平成21(う)127 強制わいせつ未遂

裁判年月日・裁判所
平成21年10月22日 札幌高等裁判所 破棄自判 釧路地方裁判所 平成20(わ)137
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判決文本文9,335 文字)

- 1 -主文原判決を破棄する。 被告人は無罪。 理由 本件控訴の趣意は,主任弁護人梅本英広,弁護人荒井剛連名作成の控訴趣意書に,これに対する答弁は,検察官藏重有紀作成の答弁書に,それぞれ記載されているとおりであるから,これらを引用する。 第1控訴趣意について,,(「」。)論旨は被告人は原判示の女性以下本件女性という,に対して強制わいせつ未遂の行為をしておらず無罪であるから原判示の強制わいせつ未遂の事実を認めて被告人を有罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるというのである。 所論にかんがみ,記録を調査して検討する。 本件公訴事実本件公訴事実は「被告人は,Aに強いてわいせつな行為を,しようと企て,平成20年7月11日午前11時ころ,北海道a郡内同人方において,同人に対し,左手で同人の右手首をつかんで引き寄せ抱きつくなどの暴行を加え,強いて同人に接吻しようとしたが,同人が抵抗したためその目的を遂げなかったものである」というものである。 。 本件証拠関係上記公訴事実記載の日時ころに被告人と本件女性が上記同人方(以下「本件居宅」という)にいたことについては証拠上。 ,,明らかに認められ被告人もこれを認めているところであるが- 2 -被告人と本件女性の他には目撃者等はだれもおらず,公訴事実を基礎付ける証拠としては,本件女性の原審公判廷における供述(以下「本件女性供述」という)のみであって,物的証拠。 等の客観的証拠も存在しない。したがって,本件女性供述の信用性判断は特に慎重に行う必要がある。 本件女性供述の要旨及び原判決の評価本件女性供述の要旨は,原判決が「事実認定の補足説明」の項の第2の1において摘示するとおりであり,原判決は,その供述内容 用性判断は特に慎重に行う必要がある。 本件女性供述の要旨及び原判決の評価本件女性供述の要旨は,原判決が「事実認定の補足説明」の項の第2の1において摘示するとおりであり,原判決は,その供述内容が,非常に具体的かつ詳細であり,それ自体として極めて合理的で自然であること,本件女性が被告人にわいせつな行為をされそうになった状況やその前後の本件女性と被告人の会話の内容,その際の本件女性の感情などが臨場感あふれる表現により供述されていること,本件女性の友人であるBに送信したメールなど客観的な証拠と符合していること,信用性が高い本件女性の妹や友人の供述ともほぼ一致していること,本件女性が殊更虚偽の供述をする動機や利害関係は見当たらないことを理由として,本件女性供述はその信用性が高いと評価することができると説示する。 しかしながら,本件女性供述には,重大な点について客観的証拠と整合しないところがあるなど,その信用性には重大な疑,。 ,問があり原判決の上記説示は是認することができない以下説明する。 本件女性供述の疑問点(1)被害にあったという時刻について本件女性は,本件被害にあった時刻が午前11時ころであるといい,その根拠として「テレビの左上のほうに小さく時計,- 3 -が出ているが,ちょっと前くらいに見たときは10時56分だったので,それからそんなにたってないと思うので,11時ごろかなと思う「とくダネ!」という番組がちょうど終わっ。」,「て,その後の「佐藤のりゆきのトークで北海道」という番組が入っていたので,その時間帯だと思う」旨供述する。 。 しかしながら「書類送付の件」と題する書面(原審弁15,号証)及び新聞番組欄写し(原審弁17号証)によれば「と,くダネ!」の放送は午前9時55分までであり「の だと思う」旨供述する。 。 しかしながら「書類送付の件」と題する書面(原審弁15,号証)及び新聞番組欄写し(原審弁17号証)によれば「と,くダネ!」の放送は午前9時55分までであり「のりゆきの,トークで北海道」が午前9時55分に開始されたこと,両番組を放送する北海道文化放送では,テレビ画面上の時刻表示は午,,前9時54分00秒までであったことが認められ本件女性は見ることのできなかったはずの午前10時56分という時刻表示を見たと供述し,また「とくダネ!」