平成22(受)1212 新株発行無効請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年4月24日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所 平成21(ネ)2094
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判決文本文10,500 文字)

- 1 - 平成22年(受)第1212号新株発行無効請求事件平成24年4月24日第三小法廷判決 主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告補助参加人Aの代理人源光信及び上告補助参加人B,同Cの代理人内田智,同石岡修の各上告受理申立て理由について 1 本件は,上告人の監査役である被上告人が,上告人の取締役であった上告補助参加人(以下,単に「補助参加人」という。)らによる新株予約権の行使は,行使条件を変更する取締役会決議が無効であるにもかかわらずそれに従ってされたものであって,当初定められた行使条件に反するものであるから,上記新株予約権の行使による株式の発行は無効であると主張して,主位的に会社法828条1項2号に基づいて上記株式の発行を無効とすることを求め,予備的に上記株式の発行は当然に無効であるとしてその確認を求める事案である。 2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。 (1) 上告人は,信用保証業務等を目的として昭和56年に設立された株式会社であり,発行する株式の全部について,譲渡により取得するためには取締役会の承認を受けなければならない旨の定款の定めを設けている。 (2) 上告人は,経営陣の意欲や士気の高揚を目的として,ストックオプションを付与することとし,平成15年6月24日,その株主総会において,以下のとお- 2 -り,平成17年法律第87号による改正前の商法(以下「旧商法」という。)280条ノ20,280条ノ21及び280条ノ27の規定により,新株予約権(以下「本件新株予約権」という。)を発行する旨の特別決議(以下「本件総会決議」という。)がされた。 下「旧商法」という。)280条ノ20,280条ノ21及び280条ノ27の規定により,新株予約権(以下「本件新株予約権」という。)を発行する旨の特別決議(以下「本件総会決議」という。)がされた。 ア新株予約権の目的である株式の種類及び数普通株式6万株イ発行する新株予約権の総数 6万個ウ新株予約権の割当てを受ける者平成15年6月25日及び新株予約権の発行日の各時点において上告人の取締役である者エ新株予約権の発行価額無償オ新株予約権の発行日平成15年8月25日カ新株予約権の行使に際して払込みをすべき額新株予約権1個当たり750円キ新株予約権の行使期間平成16年6月19日から平成25年6月24日までク新株予約権の行使条件(ア) 新株予約権の行使時に上告人の取締役であること(イ) その他の行使条件は,取締役会の決議に基づき,上告人と割当てを受ける取締役との間で締結する新株予約権の割当てに係る契約で定めるところによる(以下,本件総会決議による上記の委任を「本件委任」という。)。 (3) 上告人の取締役会において,平成15年8月11日,補助参加人Aに対し4万個,同Cに対し1万個,同Bに対し1万個の本件新株予約権を割り当てる旨の- 3 -決議がされた。そして,同月,上告人と補助参加人らは,上記決議に基づき,本件新株予約権の行使条件として,上告人の株式が店頭売買有価証券として日本証券業協会に登録された後又は日本国内の証券取引所に上場された後6箇月が経過するまで本件新株予約権を行使することができないとの条件(以下「上場条件」という。)を定めるなどして,新株予約権の割当てに係る各契約を締結し,上告人は,本件新株予約権を発行した。 (4) 上告人は,平成17 新株予約権を行使することができないとの条件(以下「上場条件」という。)を定めるなどして,新株予約権の割当てに係る各契約を締結し,上告人は,本件新株予約権を発行した。 (4) 上告人は,平成17年10月頃から補助参加人Aが収受したリベート等をめぐって税務調査を受けるようになり,税務当局から重加算税を賦課する可能性があることを指摘され,株式を公開することが困難な状況となった。 (5) 上告人の取締役会において,平成18年6月19日,本件新株予約権の行使条件としての上場条件を撤廃するなどの決議(以下「本件変更決議」という。)がされ,同日,上告人と補助参加人らは,上記各契約の内容を本件変更決議に沿って変更する旨の各契約を締結した。 (6) 補助参加人らは,平成18年6月から同年8月までの間に,本件新株予約権を行使し,上告人は,これに応じて,補助参加人らに対し,合計2万6000株の普通株式を発行した(以下,この発行を「本件株式発行」という。)。 (7) 上告人の株式は,店頭売買有価証券として日本証券業協会に登録されたことはなく,また,日本国内の証券取引所に上場されたこともない。 