用会社及びその特定関係法人を含む。 以下この項において同じ。 )の役員(会計参与が法人であるときは、その社員)、代理人、使用人その他の従業者(以下この条及び次条において「役員等」という。 ) その者の職務に関し知つたとき。 二~五(略) 前項に規定する業務等に関する重要事実とは、次に掲げる事実(第一号、第二号、第五号、第六号、第九号、第十号、第十二号及び第十三号に掲げ 事実 とは、次に掲げる事実(第一号、第二号、第五号、第六号、第九号、第十号、第十二号及び第十三号に掲げる事実にあつては、投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものとして内閣府令で定める基準に該当するものを除く。)をいう。 一 当該上場会社等(上場投資法人等を除く。以下この号から第八号までにおいて同じ。)の業務執行を決定する機関が次に掲げる事項を行うことについての決定をしたこと又は当該機関が当該決定(公表がされたものに限る。)に係る事項を行わないことを決定したこと。 イ~ヨ(略) 二 当該上場会社等に次に掲げる事実が発生したこと。 イ~ニ(略) 三 当該上場会社等の売上高、経常利益若しくは純利益(以下この条において「売上高等」という。)若しくは第一号トに規定する配当又は当該上場会社等の属する企業集団の売上高等について、公表がされた直近の予想値(当該予想値がない場合は、公表がされた前事業年度の実績 団の売上高等について、公表がされた直近の予想値(当該予想値がない場合は、公表がされた前事業年度の実績値)に比較して当該上場会社等が新たに算出した予想値又は当事業年度の決算において差異(投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとして内閣府令で定める基準に該当するものに限る。 )が生じたこと。 四 前三号に掲げる事実を除き、当該上場会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事実であつて投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの (別紙2-1) 五~十四(略) ~ (略) (未公表の重要事実の伝達等の禁止) 第百六十七条の二 上場会社等に係る第百六十六条第一項に規定する会社関係者(同項後段に規定する者を含む。 )であつて、当該上場会社等に係る同項に規定する業務等に関する重要事実を同項各号に定めるところにより知つたものは、他人に対し、当該業務等に関する重要事実について同項の公表がされたこととなる前に当該上場 知つたものは、他人に対し、当該業務等に関する重要事実について同項の公表がされたこととなる前に当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等をさせることにより当該他人に利益を得させ、又は当該他人の損失の発生を回避させる目的をもつて、当該業務等に関する重要事実を伝達し、又は当該売買等をすることを勧めてはならない。 (略) (未公表の重要事実の伝達等の禁止に違反した者に対する課徴金納付命令) 第百七十五条の二 第百六十七条の二第一項の規定に違反して、同項の伝達をし、又は同項の売買等をすることを勧める行為(以下この項において「違反行為」という。 )をした者(以下この項において「違反者」という。 )があるときは、当該違反行為により当該伝達を受けた者又は当該売買等をすることを勧められた者(以下この項及び第三項において「情報受領者等」という。 )が当該違反行為に係る第百六十六条第一項に規定する業務等に関する重要 において「情報受領者等」という。 )が当該違反行為に係る第百六十六条第一項に規定する業務等に関する重要事実について同項の公表がされたこととなる前に当該違反行為に係る特定有価証券等に係る売買等をした場合(同条第六項各号に掲げる場合に該当するときを除く。 )に限り、内閣総理大臣は、次節に定める手続に従い、当該違反者に対し、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。 一~二(略) 三 前二号に掲げる場合以外の場合 当該違反行為により当該情報受領者等が行つた当該売買等によつて得た利得相当額に二分の一を乗じて得た額 (略) 第一項第三号の「利得相当額」とは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額(次の各号のいずれにも該当する場合は、当該各号に定める額の合計額)をいう。 一 情報受領者等が特定有価証券等の売付け等 にも該当する場合は、当該各号に定める額の合計額をいう。 一 情報受領者等が特定有価証券等の売付け等をした場合 次のイに掲げる額から次のロに掲げる額を控除した額 イ 当該特定有価証券等の売付け等について当該特定有価証券等の売付け等をした価格にその数量を乗じて得た額 ロ 当該特定有価証券等の売付け等について第一項の公表がされた後二週間における最も低い価格に当該特定有価証券等の売付け等の数量を乗じて得た額 二(略) ~ (略) (課徴金の額の端数計算等) 第百七十六条 (略) 第百七十二条から前条までの規定により計算した課徴金の額に一万円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。 ~ (略) (別紙2-2) ○有価証券の取引等の規制に関する内閣府令 (重要事実となる当該上場会社等の売上高等の予想値等) 第五十一条 法第百六十六条第二項第三号に規定 (重要事実となる当該上場会社等の売上高等の予想値等) 第五十一条 法第百六十六条第二項第三号に規定する投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとして内閣府令で定める基準のうち当該上場会社等の売上高等(同号に規定する売上高等をいう。 以下この条において同じ。 )若しくは配当又は当該上場会社等の属する企業集団の売上高等に係るものについては、次の各号(当該上場会社等が特定上場会社等である場合の当該上場会社等の売上高等については第一号から第三号までを除き、当該上場会社等の属する企業集団の売上高等については第四号を除く。 )に掲げる事項の区分に応じ、当該各号に掲げることとする。 一 売上高 新たに算出した予想値又は当事業年度の決算における数値を公表がされた直近の予想値(当該予想値がない場合は、公表がされた前事業年度の実績値)で除して得た数値が一・一以上又は〇・九以下であること。 二(略) 三 純利益 新 前事業年度の実績値)で除して得た数値が一・一以上又は〇・九以下であること。 二(略) 三 純利益 新たに算出した予想値又は当事業年度の決算における数値を公表がされた直近の予想値(当該予想値がない場合は、公表がされた前事業年度の実績値)で除して得た数値が一・三以上又は〇・七以下(公表がされた直近の予想値又は当該予想値がない場合における公表がされた前事業年度の実績値が零の場合はすべてこの基準に該当することとする。 )であり、かつ、新たに算出した予想値又は当事業年度の決算における数値と公表がされた直近の予想値(当該予想値がない場合は、公表がされた前事業年度の実績値)とのいずれか少なくない数値から他方を減じて得たものを前事業年度の末日における純資産額と資本金の額とのいずれか少なくない金額で除して得た数値が百分の二・五以上であること。 四(略) (別紙3)当事者の主張の要旨 1 争点⑴(平成27年12月30日以前に本件重要事実が発生し 値が百分の二・五以上であること。 四(略) (別紙3)当事者の主張の要旨 1 争点⑴(平成27年12月30日以前に本件重要事実が発生したか否か)について ⑴ 被告の主張の要旨ア本件取締役会の前日である平成27年12月21日午前中には,本件アジェンダが本件取締役会の出席取締役に共有されていることに加え,本件アジェンダを引用した本件議事録の記載内容からすれば,原告が本件取締役会において,本件純利益の予想値が1億8936万1000円であり, 本件増減率が-34.25%となることを説明した上,平成28年1月12日の本件決算発表時に本件会計期間の業績予想の下方修正を行う旨の提案をしたことは明らかである。 そして,本件議事録によれば,原告による上記提案に対して他の取締役から特段の反対意見等はなく,本件取締役会以降,平成28年1 月12日 の本件書面決議まで,本件純利益の予想値について実質的な協議がされた形跡はないから,本件取締役会において,本件決算発表と同時に本件会計期間の業績予想の修正を公表することが了承されたものということができる。 イ原告は,本件取締役会において,本件増減率について-29.73%と いう数字を前提とした協議が行われており,これ以外の数値を前提とした協議はされていないと主張するが,-29.73%という数値しか本件取締役会において協議されていないとの原告の主張は,客観的証拠に基づかず,本件議事録にも反する。 取締役会議事録は,取締役会の議事の経過の要領及びその結果等が記 載・記録されるものであり,会社の本店に備え置かれ,株主等の閲覧・謄 写請求の対象となり得ることからすれば,一般的に,誤りのある取 録は,取締役会の議事の経過の要領及びその結果等が記 載・記録されるものであり,会社の本店に備え置かれ,株主等の閲覧・謄 写請求の対象となり得ることからすれば,一般的に,誤りのある取締役会議事録が作成されることは容易に想定し難い上,本件議事録は,出席者全員が確認し,誤りを訂正するなどして作成されたものであり,議事の経過の要領及びその結果として正しい内容が記載されているというべきである。本件取締役会においては,他社の株式を取得して子会社にすること等 の重要な業務執行が決定されており,本件純利益の予想値は,その影響を受けたものであるから,このような重要な意思決定に関する議事内容につき,誤った記載がされ,出席者等による事後の指摘ないし訂正が一切されなかったというのは極めて不自然かつ不合理である。 ウ原告は,本件アジェンダに記載された数値は仮入力された数値で正確な ものではないと主張する。しかし,本件アジェンダが本件役員らの間で共有された時点において,ベトナム進出やリベロ社取得といった業務執行は,既に本件取締役会の決議事項に挙げられていたところ,ベトナム法人に関して見込まれる予算(以下「ベトナム予算」という。)や,これを考慮した本件純利益の予想値及び本件増減率といった数値も,善管注意義務・忠 実義務を負っている本件役員らが,本件取締役会において,これらの業務執行を行うか否かを判断する材料となるものであるから,本件アジェンダに記載されたベトナム予算の数値は,仮の数値などではなく,1億8936万1000円という本件純利益の予想値も,-34.25%という本件増減率も,ベトナム進出やリベロ社取得などによる影響を合理的に想定し て計算された数値であり,現実的な可能性をもったものとして役員間で共有されたというべ 益の予想値も,-34.25%という本件増減率も,ベトナム進出やリベロ社取得などによる影響を合理的に想定し て計算された数値であり,現実的な可能性をもったものとして役員間で共有されたというべきである。 本件議事録の添付書類の一つであった「ベトナムでのSHIFTASIA設立について」という資料(甲8。以下「本件ベトナム資料」という。)は,本件取締役会当日,その開催前に資料の差替えが依頼されており,本 件会社において,取締役会前日の午前中の段階で共有された資料であった としても,その差替えや更新が想定されていたといえるが,本件アジェンダについては,資料の差替えが行われていない。原告はスプレッドシートの更新について,他の取締役に連絡すらしていない。こうした状況からすれば,本件取締役会においては,本件アジェンダに記載された数値も含めて議論されたというほかない。 エ本件ベトナム資料には,「※販管費等コスト精査中」という記載があり,このような記載をみる限り,ベトナム法人の営業利益-9773万2000円及びこれを前提とした増減率-29.73%は,本件取締役会時点における最新値であるとしても,確定した数値ではなく,その後の販売費等の精査の結果いかんによって,上方・下方の限定無く,数値の修正可能性 があったことは明らかである。現に,本件取締役会において,原告は「今の読みなら,-29%で業績下方修正はいらないけどギリギリ」と発言しており,かかる原告の発言に対し,E取締役がどちらにも振れる話である旨発言したことからすれば,本件取締役会においては,本件増減率が-30%以上の数値となる可能性も議論されていたことは明らかである。原告 は,本件審判手続において提出した陳述書や,審問の場においても,本件取締役会において 件取締役会においては,本件増減率が-30%以上の数値となる可能性も議論されていたことは明らかである。原告 は,本件審判手続において提出した陳述書や,審問の場においても,本件取締役会において議論された数値について,上方・下方の限定無く,修正される可能性があったことを認めている。そうすると,ベトナム法人の営業利益やその影響については,数値が変動することを前提に説明されたことが認められるのであって,このような変動する可能性のある数値を基に 算出された-29.73%の増減率についても,もとより確定的なものとして説明されたものではなく,むしろそれ以上の数値となる可能性があることが明確に織り込まれていたものというべきで,事前に共有された本件アジェンダに記載された予想値(-34.25%)を否定する趣旨のものではなかったというべきである。 オ本件会社の取締役CFOであり本件業績予想修正に係る責任者であった原告は,本件調査手続において,本件取締役会時点の予想値を算出した資料の提示を求められたのに対し,本件増減率が-34.25%と表示されたスプレッドシートを印刷し,左上に「12/22時点」と手書きして,本件証券調査官らに提出した。この事実は,本件取締役会において本件増 減率として-34.25%という数値をも前提に議論が行われたことを裏付けるものである。 カ本件会社は,平成28年3月25日,本件会社が組織した特別調査委員会による事実確認の際,原告が業績予想の修正等の重要事実に該当し得る情報を同社開示前に社外に漏らしたという事実を認めた旨を公表した。仮 に,本件取締役会において本件増減率として-29.73%という数値しか取り上げられていないのであれば,原告は特別調査委員会による事実確認の際にも に漏らしたという事実を認めた旨を公表した。