主文 1 被告らは、原告に対し、連帯して、2150万円及びこれに対する令和4年10月14日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は、被告らの負担とする。 3 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求主文第1項と同旨第2 事案の概要本件は、原告が、以下の2⑴及び⑵の(原告の主張)欄記載のとおり主張して、 ①主位的に、被告Aに対しては不法行為による損害賠償請求権に基づき、株式会社B(以下「被告会社」という。)に対しては会社法350条の損害賠償請求権に基づき、②予備的に、被告会社に対しては債務不履行による損害賠償請求権に基づき、被告Aに対しては会社法429条1項の損害賠償請求権に基づき、連帯して、2150万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和4年10月 14日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者 ア原告は、亡C(亡Cは、Dの通称を用いていた。)の母である(甲2、3)。 イ被告Aは、被告会社の代表取締役である。 ⑵ 本件土地の購入と本件建物の建築亡Cは、平成18年、別紙物件目録記載1の土地(以下「本件土地」とい う。)の所有者であった関西地販有限会社から、本件土地を購入し、本件土 地上に同目録記載2の建物(以下「本件建物」という。)を建築した。その後、亡Cは、本件建物に居住していた。(甲4、5)⑶ 交通事故とそれによる後遺障害ア亡Cは、平成29年5月、自転車に乗っている時にバイクと衝突する交通事故に遭い、同年12月26日、頭部外傷後遺症 亡Cは、本件建物に居住していた。(甲4、5)⑶ 交通事故とそれによる後遺障害ア亡Cは、平成29年5月、自転車に乗っている時にバイクと衝突する交通事故に遭い、同年12月26日、頭部外傷後遺症、高次脳機能障害の後 遺障害が残存しているものと診断された(甲9)。 上記の後遺症診断の際に行われた知能検査において、言語性IQ73、動作性IQ60、全検査IQ64、言語理解群指数88、知覚統合群指数63、作動記憶群指数58、処理速度群指数54との検査結果が得られ、「発語や動作が非常にゆっくりでも…、言語でのやり取りや理解は十分で あるのに対して、動作性IQ・知覚統合群指数・作動記憶群指数が共に、非常に低い」との所見が示された(甲10、11)。 イ亡Cの兄であるEは、平成30年1月10日、亡Cの日常生活状況について、「よく転倒する。ふらつきが多い。計画的に予定をたて生活することが1人では困難である。すこし先の予定を忘れる。…よく物をおとしこ ぼす。ろれつがまわらないことが多い。考えていることがうまく話せないことがある。」などと報告した(甲12)。 ウ亡Cは、平成30年8月9日、自動車損害賠償責任保険の後遺障害認定において、交通事故に起因する脳外傷による高次脳機能障害が残存しているものとされ、「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外 の労務に服することができないもの」として7級4号に該当すると判断された(甲13)。 エ亡Cは、平成30年5月から、大阪障害者就労支援センター(以下「就労支援センター」という。)に通所していたところ、就労支援センターは、同年10月1日、亡Cについて、「言葉がうまく出てこない。言いたいこ とが言えない。うまく伝わらない。」といったコミュニケーション能力の 。)に通所していたところ、就労支援センターは、同年10月1日、亡Cについて、「言葉がうまく出てこない。言いたいこ とが言えない。うまく伝わらない。」といったコミュニケーション能力の 不足、「物忘れが多い。スケジュール管理が苦手」といった記憶障害を指摘し、高度な高次脳機能障害が持続しており、就労困難と判定した(甲14)。 ⑷ 就労支援センターへの通所の中断、就労支援センターの担当者の訪問、数か月間の音信不通 ア亡Cは、令和2年初頭までは、概ね毎日、就労支援センターに通所していたものの、同年春頃から、占いや風水で良くないといった理由を述べ、就労支援センターに通所しなくなった(甲15)。 イその後、就労支援センターの職員は、亡Cの自宅を定期的に訪問していたが、亡Cは、令和3年秋頃から、就労支援センターの職員が電話をして も全く応答しなくなり、折り返しの電話もせず、その後、二、三か月、亡Cとの連絡が取れない状態が続いた(甲15)。 