が終わり「のりゆき,のトークで北海道」が開始されて間もなくの時間であれば午前10時ころであるはずなのに,それを午前11時ころであると供述していることになり,不自然というほかなく,むしろ,時刻表示が存在していた時間からそんなに経っていない時刻で,かつ,番組が切り替わって間もなくであるという本件女性供述を前提とすると,午前10時ころと考える方が自然といえる。 なお,検察官は,本件女性供述で上記のとおり「ちょうど」と表現されたからといって,被害にあった時刻を「とくダネ!」の終了直後であるとしたものとは受け取りがたいというのであるが,上記の供述内容は「とくダネ!」が終わり「のりゆき,のトークで北海道」が開始されて間もなくの時間を意味していると解するのが素直であって,検察官の立論には無理があるというほかなく,採用することができない。 - 4 -この点について,原判決は「本件女性がこの点について殊,更虚偽の供述をする動機はうかがわれず,被害時刻の根拠に関しては記憶違いの可能性が高いと考えられる(なお,本件における時間の推移等にかんがみると,本件女性が本件被害にあったとする時刻に関する供述自体は信用することができる。そ。)して,このような点に記憶違いが存在 の可能性が高いと考えられる(なお,本件における時間の推移等にかんがみると,本件女性が本件被害にあったとする時刻に関する供述自体は信用することができる。そ。)して,このような点に記憶違いが存在するからといって,本件」。 女性の供述の信用性に影響があるとは認められずと説示するしかしながら,本件女性は,本件被害にあった時刻を認識した根拠として,テレビ画面の時刻表示及びテレビ番組が切り替わって間もなくであるという特徴的な2点を明確に挙げているのであって,このような特徴的な根拠がいずれも記憶違いであるとは考えにくい上,本件女性自身がこの点について記憶違いであるとか,それを暗示したり疑わせたりするような供述もしていないのであるから,原判決の「記憶違いの可能性が高い」との判断は根拠に欠けるものというほかなく,是認することができない。したがって,この2つの特徴的な根拠がいずれも午前11時ころではなく,むしろ午前10時ころという時間を指し示していることについて,原判決が説示するような単なる「記憶違いの可能性」を理由として軽視することは相当でない。 そうすると,原判決も示すように,本件女性が供述する被告人の一連の行動等からすると,被告人が本件居宅を訪れたとされる午前9時30分ころから本件犯行に至るまでには1時間30分くらいの時間がかかるものと思われるから,本件女性が犯行時刻の根拠として述べた2点から合理的に推察される午前10時ころという時刻と,本件女性の供述する被告人の一連の行動等とは,整合しないことになる。 - 5 -(2)被告人の携帯電話の発信,通話との整合性について①被告人の携帯電話の本件当時における発信,通話について(),「()」料金明細内訳書原審弁3号証解析結果について回答と題する書面写し(原審弁7号証 の発信,通話との整合性について①被告人の携帯電話の本件当時における発信,通話について(),「()」料金明細内訳書原審弁3号証解析結果について回答と題する書面写し(原審弁7号証,配管工として被告人と一)緒に仕事をすることがあるCの原審公判廷における供述(以下「C供述」という)などの関係証拠によれば,本件当日の午。 前9時ころから午後零時ころまでの間に,被告人は,自らの携帯電話で発信して,(ア)午前9時10分に本件女性と14.5秒間通話し,(イ)午前10時33分にDと2分2.5秒間通話し,(ウ)午前11時06分にCと27.5秒間通話し,(エ)午前11時22分にEと1分21秒間通話し,(オ)午前11時24分にCと2分21秒間通話し,(カ)午前11時27分に本件女性と28秒間通話し,(キ)午前11時29分にCと55.5秒間通話し,(ク)午前11時35分にEと59秒間通話したことが認められる。 ②本件女性供述との整合性についてこの被告人の電話による通話等に関して,本件女性は,(a)被告人が来る前に被告人から連絡が来ていた,(b)午前10時10分ころに被告人が電話をしていて「1時ごろは?,3,時?,じゃ,3時ごろは?」