仮 に,本件取締役会において本件増減率として-29.73%という数値しか取り上げられていないのであれば,原告は特別調査委員会による事実確認の際にも,そのことを容易に主張することができたものと考えられる。 それにもかかわらず,原告がそのような主張をしなかった事実は,本件取締役会において本件増減率として-34.25%をも前提に議論が行われ たことを裏付けるものといえる。 キ本件会社において,本件書面決議に際して改めて本件純利益の予想値の当否について実質的な議論がされた形跡もなく,善管注意義務を負う本件役員ら全員の同意により本件業績予想修正が承認決議に至っていることからすれば,本件取締役会が本件純利益の予想値に係る下方修正の適時開 示に関する実質的な最終協議の場であって,本件書面決議に供された本件増減率-38.2%という下落幅も,本件取締役会における想定の範囲内であったとみるほかない。 ク以上によれば,本件取締役会で了承された本件純利益の予想値は,-29.73%から-34.25%を包含するような一定の幅のある数値(- 30%前後)ということができ,基準値の前後にまたがっているような数 値として,その修正公表を行う具体的日程も検討され,修正公表を行う現実的な可能性をもって了承がされたものと認められる。取締役会において,幅がある数値が算出され,これが基準の前後にまたがる場合であっても,その数値を前提として業績予想の修正公表が了承された場合,この了承の事実のみでも投資者の投資判断に影響を及ぼすものであることには変わ りないのであるから,金商法166条2項3号に係る重要事実の発生に該当すると解するべきである。 そして,本件会社が本件取締役会において でも投資者の投資判断に影響を及ぼすものであることには変わ りないのであるから,金商法166条2項3号に係る重要事実の発生に該当すると解するべきである。 そして,本件会社が本件取締役会において新たに算出した本件純利益の予想値1億8936万1000円と本件直近予想値2億8800万円のうち少なくない数値である後者から前者を減じて得た9863万900 0円を,前事業年度の末日における純資産額15億1600万円と前事業年度の末日における資本金の額5億7084万4000円のうち少なくない前者の金額で除して得た数値は約6.5%である。 したがって,本件取締役会が新たに算出した本件純利益の予想値において,投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとなる差異が生じたもの といえ,平成27年12月30日以前に本件重要事実が発生したものということができる。 ケ仮に,本件取締役会において,原告の主張する-29.73%という増減率以外に具体的な数値が示されなかったとしても,そもそも-29.73%という数値自体,適時開示が必要となる-30%に極めて近似した数 値であり,上記エの事情からすれば,平成28年1月12日の取締役会までに増える方向にも減る方向にも変動することがあり得る数値と理解されており,最終的に判明する本件増減率が-30%以上となる場合もあることを現実的な可能性をもって議論されていたことが認められる。その上で,本件取締役会は,本件業績予想修正に関して平成28年1月12日の 本件決算発表と同時に公表を行う旨の原告からの提案に対し,反対しなか ったのであるから,最終的に判明する本件増減率が-30%以上となる現実的な可能性があることを認識した上で修正公表を行うことを了承したものと認められる。このよ からの提案に対し,反対しなか ったのであるから,最終的に判明する本件増減率が-30%以上となる現実的な可能性があることを認識した上で修正公表を行うことを了承したものと認められる。このような事実がある以上,それを知った者が自由に証券取引を行うことは一般投資家と比べて著しく不公平であり,それを許せば投資者の信頼を損なうことになるから,証券取引市場の公正性及び健 全性に対する投資者の信頼を確保しようとするという金商法166条2項3号の立法趣旨に照らし,本件取締役会時点で本件重要事実が生じたというべきである。 ⑵ 原告の主張の要旨ア平成27年12月22日開催の本件取締役会では,本件純利益の予想値 に関して-29.73%の増減率が算出され,この内容で協議が行われていた。本件取締役会において,本件純利益の予想値に関し-30%以上の下方修正が避けられないとの認識は役員の誰も有しておらず,適時開示が必要な下方修正の協議もされていない。本件取締役会において了承された本件増減率は,-29.73%のみであり,基準値の前後にまたがる幅の ある数値が了承されたことはない。 イ本件増減率は,本件取締役会があった平成27年12月22日から平成28年1月7日に至るまでの間,一度も適時開示が必要な-30%以上に下方修正されることはなかった。原告は同月6日,本件業績予想修正について,本件増減率が-29.73%の下方修正となるものを確定値として, リリース作業を進めていた。ところが,同月7日,監査法人に,本件公表案とその基となる数値が入力されたスプレッドシートを提示して内容の確認を依頼したところ,監査法人から,繰延税金資産については,新設の法人でその後の事業計画がない状況においては,決算,監査においてその資産性を認めることが 入力されたスプレッドシートを提示して内容の確認を依頼したところ,監査法人から,繰延税金資産については,新設の法人でその後の事業計画がない状況においては,決算,監査においてその資産性を認めることができない可能性があるとして,ベトナムでの税効果は 設立1年目のため見送るべきという指摘を受けた。そして,この指摘に基 づいて,本件会社の担当者において試算したところ,本件増減率として-38.2%の数値が初めて算出された。原告は,上記担当者に対し,改めて本件公表案と本件書面決議に係る議題説明資料の修正を依頼し,同月8日,これらの資料がサーバーにアップロードされ,本件業績予想修正に係る数値が本件役員らに共有されて,了承された。よって,本件重要事実が 発生したのは同月8日であり,平成27年12月30日以前には発生していない。なお,本件取締役会において,ベトナム予算を含む全ての予算は協議され,承認されて確定していたため,修正したのは,監査法人から指摘を受けたベトナム予算の繰延税金資産の項目のみだった。監査法人からの指摘がなければ,本件会社は平成27年12月22日の本件取締役会で 確定したとおり,本件増減率-29.73%を前提とする本件業績予想修正を公表する予定であった。 ウ被告は本件議事録に添付された本件アジェンダに本件増減率として-34.25%の記載があることを根拠に本件取締役会時点で本件重要事実が発生していたと主張する。しかし,本件会社では,取締役会のアジェンダ は,事前に会議の内容を知らせて準備ができるようにするためのものという位置付けであり,取締役会開催日前日の午前中までに,その時点でわかっている内容をとりあえず共有するために本件役員らに対して送付する慣行になっており,その記載事項の正確さや精密さを問わな のものという位置付けであり,取締役会開催日前日の午前中までに,その時点でわかっている内容をとりあえず共有するために本件役員らに対して送付する慣行になっており,その記載事項の正確さや精密さを問わないというのが共通認識になっていた。