【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人亀井秀雄上告趣意書ハ原判決ハ法令上違反シ判決シタルヲ以テ破毀ヲ免レ ス原判決ハ被告人ヲ懲役五年ニ処スル当審ニ於ケル
主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人亀井秀雄上告趣意書ハ原判決ハ法令上違反シ判決シタルヲ以テ破毀ヲ免レ ス原判決ハ被告人ヲ懲役五年ニ処スル当審ニ於ケル未決勾留日数七十日ヲ右本刑ニ 算入スルト判決シタリ、本件事実ノ要旨ハ昭和二十一年十一月三十日B某ヨリ被告 人及A某ト正当ナ荷物ヲ取リニ行クカラ手伝ツテ呉レト謂ハレタルヲ以テ手伝フツ モリデ約束ノ日時ニ約束ノ場所ニ集マリ現場ノa駅ヲ下車シテ犯行ノ場所タル東京 都葛飾区b町c番地dアパートノ前ニ来ルヤBハ被告人ニピストルヲ突付ケAニ匕 首ヲ渡シテBハ之カラ強盗ニ入ルノダカラト話サレタノテ被告人ハ喫驚シテ仕舞ヒ 夫レテハ約束カ違フテハナイカト謂ツテ強盗ニ入ルナドヽ謂フ事ハ嫌ダト謂ツタ処 Bハ此処迄来テ嫌ダトハ何ダ什ウシテモ入ツテ金ヲ取ルノダト脅カサレタノデ仕方 ナクBカ教ヘタ通リd会館ノ二階ノ表通リノ向ツテ一番右端ノ室ニ入ツテ行ツテ本 件ヲ犯シタルモノニシテ被告人ハ最初カラ強盗ヤ窃盗ニ行クモノトハ予想ダニセサ ルノミナラズ現場へ行ツテBカラピストルヲ突付ケラレテ強盗ニ行ケト脅カサレタ カ嫌タト拒ワツタガ什ウシテモ行ケト謂ハレタノテBカ被告人ノ胸倉ニピストルヲ 突付ケタリシテ脅カサレテ仕方無シニ犯意ヲ決意シタルモノナリ。被告人ハBカラ 脅カサレテ已ムヲ得ズ行ツタ事件ナレバ間接正犯ナリト信ス、間接正犯ハ人類ヲ器 械的ニ使用シタル場合ノ犯罪ヲ謂フ。間接正犯ハ責任無能力者ヲ利用シタル時即チ 十四歳未満ノ刑事責任無能力者ヲ利用シテ犯罪ヲ犯サシメタル場合ナリ。他人ヲ強 制シテ之ヲ利用シタルトキ強制ハ責任ヲ阻却スヘキモノタル程度ノモノタルヲ要ス 本件ニ於テ被告人ハBカラピストルヲ胸倉ニ突付ケラレテ脅カサレテ已ムヲ得ズ本 件ヲ犯ス意思ヲ決定シタルモノナレバ間接正犯ノ理論ニ従ヒテ被告人ヲ無罪トスル ヲ 責任ヲ阻却スヘキモノタル程度ノモノタルヲ要ス 本件ニ於テ被告人ハBカラピストルヲ胸倉ニ突付ケラレテ脅カサレテ已ムヲ得ズ本 件ヲ犯ス意思ヲ決定シタルモノナレバ間接正犯ノ理論ニ従ヒテ被告人ヲ無罪トスル ヲ相当ト信ズ被告人ノ行為ハ犯罪ヲ構成セザルモノト信ズ。仮リニ間接正犯ノ理論 - 1 - 容レラレズ被告人ヲ有罪ナリト御認定ナサル場合ニ於テモ(一)被告人ハBカラ脅 カサレテ已ムヲ得ズ本件ヲ犯シタル事情(二)本件ハ被害者ニ於テ被害金品ヲ取戻 シテ被害ナカリシ事情(三)被告人ハ昭和二十年一月二十五日出征シテ昭和二十年 八月二十六日復員シタル点(四)被告人ハ前科ナク全クBカラ脅サレテ已ムヲ得ズ 犯シタルモ善人デアツタコトハ兄Cノ証言ヲ採用スレバ判明スルヲ以テ被告人ニ対 シテハ法定減刑酌量減刑シテ以テ刑ノ執行猶予ヲ言渡スベキヲ相当トス、然ルニ原 審ニ於テハ被告人ニ対シテ法定減軽ヲ為サズ酌量減軽ヲ為サス従ツテ刑ノ執行猶予 ヲ言渡サザルハ刑事訴訟法第四百十一条ニ規定スル判決ニ影響ヲ及ボスコト明白ナ ル法令ノ違反ナルヲ以テ破毀ヲ免レサルモノト信ス。何卒諸般ノ事情ヲ酌量セラレ 破毀ノ御判決ヲ御願ヒスル次第ナリと言ふのである。 所論前段は被告人がB某から威されて意思の自由を失ひ、本件犯行を行つたとい ふ事実を主張して、被告人に刑法上の責任のないことを論ずるのであるが、右の事 実は原判決の認定した事実と異なる事実であるから、所論は結局原判決に事実の誤 認ある事を上告の理由とするに帰着する。したがつて刑事訴訟法第四百十四条の適 用が、日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律第十三条によ り除かれた以上は、其の理由がないことは明かである。所論後段は原審が被告人に 対する科刑につき法律上の減軽及び酌量減軽をせず、刑の執行猶予をしなかつたこ とを目して法令に違反すると主張するのであるが、原 り除かれた以上は、其の理由がないことは明かである。所論後段は原審が被告人に 対する科刑につき法律上の減軽及び酌量減軽をせず、刑の執行猶予をしなかつたこ とを目して法令に違反すると主張するのであるが、原判決の認定した事実によれば、 法律上の減軽事由はなく、酌量減軽をするかしないかは原審の自由裁量に属するこ とであるから、これらの減軽をしなかつた点について違法はない。したがつて本件 は刑の執行を猶予することができる場合に当らないことは刑法第二十五条により明 かであるから、原審が刑の執行猶予をしなかつたのは当然で、この点についても違 法はなく、論旨後段も理由がない。 右の理由は裁判官全員の一致した意見であるので、刑事訴訟法第四百四十六条に - 2 - より主文の通り判決する。 検察官宮本増蔵関与 昭和二十二年十一月十一日 最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎 裁判官 井 上 登 裁判官 庄 野 理 一 裁判官 島 保 裁判官 河 村 又 介 - 3 -
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