3 原審は,上記事実関係の下において,取締役会には,所定の手続を経て新株予約権が発行された後において,行使条件を新たに設定し,又は変更する権限はないから,本件変更決議に上場条件を撤廃するなどの効力はなく,本件変更決議による行使条件の変更を前提とする本件株式発行は無効であるとして,被上告人の主位- 4 -的請求を認容すべきものと判断した。 4 所論は,本件総会決議による本件委任は,本件新株予約権の発行後に上場条件を取締役会決議によって撤廃することも委任の範囲内のこととして許容するものであるから,本件変更決議は有効であり,本件株式発行に無効原因はないという 議による本件委任は,本件新株予約権の発行後に上場条件を取締役会決議によって撤廃することも委任の範囲内のこととして許容するものであるから,本件変更決議は有効であり,本件株式発行に無効原因はないというのである。 5(1) そこでまず,本件変更決議の効力について検討する。 旧商法280条ノ21第1項は,株主以外の者に対し特に有利な条件をもって新株予約権を発行する場合には,同項所定の事項につき株主総会の特別決議を要する旨を定めるが,同項に基づく特別決議によって新株予約権の行使条件の定めを取締役会に委任することは許容されると解されるところ,株主総会は,当該会社の経営状態や社会経済状況等の株主総会当時の諸事情を踏まえて新株予約権の発行を決議するのであるから,行使条件の定めについての委任も,別途明示の委任がない限り,株主総会当時の諸事情の下における適切な行使条件を定めることを委任する趣旨のものであり,一旦定められた行使条件を新株予約権の発行後に適宜実質的に変更することまで委任する趣旨のものであるとは解されない。また,上記委任に基づき定められた行使条件を付して新株予約権が発行された後に,取締役会の決議によって行使条件を変更し,これに沿って新株予約権を割り当てる契約の内容を変更することは,その変更が新株予約権の内容の実質的な変更に至らない行使条件の細目的な変更にとどまるものでない限り,新たに新株予約権を発行したものというに等しく,それは新株予約権を発行するにはその都度株主総会の決議を要するものとした旧商法280条ノ21第1項の趣旨にも反するものというべきである。そうであれば,取締役会が旧商法280条ノ21第1項に基づく株主総会決議による委任を- 5 -受けて新株予約権の行使条件を定めた場合に,新株予約権の発行後に上記行使条件を変更することがで である。そうであれば,取締役会が旧商法280条ノ21第1項に基づく株主総会決議による委任を- 5 -受けて新株予約権の行使条件を定めた場合に,新株予約権の発行後に上記行使条件を変更することができる旨の明示の委任がされているのであれば格別,そのような委任がないときは,当該新株予約権の発行後に上記行使条件を取締役会決議によって変更することは原則として許されず,これを変更する取締役会決議は,上記株主総会決議による委任に基づき定められた新株予約権の行使条件の細目的な変更をするにとどまるものであるときを除き,無効と解するのが相当である。 これを本件についてみると,前記事実関係によれば,本件総会決議による本件委任を受けた取締役会決議に基づき,上場条件をその行使条件と定めて本件新株予約権が発行されたものとみるべきところ,本件総会決議において,取締役会決議により一旦定められた行使条件を変更することができる旨の明示的な委任がされたことはうかがわれない。そして,上場条件の撤廃が行使条件の細目的な変更に当たるとみる余地はないから,本件変更決議のうち上場条件を撤廃する部分は無効というべきである。 (2) 以上のように,本件変更決議のうちの上場条件を撤廃する部分が無効である以上,本件変更決議に従い上場条件が撤廃されたものとしてされた補助参加人らによる本件新株予約権の行使は,当初定められた行使条件に反するものである。そこで,行使条件に反した新株予約権の行使による株式発行の効力について検討する。 会社法上,公開会社(同法2条5号所定の公開会社をいう。以下同じ。)については,募集株式の発行は資金調達の一環として取締役会による業務執行に準ずるものとして位置付けられ,発行可能株式総数の範囲内で,原則として取締役会において募集事項を決定して募集株式が発行され )については,募集株式の発行は資金調達の一環として取締役会による業務執行に準ずるものとして位置付けられ,発行可能株式総数の範囲内で,原則として取締役会において募集事項を決定して募集株式が発行される(同法201条1項,199条)のに- 6 -対し,公開会社でない株式会社(以下「非公開会社」という。)については,募集事項の決定は取締役会の権限とはされず,株主割当て以外の方法により募集株式を発行するためには,取締役(取締役会設置会社にあっては,取締役会)に委任した場合を除き,株主総会の特別決議によって募集事項を決定することを要し(同法199条),また,株式発行無効の訴えの提訴期間も,公開会社の場合は6箇月であるのに対し,非公開会社の場合には1年とされている(同法828条1項2号)。 