ベトナム法人は,新規事業であり,過去の実績がな かったことから,支出に関する項目は何も決まっておらず,その予算は自由に策定できる状況であったところ,本件取締役会前日午前の時点で,ベトナム予算は,C取締役が平成27年12月中旬頃までに大まかに試算しただけの粗い数字しかない状況であった。本件取締役会前日の午前中に共有された本件アジェンダに記載されたベトナム予算は,上記のとおりC取 締役が試算した粗い数字を仮入力したものをそのまま記載したものであ り,この数字に基づき本件増減率も-34.25%と記載されていたものである。本件アジェンダが本件役員ら全員に共有された後,原告は,仮入力されたベトナム予算の数値について,C取締役とD取締役が新たに試算したベトナム予算の数値を反映させるため,C取締役とスプレッドシートを開いて修正作業を行うなどした。その結果,本件増減率は-29.73% となった。原告は,本件アジェンダの差替えは行わず,本件取締役会においては,スプレッドシートを直接用いて,報告,説明をした。 本件議事録の記載は,本件会社の担当者が消去し忘れたものである。本件取締役会における今後の業績見込みについての協議は,必要的記載事項である本件取締役会の決議事項や報告事項ではなく,任意的記載事項の協 議事項として本件議事録に残存したものにすぎない。また,本件会社において,定時取締役会のアジェンダは,取締役会議事録に添付する慣行となっていたため,本件アジェンダも本件議事録の添付資料として綴じ 議事項として本件議事録に残存したものにすぎない。また,本件会社において,定時取締役会のアジェンダは,取締役会議事録に添付する慣行となっていたため,本件アジェンダも本件議事録の添付資料として綴じられていたにすぎない。なお,原告が,本件議事録に添付された本件アジェンダの差替えを指示しなかった理由は,実際の議事内容が重要であり,議事録 は外部に公表するものではなく,本店に備え置かれ,株主等の閲覧謄写請求の対象となり得る程度のものという認識しかなく,議事録の記載については単なる記録で形式的なものと捉え,細部を確認しなかったためである。 エ仮に,本件取締役会で本件純利益の予想値に係る下方修正の可能性につ いて議論されていたとしても,抽象的な可能性のレベルにとどまり,実質的に社内で確定するに至っていないため,このような可能性としての数値については「予想値」に該当せず,下方修正を行うことが了承されていたとは評価し得ない。そもそも-34.25%との数字は,本件重要事実である本件増減率-38.2%とその算出根拠も異なる全く別の数値であ り,公表されていないことから,株価に影響を与えるものではなく,内部者取引規制の前提を欠き,重要事実には当たらない。 2 争点⑵(原告が平成27年12月30日にAに本件重要事実を伝達したか否か)について⑴ 被告の主張の要旨 ア Aと原告とは,高校時代のテニス部の友人で,卒業後も帰省の際に集まってお酒を飲むなどしていた。Aは過去に,本件会社が上場した後の飲み会の場において原告から本件会社が株式分割をする予定であると聞いたことから,その公表前に本件株式を購入して儲けたことがあった。 イ Aは,平成27年12月30日,原告を含めた高校時代の友人と広島県 て原告から本件会社が株式分割をする予定であると聞いたことから,その公表前に本件株式を購入して儲けたことがあった。 イ Aは,平成27年12月30日,原告を含めた高校時代の友人と広島県 福山市内の居酒屋で飲食し(本件同窓会),その帰りに友人が運転する自動車の車内において,原告に対し,本件会社の状況及び次の決算発表のことを尋ねたところ,原告は,「良いっちゃいいし,悪いっちゃ悪い」と答えた。Aが原告に対し,その真意を聞いたところ,原告は,売上はいいが,M&Aの案件で想定よりも費用がかさんで,利益が下がってしまう旨答え た。 Aは,さらに,原告に対し,本件株式について,端的に「そのまま持っておくのがいいのか,売っちゃった方がいいのか,どっちかな」と聞くと,原告は,「売った方がいいんじゃない」と答えた。 ウ Aは,上記イの原告の話を聞いて,本件会社の財務担当の取締役である 原告が「売った方がいい」というくらいであるから,次の決算で利益が相当に下がり,決算が公表されれば株価は下がると思い,本件株式の売却を決め,平成28年1月8日から12日にかけて,保有していた本件株式合計2万株を約2061万円で売却した。 エ原告は,上記アからウまでの事実を認める内容のAの質問調書について, 伝達行為が行われたとする場所に関する供述が,原告の供述と一致してお らず,伝達したとされる文言の内容が曖昧であると主張するが,平成27年12月30日の本件同窓会の前後において原告がAに伝達したことについて,両者の供述は一致しており,原告の主張は,細部の食違いを指摘するものにすぎず,Aの供述の信用性を減殺するものではない。原告がAに伝達した文言について,曖昧であるとの指摘も当たらない。また,Aの 供述について,任 ており,原告の主張は,細部の食違いを指摘するものにすぎず,Aの供述の信用性を減殺するものではない。原告がAに伝達した文言について,曖昧であるとの指摘も当たらない。また,Aの 供述について,任意性を疑わせる事実もない。 原告は,Aは原告から本件重要事実を伝えられなくても本件株式を売却したなどと主張するが,Aが調査手続や審判手続を経る過程で原告が主張するような売却動機等を説明したことはない。 原告は,Aが原告に対し本件会社の決算発表のことを尋ねる中で,売上 げや利益に言及しており,リベロ社取得とベトナム進出という本件会社の意思決定の事実のみならず,その影響を踏まえた業績の予想を回答したものにほかならない。 オよって,原告が,平成27年12月30日,Aに対して,本件重要事実を伝えたことは明らかである。 ⑵ 原告の主張の要旨上記1⑵のとおり,そもそも平成27年12月30日までに本件重要事実は発生しておらず,これをAに対して伝達することは不可能である。また,そもそも原告のAに対する伝達行為もない。 Aの供述は,伝達行為が行われたとする場所に関する供述が原告の供述と は一致しておらず,伝達したとされる文言の内容は曖昧であり,信用できないし,任意性にも疑いがある。Aと原告についてそれぞれ作成された2月8日付け調書は伝達の内容に関してほぼ合致しているが,これはそれより前の日にAを取り調べた結果に基づき,供述内容が合致するように作成されたものであるから,合致していること自体を重視すべきではない。 本件会社は,平成27年12月22日,当初予定していなかったベトナム法人の設立と,立上げメンバーとして100名規模のテストエンジニアの採用を行う旨の発表をしたところ,このような発 本件会社は,平成27年12月22日,当初予定していなかったベトナム法人の設立と,立上げメンバーとして100名規模のテストエンジニアの採用を行う旨の発表をしたところ,このような発表があれば,初期投資が膨らむことに伴い本件純利益の予想値が下方修正される可能性があることは投資家であれば十分予想できることである。Aは,この情報により本件株式を売 却したにすぎず,Aが本件株式を売却した事実から,原告による伝達行為があったと推認することはできない。 