ウ令和3年末から令和4年初頭、ようやく亡Cとの連絡が取れ、就労支援センターの職員が、数か月振りに、亡Cの自宅を訪問すると、亡Cの状態は全く別人のように激変していた(甲15)。 亡Cの着ている服は、ぼろぼろで破れているところもあった上、亡Cは、全く洗濯せずに、同じ服を着続けていたようであった。また、亡Cは、強い臭気を発する状態で、長期間入浴していないものと思われた。そして、本件建物の玄関にはビニール袋や紙くずが散乱しており、壁には黒いものがこびり付いており、本件建物内は掃除がされておらず、ほこりっぽい状 態であった。亡Cは、簡単な質問には答えられるものの、複雑な質問に対する答えはできず、音信不通となる前と比較して、理解力が低下していた。 (甲15)⑸ 掃除がされておらず、ほこりっぽい状 態であった。亡Cは、簡単な質問には答えられるものの、複雑な質問に対する答えはできず、音信不通となる前と比較して、理解力が低下していた。 (甲15)⑸ 亡Cと社会福祉法人大阪市東成区社会福祉協議会見守り相談室(以下「見守り相談室」という。)との関わり ア亡Cの自宅付近のコンビニエンスストアの店員は、令和4年5月末、地 域福祉活動サポーターに対し、怒鳴り声でクレームを言ってくる男性がいるが、当該男性の様子は異様で、足元がふらついており、コンビニエンスストアの床が汚れるほど失禁していることが何回かあったと相談し、相談を受けた地域福祉活動サポーターは、見守り相談室に上記の相談内容を伝えた(甲16)。 イ見守り相談室の担当者は、当該コンビニエンスストアに対し、当該男性が現れたら連絡してほしいと依頼したところ、当該コンビニエンスストアから連絡があったため、当該コンビニエンスストアに行き、当該男性の後を追跡して、当該男性の自宅を突き止めた。当該男性は亡Cであった(甲16)。 ウ見守り相談室の担当者は、令和4年6月2日、亡Cの自宅を訪問した。 亡Cの髪の毛は、ボサボサで血のようなものの塊がこびり付いて固まって、べっとりとしており、亡Cは何日も風呂に入っていないようであった。亡Cの顔の皮膚は黒ずんでおり、洗っていないようであった。ヒゲについても剃っておらず、伸び放題の様子であった。亡Cは、冬物の無地のスウェ ットの上下を着ていたが、薄汚れており、長期間洗濯していないようであった。本件建物の玄関には、大量の紙チラシが散乱していた。亡Cは、簡単な質問には答えることができたが、少し複雑な質問には答えることはできなかった。(甲16)エ見守り相談室の担当者は、令 うであった。本件建物の玄関には、大量の紙チラシが散乱していた。亡Cは、簡単な質問には答えることができたが、少し複雑な質問には答えることはできなかった。(甲16)エ見守り相談室の担当者は、令和4年6月7日、亡Cの自宅を再度訪問し た。亡Cは、1回目の訪問時と同様、冬物のスウェットの上下を着ており、当該スウェットを洗濯した様子はなかった。見守り相談室の担当者は、処方箋が置かれているのに気付いて、亡Cに質問したところ、亡Cから、病院に通院しているが、薬が切れそうであるとの回答があったため、亡Cから、病院に一緒に行くことの同意を取り付けた。(甲16) オ見守り相談室の担当者は、令和4年6月24日に亡Cと一緒に病院に行 くこととし、同月22日、亡Cの自宅を訪れたが、亡Cは、呼び鈴を鳴らしても出てこなかった。見守り相談室の担当者が亡Cに電話をかけたところ、亡Cは、電話に出たものの、「もういい。」と述べるだけで、それ以外の言葉を述べなかった。(甲16)⑹ 印鑑登録証明書の発行 令和4年6月22日、亡Cの印鑑登録証明書が発行された(乙8)。 ⑺ 亡Cの死亡亡Cは、令和4年6月29日、被告会社が所有する賃貸マンション(以下「F」という。)の一室において、倒れているところを発見された。亡Cは、到着した救急隊によって心停止が確認されて救急搬送され、搬送先の病院に おいて、蘇生措置が取られ、一度は心臓が動き出したものの、同日、死亡が確認された。(甲1)⑻ 亡Cから被告会社への移転登記被告Aは、令和4年6月30日、申請人兼義務者代理人として、本件土地及び本件建物について、被告会社に対する所有権移転登記の申請をし、その 際、亡Cの印鑑登録証明書、亡Cが被告会社に対して本件土地及び本 、令和4年6月30日、申請人兼義務者代理人として、本件土地及び本件建物について、被告会社に対する所有権移転登記の申請をし、その 際、亡Cの印鑑登録証明書、亡Cが被告会社に対して本件土地及び本件建物を2200万円で売却する内容の令和4年6月28日付け売買契約書(甲6。 