これらの点に鑑みれば,非公開会社については,その性質上,会社の支配権に関わる持株比率の維持に係る既存株主の利益の保護を重視し,その意思に反する株式の発行は株式発行無効の訴えにより救済するというのが会社法の趣旨と解されるのであり,非公開会社において,株主総会の特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法による募集株式の発行がされた場合,その発行手続には重大な法令違反があり,この瑕疵は上記株式発行の無効原因になると解するのが相当である。所論引用の判例(最高裁昭和32年(オ)第79号同36年3月31日第二小法廷判決・民集15巻3号645頁,最高裁平成2年(オ)第391号同6年7月14日第一小法廷判決・裁判集民事172号771頁)は,事案を異にし,本件に適切でない。 そして,非公開会社が株主割当て以外の方法により発行した新株予約権に株主総会によって行使条件が付された場合に,この行使条件が当該新株予約権を発行した趣旨に照らして当該新株予約権の重要な内容を構成しているときは 公開会社が株主割当て以外の方法により発行した新株予約権に株主総会によって行使条件が付された場合に,この行使条件が当該新株予約権を発行した趣旨に照らして当該新株予約権の重要な内容を構成しているときは,上記行使条件に反した新株予約権の行使による株式の発行は,これにより既存株主の持株比率がその意思に反して影響を受けることになる点において,株主総会の特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法による募集株式の発行がされた場合と異なるところはないから,上記の新株予約権の行使による株式の発行には,無効原因があると解す- 7 -るのが相当である。 これを本件についてみると,本件総会決議の意味するところは,本件総会決議の趣旨に沿うものである限り,取締役会決議に基づき定められる行使条件をもって,本件総会決議に基づくものとして本件新株予約権の内容を具体的に確定させることにあると解されるところ,上場条件は,本件総会決議による委任を受けた取締役会の決議に基づき本件総会決議の趣旨に沿って定められた行使条件であるから,株主総会によって付された行使条件であるとみることができる。また,本件新株予約権が経営陣の意欲や士気の高揚を目的として発行されたことからすると,上場条件はその目的を実現するための動機付けとなるものとして,本件新株予約権の重要な内容を構成していることも明らかである。したがって,上場条件に反する本件新株予約権の行使による本件株式発行には,無効原因がある。 6 以上によれば,会社法828条1項2号に基づき本件株式発行を無効とした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は採用することができない。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官大谷剛彦,同寺田逸郎の各補足意見がある。 裁判官寺田逸郎の補足意見は,次の ることができる。論旨は採用することができない。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官大谷剛彦,同寺田逸郎の各補足意見がある。 裁判官寺田逸郎の補足意見は,次のとおりである。 1(1) 戦後,昭和25年の会社法制の整備において,株式の自由な流通が想定される会社を典型視し,授権株式制度の下で,新株の発行を資金調達の一環として取締役会の業務執行の枠内で捉える新たな制度整備が図られてから,この制度は長く株式会社法制の一つの柱をなしており,昭和41年の商法等の一部改正により定款による株式の譲渡制限に道が開かれた後も揺らぐことなく,今日に至っても柱で- 8 -あり続けている。しかし,平成2年の商法等の一部改正において,典型視されてきた定款に株式譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めのない株式会社においては,第三者に対する有利発行の場合を除き,取締役会の権限で新株の発行を行うこの原則が堅持されたのに対し(旧商法280条ノ2),定款に株式譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めのある株式会社(株式譲渡制限会社)については,有限会社法(平成17年会社法整備法により廃止)にならって,新株の発行には原則として株主が新株の引受権を有するとする制約が課され,この制約を排して株主以外の者を相手に新株を発行しようとするときは,株主総会の特別決議を要するものとされ(旧商法280条ノ5ノ2第1項),増資と既存の株主の新株引受権との関係の整理とともに,株式の流通性を基礎とする資金調達と株主保護とのバランスの再調整が図られた。