仮に,原告がAに対し,「良いっちゃいいし,悪いっちゃ悪い」「売上はいいんだけど,M&Aの案件なんかで想定したよりも費用がかさんで,利益が下がってしまうね」などと回答したとしても,平成27年12月22日に 公表済みであった,本件会社の売上げを押し上げる要因であるリベロ社取得,利益を押し下げる要因であるベトナム進出の事実を述べているに過ぎない。 3 争点⑶(原告が損失回避目的を有していたか否か)について⑴ 被告の主張の要旨原告は,Aが株取引を行っていることを知っていながら,同人に対し,本 件以前にも,本件会社の株式分割の予定を伝えた上,購入時期まで示唆したことがあり,この時点で,Aが売買差益を得るため本件株式の取引を行うことを既に容認していたものといえる。 また,原告は本件会社の業績見込みといった,本件会社の投資価値に関心を抱いていることを前提とした質問をしてきたAに対し,本件重要事実を伝 達したのみならず,Aから本件株式の保有を前提とした売却の是非の意見を求められたのに対し,「売った方がいい」などとして売却を推奨したものである。なお,原告は,公認会計士であり,かつ本件会社の取締役CFOであったのであるから,当該立場を会話の状況から推知しているAにおいて られたのに対し,「売った方がいい」などとして売却を推奨したものである。なお,原告は,公認会計士であり,かつ本件会社の取締役CFOであったのであるから,当該立場を会話の状況から推知しているAにおいて,業績予想の修正に係る自らの発言が相応の重みをもって受け止められることも 当然認識していたというべきである。そして,Aは,原告から本件重要事実を伝えられ,本件株式を全て売却している。 このような原告とAとの本件株式取引に係る関係性等をみると,原告において,本件重要事実を伝達した時点で,Aの保有株式につき,同人の取引を抽象的に容認していたにとどまらず,本件重要事実の公表までのAの具体的 な取引を想定していたというべきであるから,本件重要事実の伝達により,Aの損失の発生を回避させる意図があったことが推認でき,ひいては損失回避目的も推認できる。なお,原告は,本件調査手続の段階において,損失回避目的を認める旨供述していた。 損失回避目的という要件は,会社の正当な業務行為として,会社の業務遂 行の必要性から行われる情報伝達については規制対象から適切に除外される必要があるという趣旨に基づくものであり,本件のように会社の業務遂行の必要性と全く無関係に,友人関係にある者に対して,株式の取引について具体的なアドバイスを行うという行為は,会社の正当な業務遂行とはいえず,その点からも,本件で原告の損失回避目的を否定することはできない。 ⑵ 原告の主張の要旨原告は損失回避目的を有していなかった。原告は,Aと単なる高校の同級生という関係にとどまり,平成27年12月30日当時,Aが本件株式を保有していることは知らず,Aに対して何らの利害関係もなく,自らの責任ある立場を危険にさらしてまでAの損失を回避させようとする動機はない。 関係にとどまり,平成27年12月30日当時,Aが本件株式を保有していることは知らず,Aに対して何らの利害関係もなく,自らの責任ある立場を危険にさらしてまでAの損失を回避させようとする動機はない。 4 争点⑷(本件調査手続及び本件審判手続の違法により,本件処分は取り消されるべきか)について⑴ 原告の主張の要旨原告に対する質問調査は,その過程で客観的証拠を無視して虚偽の内容の2月17日付け調書が作られた上,原告に対し心理的圧迫を加える態様でさ れており,違法である。また,本件審判手続において,処分行政庁が本件処 分の理由とする「本件取締役会で報告された予想値に幅があって同基準の前後にまたがっているような状態で了承されたこと」は争点として審理されておらず,また,本件審判官らは,原告に本件証券調査官らの参考人審問を行わせず,Aの質問調書の信用性を減殺する機会を奪っており,これらは結論に影響を及ぼす重大な違法であるから,本件処分は違法である。 ⑵ 被告の主張の要旨本件調査手続が原告を心理的に圧迫する態様で行われたことはなく,違法はない。また,本件審判手続において,争点の一つとして「重要事実が発生した時期」が明確に整理され,原告には防御の機会があり,現にこれについて主張立証をしており,原告に対する不意打ちがなされたことはなく,本件 処分は,当該争点に関して,提出された証拠をもとに適法な判断を経てされていることから,違法はない。原告はあたかも「幅のある記載」が争点であると捉えているようであるが,争点の捉え方を誤っているにすぎない。原告は,本件審判官らが本件証券調査官らに対する審問の申出を認めなかったことが違法と主張するが,いかなる法規に反して違法と主張するのか不明であ うであるが,争点の捉え方を誤っているにすぎない。原告は,本件審判官らが本件証券調査官らに対する審問の申出を認めなかったことが違法と主張するが,いかなる法規に反して違法と主張するのか不明であ って理由がない。 5 争点⑸(国賠法1条1項所定の違法の有無)について⑴ 原告の主張の要旨本件調査手続や,本件処分,本件処分公表及び本件勧告公表(本件処分等)は,いずれも客観証拠に反する架空の事実を作出してされたものであり,以 下のとおり,国賠法1条1項所定の違法がある。 ア調査手続段階における違法な公権力の行使 本件アジェンダに記載された本件増減率は-34.25%で,実際に公表された本件業績予想修正に係る本件増減率-38.2%とは異なる数値であったのであり,かつ,本件純利益の予想値に係る修正作業が数 日にわたり行われていたのであるから,本件証券調査官らには,当然, 本件純利益の予想値について,いつの時点でどのような修正がされ,いつ適時開示が必要となる予想値が算出されたのかという修正過程を把握し,それを裏付ける資料を収集するなど慎重に調査すべき義務があった。 また,本件証券調査官らは,金融庁が平成24年に行った周知により,試算値等が一般的には内部者取引規制上の予想値に該当しない可能性が 高いという法令解釈上の考え方をとっていることを認識していたはずであるから,調査に当たり,対象となる数値が会社内部の単なる試算値等なのか,外部に公表される「予想値」なのかを慎重に調査・確認する職務上の義務があった。 本件証券調査官らは,平成28年2月9日の時点で本件書面決議に係 る取締役会議事録及びその添付資料を収集しており,L調査官及びJ調査官は,同月10日には,原告から,パソコン画面上のスプレッド 本件証券調査官らは,平成28年2月9日の時点で本件書面決議に係 る取締役会議事録及びその添付資料を収集しており,L調査官及びJ調査官は,同月10日には,原告から,パソコン画面上のスプレッドシートに基づき本件純利益の予想値に係る修正経緯について説明を受け,本件会社で業務に使用していたパソコンの提出を受け,各種ソフトウェアにログインするために必要なIDとパスワードも伝えられていたのであ るから,本件取締役会時点では本件増減率が-30%を下回っていたことや,監査法人の指摘を受けて初めて本件増減率が―38.2%となったことを認識し得た。 