以下「本件売買契約書」という。)等を添付して提出した。その後、被告会社に対し、本件土地及び本件建物について、同日の売買を原因とする所有権移転登記がされた。(甲4、5、被告A本人) ⑼ 本件土地及び本件建物の転売被告会社は、令和4年8月3日、株式会社Gに対し、本件土地及び本件建物を代金2150万円で売却し、株式会社Gに対し、本件土地及び本件建物について、同日の売買を原因とする所有権移転登記がされた(甲4、5)。 2 当事者の主張 ⑴ 主位的請求について (原告の主張)被告Aは、令和4年6月22日、意思能力を欠く状態にあった亡Cをして、何らの方法により、印鑑登録証明書(乙8)を取得させた。そして、被告Aは、亡Cをして、当該印鑑登録証明書と実印を交付させ、又は亡Cの意思に基づかず、当該印鑑登録証明書と実印を持ち出した。 被告Aは、亡Cの意思に基づかず、亡Cの実印を売買契約書に押印して、法務局に対し、本件売買契約書と亡Cの印鑑登録証明書を提出して、本件土地及び本件建物の所有権移転登記手続を行った。 したがって、被告Aは、原告に対し、不法行為に基づく損害賠償義務を負い、被告会社は、原告に対し、会社法350条に基づく損害賠償義務を負う。 そして、原告が上記の不法行為によって被った損害は、被告会社が株式会社Gに本件土地及び本件建物を売却した価格である2150万円を下回るものではない。 (被告らの主張) 義務を負う。 そして、原告が上記の不法行為によって被った損害は、被告会社が株式会社Gに本件土地及び本件建物を売却した価格である2150万円を下回るものではない。 (被告らの主張)原告の主張は否認する。令和4年6月28日の契約手続は、亡Cが自らの 意思で被告会社の事務所に来所して行われた。亡Cは、同日、契約手続に必要な権利証、実印、評価証明書を自らのバッグに入れて持参し、本件売買契約書に実印を押印した。 ⑵ 予備的請求について(原告の主張) ア(ア) 亡Cは、令和4年6月28日、被告会社に対し、本件土地及び本件建物を代金2200万円で売った(以下「本件売買契約」という。)。亡Cは、被告会社から、本件売買契約の代金の支払を受けていない。 (イ) 亡Cは、令和4年6月28日当時、意思能力を欠く状態であったから、本件売買契約は無効である。そして、亡Cは、同月29日、死亡し た。したがって、原告は、相続により、亡Cが被告会社に対して有して いた本件土地及び本件建物の返還請求権を取得した。 (ウ) 被告会社は、令和4年8月3日、株式会社Gに対し、本件土地及び本件建物を代金2150万円で売却し、本件土地及び本件建物の所有権移転登記がされた。これにより、被告会社の原告に対する本件土地及び本件建物の返還債務は履行不能となった。 (エ) したがって、被告会社は、原告に対し、本件土地及び本件建物の返還債務の履行不能による損害賠償義務を負う。そして、原告が上記債務不履行により被った損害額は、被告会社と株式会社Gとの間の売買契約における代金2150万円と一致する。 イ被告Aは、被告会社の代表取締役であるところ、亡Cが意思能力を欠 く状態にあることを認識し、本件売買契約が無効になるこ 社と株式会社Gとの間の売買契約における代金2150万円と一致する。 イ被告Aは、被告会社の代表取締役であるところ、亡Cが意思能力を欠 く状態にあることを認識し、本件売買契約が無効になることを知りながら、被告会社を代表して、亡Cとの間で本件売買契約を締結した。また、被告Aは、本件売買契約が無効であるため、被告会社が原告に対して本件土地及び本件建物を返還する義務があることを認識しながら、被告会社をして株式会社Gに対して本件土地及び本件建物を売却させ、原告に 2150万円の損害を発生させた。 したがって、被告Aは、原告に対し、会社法429条1項に基づき、損害賠償義務を負う。 ウ被告会社が原告に対して負う債務不履行による損害賠償債務と被告Aが原告に対して負う会社法429条1項に基づく損害賠償債務は、連帯 債務関係にある。 (被告らの主張)ア(ア) 原告の主張ア(ア)のうち、亡Cが、令和4年6月28日、被告会社に対し、本件土地及び本件建物を代金2200万円で売ったことは認め、その余は否認する。本件売買契約の代金2200万円は、被告会社から 亡Cに支払われ、亡CのHからの借入金の返済として、亡CによりHに 対して弁済されたとの処理を行った。