一般に,株主は投資家という側面と会社という組織の構成員という側面とを持つわけであるが,ここでは,株式譲渡に制限のない会社に比べて後者の側面がより前面に出る株式譲渡制限会社の特質が考慮され,どのような株主間 主は投資家という側面と会社という組織の構成員という側面とを持つわけであるが,ここでは,株式譲渡に制限のない会社に比べて後者の側面がより前面に出る株式譲渡制限会社の特質が考慮され,どのような株主間にどういう割合で株式保有がされているかが重要であることから株式の取得に制約が課されている株式譲渡制限会社においては,既存の株主の権利を尊重し,株主総会の権限を基本に据えようとする姿勢が明らかにされたものといえるであろう。これが会社法制定に当たって受け継がれ,自己株式の処分をも新株発行とひとくくりにして募集株式の発行等と位置付けた上で,公開会社(株式の一部にでも譲渡に会社の承認を要する旨の定款の定めがない株式会社)における募集株式の発行等に当たっては,取締役会が決定権限を有するのに対し,非公開会社(全株式につき譲渡に会社の承認を要する旨の定款の定めがある株式会社)における募集株式の発行等に当たっては,株主総会が決定権限を有することを原則とする仕組みがとられたの- 9 -である(会社法2条5号,199条から202条まで,204条,309条2項5号)。 (2) 他方,平成9年の商法の一部改正によって,いわゆるストックオプションとしての新株引受権が定款により取締役及び使用人に対して与えられる制度として発足した当初は,その権利の内容は全て株主総会の特別決議により決めるべきものとされていたものの,平成13年の商法の一部改正により,汎用的な新株予約権として,原則として内容も取締役会が決める権限を有するものへと利用しやすさへの譲歩がされた際に,株式譲渡制限会社については,新株の発行にならって,原則として株主が新株予約権の引受権を有するとする制約が課され,この制約を排して株主以外の者を相手に新株予約権を発行しようとするときは,株主総会の特別決議を要するも ついては,新株の発行にならって,原則として株主が新株予約権の引受権を有するとする制約が課され,この制約を排して株主以外の者を相手に新株予約権を発行しようとするときは,株主総会の特別決議を要するものとされ(旧商法280条ノ19,20,280条ノ27),会社法においては,これが実質的に引き継がれて,公開会社が新株予約権を発行する場合には,原則として募集事項の決定が取締役会によって行われるのに対し,非公開会社が新株予約権を発行する場合については,原則として募集事項を株主総会決議自体で決めなければならないものとされると同時に,取締役ないし取締役会に委任することができる一部の事項の中にも新株予約権の内容は含まれないという扱いに改められた(会社法238条から240条まで,243条,309条2項6号)。旧商法当時は,新株予約権にどのような行使条件を付すかについては株主総会が取締役会に決定を委任することができるとする解釈が広くとられていたが,会社法の下では,新株予約権の行使条件のうち少なくともその実質的内容に当たるものは取締役会に委任することができないものとされたと解され,旧商法下でのように取締役会によって上記のような行使条件が決められる余地はなくなったのであって,募集株- 10 -式の発行等と同様,非公開会社における株主の権利の尊重への歩みが確実に進められたものといえる。 (3) 本件においては,会社法施行前に,定時株主総会における特別決議(本件総会決議)による新株予約権の発行から,上場条件を含む行使条件の決定,3人の取締役との間でのこれに従った新株予約権割当契約の締結,登記手続の完了までの一連の手続により当該3人の取締役が新株予約権を取得した。そして,その後に会社の株式上場が困難な事態が生ずるや,取締役会で上場条件を行使条件から削除し,行 予約権割当契約の締結,登記手続の完了までの一連の手続により当該3人の取締役が新株予約権を取得した。そして,その後に会社の株式上場が困難な事態が生ずるや,取締役会で上場条件を行使条件から削除し,行使時に取締役でなくても取締役会が認めた者ならよいとすることに条件を改めた上で,新株予約権が行使され,株式が発行されたのであるが(会社法282条),これらは,平成18年5月の会社法施行直後のことなのである。 会社法の下では,本件のような経過で新株予約権が行使され,3人の取締役らが株主としての地位を獲得することはあり得ない。上記のような取締役らによる,お手盛り的で,株主総会の意向に背く処理は,(1),(2)で要約した会社法制の進んできた方向に対する真っ向からの挑戦というほかないのである。外部監査役とみられる監査役がこの事態を見過ごすことなく提訴したことも,その意味で頷ける。 2(1) 株主総会による委任に基づき一旦決められた行使条件を変更できるかどうかについては,法廷意見のとおり,旧商法施行当時の基準として,原則として,決議のあった株主総会当時の諸事情の下における適切な行使条件を新株予約権の発行までに定めることが委任の趣旨であるとみて,以後の変更を許容することが明示されていない限り変更は許されないという考え方に基づき,本件における行使条件の変更が許されないものであるとの結論が導かれるのであって,そのことが当事者の主張に対応する判断として相当である。