したがって,本件証券調査官らは,本件会社におけるメールの履歴やスカイプのチャット履歴等の確認を行ったり,本件取締役会に出席して いた他の取締役等に対して,本件取締役会において本件純利益の予想値に関してどのような協議がされていたかについて質問調査を行うなどして,本件重要事実が平成27年12月30日時点で生じていたのか,慎重に調査・確認する義務があり,原告はその調査に全面的に協力しており調査を困難とする事情は存在しなかったにもかかわらず,これを怠り, または敢えてこれを行わなかった。それどころか原告に対し,「重要事 実の発生のタイミングを実際の決議日とすると,インサイダー情報にならないので,実際の確定日を前にすることが必要」との説明をし,また,「事前のパワーランチや平成27年12月22日の取締役会で決定したものとしたい」として,パワーランチで数字を言ったことにしようと述べるなど,明らかに事実と異なった自分たちにとって都合のいい内容の 質問調書を作成するため,恣意的に資料を収集しようとした。 本件証券調査官らは,原告から客観的資料の提供を受けるなどしており など,明らかに事実と異なった自分たちにとって都合のいい内容の 質問調書を作成するため,恣意的に資料を収集しようとした。 本件証券調査官らは,原告から客観的資料の提供を受けるなどしており,平成27年12月21日はB社長が不在でありパワーランチが開催されていなかったこと,平成28年1月になって本件純利益の予想値が1億7800万円になったのはC取締役からベトナム法人の設立に関し て数値の微修正があったとの連絡を受けたからではなく,監査法人の指摘によるものであることなどを容易に把握できたにもかかわらず,B社長やC取締役への質問調査等による裏付けを一切行わず,虚偽の内容の2月17日付け調書を作成し,原告が追加や訂正の申立てをしたにもわらず,これに応じず,原告に署名押印をさせたものである。 以上のとおりであるから,本件証券調査官らは,調査手続段階において,職務上通常尽くすべき注意を欠いた違法な公権力の行使を行ったものである。 イ勧告手続段階における違法な公権力の行使監視委員会委員長は,本件勧告公表を行うに当たって,証券調査官らの 行った調査結果について,職務上,違反事実の存否を自ら調査確認すべき義務を負っていた。しかし,同委員長は,2月17日付け調書について,客観的な裏付けがないにもかかわらず,これを基に勧告書を作成し,審議の上議決し,本件勧告をした。同委員長は,証券調査官らによる調査結果を鵜呑みにし,証券調査官らの収集・作成した資料の精査や検討を怠って 本件勧告公表を行っており,職務上通常尽くすべき注意義務を欠いていた。 ウ審判手続段階における違法な公権力の行使審判手続においては行政当局が証明責任を負うと解されるところ,原告に対する課徴金納付命令の決定に至る過程で,指定職 意義務を欠いていた。 ウ審判手続段階における違法な公権力の行使審判手続においては行政当局が証明責任を負うと解されるところ,原告に対する課徴金納付命令の決定に至る過程で,指定職員は準備書面を1通も提出していない。本件審判官らは,争点化されていない「幅のある記載」というものを突然持ち出し,客観的な証拠に反するにもかかわらず,本件 重要事実が発生した旨認定した。 本件審判官らは,本件勧告の判断の根拠とされた2月17日付け調書について,それが客観的な事実に反していることが審判手続において提出された客観的な証拠から明らかになっており,本件審判官ら自身もそれを認めているにもかかわらず,規範を恣意的に変え,しかも客観的証拠からは 認められない事実を認定した上で,誤った推論過程を経て違反事実ありとする本件処分案を作成しており,また,本件証券調査官らを参考人とする原告の審問申出を採用しなかった。本件審判官らのこれらの行為は,課徴金納付命令の決定の事前手続として要請されている中立性・公正性を欠き,適正手続とはいえないものであり,職務上通常尽くすべき注意義務を欠い ている。 エ処分段階における違法な公権力の行使金融庁長官は,本件審判官らによって作成された本件処分案について,職務上,違反事実の存否を自ら調査確認する義務を負っているところ,それを怠って,誤った判断に基づいた本件処分案に基づき,本件処分をした ものであり,職務上通常尽くすべき注意を欠いた違法な公権力の行使を行った。 ⑵ 被告の主張の要旨ア前記1⑴,2⑴及び3⑴のとおり,原告は金商法167条の2第1項に違反しており,本件処分は同法175条の2第1項3号,同条3項1号の 要件も充足しており,本件処分等はいず ア前記1⑴,2⑴及び3⑴のとおり,原告は金商法167条の2第1項に違反しており,本件処分は同法175条の2第1項3号,同条3項1号の 要件も充足しており,本件処分等はいずれも適法である。また,その点を措くとしても,以下のとおり,国賠法1条1項所定の違法はない。 イ本件証券調査官らによる調査について,違法性がないこと証券調査官による調査は,取引調査の目的や個々の調査の必要性に照らして著しく合理性を欠くものと認められる場合に限って違法となると 解するのが相当である。調査は,限られた人的物的資源の中で,迅速性も求められながら行われるものであるから,およそ実行し得るありとあらゆる調査を行う法的義務はなく,事後的に見て,調査対象者に対する聴取や客観的証拠の収集・分析に必ずしも十分とはいえない点があったとしても,そのことをもって当該調査行為が国賠法上違法となるもので はない。 L調査官及びK調査官は,本件議事録の内容を確認し,平成28年2月9日,本件会社からその写しの提出を受けた。取締役会議事録は,取締役会の議事の経過の要領及びその結果等が記載・記録されるものであり,会社の本店に備え置かれ,株主の閲覧・謄写請求の対象となるもの であるから,本件議事録の内容の確認は,本件取締役会の議論状況について,客観的な裏付けを調査するものであることは明らかである。 また,L調査官及びK調査官は,平成28年2月9日,D取締役及びC取締役に対する質問調査を行い,その際C取締役は,本件重要事実に係る算出経緯について,話が出ていたとすれば,パワーランチの場だと 思うなどと供述していた。 これらの調査を踏まえ,L調査官及びJ調査官は,平成28年2月10日,原告に対する質問調査を行う中 係る算出経緯について,話が出ていたとすれば,パワーランチの場だと 思うなどと供述していた。 これらの調査を踏まえ,L調査官及びJ調査官は,平成28年2月10日,原告に対する質問調査を行う中で,原告から平成27年122月22日時点のものとして本件増減率が-34.25%と記載されたスプレッドシートをプリントアウトした資料等(以下「原告提供資料」とい う。)の提出を受け,平成27年12月22日時点には,本件純利益の 予想値について本件直近予想値と比較して30%以上減少することを把握していたこと,本件取締役会においても,B社長を含む役員に対して,この試算数値を説明の上,本件純利益の予想値を下方修正し,公表することについて報告したところ,特段の異議が出ることもなく了承されたこと,また,通常,原告が業績予想の修正について適時開示の必要があ ると判断した場合,新たな予想値をとりまとめた上で,パワーランチでB社長を含む役員にその内容を説明し,了承を得た上で,取締役会に付議していることなどについての供述を得た。