そして、Hは、被告会社に対して未払金があったため、上記2200万円は同未払金の支払に充てられた。 したがって、売買契約時に現金の授受はされていない。 (イ) 原告の主張ア(イ)のうち、亡Cが令和4年6月29日に死亡したことは認め、その余は否認し、争う。 (ウ) 原告の主張ア(ウ)のうち、被告会社が令和4年8月3日に株式会社Gに対し、本件土地及び本件建物を代金2150万円で売却し、本件土地及び本件建物の所有権移転登記がされたことは認め、その余は否認す ) 原告の主張ア(ウ)のうち、被告会社が令和4年8月3日に株式会社Gに対し、本件土地及び本件建物を代金2150万円で売却し、本件土地及び本件建物の所有権移転登記がされたことは認め、その余は否認する。 (エ) 原告の主張ア(エ)は否認し、争う。 イ原告の主張イのうち、被告Aが被告会社の代表取締役であること、被告Aが被告会社を代表して亡Cとの間で本件売買契約を締結したことは認め、その余は否認する。 ウ原告の主張ウは争う。 第3 当裁判所の判断 1 証拠(甲4~6、被告A本人)によれば、被告Aは、亡Cが死亡した令和4年6月29日、法務局において、本件土地及び本件建物の所有権移転登記申請について相談し、同月30日、本件土地及び本件建物について、被告会社に対する所有権移転登記の申請をし、その際、本件売買契約書を添付して提出したことが認められる。したがって、遅くとも、所有権移転登記の申請がされた同 日には、本件売買契約書は作成されていたことが認められる。 そして、本件売買契約書に亡Cの署名がされているのであれば、遅くとも、亡Cが死亡した令和4年6月29日までに本件売買契約書が作成されていたと認められるところ、証拠(甲6)によれば、本件売買契約書には、売主及び買主が署名押印する旨の記載があるにもかかわらず、売主として契約締結の場に 同席していたはずの亡Cの署名はされておらず、それに代えて記名がされてい ることが認められる。 また、証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば、令和4年6月28日付けの本件売買契約書には、契約書2通を作成し、売主及び買主が各自その1通を保有する旨の記載があるにもかかわらず、その翌日である同月29日に死亡した亡Cの遺留品からは、本件売買契約書の原本のみならず写しも発見 売買契約書には、契約書2通を作成し、売主及び買主が各自その1通を保有する旨の記載があるにもかかわらず、その翌日である同月29日に死亡した亡Cの遺留品からは、本件売買契約書の原本のみならず写しも発見されていな いことが認められる。そして、弁論の全趣旨によれば、同月28日付けの本件売買契約書への押印に使用されたはずの亡Cの実印も、その翌日である同月29日に死亡した亡Cの遺留品からは、見つかっていないことが認められる。さらに、本件売買契約の作成日付である同月28日に、被告会社と亡Cとの間において、売買代金である2200万円について、現金の授受がされなかったこ とは、当事者間に争いがない。これらの事実に照らすと、本件売買契約書は、亡Cが死亡した令和4年6月29日以降に作成された疑いが強いというべきである。 さらに、本件売買契約の重要事項説明書(乙1)には、売買代金が3000万円、手付金200万円と記載され(乙1・13頁)、住宅ローンに係る金融 機関等として株式会社Iと記載されている(乙1・14頁)など、本件売買契約と全く関係のない内容の記載がされており、本件売買契約の締結に当たって、亡Cに対し、上記の重要事項説明書に基づいて重要事項説明がされたとは認め難く、この点に加えて、「重要事項説明の内容を確認しました。」との記載の下に、亡Cの署名がなく、記名押印がされていることも併せて考慮すると、本件 売買契約の重要事項説明書も、亡Cが死亡した令和4年6月29日以降に作成された疑いが強いというべきである。 加えて、令和4年6月22日に亡Cの印鑑登録証明書が発行されているものの(前記前提事実⑹)、同月頃の亡Cは、長期間風呂に入らず、長期間洗濯していない薄汚れた冬物のスウェットの上下を着続けていた状態であり、理解力 22日に亡Cの印鑑登録証明書が発行されているものの(前記前提事実⑹)、同月頃の亡Cは、長期間風呂に入らず、長期間洗濯していない薄汚れた冬物のスウェットの上下を着続けていた状態であり、理解力 が低下し、簡単な質問に答えることはできるが、少し複雑な質問に答えること ができない状態であったこと(前記前提事実⑷及び⑸)、本件建物内は掃除されておらず、ゴミが散乱している状態であったこと(前記前提事実⑷及び⑸)、亡Cの遺留品からは印鑑登録カードが発見されていないこと(弁論の全趣旨)に照らすと、被告Aが、亡Cの印鑑登録カードを持ち出すことや、亡Cから同カードの暗証番号を聞き出したりすることは容易であったものと認められる。 