しかし,本件において,会社法の施行に- 11 -より,会社自体,旧商法施行時の譲渡制限の定め,株主総会決議,取締役会決議及び登記がそれぞれ会社法上の相当存在となって,以後,会社法が適用されることとなり(会社法附則2項,会社法整備法66条1項,2項,76条1項,3項,91条,96条,113条1項), 議,取締役会決議及び登記がそれぞれ会社法上の相当存在となって,以後,会社法が適用されることとなり(会社法附則2項,会社法整備法66条1項,2項,76条1項,3項,91条,96条,113条1項),また,株式及び新株予約権については規定を欠くものの,当然会社法上の相当存在となるものと解されるから,以後の新株予約権のありようを計るには,全て会社法の規定に照らしてみることが本来の在り方ともいえる。そうであるとすると,上記1(2)のとおり,そもそも会社法の下においては新株予約権の内容としての行使条件を取締役会が決めることはできないのであるから,一旦決められた条件を取締役会が変更することなどおよそ許される余地などなく,本件の行使条件の変更が許されないことがより強い形で説明できるようにも思える。 (2) かねて,当審は,株式譲渡制限会社において行われるものを含めて,新株発行を無効とすることに慎重であるとみられてきた。補助参加人らが原審判断を判例違反と主張するに当たって引用する2つの当審裁判例が,その根拠とされるのであろう。しかし,それは旧商法の下で長く新株発行が取締役会の業務執行と位置付けられてきたことにかかわる解釈であると考えられる。 本件での新株予約権行使による株式発行の有効性については,会社法の下で判断されるべきところ(会社法整備法98条1項は,施行時に発行されていない新株予約権の発行手続について旧商法を適用すべきとする規定であり,会社法整備法111条1項は,施行前に提起された新株発行無効の訴えの手続を旧商法等を適用して行うものとする規定にすぎない。),法廷意見に示されたとおり,第一に,非公開会社における株主割当て以外の方法による募集株式の発行が株主総会の特別決議を- 12 -欠く状況で行われると,株式発行無効原因となるとの考え方が ぎない。),法廷意見に示されたとおり,第一に,非公開会社における株主割当て以外の方法による募集株式の発行が株主総会の特別決議を- 12 -欠く状況で行われると,株式発行無効原因となるとの考え方が十分成り立ち,第二に,新株予約権の行使が株主総会の付した行使条件に反している場合には,この行使条件が当該新株予約権を発行した趣旨に照らしてその重要な内容を構成しているものである限り,既存の株主にとって持株比率の在り方が株主総会決議時に想定していたものと異なる形で歪められることになる(取締役会が設置されていない非公開会社(会社法139条1項参照)の既存株主を中心に殊に関心の強い株主構成の在り方までも歪められることになる)点で株主総会決議を欠いた募集株式の発行の場合と基本的な差がないとみることができるのである。そこで,さらに,会社法の下では,もはや取締役会が前記のとおり行使条件の決定を行う余地はないことを正面から受け止めるならば,同法施行前に株主総会が取締役会に委任した結果付された行使条件を施行後は株主総会が付した条件と同視するほかないというべきで,しかも,条件変更は単なる手続違背ではなく,およそ受け入れる余地がない性格のものなのであるから,結局,本件の取締役会による変更後の条件に従った新株予約権の行使による株式の発行については,株主総会決議を欠く募集株式の発行と同視するという結論に至らざるを得ず,したがって,これを無効視する結論がより明確に導かれるように思われる。なお,このように解しても,非公開会社の株式流通には限界があり,取引安全に支障が生ずる余地が限られていることも付言しておくことが適切であろう。もっとも,上記の株主の権利の尊重及び会社運営における決定機関としての株主総会重視という角度からこのような解釈を導くについては,本来,その会社が非 限られていることも付言しておくことが適切であろう。もっとも,上記の株主の権利の尊重及び会社運営における決定機関としての株主総会重視という角度からこのような解釈を導くについては,本来,その会社が非公開会社であるかどうかということだけでなく,取締役会が設置されているかどうか,あるいは株式の譲渡承認が株主総会自体によって行われるかどうか(会社法施行前の有限会社型かどうか)という要素を含めて判断すべきであると- 13 -いう考え方もあり得るであろう。しかし,ここでの解釈においては,非公開会社という法律の定める大枠に着目することが,簡明でありながら,概ねとはいえ相当性を見出せるという意味で,無理がないところといえるように思われる。 3 以上のとおり,会社法の施行下での株式発行であるということをより強く受け止めて施行後の経過を意味付けようとすることも見方としてあり得るところで,その見方に立つと,株式発行無効原因があることをより抵抗なく受け止めることができるように思えるのである。 裁判官大谷剛彦は,裁判官寺田逸郎の補足意見に同調する。 (裁判長裁判官岡部喜代子裁判官田原睦夫裁判官大谷剛彦裁判官寺田逸郎)

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