L調査官及びJ調査官は,原告提供資料に記載された本件純利益の予想値に係る試算数値が本件アジェンダに記載されたものと一致していることを含め,その内容を確認 している。 以上のような本件議事録の性質や質問調査の経緯に照らせば,L調査官及びJ調査官が本件アジェンダの記載内容,原告提供資料の記載内容及び原告の上記供述を信用したことに何ら問題はなく,本件取締役会の議論状況について原告以外の役員に調査することを求められる特段の事 情も認められない。また,本件取締役会の議論状況に関して,原告以外の役員に対する調査結果を故意に隠蔽した事実もない。 したがって,本件証券調査官らによる調査が著しく合理性を欠くものであっ 情も認められない。また,本件取締役会の議論状況に関して,原告以外の役員に対する調査結果を故意に隠蔽した事実もない。 したがって,本件証券調査官らによる調査が著しく合理性を欠くものであったとは認められない。 なお,L調査官及びJ調査官は,平成28年2月10日の原告に対す る質問調査において,原告からスプレッドシートの変更履歴や本件議事メモを示されたことはない。 また,本件証券調査官らは,原告からスプレッドシートをプリントアウトした資料(原告提供資料)の提出を受けていたのであるから,それ以上に,原告のIDやパスワードを用いてスプレッドシートにアクセス し,その内容を確認し保全する必要性もなかった。 原告が主張するL調査官あるいはJ調査官の発言は,事実に反するものであり,何ら客観的な証拠に裏付けられたものでもない。 L調査官及びJ調査官は,原告から資料の提出や説明を受けて,遅くとも本件取締役会時点においては,本件重要事実が生じていたと認識していたのであり,原告の質問調書を恣意的に作成しようという意図など 持ち合わせていなかった。 2月17日付け調書は,L調査官及びK調査官が,同日までの質問調査における原告の供述に基づいて作成し,原告に対して,読み聞かせ,閲覧させた上で,追加する箇所や訂正する箇所がないか確認したところ,原告から,内容について誤りがない旨の回答が得られたことから,原告 の署名押印を得たものである。 2月17日付け調書の内容は,本件アジェンダの記載内容及び原告提供資料の記載内容とも符合しており,平成27年12月21日のパワーランチに関する原告の供述も,本件会社における決算値や新たな業績予想に係る予想値等を算出する際の一般的な流 ェンダの記載内容及び原告提供資料の記載内容とも符合しており,平成27年12月21日のパワーランチに関する原告の供述も,本件会社における決算値や新たな業績予想に係る予想値等を算出する際の一般的な流れや本件会社における業績 予想の修正の公表を行う際の一般的な流れに関する原告自身の供述やD取締役及びC取締役の供述と一致している。また,本件書面決議に係る取締役会議事録の添付資料には,繰延税金資産に関する記載が存在するものの,本件増減率や適時開示の要否が変わったことに関する記載は存在せず,原告の供述の内容に疑義を生じさせるものではなかった。した がって,L調査官及びK調査官が原告の供述を信用したことに何ら問題はない。 本件証券調査官らが,原告から,本件純利益の予想値について,監査法人からの指摘により初めて下方修正を公表する必要が生じた旨の説明を受けたり,監査法人からの指摘により初めて本件増減率が-30%を 超える事態が生じた旨の説明を受けたりしたことはなく,その前提となる数値や計算方法の説明を受けたこともない。 したがって,本件証券調査官らが,本件増減率について,監査法人からの指摘により-30%を超える事態が生じたことを認識した事実も認められない。 本件証券調査官らは,いずれの日の質問調査においても,原告から,本件取締役会時点における本件増減率について,-29%という数字や-29.73%という数字が出されたことはなく,-30%を下回っていた旨の説明を受けたことも一切なかった。また,本件勧告公表に至るまでに,原告やその他の本件会社の役職員から,変更履歴が記載された スプレッドシートや本件議事メモを示されたこともないから,-34. 25%という数値が実質的に確定した数値として本件取締役会 るまでに,原告やその他の本件会社の役職員から,変更履歴が記載された スプレッドシートや本件議事メモを示されたこともないから,-34. 25%という数値が実質的に確定した数値として本件取締役会において了承されたものであることに特段の疑義を差し挟むべき事情はなかった。したがって,本件証券調査官らが他の本件役員らに対し本件取締役会における議論状況を確認するための質問調査を行わなかったとしても 著しく合理性を欠くものとはいえない。また,本件取締役会では,少なくとも,今後,ベトナム予算の項目には修正があり得ることを織り込んで修正公表を了承したといえるのであって,監査法人より指摘を受けベトナム予算の繰延税金資産の項目に修正が入った際に,本件会社の取締役会等において改めて本件純利益の予想値について実質的な協議がなさ れず,その決定が最終的に本件書面決議により行われたという本件の事情の下では,本件取締役会後から本件重要事実の公表に至るまでの予想値の修正の経過といった付随的な事情についてさらなる調査をしなければ著しく合理性を欠くと認められる事情は何ら存しない。 したがって,調査の不備を指摘する原告の主張は失当であり,取引調 査の目的や個々の調査の必要性に照らして著しく合理性を欠くような事 情は何ら見当たらないといえ,国賠法上違法の評価を受けるものではない。 ウ本件勧告及び本件勧告公表に国賠法1条1項の違法はないこと 原告が金商法167条の2第1項に違反し,本件調査手続に手続上の違法がないことは,上記1⑴,2⑴,3⑴及び4⑵のとおりであり,監 視委員会による本件勧告及び本件勧告公表が適法であることは明らかである。 監視委員会は,証券調査官による金商法上の根拠 がないことは,上記1⑴,2⑴,3⑴及び4⑵のとおりであり,監 視委員会による本件勧告及び本件勧告公表が適法であることは明らかである。 監視委員会は,証券調査官による金商法上の根拠に基づく調査権限に基づく調査を前提として,調査により得られた証拠から事実が認定でき,かつ必要性が認められる限り,行政処分に関する勧告をすることが認め られているのであるから,証券調査官によって収集された証拠ないし資料から一見して明らかに勧告の対象となる事実が認定できないような場合でない限り,公表された勧告に係る行為が後に取り消されるなどしたとしても,かかる勧告に及んだ監視委員会(及び同委員会を代表する同委員会委員長)には注意義務違反はなく,国賠法上の違法は認められな いものと解すべきである。 証券調査官らによる質問調査の結果に基づき勧告書が作成されているところ,そもそも,本件審判手続において採用されなかった2月17日付け調書のみを資料として勧告書が作成されたものではなく,その他一切の証拠を踏まえて認定された事実をもとに勧告書が作成されており, 本件は,証券調査官らによって収集された証拠から一見して明らかに勧告の対象となるような事実が認定できないような場合にはおよそ該当しない。そのことは,本件審判手続を経て,本件審判官らにより本件勧告に係る事実と同旨の違反事実が認定されていたことからも明らかである。 したがって,証券調査官らによる調査結果を踏まえてされた本件勧告が国賠法上違法と認められないことは明らかである。 