というような言葉が聞こえて,温水器に関係する電話を板金屋ないし業者の人と電話していると思ったと供述し,(c)被害直後の午前11時5,6分ころに被告人が電話をしたかどうかについては,気付いていない,あまり覚えていない,言われてみれば電話しているように思う,はっきり覚えていないと供述し,弁護人からそのころ被告人がテ- 6 -ーブルの椅子に座っていたかを確認された際にはそれを肯定しつつも,裁判官から再度尋ねられた際には脱衣場で何かしゃべっている感じがしたと答え,(d)午前11時20分から30分 被告人がテ- 6 -ーブルの椅子に座っていたかを確認された際にはそれを肯定しつつも,裁判官から再度尋ねられた際には脱衣場で何かしゃべっている感じがしたと答え,(d)午前11時20分から30分の間に被告人は本件居宅を出たが,そのときに,被告人から,午後3時ごろに他の板金屋ないし業者を連れてくるからと言われたと供述する。 写真撮影報告書(原審甲6号証)及び本件女性供述等によれば,被告人が本件居宅から出たのは本件女性がBに「人間って怖いね」などと携帯電話でメールを送信した午前11時24分より前であると認められるが,これを前提にすると,本件女性が供述するように,被告人が本件居宅を出た際に午後3時ごろに再度来訪する旨を告げていたのであれば,被告人が上記(カ)の午前11時27分に本件女性と通話をする必要性や理由が想定しがたく,上記(カ)の通話の存在が極めて不自然なものとなる。この上記(カ)の通話について,本件女性は,通話があったという記憶はないが,履歴があるからかかってきたと思う,具体的に何を話したかという記憶はない,被告人からの着信履歴を削除した,被告人からの着信履歴を削除したことは警察に話したが調書には取ってもらっていない,この通話があったことを捜査官に話していないなどと供述しているところ,この本件女性供述によれば,上記(カ)の通話内容は本件女性にとって特に記憶されるようなものではなかったことになるが,本件を犯して本件居宅を出て間もなくの被告人がそのような内容の電話をすることはなおさら考えにくく,また,被告人からの着信履歴を削除したことを捜査官に告げながら,その通話があったことについて捜査官に話さない,すなわち,捜査官から確認など- 7 -されていないということも,捜査側の対応としていささか不自然である。 また,上記(b)の を捜査官に告げながら,その通話があったことについて捜査官に話さない,すなわち,捜査官から確認など- 7 -されていないということも,捜査側の対応としていささか不自然である。 また,上記(b)の午前10時10分ころに本件女性が聞いたと供述する被告人の通話について検討するに,これと時間的に近接する被告人の通話は,証拠上,Dとの間で午前10時33分になされた上記( イ) しか見当たらないが,Dとの間で「1,,,,」,時ごろは? 3時? じゃ3時ごろは? と被告人が発言し温水器に関係する電話で板金屋ないし業者の人との電話である。 ,と本件女性が思うような通話がなされるかは疑問が残るまた,この通話内容に合致する通話の相手としてはCが存在するのでCとの通話の可能性を検討するに,C供述及び被告人の原審公判廷における供述によれば午前11時6分になされた上記(ウ),の通話より前に本件当日両名は電話していないと認められるので,本件女性の供述する午前10時10分ころの通話がこの午,前11時6分になされた上記(ウ)の通話である可能性をみるにこの午前11時6分という時間は本件女性供述によれば本件被害にあった直後の時間であるから,そのような時間帯の出来事をそれよりも1時間ほど前の出来事と混同することは不自然であるし,上記のとおり,この午前10時10分ころの電話と区別して午前11時5,6分ころに被告人が脱衣場等でしゃべっていることを本件女性は聞いた旨を不明瞭ではあるものの供述しているのであって,本件女性供述を前提にする限り,本件女性の供述する午前10時10分ころの通話がこの午前11時6分になされた上記(ウ)の通話であったとは考えがたく,結局のところ,本件女性の午前10時10分ころの通話に関する供述自体に疑問が残るといわざる の供述する午前10時10分ころの通話がこの午前11時6分になされた上記(ウ)の通話であったとは考えがたく,結局のところ,本件女性の午前10時10分ころの通話に関する供述自体に疑問が残るといわざるを得ない。 - 8 -(3)本件女性の電話番号を記載したメモとの整合性について関係証拠によれば,被告人が最初に本件居宅を訪れた際,本件女性が自らの電話番号を記載したメモ(原審弁4号証)を被,,告人に渡していることが認められるところ本件女性供述では本件女性が自らの携帯電話の番号を読み上げると,被告人が自分の携帯電話を操作して本件女性の電話番号を登録していたな(お,上記原審弁7号証によれば,平成20年7月30日の時点では,被告人の携帯電話に本件女性の携帯電話の番号は登録されていない)というのであるから,本件女性供述によれば,。 