以上によれば、被告Aは、亡Cが死亡した令和4年6月29日以降に、亡Cの意思に基づかずに本件売買契約書を作成し、同月30日、申請人兼義務者代理人として、本件土地及び本件建物について、被告会社に対する所有権移転登記の申請をし、その際、亡Cの印鑑登録証明書、本件売買契約書等を添付して提出したものと認められる。 2 以上に対し、被告らは、令和4年6月28日に現金の授受はされなかったものの、本件売買契約の代金として、被告会社から亡Cに2200万円が支払われ、亡CのHからの借入金の返済として、亡CからHに2200万円が支払われ、Hの被告会社に対する未払金の返済として、Hから被告会社に2200万円が支払われたとの処理を行ったと主張し、被告A及び証人Hの供述にはこれ に沿う部分があり、これを裏付ける書証として、念書(乙5)、借用書(乙6)及び借用書(乙7)が提出されている。 そこで検討すると、Hは、被告会社に対して水道工事の売上げの25%を支払う約束になっていたが、資金不足のためにそれを支払うこ 、念書(乙5)、借用書(乙6)及び借用書(乙7)が提出されている。 そこで検討すると、Hは、被告会社に対して水道工事の売上げの25%を支払う約束になっていたが、資金不足のためにそれを支払うことができず、被告会社に対する未払金の額は2500万円にも上っていたと供述するが、それに もかかわらず、亡Cからの求めに応じて、亡Cに対して合計2200万円もの大金を貸し付けたと供述している。証人Hの上記供述は、その内容が極めて不合理なだけでなく、客観的証拠による裏付けもなく、およそ信用できない。また、証人Hの上記供述と同じ内容の被告Aの供述も同様に信用できない。 また、念書(乙5)及び借用書(乙6)には亡Cの署名がなく、記名押印が されていること(乙5、6)を併せて考慮すると、念書(乙5)、借用書(乙 6)及び借用書(乙7)は、いずれも、本件売買契約の代金が支払われたことを偽装するために、亡Cが死亡した令和4年6月29日以降に作成された疑いが強いというべきである。そして、本件において、他に、Hが亡Cに対して2200万円を交付したことを裏付ける客観的証拠は一切提出されていない。 以上によれば、被告らの上記主張は採用することができない。 3 以上によれば、被告Aは、亡Cが死亡した令和4年6月29日以降に、亡Cの意思に基づかずに本件売買契約書を作成し、同月30日、申請人兼義務者代理人として、本件土地及び本件建物について、被告会社に対する所有権移転登記の申請をし、その際、亡Cの印鑑登録証明書、本件売買契約書等を添付して提出し、同年8月3日、被告会社の代表者として、株式会社Gに対し、本件土 地及び本件建物を代金2150万円で売却し、株式会社Gに対し、本件土地及び本件建物について、同日の売買を原因とする所有権移転 し、同年8月3日、被告会社の代表者として、株式会社Gに対し、本件土 地及び本件建物を代金2150万円で売却し、株式会社Gに対し、本件土地及び本件建物について、同日の売買を原因とする所有権移転登記がされたものと認められる。そうすると、原告は、被告Aの上記行為によって、本件土地及び本件建物の所有権を違法に侵害されたものといえる。よって、被告Aは、原告に対し、不法行為による損害賠償義務を負うというべきである。 また、被告Aの上記行為は被告会社の職務を行うについてされたものであるから、被告会社は、原告に対し、会社法350条に基づく損害賠償義務を負うというべきである。 4 そして、被告会社と株式会社Gとの間の本件土地及び本件建物の売買契約の代金が2150万円であることに照らすと、原告が被告の不法行為により本件 土地及び本件建物の所有権を侵害されたことによって被った損害の額は2150万円であると認めるのが相当である。 5 よって、原告の主位的請求はいずれも理由があるから、これらを認容することとして、主文のとおり、判決する。 大阪地方裁判所第17民事部 裁判官葛󠄀 西功洋 (別紙の掲載省略)
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