また,公務員が個人に関する情報を公表することにより,当該個人の社会的評価が低下したとしても,それを公表することが行政上の目的に照らし相当であり,当該情報に摘示された事実が真実であるときは,公 また,公務員が個人に関する情報を公表することにより,当該個人の社会的評価が低下したとしても,それを公表することが行政上の目的に照らし相当であり,当該情報に摘示された事実が真実であるときは,公 務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしたものとして違法性を欠くというべきであり,当該情報に摘示された事実が真実であることが証明されない場合であっても,公務員において職務上通常尽くすべき注意義務を尽くして調査検討した結果に基づき当該事実を公表したものであるときは,違法性を欠くというべきである。 本件勧告公表の目的は,金商法の規制に違反する行為を抑止し,規制の実効性を確保し,もって投資者保護及び資本市場の健全性の実現という金商法の目的を達することを図る点にあるところ,このような目的が行政上の目的に照らし相当であることは明らかである。また,本件勧告公表に係る事実が仮に事実と異なっていたとしても,本件勧告公表に至 る前提として,証券調査官らにより適切に調査がされ,違反行為の有無について検討されているのであって,本件勧告公表は,関係する公務員が職務上尽くすべき注意義務を尽くして調査した結果に基づき行われたものであるから,違法性を欠く。 エ審判手続段階における本件審判官らの行為に国賠法1条1項の違法はな いこと審判手続における審判官の行為の誤りは,後の取消訴訟において是正されることが予定されており,取消訴訟における是正に委ねることが不相当と解されるような特別の事情がない限り国賠法上違法と評価されることはないと解される。 原告は,単に事実認定の当否をいうにとどまるか,証拠の採否に関する本件審判官らの行為の当否をいうにとどまるところ,これらは本件審判官らの行為の違法性を れる。 原告は,単に事実認定の当否をいうにとどまるか,証拠の採否に関する本件審判官らの行為の当否をいうにとどまるところ,これらは本件審判官らの行為の違法性を基礎付けるものとはいえない上,取消訴訟における是正に委ねることが不相当と解されるような特別の事情についても何ら主張立証されていない。 オ処分段階における金融庁長官の行為に国賠法1条1項の違法はないこと原告は金商法167条の2第1項に違反しており,本件処分は同法175条の2第1項3号,同条3項1号の要件も充足しており,本件調査手続及び本件審判手続に手続上の違法もなく,本件処分案及び本件処分の内容は適法なものである。 また,金融庁長官の決定は,審判官が作成した決定案に基づいてしなければならないのであるから,審判官が作成した決定案に基礎を置かなければならず,決定案からまったくかけ離れた決定をすることや,決定案に現れていない事実や理由を基礎にして決定することはできないのであるから,金融庁長官が,「自ら違反事実の存否を調査確認すべき」職務上の注 意義務を負うものではない。 したがって,本件処分をした金融庁長官の行為に,職務上尽くすべき注意義務を欠いた違法はない。 6 争点⑹(原告の損害)について⑴ 原告の主張の要旨 ア本件証券調査官らが虚偽の内容である2月17日付け調書を作成せず,また質問調査を適切に行っていれば,本件処分等がされることはなかった。 役職員が金商法等の法令に違反する行為があったとして当局から事実上の処分を受ければ,企業が当該役職員に対し,何らかの処分を行うことは通常であり,その際,当該役職員の辞任等も避けられないのであり,本件 処分等により,原告は本件会社の取締役を辞任する ら事実上の処分を受ければ,企業が当該役職員に対し,何らかの処分を行うことは通常であり,その際,当該役職員の辞任等も避けられないのであり,本件 処分等により,原告は本件会社の取締役を辞任することを余儀なくされた ものというべきである。また,本件処分等がされたことによって,本件会社は会社の損害(株価の下落,信用の低下)を最小限にとどめるためには厳格な対応が求められることとなり,その結果本件会社は原告の実名を公表したものであるから,本件処分等により,原告の名誉及び信用が棄損されたものというべきである。これらの精神的苦痛を金銭的に換算すれば, 300万円を下らない。 イ原告は,公認会計士や税理士としての業務を行うことを予定していたが,本件処分等によりこれらの業務を行うことをちゅうちょせざるを得ず,これによる原告の逸失利益は100万円を下らない。また,原告は,本件会社の取締役を辞任したことにより,少なくとも残任期間である平成28年 3月12日から同年11月25日に開催された定時株主総会の終結の時までの報酬1117万7772円の支払を受けられなくなった。 ウ本件訴訟の追行に要する弁護士費用は100万円を下らない。 エ以上を合計すると,原告の損害の合計は1617万7772円に上る。 ⑵ 被告の主張の要旨 ア損害の発生は否認し,その額を争う。 イ本件処分は,2月17日付け調書のうち,原告の審判段階の供述に反する部分については採用しないこととしながら,他の証拠を勘案した上で,違反事実の認定に至ったものであり,上記調書の作成と本件処分等の間には相当因果関係がない。また,本件会社の他の取締役に対する聴取をした としても,本件処分等に至らない調査結果が得られたとは直ちに認められず,本件証券調 であり,上記調書の作成と本件処分等の間には相当因果関係がない。また,本件会社の他の取締役に対する聴取をした としても,本件処分等に至らない調査結果が得られたとは直ちに認められず,本件証券調査官らがそれをしなかったことと本件処分等との間に相当因果関係は認められない。 本件会社が本件勧告及び本件勧告公表の前から独自に特別調査委員会を組織し,本件について事実確認及び原因究明を行った結果,原告は,本件 重要事実に該当し得る情報を開示前に社外に漏らしたという事実を認め, 本件会社及び原告の独自の判断及び意思に基づいて,本件会社の取締役を辞任したものであるから,本件勧告及び本件勧告公表と原告による本件会社の取締役の辞任及びそれに伴う精神的苦痛との間に相当因果関係はない。 本件勧告公表においては,原告の氏名及び役職は公表しておらず,本件 会社において,これが公表されたものであり,本件処分等によって,原告の名誉及び信用が害されたものではない。 ウ原告が損害として主張する逸失利益の立証はなく,また,役員報酬については,上記のとおり,原告による取締役の辞任は,本件会社又は原告独自の判断・意思によるものであって,2月17日付け調書の作成や質問調 査の実施とは直接関係ないから,本件勧告公表又は質問調査に関する本件証券調査官らの行為に起因する損害とは認められない。また,原告は取締役辞任後に他の仕事をして収入を得ることが可能であったから,長期間にわたって取締役としての報酬に相当する逸失利益が発生するとの主張に合理性はない。 以上 (別紙1)指定代理人目録は,記載を省略。 い。 以上 (別紙1)指定代理人目録は、記載を省略。

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