必要性のない上記メモをわざわざ作成して被告人に渡したこととなり,これは極めて不自然な行動というべきである。 (4)本件女性が本件被害にあった後に被告人がいた脱衣場に行ったかどうかに関する供述について本件女性供述によれば,本件女性は,平成20年7月15日付け警察官調書では,ずっと座いすに座ったままじっとしていたと供述し,同年8月4日付け供述調書では,被告人から脱衣場に呼ばれて入り,電気温水器の弁の説明を受けたと供述し,検察官調書では,コーヒーを入れに台所に行った以外,被告人がいる時に脱衣場に顔を出したことはなかったと供述したことは,いずれも間違いない旨述べた後に,証言時の記憶を尋ねら,「。」,「,れて行ったような感じがしますと述べた直後にでも行ってない気がするんですけど」と述べるなど,この点に関。 する本件女性の供述は著しく変遷し,あいまいなものとなっている。 しかしながら,被害にあ 行ったような感じがしますと述べた直後にでも行ってない気がするんですけど」と述べるなど,この点に関。 する本件女性の供述は著しく変遷し,あいまいなものとなっている。 しかしながら,被害にあった後でそれほど時間が経過していないころに,脱衣場という狭い場所に被告人と二人きりになっ- 9 -たことがあれば,本件女性としては相当に警戒し緊張するものと思われ,記憶に残り易い出来事というべきであるのに,本件女性のその点に関する供述が変遷したりあいまいとなるのはいささか不自然というべきである。 (5)原判決の説示等について①原判決は,上記( 2) ないし( 4 ) の疑問点について「本件,女性にとって,本件が突然生じた出来事であり,当時は驚いて頭が真っ白になるような状態であったことからすると,犯行前後の状況に関して記憶が明確でない部分や記憶が混在している部分があったとしても必ずしも不自然ではないし,犯行前の状況については,本件女性が必ずしも意識的に修理作業に来た被告人の言動等を観察していたわけではないことなどの事情を考,,慮すれば供述の変遷や客観的な証拠との矛盾があるとしてもその供述の信用性に影響を及ぼすものではないというべきである」旨説示する。 。 しかしながら,まず,本件女性供述によると,本件被害にあった後,本件女性は,被告人に退去を求めたりせず,本件居宅に20分ほど被告人と一緒にいたとされること,本件当日の午前11時24分から午後零時33分までの間に,本件女性は1回会っただけのメール友達であるBとの間で,携帯電話のメール10通をやりとりしているところ,その内容を見ると,本件女性が混乱していたとは考えにくいこと,また,本件女性は,被告人が本件当日の午後3時に本件居宅を再度訪れることになっていても「他の業者を ル10通をやりとりしているところ,その内容を見ると,本件女性が混乱していたとは考えにくいこと,また,本件女性は,被告人が本件当日の午後3時に本件居宅を再度訪れることになっていても「他の業者を連れてくると言っていたので一人じ,ゃないから大丈夫かなと思った「仕事でだれも来れないと。」,思って,だれかを呼ぼうとは思わなかった「別の日に変え。」,- 10 -てもらうことは考えなかった」などとして,被告人が再度本。 件居宅に来る際に一人で対応しようとしていること,同居していた妹に対して同人が帰宅するまで連絡等もせずにいたこと,B以外の友人にも本件女性から連絡していないことなどに照らすと,本件女性供述によっても,被告人の犯行によって本件女性が受けた精神的衝撃については,それが極めて大きなものであったとまでは認めがたく,また,ある程度精神的に混乱した状態が生じたことは否定できないとしても,その状態が長く続いていたとは認めがたいのであって,上記説示のように,精神的衝撃や混乱などが上記疑問点を解消するものということはできない。 次に,被告人の動作の細かな部分など,もともと明確に認識されずに記憶も不鮮明なものとなる可能性があるものについては,特に明確に記憶されていなかったり,供述内容が変わったりあいまいになることも一般的にはありうることではあるが,本件においては,被告人が本件居宅に来てからの一連の出来事の中で本件犯行が行われ,その一連の出来事を本件女性が順序立てて供述しているのであるから,本件女性は,時間の経過に沿って生じた出来事を記憶していたはずであって,このような本件女性の記憶を前提とすれば,被害にあった時刻について1時間ほど異なるのではないかとの疑念が生じたり,被害にあった時刻の約1時間前にあったとされる被告人の通話と 憶していたはずであって,このような本件女性の記憶を前提とすれば,被害にあった時刻について1時間ほど異なるのではないかとの疑念が生じたり,被害にあった時刻の約1時間前にあったとされる被告人の通話という出来事の有無に疑念が生じたりすることは,この本件女性の記憶な。 いし供述自体の信用性を大きく揺るがすものというべきである加えて,上記(2)で説示したように,被告人が本件居宅を出てから被告人が本件女性に電話をするということは,本件女性供述- 11 -を前提とする限り,不必要で不合理なこととなるのであって,これを本件女性が記憶違いなどをしていたということで説明することは難しく,また,上記(3)の点については,確かに電話番号を教えたことは本件より数日前の出来事であるものの,自らメモを作成するという行動をしているのであるから,記憶に残りやすいものというべきであり,原判決が説示するような,意識的に被告人の言動等を観察していなかったからなどという理由では説明できないというべきである。 以上のとおりであって,本件女性供述の上記疑問点は,記憶の混乱や意識的に注意していなかったなどの原判決が説示するような理由によっても,その疑問,問題性を解消することはできず,原判決の上記説示は是認しがたい。 ②また,原判決は,上記3のとおり,信用性が高い本件女性の妹や友人の供述ともほぼ一致していること,本件女性が殊更虚偽の供述をする動機や利害関係は見当たらないことを本件女性供述の信用性が高い理由として挙げているが,そもそも,本件女性の妹や友人の供述内容のうち,本件犯行内容に関する部分は本件女性から聞いたことに基づくものであるから,両名の供述はまさに伝聞供述であって,その内容が本件女性の供述と一致していることを本件女性供述の信用性が高い理由とするのは相当ではな 容に関する部分は本件女性から聞いたことに基づくものであるから,両名の供述はまさに伝聞供述であって,その内容が本件女性の供述と一致していることを本件女性供述の信用性が高い理由とするのは相当ではないし,虚偽供述をする動機や利害関係が見当たらないとしても,本件女性供述の上記各疑問点を解消することにはならず,原判決の説示は是認することができない。 ③なお,検察官は,答弁書において,上記疑問点は,被害状況そのものについての供述に関するものでなく,被害状況に関する記憶の確実性ないし信用性とは関連しないなどというの- 12 -であるが,被害状況以外の部分についてであっても,その供述の信用性に疑念が生ずれば,供述全体の信用性にも影響することは当然である上,上記のように,本件女性供述は本件公訴事実を基礎付ける唯一の証拠であって極めて重要であることや,その内容も時系列に沿って順序立てて被告人の行動等を述べているものであることに照らせば,被害状況そのものの部分でないからといって,上記各疑問点を軽視することはできない。 以上のとおり,本件女性供述の信用性には疑いを入れる余地があり,被告人が本件女性に対し強制わいせつ未遂の行為。 を行ったと認定するには合理的な疑いが残るというべきであるしたがって,被告人が本件女性に原判示の強制わいせつ未遂の行為を行ったと認定した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるから,破棄を免れない。 論旨は理由がある。 そこで,刑訴法397条1項,382条により原判決を破棄し,同法400条ただし書により当裁判所において更に判決する。 第2自判本件公訴事実を認定することができないことは,上記第1で説示したとおりであり,本件強制わいせつ未遂の公訴事実については犯罪の証明がないから,刑訴法336条により において更に判決する。 第2自判本件公訴事実を認定することができないことは,上記第1で説示したとおりであり,本件強制わいせつ未遂の公訴事実については犯罪の証明がないから,刑訴法336条により被告人に対し無罪の言渡しをすることとし,主文のとおり判決する。 平成21年10月22日札幌高等裁判所刑事部裁判長裁判官小川育央- 13 -裁判官二宮信吾裁判官水野将徳

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